【SW】ジェダイ「私を…弟子に、してください…」【オリキャラ】

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229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/25(火) 23:56:09.24 ID:WzysAjBa0

 シンノがカスタムを重ねたWウィングの全速力は、旧式戦艦の照準をコンマ数秒上回っていた。
電磁パルスのつるべ打ちを紙一重で避け、敵艦の懐に飛び込む。
スター・デストロイヤーの死角は至近距離だ。
クネーは機体をトップスピードのまま敵艦スレスレの位置にまで沈み込ませ、艦橋のすぐ横をすり抜ける。


クネー「――!」

ワイマッグ「……!」


 その一瞬、女用心棒と若き司令官の視線が交錯する。
Wウィングは一気に封鎖線の外側へと駆け抜けた。
視界が一気に開ける。


R3-C3『ポポピーポ!ピポポ!』


 R3が電子言語で喚き、急き立てる。
ハイパースペース・ジャンプの軌道計算が終了したのだ。


クネー「行くぞ!」


 女用心棒がジャンプ開始のレバーに手を伸ばす。


サギ「させるかァ!」ブンッ

イシュメール「ぐおっ!?」ドガッ


 そのとき、エージェント・サギが機内の後方座席から躍り出た。
隠れ家の壁に激突したとき拘束具が外れたものと見えて、両手が自由になっている。
整備用レンチを振るい、イシュメールを殴り倒す。
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/25(火) 23:57:18.59 ID:WzysAjBa0

サギ「貴様らごとき!」ゲシッ

ネーア「ぎゃふ!?」ドガッ

サギ「逃がさいでかァ!」ブンッ

クネー「ぐおおっ、貴様……!」ガシッ


 サギはネーアを蹴飛ばし、クネーにもレンチを振るって襲いかかった。
女用心棒は身を捻ってこれを掴み取るが、この体勢では力比べにはあまりにも不利だ。


サギ「小癪なァ!」グググ

クネー「くっ……!R3、ジャンプだ!お前がハイパースペース・ドライブを起動しろっ!」グググ

R3-C3『ポポピーポ!』


 彼女の指図でアストロメク・ドロイドが操作の代行を図る。
しかしその瞬間、背後の敵艦が発射したイオン砲が機体上部を掠めた。


R3-C3『プアア、ア!』バチバチ


 R3は主要回路がショートし、光速航行への切り替えを果たせない。
スター・デストロイヤーがゆっくりとこちらに向き直る。
TIEファイター部隊もその後ろから追いすがってくる。
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/25(火) 23:57:59.67 ID:WzysAjBa0

クネー「R3!?どうした!?」グググ

サギ「ヒハハハハ!万事休すといったところかァ!」グイッ

クネー「うおっ!?」パッ


 エージェント・サギがついにレンチをもぎ取り、大きく振りかぶる。
クネーの頭蓋を一撃で砕くための予備動作だ。


サギ「死ねい!」グワッ

ネーア「イシュメール!掴まれい!」


 その攻撃の直前、シス卿は警告の叫びとともに、近くにあったボタンを叩くようにして押した。
機体後部のランプドアが開く。
真空の宇宙空間が、機内の空気を猛烈な勢いで吸い出す。


クネー「何!?」

イシュメール「うおおっ!?」ガシッ


 クネーは操縦席にシートベルトで固定されている。
ネーアとイシュメールも近くのシートに掴まった。
しかしサギは凶器を握っていたばかりに、適切な手がかりを得られなかった。


サギ「ヒハァーッ!?」ゴオオッ


 ISBのエージェントは機内を吹っ飛び、転がって、後方の宇宙空間へ放逐された。


クネー「行けーッ!」グイッ


 女賞金稼ぎは今度こそレバーを引く。
風防の外で星が線に変わり、Wウィングは超空間へと突入した。
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/25(火) 23:58:33.20 ID:WzysAjBa0

 ……「ヘファイストス」艦底部、ドッキングベイ。


ワイマッグ「……」

艦長「……」


 提督と艦長はエレベーターでそのフロアに到着するなり、揃って上を見上げた。
天井に設けられたトラクター・ビーム放射器が、すぐ下の空中に獲物を吊り下げている。
Wウィングではない。


