梨子「未来のあなたが知ってるね」

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580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:37:28.64 ID:jWyG/GcGO


「……ふふっ。時代遅れ、ですか……」



「……うーん。今日こそ、勝てると思ったのに」



「でも。……このゲームを、時代遅れにした、技術。……機械の力」


「それを、生み出したのは。……わたくしたち、時代遅れの。つまらない、皆でしょう……?」



「・・・・・・!そっか。うん。・・・・・・そう、だね」



「・・・・・・流石だね」



「ふふっ……当然、でしょう?」


「わたくしは。……〈あなた〉の仲間なのですからね」






・・・・・・その姉妹は。まるで、示し合わせたかのように。


姉が夢から去った後。・・・・・・妹も、後を追うように、去っていった。



姉と遊んでいた妹は。・・・・・・姉と同じくらい、立派になって・・・・・・。


でも、やっぱり姉と遊ぶ時に見せていたように。あの時と同じように、可憐なままだった。


・・・・・・私が可愛いと思った、あの時の面影だけは。ずっと、持っていた・・・・・・。


581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:38:15.30 ID:jWyG/GcGO


「わたくしたち、しあわせだったんです。……自分たちの、大好きを、言わせてくれる場所を作った、人に会えて」


「……あなたに、あえて」



「・・・・・・」



「だから。……頑張ルビィ、だよ」



「…………この年になって言うの。すごく、恥ずかしいけどね………」




「・・・・・・。かわいいから、いいんじゃない?」



「……もう。ふふっ」


「あんまり、わたくしのことからかっちゃダメですわよ?……わたくしだって」


「りっぱに、なったって。おねえちゃんにいってもらえたんだから……」



「・・・・・・ごめん」



「……ありがとう。だよ」



「・・・・・・」



「じゃあね。……皆に、よろしくね」



「・・・・・・うん。・・・・・・ありがとう」



「……ふふっ」






・・・・・・私の、幼馴染。・・・・・・私、たくさんお姉ちゃんがいるけど。



私の、もう1人のお姉ちゃん。・・・・・・最後の夢の時まで、あっけらかんとしてたな。


582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:39:15.32 ID:jWyG/GcGO


「………やー。また、さっきぶりに会ったね。……干物、いる?」


「・・・・・・いや、もういいって。・・・・・・それより・・・・・・・」


「・・・・・・機械の体に。・・・・・・改造、しなかったんだね」


「……あー。まあ、ね」


「どうして・・・・・・?」


「私。……やっぱさぁ、海が好きでさ」


「・・・・・・」


「海って。生身で潜ってこそだと思っちゃうんだよね!……古い、考え方だと思うけど」


「そんなこと、ないよ」


「・・・・・・。私も、そう思うよ」

583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:41:26.51 ID:jWyG/GcGO

「……ありがと。……じゃあ、わかるでしょ。……確かに、私。もう、よくないよ」


「機械に、なれば。……私、生きてけるのかもしれないけどさ」


「……やっぱ、皆に、生身で潜ってこそだよって言ってた身としてはさ!……貫き通したいんだ」


「・・・・・・頑固だね」


「……まあ、ね。……でも、体は固くないんだよ」


「なんなら、抱きしめてみてもいいよ?……こう見えて、柔らかくて気持ちいいって、評判なんだよ」


「・・・・・・だれからの評判だよ・・・・・・」


「……ん?もちろん!娘達とか、孫達とかからさ!」

584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:42:40.21 ID:jWyG/GcGO



「・・・・・・もう。家族の話ばっか、するんだから」


「……あはは。……いいぞ〜、家族は」


「わたし。……自分の体で、過ごせてよかったなって思える。……家族の、おかげでね」



「・・・・・・」




「……ゴメン。……こんな話、するべきじゃないって……〈あなた〉には、しちゃだめだって、わかってるけど」



「私にとっての家族は。……〈あなた〉も、そうだから」



「だから。……その、なんだろうな」


「……」



「・・・・・・大丈夫、だよ」



「……」



「もし、あなたが先に行っても。・・・・・・わたしは、ずっと、わたしのままだから」



「だから。・・・・・・心配、しなくても大丈夫だよ」


585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:43:48.92 ID:jWyG/GcGO



「…………そっか」




「うん。……安心したよ」


「じゃあ……。先に、行くね」



「・・・・・・うん」



「ありがと。……んじゃね」




「・・・・・・うんっ」





「……あ。そうだ」





「・・・・・・うん?」





「……や、やっぱ改めて言うとなると、その。……は、恥ずかしいけど。……その」


「……ハグ、しよ?」




「・・・・・・うんっ!」






そうして。あの人は、大好きな、海と家族に囲まれながら。


・・・・・・安らかに、眠った。
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:45:19.43 ID:jWyG/GcGO


