【SW】ジェダイ「私を…弟子に、してください…」【オリキャラ】

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101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/27(火) 01:05:34.93 ID:6YDoCLh60

ネーア「ハッハー!おさらばじゃ!ぜえぜえ、ゲホッゲホッ!」ガクリ

ミコア「ネ、ネーアさん!?お体が……!」


 風を切って暗闇の中を進むリフトの上で、ミコアは狼狽した表情で他の三人を見回す。
彼らは揃って床に座り込み、肩で息をしていた。


シンノ「ハアハア、いい加減ヤバいかもな……!」

リズマ「私は、まだ――ゲホッゲホ!まだやれます……!」

ネーア「妾はもう嫌じゃ、限界ぞよ!囚われのお姫様助けたんだからもう終わりでいいじゃろお……!」

ミコア「み、皆さん……私のために、これほど――」


 ミコアはその責任を感じてか深刻そうな面持ちだったが、ふと顔を上げた。


ミコア「今の音は……?」

シンノ「音?」


 やがてその響きは残る三人の耳にも入った。
地下の大空間に轟くいくつもの銃声と爆音!
遅れて眼下に見えてくる、ストームトルーパーたちとドロイドたちの戦闘の光景!
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/27(火) 01:06:13.45 ID:6YDoCLh60

リズマ「何てこと、これは……!」

ネーア「こんなことにまで帝国軍が来て――な!シンノッ!」

シンノ「!?」


 シンノはネーアの警告に反応し、転がるようにして退避する。
次の瞬間、一つの影が頭上の空中から飛び込んできた!
直前までシンノが居た場所を赤い刃が掠める!


シンノ「貴様はッ!?」

「シンノ・カノスゥ……!」


 膝をついてリフト上に着地した影が体を起こす。
黒い装甲服、マンダロア風のジェットパック、赤いライトセーバー、薄暗闇の中で憎悪にぎらつく双眸!


リズマ「ナ……ナインス・ブラザー!?」

ミコア「帝国の尋問官ですか!?」

ナインス「戻ってきたぞ……戻ってきたぞ、シンノ・カノス。取り戻すために。奪い返すために!」

シンノ「俺が貴様の何を奪ったというんだ!?」ビシューンッ

ナインス「何もかもだッ!」ブウンッ
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/27(火) 01:07:23.80 ID:6YDoCLh60

 ナインスは狂気の刃を振るい、憎悪に塗れた斬撃を浴びせかける。
シンノもライトセーバーを振るって応戦するが、たちまち守勢に追い込まれた。
敵の脅威はクイナワ戦のときに比べれば数段増している。
しかし本来は、ヨーダから教えを受けた正統なジェダイマスターであるシンノをこれほど圧倒できるものではない。


シンノ(問題は……!)


 問題は、疲労!
今やシンノの肉体は常人であれば即座に昏倒するほどの負荷を溜め込んでいる。
痛む肉と軋む骨を精神力とフォースで無理矢理に動かして、どこまで戦える!?


リズマ「マスターッ!」ビシューンッ

ネーア「おのれ、逆切れヤンホモストーカー男が……!」ビシューンッ


 リズマとネーアも同様の苦境にありながら果敢にもライトセーバーを抜いて加勢を図る。
しかし彼らの前に二人のマンダロア兵が降り立ち、行く手を塞ぐ!


ジルコ「おっと、お嬢さん方の相手は俺たちさ!」ジャキッ

セラ「手短に済ませましょう」ジャキッ


 二丁のブラスターピストルが火を噴き、リフト上の暗闇を蛍光グリーンに照らす!
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/27(火) 01:11:10.55 ID:6YDoCLh60
/原作のコミックにナインス・シスターが登場したらしいです
/そうなるとこのナインスを名乗るヤンホモは誰なんでしょう
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/30(金) 20:20:48.96 ID:jD3qkA0J0

タクージン「フンッ!」ブウンッ

マクシャリス「フッ……!」バチュンッ

タクージン「ハアッ!」ブオンッ

マクシャリス「シッ……!」バチュンッ


 一方発着場ではタクージンとマクシャリスの戦いが続いていた。
金色の刃が煌めき、閃くのを、白い刃が抑え捌いていく。
タクージンがジェットパックを噴射して斜め後方に飛び上がり、空中からブラスターの連射を浴びせた。
マクシャリスはマントをはためかせてライトセーバーを横に一閃させ、ひといきに弾き飛ばす。
給油車両が流れ弾を受けて爆発炎上するのを背景に、マンダロリアンが降り立ってセーバーとブラスターを構え直す。


タクージン「フウーッ……守ってばかりじゃ勝てねえぜ、公爵さんよ?」

マクシャリス「いやはやお手厳しい、防戦が精一杯なのですよ。よもや総督閣下がこれほどの剣客であったとは、この青二才には露とも……」

タクージン「ほざけ。時間稼ぎだろう……!」クルッ


 タクージンは素早く転回し、背後から襲いかかってきたマグナガードにブラスターの連射を浴びせて破壊する。
マクシャリスが踏み込み斬りつける。
マンダロリアンの総督は振り返りざまセイントセーバーを繰り出し、弾き飛ばす。
切り返しての二の太刀が、交差。
二者は鍔迫り合いの中で睨み合った。


マクシャリス「見抜いておられましたか。食えないお方だ」バチバチ

タクージン「しかし解せねえな。それで今のお前らに何の得がある?」バチバチ


 地鳴りと共に二者の足元が激しく振動する。
何度目かも知れぬ地震は、繰り返す度規模を増しつつあった。
タクージンはヘルメットの下で眉を顰める。
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/30(金) 20:22:33.66 ID:jD3qkA0J0

タクージン「まさか、貴様……!」

マクシャリス「おや……我が『作戦』に、お気づきか」ブウンッ

タクージン「くっ!?」タッ


 マクシャリスが力任せに剣を払った。
タクージンはバックステップで間合いを離し、右手のブラスターを向ける。
白い刃が閃き、その手首を断ち切った。


タクージン「何……!」


 一瞬遅れて発射された光弾は狙いを外し、敵の白マントに穴を穿つ。


マクシャリス「ならば、ギリギリの時間を待つわけにもいきませんな……!」ブウンッ

タクージン「くっ、貴様の――」シュゴオッ


 ジェットパックを噴射し、追い打ちの斬撃を回避する。
マクシャリスはそれを見上げ、徒手の左手を突き出す。


タクージン「貴様の目的は、この星を――!」

マクシャリス「『フォース・フラッシュ』……!」


 その掌から空中のタクージンへと一直線に閃光が迸る。
次の瞬間、彼の体は爆発に呑まれた。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/30(金) 20:23:11.69 ID:jD3qkA0J0

ナインス「カアッ!」ブウンッ

シンノ「くっ……!」バチバチ


 シンノはナインス・ブラザーの渾身の一撃を受け止め、力を溜めると、一気に押し返す。


シンノ「はあーっ!」ブウンッ

ナインス「ぐおっ!?」バチインッ


 その一太刀は尋問官の円環状ライトセーバーを弾き飛ばし、その手から叩き落す。
シンノは追撃を加えるべく再度セーバーを振りかぶるが、疲労がその動作を遅らせた。
尋問官の目がぎらりと光る。


ナインス「シャアッ!」ブンッ

シンノ「ぐあっ!?」ドガッ


 シンノは右手を強かに蹴りつけられ、セーバーを取り落とした。
ナインス・ブラザーは続けざまに右手でシンノの首を掴んだ。
機械の義手がジェダイマスターの喉を容赦なく締め上げる。


シンノ「ぐぐっ……く……!」メキメキ

ナインス「ヒヒヒッ……!死ね……死ね、シンノ・カノス……!」ウィーンッ


 シンノは両手でそれを押しのけようとしていたが、やがて左手を敵の腰に伸ばした。
尋問官のブラスターピストルがひとりでにホルスターからまろび出て、その手に収まる。
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/30(金) 20:23:54.92 ID:jD3qkA0J0

ナインス「!?貴様!」パッ

シンノ「死ねるかよ……こんな、ところで!」バシュバシュバシュ


 ナインス・ブラザーはとっさに飛び退いたが、シンノは狙いを違えなかった。
連なって飛んだ光弾が尋問官の体を捉え、いくつも風穴を空ける。


ナインス「ぐがっ……シンノ!シンノ・カノスゥーッ!」バッ


 しかし暗黒の騎士は倒れるどころか、一層憎悪を昂らせて飛びかかってきた。
シンノは霞む目で最大限狙いを澄まし、その眉間に銃口を定める。
ナインス・ブラザーが肉薄し、シンノが引き金を引く直前。
斜め後方から無数の光弾が飛来し、尋問官の体をハチの巣にした。


ナインス「ゲフッ……!?」

シンノ「何……!?」


 ナインス・ブラザーは血を吐き、もんどりうって倒れ込む。
シンノはさっとレールウェイ操作盤の陰に隠れ、攻撃が飛んできた方を覗き込んだ。


マグナガードA『申シ訳アリマセン、外レマシタ』

スターバル「ええい、帝国の犬めが!射線を塞ぎおって……!」


 いつの間にか新たなリフトが並行して走っており、そこにはスターバルとマグナガードたちの姿があった。
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/30(金) 20:25:17.81 ID:jD3qkA0J0

シンノ「バカな、あいつら……!」

スターバル「グハハ、我々のホームで逃げ切れるとでも思ったのか!?もはや時間に一刻の猶予もない、こうなれば帝国軍もジェダイもミコア姫も全員皆殺しだ!」ビシューンッ

マグナガードA『!』ジャキッ
マグナガードB『!』ジャキッ
マグナガードC『!』ジャキッ
マグナガードD『!』ジャキッ


 スターバルは赤と青のライトセーバーを抜き、ドロイドたちは銃をエレクトロ・スタッフに持ち替える。
飛び移ってくる気だ。


シンノ「リズマ!ネーア!分離主義者だ、ドロイドどもが乗り移ってくる!」ビシューンッ


 シンノはライトセーバーを拾い上げてスターバルを引きつけつつ、叫ぶ。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/31(土) 12:54:12.52 ID:oZfSij0pO
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/27(日) 13:17:36.04 ID:kOo3csK+o
もう2ヶ月か
パッタリ途絶えたな
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/14(木) 21:27:16.58 ID:csitiARN0

ジルコ「何!?分離主義者だと!?」

ネーア「悪いのはこの手かあ!」ガブッ

ジルコ「ぐわああ!?」


 ネーアはマンダロア兵に拘束されていたが、シンノの叫びで注意が逸れた隙をついて反撃!
装甲のない指先に噛みつき、敵の手から逃れる!


セラ「ジルコ!」ジャキッ

マグナガードA『新たなエネミーを発見。排除』ブウンッ

セラ「くっ、鉄屑が!」バシュバシュ


 もう一人のマンダロア兵がフォローに入ろうとするが、マグナガードの乱入により果たせない!


ジルコ「メスガキ!そんなに躾が欲しいか!」ジャキッ

リズマ「ネーアさんから離れろッ!」ブンッ

ジルコ「ぐおお!?」ドガッ


 立て続けにリズマの飛び蹴りを受け、後方に吹っ飛ぶマンダロア兵!


マグナガードB『障害を排除』ブンッ

ジルコ「ぐわあああああああ!」バチバチバチバチ


 マグナガードがその背中にエレクトロ・スタッフを食らわせる!
マンダロリアン・アーマーも電流攻撃までは防御できず、ジルコはあえなく感電死!
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/14(木) 21:27:56.55 ID:csitiARN0

セラ「地獄に落ちろ!」バシュバシュ

マグナガードA『ピガーッ!?』ガシャンッ

セラ「フーッ、手こずらせて……!ナインス・ブラザー!?ジルコ!?」


 残るマンダロア兵はマグナガードを始末するも、戦況の不利を悟り、舌打ちとともに撤退を決意した。
ジェットパックを噴射し、テイクオフ!


ナインス「ゴボッ……!」


 ナインス・ブラザーが突っ伏したまま右手を掲げた。
セラはウィップコードを投げてそれを絡め取り、もろともに上昇!
尋問官は暗闇の中に飛び去りつつ、憎悪の叫びを上げる!


ナインス「シンノ!何もかも!何もかも貴様のせいだ!俺は戻ってくるぞ、必ずーッ!」

スターバル「グハハハハ!」ブンッ

シンノ「ぐわあっ!」ガシャーンッ


 その一方でシンノはスターバルの強烈な蹴りを受け、背中から手すりに激突!


シンノ(カハッ……今のは、まずい……!立ち上がれない……!)

スターバル「満身創痍のようだな?苦しかろう!今楽にしてやる!」


 スターバルが二本のライトセーバーを振りかぶる!
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/14(木) 21:29:13.84 ID:csitiARN0

リズマ「はあああーっ!」ドウンッ

マグナガードB『ピガーッ!?』ビュンッ


 その時、リズマ渾身のフォース攻撃が炸裂!
吹き飛ばされたマグナガードはシンノを囲んでいた同族に激突する!


マグナガードC『ピガーッ!?』ガシャーンッ


 二機は手すりを越え、まとめてリングアウト!


スターバル「何!?」

ミコア「私だって黙っていません!ええーいっ!」バシュッ

マグナガードD『ピガーッ!?』ボカーンッ


 ミコアがジルコの死体から拝借したロケットランチャーで最後の一体を破壊!


スターバル「ええい、こいつら、この男の金魚の糞かと思えば――」クルッ

ネーア「そなたも一緒に行けい!」ブウンッ

スターバル「ぬうう!?」バチュン ズザザッ


 ネーアの飛びかかりざまの一撃を受け止めるも、勢いで押しやられるスターバル!
しかし手すりを背にして踏みとどまる!
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/14(木) 21:30:52.07 ID:csitiARN0

ネーア「ああもう、しつっこいのじゃあ!」グイグイ

スターバル「グハハ!なんの、土俵際!」


 一度静止してしまえば体格差は歴然。
ネーアの企みは失敗したかに思われたが、その時!
ズズン、ズ、ズズズズ!
またも地震!
激しく揺れるリフト!


スターバル「ぐわーーーっ!?」ヒューッ
ネーア「のじゃあーーー!?」ヒューッ


 土俵際の二人は当然バランスを崩し、落下!


