他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
BBS2ch
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報VIP
更新
検索
全部
最新50
屍男「おい、そこのロクでなし」吸血娘「なんだ髪なし」
Check
Tweet
275 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/22(金) 19:03:18.86 ID:YaGPf5cZo
屍男「細胞の一つ一つに接触したガスは細胞内で一種の凝固剤のように固まる。再び霧に戻れないようにな」
吸血娘「……!?」
屍男「これでお前はもう霧化の能力を使えない。少なくともこの戦闘の間は」
吸血娘(クッ……な、なんてものを用意してやがったんだ。きっとパパも……このガスにやられたんだ)
吸血娘(……ッ!)スゥゥ
吸血娘(全身は霧化出来ないけど、一部なら……可能だ。ガスの効きが悪かったのかどうか知らんけど、不幸中の幸いだな)
吸血娘(でも……どうする。私の最大の武器が封じられた。まさか……こんな兵器を使ってくるなんて、思いもしなかった)ギリッ
吸血娘(腐っても、伝説の狩人の名は伊達じゃないってことか)
276 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/22(金) 19:07:33.55 ID:YaGPf5cZo
屍男「……貴様はまだ、自分の立場が理解出来ていないようだな」
吸血娘「……は?なんだと?」
屍男「その目はまだ勝機があると信じている目だ。自分の立場も客観的に評価出来ていない愚か者が」
屍男「同格以上の相手と戦った経験はあるか?自分を最強であると信じ込み、ピラミッドの頂点だと勘違いし続けた結果が今のお前だ。世界の真理を知らん、甘っちょろいガキだ」
屍男「教えてやる。今使ったこのガス兵器は俺が開発したわけではない。数世紀も前に産み出されたものだ」
屍男「俺はただ、その残された文献を探し出し、再現しただけだ。ヴァンパイアは不老不死の生物でも何でもない、対抗策は遥か昔からいくつも存在する」
吸血娘「……!?」
277 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/22(金) 19:10:11.60 ID:YaGPf5cZo
屍男「なぜヴァンパイアの数はこの21世紀にここまで減ったと思う?なぜ世界でこれだけの人類が繁栄していると思う?なぜお前達人為らざる者はその身を影に潜めている?」
屍男「世界の支配者はヴァンパイアでも、他の何者ない。ヒトだ、人類こそが、この星の頂点に立つ存在だ」
屍男「お前達は淘汰された存在なんだよ。ヒトに敗れ去り、歴史から葬り去られた哀れな種、それがヴァンパイアの正体だ」
吸血娘「……っ」
屍男「人外も怪物も幽霊も、全てはヒトの力に比べたら矮小なものだ。そして、その人の身すらも捨て、怪物に成り果てた俺にすらも……貴様は及ばない」
屍男「いつまで自分が上だと思い込んでいる?少しはそのくだらん自尊心を捨てろ。まともな勝負にしたいのならな」
吸血娘「……ぐっ」ギュッ
278 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/22(金) 19:10:48.99 ID:YaGPf5cZo
今日はここまで
やっと復帰出来ました
279 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/22(金) 21:40:20.25 ID:6QYeR/oNO
乙
本気出させるためにわざと煽ってる?
280 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/22(金) 23:37:47.85 ID:XmkdBCEDO
おつです
関連作も読ませて頂きました
最終的にどうなるのか…
281 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/23(土) 23:06:27.31 ID:s1BgEncpO
乙
吸血娘は死んでほしくないわ
282 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/25(月) 02:09:28.68 ID:110AKMkAo
死にたがってるのかハゲは?毛根は死んでるのに
おつ
283 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/25(月) 18:31:56.97 ID:iO32Lokmo
吸血娘「え、偉そうなこと言いやがって……てめえだって上から目線だろうが!!!!何様のつもりだ!!!!」
屍男「いいや、違うな。俺はお前と同じ目線で話している。その上で確信している」
屍男「お前は“下”だ。俺には勝てない。これは誰の目から見ても明らかな事実だ」
吸血娘「……っ!」
屍男「さて、次はどうする?俺はお前の出す手を全て読んでいる」
屍男「一つずつ……確実に潰し、詰みにしてやる」スッ
ポイッ
シュウウウウウウウウ……
284 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/25(月) 18:32:50.90 ID:iO32Lokmo
吸血娘「ッッ!!!!」バッ
吸血娘(これは……煙幕か!?)
吸血娘(視覚を封じに来たか……!不味いな、全身を霧化出来ないとなると、接近戦では圧倒的に私が不利だ。あいつの攻撃を全部躱さないと)
吸血娘(……四の五の言っていられないな。こっちも……使える手は全て使う!)
フッ
屍男「ッッッ!!!!!!」ブンッ
吸血娘「!?」サッ
285 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/25(月) 18:34:05.37 ID:iO32Lokmo
ギラッ
吸血娘(ぎ、銀のナイフ……!)
吸血娘(……ッ!ナイフの射程なら、私の霧化の方が速いっ……!)
スゥ
屍男「……」
吸血娘(よし……!右腹を刺しに来たが、上手くすり抜けた!)
吸血娘(このままあいつの喉笛に喰らい付くッッッ!!!!ヴァンパイアは秒速で3リットルの血を吸収することが出来る。常人なら数秒で全身から血を抜いて、干物にすることが可能ッッッ!!!!)
吸血娘(一秒でもいい……あいつから血を吸えれば、勝機が見えてくる!いくらあいつでも一気にこれだけの血を失えば弱体化するはず――)
ガシッ
吸血娘「――!?」ググッ
286 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/25(月) 18:35:00.57 ID:iO32Lokmo
屍男「全て読んでいると言っただろう。霧化を封じられたお前が接近戦で取る行動は一つ、俺から血を抜くことだ」
屍男「来ると分かっている攻撃なら、警戒も何も必要ない。ただこうやって待っているだけで寄ってくるのだからな」グッ
ギュウウウウウウウ……
吸血娘(や、やばっ……の、喉を、首ごと引き千切られる!!!!今すぐ霧化しないと!!!!)スゥ
屍男「そして、追い詰められたお前が取る行動は一つだ」グッ
ドゴォ!!!!!!!!
吸血娘「ガハッッッ!?」ボゴォ
吸血娘(く、首の霧化と同時に……腹を殴って……)
287 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/25(月) 18:35:55.20 ID:iO32Lokmo
吸血娘「ぐあっ……」ヨロッ
屍男「……終わりだ」ギラッ
シュッ
吸血娘「ッッ!?」
シュンッ
グサッ
屍男「……!」
屍男(……消えた?)
