D.CUIgnorance Fate【オリキャラ有】

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1 : ◆/ZP6hGuc9o [sage]:2018/11/24(土) 15:11:52.79 ID:ocV8lRAh0
D.CUのSSです。開始前にいくつか

・D.CUP.Cの友情エンド(シーンタイトル:バカ騒ぎできる友達)からの分岐の話となります。

・オリキャラが出てきます。と言うかオリキャラ中心の話になります。

・本編 al fine、da capo のネタばれを含みます。

・桜エディション発売おめでとう!D.Cシリーズが気になってる人は是非買ってね!(ダイマ)

>>1は初代未プレイなので、作中に矛盾が発生する可能性あり。その場合は生暖かい目で見守りください

以上のことを踏まえて大丈夫という方はどうぞ。そうでない方はそっ閉じ推奨
次から本編開始です



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1543039911
2 : ◆/ZP6hGuc9o [sage saga]:2018/11/24(土) 15:16:32.56 ID:ocV8lRAh0
                                         12月24日(木)

義之「はぁ………」

桜公園のベンチに座るなり、深いため息が口から漏れた。音姉に聞かれたら注意されそうだな。
しかしそれも無理はない。
なにせ……

義之「あの二人にずっと付き合わされてたからなぁ……」

誰に言うでもなく呟く。
今は夜中。あの二人に解放された俺は、すぐに家に帰る気になれず、なんとはなしに桜公園へと来ていた。

義之「でも、寒い……」

寒いのは当然といえば当然。季節は冬だし、今は夜中。
雪が降っていないというだけが幸いだった。

義之「じっとしてたら死ねるな、これは……」

そう判断した俺はベンチから立ち上がり、適当に散歩をすることにした。

桜が咲き誇る中、一人で適当にぶらつく。

義之「明日から冬休みかぁ……」

学校の仲間と毎日会えなくなるのはちょっと寂しいけど、ゆっくりできるのならそれはそれでいい。
それに、会いたくなったら連絡を取り合って遊べばいいだけだしな。
3 : ◆/ZP6hGuc9o [sage saga]:2018/11/24(土) 15:17:55.60 ID:ocV8lRAh0
冬休みをどう過ごそうかと考えながら歩いていると、気がついたら枯れない桜の木の近くにまで来ていた。

義之「……ん?」

その桜の木のすぐそばに、人影があった。

義之(誰だ……?)

別に見つかってまずいというわけでもないのだが、つい条件反射で隠れてしまう。

義之(……って、これじゃ俺ただの不審者じゃん……)

そう思いながらも、隠れながら様子を窺う。
女の人のようだった。長い黒の髪をほのかな風になびかせながら、桜の木の前で手を合わせなにやらお祈りをしているかのように見えた。

義之(……盗み見はよくない、よな)

そう思い、その光景を気にかけながらもその場を後にした。
4 : ◆/ZP6hGuc9o [sage saga]:2018/11/24(土) 15:19:48.51 ID:ocV8lRAh0
                                         12月25日(金)

