【SW】ジェダイ「私を…弟子に、してください…」【オリキャラ】

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 02:53:52.88 ID:pBXRg8gE0

クネー「おいマスター、そのガキ、惑星クマモッテで捕まったとかじゃないだろうな」

店主「あ?知らねえよ。ていうかクマモッテは吹っ飛んだって話だろ?分離主義者と帝国軍もろとも」

クネー「吹っ飛んだ!?何でだ!?」

店主「う、噂だと、地殻変動か何かで内側からボカンと……どうしてそんなに気にする?」

クネー「いや……つい最近まであそこにいたものだからな」

店主「へえーっ、あそこは相当な鉄火場だったって話だろ?大したもんだな!」

ナイン「×××?××××?」ズイッ

クネー「な、何だ?サラスタン語はわからん」

店主「ハハハ、おいナン!反乱軍の情報収集ならヨソでやれよ」

ナイン「××××!」

店主「あーあー、そうだったな!お前は大した一匹狼だよ!」

クネー(クマモッテが、爆発……とすると、あいつらは……)

「クネー?お前クネーじゃねえか!?」


 クネーは肩を震わせた。
聞き覚えのある声だ。
その主が今、人ごみをかき分けて姿を現す。


イシュメール「クイナワ以来だなあ!」

クネー「イシュ、メール……」


 クネーの神経が、その男にくぎ付けにされた瞬間。
彼の声を聴きつけたと思しき第三者が走ってきて、ジャンプし、クネーの顔に飛びついた!


ネーア「クネェェェ!この裏切り者があああああ!」ガシッ

クネー「うおおおお!?」ドタッ

イシュメール「何だこいつ!?――あっ、ネーアじゃねえか!」

店主「知り合いかよ!?早くはがしてやれ!」
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 02:54:54.97 ID:pBXRg8gE0

 同時刻、首都郊外。
市街地の一角が瓦礫の山と化して煙を上げている。
その中心には、TIEファイターの残骸があった。


マーズ「どこだ……どこに隠れた……!」ガシャガシャ


 ジヒス・マーズは素手で瓦礫をかき分け、撃墜した敵機の搭乗員を探す。
早くも野次馬が集まり、その鬼気迫った行動を遠巻きに眺めていた。
一人のジャワがその中から飛び出して、近くに駐機されていたマーズのTIEファイターから方向指示器をむしり取ろうと試みる。
マーズの懐でコムリンク通信機が鳴った。


マーズ「!はい、マーズです!」ピッ

ワイマッグ『私だ』


 ダーク・ジェダイが応答スイッチを押すと、青白い立体映像で彼女の上司の姿が映し出された。


マーズ「ワイマッグ司令官……!私はすでに脱走者のTIEを撃墜しました。ネーアは生きて脱出したか、死体が機外に放り出されたと思われ……」

ワイマッグ『いや、そこに奴はいない。エージェント・サギが下水道で奴の痕跡を発見した』

マーズ「下水道!?では奴は!」

ワイマッグ『繁華街へ向かったようだ。正確な位置は間もなくサギが突き止めるはずだ、お前も繁華街に飛べ!』

マーズ「承知しました!」


 マーズは通信を切ると、もはや墜落後にはなんの関心も払わず踵を返した。
ジャワをフォースで縊り殺し、さっと遠のく野次馬を無視してTIEファイターに乗り込み、離陸する。
ダークジェダイは己の罪を雪ぐため夜空を駆けた。
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/02(日) 00:49:54.51 ID:jrBhtQ+x0

イシュメール「するってーと、何か?」


 イシュメールとクネー、ネーアは、酒場のテラスに移動していた。
密輸業者はグラスをくるくる回しつつ、怪訝そうな顔で確認する。


イシュメール「ネーアちゃんは500年の眠りから覚めた悪の魔法使いで」

ネーア「うむ」

イシュメール「ミコア姫も実は同じ悪の魔法使いで、クイナワの反乱軍基地の位置を帝国にチクったのも彼女」

ネーア「うむ」

イシュメール「そのうえシンノのやつをたぶらかして弟子にしたから、連れ戻しに行かないといけないって?」

ネーア「そうじゃ」

イシュメール「なんだそりゃ!?この時代にそんなオカルトな茶番をマジでやってんのかよ!?」

クネー「……しかも、そのせいでクイナワやクマモッテで大勢人死にが出てるってことになるが」

ネーア「シスは一子相伝。優秀な弟子はそのくらいの骨折りに値するぞよ」

イシュメール「自分が敵に捕まって助けられるのを待ったり、戦闘に巻き込まれたりする骨折りにもか!?」

クネー「……あー、イシュメール」

イシュメール「しかもそのために今まで育ててきた先代の弟子も犠牲にするって?そいつをもっと訓練するほうが早いだろうが!」

クネー「イシュメール、その辺にしておけ。何か変な方向に流れ弾が行ってる」
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/02(日) 00:50:25.11 ID:jrBhtQ+x0

ネーア「ええい、理解が難しいならしなくても構わん!そなたらはただ妾を反乱軍の基地まで連れていけばよい」

イシュメール「俺は船を持ってない」

ネーア「チュクチャク木材のアガリはどうしたんじゃ?」

イシュメール「サバックですった」

ネーア「無能か貴様」

クネー「私も船は持ってない」

ネーア「嘘をつけ!WウィングをR3もろとも分捕っていったじゃろうが!」

クネー「チッ、いいだろう。いくらだ?」

ネーア「慰謝料でプラマイゼロじゃ!もちろん船も返してもらうぞよ」

クネー「はあ?そんなのが通るならな、私だってテイティスから慰謝料をガッポリせしめてるところだ!」

ネーア「そんなの知ったこっちゃないぞよ!」

クネー「おチビちゃんよ、お前は知らないかもしれないが、私たちの間じゃ交渉のときの暗黙のルールってのが……」

ネーア「何が暗黙のルールじゃ、その前に筋を通せ筋を!」

イシュメール「なあネーアちゃん、向こうのナイン・ナンに頼んだらどうだ?あいつは反乱軍とズブズブって噂で……」

ネーア「そなたは黙っておれ!」
クネー「あんたは黙ってて!」

イシュメール「な、なんだよ……」


 三人は会話に夢中になるあまり、気づかなかった。
酒場の周囲にストームトルーパーたちが展開していることに。
帝国軍はすでにネーアの居場所を突き止めていたのだ。
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/02(日) 00:51:52.55 ID:jrBhtQ+x0

肩当トルーパー「エージェント・サギ、各分隊配置につきました。酒場の包囲、完了です」

サギ「ご苦労ォ」


 二人は酒場の向かいの建物、その屋上にいた。
サギは双眼鏡でテラス席の三人の姿を視認する。


サギ「奴がここに逃げ込んだということは、あそこは反乱軍の巣窟だァ……私がネーアを始末し次第酒場に突入し、残りの連中を全員逮捕しろォ」

肩当トルーパー「承知しました……あの、お言葉ですが、やはりマーズ補佐官の到着を待ったほうがいいのでは?」

サギ「中尉、お前はあんなサイコ女に手柄をくれてやる気かァ?あれは正気じゃないぞォ」

肩当トルーパー「しかし、ワイマッグ司令官は……」

サギ「司令官は『殺しても構わん』と仰った。捕まえるのは手こずるかもしれないが、殺すだけなら私でも十分可能だァ」


 サギは双眼鏡をしまい、代わりにブラスターライフルを取り出した。
狙撃モードにセットし、手すりから身を乗り出して、スコープ越しにネーアたちのいるテラスを覗き込む。


サギ(ちょろいもんだぜェ)


 サギはイシュメールとクネーを無視し、ネーアに照準を定める。
標的は小柄なので手すりが少し邪魔ではあるが、隙間から頭を狙える位置だ。


サギ(死ね、ダース・ネーア……その小ぎれいな顔を吹き飛ばしてやるゥ!)