シンノ「ネ、ネーア……!」ヨロヨロ

ミコア「なんてこと!」


 残る三人は手すり越しに下を覗き込むが、ネーアとスターバルはとうに遥か彼方。
まして地上はストームトルーパーとドロイドたちが入り乱れる戦場だ。


リズマ「なんとか、フォースで軟着陸できているといいのですが……」

シンノ「しかし、後で探しに行かなけりゃあ――ゲホッ!ゴホッ!」

ミコア「シンノ!怪我をなさったんですか!?」

シンノ「大丈夫だ、刀傷はもらってない……ああそういえば、またお前に助けられたな。リズマ」

リズマ「えへへ……私がみんな、無事に連れて帰りますからね」


 リズマはそう言って気丈に笑う。
シンノは弟子を心強く、愛おしく思ったが、同時に別種の予感を覚えていた。


シンノ(――もう二度と、ネーアに会えないのではないか?)


 地震は今も微かに続き、世界を不穏に揺すぶっていた。
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/14(木) 21:31:37.29 ID:csitiARN0

 その頃、惑星クマモッテ衛星軌道上の宇宙空間でも戦闘が展開していた。
分離主義者が迎撃の艦隊を繰り出し、帝国軍のスター・デストロイヤー艦隊に攻撃を仕掛けていたのである。


ホイゼル「総督!タクージン総督!どうか応答してください!」


 その戦火の只中、帝国軍艦隊旗艦「インフェルノ」の艦橋。
艦隊司令官のホイゼルは、必死にタクージン総督への通信を続けていた。
しかしもはや二度と応答が戻らないと悟ると、真っ青な顔で椅子に座りこむ。


ホイゼル「くそっ!なんということだ……指揮官以上に兵士、この世で最高の戦士であるあのお方が敗れるなどと!」

艦長「ホイゼル司令官、敵の大型艦が大気圏を離脱します!」


 ホイゼルは部下の呼びかけにハッとして顔を上げた。
モニターに敵艦の拡大映像が表示される。


ホイゼル「あれは……サブジュゲーター級か!?まだあんなものが残っていたとは……!」

艦長「あんな大物を逃してはならん、攻撃しろ!」

士官A「ダメです、前方の敵邀撃艦隊がターボレーザー・ジャマーを展開中!砲撃が通りません!」

ホイゼル「バ、バカな……!」


 ホイゼルは心臓を鷲掴みにされたような猛烈な不安にうめいた。
敵は完全にこちらの手を読み、一つ一つ潰してきている。


ホイゼル(もしや我々が……スター・デストロイヤー四隻がここに足止めされていることも、分離主義者の予定通りなのでは……?)
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/14(木) 21:32:31.56 ID:csitiARN0

士官B「!?何だこれは……!?司令官!惑星内部に高エネルギー反応!」

ホイゼル「内部だと!?」


 ホイゼルは泡を食って立ち上がり、展望窓越しに眼下の惑星クマモッテを睨んだ。


ホイゼル「――」


 星が、震えて、割れる。
雲の奥に覗く地表に、光の亀裂が生じる。
巨大な地割れから惑星内部のエネルギーが噴出しているのだ。


士官B「エネルギーが惑星外部に……惑星全体に、拡散していきます……!」

艦長「こんなことは初めてだ……一体何が起こっている!?」


 ホイゼルは大柄な体をわなわなと震えさせたかと思うと、叫んだ。


ホイゼル「退避!退避だっ!ハイパースペース・ジャンプでヤマタイティア宙域まで離脱!」

艦長「バカな!地上部隊を見捨てる気ですか!?」

ホイゼル「敵はそれも狙いなんだ、我々をここにくぎ付けにして一気に葬るための!」

艦長「そんな大がかりな攻撃、トルーパーたちだけでは対応できません!援護が必要です、留まるべきだ!」

ホイゼル「黙れ!早く計算を始めるんだ!敵は我々の想像よりもはるかに、はるかに――」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/14(木) 21:38:11.66 ID:csitiARN0
/度々更新が途切れて大変申し訳ありません
/当初予定していたペースよりかなり遅くなってしまっていますが、完結までもっていきます
/クマモッテ編は次の戦いが最後です
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/15(金) 00:04:36.61 ID:aY1GAe5/O
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/17(日) 19:13:36.07 ID:zELFYoA60

 キャッスル・クマモッテ外縁部、ドロイド工場に隣接する倉庫街。
遠く銃声と爆音が響き、トルーパーの死体とドロイドの残骸が散乱する中を、コソコソと移動する小集団があった。
バスタ・ガスターとアジアス・ジ・アーチ、およびその側近たちである。


バスタ「なんてことだ、帝国の外道どもが……!情報を提供した私たちごと殺しにかかるとは!商売の常識も知らん奴らだ!」

アジアス『何ガ商売ダ、コノ事態ハオ前ノ楽観主義ノセイダゾ!ドウ責任ヲ取ルツモリダ!?』

バスタ「何をいまさら!貴方だって乗り気だったではありませんか!」


 内輪揉めが始まったその時、バスタとアジアスの眼前に唐突に三つの人影が出現した。


バスタ「うおっ!?」

アジアス『何ダ、何者ダ貴様!』

『バスタ・ガスター殿ト、アジアス・ジ・アーチ殿デスネ?』


 それはよく見れば、分離主義勢力のコマンドー・ドロイド――
ニンジャ・コマンドーと呼ばれる、光学迷彩装備を備えたタイプである。


ニンジャコマンドーA『あがめむのん司令ヨリ、特命ヲ仰セツカッテ参リマシタ』

バスタ「何だ、味方じゃないか……驚かせるんじゃない!」

アジアス『我々ノ護衛ヲシニキタンダナ、ヨロシイ!ツイテコイ!』

ニンジャコマンドーA『……』ジャキッ バシュバシュバシュ
ニンジャコマンドーB『……』ジャキッ バシュバシュバシュ
ニンジャコマンドーC『……』ジャキッ バシュバシュバシュ
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/17(日) 19:15:13.95 ID:zELFYoA60

側近A「ぐわっ!?」バスッ

側近B「ぎゃあっ!」バスッ

バスタ「ひいい!?」
アジアス『何イ!?』


 なんたることか!
ニンジャコマンドーたちは味方であるはずのバスタたちに銃を向け、その側近を一人残らず射殺!


アジアス『貴様ラ、コレハドウイウ――ソウカ、まくしゃりすノ差シ金ダナ!?アノ若造メガ、口封ジノツモリカ!』

バスタ「やめろ、やめてくれ!金なら払う!なんでもするから命だけは!」

ニンジャコマンドーA『我々ノ精強ハ、無駄ナ情ケヲモタヌガユエ』ジャキッ

バスタ「うわあああ死にたくないいい!」

「――はあああっ!」ドウンッ

ニンジャコマンドーA『ピガーッ!?』ガシャンッ


 しかし引き金が引かれる直前、シャウトとともに飛来した衝撃波がニンジャコマンドーを吹き飛ばした。
一同の視線が飛来した方向、攻撃の主に集まる。


シンノ「チッ、我ながらいらん手出しをした……!」

ミコア「いいのですよシンノ様!放っておけません」

リズマ「戦いましょう!」ブオンッ
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/17(日) 19:15:50.88 ID:zELFYoA60

アジアス『ばかナ、アレハ……じぇだい!?』

バスタ「何でもいいから助けてくれえええっ!」


 バスタが情けない叫びを上げる!
残る二体のニンジャコマンドーがバイブロ・ブレードを構え、ジェダイたちに迫る!


ニンジャコマンドーB『シイッ!』ブンッ

シンノ「くっ!」チュインッ

ニンジャコマンドーB『シャアッ!』ブンッ

シンノ「ふっ!さすがに普通のドロイドよりはやるな……だが!」チュインッ


 シンノは敵の剣を弾くと同時に体を一回転させ、流麗に反撃!


シンノ「はあっ!」ブウンッ

ニンジャコマンドーB『ピガーッ!?』ズバッ


 ニンジャコマンドーの右腕が飛ぶ!
敵は残る左腕でブラスターを抜こうとするが、さらにもう一回転!


シンノ「せいやあっ!」ブオンッ!

ニンジャコマンドーB『ピガガーッ!』ズバッ


 ニンジャコマンドーの首が飛ぶ!
金属のボディは傾いで倒れ伏し、執念のブラスター攻撃は頭上の虚空を撃った。
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/17(日) 19:16:57.60 ID:zELFYoA60

ニンジャコマンドーC『シイイッ……!』グググ

リズマ「くうっ……!」ジリジリ

ミコア「そこまでです!」バシュッ

ニンジャコマンドーC『ピガーッ!?』バスッ

リズマ「今だ!ええいっ!」グイッ ブウンッ!

ニンジャコマンドーC『ピガガーッ!』ガシャンッ


 もう一体の敵はミコアに背中を撃たれ、リズマに一刀両断されて大破!


ニンジャコマンドーA『グググ……』スック

シンノ「まだ動くか……!」クルッ

ニンジャコマンドーA『……』


 一体目のニンジャコマンドーは体勢を立て直したが、戦況を不利と判断。
光学迷彩で透明化し、姿を消した。


シンノ「……逃げたか……しかし、あんなタイプのドロイドは見たことがない」

リズマ「戦後に開発されたものでしょうか?」


 シンノとリズマはスターバルを撃退したあと、少しの休憩時間を得ていた。
彼らはいくらか余裕を取り戻した表情でバスタらを見やる。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/17(日) 19:17:47.07 ID:zELFYoA60

バスタ「ああ……ジェダイ、何だか知らないが助かっ――って、そこにいるのはまさか、ミコア姫!?」

ミコア「いかにも!そなたら、分離主義勢力の要人と見ました。ヤマタイトの旗の下に投降なさい!」ビシッ

アジアス『やまたいと?トスルト貴様ラ、帝国ノ尋問官カ?』

バスタ「帝国軍!?」ビクッ

シンノ「……あんなのと一緒にするな、俺は同盟軍だ。共和国再建のための同盟軍」

アジアス『反乱軍カ……ナゼ我々ヲ助ケタ?捕虜ニデモスルツモリカ?』

シンノ「別に、目的があってやったわけじゃ……いや、待てよ。貴様ら、シャトルを持っているか?この惑星から脱出するためのシャトルだ」

バスタ「シャトルだと!?……も、持ってな」

アジアス『持ッテイル。近クノ倉庫ノ中ニ隠シテアルンダ。まくしゃりすガ造反シタトキノタメニナ』

バスタ「アジアス公!」

リズマ「で、では!」

アジアス『アア、貴様ラヲ乗セテヤッテモイイ。ダガ倉庫マデハ私タチヲ護衛シロ……ソシテ脱出ノ後ハ、私タチヲ安全地帯マデ送リ届ケルノダ。捕虜ニハナラン』

ミコア「取引……ですわね」

シンノ「……チッ、いいだろう。だが惑星を脱出する前にドロイド工場に寄って、仲間を探させてもらうぞ」

バスタ「何だと!?ふざけるな、その間に帝国軍の攻撃を受けたらどうする!」

アジアス『ヨカロウ』

バスタ「アジアス公!あんたなあ!」

アジアス『ゴネテイラレル場合デハナイ、黙ッテオレ!』

リズマ「じゃあ取引成立です!」

シンノ「そうと決まれば早く行くぞ、案内しろ……!」


 シンノはそう急かしつつ、倉庫の屋根越しに空を睨む。
燃える街の炎の向こうに、何か別種の光が立ち昇っている。
その明滅の波長は、いまだに続く地震と同調しているように感じられた。


シンノ(星が……軋んでいる……?)
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/17(日) 19:18:47.06 ID:zELFYoA60

スターバル「ハア、ハア……失礼します!スターバル、参上いたしました!」ポタポタ


 スターバル将軍は全身濡れネズミのまま、戦艦ヴェンジェンスの艦橋に足を踏み入れた。
そこはちょっとした体育館ほどもある広大な空間。
薄暗闇の中で数十体の管制ドロイドたちがコンソールに向かって作業にいそしんでいる。
その中央にそびえたつ指揮台の上で椅子が回転し、深く腰掛けたマクシャリスが姿を現す。


マクシャリス「ずいぶん遅かったな。ほどほどにしておけと言っておいたはずだが」

スターバル「ハアハア、申し訳ありません……」ポタポタ

マクシャリス「……何故濡れているんだ?」

スターバル「ドロイド工場の冷却水タンクの中に落ちまして……」ポタポタ

マクシャリス「一体何があった」

スターバル「はっ、ジェダイがミコア姫を連れまわしていたので、それを追跡しました。結局息の根を止めることはできませんでしたが……」

マクシャリス「ジェダイだと?帝国の尋問官ではないのか」

スターバル「いえ、あれは真っ当なジェダイです。そこそこのやり手が、二人……マスターとアプレンティスですかな、あれは」

マクシャリス「……帝国ではなく、分離主義に盾突く存在で、組織立った……反乱軍か?ミコア姫の身柄を狙ってきたか」

スターバル「ああ、それと赤いライトセーバーを振り回すガキがおりました。手から電気を出したりして……」

マクシャリス「何?」


 分離主義の大ボスは微かに表情を硬くする。


マクシャリス「シスだぞ、それは」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/17(日) 19:20:12.17 ID:zELFYoA60

