男「恋愛アンチなのに異世界でチートな魅了スキルを授かった件」 3スレ目

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280 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/23(月) 04:41:44.52 ID:oA3RdXrfo
>>279
「話の最初部分」のつもりで書いてたんですが調べたら誤用なんですね
本来は「話の要点」でほぼ真逆の意味ですか……勉強不足でした

参考
http://www.bunka.go.jp/pr/publish/bunkachou_geppou/2011_07/series_08/series_08.html
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/23(月) 07:01:26.30 ID:22oGcbTj0
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/09/23(月) 08:16:30.91 ID:zSDW4dIgo
乙ー
283 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/25(水) 00:22:23.25 ID:grGVkp1N0
乙、ありがとうございます。

投下します。
284 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/25(水) 00:22:51.45 ID:grGVkp1N0



女友(どうもみなさんこんにちは。名探偵の女友です)



女友「……なーんて、女を馬鹿に出来ない思考してますね」

女友(女子寮のベッドに大の字であおむけに寝転がりながら、私は随分と失礼な言葉を吐きます)



女友(とはいえ私の功績を思えば名探偵と呼ばれてもおかしくないはずです)

女友(数日前、魔族が宝玉を狙っているという事を知った私は、研究室長にセキュリティの強化を進言しました)



女友(その結果、研究室は物理的な出入りを禁止して、中で研究員は泊まり込みで作業をすることになりました)

女友(元々宝玉の反応を一日中見るために研究員は二交代制で働いていたため、そこまで反対は多くありませんでした)



女友(そして内部での魔法発動の痕跡を記録する装置をセットして、仮に誰かが魔法を使って盗んだとしてもすぐにバレるようにして)

女友(完璧な密室が出来上がりました)



女友(一抹の不安があるとしたら固有スキルの発動は判別出来ないことくらいでしょうか)

女友(魔族が変身で既に研究員として潜り込まれていても見抜くことは出来ません)



女友(それでもこの警備の中盗むことは不可能だと……私は確信していて)

285 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/25(水) 00:23:26.25 ID:grGVkp1N0





女友(今朝、宝玉がすべて盗まれていることに気付きました)





女友(すぐに研究員を全員集めた結果、一人の研究員の姿が見当たりませんでした)

女友(しかし研究室の物理的閉鎖は解けておらず、魔法使用の記録も確認しましたが怪しい点は何も見つかりません)



女友(つまり人一人と宝玉が忽然と密室から姿を消したのです)

女友(騒然となる現場。それは私も例外ではありませんでした)



女友(一体、何が起きているのか。どうやって姿を消したのか、変身を使ってもこんな芸当は出来ないはず)



女友(考える私に対して、室長はそのいなくなった一人がどうにかして宝玉を持ちだし逃げたのだと判断してその人の行方を追います)

女友(私もその捜査に加わるべきと思いながらも……何か引っかかるところがあって……そして推理が繋がりました)

286 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/25(水) 00:23:58.73 ID:grGVkp1N0





女友(結論から言うと宝玉は研究室から持ち出されていなかったのです)

女友(魔族は宝玉を研究室の中の見つからない場所に隠し、研究員一人の姿を消させてそいつが持って逃げたのだと外に注意を向けさせて、ほとぼりが冷めた頃に宝玉を持って逃げるつもりでした)





女友(さて、一人姿を消させるといっても密室からどうやって姿を消したのかという話です)

女友(簡単なことでした……魔族は最初から一人二役を演じていたのです)



女友(二交代制の表の時間で働く研究員Aと裏の時間で働く研究員B)

女友(どちらも魔族が変身した者でした)



女友(そうです、消えた人間は一人ではなく二人だったのです)

女友(危うくAという最初から存在しない幻像を追い続けて騙されるところでした)



女友(私がそれに気づけたのも思えばAとBが一度も同じ場所に姿を現して無いことに気付いたからです。見事な探偵っぷりでしょう)



女友(そして魔族を追いつめて、宝玉をどこに隠したか吐き出させて……事件の解決です)

女友(武闘大会の時は『変身』スキルに煮え湯を飲まされましたが、今回はしっかり見抜くことが出来ました)



女友(残念ながら最後は逃げられて身柄の確保は出来ませんでしたが、魔族の悔しげな顔は、思い浮かべるだけでご飯三杯いけそうです)

女友(女が帰ってきたら武勇伝として今日の顛末を聞かせることにしましょう)

287 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/25(水) 00:24:31.13 ID:grGVkp1N0

女友「さて……」



女友(研究もちょうど終わったようで、元から研究室が持っていたのも合わせて宝玉六つが私たちの手に戻りました)

女友(これで元の世界に戻るまであと二つです)

女友(明日にでも次の目的地に向かうとして……しかし、まだ問題があるとすれば……)





男「失礼する!!」

女友「わっ! 男さん!? ちょっとノックくらいしてくださいよ!」





女友(そのとき突如として部屋の扉が開いて男さんが入ってきました)

女友(私はあわてて起き上がります)



男「あ、すまん……ちょっといてもたってもいられなくて……」

女友「全く私が着替えでもしていたらどうするんですか」

男「ごめんなさい……」

女友「それで何か用ですか、男さん……あ、そういえば宝玉についてですが、ちょっと騒動があってその話も……」



女友(自分の活躍を誰かに自慢したかった私は話を切り出そうとして)

288 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/25(水) 00:24:58.02 ID:grGVkp1N0



男「すまん、話は後で聞く! それより女はいないのか!」

女友「女ですか? ええと……分かりませんね」



女友(男さんの質問に私は周囲の気配を探ります)

女友(事件に立ち向かう私のところを訪れた女は、自分に『不可視(インビジブル)』の魔法をかけてほしいということで、合間の時間で対応しました)

女友(そのため男さんの近くに姿を消しているのだろうと思ったのですが……見当たりませんね)



男「そうか、じゃあどこに行ったのか心当たりはないか?」

女友「すいませんちょっと分からないですけど……しかし、いきなりどうしたんですか?」

女友「そんなに女のことを気にして。あ、もしかして何かヤバいことが起きたとかですか?」

男「いや、個人的な用事なんだが……そうか、いないならいいんだ。他を探してみる」



女友(男さんはぽりぽりと頭をかくと踵を返そうとします)

289 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/25(水) 00:25:25.75 ID:grGVkp1N0



女友「――!」



女友(私のセンサーにビビッと来るものがありました)

女友(女と男さんは魅了スキルにまつわる嘘で対立していたはずです)

女友(それなのに男さんから女のことを探して……いてもたってもいられない様子……個人的な用事……これはもしかして……もしかすると……!)