冬休み一日目から昼過ぎまで寝ていた俺は、音姉の襲撃によって起こされた。

音姫「もう、長期休暇だからって、そんなにだらけてたらダメだよ、弟くん」

義之「ふぁぁぁ……別にいいじゃん、休みなんだからさ……」

音姫「そんな生活してたら、いざ学校が始まって困るのは弟くんなんだからね。全く……」

呆れながら、俺の部屋を出て行く音姉。

居間に下りると、昼ごはんが用意されたテーブルを音姉とさくらさんが囲っていた。

義之「あれ、由夢は?」

さくら「由夢ちゃんなら、今日は天枷さんが遊びに来ていて、家にいるよ」

義之「へぇ、天枷がねぇ……」

後でちらっと顔を出しておこうかな。
あいつ、どこか抜けてるから由夢に感づかれるかもしれないし。

昼ごはんを食べ終え、着替えを済ませて家を出ると、ちょうど由夢と鉢合わせた。

由夢「あ、兄さん。ちょうどよかった」

そう言いながら、一枚の紙切れを持って近づいてくる。

義之「あ、お、俺、ちょっと用事が……」

逃げようとした時には、既に服の袖を掴まれていた。

由夢「わたし、今忙しいんだよね。兄さん、ちょっと買いもの行ってきてくれる?」

……やっぱり……。

義之「……念のために聞くが、俺に拒否権は?」

由夢「あるわけないでしょ。はい、これに買ってきてほしいもの書いてあるから。それじゃ、よろしくね」

由夢は自分の用件だけをさくさくと告げると、家の中に戻っていった。

義之「はぁ……仕方ないな」

ため息をつきながらも、商店街へと足を向けた。
5 : ◆/ZP6hGuc9o [sage saga]:2018/11/24(土) 15:21:39.07 ID:ocV8lRAh0
*          *          *
義之「あ〜、こんなん人に頼む量じゃねぇよなぁ」

ぶつくさ文句を言いながら、膨らんだ買い物袋をぶら下げて歩く。
実際はそんなに重くはないわけだが、由夢のやつこんなにお菓子やらジュースを買い込んで天枷と二人で全部食べるつもりなのか?

義之「一人ってーのも寂しいよな。誰か知り合いがいたら話しながら帰れるってーのに」

独り言を言いながら商店街の中を抜けていく。

義之(なんか腹減ってきたな……。桜公園によってなんか食っていくかな)

帰り道を少しだけ変更して、桜公園に足を向けた。
6 : ◆/ZP6hGuc9o [sage saga]:2018/11/24(土) 15:24:16.56 ID:ocV8lRAh0
*          *          *

相も変わらず桜の花びらが舞う桜公園。
俺の記憶の中ではこんな光景は日常茶飯事だけど、やっぱり普通じゃないんだよな、これは。

義之(ま、今更ではあるけどな)

今はそんなことよりも、腹ごしらえが先だ。
何を食べようか少しだけ考えた結果、簡単にチョコバナナでいいかという結論に達した。
ペパーミント味を買うことにする。

店員「さて、今日はこれが最後だな」

義之「あれ、もうですか?」

女性「あっ……」

受け取りながら店員に聞く。と同時に、後ろから小さく息を呑む声が聞こえた。

店員「あ〜ごめんね、嬢ちゃん。今日ちょっと仕入れに手違いがあってね。今日はこの兄ちゃんに売ったのが最後なんだよ。すまんねぇ」

申しわけなさそうに頭をかくおじさん。
俺も、後ろを振り向く。

女性「……いえ……」

そこにいたのは、昨日の夜に枯れない桜の木の前にいた女の人だった。

義之「あ、君……」

思わず、そう口にしていた。

女性「はい?」

そんな俺の言葉に反応する。

義之(そういや、この人は俺のことを見たわけじゃないんだよな……)

昨日の夜は一方的だったわけだし。
どうしようか考えて、

義之「これ、よかったら食べる?」

手に持っていたものを差し出した。

女性「え、でも、その……」

差し出したチョコバナナを前にして、戸惑っている。
7 : ◆/ZP6hGuc9o [sage saga]:2018/11/24(土) 15:26:18.80 ID:ocV8lRAh0
義之「俺のことは気にしなくていいよ」

もう一押し。

女性「え、と……それじゃ……」

おずおずと手を出してきて、

美夏「おーい、桜内ーー!!」

横槍が盛大に投げられた。

義之「天枷?」

声の主は、天枷だった。なにやら全力疾走で俺の所に近づいてくる。

美夏「す、すまん、桜内。そ、そろそろバナナミンが、切れる……」

俺の近くで立ち止まって、息を切らしながらなんとかそう告げた。

美夏「おお、ちょうど、よかった。その、チョコバナナを、美夏に、くれ」

少しずつ息を整えながら、俺の手に握られていたチョコバナナを攫っていった。

義之「お、おい天枷……」

俺のことなど意に介さずに、チョコバナナを食べる天枷。

美夏「んぐ、んぐ……」

全てを口の中に収めた天枷は、しっかりと咀嚼しながら飲み込んでいく。
……涙を流しながら。
8 : ◆/ZP6hGuc9o [sage saga]:2018/11/24(土) 15:27:56.76 ID:ocV8lRAh0
美夏「んぐ……ふぅ。なんとか間に合ったか……」