スターバル「あれがテイティスのマスターなのですか!?とてもそうは思えません、奴は私と同等かそれ以下の使い手でした!」

マクシャリス「そうだろうな。お前が無事に帰ってきているところからして……ヴェイダーの秘密の弟子か何かか?あるいはまったく別の……」

管制ドロイド『せれのーらんと公、あがめむのん司令官カラ通信デス』

マクシャリス「地上からか。モニターに出せ」


 マクシャリスは一旦思考を中断し、指揮台正面の巨大なモニターに向き直った。
やがてそこにはハイパータクティカル・ドロイドの無機質な顔が大写しになる。


アガメムノン『せれのーらんと公。くまもって・きゃっする防衛部隊司令官、あがめむのんデス』

マクシャリス「こちらは戦艦ヴェンジェンス、マクシャリス・セレノーラント・ドゥークーだ。状況を報告せよ」

アガメムノン『ハッ。防衛施設ハ帝国軍ノ攻撃ニヨリ、戦闘能力の9割を喪失。全戦線ガ崩壊、敵地上部隊ノ侵攻ハ司令部ニモ及ンデイマス』

マクシャリス「限界か、まあいい。最後の一兵まで抵抗し、敵を引きつけろ」

アガメムノン『ハッ……ソレト、ばすた・がすたーオヨビ、あじあす・じ・あーちノ件デスガ……』

マクシャリス「取り逃がしたのか?」

アガメムノン『にんじゃ・こまんどー部隊ヲ送リ込ンダノデスガ、じぇだいニ撃退サレマシタ。最後ノ一体ガ触接中デスガ、任務完遂ハ困難カト……』

マクシャリス「またしてもジェダイか。よくよく私の計画を荒らしてくれるものだ……しかしまあ、私の手の平から出るものではない」


 マクシャリスは無感動にそう言って、金属の円筒を手で弄ぶ。
タクージン・シカーグから奪ったセイント・セーバーだ。


マクシャリス「星ごと吹き飛ばして、全てに片を付けることにしよう」


 その後、戦艦ヴェンジェンスは事前に計算した軌道でのハイパースペース・ジャンプによって宙域を離脱した。
特殊な工作によって惑星核のエネルギーを暴走させることで、急激に超新星化を進める――
それが『星の生贄(スター・サクリファイス)』作戦の真相。
惑星クマモッテは今や、直径1万キロ超の超巨大時限爆弾と化していた!
惑星爆発まで、あと二十分!
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/17(日) 23:56:58.22 ID:r3NH36Rm0
はたしてまた地球滅亡シリーズと化してしまうのか
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/18(月) 19:44:30.68 ID:IayH1z8HO
> なんたることか!
>ニンジャコマンドーたちは味方であるはずのバスタたちに銃を向け、その側近を一人残らず射殺!
なんか忍殺感ある
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 00:51:11.18 ID:E/nMGKEr0

 ――キャッスル・クマモッテ城下、倉庫街。


シンノ「フンッ!」ブンッ

ストームトルーパーA「ぐわあっ!?」ズバッ

リズマ「やあっ!」ブウンッ

ストームトルーパーB「ぎゃあ!?」ズバッ


 シンノの振るう青い刃が輝き、リズマの持つ緑色の刃が閃く。
立ち塞がった帝国軍のトルーパーたちは次々と斬り伏せられ、残る者は怖気を成して逃げていく。


ミコア「バスタ!結局シャトルはどこにあるのです!?」

バスタ「はいミコア様!あそこに見えるマスドライバーの下の倉庫でございます!」

アジアス『コノ短イ時間デ飼イ慣ラサレオッテ……』

シンノ「マスドライバーの下だな、急ぐぞ!」


 一行は慌ただしく倉庫街を駆け抜ける。
地震は一層強まり、彼らの足元を揺さぶり続けた。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 00:52:12.35 ID:E/nMGKEr0

シンノ(大丈夫だ、まだ大丈夫……)ダダダ


 シンノは焦燥に駆られつつも、心中で自分に言い聞かせる。


シンノ(シャトルを発進させてドロイド工場に戻る。ドロイド工場でネーアを探す……)


 目当ての倉庫に到着する。
大きな金属の引き戸が入口を塞いでいる。


シンノ(いや、ネーアなら向こうからこちらの居場所を探知できるはずだ。あいつを拾って、すぐにこの星を出る)


 ミコアが指図する。
バスタが脇のコンソールに走り寄り、電子ロックを解錠する。


シンノ(残る難関は帝国軍の包囲網くらいのものだ。尋問官が戦線離脱した今、そのくらいならなんとでも……!)


 金属扉が振動し、酸性雨で錆びついた巨体を振るわせつつ、ゆっくりとスライドする。
その奥、倉庫内に広がる暗闇に、光が差し込む。


シンノ(――)


 息が止まる。
倉庫の中に、見知った人影があった。
黒いローブ。
銀色の仮面。
その奥に覗く、四つの黄色の瞳。


テイティス「……」


 ダース・テイティス。
ねめつける視線に、殺意が滲む。
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 00:52:44.26 ID:E/nMGKEr0

 ミコアが何か指示した。
バスタとアジアスが退き、二人のジェダイが残される。
シンノは敵から視線を逸らせぬまま、呻くように言う。


シンノ「……バカな……なぜ、ここで……今になって、奴が!」


 心の中で組み立てた都合のいいスケジュールが、ガラガラと音を立てて崩れていく。


リズマ「――戦いましょう、マスター」


 暗闇に吸い込まれそうなシンノの心を、リズマの言葉が辛うじて繋ぎとめる。
鞘走るは緑の光刃、堅牢なる第三の構えも勇ましく!


リズマ「もとより、いずれは決着を付けなければいけない相手!」

シンノ「……畜生……畜生!そうだ!諦めやしないぞ、畜生!」


 道標を得て、ジェダイ・マスターの意地が燃焼!
ライトセーバーが蒼の輝きを取り戻す!


シンノ「全部救ってやるぞ、俺たちが!全部だ!」

テイティス「……もはや策謀は無用。よって手心も無用」


 シス卿は冷然とそう言い放ち、懐から金属筒を取り出す。
その一端から赤い刃が発し……残る一端からも、同じ光が生じた。
ダブルブレード・ライトセーバー。
これまでの戦いでは温存されていた真の武器!


テイティス「貴様らジェダイが全てを救うなら、シスたる私は全てを闇に堕とそう」
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 00:53:32.26 ID:E/nMGKEr0

 自動扉が開き切って停止すると同時に、倉庫内の照明が点灯。
タングステン灯の青白い光が空間を支配する。
青と緑、赤の光はその中で霞み……赤が、閃く!


テイティス「――シイッ!」ブウンッ

シンノ「くおっ……!?」チュインッ


 次の瞬間、テイティスはすでにシンノの眼前にいて、ライトセーバーを振り抜いていた。
遅れて火花が散る。


シンノ(ガードが一瞬遅れたら死んでいた……!)

リズマ「ヤアッ!」ブウンッ

テイティス「フンッ!」チュインッ


 横合いからのリズマの斜め太刀!
テイティスは最小限の動きで防御し、セーバーを回転させてもう一方の刃で斬りに行く!


テイティス「ハアッ!」ブオンッ

リズマ「くうっ!」チュインッ


 リズマはかろうじて自分の武器を合わせる!


シンノ「タアッ!」ブウンッ

テイティス「!」ザッ チュインッ


 シンノが素早く姿勢を回復し、致命的な軌道の反撃を繰り出す!
テイティスは一歩下がり、逆手側の刃で防御!
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 00:54:18.43 ID:E/nMGKEr0

シンノ「逃がさんッ!」ブウンッ


 剣を斬り返し、追撃!
神速の水平斬撃!


リズマ「セイヤアッ!」


 同時にリズマが鋭い斬り上げで逃げ道を塞ぎに行く!


テイティス「ッ!」ダンッ


 テイティスは地を蹴り、後方へジャンプして回避!
ジェダイたちから五メートル離れたところで、靴の裏を床に擦り、煙を上げつつ静止する。
彼の黒ローブの裾は切り裂かれ、ブスブスと煙を上げていた。


シンノ(退かせた……刃が届いた。戦える。俺たちは、成長している)


 シンノの脳裏に惑星ヤクシムでの敗北の記憶が浮かび、消えていく。


リズマ「勝てますよ、マスター」


 リズマが敵から目を離さぬまま言う。


シンノ「ああ。一人では無理でも、二人なら!」


 シンノもまた、たしかに前を見据えたまま答える。


テイティス「ほざくがいい!」


 テイティスが右手を前に突き出す!
シンノとリズマは跳躍して空中へ退避!
コンマ一秒後、シスの手の平から噴出した火炎がフロアを薙ぎ払う!
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 00:55:05.22 ID:E/nMGKEr0

医務トルーパーA「どけどけ!救急だ救急だ救急だ!」ガラガラガラ


 惑星クマモッテ上空、帝国軍旗艦インフェルノ艦内。
大勢の医務トルーパーたちが一つのストレッチャーを囲み、通路を慌ただしく移動する。
ストレッチャーの上に寝かされているのは――尋問官、ナインス・ブラザーである!


ナインス「シンノ……シンノ……シンノ・カノス……!」


 凶悪な尋問官も今は満身創痍。
血みどろの装甲服も痛々しく、酸素マスク越しにうわ言を繰り返す。


医務トルーパーB「尋問官殿!ここがどこかわかりますか?」ガラガラガラ

医務トルーパーC「この指は何本かわかりますか?」ガラガラガラ

ナインス「黙れ……!俺は、殺す……!殺さねば……セラ!セラはどこだ!」

医務トルーパーC「セラ?」

セラ「チッ……」


 彼らに大きく遅れて通路を歩いていたマンダロア兵が、しぶしぶ駆け足になって彼のもとに近寄る。


セラ「何ですか、尋問官殿」

ナインス「シンノは……シンノ・カノスはどうした!死んだか!?いや死んじゃいない、まだ俺が殺していないから……」

セラ「今は治療に専念なさることですな。内臓がズタボロですから、大がかりな機械化手術も考慮すべきかと。さもないと、死にますよ」

ナインス「死ぬ!?シンノがか!?俺がか!?俺が死ぬのは……ゴホッ!ゲホッ!俺は、死ねない!殺せないじゃないかっ!ゲホーッ!」

医務トルーパーA「セラ殿、申し訳ないがこれ以上患者に喋らせるのは危険だ!」

セラ「こちらももううんざりだ」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 00:55:43.54 ID:E/nMGKEr0

 ストレッチャーはセラを残して走り去る。
おそらくバイタル区画にある集中治療室に搬送されるのだろう。
一介の兵士では受けられないとうてい受けられない手厚い処置だ。


セラ(ヴェイダーの使い走りとはいえ、元ジェダイのフォース感応者……特殊技能者というわけか)

「彼はもう死なせた方が帝国のためかと思うのですがねェ……精神異常が度を越していらっしゃるゥ」


 セラは横からヌルリと現れた人物を見やる。
ひょろ長い体躯を帝国保安局の黒い制服に包んだ男。


セラ「……今のは問題発言ではありませんか、エージェント・サギ」

サギ「おや、録音していらっしゃったんですかァ?」

セラ「そういうわけではありませんが」

サギ「そうでしょうねェ。まあ録音していたところで、貴方の報告が皇帝陛下のお耳に入るとも思えませんが。ついさっき後ろ盾も失ったようですしねェ?」

セラ「貴様ァ!」グイッ

サギ「ヒヒィ!?」


 セラは激昂し、サギの胸倉を掴み上げる!


セラ「シカーグ総督を!シカーグ総督の死を、愚弄するか!」

サギ「ヒィィ、よっぽど問題行動ですよこれは!早く離しなさい!」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 00:56:23.90 ID:E/nMGKEr0

 ガゴオン!ゴゴオン!


セラ「きゃあ!?」
サギ「ヒィ!?」


 突如、艦全体を揺さぶる振動!
巨大にして堅牢を誇るスター・デストロイヤーは、ミサイルの直撃を受けてもこれほど揺れはしないはずだった。
セラは冷静を取り戻し、近くの窓から外を見やる。
眼下に広がる惑星クマモッテ。
その表面を覆う灰色の雲の向こうからごく小さな影が飛び出したかと思うと、たちまち接近し、大きくなる!
激突!
再びの激震!


サギ「ヒィィ!?分離主義者の秘密兵器ですかァー!?」ブルブル

セラ「いや、あれはミサイルじゃないし……ましてや砲弾でもない」


 セラは豊富な実戦経験、その中で得た様々な惑星の自然環境の知識から、飛来物に関して一つの推論を得る。


セラ(……まさか、火山弾か?)


 あれほど巨大な火山弾が、相次いでこの高度まで飛来する……


セラ(惑星クマモッテの地下に、何が起こっている?)

サギ「わ、私はバイタル区画に避難します!帝国保安局の権限です!」ダダッ

セラ「ま、待て貴様!一人だけ逃げる気か!?」タタッ


 惑星爆発まで、あと十五分!
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 01:03:03.00 ID:E/nMGKEr0
>>128
/ご明察、>>1がヘッズなので時々忍殺が顔を出してしまっています
/できるだけ平易な文章を心がけておりますので、苦手な方はご容赦下さい
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/23(土) 02:36:44.93 ID:g8ip+YsT0

テイティス「ぐおお……!」ガラガラガシャンッ


 テイティスはフォース・プッシュに吹き飛ばされ、倉庫の床をゴロゴロと転がった。
近くにあった金属缶の山が滅茶苦茶に崩れ、粉塵が舞う。
幽鬼はその中からゆらりと身を起こし、土埃に塗れた自らの服を見やる。


テイティス「この私に……土を、付けるとは……」

シンノ「ハーッ……悪いが、一敗地に塗れるだけじゃ済まさないぜ」


 シンノは光剣を油断なく構えつつ、ジリジリと間合いを詰める。


シンノ「あのホロクロンは、真性のシスが持つには危険すぎる……貴様の探索の旅は、ここで終わりだ……」

リズマ「惑星ヤクシムでの蛮行も、償ってもらいます……!」

テイティス「ホロクロン……ああ。そういえば、そういう話になっていたな……もはやどうでもいい口実だが」

シンノ「何?」

テイティス「フンッ!」ブウンッ


 テイティスが手を振るう。
その掌中に炎が生じて撚り合わさり、長大な炎の鎖を形成!
鎖はシンノの横を掠めて飛び、リズマの全身を絡め取る!


リズマ「ぐうっ!?」ビシイッ
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/23(土) 02:37:14.46 ID:g8ip+YsT0

シンノ「リズマ!?」

テイティス「カアッ!」ジャラランッ


 テイティスは鎖を引き絞り、リズマの体を振り回して投げ放つ!
行く先は、床に空いた大きな廃棄孔!


