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岡崎泰葉「私の憧れの人」
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43 :
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/16(日) 17:29:22.43 ID:nsR+2CgA0
*
夜の帳が降りた道で、ふたりは言い争っている。
泰葉「ねえ、なんで別れるなんて言うの!?」
「俺、やっぱり花が好きなんだ。この気持ちに嘘はつけない。」
泰葉「そんな……!」
「今、花はへこんでいる。そんな彼女を救いたいんだ!」
泰葉「無理だよ、翔くんには出来ない!」
「なんでそんなことを……!」
泰葉「だって翔くんは私と付き合ったじゃない!そんな翔くんが繊細な花ちゃんと付き合っても傷つけるだけだよ!」
「ぐっ……」
泰葉「ふたりが一緒になっても幸せになれないよ!翔くんも、花ちゃんも、みんな不幸になる!
ねえ、だから私と付き合おう?私なら翔くんを幸せにするから……」
泰葉は相手にすがる。外聞もなにも気にせず、ただ関係を維持するために。
「そうかもしれない……」
泰葉「だったら……!」
泰葉の顔に一気に喜色が浮かぶ。だけど……
「でも、お前の思いに応えることは出来ない。
例え俺のエゴだとしても花を救いたい。
今も花は傷ついている。だったらせめて愛して傷つけたいんだ。」
泰葉「そんな……」
一転して絶望したような顔になる。そんな泰葉を置いて相手は駆け出していった。
44 :
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/16(日) 17:30:06.21 ID:nsR+2CgA0
*
公園で落ち込んでいる裕美の前に息を切らした彼が現れる。
「花!」
裕美「え、翔くん……? 香澄ちゃんはどうしたの?」
「別れたよ。」
裕美「え、なんで……?」
「花の方が、もっと好きだったから。」
裕美「……」
「花が振り向かないと思って香澄と付き合ったけど、そんなの間違いだった。
花の事が気になるって言ったんだからその事に責任を持つべきだったんだ。」
裕美「翔くん……」
「花、好きだ。今日までたくさん傷つけたし、これからも傷つけることがあると思う。
それでも好きって気持ちに嘘はつけない。許してくれるなら、付き合ってくれ。」
裕美「……翔くん、翔くん!」
裕美は感極まって相手に抱きつく。
「付き合ってくれるか?」
裕美「うん、付き合う!私も翔くんが好き!」
「これからは放課後は一緒に帰ろうな。」
裕美「寄り道もいっぱい教えてね?」
「ああ! だから帰ろう。」
裕美「うん……。ねえ」
「なんだ?」
裕美「手を握って」
「ああ。」
そしてふたりは手を繋ぎ歩み始める。その姿はきっと、これから先も変わらず……
45 :
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/16(日) 17:31:10.63 ID:nsR+2CgA0
*
演出家「これで撮影はオールアップです、お疲れさまでした!」
泰葉「お疲れさまでした」
裕美「お疲れさまでした」
演出家「ふたりとも本当によかったよ。選んで間違いなかったね。」
泰葉「ありがとうございます」
裕美「あ、ありがとうございますっ」
演出家「それじゃあ帰り道気を付けてね」
泰葉「はい、ありがとうございました」
裕美「はい、ありがとうございました」
P「泰葉、お疲れ様」
泰葉「あ、プロデューサーさん」
P「本当に、頑張ったな」
泰葉「はい。」
プロデューサーさんに労って貰って自然と笑顔になる。
好きな人にこういって貰えるなんて、本当に幸せだ。
P「なあ、泰葉は香澄の事を理解できたか?」
泰葉「はい、共感できることもありましたし……」
P「それは本当にか?」
泰葉「……はい。」
プロデューサーさんはどうしたんだろうか?なんだか、恐い。
P「リテイクを要求されて演技が変えられたこともあるよな。」
泰葉「私の解釈が通ったこともありますよ。そもそもみんなで作るものですし。」
P「……そうか。今回は本当に頑張ったな。」
そう言うとプロデューサーさんは誤魔化すように頭を撫でてきました。
嬉しいけど、流石に不自然だと思うんですが…
私の演技が、もしくは生き方が、プロデューサーの琴線に触れるものがあったんでしょうか?
それだったらどういう形でも嬉しいんですけど。
つづく
46 :
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/16(日) 17:33:06.21 ID:nsR+2CgA0
投下終了です
次の話はアルバムが完成して、泰葉とフレデリカが話し合います
フレちゃんの話って書いたのに出番少なくてゴメンね、ちゃんと書くから……
47 :
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:26:35.19 ID:T483t/4+0
またお久しぶりになってすみません
そして、次のはフレちゃんタイトルだけどまず泰葉視点で始まって泰葉主軸になります
フレちゃんの視点は後でがっつり使う予定があるので許し亭許して
48 :
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:27:55.74 ID:T483t/4+0
宮本フレデリカ「ふたりのウソつきの馴れ初め」
49 :
宮本フレデリカ「ふたりのウソつきの馴れ初め」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:29:54.18 ID:T483t/4+0
プロデューサーさんを理解するため、そして救うため、私は以前よりプロデューサーさんを見ている。
乃々さんも協力してくれているけど、未だに底は見えない。プロデューサーさんはそれを隠しているから。
正直、行き詰っていた。どうすればいいのだろうか。そんな事を思いながら、プロジェクトルームに向かった。
泰葉「おはようございます……」
フレデリカ「おはよー、なんだか元気ないね?」
泰葉「そうかもしれません……」
フレデリカ「本当に大丈夫?」
泰葉「プロデューサーさんのことが分からなくて……」
フレデリカ「ああ、それじゃあ……」
フレデリカさんが喋ろうとしたところで、プロジェクトルームのドアが開いてプロデューサーさんが現れた。
P「よいしょっと。今日いるのはフレデリカと泰葉だけか?」
泰葉「そうですね、他の子はオフで遊びに行ったりしているみたいです。」
P「んー、まあいいか。アニバーサリーのアルバムが出来たから、ふたりにも。」
フレデリカ「おー、出来ていたんだ。どれどれー」
P「基本は前に配った見本のと変わらないぞ。他の部門のもあるところが強いて言えば違うところだけど。」
フレデリカ「そこ違えば全然違うよー、えーとシキちゃんのはー」
P「やれやれ、元気だなあ……。泰葉も受け取っておけ、ほれ。」
アルバムを受け取ります。大きな事務所の記念アルバム、流石に大きいし思いです……。
フレデリカ「んー、そうだ!ヤスハちゃん、カフェでアルバム見よう!」
泰葉「え? 誰もいませんしここでもよくないですか?」
フレデリカ「フレちゃんパンケーキ食べたいなあ……」
泰葉「わかりました、行きましょうか……」
朝早いのに……朝食を食べてなかったんでしょうか?
