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男「恋愛アンチなのに異世界でチートな魅了スキルを授かった件」 3スレ目
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1 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/06/30(日) 23:47:41.31 ID:TTVCF0vB0
この話はクラスメイト丸ごと異世界召喚された主人公の高校生『男』が元の世界に戻るために奮闘する冒険ファンタジー時々ラブコメな話です。
以下、物語序盤の簡単な流れ。
クラスメイト全員と異世界に召喚された男
↓
召喚された際に全員不思議な力を授かっていて、男はその中でも特異な魅了スキルを授かっていた
↓
そのスキルを誤って発動させるとクラスメイトの『女』とその親友『女友』が虜になる
↓
しかし男は恋愛がトラウマになるような過去を持っており、二人に迫られるその状況から逃げ出してしまう
↓
逃げ出した先に現れたのはクラスメイトの『イケメン』。イケメンは魅了スキルを持った男を、女性を支配出来る道具として見ており、力でもって男を屈服させようとする
↓
抵抗も出来ず男が諦めかけたそのとき女が助けに入る。その身に授かった力でイケメンを退ける。
↓
男は助けてもらった恩として、女の求めに応じパーティーを組むことを了承。女友も加えて三人で元の世界に戻るため異世界での冒険が始まった。
と、大体こんな感じです。
気になった方は下の1スレ目から読んでください。このスレは3スレ目です。
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1541083316/
この作品は『小説家になろう』でも投稿しています。なろう版はこちらです。
http://ncode.syosetu.com/n3495fc/
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1561906061
2 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/06/30(日) 23:50:07.44 ID:TTVCF0vB0
ここからは既に読んでいる方向けの振り返り用の人物・キーワード紹介です。
紹介文は全て現時点、五章途中時点での内容です。
帰還派……元の世界に戻るため宝玉を集めるクラスメイトたち。古参商会がバックアップしている。
男
この作品の主人公。どんな異性も虜にして命令に従わせる魅了スキルを持つ(条件あり)恋愛アンチだが、徐々に改善されている様子も見られている。
女
この作品のヒロイン兼第二主人公。その身に授かった竜闘士の力は、比類する者がほとんどいない強さである。
男のことが異世界に来る前から好きなため、魅了スキルの条件により虜にならなかったが、それを明かすと好きであることがバレるため、虜になっているフリをしているというややこしい状況である。
女友
女の親友でパーティーの一員。魔導士であり、様々な魔法を使える。
女の事情を全て分かっておりからかったりアシストしたりする役得かと思えば、放っておくとすぐに悩みを抱える二人のサポートに忙しく実は苦労人である。
気弱
4章武闘大会で出会ったクラスメイトの少年。騎士の職を持つ。
気が弱いがやるときはやる。姉御に想いを伝えて現在ではカップルに。志を新たにして元の世界に戻るために奮闘している。
姉御
4章武闘大会で出会ったクラスメイトの少女。職は癒し手。
姉御肌の豪快な少女とみせかけて、乙女な一面も持つ。気弱と付き合ってからはその面が顕著に表れるようになった。
3 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/06/30(日) 23:51:03.96 ID:TTVCF0vB0
駐留派……授かった力でもって異世界で好き勝手して生きていこうというクラスメイトたち。男の魅了スキルを狙う者たちとイケメンに協力するよう囁かれた者たちがいる。
異世界での地盤を確保するため『組織』という犯罪結社の一員になっている。
イケメン
駐留派の中核。男の魅了スキルを手に入れて、女を支配することを狙っている。
職は影使いで普通のクラスメイトとは一線を画する力を持つ。しかし女の竜闘士はその更に上を行くため、対抗するために宝玉を集めて悪魔を呼び出そうとしている。
チャラ男
4章武闘大会で登場、イケメンとは親友。職は盗賊。
面倒なことは御免がモットー。恋愛観も同様のため、付き合ったり別れたりを繰り返している。そこが一人の女に執着するイケメンとは決定的に違う点。
ギャル
イケメンの彼女で心底から惚れているが、当のイケメンは見てくれだけはいいからキープしているという扱い。
『組織』の仕事として以下の三人と共に独裁都市に出張っている。
デブ
クラスメイトの一人。魅了スキルのおこぼれに預かるためイケメンに協力中。
メガネ
クラスメイトの一人。イケメンに騙され協力中。
レズ
クラスメイトの一人。女でありながら女が好きなため、魅了スキルのおこぼれに預かるためイケメンに協力中。
4 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/06/30(日) 23:52:38.15 ID:TTVCF0vB0
復活派……宝玉を使って現在虚無の世界に封印された魔神を蘇らせようとしている。
魔族
太古の昔、魔神と共にこの異世界を滅ぼしかけた一人。魔神が封印された後、元いた世界に戻った他の魔族とは違ってこの世界に一人残った。
種族として固有スキルという他とは一線を画す力をそれぞれ持つ。この魔族が持つのは『変身』で看破することが不可能な隠蔽スキル。
濃い褐色肌で頭には二本の角が付いている女性。
傭兵
先の大戦で英雄的な活躍をしたが、その後行方不明となっていた。武闘大会にてその姿が久しぶりに確認される。
職は竜闘士で、同じ力を持つ女と力は同等。
最終的に世界を滅ぼすつもりの魔族に協力している。
歳30は過ぎたおっさん。
滅んだ故郷、王国との関わり、魔族とどう出会ったのか、などは今後語っていく予定。
5 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/06/30(日) 23:53:44.59 ID:TTVCF0vB0
キーワード
女神
太古の昔、仲間と協力して魔神を封印した一人の女性。魅了スキルの持ち主だった。
その功績から女神教という彼女を称える宗教が存在する。
男たちクラスメイトをこの世界に召喚したその人。
魔神
太古の昔、この世界を滅亡寸前まで追い込んだ存在。そのときの出来事は『災い』と呼ばれている。
現在魔族が復活させようとしている。
世界
男たちが元いた世界、召喚された異世界、その他にも世界とは数多に存在する。
宝玉
世界を渡る力を持つ物質。数を集めることで力が増すという性質から、一カ所にまとめて保管しては危険と、各地の教会の女神像につけられて分散管理されていた。
二つからゲートを開くことが出来るが、繋がる先の世界を指定することが出来ない。
四つで繋がる先の世界にどれだけの力があるのか、繁栄しているのか指定できる。
六つで完全にどの世界に繋がるか指定できる。しかし不安定のためわたれる人間は一人か二人が限度。
八つでゲートが安定して多数の人間でも通れる。
十個で高位存在を呼び出せる。
十二で神も呼び出すことが出来る。
強さ
異世界での強さは職に依存し、大まかな階層がある。
伝説級……女や傭兵の竜闘士が該当。
最強級……女友の魔導士やイケメンの影使いが該当。
達人級……その他クラスメイトが該当。
一般級……異世界の一般人の強さ。
男は戦う力を持っていないためさらにその下となる。
6 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/06/30(日) 23:54:24.99 ID:TTVCF0vB0
というわけで振り返りはここまでです。
ここからは本編、5章独裁都市編の二スレ目からの続きになります。
それではどうぞ。
7 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/06/30(日) 23:55:03.09 ID:TTVCF0vB0
男(現れた事態の元凶とクラスメイト二人)
男(近衛兵長は俺に問いかける)
近衛兵長「竜闘士……手紙によってこの都市を出て行った姿は部下に確認させていた」
近衛兵長「なのにどうしてこの場にいる? 貴様が何かしたのか?」
男「俺がしたことはちょっとした仕掛けだけ。後は全部女の功績だ」
男(手紙に関係なさそうな命令を追加することで、自分の陥った現状を知らせ助けに来れる状況を作ったが)
男(女の助けたいという気持ちが無ければ全部水泡に帰していた)
女「も、もう……そんな照れるよ〜」
男(らしくない俺の褒め言葉にこそばゆそうにしている女に)