全てを飲み込み終えて、そう呟く。

義之「あのな、天枷……」

美夏「ん?ああ、すまんな桜内。助かったぞ」

義之「いや、それはいいんだけど……」

美夏「あ、そうだ。桜内、由夢に頼まれた買い物はどれだ?」

義之「ああ、これだけど……」

もう片方の手にぶら下げていた袋を持ち上げる。

美夏「一応名目上はそれをもらってくると由夢に言って家を飛び出してきたから、持っていく。ありがとうな、桜内」

そう言って、俺の両手に握られていたものは二つとも天枷に掻っ攫われた。
……ちょっと言い方悪いかな。

美夏「じゃあ、美夏はもう行くぞ。桜内にも連れがいるみたいだしな」

天枷に言われて、改めて思い出した。そういえば、この人と話をしていたんだった。

女性「………」

颯爽と去っていく天枷を、その人は物珍しそうに見送っていた。

義之「あ、その……ごめん。チョコバナナ、とられちゃった……」

ごまかし笑いを浮かべながら、さっきまでチョコバナナを握っていた手をひらひらさせる。

女性「……え、あ、はい……」

ぽかんとしながら、それだけ返事をしてきた。

義之「……ま、今日はもう営業終わったみたいだけど、また明日来ればいいさ」

女性「……ふふ。はい、そうですね。それじゃ、わたしはもう行きますね」

そう言い残すと、歩いて去っていった。

義之「………。……あ」

名前、聞くの忘れた……。
9 : ◆/ZP6hGuc9o [sage saga]:2018/11/24(土) 15:28:53.46 ID:ocV8lRAh0
*          *          *

特にぶらつく気にもなれず、そのまま家に帰ってくる。

義之「ただいま〜……と」

由夢「お帰りなさ〜い、に・い・さ・ん?」

玄関には、なぜかとても不機嫌そうな由夢と、ばつが悪そうな天枷がいた。

「ど、どうした由夢?」

半歩後ずさりながら、そう聞く。

由夢「人の頼まれごとの最中に、逢引でもしていたんですか?」

美夏「すまん、桜内。由夢に話してしまってな……」

義之「ああ、そのことか。別に逢引したわけじゃないよ。小腹がすいたから桜公園に寄り道して、そこでちょっとしたトラブルがあっただけ」

事の顛末を簡単に説明してやる。

由夢「ふ〜ん、そうですか。それで、逢引相手は誰なんですか?天枷さんも知らない人だって言ってましたけど」

あぁ、俺の話は無視なのね。

義之「いや、公園でたまたまあった人だよ。知り合いじゃない」

美夏「そ、そうだったのか!?チョコバナナをあげているように見えたのだが……」

ここで天枷が割って入ってくる。話をややこしくしないでくれよ、頼むからさ……。

義之「だからさ……」

結局、実際にあったことを詳しく説明する羽目になった。
10 : ◆/ZP6hGuc9o [sage saga]:2018/11/24(土) 15:29:43.41 ID:ocV8lRAh0
*          *          *

義之「は〜〜〜、なんか今日は疲れたなぁ……」

夜、ベッドに倒れこみながらそう呟く。

義之「今日は夜更かししないで寝るかな……」

少しの間逡巡したあと、部屋の電気を消した。

義之(明日、また桜公園に行ってみよう……)

もしかしたら、またあの子に会えるかもしれないし。
11 : ◆/ZP6hGuc9o [sage saga]:2018/11/24(土) 15:31:06.90 ID:ocV8lRAh0
                                         12月26日(日)

翌日の昼、俺は桜公園に来ていた。

義之(いない、な……)

公園の入り口から全体を簡単に見渡す。
明日また来ればいいと言ったから、来てるかと思ったんだけど。

とりあえず昨日の子の分も買っておこうと思いチョコバナナ屋に向かう。

チョコバナナを二つ買い、後ろを振り返る。

女性「こ、こんにちは……」

そこには、昨日の子がいた。

義之「あ、君……」

両手にチョコバナナを持ったまま、唖然としてしまった。
まさか、本当に来るとは思っていなかった。

女性「あ、あの」

義之「は、はいっ」

思わず声が上ずってしまった。

女性「そこ、どいてくれないと、買えないんですけど……」

義之「あ、そうだ」

わざわざ二つ買った理由を思い出した。

義之「これ、昨日あげそこなったチョコバナナ」

右手に持っていたイチゴ味のチョコバナナを差し出す。

女性「え、あ、ありがとうございます」

それを、昨日と同じように躊躇いながら受け取る。
12 : ◆/ZP6hGuc9o [sage saga]:2018/11/24(土) 15:32:18.50 ID:ocV8lRAh0
杏「ふふふ、事の一部始終、しっかり見せてもらったわ……」