リズマ「うわあああっ、あ!」ガシッ


 リズマはかろうじて縁にしがみつき、ぶら下がる。
しかしその手からライトセーバーが零れ落ち、眼下の暗闇の中に消えていく。


リズマ「し、しまった……!」

シンノ「ハアッ!」ブンッ

テイティス「フッ……!」バチュンッ


 一方シンノはテイティスに攻撃を仕掛けていた。
さらなる時間を稼ぐべく、鍔迫り合いの姿勢で口を利く。


シンノ「ホロクロンが、どうでもいいだと?わざわざキャッスル・クマモッテに来て、四天王を焼き殺したくせにか?」

テイティス「妄言も大概にするがいい。私は貴様らがここに来ることを初めから予知していた……なぜあのガラクタの山に出向く必要がある?」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/23(土) 02:37:50.49 ID:g8ip+YsT0

リズマ「やああああっ!」


 直後、リズマがフォースの力で高く跳躍してテイティスに襲いかかった!
その手には、マスター・ヨーダのライトセーバー!


テイティス「何!?」


 テイティスは泡を食ってシンノを押しのけ、ガード姿勢!
しかし軌道を見切り損ね、ダブル・ライトセーバーを真っ二つに切断される!


シンノ「はあっ!」ブンッ

テイティス「ぐおおっ!?」ドガッ


 立て続けに、シンノの前蹴りがクリーンヒット!
テイティスは吹き飛ばされ、廃棄孔の横に駐機されていたシャトルに背中から激突!


テイティス「ハアーッ……!」


 しかしシス卿、さしたる隙を見せず!
左手をジェダイたちのほうへかざす!
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/23(土) 02:38:36.54 ID:g8ip+YsT0

シンノ「!リズマ!」

リズマ「マスター!」

テイティス「消えろ……!」ボボボウッ!


 フォース・ファイアー、最大出力!
超常の炎の奔流、破壊エネルギーの青白い輝きが倉庫を満たし、天井を破壊して空へ立ち昇る!


テイティス「ッハ、ハハハ……!少しは鍛えたようだが、結果は変わらない……!」


 シス卿は自らも熱風を浴びつつも、仮面の裏で笑う。


テイティス「私は貴様よりも優れている。私だけがあのお方の、後継者に――」


 炎が上方へ抜け、煙が晴れる。
ジェダイたちが居たところに、畳大のコンクリートの壁が出現していた。


テイティス「――これは」


 その裏から今、人影が跳び出す。


シンノ「はあああーッ!」ブウンッ


 ジェダイの刃が、シスの刃を潜り抜け――その向こうに、届く!


テイティス「――!」ズバッ


 テイティスの左腕が肩口で切断され、ライトセーバーごと宙を舞った!
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/23(土) 02:39:24.45 ID:g8ip+YsT0

シンノ(今だ)


 シンノの時間感覚が鈍化し、視界がスローモーションに変化する。
テイティスがフードの陰、仮面の奥で四つの目を驚愕に見開いている。
しかし同時に地を蹴り、側方への退避を始めている。
対応が早い。
片腕を削いだことは、決定打になっていない。


シンノ(奴を倒すのは、今)


 シンノは一歩、踏み込む。
ジェダイたちは、フォースで床材を剥がして防御壁を作ることでフォース・ファイアーを攻略した。
二度通じる手ではない。
テイティスがリズマの奇襲で苛立ち、大ぶりな一撃を選択したからこそ間に合った対応策だ。


シンノ(この機を逃がさず)


 二歩、踏み込む。
すでに片腕とはいえ、敵は無類の戦闘巧者。
次に隙を突けるのはいつかわからない。
それまでに分離主義者の何らかの企みがが発動してしまえば、自分たちはおそらく無事ではいられない。
ネーアを救い出し、ミコアとともに無事でこの星を去るためには――


シンノ(奴の息の根を、完全に――!)


 三歩。
見開かれていたテイティスの目が、細まった。
敵の右手が何かを手繰る。
シンノは自分の右手に――ついで他の四肢に、高熱を帯びた何かが絡みつくのを感じた。
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/23(土) 02:39:57.37 ID:g8ip+YsT0

テイティス「――その焦りが!」ジャラランッ


 テイティスは右手で炎の鎖を四本まとめて手繰る!


テイティス「命取り!」ブウンッ

シンノ「ぐわあああ!?」バアンッ


 シンノの体は大きく振り回され、背中から壁に叩きつけられる!
鎖はテイティスの手を離れて壁に食い込み、ジェダイを磔の形で拘束する!


リズマ「マスターッ!」

テイティス「ハハ、ハハハ……!」


 テイティスはフォースでライトセーバーをキャッチし、残るリズマに斬りかかる!
腕を一本失っていながら、その攻撃はなおも苛烈!


シンノ「くそっ、くそ……!」ガチャガチャ


 シンノは全力でもがくが、凝縮した炎の鎖は彼を強固に固定して放そうとしない。
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/23(土) 02:41:34.22 ID:g8ip+YsT0

テイティス「ハハハ……これは、避けられるか!」ブウンッ


 テイティスがライトセーバーを投擲した。
その狙いはリズマではなく、背後のシャトル。
シンノたちの持つ唯一の脱出手段。


リズマ「ッ!」ダッ


 リズマは渾身の力で跳躍。
ギリギリのところでライトセーバーとシャトルのあいだに割り込み、上へ弾き飛ばす。
しかし着地に伴い、姿勢が大きく乱れた。


シンノ「――や」


 テイティスが踏み込む。
徒手、マーシャルアーツ。
リズマは顎を殴りつけられ、後頭部を背後のシャトルの装甲に打ちつけた。
四肢が一瞬、脱力する。
その一瞬に、テイティスのライトセーバーが落ちてくる。


シンノ「やめろ」


 シスはそれを右手でキャッチし、起動。
リズマが目を見開く。
その瞳に、赤い閃光が反射した。


シンノ「――やめろおおおおおおおおおおーッ!」
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/23(土) 02:42:33.23 ID:g8ip+YsT0

「……」


 ぴくりと眉を動かし、振り返る。
顧みるは、シャトルが隠匿された倉庫。
その中でライトサイドのフォースの気配が一つ、消滅した。


(……そろそろ見物しに行くとするか)


 ライトセーバーを懐に収め、歩き出す。
後にはニモーディアンとジオノージアンの斬殺死体が残される。


(まったく、マクシャリスの小僧のせいで散々だ……期待通りの結果に終わるといいんだが)


 その背後で地割れから光芒が溢れ、宇宙へ立ち昇る。
倉庫街が、ヒュガーが、否、惑星全体が綻び、崩れていく。
惑星爆発まで、あと十分。
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/23(土) 11:27:19.12 ID:6WH6qbJhO
【決講】可奈「飛べ飛べ神鳥〜♪る〜ぐ〜ちゃん〜♪」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1574466531/
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/23(土) 16:02:40.54 ID:8+r9y8ND0
リズマ逝ったああ
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:21:55.60 ID:G7vf32xb0

シンノ「あああああッ!」ブウンッ

テイティス「ぬうん!」バチバチバチ


 シンノは光刃を振るい、猛然と逆襲を仕掛ける。
彼を拘束していた鎖は、直前にリズマが投擲したライトセーバーによって断ち切られていた。
しかし今は、彼女は地に伏して動かない。


シンノ「貴様は……貴様は、何だ!?何がしたくて俺たちを!リズマを!」バチバチバチ

テイティス「ジェダイが義憤に駆られて女の敵討ちか。ドラマチックだな。だがナンセンスだ」バチバチバチ


 テイティスは仮面の奥で四つの目をギョロリと動かし、競り合う光刃越しにシンノをねめつける。


テイティス「シディアスの流派ならいざ知らず、我らがヤマタイト・シスの教えは少し腹を立てたくらいでは到底破れん。腕一本のハンデなど問題にならんぞッ!」ブウンッ

シンノ「ぐうっ!?」バチュンッ


 テイティスは右手一本でおそるべき怪力を発揮し、シンノを弾き飛ばした。
ライトセーバーを握る手を上向け、そこに浮かんだ拳大の火の玉に息を吹きかける。


テイティス「フウッ!」ボボボボボ


 火の玉は震えて、無数に分裂。
青白い火炎弾の弾幕と化してシンノに襲いかかった。
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:22:40.43 ID:G7vf32xb0

シンノ「くうっ!」ダッ


 シンノは逸る殺意を抑えて回避に転じた。
彼が跳躍し、三角跳びする軌跡を、一瞬遅れて炎が焼き尽くしていく。
床を転がって着地、パッと身を起こしたところに、かわし損ねた最後の火炎弾が脇腹を捉える。


シンノ「ぐあっ!?」ボンッ

テイティス「のろい!」ブンッ


 テイティスが躍りかかり、空中回し蹴りを仕掛ける。
シンノはカッと目を見開き、姿勢を転回。
蹴り足を脇腹と腕で捉える。


テイティス「何!?」ガシッ

シンノ「なめるなあッ!」ブウンッ


 シンノはそのまま敵の体を振り回し、投げ飛ばす。
シスはまたしても金属缶の山に頭から突っ込み、派手に金属音と粉塵をまき散らした。
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:23:31.36 ID:G7vf32xb0

シンノ「リズマ、リズマ……!」ガシッ


 シンノはリズマのもとに屈み込み、地面から抱き起こした。
まだかろうじて息はある。
しかしその表情と呼吸は弱弱しく、いつもの気丈さは見る影もない。


リズマ「……マス、ター……申し訳、ありません……不覚を……」

シンノ「ああ、いいんだ、いいんだ、そんなこと……ああ……」


 ジェダイマスターは弟子を抱えたまま無様に狼狽した。
彼の戦士としての経験は、テイティスの一撃がどうしようもなく致命傷だと宣告していた。


シンノ「何でだ、どうして……嫌だ、ダメだリズマ。俺を置いていかないでくれ……」


 視界がぼやける。
情けない言葉が勝手に口から流れ出す。
思考は一向にまとまらず、リズマとともに過ごした記憶が走馬灯のように流れていく。
惑星ハクカ、衛星砲台ラグナロク、惑星ハンカッタ、惑星デジム、スノークの暗礁宙域。
惑星ヤクシム、惑星タンガシム、そして惑星クマモッテ。


シンノ「俺の荷物を背負ってくれると……守ってくれると、言ったじゃないか……」


 シンノ・カノスは、物心ついたときにはすでにジェダイだった。
その人生は、プライドは、オーダー66とクイナワ戦によって二度にわたり粉微塵に打ち砕かれていた。
たった一つの支えは今、死の闇の中に永遠に失われようとしている。


シンノ「俺を、俺を……一人にしないでくれ……」
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:24:31.75 ID:G7vf32xb0

リズマ「……一人には、しません……私は、フォースと……一体になります」

シンノ「何だよ、それ……分からないぞ……行かないでくれ、頼む、頼むから……!」

リズマ「……わからなくっても……見えなくっても、いつも……一緒です」


 リズマが震える手を伸ばし、師の頬を撫でる。


リズマ「だから……泣か、な、いで……」


 言葉が途切れる。
項垂れる面影。
指先は思い人を離れ、地に落ちた。


シンノ「……」


 シンノは底の見えない暗闇に突き落とされたかのような感覚を味わった。
体の内側から急速に温度が抜けていく感覚。
なぜ彼女は目を覚まさないのか?
なぜ彼女は話さないのか?
その目元に、口元に、生の痕跡を見出そうとするが、叶わない。


テイティス「死んだか。見たところ、ただのアプレンティスではなかったらしいな」


 その言葉は鮮明に聞き取れた。
一本きりの腕にライトセーバーをぶら下げ、悠然と歩いてくるテイティスの声。
リズマの仇。
こいつさえいなければ。
胸の内の闇に蝋燭のような小さな火が灯り、たちまち溶鉱炉のごとく燃え上がった。
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:25:16.28 ID:G7vf32xb0

テイティス「自分たちの定めたルールすら守れないとは。破戒僧は地獄行きだぞ」

シンノ「――れ」

テイティス「何?」

シンノ「黙れ」


 地震が轟音と共に倉庫を揺さぶる。
シンノはリズマの遺体を静かに横たえ、立ち上がった。
天井の照明ユニットの一つが傾ぎ、火花を散らしながら彼の背後に落下。
男の輪郭が逆光の中で影絵となって映し出される。


シンノ「貴様は殺す。今ここで」


 光と闇のコントラストの中で、ライトセーバーの青い刃が冷たい輝きを放つ。


テイティス「……」


 テイティスは仮面の奥で不快そうに眉をしかめた。
敵はジェダイとしては手練れだが、ダークサイドの技術は素人。
感情をぶつけ合う土俵の下でなら、自分が一歩先を行く。
先を行くはずだ。
ならばこのプレッシャーは何だ?
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:26:25.39 ID:G7vf32xb0

テイティス「……無理だな、手負いの貴様一人では……だが安心するがいい、その女にはすぐに会える」


 テイティスは微かな疑念を振り払い、隻腕でライトセーバーを構えた。


テイティス「同じ者に同じ武器で殺されれば、同じ地獄に落ちようからなッ!」ブウンッ

シンノ「ダアッ!」ブウンッ


 チュインッ!
赤と青の光が火花と共に交錯し、飛び離れる。


テイティス「ぬうんっ!」ジャララランッ

シンノ「ハアーッ……!」ダダダッ


 テイティスが振り返りざま放った幾筋もの炎の鎖。
シンノは床を走り、壁を走ってその追跡を免れる。
ムーンサルトで廃棄孔を飛び越え、空中から敵に襲いかかる。


シンノ「ガアアッ!」ブウンッ

テイティス「フンッ!」ブウンッ


 シスはこのアクロバット攻撃に反応し、自らのライトセーバーで受け止めた。
シンノは着地と同時に、左手で腰のブラスター・ピストルを抜く。
ナインス・ブラザーから奪ったものだ。
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:27:15.40 ID:G7vf32xb0

テイティス「小賢しいわ!」ブンッ

シンノ「ぐうっ!?」ドガッ


 テイティスは射撃に先んじてブラスターを持つ手に蹴りを浴びせた。
銃は持ち主の手を逃れて床を滑り、廃棄孔の中に落下。
交錯するライトセーバー越しに両者の視線が交錯する。
テイティスの目はサディスティックな優越感に満ちる。
シンノの目は、一層殺意を燃え上がらせていた。
テイティスは一瞬、怯んだ。