メガネ「女……あなた本当に変わったわね」
男(メガネは苦々しい面持ちだ)
8 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/06/30(日) 23:55:44.60 ID:TTVCF0vB0
女「変わったってどういうこと?」
メガネ「それも分からないようじゃ重症よ!」
メガネ「どうしてそんな冴えない男に惚れている現状がおかしいと思わないのよ!」
女「……」
メガネ「魅了スキルが全部あなたを狂わせたんだわ!」
メガネ「私が駐留派に入ったのは一番にイケメン様のため、そして二番目はあなたを解放するというその意志に賛同したからよ!」
男(おそらく異世界に来る以前の女と交流があったのだろう)
男(メガネの叫びに、俺は心の中で「さもありなん」と同意する)
男(俺が冴えない男だというディスリは俺自身が認めるし)
男(そんなやつに惚れさせられてる状況を見れば助けようという気持ちは分かるところだ)
男(俺だって魅了スキルが解除出来るなら今すぐにでも解除を………………うん、まあ)
9 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/06/30(日) 23:56:19.49 ID:TTVCF0vB0
女「そうね、私が魅了スキルにかかっているってことを考えればメガネの気持ちも納得出来る」
男(心の中で言い淀んでいると、女は正面からメガネを見据えていた)
女「でもね。それを差し引いて考えても……他人の想いを否定する権利なんて誰にもあるわけが無いのよ!」
メガネ「だからそう思っていること事態が魅了スキルの影響だわ!!」
男(女の主張は納得できる)
男(しかし、俺の魅了スキルはその想いすら変えてしまうため、メガネの主張も否定できない)
女「……ごめんね、メガネ。私が悪いのに心配させて」
女「本当は事情を明かすべきなんだろうけど、今のあなたとは対峙する立場だから……」
男(女が何かぼそっと呟くが聞き取れない。苦渋の表情を見るに自嘲の言葉だろうか)
10 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/06/30(日) 23:57:18.01 ID:TTVCF0vB0
デブ「そんなことより近衛兵長さん! 司祭はどこに行ったか聞いていないか!」
デブ「あの人が警備の誘導をしてわざと穴を作る予定だったはずだ!」
デブ「なのにその仕事を放棄したせいで、部下が想定以上に損耗している!」
男(太った少年が近衛兵長に食ってかかる)
男(その言葉に俺も結婚式始まってからずっと司祭の姿を見ていないことに気付く)
男(同じ陣営なのにこのタイミングで聞く少年からして、俺たちの前には三人一緒に現れたがちょうど合流直後で話す時間が無かったというところだろうか)
男(少年の激しい剣幕も何のその、近衛兵長は涼しい顔して衝撃の言葉を吐いた)
11 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/06/30(日) 23:57:48.52 ID:TTVCF0vB0
近衛兵長「司祭か……やつは死んだぞ」
デブ「……なっ!?」
近衛兵長「正確には私が殺した、だがな」
デブ「ど、どうして……」
近衛兵長「さあな。事情を教えることは契約に含まれていないはずだ」
男「……」
男(独裁都市と『組織』が一枚岩ではないとは思っていた)
男(しかし、近衛兵長が司祭を殺したとなると独裁都市内も一枚岩では無かったようだ)
男(近衛兵長はこれまでに何人も殺しを行ってきた。それが今さら一人増えたところで驚くことはない)
男(だが、どうして司祭を殺したんだ? 付き従っていたのはフリなのか? 裏切るにしてもどうしてこのタイミングで……?)
男(考えても分からないことばかり。そして近衛兵長も説明するつもりは無さそうだ)
12 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/06/30(日) 23:58:25.05 ID:TTVCF0vB0
近衛兵長「竜闘士の乱入は予想外だったが、やるべきことは変わりない」
近衛兵長「姫様、あなたの命を貰い受けます」
姫「ひっ……」
男(近衛兵長の殺気に姫は短く悲鳴をあげて、俺の後ろに隠れる)
男「いや、俺を盾にされても庇いきれないんだが……」
男(おそらく俺ごと貫かれるのがオチだろう)
姫「そ、そう言われましても……!」
男(震える姫が後ろから抱きついてくる。それだけ恐怖を覚えたのだろうが、動きにくい上に……)
女「ねえ男君、よく分からないけど敵の狙いって姫様なんでしょ。今からでも差し出して逃げようよ」
男(女がじとーっ、とした目で見てきて何とも罪悪感を刺激される)
男(その言葉は冗談のはずだ…………本気じゃないよな?)
男(戦場でいちゃついてるとも取れる行動に怒っているのが半分、もう半分はヤキモチだろう)
13 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/06/30(日) 23:59:11.95 ID:TTVCF0vB0
近衛兵長「何を言っている。私の狙いはそちらの少年もだ」
近衛兵長「魅了スキル、その規格外の力に我が主の覇道が邪魔される可能性を摘んでおくためにもな」
男(近衛兵長が俺にも殺意を向ける)
男(監禁していた間は構うのも面倒だから殺すという感じだったはずだが、今は明確に俺相手に殺意を向けている)
男(我が主……殺された司祭ではないはず。一体誰なのか?)
男(近衛兵長に何らかの背景があることは間違いない。色々と聞き出してみたいが……)
デブ「どういうことですか、男を殺すって!?」
男(その発言に敵対する陣営であるはずの太った少年の方が動揺していた)
メガネ「何言ってるの、デブ。どうせあいつは魅了スキルの力で女に命令していかがわしい行為をしたに違いないわ」
メガネ「汚らわしい……そんなハレンチなやつ、死刑よ、死刑」
男(メガネをくいっと上げ、俺を見下すメガネ)
男(全くの濡れ衣なのだが、思春期の少年が異性を好き勝手出来るとあって何もしていないと主張しても信じられないだろうことは理解している)
14 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/06/30(日) 23:59:44.70 ID:TTVCF0vB0
男(しかしあのデブが動揺している理由は……そうか、やつはおそらくイケメンと同じ目論見なのだろう)
男(俺の魅了スキルを手に入れて女性を好き勝手支配したいと)
男(だから近衛兵長に俺を殺されては困ると)
近衛兵長「……いいだろう。可能ならばあの少年は生け捕りにする」
近衛兵長「『組織』に借りを作っておけば今後も便利だろうしな。交渉は後ほどだ」
男(近衛兵長はそれを汲み取ったのかは分からないが、方針を変更した)
女「さっきから勝手なことを」
女「男君を殺すだったり、生け捕りにするだったり……そんなことさせるわけないでしょ!」
男(女が激高する。俺を守るように前に立って絶対に退かない覚悟のようだ)
近衛兵長「二人とも下がれ。少女の方は結界の維持に努めろ。やつらに逃げられたくない。少年はその護衛だ」
男(近衛兵長もデブとメガネの前に立つ)
男(どうやら一騎打ちの様相のようだ)
15 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/01(月) 00:00:30.07 ID:p3RZb0+r0
男(女が拳を構える。近衛兵長が剣を構える)
男(緊張感が高まる中、女が口を開いた)
女「構えを見ただけで分かります。厳しい鍛錬を積んできたことと相当な強さを」
近衛兵長「竜闘士に言われると皮肉だとしか思えないな」
女「あなたの力は正道の物です。なのにどうしてこんなに人を殺して……邪道なことをしているんですか!?」
近衛兵長「知りたければ勝ってこの身を拷問にでもかけろ。吐くつもりは無いがな」
男(近衛兵長が冷たく言い放つ。会話はここまでのようだ)
16 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/01(月) 00:01:00.68 ID:p3RZb0+r0
女「分かりました。その行動には納得行きませんが、力に敬意を表して名乗りを。竜闘士の女、参ります!!」
近衛兵長「……いいだろう。聖騎士の近衛兵長、参る!!」
男(こうして竜闘士と聖騎士。この独裁都市の運命を賭けた一戦が始まった)
17 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/01(月) 00:01:50.36 ID:p3RZb0+r0
続く。
投下遅くなり申し訳ありません。
次は水曜日に投下します。
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/07/01(月) 01:44:52.72 ID:CYC62Hoa0
乙!