茜「酷いわ義之くんたら、小恋ちゃんというものがありながら浮気なんて!」

その子の後ろから、にぎやかな声が聞こえてきた。その子も後ろを振り向く。

杏「いくらで買収したの、義之?」

義之「人聞きの悪いことを言うな!」

杏と茜だった。二人とも、遊ぶおもちゃを見つけたような含み笑いを浮かべている。

茜「いけないわ、不潔よ、不純よ、義之くん!」

義之「お前もだ、茜」

こん、と軽くチョップを入れる。

茜「いたっ。杏ちゃ〜ん、義之くんが暴力を振るってくるよ〜……」

そう言って、杏に泣きついていく。

杏「あらあら義之、いいのかしら?ないことないこと言いふらすわよ?」

義之「あのなぁ……」

ぼりぼりと頭を掻く。

杏「ほら義之、言いふらされたくなかったらその子が誰なのか白状なさい」

義之「別に誰でもねぇよ。ただそこであっただけだ」

出店の近くを指差して教える。

杏「なにか卑猥なものを渡していなかった?」

義之「ただのチョコバナナだ」

見知らぬ子をそばに置いて、しばらく杏と茜のエロトークに付き合わされる。
13 : ◆/ZP6hGuc9o [sage saga]:2018/11/24(土) 15:33:59.46 ID:ocV8lRAh0
杏「なんだ……。ごくごく平凡な話じゃないの」

義之「お前らがそっちに持っていきたかっただけだろ」

女性「あの……」

話の途中で、その子が口を開いた。

義之「あ、ごめん。なに?」

女性「わたし、そろそろ行きますね」

義之「あ、ちょっと……」

杏「ごめんなさいね、うちの義之が迷惑をかけたみたいで。もういいわよ」

女性「それでは」

礼儀よく会釈をして、俺が渡したチョコバナナを持ったまま去っていった。
また、名前を聞きそびれたな……。

杏「そういえば、義之」

義之「ん?」

杏「あの子、名前はなんていうの?」

義之「いや、知らない」
14 : ◆/ZP6hGuc9o [sage saga]:2018/11/24(土) 15:35:42.67 ID:ocV8lRAh0
                                         12月27日(月)

そのまた次の日。

義之「さすがに三日連続で桜公園には来ないよなぁ」

ベンチに座り、今日はクレープを手にそんなことをぼやく。

義之「はぁ……なんか虚しくなってきた……」

自分の分を口に含み、俯く。

義之「もう帰ろうかな……」

女性「あ……」

義之「ん?」

俺の真正面から声を詰まらせる息遣いが聞こえてきた。顔をあげる。

女性「こんにちは。また会いましたね」

義之「ああ、こんにちは」

また会えたな。俺、もしかしてこの人となにか不思議な縁でもあるのだろうか?

女性「何をしていたんですか?」

何をしていた、か……。

義之「別に何もしてなかったな……」

冷静に考えて、そう思う。そうだよな。この人に会える保障もないのにここに座ってたんだもんな。
……あれ?俺ってもしかして周りから見たらただの変な人なんじゃないか?

女性「え、誰かと待ち合わせとかじゃないんですか?」

義之「そうだなー。強いて言うなら、クレープを食べてたかな」

女性「クレープ、お好きなんですね」

義之「なんで?」

女性「だって、両手に持っているじゃないですか」

義之「……あ」

そうだった。もう俺の分はあと一口で食い終わるけど、もうひとつ持っていたんだった。しかも、これ俺のじゃないし。
最後の一口を放り込み、立ち上がる。
15 : ◆/ZP6hGuc9o [sage saga]:2018/11/24(土) 15:36:41.20 ID:ocV8lRAh0
女性「よろしかったら、これも食べますか?」