シンノ「ダアッ!」ブンッ

テイティス「がッ!?」ドガッ


 その刹那、シンノの頭突きが命中した。
姿勢が崩れた隙に左手で敵の襟首をつかみ、引き寄せる。


シンノ「ヌウアッ!」ブンッ

テイティス「ごッ!?」ドガッ


 再び命中。
テイティスの顔面へ、金属の仮面越しに衝撃が通る。
シンノはライトセーバーを切り返し、振り上げる。
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:28:20.76 ID:G7vf32xb0

シンノ「ゼアッ!」ブウンッ

テイティス「ぐわあッ!?」バチュンッ


 斬り上げがシス卿の顔面を捉えた。
苦悶の声、火花が散る。


テイティス「貴様ああッ!」ボウッ

シンノ「チッ……!」ダッ


 テイティスは怒りに震え、フォース・ファイアーを滅茶苦茶にまき散らした。
シンノは舌打ちしつつ火炎放射の射程外に飛び退く。
やがてガス欠のように炎が途切れ、仇が再び姿を現した。


テイティス「ハアーッ……ハアーッ……!」


 真っ二つに斬れた仮面がその顔からずれて、落下する。
その奥にあったのは、醜いエイリアンの顔。
目は四つあったようだが、左の二つは仮面もろとも焼き切られて潰れていた。


テイティス「おのれ……おのれ、貴様……貴様ァーッ!」ダッ

シンノ「ガアアアアーッ!」ダッ
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:28:59.49 ID:G7vf32xb0

 シンノとテイティスは再び交錯する。
赤い光が輝き、青い光が閃く。


テイティス「……」

シンノ「……」


 両者はライトセーバーを振り抜いた姿勢で着地した。
一瞬の静寂。
テイティスが身を起こし、振り返る。


テイティス「……ありえん……こんな、ことは」


 その上半身がずるり、と横にずれる。
シス卿の肢体は腰のところで水平に両断されていた。


テイティス「ありえん。私だけが、あのお方の……ダース・グレイヴスの……」


 下半身がふらつき、膝からくずおれて、横合いに倒れ込む。
上半身は廃棄孔の縁に落下し、傾いで、そのまま闇の中へ落下していった。
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/01(日) 14:29:13.70 ID:jwUfhlYnO
闇堕ちクルー?
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/14(土) 02:16:45.89 ID:35EuomrY0

 地震の揺れは極限に達しつつあった。
倉庫内に積み上げられた資材の山が次々に崩れ、衝撃が走るたび壁の亀裂が大きくなっていく。
しかしたった一人残ったジェダイは、もはや脱出する精神力すら失っていた。
リズマのもとに座り込み、その亡骸をかき抱く。


シンノ「頼む、頼むよ、目を開けてくれ……もう嫌なんだ、こんなのは……もう二度と!」


 彼の意識にいくつもの記憶がフラッシュバックする。
シカーグ将軍の遺体を抱くユスカ。
自らのマスターとの永遠の別れ。
それに、ずっと昔、遠ざかる誰かの背中。
彼の繊細な精神は、あらゆる別離の記憶を鮮明に刻みつけていた。


シンノ「意味ないんだよ、こんなんじゃ……いくら殺せたって、守れないんじゃ……!」


 最後の照明ユニットが落下し、タングステン灯の光が完全に途絶える。
残ったのは、フォース・ファイヤーが穿った穴から落ちる、スポットライトのような一筋の光。
今、そこに小柄な人影が姿を現す。


「――そうだ、その感情だ。私はこの時を待っていた」


 その声は幼いが、口調には老獪なものが覗く。
胸元のホロクロンが、緑色にきらめく。


ミコア「否、全てを仕組み、招き寄せた。私が。このダース・グレイヴスが!」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/14(土) 02:17:39.55 ID:35EuomrY0

シンノ「ミコア……姫……」


 シンノは彼女にうつろな目を向け、静かに絶望した。
あれが自分を苛んでいる全ての元凶だ。
本人の言葉だけでなく、フォースの波動からも明らかなことだった。
それを必死になって守り、あまつさえ敵の手から救い出そうとしていたとは。
俺はなんて愚かだったのか。
これは俺の愚かさへの罰なのか。


グレイヴス「リズマに会いたいだろう。もう一度手を触れたいだろう、言葉を交わしたいだろう?」


 これまで、ミコアの言動には幼くも厳格な王族の気風があった。
しかしそれは全て偽物に過ぎなかった。
今、シスの暗黒卿ダース・グレイヴスは鳥の雛を前にした蛇のようにサディスティックな笑みを浮かべ、狡猾な言葉を投げかける。


シンノ「……どういう意味だ、それは……」

グレイヴス「言ったはずだぞ。ヤマタイトの教えには、死者を蘇らせるものもあると」

シンノ「……リズマを、蘇らせることができるというのか」

グレイヴス「お前が私を受け入れれてくれるならば、な」


 降り注ぐのはきっと、遠くで燃える戦火の光。
シス卿はその中から、暗闇の中にいるシンノのほうへ手を差し伸べる。


グレイヴス「シンノ・カノス、私の弟子になれ。リズマも加えて三人で、暗黒面の道を往こうじゃないか」
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/14(土) 02:18:46.90 ID:35EuomrY0

シンノ「……ふざけたことを、ほざくな!」


 シンノの胸の中に残る最後の感情のひとかけらが爆発した。
亡骸を抱えたままライトセーバーを振りかざし、伸ばされた手を拒絶する。


シンノ「お前のせいじゃないか。全部全部、お前の嘘のせいじゃないか!この上また俺を騙すつもりか!」


 シンノは反駁しながらも、目から涙が溢れだすのを止められなかった。
こうして意地を張ったところで、シカーグ将軍も、リズマも帰ってきはしない。
今の彼にとって道理と正義はあまりにも虚しかった。


シンノ「これ以上そのくそったれの口が誰かを傷つける前に、俺がお前を、この手で……!」

グレイヴス「……シンノ、それ以上自分を傷つけるのはやめろ。見ていられん」


 グレイヴスは呆れたような、哀れむような微笑を浮かべ、悠然と歩み寄った。
シンノの震える手からライトセーバーをもぎとり、刃を収める。


グレイヴス「嘘はもう打ち止めだ、今の私は丸裸だよ……それに、今までもすべて嘘というわけでもない」


 シスは白魚のような手でシンノの頬に触れる。
その肌は柔く、ひんやりと冷えて心地良かった。


グレイヴス「クイナワで、そしてこのクマモッテで、私はお前の精神と才能を信じた。必ず助けに来ると。そしてお前はそれに応えてみせた」


 グレイヴスが目を細め、表情を優しげに綻ばせる。


ミコア「――だから、シンノ様。私は、あなたの仲間になれてよかった。あなたはとってもすごいお方です」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/14(土) 02:20:46.20 ID:35EuomrY0

 シンノは自分の中で何かが砕け散る音を聞いた。
理解者を自ら遠ざけ、あるいは死によって別れ、報われない疲労を極限まで積み重ねた今の彼にとって、グレイヴスの言葉はまさに麻薬だった。


「――だから、他の誰でも」

「自分自身さえお前を信じられなくとも」

「私だけは信じよう」

「私だけは、お前を愛そう」


 ジェダイは、屈した。
抱いた亡骸を地面に横たえ、伏してこいねがったのだ。


シンノ「ダース・グレイヴス……グレイヴス卿」

シンノ「私を……弟子に、してください……」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/14(土) 02:23:05.22 ID:35EuomrY0
/エピソード9公開まであと2週間です!
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/14(土) 03:28:43.40 ID:ckQU8EUuO
堕ちたか…
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/31(火) 17:49:48.41 ID:ur4JsFWG0

ネーア「ぶっはあああ!死ぬかと思ったのじゃ……!」


 ネーアはマンホールから暗い部屋の中へ這い出し、そのまま床に突っ伏した。


ネーア(いやしくもシスの暗黒卿である妾が……水の中に落ち、かませ四号に追い回され、ドロイドに襲われ、こんな無様な……おのれ分離主義者どもめ、奴らも妾の敵じゃ!)


 憎しみをエネルギーにしてどうにか動き出し、壁に手をついて立ち上がる。
手さぐりでスイッチを入れると、青白い金属灯が室内を照らした。
眩む目であたりを見回す。
今は使われていない倉庫のようで、だだっ広い空間にゴミやガラクタが散らばっている。


ネーア「……ん?あれは……」


 そんな中、壁面のシャッターのそばにあるものがシス卿の注意を引いた。
黒く塗り上げられたXウィング。
テイティスが乗っていたものだ。


ネーア「……」


 テイティスがここに降りたならば、キャッスル・クマモッテに来れたはずはない。
ならばなぜ、ミコアは彼が四人目の四天王を殺したと言ったのか。
本当にやったのは誰か。


ネーア「……ミコア……ミコアか!おのれ!あのメスガキめ!一杯食わせよった!」ガンガン
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/31(火) 17:50:34.88 ID:ur4JsFWG0

 シス卿は憤懣やるかたなく、Xウィングの装甲を繰り返し蹴りつけた。
しかし地震に急かされ、方向指示器をへし折って怒りを収める。


ネーア(シンノはどこじゃ?一刻も早くこのことを……待て、近い!)


 ネーアはフォースを通じてシンノの居場所を探り、倉庫を出て廊下を移動した。
息を殺し、開け放しの扉から別の部屋を覗く。


グレイヴス「ついでに言えば、クイナワの反乱軍基地の場所を帝国軍に通報したのも私だ」

シンノ「……一体、何のため……ですか」


 そこには新たなシスの師弟の姿があった。
弟子の腕の中ではリズマが力なく抱かれ、二度と目を開けそうにない。
ネーアは自分の帰還が遅すぎたことを直感した。


グレイヴス「当然、お前に試練を課すためだ。本来あそこで帝国軍に攫われてやる予定だったが、もう一押しが足りないと思って残ったんだ。そのせいで後でテイティスに出張ってこさせる羽目になったが」

シンノ「……全部マスター・グレイヴスの手の内、か……」

ネーア(グレイヴス?ダース・グレイヴスか!)

シンノ「この星にいるのも……」

グレイヴス「……いや、これは分離主義者のせいだ。マクシャリスの仕業よ」


 グレイヴスは壁面のスイッチを操作し、シャッターを解放する。
外から熱風が吹き込み、ネーアの頬にまで届いた。
二人はそばに駐機されていたシャトルの中に乗り込む。
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/31(火) 17:51:45.90 ID:ur4JsFWG0

グレイヴス「奴には思い知らせねばならん。シスを裏切り、あまつさえ帝国軍を釣る餌にした報いをな……」


 グレイヴスは操縦席につき、慣れた手つきでコンソールを操作した。
機体後部のタラップが格納され、ジェネレーターが唸りを上げる。
シンノは浮遊感を覚え、窓越しに遠ざかる景色を見て、不意に目を剥いた。


シンノ「降りろ……降りろ!船を降ろせ!」ダッ

グレイヴス「うっ、何をする?放せ!」バッ

シンノ「ぐわっ!」ドタッ


 疲れ果てた体を強いてグレイヴスに組み付くが、容易く振り払われて尻餅をつく。
恐るべき黒幕はパイロットシートの上に立ち上がり、威厳に満ちた仕草でシンノを睥睨した。


グレイヴス「少し甘くしすぎたか?反抗は許さんぞ。マスターである私と、後ろに転がっているあれがこれからのお前の全てだ。よく覚えておくがいい」

シンノ「ネーアが……ネーアがまだ、あの星に……」

グレイヴス「ネーア?……ああ、なんだ、あのガキのことか。今更迎えに戻ることなどできんぞ。後ろで見てみろ」


 グレイヴスは席に戻り、キャビンの後方を指し示す。
シンノは底知れない悪寒を覚えてそれに従い、機体後部の窓に取り付いた。
シャトルは急速に高度を上げており、彼はそこから惑星クマモッテの全貌を見ることができた。


グレイヴス「古代シスの兵器と同じだ、何が起こるか察しはつく」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/31(火) 17:52:20.51 ID:ur4JsFWG0

 薄汚れた星は急速にひび割れ、空気の抜けたボールのように歪んでいく。
そしてぶるぶると震え、その周波が極限まで高まったとき――
惑星クマモッテは内側から火を噴き、木っ端みじんに爆発した。


シンノ「……あ……ああ」


 シンノは膝から崩れ落ちた。
微かに蘇った感情を絶望が打ち砕く。
飛び散る星のほうから何か、形のないものが押し寄せてくる。
シンノはその冷たさに怯み、恐れて、嘔吐した。


グレイヴス「断末魔だな。星の爆発で死んだ奴らの」


 頭に冷たい手が触れるのを感じる。
撫でてくれている。
シンノは震えながらも少し冷静さを取り戻して、速度の感覚が消えたのに気づいた。
ハイパースペースに突入したのだ。

 
グレイヴス「ネーアとかいうのも死んだだろうが……まあ、すぐに気にならなくなるとも」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/31(火) 17:53:03.39 ID:ur4JsFWG0

ネーア(妾が星の爆発くらいで死ぬと思っているのか。お生憎様ぞよ!)


