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梨子「未来のあなたが知ってるね」
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330 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:02:44.93 ID:UAEVXW1PO
ダイヤ「こ。これは……。どういう……」
果南「……曜。自分が何を言ってるのか、わかってるの?」
曜「……。うん。わかってるよ」
果南「……曜!」
曜「私……」
千歌「・・・曜ちゃん」
曜「ごめん、千歌ちゃん。……私だって……!」
曜「私だって、千歌ちゃんを信じてる!でも……!」
曜「……でも。だからこそ……」
曜「千歌ちゃんに、はねのけて欲しい。……私の、ちっぽけな疑いを……」
曜「千歌ちゃんを、心の底から信じるために……!」
梨子「……!」
331 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:03:42.18 ID:UAEVXW1PO
曜「……私、大好きだよ。千歌ちゃんのこと……」
千歌「・・・・・・」
曜「だからね!……だからこそ!……だからこそ、梨子ちゃんと同じ立場を選ぶ」
曜「私、梨子ちゃんのことも。大好き、だから……」
梨子「……!よう、ちゃん……!」
曜「……大好きな二人を信じたいから。梨子ちゃんが千歌ちゃんを信じるために、あえて疑うのなら」
曜「……私だって。その先を、見て。……千歌ちゃんを信じたい」
善子「……」
鞠莉「曜……」
332 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:04:29.15 ID:UAEVXW1PO
花丸「……こんなの。こんなの、おかしいずら……」
果南「……花丸?」
花丸「疑って、信じる?信じるからこそ、疑う?わかるよ……わかるけど!でも……」
花丸「わけが、わからないよ……」
鞠莉「……」
曜「……」
花丸「おら。……おら、どっちの立場にも立てない」
ダイヤ「……あえて言うならば。中立を選ぶ、ということですね」
花丸「……うん」
善子「花丸……」
鞠莉「……それも、立派な選択だと思うわよ」
花丸「……ルビィちゃんは……どう?」
ルビィ「……私は」
333 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:05:08.02 ID:UAEVXW1PO
ルビィ「私は、私も梨子ちゃんと同じ。……さっきはああも言ったけど。……自分のデザインに自信を持たなきゃって思うし……」
ルビィ「……千歌ちゃんに疑いの余地がある以上。……追求しなきゃいけないと思う」
ダイヤ「……!」
梨子「……!」
善子「……そう」
花丸「ルビィちゃん……」
ダイヤ「……ルビィ」
果南「ダイヤ。どう……?」
334 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:06:14.41 ID:UAEVXW1PO
果南「これで、立場を決めてないのは私らだけになったわけだけど。……ダイヤは?どうするの?」
ダイヤ「……わたくしは……」
ダイヤ「……。わたくしは、中立に立ちます」
花丸「ダ。ダイヤさん……!」
ルビィ「お姉ちゃん。……なんで?」
ダイヤ「……正直なところ。わたくしには信じられません。未来からのタイムスリップがあり得るだとか、入れ替わりが行われているだとか……そういった、非現実的な可能性を。しかし……」
ダイヤ「ルビィがデザインの勉強をしていること、色々なものを作っていること。その頑張りを、わたくしは知っています」
ダイヤ「そのルビィが、未来の可能性を示した。……ならば、検討の余地は、あるように思うのです」
ルビィ「お姉ちゃん……」
ダイヤ「それに。鞠莉さん、善子さんが指摘したように……可能性の議論は、慎重に行わなくてはならない」
鞠莉「ダイヤ……」
ダイヤ「二つの立場を成り立たせるためには、どちらかに偏ることのない人間が必要です」
ダイヤ「……ほら。生徒会長でスクールアイドルである、クールなわたくし。……この、判断力が必要でしょう?」
ダイヤ「その責任を果たせるのが……わたくしだというだけです」
335 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:07:06.50 ID:UAEVXW1PO
ルビィ「……おねぇちゃん」
善子「……そりゃ、生徒会長かもしれないケド。クールなんて、言えるの……?」
鞠莉「『かも』じゃなくて、ちゃんとダイヤは生徒会長よ。……クールかどうかは、ベツだけど……」
ダイヤ「うるさい!そういうことは黙っておくのがスジってものです!」
果南「ダイヤ……」
ルビィ「おねぇちゃん……」
ダイヤ「……ゴホンッ!……そういうわけですから。後は、果南さんですわね」
果南「……」
曜「果南ちゃん……。果南ちゃんは、どうするの?」
梨子(……果南ちゃんは、千歌ちゃんとの付き合いは、一番長い)
梨子(実際、果南ちゃんは千歌ちゃんの微細な違和感にも気付いていた……)
梨子(だったら……)
果南「……」
果南「……っ」
336 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:07:51.86 ID:UAEVXW1PO
果南「……。私も」
ダイヤ「……果南さんも?」
鞠莉「果南も?」
梨子「……」
果南「……私も。ダイヤと花丸と、一緒だよ」
曜「なっ……!」
梨子「な……!」
善子「なんで……!」
千歌「・・・。果南ちゃん」
花丸「……果南ちゃんは、ずっと千歌ちゃんを見てきたんだよね?だったら、どうして……」
337 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:08:51.87 ID:UAEVXW1PO
果南「……ずっと見てきたからだよ」
花丸「……!」
曜「……果南、ちゃん」
果南「ずっと見てきたからこそ、私には……。千歌をちゃんと見届けなきゃいけない。そういう、責任がある」
鞠莉「……!」
ダイヤ「……!」
千歌「!・・・・・・」
梨子「果南ちゃん……」
果南「ホントはさ。千歌に味方したいよ。でも、今≠フ千歌がちょっとヘンだって思ってる自分もいる」
果南「ただね。曜や梨子みたいにさ。……親友を想うからこそ、徹底的に向き合うって覚悟も必要だけど……」
果南「……どんなものであっても。結論を受け入れる、覚悟。それを持った人だって、必要だと思う……」
鞠莉「……か。果南……」
ダイヤ「果南、さん……」
338 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:09:42.01 ID:UAEVXW1PO
果南「千歌じゃないけど、それを私が言うか!って感じだけどね。……だからこそ」
果南「物凄く千歌の味方したいけど。私は、Aqoursの味方にならなきゃいけないんと思うんだ……!」
千歌「・・・・・・果南ちゃん」
果南「……ゴメン、千歌」
千歌「・・・ううん。・・・それでこそ、だと思うよ」
千歌「それでこそ。私の知ってる、私が凄いと思う果南ちゃんだよ」
果南「ち。千歌……!」
曜「……」
梨子「……」
ダイヤ「……。これで。決まりましたね……」
ダイヤ「それぞれの……立場が」
339 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:10:47.91 ID:UAEVXW1PO
花丸「……改めて考えると」
花丸「これって。おら達の、ユニットと同じ組み合わせだよね……」
善子「……!」
ルビィ「……!」
果南「……た。確かに……」
鞠莉「中立なのは、AZALEA。疑いを否定するのは、Guilty Kiss。そして……」
曜「信じるために疑うのは、CYaRon!。……そうも、言えなくはないかも」
梨子「で、でも!」
梨子「私はギルキスのメンバーなのに……2人は、《逆》の立場だよ!?」
花丸「あ……!」
果南「……千歌と、梨子だけが。……《逆》ってわけか……」
340 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:12:41.28 ID:UAEVXW1PO
梨子「ちょっとは、味方してくれてもいいと思うんだけど……」
善子「……そんなこと言ったら。千歌だって、味方になって欲しいはずよ」
梨子「う……!」
ルビィ「……」
千歌「・・・」
善子「ユニットの仲間のはずなのに、千歌はその二人に疑われている。……こんな、《逆》」
善子「千歌が、一番かわいそうじゃない!」
梨子「……う」
善子「そんなことも気付かなかったあなたはねぇ!」
善子「もう、上級リトルデーモンリリーじゃない!……ただの、桜内梨子なの!」
梨子「うわあああぁぁあぁあぁぁぁぁあ!」
341 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:15:06.19 ID:UAEVXW1PO
梨子(な。なんだか……)
梨子(善子ちゃんにリリーとか言われるのあんまり好きじゃなかったはずなのに。得体のしれないショックを受けている自分がいる……!)