そんな事を思いながらカフェへ向かいました。
50 :
宮本フレデリカ「ふたりのウソつきの馴れ初め」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:31:15.03 ID:T483t/4+0
フレデリカ「んーと、カフェオレひとつでー」
店員「……そちらのお客様は何か注文おありでしょうか?」
泰葉「えっ、じゃあココアをお願いします」
店員「わかりました、それではカフェオレとココアでよろしいでしょうか?」
フレデリカ「うん、オッケー。よろしくねー。」
泰葉「あの、パンケーキ頼まないんですか?」
フレデリカ「ヤスハちゃんパンケーキ食べたい?」
泰葉「いえ、フレデリカさんが食べたいって……」
フレデリカ「アレ、嘘!ゴメンね♪」
泰葉「う、嘘だったんですか……」
なんでそんな嘘を……
フレデリカ「うん、アタシはウソつきでね。そしてプロデューサーもウソつきなんだ★」
フレデリカさんは明るくそう言い放つ。嘘つき……あんまりいいイメージはありません。
フレデリカ「今から話すのは、ひとりのウソつきがもうひとりのウソつきと出会うおはなし。
プロデューサーはあんまり知られたくないし聞きたくないと思うからカフェに来たの。」
泰葉「なんで、それを私に話すんですか?」
フレデリカ「ヤスハちゃんが本気で悩んでいたから、かな?」
泰葉「……」
やっぱりこの人は、他人をよく見ている。この人がいればプロデューサーを理解するのも……
フレデリカ「じゃあ話していくね。」
51 :
宮本フレデリカ「ふたりのウソつきの馴れ初め」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:31:50.00 ID:T483t/4+0
*
それはフランスの大統領から下された使命。
50年前、当時は世界も色々ゴタゴタしていて、日本は危険な国だった。
そんな国を見張るために大統領はエージェントたるアタシ、宮本フレデリカに使命を下したの。
日本に来たアタシはハーフという立場を生かしてアイドルとして日本社会に溶け込んで……
52 :
宮本フレデリカ「ふたりのウソつきの馴れ初め」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:32:56.25 ID:T483t/4+0
*
泰葉「ちょっと待ってください。」
フレデリカ「ん、なに?」
泰葉「嘘ですよね?」
フレデリカ「うん、嘘だよ♪」
泰葉「前に友達に勧められたからって言ってましたよね。」
フレデリカ「うん、その通りー。よく覚えていたね。」
泰葉「覚えるのは得意な方なんで……で、なんでそんな嘘を?」
フレデリカ「ちょっとした小手調べだよ〜」
泰葉「なんでそんなファンタジーみたいなことを言うんですか……」
そう言うと、フレデリカさんはそれまでの楽しげな雰囲気から一気に真剣になりました。
フレデリカ「ヤスハちゃん、アタシは過去の事を喋るけどそれが全て本当である保証なんてないんだよ。」
泰葉「……フレデリカさんは嘘つきだからですか?」
フレデリカ「……ウソつきじゃなくてもだよ。」
泰葉「? それはどういう……」
フレデリカ「ヤスハちゃんはアタシの事を疑いながら話を聞いてね。」
泰葉「……はい。」
どうやらこの話を聞くにあたって、気を抜いてはいけないようだ。
53 :
宮本フレデリカ「ふたりのウソつきの馴れ初め」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:34:02.81 ID:T483t/4+0
*
アタシは友達に勧められてアイドルになろうと思ったんだよね。その容姿を生かさない手はないって。
そうしてオーディションに行ったんだけど、ずらっと並んでいる人達のひとりにつまらなさそうにしている人がいたの。
ヤスハちゃんには信じられないかもしれないけど、それがプロデューサー。
アタシはその人を笑わせたいって思ったんだ。
P「自己アピールをお願いします」
フレデリカ「んー……ジュテーム!シルブプレー?クレーム・ブルレー!マカローン、クレープ、ババローワー?」
P「……自己アピールを、お願いします」
フレデリカ「……あは、バレちゃってる?そうなのー。こう見えて、フランス語は全然しゃべれないんだー♪
てことで♪ はじめましてー ! 宮本フレデリカだよー!見てのとおり、コテコテのフランス人……じゃなかった!日本人とのハーフでーっす♪
んーと、高校生のころはモデルみたいなコトをしてたかなー。
ホラ、私、金髪で青い瞳だし、スタイルもいいじゃん?学校でもけっこう目立つコだったんだよねー♪ 」
P「なんでオーディションを受けに来たんですか?」
フレデリカ「今回、オーディションを受けようと思ったのは、ん〜……『ついカッとなってやった』って感じかなー♪」
P「へ?」
フレデリカ「あー、コレじゃ違うか。『ついカッとなった人にやられた』みたいなー?つまり被害者!フレデリカは被害者だったんだよー!」
P「えーと……?」
フレデリカ「つまり、カッとなった……かどうかはわかんないけど、友達に応募させられた的な感じだね〜。
せっかくママにもらった自慢のルックスだしー、これをお仕事に生かさない手はないかなーって。」
P「はぁ……」
フレデリカ「あ、ねぇねぇ、もしかしてアナタがアタシのプロデューサーさんになる人?」
P「いや、私は……」
フレデリカ「んー、違うの?あなたは優しそうであり、厳しそうでもある……甘そうでもあるけどしょっぱそうでもある……そんな感じがする1」
P「なんですかそれは……」
その時、プロデューサーさんは少し笑ったんだ。苦笑いだったかもしれないけど、確かに。
フレデリカ「そしてあなた!」
美城常務「私か?」
