男「恋愛アンチなのに異世界でチートな魅了スキルを授かった件」 3スレ目

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826 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/04/08(水) 01:05:05.75 ID:n4S9Drl30



イケメン「有り得ない!! ギャルが虜になるはずがない!!」



イケメン(ギャルが意志に反して僕を殴ったのは、男の命令によるものだろう)

イケメン(先ほど目くらましに使用された魅了スキルの範囲にギャルもいて、そのとき虜になったと)



イケメン(だが……そうだ、異世界に召喚された際、暴発した魅了スキルはギャルに効果を発揮しなかった)

イケメン(なのに……どうして今回は成功して……)



827 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/04/08(水) 01:05:56.36 ID:n4S9Drl30

男「俺の魅了スキル、効果対象は『魅力的な異性』だ」

男「だが絶世の美女がいたとして……そいつが老いておばあちゃんになっても魅力的かというと、絶対にそうとは限らないだろ?」



イケメン(男が頭の悪い子供に言い聞かせるような調子で話す)



男「魅力的かどうかなんて同じ人だとしてもその時々によって変わる」

男「魅力的じゃなくなることもあるし、逆もまた然りだ」



男「無駄な人間関係をすぐ切り捨てられるおまえには分からないだろうな」

男「最初は嫌な印象を持っていたとしても、ふとしたことで評価がガラリと変わることもあるってことを」



イケメン「つまり今のおまえには、ギャルが魅力的な異性に見えているってことか?」

イケメン「はっ、馬鹿な。それこそ有り得ない。こいつのどこが魅力的だって言うんだ」

828 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/04/08(水) 01:06:32.71 ID:n4S9Drl30



男「簡単だ。おまえに裏切られた今このときに涙を流すことが出来るところだ」



イケメン「……?」



イケメン(涙? それに一体何の意味が……?)



男「ギャル、独裁都市での襲撃の際女友と交わしたやりとりは聞いた」

男「おまえは自分がイケメンに愛されてないことを知っていたんだろ」



ギャル「…………」



男「命令だ、質問に答えろ」



ギャル「……はい、その通りです」



829 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/04/08(水) 01:07:08.85 ID:n4S9Drl30



イケメン「な、何を言っている……僕はきちんと彼氏のフリをして、騙して――」

男「浅い演技なんてバレていたわけだ」



イケメン「そんなはずあるか! おかしいだろ! 騙されていることが分かっていて、どうして僕に尽くしたんだ!」



男「それでも好きだから、ってことだろ」

イケメン「なっ……」



イケメン(今度こそ僕は絶句する)



830 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/04/08(水) 01:07:42.33 ID:n4S9Drl30



男「自分を騙していて、他の女を追っていて」

男「それでも諦めきれなかった。一途に思い続けた」



男「ギャルは十分に魅力的な女の子じゃねえか」

男「そんな子に慕われて……おまえは何が不満だったんだよ? なあ、教えてくれよ」



イケメン「…………」





男「なんて……まあ俺が言えた立場じゃねえか」

男「命令だ、そいつを気絶させて、地下牢まで運べ」



イケメン(男は命令を残し、その身を翻した)

831 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/04/08(水) 01:08:08.97 ID:n4S9Drl30



ギャル「ごめん、イケメン」



イケメン(命令を実行するために近づいてきたギャル)



イケメン「…………」



イケメン(僕を殴ってしまったことで、未だに涙を流す彼女に何かを言えるはずもなく)







イケメン(――視界が暗転した)

832 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/04/08(水) 01:08:35.97 ID:n4S9Drl30
続く。
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/04/08(水) 13:49:51.48 ID:Xh8gKN5qo
乙ー
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/08(水) 16:46:27.02 ID:zR4wGbd/O
乙!
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/07(木) 10:22:02.06 ID:rMfR1SqU0
待ってるぞ
836 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:12:32.68 ID:biI/Iwp20
乙、ありがとうございます。


お待たせしました、投下します。
837 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:13:36.21 ID:biI/Iwp20

女友(私は魔王城に戻ってすぐにその異変を感じ取りました)

女友(城のあちこちが荒らされているのです)



女友「…………」

女友(心当たりはありました)

女友(今回の作戦、サトルさんから何をするかは聞かされています)

女友(駐留派、カイさんをこの魔王城を誘った際に、その部下がこの魔王城を荒らしたということでしょう)

女友(しかし、既にその動きも警備に残っていた者たちによって沈静化されているようでした)



幼女「お腹減ったー、おやつ!!」

女友(一緒に連れていた幼女、魔神は私の手を離れ食堂めがけて無邪気に走り出します)



女友「転ばないように気を付けてくださいねー」

女友(城の中ならもう安全だろうと、私はその一言だけで送り出しました)

838 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:14:21.78 ID:biI/Iwp20

女友(一人になった私は謁見の間を訪れました)

女友(そこではサトルさんがボロボロの状態のままぼーっと佇んでいます)



女友「サトルさん、無事でしたか!?」

女友(私は慌てて駆け寄りました)



男「あー……リオか」

女友「今すぐ回復します! 許可をください!!」

男「……俺に回復魔法をかけることを許可する」



女友(裏切り防止にサトルさんからかけられた命令『俺の意図する場合以外での魔法の使用を禁ずる』による一手間を置いて、ボロボロだったサトルさんの治療が始まりました)

839 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:15:14.81 ID:biI/Iwp20
あー、変換するの忘れてました。
ちょっと投稿しなおします。
840 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:16:58.69 ID:biI/Iwp20

女友(私は魔王城に戻ってすぐにその異変を感じ取りました)

女友(城のあちこちが荒らされているのです)



女友「…………」

女友(心当たりはありました)

女友(今回の作戦、男さんから何をするかは聞かされています)

女友(駐留派、イケメンさんをこの魔王城を誘った際に、その部下がこの魔王城を荒らしたということでしょう)

女友(しかし、既にその動きも警備に残っていた者たちによって沈静化されているようでした)



幼女「お腹減ったー、おやつ!!」

女友(一緒に連れていた幼女、魔神は私の手を離れ食堂めがけて無邪気に走り出します)



女友「転ばないように気を付けてくださいねー」

女友(城の中ならもう安全だろうと、私はその一言だけで送り出しました)

841 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:18:14.63 ID:biI/Iwp20

女友(一人になった私は謁見の間を訪れました)

女友(そこでは男さんがボロボロの状態のままぼーっと佇んでいます)



女友「男さん、無事でしたか!?」

女友(私は慌てて駆け寄りました)



男「あー……女友か」

女友「今すぐ回復します! 許可をください!!」

男「……俺に回復魔法をかけることを許可する」



女友(裏切り防止に男さんからかけられた命令『俺の意図する場合以外での魔法の使用を禁ずる』による一手間を置いて、ボロボロだった男さんの治療が始まりました)

842 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:19:11.56 ID:biI/Iwp20

女友「だから私は反対だったんですよ。自分自身の手で決着を付けるなんて」

男「…………」



女友(男さんは私の問いかけに反応しません)

女友(無視しているのではなく、どうやらそもそも聞こえていないようです)

女友(心ここにあらずといった様子で物思いに耽っています)



女友(イケメンさんと戦ったことで何か思うところがあったんでしょうか?)