女友「女はたぶんそろそろここに戻ってくると思います」

男「そうか。なら待っていた方が」

女友「いえ、男さん。察するに女と大事な話をするつもりではありませんか」

男「……本当鋭いな、女友は」



女友(図星だったのか苦笑する男さん)



女友「だったらこの場所はマズいでしょう。女子寮の部屋はあまり防音も良くないですし、話を他の人に聞かれるかも知れません」

男「いや、でもそんな聞き耳立てるような人いるわけ」



女友「ですから人が来ない場所に……そうです、校舎の屋上に場所を移しましょう! ええ、そちらの方がムードがあります!」

男「あー確かに人は来なさそうだが……ムード?」



女友「とにかく男さんは先に行ってください! 女が帰ってきたらそちらに向かうように伝えておきますから!!」

男「え、あ、いや……まあ、はい。じゃあ頼んだ」



女友(男さんは釈然としないながらも私に伝言を託して部屋を去ります)

290 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/25(水) 00:26:05.37 ID:grGVkp1N0



女友「まさかいつの間に……何がきっかけで……しかしチャンスであることには……」



女友(私が事件に挑んでいる間に何かあったのでしょう、見逃したのは残念ですが……)

女友(いえいえ、メインイベントはここからのはずです)





女「ねえ、男君ここに来なかった!?」

女友(しばらくして、女が扉を開けて部屋に戻ってきました)





女友「ええ、来ましたよ」

女「やっぱり! ……あれ、でもいないけど」



女友「ちょうど入れ違いになったみたいですね。男さんも女を探していたようで……」

女友「ですから校舎の屋上で待っておくように言っておきましたよ」



女「屋上ね! 分かった!」

女友(女は事情を尋ねることなく、居場所を聞くとすぐに再び出て行きました)

291 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/25(水) 00:26:37.75 ID:grGVkp1N0



女友「ずいぶんと急いでいましたが……どうやら女にも何か心境の変化があったみたいですね」

女友「となれば、何か起こるのは確定でしょう」



女友(だとしたら私がするべき事は何か)

女友(大事な話をするとしたらそれを覗くのは無粋な行為です)

女友(それくらい私だって分かっています)

女友(事の顛末は終わってから二人に聞くべきです)





女友(だから私はこの部屋で大人しくして………………)

292 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/25(水) 00:27:05.38 ID:grGVkp1N0



女友「……。……。……」

女友「そういえばちょっと散歩したい気分ですねー……」

女友「何か誰にも見られたくない気分ですし、姿を消していきましょうかー……」



女友「『不可視(インビジブル)』!!」

女友(魔法を発動して姿を消します)



女友(散歩の目的地は当然、校舎の屋上です)





女友(……いえ、別に他意はないんですよ。今の時間夕日が沈むところが見られる絶景スポットですし、散歩コースに最適です)

女友(……そこに誰かがいたとしても私には関係ないですしね、はい)

293 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/25(水) 00:28:52.73 ID:grGVkp1N0
続く。

6章、一気に大詰めへと向かっております。
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/25(水) 01:17:42.10 ID:NXwAD2hqO
乙です
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/09/25(水) 02:16:42.85 ID:bX80Il5Mo
乙ー
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/25(水) 18:13:40.17 ID:uuN1zobMO
乙!
297 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/26(木) 23:47:24.82 ID:bd6hQY7n0
乙、ありがとうございます。

投下します。
298 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/26(木) 23:48:30.32 ID:bd6hQY7n0

男「はぁ……はぁ……ここか」

男(校舎の階段を駆け上がって、女友に提案された屋上に俺はやってきていた)

男(いつも開放されているこの場所は昼休みに外でご飯を食べる生徒に人気のスポットだとは聞いたことがある)

男(だが放課後を迎えた今はちょうど誰もいないようだった)

男(設えられたベンチに座り女を待つ)



男「…………」

男(俺はずっと女に騙されたことに傷付いていた)

男(嘘を吐いていたこと、それ自体は絶対的に女が悪いと思う)



男(だが、どうして女が嘘を吐いたのか……女が抱える事情について俺は本気で考えてこなかった)



男(あれだけ人を信じることの素晴らしさを説いてきた女が嘘を吐かないといけなかった事情だ)

男(よっぽどのことに違いない)

男(それでいてどうやらその事情のせいで魅了スキルがかからなかったわけだ)



男(そんな特殊な事情にあてはまるものは何かと考えて……思い当たる物があった)



男(女はもしかして本当は…………だとしたら女友の役割も…………そうだ、そうだとしか考えられない)

男(だとしたら俺が取るべき行動は……)

299 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/26(木) 23:49:21.92 ID:bd6hQY7n0



女「男君!」



男(そのとき上から声がかかった)



男「女か……」

男(見上げるとそこには竜の翼を生やした女がいた)

男(どうやら階段を駆け上がるのではなく、飛んでこの屋上までやってきたらしい)



男(女は次第に降下して俺の目の前に立つ)

男(俺もベンチから立ち上がった)



男(そして)





男「すまなかった!」

女「ごめんなさい!」





男(俺と女は同じタイミングでお互いに謝った)

300 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/26(木) 23:49:58.12 ID:bd6hQY7n0

男「……どうして女が謝るんだ? 悪いことをしたのは俺なのに」

女「男君こそ……悪いのは私なのに」



男「俺は……正直今でも女が嘘を吐いたことは悪いと思っている」

男「でも女は謝ったのに、俺はネチネチと嫌味を言っただろ」



女「私も男君の言葉はグサグサ刺さって辛かったけど……」

女「でも事情も言わずにちゃんと謝ったわけじゃないんだから、それは嫌味も言われて当然だし」





男「……」

女「……」





男「ははっ……何してんだろうな」

女「ふふっ……ほんと、おかしいね」



男(俺たちはどちらからでもなく笑い合っていた。同じようなことを考えていたからだろうか)

301 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/26(木) 23:50:33.40 ID:bd6hQY7n0

男「こんなささいなことなのにいがみ合って……馬鹿だな、俺たち」

女「男君は悪くないよ、悪いのは私だけだって」



男「……だろうな、嘘を吐かれたのは正直マジかって思った」

女「いや、まあそうだけど……え、そこは俺も悪いじゃないの?」

男「ははっ、まあその後の対応は俺が悪かったとも言えるけど…………あ、そうか」



男(梯子を外されて頬を膨らます女の表情を見て、ふいに自分の気持ちをしっかりと自覚した)





男「俺は女にだけは嘘を吐かれたくなかったんだ」

女「……え?」





男(突然の言葉に女はきょとんとした表情になっている)

302 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/26(木) 23:51:08.57 ID:bd6hQY7n0



男「いや、この言い方だと女友に悪いか?」

男「……でも女友のやつを信じてないってわけじゃないんだが、飄々とした言動で掴めないところがあるし……」



女「今は女友のことなんてどうでもいいから!」

男「それは酷くないか?」

女「ど、どうして……私にだけは嘘を吐かれたくないって思ったの?」



男(顔を真っ赤にして問いただす女)