フレデリカ「あなたはー、辛(から)くて辛(つら)くて、すごく美味しくて不味い。そんな感じかなー」
美城常務「ふむ……」
プロデューサーさんは笑いをこらえていた。他の人は青かったけどね。
フレデリカ「んー、こうしていると逆オーディションみたいだね!まぁ、アタシにも選ぶ権利はあるよね!たぶん!」
P「うーん……?」
フレデリカ「そうそう、アタシ、よく『喋らなければ美人』って友達に言われるんだけど、アナタから見てはどうかなー?そう思う?」
P「はい、そうですね」
フレデリカ「やったー♪ 喋らなければ美人ってことは、喋ったら超美人ってことだよね♪
じゃ、そんな感じでアイドル目指して頑張るから、最初の人よろしく♪ウフフ、じゃーねっ!ラビュー★」
美城常務「ほう……」
54 :
宮本フレデリカ「ふたりのウソつきの馴れ初め」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:35:28.69 ID:T483t/4+0
P「というわけで、君の指名通り私がプロデューサーになった。よろしく頼みます」
フレデリカ「ふんふんふん、オーディションだと違うって言ってたよね」
P「私は新人で元々はプロデューサーではないのですが、上からのお達しであんな逸材を逃すわけにはいかないから、だそうです。」
フレデリカ「おー、フレちゃん高評価!あなたから見てはどうかなあ?」
P「……素敵だと思いますよ」
多分嘘だった。この時のプロデューサーさんは表面上隠しているけど、その嘘はあんまりうまくなかったんだ。
フレデリカ「うん、じゃあよろしくね。これで後の最強コンビの結成だ!」
P「……そうですね、頑張りましょう」
その時の顔は笑顔だったけど、いろんな感情が混ざってて読めなかった。
今ならなんとなくわかるけど。多分アタシの言葉に笑ったのと、それが本当にできるかどうかわからない気持ちと、自分に対する自信のなさ。そういったものが頭の中でぐるぐるしていたんじゃないかな。
55 :
宮本フレデリカ「ふたりのウソつきの馴れ初め」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:36:10.65 ID:T483t/4+0
*
泰葉「つまり、フレデリカさんがあったころのプロデューサーさんは今のプロデューサーさんではなかったということですか?」
フレデリカ「んー、そうだねー。だからこれは、あたしと一緒にいる中でプロデューサーが今のプロデューサーになるお話、なのかな?」
泰葉「……なるほど。」
そういう話を知っていけば、確かにプロデューサーさんに近づける。フレデリカさんの話に油断はできないけど、話してもらえるのはありがたい。
泰葉「それにしても、プロデューサーじゃない新人だったのにプロデューサーにしてもらえるなんてフレデリカさんの評価って高かったんですね。」
フレデリカ「そうだねー、あの常務さんになぜか気に入ってもらえたみたい。ユニットのお誘いもよく受けるし♪」
泰葉「そうなんですね、確かによくあちらに行ってますね。」
ユニットの話もそうだけど、常務の部屋にもたまに行っていると聞く。
そういう話を聞くたびに恐れ多いなと思っていたけど、こういう経緯があったんですね……
泰葉「話の続きはどうなるんでしょう?」
フレデリカ「んーと、次はー……」
56 :
宮本フレデリカ「ふたりのウソつきの馴れ初め」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:37:07.59 ID:T483t/4+0
*
それからレッスンをしたりしながら、何日か経って。
センザイシャシンを取りに行ったんだ。
フレデリカ「フンフンフフーン、フレデリカ〜♪ あ、プロデューサー、こっちこっち〜、待ってたよ〜♪
アタシ、今から『センザイシャシン』撮るじゃない?やっぱ泡だらけで、バブリーラブリーな感じなのかな〜?」
P「そのセンザイじゃないですよ」
フレデリカ「オー、間違えちゃったデース!オー、ニホン語ムズカシーデース!なんちゃって〜♪」
初めてのプロデュースで緊張していたプロデューサーの頬はその時には緩んでいたんだ。
フレデリカ「オフランス生まれのフレちゃん流ボケ、ツッコんでくれてありがとね!アイドルで芽が出なかったらお笑いでトップをめざそーね!」
P「それもいいけど、ちゃんと写真を撮ろう」
フレデリカ「あー、写真……じゃあ場の空気も暖まってきたみたいだし、そろそろ準備を始めてもらおっか!」
P「そうですね、みなさんよろしくおねがいします」
そういってプロデューサーは頭を下げる。それを見てアタシも一緒に頭を下げた。
フレデリカ「アタシね、ハーフだし、ビジュアルは完璧でしょ?だから今日のお仕事、すっごく楽しみだったんだ〜♪
でも、プロに撮ってもらうなんて、ドキドキだよ〜!もう、緊張しすぎちゃって、心臓が口から出ちゃいそ〜。
うえ〜。あ、ホントに出てきちゃった〜!大変だ〜!」
P「……ホントに緊張してる?」
フレデリカ「ホントに緊張しているかどうかは……どっちでもいいじゃん♪あたしもプロデューサーも、スタッフさんも楽しく、お仕事したいからねー!」
P「……」
プロデューサーは何やら思案顔だった。楽しいということに反応していたと思うよ。まあこのあたりの詳しいところはもうちょっと後で。
フレデリカ「ほらそこー、カメラマンさん、さっきのボケで笑いすぎて手がぷるぷるしてない〜?写真がブレブレだったらや〜よ♪」
カメラマン「うん、気をつけるよ」
フレデリカ「照明さんも、笑いすぎて光調節間違えないでね〜?アタシ肌白いから、白飛びしたら背景に溶け込んじゃうんだから!」
照明「ふふっ、そうだね。気をつけなきゃ」
フレデリカ「あ、プロデューサーもそのままの顔で見ててねー!その笑顔で見ててもらえれば、アタシもきっといい顔できると思うから!」