288 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/25(月) 18:37:02.51 ID:iO32Lokmo
クルッ
吸血娘「ガァッッッ!!!!!!!」ガブッ
屍男「ッ!?」ビクッ
ギュインッ……ギュインッ……
屍男(な……いつ背後に回られた?くっ、不味いな)
屍男「ッッッ!!!!」ブンッ
吸血娘「っ!!!!」サッ
ザッ
吸血娘「ハァッ……ハァッ……けっ、相変わらずクソまじぃ血してんなぁ!!!!ハゲェ!!!!!」ペッ
289 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/25(月) 18:38:34.55 ID:iO32Lokmo
屍男「……」ギュッ
シュゥゥゥ
屍男(……傷口は問題なく再生する。だが、あの一瞬でかなりの血を持っていかれたな)
屍男(確かに捉えたはずだ。だがナイフは当たらなかった)
屍男(この能力は……幻覚か。煙幕でこちらの視界も悪かったのを利用されたな)
吸血娘(くっ、完全に死角から襲ったのにコンマ数秒で反撃してきやがった……どんな反射神経してんだよこいつ……)
吸血娘(でも……やった。確実に、一矢報いてやったぞ!!!!)
290 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/25(月) 18:39:42.22 ID:iO32Lokmo
吸血娘(ハゲから吸った血は大体2リットル前後ってところか。あいつの体重から計算すると……三分の一に届くか届かないかってライン。並みの人間なら十分致死量に近い数値だけど)
吸血娘(……あのハゲがこんな簡単にくたばるわけないか。でも、間違いなく動きに影響は出るはずだ)
吸血娘(それに、次へ繋ぐことも出来た。あいつに噛み付いた時に与えた傷……あそこからなら眷属の攻撃も通せる!)
魔女「……見えないわね」ジー
魔女「ゾンビくんがスモークを使ったところまでは確認したけど、そこからは煙が濃くて何が起こっているのかさっぱり」
魔女「……もしかして、もう決着がついちゃったりしてないでしょうね」
魔女「……」
魔女「もうちょっと、近付いてみましょうか」ヒョコッ
291 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/25(月) 18:41:44.44 ID:iO32Lokmo
プーーーーーーン
吸血娘(……連れて来た眷属は50匹。これが私の操れる上限いっぱい)
吸血娘(見た目は普通の蚊と変わらないけど、薬剤耐性を持っている。生半可な蚊取り線香や虫よけスプレーなんかでは対策不可能)
吸血娘(それに、私の眷属は従来の蚊よりサイズが一回り小さい。この煙の中では視界に捉えて潰すのなんて至難の業。自分の仕掛けた罠が仇になったな)
吸血娘(勿論、モスちゃん達には私の血が入っている。ヴァンパイアの血は他の種族にとっては猛毒、これは怪物も例外じゃない……行ける)
吸血娘(よし!!一斉攻撃だ!!!!かかれ!!!!)
プーーーーーーン
292 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/25(月) 18:42:47.54 ID:iO32Lokmo
屍男「……」
屍男(次の手は十中八九、眷属の蚊を使った攻撃だろうな)
屍男(……仕方ない。予定にはなかったが、これを使うしかないか)
屍男(羽音が聞こえた時が合図だ)
シーーーーン
屍男「……」
屍男(そろそろか……)スッ
プーーーーーーン
屍男「ッ!!!!」カチッ
バッ
293 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/25(月) 18:44:22.79 ID:iO32Lokmo
ボォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!
ズドォォォォォォォン!!!!!!!!!!!
吸血娘「!?」
吸血娘「な、なんだ……今の音は……!!」キョロキョロ
吸血娘「ッ!?あつっ!?」ジュッ
吸血娘(はぁ!?これって地面が……燃えてる?いや、違う……辺り一面全部だ……ここら一帯が全部火に包まれてる!?)キョロキョロ
吸血娘(ま、まずい!!!!今すぐ離れないと!!!!!)ダッ
ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!
魔女「う、うそぉ……」
魔女「な、何これ……何が起こってるの?」
魔女「さっきまでゾンビくんとドラキュラちゃんが戦っていた場所が……山火事みたいに燃えてる……」
294 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/25(月) 18:45:28.75 ID:iO32Lokmo
吸血娘「はぁっ……!!」バッ
吸血娘「な、なんてことだ……こ、ここまでやるなんて……」ゲホゲホッ
吸血娘(この炎……どう見ても咄嗟に起こせるものじゃない。大掛かりな下準備でもしてないと不可能だ……!!)
吸血娘(あ、あいつ……事前にこの場所に細工してやがった!!!!地面に爆薬やら火薬やらガソリンやらを仕掛けてやがったんだ!!!!)
スタスタ スタスタ
吸血娘「……!!」クルッ
屍男「……」
吸血娘「こ、この…クソハゲ野郎……焼け野原にするのは自分の毛根だけにしとけ……!」
屍男「……」
295 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/25(月) 18:46:32.70 ID:iO32Lokmo
今日はここまで
次で決着がつきます
296 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/25(月) 20:12:40.40 ID:fXjoFslSO
やっぱり殺し合うほどの中っていいよなあ
おつおつ
297 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/25(月) 23:27:02.86 ID:e93HGsV5O
乙
298 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/26(火) 21:56:57.71 ID:iJoqas8/O
乙
緊張感あるな
299 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 02:46:20.26 ID:8jr8fejjo
吸血娘「テメェ!!!!何か仕掛けてやがったな!!!!!」
屍男「……あぁ、それがどうした?」
屍男「この場所を指定したのは他でもない、お前自身だ。そんな敵地に何も準備をせず、のこのこやってくる馬鹿がどこにいる?」
屍男「あらかじめこの場所には大規模な発火装置を仕掛けておいた。眷属への対抗策としてな」
屍男「蚊遣火、というこの国で使われていた風習も使わせてもらった。この炎で焼き払えなくとも、これだけの煙だ。いくらお前の眷属でも、まともに俺を探知して襲うのは不可能だ」
屍男「……まさか、卑怯などという言葉を使うんじゃないだろうな」
吸血娘「……ッ!」
300 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 02:47:57.98 ID:8jr8fejjo
屍男「これが狩人の戦い方だ。勝つために、生きるためならどんな手を使う、お前も知っているだろう」
屍男「そして、これでお前の用いる手は全て潰した。最終ラウンドだ」グッ
吸血娘「……」
吸血娘(……あれだけ用意した眷属が一瞬で灰になって消えた。こんな手を使ってくるなんて想像も出来なかった。発想のスケールで私は負けたんだ)
吸血娘(そうか、こいつの強さは……こういうところなんだ)
吸血娘(文字通りに、生き延びる為ならありとあらゆる手を使う。常識なんて言葉は存在しない。普通は考え付いても実行しないようなことを平然とやり遂げる)
吸血娘(覚悟と使命感の塊みたいなやつだ……私じゃとても敵わない)
吸血娘(……でもそれはあくまで最強の狩人『Shadow』が相手の話だ)
吸血娘(今のお前、ハゲの怪物相手なら……私も負けてないっ!!!!)