サギ「……ヒ、ヒヒヒ……お久しぶりですゥ」

ワイマッグ「……」

艦長「……」

ワイマッグ「艦長」

艦長「はい」

ワイマッグ「あれを宇宙に戻せ」

サギ「ヒィィ!?」
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/26(水) 02:54:05.12 ID:9y+IsUBR0
宇宙に投げ出されてもピンピン
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/06(月) 17:27:43.67 ID:6dzr4wPW0

カイウス「ぶはあっ!」ダッ


 ダース・カイウスはガス室から飛び出すなりくずおれて、床に四つん這いになった。
頭痛がする……動悸もだ。
目がチカチカして視界が定まらない。
ひたすら症状に耐えていると、誰かの手が肩に触れるのを感じた。
かろうじて顔を上げる。


リズマ「……」

カイウス「……リ、リズマ……」


 その手は冷たく、表情も凍りついているかのようだ。
俺は暗黒面に墜ちてでも彼女と一緒にいることを選んだ。
しかしその時思い描いた景色は、理想は、果たしてこんなものだったか。


グレイヴス「軟弱者めが。モラバンド苔の実験はヴァッタ・ガスの中でしかできんのだぞ」スタスタ


 ダース・グレイヴスがガス室から姿を現す。
さっきまで弟子と同じ環境に置かれていたはずだが、顔色一つ変えず平然としていた。


カイウス「も、申し訳ありません、マスター……しかしあれは、毒ガスでは……?」

グレイヴス「呆れ果てた不覚悟ぶりだな……こうなれば学科は後回しだ。基礎だけでもと思っていたが」


 マスター・シスは大儀そうに溜息を吐き、方針の転換を告げる。


グレイヴス「明日から戦闘訓練を始める。教義のために手を汚せば覚悟も決まろう」

カイウス「一体……何をせよと、仰るのです?」

グレイヴス「殺すのだ。マクシャリス・セレノーラント・ドゥークーを」


 王女の美貌が怒りに醜く歪む。


グレイヴス「奴は下郎の分際でこの私を謀り、帝国を釣る餌に利用した。ヤマタイト・シスへの大逆だ!」
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/06(月) 17:28:24.71 ID:6dzr4wPW0

 一方、惑星タンガシム……
反乱軍基地司令部では。


ネーア「全軍出動ぞよ!」バンッ


 シス卿は踏み台に登り、戦略テーブルを両手で叩いた。
惑星ヤマタイティアの立体地図を睨み、その一点を指し示す。


ネーア「ここじゃ!ここにシンノが囚われておる。一刻も早く救出すべし!」

中隊長1「救出ったってなあ、ネーアちゃん……」

中隊長2「ヤマタイティアは帝国軍の本拠地だぜ?」


 反乱軍の士官たちが怪訝そうな顔で口を出す。


中隊長1「しかもちょうど指差してるそこはど真ん中もど真ん中、王宮の最深部だ」

中隊長2「今の俺たちの十倍の戦力があっても辿り着けるたあ思えないね」

ネーア「何を弱気な!ハクカからこっち、あいつがどれだけ反乱軍に貢献したと!」

中隊長1「そりゃあ俺たちだって、助けたい気持ちはやまやまだけどよ……船も兵隊も足りねえし」

中隊長2「これじゃまるっきり死にに行くようなもんだ。ジェダイ様もそれは望まねえだろう」


 ネーアは歯噛みした。
弟子の居場所はフォースで感知できるものの、救出はあまりにも困難だ。
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/06(月) 17:28:55.59 ID:6dzr4wPW0

中隊長1「それよりネーアちゃん、なんでシンノがヤマアイティアにいるってわかるんだよ?」

ネーア「うるさいな!フォースじゃ!」

中隊長1「おっと、そうか。ネーアちゃんはフォースを感じられるんだったな」

中隊長2「しかし帝国にもフォース使いはいるだろう。奴らがニセ情報を撒いてるセンはねえのか?」

中隊長1「どうやって撒くんだ?」

中隊長2「そりゃお前……念力とか、謎めいた儀式とかだよ」

ネーア「ええい、適当なこと言いおって!」

イシュメール「その情報は信頼してもらっていいぜ」


 密輸業者が司令室の隅から口を挟む。
隣のクネーともども、包帯が目立つ痛々しい姿だ。


イシュメール「俺たちの筋の情報で裏が取れたからな。ネーアの感覚は正確さ」

中隊長1「フン、密輸業者のコネか?」

イシュメール「あんたたちの組織より歴史は長い界隈だぜ」


 そう言って、ネーアのほうへウィンクして寄越す。
そんな情報収集をする時間はなかったはずだから、ハッタリであろう。
彼女がシスの暗黒卿だという秘密を守りつつ、その感覚の信頼性をフォローした形だ。
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/06(月) 17:29:34.40 ID:6dzr4wPW0