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 02:00:55.21 ID:zuyPA6ZIO
乙ー
20 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/03(水) 23:27:46.20 ID:sx+cbxUe0
乙、ありがとうございます。
投下します。
21 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/03(水) 23:28:21.57 ID:sx+cbxUe0
男(竜闘士対聖騎士)
男(初動は竜闘士からだった)
女「『竜の咆哮(ドラゴンシャウト)』!!」
男(女は指向性の衝撃波を近衛兵長に向けて放つ)
近衛兵長「っ……!」
男(近衛兵長は左手に装備した盾で防御をする。少し押されて後退したがダメージは無さそうだ)
男(勝負前に言っていた近衛兵長の聖騎士という職)
男(名前からして騎士の上位職だとすると、防御は得意なのだろう)
男(武闘大会で竜闘士傭兵の猛攻を粘り強く耐えた気弱のことを思い出す)
22 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/03(水) 23:29:06.22 ID:sx+cbxUe0
女「防御は固そうね……でも、一気に勝負を決めさせてもらうよ!」
女「『竜の息吹(ドラゴンブレス)』!!」
男(追尾するエネルギーの球体をばらまいて、自身は特攻する女)
近衛兵長「くっ……」
男(近衛兵長はその一つ一つの対処に追われて女の接近を止めることが出来ない)
男「明確な力量差があるな……」
男(俺の見立てではあるが近衛兵長はかなり強い。魔導士の女友や影使いのイケメン同様に最強級の力はあるだろう)
男(しかし、女はそのさらに上を行く伝説級の力の持ち主だ)
男(武闘大会では同格の傭兵さんに敗北こそしたものの、その敗戦によるショックは些かも感じられない)
男(俺を守るという意志の元、気力も十分のようだ)
男(いわば完全体である女が近衛兵長に遅れを取るとは思えない。赤子の手を捻るように勝ちを拾うだろう……なのに)
23 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/03(水) 23:29:37.83 ID:sx+cbxUe0
男「どうして近衛兵長はこの勝負を受けたんだ……?」
男(力量差は本人こそが一番に自覚しているはずだ)
男(連携を取るような性格ではないだろうが、それでも複数人ではなく一人で挑むのは無謀としか言いようがない)
男(ならばこの状況を覆す手が何かあるというのか……?)
男(疑問に思う間も戦況は推移する)
男(近衛兵長がブレスを裁ききったそのとき、女は大分接近していた)
男(女は拳をめいいっぱい引いて『竜の拳(ドラゴンナックル)』を放つ構えだ)
男(その拳が飛んでくるまでに近衛兵長には一手ほど打つ時間はあるが、何をしようにも叩き伏せて女は拳を届かせるだろう)
男(それでも何もしないわけにもいかなく、近衛兵長が起こした行動は)
近衛兵長「『聖なる一振り(ホーリーワン)』!!」
男(スキルの使用と同時に剣を振ることだった)
男(まだ女が接近していないタイミングのため空振りするが、それでいいようだ)
男(剣の軌跡をなぞるように半円状の光が形成されて飛ぶ。いわゆるソニックブームというものだろう)
男(遠距離攻撃で女の接近を阻止する狙い……だと最初は思ったが、それにしては狙いがおかしい)
男(女の脇を通るような軌道で光は飛んでいるため、当然女は無視して接近して――)
24 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/03(水) 23:30:12.29 ID:sx+cbxUe0
男「危ないっ……!」
姫「きゃっ!」
男(咄嗟に俺は姫を抱えて横っ飛びに体を投げ出した)
男(そうだ、デタラメな方向に放たれたと思われた近衛兵長の攻撃)
男(それが実は女ではなく、俺たちに狙いをつけた攻撃だったのだ)
男(俺たちが先ほどまでいた空間を光は通り過ぎる)
女「なっ……!」
近衛兵長「ちっ、外したか」
男(女もその状況に気付いたようだ。驚いて振り向く女と舌打ちする近衛兵長)
25 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/03(水) 23:30:46.95 ID:sx+cbxUe0
女「まさかあなたの狙いは……!」
近衛兵長「私の狙いは最初から姫様の命だ」
近衛兵長「少年の方も……別に可能ならば生け捕りするくらいにしか考えていない」
女「ひ、卑怯ですよ!」
近衛兵長「弱者が強者に勝つためには弱点を突くしかない。『聖なる一振り(ホーリーワン)』!!」
男(近衛兵長は目の前にいる隙だらけの女ではなく、またも俺たち目掛けて光を放つ)
男(そちらの方がさらに有利になると判断してだろうか)
女「っ……『竜の翼(ドラゴンウィング)』!!」
男(剣を振り終えて無防備な近衛兵長だが、女は攻撃せずに翼を生やしてトップスピードで後退する)
男(そして今まさに俺たちに襲いかかろうとしていた光の前に身を投げ出して庇う)
26 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/03(水) 23:31:23.16 ID:sx+cbxUe0
女「いたっ……!」
男「女っ!!」
女「大丈夫……だから!」
男(衝撃に顔がゆがむ女に俺が反射的に声をかけると、心配をかけさせまいとニッと口の片端をあげた)
近衛兵長「まだまだ行くぞ」
近衛兵長「『聖なる一振り(ホーリーワン)』! 『聖なる一振り(ホーリーワン)』!! 『聖なる一振り(ホーリーワン)』!!!」
男(剣を振り光を連射する近衛兵長。その狙いは全て俺と姫に向けてのものだ)
女「『竜の鱗(ドラゴンスケイル)』!!」
男(俺たちを守るため回避を封じられた女は防御スキルを発動する)
男(しかし、このスキルは使用した後少し動けないため、反撃の行動に繋げられない。このままではジリ貧だ)
27 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/03(水) 23:32:05.18 ID:sx+cbxUe0
男「くそっ……近衛兵長のやつ、最初からこれが狙いだったのか!」
男(格上である女が抱えた一つの弱点が俺たちを守らないといけないということである)
男(そこを存分に突いてきている。最初女の接近を許させたのも、俺たちから離すためだったのだろう)
男(聖騎士という職。そして使用するスキルの『聖なる一振り(ホーリーワン)』)
男(近衛兵長の力は聖に属するもののようだ)
男(なのに戦い方は弱者を狙い続けるという外道もいいところ)
男(だが、その手段が効果的であることは否定できない。このままでは女はこの場を離れられないからだ)
男(遠距離攻撃で応戦するのは、最初の攻撃を防がれたことからして互角だろう)
男(ならば俺たちがここから離れて安全な場所に向かうべきかというと、それも不可能だ)
男(結界のせいで広場からは出れないし、広場内には安全地帯が未だ存在しない)
男(そこかしこで近衛兵と『組織』の構成員が戦っている最中だからだ)
男(戦う力を持たない俺と姫が巻き込まれては危ないことに変わりない)
28 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/03(水) 23:32:33.90 ID:sx+cbxUe0
男(こうして女に守られているこの場所が一番安全だと……分かっているからこそ歯痒い)
男(俺の想定が甘かったせいでパレードのときに近衛兵に捕らわれた)
男(そのため女はわざわざ俺を助けに来ないといけなくなった)
男(こうして助けに来てもらったその場でもまた女の枷になってしまっている)
男「俺は……どれだけ女に負担をかけさせてるんだよ……!」
男(悔しくて、情けなくて、泣きたくなってくる)
女「そんなことないよ」
男(女が防御を続けながらも背中越しに俺を慰める言葉を告げた)
女「私は男君のことを負担になんて思ったことはないから」
男「でも、こうしてわざわざ助けに来させてしまって……大変だったんじゃないのか!?」
女「全然。それどころか少し嬉しかったくらいだったよ」
男「……え?」
29 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/03(水) 23:33:07.60 ID:sx+cbxUe0
女「だってあの手紙のSOSって私が魅了スキルの外で助けに来ることを想定して……私のことを信じての行動でしょ」
女「やっと私のことを頼ってくれたって、嬉しかったんだよ」
男(言葉の間も近衛兵長の攻撃が連射されている。守られている俺は女の表情を見ることは出来ない)
男(それでも声音から……女が本当に喜んでいることは分かった)
男(分からない。どうしてそんなことで嬉しいのか)
男(手紙だって駄目で元々の精神で出したものだ。女を信じるなんて気持ちは………………)
男(いや、逆なのか?)