 おそるべきISBのエージェントは精神を殺意で研ぎ澄まし、ついに引き金を引く。
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/02(日) 00:52:48.10 ID:jrBhtQ+x0

ネーア「へーっくしょん!」


 その瞬間、シス卿は盛大にくしゃみをした。
光弾は狙いを逸れる。


クネー「ぐおっ!?」チュインッ


 そしてクネーの脚を掠め、背後の窓を破壊して店内に飛び込んだ。
たちまちフロアは恐慌に陥る。


ネーア「うおっ、何じゃ何じゃ!?」

イシュメール「おのれ、誰だ!よくもクネーを!」ジャキッ バシュバシュバシュ


 密輸業者は激昂し、凶弾が飛来した方向に自分のブラスターピストルを連射した。
夜闇の向こうでひきつったような叫びが聞こえて、ついで何かが地面に落下する音が響いた。
その直後、店内にストームトルーパーが乱入する。


トルーパーA「帝国軍だ!全員壁に手を付け!」ジャキッ

トルーパーB「第二分隊、俺に続け!テラスを制圧する!」ドカドカ


 酒場の中はカオスの極限に達した。
裏口や窓から逃走する人々、トルーパーに組み敷かれる人々、スタンレーザーに撃たれて倒れる人々。
それをかき分けて一隊のストームトルーパーが三人のほうに向かってくる。
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/02(日) 00:53:26.35 ID:jrBhtQ+x0

ネーア「うおお、もう妾の居場所が!?」

クネー「痛つつ、ネーア!やっぱり脱走者はお前だったか、よくも巻き込みやがって!」

ネーア「そなたがあそこで逃げなければシンノもリズマも無事だったかもしれんのじゃ、お互い様ぞよ!」

イシュメール「ええい、どっちにしろもう俺たちだけ言い逃れは利かねえ!二人とも飛び降りろ!」


 三人は相次いでテラスから飛び降り、転がるように走った。
そして裏庭を抜けた先の路上に、のたうち回る黒服の男を発見する。


サギ「ぐああああ!痛い!痛い!これがシスの技か!おのれダース・ネーアめェ!」ゴロゴロ

ネーア「さっき撃ってきたやつじゃ!」

クネー「あの服、帝国保安局のエージェントだぞ!」

イシュメール「ちょうどいい、捕まえろ!」バッ


 ほんの数秒後、向かいの建物から数人のトルーパーが走り出てきて銃を構えた。
イシュメールがサギを後ろ手に捕まえて盾にする。


サギ「ぐわああ、やめろ、撃つなァ……」

肩当トルーパー「貴様、人質とは……!」

イシュメール「これは皇帝の手先、貴様らの上司だろうが。撃てるもんなら撃ってみやがれ!」
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/02(日) 00:54:24.33 ID:jrBhtQ+x0

ネーア「今じゃ、食らえい!」ブオンッ


 その隙にネーアはフォースを使い、近くにあったゴミ箱をトルーパーたちに投げつけた。


トルーパー「「「ぐわあああ!?」」」ガシャーンッ


 金属塊の直撃を受けて吹っ飛ぶトルーパーたち。


イシュメール「ヒャッホーいいぜネーアちゃん!」

クネー「二人とも、こっちに来い!スピーダーがある!」


 三人は帝国のスピーダーを奪い、サギをトランクに放り込んで、いっさんに逃げ出した。
繁華街のネオンと喧騒が猛スピードで通り過ぎていく。
クネーは生ぬるい風を浴びつつ、今日あの酒場を訪れたことを深く後悔した。


クネー「ああくそ、どうしてこんなことに……!」

イシュメール「なあ、人質作戦がどこまで通用するかな!?」

ネーア「もう無理そうじゃ、あれを見ろ!」


 ネーアが摩天楼の向こうの夜空を指差す。
TIEファイターが一機、暗闇を切り裂くようにして高速で接近してくる。


イシュメール「ああ、まったく今日は俺の人生で最高の一日になりそうだぜ!」


 イシュメールは半ば自暴自棄に言い放ち、スピーダーをハイウェイのほうへ走らせた。
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/02(日) 18:57:22.69 ID:F5psNJPo0
銃の構え方が酷そうなエージェント
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 00:35:41.50 ID:vSDG+UvM0

マーズ「逃がさんぞ……!」


 ダークジェダイは両手の操縦桿を引き絞り、地上を睨んだ。
帝国のスピーダーが一台、行き交う車両をかわしつつ街道を駆け抜けていく。
そこにダース・ネーアの気配を感じる。


マーズ(こうなったら殺すしかない……あいつの首をヴェイダー卿への手土産にしてくれる!)


 マーズはロックオンを待たずに引き金を引いた。
TIEファイターの機関砲から無数の光弾が連なって飛び出す。
イシュメールはバックミラーを見て目を剥いた。
弾着の土煙が猛然と追ってくる。


イシュメール「うわわわわ……!ヤバいぞ、おい!」

クネー「くそっ、対空ミサイルとか積んでないのか!?」ガチャガチャ

ネーア「ええい、どけい!」ダッ


 ネーアはクネーを押しのけてトランクの上に立ち上がった。
マーズとネーアの視線がキャノピー越しに交錯する。
光弾が、届く。


ネーア「ぬうあああーっ!」バッ


 シス卿は両手を掲げ、自分の正面にフォースを放射した。
弾着がスピーダーを越え、前方へ通り過ぎる。
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 00:36:18.70 ID:vSDG+UvM0

イシュメール「ああ、神様仏様ウィルズ様……あ?」


 密輸業者は自分がまだ生きていることに気づき、再びバックミラーを見た。


ネーア「ぬうう……ぬうっふっふっふ……!」グググ


 シス卿はこめかみに青筋を浮かべ、脂汗を垂らしながらも、笑っていた。
スピーダーに命中するコースで降り注いだ光弾は、そのすべてが、彼女の目の前の空中で静止している――
否、彼女から見て相対的に同じ位置に固定されているのだ。
ネーアが見えない腕で掴んでいるかのように。


マーズ「バカな、何だあれは……!?」


 ダークジェダイはTIEファイターを旋回させつつ地上を見下ろし、驚愕した。
機銃掃射を食らわせたのに、敵車両が無事なまま装甲し、光弾の群れがそれにくっついていく。


ネーア「返して、やるぞよ……!」グググ


 ネーアは側面上方の敵機を睨み、掲げた手のひらをゆっくりと捻る。
空中の光弾がゼンマイ仕掛けのように緩慢な動きで回転し、TIEファイターのほうに向き直る。
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 00:36:48.94 ID:vSDG+UvM0

マーズ「!?まさかッ!」グイッ

ネーア「今じゃあ!」パッ


 ネーアはフォースの放射を止めた。
光弾は本来の速度を取り戻し、ハクカの夜空を切って飛んだ。
その輝きがダークジェダイの機体を貫通し、破壊する。


マーズ「お、おのれ……おのれーっ!」


 マーズはとっさの回避で機関部への被弾と爆発を避けていた。
しかしそもそもTIEファイターは防御の薄い機体。
機関部以外への被弾だけでもその機能を奪うのに十分だった。
ダークジェダイの機体はコントロールを失い、黒煙を引きながら、ビル街に墜落していく。


イシュメール「ワオ!マジかよお前、信じられねえ!念力でブラスターを弾き返しやがった!アメージングだ!」

クネー「……ま、まさかお前……本当にシスの暗黒卿、なのか?」

ネーア「ぜえ、ぜえ……だから言ったじゃろうが……さっきのあいつみたいなシスもどきじゃない、本物ぞよ……」


 シス卿は強気なことを言いながらも、顔色は真っ青で、手はぶるぶる震えていた。
よろめきながらどうにか座席に戻る。
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 00:37:48.88 ID:vSDG+UvM0

