貴虎「何? 再びISの世界へだと?」

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139 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/08(月) 20:40:01.84 ID:0inOOLUQ0
屋上


シャル「はい、貴虎」 パカッ

貴虎「礼を言う……いただきます」 パクッ

貴虎「……ん、なかなかいい。デュノアは料理ができるようだな」

シャル「本当? ありがとう、貴虎」

鈴「いたいた、貴虎!」

シャル「あっ……」

鈴「さぁ、あたしの青椒肉絲も食べなさいよ」

貴虎「いや、今日はデュノアの弁当が……」

鈴「いいじゃない。ほら、美味しそうでしょ?」

貴虎(……まぁ、好意を無下にするのも良くないか)

貴虎「わかった。では、少しもらおう」 パクッ

貴虎「んっ……うまいな」

鈴「でしょー?」

貴虎「いや、正直驚いた……予想以上だ」

鈴「えへへ……」 チラッ

シャル「……」

鈴「……ふん」

バチバチッ

シャル「貴虎、卵焼きも食べてみて!」 ズイッ

鈴「はい、お茶もどうぞ!」 ズイッ

貴虎「……近い。というより、一体どうした? 様子がおかしいぞ」
140 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/08(月) 20:50:15.73 ID:0inOOLUQ0
シャル「そ、それは……その……」

鈴「い、いつものことじゃない……?」

貴虎「そんなわけがあるか」

シャル「……あ、あのさぁ、貴虎」

貴虎「ん?」

シャル「えっと、その……一緒に戦いやすい相手って、どういうタイプなのかな?」

貴虎「一緒に……? あぁ、なるほど」

貴虎「つまり……タッグマッチに向けて、自己分析をしておこうということか」

シャル「う、うん。まぁ、そんな感じかな……」

貴虎「私は近接が得意だ。ならば逆に、パートナーは射撃が得意な者が良いだろう」

鈴「うんうん」

貴虎「凰はどうだ?」

鈴「あ、あたしは……いざってときに、助けてくれるっていうか……」 チラッ

鈴「必死で戦ってくれる、っていうか……」 モジモジ

貴虎「曖昧だな……デュノアは?」

シャル「ぼ、僕もやっぱり……鈴と同じだけど……」 チラッ

シャル「あっ! あと、機転が利くっていうか……」 モジモジ

貴虎「……」

貴虎(いや、さすがの俺でもわかる。凰とデュノアは多分、俺と組みたいのだろう)

貴虎(強い者を味方につけておけば、それだけ勝率が期待できるからな)

貴虎(だが……それでは成長に繋がらない。ここはふたりのためにも、躱させてもらおう……)
141 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/08(月) 21:00:01.14 ID:0inOOLUQ0
それから、しばらく経って
貴虎の自室前


貴虎(あれから少し起動してみたが、斬月に不調は見られない) テクテク

貴虎(やはり、気のせいだったのか……?) ガチャ

貴虎「……ん?」

楯無「貴虎くん……」

貴虎「またお前か……勝手に私の部屋に入るな」

楯無「その……」

貴虎「……どうした? 何の用だ?」

楯無「……妹を、お願いします!」 パンッ

貴虎「……説明してくれ」

……
…………

楯無「えーっと、このコなんだけど……名前は、更識簪」 ピッ

楯無「あのね……ちょっと、その……暗いコなのよ」

貴虎「……それで?」

楯無「でもね、実力はあるのよ? 日本の代表候補生なんだから」

楯無「けど……」

貴虎「……けど、何だ?」

楯無「……専用機がないのよ」

貴虎「何……?」

楯無「それも……貴虎くんのせいで」

貴虎「……どういうことだ?」

楯無「簪ちゃんの専用機は、もうとっくに開発されてるはずだったの。けど……」

楯無「貴虎くんが来てから、斬月に人員を回されちゃったみたいで……」
142 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/08(月) 21:10:35.27 ID:0inOOLUQ0
貴虎「……みたい?」

楯無「さすがの私も、そっちの事情はそれほど詳しくないの。こんな例、聞いたこともないし……」

貴虎(サガラ……あの男、一体どうやって斬月を用意したんだ……)

貴虎「……すまない、それは私の責任だ」

楯無「……で、今度のタッグマッチで、ぜひ簪ちゃんとペアを組んであげてほしいの」

楯無「このとーり!」 パンッ

貴虎「……待て、どうしてそうなる」

貴虎「私のせいで専用機が完成していないなら、そいつの私に対する印象は最悪だろう」

貴虎「というより、完成していないにもかかわらず、タッグマッチには出場が決定しているのか?」

貴虎「そもそも、なぜ私だ? 本人が望んだのか?」

楯無「言いたいことは分かるけど……こっちにも事情があるの」

貴虎「説明できないのか?」

楯無「……」

貴虎「……はぁ……」

貴虎「……いいだろう、わかった」

楯無「え!? それじゃあ、いいの?」

貴虎「私のせいで、そうなったと言うのなら、強くは言えん。それに、一応とはいえ、この間は世話になった」

貴虎「その借りを返そう」

楯無「ありがとう、貴虎くん!」

貴虎「では……私から誘えばいいのか?」

楯無「うん。でも……極力、私の名前は出さないでね」

貴虎「……わかった」

楯無「お願いね」
143 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/08(月) 21:20:08.48 ID:0inOOLUQ0
次の日、1組の教室


貴虎(確か、あいつの妹がいるのは4組だったか。誘うのは、昼休みの方がいいだろう……) ガラッ

ラウラ「待っていたぞ、貴虎」

貴虎「ボーデヴィッヒ……朝からどうした?」

ラウラ「タッグマッチは当然、私と組むのだろうな?」

貴虎「……お前は私と決着をつけたいのではなかったのか?」

ラウラ「当然だ。私にとって、お前は唯一無二の宿敵[とも]……」

ラウラ「つまり、お前こそが私と組むに相応しい!」 ビシッ

貴虎「……」

ラウラ「これが申込書だ。さっさとサインをしろ」 ピラッ

貴虎「断る。悪いが、組む相手はもう決めている」

ラウラ「何!?」

箒「!?」

セシリア「!?」

箒(組む相手は、もう決めている……!)

セシリア(それは、つまり……!)
144 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/08(月) 21:30:01.45 ID:0inOOLUQ0
ラウラ「私の宿敵[とも]でありながら、他のやつと組むだと……!」 ヴォン

貴虎(無双セイバー……) スッ

貴虎「……何!?」

貴虎(現れない……なぜ……!?)

ラウラ「ハァッ!」 ブンッ

貴虎(っ! まずい……!!)

ガシッ

千冬「……」ググッ

ラウラ「なっ!?」

千冬「肉の焦げる匂いは、焼肉屋だけで十分だ!」 ブンッ

クルッ
スタッ

ラウラ「教官……!」

千冬「席につけ。呉島もだ」

貴虎「……」

千冬「……聞こえなかったか、呉島」 ギロッ

貴虎「っ、あぁ……」

貴虎(やはりおかしい……確かに今、念じたはず……)

貴虎(斬月……お前に一体、何が起こっている……!?)
145 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/08(月) 21:40:04.03 ID:0inOOLUQ0
それから、女子更衣室


箒「ふんふんふーん」 ニヤニヤ

箒(貴虎のやつ、タッグマッチの相手は決めていると言ったな)

箒(確かに、あいつの相方が務まるのは、私しかいないだろう!)

箒(まったく、貴虎め……そこまで言うなら、組んでやらないこともないぞ!) ニヤニヤ

セシリア「ふんふんふーん」 ニコニコ

セシリア(貴虎さんったら、既に相手は決めてあるですって)

セシリア(それはつまり、わたくしのことで違いありませんわ!)

セシリア(ついに貴虎さんと……!) ニコニコ

箒「やけにご機嫌だな、セシリア」

セシリア「あら、箒さん」

箒「調子はどうだ?」

セシリア「まぁまぁですわね。箒さんは?」

箒「まずまずかな」

箒(ふっ、セシリアのやつめ……私が貴虎と組むと知ったら、どんな顔をするやら)

セシリア「それは、よろしいですわね」

セシリア(ふふっ、箒さんったら……わたくしが貴虎さんに選ばれるとも知らずに)

箒「ではな、セシリア」

セシリア「えぇ、ご機嫌よう」

箒(勝った!)

セシリア(勝ちましたわ!)
146 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/08(月) 21:50:01.46 ID:0inOOLUQ0
そのころ、4組の教室


貴虎「失礼する」 ガラッ

「あっ、1組の呉島くんだ!」

「4組にご用でしょうか?」

貴虎「更識簪と話がしたい。いるか?」

「えっと……」 チラッ

簪「……」 ピッ ピッ

貴虎(あいつか……) テクテク

貴虎(さて、姉の話が本当なら、あいつはきっと俺を恨んでいるだろう)

貴虎(果たして、どう切り出したものか……)

貴虎「……少しいいか?」

簪「……」 ピッ ピッ

貴虎「……私は呉島貴虎だ」

簪「……知ってる」 ピタッ

簪「用件は?」

貴虎「それは……」

貴虎(まぁ、正面からぶつかるのが、一番早いか)

貴虎「……タッグマッチトーナメントのことで、話がある」

貴虎「単刀直入に言おう。私と組んでほしい」

簪「イヤ」

貴虎(だろうな。だが、引き受けた以上、ここで引き下がるわけにはいかん)
147 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/08(月) 22:00:07.23 ID:0inOOLUQ0
貴虎「……私とお前の間に、何があったかは聞いた。私に言いたいことは、多くあると思う」

簪「……」 ギロッ

貴虎「だが、それを踏まえた上で……私はお前と組みたい」

簪「……私には、あなたを殴る権利がある」

貴虎「……」

簪「けど、疲れるから……やらない」

貴虎(取りつく島もない、とはこのことか……今さらだが、厄介な依頼を引き受けたものだ)

貴虎「……わかった。邪魔をしたな」 スタスタ

貴虎(交渉において重要なのは、誠実な対応と……引き際)

貴虎(そして、相手の心を開くために必要なのは……自分を偽らず、信頼を得ること)

貴虎(更識の心は頑なだ。打ち解けるには、それ相応の時間をかけなければ……)

貴虎「……」 ピタッ

「どうしたの? 呉島くん」

貴虎「……いや、何でもない」

貴虎(待て……『誰かと仲良くなろう』と最後に思ったのは、一体いつだ?)