男(女を信じる気持ちが僅かにも無ければ、手紙を出そうという手段を思いつきもしなかったはずだ)
男(女が俺を助ける行動に何の得も、理も、意味も無かった)
男(それでも助けてくれるかもしれないと思って行動に移した)
男(これが……信じるということなのだろうか)
30 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/03(水) 23:34:02.00 ID:sx+cbxUe0
女「それで一つ提案があるんだけど」
男「……何だ?」
男(渦巻く感情の中、女の真面目な声に俺は思考を切り替える)
女「男君が私を信じてくれるなら、あの近衛兵長さんを倒す方法があるの」
男「……どういうことだ? 俺が応援してくれるならって精神的な意味か?」
女「ううん、違うって。助けに入る直前のことは見ていたよ」
女「男君あの人相手に魅了スキルをかけようとしていたでしょ。避けられてたけど」
男「ああ、そうだが……って、まさか」
男(言わんとすることを察知して、女もまさにその通りのことを言う)
31 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/03(水) 23:34:29.67 ID:sx+cbxUe0
女「私が魅了スキルをかける隙を作る。そして虜にしてしまえば、その時点でこっちの勝ちでしょ?」
32 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/03(水) 23:34:59.04 ID:sx+cbxUe0
続く。
次回決着。
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/07/04(木) 00:25:11.37 ID:KLGGXsonO
乙!
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/04(木) 10:18:17.16 ID:swL5s/o3O
乙ー
35 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/05(金) 22:02:56.93 ID:urXCLDkn0
乙、ありがとうございます。
投下します。
36 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/05(金) 22:03:30.57 ID:urXCLDkn0
男(竜闘士対聖騎士の現状は女が決め手を欠いている)
男(近衛兵長が俺と姫を狙って攻撃するという邪道な策を使っているからだ)
男(そのせいで防御に回らないといけない女は接近出来ず、遠距離攻撃の撃ち合いはやつの防御能力の高さからどうしてもジリ貧になってしまう)
男(竜闘士は近距離攻撃の方が火力が高いのだ)
男(その足りない火力を補うために女が提案したのが、魅了スキルをかける隙を作るというもの)
男「本気か?」
女「うん。私的には一対一のつもりだったけど、先に男君を巻き込んだのはあっちの方だから」
女「といっても男君が反対するなら他の方法を考えるけど」
男「……ちょっと考えさせてくれ」
男(成功して近衛兵長を虜にすれば、武装解除、降伏を命令してたちまち勝利が確定するだろう)
男(しかもそれだけでなく、勝負前に言っていた気になる情報についても「嘘を吐かず俺の質問に答えろ」と命令して聞き出すことが出来る)
男(一石二鳥の策)
37 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/05(金) 22:04:12.03 ID:urXCLDkn0
男(ただしそれが成功するかどうかと言われると微妙だ)
男(魅了スキルの条件、効果対象である『魅力的な異性』に近衛兵長が当てはまるかというとギリギリだが大丈夫なはずだ)
男(やつが俺たちを脅かしていた敵だとか、何人も殺してきた大罪人だということからは必死に認識の外に追いやろうと先ほどから努めている)
男(問題なのはやつが魅了スキルを詳細まで知っているため警戒していること)
男(先ほど女が助けに来る直前に発動したときは、光を見てから効果外に出るという身体能力の高さも見せられた)
男(女が隙を作ったとしても、そんな相手に魅了スキルを当てられるだろうか?)
男(それだったら他の策……例えばこっちもやつの弱点、結界を張っているメガネのクラスメイトを攻撃するとかはどうだろうか)
男(結界を解除させれば女が俺と姫を抱えて飛んで逃げればいい)
男(そもそもこちらに積極的に戦わないといけない事情はないのだから)
男(だが……近衛兵長は気にせず俺たちに攻撃を仕掛けてきそうでもある)
男(俺と姫と違って、あちらのデブとメガネのクラスメイトは戦闘能力があるという点も違うしな)
男(女の攻撃くらいなら耐えられるだろうと考えるとますますその可能性は高くなる)
男(そしたら攻撃の隙を突かれてさらに女が不利になるだろう。却下だな)
38 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/05(金) 22:04:38.21 ID:urXCLDkn0
男「……」
男(他にも色々考えてみるがいい方法が思いつかない)
男(これまで宝玉を手に入れる方法などの行動方針は基本的に俺が決めてきた)
男(だが女は竜闘士の力と同時に戦闘センスなども授かっている。そうでなければ普通の女子高生がここまで戦えるわけない)
男(だとしたら戦場において従うべきは俺の方で、女の提案に乗るべきなのだろう)
男(別にそのことに異論は無い。気になっているのは……)
女『男君が私を信じてくれるなら……あの近衛兵長さんを倒す方法があるの』
男(俺が女を信じられるなら……信じることが出来るのだろうか?)