曜「……で。でも……!」
曜「信じるために、疑う。……その重みを背負ってない善子ちゃんが、何で千歌ちゃんのことをどうこう言えるっていうの!」
善子「!……ぬ、ぐ……!」
梨子「よ、曜ちゃん……」
曜「善子ちゃんこそ!……そうやって《逆》を振りかざすの、どうかと思う!」
善子「……う、うぅ!?」
曜「これ以上、そんなこと言うなら……」
曜「もう。バスの中で隣になっても、喋らないよ!!」
善子「……ぐ。ぐぅぅくぅ!!」
ルビィ「ひ。酷い……」
花丸「……善子ちゃんはどれだけ仲良くなったとしても、タイプの違う先輩に自分から話しかけて盛り上げるなんて無理ずら。なのに、そんなこと言ったら……」
果南「せっかく仲良くなってたのに、善子と曜が気まずくなっちゃうね……」
梨子「……善子ちゃんの今後が、心配ね……(また、引き籠る恐れも……)」
342 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:15:59.84 ID:UAEVXW1PO
ダイヤ「……そこまで!」
ダイヤ「今大事なのは、千歌さんを巡って仲違いをすることじゃありませんわ!……千歌さんをどのように信じるか、ではありませんの?」
善子「……!」
曜「!……」
千歌「・・・ダイヤちゃん」
ダイヤ「……わたくしたちの目的は、千歌さんの敵味方を区別することではありません」
ダイヤ「千歌さんを信じられないとしたら、どうしてそうなのか。……千歌さんを信じるなら、なぜ疑いを否定するのか」
ダイヤ「それを、明らかにするのが。……わたくしたちの目的ですよね?」
曜「う……」
ダイヤ「千歌さんも言っていましたが……。一見《逆》に思える行為でも、実際にはそうではないのです」
梨子「……(《逆》に思えるけど、実は”そうじゃない”、か……)」
善子「……」
343 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:19:03.31 ID:UAEVXW1PO
ダイヤ「……それと、個人的には。……じもあいコンビが仲違いを起こすのを見るのは、イヤです」
善子「……ごめんなさい」
梨子「……さ。流石だ……」
千歌「・・・すぐにケンカを終わらせちゃったね」
花丸「ある意味、一番中立になってくれてよかった人ずらね……」
344 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:20:13.81 ID:UAEVXW1PO
果南「……帰りのバスが気まずくなるのを防いだところで。そろそろ、本題に入ろうよ」
鞠莉「……そうね」
梨子「本題……」
ダイヤ「……本題というのはモチロン。千歌さんへの疑いを、議論するということです」
ダイヤ「今、千歌さんにかかっている疑いは大きく分けて2つ。……入れ替わりと、未来人であるかどうか」
曜「……」
善子「改めて聞くと……。ますます、ありえない疑いね……」
ダイヤ「……したがって。私たちは、次のことを問題にしなければなりません。……すなわち」
ダイヤ「入れ替わりなどということが出来るのか?出来るとしたら、どうして出来るのか?」
ダイヤ「未来から来る……そんなSFのような可能性があったとしても。なぜ、未来から来る必要があったのか?」
ダイヤ「いや、そもそも未来から来るなんて言うことが可能なのか?……それらを、わたくし達なりに、納得の出来る形で、話す必要があります」
鞠莉「何度も言っていることだけど。[証拠]がないから、全て私達のオクソクで話すしかない」
鞠莉「……あえて言えば。私達1人1人の言葉こそが、[証拠]と同様の役割を果たす」
善子「……無理難題なんてレベルじゃないわね」
花丸「……たくさんの学者さんが集まっても、結論が出ないような話ずら……」
果南「わかるわけないじゃんって、感じだけど。……私たちなりに、答えを出さなきゃだよね」
千歌「・・・・・・」
345 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:21:27.20 ID:UAEVXW1PO
果南「……で?……話の順番はどうするの?」
ダイヤ「そうですね。……問題は、この議論が。可能性……それも、想定の可能性を巡る議論であることです」
ダイヤ「これは、どれだけ難しくても、納得が出来る限りあらゆる可能性を認めることでもあります」
ダイヤ「……見方を変えると。ここで求められるのは何故可能なのか、あるいは何故不可能なのか。可能であるための条件や、不可能であるという根拠こそが最も重要なものになります」
ルビィ「……根拠」
ダイヤ「納得には、根拠が必要です。……誰もを、ではなく……」
ダイヤ「……わたくしたち、全員を。……納得に導く、根拠が……」
千歌「・・・・・・」
梨子「……」
346 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:22:09.54 ID:UAEVXW1PO
ダイヤ「よって。まずはその可能性について検討するのが最重要だと考えます」
ダイヤ「そして……その可能性を実現する方法があり得るのかを議論するというのはいかがでしょうか」
ルビィ「出来るか出来ないかの条件を最初に考えるんだ……」
鞠莉「……ダイヤ。要求がベリーハード、ね」
ダイヤ「それは……しかし……」
曜「でも、確かにダイヤさんの言う通りだと思う。条件をちゃんとわかってなきゃ、何を基準に考えればいいか、わかんないし……」
ダイヤ「……曜さん。ありがとうございます」
347 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:22:46.93 ID:UAEVXW1PO
ダイヤ「……そこで。まずは入れ替わりの可能性について話を進めようと思いますが、構いませんか?」
鞠莉「……」
善子「異議なし、ってところね……」
曜「……」
ルビィ「……私たちも」
梨子「……そうね。話す準備は、出来てるわ」
千歌「・・・・・・」
ダイヤ「……わかりました」
ダイヤ「では、始めましょう。……入れ替わりが、本当に可能なのかについて」
ダイヤ「皆さんの考えを、聴きたいと思います……!」
348 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:23:26.17 ID:UAEVXW1PO
梨子「……(遂に、始まった……)」
梨子(信じるための追及を……皆と一緒に、行う時が)
梨子(ゼッタイ、答えなんて出ないはずの問題だけど……なんでだろう)
梨子(何故だか、わからないけど。予感がある……!)
梨子(この話を進めた先には。必ず、何かがある……そんな、予感が!)
349 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:24:01.20 ID:UAEVXW1PO
ダイヤ「何か、考えを述べたい方はいますか?」
ダイヤ「あれば挙手するように!……さぁ、発言したい方はいないんですの?」
花丸「……学校の先生みたいずらね」
曜「……まぁ、そういう見解もあるね」
善子「……若干拍子抜けよね。なんか場の雰囲気にそぐわないような問いかけというか」
曜「……そういう見解はあるね」
花丸「ずら……」
梨子「……(この三人……)」
350 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:26:20.83 ID:UAEVXW1PO
梨子(せっかく人が気合を入れていたというのに……茶々を入れるんじゃないの!)
ダイヤ「せっかく人が気合を入れてるというのに。茶々を入れるんじゃありません!」
花丸「あっ、はい……」
曜「スミマセン……」
善子「恐縮です……」
梨子「……(私が怒るまでもなく、怒られたわね……)」
351 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:27:05.27 ID:UAEVXW1PO
鞠莉「……。茶々を入れがちな三人は置いといて。私から、話してもいいかしら?」
ダイヤ「……コホンッ。わかりましたわ……」
ダイヤ「では、鞠莉さん。考えを述べてください」
鞠莉「そもそも、入れ替わりをするためには容姿が似ている人間が必要よね?」
花丸「まぁ……そうなるね」
鞠莉「ということは、千歌に似ている人間さえいれば入れ替わりを主張すること自体は不可能じゃないと思うの」
善子「……!ま、鞠莉……?」
ダイヤ「……確かにそうですわね」
352 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:27:49.02 ID:UAEVXW1PO
鞠莉「けどさ。似ているって言っても、色んな似方があるよね?」
ルビィ「似方……?」
鞠莉「そ。顔が似ているのか、雰囲気が似ているのか、スタイルが似ているのか」
鞠莉「どれか一つだけが似ているって人は五万といる……とまでは言い切れないけど。でも、頑張れば結構カンタンに見つけられそうよね?」
果南「……なるほどね。つまり、こういうことか」
果南「入れ替わりの根拠は、似ているかどうか。……それも、一つの部分じゃなくて、全体として似ていなきゃ入れ替わりなんて出来ない」
曜「……もし、入れ替わりが起こっているとすれば。全部、似てなきゃいけない……」
鞠莉「そうよ。……けど、例え全てが似ていたとしても、入れ替わりは出来ないと思うの」
ルビィ「な、なんで?……全部が似ているなら、頑張れば出来そうなのに……」
353 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:28:32.92 ID:UAEVXW1PO
鞠莉「簡単よ。似ているを超えて、同じじゃなきゃいけない要素があるからよ」
ルビィ「……あ」
ダイヤ「似ているでは誤魔化しきれないものがあると?」
鞠莉「ええ。……そもそもいくら顔が似ていたとしても、背丈が違ったら入れ替わりなんて不可能でしょ?」
花丸「……なるほど。体格は、ちょっと似ているってだけじゃ誤魔化しきれないものがあるずらね」
果南「でも、マルやルビィぐらい小さかったのが急に伸びたらともかく、ちょっとだけだったらパッと見じゃわからないよね?」
曜「……それはないよ、果南ちゃん」
果南「え、曜?……あ。そうか……」
曜「そう。衣装のサイズを合わせるために、皆の身長はその都度測らせてもらってるから……」
ルビィ「その数値が違ったら、すぐ曜ちゃんやルビィがわかるはずだもんね……」
曜「でも、つい最近測った時も千歌ちゃんの身長に変化はなかった……」
梨子「……」
354 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:29:40.94 ID:UAEVXW1PO
花丸「……一端鞠莉ちゃんの話を整理しようと思うんだけど。……いい?」
善子「……いいわよ」
曜「同じく……」
花丸「ありがと。……鞠莉ちゃんの言った通り。入れ替えは、全部が似ていないと成立しないずら」
鞠莉「その通り。……よくわかってるわね、花丸」
果南「……よくわかるように言い換えたのは私だけどね」
花丸「でも、もっと突っ込むと。……鞠莉ちゃんの主張で重要なのは”変更”の条件ずら」
ルビィ「変更……」