貴虎(仕事の繋がりで、凌馬や雅仁とは仲を深めたが……今回はそうはいかない)

貴虎(『友人』とは、どうやって作ればいい……?)

貴虎(……まずい、まったくやり方が思い浮かばない。理論はわかっても、具体的な行動が……)

貴虎(……とりあえず、積極的に話しかけてみるか)
148 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/08(月) 22:10:01.50 ID:0inOOLUQ0
それから、整備室


簪「……」ピッ ピッ

簪(まだダメ……まだ、こんなものじゃ……)

簪(姉さんなら、もっと……!)

ピーッ

簪「……っ」

『エラー』

簪「……はぁ……」

簪「……斬月さえなければ、追いつけたのに……!」

簪「っ!」 ハッ

簪「……」 フルフル

簪「はぁ……」 スクッ

簪「……」 スタスタ

ウィン

貴虎「あっ」

簪「っ……」

貴虎「……奇遇だな」

簪「……」 プイッ

貴虎「……タッグマッチの話だが、もう一度、考え直してくれないか?」

簪「……」 スタスタ
149 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/08(月) 22:20:00.70 ID:0inOOLUQ0
貴虎「待ってくれ、更識」 テクテク

簪「話しかけないで」 スタスタ

貴虎「お前の気持ちはわかっているつもりだ。だが、それを押してでも、私に協力してほしい」

簪「……何のつもり?」

貴虎「話している通りだ。私は……」

簪「どういう思惑があって?」

貴虎「……思惑などない。ただ、純粋に……共にタッグマッチに出ようと、誘っているだけだ」

簪「……大体、どうして私と組みたいの?」

貴虎「それは……」

貴虎(なんと答えればいい……姉の名前を出すわけにはいかないが……)

貴虎(……いや、偽る必要はないな。信頼を得るためには、まず俺が素直にならなければ)

貴虎「……友人になりたいからだ」

簪「っ、友人……?」

貴虎「そうだ。私は……」

簪「私は、あなたと友達になんて……」

簪「……友達に、なんて……」

簪「……なりたくない……」

貴虎「……そうか」

貴虎(……地味に傷つくな、今の一言は)
150 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/08(月) 22:29:32.75 ID:0inOOLUQ0
それから、貴虎の自室


楯無「まさか、貴虎くんの方から呼んでくれるなんて」

貴虎「聞きたいことがある。あいつ……更識簪の専用機についてだ」

貴虎「完成していないと言っていたが、間に合いそうなのか?」

楯無「……正直、わからないわ」

貴虎「では……私が協力を申し出ることで、仲を深めることは可能だと思うか?」

楯無「それは……ちょっと難しいんじゃないかしら」

楯無「簪ちゃん……多分、独りで機体を組み上げるつもりなのよ」

楯無「私がそうしてたから、意識しちゃってるのね……気にしなくていいのに……」

貴虎「……確執があるようだな」

楯無「……ごめんね、私たち姉妹の問題に」

貴虎「兄弟姉妹とは、そういうものだ。私も以前、弟とぶつかり合ったことがあった」

楯無「……弟さん、いるんだ」

貴虎「あぁ、自慢の弟だ」

楯無「そっか……ありがとね、貴虎くん」

貴虎「……」

楯無「ところで、どう? 簪ちゃんの様子」

貴虎「難しいな。私と組む気はないと、はっきり言われてしまった」

楯無「あちゃー……ちなみに、どんな風に誘ったの?」

貴虎「友人になりたいと言った」

楯無「うわぁ、思った以上に直球」

貴虎「これに関しては、嘘偽りない私の気持ちを示したつもりだ」

楯無「……貴虎くんって、もしかして友達作るの、あんまり上手じゃない?」

貴虎「……うるさい」
151 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/08(月) 22:30:02.01 ID:0inOOLUQ0
今日はここまで
続きはまた明日
152 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 19:59:06.08 ID:McfG52Sw0
それじゃ、投下していく
153 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 20:00:02.13 ID:McfG52Sw0
そのころ、簪の部屋


簪「……」

『友人になりたいからだ』

簪(どうして私、答えに詰まっちゃったんだろう……)

簪(あの人と友達なんて……なりたくないに、決まってるのに……)
154 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 20:01:05.93 ID:McfG52Sw0
そして、開催日が迫る


「ねぇねぇ、聞いた?」

「なになに?」

「呉島くんの今度の専用機持ちタッグマッチのパートナー、4組の更識さんに毎日迫ってるらしいよ!」

「えー!? 嘘っ、なんでなんで!?」

……
…………

貴虎「待ってくれ、更識! 少しでいい、話を聞いてくれ!」 タッタッ

簪「ついてこないで……!」 タタタッ

……
…………

セシリア「貴虎さん……わたくしと組まなかったことを、後悔させてあげますわ……!」

セシリア「震えなさい! わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる鎮魂歌[レクイエム]で!!」
155 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 20:10:01.77 ID:McfG52Sw0
……
…………

鈴「だーかーらー! 右肩部ユニットを拡散衝撃砲に変更した換装装備[パッケージ]データを今すぐちょうだい!!」

鈴「3日で仕上げてよね!」

「ーーーー」

鈴「ハァッ!? できないじゃないわよ、やるのよ!!」 ピッ

鈴「見てなさいよ、貴虎……絶対に許さないんだから!」

……
…………

シャル「いくよ、リヴァイヴ……!」

シャル「今度の僕は、少し強敵だよ……貴虎!」

……
…………

ラウラ「……フッ」

ラウラ「私が見せてやろう、真の恐怖を……」

ラウラ「その全身に刻みつけてやるぞ、貴虎!」

……
…………

箒「……」 スクッ

箒「貴虎……!」 チャキッ

楯無「箒ちゃん、ゲットだぜぃ!」 ガシッ

箒「うわぁ!?」

楯無「へぇ、真剣で稽古かー」

箒「楯無先輩……えぇ、まぁ……」

楯無「でね、箒ちゃん。ちょっと話があって」

楯無「タッグマッチ、私と組みましょう!」

箒「……はぁ?」
156 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 20:20:44.31 ID:McfG52Sw0
それから、ところ変わって


楯無「まずは、箒ちゃんのフィジカルデータを調べるからね」

箒「……まぁ、それは構いませんが……」

楯無「よし、準備完了。じゃ、いくわよ」 ピッ

ゴォォォ……

楯無「……っ!? これは……」

箒「どうかしましたか?」

楯無「……おっぱい大きいのね。私、もしかしたらちょっと負けてるかも……」

箒「どこ見てるんですか!? 真面目にやってください!」

楯無「あははっ、ごめんごめん!」

楯無(どういうことかしら……この、箒ちゃんのIS適正……)

楯無(こんな短期間で、CからSなんて聞いたことがない)

楯無(鍵はやはり、篠ノ之束……)
157 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 20:21:31.31 ID:McfG52Sw0
そのころ、アリーナ


簪「……」

簪(同じ『更識』であることを、苦痛に感じたのは、いつからだろう……)

簪(顔も見つめられなくなったのは……)

簪「……」

簪(この飛行テストがうまくいけば、姉さんに……!)

簪「……よし」

簪「来て、打鉄弐式……!」 ピカーン

簪「今日こそは、絶対に成功させる……!」 ピッ ピッ
158 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 20:30:03.55 ID:McfG52Sw0
簪「……っ!」 ドウッ

ゴォォォ……!

簪「機体制御は大丈夫。あとは、ハイパーセンサーの接続、連動……」 ピッ ピッ

簪「姿勢保持スラスター、問題なし。展開時のポイントを調整」

簪「PIC干渉領域からズラして、グラビティヘッドを機体前方6センチ調整」

簪「それから、脚部ブースターバランスを、4マイナスで再転換……」

ボンッ!

簪「っ!?」

ビーッ! ビーッ!

簪「反動制御が利かない……どうして……!?」

簪「っ、あぁっ……!!」

ヒュゥゥ……

簪(お姉ちゃん……)

簪(イヤ……イヤだ……!)

簪(まだ……追いつけないの……?)

簪「……私、やっぱりダメだ……」

「それはどうだろうな」

ガシッ

簪「……え?」

貴虎「大丈夫か?」 ゴォォォ……

簪「どうして……?」

貴虎「あぁ……とりあえず、降りてから話そう」
159 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 20:40:02.42 ID:RVUDBfvaO
整備室


貴虎(今回、斬月に不調は見られなかった……あそこで、また何か起きていたら、俺も更識も落ちていたな)

貴虎(更識のことだけでなく、こちらも気にかけておかなければ……)

簪「あ、あの……」

貴虎「ん?」

簪「ありがとう……さっき、助けてくれて」

貴虎「あぁ……気にするな」

簪「ところで、どうしてあそこに?」

貴虎「……偶然だ」

簪「偶然?」

貴虎「そうだ、偶然だ」

貴虎(本当は、ずっと話しかけるタイミングをうかがって、最初から見ていたが……)

貴虎(これを言うと、ストーカーだと思われて、ますます距離が開きそうだ)

簪「……まぁ、いいけど」

貴虎「……あぁ、なんだ……少し話がしたい。時間をくれないか?」

貴虎「そうだな……こんな時間だし、食事でもしながら、とか……」

簪「……いいよ」

貴虎「っ、いいのか?」

簪「そっちから誘ってきたんでしょ」

貴虎「いや……まぁ、そうだが……」

貴虎「……なら、行こう」

簪「……うん」
160 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 20:50:48.17 ID:RVUDBfvaO
食堂


簪「いただきます」

貴虎「……いただきます」

簪「……」 パクパク

貴虎「……」 モグモグ

貴虎(……打ち解けるために食事に誘ったが、会話が浮かばない……失敗だったか?)