男(自分のことなのにまるで他人事であるかのように想像が全く付かない)
39 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/05(金) 22:05:14.70 ID:urXCLDkn0
男(だが、近衛兵長の攻撃は激しさを増す一方でおちおちと考えている余裕は無さそうだ)
男(対案も出せないのに否定するのは良くない)
男「分かった、女。とりあえずその提案の中身を聞かせてくれ……」
女「うん、えっと……」
男(そのためまずは話だけでも聞こうとしたところで)
近衛兵長「のんきにおしゃべりとは……その余裕無くしてやろう」
男(近衛兵長は剣を腰に構えて体を大きく捻った。大技を放つつもりであることが俺でも分かる)
女「あれは…………でもチャンスかも! 男君、よろしくね!」
男「よろしくって……いや、まだ俺了承してないし、何をするかも聞いてないんだが!?」
女「大丈夫、大丈夫! 男君なら察せるって信じてるから!」
男(そんな無責任なことを言うと女は正面の近衛兵長を見据えて相手の動きを窺っている)
男(その集中を崩すわけにもいかず、どうやら抗議の機会は失われたようだ)
40 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/05(金) 22:05:54.82 ID:urXCLDkn0
男「ったくマジかよ……俺が合わせられなかったらどうするんだよ。何考えてるんだ?」
姫「何も考えてないんだと思いますよ」
男(俺と同じく女に守られている姫が口を開く)
男(女と姫は犬猿の仲だ。そのため悪態を吐いたのかと思いきや、姫の顔は真剣だった)
男「姫……どういうことだ?」
姫「分かるんです。女さんは男さんが合わせられなかったときのことを考えていません」
姫「何故なら男さんなら絶対に合わせられると信じているから」
男「本当に無責任なんだな……」
姫「ですが信じるということはそういう面も含みます」
姫「誰も信じず一人ですることは良く言えば全ての責任を自分で負うということでもあります」
姫「信じて誰かに託すということは悪く言えば誰かに押しつけるということでもありますから」
男「……そうだな」
男(姫の言葉がストンと俺の胸の内に入ってくる)
41 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/05(金) 22:06:45.31 ID:urXCLDkn0
男(自己責任。思えばその言葉が俺は好きなのだろう)
男(俺のトラウマ。からかわれて本気になって告白して玉砕して、心を守るために自己否定から恋愛アンチとなった)
男(別の選択肢もあったはずだ)
男(あの子のことを心の中で悪者に仕立て上げて『あいつが思わせぶりだったのが悪い、結局悪意を持って騙してたんじゃないか、くそっ死ね』と悪態を吐くことで心の均衡を保つことだって出来たはずだ)
男(なのにそうしなかったのは……もうそういう気質なのだろう。他人ではなく自分にばかり重荷を背負わせると)
男「俺は誰も信じない。そうやって今までも……そしてこれからも生きていくんだ」
男「だってその方が誰にも迷惑をかけないだろ」
姫「……そうですね。誰にも迷惑はかけないかもしれません。でも何かを成せるとも思えませんね」
男「え?」
42 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/05(金) 22:07:24.82 ID:urXCLDkn0
姫「私の母は立派な執政者でした」
姫「この都市を常に良くするように考えていて……しかし何もかもを自分でしようとはしていませんでした」
姫「今思うと自分一人で出来ることなんて、たかがしれていると分かっていたからでしょう」
姫「だから人を信頼して色々と託す。そうやって大きなこと、この独裁都市の運営をやっていたんだと思います」
男「そ、そうかもしれないが……別に俺は偉くなるつもりなんてないし……」
姫「男さんの意志がそうでも、現実は向こうから困難がやってくることもある場所です」
姫「今だって女さんが一人で近衛兵長に勝つことが出来るんだったら、男さんを頼りにしたりはしなかったでしょう」
男「で、でも……俺が女の期待に応えられるか分からないんだよ! そしたら迷惑がかかるだろ!」
姫「いいじゃないですか、迷惑かけたって」
男「は?」
姫「そもそも女さんに信じられて勝手に頼りにされて、男さんは既に迷惑がかかっているじゃないですか」
姫「だったら男さんだって女さんに迷惑かければいいでしょう」
男「そんなことしたら……」
43 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/05(金) 22:07:55.27 ID:urXCLDkn0
姫「二人はそれくらいで壊れる関係だって言うんですか?」
姫「迷惑をかける女さんのこと男さんは嫌じゃないんですか?」
姫「女さんが迷惑をかけられたくらいで男さんのことを嫌いになると思うんですか?」
姫「男さんは……本当に一人で生きていくつもりなんですか?」
姫「少なくとも私は本当の自分を誰にも明かせず、ワガママな姫様としてひとりぼっちで生きてきたこの二年間はとても寂しくて辛かったですよ」
男「……」
男(姫の言葉に俺は惑い)
44 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/05(金) 22:08:37.42 ID:urXCLDkn0
近衛兵長「食らえ!! 『聖なる全振り(ホーリーオール)』!!」
男(そのとき近衛兵長は限界まで体をひねり蓄えた体のバネを一気に解放)
男(剣がこちらまで聞こえるほどの風切り音を発しながら振られ、その軌跡に形成された先ほどまでとは比べものにならないほどの大きさの光が俺たちを押し潰さんと迫った)
45 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/05(金) 22:10:20.22 ID:urXCLDkn0
続く。
想定より長くなり決着ならず……次こそは。
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/07/05(金) 23:31:09.34 ID:5JqJ+vdPO
乙!
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/07/05(金) 23:51:55.04 ID:yERhdR/j0
毎回こんな引きで区切りだと無駄に引っ張ってCM挟んで引き伸ばすTV番組みたいで萎える
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/06(土) 05:36:00.15 ID:HjBY9cQVO
乙ー
49 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/07(日) 23:11:37.33 ID:T7fsHoB20
乙、ありがとうございます。
>>47
執筆にいっぱいいっぱいで区切りについてまでは意識が行ってませんでした。今後は精進します。
投下します。
50 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/07(日) 23:12:06.21 ID:T7fsHoB20
男(迫る巨大な光にこれまで待ちの姿勢だった女は一転)
女「『竜の拳(ドラゴンナックル)』!!」
男(竜の力を宿した拳を突きだしながら臆することなく光に飛び込む)
男(力では竜闘士の方が上。とはいえ相手の大技に対して、こちらのスキルの出力は普通でちょうど拮抗する)
女「くっ……!」
男(女は痛みに耐えている。スキルで相殺しているとはいえ、相手の攻撃に腕を突っ込んでいるのだ。何もダメージが無いということは無いだろう)
女「だ……らぁぁぁっ!!!」
男(それでも女は気迫を絞り、拳を振り切って光を両断。割れた光が俺と姫の左右の地面を削り轟音を発する)
51 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/07(日) 23:12:34.64 ID:T7fsHoB20
近衛兵長「っ……破られたか!」
女「今だっ!!」
男(近衛兵長が驚いている間に、女は全速力で接近する)
男(大技を打った直後で隙が出来ている様子の近衛兵長は、俺たちを攻撃することで女の接近を封じることが出来ない)
男(大チャンスと見えたが、しかし女も拮抗した際にスピードが落ちたのが痛く、距離を詰め切ることが出来ない)
男(これだと女が拳を届かせる前に近衛兵長が体勢を整えて俺たちを攻撃するだろう)
男(そうなると防御に戻らないといけなく振り出しだ)
近衛兵長「甘かったな」
男(俺と同じ想定に至ったのだろう。近衛兵長がフッと小馬鹿にするように笑って)
52 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/07(日) 23:13:14.57 ID:T7fsHoB20
女「ううん、ここまで接近すれば十分!! 『竜の尾(ドラゴンテール)』!!」
男(女は不敵に笑うと、まだ近衛兵長との距離があるのに右手を振りかぶった)
男(俺が初めて見るそのスキルはどうやらエネルギー状の鞭を発生させるようで、半円軌道を描いた鞭の先端が近衛兵長にグルグルと巻き付く)
近衛兵長「何を……」
女「いっけえぇぇぇぇっ!!」
男(そのまま女は鞭を後方に向かって振り上げると、その動きに従い竜闘士の膂力によって近衛兵長が空中高くに放り出された)
53 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/07(日) 23:13:40.27 ID:T7fsHoB20