男「それは……こう今まで一緒に旅して来たことを通じて……女のことなら信じられると思って……」

女「うん、それで?」



男(言いながら『あれ、これめっちゃ小っ恥ずかしいこと言ってね?』となりどもる俺だが、女は先を促す)

男(仕方ないのでそっぽを向きながら続ける)



303 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/26(木) 23:51:35.54 ID:bd6hQY7n0



男「だから嘘を吐かれたときに余計に傷ついたというか……」

男「いや、まあ今まで散々『俺は誰も信じない』とか言ってた癖に、都合が良いなってのは分かってんだよ」

男「でも……それが俺の本心で……」



女「私は嬉しいよ」



男(両手に暖かいものが触れる)

男(視線を正面に戻すと、女が俺の両手を握っていた)



304 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/26(木) 23:52:08.01 ID:bd6hQY7n0



男「女……」

女「ねえ、男君。私が抱えている事情ってやつ……教えようか?」



男「……いきなりどうした? それは隠しておきたかったことじゃないのか?」



女「そうだったけど……いや違うか。私はその事情を話したい」

女「信じてくれた男君に応えるためにも、嘘偽り無く私を明かすのが当然で……いや、それも違くて」



男「……」





女「私はもう我慢出来ないの。この気持ちを伝えたい……!」





男(女の訴えに俺は)

305 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/26(木) 23:53:03.77 ID:bd6hQY7n0





男「いや、正直なところ女の事情には当たりがついているんだ」

女「え……?」





男(女が来るまでに考えた通り、俺は気づいている)



男「人に言うことが出来なくて、俺の魅了スキルもかからなかったなんて事情……」

男「考えてみれば一つくらいしかないもんな」



女「そ、それって……い、いつから気づいて……!」



男「気づいたのは正直さっきのことなんだ」

男「……いや、そのすまんな。こんなに長く一緒にいたのに今まで気づいてやることが出来なくて」



女「いや、その……え、じゃあ私の気持ちがバレて……!?」



男「? 気持ち、ってのは分からないけど……まあ言い出しにくいことだよな」

男「でも俺も分かったから……これからは偽らなくてもいいから」



女「男君……」



男(顔を真っ赤にする女に俺は…………女が言い出せなくて、魅了スキルにかからなかったその事情を指摘する)



306 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/26(木) 23:53:36.45 ID:bd6hQY7n0











男「女……おまえ本当は男性なんだろ?」



女「………………………………………………は?」



307 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/26(木) 23:55:01.63 ID:bd6hQY7n0
続く。
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/27(金) 00:38:53.01 ID:X4DIyQa9O
乙!
此は酷いww
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/27(金) 00:42:07.37 ID:lxurISeyO
うんうん………うん?
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/27(金) 01:17:21.11 ID:C8Zv3ti90
乙ー
女さんこれは切れていいwwww
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/27(金) 05:54:07.76 ID:VR+zk/9T0

これは死んだな…
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/09/28(土) 07:46:17.46 ID:cm4qxG5PO
乙ー
313 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/29(日) 01:19:18.04 ID:WeyWxSMP0
乙、ありがとうございます。

狙ったところで狙った反響が来てとても嬉しいです。
創作モチベが上がりました。

投下していきます。
314 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/29(日) 01:20:10.85 ID:WeyWxSMP0



男『女……おまえ本当は男性なんだろ?』



女(男君のその言葉を、私の脳は完全に理解を拒んでいた)

女(オマエホントウハダンセイナンダロ……って、どういう意味だっけ?)



男「大丈夫、大丈夫。全部分かってるから」

女(思考停止した私に対して、男君は理解者面をしている)



男「魅了スキルの効果対象は『魅力的な異性』だ」

男「俺が魅力的だと思う人でも同姓ならかからないのは、観光の町のバーテンダーで明らかになったことだ」



女(バーテンダー……? あー、そういえばあの女装していた……)



315 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/29(日) 01:20:41.93 ID:WeyWxSMP0



女「えっと、つまり私も女装している男性だと思われているわけ?」

男「その通りなんだろ?」



女(したり顔の男君)

女(いや私は正真正銘、本物の女性なんだけど……)



女「これが男性の顔に見えるの?」

女(自分の顔を指さしながら聞く)



男「ああ、中性的な美少年なんだろ?」

女(好きな人から容姿を褒められているのにちっとも嬉しくない)



316 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/29(日) 01:21:35.99 ID:WeyWxSMP0

女(どうすればいいのか全く思いつかないでいると、男君は解説を始めた)



男「本当のところ女は大富豪の生まれなんだろ?」

男「それで家の古めかしいしきたりのせいで男性なのに女性のフリして生活しないといけなかった」

男「そういう設定の物語は何作品も読んだことがある」



女(普通の家の生まれなんですが)

女(というか私詳しくないんだけど、そんな特殊な設定の物語が何作品もあるものなの?)



男「とはいえ、男性が女性のフリをしたところでそんなに上手く行くのかという疑問が浮かぶだろう」

男「トイレだったり、体育の着替えの時間だったりで普通ならすぐに状況は破綻するはず」



男「だが協力者がいればその可能性は減らせる」

男「そう、女友だけは女が男性だってことを知っていたんだ」

男「女友のやつ女の事情を元から知っているって言ってたしな、うんうん」



女(勝手に協力者にされ話に巻き込まれる女友)

317 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/29(日) 01:22:17.75 ID:WeyWxSMP0

男「女友の家系は代々女の家系に仕えているんだろ?」

男「女と女友、お嬢様と近侍の関係でありながら、妹と姉のような関係で育ってきた二人」

男「女友は女の学校生活をサポートするために同じ学校に入学したんだ」



女(女友が姉なんだ……まあ私が姉って柄じゃないけど)



男「ん? そういえば女友の家は大富豪だって聞いたことあるな」

男「……そうか、誘拐対策に対外的には女友と女の立場を入れ替えているのか」

男「なるほど計算されている」



女(男君の計算が怖い)



男「しかし、そんな折りに俺たちは異世界へと召喚されて俺が魅了スキルを暴発させてしまった」

男「男性である女には魅了スキルがかからなかったが、そのことを明かしてしまうと今まで男性として生活してきたことがクラスメイトにバレて大問題になってしまう」



女(いや、みんなは普通に私が男君に好意を持っているんだ、って考えると思うけど)



男「だから女は男性であることを隠すため、魅了スキルにかかったフリをするしかなかったってことだ」



女(ドヤ顔で解説を締めくくる男君)

女(全く間違っているのに妙に筋が通っていて自信満々に言い切られると信じてしまいそうになる)

318 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/29(日) 01:22:49.75 ID:WeyWxSMP0



男「だからこれからは男同士……ははっ、改めて口にすると恥ずかしいけど、親友としてよろしく頼むな」



女(男君は右手を私に差し出す)