 ネーアはその床下で邪悪にほくそ笑んだ。
彼女はシャトルが離陸する直前、その着陸脚にしがみつき、キャビンのすぐ下の領域に潜り込んでいたのだった。


ネーア(シンノの奴は妾と何年も付き合っててどうしてああも鈍いのじゃ。鈍いと言えばミコア、もといグレイヴスの奴も――)

グレイヴス「ふむ、ネズミが潜り込んだようだな」

ネーア「……」


 頭上でライトセーバーが鞘走る音がした。
永遠にも思える数秒。
着陸脚にしがみつくネーアのすぐ横に、赤い光が降ってくる。
赤い光が虚空で火花を散らした。


ニンジャコマンドーA『ピガーッ!』ガシャンッ


 そこの壁面にしがみついていたニンジャ・コマンドーが、急所を貫かれた状態で出現した。
たちまち機能を失い、着陸脚格納ハッチの上に落下する。
ネーアは思わぬ同居人がスクラップと化して足元に転がるのを恐々と見下ろした。


ネーア(……セ、セーフぞよ)


 そして気が抜けると、手が着陸脚に張り付いたまま動かせないのに気づいた。
凍りついている。
ここは極寒の宇宙と金属板一枚を隔てただけで、暖房もない極限の空間なのだ。


ネーア(セーフじゃないのじゃ……!まずい、寝たらダメじゃ、寝た……ら……)


 冷気はシス卿の全身を包み、疲労と合わさって、その意識を闇の中へ引きずり込む。
シャトルは白く輝くハイパースペースを抜け、暗黒の宇宙へと消えていった。
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/31(火) 17:53:45.16 ID:ur4JsFWG0

ユスカ「はあっ!」ガバッ


 ユスカは布団をはねのけて身を起こした。
ひどい頭痛がする。
それに全身汗だくだ。


ユスカ「はあ、はあ……何これ……」


 扉が開き、暗い部屋に明かりが差し込む。
ユスカは弾かれたように枕元のブラスターを取った。


C7-BDB『オ、オイ待テ!撃ツナ、俺ダ!』
 
ユスカ「……はあーっ、あんたか。驚かせないでよ」ガチャッ


 しかし入室者の正体は見知った料理人ドロイドだ。
ユスカは武器を置き、汗を拭った。


C7-BDB『何ダッテ何ダヨ、水持ッテキテヤッタノニヨ』

ユスカ「水?何でよ」

C7-BDB『スゲーウナサレテタゼ、部屋ノ外カラデモ聞コエルクライニナ。何ノ夢ミテタンダ?』

ユスカ「……夢……」


 たしかに何か、ひどい悪夢を見ていた。
暗闇。
地響き。
赤い光。
聞き覚えのある誰かの声と、涙。
その先を思い出そうとしたとき、腹に焼けつくような痛みが走った。


ユスカ「……リズマ?」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/01(水) 15:29:26.03 ID:AnyqFUkO0
いきてたかーのじゃ
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/06(月) 23:57:38.41 ID:cbIKMmWF0

 ――数日後。
QC宙域はセンターリムから遠く離れた辺境だが、惑星オイタットはその中でも最果ての領域に位置する。
そして今、その衛星軌道上に、惑星クマモッテを離脱した分離主義勢力の主力艦隊が集結していた。


マクシャリス「貴様らには失望したぞ」


 その中心、旗艦ヴェンジェンス。
マクシャリスは艦内の私室に座し、コムリンク通信機に向かっていた。


マクシャリス「よもや、まだ人形どもと遊んでいたとは……」

『申し訳ないっス、ボス!――ザザザ――とおっ!はあっ!』


 ノイズ混じりの立体映像が、ライトセーバーを振るうエイリアンの女性を映し出す。
その周囲にはチラチラと奇妙なドロイドたちが映り込み、主役に襲いかかっては返り討ちにあっていた。


『このベップーのザザッ、思った以上に下に広くて!今地下65、いや66階っス!墓守どもも増えていく一方で――ザザザ』

マクシャリス「思った以上にだと?貴様が土地勘があるというから寄越したんだぞ」

『適当なこと言いました、申し訳ないっス!――寄るなって!はあっ!――こう深いとスキャナーも役に立たないし、通信も超長波ですらこの通りザザザザザ』


 マクシャリスが顔をしかめていると、机のコンソールが赤いランプを点滅させた。
来客のサインだ。
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/06(月) 23:58:25.46 ID:cbIKMmWF0

マクシャリス「もういい、ノイズ混じりの言い訳は聞くに堪えん。とにかく一日でも早くベップー遺跡を制圧しろ、今の我々にはそこの設備が不可欠だ」

『ラジャラジャっス!ASAPでやります!ザザザッ』


 舌打ちしてから通信を切り、コンソールを操作して入口の扉を開ける。
来客は金属の脚で照明の下に進み出て、金属の手で敬礼した。


カラーニ『先遣艦隊司令官、からーに。参上シマシタ』


 緑と金に彩られたボディをもつスーパータクティカル・ドロイドだ。
マクシャリスはさっきまでの苛立ちを完璧に覆い隠し、最高指導者にふさわしい余裕に満ちた微笑で応対した。


マクシャリス「呼びつけて申し訳ありません。それと、役不足な露払いを強いてしまったことも謝罪しなければなりますまい」


 カラーニは元々別の残党グループを率いていたが、比較的最近になってQC宙域の分離主義勢力に合流した経歴を持つ。
マクシャリスはこのドロイドの存在をバスタ・ガスターやアジアス・ジ・アーチに対して隠蔽し、彼らを謀殺した後の準備を整える隠し玉として扱っていたのだった。


カラーニ『衛星軌道上ニオケル土着文明ノ自律兵器トでぶりノ排除、オヨビ補給すてーしょんノ設置。イズレモ重要ナみっしょんデス、役不足ニハアタリマセン』

マクシャリス「そう言っていただけると安心します。スター・サクリファイス作戦で本拠を失った今、我々にとって新天地の整備は何より優先すべき課題です」

カラーニ『……現時点デ、すたー・さくりふぁいす作戦ノ戦果ハドノ程度確認デキテイルノデショウカ』

マクシャリス「確実なのはQC宙域総督タクージン・シカーグの戦死のみです。作戦完了直前にスター・デストロイヤー四隻が被害半径内に留まっているのはわかっているのですが」

カラーニ『イズレモ帝国ニハ十分補填可能ナ損害デス』

マクシャリス「惑星クマモッテを犠牲にしたことに疑問を感じていらっしゃるのですか?」

カラーニ『損失ヲ有意義ナモノトスルタメ、今後一層しびあナ戦略ガ必要トナリマス』


 マクシャリスを三つのアイセンサーが見据える。
カラーニの眼差しには、他の戦術ドロイドにない高い知性が見えるようだった。
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/06(月) 23:59:15.09 ID:cbIKMmWF0

マクシャリス「ちょうどよかった。犠牲を払ってもスター・サクリファイス作戦を決行する意義……今日説明申し上げて、ご理解いただきたいと思っていたところです」

カラーニ『どろいどノ私ニ、デスカ』

マクシャリス「伯父上が重用していたドロイドのあなたに、です」


 マクシャリスは席を立ち、背後の大窓を顧みた。
ジャングルに覆われた惑星オイタットの緑を背景に、分離主義の艦隊がシルエットとなって浮かぶ。


マクシャリス「……ずいぶん数が減りました。クローン戦争が始まったとき、惑星セレノーで見た観艦式に比べれば」


 若き最高指導者は端正な顔立ちを物憂げに歪める。
彼の並外れた才能をもってしても、時代の主流から追いやられた軍団を維持することは容易ではなかった。


マクシャリス「あの時の私は子供でした。しかし今の私は違う。指導者としてすべきことを理解しています」

カラーニ『共和国ヲ倒スタメニ、デスカ』

マクシャリス「共和国との戦いは終わりました。惑星ムスタファーで……そしてそこで、新たな戦いが始まったのです」

カラーニ『何ノ勢力ト敵対スルモノデショウカ』

マクシャリス「シスの暗黒卿です」


 マクシャリスの語調が余裕を失して、無表情なものとなる。
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/06(月) 23:59:51.91 ID:cbIKMmWF0

マクシャリス「私は電子的記録とフォースの両面からクローン戦争を分析しました。その真実は、シスが伯父上と分離主義の全てを使い捨てたということだった」

カラーニ『シカシ、アナタノ伯父上……どぅーくー伯爵モしすデシタ』

マクシャリス「その通りです。よくご存じだ」


 しかしそれはごく短い間だけのことだ。
振り返った彼は物腰柔らかな態度を取り戻し、穏やかな微笑を浮かべている。


マクシャリス「しかし矛盾はしますまい。私はダース・ティラナスの後継者ではなく、ドゥークー伯爵の後継者なのです」

カラーニ『……じぇだいますたートシテノ伯爵ノ後継者、トイウコトデショウカ』

マクシャリス「どちらかといえばそうです。もっとも、私はジェダイになる心算はありませんが」


 マクシャリスはマントの裏から金属筒を取り出し、側面のスイッチを操作する。
筒の一端から金色のプラズマが噴出し、光の刃を形成した。
その輝きの向こうにかつての持主、ひいてはその主君の影を見る。


マクシャリス「今、ダース・シディアスは帝国というシステムを通して銀河に圧政を敷いています。それは分離主義という思想そのものへの挑戦です」

カラーニ『デハ、くまもってヲ爆破シタノモ』

マクシャリス「我々の唯一にして真実の敵を相手取った開戦の狼煙……あるいは宣戦布告です。犠牲をいとわず成功させる必要がありました」


 マクシャリスはセイント・セーバーを一振りして、虚空を割く。
伯父の後を継ぎ、星を爆破した男の本願。


マクシャリス「……シスは絶滅しなければなりません。いかなる手段を使ってでも」
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/07(火) 00:00:25.80 ID:bqtpp+FN0

ネーア「絶滅ぅ!?」ガバッ


 ネーアは布団をはねのけて身を起こした。


ネーア(な、何か突拍子もない夢見た気がするぞよ……しかし、ここは……)


 腕に刺さった点滴を引っこ抜きつつ、あたりを見回す。
自分のベッドをハイテクな治療器具と医療ドロイドが取り囲んでいる。
正面の壁には無菌室のような窓があり、外の廊下が見える。
今、白い装甲服を着た一団がそこをどやどやと横切った。
大いに見覚えのある装甲服だ。


ネーア(……まさか)

「――おや、ちょうどお目覚めのようだな」


 ネーアはぎょっとして声のする方を見る。
その主は入口のドアを背に、数名のストーム・トルーパーを従えて立っていた。
 

ワイマッグ「久しぶり、というべきかな……シスの暗黒卿、ダース・ネーア」

ネーア「そ、そなたは……!」


 セード・ワイマッグ。
かつて衛星砲台ラグナロクを巡る戦いで、シンノやネーアと相対した帝国軍将校だ。


ネーア「……えーっと、誰じゃったっけ?」

ワイマッグ「よし、ハクカ基地の監獄に移送しろ」

ネーア「ま、待て!顔はわかるんじゃ、名前が出てこないだけで!」
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/07(火) 00:07:31.06 ID:bqtpp+FN0
/後半はスーパーネーア卿タイムです
/エピソード9はよくまとまっていると感じました
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/07(火) 03:11:46.65 ID:ZejAclYB0
やったー
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/11(土) 01:07:55.91 ID:Qn86HnYM0

グレイヴス「七百年前、私は弟子のダース・メドーに殺された……しかし滅びはしなかった。何故かわかるか?」

シンノ「……わかりません、マスター」

グレイヴス「暗黒面の力だ。シスの秘術によってここ、惑星ヤマタイティアの王族の血筋に、魂を焼きつけていたのだ」


 ヤマタイト王国の宮殿は、惑星ヤマタイティアの首都に存在する。
グレイヴスとシンノはその最深部、秘匿された領域にある巨大なエレベーターで下降中だった。
それは古代文明の産物と思しく、壁を持たず床だけが上下する奇妙な構造だ。


グレイヴス「私はシスの嫡流を離れ、独り研究を続けた。その成果をもってヤマタイトに隆盛をもたらし、それによって新たな研究材料を収集してきた」


 四方の壁面にはエキゾチックな壁画がびっしりと描き込まれている。
炎の剣を持った男と、それに導かれる人々。
稲妻を噴いて飛ぶ船団。
侵略。
征服。
収奪。
かつて銀河全域にその名を轟かせたヤマタイトの歴史が、下方から現れては上方へ消えていく。


グレイヴス「だが血統は時間と共に汚れ、薄まる……私はかつて自分が編み出した技を使うことができなくなっていった。一つ、また一つ。要する素質が高いものから順にな」


 壁画は平穏や文化の興隆をアピールするものへ変わり、やがて途切れた。
あとはまっさらな石の壁が流れていくばかりだ。
グレイヴスは首から提げたホロクロンを固く握りしめる。


グレイヴス「私は弟子を取ることにした……ヤマタイト・シスの教えを今一度完全なものとするために。なぜそれが必要かわかるか」

シンノ「……わかりません、マスター」

グレイヴス「支配するためだ。古代の強大なシスでさえ成し得なかった銀河全域の支配……それを伝統の技術でなく自分自身の力でなすため、いくつもの肉の義体を使い捨てて生きてきたのだ」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/11(土) 01:08:40.99 ID:Qn86HnYM0

 やがてエレベーターは減速し、停止する。
二人の目の前には重厚な両開きの扉が出現していた。
グレイヴスが手をひらりと動かすと、それはひとりでに動き始め、石の擦れる音とともに道を開く。
やがて四角形の暗闇がぽっかりと口を空けた。


シンノ「……」


 シンノは魂が抜けたようになっていたが、ここに及んで危機感を覚えた。
惑星キイでシスの遺跡を前にした時よりなおひどい悪寒に身震いする。
この奥に踏み込んで、戻ってくることはできるのか?


グレイヴス「どうした。暗いところは怖いか?」


 シス卿はその恐れを見通す。
シンノは彼女の眼差しの冷たさに怯み、唾を呑んだ。


シンノ「……マスター。この奥に……何があるんですか?」

グレイヴス「さっき説明しただろう。私の七百年の研究成果だ」


 シス卿は溜め息をついたあと、表情をがらりと変えた。
クイナワで、ヤクシムで、彼とともに笑い、戦い、ときに彼を諭した幼くも聡明な仲間が、束の間だけ帰ってくる。


ミコア「それがリズマさんを死の闇から救うのです。もう少しだけ頑張りましょう、私が一緒です」


 シンノにもそれが欺瞞だとすぐにわかった。
しかし今の彼は、彼女の表情に、声に、どうしようもなく安らぎを感じてしまっていた。
シンノは進む。
亡骸を収めたチルド・カプセルを押して、師となるべき人物に誘われ、底知れぬ闇の中へ……
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/11(土) 01:09:11.15 ID:Qn86HnYM0

ワイマッグ『一両日中にも、ヴェイダー卿がハクカ基地にいらっしゃるらしい』

マーズ「ダース・ヴェイダーがここに!?何故です!?」

ワイマッグ『むろん、昨日そちらに移送した捕虜を尋問するためだ』


 ネーア覚醒の翌日。
惑星ハクカにある帝国軍基地の司令室にて、マーズはホロネット通信機に向かっていた。
青白い立体映像のワイマッグ司令官は、悩ましげな表情で言を続ける。


ワイマッグ『卿が自分たち以外のフォース使いに多大な関心をお持ちなのはお前も承知のはずだ。特にQC宙域のジェダイは反乱軍と連携していることが明らかだからな……』

マーズ「しかし閣下、あれはジェダイではありません。シスです」

ワイマッグ『どちらでも同じことだ。いやむしろ、シスのほうが敏感になるのではないか?』

サギ「ヒヒィ、仰る通りですゥ」


 横からエージェント・サギが合いの手を入れる。
彼は惑星クマモッテの爆発を無傷で生き延び、早々とハクカに引き上げてきていた。


サギ「私の記憶が正しければ、ダース・ベインが定めた掟により、シスの暗黒卿はつねに師と弟子の二人のみ……三人目がいるとなれば、沽券にかけても殺しにくることでしょォ」

ワイマッグ『もちろん拷問で四人目がいないことを確かめてから、だろうがな』


 マーズはサギの横槍を咎めようとしたとき、恐ろしいことに気づいた。


マーズ(私があれに弟子入りしようとしたのは、皇帝とヴェイダー卿に成り代わろうとする行為だったのか……とすると、もしもヴェイダー卿がそれを知ったら……!)