P「はい、わかりました」
プロデューサーも思案顔から解放されて、みんな笑顔になって、楽しそうで。
こんなみんなが笑顔の場所がアタシは好きで。だから
フレデリカ「じゃ、はじめよっか!『喋らなければ美人』の、本気を見せてあげるー♪ ラビュー★」
みんなを笑顔にできる最高の空間で、アタシは笑って写真に写った。
57 :
宮本フレデリカ「ふたりのウソつきの馴れ初め」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:37:46.01 ID:T483t/4+0
*
泰葉「フレデリカさんは昔からフレデリカさんだったんですね。」
フレデリカ「うん、アタシフレデリカ!」
泰葉「そういうことじゃないんですけど……」
苦笑いしながらそう言う。多分、フレデリカさん流のボケで私を和ませようとしているのだろう。
泰葉「楽しいということに反応していたんですか……。なんだかイメージと違います。」
隠しているだけで今もそんなものを抱えているのだろうか……
フレデリカ「まあまあ、その辺りはこれから話すから。次の話はね……」
58 :
宮本フレデリカ「ふたりのウソつきの馴れ初め」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:38:24.10 ID:T483t/4+0
*
フレデリカ「フンフンフフーン、いよいよフレちゃん、アイドルデビュー♪ファーストお仕事は、遊園地のトークショーのゲストだね。おしゃべりなら得意分野だよー!」
P「そうですか、それなら安心です」
フレデリカ「でも、すんなりやると思ったら、大間違い!ここはひとひねり、ううん、3回転半ひねりくらいして☆おしとやかデビューでいってみよう♪」
P「喋らない方向性ですか?」
フレデリカ「うん!まずは美少女のアタシを楽しんでもらおうと思って。いーい? プロデューサー。レッスンした演技力、見せてあげるからさ!」
P「実際やってみるとどういう感じになりますか?」
フレデリカ「ボンジュール……♪アー……ジャポン……ンー……。アンシャンテ……。」
P「……」
フレデリカ「フレデリカでーす。オウエン……してくださーい……♪」
P「ウソつきですね……」
フレデリカ「んー、どうせなら、ウケる方がいいでしょー?今日のところは、このキャラで楽しんでもらおうと思って♪」
P「……なるほど」
プロデューサーさんは納得してないみたいだけど、そう言った。
59 :
宮本フレデリカ「ふたりのウソつきの馴れ初め」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:39:01.22 ID:T483t/4+0
フレデリカ「まだお仕事まで時間あるねー、ちょっとだけ遊ぼっか★」
P「ああ、どうぞ」
フレデリカ「むー……」
P「?」
フレデリカ「プロデューサーも一緒に来て遊ぶの、ホラ!」
P「わっと……!」
アタシはプロデューサーの手を引いてアトラクションへ駆け出して行った。
60 :
宮本フレデリカ「ふたりのウソつきの馴れ初め」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:40:12.34 ID:T483t/4+0
P「うぅ……辛い……」
フレデリカ「プロデューサー、大丈夫?」
P「まあ、なんとか……」
ジェットコースターやフリーフォール、コーヒーカップを経てプロデューサーはグロッキーになって、園内の喫茶店で休むことにした。
フレデリカ「んー、ただ休憩するのもなんだから質問に答えていってねー」
P「えっと、それは……」
フレデリカ「心理テストの本!これでプロデューサーを丸裸にしちゃうよー!」
そう言った途端、プロデューサーの目に一気に光が戻った。一瞬やる気が出たのかと思ったけど、その目は怯えてもいるようで……
フレデリカ「あなたは美しい森の中にいます。太陽はキラキラと輝き、風があなたの頬を気持ちよくなでています。
質問その1!誰と一緒に歩いていますか?」
P「……フレデリカさんかな」
フレデリカ「うん……。あなたはアタシと一緒に森の中を歩き続けていくと、ある動物に出会います。
質問その2!その動物は、一体何ですか?」
P「犬かな」
フレデリカ「犬種は?」
P「雑種だと思うよ」
フレデリカ「んー、じゃあ大型犬?小型犬?」
P「小型犬」
フレデリカ「ふむふむ……。さらに深く森の中を進むと空き地に出ました。その中心には、一軒の家があります。
質問その3!見つけた家はどれくらいの大きさ?その家に、フェンスはありますか?」
P「小さな家で、フェンスはない」
フレデリカ「そっか。家に近づいてみたところ、ドアが少し開いていました。そっと中へ入るとそこにはテーブルがありました。
質問その4!テーブルの上には何が置かれていますか?」
P「……リンゴかな」
フレデリカ「うーむ……。あなたは家の中をひと通り見て、裏口から外に出ます。そこには芝生が広がっていて、中心には庭があります。
そこで、あなたはマグカップを見つけます。質問その5!マグカップは何で出来ていますか?」
P「木製だと思う」
フレデリカ「んーと……、これ以上はいいかな。森の中を一緒に歩いているのは人生で一番大切な人だって!わーお、フレちゃん一番大事!」
P「そうなんだ……」
フレデリカ「出会った動物は抱えている問題の大きさだって!プロデューサーは大丈夫かな?」
P「まあ、そうですね。」
フレデリカ「家の大きさは野心の強さ。フェンスがないから素直な性格だって!」
P「ふむ……」
フレデリカ「テーブルの上が食べ物、人、花だと幸せだと感じているらしーよ。幸せ?」
P「はい、そうですね」
フレデリカ「マグカップの強度によって、一緒に歩いている人との関係の強さがわかるんだって!