女友(今回の作戦に当たって男さんの目的について私にも説明がありました)

女友(永遠の孤独を目指す、と。その目的は今回の大規模戦闘を制すれば叶うでしょう)



女友(そんなことのために、というのが私の率直な感想でした)

女友(独りただ生きるために生きるなんて寂しすぎます)



女友(出来れば考え直して欲しい)

女友(ですが命令によって説得することを物理的に禁止されている私には止めようがありません)

843 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:19:57.04 ID:biI/Iwp20

女友「…………」



女友(女)

女友(私の親友)

女友(ことここに至っては彼女だけが頼みでしょう)

女友(連合軍と王国軍の戦いの行方はどうなっているのか……?)





伝令「失礼します! 戦況の定期報告に窺いました!」

女友(ちょうどいいことに、そのとき謁見の間に伝令が姿を出しました)



男「ああ、頼む」

伝令「はい! では報告します! 連合軍と我が方との戦いはこちらの優勢で押し返しています!」

伝令「『組織』軍は同士討ちが加速し壊滅状態に! 城に侵入した『組織』の部隊も全てを拘束しました!」



男「要注意戦力は?」

伝令「竜闘士の少女は変わらず一人で我が方のドラゴン部隊と渡り合っています!」

伝令「伝説の傭兵、魔族は相変わらず姿を見せません!」



男「……そうか。下がって良いぞ」

伝令「はっ!」



女友(伝令は敬礼すると回れ右して謁見の間を後にします)

844 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:21:07.82 ID:biI/Iwp20

女友「…………」



女友(私たち王国軍の優勢)

女友(命令により協力しているとはいえ、心は連合軍の方にある私にとっては絶望の知らせでした)



女友(ですがこの結果も予想出来てはいました)

女友(王国軍 VS 連合軍&『組織』軍)

女友(両者の戦力は開戦時ほぼ同じくらいだったと思われます)



女友(ならばどうしてこのような結果になってしまったのか)

女友(ランチェスターの法則というものがあります)

女友(詳細は省きますが、一対一で個別に戦う近距離戦ではなく、銃や魔法などの遠距離から集団でやりあう戦場では)

女友(弾幕の密度などからして、人数が多くなるほど加速度的に有利になるのです)



女友(私と魔神の働きによって『組織』軍5000人を2人で突破した結果、そこに回さないといけなかったはずの戦力を他に回すことが出来て、じわじわと優位が拡大していった、と)



女友(連合軍がここまでの戦力を集めることが出来るのもこの一回のみでしょう)

女友(その一回限りの希望が費えようとしている)

845 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:22:03.92 ID:biI/Iwp20



女友「これは…………もう終わりですか」

男「いいや、まだだぞ」

女友「え……?」



女友(治療を終えて立ち上がった男さんからの反論)



男「おまえが考えていることは大体分かる。戦場での戦力差はもはや決定的だ」

女友「ええ、ですから……!」

男「だがこの戦いの運命は最初からそんなところで推移していない」

女友「……?」



男「結局のところ連合軍の勝利条件は俺を倒すことだからだ」

男「魅了スキルによる極端なワントップ構造でここまでやってきた王国だからこそ、俺をどうにかすれば一瞬で瓦解する」



女友「それは……そうですが」

女友(男さんは何を言いたいのか、今いち把握しかねていると)

846 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:22:40.50 ID:biI/Iwp20



男「イケメンたちが来る前に、一度護衛を付けて連合軍方面の戦場を見てきた」

男「女が戦う姿を見て……なるほど賭けに出てきたな、と感心したよ」



女友「何を言って……?」

男「噂をすればだ。来るぞ」



女友(男さんが天井を見上げます)

女友(つられて私も視線を上に向けたところで)



847 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:23:31.65 ID:biI/Iwp20



ガッシャーーーーン!!

女友(天窓が破壊されて、超スピードの何かが落ちてきました)



女友「っ……!!」

女友(その音と衝撃に思わず顔を背けます)

女友(落ち着いたところで何が降ってきたのかを見て……)



女友「どうして……?」

女友(疑問が沸き上がりました)



女友(王国軍と連合軍の戦場は王都の郊外で行われている)

女友(先ほどの伝令ではそこで戦っているはずの者が……時間的にこの魔王城に訪れられるわけがない)



女友(無理矢理突破したならしたで、先に警告の方が来るはず)

女友(要注意戦力の動きは重点的に確認するように通達が行われていました)



女友(なのに――)

848 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:24:52.00 ID:biI/Iwp20



女友「どうして……ここにいるんですか、女?」



女「ちゃんと『またね』って言ったじゃん。女友」





女友(竜の翼をはためかせる親友は私に一声かけた後、改めてこの城の主と向き合う)





女「さて、伝言は伝わってたかな。会いに来たよ――男君」



男「やっぱり来たのか、女」





女友(魅了スキルにより数奇な関係を築いてきた二人が)

女友(王国軍の魔王と連合軍の勇者となって)

女友(今、再び相対した)

849 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:26:51.41 ID:biI/Iwp20

<王都郊外・激戦区>

近衛兵長(私はその報告に最初自分が聞き間違えたのかと思った)



近衛兵長「何だと! 城に竜闘士の少女が現れただと!」

伝令「は、はいっ! 監視の者が超高高度から振ってくる姿を見たと……」



近衛兵長(王国軍の指揮を預かり、連合軍と大規模戦闘を繰り広げる私の元にもたらされた報告)

近衛兵長(なるほど竜闘士ならば地上から確認できないほどの高さまで飛び上がって、直接魔王城に降下することも可能かもしれない)



近衛兵長(だが、可能なだけで有り得るはずがない出来事だった)

近衛兵長(理由は至極簡単なこと)



近衛兵長「だったら今もなお、あのドラゴン部隊と戦っている姿は一体何なんだ!?」



850 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:27:49.88 ID:biI/Iwp20

近衛兵長(元々王国に組織されていたドラゴン部隊)

近衛兵長(今回の戦闘でも運用されているが、それに対して開戦当初から竜闘士の少女が一人で立ち向かい制空権の奪い合いとなっていた)

近衛兵長(一人で十数体のドラゴンと渡り合う少女がすごいというべきか、一騎当千の少女の進撃をどうにか止めていると見るべきか……)



近衛兵長(魔王城と戦場。二カ所に現れた少女)

近衛兵長(どちらかが偽物ということか?)