301 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 02:49:38.33 ID:8jr8fejjo
魔女「すごい炎……これは事前に何か仕掛けていたわね。頼まれた大量の火薬はこれに使うためだったのか」
魔女「……ドラキュラちゃんの眷属の対抗策ね。これだけの広範囲の炎は蚊だと回避は不可能。おまけにこの臭いは松の葉なんかも一緒に燃やして燻してる」クンクン
魔女「例え炎から逃げ延びても、この煙に囲まれてアウトってことか」
魔女「……ほんと、やることがぶっ飛んでるわ。こんなの普通は思いついても実行しないわよ。環境破壊もいいところね」
魔女「これでドラキュラちゃんに残された勝機は一つ……あの手しかない」
……………………………………………………………
………………………………………
302 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 02:51:24.72 ID:8jr8fejjo
プルルルルルル
魔女「……ん?この番号って――ドラキュラちゃん?」
ピッ
魔女「もしもし?どうしたの?」
『……ハゲのことは聞いてるか』
魔女「……」
魔女「えぇ、さっき本人から連絡があったわ。記憶が戻ったって」
魔女「……ドラキュラちゃんと戦うってことも」
『……そうか。なら話は早い』
魔女「ねぇ、本気?相手はあの“Shadow”よ?残酷なことを言うようだけど、ドラキュラちゃんが勝てる確率は限りなく0に近いわ」
魔女「ただでさえ手が付けられないのに、その執念で怪物として蘇り、再生能力と怪力を手に入れたのよ。この世界でアレに対抗出来る個人なんて……それこそ“Merry”くらいしかいないわ」
303 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 02:52:38.83 ID:8jr8fejjo
『……そうだ、あいつは私より遥かに強い。弱点なんて存在しないと思う』
『でも、それはあいつが人間だった時の話だろ。今は違う、あいつは人間(ヒト)じゃない。怪物(モンスター)だ』
魔女「……!それって、まさか」
『狩人が使う、対怪物用の銃を用意してくれ。それも一番強力なやつを』
『こいつでならハゲも倒せるはずだ。今のあいつは“Shadow”じゃない。ただの怪物なんだから』
魔女「……」
魔女「……えぇ、そうね。確かに――アナタが勝つにはその手しかないわ」
304 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 02:53:55.05 ID:8jr8fejjo
魔女「人間には存在しない弱点、怪物だからこそ、出来てしまった唯一の穴」
魔女「でも、実戦で通用するかどうかってなると話は別よ?」
魔女「銃の姿、構え、発砲音、撃つだけでもこんなに障害がある。これら全てをゾンビくんに認知されないってのが最低条件よ」
魔女「ゾンビくんのことだもん、絶対にその銃の存在を知られた時点で、即排除の対象になる。そうなったらもう遅いわ」
『……分かってる』
『私も、何も策を考えずにただ挑もうってわけじゃない。まだ誰にも知られてない、とっておきの作戦がある。これならお前が出した条件を全部クリアすると思う』
魔女「……その作戦って?」
『は?なんでお前に教えなきゃいけないんだよ。アホか』
305 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 02:55:35.46 ID:8jr8fejjo
魔女「……フフッ、そうね。その通りだわ」
魔女「いいわ、用意してあげる。対怪物用の一番強力な銃ね、承ったわ」
魔女「他の武器はいいの?怪物相手なら聖水とか塩とかもよく効くけど」
『いやいい。どうせそんな付け焼刃で用意した道具はあいつに存在を悟られた時点で通用しないことぐらい分かってる。一発勝負なんだから』
『あ、そうだ。言い忘れてたけど、出来るだけ早く届けてほしい。二日以内がベスト』
魔女「……二日?またずいぶん急いでいるのね。時間はまだあると聞いていたけど」
『こっちも準備が色々あるんだよ。金は商品が届き次第言い値で払ってやる』
『じゃあな。頼んだぞ』プツッ
306 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 02:57:33.30 ID:8jr8fejjo
……………………………………………………………
…………………………………………
魔女「……」
魔女「まだあの銃を使った形跡はない。ドラキュラちゃんはゾンビくんが知り得ているカードのみで戦っている。ジョーカーの存在は知られていない」
魔女「チャンスは一度だけ、ゾンビくんが勝利を確信した瞬間……ドラキュラちゃんの用意した作戦が通用するかどうかにかかっている」
魔女「……でも、そんなの本当にあるのかしら。不意打ちをするにしたって最低でも発砲音は聞かれる」
魔女「ゾンビくんならある程度の距離があれば銃弾を避けるのぐらいはわけないはず。回避が出来ないほどの近距離で使おうにも、そんな近くだと確実に銃を構える隙を突かれる……」
魔女「……!!!!」ハッ
魔女「……いや、あるわ。一つだけ……ヴァンパイアにしか出来ない、銃弾を当てる方法が」
魔女「で、でも……こんなの机上の空論。理論上は可能ってだけで、実際にやってみせたなんて話は見たことも聞いたこともない」
魔女「恐らくそれはゾンビくんも同じ。だから、まったくの無警戒、ノーマークのはず」
魔女「……この勝負、もしかしたら――」
307 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 02:59:25.17 ID:8jr8fejjo
ドガアッッッ!!!!!!!
吸血娘「くうっ!?」サッ
屍男「……!」ブンッ
吸血娘(もう私に残された手はこの銃しかない。あいつにはまだ知られていないはず……問題はどうやって隙を作るか、だ)
吸血娘(確実に当てるにはどうしてもあいつの気を何かに引かせないといけない。そうでもしないと、どんな方法を使って抵抗してくるか見当もつかないんだから)
吸血娘(……ダメだ!今の私の頭じゃ……予測出来ない!)
屍男「……ッッ!!!!」チャキッ
吸血娘「!!!!」
吸血娘(む、向こうも拳銃!使われているのは確実に銀の弾丸!!!!)
吸血娘(マズいっ……!即死しないように頭だけは守らないと!!)スゥ
308 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 03:00:26.37 ID:8jr8fejjo
バンバンッ!!!!!!!
ドンッ!!!!!!
吸血娘「ガッ……!?」グラッ
吸血娘(ね、狙われたのは脚……動きを制限してッ……)フラッ
屍男「ッッッ!!!!!!!」ダッ
吸血娘(!?に、逃げられなッ……防御しないと!!!!)グッ
シュンッ
ブシュッ!!!!!!!!
ボドッ
吸血娘「ッッ!!!!」ビクッ
吸血娘(う、腕が……!!)
309 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 03:01:30.40 ID:8jr8fejjo
屍男「……」スッ
吸血娘(クッ……!今度は防御出来ない!!確実に首を狙ってくる!!!!)
吸血娘(霧化で回避しても、さっきの攻防で同時に二か所の霧化が出来ないことはバレている……!!一時しのぎにしかならない……!!)
吸血娘(何か手は……!!手……ハッ!?)
屍男「……」ブンッ
吸血娘「はあああああああああああっっっ!!!!!!!」グッ
腕『』シュウ
スゥゥゥゥゥゥッ!!!!!
310 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 03:02:51.38 ID:8jr8fejjo
屍男「……!?」
吸血娘(お前がさっき切断した私の腕!!!!こいつを霧化して攻撃する!!!!)
吸血娘(噛み付いた跡の切り目から……衣類に侵入させる!!!!)
屍男「クッ……」バサッ
吸血娘(そして、この一瞬に出来た隙……)
吸血娘(これが……私の……答えだ)
吸血娘「受け取れええええええええええええ!!!!!!!!」チャキッ
バンッ!!!!!!!!!!!!