女「………………」

女(男君の誤解は私にとって都合の良いことなんだと思う)



女(これに乗っかれば今までのような生活を続けることが出来る)

女(魅了スキルにかかっているせいだからとしていたところを、私は男性だからと置き換えればいい)

女(男性だから仲良くしようよだとか、男性だからこれくらいのスキンシップ普通でしょだとか)



女(もちろん男君には嘘を吐いてしまっているけど、それにまた気づかれるまでは同じように過ごすことが出来る)

319 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/29(日) 01:23:36.66 ID:WeyWxSMP0

女(対して否定したらどうなるか)

女(当然のことながらどうして魅了スキルがかからなかったのかという疑問が再燃するだろう)

女(そうしたら男君も私が元から好きだったのだと気づくはず。……流石に、うん、きっと)



女(つまり告白したも同然で……今までの関係では絶対にいられない)



女(もしOKされれば晴れて恋人同士だ。今までよりも深い関係を男君と築けるようになる)



女(男君とは異世界に召喚された当初よりは心が通じ合っていると思う)

女(そう考えるとOKされる可能性は高いと考えたいが……しかしそれが恋愛的なものなのかと聞かれるとよく分からない)

女(男君が持っている感情が親愛だったり、冒険の相棒的なものでしかなかったとしたら致命的だ)

女(告白が断られる上に、男君は恋愛にトラウマを患っている)

女(好意を持つ私が得体の知れない何かのように見えてきて距離を取って接するようになるだろう)



女(そんな賭けに出るくらいなら……ここは安全に……)

320 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/29(日) 01:24:05.13 ID:WeyWxSMP0



傭兵『だったら少女も後悔しないように』



女「………………」

女(伝説の傭兵のアドバイスが思い起こされる)



女(後悔ならこの数日間の内に数え切れないほどしてきた)

女(どこかで男君に本当のことを打ち明けられなかったのか、このまま仲違いしたまま終わるなんて嫌だ、と)

女(男君の手を握れば、いつかまた同じ後悔をすることになるだろう)



女(いや、それだけじゃない)

女(男性として親友として一緒にいるなら、男君が誰かと恋人になったとしても私は文句を言うことも出来ない)

女(独裁都市の姫様は未遂だったけど、今後もそんなことが起きないとは限らないのだ)



女(だからといって動けば絶対に後悔しないとも限らない)

女(告白を断られて気まずくなって……決断した私に後悔するかもしれない)



女(それでも……同じ後悔はしないで済む)



321 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/29(日) 01:24:41.11 ID:WeyWxSMP0



女(どっちにしろ後悔するかもしれないなら……より積極的な方に、前向きな方に)

女(それが私の考え方だ)

女(だから……私は今の感情に素直になって)





女「ねえ、男君」

男「おう、女」





322 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/29(日) 01:25:12.51 ID:WeyWxSMP0



女「歯を食いしばってくれない?」

男「………………え?」



女「ふんっ!!」

男「痛っ!!?」



女(男君の頭にゲンコツを落とした)

女(竜闘士の全力で殴ったらヤバいのでかなり手加減して、それでも痛みを感じるくらいには力を入れて)



女「ふぅ……スッキリした」

男「いきなり何するんだよ、女!?」



女(男君が頭を押さえながらこっちを睨む)

女(目尻にすこし涙が浮かんでいるところを見ると、よっぽど痛かったようだ)



323 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/29(日) 01:26:30.51 ID:WeyWxSMP0

女「何したのかって……分からないの?」

男「分かんねーよ!? どうして差し出した手の返しにゲンコツを落とされるんだよ!?」



女「私、怒ってるんだよ」

男「怒るって…………俺に?」



女(男君は自分を指さす)



女「当然! だってこんな美少女に対して『本当は男性なんだろ』なんて侮辱言われたんだよ!?」

女「酷いと思わない!? 私はどこからどう見ても女性に決まっているじゃない!」

女「どうして男性だって思うのよ! 何が悪いの……胸なの、胸なの!?」

女「男性にも間違えられるくらいの胸の大きさだって言いたいの!?」



女(溜まった鬱憤が爆発して噴き出す)

324 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/29(日) 01:27:08.73 ID:WeyWxSMP0



男「え、えっと……でも、だったらどうして魅了スキルは……」



女(男君はすっかり私に怯えながらも気になることを聞いてくる)



女(ずっと前から夢描いていたものとは全く違った)

女(一方がキレていて、片方が怯えていて)

女(女性に言わせるのもマイナス)

女(勢いで口走ったような感じになるだろうこともマイナスだ)

女(女友が誘導してくれたこの場所、沈みゆく夕日の背景が本当最低限のムードを保ってくれているくらいだ)





女(それでも臆病者の私がこの機会を失ったら永遠に口に出来ないだろうことは想像が付いたから)



女(だから私はその想いを伝える)



325 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/29(日) 01:27:37.73 ID:WeyWxSMP0





女「ずっと……ずっと前から男君のことが好きだったの!!」





326 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/09/29(日) 01:28:09.00 ID:WeyWxSMP0
続く。
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/09/29(日) 09:46:01.45 ID:3j1/TdNxo
乙ー
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/29(日) 09:58:31.40 ID:dfGenh7q0
乙!此も酷いwwww
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/29(日) 12:17:45.60 ID:bKwtcmXq0
乙ー
男はもちろんだが、男性説受け入れることもちょっと検討しちゃう女さんもなかなか酷いwwww
330 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/02(水) 23:56:10.99 ID:Epl7oFYc0
乙、ありがとうございます。

>>329 か、考えるだけならタダですし……

投下します。
331 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/02(水) 23:56:50.26 ID:Epl7oFYc0



女『ずっと……ずっと昔から男君のことが好きだったの!!』



男(好き)

男(好意を伝えるその言葉はこの異世界に来てから魅了スキルにかかっている女の口から何度も聞いたことがあった)



男(今やその嘘は暴かれたというのに……また聞くことになるとは)

男(正直に言って、一番最初に浮かんだ感情は困惑だった)

男(だから)



男「すまん、女。俺ちょっと状況が分かっていなくて……整理させてくれないか」

女「うん、いいよ。何だかんだ唐突だったことは自覚しているし」



男(女は微笑を浮かべながら頷く。先ほどまでの怒気は霧散しているようだ)

332 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/02(水) 23:57:19.68 ID:Epl7oFYc0

男「まず……俺のことを好きって、魅了スキルにかかったフリを続けようとしている……わけではないんだよな?」

女「もちろん。これはスキルに操られていない私の純粋な気持ち」



男「ずっと昔、異世界に来る前から俺のことを好きだったから……」

男「だから魅了スキルの『元々対象が術者に特別な好意を持っている場合、このスキルは効力を発揮しない』に触れてかからなかった……ってことだよな?」

女「そういうこと」



男(女は優しく肯定する)