近衛兵長(いやだが報告が間違いでないのならば、超高高度からの降下など竜闘士でなければ出来るはずもないし、ドラゴン十数体と渡り合うことも竜闘士でなければ出来るはずがない)

近衛兵長(ならば――)





近衛兵長「……? 竜闘士?」





近衛兵長(二人の竜闘士)

近衛兵長(気づけば後は簡単だった)



近衛兵長「〜〜っ!! まさか最初からペテンに引っかかっていたというのか!!」



851 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:28:29.57 ID:biI/Iwp20

<激戦区・上空>



魔族「少女の魔王城突入を確認した」

傭兵「そうか……ならばもう細工は必要ないだろう」

魔族「ああ――『変身』解除する」





傭兵(魔族がスキルを解除すると……竜闘士の少女の姿から、褐色角付きのいつもの姿に戻った)





傭兵「『不可視(インビシブル)』の解除も頼む」

魔族「ああ、そうだったな」



傭兵(魔族が魔法を解除すると、私の姿も戦場に現れた)



852 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:29:07.63 ID:biI/Iwp20

傭兵(私たちが連合軍に力を貸している理由は一つ)

傭兵(少女を少年のところまで送り届けること)

傭兵(そのための策として考えた結果……私たちが二人一役で少女の姿に扮装することで、少女への警戒を外すのがいいと判断した)



傭兵(魔族の『変身』は変身した者の力を再現するが、竜闘士の力は別格のため再現できない)

傭兵(そのため少女の姿になった魔族の近くで、透明になった私がスキルを使うことでこれまで戦場を欺いてきた)

傭兵(策の提案と同時に、侵入路についても少女に一つアドバイスはした)



女『女友が残した抜け道は使わない方がいいんですか?』

傭兵『ああ。正直罠のにおいしかしない』

女『罠って女友がそんなことを……って思ってたから、この前も騙されたんですよね』

傭兵『それにわざわざそのようなことを竜闘士だから出来る強襲ルートが存在する』



傭兵(そしてそのアドバイス通りに上空から魔王城に侵入したようだ)

853 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:29:35.11 ID:biI/Iwp20

魔族「さて、これからどうする?」

傭兵「連中が魔王城に戻って二人の対面の邪魔を阻止するためにも、ここに釘付けにする」

魔族「なるほど……することに変わりはないというわけか。いや、私が少女のフリをする必要が無くなるからその分こちらの戦力追加となるな」

傭兵「気を付けろ。どうやら敵方の指揮は優秀だ。すぐ対応してくるだろう」



傭兵(近衛兵長、だったか。兵の運用などからしてかなりのやり手と見える)



魔族「分かった。とりあえずこのドラゴンたちをどうにかするか」

傭兵「懐に潜り込む。サポートは頼んだ」



傭兵(これまで二人一役の弊害として近距離スキルを使うことは出来なかったのもあるが、多数に囲まれても大変なので遠距離スキルで戦ってきた)

傭兵(遠巻きに削ってきた今なら、各個撃破していくことも可能だろう)



傭兵「行くぞ!!」

魔族「ああ」



傭兵(私たちはドラゴン部隊との戦いに挑む)

854 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:30:02.23 ID:biI/Iwp20

<魔王城・謁見の間>





女「あんまり驚かないんだね」

女(天窓をぶち抜いて侵入した私は落ち着いた様子の男君に問いかける)





男「ああ。一度王国軍と連合軍の戦場は見ていたからな。すぐに分かった、女が偽物だって」

女「魔族さんの変身を見破ったの?」

男「ずいぶんと似せるように努力しているのは分かったが、細かい癖が女と全く違ったからな」

女「まあ私も男君なら見抜くと思っていたよ」



女(私も男君も事も無げに言う)





女友「え、何ですか? この信頼しているのか、気持ち悪いのかよく分からないやりとりは?」

女(女友が何か言っているけど、久しぶりの再会に興奮している私の耳を素通りした)

855 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:31:13.49 ID:biI/Iwp20



男「それで? 俺の城に何の用だ?」

女「分かんないの?」

男「ああ」



女「告白……したんだから、返事を聞かせて欲しいと思うのは当然でしょ」



女(もう大昔のように思える、二週間ほど前の出来事)

女(学術都市の校舎の屋上で沈みゆく夕日をバックに私は告白した)



男「返事か。なら簡単だ。断らせてもらおう」

女「嘘吐き。ちゃんと答えて」



男「何を言っているんだ? 告白した、断られた。それで終わりの話だろう?」

女「ほらそうやって都合が悪くなると煙に巻く。男君らしいね」



男「話が通じてるのか?」

女「分かってる癖に」

男「……ちっ」



女(男君は舌打ちする。私の言い分を認めた証拠だ)

856 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:31:54.21 ID:biI/Iwp20



女「やっぱり答えるつもりはないんだね」

男「だったらどうする?」





女「力ずくで聞き出す」

女「男君の動きからしてすごい強化を受けているのは分かる」

女「でも竜闘士の私に勝てるはずないでしょ」





男「それはやってみないと分からないだろ」

男「……まあいい、どうせ永遠の孤独に至るためにどこかでおまえとは戦わないといけないとは思っていた」





女「永遠の孤独……?」

女(男君の言葉の中、それだけ意味が分からない)

857 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:32:36.22 ID:biI/Iwp20





男「今の俺は、おまえに守られていただけの俺じゃない」

男「変わったんだ。そして――全てを終わらせる!!」



女「よく分からないけど……これだけは言える!」

女「終わらせない! ここからが私たちのスタートだから!!」





女(剣を構えた男君が手加減なしに突っ込んでくる)