355 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:30:20.43 ID:UAEVXW1PO
花丸「”似せる”という言葉があるように。……やり方次第では、《同じ》に近づくことが出来る」
花丸「言い換えれば、”似る”こと自体は、不可能じゃないということ」
花丸「例えば、顔だったら……。似せる方法は、ある」
ダイヤ「……顔は、変えられる。したがって、入れ替わりを否定する条件には、必ずしもならない」
ダイヤ「……そういうことでしょうか」
花丸「そうずら。……それを踏まえた上で入れ替わりの条件をとりあえずで挙げてみると……」
356 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:31:21.78 ID:UAEVXW1PO
花丸「一つは、容姿が似ていること。もう一つは、性格が似ていること」
花丸「性格の方に関しては触れてないけど、少なくともこの二つは似せることは出来る。……つまり、ある程度”変えること”が出来る」
善子「なるほどね。……どれほど似ていても。……もし、入れ替わったのだとしたら、たくさんの違いが出てくるはず」
果南「……体力の違いとか?」
鞠莉「歌声の違いも、出てきそうね」
曜「……でも、それも変えられるという意味では、なんとか出来そうな話。……それに対して……」
花丸「……更にもう一つ。……体格は、どうずらか」
曜「……」
ルビィ「……体格は、誤魔化しようがない。……衣装を作る時、絶対に《測る》ものだから……」
花丸「……そう。スクールアイドルだからこそ、少なくとも体格に関しては、似ているだけじゃなく、《同じ》だと断言できなきゃいけない」
ダイヤ「つまり……。Aqoursでいる以上、体格が違った場合は、入れ替わりという行為が《不可能》になる……」
ダイヤ「なぜなら、衣装を作る際に、その変化に気付かないことは考えられないから……」
善子「同じかどうかは別として。他の要素だと、もし物凄く似てたら変化しているという確証は持てないわね……」
ダイヤ「しかし……同じでなければならないもの。変化した場合、必ず発覚するようなものがある場合」
曜「……入れ替わりは、あり得ない」
花丸「……そういうことになるずら」
357 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:32:02.29 ID:UAEVXW1PO
ダイヤ「……わかりました。では、他に何か……条件は、あるでしょうか?」
ルビィ「体格以外で間違えようがないもの……」
梨子「……」
果南「……体格より先に出ると、思ったんだけどね」
梨子「……か。果南、ちゃん……?」
果南「あるよ、条件。……私の思う限りではだけどさ」
ダイヤ「……一体、なんでしょうか」
果南「決まってるよ。……記憶=c…だよ」
ルビィ「!」
花丸「!」
千歌「・・・・・・」
鞠莉「記憶=c…」
358 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:32:49.52 ID:UAEVXW1PO
果南「うん。……そりゃモチロン、ある程度誤魔化しようがあるとは思うよ?誰かから聞くとか、何かの方法で知りさえすればその通りに振舞うこと自体は出来るし」
果南「でも、例えば。私しか知らない千歌の秘密があったとして。……入れ替わった人は、それを持っているように振舞えるのかな」
梨子「……!」
善子「……確かにね。何らかの方法で、知ることが出来れば、話は別かもしれないけど……」
花丸「そもそも2人だけの秘密を知る手段があるとは、考えにくい……」
曜「……記憶≠ノ関しては、それだけじゃないよ」
梨子「よ。曜ちゃん……?」
曜「……さっき、性格の話がちょっと挙がってて……性格も、似せられるって花丸ちゃんは言ってたよね」
花丸「う。うん……」
曜「……私も、そう思うよ。例えば、この人だったらこういうこと言いそうだなぁとか、こういうことやりそうだなぁってこと、真似するのって出来なくないと思うし……」
曜「けど……”しそうなこと”と、[しちゃうこと]は違うと思うんだ……」
359 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/05(金) 20:33:47.46 ID:UAEVXW1PO
花丸「しちゃうこと……?」
曜「例えば。……本当はやめようと思ってるけど、つい出ちゃう口グセとか」
ルビィ「ピッ……!」
花丸「ずらっ!」
善子「……耳の痛い話ね」
曜「例えば……自分でもわかってなくて、周りにもバレてないんだけど……すごく近くにいた人にだけはわかるクセとか」
鞠莉「……」チラッ
果南「……」チラッ
ダイヤ「……。なんですの。2人とも……」
果南「……いや」
鞠莉「……曜の言ってること、わかるってだけよ」
ダイヤ「……?」
梨子「曜ちゃん。……つまり、曜ちゃんは、クセも、似せることが出来ないものだと言いたいのね?」
360 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 07:45:22.51 ID:jWyG/GcGO
曜「……そうだよ。クセはそう簡単に、真似の出来ないもの」
曜「それに、何より。周囲がすぐ気付いちゃうところじゃないかな」
花丸「……周囲が気付く?」
曜「うん。昔からのクセさえ知っていれば、クセが出なくなったり、ちょっと出るタイミングとかが違うだけでも気付くと思うんだ」
曜「それも、長く一緒にいるほど。……長く、一緒にいたほど。……違和感は、大きくなると思う……」
曜「鞠莉ちゃんも花丸ちゃんもしてたでしょ?……周囲との食い違い……それも一緒に考えると、入れ替わるのは難しいって」
鞠莉「……」
果南「……」
善子「……要するに、クセが違った場合も。記憶≠フ問題が出てくるってわけね」
梨子「……記憶=c…」
ルビィ「確かに。クセは、誤魔化しようがないもんね……」
花丸「見方を変えると……。それだけ自然に出てしまうものをカンペキに真似するのは、難しそうだよね」
361 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/07/06(土) 07:47:10.97 ID:jWyG/GcGO
ダイヤ「……自然とやってしまう行動ですからね。モチロン、どういう条件でそのクセが出るかを分析し、真似することも出来はするでしょうが……」
鞠莉「それを可能にするためには、真似する対象のことを、全て知らないといけない」
果南「例えば……嬉しい時に誤魔化す癖があって……それをカンペキに真似しようとしたとして。……そもそも、真似したい人の、嬉しい時ってどんな時なのか、わからなきゃいけないよね」
善子「……真似したい人の価値観全体がわかっていないと、難しいことね……」
梨子「……果南ちゃんと曜ちゃんの話をまとめると。入れ替わりの可能性を考えると、二つの意味で記憶≠ェ問題になるってことね……」
梨子「つまり……クセというものを考慮に入れた時。周りの記憶と、入れ替わろうとする人の記憶の、二つの記憶が問題になる」
梨子「本人にも誤魔化しようがない以上。もし入れ替わりがあったとして、その後に少しでも周りとの記憶の齟齬があれば、気付かれる恐れがある」
梨子「この可能性を防ぐためには、入れ替わる対象の人の記憶≠、かなり正確に理解していないといけない……」
梨子「でも。……他人の記憶≠把握しきれるとは考えられない」
梨子「……第三者には知ることが出来ない記憶……それがある可能性は、簡単に考えられるから……」
362 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/07/06(土) 07:48:04.11 ID:jWyG/GcGO
ルビィ「……じゃあ。もし、第三者じゃない人が入れ替わろうとしたら、どうなるの……?」
梨子「……」
善子「……まあ、そこは確かに問題になるわね」
ダイヤ「第三者ではない、近しい人ならば……。果南さんと曜さんが指摘する条件も、クリアできるかもしれない……」
ルビィ「うん。例えばずっと一緒に住んでた家族とか……」
ダイヤ「……残念ですがルビィ。だとしても、今度は別の制約がついてしまいます」
ルビィ「え……?せいやく?」
ダイヤ「ええ。梨子さんが繰り返し問題にしてきたことが、ここでも出てきます」
ダイヤ「そうですね?梨子さん」
363 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/07/06(土) 07:48:58.23 ID:jWyG/GcGO
梨子「はい。……曜ちゃんの言葉にあったように。入れ替わりの期間が長ければ長いほど、記憶≠フ齟齬は出てくると思う」
梨子「ルビィちゃんの言う通り、入れ替わり相手に近い人なら、ある程度の期間であれば入れ替わりは不可能じゃないかもしれない」
梨子「でも……それなら、ある程度の期間ってどれくらい?って疑問がわくよね」
ルビィ「あ……」
善子「……まぁアニメや漫画なんかでも、最初は入れ替わりが上手くいってても徐々にバレていくのが相場よね……」
梨子「……言い換えると。《いつ》から入れ替わったのかが、問題になる」
梨子「しかも、それだけじゃない。《誰》がそんなことを出来、なんでそんなことをするのかというのも問題になる」
果南「なんでそんなことをするのかっていうのは……ダイヤが言ってた、入れ替わりの動機も必要になるってことだよね」
ダイヤ「……記憶≠問題にするということは。時間の問題と心や意識の同一性の問題を相手することになる、といったところでしょうか」
梨子「……大げさに言うと、そうなります」
花丸「……まるで、哲学ずら……」
梨子「……」
千歌「・・・・・・」
364 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 07:50:05.52 ID:jWyG/GcGO
ダイヤ「さて。ここまでの話で入れ替わりが成立するためには、少なくとも二つの条件があるという結論が出ました」
ダイヤ「一つは、体格が《同じ》であること」
ダイヤ「もう一つは、記憶≠ェ《同じ》であること」
鞠莉「……まぁ、記憶≠ノ関して言うと。明らかに食い違いがあるケースならともかく、多少の違い程度だと疑える余地もあるんだけど」
善子「そもそも自分と別の人との記憶≠ェ完全に一致するなんてこと、考えようがないしね」
花丸「あくまで、周りとの齟齬を生じさせないという意味で《同じ》にしか思えないってことがポイントずらね」
ダイヤ「そうですね。記憶≠烽る意味では、周囲のイメージさえ把握できれば似せることは可能です」
ダイヤ「《同じ》でなくてはならない部分であっても、条件によってはボロを出さないこと自体は容易に考えることが出来ます」
曜「……それは……そう、かな」
果南「期間次第では、真似出来ないこともない。……それは、認めてるからね」
365 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 07:50:58.72 ID:jWyG/GcGO
ダイヤ「ということは主眼になるのはやはり、体格の問題です」
花丸「体格以外の要素の変化は、ある程度できるけど……」
ルビィ「体格は、そう簡単に変えられるものじゃないから……」
梨子「……うぅん……」