貴虎(だが、この誘いに乗ってきたということは、心を開き始めていると考えていいはず……)

貴虎(……今が攻め時か)

貴虎「更識、話がある」

簪「……」 チラッ

貴虎「もう何度も話したことだが……私とタッグマッチで組んでほしい」

貴虎「お前の事情は知っている。私との因縁も」

貴虎「そのことについて、私はどう詫びればいいかわからない」

簪「……」

貴虎「だが……勝手な話だが、私はお前といがみ合っていたくない」

貴虎「私たちの関係を、先へと進めたい」

貴虎「だから……」

簪「……いいよ」

貴虎「っ、本当か!?」

簪「タッグマッチで、あなたと組んであげる」
161 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 21:00:04.04 ID:RVUDBfvaO
貴虎「……礼を言う」

簪「うん……えっと、その……」

簪「……よろしく」 スッ

貴虎「……あぁ、よろしく頼む」 ギュッ

貴虎(ひとまず、目的は達成というところか)

貴虎(ここから当日までに、タッグとして満足のいく形まで持っていければいいが……)

貴虎(……いや、とりあえず今は、俺たちの関係が一歩前に進んだことを喜ぼう)
162 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 21:00:59.43 ID:RVUDBfvaO
それから、再び整備室


貴虎「さて……この問題を私が問うのは、私自身としても複雑だが……タッグを組んだ以上、問わざるを得ない」

貴虎「単刀直入に聞こう。専用機について、現在の状況を教えてくれ」

簪「……武装が、まだ未完成。それに稼働データも取れていないから、今のままじゃ実戦は無理」

貴虎「武装?」

簪「マルチロックオンシステムによる、高性能誘導ミサイル。それと、荷電粒子砲」

貴虎「そうか……」

貴虎「……はっきり言おう。私にできることはなさそうだ」

貴虎「私は、ISの扱いには、それなりに慣れているつもりだ」

貴虎「だが……ことシステムの面に関しては、素人もいいところだ」

貴虎「すまない……」

簪「……いいよ。そんな気はしてた」
163 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 21:10:25.17 ID:McfG52Sw0
貴虎「だが、私以外の人間なら……たとえば、整備課の生徒たちなら、何か打開策を見つけ出すかもしれん」

貴虎「見る限り、お前が他人を頼らずに、その専用機を完成させようとしていることは察するが……」

貴虎(本当は姉から聞いた話だが、それを言うわけにはいかん)

貴虎「……だが、タッグマッチまで時間もない。我々以外の人間の力を借りるのも、ひとつの手だと私は思う」

簪「……うん、そうしてみる」

貴虎「……いいのか?」

簪「あなたの言ってることは、正しいから」

貴虎「……ありがとう」

簪「ううん、こちらこそ」

簪(知らなかった。今まで、話そうと思ったこともなかったから)

簪(こんなにも真面目で、まっすぐな人だったんだ)

貴虎「それにしても……打鉄か」

簪「うん、打鉄弐式。打鉄を発展させた後継機で……」

貴虎「やはり良いな、打鉄は」

簪「……え?」

貴虎「このシンプルかつ和風の感触が、他のISに比べて特にいい」

貴虎「この学園には、量産型は打鉄とリヴァイヴの2種が配備されているが……普段の授業でも、私は打鉄ばかり使っている」

簪「そ、そうなんだ……」

簪(でも、ちょっと変わってるよね……)
164 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 21:20:02.24 ID:McfG52Sw0
そのころ、ところ変わって


箒「今日は、特訓に付き合っていただき、ありがとうございました」 ペコッ

楯無「いいのいいの。じゃあ、シャワー行きましょうか」 ニヤニヤ

箒「えっ!? いや……」

楯無「さぁさぁ。よいではないかー、よいではないかー」 グイッ

箒「引っ張らないでください! 自分で歩けますよ!」

箒「……」

箒(昔、こんな風に手を引いてもらっていた……)

箒(私があの人を、傷つけた……)

楯無「……何か考えごと?」

箒「っ! ……えぇ、ちょっと……」

箒「……姉のことを」

楯無「箒ちゃんって、お姉さん……束博士のこと、敬遠してる?」

箒「……嫌いではないです。専用機をくれたことも、感謝しています」

楯無「そう。だったら良かった」

楯無「やっぱり、家族は仲良くしないとね」

楯無(……他人のことは言えないけど)
165 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 21:30:04.98 ID:McfG52Sw0
箒「……でも、わからないんです。姉が何を考えているのか」

楯無「……わからないのは、恐い?」

箒「っ……」

楯無「……そうよね。そんなの、私もそうよ」

箒「えっ……?」

楯無「大丈夫。心配しなくても、きっとお姉さんは、あなたを大切に想ってくれてるから」

箒「……」
166 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 21:30:58.48 ID:McfG52Sw0
次の日、整備室


薫子「はーい!」

本音「えへへー、手伝いに来たよー」

貴虎「……」

本音「あれー? どうしたの、くれしー」

貴虎「私は整備課に協力を依頼したはずだが」

薫子「だから、こうして来たじゃない」

貴虎「……百歩譲って、黛はいい。問題は……」

貴虎「布仏、本当に整備できるのだろうな?」

本音「えー!? くれしー、ひどーい!」

貴虎「すまないが、普段のイメージからは全く想像できん」

薫子「安心して、呉島くん。こう見えて、結構やるんだから」

貴虎「……そうか。では、ありがたく力を借りよう」
167 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 21:40:03.99 ID:McfG52Sw0
簪「今日は、よろしくお願いします。本音も、急にごめんね」

本音「なんで謝るのさー? 今日はかんちゃんのために、いーっぱい頑張るからねー」

簪「ありがとう」

薫子「よーし! じゃあ時間もないし、いっちょやりますか」

貴虎(少し不安だが……俺と更識だけでやるより、こうして整備課の手を借りた方が、素早く確実に終わるだろう)

貴虎(あと必要なのは……あの女から借りた、この機体データか) チラッ

……
…………

薫子「貴虎くーん、こっちに特大レンチと高周波カッター持ってきて!」

貴虎「あぁ、受け取れ」 パシッ

「データスキャナーと、超音波検査装置をー」

貴虎「これだ」 パシッ

「呉島、ジュース飲ませろ」

貴虎「どさくさ紛れに、何を言っている」

本音「くれしー、お菓子とってー」

貴虎「勝手に取れ!」

薫子「購買でシャンプー買っといてー」

貴虎「いい加減にしろ!!」
168 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 21:49:35.17 ID:McfG52Sw0
……
…………

薫子「ふぃー……まぁ、こんなもんかな」

本音「いぇーい」

簪「あ……ありがとうございました」 ペコッ

簪「私ひとりじゃ、できなくて……本当に、ありがとうございました!」

薫子「気にしないでよ。同じ学園の仲間じゃない」

簪「っ……はい!」

貴虎「……」

薫子「さーて……それじゃあ、私たちは先に上がらせてもらおうかしら」

本音「くれしー、片付けよろしくねー」

貴虎「あぁ、任せておけ」

貴虎「……ひとまずは、これで大丈夫だな」

簪「うん、みんなのおかげ」

貴虎「あとは、我々のコンビネーション次第といったところか」

簪「っ、コンビネーション……」

簪(私と、貴虎の……ふたりの相性……)

簪「……貴虎」

貴虎「ん?」

簪「私、頑張るから」

貴虎「……あぁ、期待している」

貴虎(もう、更識との関係を憂える必要はなさそうだ)

貴虎(残る問題は、斬月のみか……)
169 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 22:00:05.46 ID:McfG52Sw0
その夜、貴虎の自室


貴虎(斬月の不調は、起こるときと起こらないときがある。その違いがわかれば、少しはマシだが……) ガチャ

楯無「チャオ」

貴虎「……前にも言ったが、それは私のシャツだ」

貴虎「もう、勝手に入るのは構わん……だから、せめてまともな服を着てくれ……」

楯無「貴虎くーん、マッサージしてー」 ゴロン

貴虎(この女には、何を言っても無駄なのか……)

楯無「……ねぇ、貴虎くんって、兄弟仲いい?」

貴虎「兄弟仲……?」

貴虎「……悪くはない、と思っている」

楯無「この前は、ぶつかり合ったとか言ってなかった?」

貴虎「以前はな。過去に一度、私のせいで、弟と袂を分かつことになってしまった」

楯無「貴虎くん、何かしたの?」

貴虎「……理想を押しつけた」

貴虎「ずっと海外にいた両親に代わって、私が弟の教育を受け持ってきた。弟の手本になりたいと、日頃から努めていた」

貴虎「正しさと、責任と、誇りのある生き方を学んでほしいと」

貴虎「だが……私は、弟を理解してやれなかった」
170 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 22:09:57.11 ID:McfG52Sw0
楯無「……」

貴虎「ノブレス・オブリージュ。優れた者ほど、真っ先に犠牲を払わなければならない」

貴虎「それこそが、本当の名誉だと……私は、弟に理屈ばかり押し付け、私の影を背負わせた」

……無駄なものを切り捨てることで、お前の人生は完成されるんだ……

貴虎「そのために、弟は道を誤った……私が弟を、追い詰めてしまった」

楯無「……辛かったね」

貴虎「……いや、本当に辛かったのは……私ではなく、弟だ」

楯無「……わかるよ、貴虎くんの気持ち」

楯無「大事だから、特別だから、厳しく接してしまう」

楯無「愛してるからこそ、そのコのためを思って『正しさ』を示してしまう」

楯無「そのコにとっての『正しさ』は、もっと別にあるかもしれないのにね……」

貴虎「……お互い、苦労するな」

楯無「……本当に、ね」
171 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 22:10:40.01 ID:McfG52Sw0
そのころ、ところ変わって


簪「……」 テクテク

簪(どうしちゃったんだろう、私……どうして、カップケーキなんて……)

簪(……貴虎、食べてくれるかな)

『1025』

簪(確か、あそこが貴虎の……)

ガチャ

簪(っ、誰か出てくる……!) サッ
172 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 22:19:59.42 ID:McfG52Sw0
貴虎「さっさと出ていけ」

楯無「いいじゃない、マッサージくらいしてくれたって」

貴虎「本当にしてほしいなら、次からはもっとまともな格好をしてこい」

簪(えっ、姉さん……?)