女(私も今この時は相対する者が愛するものであることを忘れ――否)

女(愛するものだからこそ全力で戦うことを選択する)



男「ふんっ……!!!」

女「『竜の拳(ドラゴンナックル)』!!」





女(剣と拳が交差する)

女(絶対に譲れない戦いの始まりだ)


858 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/09(土) 21:33:23.46 ID:biI/Iwp20
続く。

続きも近いうちに投げたいです。
859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/10(日) 00:15:39.97 ID:ETrckrtLo
乙ー
860 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/13(水) 23:04:38.19 ID:jcF5ixXz0
乙、ありがとうございます。

投下します。
861 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/13(水) 23:05:40.81 ID:jcF5ixXz0

女(始まった私と男君との勝負)

女(こうなる予感はあった)

女(私が説得したくらいで頑固な男君が意見を翻すはずがない)

女(力押しがどこかで必要になるとは思っていた)



女(だから想定外なのは二つ)

女(一つは戦う相手が男君自身だということ)

女(大量のエンチャントで強化するというその手段を私は予想していなかった)

女(そのせいで男君は竜闘士の私と勝負になるくらいの力を…………いや)



女「『竜の息吹(ドラゴンブレス)』!!」

男「『風爆(ウィンドブラスト)』!!」

女「くっ……!」



女(放とうとしたエネルギー弾が一足早く放たれていた男君の魔法に当てられて至近距離で誘爆)

女(余波を自分が食らってしまう)



女(二つ目は――男君に私が圧倒されていたことだ)

862 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/13(水) 23:06:08.47 ID:jcF5ixXz0



男「大きく引いてエネルギー弾をばらまく……何度その攻撃パターンを見てきたと思っている」



女(強化されたとはいえ男君の力は、伝説級である私に及ぶまでは行かない)

女(問題なのは私の行動パターンが読まれ切っていることだ)



女(私が次にどのように行動するかを読んで、それに対して完璧な対処をしてくる)

女(読まれていると分かっていつもと行動パターンを変えようと意識しているのに、それでもなお逃れられない)

女(小手先の戦いに対する読みだけじゃない。私という人間性全体を把握した読み)



女(そうだ、この異世界に来てから男君を守るために何度戦ったのか)

女(私の戦いを一番近くで見てきたからこそ)

女(私という人となりを知っている男君だからこそ出来る芸当)

863 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/13(水) 23:06:46.67 ID:jcF5ixXz0



女「『竜の翼(ドラゴンウィング)』!!」

男「『空石落下(スイケメンストーンフォール)』!!」



女(翼を生やし空中に逃げようという動きを阻止するように、頭上から石が降ってくる)

女(私はダメージ覚悟で石をぶち割りながらどうにか空中に留まる)



女「………………」

女(私だって男君のことは理解している)

女(男君が私の動きを予想するなら、私だって男君の動きを予想すればいい)

女(でも初めて戦う姿を見せる男君に、戦いの中で急成長していく男君にどうにも後手に回っているのが現状だ)



女(いや……本当に理解出来ているのかな?)



女(こうして直接会って話すことさえ出来ればどうにかなると思っていた)

女(何だかんだ話せば分かるんじゃないかと希望的観測を持っていた)

女(でも現実は私に攻撃する手を弛めない)



女(男君のことが分からない)

女(どうしてあの日私を置いて去っていったのか)

女(何を目的に動いているのか)

女(永遠の孤独とやらは何なのか)

864 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/13(水) 23:07:13.43 ID:jcF5ixXz0



女「ねえ、聞きたいことがあるんだけど!!」

男「『氷槍(アイスランス)』」



女(分からないなら問いただせばいい。私はそうやって生きてきた)

女(しかし、男君からの返事は魔法だった)

女(氷の槍を飛びながら避けて、なおも言葉を続ける)



女「どうして私たち戦わないといけないの!?」

男「『光爆弾(ライトボム)』」



女(飛翔ルートを潰すように爆発が私の目の前を覆う)



女「私たち好き同士なのに……戦うなんて間違っているよ!!」

男「…………」



女「男君!!」



865 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/13(水) 23:07:50.58 ID:jcF5ixXz0



男「好き同士だと……勝手に決めつけるな」



女(男君が攻撃の手を止めて言葉で応じる)





女「私の自惚れじゃなければ……そうでしょ」

男「だったらおまえの自惚れだな。俺はおまえのことが嫌いだ」



女「嘘だね」

男「どうしておまえが俺の気持ちを勝手に決めつける」

男「言い続けてれば現実になるとでも思っているのか?」



女「…………」



男「今のおまえにふさわしい言葉を教えてやる」

男「ストーカーだ」

男「不都合な現実を認めず、自分が思い込んだ世界を正しいと思う……たちの悪いストーカーだよ」



女(男君に酷いことを言われて……それでもその言葉は嘘だと思った)

女(これまで一緒に旅してきたから分かる直感だ)



女(でも……それこそが男君の言う思いこみだとしたら?)

866 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/13(水) 23:08:18.84 ID:jcF5ixXz0



女友「惑わされないでください、女!」



女(私の芯がブレようとしたそのとき、声がかかった)



女「女友……」



女(この場にいる三人目、親友である女友の声)

女(ここまで傍観していた女友)

女(おそらく何も出来ないように命令されていたはずなのに……それでも私のピンチに動いた)


867 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/13(水) 23:10:23.46 ID:jcF5ixXz0





女友「ぼんやりとは考えてましたが、今のやりとりで確信しました!」

女友「男さんの目的は――」

男「命令だ、口を閉じろ」

女友「んぐっ……!?」



女(女友の言葉が命令によって遮られる)





男「口出しできないように命令していたはずだが……まだ抜け道を隠していたか。強かなやつだ」

男「……そうだな、ちょうどいい」



女(男君は感心しながら女友の方に向かって進む)



女「何を……するつもりなの」



女(その後ろ姿に今まで見たことがない怖さを感じる)

868 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/13(水) 23:11:03.81 ID:jcF5ixXz0



男「おまえはこれまで命令のせいとはいえ俺のために尽力していた」

男「No.2の肩書きにふさわしい働きだった」

男「有能なやつだった」



男「だがな、肝心なときに裏切るようなやつが配下に必要だと思うか?」



女(そして女友の前に立った男君は)





男「命令だ、一切の抵抗を禁じる」

男「『闇の死神(ダークスカル)』」





女(手のひらから闇の奔流を――即死魔法を放って)