ネーア「で、でも今のは、ちょっと疲れた……ガス、欠」ガクッ

イシュメール「……おい、ネーアちゃん?ネーアちゃん!?死んだ!?今の、命を賭けた大技的なアレだったのか!?」

クネー「いや、気絶してるだけのようだ……イシュメール!横合いから来るぞ!」


 密輸業者がその声に応えてパッと横を振り向くと、追い越し車線から三つの影が飛び出した。
スピーダーバイクに跨ったスカウト・トルーパーだ。


トルーパーA「こちら第3パトロール、ポイント66で脱獄囚を発見。これより攻撃します」ブオンブオン

トルーパーB「囲め囲め!」ブオンブオン

トルーパーC「逃げられるとでも思うのか!」ブオンブオン

イシュメール「うおおお!一難去ってまた一難か!」


 トルーパーたちは肉食獣のようにイシュメールたちに追いすがり、バイクの機銃で集中砲火を浴びせた。
火花が飛び散る中、密輸業者は半泣きで喚く。


イシュメール「うおおおお!ネーアちゃん起きてくれ、無敵のシスマジックでなんとかしてくださいよーッ!」

クネー「あいにくさっきので打ち止めらしいな……頭を低くしていろ!」ガシャコン


 今度は女賞金稼ぎの見せ場だ。
スピーダーに載っていたブラスター・ショットガンをコッキングし、手近なトルーパーにぶっぱなす。


クネー「ふんっ!」ドウンッ

トルーパーA「ぐわっ!?」ガシャーンッ


 スカウトトルーパーの一人が胸を撃たれて転落し、バイクもろともあっという間に後方へ消える。
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/04(火) 00:38:52.74 ID:vSDG+UvM0

クネー「さすがは帝国、いいマスターキーだ」ガシャコン

トルーパーB「おのれ!」ブオンブオン

クネー「近づくな!」ドウンッ

トルーパーB「ぎゃあっ!」ガシャーンッ

トルーパーC「やってくれたなあ!」ブオンッ


 さらに一人を仕留めるも、最後の一人がコッキングの隙を突いて急加速。
自分のバイクをスピーダーの後部に激突させる。


イシュメール「うおっ!?」

クネー「ぐうっ!?」

サギ『アアーッ!?何が起こってんだァ!?』


 エージェントがトランクの中で喚く。
クネーがショットガンを取り落とす。
三人目のトルーパーが乗り込んできて、それを路面へ蹴り落とした。


クネー「貴様……!」

トルーパーC「来い、ゴロツキ女!ファックされるのはスピーダーだけじゃ済まねえぞ!」


 スカウトトルーパーは電気トンファーを構えて挑発した。
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/07(金) 18:51:31.71 ID:k5pfulbl0

クネー「ほざけ――はあっ!」ブウンッ


 女賞金稼ぎはエレクトロ・カタナを抜き、横殴りに斬りつけた。


トルーパーC「ぬうん!」ガキン ブオンッ


 敵は自分の得物で防ぎ、垂直に振り下ろしてくる。


クネー「かあっ!」バチッ ブンッ


 それを弾き、斜めに切り返す。


トルーパーC「ぐおっ!?」バチュンッ


 肩に入った。
クネーは敵の体勢が崩れるのを見て、追い打ちをかけるべく踏み込む。


クネー(ぐっ!?)ズキッ


 サギに撃たれた足が痛み、その動作を鈍らせた。
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/07(金) 18:51:58.15 ID:k5pfulbl0

トルーパーC「オラアッ!」ブウンッ

クネー「ぐあっ!?」ドガッ


 次の瞬間、電気トンファーが彼女の胸を打ち据えた。
敵の起死回生の一撃だ。
クネーはよろめき、膝をつく。


クネー(し、しまっ……!)

トルーパーC「俺様に歯向かったのが間違いだ!」


 スカウトトルーパーが武器を大きく振りかぶる。


イシュメール「野郎!」ジャキ バシュッ

トルーパーC「ぐうっ!?」バスッ


 しかし密輸業者がハンドルから向き直り、ブラスターを発砲した。
光弾がトルーパーの脇腹を撃ち抜く。


クネー「だあっ!」ガバッ

トルーパーC「おわっ!?」ドガッ


 立て続けにクネーのタックルが命中し、敵をスピーダーから叩き落す。
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/07(金) 18:52:30.30 ID:k5pfulbl0

トルーパーC「あああああ!貴様ら!覚えていろーッ!」ズダッ ゴロゴロ


 手練れのトルーパーはあえなく路上に投げ出され、捨て台詞を残して、時速数百キロで遠ざかっていった。


クネー「……フーッ」


 女賞金稼ぎは業物を鞘に納め、シートに戻る。
吹き付ける風、対向車のヘッドライトの輝き、都市の喧騒と微かなサイレン音。
イシュメールが前を向いたまま口を利く。


イシュメール「なあ、クネー!」

クネー「何だ」

イシュメール「このゴタゴタが片付いたら、また一緒に――」

クネー「……待て。何か聞こえないか」

イシュメール「何ぃ?」


 密輸業者は耳を澄まし、奇妙な響きが接近してくるのに気づいた。
リパルサーリフトの浮遊音だ。
そう理解した直後、ビルの陰から航空機が低空で姿を現す。


イシュメール「げえっ、ガンシップ!」

クネー「かわせ!脇道に飛び込めーっ!」


 ミサイルが着弾し、街道は爆炎の赤に染まった。
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/07(金) 18:53:04.52 ID:k5pfulbl0

 帝国軍は首都キタクシーに戒厳令を発した。
市外へ通じるすべての街道が封鎖され、その包囲の内側をストームトルーパー部隊が走り回る。
彼らの手元にはネーアとイシュメール、クネーの3d映像があった。


トルーパーD「おい、こっちだ!」ブオンブオン

トルーパーE「こりゃあひどい」ブオンブオン

トルーパーF「重機が要るんじゃないか?」ブオンブオン


 そんな中、三人のスカウトトルーパーがスピーダーバイクに跨り、ある区画に到着した。
ビルが崩壊して炎上し、その中心にはTIEファイターの残骸が微かに覗いている。
本日二機目の墜落現場だ。


トルーパーD「なんにせよ、この様子ではマーズ補佐官の命はなさそうだ……」

トルーパーE「いや待て、あれを見ろ!」


 瓦礫の一つが微動したかと思うと、勢いよく吹き飛んだ。
その陰から、黒い人影がのっそりと姿を現す。


マーズ「ハアーッ、ハアーッ……!」


 ジヒス・マーズだ。
軍服は焼け焦げ、髪は乱れ、頭から血を流しながらも、確かな足取りで瓦礫の山を下りる。


トルーパーD「マーズ補佐官!?お体の方は――」

マーズ「どけっ!」ドカッ


 ダークジェダイはトルーパーの一人からバイクを奪って走り出した。
今や彼女のフォース感覚は極限まで研ぎ澄まされ、何の情報もなくともダース・ネーアの居場所を探知することができたのだ。
三人のトルーパーは何の迷いもなく疾走していく上官の姿を呆然と見送った。
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/07(金) 18:53:49.16 ID:k5pfulbl0

 クネーの隠れ家は中庭に離着床パッドを備えた、ありふれたドーナツ型の施設だった。
逃亡者たちのスピーダーは無残に傷つき、黒煙を吹きつつ、どうにかそこへ辿り着いたのだった。