バヤット「……その情報が真実だとしても、現時点で部隊を動員することはできない」


 今までむっつり黙り込んでいた司令官が口を開く。
何やら渋い表情をしているようだが、それ以上モン・カラマリの感情の機微を見て取ることは難しかった。


ネーア「ぐむっ……バ、バヤット……!」

中隊長1「……そういえば、ベース1に援軍を頼むってのはできないのか?」

中隊長2「ロザルの失敗の後だからな。モン・モスマを説き伏せるのは無理だろうよ」

ネーア「この腰抜けどもが!無理だの不可能だの、そればっかりか!」

クネー「その辺にしておけ」


 今度は賞金稼ぎが口を出した。


クネー「そいつらも腰抜けなりに思うところはあるだろうよ。苦渋の決断をほじくり返してやるな」

ネーア「しかし、シンノは……!」

クネー「皆が皆ジェダイやシスのように強いわけじゃない。時には大を生かすために小を殺すことも必要になる」

ネーア「それは帝国軍の理屈ぞよ!」


 司令室を重苦しい沈黙が支配する。
ネーアは舌打ちして、ローブをひらめかせて部屋を走り出た。
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/06(月) 17:30:07.85 ID:6dzr4wPW0

イシュメール「……まあ、あいつもいっぱいいっぱいなんだろうよ。ミコア姫の本性に気づけなかった負い目があるからな」

クネー「フォースは使えても、指揮官としての能力は乏しいらしい」

バヤット「……賞金稼ぎ、貴様が非情な切り捨てを支持するとは意外だな」


 バヤットは半ば皮肉めいた形でクネーに水を向ける。
以前尋問室で面会したときの言動を示唆していることは明らかだ。


クネー「ケース・バイ・ケースだ。今は指揮のセンスを発揮すべきときじゃない。無難に行動して準備を整えるべき状況とみた」

バヤット「何の準備だ?ヤマタイティアの堅陣に強行突入する準備か」

クネー「グレイヴスは単身でこの反乱軍に潜入していた。肝心なところでは部下を信用しない、古臭い現場主義者だ」

イシュメール「……」


 イシュメールはザイン・ザ・ハットの軍団からの逃避行、ミコアの言動を回顧する。
シンノの勧誘は、テイティスのような手駒にやらせても構わない仕事ではなかったか。
自ら危険を冒して単身で潜入してきたのは、シスの神秘的な教義か何かに強制されてのことなのだろうか?


クネー「奴は必ず動く。クマモッテの誤算を清算するため、自分からヤマタイティアを出てくる」

バヤット「……それを叩くための準備か。そんな都合のいいチャンスが……」

クネー「グレイヴスは私もろともマクシャリスに捕まって以来、計画を修正するのに多大な労力を払った。分離主義者を放置するとは思えん」

イシュメール「……?おい、待て。グレイヴスを倒すのはいいが、シンノはどうなる?」

クネー「知るか!私はクマモッテでテイティスに裏切られた借りを返せればそれでいい。ヤマタイトのシスを根絶やしにしてやる」

イシュメール「ええっ!?おいおい、あいつは一応俺の恩人なんだぜ!?」
 

 クネーはイシュメールを無視して踵を返した。
バヤットを一瞥し、


クネー「貴様の指揮官としての能力も、その時に問われるのかもしれんな」


 それだけ言い残して司令室を出た。


バヤット「……」


 新司令官は部下たちの視線を感じつつ、一人沈思黙考する。
こんな時、シカーグ将軍ならどうしたのだろうか。
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/16(木) 16:56:19.18 ID:9N2bd6Re0

ネーア「……」


 シスの暗黒卿は一人、暗い部屋でベッドに座り込んでいた。
布団を掻き合わせ、窓を見やると、外ではすでに日が沈んでいる。
青灰色の空に、雲の影が恐ろし気に浮かぶ。
ネーアは外気の寒さを感じ取ったかのように身震いした。