男(気持ちを打ち明けられて、俺もそこまではすぐに察することは出来た)



男(ここまではほとんど確認作業で……しかし、その先が本当に分からない)

333 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/02(水) 23:57:52.73 ID:Epl7oFYc0



男「でも……俺は女と異世界に来てからしか関わってこなかったはずだ」

男「学校にいる間はそれこそ一言もしゃべらなかったはず」

男「それなのに俺を好きだなんて……おかしいだろ?」



女「違うよ」

男「え?」



女「私と男君は一度だけ話したことがあるんだよ」

男「……本当か?」



男(記憶を遡ってみてもまるで覚えがない)

334 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/02(水) 23:58:28.45 ID:Epl7oFYc0



女「あれは一年くらい前のことだったかな」

女「あのころの私は誰からも好かれようと必死だった」

女「……いや、誰かから嫌われることに怯えていたんだと思う」



男(嫌われることに怯える……人間関係を気にしなかった俺とは真逆で、普通にありふれた思い)



女「とにかく八方美人で会う人に合わせて仮面を付け替えて……ついさっきと全く反対の考えを言っていることもよくあることだった」

女「でも当然のことだけど、そんな一貫性の無い人は嫌われやすくて……私何しているんだろうな、って悩んでばかりだった」



男(今でこそ学級委員長を務めて教室の人気者の女だが、昔はそうではなかったらしい)



女「そんなときのこと、私はしょぼくれながら教室を歩いていて、ちょうど男君の席の前を通りかかった」

女「男君は本を読んでいて全くこっちに注意を払っていない様子だった」

女「私もそのころは……失礼かもしれないけど男君のことは全然眼中になかった」

女「……いや、ちょっと違うかな。いつも独りでいる男君の姿にこうはなりたくないって思っていた」



男(女は申し訳なさそうに言うが、別に普通の感情だと思う)

男(孤独が一般的に避けたいことなのは俺にだって分かっている)

335 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/02(水) 23:59:12.96 ID:Epl7oFYc0



女「だから特に気にも留めることなく通り過ぎて……後ろからボソッと『そんなに人間関係に苦労して馬鹿みたいだな』って聞こえて」

女「慌てて振り向くと男君はちょうど本に目を落とすところで……直前まで私のことを見ていたことから幻聴じゃないことは分かった」



男(女が状況を具体的に教えてくれるが……それでも俺には覚えがなかった)

男(いや、ありすぎたと言うべきだろう)

男(嫌味や皮肉を本人に聞かれないようにつぶやく……周囲の人間を馬鹿ばかりだと思いこんでた俺はそんな馬鹿なことをよくやっていた)

男(その内の一つ、女に対してのものが聞こえてしまっていたのだろう)

336 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/02(水) 23:59:41.98 ID:Epl7oFYc0

女「最初はそんなこと言われてイラッとした。私の努力も知らない癖に何言ってるんだって」

女「……でもその一方で私の心の中にストンと落ちるものもあって」



女「そんな言葉を言ったのがどんな人なのか知りたくなって、それからしばらく男君のことを目で追っていた」

女「見ている内に男君は独りぼっちかもしれないけど、どんなときも自分を貫いて生きていることに気づいた」



女「どんなに周囲に人がいても、自分の定義が迷子になっている私とは反対で……私もそんな風になれたらいいなって思うようになった」

女「そうして自分を貫くように生活するようになって……もちろんケンカする事になった人もいた。離れていく人もいたけど、それ以上に私の周囲に人は増えた」



男(これまでの旅を通じて、俺は女によって自分を変えられた)

男(だが、それよりも前に女は俺によって変わっていたようだ)

337 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/03(木) 00:00:18.64 ID:nvoI9WT40





女「今の私があるのは……全部、全部男君のおかげ」

女「私に大事なことを教えてくれた……そんな男君のことが好きなの」





男(女の告白が終わる)





男「すまん、それだけ聞いてもそのときのことしっかり思い出せねえ」

女「いいよ。別にそれはただのきっかけでしかないし」

女「今の私はそれ以外にもたくさん男君の好きなところを持っているから」

男「…………」

338 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/03(木) 00:00:49.74 ID:nvoI9WT40



女「それより……その、返事は? 私、男君に告白したんだけど」

男「……ああ、そうだな」



男(好きだと告白されて返事をする)

男(迷うべきはYESかNOであるべきだ)



男(なのに俺は……この期に及んで、女の言葉が本当なのか嘘なのか悩んでしまっている)

男(人を信じられるようになって俺の中から無くなったのだと思っていたが……告白されて、人の好意を意識したことで再び鎌首をもたげたのは、今や呪縛となった恋愛アンチだ)



男(女の話が全部もっともらしい作り話で、返事をした瞬間に嘘でしたーって言われて、俺なんかが好かれる訳なくて…………)

339 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/03(木) 00:01:57.13 ID:nvoI9WT40

男「………………」

男(顔を上げていられない)

男(だんだんと俯いてしまう)

男(今度こそ傷を負わないように)

男(心の自己防衛が女の告白を否定していく)



男(別に女のことが嫌いなわけじゃないんだ)

男(想いを打ち明けられた今も、信頼できる人物だという評価に変わりはない)



男(……このまま聞こえなかったことに出来ないだろうか?)

男(たぶん女のことだから、俺が無かったことにしたら合わせてくれると思う)



男(そうだ、どうして告白に答えてシロクロはっきりさせないといけないんだ)

男(いいじゃねえか、今まで通り同じ目的を共にする仲間ってことで)

男(現状を維持すれば誰も傷つかないで済む)

340 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/03(木) 00:02:28.82 ID:nvoI9WT40





男「そんなの嫌だ」





男(それが自分の口から漏れ出た言葉だと気づくのに時間がかかった)



男(……そうだ、トラウマに飲み込まれていてすっかり忘れていた)

男(伝説の傭兵によって引き出された俺の後悔、反転して願望)



男(それは――お互いが心の底から愛し合う関係を作ること)



男(女となら俺の理想の関係を作れるはず)

男(いや、女と作りたい)

男(だったら傷つくことを恐れて現状維持していちゃ駄目なんだ)



男(女の気持ちに応えないと)

男(俺の気持ちを示さないと)



男(覚悟を決めて俺は顔を上げたところで――)



341 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/03(木) 00:02:58.98 ID:nvoI9WT40



女「男君……!!」



男(突然、女が抱きついてきた)



男「何を……!?」

女「『竜の翼(ドラゴンウィング)』!!」



男(驚く俺に対して、女は竜の翼を生やして俺を抱えたまま飛び上がる)

男(返事を待つことに我慢できなくなった女が行動に移したのかと、一体何をするつもりなのかと)



男(そんな思考は――)