男(遠距離でも近距離でも駄目なら中距離)
男(女の接近の狙いは鞭の届く範囲に近衛兵長を捉えることだったようだ)
男(宙にいる近衛兵長はなすがままなあたり、聖騎士はどうやら空を飛ぶようなスキルは持っていないようだ)
男(ならば絶好の的である……かというと、そうではないようだ)
近衛兵長「考えたな……だが、みすみすやられたりはしない」
男(近衛兵長は鍛えられた体幹によって空中で姿勢を立て直す)
男(投げられた勢いで飛んでいるのは変わらないものの、あの状態なら攻撃も防御も十分に行えそうだ)
男(となると女が『竜の潜行(ドラゴンダイブ)』を当てに行こうとしても、近衛兵長は俺と姫を攻撃して防御を強制することが出来る)
男(この問題を解決しない限り俺たちの勝利はない)
54 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/07(日) 23:14:06.97 ID:T7fsHoB20
男(だからこそ女は俺に提案をして、近衛兵長を後方に放り投げたのだ)
男「なるほどな」
男(女の意図が読めた)
男(近衛兵長が飛ぶ方向の先にいる俺)
男(魅了スキルは効果範囲こそ周囲5mだが、光の柱と表現出来るように上空にはかなり長い射程がある)
男(そして近衛兵長は空中のため満足に動くことが出来ない)
男(つまり)
男「今の近衛兵長は魅了スキルを避けることが出来ない……!!」
男(女は提案通り見事魅了スキルをかける隙を作って見せたのだ)
55 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/07(日) 23:14:40.81 ID:T7fsHoB20
男(当たれば一撃必殺の魅了スキルが百発百中で絶体絶命の近衛兵長)
男(飛んでる勢いからしてあと少しで俺の上空を通過する)
男(俺はそのタイミングで魅了スキルを発動するだけでいい)
男(だが、一つだけ心配事があるのも確かだ)
近衛兵長「『聖なる一振り(ホーリーワン)』!!」
男(近衛兵長が空中で剣を振るいソニックブームを俺目掛けて放つ。不安定な空中なのに見事な照準だ)
男(女が後方に放り投げたため、位置関係として俺たちと女の間に近衛兵長がいることになる)
男(しかも魅了スキルの範囲に入りそうなほど俺に近くから攻撃出来るというわけだ)
男(近衛兵長は当然絶好の攻撃機会を逃さなかった)
男(近衛兵長の攻撃が迫る。回避行動を取るべき……だが、そんなことをしていたら魅了スキルを発動する余裕も無くなる)
男(だったらどうすればいいのか)
56 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/07(日) 23:15:07.54 ID:T7fsHoB20
男「簡単だ。女を信じればいい」
男(あれだけ忌み嫌っていたその言葉なのに不思議とすっと出て来る)
男(女の俺なら察せるという無茶振りに応えてやったんだ)
男(だったら今度は女が応える番だ)
男「…………」
男(決めたからには俺はもう動じない)
男(光からは目を切って、近衛兵長が上空を通るタイミングを計ることだけに集中する)
57 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/07(日) 23:15:44.78 ID:T7fsHoB20
姫「男さん……」
集中する男は隣で姫が名前を呼んでいることも気付いていない。
近衛兵長の攻撃が迫る中、危険なのは姫も一緒だ。
魅了スキルに関与しない姫はこの場から逃げ出してもいい。
だがそうやって逃げ出すのは負けを認めるようで……意地だけでその場に留まる。
そして無防備に立つ二人に光が届こうとする――その直前。
女「『竜の咆哮(ドラゴンシャウト)』!!」
女の発した衝撃波がピンポイントで近衛兵長の攻撃を打ち落とした。
58 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/07(日) 23:16:12.75 ID:T7fsHoB20
近衛兵長「くっ……ここまでか」
近衛兵長は次の攻撃体勢に入りながらも、既に負けを自覚しており。
そのとき男から5mの範囲に到達した。
男「魅了スキル、発動!」
男はスキルの発動を宣言。
ピンク色の光の柱が宙の近衛兵長を捉え――その瞬間勝敗は決した。
59 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/07(日) 23:16:39.50 ID:T7fsHoB20
続く。
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/08(月) 00:49:07.20 ID:xvPbhTPYO
乙ー
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/07/08(月) 01:36:04.68 ID:faG71my90
乙!
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/07/08(月) 22:48:30.80 ID:fShfEtVC0
乙
63 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 00:59:11.85 ID:3dlmMjRD0
乙、ありがとうございます。
投下します。
64 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 00:59:56.47 ID:3dlmMjRD0
女友「結界が晴れましたか」
女友(先ほどから神殿前広場を囲っていた結界が消失したことを確認します)
女友(私は何ら関与していないので、中の女がどうにかしたのでしょう)
女友「無事だとは思いますが早速安否を確認しないとですね」
女友(急いで私はそちらに向かおうとして)
ギャル「待……て……」
女友(後方で弱々しい声と共に立ち上がる者がいました)
女友「……まだやるんですか、ギャルさん」
女友(本気で戦うことの練習台)
女友(そういって始まった戦いは言葉通りのものに、私一人でも十分に戦えると自信を持てるようになりました)
女友(その結果倒れ伏して気絶しているレズさんと満身創痍のギャルさんが生まれたのですが……立ち上がれるとは正直驚きでした)
65 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 01:02:26.44 ID:3dlmMjRD0
ギャル「言ったでしょ……アタシは――」
女友「イケメンさんのために、とでも言うんですか? だとしたら滑稽ですね」
ギャル「……何が言いたいのよ」
女友「だってそうでしょう? 命令する者と従う者の関係が愛であるならば、王と奴隷は恋人だってことになるじゃないですか」
女友(イケメンさんが彼女であるギャルはキープで、本当は女に執着しているという話は男さんから聞いています)
女友(だとしたら彼氏だからと盲目的に従うギャルは体よく操られているだけです)
女友(男さんが魅了スキルを使ってしていることを、スキル無しでやってのけているのは才能なのでしょう)
女友(ちっとも羨ましくはありませんが)
女友(さて、ギャルさんは立ち上がりこそしたものの追ってこれるほどの体力はないでしょう)
女友(自分たちの関係を馬鹿にされて激昂される前にその場を去ろうとして)
66 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 01:03:02.62 ID:3dlmMjRD0
ギャル「分かって……るわよ」
女友「……?」
ギャル「馬鹿にすんな!! アタシだって分かってるわよ!!」
ギャル「イケメンが本当は……私のことを愛していないってことくらい!!」
ギャル「それでも……仕方ないのよ!! こうでもしないとイケメンは……私のことを見てくれないんだから……!!」
女友(私は足を止めて振り返ります)
女友(ギャルさんの表情は苦渋に満ちたものでした)
女友(私はそれを意外に思いながらも、ここで待ってやる理由にはならないと判断して)
女友「だったらなおさら自分のことを大事にしてください。あなた自身のために」
女友(敵としてかけられる最大限の慰めの言葉をかけて私は広場に向かうのでした)
67 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 01:04:10.04 ID:3dlmMjRD0
女友(広場に入ると戦いは終結しているようでした)
女友(そこかしこで『組織』の構成員たちが近衛兵によって拘束されています)
女友(私は人の集まっている広場の中央を目指して歩いていると)
近衛兵1「止まれ!!」
近衛兵2「何者だ、貴様は!!」
女友(近衛兵に制止の声を掛けられました)
女友(私のことを不審者だと思われているようで、どう釈明すればいいものか迷っていると)
姫「おぬしら、待つんじゃ」
近衛兵「姫様、不用意に出てこられては……」
姫「いいから黙っておれ! そこの少女、もしかして名を女友と申すのではないか」
女友(近衛兵に引き止められながらも、パレードでもその姿を見た独裁都市の姫が私の名前を口にします)
女友「そうです、私の名前は女友ですが……」
姫「ならば余の客人じゃ。無礼を働くでない」
女友(戸惑いながらも頷くと、何故か私は姫様に招待されるのでした)
68 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 01:05:02.68 ID:3dlmMjRD0
女友(近衛兵たちが事態の収拾にあくせくと動く中、私は姫様の隣でこれまでのことを話してもらいました)
女友「そうですか……パレードの後、男さんと姫様はそんなことに」