ダイヤ「……梨子さん。そもそも貴女は、誰と千歌さんが入れ替わっていると考えているんですか?」
梨子「……え!誰と、ですか……?(きゅ、急にくるとは思わなかった……!)」
ダイヤ「はい。……先程、千歌さんと梨子さんの会話を聞いて、梨子さんにはある確信があると思っているのですが……改めて、ちゃんと聞いておきたいと思いまして」
梨子「……な。なるほど……」
ダイヤ「それで、結局誰なのですか?梨子さんの疑う、千歌さんと入れ替わっている可能性のある人物とは」
梨子「……!(これは……重要かもしれない)」
梨子(……今であれば。可能性を提示する順番さえ間違えなければ、あるオクソクを通すことが出来るかもしれない……)
梨子(……そのオクソクが……どんなことを引き起こすのかは、まだわからないけど)
梨子(とにかく、提示してみよう)
366 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 07:52:01.77 ID:jWyG/GcGO
梨子「……わかりました。答えるね」
梨子「私の考える、入れ替わっている人物。……それは、唯一の[証拠]に写っている、女性です」
ダイヤ「[証拠]というと……」
ルビィ「……ペンダントの、女の人……」
果案「そういえば……私らには聞きなれない名前がちょろっと話題に上がってたよね。……確か、《ハオ》さんだっけ」
千歌「・・・」
梨子「うん。……千歌ちゃんの、生き別れの姉妹だという人だよ」
曜「千歌ちゃんの……”もう一人の”、お姉さん……」
果南「……じゃあ、千歌と入れ替わっているっていうのは。その女の人だって梨子は思っているの?」
梨子「……そう、なります」
367 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 07:52:44.63 ID:jWyG/GcGO
善子「……その女の人。梨子は、[亡霊]と呼んでいたわよね……」
果南「……!」
梨子「うん。……そうだよ」
花丸「過去にいなくなったはずだけど、今′サれたっていう意味なら……当てはまってる部分もあるけど……」
曜「生き別れの姉妹だから、か……」
梨子「……」
ダイヤ「梨子さんがどういう意味でこの方を[亡霊]と呼んでいるのかは、わかりませんが。容姿だけ見れば、千歌さんと入れ替われると思うのも無理はないかと思います」
鞠莉「……確かに。改めて見ると、この人……。物凄く、千歌に似てるわね……」
曜「で。でも。……今目の前にいる千歌ちゃんより、全然……なんというか……その……」
善子「大人っぽいわよね。色々と……」
千歌「・・・・・・。なんか、不本意なんだけど」
368 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 07:53:59.60 ID:jWyG/GcGO
ルビィ「でも。……逆に言えば、幼い感じを作れれば」
ルビィ「十分、千歌ちゃんみたいになれそうだよ……!」
善子「……!」
果南「……そう、だね」
花丸「……この写真の女性と千歌ちゃんの違う所は、年齢ずら……」
鞠莉「……」
花丸「千歌ちゃんに似てはいるけど、同じじゃないと感じるのは、年が違うから」
花丸「でも……お化粧をすれば。多少は年齢を誤魔化すことは出来る……」
鞠莉「……メイクは、そんなに万能じゃないわよ」
花丸「わかってるずら。ただ、一例として挙げただけ」
花丸「問題は……千歌ちゃんに容姿が似ている人なら、何かしらの手段を用いれば千歌ちゃんソックリになるのは不可能じゃないってことずら」
果南「……」
369 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 07:54:48.51 ID:jWyG/GcGO
ダイヤ「……。梨子さん。実際のところ、どうなんですの?」
梨子「!……実際のところ……?」
ダイヤ「梨子さん……貴女だけがハオさん……という方と出会っているそうですが」
ダイヤ「体格は、千歌さんと一致していたのですか……?」
梨子「……正直なところ。よくは覚えてないです。……でも」
梨子「パッと見だけど。私との身長差は千歌ちゃんより無かった」
梨子「……私と同じくらいの身長でした」
ルビィ「!そ、それって……」
曜「梨子ちゃんの身長は、160センチ。千歌ちゃんの身長は157センチ。……多少だけど、パッと見でも差はあるよね」
善子「パッと見の身長差がないのだとすれば。当然、千歌と同じ体格のはずがない」
梨子「……うん。そうなると、思う」
ダイヤ「……なるほど。よくわかりました」
ダイヤ「少なくとも、梨子さんの心当たりがあるという人物。……その方には、通常の手段では入れ替わりを行えなかったと考える方がよさそうですね」
果南「まあ……そうなるよね」
善子「……普通に考えたら、疑問の余地なしよね」
370 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 07:55:56.83 ID:jWyG/GcGO
梨子「……ところで。もう一つ、今話していることとは直接関係ないかもしれないけど。……葉百さんには別の一面があると思っています」
曜「……梨子ちゃん?」
花丸「どうしたずら……?」
ルビィ「別の一面?ハオさんが、入れ替わってるかもしれない以外に何かトクベツだってこと?」
梨子「うん。さっき花丸ちゃんは、生き別れという意味では[亡霊]の意味に当てはまるかもしれないって言ったよね」
花丸「……う、うん」
梨子「私も、そういう意味での[亡霊]なんじゃないかって意味で……一度、千歌ちゃんに聞いたことがあるの」
梨子「生き別れの姉妹がいるかどうか……って」
梨子「……流石に、何かしらの事件を起こすような[亡霊]が存在するとは、思っていなかったからね……」
善子「……」
ダイヤ「まぁ、そんなオカルトチックな存在……いるとは中々考えにくいでしょうしね」
梨子「でもね。……一端、いるものとして考えてしまえば」
梨子「そんな存在があるとすれば。……通常では不可能なことも、可能だと考える余地が出てくる……」
善子「……。ま。まさか……」
鞠莉「り、梨子。あなた、本気で主張するつもりなの……?」
371 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 07:57:24.12 ID:jWyG/GcGO
梨子「……うん。私は、葉百さんが……」
梨子「善子ちゃんが、前に部室で話していた意味での。あの……」
善子『そう。[亡霊]現るところに、事件あり。つまり……』
善子『[亡霊]こそが事件を引き起こしている張本人なのよ!』
梨子「……あの。[亡霊]の、正体。……そう、考えている」
372 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 07:58:39.05 ID:jWyG/GcGO
善子「……!!」
果南「な……!」
ルビィ「ぼ、ぼ、ぼうれいって……あの意味での[亡霊]って……そんなまさか……!」
善子「そうよ!そんなオカルト、あるわけないじゃない!!」
梨子「……」
千歌「・・・・・・」
ダイヤ「……もし本当にそんなものが存在すると仮定したら。……確かに、想像のつかない出来事も、説明できてしまう……」
鞠莉「……[亡霊]が目撃された場所では、考えられないようなことが起こっていたから……」
果南「何の痕跡も残さず、船が壊されていたり……」
ダイヤ『……重機でも用いないと出来ないような壊れ方をしていたのに。現場には、そのような痕跡が全く残っていなかった』
花丸『あったのは……壊された部分の、残骸だけだったんだよね』
果南『この田舎で、誰にも気付かれずに船を壊せるレベルの機械を動かすなんてこと、あり得ない』
鞠莉『田舎だからこそ、そういうのには敏感だから。……誰も目撃していないのは、不自然ってわけね』
ルビィ『皆、大騒ぎしてたよね。……何が何だかわからないって』
梨子『……奇跡。皆そう言って、船が壊されたこともうやむやになっちゃったんだよね……』
梨子『まるで、嵐が来るのをわかっていたかのようなタイミングで、船は壊され、その船に乗る予定だった人たちは助かった……』
花丸『まさか……』
善子『そのまさか。……最近になって、船が壊される前夜、若い女性が目撃されていたことがわかったのよ』
373 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 07:59:11.53 ID:jWyG/GcGO
曜「むっちゃん達が見たっていう、女の人。地震が起こったのに、壊れなかったお店も……」
いつき『……正直、あんまりよく覚えてないんだ。……地震が起きた時のこと』
いつき『で、でも。……私達も、お店も……無事だったのは間違いないよ』
よしみ『わたしも覚えてない。……なんか、気がついたら外にいて、店長さんも外にいて、なんだか命が助かってた、っていうか……』
むつ『……そういえば。あのお姉さん、どうしたんだろう』
梨子『!……あの、お姉さん?』
むつ『うん。お店にはもう一人お客さんがいたんだけど、私達が外に出た時にはいつの間にかいなくなってたんだ』
梨子「……他にも、色々あるけど。とにかく、[亡霊]のいるところには、奇跡≠ェあった」
梨子「常識から逃れる、奇跡≠ェ……」
花丸「……奇跡=c…」
374 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:00:19.94 ID:jWyG/GcGO
ダイヤ「……梨子さんは、こう言いたいのですか?」
ダイヤ「すなわち、もしハオさんが[亡霊]なら、何らかの方法で体格すら変更することが出来る」
ダイヤ「だから、体格の差があるのは問題ではない。……本当の問題は」
善子「……本当に。[亡霊]が、存在するかどうか……」
ダイヤ「……」
梨子「……はい。そう、なります」
鞠莉「……ナンセンスよ。いくら、なんでも……!」
梨子「……鞠莉ちゃん?」
鞠莉「梨子は、未来から来たかもしれないってところを問題にしたんでしょ!?それを、過去の存在である……[亡霊]を持ち出すなんて!」
曜「……」
果南「……」
梨子「……。ここで。私は、一つのオクソクを話します」
鞠莉「……!」
ダイヤ「り、梨子さん……?」
375 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:03:32.88 ID:jWyG/GcGO
梨子「……。わたし、は……」
梨子「私は。[亡霊]と呼ばれる存在こそ。……<未来>のものであると主張します」
鞠莉「……は、はぁ?」
善子「え。えぇ?」
果南「……あ。頭が、痛くなってきたよ……」
ルビィ「わ、私も……」
ダイヤ「梨子さん。……つまりはどういうことですか?」
ダイヤ「なぜ、<未来>のものが[亡霊]なのでしょうか?」
梨子「……《不可能》を起こせる存在が、未来にはあり得るからです」
ダイヤ「……では、その存在とは、一体……?」
376 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:04:18.53 ID:jWyG/GcGO
梨子「……」
梨子「…………」
梨子(自分がすごく馬鹿げたことを言おうとしているのはわかってる。最初から、わかってた)
梨子(でも、言うしかない。決めたんだから)
梨子(追求するって……!)