「……ふぅ〜っ」



「・・・・・・お疲れ様です。住職さま」



「とっても素敵な説法でした。・・・・・・私、考えさせられました」



「……考え過ぎじゃないですか?」



「・・・・・・え?」



「……私、常々思っていたんです。……頑張り過ぎじゃないか、大丈夫ずらか……って」



「・・・・・・ずらか」



「……。そこには触れませんが。……一つ。貴女にこそ、話しておきたいことがあります」



「・・・・・・私にこそ?」



「はい。……『所詮人間は一人』……私が、先程お話した言葉ですが」


「きっと。機械の体をもち、生き続けるあなたにこそ、この言葉の意味がわかってしまうと思います」



「・・・・・・」


587 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:46:00.79 ID:jWyG/GcGO


「……いえ。……ちょっと、語弊がありますね。……機械だから、というところは間違いです」


「…………。〈あなた〉だからこそ。………全てを見届けようとする、貴女だからこそ。……先の言葉の意味、解ってしまう気がします」



「・・・・・・」



「……さきの言葉、私が考えるに……《逆》なんです」


「・・・・・・《逆》?」



「はい。……きっと、人間は」


「どんなに頑張っても、逃れられない。……思い出と、家族と。……友達との、……様々な、関係から」



「・・・・・・」



588 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:46:31.15 ID:jWyG/GcGO


「そこから、独立することが、出来ない。……独りになることへの、渇望」


「逃れられないからこそ、言い聞かせる必要がある。……独りなんだ、と」


「それこそが、悟りへの渇望なんです。……あらゆる関係性に、私達は、いつの間にか絡めとられてしまう」


「そのせいで、色んな煩悩に、私達は惑わされる。……執着を、する」



「・・・・・・」



「でも。……きっと、あなたは出来てしまう」


「執着から……逃れることが……」



「・・・・・・」



589 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:47:30.51 ID:jWyG/GcGO


「……色々なものを自在に変えられる存在。それが、今のあなたなんですよね」



「・・・・・・うん」



「……なら、いつか。……あなたは、誰にも絡めとられることのない……本当の意味での、独り≠ノなってしまうかもしれない」




「……わ、わたしは。……おらは……それが、辛い……」




「・・・・・・大丈夫だよ」



「………え?」



「だって。その時なら」


「《逆》も、あり得るかもしれないじゃん」



「……《逆》」



「・・・・・・私は、機械に近づいた人間だけど。・・・・・・もしかしたら、人間に近づいた、機械があるかもしれない」



「そしたら。・・・・・・きっと」



「わたし。友達になれるかなって思うんだ」




「……」




「だから。・・・・・・大丈夫だよ」






「……そうだよね。あなたなら、大丈夫だよね」



590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:47:58.26 ID:jWyG/GcGO


「…………。〈あなた〉なら。きっと、だいじょうぶずら!」



「・・・・・・うん!そうずら!!」



「……あ!真似した!」


「うん!真似しちゃった!?」


「バカにしてる!?」


「バカにしてない!!」


「そっか!」


「そうだよ!!」





・・・・・・お寺の。凄くきれいで、可愛くて、ちょっぴり食いしん坊な、かしこいあの人も。



気が付いたら。・・・・・・夢の中から旅立って、いった。




591 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:49:05.53 ID:jWyG/GcGO


そして。夢は、流れて。



・・・・・・あの人も、ついに・・・・・・



私を助けてくれた、あの人もついに。





「……これまで、ね」


「・・・・・・そうなの?」


「うん。……そうは、見えないと思うけど」


「うん。・・・・・・私より、キレイだもん」


「あはは……。サイボーグに、そんな言葉、通じないわよ」


「そう、なの・・・・・・?」


「そうよ。……ねえ、あのね?」


「うん・・・・・・?」




「ごめんね。……責任を、果たせなくて」




592 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:49:43.39 ID:jWyG/GcGO


「・・・責任・・・?」



「そう、責任。……私、責任があるの」


「……機械の、技術を。……発展させた、その責任が……」


「技術の発展は、確かに皆に便利をもたらした……」


「でも、幸せはもたらせなかった……」


「残したのは……不幸のほう……。だから……」



「・・・・・・。だから、〈あなた〉は生き続けたの?」



「自分を。・・・・・・機械の体にしてまでも。・・・・・・ムチャな、改造を自分にしてまでも」



593 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:50:19.87 ID:jWyG/GcGO


「……当然でしょ……?」



「わたしが、自分から受けなきゃ。……新しい技術があるんなら、私が、その被験者にならなきゃ」


「発展させた、張本人なんだから。……私が、受けなきゃ、いけないの」


「結果として。……皆の、存在意義は、見失われてしまったから……」


「皆を、見届けなきゃいけないんだから……」




「・・・・・・そうやって。自分を責めないでよ!」




「…………!!」



594 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:51:30.58 ID:jWyG/GcGO


「私は、感謝してるんだよ。・・・・・・私の命、長くしてくれた・・・・・・!」



「……」



「・・・・・・これ。あなたがくれた、ペンダントだよ・・・・・・」


「……まだ。持ってたんだ」


「当たり前だよ。・・・・・あなたの運転で見に行った、あの時の。・・・・・・皆の、9個の星があるんだからね」


「………」