イシュメール「あー、ひどい目に遭った!」


 密輸業者はネーアを背負ってきてソファに寝かせ、疲れ切った様子でぼやく。


イシュメール「あんな大立ち回りは二度と御免だぜ、映画の主役じゃあるまいし!俺みたいな脇役にあんな鉄火場は荷が重すぎる!」

クネー「何一仕事終わったような口を利いてるんだ。まだ安心できないぞ……おい、もっときりきり歩け!」

サギ「ヒィィ、こんなこと許されないぞ!絶対にィ!」


 クネーは遅れてやってきた。
手錠で後ろ手に拘束したエージェント・サギを追い立てている。


クネー「イシュメール、私は船を準備する。お前はそこのアストロメクを起動して、そっちのコンピュータと一緒に持ってきてくれ」

イシュメール「わかった……あれ?このドロイド、どっかで見たことあるような」

クネー「最近手に入れた戦利品だ。そら、歩け!向こうの船に乗るんだ!」

サギ「おのれ、後で吠え面かくなよォ……」


 クネーとサギが中庭に向かう一方、イシュメールは彼女が指し示したアストロメク・ドロイドの電源を入れる。
赤い頭のR3タイプだ。
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/07(金) 18:56:41.53 ID:k5pfulbl0

R3-C3『――ピポ?プパピポポ』

イシュメール「おう、お目覚めか。さっそくだが敵に追われてる、船を飛ばすのを手伝――」

R3-C3『プアアアア!ピポポプパパピポ』バンバン

イシュメール「うおお、何だ何だ!?痛ってえな、やめろ!」

R3-C3『ピコピコプパパピポプウウー』バチバチ

イシュメール「反乱軍?基地?密告?裏切り者?何のこと――ああっそうか、てめえシンノのドロイドだな!どうしてここにいる!?」

R3-C3『ピポピポプピポ』バチバチ

イシュメール「だからやめろ、俺じゃねえよ!何があったかしらねえが、俺のせいじゃねえ!何もしてねえって!」

R3-C3『プウウー…ピポポ?プアアア!』


 ドロイドは唐突にイシュメールの下を離れ、ソファの方に向かった。
アームを伸ばし、そこに寝かされている少女の頬をペチペチと叩く。


ネーア「うむ……何じゃあ……」

R3-C3『プパパピポポプウウ』

ネーア「むう?そなた、R3か!?おお、おお!よくぞ無事で!」ナデナデ

R3-C3『ピポピポプパパ』ガタガタ

ネーア「いや、密告者はミコア姫じゃった。奴の正体は妾の師のそのまた師のシス卿、ダース・グレイヴスだったのじゃ」

イシュメール「その話本当にマジなんだな……ていうか、俺のこと密告者だと思ってたのか?謝れよ」

ネーア「嫌じゃ」

イシュメール「謝れ」

ネーア「いーやーじゃ!」
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/21(金) 18:59:56.36 ID:G4JAHlDg0

クネー「おい、遅いぞ!一体何やって――」タタッ

イシュメール「てめえ、このクソガキ!今すぐ帝国軍に突き出してやったほうがいいみてえだな!」ギリギリ

ネーア「いてててて、やってみるがいいぞよ!そっちだってただじゃ帰れんじゃろ!」ゲシッゲシッ

R3-C3『ピポピポピポ』バチバチ

イシュメール「叩けば埃の出る身の上だあ!?てめえら、それが命の恩人に対する口の利き方か!?」ドタバタ

ネーア「ほざけ、それを言うならクイナワでは――」ジタバタ

R3-C3『プアアアー!』ギュルンギュルン

クネー「貴様ら!!モメてる場合か!!」


 女賞金稼ぎは二人と一機の尻を蹴飛ばしつつ、中庭へ戻った。
そこに駐機されているのは当然、シンノのWウィング。
クネーが惑星クマモッテで持ち逃げしたものだ。


ネーア「フン、まだ壊さずに済んどるようじゃのう。見た限りでは」

クネー「その嫌味は今じゃないとダメか?」

イシュメール「まったく大した暗黒卿だぜ」


 次の瞬間、外に面したドアが吹き飛んだ。
無人のスピーダー・バイクが室内に突っ込んできて、壁に激突して爆発。
今まで居たダイニングに黒煙が渦巻く。
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/21(金) 19:00:37.78 ID:G4JAHlDg0

サギ「ヒヒヒヒヒ、もうお迎えが来たようだなァ!」


 機内でエージェント・サギが勝ち誇って喚く。


クネー「ええい、言わんことじゃない!早く船に乗れ!」

イシュメール「なに、また露払いのトルーパーだろうが。相手してやる!」ジャキッ

ネーア「いや、この気配は……!」

R3-C3『ピポポ!ピポポ!』ウィーン


 R3-C3はあわてふためいて機内に入り、ドロイド用ソケットに収まると、すぐさま行動に出た。
Wウィングの尾翼に据え付けられたブラスター砲を制御し、ダイニングの煙の中へ光弾を連射する。
ほとんど盲撃ちだが、密集隊形のストームトルーパーであれば薙ぎ倒せる攻撃だ。


イシュメール「やったか!?」

ネーア「まだじゃ――伏せろ!」


 煙の向こうから赤い光が飛来した。
一秒前までイシュメールの頭があった場所を横切り、尾部機銃に突き刺さる。
密輸業者は肝をつぶして飛び退き、その凶器が再び宙を舞うのを目にした。


「――思えば初めから、他の選択肢などなかった」


 黒煙の向こうから、軍服の女が姿を現す。


サギ「今の武器は……!マーズ第二艦隊司令官付補佐官殿ォ!」


 赤い刃のライトセーバーは回転しながら来た道を戻り、彼女の手に収まった。


マーズ「死ね、ダース・ネーア。私の弱さとともに」
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/21(金) 19:01:29.09 ID:G4JAHlDg0

ネーア「――一人でやっとれ!」ズバアッ


 シス卿は両手からマーズに向けて稲妻をほとばしらせた。
しかしその輝きは細く、か弱い。
直前の戦闘での消耗が回復していないのだ。


マーズ「フンッ……!」バチバチ


 ダークジェダイはライトセーバーを斜めに構え、電光をたやすく受け止めた。


ネーア「こ、小癪な……!」ズバババ

イシュメール「このクソアマァ!」ジャキッ


 シス卿が放電を続ける一方、密輸業者が燃料缶の陰からブラスターを構えた。
マーズは目をぎらりと輝かせ、左手をそちらに向ける。


イシュメール「ぐがっ……!?」ギリッ


 フォースがイシュメールの首を締め上げ、空中に吊り上げる。
ブラスターはあらぬ方向を撃った後、主の手から零れ落ちた。


マーズ「フウーッ……!」グググ


 マーズの目が血走り、額に汗が浮く。
さらに集中を深め、右手の光剣で受け止めている電撃を収束し、偏光して、シス卿に反射する。
ジヒス・マーズは今、精神的・肉体的な苦境の中で、フォース使いとして最高のポテンシャルを発揮していた。


ネーア「な、あばばばば!?」ビリビリ

イシュメール「や、やべ――」ギリギリ
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/21(金) 19:02:09.18 ID:G4JAHlDg0

サギ「補佐官殿!危ないィ!」


 Wウィングの中からエージェント・サギが警告する。


マーズ「!」サッ

クネー「喰らえ!」ジャキッ バシュッ


 マーズが二人を解放して飛び退き、ライトセーバーを構えて防御姿勢を取った。
直後、クネーが機内から姿を現し、ブラスター・ピストルを発射する。
その狙いはダークジェダイではなく、その傍にある燃料缶だ。
爆発が巻き起こり、炎と煙が着床パッドを荒れ狂う。


イシュメール「ゲホゲホ――この爆発なら!今度こそやっただろう!」

ネーア「その流れはもう十分ぞよ!」

クネー「早く乗れバカども!この惑星からおさらばする!」


 三人が機内に転がり込むと、R3-C3がWウィングを離陸させた。
間一髪、隠れ家に踏み込んできたトルーパーたちが黒煙を抜けて姿を現す。
こちらを見上げて銃撃してくるが、重戦闘機の装甲の前には何の脅威にもならない。


サギ「マーズ補佐官殿!?まさか、そんな!貴様ら本気かァ!」ジタバタ

イシュメール「捕虜は捕虜らしくしてろい!」ゲシゲシ

ネーア「やーい、バケツ頭ども!ここまでおいで、なのじゃ!」ヤンヤヤンヤ

クネー「待て、下から何か……」
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/21(金) 19:03:01.69 ID:G4JAHlDg0