ネーア(どうして……どうしてこんなことになったのじゃ)


 彼女がシスとなったこと、五百年を過ごしたこと。
シンノと出会ったこと。
グレイヴスはその全てをまんまと利用した。
ネーアの行動と、敵の正体に気づくことのできなかった不注意が、リズマの死とシンノの堕落を招いた。
贖罪の可能性も、ついさっき完全に潰えたところだ。


ネーア(マスター・ヨーダ、妾は……私は……今まで何のために……)


 扉が開き、光がさっと差し込んだ。
ネーアは目を細めてそちらを見やる。
ユスカ・ショーニンが立っていた。
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/16(木) 16:56:54.64 ID:9N2bd6Re0

ユスカ「……ネーアちゃん」

ネーア「……ユ、ユスカ」

ユスカ「……よくここまで帰ってきたね。よく頑張った……だからこそ、さ」


 女パイロットはネーアの横に腰かけ、その肩を抱いた。


ユスカ「ここで諦めたら、勿体ないでしょ」

ネーア「……しかし、そなたの妹も……リズマも死んだのじゃぞ」

ユスカ「知ってる」

ネーア「……バヤットは動かぬ。妾たちだけでは」

ユスカ「私たちしかいないなら、私たちだけでやればいいんだよ」


 ユスカの目は底知れぬ悲しみを含みながらも、ブレることなく確かな意思をたたえている。
ネーアはその奥に彼女の妹の面影を見た。


ユスカ「シンノを助けに行こう」
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/16(木) 16:57:34.66 ID:9N2bd6Re0

 ――2週間後。
惑星ベップーの上空には、依然として分離主義艦隊が陣取っていた。
その旗艦、ヴェンジェンスの艦橋。


マクシャリス「構わん。『収容よろしい』と返答しろ」


 マクシャリスはひときわ高い位置の指揮官席に座り、フロアで計器に向かう部下たちを見渡していた。


スターバル「本当によろしいのですか?あれはまず間違いなく、バスタ・ガスターかアジアス・ジ・アーチですぞ」


 カリーシュの将軍は怪訝そうな顔でそれを見上げた。
彼のコンソールと壁面の大モニターには、シーシピード級シャトルの姿が大写しになっている。
この船は彼らの艦隊に接近し、旧独立星系連合の高官の識別信号を発信。
戦艦ヴェンジェンスへの収容を求めていた。


スターバル「クマモッテを脱出していたのは計算外ですが、再集結地点を嗅ぎつけてノコノコとやってきたのは好都合です。この際艦砲で……」

マクシャリス「いくら奴らが愚かでも、いい加減切り捨てられたのではないかと疑っていそうなものだ。本人が乗っているかどうか怪しいぞ」

スターバル「では通信で問いただせば……」

マクシャリス「バカな。こちらが警戒していると教えてやるようなものだ」


 スターバルは唸った。
ガスターやアーチがこちらの裏切りを確信し、帝国軍のもとに駆け込めば、多くの機密情報が帝国の手に渡る。
彼ら本人を確実に捕らえ、始末せねばならない。


マクシャリス「シャトルを収容し、乗員を拘束しろ。本人が乗っておらずとも手がかりは掴めよう……三度は言わせるなよ?」ジロッ

スターバル「……!はっ!私自身の手で、確実に遂行して参ります!」


 スターバルは速足で司令室を出て、ドッキングベイへ向かう。
主君の眼光の冷たさを思い出し、ぶるりと身震いした。
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/16(木) 16:58:14.29 ID:9N2bd6Re0

 壁面の機密窓から光が差し込む。
戦艦ヴェンジェンスの艦内照明だ。
シスたちの船は無事、標的の懐に入り込んだのだ。


グレイヴス「マクシャリスめ、とことん浅はかだな。なまじ人を謀ろうとするのが実に救いがたい」


 マスター・シスはソファに体を預けつつ、目論見の成功を悟ってほくそ笑んだ。
手元のグラスを窓にかざし、薄明かりの溶けた果実酒を一息に飲み干す。


グレイヴス「おとなしく傀儡に甘んじていればあと十年は使ってやったものを……なあ、カイウス」

カイウス「……はっ」


 アプレンティスはその後ろに跪いていた。
黒色のローブとプロテクターに身を包み、のっぺりした仮面で相貌を隠している。
そして、その横にもう一人。
リズマ・ショーニンが簡素な白装束を着せられ、うっそりと立っていた。