「・・・・・・この写真、撮れたの。・・・・・・あなたの、お陰なんだよ・・・・・・」



「わたしが、あの日。・・・・・・交通事故にあって、手が・・・・・・」



「………」



「でも。・・・・・・あなたが機械の手を。・・・・・・本当に、人間そっくりな手を、くれたから」



「私の家族に・・・・・・姉妹に、触れられて。一緒に、大人になった私の写真を撮れたんだ」



「………」




「・・・・・・最期に。あの子を撫でられた」




「あなたの、おかげなんだよ」



「………そう」


「・・・・・・ん」




595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:52:24.50 ID:jWyG/GcGO


「………ねえ」



「・・・・・・ん?」



「わたし、頑張ったのかな……?」




「え・・・・・・」




「………わたし、頑張れたのかな……?」







「・・・・・・頑張ったよ。・・・・・・誰よりも、頑張った」



「………そう。……よかっ、た」



「・・・・・・」



「でも。……わたしより、もっと頑張っちゃう、〈あなた〉を、残していくのは、心配だよ……」




「・・・・・・」


596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:53:11.60 ID:jWyG/GcGO

「わたしなら、大丈夫、・・・・・・一緒にいてくれる、人がいるから」


「……ふふっ。そうね。誰よりも、善い子がいるもんね」




「……そ、れで。……本当に、見届けるつもりなの?……最後まで……人間の……。生末、を」




「・・・・・・うん。・・・・・・あなたに代わって、やり遂げるよ」




「そう……。そうよね」


「あなたは、そういう人だもんね……」



「……ありがとう」



「・・・・・・うぅん」





「……。じゃあ……私は、先に、皆に会いに行くね」



「うん。・・・・・・ありがとう」



「こちらこそ。……また、ね」










そう言って、誰よりも仲間を愛した彼女は。


一足先に、仲間の元へと旅立って行った。



597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:53:50.61 ID:jWyG/GcGO





「はぁ。……もう、意地っ張りなんだから」


「私の周り、皆そう。……自分が辛くても、周りに見せようとしないで、耐えて耐えて、歯を食いしばって前に進んでいく人ばっかり」



「……少しは。……仲間に頼って、任せればいいのに」



「……〈あなた〉もそう思わない?」







ぶっきらぼうな口調で、愚痴を言っているのは。


私と同じ時期に、機械の体になった。サイボーグの、女の子だ。





598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:54:46.84 ID:jWyG/GcGO



「・・・・・・ホントだね」



「でも、〈あなた〉の言うことじゃないと思うよ。・・・・・・こんな、ムチャして・・・・・・」



「サイボーグと、アンドロイドの戦いを止めちゃったんだからね」




「……」




「知ってる?『天使』って呼ばれてるんだよ。・・・・・・羽を生やしたり、無茶苦茶な改造をして、一番人間離れした姿になって」


「でも、最後は、人間の姿になって。争いを、止めるように訴えた、〈あなた〉のこと。・・・・・・皆、『天使』だって」



「……なんにもわかってないじゃない、それ言ってる連中は」


「私は、カッコイイ羽を泣く泣く取って、地上に舞い降りたのよ。……そんな存在は、天使じゃなくてむしろ、《逆》の存在でしょ!」



「・・・・・・《堕天使》・・・・・・?」



「そういうこと!……流石に、よくわかってるじゃない、リトルデーモン?」


「いや違うけど」


「否定早いな!」


599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:55:30.00 ID:jWyG/GcGO



彼女とは、ずっと一緒にいた。




長い、長い、時を。気の遠くなるような道のりを。




私たちは、共に歩んできた。




意外と言えば意外かもしれない。・・・・・・まさか、彼女と過ごした日々が、一番長くなるなんて。






近い寿命を持って。サイボーグという存在で。












・・・・・・これからも、ずっと一緒にいれると思っていた。









600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:56:34.33 ID:jWyG/GcGO


「・・・・・・そうやって、誤魔化そうとして。やっぱり、人のこと言えないね」



「…………だって」



「本当に辛いのは、〈あなた〉のはずじゃない……」



「・・・・・・」



「辛いのに、頑張って。頑張って頑張って。……いつもどーでもいいことで泣いたりするくせに、一番大事なことは、辛くても、笑って何とかしようとする」




「……機械になってでも。……輝き≠見届けようとする」




「自分たちにしか、出来ないことなんて。もう、あり得なくなった」


「何でも、真似ができる。……どんなものも、それだけにしか出来ないことは、なくなってしまったこの時で」


「それでも、生きる意味≠見出そうとする存在がたった一つでもあるなら。……その姿を、見届けたいだなんて」




「・・・・・・」



601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:57:07.73 ID:jWyG/GcGO


「……せっかくの機械の体なんだから、もっと楽しいことに使ったらいいのに」


「ただ、耐えて、見届けるために、生き延びるために、手に入れるようなものじゃないでしょ?」


「……あなたも。……『理事長』も。……皆、意地っ張りなんだから……」


「サイボーグになるのは意地っ張りって、相場が決まってるのかしら」



「・・・・・・それを言ったら〈あなた〉だってそうじゃん」


「私は、別に……。ただカッコイイと思ったから、こうなったってだけよ」


「ツバサを生やせるなら。……やっちゃおうって、気になるでしょ?」



「・・・・・・」



「……。何とか言いなさいよ」


602 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 11:57:57.71 ID:jWyG/GcGO