 燃料缶の黒煙の中から何かが飛び出した。
人だ。
中庭に面した壁を蹴ってWウィングに飛びつき、風防にしがみつく。


マーズ「逃がさんぞ……!」


 ジヒス・マーズだ。
いくらか火傷を負っているようだが、その目に宿る殺意は少しも衰えない。


ネーア「げええっ!貴様!」

イシュメール「女にしてもしつこすぎだ!」

サギ「ヒハハハハ、帝国からは逃れられんぞォ!ヒハハハハ!」

クネー「!?こ、こいつ、操縦桿を……!」グググ


 マーズはトランスパリスチール越しにフォースを行使して、クネーの握る操縦桿を操っている。
Wウィングは失速し、右に旋回しながら降下していく。
地上ではストームトルーパーたちが手ぐすね引いて待っている。

 
マーズ「墜ちろ……!」グググ

クネー「ま、まずい……!二人とも、墜落に備え――」

R3-C3『ポポピーポ!プアアー!』


 R3−C3が電子言語の絶叫とともに、無理矢理ロケットブースターを噴射した。
三人はシートに押し付けられ、サギは機体後方へ転がる。
機体は炎を噴いて前方へ急加速し、中庭に面した壁へ向かって突進する。
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/21(金) 19:03:45.30 ID:G4JAHlDg0

マーズ「何!?」

イシュメール「うおあああ!クネー何してるっ!?」

クネー「違う、ドロイド野郎が!」

ネーア「R3!キレたか!」

サギ「ヒイイイイ!これは狂気の沙汰――」


 衝突。
三人は勢いよく前につんのめり、そろって一瞬気絶した。
サギもスマキのまま前方へ吹っ飛び、シートの背面に激突する。


クネー「――っづ、おのれ……」フラッ

ネーア「ぐぐぐ、ムチウチになっちゃうのじゃあ……」

イシュメール「いてて、だがチャンスだ!上昇しろ、この隙に!」


 ダークジェダイの姿は消えていた。
壁に空いた大穴の向こう、降り積もった瓦礫の下敷きになったのかもしれない。
Wウィングは急速に上昇し、隠れ家から完全に脱して、大空へ舞い上がる。


クネー「近くにTIEファイターはいないようだな……」

イシュメール「外縁部の警戒に駆り出されてるんだろうぜ」

ネーア「とにかく最速で宇宙に出ろ、速攻でハイパースペースに逃げ込むんじゃ!」


 三人は風防越しに上方、ほの暗い宇宙を見上げる。
そこに突如、楔型のスター・デストロイヤーが出現した。


クネー「何!?」
イシュメール「んなバカな!」
ネーア「ぎゃああああああああ!」
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/25(火) 23:54:17.24 ID:WzysAjBa0

艦長「提督、スキャナーが復旧しました。キシュー上空から急速に上昇してくる船を補足」

ワイマッグ「間一髪、間に合ったようだな……」


 それはセード・ワイマッグの座乗艦、ヴェネター級スタ・デストロイヤーの「ヘファイストス」であった。
若き司令官は立体映像越しにWウィングを見やってほくそ笑む。


艦長「このタイミングで一隻だけ戒厳令を破り、脱出を図るとは……」

ワイマッグ「ああ。まず間違いなく、あの中にネーアが乗っている」

艦長「TIEファイターをスタンバイさせておいて正解でした。ただちに全中隊を出撃させます」

ワイマッグ「パターン66の包囲隊形を取らせろ。本艦のトラクター・ビームの射程内に追い込むんだ」

艦長「はっ!」


 艦長は手元のコンソールを操作して命令を伝達しつつ、司令官の様子を窺う。
表情も口調もごく平静ではあるが、額には微かに汗が浮いているのが見て取れた。
ダース・ネーア……多少特別な力があるとはいえ、たかが小娘一人。
それを取り逃がしただけでなく再び捕まえることにも失敗したのは、マーズやサギが無能だったからなのか。
あるいは何かイレギュラーの介入があったのか。
それともその両方か?


艦長(何にせよ、ここで取り逃したら……我々は、ヴェイダー卿に処罰されずにはいられまい)


 艦長は唾を呑む。
こんなときコマンダー・コーチがいてくれたら、という儚い願望が脳裏をよぎった。
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/25(火) 23:55:25.30 ID:WzysAjBa0

クネー「おのれっ!」グンッ


 TIEファイターの編隊が猛禽の群れのごとく襲い来る。
女賞金稼ぎは毒づきながら操縦桿を捻り、Wウィングの機体をローリングさせた。
緑色のブラスター弾が雨霰のごとく降り注ぎ、偏向シールドを削り取っていく。


ネーア「こ、これはヤバいのじゃ!」

イシュメール「そっちから来るぞ、9時から!わかってるのか!?」

クネー「ああ見えてる!」カチカチ

R3-C3『プアアアアー!』

クネー「ドロイド!貴様は騒いでいないでジャンプの計算をしろ!」グインッ


 振盪ミサイルの雨をかわし、敵艦の間合いギリギリを掠めるようにして飛ぶ。
先走って距離を詰めてきた敵機が勢い余ってその内側に入り込んだかと思うと、急制動して母艦の方へ吹っ飛んでいった。


イシュメール「うおおっ、もうトラクター・ビームで狙ってきてやがるぞ!」

ネーア「ターボレーザーじゃないだけマシぞよ!突っ込め!」

クネー「言われなくても!」グイッ


 Wウィングは横合いから飛来する弾幕をすり抜けて旋回。
トラクター・ビームの再照準に先んじてスター・デストロイヤーのそばをすり抜けようとする。
敵艦はそれを阻むべく、青く光る電光を発射し始めた。


ネーア「ぎゃああ!イオン砲が!イオン砲が!」

イシュメール「当たったら回路を焼かれるぞ、わかってるのか!?」

クネー「ああもう、黙っていろ貴様ら!助かりたいのか邪魔したいのかどっちだあ!」グインッ
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/25(火) 23:56:09.24 ID:WzysAjBa0

 シンノがカスタムを重ねたWウィングの全速力は、旧式戦艦の照準をコンマ数秒上回っていた。
電磁パルスのつるべ打ちを紙一重で避け、敵艦の懐に飛び込む。
スター・デストロイヤーの死角は至近距離だ。
クネーは機体をトップスピードのまま敵艦スレスレの位置にまで沈み込ませ、艦橋のすぐ横をすり抜ける。


クネー「――!」

ワイマッグ「……!」


 その一瞬、女用心棒と若き司令官の視線が交錯する。
Wウィングは一気に封鎖線の外側へと駆け抜けた。
視界が一気に開ける。


R3-C3『ポポピーポ!ピポポ!』


 R3が電子言語で喚き、急き立てる。
ハイパースペース・ジャンプの軌道計算が終了したのだ。


クネー「行くぞ!」


 女用心棒がジャンプ開始のレバーに手を伸ばす。


サギ「させるかァ!」ブンッ

イシュメール「ぐおっ!?」ドガッ


 そのとき、エージェント・サギが機内の後方座席から躍り出た。
隠れ家の壁に激突したとき拘束具が外れたものと見えて、両手が自由になっている。
整備用レンチを振るい、イシュメールを殴り倒す。
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/25(火) 23:57:18.59 ID:WzysAjBa0