楯無「もう……ところで、どう? 簪ちゃんの機体、何とかなった?」

貴虎「あぁ、おかげで間に合った」

楯無「私の機体データ、役に立ったでしょ?」

簪(っ!? どういう、こと……!?)

簪(今までの……全部、姉さんが……!?)

簪「っ……」 ポロっ

簪「うっ……うぅ……!」 ポロポロ

簪「……」 ダッ

タタタッ

貴虎「……ん?」

楯無「どうかした?」

貴虎「いや……」

貴虎(今、誰かいたような……気のせいか?)
173 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 22:29:24.52 ID:McfG52Sw0
次の日、トーナメント開会式


楯無「どうも、皆さん。今日は、専用機持ちのタッグマッチトーナメントでーす!」

ワーッ!

楯無「出場生徒の皆さんは、日々の訓練の成果を存分に発揮し、全力で挑みましょう」

楯無「専用機を持っていない生徒の皆さんにとっては、試合内容はとても勉強になると思います」

楯無「しっかりと観ていてください」

楯無「それでは、実りのある時間となるよう期待を込めて、開会の挨拶とさせていただきます」

楯無「とまぁ、堅苦しいのはこの辺にして……」

楯無「お待ちかね、対戦表を発表しまーす!」

ピッ

箒「おぉっ!」

箒(1戦目から貴虎と当たるとは……!)

箒(ふっ……覚悟しておけ、貴虎!)

貴虎「……」 キョロキョロ

貴虎(更識がいない……どこへ行った?)
174 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/09(火) 22:30:01.65 ID:McfG52Sw0
今日はここまで
続きはまた明日
175 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 20:09:09.14 ID:GZZTtReK0
それじゃ、投下していく
176 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 20:10:03.08 ID:GZZTtReK0
そのころ、整備室


簪「……」

『私の機体データ、役に立ったでしょ?』

『あぁ、おかげで間に合った』

簪(貴虎も、最初から姉さんの指示で……)

簪(……私は、あの人に勝てない。勝てっこない……)

簪(とにかく、行かなきゃ……今日だけは……)

ドーン!!
ビーッ! ビーッ!

簪「っ!? 何、今の衝撃……」
177 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 20:11:00.50 ID:GZZTtReK0
ところ変わって


真耶「織斑先生、襲撃です!」

千冬「こいつは……」

真耶「以前に現れた無人機と同じもの……いえ、発展機だと思われます」

千冬「数は?」

真耶「5機です。各アリーナのピットに出現」

真耶「待機中だった、専用機持ちの生徒が襲われています!」

千冬「くそっ……早すぎる」 ボソッ

真耶「えっ……?」

千冬「教師は生徒の避難を優先。戦闘教員は全員、突入用意!」

真耶「っ、了解!!」

千冬(やってくれるな……だが、甘く見るなよ)
178 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 20:20:04.12 ID:GZZTtReK0
アリーナ


ゴーレムA「……」 バシュン!

鈴「っ!」 サッ

鈴「はっ!」 バシュン!

ドカーン!

ゴーレムA「……」 ドウッ

鈴「っ、確かに当たったのに……」

セシリア「鈴さん、下がって!!」 ドウッ

セシリア「はぁっ!」 バンッ!

ガチャンッ
ヒュゥゥ……!

ゴーレムA「……」 バシュン! バシュン!

ドカーン!

セシリア「っ! ビットが……!!」

鈴「何なのよ、コイツ……!?」
179 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 20:20:33.05 ID:GZZTtReK0
別のアリーナ


ゴーレムB「……」 ブンッ

ラウラ「ハッ!」 ヴォン!

ガキィィ……!

ゴーレムB「……」 ググッ

ラウラ「くっ……!」

ゴーレムB「……!」 ガキン!

ラウラ「何っ!?」

ゴーレムB「……」 キィィ……!

シャル「ラウラ、下がって!」 ドウッ

ゴーレムB「……」 バシュン!

シャル「くぅっ……!」
180 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 20:30:08.14 ID:GZZTtReK0
整備室


簪「一体、何が起きて……」

ヒュゥゥ……
ドーン!!

簪「ひゃっ!」

ゴーレムD「……」

簪「なに……なんなの……!?」

ゴーレムD「……」 ギロッ

ズシン ズシン

簪(イヤ……助けて、誰か……!)

ゴーレムD「……」 グワッ

簪「っ、貴虎!!」

「呼んだか?」

ゴーレムD「!?」 クルッ

貴虎「ハァッ!」 ズバッ

ゴーレムD「……!」 グラッ

簪「あっ……貴虎……!!」
181 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 20:46:01.27 ID:GZZTtReK0
ゴーレムD「……」 ドウッ

貴虎「逃すか」 ドウッ

ゴォォォ……!

貴虎「随分と空高く逃げるな。だが……」

ゴーレムD「……」 クイッ

貴虎「……ん?」

バチッ

貴虎「っ、何!?」

バチッ
バチバチッ

貴虎「斬月……!」

ゴーレムD「……」 ニヤッ

貴虎「っ! お前は、なぜ……!!」

シュゥゥ……

貴虎(斬月が、消えていく……!)

貴虎(ダメだ……落ちる!!)

貴虎「うわぁぁぁぁああああああああ!!!!」

ヒュゥゥ……

貴虎(終わるのか……俺は、ここで……)

貴虎(また、何も守れずに……!)
182 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 20:54:01.24 ID:GZZTtReK0
簪「貴虎!!」 ゴォォォ……!

貴虎「っ、更識!!」

ガシッ

簪「貴虎、大丈夫!?」

貴虎「……あぁ、何とか……」

貴虎「……今度は、お前に助けられたな」

簪「貴虎……私も、一緒に戦う!」

貴虎「あぁ……礼を言う」

貴虎「それと、すまないが、一旦地上に降ろしてくれ」

ゴーレムD「……」 ドウッ

簪「っ、来る!!」

貴虎「ある程度の高さなら、受け身が取れる! ギリギリまで引きつけたら、俺を落とせ!!」

簪「でも……!」

貴虎「心配するな。俺も、お前も……」

貴虎「更識、お前ならできる!!」

簪「っ! ……わかった、やってみる!!」 ドウッ
183 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 20:55:01.48 ID:GZZTtReK0
別のアリーナ


ゴーレムC「……」 ブンッ ブンッ

箒「はっ!」 ガキン! ガキン!

楯無「もらったわ!」 ドウッ

グサァッ!

ゴーレムC「……!」 ググッ

楯無「っ、なんて硬い……!」

楯無「箒ちゃん、背部展開装甲オン! 私を押して!!」

箒「は、はい!」 ドウッ
184 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 21:03:02.95 ID:GZZTtReK0
箒「楯無さん!」 ガシッ

楯無「今よ!!」 ゴォォォ……!

ゴーレムC「!」

楯無「このまま無人機の装甲を突き破るの!」

箒「ですが……!」

楯無「いいから、やりなさい!!」

ゴーレムC「……!!」 ガシッ

楯無「くっ……これでも、喰らいなさい!!」 バババババッ

ゴーレムC「!!」

楯無「まだまだ……お姉さんの奥の手は、これからよ!」 ガチャン

バシャッ!
ゴゴゴゴ……!

箒(っ、装甲が……!)

ゴーレムC「……」 ブンッ

ザクッ

楯無「っ……箒ちゃん、全て防御に回しなさい!」

楯無「巻き込まれるわよ!!」

箒「でも……!」

楯無「大丈夫。お姉さんは、不死身なのよ……!」 ガチャン

楯無「ミステリアス・レイディの最大火力、受けてみなさい!!」 ゴゴゴゴ……!

箒「っ! ダメ!!」

楯無「ミストルテインの槍、発動っ!!」 ブンッ

キン……ッ
ドガーン!!
185 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 21:11:02.63 ID:GZZTtReK0
……
…………

貴虎「っ、今の爆発は……」

ゴーレムD「……」 ブンッ

簪「危ない!」 ガキン!

簪「ここは私が!」

貴虎「……すまない、任せる!」

簪「うん、任せて」 ドウッ

ゴーレムD「……」 ドウッ

簪「貴虎は、傷つけさせない……!」

貴虎「更識……」

貴虎「くっ……来い、斬月!」

シーン……

貴虎(やはり無理か……よりによって、こんなときに……!)

貴虎(何か、他に使える装備は……) ピッ ピッ

貴虎「っ!? 何だと……!!」

貴虎(消えている……一部のロックシードが……)

貴虎(メロン、ブドウ、イチゴ、マンゴー……どれも、この世界に来てから、俺が使ったアームズばかりだ……)

貴虎(一体、何が起きている……!?)
186 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 21:12:08.17 ID:GZZTtReK0
ところ変わって


真耶「敵ISの腕部から、未知のエネルギー放出を確認!」

真耶「シールドバリア展開に障害が……っ、絶対防御が無効化されています!!」

千冬「対IS用IS、というわけか……!」
187 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 21:21:01.89 ID:GZZTtReK0
アリーナ


ゴーレムD「……」 バババババッ

簪「っ……」 サッ

簪(さっきの爆発は……)

簪(望遠システム、作動)ピッ

楯無『……』 グタッ

簪「っ! あっ……!!」

簪(そんな……姉さん……!?)

簪「うそっ……イヤッ!!」

ゴーレムD「……」 バシュン! バシュン!

簪「よくも……よくも!!」 ドウッ

簪「うわぁぁああああ!!」 ブンッ ブンッ

ゴーレムD「……」 ガキン! ガキン!

簪「あぁぁぁああああああ!!!」 ブンッ!

ゴーレムD「……」 スッ

ガキィィ……!
キンッ!

簪(っ! 薙刀が……!!)

簪「まだ!!」 ガシッ

ゴーレムD「!」

簪「荷電粒子砲、展開!」 ガチャン
188 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 21:30:13.37 ID:GZZTtReK0
簪「許さない……許さない!!」 キィィィ……!