「……」



「確かに、人間そっくりな手になった。・・・・・・でも、やっぱり、怖かった」


「部分的にでも、機械になった私を・・・・・・。皆が、受け入れてくれるのか・・・・・・」



「…………」



「あの人と、あなたは。・・・・・・ほとんど、同じ時期に、サイボーグになったよね」



「…………」



「・・・・・・私のため、だったんだよね」



「…………」



「私が、奇異の目で見られないように。・・・・・・私一人だけ、孤独な思いをしないように」



「私を、受け入れるために。・・・・・・やってくれた、ことなんだよね」



603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:02:42.43 ID:jWyG/GcGO



「・・・・・・私がこの体になっていった、キッカケの、あの時のことだよ」


「・・・・・・あの時。あなたは、どこも悪いところがないのに、サイボーグになった……」



「……さあ。どうだか。[証拠]もないのに、よくそんな恥ずかし気なこと、言えるわね」



「・・・・・・[証拠]は、あるよ」


「……どこに……ってうわぁ!急にくっつかないでよ!」



「・・・・・・目の前に、だよ」



「……え?」


「だって。顔に出るんだもん。・・・・・・あなたって」




「……。私の、表情が、そんな、表情をしていたとでもいうの?」


「そうだよ」



「……あり得ない。……私は、サイボーグ。……顔の表情も、それを形作る元々の感情ですらも、パラメーターとして、制御できる」



「だから。……きっと、見間違いよ」


604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:03:28.04 ID:jWyG/GcGO


「・・・・・・じゃあ。・・・・・・音だったら・・・・・・・?」



「………音?」



「あなたの胸に。響いている、この音・・・・・・。あなたの鼓動の、音」



「優しい音。・・・・・・あなたの、音。・・・・・・すっごい、バクバクいってるけど?」



「……う」



「どうして、こんなに怖がってるの・・・・・・?」









「……だって」




「だって。あなたを、置いていけない。……もう、終わりだなんて思いたくない」




「・・・・・・」



605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:04:51.41 ID:jWyG/GcGO


「ごめん……」



「・・・・・・え?」















「ごめん。あなたとずっと一緒にいられなくて」
















「・・・・・・」





606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:05:49.58 ID:jWyG/GcGO


「・・・・・・ありがとう」



「え……」



















「わたしとずっと一緒にいてくれて、ありがとう」



















607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:06:57.92 ID:jWyG/GcGO


「……う。うぅううぅぅ!」



「・・・・・・ゥ」



「ばかっ!……ばかぁ………!!」



「・・・・・・グスッ」




「そんなの、《逆》よ!!わたしの方が……ずっと一緒にいてくれて、ありがとうよ!!」



「わたしを、受け入れてくれて……!!……ありがとう、なのに……!」




「・・・・・・ごめん」


「だから!こっちがごめんだってば!」


「・・・・・・ありがとう」


「だからぁ!……こっちがありがとうだって!」





「・・・・・・終わんないじゃん・・・・・・」



608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:07:46.34 ID:jWyG/GcGO



「いいの!終わんなくていいの!……ずっと、ずっと続けばいいの……」



「・・・・・・ずっと、続けるの?」



「ずっと。……そしたら、ずっと、一緒にいれる」














「ずっと。……わすれな、い……」













「・・・・・・っ」




609 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:08:30.90 ID:jWyG/GcGO




「ねえ。……私でも、よかったの……?」





「・・・・・・え?」





「わたしでも……よかった、の?」