フレちゃんとプロデューサー、あんまり仲良しじゃない?」
P「まあ、まだ出会ったばかりだし……」
アタシが泣き真似をすると、プロデューサーは慰めてきた。
フレデリカ「で、プロデューサー、楽しかった?」
その言葉にプロデューサーは一瞬ひるんだ後、「楽しかった」と答えた。
だけど……
61 :
宮本フレデリカ「ふたりのウソつきの馴れ初め」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:40:45.39 ID:T483t/4+0
フレデリカ「ウソつき」
P「!? なんで……」
フレデリカ「プロデューサーは自分のことを知られたくないんだよね、多分」
P「……」
この推測は多分合っていると思う。プロデューサーは答えなかったけど。
答えたくないのだろうと思って違う話題に移った。
フレデリカ「ねえ、プロデューサー。プロデューサーは楽しくなかったんだよね」
P「……ああ」
フレデリカ「じゃあ楽しくしちゃおう!嘘をついてもダイジョーブだから、アタシもつくし!」
P「なんで……?」
フレデリカ「誰だってウソはつくよ。だけど、ウソで楽しいふりをしても持たないよ。だったら自分で楽しくしちゃおうよ★」
P「ウソで……楽しく……」
フレデリカ「プロデューサー、プロデュースするのもやりたくなかったみたいでしょう?」
P「ああ、いきなりだったしな……。事務員で済むと思っていたし」
フレデリカ「じゃあ仕事を楽しくプロデュースしよう!それがウソでもいいから」
P「ウソで楽しく……そう、だな。楽しくないのなら自分で楽しくすればいい……!」
フレデリカ「うん、プロデューサーその調子その調子♪」
P「……で、どうすれば楽しいんだろう?」
フレデリカ「おっとっと……」
思わず滑りかけた。
フレデリカ「今日のトークショー、楽しくやるからプロデューサー見ててよ」
P「……うん、わかった。ありがとうフレデリカ」
62 :
宮本フレデリカ「ふたりのウソつきの馴れ初め」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:41:30.35 ID:T483t/4+0
*
フレデリカ「この後は色々あったけど、楽しく仕事を終えてプロデューサーは段々と今のプロデューサーになっていくんだよ。」
泰葉「そうなんですか……」
フレデリカ「つまりプロデューサーはアタシが育てた!」
泰葉「確かにそう言えるかもしれませんね」
フレデリカ「いや、これはおフランス流のボケで……」
フレデリカさんは遠慮しているけど、実際にそうと言えるほどフレデリカさんはプロデューサーに影響していると思う。
これだけ影響しているということは、もしかしてプロデューサーはフレデリカさんが好きなのでは……?
それにフレデリカさんが答えれば……
フレデリカ「で、他に質問ある?」
泰葉「ちょっと聞きづらいんですけど……」
フレデリカ「んーなになに?」
泰葉「フレデリカさんってプロデューサーのこと好きですか?」
フレデリカ「好きだよー、好きじゃなきゃこんなに一緒にお仕事してないよー」
泰葉「えっと、そういう事じゃなくて恋愛的な意味で……」
フレデリカ「……どっちだと思う?」
フレデリカさんの瞳に見つめられる。そのまっすぐな視線はどこまでも私を射抜いて……
P「ああいたいた。フレデリカ、そろそろ仕事だぞ。」
そこにプロデューサーが現れた。
フレデリカ「あれ、そうだっけ?」
P「そうだぞ、連絡したんだけどな……」
フレデリカ「あっ、来てる来てる♪ 気づかなかったー★」
P「今日の仕事は何だと思う?」
フレデリカ「んー、おでんを食べさせられるのかなー。」
P「おしいな、みんなで買い食いをする仕事だ。」
フレデリカ「あー、そっかー。じゃあレッツゴー!」
P「あーもう、いきなり走るなよ。」
そう言いながらも走る姿や息の合った掛け合い。今までだって見てきたもののはずなのに、フレデリカさんの話を聞いた後だとどうしても焦燥を覚えてしまうのでした。
63 :
◆cTsEE87S4.
[saga]:2018/12/29(土) 22:46:01.40 ID:T483t/4+0
投下終了です。これからサブタイトルは最初にサブタイトルだけ投稿した後名前欄に入れますね
次はアニバーサリーライブでプロデューサーとフレデリカと泰葉の今を書こうと思います
あっ、SS最後のレスにつづくって書き忘れた……
64 :
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/01/04(金) 14:36:48.39 ID:OIJ1NRNZ0
今回はそこまで間が長くならなくて済みました
今回は桃華視点のリトルチェリーブロッサムで動かす感じでやってみました
65 :
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/01/04(金) 14:37:31.26 ID:OIJ1NRNZ0
櫻井桃華「アニバーサリーといたずらな運命」
66 :
櫻井桃華「アニバーサリーといたずらな運命」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/01/04(金) 14:38:34.80 ID:OIJ1NRNZ0
メモリアルアルバムが完成して、遂にアニバーサリーライブ当日。
わたくしたちはそれぞれこの日に向かって準備してきました。
今日はそれをたくさんのファンの前で披露いたします。
P「よし、みんないるな!ちょっとこっちに来てくれ。」
プロデューサーちゃまが確認をして呼びかけます。
机の下にいたり、そこらで遊んでいたアイドル達がその呼びかけに反応して集まってきました。
P「今日は事務所のアニバーサリーだ。事務所にとってとても大事な日だし、上の方はこれの成功を前々から計画して期待している。」
改めてそんなことを言われて、その場にいる全員が真剣な表情になる。
P「だから絶対成功させてほしい……というのが事務所からの指令だけど、俺はただいつも通り楽しめばいいと思う。事務所のことは気にしなくていい。」