サギ「貴様らごとき!」ゲシッ

ネーア「ぎゃふ!?」ドガッ

サギ「逃がさいでかァ!」ブンッ

クネー「ぐおおっ、貴様……!」ガシッ


 サギはネーアを蹴飛ばし、クネーにもレンチを振るって襲いかかった。
女用心棒は身を捻ってこれを掴み取るが、この体勢では力比べにはあまりにも不利だ。


サギ「小癪なァ!」グググ

クネー「くっ……!R3、ジャンプだ!お前がハイパースペース・ドライブを起動しろっ!」グググ

R3-C3『ポポピーポ!』


 彼女の指図でアストロメク・ドロイドが操作の代行を図る。
しかしその瞬間、背後の敵艦が発射したイオン砲が機体上部を掠めた。


R3-C3『プアア、ア!』バチバチ


 R3は主要回路がショートし、光速航行への切り替えを果たせない。
スター・デストロイヤーがゆっくりとこちらに向き直る。
TIEファイター部隊もその後ろから追いすがってくる。
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/25(火) 23:57:59.67 ID:WzysAjBa0

クネー「R3!?どうした!?」グググ

サギ「ヒハハハハ!万事休すといったところかァ!」グイッ

クネー「うおっ!?」パッ


 エージェント・サギがついにレンチをもぎ取り、大きく振りかぶる。
クネーの頭蓋を一撃で砕くための予備動作だ。


サギ「死ねい!」グワッ

ネーア「イシュメール!掴まれい!」


 その攻撃の直前、シス卿は警告の叫びとともに、近くにあったボタンを叩くようにして押した。
機体後部のランプドアが開く。
真空の宇宙空間が、機内の空気を猛烈な勢いで吸い出す。


クネー「何!?」

イシュメール「うおおっ!?」ガシッ


 クネーは操縦席にシートベルトで固定されている。
ネーアとイシュメールも近くのシートに掴まった。
しかしサギは凶器を握っていたばかりに、適切な手がかりを得られなかった。


サギ「ヒハァーッ!?」ゴオオッ


 ISBのエージェントは機内を吹っ飛び、転がって、後方の宇宙空間へ放逐された。


クネー「行けーッ!」グイッ


 女賞金稼ぎは今度こそレバーを引く。
風防の外で星が線に変わり、Wウィングは超空間へと突入した。
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/25(火) 23:58:33.20 ID:WzysAjBa0

 ……「ヘファイストス」艦底部、ドッキングベイ。


ワイマッグ「……」

艦長「……」


 提督と艦長はエレベーターでそのフロアに到着するなり、揃って上を見上げた。
天井に設けられたトラクター・ビーム放射器が、すぐ下の空中に獲物を吊り下げている。
Wウィングではない。


サギ「……ヒ、ヒヒヒ……お久しぶりですゥ」

ワイマッグ「……」

艦長「……」

ワイマッグ「艦長」

艦長「はい」

ワイマッグ「あれを宇宙に戻せ」

サギ「ヒィィ!?」
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/26(水) 02:54:05.12 ID:9y+IsUBR0
宇宙に投げ出されてもピンピン
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/06(月) 17:27:43.67 ID:6dzr4wPW0

カイウス「ぶはあっ!」ダッ


 ダース・カイウスはガス室から飛び出すなりくずおれて、床に四つん這いになった。
頭痛がする……動悸もだ。
目がチカチカして視界が定まらない。
ひたすら症状に耐えていると、誰かの手が肩に触れるのを感じた。
かろうじて顔を上げる。


リズマ「……」

カイウス「……リ、リズマ……」


 その手は冷たく、表情も凍りついているかのようだ。
俺は暗黒面に墜ちてでも彼女と一緒にいることを選んだ。
しかしその時思い描いた景色は、理想は、果たしてこんなものだったか。


グレイヴス「軟弱者めが。モラバンド苔の実験はヴァッタ・ガスの中でしかできんのだぞ」スタスタ


 ダース・グレイヴスがガス室から姿を現す。
さっきまで弟子と同じ環境に置かれていたはずだが、顔色一つ変えず平然としていた。


カイウス「も、申し訳ありません、マスター……しかしあれは、毒ガスでは……?」

グレイヴス「呆れ果てた不覚悟ぶりだな……こうなれば学科は後回しだ。基礎だけでもと思っていたが」


 マスター・シスは大儀そうに溜息を吐き、方針の転換を告げる。


グレイヴス「明日から戦闘訓練を始める。教義のために手を汚せば覚悟も決まろう」

カイウス「一体……何をせよと、仰るのです?」

グレイヴス「殺すのだ。マクシャリス・セレノーラント・ドゥークーを」


 王女の美貌が怒りに醜く歪む。


グレイヴス「奴は下郎の分際でこの私を謀り、帝国を釣る餌に利用した。ヤマタイト・シスへの大逆だ!」
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/06(月) 17:28:24.71 ID:6dzr4wPW0

 一方、惑星タンガシム……
反乱軍基地司令部では。


ネーア「全軍出動ぞよ!」バンッ


 シス卿は踏み台に登り、戦略テーブルを両手で叩いた。
惑星ヤマタイティアの立体地図を睨み、その一点を指し示す。


ネーア「ここじゃ!ここにシンノが囚われておる。一刻も早く救出すべし!」

中隊長1「救出ったってなあ、ネーアちゃん……」

中隊長2「ヤマタイティアは帝国軍の本拠地だぜ?」


 反乱軍の士官たちが怪訝そうな顔で口を出す。


中隊長1「しかもちょうど指差してるそこはど真ん中もど真ん中、王宮の最深部だ」

中隊長2「今の俺たちの十倍の戦力があっても辿り着けるたあ思えないね」

ネーア「何を弱気な!ハクカからこっち、あいつがどれだけ反乱軍に貢献したと!」

中隊長1「そりゃあ俺たちだって、助けたい気持ちはやまやまだけどよ……船も兵隊も足りねえし」

中隊長2「これじゃまるっきり死にに行くようなもんだ。ジェダイ様もそれは望まねえだろう」


 ネーアは歯噛みした。
弟子の居場所はフォースで感知できるものの、救出はあまりにも困難だ。
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/06(月) 17:28:55.59 ID:6dzr4wPW0

中隊長1「それよりネーアちゃん、なんでシンノがヤマアイティアにいるってわかるんだよ?」

ネーア「うるさいな!フォースじゃ!」

中隊長1「おっと、そうか。ネーアちゃんはフォースを感じられるんだったな」

中隊長2「しかし帝国にもフォース使いはいるだろう。奴らがニセ情報を撒いてるセンはねえのか?」

中隊長1「どうやって撒くんだ?」

中隊長2「そりゃお前……念力とか、謎めいた儀式とかだよ」

ネーア「ええい、適当なこと言いおって!」

イシュメール「その情報は信頼してもらっていいぜ」


 密輸業者が司令室の隅から口を挟む。
隣のクネーともども、包帯が目立つ痛々しい姿だ。


イシュメール「俺たちの筋の情報で裏が取れたからな。ネーアの感覚は正確さ」

中隊長1「フン、密輸業者のコネか?」

イシュメール「あんたたちの組織より歴史は長い界隈だぜ」


 そう言って、ネーアのほうへウィンクして寄越す。
そんな情報収集をする時間はなかったはずだから、ハッタリであろう。
彼女がシスの暗黒卿だという秘密を守りつつ、その感覚の信頼性をフォローした形だ。
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/06(月) 17:29:34.40 ID:6dzr4wPW0

バヤット「……その情報が真実だとしても、現時点で部隊を動員することはできない」


 今までむっつり黙り込んでいた司令官が口を開く。
何やら渋い表情をしているようだが、それ以上モン・カラマリの感情の機微を見て取ることは難しかった。


ネーア「ぐむっ……バ、バヤット……!」

中隊長1「……そういえば、ベース1に援軍を頼むってのはできないのか?」

中隊長2「ロザルの失敗の後だからな。モン・モスマを説き伏せるのは無理だろうよ」

ネーア「この腰抜けどもが!無理だの不可能だの、そればっかりか!」

クネー「その辺にしておけ」


 今度は賞金稼ぎが口を出した。


クネー「そいつらも腰抜けなりに思うところはあるだろうよ。苦渋の決断をほじくり返してやるな」

ネーア「しかし、シンノは……!」

クネー「皆が皆ジェダイやシスのように強いわけじゃない。時には大を生かすために小を殺すことも必要になる」

ネーア「それは帝国軍の理屈ぞよ!」


 司令室を重苦しい沈黙が支配する。
ネーアは舌打ちして、ローブをひらめかせて部屋を走り出た。
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/06(月) 17:30:07.85 ID:6dzr4wPW0