342 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/03(木) 00:03:31.93 ID:nvoI9WT40







男(先ほどまで俺たちの立っていた位置に着弾する衝撃波と地面から突き出した黒い槍を見て真っ白になった)







343 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/03(木) 00:04:05.69 ID:nvoI9WT40



男「………………え?」



男(あれは……おそらく俺たちを狙った攻撃だろう)

男(女は間一髪で気づいて俺を抱え回避したのだ)

男(でも、一体誰が……)





女「どういうつもりですか?」





男(少し離れた場所に着地した女は臨戦モードに入りながら威嚇する)

男(その視線の先にいる襲撃者は)

344 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/03(木) 00:05:02.48 ID:nvoI9WT40



男「伝説の傭兵……?」



男(ほんの数時間前に俺の悩みを打ち明けて、真摯に相談に乗ってくれたその人)

男(……そうだ、さっきの衝撃波は竜闘士のスキルによるものだ)

男(女以外の竜闘士となるとこの人しかいない)



男(でも何で俺たちに攻撃を…………いや)



傭兵「流石に戸惑っているか」

傭兵「まあ戦場でも同じ日の内に敵対するのは珍しいことだ、恥じることではない」



男(傭兵はあくまで仕方ないというニュアンスではあるが、依然として臨戦態勢を解く気配はない)

男(その様子を見て本当に敵に回ったのだと、俺は理解した)

345 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/03(木) 00:05:31.58 ID:nvoI9WT40

男「………………」

男(元々帰還派と復活派で敵対する関係だ、いつかこうなることは分かっていた……)

男(でも、ここまで早いとは)



男(状況が動いたということだとしたら一体…………ヒントがあるとしたら…………先ほどの攻撃、衝撃波と同時にもう一つの攻撃が…………黒い槍、あれは、あの材質は、見覚えがある)





男(影で造られた槍だ)



346 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/03(木) 00:06:02.96 ID:nvoI9WT40



イケメン「どうやら気づいたようだね」



男(傭兵の影から人が浮かび上がった。その姿は俺にとって因縁深い相手)





男「イケメン……っ!!」

イケメン「やあやあ、久しぶりだね。武闘大会以来か」





男(俺たちと袂を分かったクラスメイト、異世界で授かった力で好き勝手することを選んだ駐留派のリーダー、影使いのイケメン)

347 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/03(木) 00:06:35.39 ID:nvoI9WT40

男「どうしておまえがここに……!?」



イケメン「おいおい、今さらそんな疑問がいるのか?」

イケメン「当然、君の魅了スキルを奪いに来たに決まっているだろう?」



男「ちっ……懲りないやつめ」

イケメン「それよりもっと気にすることがあると思うけど」



男(一々気に障る言動のイケメンだが……確かにそれ以上に気にしないといけないことがあった)

男(最初の攻撃、影に潜んでいたこと、そして今も隣に立っていること)



男(どうしてイケメンと傭兵が行動を共にしているのか)



男(駐留派と復活派はどちらも俺たちの敵だが、しかしその両者だって宝玉を奪い集める目的上、敵対関係にあるはずだ)



男(なのにこの事態は……)



348 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/03(木) 00:07:04.73 ID:nvoI9WT40





男「まさか……おまえ、復活派と手を組んだのか!?」

イケメン「ああ、そうさ。全ては目的を達成するためにね」





349 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/03(木) 00:07:34.94 ID:nvoI9WT40
続く。
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/03(木) 00:29:45.22 ID:WvZ3lHQc0

やはり邪魔が入るのね
頑張れ女
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/03(木) 16:04:30.02 ID:Tx33ldUs0
乙!
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/10/03(木) 17:41:00.31 ID:XqxtbhoAO
乙ー
353 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/06(日) 00:47:31.50 ID:pMzHR+FP0
乙、ありがとうございます。

>>350 このタイミングでくっつかれても困るので邪魔してもらいました。

投下します。
354 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/06(日) 00:49:26.06 ID:pMzHR+FP0

男(イケメンら召喚者を中心に犯罪結社『組織』のバックアップを受ける異世界駐留派)

男(伝説の傭兵と魔族からなる魔神復活派)

男(両者が手を組んだという事実は――)



女友「考え得る限り最悪の事態ですね」



男(いつの間にか俺たちの隣に姿を現した女友の言う通りだ)

男(……って、あれ? 本当いつの間に?)



女「女友……やっぱり覗いてたんだ」

女友「すみません、叱責は後からいくらでも聞きますから」

女「……まあ、探しに行く手間が省けたと見るべきかな」



男(女と女友のやりとりから、女友は女の告白をどこかに隠れて覗いていたということのようだが、そのことに構っている余裕も無い状況だ)

355 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/06(日) 00:50:05.13 ID:pMzHR+FP0

男「復活派と手を組んだことは分かった」

男「だけどどうしてどちらも宝玉を求めているはずのおまえたちが組めたんだ?」



イケメン「君の言うとおり、僕らも彼らも宝玉を求めている」

イケメン「君たち帰還派と違って必要な宝玉の数が多いことから、獲得した宝玉を分配する条件にしたとしても折り合いが付かないだろう」

イケメン「だが、僕はふと思い直したんだ。僕たちはそもそも何のために宝玉を求めているのか、とね」



男(イケメンはジェスチャーを交えながら話している。かなりの上機嫌のようだ)



イケメン「僕の目的は君を道具として魅了スキルを自由に使えるようにすることだ」

イケメン「そのために君の側を離れない邪魔な竜闘士、女を一時的にでも排除するために宝玉で悪魔を呼びだそうとしていた」



イケメン「つまり宝玉の収集はただの手段でしかないんだよ」

イケメン「別に竜闘士をどうにか出来るなら、悪魔を呼び出す必要も宝玉を集める必要も無い」

イケメン「そう考えると……おあつらえむきに女を圧倒した存在がいることに気づいたんだ」



男「まさか……!」

356 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/06(日) 00:50:44.32 ID:pMzHR+FP0

イケメン「それが伝説の傭兵と呼ばれる彼さ」

イケメン「試合形式とはいえ武闘大会では女に勝ったことから実力は十分」

イケメン「彼に協力してもらえるなら、僕らはもう宝玉も必要ない」



イケメン「だから僕らが現在持っていた宝玉四つ全てを差し出すという条件で、この場でだけ手を組んだというわけさ」



男(説明されてみると何とも簡単な発想の逆転だ)

男(一つ問題点があるとしたら)



男「復活派が宝玉を集めきり魔神が呼び出されこの世界を滅ぼされるのはおまえたちだって避けたいことのはずだろ」

男「なのにその復活派はおまえたちが宝玉を譲ったせいで今や7個所持している」

男「俺たちが持つ6個も奪われたら12個のラインを超えて魔神が復活するぞ」



イケメン「ああ、そうだけど……まあそのときはどうとでもするさ」

傭兵「…………」



男(一瞬イケメンと傭兵の間の空気がピリッとする)