女友「…………」



女(ドサッ、と)

女(直撃を食らった女友は声もなくその場に倒れた)

869 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/13(水) 23:11:35.69 ID:jcF5ixXz0



女「女友!! 『竜の咆哮(ドラゴンシャウト)』!!」



女(衝撃波を放ちながら親友の元に急行する)



男「直線的な攻撃だな」



女(男君は特に防御することなく退いた)



女「ねえ、女友!! しっかりして!!」



女(倒れ込む親友の上半身を抱えて起こす)

女(しかし一切の力が抜けたように首も腕もだらんと垂れ下がる)

女(極め付きに胸元に耳を押しつけると――心臓の鼓動が止まっていた)



870 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/13(水) 23:12:08.41 ID:jcF5ixXz0



女「男君……どうして?」

男「世界の支配も目前、そいつは用済みだ」



女「……」



男「後は俺の支配にあらがう連合軍の旗頭、おまえをどうにかすれば完了する」

男「一時とはいえ一緒に旅した関係だ、殺さずに済まそうと思っていたが――」

男「おまえもそいつと一緒のところに送ってやろうか?」





女(おおよそ私の知る男君からは出てこないだろう言葉)

女(どうしてこんなことに……『囁き』のせいで……でもあれは本来の欲望を解放するもので……男君が本当はこうだった……いや、そんなはずが……何かの勘違い……)




女(動揺、疑問、混乱)

女(揺れ動く私の感情の中、一番表に出てきたのは)

871 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/13(水) 23:12:49.77 ID:jcF5ixXz0





女「よくも女友を――っ!!」





女(憎悪)

女(親友の命を奪った目の前の――敵に、私はもう一切の情けを掛けるつもりはなかった)





女「『竜の狂化(ドラゴンブースト)』!!!!」





女(これまでずっと使わずにいたそのスキルを発動する)

女(ただでさえ強い竜闘士の全ての力を狂化する代わりに、一定時間経つと大きな反動ダメージを受け戦闘不能になる)

女(強力だと分かっていながらも、×君をいついかなるときも守るために、戦闘不能な時間が出来るこのスキルを今まで使うわけには行かなかった)



女(でも……もうそれもいいから)

872 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/13(水) 23:13:42.40 ID:jcF5ixXz0



女「『竜の咆哮・三連(ドラゴンシャウトトリプル)』!!」



女(狂化された今、衝撃波を三発同時に放つことが出来る)

女(敵はどうにか二発の衝撃波を避けるが……逃がすものか、残りの一発が直撃する)



男「ちっ……『妖精の歌(フェアリーコーラス)』!」



女(敵はすぐに回復魔法を使用する。だがのうのうと回復を許すはずがない)



女「『竜の撃滅(ドラゴンブラスト)』!!」



女(狂化された全方位衝撃波)



男「『地の盾(アースシールド)』!!」



女(回避不能のその攻撃に地面からせり出したドーム状の防壁でやり過ごそうとしているが……甘い、その程度の盾は破壊して吹き飛ばす)



873 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/13(水) 23:16:54.64 ID:jcF5ixXz0



男「ぐっ……!」



女「人は誰だって幸せになるために生きている……でもね死んだらもう幸せになれないの!!」

女「おまえが、女友の幸せを奪ったんだ!!」



女「『竜の震脚・狙撃(ドラゴンスタンプスナイプ)』!!」



女(一点狂化された衝撃波を天空から打ち下ろす)

女(吹き飛ばされたその状態では流石に防御も間に合わなかったようで直撃して――その姿が飛沫となって消えた)





男「『火球(ファイアーボール)』!!」

女「『竜の重鱗(ドラゴンスケイルズ)』!!」



女(分身を掴まされたと判断した瞬間、防御スキルを発動)

女(背後から飛んできた火の玉をエネルギー防御で完全にやり過ごす)



874 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/13(水) 23:17:43.94 ID:jcF5ixXz0



男「ちっ、今のを防ぐか」

女「どうして……抵抗するの? 破壊させてよ……ねえ、破壊させてよ!!」



女(衝動が収まらない)

女(でも収める必要も無かった)

女(ちょうど目の前にぶつけるべき敵がいる)

女(その何と幸せなことか)



男「ははっ、そんなものか!? おまえの本気は! もっと憎めよ! 俺を!」



女(挑発してくる敵に返す言葉などない)



女「『竜の咆哮・三連(ドラゴンシャウトトリプル)』」



女(代わりに衝撃波三発を放つ)



女(目の前の敵を滅ぼす。それまで私は止まるつもりはない)

875 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/13(水) 23:19:36.13 ID:jcF5ixXz0
続く。
876 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/14(木) 03:20:27.96 ID:wJbCM6EBo
乙ー
877 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/20(水) 23:57:40.41 ID:NK1w9k6Z0
乙、ありがとうございます。

投下します。
878 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/20(水) 23:58:35.51 ID:NK1w9k6Z0

『竜の狂化(ドラゴンブースト)』

男(在りし日に、そのスキルの存在は聞いたことがあった)

男(十分間、ただでさえ強い竜闘士の全能力を強化する代わりに、その反動として効果時間が終わると戦闘不能になる)





男『ありがちな暴走技だな』

男(俺は一言で評した)





女『まあそもそもそうやって強化しないといけないレベルの敵がいるとも思えないし』

女『反動で戦えない間男君を守ることも出来ないし、使うことは無いと思うよ』

男(女もそのように言った)





男(それが今はどうだ)

男(その暴走スキルが使われただけでなく、その矛先は守ると言った俺に向けられている)

879 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/20(水) 23:59:53.76 ID:NK1w9k6Z0



女「『竜の息吹雨(ドラゴンブレスレイン)』!!」



男(いつもの数倍の量の追尾エネルギー弾が文字通り雨のように降り注ぐ)



男「『磁力球(マグネットボール)』!!」

男(戦いの中で急成長していく俺は、原始的な属性ではない魔法も使えるようになった)

男(打ち出した黒い球にエネルギー弾は吸われていくが……いかんせん数が多すぎる)



男「『重力場(グラビティフィールド)』!!」

男(周囲に重力の濃い力場を展開することでエネルギー弾を叩き落とす)

男(直撃は避けれられたが、その余波までは防げない)



男「くそっ……!」

男(『竜の狂化(ドラゴンブースト)』終わりまでまだ五分もある)

男(残り半分もやり過ごせるか……?)