梨子「……。一つだけ。『可能性』があった。……あり得ない『可能性』だったけど」
梨子「……皆は、覚えてる?……鞠莉ちゃんが話してくれた、あの話……」
梨子「あの、AIの。……ロボットが、人間のように振舞えるようになってきているって話を……」
ルビィ「……うん」
善子「……」
花丸「……ずら」
梨子「……。もし。アンドロイドが、実在するとしたら……」
鞠莉「……!」
果南「……つ、つまり。どういう、こと……?」
377 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:08:07.01 ID:jWyG/GcGO
梨子「……。つまりは、こういうことです。……」
梨子「[過去]のものだと思っていた[亡霊]が、実は《未来》の技術が生み出した存在だったとしたら?」
梨子「……それが、私の考えです」
善子「……!」
鞠莉「……!」
花丸「……そういうことずらか」
果南「……」
378 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:08:42.37 ID:jWyG/GcGO
ダイヤ「……未来の技術ならば。人間そのものと見間違うような、人工知能や、ロボットを作り出すことが出来るかもしれない……」
曜「……そんな存在は。パラメーターを自由に入れ替えられる、存在」
果南「体格も……性格も。記憶だって、パラメーターに出来てしまうのだとしたら……」
善子「入れ替えが……出来るようになる……っ!」
ルビィ「……鞠莉ちゃんが話してたことだよね」
鞠莉「……。そうね。そう、言ったかもしれないわ」
花丸「それが……[亡霊]の、正体」
果南「……梨子。それが、千歌≠セって、言うつもり?」
379 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:11:40.11 ID:jWyG/GcGO
梨子「……」
梨子「……。」
梨子「…………。」
梨子「……。うん。」
梨子「私は……千歌ちゃん≠ェ。……アンドロイドであるかもしれない。……そういう風に思ってます」
380 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:12:29.38 ID:jWyG/GcGO
千歌「・・・・・・」ニコ
梨子(目の前の少女の表情が、笑みに変わった)
梨子(その笑顔は、私が慣れ親しんだもの。いつもの、笑顔)
梨子(でも、私が……こんな荒唐無稽な考えを話した途端、明らかにその質が変わった)
梨子(笑顔であるのに、どこか自分の感情を窺わせない……そんな、笑み)
梨子(その眼差しからはまるでこちらの全てを見透かしているかのような印象さえ受ける)
梨子「・・・・・・っ!」ゾクッ
梨子(とてつもない、焦燥感……!)
梨子(……さっき何度か感じたものとは比べ物にならない……)
381 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:13:36.08 ID:jWyG/GcGO
「っ………」
「…………!」
「!………」
梨子(……皆も、私と同じように感じているみたいだった)
梨子(目の前の、よく知っているはずの存在が、今までまるで見たこともないような表情を浮かべ……)
梨子(感じたこともないような、得体の知れない雰囲気をまとっている姿を見て。動揺を隠せないようだった)
梨子(……ち、千歌ちゃん……!)
382 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:14:23.43 ID:jWyG/GcGO
千歌「・・・・・・それじゃあ私は人間じゃないって思われているんだ」
梨子「ご、ごめんなさい……こんな突拍子もない話をしちゃって」
千歌「それで?」
梨子「え?そ、それでって……」
千歌「・・・・・・それで、どうして梨子ちゃんはそう思ったの?」
梨子「……!」
梨子(どうして……)
383 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:15:13.12 ID:jWyG/GcGO
梨子「……どうして、否定しないの……」
梨子「どうして……。こんな、とんでもないことを言われてるのに、すぐに否定するんじゃなくて……」
梨子「私がそんなことを考えた、理由なんて聞いているの……」
千歌「・・・別に否定しないってわけじゃないよ。ただ、どうしてそう思ったのか、純粋に聞きたいだけ」
梨子「…………」
千歌「梨子ちゃんのことだから、何の根拠もなくそんなことを言うとは思えないし」
善子「そ、そんなのわからないじゃない!だって!……」
梨子「……だって、善子ちゃんに影響されてヘンなことを言ってるだけかもしれないのよ?」
384 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:15:55.95 ID:jWyG/GcGO
善子「……そ、そうよ。そういうことだって、あるかもしれないじゃない……」
千歌「・・・・・・」
梨子「……(善子、ちゃん……)」
千歌「・・・。梨子ちゃんは、そんな冗談は言わないよ。……そんな真剣な表情で、ね」
千歌「それは善子ちゃんだっておんなじ。……私の仲間に、冗談でそんなことを言う人はいない」
善子「……ち、千歌……」
梨子「……。私はその仲間のことを……あなたのことを、人間じゃないかもしれないって、疑っているのよ?」
千歌「そうだね」
梨子「だったら!どうしてそんな平気でいられるの!?」
梨子(それじゃ、まるで本当に……!)
385 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:17:30.84 ID:jWyG/GcGO
千歌「・・・・・・私は仲間のことを、<あなたたち>のことを、信じているから」
梨子「……っ!」
千歌「それにね、自分自身がどうしてもやりたいこと、やらなきゃいけないと思ったことを邪魔する権利は誰にもないと思うから」
梨子「…………」
千歌「……梨子ちゃんは言ったよね。信じぬきたいって」
千歌「そのために、どんな思い付きでもいいから追いかけたいって」
梨子「…………」
千歌「『今≠ェ、その時』……そうなんだよね。皆?」
ダイヤ「……」
善子「……」
千歌「・・・その結果、心躍る場所に辿り着くかどうかは、わからないけどね……」
果南「……」
ルビィ「……」
梨子「……そんな、こと……」
千歌「・・・・・・それじゃ、そろそろ聞かせてくれるかな。・・・私が、アンドロイドだと、どうして言えるのか」
千歌「その、理由をね・・・」
386 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:18:16.33 ID:jWyG/GcGO
梨子(千歌ちゃん……どういうつもりなの?)
梨子(千歌ちゃんが人間ならこんなことをする必要は、ない)
梨子(かと言って、アンドロイドでもこんなことをする必要はないはず)
梨子(さっきの言葉通り、おふざけでこんな話をしているという感じでもない)
梨子(……本当に、試しているというの?だとしたら、それこそ何のために?)
千歌「・・・・・・」ニコ
梨子(相変わらず千歌ちゃんの表情からは何も読み取ることは出来ない)
梨子(例え試されているんだとしても。私はもう選んでしまった。後戻りの許されない、追求する道を……)
梨子(……こうなったらもう、ただその道を進むしかない……っ!)
387 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:18:45.18 ID:jWyG/GcGO
曜「……問題は。千歌ちゃん≠ェ、どうしてアンドロイドだと考えられるか、だよね」
梨子「……その通りよ、曜ちゃん」
ダイヤ「アンドロイドがもし、実在するとして。それがパラメータを自由に変更できる存在を指すのだとしたら。……入れ替わり自体は、可能だと考えられます」
果南「……でも、じゃあ何で、千歌と入れ替わっていると言えるのか。……どうして、他の誰でもなく、千歌≠ェアンドロイドだと言えるのか」
果南「……根拠が、必要になるわけだね」
388 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:20:31.58 ID:jWyG/GcGO
梨子「……さっきも話した通り。[亡霊]の目撃されているところでは、必ず不思議な出来事が起こっていた」
梨子「そして。……そこには、ある共通点がありました」
ダイや「共通点……?」
梨子「はい。私達が不思議だと言っていること。それらは、現代の技術から考えた場合に不可能であることなんです」
鞠莉「……また、技術的に不可能なことを問題にするの……?」
善子「……不思議な現象が、なぜ不思議なのか。その理由は、あくまでも技術的な問題にあるってわけね」
梨子「うん。でも、起こっている現象それぞれは、必ずしも不可能なことじゃない」
曜「……そっか。例えば船の例なら、重機を使わなきゃ出来ないような、壊れ方って言ってたけど……」
曜「重機を使えば、可能なことが、なぜか重機なしで起こった。……っていうことでもあるんだね」
梨子「……その通りだよ、曜ちゃん。逆に考えれば……」
梨子「もし。……重機がなくても、船を壊せるような力があれば……出来ないことじゃない」
ダイヤ「……しかし。そういったものを用いるのなら少なくとも痕跡が残ります。だから現代の技術の水準からすると、考え難い……」
花丸「技術の進歩。それを前提にするなら、進歩さえすれば現代の技術で出来なかったことも出来るようになるかもしれないずらね」
梨子「……もし、何の道具も必要なく、船を壊せる力があるのだとしたら。人がいたこと以外に、痕跡を残すことなく、あの事件は起こせた」
ルビィ「……人間とソックリな、機械……。それも、重機の力を持った機械なら……不自然なことも出来るってことだよね……」
梨子「……」
389 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:21:18.45 ID:jWyG/GcGO
善子「……それで?それで、何だっていうの?」
梨子「……」
善子「そりゃあ、百歩譲って……技術の進歩があれば、今出来ないことも出来るようになるかもしれないっていうのはわかるわよ」
善子「でも、それが今の話とどう関わるっていうの?」
花丸「……。確かに、技術の進歩の問題と千歌ちゃんが入れ替わっているかどうかは、直接関係するものじゃないずら」
梨子「ええ、そこはそれほど問題じゃないわ。……問題は、千歌ちゃん≠フ方にある」
果南「ち、千歌≠フ方……?」
梨子「千歌≠ソゃんは……《不可能》なことを『可能』にしてきた」
鞠莉「……《不可能》を、『可能』に……?」
390 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:22:03.19 ID:jWyG/GcGO
梨子「……。[亡霊]の話をした、帰り道。私たちは、一つの奇跡≠見た……」
善子「……!!」
ルビィ「そ、それって……」
梨子「モチロン、覚えてますよね、ダイヤさん?……ダイヤさん自身が、何を言ったのか」
ダイヤ「……!は、はい。確かに、わたくしは言いました……」
ダイヤ『今の、動き……。まるで、達人のようでした』
梨子『た、達人?』
ダイヤ『ええ。善子さんを支えつつ、片足ながらも自身も体勢を崩さない、その絶妙なところで、ピタリと止まった……』