男(完全な一枚岩では無さそうだが、突き崩すほどの隙では無さそうだ)

357 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/06(日) 00:51:11.55 ID:pMzHR+FP0

イケメン「そもそもその問題は君たちが宝玉を奪われた場合の話」

イケメン「僕のとりあえずこの場での目的は魅了スキルのみだ」



イケメン「どうだい女と女友。男一人置いていけばそれ以上は追わないと約束するよ」

イケメン「宝玉を持って逃げてもらえると面倒が無いんだけどさ」



女「そういえば私が男君を見捨てるとでも?」

女友「舐められたものですね」



男(イケメンの提案に女も女友も乗るつもりは毛頭も無さそうだ。何とも頼もしい)

358 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/06(日) 00:51:51.19 ID:pMzHR+FP0

イケメン「はぁ……これだから虜になった人たちは厄介だ」

傭兵「影使いの少年よ、ここは想定通り正面突破しかないだろう」

イケメン「そうだね、ちょうど二人の準備も終わったようだし」



男(イケメンと傭兵が視線を向けた先)

男(ダッ、ダッ、と何か打ち付けるような音……壁を走って登りこの屋上にやってきた二人が現れる)



ギャル「警備室の攪乱は終わったよ、イケメン」

魔族「これでしばらくは介入できないだろう」



男(ギャルと魔族)

男(それぞれイケメンと傭兵のパートナーとも言える二人が加わり、敵の人数が四人となった)

359 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/06(日) 00:52:19.69 ID:pMzHR+FP0

イケメン「ご苦労様、ギャル」

傭兵「全員揃ったか」



男(復活派は魔族と傭兵の二人のみだが、駐留派には他にも多くのクラスメイトと『組織』の構成員がいるはず)

男(しかし、この地に赴いているのはイケメンとギャルの二人のみのようだ)

男(それは助かる一方で、やつらの言葉が正しいとすれば、魔法学の権威であるこの学園に常駐する腕利きの警備員の助けも望めないようである)



女「戦力として私と傭兵さんが互角で、女友が魔族さんと互角……」

女友「そこにイケメンさんとギャルの二人も加わるわけですから……かなりきついですね」

女「戦いに付き合う必要もないし逃げの一択だけど……」

女友「それすらも許してもらえないでしょうね」



男(女と女友の戦力算用。聞けば聞くほどに絶望的だ)

男(さらに気を使っているのか、二人は俺の存在に触れないでいる)

男(戦闘中お荷物でしかない俺を庇いながらという条件も加わると…………これは、もう)

360 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/06(日) 00:53:00.54 ID:pMzHR+FP0



男「なあ二人とも……ここは俺が……」

女「駄目だよ、男君。自分を犠牲にするのは」



男(俺の提案は最後まで言う前に女が遮る)



女友「そうですよ、男さんを引き渡せばそれ以上は追わないと言いましたが所詮口約束です」

女友「守るとも思えません」

女「男君を危険な目に遭わせる訳にも行かないからね」



男「でも……」

男(それでも申し訳なさが振り切っている俺に)



女「大丈夫、私が男君のことを絶対に守るから」



男(女は宥めるように言って)

361 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/06(日) 00:53:40.84 ID:pMzHR+FP0



男(そして機は熟したようだ)



イケメン「さあ、やろうか」

ギャル「了解っと」

傭兵「少々心が痛むが……これも使命のために」

魔族「ちょうどいい、先ほどの借りも返させてもらおうか」



男(駐留派、復活派混成チームと)



女「男君しっかり掴まっていて!!」

男「あ、ああ!」

女友「サポート出来るときはしますが宛てにはしないでください!」

女友「私も自分のことでいっぱいいっぱいになるでしょうから!」



男(俺たち帰還派三人)



男(各勢力の中枢メンバーによる決戦……絶望の戦いが始まった)

362 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/06(日) 00:54:38.16 ID:pMzHR+FP0
続く。
短めですが、明日も投下するということで勘弁を。
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/10/06(日) 01:21:34.16 ID:WarFBzuQO
乙ー
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/06(日) 07:01:37.42 ID:yZMZjL6b0
毎度毎度話の展開がご都合主義出来レース感が拭えんな
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/06(日) 11:59:39.42 ID:rMWaMln90
乙!
王道モノにご都合主義なんて今更だわ
其を含めて面白く魅せるのが作者の腕の見せ所。
毎回、続き楽しみにしています。
366 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/07(月) 00:29:50.11 ID:h+ooci3F0
乙、ありがとうございます。

>>364 はい。

>>365 ありがとうございます。期待に応えられるように頑張ります。

投下します。
367 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/07(月) 00:30:36.72 ID:h+ooci3F0



傭兵「『竜の咆哮(ドラゴンシャウト)』」

女「くっ……!」



男(傭兵が発した衝撃波を空中にて紙一重で避ける女)

男(その背中にしがみつく俺もすぐ近くを通るゴウッ! という音にヒヤヒヤする)



女「こっちもお返しよ……!! 『竜の咆哮(ドラゴンシャウト)』!!」



男(女が衝撃波を放つが、既に距離を十分に取られていて攻撃が迫る前に余裕を持って避けられる)

368 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/07(月) 00:31:08.14 ID:h+ooci3F0

女「っ……でも、この隙に……」



男(竜の翼で飛び続けるのもどうやら体力がいるらしい)

男(一旦、学園の建物の屋上に着地して少しでも女は休めようとして……)

男(床と近づくにつれ大きくなる自分の影が不自然に蠢いた)



男「女……! こっちに来ている!」

女「分かってる!」



イケメン「『影の束縛(シャドウバインド)』!!」



男(女は着地せずに急上昇。こちらの身体を絡め取ろうとする影からどうにか逃げる)



イケメン「ちっ……逃したか」

男(術者、影使いのイケメンは舌打ちすると、また影に潜んだ)

369 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/07(月) 00:31:38.99 ID:h+ooci3F0

男(戦いが始まってすでに十数分)

男(先ほどから同じような応酬の繰り返しだった)



男(やつら駐留派、復活派混成チーム四人の役割は明確だった)

男(まず俺を抱える竜闘士の女には同じく竜闘士の傭兵をメインに当ててきている)

男(女友はどうやらギャルに追い回されているようだ)

男(魔族魔族は魔法を使ってその両者のサポートをして)

男(影使いのイケメンは影に潜みチャンスを伺いながら、遊撃や奇襲で女と女友どちらとの戦いにも絡んでくる)



男(立ち回り方はとても慎重で、まず第一に俺たちの逃走経路を封じ、協力されないように女と女友を分断してきて、絶対に深追いをしてこない)