バシュン! バシュン!

ゴーレムD「……」

ヒュゥゥ……
ドーン!

ゴーレムD「……」 ギギギギ……

簪「コア! あれを吹き飛ばせば……!」 カチッ

シーン……

簪「っ、どうして!?」

打鉄弐式『ウェポンパワー:0%』

簪「そんな……」

ヒュゥゥ……
ドンッ!

ゴーレムE「……」

貴虎「っ! 更識、後ろだ!!」

簪「っ!?」

ゴーレムE「……」 バシュン!

簪「あぁぁ!!」 バタッ

貴虎「更識!! くっ……!」

ゴーレムD「……」 ギロッ

貴虎「っ、今度は俺か……」

ゴーレムD「……」 ズンズン

貴虎「斬月……!」

シーン……
189 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 21:40:02.37 ID:GZZTtReK0
貴虎「くっ……」

貴虎(やはり、駄目なのか……!?)

貴虎(……いや、ここで折れるわけにはいかない!)

貴虎「斬月、お前が必要だ!!」

貴虎「二度と諦めない! 悪意に屈しない! その誓いを果たすために!!」

貴虎「頼む! 俺の声に……応えてくれ!!」

シーン……
……キラッ

貴虎(っ、この光は……!)

ウィィィン……
カチャン

貴虎(っ! 戦極ドライバー……!!)

貴虎「そうか……これがお前の意地か、斬月」

貴虎「……あぁ、十分だ。これさえあれば……!」

ゴーレムD「……」 ガシッ

貴虎「ぐうっ……!!」

ゴーレムD「……」 ブンッ

貴虎「うわぁぁああああ!!」 バンッ!

簪「貴虎!!」

簪(もうダメ……やっぱり、無理だったんだ……)

簪(私、なんて……)

簪(貴虎……ごめんなさい……)

簪(助けられなくて……役立たずで……)

簪(ごめん、なさい……)
190 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 21:50:07.40 ID:GZZTtReK0
ゴーレムE「……」 ズンッ ズンッ

簪「……」

簪(ヒーローなんて……この世に、いない……)

ゴーレムE「……」 ブンッ

簪「っ!!」 ギュッ

グサァ……

簪「……え?」

楯無「くうっ……」 ボロッ

簪「お姉、ちゃん……!」

楯無「……」 バタッ

簪「っ、お姉ちゃん!!」

簪「お姉ちゃん……お姉ちゃん!!」

楯無「……そう呼ばれるの、何年ぶりかしら……」

簪「どうして、こんな……」

簪「……もう、無理なんだよ……」

楯無「無理じゃないわ……」

簪「無理だよ……この世にヒーローなんか、いないんだよ……!!」
191 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 22:00:04.04 ID:GZZTtReK0
「いや、それは違う!!」

簪「えっ……?」 クルッ

貴虎「俺は知っている! 本当のヒーローを!!」

貴虎「どんな絶望にも屈しず、希望を追い続けた男を!」

貴虎「どんな悪意にも屈しず、全てを救った英雄を!!」

簪「貴虎……」

貴虎「更識、ヒーローはいる」

貴虎「それは力を持つ者ではない。都合のいい神でもない」

貴虎「最後まで諦めず、足掻き続ける者……それがヒーローだ!!」

簪「っ!!」

簪(あぁ、私は……)

簪(自分はダメだって決めつけて……誰かの助けを待ってるばかりで……!)

簪「私は、卑怯者だ……!!」

楯無「……いいじゃない。弱くても、汚くても」

楯無「卑怯でも、みっともなくても……だって、人間なんだもの」

簪「っ、お姉ちゃん……」

楯無「だからね、簪ちゃん……弱さも、小ささも、受け入れなさい」

楯無「受け入れたら、立ち上がれるわ」
192 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 22:10:02.31 ID:GZZTtReK0
簪「弱さを……受け入れる……」

貴虎「そうだ、更識……変身しろ!!」

簪「っ! 変、身……?」

貴虎「俺もかつて弱かった……いや、弱さを受け入れることが、できていなかった」

貴虎「ノブレス・オブリージュ。高貴なる者には、背負うべき義務がある」

貴虎「かつて俺は、自分の弱さのために、その責務を果たせなかった」

貴虎「だが……ある男が、俺に言った」

貴虎「人は変わることができる。それを諦めるなと」

貴虎「どんな過去を背負っていようと、新しい道を探し、先へ進むことができると!」

簪「新しい、道……」

貴虎「更識、今の自分が許せないなら、新しい自分に変われ」

貴虎「変身しろ、更識!!」

簪「っ!! 私は……私は……!」

楯無「……大丈夫よ、簪ちゃん。絶対にできるわ」

楯無「だって……私の自慢の妹だもの」 ニコッ

簪「……うん」

簪「ありがとう……お姉ちゃん、貴虎」
193 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 22:20:19.22 ID:GZZTtReK0
ゴーレムE「……」 ドウッ

簪「っ……いってくるね」 スクッ

楯無「簪ちゃん……これ、お守り……」 スッ

簪「アクアクリスタル……?」

楯無「とっておきのときに、使いなさい」

楯無「頑張れ……1年生!」 ニコッ

簪「……うん!」

貴虎「更識、もう一機は任せろ!」

簪「お願い、貴虎!」 ドウッ

ゴォォォ……!

貴虎「フッ……さて」 チラッ

ゴーレムD「……」

貴虎「待たせたな。これから、思う存分相手をしてやる」

楯無「カッコつけちゃって……見たところ、斬月が不調みたいだけど?」

貴虎「戦う手段は、ひとつだけではない」

貴虎「よく見ておけ。私の、アーマードライダーとしての姿を」

楯無「アーマード、ライダー……?」

貴虎「変身」 カチャ

ガチャッ
キュイン

『スイカ』

ジジジジ……
ヒュゥゥ……
194 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 22:30:36.61 ID:GZZTtReK0
楯無「今度はスイカ? 随分と大きいじゃない」

貴虎「そうでなければ、こいつには対処できまい」

ガチャッ
キュイーン

『ロックオン』

プォォォ……
ザシュッ

『ソイヤッ!』

ヒューン
ズドン!

楯無「っ!? 貴虎くん!」

貴虎「慌てるな、私はこの中だ」

ガシャッ
ウィィィン……

『スイカアームズ!』

ガチャン!
ガコーン!

『大玉・ビッグバン!!』

楯無「っ、スイカが変形して……ISに?」

貴虎「あぁ、似たようなものだ」

『ヨロイモード!』

貴虎(久しぶりだな……まさか、この世界でアーマードライダーに変身する日が来るとは)

貴虎(本来なら、使ったロックシードが全て消失しているという現状、新たなアームズの使用は控えるべきなのだろう)

貴虎(だが、ISとしての斬月が使えない今、この状況を打破するには……これにかけるしかない!)

貴虎「いくぞ……!」 グッ
195 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/11(木) 22:31:15.16 ID:GZZTtReK0
今日はここまで
続きはまた明日
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/11(木) 22:36:59.89 ID:S+p5J+Mu0
わかっていたが、アツい流れだな 乙。
197 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/12(金) 20:00:08.12 ID:vDg07YwJ0
それじゃ、投下していく
198 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/12(金) 20:01:04.18 ID:vDg07YwJ0
ゴーレムD「……」 バシュン!

貴虎(スイカ双刃刀!) ブンッ

ガキン!

ゴーレムD「……」 ブンッ

貴虎「ハッ!」 ブンッ

ガキィィ……!

ゴーレムD「……」 ググッ

貴虎「っ……舐めるな!」 ドンッ

ゴーレムD「ッ……」 グラッ

貴虎「ハァッ!」 ズバッ

ゴーレムD「!」

貴虎「フンッ!」 ザシュッ

ゴーレムD「!!」

貴虎「まだだ!」 ズバァッ!

ゴーレムD「……」 ヨロヨロ

貴虎「……っ!」 ジャキッ

ゴーレムD「……」 ドウッ

貴虎「甘い!」 ピッ

『ジャイロモード!』

ウィィィン……
ガチャン!

貴虎「逃げられると思うな……!」 ドウッ
199 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/12(金) 20:10:01.76 ID:vDg07YwJ0
ゴォォォ……!

ゴーレムD「……」 バシュン! バシュン!

貴虎「……」 サッ サッ

貴虎「その厄介なブースターは、破壊させてもらおう」 カチッ

バババババッ
ドカーン!

ゴーレムD「!」 ヒュゥゥ……

貴虎(このまま、重力に任せて押しつぶす!) ピッ

『大玉モード!』

ウィィィン……
ガチャン!

貴虎「ハァァアアアアッ!!」

ヒュゥゥ……
ズドーン!!

ゴーレムD「……」 ビクッビクッ

貴虎「……」 ピッ

『ヨロイモード!』

ウィィィン……
ガチャン!

貴虎「終わりだ」 スッ

ザシュッ
ジャキン

『ソイヤッ!』

ドンッ!
ヒュンヒュン……!

『スイカスカッシュ!!』
200 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/12(金) 20:20:10.13 ID:vDg07YwJ0
貴虎「……っ!」 ドウッ

貴虎「ハァッ!!」 ズバァッ!

ゴーレムD「……」

ギギギギ……
ドガーン!!

貴虎「ふん……」 カチッ

シュワァァ……

楯無「さすがね、貴虎くん」

貴虎「……まぁ、こんなものだ」

貴虎「それよりも……」 チラッ

貴虎(更識、そっちは大丈夫か……?)
201 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/12(金) 20:21:06.49 ID:vDg07YwJ0
上空


ゴーレムE「……」 バババババッ

簪「くっ……」 サッ

簪「打鉄弐式、マニュアル誘導システム、起動!」 ピッ

簪「『山嵐』の弾道ミサイル数48! 全ての軌道、マニュアル制御開始!」

ガチャン!

簪「力を貸して、打鉄弐式!!」 カチッ

ドドドドド……!
バシュゥゥ……
202 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/12(金) 20:30:07.02 ID:vDg07YwJ0
ゴーレムE「!」

シュゥゥ……!
ボンッ! ボンッ!