義之「え?」

そういって差し出されたのは、またもやクレープだった。

義之「あー……………どうも」

なし崩し的に受け取る。

義之「じゃ、代わりにこれあげるよ」

女性「はい?」

俺が最初から持っていたほうのクレープを差し出す。

義之「いや、もともと君にあげようと思って二つ買ってたんだ」

女性「あ、そうだったんですか。はい、それじゃいただきます」

わずかに微笑み、クレープを受け取ってくれた。
16 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2018/11/24(土) 15:38:10.80 ID:ocV8lRAh0
まゆき「ほほ〜、弟くんはそういう子が好みかぁ」

またもや、死角から声をかけられる。この声は……。

義之「まゆき先輩?」

声のした方、今回は俺の後ろを振り向く。そこにいたのは、聞こえたとおりまゆき先輩。
……それと、もうひとり。

義之「ムラサキ……」

俺のことを良く思っていないどころか、下手すると憎まれているのではないかと思える奴だった。

エリカ「不潔」

一言ずばりと言われる。

義之「なにが不潔!?」

ただクレープを交換し合っただけじゃんか!

エリカ「ふんっ」

ムラサキはそれだけ言うと、まゆき先輩の後ろに下がる。
17 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2018/11/24(土) 15:39:06.85 ID:ocV8lRAh0
まゆき「なぁに弟くん、この人は彼女さん?」

人をからかう時の不敵な笑みを浮かべながら俺に聞いてくる。

義之「違いますよ。ただの知り合いです」

こういうときは冷静に答えるのがベストだ。

まゆき「ふ〜ん、お互いのクレープを交換し合うただの知り合い、かぁ」

相変わらず楽しそうな顔をしている。

まゆき「わたしがそんな説明で納得すると思ってるのかにゃ〜?」

じわりじわりと詰め寄ってくる。
うぅ……これは捕まるパターンだ……。

女性「あ、あの、わたし、もう行きますね。それでは」

と、その子はまた俺との話の途中で行ってしまった。
……今回は逃げた、という解釈で問題ないだろうな。若干苦笑いだったし。

まゆき「さあ弟くん。まゆき先輩とじーっくりと語り合おうじゃない!」

エリカ「わたしもせっかくだから聞いてあげるわ、桜内」

義之「か、勘弁してくださいよ〜……」

結局、今日もあの子の名前聞けなかったな……。
18 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2018/11/24(土) 15:41:01.66 ID:ocV8lRAh0
                                         12月28日(火)

あの子と会ってから実に三日に渡って名前を聞きそびれている。今日で四日目だ。

義之「いや、何を期待してるんだ俺は……」

今俺は、自分で作ったお菓子が入った袋を持ってまたも桜公園のベンチに座っている。

義之「まさかまた偶然会えるなんてことはないよなぁ……」

女性「誰と偶然会える、ですか?」

義之「うわっ!?」

いきなり後ろから声が!?だ、誰だ!?
バッと後ろを振り向く。

女性「きゃっ」

その瞬間、黒い何かが俺の視界を覆った。

義之「うおぅっ!?」

何事!?
俺がテンパッていると、徐々に視界が開けてきた。

女性「ど、どうもこんにちは……」

長い髪をかきあげ、ぺこりと、最近は少し見慣れた子が会釈をしていた。どうやら俺の視界を覆っていたのは彼女の長い髪だったようだ。
19 : ◆/ZP6hGuc9o [saga]:2018/11/24(土) 15:42:08.18 ID:ocV8lRAh0
女性「今日も、暇をもてあましていたんですか?」

居住まいを正し、俺に聞いてくる。

義之「あ、いや今日もここにいたら君に会えるかな〜なんて……?」

お、俺は何を言ってるんだ。これじゃナンパみたいに聞こえるじゃんか!

女性「え、あ……」

その子もどう解釈したのか、顔を赤くして黙り込んでしまった。……き、気まずいっ!

義之「そ、そうだ!これ!」

がさっ、と袋を持ち上げる。

女性「え、と、それは?」

おずおずと指差しながら聞いてくる。

義之「これ、俺が買ってきたお菓子。今まで色々迷惑かけたからさ」

女性「あ、どうもありがとうございます」

その袋を受け取り、またも頭を下げてくる。
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