リズマ「……」

グレイヴス「こいつも奴のところに連れていくぞ。その方が貴様も張り合いがあろう?」

カイウス「はっ」

グレイヴス「……まあ、見ての通り、今のこいつに戦闘力はまったくない。せいぜいお前が体を張って守ってやることだ」

カイウス「はっ」

グレイヴス「……」
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/16(木) 16:58:42.23 ID:9N2bd6Re0

 グレイヴスが眉を上げるのと同時に、キャビンが一際大きく振動した。
シャトルが戦艦内のドッキングベイに着床したのだ。


カイウス「……先に行って、雑魚を血祭りに挙げて参ります」

グレイヴス「……フン。行け」


 カイウスは静かに立ち上がり、キャビンを出た。
やがてランプドアの解放音が響き、それに続いて船外で猛烈な戦闘音が巻き起こる。


グレイヴス「少しシゴきすぎたかな。人形は二つもいらんのだが」


 マスター・シスは無関心気に鼻を鳴らし、リズマを見やった。


グレイヴス「まあ、この仕事が終わればお前は用済みだ。それまでせいぜいマスターの活躍を見てやるといい」

リズマ「……」


 グレイヴスは冷笑とともに腰を上げ、キャビンを出る。
ジェダイ・アプレンティスの亡骸は、微かな間のあとそれに続く。
船外はすでに静かになっていた。
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/17(金) 01:43:06.95 ID:28G3j0dgO
おつ
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/30(木) 16:40:08.67 ID:Pn+Yn9e80

カイウス「フンッ!」ブンッ

シュバルゴン「グワーッ!」ガシャンッ


 シュバルゴンは鳩尾に強烈な蹴りを受け、レールジェットの上に吹き飛ばされる。
カイウスがそれを追って飛び乗り、コンソールを操作した。
ガコン!
レールジェットが勢いよく発進する。
戦艦ヴェンジェンスの艦内、巨大な輸送トンネルの景色が高速で流れていく。


シュバルゴン「おのれ、シスの暗黒卿……時代錯誤のウィッチどもが!」ガチャッ


 分離主義のサイボーグ戦士は素早く姿勢を立て直し、エレクトロ・ハルバードを構えた。


シュバルゴン「我々はもはや貴様らの奴隷ではないぞ。今度は貴様らが地面に這いつくばり、マクシャリス様の秩序を畏れるがいい!」

カイウス「……」ブウンッ

シュバルゴン「ウオオッ!?」バチッ


 対するシスは無言のまま、赤い刃のライトセーバーを振るって斬りかかる。
数合打ち合うものの、実力差は歴然だった。
シュバルゴンはたちまち車両の隅、鉄柵の際まで追い詰められる。
背後は巨大な虚空、その下はベルトサンダーじみた速度で行き過ぎる金属の床である。
しかしダース・カイウスが放とうとしたトドメの一撃は、斜め上方からのブラスター弾によって阻まれた。


カイウス「!」サッ


 立て続けに降り注ぐ光弾のシャワー。
シスは飛び退き、ムーンサルトを繰り出してこれを回避した。
見上げると、五機のスーパーバトルドロイド・ロケットトルーパーが上空に追従してきている。
白いボディに青い星の識別塗装がギラリと輝いた。
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/30(木) 16:40:53.49 ID:Pn+Yn9e80

シュバルゴン「フハ、ハハハ!バカめ、一対一で戦わえるとでも思ったか!」ゴオッ


 シュバルゴンは不屈の闘志とともにジェットパックを噴射し、僚機に合流。
胸部のミサイルポッドを展開した。
ロケットトルーパーたちも両腕の三連装ブラスターを照準し、最終攻撃をスタンバイする。


シュバルゴン「我々の本拠に乗り込んだ報いよ!なぶり殺しにしてやーー」

カイウス「ハアッ!」ボボウッ!