ダイヤ『非常に難しいバランスを、一瞬のうちですが千歌さんはとれていた。……一歩間違えれば、二人とも海に落ちていたでしょう』
ダイヤ『考えられないことですが、善子さんを助けた今の動き。千歌さんの体運びは、武術を極めた達人のごとく洗練されたものだったように見えましたね』
ダイヤ『それこそ、奇跡≠ネのでしょうけど、ね』フフッ
善子「……千歌≠ェ、私を助けてくれた時……」
梨子「……多少なりとも、武術の心得のあるダイヤさんが言った言葉。信じることが出来ると思う」
391 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:22:53.80 ID:jWyG/GcGO
ダイヤ「し、しかし。自分で言うのも変な話ですが、それだけなら勘違いのセンもあるのでは……?」
梨子「それはもちろんその通りです。だけど、千歌≠ソゃんはこれ以外にも、色んな奇跡≠起こしている」
梨子「体感天気予報もそう。ルビィちゃんの体調を、本人も気付かなかったのに言い当ててたのもそう」
曜「……!」
ルビィ「……!」
ダイヤ「たっ。……たしか、に」
千歌「・・・」
392 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:23:46.55 ID:jWyG/GcGO
梨子「……千歌ちゃんのいるところに、奇跡≠ヘ溢れていた」
梨子「ただ。それが全く《不可能》なことかというと、そうじゃない」
梨子「達人なら、出来た。感覚を研ぎ澄ませれば、注意深く見ていたなら、出来た」
梨子「……でも、そんなことが一人に、それも短い期間の内で、出来る?……起こる?」
花丸「……偶然で済ませるには……確かに、難しいかも……」
鞠莉「で、でも。それこそ、難しいだけで、あり得ないとまでは言えないわ」
鞠莉「それに……。[亡霊]のやったことは、Aqoursの誰も目撃していない」
ダイヤ「……ここで、[亡霊]を目撃したか、ですか?」
鞠莉「うん。正直なところを言えば、千歌が奇跡≠起こしたって話は、ちょっと信じちゃう。自分の目で見てるから……」
鞠莉「けど、[亡霊]に関しては違う。あくまで、ウワサや、痕跡だけが残っているだけよ」
梨子「……」
393 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:24:43.47 ID:jWyG/GcGO
ダイヤ「確かに。少なくともわたくし達は、[亡霊]そのものが何かを行っているのを見たわけではありません」
ダイヤ「それにそもそも、葉百さんという方と、[亡霊]が同一人物だということも、確証はないのです」
果南「……ペンダントの写真に写っている人。葉百さんが[亡霊]の正体だとすれば。入れ替わりなんてことも多少は疑えると思うけど」
果南「そもそもとして、葉百さんが[亡霊]であるというところを示してもらわないことには、判断できないってことだね」
梨子「……」
曜「……。どうなの、梨子ちゃん?今果南ちゃん達が言ったようなことって、証明できるの?」
梨子「……うん。実は、私……一度だけ、目撃しているの」
ダイヤ「……!も。目撃……ですって?」
果南「い、いったい何を……?」
394 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:26:03.41 ID:jWyG/GcGO
梨子「当然。……葉百さんが奇跡≠起こして見せた、瞬間をだよ!」
鞠莉「……!」
ダイヤ「……ま。間違いないのですか?奇跡≠目の当たりにした、というのは……」
梨子「……はい」
善子「……ちょ、ちょっと待って!」
善子「奇跡≠ニいうのなら……・それはどんな奇跡≠セったのかが問題になるでしょ!」
梨子「……どんな、奇跡=c…?」
善子「そ、そうよ!奇跡≠チて一口に言っても、それは人それぞれあるでしょ!」
善子「じゃんけんで一人勝ちするとかだって充分私には奇跡よ」
395 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:26:40.62 ID:jWyG/GcGO
ルビィ「……そんなこと言い出したらキリないんじゃ……」
ルビィ「それに、人によって違うものだったら、それって本当に奇跡≠チて呼べるのかな」
善子「ぐ。……」
花丸「……でも、善子ちゃんの言いたいこともわかるずら」
ルビィ「花丸ちゃん?」
花丸「梨子ちゃんが見た、奇跡=c…それを見たのって一度だけなの?」
梨子「……うん。そうだよ」
花丸「なるほど。で、それはどんな内容だったのかな」
梨子「……内容?」
花丸「うん」
396 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:27:31.13 ID:jWyG/GcGO
曜「……えっと。花丸ちゃんの質問の目的がよくわからないんだけど……」
ダイヤ「……善子さんの話は、奇跡≠見たのが一度だけだったのであれば、どんな奇跡≠セったかが、問題になる……。ということでしたが」
花丸「その通りずら」
ダイヤ「しかし、なぜそれが問題になるというのですか?」
花丸「……。信じるために、必要だから」
梨子「……信じるため?」
花丸「……おら達が、千歌ちゃん≠ェ奇跡≠行ったと思えるのは、何度もそれを見てきたから」
花丸「でも、《不可能》を『可能』にした瞬間が、もし一度だけしかなかったら……それは、たまたまだって思って、自分でも信じられなくなる」
花丸「……ダイヤさんも、それは言っていたよね」
曜「!」
ルビィ「!」
397 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:28:24.04 ID:jWyG/GcGO
ダイヤ「……確かに、先程言いました。『それだけなら勘違いのセンもあるのでは』、と……」
ダイヤ「ということは……梨子さんは、たった一度の奇跡≠ェ、単なる偶然ではなく、本当に奇跡だったということを……何度も”見た”ということ以外で証明しなければならないということになるのですか」
花丸「そういう……ことです」
果南「……だから、内容を聴いたってわけだね」
曜「……梨子ちゃんの言う奇跡≠ェ。単なる偶然じゃすまされないような、凄いことを引き起こしているんじゃなきゃ……疑いの余地が出るってこと、か」
梨子「私が見た、奇跡=c…」
鞠莉「……オーケー。じゃあ、聞くわね?」
鞠莉「梨子が、目撃した奇跡≠チて……どんなこと?」
398 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:29:08.94 ID:jWyG/GcGO
梨子(……。目撃。そう、私も皆も、言ってしまったけど……)
梨子(本当は、見たんじゃない。……単に、目で見たことじゃない)
梨子(私は、聴いたんだ。奇跡≠フ”音”を……)
梨子(そして。私が見たのは……その音を通じて、見えたもの。本当に、肝心なこと)
梨子(それを、皆にもわかってもらえるような……その[記録]は、既に持っている!)
梨子(なら、やることは決まっている……!)
梨子「……。それは。……」
399 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:30:25.86 ID:jWyG/GcGO
梨子「それは。ピアノの、音です」
曜「ピアノの、音……?」
梨子「うん。……私が初めて葉百さんに会った時。……皆にも、千歌ちゃんにも、会う前の時。 私は、不思議な女性に会った」
果南「……!?千歌に、会う前……?」
梨子「……、引っ越しでゴタゴタしている中、届いたばかりのピアノを。自分でも不思議なことに、その見知らぬ女の人に弾いてもらったの」
梨子「……。その女の人に会っていたからかな。私は、千歌ちゃんと初めて会った時……初めて会ったような感じがしなかった」
梨子「その女の人は。千歌ちゃんの生き別れの姉妹と言っても、おかしくないぐらい……千歌ちゃんに似ていたから」
ダイヤ「その人が……。葉百さん、というわけですか……」
ルビィ「……それで。……ハオさん、って人のピアノは……どんな音だったの?」
梨子「……。美しかったの。繊細で、精確で、人間が持つムラのような部分が一切ない」
梨子「そう。まるで、[機械]みたいに……精確だった」
果南「……き、[機械]……」
400 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:49:48.43 ID:jWyG/GcGO
善子「ちょっと待ちなさい!何をもって、[機械]だなんて言えるの!?」
梨子「……善子ちゃん」
善子「精確だったって……そりゃ、梨子のピアノの腕は知ってるから、梨子の言う[精確]がとんでもないレベルで精確だったんだろうなって思えるけど!」
善子「それでも!……たまたま、ピアノが凄い得意な人が演奏したから、そうなったってだけかもしれないじゃない!」
梨子「……善子ちゃんの言うことはもっともだと思う。……だからこそ」
梨子「私は。[証拠]を出します!」
善子「……!」
ダイヤ「しょ、[証拠]!?まさか、あったんですか!?[証拠]が……」
花丸「た、確かに。[証拠]があるんだったら、疑いようがない……!」
花丸「単なる梨子ちゃんの勘違いでも、偶然でもなく。本当に、奇跡≠起こしたと言えるずら……!」
401 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:50:31.41 ID:jWyG/GcGO
鞠莉「……梨子。だったら、何で今までそれを出さなかったの?」
梨子「……!」
鞠莉「私言ったでしょ?[証拠]がないからこそ、私たちの言葉だけが頼りになるって」
鞠莉「出さなかった理由を聞かないと、[証拠]を出すって言葉。信じられないわ」
梨子「……状況が変わったからだよ」
鞠莉「……状況?」
梨子「……<未来>から来たこと、入れ替わりを示す[証拠]はなかった。でも……」
梨子「皆の話が進むにつれて。言葉が語られることで。持っていた[記録]が、[証拠]としての意味を持つようになったの」
善子「……要するに奇跡≠示す[証拠]があったってことでしょ。……鞠莉、わかっててイジワルなこと言ったでしょ」
鞠莉「……まあね。ただ、半端なものを見せられても、私たちは納得しないってこと」
梨子「……大丈夫。きっと、鞠莉ちゃんも納得できると思う」
402 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:51:38.12 ID:jWyG/GcGO
鞠莉「……。そこまで言うのなら、見せてもらおうかしら」
鞠莉「梨子が見たという……奇跡≠捉えた[証拠]を!」
梨子「……わかった。これを、見て」
鞠莉「……。スマホ……?」
善子「……。見てって、画面に何も表示されてないじゃない!こんな状態を見ても……」
梨子「……。ゴメン、言い方が悪かったね。”見て”って言ったけど……本当は違うの」
梨子「……私が”見て”って言ったスマホ。ここから流れる曲を。《聴いて》ほしかったのよ」
曜「……曲?」
善子「”見る”じゃなくて……《聴く》……」
梨子「うん。……始まるよ」
梨子「皆、ちゃんと聴いてね。……この、曲を」
403 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:53:20.46 ID:jWyG/GcGO
善子「……」
ルビィ「……」
花丸「……」
曜「……」
果南「……」
鞠莉「……。ビューティフルね。……それで?」
ダイヤ「……。それで。何が、奇跡だったのですか?」
梨子「……。もう一曲、聴いて貰えればわかるはずです」