 以前かの暗黒卿に首を締めあげられた感覚が蘇った。
全身から血の気が引き、眩暈が襲う。
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/11(土) 01:10:21.52 ID:Qn86HnYM0

ワイマッグ『私はしばらくクマモッテ星系から離れられん。第一艦隊が壊滅した原因を突き止めるまではな……だからお前はヴェイダー卿が到着するまで、くれぐれも例の捕虜が脱走なぞしないよう……』

マーズ「――します」

ワイマッグ『ん?今なんと言った?』

マーズ「殺します!ダース・ネーアを!」ビシューンッ


 マーズは突然ライトセーバーを起動した。
エージェント・サギと司令室内の一般兵たちが慌てて飛び退る。


サギ「ヒィィ殿中!殿中ですよマーズ第二艦隊司令官付補佐官殿!」

ワイマッグ『落ち着けマーズ、何故そうなる!その物騒なものをしまえ!』

マーズ「フウーッ、フウーッ……!」

ワイマッグ『いいか、深呼吸しろ……ゆっくりとだ……そしてライトセーバーのスイッチを切り……元あったように腰に提げる。よし』
 

 ダーク・ジェダイは主人になだめられて平静を取り戻した。
凶悪な武器はジット・セーバーは鞘に戻ると、司令部要員たちは囁きを交わしながら自分の職務に戻る。


マーズ「……申し訳ありません、取り乱しました」

ワイマッグ『……ヴェイダー卿と顔を合わせづらい気持ちはわかる。しかしあの重要な捕虜を独断で殺したりしてみろ、私もいい加減かばいきれんぞ』

サギ「ヒィィ、まったくですゥ……奴は反乱軍とも繋がりがあるのでしょォ、反乱軍の基地の在処も聞き出せるかもしれないのですよォ。値千金ですゥ」

マーズ「反乱軍の……基地……」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/11(土) 01:11:35.37 ID:Qn86HnYM0

 マーズの頭の中で化学反応が生じた。
唐突に踵を返して司令室から出ていこうとする。


ワイマッグ『おい待て、どこへ行く!?』

マーズ「ダース・ネーアを尋問します」

サギ「ヒィィ、やっぱり殺すつもりだァ!」

マーズ「黙れ……!」バッ


 マーズが振り返り、サギのほうへ手をかざす。
見えざる力が彼の首を締め上げる。


サギ「ぐぐっ、く……!?」

マーズ「さっきからぎゃあぎゃあうるさいぞ、帝国保安局のチクり屋風情が……!」グググ

ワイマッグ『ジヒス・マーズ!貴様、いい加減にしろ!』


 チクられるまでもなく見ていた上官がそれを遮った。
マーズはびくりと肩を震わせ、サギはフォース・チョークから解放される。


サギ「ぐがっは、げほっげほっ……!ヒィィ、なんたるDV……!」

ワイマッグ『いいか、そこは貴様の遊び場じゃない!銀河帝国の軍事基地だ!いかな特殊技能者とはいえ、これ以上軍規を乱すようなら今すぐ処罰するぞ!』

マーズ「……あ……ああ……!」


 その叱責は、マーズの動揺した精神に深々と突き刺さった。
ダーク・ジェダイはがくりと膝をついたかと思うと、ワイマッグへ向けて土下座した。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/11(土) 01:13:00.74 ID:Qn86HnYM0

マーズ「申し訳ありません!申し訳ありません!私が間違っていました、私が愚かでした……!」


 ワイマッグとサギ、他の司令部要員たちは揃って肝を潰し、その異様なさまを眺めた。
マーズは何かしらの過去の記憶のフラッシュバックに襲われ、頭を床に擦り付けたままとめどなく涙を流した。


マーズ「悪いところは直します、改めますから、私を捨てないでください……お願いします、お願いします……!」

ワイマッグ『お、おい……お前……どうしたんだ?』

サギ「……あ、あのう、ワイマッグ司令官……実は私、今の、そんなに苦しくはなかったかな、なんてェ……?」

ワイマッグ『あ、そうなのか……?じゃあまあ、ほら、マーズ。そんなに謝ることでもないだろう……』

マーズ「許していただけるんですか……?」

ワイマッグ『ええと……まあ、とりあえず、保留とする』

マーズ「……あ、ありがとうございます……寛大な処分、ありがとうございます!」


 マーズは急に立ち上がり、軍服の袖で涙を拭って、泣き腫らした顔で笑ってみせた。


マーズ「この分は必ずお役に立って見せます。捕虜に反乱軍基地の在処を吐かせることによって!今度こそ!」


 そして高らかにそう宣言し、呆然とする一同を残して速足で司令室を出ていった。
しばしの静寂の後、エージェント・サギがおずおずと口を開く。


サギ「ワ、ワイマッグ司令官殿ォ……彼女が、その、ああなるのは、初めてのことで?」

ワイマッグ『……いや、思えばラグナロクでも……最近は落ち着いていたが、ヴェイダー卿のことがトリガーになって再発したということか……』
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/11(土) 19:18:01.07 ID:uj0D1bFT0
なんか何かにつけてミコアモードを強請ってバブるシンノを想像してわらた
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/12(日) 19:55:42.09 ID:Ccl2OtFM0

 ヤマタイト王宮、最奥の間。
青白い炎の燭台だけが照らす薄暗闇の中、ダース・グレイヴスは円形の祭壇に向かい、その縁に筆で呪文を書き込んでいく。
シンノは傍で見守っていたが、不意に生物質な悪臭を感じる。
シス卿は何かの血液をインク代わりにしているようだった。


グレイヴス「……よし、魔方陣はこんなものでいいだろう」


 グレイヴスは筆と墨壺を傍に置き、あらためて祭壇を眺めた。
中央にはリズマの亡骸が仰向けに横たわり、血で描かれた幾何学模様と呪文がそれを取り囲む。
不気味な黒衣の従者がグレイヴスに近づき、手のひら大の瓶を差し出した。
シンノはその瓶に、何か忌まわしいような感覚を覚える。


シンノ「……マスター、何ですか……その」

グレイヴス「これか?これは『ネガ・クロリアン』だ。伝説のシス卿、ダース・ヴォロスの遺産。フォースの暗黒面の力を、大いに引き出す……」


 シス卿はそう説明しつつ、瓶の中身を少し手に取った。
どす黒い液状のそれを、一息に飲み込む。


グレイヴス「――ウグッ、ガハッ!ゲホゲホッ!」


 とたんに目を剥き、猛烈に咳き込み始めた。
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/12(日) 19:56:13.85 ID:Ccl2OtFM0

シンノ「!?ミ……マ、マスター!大丈夫ですか!?」

グレイヴス「ゴホッ、ガッハ!ペッ!」


 グレイヴスはシンノや従者が駆け寄るのを待たず、黒い液体を吐き出した。
苦渋の表情で口元を拭う。


グレイヴス「チッ、もう体が受け付けんか……シンノ。見ての通り、この薬の過剰なパワーはほとんどの生者には毒となる。しかしそうでない者の体には、ちょうどいいカンフル剤だ」


 シス卿は祭壇に登り、勺のようなもので亡骸の口をこじ開け、その中にネガ・クロリアンを注いだ。
シンノは気が気ではなかったが、彼の師は涼しい顔だ。


グレイヴス「これで準備は完了だ。儀式を始めるぞ」

シンノ「は……はい」


 従者は幽霊のように音もなく退室し、残る二人は並んで祭壇に向かった。
グレイヴスは繊細な装飾が施された黒ローブを纏い、ホロクロンを手にする。


グレイヴス「――『マラコアの星』」


 ホロクロンがぎらりと輝き、魔方陣の一部が青白く燃え上がる。
同時にシンノは何かおぞましい気配を覚えた。
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/12(日) 19:57:20.22 ID:Ccl2OtFM0

グレイヴス「『鉄の果実』。『嗤う骸骨』。『ダソミアの雲』。『聖者の血』。『エグザ・キューンの影』……」


 呪文の一節ごとに火は広がり、やがて魔方陣が炎の軌跡となって亡骸を取り囲んだ。
気配は急速に鮮明になっていく。
地の底から何かがこちらを睨みつけ、向かってくるようなイメージが浮かび上がる。


グレイヴス「開け。世界と生命の狭間。大いなる力の連環の間隙。我は霞み、溶けるものを呼び、引き戻す者」


 超自然の炎はいよいよ激しく燃え上がり、生贄を焼くような冒涜的な光景が展開する。
この段階になって、シンノは気づいた。
彼が恐れている気配が、幼いころから親しんできたものであることに。
マスターから教えられ、自分の道を拓いてきた力が今、反転して顕現しつつある。


シンノ(これが……フォースの、暗黒面……!)

グレイヴス「エクセゴルの匣のもとにあらゆる理はなし。今再び自らを明らかならしめ、呼び覚ませ、フォースの外表を往く者よーー!」


 祭壇から一際猛烈な火炎が噴き上がり、天井を炙った。
唐突に暗闇が訪れる。
シンノはその中で、さっきまで接近していた気配が消失するのを感じた。
やがて目が慣れて、燭台と祭壇の残火だけが照らす薄暗闇が戻る。


シンノ「……マスター、何が……何が起こったんですか?」

グレイヴス「ハアーッ……自分の目で、確かめるがいい……」


 グレイヴスはやや大儀そうにそう言い、ホロクロンを懐に収めた。
シンノは祭壇に近づき、弟子の亡骸を注意深く観察する。
何も変化はない……いや違う。
指先が痙攣し、瞼が微動する。
顔の前に手をかざすと、空気が通っているのが感じられる。
呼吸している。
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/12(日) 19:58:11.34 ID:Ccl2OtFM0

シンノ「……なんということだ、これは……これは!」


 シンノが呻くように言って後ずさったとき、死体が目を開けた。
手をつき、身を起こす。


リズマ「……」

シンノ「……リズマ……リズマなのか」

リズマ「……マ、スター」


 目はうつろで、声色は淡い。
しかしリズマだ。
二度と会うことができないと思っていた彼女が、今、目の前にいる。


シンノ「ああ、リズマ……リズマ!」バッ


 シンノは彼女の膝に取りすがった。
肌越しに、さっきの気配を感じた。
亡骸の中には、それしかなかった。


リズマ「マスター」

シンノ「二度と……もう二度と、いなくならないでくれ……」


 彼女の手が触れるのを感じる。
それはひどく冷たいが、今はそれだけで十分だ。
その他のことは、何も考えたくない。


シンノ「俺は……俺は、弱い。独りは、怖いんだ……」


 どうせ誰も、自分のところに戻ってきはしないのだ。
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/12(日) 19:59:09.55 ID:Ccl2OtFM0

グレイヴス「さあ、シンノ・カノス……私は務めを果たしたぞ。次はお前の番だ」 


 背後からシス卿が進み出る。


リズマ「マスター」

シンノ「ああ、リズマ……わかっている。わかっているとも」


 リズマがぎこちない動作で促す。
シンノは名残惜し気に彼女の下を離れ、グレイヴスに向き直り、跪いた。


シンノ「……マスター……マスター・グレイヴス。私はあなたに、忠誠を誓います」

グレイヴス「うむ、よろしい……暗黒面の神髄には今なお謎が多い。しかし二人で探求すれば、そこの者により鮮やかな命を吹き込む術も見つかろうぞ」


 グレイヴスは自らのライトセーバーを抜き放ち、騎士叙勲式のごとくシンノに差し伸べた。
その刃は血よりなお赤い、闇夜の到来を告げる落陽の色だ。


グレイヴス「お前をヤマタイト・シスの座に迎えよう、我が弟子よ……今この時より軟弱なジェダイの名を捨て、ダース・カイウスと名乗るがいい!」

カイウス「イエス……マイ、マスター……」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/12(日) 20:00:08.41 ID:Ccl2OtFM0

ネーア「へえーっくしょん!」


 物語は同じヤマタイティア星系内、惑星ハクカの帝国軍基地に戻る。
ダース・ネーアは独房に閉じ込められたうえ、磔刑のようなポーズで厳重に拘束を受けていた。


ネーア「ウー、何だか嫌な予感がするぞよ……まるでこの宙域を丸ごと揺るがすレベルの軟弱者が爆誕したような……」

セントリードロイドA『オイ、騒グナ』


 監視役のドロイドがネーアの独白を遮る。
生身のトルーパーでないのはフォースによる精神攻撃への対策と思われた。


セントリードロイドA『捕虜ハ捕虜ラシク従順ニ振ル舞ウノガ賢明ダゾ』

セントリードロイドB『ソウダ。帝国軍ハ反逆者ニ慈悲ナド持タナイ』

ネーア「へえっ、人形風情が一丁前な口利きおって!お前らみたいなブリキ野郎の相手はクマモッテでもう十分ぞよ!」


 その時、突如独房の扉が開いた。
姿を現したのは、ネーアが見知ったダーク・ジェダイだ。


マーズ「……ダース・ネーア……ずいぶん威厳のある姿だな」

ネーア「チェッ、誰かと思えばヴェイダーの飼い犬の土下座女か」


 たちまちマーズのこめかみに青筋が浮く。
しかしこのとき彼女は感情を抑え、尋問する立場にふさわしい態度を保った。
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/12(日) 20:02:28.42 ID:Ccl2OtFM0