 シスは両手に青白い炎の塊を作り出し、頭上の敵にめがけ投じた。
炎は炸裂し、分離主義の戦士たちを焼き尽くす。


シュバルゴン「ぐわあああ!?」

ロケットトルーパー『『『『『ピガーッ!?』』』』』


 サイボーグとドロイドは飛行機能に支障をきたし、もがきながら落下していった。
数秒の後、はるか後方から爆発音と破砕音が連なって聞こえた。
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/30(木) 16:41:56.21 ID:Pn+Yn9e80

カイウス「……」


 カイウスの表情は仮面に隠されて見えなかった。
やがてレールジェットは艦橋基部のステーションに到着する。
シスが車両から飛び降りると、四機のドロイデカが物陰から転がり出てそれを包囲した。
カイウスは再び光刃を構えて警戒する。
しかし敵はブラスターも発射しないまま、ことごとく内側から炎を噴き出して大破した。


グレイヴス「ずいぶん遠回りしたようだな?」


 残骸の向こうから、マスター・シスが冷笑を浮かべつつ姿を現した。
いまだ体に攻撃的なフォースの残滓を漂わせている。
背後には、リズマも無事な姿で付き従っていた。


カイウス「マスター……」

グレイヴス「急ぐぞ。マクシャリスの奴も待ちかねていることだろう」
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/30(木) 16:42:39.54 ID:Pn+Yn9e80

b1ドロイドA『第三警備中隊、全滅!』

b1ドロイドB『X−9通路、突破サレマシタ!』

b1ドロイドC『隣接区画ニべーくらいとヲ注入シロ!』


 戦艦ヴェンジェンスの艦橋は修羅場となっていた。
ドッキングベイから侵入した敵は、たった二人で艦内の警備を突破しつつある。


戦術ドロイド『……敵ハ明ラカニ、コノ艦橋ヲ目指シテイル』


 艦長を務める戦術ドロイドは敵の狙いを正確に見抜いた。
背後の主君を顧みる。


戦術ドロイド『畏レナガラ、閣下……』

マクシャリス「この艦の戦力では奴らを止めることができないというのか」

戦術ドロイド『ハイ。他艦ヘ陸戦隊ノ増援要請ヲ出シテハイカガデショウ』

マクシャリス「バカな。クマモッテを捨てたこのタイミングで、部下に弱みを見せるなど」

戦術ドロイド『デハ、艦橋ノ脱出機構ヲ使ッテ……』

マクシャリス「同じことだ。第一、間に合わん」


 マクシャリスは屈辱と憎悪に塗れた笑みを浮かべる。
それと同時に、彼の背後、入口の扉の向こうで一際大きな破砕音が響いた。
警備のドロイドたちが司令室を走り、入口に銃を向ける。
青白い炎が炸裂し、それをブラストドアもろともに吹き飛ばした。
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/30(木) 16:43:24.95 ID:Pn+Yn9e80

グレイヴス「マァークシャリィース……!」


 陽炎の向こうから、三つの人影が姿を現す。
仮面のカイウス、マネキンじみたリズマ、そしてもう一人。
少女の顔立ちを凶悪に歪めたダース・グレイヴスが、ドロイドの残骸を踏みにじった。


グレイヴス「今度はこちらから出向いてきてやったぞ……前は、迎えに来てもらったからなあ……!」

戦術ドロイド『……閣下、警備しすてむカラノ情報ニヨレバ、みこあ王女ハふぉーす感応力ヲ有シ……』

マクシャリス「今となってはわかりきったことだ。ただの王女があのクマモッテの爆発から生き延び、我々の戦艦に潜入するものか」


 マクシャリスはそう言い捨て、立ち上がった。
マントが翻り、ライトセーバーが白い刃を輝かせる。


マクシャリス「テイティスのマスター。お名前を伺ってもよろしいかな」ブオンッ

グレイヴス「我が名はダース・グレイヴス……よくも私をこの船に迎え入れてくれたな、ダース・ティラナスの影よ。大儀である」

マクシャリス「下手な皮肉はよせ。貴様は我々を従順な下僕だと考えていたようだが、こちらははなから殺す算段よ。貴様の寿命が縮んだだけのことだ」


 グレイヴスは舌打ちし、敵を指し示してカイウスに命じる。


グレイヴス「やれ。あの減らず口を黙らせろ」

カイウス「……はっ」


 仮面のシスは幽鬼のように進み出て、マクシャリスと相対した。
黒と白のコントラストの中に、今、赤い差し色が現れる。
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/24(月) 20:18:12.55 ID:G1ITB1KY0
作者逝った??
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