311 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 03:04:37.48 ID:8jr8fejjo
屍男「……!?」
屍男(銃声、やはり対怪物用の武器か)
屍男(この距離、完全に避けるのは不可能だが、急所を逸らすこと可能――)
シュウウウウ……
屍男(なんだ?銃弾が……見えない?空砲――)
屍男(――!?いや違うッ、これは――)
シュウウウウウウウウ……!!!!!!
ズドンッッッ!!!!!!!!
屍男「ッ……!?」グラッ
312 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 03:05:39.52 ID:8jr8fejjo
屍男(あぁ……そうか……それでいい……)
屍男(お前はそれで――これで俺も――死)
バタッ
屍男「」
313 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 03:09:58.39 ID:8jr8fejjo
魔女「……!!」
魔女「や、やっぱり……銃弾を霧化させて、当たる直前にそれを解除した……」
魔女(……ヴァンパイアは自分の肉体の細胞を最小まで分解して、粒子化することで霧の姿に変わることが出来る)
魔女(でも、それだけじゃない。なら霧化した後は普通、衣服などは全てその場に残るはず。つまり正確に言うとヴァンパイアの霧化は……自分の肉体と同時に、その回りにある物も分解し、粒子化出来る……ということになる)
魔女(つまり、理論上は触れさえしていれば何でも霧化出来る。例えそれが他者であろうと武器であろうと)
魔女(でも、ヴァンパイアがそんな攻撃方法を使うなんて話は聞いたことがない。それは多分、その物質を理解していないと分解出来ないから……と考えられる)
魔女(普段身に纏っている衣服何かはその構造を年月を経て自然と理解しているから、霧化をすることが可能)
314 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 03:12:24.06 ID:8jr8fejjo
魔女(ドラキュラちゃんは恐らくこの性質に幼い頃から気が付いていた。だからこそ、この技を編み出すことが出来た)
魔女(ドラキュラちゃんにとって銃は幼い頃から身近な存在だった。自分の敵が使う武器でもあり、時には自身も使っていた道具……その構造を知らず知らずのうちに、理解するようになっていた。だからこの短期間で銃弾を霧化をすることに成功した)
魔女(普通はヴァンパイアはその力が故に武器を使うなんてことはない。殺し屋をやっていたドラキュラちゃんだからこそ、この答えに辿り着いた――)
魔女「……決着ね。勝者は……ドラキュラちゃん」
魔女「…………」
魔女「ゾンビくん、アナタ本当は……」
315 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 03:13:16.93 ID:8jr8fejjo
吸血娘「はぁっ……はぁっ……」
屍男「」
吸血娘「どうだ……これで……私の勝ちだ……」
屍男「」
316 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 03:14:40.02 ID:8jr8fejjo
屍男「」
吸血娘「ハ、ハハ……アハハハハハハハ……」ポロッ
吸血娘「あ、あれ……な、なんで……涙が……お、おかしいな」グスッ
屍男「」
吸血娘「……うぅっ」ポロポロ
吸血娘「あ、ああぁぁぁぁ……うあああぁぁっ……」ポロポロ
317 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 03:15:17.80 ID:8jr8fejjo
今日はここまで
318 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/29(金) 03:15:54.86 ID:ZMlHxUbjO
乙
319 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/29(金) 04:09:14.47 ID:/kkJXTSQo
割りと戦法とか弱点がはっきりしてるヴァンパイアはわかるけど
人間の体でメリーと互角にやれるのは無理やろと思う
320 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/29(金) 08:05:36.76 ID:dwWeSzG8O
おつおつ
悲しいなあ
321 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/03/29(金) 10:15:20.59 ID:8jr8fejjo
>>319
これだけ名前を知られているメリーさんがまだ生きているのがまあ答えになっちゃいますね
322 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/29(金) 19:00:35.77 ID:8b2zYG8KO
乙
323 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/01(月) 23:22:11.71 ID:67XCk4KCo
…………………………………………………………………
…………………………………………
屍男「……」
屍男「……」
屍男「……ここは」キョロキョロ
屍男「……あの世か?」
324 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/01(月) 23:23:40.69 ID:67XCk4KCo
屍男「まさか、本当に実在するとはな。幽霊が存在するならおかしくはないか」
屍男「殺風景な場所だ。何もない……誰かいないのか」キョロキョロ
屍男「フッ、俺らしくもないな。今更人を探すなど……今までずっと、一人でやってきたじゃないか」
屍男「…………」
屍男「一人、か」
325 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/01(月) 23:25:12.82 ID:67XCk4KCo
スッ
屍男「……っ!?」ビクッ
屍男(なんだ、今、あの物陰に人影が)
屍男(――あの姿、まさか)ダッ
屍男「……!」
■■■「」
屍男「……あり得ない。こんなことが」
■■■「」
屍男「……どうやら、ここは本当に死者の世界らしいな。まさか……お前とまた相見えるとは」
屍男「……久しぶりだな」
■■■「」
326 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/01(月) 23:26:52.52 ID:67XCk4KCo
…………………………………………………
……………………………………
■■■「」
屍男(何も喋らないな。まるで人形のようだ)
屍男「……一応、報告しておく。仇は取った」
屍男「お前を殺した“紅眼”は俺がこの手で葬った」
■■■「」
屍男「……これで少しは、無念が晴れるといいんだがな」
屍男「…………」
屍男「あれから、本当に色々なことがあったんだ。俺は数え切れないほどの罪を犯した」
327 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/01(月) 23:27:56.81 ID:67XCk4KCo
屍男「後悔はしていない。だが……望むなら、また、あの日々に戻りたい」
屍男「……都合のいい話だな。結局俺は……逃げたかったんだ。自分の罪から……最初は俺も、あいつと同じ立場だったのだから」
屍男「まあもう……関係ない話だがな。俺はやっと死ねたのだから」
■■■「」スッ
屍男「!?」ビクッ
屍男(動いた?)