泰葉「ならなんで言ったんですか……」
P「いや、上の方からこう言えって言われて……言ったからセーフだよね?」
桃華「どうなんでしょう……」
フレデリカ「フレちゃんは知ーらないっ!」
P「フレデリカは薄情だなあ……寂しくなっちゃうよ。」
フレデリカ「じゃあ今だけでもかまってあげるね〜、わしわしわし〜」
P「うおっ!俺の髪をモフモフするな!」
ふと隣を見ると、泰葉さんが羨ましそうに、そして寂しそうにプロデューサーちゃまたちを見ていました。
今までの泰葉さんは羨ましがるような感情を抑えていましたし、そこまで寂しそうにはしていなかったと思います。
一体何があったんでしょうか……
悠貴「あの、とにかく今日もいつも通り頑張る、ってことでいいんですね?」
P「ああ、いつも通り頑張って来い。そもそもアニバーサリーとかあんまり実感ないだろ。」
乃々「確かに……私たちが入ってから1年経っていませんし……」
フレデリカ「そうだよねー、困るよねー。」
P「だから、今日はとにかく楽しんで来いってことだ!諸々の責任は俺が持つ!」
フレデリカ「ひゅー、プロデューサービールっ腹ー!」
P「それ悪口だぞ!ビール腹でもないし!」
桃華「それを言うなら太っ腹でしょう。」
フレデリカ「そうそう、それそれー。」
P「全くもう……」
薫「ねえねえ、このブレスレットってもしかして……」
P「おっ、よく気付いたな。俺がデザインしてみたんだ。流石に何度か手直しが入ったけど……」
薫「せんせぇ、前からこういうの描いてたもんね!」
プロデューサーちゃまはこういったファッションが趣味で、以前から余った時間でロゴやアクセサリーなどを考えていました。
本人は実益を兼ねていていい趣味だなんて自賛していましたけど、なかなかそういったものを使う機会はなかったのですけど……
P「うん、前々からやってみたくてな。出来てよかったよ。」
こういった表情を見ていると、プロデューサーちゃまの夢も叶ってよかった、そう思えます。
P「っと、言いたいことは言えたからもう大丈夫だぞ。何かあったら俺や周りのスタッフに言ってくれ。じゃあ今日はよろしくな。」
桃華「はい、よろしくお願いいたします。」
薫「はーい、よろしくお願いしまー!」
泰葉「はい、よろしくお願いします。」
フレデリカ「はーい、よろしくねー。」
悠貴「はいっ、よろしくおねがいしますっ!」
乃々「はい、よろしくです……」
67 :
櫻井桃華「アニバーサリーといたずらな運命」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/01/04(金) 14:39:12.89 ID:OIJ1NRNZ0
プロデューサーちゃまの挨拶が終わり、みんながライブに出演する知り合いに会いに行ったりする中でわたくしは泰葉さんについていきました。
泰葉「あの……桃華ちゃん。どうしたの?」
桃華「そのお言葉、そのまま返させていただきます。泰葉さんこそどうしたのですか?」
泰葉「えっ……」
桃華「先ほどの泰葉さんはらしくありませんでした。なんだか寂しそうで……」
泰葉「寂しそう……そっか。私寂しいんだ。」
泰葉さんにはその自覚がなかったようです。本当に何があったのでしょう。
桃華「あの……もしよろしければ何があったのか聞かせていただけますか?」
泰葉「……うん。今は挨拶回りもあるし、話すことを整理したいし後でいいかな?」
桃華「はい、では後で聞かせていただきます。……泰葉さん、わたくしは貴方の味方ですから、あまり思いつめないでくださいね。」
泰葉「うん、ありがとう桃華ちゃん。」
その力ない笑みは今すぐ問いただしたくなるほど心配な物でしたが、ぐっと我慢してわたくし個人の挨拶へ行きました。
68 :
櫻井桃華「アニバーサリーといたずらな運命」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/01/04(金) 14:40:03.68 ID:OIJ1NRNZ0
ライブの幕開け。アニバーサリーにふさわしいオープニングの後、出演するアイドル全員で1曲。
アイドルそれぞれが自己紹介をした後、それぞれのソロ曲やユニット曲でライブは続いていく……
そんな中でわたくしたちリトルチェリーブロッサムは待合室で顔を合わせていました。
桃華「薫さんもいますけど、大丈夫でしょうか?」
泰葉「……薫ちゃんが大丈夫ならいいと思うけど。」
薫「えっと、何の話?」
泰葉「私とプロデューサーさんの話。薫ちゃんは大丈夫?」
薫「泰葉ちゃんとプロデューサーが?何かあったの?」
泰葉「うん、ちょっとね……」
薫「かおる、泰葉ちゃんが困っているなら力になりたい!おはなし、聞かせて?」
泰葉「そっか。じゃあ話すね。」
69 :
櫻井桃華「アニバーサリーといたずらな運命」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/01/04(金) 14:41:02.61 ID:OIJ1NRNZ0
そうして泰葉さんが話したのは、プロデューサーが以前違うような人物だったこと、そう買えたのがフレデリカさんであること。そして……
桃華「プロデューサーちゃまがフレデリカさんのことが好きで、フレデリカさんもプロデューサーちゃまを……」
泰葉「恋愛的な意味で好きだって確認が取れたわけではないけど、そうじゃないかなって……」
薫「うーん、よくわかんないけどせんせぇとフレデリカお姉ちゃんって確かに仲いいよね」
泰葉「うん、それとこのブレスレット……」
桃華「これがどうかしまして?プロデューサーちゃまがデザインしたものでしたが……」
泰葉「フレデリカさんもファッションが趣味なんです。私がいない間に色々あったんだろうなって……」
桃華「……なるほど。」
大好きなプロデューサーちゃまにフレデリカさんの影を感じてしまい、ふたりの仲にかなわないと思ってしまっている。
桃華「だから、諦めるんですのね。」
薫「桃華ちゃん?」
泰葉「諦め……そうかもしれません。」
桃華「そんな覚悟でプロデューサーちゃまと付き合うと、救うと言っていたんですのね」