マーズ「……フン、ラグナロクの時とは立場が逆だぞ。懇願するのはお前の方だ」

ネーア「そんなことより、なんで妾はそなたらに捕まっとるんじゃ?ダース・グレ……もとい、ミコア姫のシャトルに乗ってたはずなんじゃが」

マーズ「フフッ、クックック……そんなこと、私がわざわざ教えてやるとでも……」

セントリードロイドA『第一艦隊ノ壊滅ニ際シテ非常線ヲ展開シタトコロ、みこあ姫ノしゃとるガ引ッカカッタノダ。検問自体ハ問題ナカッタガ、離艦ニアタッテオ前ヲ――』

マーズ「あああああ!貴様!」ビシューンッ ズバッ

セントリードロイドA『ピガーッ!?』ガシャンッ


 失言を犯したドロイドはジット・セーバーで切り裂かれ、スクラップになって床に転がった。
ネーアはマーズが以前にもまして精神的に不安定になっていることを感じ取りつつ、冷静に状況を分析する。
どうやら自分は、ミコア姫のシャトルが帝国軍の艦艇に収容されて検問を受けた際、着陸脚から振り落とされたらしい。
しかしその際トドメを刺されなかったところを見ると、グレイヴスは自分のことに気づいていないようだ。


ネーア「へっへっへ……まあ何にせよミコア姫が無事でよかったのう。あれが今後もそなたらにとって無害な傀儡かどうかは保証しかねるが」

マーズ「口の減らない奴め……!」


 ダーク・ジェダイは自分のセーバーを収め、別のものを取り出した。
ネーアのライトセーバーである。
赤い刃を出力し、シス卿の喉元に突きつける。


マーズ「見ろ、これを。二度とお前の手の内には戻らんぞ……ヴェイダー卿に縊り殺されるまでな!」

ネーア「……ふ、ふん、そんなものはただの道具じゃ……ジェダイでもあるまいし特別な感慨なぞ抱かんわ。何ならそなたにやろうか?誰もが羨むファンアイテムじゃぞ」

マーズ「ぐぐ……!ええい、お喋りはもう沢山だ!」
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/12(日) 20:04:58.24 ID:Ccl2OtFM0

 マーズはライトセーバーを投げ捨て、空の手をネーアの眼前にかざした。
たちまちダークサイドのフォースの力場が生じ、シス卿の脳を締め上げる。


ネーア「ぐがっ……そ、そなた……!」

マーズ「見せろ……見せろ、私に……仲間の居場所を。反乱軍の基地の在処を……!」

ネーア「ぐ、ぎぎぎ……!言うわけ、なかろうが……!」

マーズ「ククク……辛いだろう、苦しいだろう。だが誰も助けに来はしないぞ、お前は独りだ……絶望し、屈服しろ……!」


 ネーアは苦しみながらも、シスの技術で思考を読み取られることを防いだ。
さらには反撃に転じる。
フォースの流れを遡り、ダーク・ジェダイの精神を見通しにかかったのだ。


ネーア「……見える、見えるぞよ……そなたこそ、独りぼっちじゃ」

マーズ「!?何を言っている、貴様……!」


 マーズは動揺しつつも、フォースをより強く行使してネーアを痛めつけた。
シス卿はそれに抗い、ダーク・ジェダイの目を見返す。
二人が汗さえ流して得体の知れない戦いを繰り広げるさまを、残る一体のセントリー・ドロイドは怪訝そうに眺めた。
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/12(日) 20:06:15.28 ID:Ccl2OtFM0

ネーア「フフッ、クックック……そうか、今度はワイマッグに服従したか……だがまあ、利用されているだけじゃろうな……」

マーズ「バカな、何を根拠に……!ふざけた妄言を!」

ネーア「妄言なものか、今までもそうだったじゃろうが……そなたに愛を説いたものは、いざもろとも危機に陥れば、ことごとくそなたを見捨てた」

マーズ「違う、母さんは、父さんは……マスターは、私のことを思って……!」

ネーア「そなたもちゃんとわかっておる。だから妾から基地の在処を聞き出して手柄を立て、ヴェイダーの罰から逃れようとしている」

マーズ「違う、違う……私は……!」

ネーア「いいや違わん、そなたは独りじゃ。どれだけ暗闇の中に迷おうと、誰も!そなたを!助けない!」

マーズ「ああ、うう……うああああ!」


 フォース比べは暗黒卿に軍配が上がった。
ダーク・ジェダイはすっかり恐慌に陥り、わけのわからないことを喚きながら独房から逃げ出していった。


ネーア「ふーう、久々に悪いことをしたぞよ。暗黒卿冥利に尽きるが、ちと疲れたな……」


 残されたネーアは満足げに一息吐いたあと、足元の床にあるものを見た。
マーズが投げ捨ていった、自分のライトセーバーだ。


セントリードロイドB『……?』


 ドロイドはネーアの視線を追って落とし物を発見し、拾い上げる。
その瞬間、シス卿はフォースでライトセーバーのスイッチを入れた。
光の刃がドロイドの中枢部を貫く。


ネーア「しかし、もうひと仕事じゃ」
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/12(日) 20:59:44.13 ID:CsGtRT9b0
ざる警備
またやらかしてるという
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/15(水) 23:26:14.42 ID:X0/YIPRT0

サギ「決まっています、分離主義者の新兵器ですゥ!自分の惑星を爆破して第一艦隊を巻き込んだのですよォ!」

ワイマッグ『しかし、今の奴らが自分から本拠地を犠牲にする意味合いは薄いんじゃないか?』


 司令室ではサギとワイマッグが通信機越しに議論を重ねていた。
ワイマッグの艦隊はいまだに第一艦隊壊滅の真相を掴みかねているらしい。


サギ「カルトなりに何か目的があったのでしょォ。とにかく、惑星クマモッテの爆発は自然災害などでは断じてありません!」

ワイマッグ『それは明らかだが……私は第三勢力の介入を疑っているんだ』

サギ「帝国でも分離主義者でもない何者かが、一網打尽を狙って惑星クマモッテを爆発させたとォ……?」

ワイマッグ『ああ。あくまで可能性の話だが――』

マーズ「ワイマッグ司令官……!」ダダッ


 そこへダーク・ジェダイが戻ってきた。
司令室に緊張が走る。


ワイマッグ『ど……どうしたマーズ。もう反乱軍基地の場所を聞き出したのか?』

マーズ「いいえ……いいえ司令官。奴のフォースは強大です。私などではとても……その思考を読むことはできない……」

ワイマッグ『それほどまでにか!?』

マーズ「やはり下手なことをせずヴェイダー卿に任せるのが一番……」

サギ「……?あのォ、マーズ補佐官殿……」

マーズ「何だ」

サギ「さっきは、ライトセーバーを二本お持ちではありませんでしたかァ……?」


 サギはひょろっとした手でマーズの腰を指差した。
今、ベルトのストラップには、ジット・セーバーだけが吊り下げられている。
マーズは目を見開く。
そしてパッと踵を返し、走り出した。
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/15(水) 23:27:01.94 ID:X0/YIPRT0

トルーパーA「おい聞いたかよ、第一艦隊のこと。惑星の爆発に巻き込まれて全滅したらしいぜ」スタスタ

トルーパーB「ああ、スターデストロイヤー四隻が修復不能の被害ときた。とんだスキャンダルだぜ」スタスタ


 ハクカ基地の倉庫区画にて、二人のストームトルーパーが巡回しつつ噂話に興じる。
近くの建物の陰から、その様子を伺う人影がある。


ネーア「……」コソッ


 ダース・ネーアだ。
トルーパーたちはヘルメットの視界の悪さもあって彼女に気づくことなく通り過ぎていく。


トルーパーA「この宙域の任務は気楽だが、こういうケースではさすがに緘口令が厳しい」スタスタ

トルーパーB「ラグナロクの時以来か。まあ総督が殺され、尋問官も重傷を負ったからな」スタスタ

トルーパーA「またワイマッグ体制に戻るのかどうか……」スタスタ

ネーア(クマモッテが爆発か……帝国も分離主義者に一杯食わされたようじゃのう)コソコソ


 シス卿はメイルーラン・フルーツのコンテナの陰を伝い、人目と監視カメラを避けて移動する。
倉庫区画を抜け、隣にある巨大な建物に裏口から潜り込む。


ネーア(……さて、ここに来るのは二度目じゃ。勝手はわかっておるぞ……)


 そこに収納されているのは、TIEファイターや輸送シャトルといった航空機。
格納庫である。
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/15(水) 23:30:08.99 ID:X0/YIPRT0

マーズ「――ダメだ」


 独房はもぬけの空だった。
見張りのドロイドは二体ともスクラップになっている。
拘束器具も、ドアロックも、ライトセーバーで破壊されていた。


マーズ「ダメだ、ダメだ、ダメだ……!」


 自分が置き忘れたライトセーバーでだ。
自分の失敗だ。
彼女の頭の中を最悪の想定が支配し、精神ストレスが極限に達する。


トルーパーA「おい大変だ、監房区画の監視係が殺されてる!」ドタドタ

トルーパーB「何だと!?また反乱軍が入り込んだのか!?」


 二人のストームトルーパーが廊下を通りかかった、その時。
独房の中から何かを猛烈に叩きつけるような音が響いた。
一度ではなく二度、三度と続き、それに伴って叫び声。


マーズ「衛兵!衛兵――ッ!」ブオンブオン ガチャンガチャン


 ダーク・ジェダイはジット・セーバーを抜き、独房の設備や壁を滅茶苦茶に破壊していた。
トルーパーたちが竦み、引き返そうとしたとき、基地内全域に警報が鳴り響いた。


『現在、何者かが発着場からTIEファイターを強奪し北北西へ逃走中!防空部隊スクランブル!』


 そのとたん、マーズはぴたりと破壊を止め、独房を飛び出した。


マーズ「どけえっ!」ドカッ

トルーパーA「うわっ!?」ズデッ

トルーパーB「だあっ!」ズデッ


 そしてトルーパーたちを押しのけて疾走する。
自らも発着場を目指して。
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/15(水) 23:30:50.34 ID:X0/YIPRT0

サギ「ヒィィーッ!まさか、よりによってあの重要な捕虜が……!」


 視点は再び司令室に戻る。
サギはヴェイダーがネーア脱走に激怒するさまを想像し、身震いして、レーダー士官の背中につかみかかった。


サギ「取り逃がしたら私の首も危ういぞォ!奴のファイターの追跡はできてるんだろうなァ!」

士官A「大丈夫です!トラッキング装置は破壊されましたが、対空レーダーで捕捉できています!」

サギ「航空管制!追跡部隊はまだかァ!」

士官B「今準備中です!それと、マーズ補佐官殿が出撃なさるらしく……」

サギ「何だとォ!?」


 サギが驚愕して大窓から飛行場を見やると、狙いすましたようなタイミングで一機のTIEファイターが離陸。
猛然たる勢いで強奪された機体の後を追った。


士官B「今出撃なさいました!」

サギ「見りゃわかるわァ!――ワイマッグ司令官、私も航空機で追跡を……!」

ワイマッグ『いや、待て。何か臭う』


 立体映像のワイマッグは、顎に手を当てて考え込む。


ワイマッグ『これほど何の工夫も無く逃げたところで、すぐに撃ち落とされるのは敵もわかっているはず……あれは自動操縦の囮の可能性がある』

サギ「囮!?バカな、ではダース・ネーアは本当はどこから脱出を……」

ワイマッグ『エージェント・サギ、君は捕虜が地上、もしくは地下から逃走したと仮定して捜索してくれ。私もすぐそちらへ戻る』

サギ「ヒヒィ、承知いたしましたァ!」

ワイマッグ『いいか、敵はフォース使いだ。もし奴を発見したらマーズを呼び戻し、協力して事に当たれ。こうなれば最悪の場合殺害してもかまわん、逃げられるよりよほどましだ!』
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 02:52:24.79 ID:pBXRg8gE0

ネーア「ぶっはあああ!」


 ネーアはマンホールから暗い路地の中へ這い出し、そのまま地面に突っ伏した。
彼女はTIEファイターを自動操縦で飛ばして囮とし、自分は下水道からハクカ基地を脱出したのだった。


ネーア(ああもう、最近こんなのばっかりじゃ。一生分下水道歩いたぞよ……ええい、なにくそ!)


 自分を強いて立ち上がり、路地の外を見回す。
外は夜空の下、ネオンのきらめく繁華街だ。
ヒューマノイドとエイリアンの入り混じった雑多な人ごみの向こうに、二人のストームトルーパーの姿がある。
ネーアの姿を映した3D映像を手に、通行人に聞き込みを行っているようだ。


ネーア(地上にも追手が……囮の効きがいまいちよくないのう。反乱軍に迎えに来てもらう猶予はなさそうじゃ)


 シス卿は自力での脱出を決意し、路地伝いに移動を開始した。
どこかで宇宙船を調達せねばならない……それも帝国軍の追手を振り切れるような、高性能なものだ。
ネーアはそういった船を所有している人々を知っている。
シンノがそうだったからだ。


ネーア(密輸業者……どういうところにいるかは、察しがつくぞよ)


 彼らを雇う金はない。
後をつけて船を見つけたら、ライトセーバーで奪うのみだ。
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 02:52:55.39 ID:pBXRg8gE0

クネー「邪魔する」ギイッ

店主「おお、クネー!久しぶりだな!」


 女賞金稼ぎは店内を見回した。
バカ騒ぎするチンピラ。
それにまけじと金管を噴き散らすブラスバンド。
隅のブース席で後ろめたい商談に励む密輸業者。
ここはハクカでもっともいかがわしい酒場だ。


クネー「相変わらずだな、この店は」

店主「それがウリだからな。ケッセルでいいか?」

クネー「ロックでな」

ナイン「×××××」ギイッ

店主「ようナイン・ナン!トルーパーから逃げてきたか、ええ?」

ナイン「××××?」

店主「基地の監獄から脱走者があったらしいんだ。女のガキを探してるみてえだぜ」

クネー「女のガキ……」


 クネーの脳裏にネーアの姿が浮かぶ。
彼女ならば反乱軍の情報も持っているかもしれない。
帝国軍が捕虜にする価値がある女児といえばあれくらいではないのか。
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