328 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/01(月) 23:29:14.81 ID:67XCk4KCo
■■■「」ジー
屍男「な、なんだ?」
■■■「――――」
屍男「!!!!」
■■■「」スゥゥゥ
屍男「ま、待て!!!!それはどういうことだ!!!!」
屍男「俺はっ……もうっ……!!」
■■■「」ニコッ
スゥ
329 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/01(月) 23:30:29.83 ID:67XCk4KCo
屍男「っ!!!!」
屍男「ど、どこに消えた!!!!おいっ!!!!」
パラパラッ……パラパラッ……
屍男(な、なんだ?これは……空間が、崩壊していく)
屍男(俺は……死んだはずだ。もう……未練はないはずなのに)
屍男(なぜ、あいつはあんなことを……)
スゥ
330 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/01(月) 23:32:00.38 ID:67XCk4KCo
屍男「!!!!!」バッ
屍男「……ここは」
魔女「ようやく起きたわね、お寝坊さん。一週間ずっと寝ていたのよ?」
屍男「!?」
屍男「な、なぜ……お前がここに」
吸血娘「……」スッ
屍男「!!!!」
屍男「……あぁ、そうか。俺は……死んでいないのか」グッ
屍男「なぜ、俺を生かしているんだ。さっさと殺せ。あの言葉は嘘だったのか」
331 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/01(月) 23:33:25.70 ID:67XCk4KCo
吸血娘「……お前に一つ、聞き忘れたことがあった」
屍男「は?何のことだ?」
吸血娘「過去についてだ。お前の過去、思い出したら教えてくれる約束だろ」
屍男「……」
屍男「馬鹿か。お前は……今更何を言っているんだ。早く殺せ」
吸血娘「負けたくせにうだうだ文句言ってんじゃねえよ。早く話せ」
屍男「そんなことはもうどうでもいい話だろ。なぜ父の仇である俺をまだ生かしているんだ」
屍男「お前の父に対する気持ちは偽りだったのか、今更情を持つな。ヒトでもない化け物が」
屍男「お前が俺を殺さないなら、勝負はまだ続いていると判断する。今、ここで決着をつけてもいいんだぞ」スッ
332 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/01(月) 23:34:52.73 ID:67XCk4KCo
魔女「ちょっ!?ゾンビくん!?」
屍男「……」
吸血娘「……」
吸血娘「下手な脅しはやめろよ。そんなの眼を見たら一発で分かる」
吸血娘「いいから、早く教えろ。お前の処遇はそれからだ」
屍男「……」スッ
屍男「……どこからだ。どこから話せばいい」
吸血娘「お前の人生の全てだよ。何があったのか全部だ」
屍男「……」
333 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/01(月) 23:35:44.11 ID:67XCk4KCo
今日はここまで
あと二回の更新で終わります
334 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/02(火) 01:07:42.88 ID:Yw1is7ebO
おっつー
335 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/02(火) 10:59:46.78 ID:xNnlA/kOO
物語も終盤だけどワクワクがとまらんな
336 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/02(火) 22:58:04.12 ID:qOwG7YnaO
乙
ハゲ死んでなかったんだな
337 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/04(木) 23:47:17.21 ID:5hpwG3Cvo
毛根は死んでるけどな
338 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 20:44:57.47 ID:v9qraTHso
屍男「……俺が生まれ育った場所は平凡な町だった。都会ではなかったが、そこまで田舎でもない。名前を出しても分からないような、そんなところだ」
屍男「家族構成は母が一人、父は俺が物心がつく頃にはもういなかった」
屍男「子供の頃に一度だけ、なぜ父がいないのか母に聞いたことがあった。母は離婚した、とだけ言い理由は話さなかった」
屍男「自然と俺も、そういうものなのだと理解し、それ以上は追及しなかった」
屍男「母は……とても立派な人だった。女手一つで俺を育てあげたのだからな」
屍男「不自由と感じたことは一度もなかった。だが、その陰では身を削るように仕事をしていたのだと思う。言葉には出さなかったが、俺はそんな母が自慢だった」
屍男「近所でもそんな母の評判は良かった。町を歩けば必ず母の知り合いに声をかけられたし、菓子を貰ったりもした。本当に……誰にでも優しく接することが出来る人だったんだと思う。俺と違ってな」
339 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 20:47:15.62 ID:v9qraTHso
屍男「……その中でも、隣に住む家族とは特に仲が良かった」
屍男「同じ歳の子を持つ親ということで、よく互いの家で食事会をしたりした。クリスマスは毎年その家族と祝ったりしていた」
屍男「……子供の頃の俺は、あまり友と呼べる存在は少ない方だった。こればっかりは生まれながらの才能というやつだろう。母にはその才能があったが、俺にはなかった」
屍男「だが、そんな俺に唯一接してくれたのが……その隣の家族の娘だった」
屍男「幼馴染、というやつになるんだろうな。彼女は暗い俺とは違い、母のような性格で、周りには常に友が溢れていた」
屍男「それを嫌味に振りかざす様子もない、まさに優等生だ。きっと、あのまま成長していれば……何かの分野で大成していたのは間違いないだろう」
吸血娘「……」
魔女「……」
340 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 20:48:36.69 ID:v9qraTHso
屍男「母と共に、俺は彼女を尊敬していた。何か困ったことがあれば力になりたいと思っていたし、いつか彼女の役に立ちたいと、そう思うようになっていた」
屍男「今にして思えば、俺は……彼女に恋心を持っていたのだろうな。いや……間違いないか」
屍男「俺は……好きだった。態度には出さなかったが心のどこかで、彼女を……」
屍男「だが、その想いが叶うことはなかった」
屍男「俺の16の誕生日に……彼女は殺された。その両親と、俺の母と共にな」
吸血娘「……」
341 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 20:49:41.99 ID:v9qraTHso
屍男「その日は四人揃って、家で俺の誕生日パーティーの準備をしていたそうだ」
屍男「前の年に、いい加減こんなガキみたいに祝ってもらう必要はないと言ったにも関わらずな。本当に……お節介な人達だ」
屍男「俺は用事があり、家に帰るのは遅くなる予定だった。その隙を見て、サプライズパーティーを企画したんだと思う」
屍男「俺が家に帰るとそこには……数台のパトカーが止まっていた。家にテープが貼られ、玄関には警官が見張っていた」
屍男「一瞬、嫌な予感を感じた。何かがあったのは明白だった」
屍男「最悪の事態を想像した。だが信じたくなかった」
342 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 20:50:37.53 ID:v9qraTHso
屍男「俺は警官に話しかけた。この家に住む者だが、何かあったのかと」
屍男「警官は神妙な顔をした後「ちょっと待っててくれ」と言い、家の中に入って行った。そして一分もしないうちに出てきた」
屍男「とりあえず、署に来てくれないか。詳しい話はそこで話そうと、そう言われた」
屍男「俺はそれに従うことにした。本当は何があったのか確認したかった。警官を押し退いてでも、家に帰りたかった」
屍男「だが……身体は動かなかった。怖かったんだ。そこに何があるのか、直接見るのが……俺はその場から逃げることにした」
屍男「そして、警察署で真実を告げられた。俺の母と、隣の一家は殺されたのだと」