ドカーン!!

ゴーレムE「……!」 ドウッ

簪「まだ来るの!?」

ゴーレムE「……」 バシュン! バシュン!

箒「はっ!」 ドウッ

ガキン! ガキン!

箒「っ、紅椿! 見せてみろ、お前の力を!!」 ガチャン

紅椿『装備展開:穿千』

紅椿『穿千:出力可変型ブラスター・ライフル』

箒「ええい、わけのわからない説明はいい!」 バッ

箒「左腕、もらったぞ!!」 バンッ!

ズバァッ!

ゴーレムE「!」

箒「任せた!」

簪「はぁっ!」 カチッ

ドドドドド……!
バシュゥゥ……

簪「アクアクリスタル……お願い!」

ボンッ! ボンッ!
ドカーン!!

ゴーレムE「ッ……」 ギギギギ……

簪「っ!? 効いてないの!?」
203 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/12(金) 20:40:09.35 ID:vDg07YwJ0
ピピッ

楯無『簪ちゃん……』 ザザッ

簪「っ、お姉ちゃん?」

楯無『お守りの出番ね……!』 パチンッ

ボンッ!

ゴーレムE「!!」

簪「っ! アクアクリスタルが……!!」

ボンッ! ボンッ!

ゴーレムE「……」

キィィィ……!
ドガーン!!

簪「あっ……やった……!」

簪「やったよ、お姉ちゃん!!」

楯無『イェーイ……!』 グッ

ヒュゥゥ……
スタッ

貴虎「終わったようだな」

簪「うん……ありがとう、貴虎」

貴虎「あぁ、私も礼を言う。よく戦ってくれた、更識」

簪「っ! うん!」

箒「貴虎、他のアリーナにも敵が!」

貴虎「わかっている。だが……すまないが、助けには行けない」

楯無「大丈夫よ、貴虎くん。他のコたちだって、専用機持ちなんだから」

貴虎「……そうだな。あいつらの実力を信じよう」
204 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/12(金) 20:49:45.42 ID:vDg07YwJ0
そのころ、各アリーナ


鈴「はぁっ!」 ズバッ!

ゴーレムA「……」 バタッ

鈴「ふぅ……セシリア」

セシリア「えぇ、終わりましたわね」

……
…………

シャル「はっ!」 グサッ!

ゴーレムB「……」 バタッ

シャル「やった……!」

ラウラ「あぁ……!」

ガシッ

シャル「みんなも無事かな?」

ラウラ「心配はいるまい」

シャル「……そうだね」
205 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/12(金) 20:50:31.30 ID:vDg07YwJ0
それから、しばらく経って


真耶「やはり、無人機の発展機……コアは未登録、回収できたのはふたつです」

千冬「……政府には、全て破壊したと伝えろ」

真耶「ですが、それでは学園を危険に晒すことになります!」

千冬「おいおい……私を誰だと思っている?」

千冬「学園のひとつやふたつ、守ってやるさ」

千冬(……命をかけて、な)
206 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/12(金) 21:00:06.42 ID:vDg07YwJ0
ところ変わって、保健室


楯無「ん……」 パチッ

簪「あっ、お姉ちゃん!」

楯無「簪ちゃ……っ!」 ムクッ

簪「動いちゃダメ! 傷、浅くないから……」

楯無「うん……」

楯無(こうして、簪ちゃんと話すの、何年ぶりだろう……)

楯無(あのとき、貴虎くんにお願いしたおかげかな……)

楯無(私、どうして彼にお願いしたのかしら……)

楯無「……」

簪「……あのね、お姉ちゃん」

楯無「ん?」

簪「……今まで、ごめんなさい!」

楯無「……」

簪「私、ダメな妹だから……」

楯無「……そんなことないわ」 ナデナデ

簪「っ!」

楯無「あなたは、私の大切な妹。とても強い、私の妹」

簪「っ……お姉ちゃん……!」 ポロッ

簪「お姉ちゃん……お姉ちゃん!!」 ポロポロ

楯無「……」 ナデナデ
207 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/12(金) 21:10:03.10 ID:vDg07YwJ0
そして後日、貴虎の部屋の前


簪「……」

コンコン
ガチャ

貴虎「誰だ……っ、更識か」

簪「あの……貴虎、これ」 スッ

貴虎「これは?」 ガサガサ

貴虎「……ヒーロードラマのDVD?」

貴虎(仮面ライダー……どこかで見たような姿だ)

簪「その……もし、よかったら……一緒に、見ないかなって……」

貴虎「……あぁ、すまん。今は……」

楯無「貴虎くーん、お客さんって誰ー?」 スッ

簪「え?」

楯無「あっ」

貴虎「っ……なぜ出てきた……」

簪「お姉ちゃん!? どうして、貴虎の部屋に……」

楯無「あっ、えっと……違うの、簪ちゃん。これは……」

簪「もしかして、お姉ちゃんと貴虎って……!!」

楯無「違うわ! 誤解よ、簪ちゃん!!」
208 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/12(金) 21:19:30.89 ID:vDg07YwJ0
貴虎(随分と慌てているな……珍しい)

貴虎(まったく、勝手に部屋に入るからだ。こいつには、いい薬だろう)

貴虎「……」

貴虎(先日の襲撃以来、斬月は起動しなくなった)

貴虎(案の定、スイカのロックシードも消えてしまった)

貴虎(俺は、この世界で戦う術を失った)

貴虎(だが……だからといって、絶望したわけではない)

貴虎(依然として、明らかになっていない謎が、数多く残っている)

貴虎(無人機の襲撃、亡国機業[ファントム・タスク]、織斑マドカ……)

貴虎(それらを紐解いていくことで、再び斬月が使えるようになるかもしれない)

貴虎(そうだ、俺は諦めない)

貴虎(全ての謎を解き明かし、必ず向こうの世界へ戻ってみせる!)
209 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/04/12(金) 21:20:30.02 ID:vDg07YwJ0
今回はここまで
次回は『第四話 ワールド・パージ』

次はOVAの内容だから、見たことない人にはわかりにくいかもしれない
あと、謎を解き明かすとか言ってるけど、このssはISのアニメ2期を下敷きにしてるから、そっちで明かされなかった謎は宙ぶらりんになると思う
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/12(金) 22:15:27.12 ID:Rgwy/uAz0
乙。
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/12(日) 18:15:27.46 ID:KV8aVE6W0
待ってまーす
212 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 20:01:41.19 ID:dDM//58kO
それじゃ、続き投下していく
大変長らくお待たせして、本当に申し訳ない

何度も書き直したから、ところどころ描写が雑かったりくどかったりするかもしれない
そういう部分はノリで読んでほしい
213 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 20:02:07.22 ID:dDM//58kO
『第四話 ワールド・パージ』


束「……」 ピッ ピッ

ピコン

束「おぉっ!」

束「うーん、そっかそっか。あそこにあるのかー」

ピピッ

???『束さま、パンが焼けました』

束「はいはーい!」 ピョンッ

タタタッ

束「お待たせー!」

束「わぁーっ、いい匂いだねー!」 スンスン

???「……」 ニコッ

束「で、クーちゃん。ちょっとお使い頼まれてくれないかなー?」

???「はい、なんなりと」

束「もー、堅いよ! クーちゃんは、束さんのことを『ママ』って呼んでいいんだよ?」

???「……すみません」

束「それで、お使いっていうのは……」 チラッ

束「わぁ! 今日のパンも美味しそう!」 パクッ

???「……」

束「うん、これこれ! うまいぞー!」 モグモグ

束「で、届けものをしてほしいんだよね」 ゴクッ

???「……はい」
214 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 20:12:51.03 ID:dDM//58kO
ところ変わって、IS学園の食堂


箒「……」 ジーッ

セシリア「……」 ジーッ

鈴「……」 ジーッ

ラウラ「……」 ジーッ

簪「……あ、あの……」

簪(なに、この状況……)

鈴「で?」

シャル「まぁまぁ。鈴、落ち着いて」

シャル「ね? 簪さん、怯えちゃってるし」

ラウラ「やめろ、シャルロット。本当ならば、拷問か自白剤の投与を行いたいのを、私はギリギリ耐えているのだぞ」

簪「えぇっ……!?」

シャル「そういうこと言わないの」

シャル「簪さん。これ、どうぞ」 コトッ

シャル「喉、乾いたでしょ?」

簪「あ……ありがとう」

シャル「ふふっ……」 ニコッ

シャル「……それで、実際どうなのかな?」 ギロッ

簪「ひっ……」 ビクッ
215 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 20:20:08.52 ID:dDM//58kO
簪「えっと……何が……?」

バンッ

箒「だ、だからだな! 貴虎と……だな!!」 ガタッ

セシリア「つ、付き合ってますの!?」 ガタッ

簪「っ!」 カァッ

簪「わ、私と貴虎は……そういうのじゃ……」

簪「それは、その……希望がないわけじゃ、ないけど……」

簪「……とにかく、そういうのじゃ……」

箒「……そ、そうか」

鈴「はぁ……」

ラウラ「……フッ」

簪「あの、えっと……」

シャル「あははっ。ごめんね、簪さん」

セシリア「どうやら、思い過ごしだったようですわね」

箒「すまなかったな、更識……さん」

簪「あっ……簪で、いい」

鈴「じゃあ、あたしらも呼び捨てでいいから」

簪「っ、うん!」

ラウラ「せっかくの同学年だ。今度、放課後に実戦訓練でもどうだ?」

簪「あっ……うん。ありがとう」 ニコッ
216 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 20:30:34.42 ID:dDM//58kO
シャル「いいね、それ。けど……」