イシュメール「……まあ、あいつもいっぱいいっぱいなんだろうよ。ミコア姫の本性に気づけなかった負い目があるからな」

クネー「フォースは使えても、指揮官としての能力は乏しいらしい」

バヤット「……賞金稼ぎ、貴様が非情な切り捨てを支持するとは意外だな」


 バヤットは半ば皮肉めいた形でクネーに水を向ける。
以前尋問室で面会したときの言動を示唆していることは明らかだ。


クネー「ケース・バイ・ケースだ。今は指揮のセンスを発揮すべきときじゃない。無難に行動して準備を整えるべき状況とみた」

バヤット「何の準備だ?ヤマタイティアの堅陣に強行突入する準備か」

クネー「グレイヴスは単身でこの反乱軍に潜入していた。肝心なところでは部下を信用しない、古臭い現場主義者だ」

イシュメール「……」


 イシュメールはザイン・ザ・ハットの軍団からの逃避行、ミコアの言動を回顧する。
シンノの勧誘は、テイティスのような手駒にやらせても構わない仕事ではなかったか。
自ら危険を冒して単身で潜入してきたのは、シスの神秘的な教義か何かに強制されてのことなのだろうか?


クネー「奴は必ず動く。クマモッテの誤算を清算するため、自分からヤマタイティアを出てくる」

バヤット「……それを叩くための準備か。そんな都合のいいチャンスが……」

クネー「グレイヴスは私もろともマクシャリスに捕まって以来、計画を修正するのに多大な労力を払った。分離主義者を放置するとは思えん」

イシュメール「……?おい、待て。グレイヴスを倒すのはいいが、シンノはどうなる?」

クネー「知るか!私はクマモッテでテイティスに裏切られた借りを返せればそれでいい。ヤマタイトのシスを根絶やしにしてやる」

イシュメール「ええっ!?おいおい、あいつは一応俺の恩人なんだぜ!?」
 

 クネーはイシュメールを無視して踵を返した。
バヤットを一瞥し、


クネー「貴様の指揮官としての能力も、その時に問われるのかもしれんな」


 それだけ言い残して司令室を出た。


バヤット「……」


 新司令官は部下たちの視線を感じつつ、一人沈思黙考する。
こんな時、シカーグ将軍ならどうしたのだろうか。
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/16(木) 16:56:19.18 ID:9N2bd6Re0

ネーア「……」


 シスの暗黒卿は一人、暗い部屋でベッドに座り込んでいた。
布団を掻き合わせ、窓を見やると、外ではすでに日が沈んでいる。
青灰色の空に、雲の影が恐ろし気に浮かぶ。
ネーアは外気の寒さを感じ取ったかのように身震いした。


ネーア(どうして……どうしてこんなことになったのじゃ)


 彼女がシスとなったこと、五百年を過ごしたこと。
シンノと出会ったこと。
グレイヴスはその全てをまんまと利用した。
ネーアの行動と、敵の正体に気づくことのできなかった不注意が、リズマの死とシンノの堕落を招いた。
贖罪の可能性も、ついさっき完全に潰えたところだ。


ネーア(マスター・ヨーダ、妾は……私は……今まで何のために……)


 扉が開き、光がさっと差し込んだ。
ネーアは目を細めてそちらを見やる。
ユスカ・ショーニンが立っていた。
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/16(木) 16:56:54.64 ID:9N2bd6Re0

ユスカ「……ネーアちゃん」

ネーア「……ユ、ユスカ」

ユスカ「……よくここまで帰ってきたね。よく頑張った……だからこそ、さ」


 女パイロットはネーアの横に腰かけ、その肩を抱いた。


ユスカ「ここで諦めたら、勿体ないでしょ」

ネーア「……しかし、そなたの妹も……リズマも死んだのじゃぞ」

ユスカ「知ってる」

ネーア「……バヤットは動かぬ。妾たちだけでは」

ユスカ「私たちしかいないなら、私たちだけでやればいいんだよ」


 ユスカの目は底知れぬ悲しみを含みながらも、ブレることなく確かな意思をたたえている。
ネーアはその奥に彼女の妹の面影を見た。


ユスカ「シンノを助けに行こう」
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/16(木) 16:57:34.66 ID:9N2bd6Re0

 ――2週間後。
惑星ベップーの上空には、依然として分離主義艦隊が陣取っていた。
その旗艦、ヴェンジェンスの艦橋。


マクシャリス「構わん。『収容よろしい』と返答しろ」


 マクシャリスはひときわ高い位置の指揮官席に座り、フロアで計器に向かう部下たちを見渡していた。


スターバル「本当によろしいのですか?あれはまず間違いなく、バスタ・ガスターかアジアス・ジ・アーチですぞ」


 カリーシュの将軍は怪訝そうな顔でそれを見上げた。
彼のコンソールと壁面の大モニターには、シーシピード級シャトルの姿が大写しになっている。
この船は彼らの艦隊に接近し、旧独立星系連合の高官の識別信号を発信。
戦艦ヴェンジェンスへの収容を求めていた。


スターバル「クマモッテを脱出していたのは計算外ですが、再集結地点を嗅ぎつけてノコノコとやってきたのは好都合です。この際艦砲で……」

マクシャリス「いくら奴らが愚かでも、いい加減切り捨てられたのではないかと疑っていそうなものだ。本人が乗っているかどうか怪しいぞ」

スターバル「では通信で問いただせば……」

マクシャリス「バカな。こちらが警戒していると教えてやるようなものだ」


 スターバルは唸った。
ガスターやアーチがこちらの裏切りを確信し、帝国軍のもとに駆け込めば、多くの機密情報が帝国の手に渡る。
彼ら本人を確実に捕らえ、始末せねばならない。


マクシャリス「シャトルを収容し、乗員を拘束しろ。本人が乗っておらずとも手がかりは掴めよう……三度は言わせるなよ?」ジロッ

スターバル「……!はっ!私自身の手で、確実に遂行して参ります!」


 スターバルは速足で司令室を出て、ドッキングベイへ向かう。
主君の眼光の冷たさを思い出し、ぶるりと身震いした。
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/16(木) 16:58:14.29 ID:9N2bd6Re0

 壁面の機密窓から光が差し込む。
戦艦ヴェンジェンスの艦内照明だ。
シスたちの船は無事、標的の懐に入り込んだのだ。


グレイヴス「マクシャリスめ、とことん浅はかだな。なまじ人を謀ろうとするのが実に救いがたい」


 マスター・シスはソファに体を預けつつ、目論見の成功を悟ってほくそ笑んだ。
手元のグラスを窓にかざし、薄明かりの溶けた果実酒を一息に飲み干す。


グレイヴス「おとなしく傀儡に甘んじていればあと十年は使ってやったものを……なあ、カイウス」

カイウス「……はっ」


 アプレンティスはその後ろに跪いていた。
黒色のローブとプロテクターに身を包み、のっぺりした仮面で相貌を隠している。
そして、その横にもう一人。
リズマ・ショーニンが簡素な白装束を着せられ、うっそりと立っていた。


リズマ「……」

グレイヴス「こいつも奴のところに連れていくぞ。その方が貴様も張り合いがあろう?」

カイウス「はっ」

グレイヴス「……まあ、見ての通り、今のこいつに戦闘力はまったくない。せいぜいお前が体を張って守ってやることだ」

カイウス「はっ」

グレイヴス「……」
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/16(木) 16:58:42.23 ID:9N2bd6Re0