男(遠巻きに削り続ければいずれは勝てるという算段だろう)



男(俺たちは学園の上空を広く使いながら、どうにか逃げられないかと試すが上手く行かないところだ)

男(離されているため女友が現状どうなっているかも分からないがあちらも手こずっているだろう)



男(当然地上の学園は騒ぎとなっていて、戦っている俺たちを何事かと見上げている生徒たちの姿が散見できる)

男(不用意に介入する者も巻き込まれた者もおらず、直接的な被害は出ていないようではあるが)

370 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/07(月) 00:32:50.90 ID:h+ooci3F0

傭兵「『竜の震脚(ドラゴンスタンプ)』」

女「なっ!? ……ぐっ!」



男(飛行経路を読まれ上昇するタイミングで上から衝撃波が降ってくる)

男(回避が間に合わず女に攻撃がかする)



男「女!!」

女「大丈夫……だから!」



男(傭兵は攻撃の手を緩めない。続く追尾エネルギー弾を女はどうにか縦横無尽に飛行して回避する。俺はしがみつくだけで精一杯だ)

371 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/07(月) 00:33:19.87 ID:h+ooci3F0

男「………………」



男(武闘大会での女と傭兵の力はほとんど同じだった)

男(なのに今回こうも攻防に差が出るのは、女が俺を背中に乗せているからだ)

男(丸々人一人分の重りを付けているのも同じで、そんなデバフを受ければ差が出て当然)

男(しかし、敵の目的が俺である以上安全地帯はどこにもなく、こうして女は俺を守りながら戦わないといけない)



女「男君が気にする必要は無いんだからね」



男(俺が自己嫌悪するのを感じ取ったのか、女は戦いの手を止めないまま言う)



女「大丈夫、私は男君から告白の返事を聞くまで絶対に倒れないから」



男(告白……あんなにドキドキした出来事も今はすごい昔のことのように感じられる)



女「それで……もしよければ、私の理想……お互いがお互いを思い合う関係を男君と築きたいんだ」



男(戦場に似合わない願望の吐露に……)

372 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/07(月) 00:33:47.77 ID:h+ooci3F0



男「っ……」

男(俺は動揺していた)



男(その理想が俺と完全に一致していたからだ)

男(こんな偶然あるだろうか?)

男(いや、あるはずがない)



男(だとしたら……これは運命だ)



男(果て無き未来を同じ思いを持った二人で歩む……そんな姿を幻視する)

男(そのためにもこんなところで躓くわけには行かない)

373 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/07(月) 00:34:15.63 ID:h+ooci3F0



男「俺だってこの学園で遊んでたんじゃねえぞ」



男(そうだ、授業で教わり放課後何度も練習したプロセス)

男(大気中の魔素を集めて、魔力に変換し、魔法として放つ――)



男「『火球(ファイアーボール)』」



男(成功した)

男(火の玉一つが傭兵に向けて飛んでいく)

男(衝撃波や多量のエネルギー弾が飛び交う戦場で何とも貧弱な攻撃だが、これで倒せるなんて当然思ってもいない)

男(だが防御なり回避なりして少しでも隙が出来れば――)

374 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/07(月) 00:34:42.72 ID:h+ooci3F0



傭兵「『竜の息吹(ドラゴンブレス)』」



男(俺の思いも儚く)

男(傭兵は迫る火球を特に気にも止めずエネルギー弾を放った)

男(そのため直撃した火球は……特に影響は無さそうだ。竜闘士の魔法耐性が完全に打ち消したのだろう)



女「男君、しっかり掴まっていて!」



男(魔法を放つため片手を離していた俺に女が忠告する)

男(俺はその言葉に従い掴まったところで、女がエネルギー弾を避けるために飛び回って)



女「痛っ!」

男(今度は一発当たってしまった)

男(しかし女は避けきれないと悟った瞬間に背中ではなく正面から当たるように調整したようで俺は無傷だ)

375 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/07(月) 00:35:25.67 ID:h+ooci3F0

男「………………」

男(俺はどうしようも無いほどに無力だった)

男(少しでも戦う力があれば女の負担を減らせるのに)

男(現実には全くの役に立たなくて……そんな俺を庇うせいで女が傷付いていく)



男(お互いがお互いを想い合う……愛さえあれば何とでもなると、そんな言葉がまやかしであることは今日日、子供でも知っていることだ)



男(俺の自惚れでなければ女は俺のことを思ってくれている)

男(俺だって女のことを思っている)



男(だがそれだけではどうにもならない現実が目の前に存在している)



男(……俺に女の隣にいる資格はあるのだろうか?)

男(俺に力さえあればこんなことにならなかったのに)



男(大それたことは望まない)

男(俺の手の届く範囲だけでいい)



男(女を守るための力が欲しい)



376 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/07(月) 00:35:54.08 ID:h+ooci3F0







幼女『どうしたの、お兄さん?』







男(どこからか声が聞こえた)

男(幼女の、すっかり聞き慣れた声)

377 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/07(月) 00:36:36.84 ID:h+ooci3F0



男「すまん、今忙しいんだ」



男(この幼女とはこの数日間幾度と無く話してきた)

男(話すことで俺の気が楽になることもあった)

男(だが、今がそんな場合でないことくらいは分かっている)



幼女『ええー、せっかく繋がったからお兄さんといっぱい話したいのに』

男「だからすまんって、また後でいっぱい話してやるから」

幼女『もう、今話したいのに』



男(声しか聞こえないが、幼女がぶうたれる姿が想像付いた)

378 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/07(月) 00:37:15.08 ID:h+ooci3F0



男(そんなことより現状をどう打破するかだ)

男(俺の魔法が全く効かずに絶望仕掛けたが、女が頑張っているのに俺だけ諦めるわけには行かない)

男(俺に力があれば楽だったが、無いものねだりをしてもしょうがない)

男(どうにか糸口のようなものでもないか思考して――――)



幼女『ねえねえ、お兄さん』

男「ああもう、だから何だ!」



幼女『聞き間違いかと思ったけど……お兄さんちょっとおかしなこと言ったよね?』

男「…………」



男(話すことを止めない幼女に俺は無視をしようとして)

379 : ◆YySYGxxFkU [saga]:2019/10/07(月) 00:38:18.61 ID:h+ooci3F0





幼女『力が無いって言うけど…………お兄さんの中には、私を封印したあのお姉さんの力があるよね?』





男「……え?」

男(到底無視できない言葉が飛び込んできた)



幼女『だってそれを起点にリンク出来たはずだし』



男(俺の中の力……魅了スキル……女神と一緒の力…………女神が封印したのは………………だとしたら、この声の主は……)



男「おまえまさか……っ!」

幼女『私のことはいいから! お兄さん立て込んでるんでしょう?』



男(幼女の声が聞こえた瞬間、俺の心の中に不思議な感覚が起きて――――)

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