セシリア「それは、もう少し先になりそうですわね」

箒「この間の無人機の襲撃で、専用機は全部修理に回されてしまったからな」

鈴「パーソナルロックモードで、当分ISが使えないっていうのは、面倒よね……」

シャル「貴虎に至っては、学園の外までメンテナンスに行っちゃったしね」

簪「うん。あのときも……貴虎の斬月は、あまり良くなさそうだった」

ラウラ「待ち遠しいな。やはり貴虎とは、万全の状態で決着をつけなければ……」

バンッ

箒「っ! 何だ!?」

セシリア「照明が……!」

ガタンッ ガタンッ

簪「シャッターまで……!」

ラウラ「……シャルロット」

シャル「うん……緊急用の電源にも切り替わらないし、非常灯もつかない。おかしいよ」

ピピッ

千冬『専用機持ちは全員、地下特別区画へ集合。マップは転送する』

鈴「なんかヤバそうね……」

箒「……行こう、みんな」
217 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 20:40:19.04 ID:dDM//58kO
貴虎「倉持技研……ここか」

貴虎(あの襲撃事件をきっかけに、俺は斬月の不調を織斑に知られてしまった)

貴虎(それから、学園で複数の検査を受けたが……結局、その原因は明らかにならなかった)

貴虎(そして、その結果を受けて……織斑から、ここで修理を受けるよう命じられた)

貴虎(何でも、斬月の開発元は、一応ここということになっているらしい)

貴虎(もっとも……サガラの用意したこの機体が、まともに修理できるかは疑問だが……)

貴虎(それでも、今のこの状況は、俺にとって非常にまずい。考え得る対応は、全て試してみるべきだろう)

貴虎「……」 テクテク

貴虎(暗いな……人の気配もない)

貴虎「……誰かいないのか?」

パッ

貴虎(っ、照明がついた……) クルッ

???「ヒヒッ!」 バッ

貴虎「っ!」 サッ

???「ヘイヘイ、そこのイケメン。ワタシの部屋でイイコトしようぜぇ?」 スッ

貴虎「……」 ガシッ

???「おっと、さすがに反応が早いなぁ」 パッ

???「アハハッ! 呉島クンだねぇ?」

貴虎「何者だ?」

???「ワタシの名前は篝火ヒカルノ。倉持技研第二研究所の『所長』だよ」

貴虎「……そうか」
218 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 20:50:08.25 ID:dDM//58kO
ヒカルノ「話は聞いてるよ。なんか不調なんだって?」

貴虎「あぁ。斬月……私の専用機がな」

貴虎「一度、学園でも調査したが、原因を知ることはできなかった」

ヒカルノ「そのデータは、あらかじめもらってるよん。見た目の数値だけなら、万全って感じなんだけどねぇ」

貴虎「だからこそ、こうして専門の機関に依頼したい」

ヒカルノ「オッケーオッケー。IS本体の展開ができないんだよねぇ?」

貴虎「その通りだ。装備の展開は、まだ辛うじてできているが……」

貴虎(ロックシードに関しては、可能な限り情報を伏せておこう。不要な問題を発生させないためにも、な)

ヒカルノ「なぁるほどねぇ。まっ、とにかくコッチで見てみないことには、わからないな」

貴虎「時間がかかりそうだな」

ヒカルノ「そりゃそうだよぉ。キミは釣りでもして来なさい」

貴虎「いや、私はひとまず学園へ戻る」

ヒカルノ「そう? んじゃ、終わったら連絡入れよっか」

貴虎「構わん……あぁ、それと」

ヒカルノ「んー? なーんか気になるコトでもある?」

貴虎「装備に関してだが……既に外して、学園に置いてきている。よって……」

ヒカルノ「おっとぉ……ん、オッケー。じゃ、それは必要になったら、持ってきてもらうよ」

貴虎「あぁ。手間をかけさせるが、よろしく頼む」

貴虎(さて……斬月のことは、一旦ここに任せよう)

貴虎(調べなければならない謎は、未だ数多く残っている。時間を無駄にするわけにはいかない……)
219 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 21:00:16.81 ID:dDM//58kO
そのころ、IS学園
地下特別区画


シャル「わぁ……」

箒「地下に、こんな場所があったなんて……」

コツコツ

千冬「全員、揃っているな」

鈴「はい!」

千冬「では、状況を説明しておく」

千冬「現在、学園の全てのシステムがダウン、ハッキングを受けているものだと断定する」

ピピッ

真耶『今のところ、生徒に被害は出ていませんが……何としても、学園のコントロールは取り戻さねばなりません』

真耶『そこで、皆さんにはこれから、ISコアネットワーク経由の電脳ダイブをしていただきます』

セシリア「電脳ダイブ……」

鈴「それって、もしかして……」

ラウラ「IS操縦者の保護神経バイパスから、電脳世界へと仮想可視化しての侵入……というやつか」

シャル「理論上可能なのは知ってるけど……」

箒「……」

千冬「各人スタンバイ、作戦を開始する!」

全員「「了解!」」

千冬「更識簪は、ダイブのバックアップを」

簪「はい」
220 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 21:10:00.45 ID:dDM//58kO
……
…………

ゴォォォ……

箒「これが、電脳ダイブ……」

鈴「これってアレみたいよね。ほら、人間ドックだっけ?」

シャル「CTスキャンのこと?」

ピピッ

千冬『無駄口を叩くな』

ラウラ「……」

簪『それでは、仮想現実の世界に接続します』

簪『皆さんは、システム中枢の再起動に向かってください』

簪『では……始めます』

ピッ

『エントリー』

ピカーン
サァァァ……

箒(っ、光が……)

箒(意識が……遠のく……)
221 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 21:10:54.32 ID:dDM//58kO
……
…………

簪「電脳ダイブ、成功しました」

千冬「よし……さて」 チラッ

楯無「……」 スッ

千冬「お前には、別の任務を与える」

楯無「何なりと」

千冬「まもなく、何らかの勢力が学園にやって来るだろう」

楯無「……排除、ですね」

千冬「そうだ。今のあいつらは戦えない」

千冬「悪いが、頼らせてもらう」

楯無「はい」
222 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 21:20:04.06 ID:dDM//58kO
それから、電脳世界


箒「……ん……」 パチッ

セシリア「ここは……」

シャル「……何なんだろう、このドア」

ラウラ「おあつらえ向きに、5つあるな」

鈴「……入れ、ってこと?」

ピピッ

簪『多分、そう』

簪『この先は通信が安定しないから、各自の判断で中枢へ』

箒「了解した」 ピッ

ガチャ
ウィィィン……

鈴「っ、開いた……」

箒「……行こう」 スッ

セシリア「えぇ……皆さん、お気をつけて」 スッ

鈴「そうね。こうなりゃ、一丁やってやりましょ」 スッ

シャル「うん、頑張ろう」 スッ

ラウラ「健闘を祈る」 スッ

シュゥゥ……
ガチャン

……
…………

???『ワールド・パージ、開始』
223 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 21:30:02.65 ID:dDM//58kO
それから、鈴の電脳世界?


鈴「ん……」 パチッ

鈴「……あれ!?」 ガタッ

鈴「何よ、ここ……学校?」 キョロキョロ

鈴「これ、中学のときのセーラー服……!」 サワサワ

鈴「っ……甲龍が、なくなってる……」

鈴「……こりゃ、罠ね」

ガラッ

鈴「っ!」 バッ

貴虎?「よう、鈴」

鈴「た、貴虎!?」

鈴(『今の』じゃない……あの頃の、中学のときの……)

貴虎?「……どうした?」

鈴「いや、えっと……何?」

鈴「そもそも、なんであたしのこと『鈴』って……」

貴虎?「なぜ、だと……?」

貴虎?「お前が、そう呼べと言ったんだろう?」
224 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 21:44:20.96 ID:dDM//58kO
鈴「あたしが……?」

貴虎?「あぁ。俺と付き合い始めたときだ……まさか、忘れたのか?」

鈴「つ、付き合う!?」

鈴「付き合うって……あたしと貴虎が!?」

貴虎?「……本当に、どうした? 具合でも悪いのか?」

鈴「べ、別に……大丈夫」

鈴(どういうこと? ここは、そういう電脳世界なの?)

貴虎?「そうか……なら良かった」

貴虎?「実は……今日、鈴の家に行こうと思ってな」

鈴「えっ!?」

貴虎?「いいだろう、鈴?」

鈴「……うん」 コクッ

鈴(明らかに、おかしいのに……でも……)

鈴(なんでだろう……なんだか、気持ち良くて、逆らえない……)

鈴(そうよ……この世界こそ、あたしの……)

……
…………

???『ワールド・パージ、完了』
225 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 21:53:00.43 ID:dDM//58kO
……
…………

ザーッ

鈴「ハァ……ハァ……」 タタタッ

ガラッ

鈴「ふぅ……」 ビシャビシャ

貴虎?「まさか、いきなり降り出すとはな……」 ビシャビシャ

鈴「本当ねー。あぁ、もうグショグショ……」

パサッ

鈴「あっ、タオル……」

貴虎?「少し動くな。拭いてやる」 フキフキ

鈴「う、うん……ありがと……」

貴虎?「体も拭いてやろう、鈴」

鈴「っ!? 何言ってんのよ、バカ!」 バッ

貴虎?「フッ……可愛いヤツめ」

鈴「もう……!」 タタタッ

ガラッ
ピシャン

鈴「ハァ……」 グデッ
226 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 22:00:04.95 ID:dDM//58kO
鈴「……とにかく、着替えないと」 スクッ

ガラッ

鈴「ひゃっ!?」

貴虎?「鈴、シャワーを借りたぞ」

鈴「こ、ここ、あたしの部屋……っていうか、なんか着なさいよ!」

鈴(見ちゃった……貴虎の、裸……!!)

貴虎?「……」 ズンズン

鈴「ちょっ……貴虎……!」

貴虎?「……」ギュッ

鈴「あっ……あぁ……!」

貴虎?「鈴……お前が欲しい」

鈴「っ!!」

鈴「……………………うん」 ポソッ

貴虎?「……」 グイッ

ドサッ

鈴(っ、ベッドに……)

貴虎?「鈴……綺麗だ……」 サワサワ

鈴「あっ……たか、とら……」

貴虎?「脱がすぞ」 スッ

鈴「……うん……」

鈴(どうしよう……貴虎に、あたしの全部、見られちゃう……)

鈴(あたし……このまま、貴虎と……!!)