 グレイヴスが眉を上げるのと同時に、キャビンが一際大きく振動した。
シャトルが戦艦内のドッキングベイに着床したのだ。


カイウス「……先に行って、雑魚を血祭りに挙げて参ります」

グレイヴス「……フン。行け」


 カイウスは静かに立ち上がり、キャビンを出た。
やがてランプドアの解放音が響き、それに続いて船外で猛烈な戦闘音が巻き起こる。


グレイヴス「少しシゴきすぎたかな。人形は二つもいらんのだが」


 マスター・シスは無関心気に鼻を鳴らし、リズマを見やった。


グレイヴス「まあ、この仕事が終わればお前は用済みだ。それまでせいぜいマスターの活躍を見てやるといい」

リズマ「……」


 グレイヴスは冷笑とともに腰を上げ、キャビンを出る。
ジェダイ・アプレンティスの亡骸は、微かな間のあとそれに続く。
船外はすでに静かになっていた。
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/17(金) 01:43:06.95 ID:28G3j0dgO
おつ
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/30(木) 16:40:08.67 ID:Pn+Yn9e80

カイウス「フンッ!」ブンッ

シュバルゴン「グワーッ!」ガシャンッ


 シュバルゴンは鳩尾に強烈な蹴りを受け、レールジェットの上に吹き飛ばされる。
カイウスがそれを追って飛び乗り、コンソールを操作した。
ガコン!
レールジェットが勢いよく発進する。
戦艦ヴェンジェンスの艦内、巨大な輸送トンネルの景色が高速で流れていく。


シュバルゴン「おのれ、シスの暗黒卿……時代錯誤のウィッチどもが!」ガチャッ


 分離主義のサイボーグ戦士は素早く姿勢を立て直し、エレクトロ・ハルバードを構えた。


シュバルゴン「我々はもはや貴様らの奴隷ではないぞ。今度は貴様らが地面に這いつくばり、マクシャリス様の秩序を畏れるがいい!」

カイウス「……」ブウンッ

シュバルゴン「ウオオッ!?」バチッ


 対するシスは無言のまま、赤い刃のライトセーバーを振るって斬りかかる。
数合打ち合うものの、実力差は歴然だった。
シュバルゴンはたちまち車両の隅、鉄柵の際まで追い詰められる。
背後は巨大な虚空、その下はベルトサンダーじみた速度で行き過ぎる金属の床である。
しかしダース・カイウスが放とうとしたトドメの一撃は、斜め上方からのブラスター弾によって阻まれた。


カイウス「!」サッ


 立て続けに降り注ぐ光弾のシャワー。
シスは飛び退き、ムーンサルトを繰り出してこれを回避した。
見上げると、五機のスーパーバトルドロイド・ロケットトルーパーが上空に追従してきている。
白いボディに青い星の識別塗装がギラリと輝いた。
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/30(木) 16:40:53.49 ID:Pn+Yn9e80

シュバルゴン「フハ、ハハハ!バカめ、一対一で戦わえるとでも思ったか!」ゴオッ


 シュバルゴンは不屈の闘志とともにジェットパックを噴射し、僚機に合流。
胸部のミサイルポッドを展開した。
ロケットトルーパーたちも両腕の三連装ブラスターを照準し、最終攻撃をスタンバイする。


シュバルゴン「我々の本拠に乗り込んだ報いよ!なぶり殺しにしてやーー」

カイウス「ハアッ!」ボボウッ!


 シスは両手に青白い炎の塊を作り出し、頭上の敵にめがけ投じた。
炎は炸裂し、分離主義の戦士たちを焼き尽くす。


シュバルゴン「ぐわあああ!?」

ロケットトルーパー『『『『『ピガーッ!?』』』』』


 サイボーグとドロイドは飛行機能に支障をきたし、もがきながら落下していった。
数秒の後、はるか後方から爆発音と破砕音が連なって聞こえた。
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/30(木) 16:41:56.21 ID:Pn+Yn9e80

カイウス「……」


 カイウスの表情は仮面に隠されて見えなかった。
やがてレールジェットは艦橋基部のステーションに到着する。
シスが車両から飛び降りると、四機のドロイデカが物陰から転がり出てそれを包囲した。
カイウスは再び光刃を構えて警戒する。
しかし敵はブラスターも発射しないまま、ことごとく内側から炎を噴き出して大破した。


グレイヴス「ずいぶん遠回りしたようだな?」


 残骸の向こうから、マスター・シスが冷笑を浮かべつつ姿を現した。
いまだ体に攻撃的なフォースの残滓を漂わせている。
背後には、リズマも無事な姿で付き従っていた。


カイウス「マスター……」

グレイヴス「急ぐぞ。マクシャリスの奴も待ちかねていることだろう」
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/30(木) 16:42:39.54 ID:Pn+Yn9e80

b1ドロイドA『第三警備中隊、全滅!』

b1ドロイドB『X−9通路、突破サレマシタ!』

b1ドロイドC『隣接区画ニべーくらいとヲ注入シロ!』


 戦艦ヴェンジェンスの艦橋は修羅場となっていた。
ドッキングベイから侵入した敵は、たった二人で艦内の警備を突破しつつある。


戦術ドロイド『……敵ハ明ラカニ、コノ艦橋ヲ目指シテイル』


 艦長を務める戦術ドロイドは敵の狙いを正確に見抜いた。
背後の主君を顧みる。


戦術ドロイド『畏レナガラ、閣下……』

マクシャリス「この艦の戦力では奴らを止めることができないというのか」

戦術ドロイド『ハイ。他艦ヘ陸戦隊ノ増援要請ヲ出シテハイカガデショウ』

マクシャリス「バカな。クマモッテを捨てたこのタイミングで、部下に弱みを見せるなど」

戦術ドロイド『デハ、艦橋ノ脱出機構ヲ使ッテ……』

マクシャリス「同じことだ。第一、間に合わん」


 マクシャリスは屈辱と憎悪に塗れた笑みを浮かべる。
それと同時に、彼の背後、入口の扉の向こうで一際大きな破砕音が響いた。
警備のドロイドたちが司令室を走り、入口に銃を向ける。
青白い炎が炸裂し、それをブラストドアもろともに吹き飛ばした。
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/30(木) 16:43:24.95 ID:Pn+Yn9e80

グレイヴス「マァークシャリィース……!」


 陽炎の向こうから、三つの人影が姿を現す。
仮面のカイウス、マネキンじみたリズマ、そしてもう一人。
少女の顔立ちを凶悪に歪めたダース・グレイヴスが、ドロイドの残骸を踏みにじった。


グレイヴス「今度はこちらから出向いてきてやったぞ……前は、迎えに来てもらったからなあ……!」

戦術ドロイド『……閣下、警備しすてむカラノ情報ニヨレバ、みこあ王女ハふぉーす感応力ヲ有シ……』

マクシャリス「今となってはわかりきったことだ。ただの王女があのクマモッテの爆発から生き延び、我々の戦艦に潜入するものか」


 マクシャリスはそう言い捨て、立ち上がった。
マントが翻り、ライトセーバーが白い刃を輝かせる。


マクシャリス「テイティスのマスター。お名前を伺ってもよろしいかな」ブオンッ

グレイヴス「我が名はダース・グレイヴス……よくも私をこの船に迎え入れてくれたな、ダース・ティラナスの影よ。大儀である」

マクシャリス「下手な皮肉はよせ。貴様は我々を従順な下僕だと考えていたようだが、こちらははなから殺す算段よ。貴様の寿命が縮んだだけのことだ」


 グレイヴスは舌打ちし、敵を指し示してカイウスに命じる。


グレイヴス「やれ。あの減らず口を黙らせろ」

カイウス「……はっ」


 仮面のシスは幽鬼のように進み出て、マクシャリスと相対した。
黒と白のコントラストの中に、今、赤い差し色が現れる。
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/24(月) 20:18:12.55 ID:G1ITB1KY0
作者逝った??
255.96 KB Speed:0.1   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)