「・・・・・・〈あなた〉で。よかったよ」











「……そう」



「………よかった」




610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:09:29.17 ID:jWyG/GcGO




「・・・・・・ねえ?」





「……」





「・・・・・・ねえっ!」





「………」






「・・・・・・。ねぇ」







「…………」







「・・・・・・・・・ッ!!」



「・・・」




「・・・・・・」


611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:10:25.94 ID:jWyG/GcGO






「・・・・・・。ずっとわすれない」







「わすれないよ。でも。・・・・・・・やっぱり」




「やっぱり。・・・・・・いや」





「いやだよ」


「いやなんだってば」


「いやなんだよ」













「・・・・・・いや、だ」






612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:11:13.14 ID:jWyG/GcGO



「いやだ。・・・・・・いかないで!」




「わたしと。ずっといっしょにいて・・・・・・!!」






「わたしを・・・・・・一人にしないでよ」








「わたしと、いっしょにいてよ・・・・・・!」















「よ、・・・・・はね、ちゃん・・・・・・」

613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:13:08.53 ID:jWyG/GcGO



「・・・・・・」






「・・・・・・・・・・・・」










「…………」




「……。……ちがうわよ。わたしは、よはねじゃなくて」




「・・・・・・っっ!!」










「わたしの、なまえは…………」










「……………」












堕天使は。それはそれはキレイな姿で。


私の大好きな、姿のまま。


天使に戻って。・・・・・・天に、帰っていった。



614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:14:13.09 ID:jWyG/GcGO




・・・・・・それからも。私は一人で、輝き≠見続けてきた。





長い、長い時を。旅してきた。




いつのものだっただろう、だれのものだっただろう?




[記録]には残っているはずのものが。だんだん、記憶≠ゥら消えていった。










それでも、ずっとおぼえていることがある




あれは・・・・・・だれだったんだろう?








誰のものかわからない、言葉と歌が、でも、ずっと残っている。








615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:15:02.76 ID:jWyG/GcGO



「どうして、歌を歌い続けているんですか」




「・・・・・・好きだから、かな」




「好きだから・・・・・・」





「それに。・・・・・・歌を歌ってるとね、本気で思えるんだ」







「いつだって飛べる。あの頃のようにって」








「・・・・・・飛べる・・・・・・」


「あなたも、そうじゃないかな?」


「・・・・・・そう、ですね」


「あなたは、見届けるつもりなんだよね。・・・・・・皆が、どこに行き着くのか」


「・・・・・・はい」


「そっかぁ。・・・・・・タイヘンだね」


「・・・・・・はい」


「でも、挫けないでね。私、応援してるよ」







「・・・・・・ファイトだよ!」







「・・・・・・はい!」



616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:15:51.23 ID:jWyG/GcGO





・・・・・・ながい。ながい、じかんをかけて。





ながい。ながい、ゆめを。・・・・・・ながいゆめを、みてきた・・・・・・。





そして、そのゆめのさいごには。





[記録]に残っていない、記憶≠ノしかなかった、あの日々が。









・・・・・・輝き≠目指した、あの日々が。
















私の目の前に、広がっていたんだ。






617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:16:43.26 ID:jWyG/GcGO



……ヵ、……ヵっ!