女「ちょこまかと逃げおって……」



男(女の視線がこちらを向く)

男(込められた憎悪の感情によって反射的に身が竦む)



男(精神的に来るものがある……だけどそれが俺の選択した結果だ)

880 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:00:22.23 ID:nSQbQfde0



女「『竜の幻惑軍隊(ドラゴンミラージュアーミー)』!!」



男(武闘大会、決勝戦。傭兵さんとの戦いで一度だけ見せた幻惑スキル)

男(狂化されたことによって、女の分身が十数人と現れる)

男(それぞれが迫ってくる中どれが本物なのか、見抜けさせずに倒すという考えなのだろうが)



男「おまえだ」

男(殴りかかってきた八人目の拳を俺は受け止める。予想通り実体があった)



女「っ、何故……!?」

男「さあな、『音撃(サウンドブラスト)』!!」



男(指向性の音波を放つ。普通に攻撃しても竜闘士には効果が薄い、なら警戒されていないだろう音)

男(三半規管を狂わせてバランスが取れないようにしようとの考えだったが)



女「うるさい……!!」

男(特に効果はなかったようで振り払われる。逆らわずに俺は距離を取った)

881 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:00:48.49 ID:nSQbQfde0

男(狂化されているとはいえ、根底の考え方というものはそう安々と変えられるものではない)

男(女ならどうするか、その読みだけでどうにかこれまで凌いできた)

男(とはいえそろそろ限界か)



男(防ぎきれず掠ってきた攻撃の数々によりダメージが蓄積している)

男(さっきだって拳を避けきれずに受け止めた手のひらが未だに痺れている)



男(残り三分ほど)

男(もちろん暴走技を使っている相手を倒そうだなんて端から思っていない)

男(俺の狙いは時間切れによる戦闘不能のみ)



男(逃げ回るだけでいいのだが……果たして逃げきれるだろうか)

882 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:01:16.32 ID:nSQbQfde0



女「最初から……逃げ切るつもりか」

男(攻め気の無さに女も勘付いたようだ)



男「残りちょっとだろ。簡単に逃げられそうだな」

男(弱っているところを見せるつもりはない。俺は強がる)



女「『竜の翼(ドラゴンウィング)』」



男(女は翼を生やして飛び上がる)

男(謁見の間の天井まであがり、最初突入してきた突き破った天窓も通って、さらにさらに上へ)



男(逃げたわけではない)

男(女の狙いは読める。次の一撃で決めるつもりなのだと)

男(そのためには高度が必要なのだろう)



男(『竜の潜行(ドラゴンダイブ)』)

男(高所から急降下して攻撃するスキル)

男(それが狂化された今は――)

883 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:01:43.10 ID:nSQbQfde0





女「『竜の隕石(ドラゴンメテオ)』!!!!」





男(高高度から一点、俺をめがけて落ちてくる)

男(避けることはおそらく不可能だろう)

男(余波だけでこの謁見の間を吹き飛ばせる)

男(だったら受け止めるしかない)



男「『筋力強化(マッスルブースト)』」

男「『腕力強化(アームブースト)』」

男「『脚力強化(キックブースト)』!!」



男(エンチャントされた魔力で、ありとあらゆる強化魔法をかける)


884 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:02:31.96 ID:nSQbQfde0



男(そして次の瞬間、女が降ってきた)



女「アアアアアアアアッ!!!!」

男「うおおおおおおおっ!!!!」



男(拳を先頭にしたそれを受け止めた瞬間、俺の足が謁見の間の石張りの床を砕きめり込む)

男(それだけの衝撃があった)



男(初動は成功。だが、まだ女のスキルは終わっていない)

男(俺を押し潰さんと勢いを弛めない攻撃に、どうにか踏ん張ってみせる)



885 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:03:34.82 ID:nSQbQfde0



女「許せない、許せない、許せない……!!」

男「そうだ、許すな! 俺はおまえの親友の命を奪った男だ!!」



女「おまえなんか、×君なんか…………!!」

男「そうだ……俺なんか好かれる価値もない男だ!!」



男(お互いに意地を通そうと精一杯だ)

男(言葉を考える余裕もない、感情の爆発がそのまま叫びとなる)







男(至近距離でお互いの全てをぶつけ合うが……徐々に差が明確になってきた)

男(女の方が優勢だ)



男(そもそも単純な力勝負だ)

男(強化したとはいえ、狂化された竜闘士に敵うわけがない)



男(『竜の狂化(ドラゴンブースト)』終わりまで粘れればと思ったが……まだ少し時間があるはず)

男(それよりも先に俺の防御は打ち破られてぺっしゃんこだろう)

886 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:04:33.32 ID:nSQbQfde0



男(まあ……そういう結末も仕方がない)

男(俺は諦めて力を抜こうとした……そのとき)





男(女の力が先に弛んだ)





男「え……?」

男(どうして?)

男(効果時間終わりまではまだあったはず)

男(なのに……いや、夢中になり過ぎてカウントを間違えたのか?)



男(疑問が頭を埋め尽くす中、女は反動で戦闘不能となり)

男(その場に倒れ伏した)

887 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:06:35.33 ID:nSQbQfde0



男「締まらない決着だが……勝ちは勝ちか」



男(埋まっていた足をどうにか引っ張り出す)

男(そして俺は女を見下ろした)





女「………………」





男(息はある……だが立ち上がる力は無いようだ)

男(竜闘士といえどここまで消耗してはどうしようもない、殺そうと思えば簡単に殺せるだろう)



男(まあ、俺の目的はそんなところにはないのだが)







男「今のうちに全てを終わらせておくか」



男(俺自身に宿った唯一のスキル)

男(今度は暴発ではなく、自分の意志で発動する)

888 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:07:10.72 ID:nSQbQfde0







男「魅了、発動」







男(ピンク色の光柱の顕現)

男(時刻はもう夕方)

男(最後の攻防のせいで壁がボロボロになった謁見の間には直接夕日が差し込む)



男(光のコントラストが見事だ)

男(異世界冒険譚の終わりにふさわしい光景だった)

889 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:07:38.04 ID:nSQbQfde0





男「さて、と。ああ、忘れないうちに……命令を解除する、女友」

男「うーん、ようやく終わったかー……」





男(身を翻し晴れ晴れしい気持ちそのままに大きく伸びをしながら、俺はエピローグという名の余韻に浸って――――)