花丸「……一度だけじゃ、なかったずら?奇跡≠フピアノは……」
梨子「……。何も言わず、聴いてほしいんだ」
鞠莉「……オッケー。じゃあ、聴いてみましょっか?」
ダイヤ「……しょーがないですねー!では、もう一度、梨子さんのリクエストに応えてみましょう!」
梨子「……」
千歌「・・・」
404 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:54:24.57 ID:jWyG/GcGO
千歌「・・・・・・」
善子「……」
ルビィ「……」
花丸「……」
曜「……」
果南「……」
鞠莉「……。ビューティフルね。……それで?」
ダイヤ「……。それで。何が、奇跡だったのですか!」
梨子「……皆さん。この曲を聴いて、どう思いました?」
405 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:55:41.45 ID:jWyG/GcGO
果南「う、ううん……」
ルビィ「どうも何も……。一個前の曲と、全部同じだったよね」
ルビィ「ちょっと、音質は落ちてたけど……」
曜「あの……言いづらいんだけどさ。梨子ちゃん、同じ曲再生してたりしない?」
曜「間違えて、収録されたアルバムは違うけど、同じ曲を流したとか……」
花丸「うん……。おらも、そう思ったよ。[証拠]って、同じ曲を再生することじゃないと思うずら」
善子「……。真面目にやって欲しいんだけど」
果南「同じ曲を流すのは……多分、ミスなんじゃないかな」
梨子「……。モチロン、ミスじゃないよ。だって……」
梨子「今聞いてもらった二つの曲は、CD音源をそのまま流した後に、私が録音した曲の二つだったんだから」
ルビィ「……ぇ?」
鞠莉「録音……!?」
ダイヤ「そ、それでは……。音質の落ちていた、後に流した方は……」
406 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:56:37.05 ID:jWyG/GcGO
梨子「……。葉百さんが弾いたものです」
果南「な、な……!」
ダイヤ「なんてこと……!」
果南「梨子の言ってた、[機械]みたいに精確だったって……こういうことだったんだね」
曜「いくらピアノが得意だからと言って……CDの曲そのままを、コピーするなんて出来ないはず……」
ルビィ「でも、この録音は……それをやってる」
善子「私達が、音楽の素人だから。同じように聴こえてるってことはないの?」
ルビィ「それは、でも……」
407 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:57:25.11 ID:jWyG/GcGO
鞠莉「……。梨子が、言う以上。そんなこと、考えられない」
梨子「……!鞠莉ちゃん……!」
善子「……。それは、そう、だけど……」
花丸「それに……記憶じゃなくて、[記録]を梨子ちゃんは出した」
花丸「もし一度きりの記憶だったとしたら、おら達には真偽はわからないけど……」
花丸「[記録]は、検証できる。……何度でも、納得のいくまで……」
曜「……何度でも確認できるから。[証拠]って、言えるってことだね」
鞠莉「何なら、音を解析する技術自体は現代にもあるし……それで、本当に同じかどうかわかるわ」
鞠莉「梨子は、それも承知の上で……この[証拠]を出したのよね」
梨子「……はい」
408 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 08:58:17.34 ID:jWyG/GcGO
ダイヤ「……これで。千歌さん≠ニ、葉百さんに、共通点を認めることが出来てしまいました」
曜「じゃ、じゃあ。やっぱり、千歌ちゃん≠ヘ……」
鞠莉「……」
善子「……甘いわ」
梨子「……!」
花丸「善子ちゃん?……甘い、って、どういうこと?」
善子「言葉通りよ。……だから、何って話」
ダイヤ「善子さん……。気持ちはわかりますが」
ダイヤ「今、梨子さんは示したのですよ?常識では考えられない、『可能性』を……」
善子「……。何が、常識よ。常識を語るなら、もっと根本を話さなきゃいけないでしょ?」
ルビィ「根本……?」
善子「トーゼン。……そもそも、未来から過去へ遡ることが出来るのかよ」
梨子「!」
409 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:00:50.34 ID:jWyG/GcGO
善子「千歌と梨子も話してたけど。可能性は、あくまで可能性。……偶然と同じようなものよ」
善子「でも、不可能なことは。必然的に、不可能なの」
善子「そして……〈未来〉から[過去]に遡るのは、不可能なの!」
ダイヤ「しかし……それは!」
ダイヤ「それは、流石にわたくしたちの手には余る話です。だから、ここにある可能性と証拠でコトを考えてきたのでは?」
善子「……そうね。梨子が示すことは、確かに『可能性』を示すのには十分だったと思う」
善子「けど……《不可能性》を否定するには、不十分だった」
梨子「……!」
善子「少なくとも、私の考える《不可能性》を覆すことは……出来ていないと思う」
善子「……鞠莉も、そう思わない?」
410 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:02:09.32 ID:jWyG/GcGO
鞠莉「…………正直、混乱してはいるんだけど」
鞠莉「ここまでで明らかになった不自然さは、全てがちゃんと繋がっているとは思えない」
鞠莉「千歌も、[亡霊]も……。ペンダントも、普通では考えられないようなものではあると思う」
鞠莉「でも、それらが関連していると断言することは出来ないと思う。……だって」
鞠莉「だって、未来から来たってことが、それらを結び付けている根拠のはずなのに……未来から来たという、決定的な理由はまだ何も考えられていないから」
ダイヤ「……梨子さんの提示した、[証拠]でも不十分だというのですか?」
鞠莉「ええ。奇跡≠ヘ、どうしても偶然という性質を持つものだからね」
鞠莉「……梨子が、奇跡≠セと確信している以上。その奇跡≠ェ、たった一度のものだったと考えることは出来てしまうと思うの」
411 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:03:18.94 ID:jWyG/GcGO
ダイヤ「……どうなのですか、梨子さん?」
梨子「……。彼女は確かに、自分の演奏を機械のようだと言っていました」
梨子「でも……。たまたま、そういった特技を持っている人だったと、考えることは出来ると思います」
ダイヤ「その場合……。たまたま、そういう人に会っただけで、奇跡≠起こすという意味での共通点があるとは、断言できないとも考えられますね……」
梨子「……そう、だね……」
鞠莉「だとしたら、やっぱり……。否定は、出来る」
鞠莉「未来から来ることが不可能なら。本当に一度きりの奇跡≠、たまたま梨子が目撃しただけなんじゃないかって考えることが出来るの」
梨子「……」
ダイヤ「……。わかりました」
ダイヤ「では。……考えてみましょうか。〈未来〉から来るということが、可能なのか」
ダイヤ「わたくし達なりに。また、話してみましょう……!」
412 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:04:24.35 ID:jWyG/GcGO
果南「……」
曜「……」
鞠莉「……私から、話してもいい?」
ダイヤ「……口火を切った、善子さんがいいのなら」
善子「私に異論はないわ。……鞠莉の考え、話してほしいし」
鞠莉「ありがとう。……私も完璧には理解していない話になっちゃうんだけど」
鞠莉「……理論的に。未来から過去に来るのは、不可能だと言われているの」
曜「……理論的に?」
413 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:05:04.23 ID:jWyG/GcGO
鞠莉「そうよ。どれだけ科学技術が進歩しても、そこは覆せないの」
鞠莉「確かに、アンドロイドのようなものは作れるようになるかもしれない。でも、それが過去に戻ることは、出来ないの」
鞠莉「……技術の大前提。技術を生み出す基盤となっている、理論。それが、過去に戻ることは出来ないという理論である限り。技術は、そこで終わりなの」
ダイヤ「……わたくしも、聞いたことはあります。[過去]へ遡るタイムマシンは、作ることが出来ないだろう、と」
ダイヤ「逆に、未来へ行くタイムマシンは出来るかもしれないと」
果南「……どうして?」
ダイヤ「過去へ来る方は、手段がないとのことです」
ダイヤ「それに対して、未来へ行く方は、比較的簡単に実現できるそうです」
ダイヤ「……光の速度に近づけば。時間の流れは、遅くなるためだと。そう、聞き及んでいます」
414 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:06:16.32 ID:jWyG/GcGO
善子「……相対性理論、ってやつね」
鞠莉「そう。多くの人が、タイムマシンを語る時……どんなに技術が発展しても。未来へは行けるかもしれないけど、過去へは来れないって、話している」
鞠莉「だから、どんなに技術が進歩しても……過去に戻ることはできない、と言わざるを得ないの」
果南「……なるほど、ね」
梨子「……一つ疑問があるんだけど」
鞠莉「何、梨子?」
梨子「技術の話で思い出したんだけど。……千歌ちゃんの持っているペンダントの技術って、相当凄いと思うんだけど……」
梨子「これが、現代の技術レベルじゃ作れないものだったら、その時点で〈未来〉のものって証明になるんじゃないの……?」
415 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:07:03.08 ID:jWyG/GcGO
鞠莉「……。だから、私も最初に千歌に見せてって言ったの。ペンダントを、ね」
ダイヤ「……見た時点で問題があれば、鞠莉さんは何か言うはずですよね……?」
梨子「じゃ、じゃあ……」
鞠莉「ええ。……確かに驚いた。この前の交流会で見たものが、ここにあるなんてね」
鞠莉「……どうしてここにあるのかは問題だけど。そのペンダントの技術自体は、現代でも実現可能よ」
梨子「……!」
曜「……これだけ技術に詳しい鞠莉ちゃんが言うなら。……さっきの、理論の話も……ホント、なんだよね」
花丸「……技術を支えている、理論。それが、ダメだって言ってしまったら……技術は、そこでおしまいなんだよね……」
鞠莉「そういうこと、よ」
416 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:07:44.32 ID:jWyG/GcGO
ルビィ「……でも。それは、根拠になんかならないよ」
善子「……!」
鞠莉「え……?」
ルビィ「だって。『パラダイムシフト』が起きるかもしれないでしょ?」
曜「!?」
梨子「!?」
花丸「!?」
千歌「・・・・・・!」
ダイヤ「る。ルビィ……!?」
鞠莉「!!……な、な!」
果南「……ぱ。ぱらだいむ、しふと……?」
417 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:08:28.33 ID:jWyG/GcGO
ルビィ「そう。パラダイムっていうのは、科学の常識、科学の考え方全部」
ルビィ「普通に科学をする時、皆が考える、前提だったり、信じるものだったり、価値観のこと」
ルビィ「でも。……それは、変わる可能性がある」