泰葉「そんな覚悟って……私は……!」
桃華「じゃあそんな簡単に諦めないでください!たとえプロデューサーちゃまが自分のことを好きでなくても、振り向かせると決めたのではないのですか!?」
泰葉「!」
わたくしの檄に泰葉さんは衝撃を受けていました。そして
泰葉「そうだね……私らしくなかったかもしれない。例えプロデューサーさんがフレデリカさんが好きでも、私がプロデューサーさんが好きなんだ。」
そうです、その思いがあれば……
泰葉「フレデリカさんからプロデューサーさんを寝取ってみせる!」
薫「ねと……それどういう意味?」
桃華「知らなくていいことです……」
たまにテンションが上がると変なことを言い出すのはどうにかならないでしょうか……
70 :
櫻井桃華「アニバーサリーといたずらな運命」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/01/04(金) 14:42:03.66 ID:OIJ1NRNZ0
わたくしたち3人で歌った曲は「Spring Screaming」。
薫さんたちの曲ですが、泰葉さんはかなり心が入っていてすごい表現力でした。
いたずらな運命、恋、ざわめき。やはり思うところがあったのでしょうか。
後で薫さんのほかにも泰葉さんも曲に関することを聞かれて照れていました。
こう思いを込められたのがわたくしの檄のおかげであれば、あのタイミングでお話が出来てよかったです。
そして合間のトークが終わって、舞台をはけるとプロデューサーちゃまとフレデリカさんがいました。
P「よっ。3人ともよかったぞ。」
泰葉「ありがとうございます、プロデューサーさん。」
フレデリカ「アタシはこれからなんだー、緊張で口から胃が出てきそう。おえっ。」
P「珍種のカエルかキミは……」
フレデリカさんと抜群の掛け合いをするプロデューサーちゃま。言ったそばからこういったものが来ましたが……
泰葉「ふふっ、それなら口から心臓ですよね。」
フレデリカ「あー、それそれ。ありがとうヤスハちゃん!」
泰葉「フレデリカさん。」
フレデリカ「ん、なーに?」
泰葉「私、負けないですからね。」
フレデリカ「んー、アタシもこれから頑張ってくるよ!」
泰葉さんの思いを込めた決意。フレデリカさんに伝わっているかはわかりませんが、それでも意味のあったものだったと思います。
桃華「泰葉さん、ナイスファイトでした。」
薫「うん、頑張ったね!」
泰葉「ありがとう、ふたりとも。私もこれから頑張るよ。」
その瞳は清々しいほど綺麗で、きっと今の泰葉さんならこれから待つ壁も越えられると思いました。
それがたとえどんなものでも……
71 :
櫻井桃華「アニバーサリーといたずらな運命」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/01/04(金) 14:43:43.63 ID:OIJ1NRNZ0
ライブは大盛況のうちに終幕を迎え、大成功になりました。
プロデューサーちゃまの言っていた上の人たちの思惑通り、ということで大丈夫なのでしょう。
P「みんな、お疲れ様!よく頑張ったな!」
泰葉「はい、頑張りました!」
フレデリカ「アタシもー、最高に楽しかった!」
プロデューサーちゃまの呼びかけにみんなが集まっていきます。
あんなに囲まれて、プロデューサーちゃまも大変ですわね。
薫「あれ、桃華ちゃんは行かなくていいの?」
桃華「わたくしは、もうちょっと後で構いません。落ち着いて話したいですから。」
薫「そうなんだー、じゃあかおるも行ってくるね!せんせぇー!」
そうして待っていると、泰葉さんがプロデューサーちゃまたちから離れてこちらにやってきました。
泰葉「今日はありがとうね、桃華ちゃん。おかげであの曲も最高のパフォーマンスが出来たよ。」
桃華「いえ、ユニットの仲間ですから。お気になさらず。」
泰葉「ふふっ、そうだね。そういえばユニットを初めて組んだ時も桃華ちゃんにいろいろ支えてもらっていたね。」
桃華「そうですわね。今では泰葉さんも立派に他のアイドルを引っ張れるようになって……成長しましたわね。」
泰葉「うん、本当にプロデューサーにスカウトされてから私は成長したんだ。だから恩返しがしたい、私なりのやり方で。」
桃華「ふふっ、その意気ですわ。頑張ってくださいまし。」
泰葉「うん、私頑張るよ。プロデューサーのため、支えてくれる乃々ちゃんのため、そして今日励ましてくれた桃華ちゃんのためにも。」
そう聞いて少しポカンとしてしまいました。
泰葉「桃華ちゃん?」
桃華「いえ。……それならいい報告、期待していますわね。」
泰葉「うん。きっと期待に応えてみせるよ。」
その覚悟を決めた笑顔を見て、わたくしはやはり泰葉さんに報われてほしいと改めて思ったのでした。
つづく
72 :
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/01/04(金) 14:45:50.95 ID:OIJ1NRNZ0
投下終了です
次はトークバトルで泰葉が思い出を薫に話すみたいな感じの予定です
73 :
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:44:11.40 ID:WzcGs/l70
泰葉タイトルだけどまずは薫視点。薫でいいタイトルが思いつかないで……すまない
後、思ったよりシリアスになって薫っぽくもないかもしれない
うーむ(画像略)
74 :
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:45:10.13 ID:WzcGs/l70
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
75 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:46:39.87 ID:WzcGs/l70
アニバーサリーライブからしばらく経って、今日はトークバトルのお仕事!
泰葉ちゃんは応援する側、かおるはトークする側で呼ばれたんだー!