890 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:08:05.19 ID:nSQbQfde0





女「そういうこと……だったんだ」



男(背後で誰かが立ち上がろうとする音がした)





891 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:09:14.92 ID:nSQbQfde0





男「……命令だ、口を閉じろ」

男(付き合うつもりはない、俺は早速命令を下して)





女「黙らないよ。残念だったね、私は虜になってないから」

男(それでも口を開く少女に)





男「なっ……!?」

男(俺は心の底から動揺して振り返った)





892 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:09:48.91 ID:nSQbQfde0



女「許せない……許せなかった。女友の命を奪った人を――それでも嫌いになれない自分が」



男(ボロボロになった身体に鞭を打って)



女「×君なんか――男君なんか……思っても、想いは消えなかった」



男(立ち上がろうとしながら)



女「中途半端な自分が嫌になる……でもそれは男君も同じだったんだ」



男(言葉を紡ぐ少女)



女「おかげで全部分かった。男君はあの日……私と別れてからずっと――」



男(ヨロヨロと腕を上げ、俺を指さしながら)

男(核心を、真実を、想いを、言い当てる)



893 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:10:28.93 ID:nSQbQfde0







女「私に嫌われようと……していたんだね」







894 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/21(木) 00:11:07.55 ID:nSQbQfde0
続く。

次が最終章、最終話です。
895 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/21(木) 05:05:09.32 ID:fpuEIDNro
乙ー
896 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/25(月) 02:41:27.43 ID:sGpD2UUk0
乙!
897 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:37:17.29 ID:6xsigKqM0
乙、ありがとうございます。

投下します。
898 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:37:51.60 ID:6xsigKqM0

女(私には今全てが分かっていた)



女(全ての発端は魅了スキル)

女(最初から最後まで私と男君の関係にこのスキルは付きまとってくるのだ)

女(その詳細を私は思い出す)





 スキル『魅了』

 効果範囲:術者から周囲5m
 効果対象:術者が魅力的だと思う異性のみ

・発動すると範囲内の対象を虜にする。
・虜になった対象は術者に対して好意を持つ。
・虜になった対象は術者のどんな命令にも身体が従う。
・元々対象が術者に特別な好意を持っている場合、このスキルは効力を発揮しない。
・一度かけたスキルの解除は不可能。





899 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:38:36.40 ID:6xsigKqM0

女「男君の真なる目的……永遠の孤独」

女「それって文字通り誰からも干渉されないことを目指したんでしょ」



女「何でそう思うようになったのかは分からないけど……その場合邪魔な存在がいる」

女「それが私」



女「魅了スキルにかかっていないから命令することも出来ないし、男君のことを好きだからどれだけ突き放そうが構ってくる」

女「おまけに竜闘士というとてつもない力を持っているからタチが悪い」



女「どうにかする方法が無いかと思案して……魅了スキルを使うことを考えたんだよね」



女「『効果対象:術者が魅力的だと思う異性のみ』に私は当てはまる」

女「でも、もちろん私は魅了スキルにかからない」

女「『元々対象が術者に特別な好意を持っている場合、このスキルは効力を発揮しない』から」

900 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:39:06.86 ID:6xsigKqM0



女「だけど裏を返せば……私が男君への好意を無くせば魅了スキルをかけることが出来る」



女「だから男君は私に嫌われようとした」



女「宝玉を手に入れるだけなら過剰とも言えるのに、わざわざ王国を支配したのも」



女「王国の無辜の民を虐殺したって嘘情報を私たちだけに流したのも」



女「そして今の戦い。わざと私の憎悪を煽ったのも」



女「『俺はこれだけ悪いことをした。どうだ嫌いになったか?』ってことだったんだよね?」



女「全部、私に魅了スキルをかけるためだったんだ」



901 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:39:58.44 ID:6xsigKqM0





男「いや……違う。そうじゃないんだ」





男(女の言葉に俺は反対する)



女「何が違うっていうの?」

女「倒れた私相手に魅了スキルをかけようとしたこと、さっき私に命令したこと……」

女「全部そうじゃないと辻褄が合わない」



男(女の反論はもっともだ)



男(女の意見は全部当たっている)

男(別に俺も全てが暴かれて抵抗するつもりはなかった)

男(ただ一つだけ、訂正する箇所があった)

902 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:40:53.43 ID:6xsigKqM0





男「魅了スキルをかけるために嫌われようとしたんじゃないんだ」

男「嫌われたら魅了スキルをかけることが出来るってことなんだ」





女「……続けて」





男「始まりは……ああ、そうだ。学術都市で女に告白されたことだった」



男「嬉しかったよ。俺も女となら一緒に歩いていける。告白を受けるつもりだったんだ」



男「だけど直後に襲撃があって……俺を守るために傷つく女を見て思ったんだ」



903 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:41:42.15 ID:6xsigKqM0



男「俺なんかが女に釣り合うだろうかって」



男「確かに今俺と女は想い合っている。でもそれがずっと続くだろうかって」

男「俺の不甲斐なさは俺自身が一番知っている」

男「付き合うことになって、俺のどうしようも無さを間近で見るようになれば、きっと近い将来女は俺を嫌いになる」



男「いつか必ず訪れるだろうそのときが……俺は怖かったんだ」



男「だから……そんなことになる前に、先に嫌われようと思ったんだ」



男「今の内に嫌われれば受けるダメージは少なくて済む」



男「魅了スキルをかけることが出来れば、嫌われたという証明になる」



男「そうなって俺は『ははっ、やっぱりそうだよな』と思いながら、今度こそ誰にも関わらずに生きていく」



男「『永遠の孤独』……何も得られることが無い代わりに、何も失わないで済む世界で……ただただ生きて、そのまま朽ち果てるつもりだった」



904 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:42:17.86 ID:6xsigKqM0

男(骨の髄から陰湿してジメジメとした生き方)

男(自分から嫌われようとしたのに、やっぱり嫌いになったのかと見返そうという考え方)

男(どうしようもなく嫌になる俺なんかを――)





女「それでも私は男君のことを好きなままだった」

男「…………」





男(女は太陽のように照らす)

905 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:42:43.59 ID:6xsigKqM0



男「………………」

女「………………」



男(お互いがお互いを見つめ合う)

男(無言でともすれば切迫しているとも取られるかもしれないが、不思議と居心地は悪くない)



男(いつまでもこうでもいいと思い始めたところで――)