……ちかっ!……ち……ちかっ、ちゃん……!





ちか!ちかちゃん!……ちか!!!






「……ぁ、れ……?」








善子「千歌!!」



千歌「……ぇ……?」










目が覚めた時。そこは、知らないんだけど知っている……。


いつもの、風景が。


でも、目覚めたら。


違う朝が、笑いかけていた。




618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:17:35.76 ID:jWyG/GcGO



果南「よかった。……ようやく、目が覚めたんだね」


千歌「え、ええっと……。ここって……」


鞠莉「……まだ、寝ぼけてるの?」


千歌「……いや。……うん、そうかも」


ダイヤ「……大丈夫ですの?」


千歌「え?……何が……?」


ルビィ「……千歌ちゃん。泣いてたんだよ」



千歌「……ぇ?」








言われて、ようやく意識した。



自分の……私の、ことを。



私の頬には、つぅっと、垂れているものがあった。



冷たくて。でも、暖かい。……水の、跡が、ここにはあった。




619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:19:10.11 ID:jWyG/GcGO

千歌「……そっか。……私、泣いてたんだ」


善子「……そんなことにも気づかなかったの?……まったく、心配させないでよね」


千歌「しんぱい……?」


善子「あっ。えっと、その。それは、何というか……」



花丸「善子ちゃん、千歌ちゃんが起きなくて、急に千歌ちゃんの目から涙が出てくるものだから、すごくうろたえてたんだよ」


花丸「悪い夢でもみてるんじゃないかーって」

善子「あ、ちょっ、ずら丸!何てこと言うのよ!」

ルビィ「……照れなくてもいいのにぃ」


善子「……う、う。うるさーい!!」




千歌「あはは……」












元気な1年生たちを見ながら、私は自分の記憶≠思い出していた。


……そうだ。昨日、2人で合宿の続きをしてたんだけど、私が何も思い浮かばなくて。



結局、皆を巻き込んで。急遽みんなで合宿をすることになったんだ。





あーでもない、こーでもないって言いながら……それでも、皆で一つのものに辿り着いたんだ。







620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:19:54.63 ID:jWyG/GcGO


千歌「……うぅん。でも、いい夢だったなぁ〜」


曜「……千歌ちゃん。どんな、夢だったの?」

千歌「うん?」


曜「……泣いてたけど。でも、良い夢だったんだよね?」


曜「……それって、どんな夢?」


千歌「……ああ、えっとね」


千歌「あんまり思い出せないんだけど……」






千歌「……私に、そっくりな人が出てきたの」



621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:20:37.45 ID:jWyG/GcGO



千歌「その人は、頑張って、頑張って。……色んなものを見続けて、頑張って頑張って」





千歌「いっぱい辛いこともあったけど。いっぱい、幸せだった」






千歌「最後に……夢の中なのに、夢を見てて」




















「私の背中を、押してくれた」















「……そんな、夢」






622 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:21:17.30 ID:jWyG/GcGO



「……それって、もしかしたら」




千歌「……?」





梨子「未来のあなたが知ってることなのかもね」




千歌「……未来の……」





623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:22:08.20 ID:jWyG/GcGO




・・・・・・そう・・・・・・














未来の僕らは知ってるよ













・・・・・・だから・・・・・・




624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:22:52.08 ID:jWyG/GcGO



「本気で駆け抜けて、ね?」







「私、見届けるよ。だから・・・・・・」












千歌=u夢をつかまえにきてね!!」







625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:23:44.21 ID:jWyG/GcGO


おしまい


626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/06(土) 12:28:16.54 ID:jWyG/GcGO
酒飲みながら書くとこういう冗長で不可解なものが出来上がってしまう。

こんな拙い文章でも、もし読んでくれた方がいたとしたら、その方には心よりお礼申し上げます。
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/06(土) 20:50:19.50 ID:mgQExjaWO

感動した
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/07(日) 01:16:07.32 ID:KQNCRl690
大切な仲間達との別れから始まった旅路、それを終わらせてくれたのも大切な仲間達。色々と考えさせられるなぁ
あ、乙です
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/17(金) 13:03:55.24 ID:CmZ2xfIdO
何が書きたいのかさっぱり分からない
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