姫「はい。女友さんのことは男さんから聞いていたので。姿を見たときに、もしやと思いまして……」
女友(どうやら私たちと別れた後、男さんは想像以上に大変な目に遭っていたようです)
女友(先に行かせた女は間一髪のところで男さんたちを救い、結界のせいで逃げられなくなり)
女友(首謀者である近衛兵長近衛兵長なる人物との勝負を避けられず、しかしそれも魅了スキルで虜にしたことで決着したと)
女友(その後は男さんが虜にした近衛兵長に命令をして、それに女も協力して残っていた『組織』の構成員を一掃、ほとんどを拘束したようです)
女友(その中には見覚えのある顔もいます。私は姫様に少し見てくる旨を伝えてからそちらに向かいました)
69 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 01:05:33.17 ID:3dlmMjRD0
女友「デブさんですか、久しぶりですね。駐留派、『組織』の一員になっているとは聞いていましたが」
デブ「女友さん……」
女友「結婚式襲撃部隊の方にいて捕まったということですか。逃げなかったんですね」
デブ「……ああ。竜闘士と聖騎士、バケモン二人から逃げられるわけないだろ」
女友「それもそうですね」
デブ「それに部隊には俺を慕っている部下がたくさんいるんだ」
デブ「やつらを置いて俺だけが逃げ出すわけには行かねえ」
デブ「殺されたやつがいることも考えると生きているだけで丸儲けだ」
女友(構成員が捕らわれている方を見るデブさん)
女友(元の世界、教室にいた頃には何も努力せず自分だけが不幸だと思いこみ世界を恨んで呪詛をかけるような、そういう陰湿な人間だったと記憶していますが……どうやら環境によって変わったようです)
70 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 01:06:19.56 ID:3dlmMjRD0
女友「クラスメイトのよしみとして、罰が軽くなるようにかけあっておきますよ」
デブ「助かる。それと図々しい頼みだが、そっちもどうにかしてやってくれないか?」
女友(デブさんの指した方にいるのはもう一人のクラスメイト、メガネです)
女友(女と交流があることから、私も良く知る人物ですが……)
メガネ「私を捕まえたからっていい気にならないことね!」
メガネ「絶対にイケメン様が助けに来るんだから!」
メガネ「そうよ、私はイケメン様に大事と言われた女なんだから……!」
女友(メガネはちょうど通りかかった近衛兵に文句を吐いているところでした)
女友(聞くとどうやら先ほどから誰彼構わず言っているようです)
女友(その内容については考えるまでもなく実現しないだろうと判断しました)
女友(イケメンさんがわざわざ危険な橋を渡って、駒の一つを回収しに来るとは思えません)
女友「駐留派はあなたのように魅了スキルを狙っている者とイケメンさんに騙されている者によって構成されていると考えていいですか?」
デブ「……知っていたのか。そういうことだ」
女友「なら理解している通りですよ。イケメンさんがメガネを助けに来ることはなく、ずっと叫び続けることになるでしょう」
女友「私にはどうにも出来ません」
女友(私は一つ頭を下げるとその場を離れて姫様のところに戻りました)
71 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 01:06:58.18 ID:3dlmMjRD0
姫「知り合い……共に異世界召喚された者との語らいは終わりましたか?」
女友(姫様は女神教の関係者、いや一番事情を知るものであり私たちが異世界から来たということも知っているようです)
女友「はい。それで姫様にお願いがあるのですが……」
姫「分かっています。あの者たちの処遇については一考します」
姫「彼らもまたいきなり呼び出された被害者であるとは理解していますので」
女友(姫様は聡明な方で、すぐに私の意図を察しました)
女友「ありがとうございます」
姫「それに……これからの独裁都市はそんな些事に構っている暇が無いくらい、忙しくなるでしょうから……」
女友(憂いの表情で呟いたことが気になりましたが、聞き出す前に)
姫「そんなことより女友さんに聞きたいことがあるんです」
女友(と話題を転換されました)
72 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 01:07:37.11 ID:3dlmMjRD0
女友「何でしょうか?」
姫「女さんのことです。彼女、本当は男さんの魅了スキルにかかっていないんでしょう?」
女友「……まさかそんなことないですよ。私と一緒でしっかり男さんの虜です」
女友(いきなり出された話題に内心ビックリしながらも、私の口はすらすらと嘘を述べていました)
女友(親友の秘密を私が暴露するわけには行きません)
姫「そうですか? 男さんからここまで異世界でどういうことがあったのかは聞きました」
姫「あのときは特に疑問に思いませんでしたが……本人に出会って分かったんです」
姫「女さんは虜になっていないと。そうすれば数々の疑問にも説明が付くと」
女友「違いますね。全部魅了スキルが中途半端にかかっているせいです」
姫「それも疑問に思っていました。魅了スキルについては女神教の大巫女である私が一番知っています」
姫「しかし、伝承の中には中途半端にかかった事例など一つもありませんでした」
姫「ならば嘘だと判断するのが合理的でしょう」
女友(姫様は詰め将棋のようにどんどんと寄せてきます。私は徐々に逃げ場が無くなっていくのを感じ)
73 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 01:08:45.30 ID:3dlmMjRD0
姫「どうしても認めないなら、この話を男さんにします」
女友「っ!? それは……」
姫「魅了スキルの使い手で当事者である男さんに意見を仰いだらきっとすごい参考になると思うんです」
姫「私としても男さんに手間をかけさせて心苦しいですが」
女友(こちらの事情を見透かし、完璧な王手を決められます)
女友(詰みだと判断した私は……ええ、こんな初対面の姫様に見抜かれる女が悪いんです、と心の中で言い訳してから、被害を減らすための最善手を)
女友「分かりました、認めます。女には魅了スキルがかかっていません」
姫「やはりそうですか。詳しく聞かせてもらえますか?」
女友「……はい」
女友(親友の秘密について洗いざらいぶちまけることにしました)
74 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 01:09:26.11 ID:3dlmMjRD0
姫「召喚される前から好きで、しかし行動には移せず、そんな折りに魅了スキルの効果範囲にいてしまって、誤魔化すために嘘を吐いたと……」
女友「そういうことです」
姫「その後は虜であるという偽りで男さんにアタックを仕掛けて……卑しい、卑しいです」
女友「否定は出来ませんね」
姫「………………」
女友(話を聞いた姫様は女のことを非難していましたが、ふと考え込み始めました)
女友(そして決心したように顔を上げます)
姫「女友さん、親友の秘密を勝手に暴くような真似申し訳ありませんでした」
女友「いえ、全部女の落ち度です。私は悪くありません」
姫「その開き直りはまた清々しいですね……えっと、それなのに図々しいですが私の話も聞いてもらえないですか?」
女友「……ええ、いいですよ」
女友(その表情には心当たりがある。悩みを抱えている顔だ)
女友(この異世界に来てから男さんと女相手に何度もやってきたお悩み相談。何の因果か今回は姫様が相手のようだ)
75 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 01:10:09.55 ID:3dlmMjRD0
姫「私は男さんのことが好きなんです」
女友「『まあ魅了スキルがかかっているからな』……と、男さんが聞いていたら言うでしょうね」
姫「私と男さんは魅了スキルによって引き合わせられましたから、理解はしています」
姫「それでも私は魅了スキルなんて関係なく好きだと信じていて……今日女さんと出会いました」
女友「……」
姫「最初の印象はいけ好かない人でした。まあ同じ殿方を取り合う以上、好意的には見られません」
姫「ですがその後、男さんと女さんのやりとりを聞いている内にビビッと来たんです」
姫「この人には魅了スキルがかかっていないと」
女友「女の直感……ですかね」
姫「たぶんそうです。それだけではなく女さんの想いの深さも実感して……」
姫「魅了スキルがかかっていなかったら、私も本当に同じように想えただろうかと疑問が浮かびました」
女友「……」
76 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 01:12:14.00 ID:3dlmMjRD0
姫「男さんの方もです。あれだけ偉そうに私の想いはストックホルム症候群だと指摘した癖に……」
姫「実際は男さんの方こそ私に対して、同じく軟禁された立場としての連帯感や好意を抱いたに決まっています」
姫「だってその証拠に……女さんといるときはあんなに自然に振る舞っているじゃないですか」
女友(姫様の視線を追うと、そういえば未だ姿を見ていなかった二人を見つけます)
女友(女と男さんは広場中央の鐘のところにいて――)
女「男君、ねえこの鐘って」
男「女神教の伝統なのか、結婚式のときに二人の関係が永く続くようにって鳴らすやつだ」
男「俺も姫と一緒に鳴らしたが……その直後に襲撃されたんだったか」
女「……ねえ、私も一緒に鳴らしてみたい」
男「いやそれよりまず被害の復旧が先だろ」
女「もうこんなに頑張ってるんだから、ちょっとくらいサボったっていいでしょ! ほら、行こっ!」