343 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 20:51:45.16 ID:v9qraTHso
屍男「最初、警察は俺を疑っていたんだと思う。だが、アリバイがすぐに証明され俺は容疑者から外れた」
屍男「……俺は絶望した。今までにあった平和が、突如崩れ去った。何が起きたのか理解出来なかった」
屍男「母とは朝に顔を会わせた。いってらっしゃいと、いつもの日常のように家を出た。それが最後になるなんて、思いもしなかった」
屍男「……母の遺体を確認するまでは、とてもじゃないが信じられなかった。しかしそこには逃れない現実があった」
屍男「この世のありとあらゆる屈辱を受け、亡骸になった“母だったモノ”がそこにはあった」
屍男「今でもあの姿は鮮明に覚えている。今忘れていた己を恥じるくらいだ」
屍男「彼女もそうだった。生前の姿からは考えられない程、遺体は損傷が激しかった」
344 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 20:53:03.81 ID:v9qraTHso
屍男「皮は剥がれ、肉は削られ、苦痛に満ちた表情で死んでいた。実際はそんな顔ではなかったと思うが、俺にはそう見えた」
屍男「……俺は許せなかったんだ。彼女達が何をしたのか、なぜこんな理不尽な目に遭わなくてはいけなかったのか。犯人よりも、そんな不平等が許せなかった」
屍男「現場には壁に、血で描かれた巨大な眼が描かれていた。後から分かったことだが、こいつは“紅眼”と呼ばれている人為らざる者の仕業だった。無論、警察は捜査をしたが、相手は人外だ。手掛かりは何も見つからなかった」
吸血娘「“紅眼”……おい、お前は聞いたことあるか?」
魔女「……まあ、名前くらいはね」
魔女「二十年くらい前に有名だった人外よ。私も世代じゃないから詳しいことは知らないけど、その悪名が伝わっているくらいは凶暴なやつね」
吸血娘「……」
345 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 20:54:11.89 ID:v9qraTHso
屍男「俺は復讐を決意した。必ず、母やあの一家を殺した犯人を地獄に送ってやるとな」
屍男「そこからの流れは簡単だった。裏の世界に入り、“紅眼”の情報をひたすらかき集めた。その傍らで、狩人としての経験を積み、殺しのテクニックを磨いた」
屍男「だが、そう簡単には見つからなかった。“紅眼”は当時の狩人の世界でも、相当な懸賞金が懸けられていた大物だった。奴は姿を隠すのが上手かったんだ。いくら手掛かりを探しても、尻尾一つ見せなかった」
屍男「……だが、ここで俺はある人物と出会った。これが俺の運命を決定的に変えた」
吸血娘「だ、誰だよそれ」
屍男「名は知らん。あえて、その存在を言葉で語るとすれば……“先代の影”と呼べる人物だ」
346 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 20:55:52.90 ID:v9qraTHso
吸血娘「先代って、お前が最初じゃないのか?」
魔女「……つまりゾンビくんは二代目ってことか」
屍男「あぁ、俺は彼のやり方を模倣しているに過ぎない。それはお前も気付いていたんじゃないか?」
魔女「……」
魔女「まあ、ね。Shadowが現れ始めたのは記録上だと半世紀ほど前。ゾンビくんが初代だとしたら、よっぽどの若作りをしてないと計算が合わないってことになるもの」
吸血娘(き、気付かんかった……)
347 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 20:57:29.73 ID:v9qraTHso
屍男「その通りだ。彼の存在は俺も耳にしていた。とてつもなく強い狩人がいるとな」
屍男「実際に会うまでは都市伝説の類いの一つだと思っていた。誰もその存在を目撃したことがないというのはあまりに不自然だ。誰かが抑止力として流した噂だとな」
屍男「……彼と出会ったのは本当に偶然だった」
屍男「奇跡的な確率だったと思う。偶然、俺が……見てしまったんだ。彼が、実際に怪物を狩る姿を」
屍男「そいつは前々から目を付けていた怪物だった。人気のいない場所に入り込んだところを狙って、見張っていた時だった。そこに……“影”が現れた」
屍男「一瞬、幻でも見ているんじゃないかと自分の目を疑った。すれ違ったその一瞬に、背後から確実に急所を突き、その死体を灰に変え、存在を抹消した。まるで最初からいなかったように」
屍男「全ての工程が数秒に収められていた。まさしくあれは神業だ。今の俺でも再現出来るかどうかのほどのな」
348 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 20:58:39.44 ID:v9qraTHso
屍男「直感的に理解した。この男が“Shadow”なのだと。そして反射的に体が動いた。俺は……立ち去るその影を呼び止めた」
屍男「今にして思えば、愚かな行為だ。彼が目撃者を全て消すというスタイルだったなら、俺はその瞬間に死んでいただろうに」
屍男「俺は彼に、弟子にしてほしいと頭を下げ、頼み込んだ。正直、承諾するとは思っていなかった。相手にされないだろうと、ならばどうやって説得しようかと、頭の中では次の行動を考えていた」
屍男「……しかし、返ってきた答えは意外なものだった」
屍男「ただ一言「着いて来い」とその男は言った」
349 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 20:59:46.07 ID:v9qraTHso
屍男「初めは耳を疑った。まさか、こんな簡単に上手く行くなんて、思ってもみなかったのだからな。罠かと疑いもしたが……俺に選択肢はなかった。立ち去る影の背中を追うことにした」
屍男「それからはその男と共に暮らし、狩人としての知識と技術を学んだ」
屍男「まあもっとも……教えらしい教えは一切なかったがな。俺と彼の間にまともなコミュニケーションはなかった。言葉を交わしたのもこの出来事を含め数えるほどしかない」
屍男「見て覚えろ、そう言われた。だから俺もそれに従い、観察してその技を盗むことにした」
屍男「……それから数年が経った頃だ。その生活に慣れていたある日」
屍男「彼が起床する時間になっても、姿を現さなかった。気にすることのない些細な出来事だが、今までそんな日は一度もなかった」
屍男「……嫌な予感がした。あの日を思い出すような、そんな寒気が。俺は彼の部屋に向かった」
350 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 21:02:44.05 ID:v9qraTHso
屍男「そこにあったのは……ベッドで、眠るように死んでいる影の姿だった」
屍男「最初は何者かの攻撃を疑った。だが、それらしき形跡はなかった」
屍男「念のために、死体を検視した結果……老衰だった。彼は寿命で死んだんだ」
吸血娘「……は?」
魔女「寿命って、そんなお歳だったの?」
屍男「いや、違う。正確な情報は何も残っていないので不明だが、俺の見立てでは影は40代の後半から50代前半だ。老衰で死ぬにはあまりに早過ぎる」
屍男「……俺は疑問を抱きながら、彼の死体を火葬し、その灰を海に撒いた。直接何か指示をされたわけではないが、この埋葬の仕方を望んでいると感じてな」
屍男「そして、俺は“Shadow”の名を継ぐことにした。その頃になると“紅眼”の手掛かりも形になる程度は集まっていた。奴の正体を暴き、殺すのは時間の問題だった」
351 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 21:04:22.59 ID:v9qraTHso
屍男「……だが“Shadow”として殺しを続けているうちに、なぜ彼があんな早死にしたのか、その真実に触れることになる」
屍男「ある日のことだ。いつもと同じ朝、目が覚め、シャワーを浴びていると……手に違和感があった」
屍男「何かと思い、見てみると……」
屍男「髪がごっそり抜けていた」
屍男「それから一週間もしないうちに、全ての髪が抜け落ちた。明らかに異常な事態だ。病院で検査をしたが、肉体には何も異常は見つからなかった」
屍男「医師からは極度のストレスが原因ではないかと言われた。そこで俺はやっと気付いたんだ。彼の死も……この精神的な疲労が溜まった結果、起きたものなのだと」
352 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 21:09:38.74 ID:v9qraTHso