906 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:43:28.69 ID:6xsigKqM0



女友「だぁっもう、じれったいですね」



男(そんな雰囲気を壊すように、第三者の声が上がった)



女「女友……って、ええっ!? どうして!? 死んだんじゃなかったの!?」

女友「勝手に殺さないでください……って言いたいところですが、実際死んでましたよ。仮ですけどね」

女「仮?」





男(そう、俺は女友を殺していない)

男(即死魔法を打った闇の奔流の中で女友に仮死状態になるように命令して、さっきその命令を解除したから起きたというわけだった)



男(そもそも魔導士は魔法抵抗力が高いため無防備なところに即死魔法を受けても効果が発揮することはない)

男(女に嫌われるための策として咄嗟に思いついた方法だった)



女「よく分かんないけど……生きてて本当に良かったよ!!」

女友「ああもう、抱きつかないでください!!」

男(抱きつく女に揉みくちゃにされる女友)

907 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:44:00.59 ID:6xsigKqM0



男「女友、おまえにかけられた全ての命令を解除する」

男「……今まで、そして最後まで済まなかったな」



女友「男さん……謝れば許されると思ってますか?」



男「思っていない。どんな罰でも受ける覚悟だ」



男(俺は女友に、いや魅了スキルで支配して強制してきた全ての人に対して償いをしなければならないだろう)

908 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:44:44.94 ID:6xsigKqM0

女友「はぁ……とりあえずそれは置いておきます」

女友「さっさとやらないといけないことがありますから」



女友「私は今から軍の方に出向いて戦闘行為の停止を申告してきますね」

女友「男さんももう戦う理由が無くなったでしょうし、いいですよね」

男「ああ、頼む」



女友「了解しました。では私がまた帰ってくるまでにお二人も決着を付けておいてくださいね」



男「け、決着って……な、何を」



男(女友は人を食ったような笑みを浮かべている)

男(久しぶりに見る表情だ)

909 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:45:24.20 ID:6xsigKqM0



女友「分かってるでしょうに」

女友「今回の騒動は結局のところ異世界をまたに掛けた痴話喧嘩だったってことじゃないですか」

女友「ちゃんとケリを付けないとオチが付かないですよ」



男「だ、だが……」



女友「言い訳は聞きたくありません」

女友「帰ってきたときに何も進んでなかったら、この魔王城を吹き飛ばしますからね」



男(女友は物騒な発破をかけるとボロボロになった謁見の間を出て行った)

男(これで正真正銘女と二人きりになったわけだ)

910 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:45:55.54 ID:6xsigKqM0



女「男君」

男「……」



女「私からはもう何も言わないからね。だってもう伝えているから」

男「ああ、そうだな」 



男(俺は既に女から告白されている)

男(その返事をさっさとしろ、というのが女友も言いたかったことだろう)

男(どのように返事をするか考える)





女「………………」

男(待ちきれなくなった女はボロボロになった謁見の間を手持ちぶさたに歩き回る)

男(俺はその後ろを付いていきながら口を開いた)

911 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:46:38.55 ID:6xsigKqM0

男「なあ、女。その何言ってるんだって思われるかもしれないんだけど……」

女「うん」



男「あのときの告白……無かったことに出来ないかな」

女「……どういう意味?」



男「ああいや断るとかそういうんじゃなくて…………その、な」

男「こういうのって本当は男の方からびしっと言うべきだろ」

男「でも俺が不甲斐ないから女に言わせてしまって」

男「いや、やり直したってその何かが変わるわけじゃないかもしれないけど……」



女「もう……男君はズルいな」

男「いや、本当におっしゃる通りで」



女「違うよ。男君は私のツボをしっかり押さえていて……本当にズルいってこと」

男「……?」

912 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:47:04.89 ID:6xsigKqM0





女「うん、分かった。私はあの日何も言っていない」

女「それで男君は何を伝えたいの?」





男(女が振り返る)

男(話している間も俺たちの足は動いていて、ちょうどベランダに出たところだった)

男(眼下に王都を一望出来る絶好のロケーション)

男(正面にはあの日と同じく夕日が沈みゆく最中だ)



男(いざとなると決心も思考も必要なかった)

男(驚くほど自然に、するりと俺の想いを伝えるための言葉が紡がれる)

913 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:47:30.05 ID:6xsigKqM0





男「好きだ、女。これからもずっと俺の隣を一緒に歩いて欲しい」





914 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:48:03.19 ID:6xsigKqM0




女(ずっとずっと夢に描いていたものと一致していた)

女(お互いに落ち着いていて)

女(男性の方から言い出したのもプラス)

女(ちゃんと等身大の言葉で伝えてくれたのもプラスだ)

女(場所も完璧。沈みゆく夕日はどうしてこうも心の原点を浮き彫りにしてくれるのだろうか)





女(男君は頭を下げ、私に手を差し出して返事を待っている)

女(ここまで待たされたのだ)

女(少しイジワルでもしようかと思ったけど)



女(……駄目だ、もう私の心を抑えきれない)



915 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:48:29.80 ID:6xsigKqM0





女「男君、私も好きだよ。これからもずっとずっとよろしくね!」





916 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:48:56.57 ID:6xsigKqM0



女(その手を握ると感極まったように男君も顔を上げた)

女(ニコりと微笑んでみせると男君にぐいっと引っ張られて強く抱きしめられる)





男「ああ! ずっと、ずっと大切にするからな……!!」





917 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:49:24.79 ID:6xsigKqM0





こうして魔王君臨を発端に大戦とまで至った一連の騒動は決着を迎えたのだった。





918 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2020/05/27(水) 23:50:23.26 ID:6xsigKqM0

終章完結です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

投稿間隔が大幅に広がり、内容もグダったところが散見されましたが、思い描いていた結末までどうにか辿り着きました。



物語はこれで終わりではなく、エピローグへと続きます。
色々と取りこぼした要素を拾うのとその後を短く描いて今度こそ終わる予定です。



919 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/28(木) 00:55:13.14 ID:GOqfjXSDo
乙ー
920 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/28(木) 15:47:29.47 ID:wqS4McZg0
乙!
921 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/01(月) 00:29:09.59 ID:/zNaQyia0
乙!
922 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/08(水) 15:10:36.91 ID:IFbAdbapo
923 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/02(金) 04:32:42.05 ID:AISitEXSo
924 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/14(水) 13:12:38.02 ID:ph++uam/o
エピローグとは一体
925 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/15(日) 21:31:28.60 ID:EBjy4b8ro
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