男「ああもう、引っ張るな……ったく」
女友(女が男さんの手を引いて鐘まで導きます。悪態を吐きながらも男さんの表情も満更では無さそうです)
77 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 01:12:46.26 ID:3dlmMjRD0
女友(久しぶりに見た男さんの元気な姿にホッとし、そして女とよろしくやっていることを嬉しく思いながらも、隣の姫様の相談中であるということは忘れていません)
女友「二人はここまで様々な苦難を乗り越えることで今の関係となりました」
女友「見守ってきた者として贔屓の感情が含まれていますが、男さんには姫様より女の方がお似合いだと信じています」
女友「申し訳ありませんが」
姫「……いえ。素直なところを言っていただきありがとうございます」
姫「私も……心の奥底ではそう思ってしまっているのでしょう」
姫「だからさっきもあんな後押しするような言葉を……」
女友「…………」
姫「女友さんに相談できて決心が付きました。私はこの気持ちを諦めます」
姫「ええ、そうですよ。ただでさえこれから独裁都市の再建のため私は頑張らないといけません」
姫「司祭と近衛兵長の二人がいなくなった今、私は自由に羽ばたけます」
姫「やりたいこと、やらないといけないことは山積みです」
姫「トップに立つ者として恋愛にうつつを抜かしている暇はないんです」
姫「私は母が愛したこの都市が、民が好きなのですから」
姫「だから……」
78 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 01:13:19.89 ID:3dlmMjRD0
女友「別にそれが恋を諦める理由になるとは思えませんね」
姫「え……?」
女友「親友の恋路のことを思うなら、恋敵が身を引く姿を素直に見送るべきだと……分かってはいるんです」
女友「しかしそんな苦しい顔をしているのを見過ごせるわけないじゃないですか」
姫「苦しい顔って……違います! 私は独裁都市のためにむしろ誇らしくこの想いを捨てて…………ひぐっ、ぐすっ……」
女友「ああもう、ほらついには泣き出したじゃないですか。意地を張らないでください」
女友(私は姫様の頭を抱えて、赤子をあやすように背中をポンポンと叩きます)
79 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 01:13:58.24 ID:3dlmMjRD0
姫「初めての恋だったんです! 初めて好きになったんです、男さんのことを!」
姫「でも……私が好きになったのは女さんによって変わった男さんなんです!」
姫「私の居場所が無いことは分かっています!」
姫「それでも……好きになってしまったんです! 仕方ないでしょう!」
女友「ええ、そうですね」
姫「女さんがいなければ良かったのに……女さんの代わりに私が男さんと出会っていたら……」
姫「そんな意味のない仮定が沸き上がっては心を乱して!」
姫「こんなに苦しいなら誰かを好きになりたくなかった!」
女友「でも好きになったからこそ幸せも感じたんですよね」
姫「男さんと結婚式をしたときは……それが敵の策略だと分かっていても、私は嬉しくて!」
姫「この幸せがずっと続けばいいのにって……でも……」
女友「分かります、分かりますから……全部吐き出してください」
女友(相手は一つの都市の長である姫様です)
女友(その立場だけでなく、今まで軟禁されていたこともあって、誰かに弱みを見せることなんて今まで出来なかったのでしょう)
女友(それでも潰れなかった精神的な強さは、トップに求められる資質です)
女友(だからといって何も溜め込まないわけがないのです)
女友(私は一人の少女がその思いの丈をぶちまける姿を、隣で優しく寄り添いながらしばらく聞くのでした)
80 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/10(水) 01:14:48.58 ID:3dlmMjRD0
続く。
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/07/10(水) 04:36:38.37 ID:wi4FIK1fO
乙!
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/10(水) 05:28:47.98 ID:y6xENFIJO
乙ー
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/07/10(水) 18:06:29.02 ID:O/VcyM7JO
乙
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/07/11(木) 12:47:49.46 ID:oKa9Cpu5O
乙
85 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/11(木) 22:13:40.30 ID:rxpms8Gr0
乙、ありがとうございます。
投下します。
86 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/11(木) 22:14:24.54 ID:rxpms8Gr0
男(波乱と策謀の結婚式から一夜が明けた)
男(独裁都市の宝玉を手に入れたので次の町に向かうべきでもあるのだが)
男(都市の内情に関わりすぎたのと新たに判明した事実を整理するため俺たちはまだ留まっていた)
男(神殿の最上階、昨日まで軟禁されていた部屋には俺と女と女友、姫に近衛兵長の五人がいる)
男(新たな収穫というと一番は近衛兵長から聞き出した話だろう)
男(やつは俺の魅了スキルによって虜となっている)
男(嘘を吐かず全てを話せ、という命令で今回の事態の裏側に潜むもの、近衛兵長が王国の工作員であったことも含めて全てが明らかとなった)
男(今回逐一話を聞くため手を出せないように命令して同席させている)
姫「王国……ですか!?」
男「姫、何か知っているのか?」
姫「先の大戦の覇者で、ここらでは一番の領土と軍事力を持つ大国です」
姫「最近また領土拡大のため怪しい動きをしているとは聞いていましたが……」
87 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/11(木) 22:15:00.01 ID:rxpms8Gr0
近衛兵長「我が主、王の目的は全てを支配することだ」
近衛兵長「私はそのためにこの独裁都市の弱体化を狙って潜入した」
近衛兵長「結果は上手く行き過ぎたと言っていいだろう。これもあの愚かにも自身が王となろうとした司祭のおかげだ!」
男(先に話は聞いていた。司祭が自分が王になるため、姫を執政者失格の烙印を押させるためにしたことの数々を)
男(その過程で独裁都市の力が弱まったのだ)
男(近衛兵長の言葉に同意できるところがあるのも確かだった)
男「ああ、そうだな。女の子一人犠牲にしておいて何が王だ」
男(司祭が姫にやっていたことは許せるわけがない)
姫「男さん……」
女「むっ……そんなことより、このままじゃ独裁都市が危ないのよね?」
男(姫が頬を赤く染め、女は少々苛立ちと共に話題を変える)
88 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/11(木) 22:15:37.27 ID:rxpms8Gr0
女友「神殿の黄金化計画のために集めていたお金は、実のところ司祭さんが王になった後に軍事拡大をするために残していたと」
女友「しかし、その隠し場所を近衛兵長にも明かしてしまったため用済みとなり殺されたんでしたね」
近衛兵長「金は既に他に潜入していた部下の手によって運び出されている」
近衛兵長「私に命令しようとも取り返せないだろう。ありがたいことにな」
男(女友の確認に近衛兵長は腹正しいことを言ってくる)
男(虜になり俺への好意こそあるのだろうが、女友のようにコントロール出来ることは証明されているし)
男(命令に従うと言っても心までは変えられないので王国を崇拝する気持ちは健在だ)
姫「司祭と近衛兵長がいなくなった以上、これまでの愚策を撤回、新たに改革していくことで独裁都市の再建を果たすつもりではありますが……先立つものがないのは不安ですね」
女友「それでしたら当てが無いわけではありません」
姫「……?」
89 :
◆YySYGxxFkU
[saga]:2019/07/11(木) 22:16:08.09 ID:rxpms8Gr0
女友「今回の事態を昨夜の内に早速古参商会に相談したところ、商会が独裁都市に融資をしてもいいという解答をもらえました」
姫「本当ですか!?」
女友「ええ。元々独裁都市の人口は多く、大きな市場となっています」
女友「高すぎる税により一度は支部を引き上げましたが、それも後ろ髪引かれる思いだったそうです」
女友「都市運営が健全化するならば、新たに支部を再開してもいいですし、そのための融資も惜しまないだそうです。ただ……」
姫「この苦難のときに助かります! ええ、交換条件は分かっています」
姫「官が発注するものは優先的に古参商会に回すようにします」
女友「分かりました。では返事を古参商会にしておきます」
男(女友はいつだって何もかも見透かしたように動いているがここまで用意周到だとは。久しぶりに会う俺も驚きだ)
姫「ありがとうございます、女友!」
女友「いえいえ、姫のためならばこれくらい」
男(礼を言い合う二人だが、どちらも名前が呼び捨てだ)
男(信頼感のようなものも見えるが、二人ともいつの間に仲良くなったのだろうか?)
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