屍男「いくら感情を殺しても、狩りというものは繊細な注意がいる。一歩間違えば死は避けられないのだからな。常に命懸けの綱渡りだ」
屍男「相手のスペックは常に上だ。精神を擦り減らし、たった一つの勝利へのルートを導き出し、そして戦闘では一秒を百秒に感じるほど思考を巡らせる」
屍男「自覚はなくとも、人間という生物の領域を超えた所業なのだろう。“Shadow”の戦闘スタイルは超短期決戦だ。一瞬の刹那に勝負を決める」
屍男「その一瞬に、命の砂時計は普段とは信じられない速度で堕ちて行く。それを何回も続けていたら寿命は確実に縮む」
吸血娘(最初からハゲじゃなかったのかこいつ)
魔女(最初からハゲじゃなかったのね)
353 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 21:10:47.78 ID:v9qraTHso
屍男「それからしばらくすると、髪は生えてこなくなった。味覚などの器官にも影響が出た」
屍男「自分の肉体が崩れて行くのを感じたが、今更そんなことは止まる理由にはならなかった。もはや自分の命など……どうでもいい段階まで来ていた」
屍男「……そして、その時はやってきた。俺は……“紅眼”を殺すことに成功した」
屍男「……それだけだった」
吸血娘「おい、何だよ。どういう意味だそれ」
354 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 21:14:54.48 ID:v9qraTHso
屍男「……俺にとってはもはや“紅眼”は他の標的と変わらなかった」
屍男「その頃にはもう相手の目を見るだけで、どのぐらいの秒数で仕留められるかが分かるようになっていた」
屍男「何年もかけて情報を集め、奴の潜伏先を暴いた時は興奮した。これでやっと復讐を果たせるのだと
屍男「そして、初めて“紅眼”を視界に捉えた時に視えた所要時間は八秒、高くも低くもない。平均的なものだった」
屍男「……俺は、もっと苦しめたかった。無残に殺された母や彼女達の無念を晴らすように、出来るだけ長く、あいつに死の恐怖を味合わせたかった」
屍男「……しかし、反射的に身体が動いていた。一秒でも、この世に存在することが許せなかったんだ」
屍男「こうして俺の復讐は八秒で終わった。他の狩りと何ら変わりのない、日常のような復讐だった」
355 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 21:16:10.36 ID:v9qraTHso
屍男「待っていたのは達成感と……虚無感だった」
屍男「今までの俺は復讐の為に生きていた。それがゴールであると信じていたし、その先には何もないと思っていた」
屍男「これから何をすればいいのか、分からなかった。だが、今更表の世界に引き返すことは出来ないというのは理解していた」
屍男「そして、俺が導き出した答えは……“Shadow”を続けることだった」
屍男「自分の復讐が終わった後は他者の復讐を代行をするしかない。それしか道は残されていなかった。理不尽な死を一つでも防ぎたかった」
屍男「……恐らく、先代の影も同じ考えに至ったんだろうな。俺を弟子にしたのは何かの気まぐれか、自分と似たような意志を感じたのか、そんなところだと思う」
屍男「それから先は語る価値もない、ただの殺しの繰り返しだ。お前の父も、そのうちの一人だ」
356 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 21:20:38.83 ID:v9qraTHso
吸血娘「……」
屍男「……もういいだろう。話すことは全て話した。これで終わりだ」
魔女「ちょっと待って、それから先の話はどうなったの?」
魔女「ゾンビくん、アナタは一体に誰に殺されたの?」
屍男「……さあな。それは覚えていない」
屍男「俺が覚えている最後の記憶はこいつの父を殺し、帰路の途中までだ」
屍男「そこから先の記憶はないのは恐らく……ヴァンパイアの記憶操作の術の影響だろうな。反撃を許してしまい、一瞬だけだが食らってしまった。死後もその術だけが残り、記憶を失っていたのだろう」
屍男「これは想像だが、誰かに襲われ殺されたという線は考えにくい。まだ交通事故に遭う確率の方が高い」
屍男「……まあ、もうどうでもいいことだ。この件については直接関係ないのだからな」
357 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 21:23:22.69 ID:v9qraTHso
魔女「そう…...」
屍男「どうだ?これで満足したか?これがお前の知りたかった男の過去だ」
屍男「どこにでもあるような話だ。復讐に駆られた男が、その正義を暴走させ、自滅しただけの話」
屍男「……分かってはいたんだがな。例え悪人でも、そいつには親しい友や家族がいてもおかしくない」
屍男「その者から見れば、俺は悪だ。かつて自分が見た感情を、その者達もまた持つのだろうと」
屍男「……結局、この世界に正義も悪もない。ただ、そこにあるのは純粋な感情だけだ。血の因果は終わらない。永遠に、同じところを廻っている。それが世界の理だ」
屍男「さあ、殺せ。もう俺も疲れた。いつまでも死に損なうのは……これで終わりだ」
吸血娘「……」
吸血娘「……私は」
358 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/06(土) 21:23:55.32 ID:v9qraTHso
今日はここまで
次でラストです
359 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/06(土) 21:44:42.77 ID:+YezvIECO
乙
さて最後はどうなるか
360 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/06(土) 22:21:57.23 ID:VHrQhoKx0
ただ意味もなくハゲ散らかしてたワケではなかったのか…
361 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/07(日) 04:55:48.29 ID:JVGzpsyPO
乙
362 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/14(日) 04:45:05.39 ID:PylgOG9Ko
吸血娘「お前を殺さない。これが、私の答えだ」
屍男「…………」
屍男「……は?」
363 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/14(日) 04:46:05.88 ID:PylgOG9Ko
屍男「どういうことだ。今更、何を世迷言を……頭がおかしくなったのか?」
屍男「俺はお前の父を殺したんだぞ。父に対するお前の想いはその程度のものだったのか」
吸血娘「……」
吸血娘「正直なところ、私はパパとはあまり仲が良くなかった。でも、悪いことばっかじゃなかった。いい思い出もあるっちゃあるし、今思い返してみると、それは愛情の裏返しだったんじゃないかなって思う」
吸血娘「あの人も自分の感情はあまり言葉に出さない方だったし、多分、自分の子供との関係性ってのが分からなかったんじゃないかなって……そう感じるようになったんだ」
吸血娘「現に私も、自分の子供とどう触れ合えばいいのか、想像しても分からないし……不器用な人だったんだ。私と一緒で」
吸血娘「だから、そんなパパを殺したお前は許せないし、私の仇だ」
屍男「……ならば、なぜ」
吸血娘「お前、私との勝負で手加減してただろ。あんだけ言ったのに」
364 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/14(日) 04:47:01.00 ID:PylgOG9Ko
屍男「……」
吸血娘「こっちはとっくに気付いてんだよ。戦ってる最中は必死で分からなかったけど、明らかに不自然な点があった」
吸血娘「まず、私の霧化を封じたあのガス兵器。お前が言ってたことを真に受けると、あれを食らったのにまだ一部でも霧化が出来たのは明らかにおかしい」
吸血娘「調整しただろ。全身の霧化は出来なくても、戦闘が可能なレベルで霧化が可能なように」
吸血娘「腹パンされた時もそうだ。本気を出せば、風穴を開けるくらいは簡単に出来たはず」
吸血娘「こうやって、自分がまるで全力を出しているように演出していた」
屍男「……」
365 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/14(日) 04:48:48.35 ID:PylgOG9Ko