……
…………
227 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 22:10:10.01 ID:dDM//58kO
そのころ、セシリアの電脳世界?


セシリア「……わかりました。そういうことでしたら、もっと各グループ企業が密に連絡を取り合ってくれないと、困りますわね」

『申し訳ありません。また後日、報告を』

セシリア「では」 ピッ

セシリア「ふぅ……」 スッ

チンッ

セシリア「ふふっ……」

コンコンコン
ガチャッ

貴虎?「お呼びですか、代表」

セシリア「むっ……もう! ふたりきりのときは、わかっているでしょう?」

貴虎?「フッ……そうだな、セシリア」

セシリア「そうですわ、貴虎さん……」

セシリア(呉島家は、代々オルコット家に仕える家柄で、昔からずっと一緒に……)

ザザッ

セシリア(っ……ずっと、一緒に……?)

セシリア(そう……まるで、世界から切り離されているように心地よい……)

セシリア(ずっと、浸っていたい……)

セシリア(ずっと……)

……
…………
228 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 22:20:17.16 ID:Lt5qhgLT0
バスルーム


セシリア「さて、と……」 パサッ

セシリア(今日は、週に一度の特別な日……)

セシリア「はぁ……」 チャポン

セシリア(そう……貴虎さんが、背中を流してくださる日……!)

コンコンコン

貴虎?『セシリア、入るぞ』

セシリア「っ、えぇ! よろしくってよ」

ガチャ

貴虎?「では、さっそく始めよう」

セシリア「はい……お願いしますわ」

貴虎?「いくぞ……」 サワサワ

セシリア「っ! 貴虎さん……!」 ピクッ

セシリア(恥ずかしいですけど、やっぱり気持ちいい……)

セシリア(わたくし……このまま、貴虎さんと……!!)

……
…………
229 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 22:28:56.22 ID:Lt5qhgLT0
そのころ、シャルの電脳世界?


シャル「ふんふんふーん」 フキフキ

シャル「ふぅ……よし」

「シャルロット……」 ボソッ

シャル「わぁ!」 ビクッ

シャル「お、驚かせないでください、ご主人さま……」

貴虎?「『ご主人さま』ではない」

貴虎?「一週間後には、もう『夫』だ」

シャル「ま……まだ、その……メイド、ですし……」

シャル(僕は、この呉島家に仕えるメイド)

シャル(妾の子で、いくところのなかった僕を、ご主人さま……貴虎が拾ってくれて……)

シャル(しかも、プロポーズまで……)

シャル(もうすぐ、僕と貴虎は……『ご主人さま』と『メイド』じゃなくて……)

貴虎?「なるほど……『まだ』メイドか。なら……」

貴虎?「俺の命令には、従うのだな?」

シャル「はい!」

貴虎?「フッ……」 グイッ

シャル「きゃっ……!」

貴虎?「俺だけの、愛しいメイド……」 ギュッ

シャル「あっ……貴虎……!」 ドキッ

貴虎?「俺のモノだと分かるよう、印をつけておこう……」

シャル(こ、これって……ついに、そういうことなのかな……)

シャル(僕……このまま、貴虎と……!!)

……
…………
230 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/17(金) 22:29:25.48 ID:Lt5qhgLT0
今日はここまで
続きはまた明日
231 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/18(土) 20:05:20.67 ID:x7MDP7cvO
それじゃ、投下していく
232 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/18(土) 20:05:55.26 ID:x7MDP7cvO
そのころ、ラウラの電脳世界?


貴虎?「……」 トントン

ラウラ「……」 ペラッ

貴虎?「……」 ジュージュー

ラウラ「……」 ズズッ

貴虎?「……」 カチャカチャ

貴虎?「……よし」 ピタッ

貴虎?「ラウラ、夕食ができたぞ」

ラウラ「おぉ、いつもすまんな」

貴虎?「気にするな。夫婦であれば、家事を分担するのは当然のことだ」

ラウラ「っ……そうだな。私たちは、ふ……夫婦、なのだから……」 テレッ

貴虎?「ところで、明日は休みだったな」 スッ

ラウラ「っ、あぁ……そうだ……」 チラッ

貴虎?「つまり……」 テクテク

ギュッ

ラウラ「っ! 貴虎……」

貴虎?「久しぶりに、お前と一緒の床につけるということか」 サワサワ

ラウラ「お、おいっ……まだ食事中だぞ……」

貴虎?「……いや、悪いが我慢できん」 グイッ

ラウラ「あっ……」

ラウラ(感じる……貴虎の、激しい熱を……)

ラウラ(私は……このまま、貴虎と……!!)
233 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/18(土) 20:13:12.81 ID:x7MDP7cvO
そのころ、ところ変わって


楯無「……」

ピッ

『侵入警報』

楯無「……さて、と……」

シュゥゥ……

兵士A「侵入完了」 スタッ

兵士B「こっちだ」 タタタッ

兵士C「配置につけ」 クイッ

兵士D「……なぜ、こんなに霧が……?」 カチャッ

「うふふふふ……」

兵士D「っ!」 クルッ

楯無「随分と短時間で突入してきたわね。常時監視してる、ってことかしら?」 バッ

扇子『迎賓』

兵士A「……」 カチャッ

ダダダダダッ

楯無「……」 スッ

バシャッ

兵士B「何っ!?」

兵士C「銃弾が、止まって……!」

楯無「ふふっ……なんちゃってAICよ」
234 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/18(土) 20:20:17.31 ID:x7MDP7cvO
楯無「ポチッとな」 パチンッ

ボンッ! ボンッ!
ドカーン!

兵士A「ぐぁああ!」 バタッ

兵士B「くっ……!」

楯無「どう? 清き熱情[クリア・パッション]のお味はいかが?」

兵士C「っ……」 スクッ

楯無「こういうのって、だーい好き……」

兵士D「うぉぉおおおお!!」 ブンッ

楯無「おっと……」 さっ

兵士A「くぅ……っ!」 カチャッ

兵士B「クソッ!」 カチャッ

ダダダダダッ

楯無「……」 ピョンッ

楯無「はぁっ!」 ブンッ

兵士C「ぐぁっ!!」 バタッ

楯無「はっ!」 ドカッ

兵士D「っ、うぅ……!!」 バタッ

楯無「ふっ……!」 ザッ

兵士A「っ!!」 バタッ

楯無「はぁああっ!!」 ドンッ

兵士B「ぐぁああっ!!」 バタッ

楯無「ふぅ……こんなもんかしら」 スッ
235 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/18(土) 20:35:44.84 ID:x7MDP7cvO
兵士C「うぅ……」 ガクッ

楯無「まったく、無粋なんだから……」 ピッ

楯無(国籍はアメリカに違いないわね……)

楯無(でも、システムダウンから突入までの時間差……なぜ、同時ではなかったのかしら……)

楯無「……っ! まさか、ハッキングは別の勢力……!?」

兵士D「くぅ……っ!」 カチャッ

バンッ!

楯無「がぁっ!?」 グラッ

楯無(まだ、動けたなんて……!) バタッ

ドクドク……

楯無(このままじゃ……誰か……)

楯無「たか、とら……くん……」

コツコツ……

兵士A「おい、その女を運ぶぞ……」 ヨロヨロ

コツコツ……

兵士B「あぁ……」 スクッ

「いや、それは不可能だ」

兵士C「何っ……!?」 バッ

貴虎「……」 コツコツ

兵士D「っ! あれは……斬月……!!」

貴虎「……生憎だが、今ここに斬月はない」 ピタッ
236 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/18(土) 20:43:01.95 ID:x7MDP7cvO
兵士A「っ……!」 バンッ!

貴虎「フンッ!」 ブンッ

ガキン!

兵士B「銃弾を、刀で……!?」

貴虎「学園へ戻ってみれば、なぜか正門にロックが掛けられ……」 カチャッ

キュィィン……
バキュン!

兵士C「ぐぁああっ!!」 バタッ

貴虎「無理に押し入ってみれば、あらゆるシステムがダウン……」

兵士D「うぉぉおおおおっ!!」 ブンッ

貴虎「ハッ!」 ズバッ

兵士D「がっ……!」 バタッ

貴虎「手がかりを求め歩いてみれば、遠くから銃声が聞こえ……」 ダッ

兵士A「っ!?」

貴虎「フッ!」 ドカッ

兵士A「うっ……」 バタッ

貴虎「何が起きたのか疑問だったが……まさか、こんなことになっていたとはな」 チャキッ

兵士B「ま、待て……!」

貴虎「ハァッ!」 ズバァッ!

兵士B「うわぁぁああああ!!」 バタッ

貴虎「ふん……」
237 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/18(土) 20:50:42.26 ID:x7MDP7cvO
貴虎(まったく……持ち歩くものだな、無双セイバーは)

楯無「……貴虎、くん……」

貴虎「動くな。すぐに手当てして……」

楯無「私は大丈夫……それより、この場所に行って……」 ピッ

楯無「みんなが危ない……だから、早く……!!」

貴虎「……わかった。だが、まずは……」 ガサガサ

貴虎「この水で傷口を洗え。口はつけたが、ある程度は清潔なはずだ」 スッ

貴虎「それから、このシャツを傷口に巻いて、上で結べ。圧迫し続ければ、いずれ血は止まる」 ヌギッ

楯無「ありがとう……」

貴虎「あぁ……では、行ってくる」 ダッ

楯無「……お願い、貴虎くん……」
238 : ◆QNL99VWo9I [saga]:2019/05/18(土) 20:51:18.86 ID:x7MDP7cvO
そのころ、地下特別区画


簪「……」 ピッ ピッ

ビビッ

『WARNING』

簪「えっ……!?」

簪「これって……」 ピッ ピッ

ビビッ ビビッ
ビーッ ビーッ

簪「ダメ……このままだと、みんな戻れなくなる……!!」 ピッ ピッ

ビーッ ビーッ

簪「どうしたら……」

ウィンッ

「私だ! 誰かいるか!?」

簪「っ! 貴虎!?」 クルッ

貴虎「っ、更識!」 タタタッ

貴虎「一体、何があった?」

……
…………
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