ルビィ「……そうだよね、鞠莉ちゃん?」
鞠莉「……え、ええ。それは、……そう、ね」
ルビィ「だったら。その、考え方が変わること……つまり、『パラダイムシフト』が起きたら。……理論は変わって、技術も、もっと変わる」
ルビィ「そうだとしたら……。過去に戻る技術だって、ないなんて言い切れないでしょ……!」
鞠莉「……る。ルビィ……!」
418 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:09:07.20 ID:jWyG/GcGO
曜「ルビィちゃん。……凄い」
梨子「ルビィちゃん……!た、頼もしくなって……!」
梨子「流石よ!私の、妹にしたいくらい……!」
ルビィ「え、いいの?」
ダイヤ「ダメです!……ルビィはわたくしの妹なのです!!」
ダイヤ「そ。そんなことより。ど、どこで……どこで、そんな言葉を……!?」
ダイヤ「わ、わたくしの知っているルビィは。こんな、高度なことを考えられるような、娘ではなかったのに……!」
419 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:09:42.83 ID:jWyG/GcGO
果南「……は?」
花丸「……何気に、凄い酷い話ずら」
ルビィ「……え、えへへ。……実は、善子ちゃんから借りた小説で、私も勉強してたんだ」
ルビィ「アイドルの曲を聴いてたら、パラダイムって言葉があったから。何のことかなって思って、それで善子ちゃんと話してたら……」
ダイヤ「ル、ルビィ。……立派になって……!」
花丸「……姉妹コントは置いといて。確かに、ルビィちゃんの言ってる通りなら、鞠莉ちゃんの話は、絶対不可能なことを話していることにはならないずら」
果南「未来から来るってことが出来ないのは、理論的にダメだから。……そう言った、鞠莉の言葉が、崩されちゃうからだよね」
鞠莉「……っ」
420 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:10:20.64 ID:jWyG/GcGO
善子「……でも。まだ、私は認めていないわよ」
果南「……善子?」
ルビィ「善子、ちゃん……」
善子「……この本を読めば、解るかもしれないって。そう言って、渡したんだったのよね?」
ルビィ「う。うん……」
善子「だったら、わかるでしょ。私が、貸したんだから。……私が、そんな考え、納得しないってことぐらい」
善子「……私が、そんな反論も織り込み済みで、でも未来から過去になんてことが出来ないって、考えていたって」
ルビィ「……」
善子「……過去に戻ることは、単純に技術や科学理論だけの問題じゃないの。それ以上の《不可能》さがある」
花丸「……それって、一体……?」
421 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:11:12.12 ID:jWyG/GcGO
善子「簡単よ。……皆、タイムパラドックスって知ってるでしょ?」
果南「……流石に、それは私でも分かるよ」
曜「……未来の自分と、今や過去の自分。会っちゃうと、ダメなやつだよね」
善子「まあ、ザックリ言うとそんなトコロ。……で、これは技術の問題が消えても、更に根元で残る話なの」
ダイヤ「しかし……タイムパラドックスが、なぜ、未来から過去へ戻ることを否定するのですか?」
ダイヤ「創作の世界などでは、過去の自分に会わないようにすることで回避出来る例もありますが……」
善子「それは、あくまで創作だからよ。……ちゃんと、過去に戻るってどういうことか考えると、それは論理的にあり得ない話になるの」
422 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:12:11.53 ID:jWyG/GcGO
果南「……理論的とか、論理的とか……。なんか、頭が痛くなってきたよ」
花丸「善子ちゃんに、論理的なんて言葉が使えるずらか……?」
善子「何言ってんの。誰だって使えるわよ!」
曜「……果南ちゃんは使えてないみたいだけどね」
果南「……失礼な奴だなぁ」
千歌「2人とも・・・・・・。ケンカはしないでよね」
梨子「……それで?どうして、過去に戻ることが論理的に出来ないっていうの?」
423 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:12:46.26 ID:jWyG/GcGO
善子「問題は。……もし、私達に、過去に遡れる能力があったとしても意味を為さないということよ」
果南「過去に戻ること自体が、無意味ってこと……?」
ルビィ「意味がないっていうのは、どういうこと?」
善子「たとえ過去に戻れる力があったとしても。戻った事実そのものが、存在出来ないってことよ」
曜「……よく、わかんない」
善子「……順を追って説明していくわ」
424 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:13:57.43 ID:jWyG/GcGO
善子「ある過去の出来事Lがあったとする。この出来事は、何でもいいわ。昔、サンタさんを捕まえようとしてお母さんに叱られただとか、天使になろうとして高いところから飛び降りてケガしただとか、そんなことを当てはめてくれればいい」
ルビィ「……叱られたんだ」
梨子「……ケガしたんだ」
千歌「・・・・・・可愛い」
善子「うるさい!……コホン。ここで、自分が過去を変えることが出来る力を持っていたとしましょう」
善子「力というのは、出来事Lを出来事Oに変える力のことよ。例えば、サンタを捕まえようとせずにおとなしく寝て、次の日お母さんに怒られないようにするとか、そういうことをする力」
ダイヤ「……過去に戻る話ではなかったのですか?」
善子「過去に戻った時点で、過去は変わってるでしょう?そんな事実は、過去にはなかったはずなんだから」
ダイヤ「それは……まぁ、そうですわね……」
善子「重要なのは。過去に戻れるかどうか自体じゃなく、過去を変えられるかどうかなのよ」
鞠莉「過去に戻る……。その時点で、変化は起きているはず、よね」
花丸「過去に戻って、おっきい善子ちゃんがちっちゃい善子ちゃんにお母さんの言うことを聴くように言っても、変化はないかもしれないけどね」
善子「うっさいってば!……とにかく、どんな形であれ、過去を変えられる力があるとして、それが成立するか考えてみるのよ」
果南「この場合だと、LがOになったらどうなるかってことだよね」
鞠莉「どうなるって、言われても……う〜ん……」
千歌「・・・」
425 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:15:10.66 ID:jWyG/GcGO
曜「……どうも、ならないんじゃ……」
梨子「ど、どうもならないってことは、ないような……」
善子「いいえ。よくわかってるじゃない、曜?」
曜「え?」
梨子「え?」
善子「どうもならないっていうのは、どんな意味?」
曜「え、えっと……。サンタさんに怒られないように言われて、その通りにしたら……なんか、怒られるから注意したのに、その注意自体、大人になってからしようと思うかなって……」
426 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:17:43.29 ID:jWyG/GcGO
果南「あ……」
鞠莉「……なるほどね」
花丸「そっか。……善子ちゃんの例でいくと、もし、過去を変えようとして、実際に過去が変わったとしたら。そもそも、過去を変えようとする動機自体が、未来になくなっちゃうね」
善子「動機を例にするならそうなるわ。でも、これは動機に限った話じゃない。『原因と結果』が連鎖していると考えられる限り、あらゆることに当てはまるはずなの」
ルビィ「過去が変わった時点で、未来も一緒に変わっちゃうから……変える前の、変えようとした未来がそもそもあるのはおかしくなって、なくなる……ってこと?」
善子「……察しが良くて助かるわ。これって、一般化するとこういうことにならない?」
427 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:22:47.04 ID:jWyG/GcGO
『ある世界Vに因果関係が成立しており、過去を変化させられる能力Eがあったとする』
『ここで、過去のある出来事Lを変更できる能力Eを行使し、Oという出来事に変更したとする』
『すると、Lという出来事はそもそも生じておらず、世界VにはOという出来事が生じたという事実のみが残る』
『なぜなら、因果関係により、Oが成立した時点で世界はOに基づいた時間軸に再構成されるので(Oという出来事に基づいてまた別の出来事が生じていくので)、LからOに変わったという事実を証明することが出来ないからだ』
『つまりLからOという変更があったという事実は世界Vには全く存在しないことになる』
『したがって、Eが存在するかどうかは誰にも証明できない。言い換えれば、Eがあると考えることは無意味な想定である』
『無論、因果関係を前提とするならば、OはLによって引き起こされたと考えねばならないが、Lを行使したという証拠はOが成立した以降の時間、世界には存在しない。つまり、矛盾してしまう』
『よって、因果関係が成立するいかなる世界でも、過去の変更はあり得ない。そして、因果関係の成立していない世界は考えることが出来ない』
『すなわち、[過去]を変更するということは、成立しない』
428 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 09:23:40.23 ID:jWyG/GcGO
花丸「……LがなきゃOが成立しないのに、Oが成立したら、Lが消える……」
鞠莉「論理的にあり得ない。……そう言った意味はコレだったのね」
果南「で、でも。物語なんかだと、ちゃんと過去を変えた人は帰る前の記憶を持ってたりするよね?」
善子「……そこが、創作の所以なのよ、果南」
果南「……!」
善子「もし、本当にそんなことが出来るとしたら。……それは、過去を変える能力とは別に、過去を変えたことを知覚できる能力があるということになるの」
梨子「……過去を変えたことを、知ることの出来る力……!」
429 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/07/06(土) 09:24:31.25 ID:jWyG/GcGO
善子「変わったかどうか。それは、比較によってしかわからないものよ」
ルビィ「でも、時間の流れがこの世界に一つしかないとすれば。……記憶もそれに従って、変わるはず」
鞠莉「……だから、もし過去が変わったとしても、その時点で時間の流れも変わって、それに沿って記憶は構成される」
善子「そうよ。もし、記憶同士を比較しようとするなら。……世界に時間の流れが一つしかないということを、否定できないといけない」
ダイヤ「人や、場所。物や動きの速度によって、時間が変わるとは考えられないのでしょうか……?」
善子「ここで言ってるのは、歴史や因果関係としての時間のことよ。ある出来事が、何か別の出来事を引き起こすと考える場合には、個々の時間の流れ方は問題にならない」
善子「……時間の流れっていうのが上手くなかったわね。さっき言った通り、因果関係や時間軸、って考えてもらった方がその辺りのこともわかるかもね」
ダイヤ「時間軸……ですか」
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