吸血娘「次に、戦闘中に無駄に私を煽るような言動をしていたこと」
吸血娘「おかしいだろ。なんで殺し合いの最中に語りかけてきたんだ?口を動かす前に手を動かせよ」
吸血娘「私を怒らせて、冷静な判断力を奪うって戦術も考えられるけど、それにしては丁寧過ぎる。自分の手をペラペラと喋って、まるで思考する猶予を与えているような……そんな印象だった」
屍男「…...」
吸血娘「そして、決定的なのが……時間だ」
吸血娘「お前がさっき言っていた通り、Shadowのやり方は超短期決戦型だ。普通は戦いが始まって数秒でもう決着がついてもおかしくない。私はその覚悟をしていた」
吸血娘「なのに……お前はそうしてこなかった。必ず、私の攻撃の後にその対抗策を出してきた。これじゃまるでターン制バトルだ」
吸血娘「私が、狩人の武器を使ってくるってことも読めていたんじゃないか」
屍男「……」
366 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/14(日) 04:50:16.72 ID:PylgOG9Ko
吸血娘「最強の狩人のShadowの強さは肉体的なものじゃない。その判断力、精神力から来るものだ」
吸血娘「経験から、まずは自分の弱点を補うことを考えてもおかしくない。いや、それが普通だ。だって、今まで幾百、幾千と殺してきた怪物になったんだからな」
吸血娘「その特性を知り尽くしているはずだ。ならまずはその長所を生かし、短所を消滅させる戦いをするはず」
吸血娘「なのにお前は……その弱点に気付かないフリをしていたんじゃないか。怪物の力である怪力も使ってこなかった」
吸血娘「これが手加減じゃなくてなんだって言うんだよ。舐めてんのかお前」
屍男「……」
吸血娘「なんでこんなことをしたのか、当ててやろうか」
吸血娘「お前は……私に殺されたがっていた。死にたかったんだよ、お前は……自分の自殺に、私を利用しようとしたんだ」
吸血娘「一週間ずっと意識を失っていたのがその証拠だ。お前の魂が死を望んでたんだよ」
367 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/14(日) 04:51:29.98 ID:PylgOG9Ko
屍男「……」
魔女(……やっぱりね)
吸血娘「何とか言えよ。図星で声も出ないのか」
屍男「……」
屍男「……それが、何だと言うんだ」
屍男「……何も問題はないだろう。俺が死ねば……全て……」
ガシッ
吸血娘「ふざけんよテメェ!!死にたがってるやつを殺して復讐になると思ってんのか!!!!」ググッ
屍男「……あぁ、なるさ」グッ
ギュッ
368 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/14(日) 04:52:55.76 ID:PylgOG9Ko
魔女「ゾンビくん!!」
吸血娘「っ……!!」ズキッ
屍男「確かに、俺はお前に殺されるように仕向けた。だが、それでお前が復讐を止める道理はない」ググッ
吸血娘「こ、このっ……!はなっ……!!」グッ
屍男「俺も、当ててやろうか。お前の本心を」
屍男「お前は臆しているんだ、俺を殺すことに。情でも移ったか?」
吸血娘「……!!」
屍男「自分にも言い訳をしている。どうにかして、俺を殺さない理由を探しているんだよ。結局お前には俺を殺す覚悟など、最初からなかった」
屍男「たかが一年の付き合いで、俺の全てを理解しようとするな。お前も逃げようとしていたんだよ。自分の運命にな」パッ
吸血娘「……っ」
屍男「どうした。さっきまでの威勢はどうした。何か言ったらどうだ」
369 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/14(日) 04:53:51.78 ID:PylgOG9Ko
吸血娘「……」
吸血娘「……もういい。こうなったら私も自分の本心を全て話す」
屍男「本心だと?」
吸血娘「確かに、お前の言う通りだ。私はお前に情を抱いている」
吸血娘「死んだパパに、お前を重ねているんだよ。いつの間にか……お前のことを、親みたいに思っていた。もし、パパと仲良くなっていたら、こんな関係だったのかなって」
吸血娘「友達なんて一人もいなかった。初めてパーティーをしたり、映画を他人と観たり、ゲームをしたり……そんな関係も、お前が初めてだったんだよ」
屍男「……」
370 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/14(日) 04:55:04.58 ID:PylgOG9Ko
吸血娘「でも、私はお前を許さない。パパを殺したことには変わらない、お前は私の仇だ。絶対に復讐はする。そう思っていた」
吸血娘「……お前は死を望んでいる。そして私の目標は殺すこと」
吸血娘「相手が望んでいることを実行するのは、本当に復讐なのか?それは違うだろ……これが私の出した結論だ。お前を殺すことは復讐になりはしない」
屍男「……では、どうするつもりだ。俺を一生拷問にでもかけて生き地獄を味合わせて苦しめるか?」
吸血娘「……」
吸血娘「……そうだな。それもいいかもしれない」
371 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/14(日) 04:56:15.67 ID:PylgOG9Ko
吸血娘「ハゲ、お前はずっと……私の側にいろ。そして、私を一人にするな。これがお前に出来る唯一の贖罪だ」
屍男「……!」
屍男「それが、俺に対する復讐だと?」
吸血娘「そうだ」
吸血娘「……多分、私とお前は似てるんだ。運命に従った結果が今のお前だ」
吸血娘「もし、このまま私も同じようにお前を殺せば……同じ道を辿るような気がする。お前を殺すことで、私は父と友を両方なくすことになるんだ。お前が母と幼馴染をなくしたように」
吸血娘「お前みたいに一生孤独のまま生きるなんてまっぴら御免だ……ハゲたくもねえし」
吸血娘「なら私は運命に逆らう。一人より、二人の方がいいだろ。少しでも申し訳ないと思うなら、私と一緒にいて罪を償え」
372 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/14(日) 04:57:22.36 ID:PylgOG9Ko
屍男「……」
屍男「……理解出来ない。今までの生活を続けることが復讐だとでも言うのか」
屍男「そんなこと……俺は認めん……」
吸血娘「認める認めないの問題じゃねえだろ。本質的に、お前は誰かに裁いてもらいたかったんだよ」
吸血娘「だから、私がお前を裁いてやるって言ってんだ。これが私の……復讐だ」
屍男「…………」
屍男「…………」
屍男(……あの時、あいつが最後に言った言葉)
373 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/14(日) 04:58:34.31 ID:PylgOG9Ko
『――生きて』
374 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2019/04/14(日) 05:00:07.05 ID:PylgOG9Ko
屍男(……俺が死ねば、全てが許されると思っていた)
屍男(だが、そうではない。生きることが、俺が犯した罪を清算することだと言うなら……俺は……)
屍男「…………」
屍男(やはり、お前には敵わないな。もう少しだけ待ってくれ)
屍男(あと少し……俺は生きることにする。“Shadow”としての罪を裁かれる為にこの命が蘇ったというのなら、お前が生きろと言うのにも理由はあるのだろう)
屍男(そして、全てが終わった時に、また会おう)
232.81 KB
Speed:0.1
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報VIP
更新
専用ブラウザ
検索
全部
前100
次100
最新50
続きを読む
名前:
E-mail
(省略可)
:
書き込み後にスレをトップに移動しません
特殊変換を無効
本文を赤くします
本文を蒼くします
本文をピンクにします
本文を緑にします
本文を紫にします
256ビットSSL暗号化送信っぽいです
最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!
(http://fsmから始まる
ひらめアップローダ
からの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)
スポンサードリンク
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)