かおるが泰葉ちゃんのところへ行くと、泰葉ちゃんは花束を持ってたんだー
薫「泰葉ちゃん、その花束どうしたの?」
泰葉「あ、薫ちゃん……子役時代から応援してくれていた人が楽屋に届けてくれたの。ファンレターもくれて……」
薫「わー、よかったね泰葉ちゃん!子役の時から……だから、ずっと応援してくれている人なんだね!」
泰葉「うん、ファンレターにも色々書いてくれて……私のアイドルとしての成長も見てくれていて、思わず笑顔になっちゃいます。」
薫「そうなんだ……。そういえば泰葉ちゃんってなんでアイドルになったの?せんせぇからのスカウト?」
泰葉「うん、スカウトだよ。だけどそれだけじゃなかったかな。」
薫「それだけじゃないって?」
泰葉「実は最初にプロデューサーさんと会ったときは、印象よくなかったんだ。私も今と全然違いましたから。」
薫「そうなんだー……。ねえねえ泰葉ちゃん、その時のお話って聞かせてもらえる?」
泰葉「うん、いいよ。トークバトルショーの前にお話ししちゃおっか。」
薫「やったー!」
泰葉「ふふっ。それじゃあ話していくね。」
76 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:48:09.57 ID:WzcGs/l70
*
それは私がアイドルになる前、モデルとして活動していた頃。
プロデューサーさんは私の撮影の見学に来たんだ。
泰葉「スタッフのみなさん、おはようございます。モデル部門の岡崎泰葉です。よろしくお願いします。」
スタッフの人たちも私に挨拶してくる中で、ひとり見知らぬ人が近づいてくる。
それがプロデューサーさんだった。
P「おはようございます、私はこういうものです。」
泰葉「……アイドル部門のプロデューサーさんですね。見学に来ると聞いていました。よろしくお願いします。」
挨拶を終えて、軽く準備をして撮影は始まりました。
カメラマン「はーい、ポーズ変えてー。つぎ目線外してー。そうそう、カメラ慣れしてるねー。さすが芸歴11年っ。」
泰葉「…………。」
撮影は順調に進みました。私は自分を抑え、カメラマンさんの言う事を考えてその通りに動いていました。
だからこそそこに反応など起こらず、余計な時間などなくただカメラマンさんの作品が出来上がっていきました。
そして、撮影が終了して私の荷物をまとめて。
私は少し気が進みませんでしたが、プロデューサーさんに話しかけに行きました。
泰葉「お疲れさまでした。プロデューサーさんも、見学はいかがでしたか。何か気付いたことがあったら教えてください。」
P「んー、楽しくなさそう?」
とんでもないことを初対面の人間に言うものだと思いました。私に、楽しくなさそうだなんて……
泰葉「……私が、ですか?そんなことありませんよ。お仕事はいつも楽しくやらせてもらっていて……。」
P「本当に?」
軽薄そうな笑みを浮かべてプロデューサーさんはそう言いました。何と腹の立つことでしょう。
ただ、その頃の私は光を見失って、ただ周りの大人の言う事を聞き、義務感で動いていました。
そのプロデューサーの発言は的を射ていましたが、そのまま認めるのはあまりに癪でした。
泰葉「たとえ、私が楽しいと感じていなかったとしても、お仕事自体はカンペキにこなしたはずです。……何が言いたいんですか。」
つい、棘のある言い方をしてしまいます。何年も大人にそんな言い方をしたことはないと思っていたのですが。
P「楽しみたくはない?」
泰葉「楽しくないよりは楽しいほうがいいかもしれませんね。でも、ずっと芸能界で生きてきた私にしてみれば、そんなの、甘えです。夢が見られるような甘い場所じゃありませんし、やりたいことをできることなんてないんです。華やかなだけじゃない、それが芸能界ですから。」
P「なるほど、泰葉さんの言う事も一理ある。」
泰葉「だったら……」
P「でも、楽しくないなんてそんなに持つことじゃないよ。いつか破綻する。」
泰葉「……何が言いたいんですか?」
P「一緒に『楽しい』を見つけよう。」
泰葉「……失礼します。」
なんとなく惹かれるものがありましたが、プロデューサーさん個人への反感で私はその日何も聞かずに帰っていきました。
77 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:48:57.38 ID:WzcGs/l70
*
薫「そんな出会いだったんだー……」
泰葉「意外だった?」
薫「んー、せんせぇはせんせぇであんまり変わらないかな。初めて会ったのにそんなこと言うのは酷いけど……」
泰葉「そうだよね、いきなりあんなこと言うんだもん。」
薫「でも、今は仲良しだし泰葉ちゃんはせんせぇのことが好きだよね!」
泰葉「うん、だからこれは私が『私』を取り戻して、プロデューサーさんを好きになる物語。」
泰葉ちゃんは愛おしそうにそう語ります
幸せそうで、薫も幸せになってきまー!
泰葉「続き、話していくね。」
78 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:50:49.60 ID:WzcGs/l70
*
その日から2日後。仕事も学校もないオフの日。
私はモデルの勉強もかねてウィンドウショッピングに行きました。
そこでどこかで聞き覚えのある声に話しかけられました。
P「泰葉さん、偶然だね。」
泰葉「あなたは……」
思わぬところで最悪の人に出会い、しかめっ面になってしまいます。
泰葉「なんでここにいるんですか、女性服のお店ですよ。」
そう。ここは女性服の店。私が見ているから当然なのだけど、プロデューサーさんのような男がいるのは不自然です。
P「あーいや、趣味だよ。」
泰葉「女性服を着る趣味が……?」
ますます眉間のしわが濃くなります。
P「いや違う違う違う!こういうファッションを見るのが趣味なんだよ。アイドルのプロデュースという職業との兼ね合いもいいだろ?」
泰葉「…………。まあそうですね。」
確かに職業との兼ね合いもいいし、そういう趣味ならここにいるのは納得がいく。
ただ、不快な人物と出会った事実は変わらないわけで。
P「それで、泰葉さんはその服を買うの?」
泰葉「いえ、手に取ってみただけです。私もモデルの勉強も兼ねてみているので。」
P「なるほど、じゃあお仲間だ。」
しかも、こちらについてきて仲間だなんて言う。この時点でかなりイライラ来ていました。
泰葉「あの、ついてこないでもらえますか……?」
P「んーダメかな。」
泰葉「何故ですか?」
P「今日出会ったのは運命だと思う。きっとアイドルの神様が泰葉さんを逃しちゃダメだって言っているんですよ。」
運命、神様……妙にロマンチックな言葉を使うなと思いました。
だからこそ、妙に『楽しい』に執着するんだと私は考え、突き放したい思いでいっぱいでした。
だから、ここで私が考えたのは意地悪。
わざと話を聞いて、それを否定しようと思ったのです。
泰葉「そうですね、じゃあ話し合いましょう。この近くのカフェででも。」
P「おっ、ホント?やったー!」
この軽薄そうな笑顔が苦渋で歪むのが楽しみでした。本当に趣味の悪いことですけど。
79 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:51:19.33 ID:WzcGs/l70
*
薫「泰葉ちゃんそう言う事考えていたんだ……」
泰葉「うん、あんまり人に言いづらいことだから秘密にしてね。」
薫「うん! それで結果はどうなったの?」
泰葉「それは、まあ私がここにいることから見れば大体わかると思うけど……」
80 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:52:24.33 ID:WzcGs/l70
*
カフェについて、飲み物を頼んで。私たちは話し合いを始めました。
泰葉「それじゃあ、話しましょう。」
P「はい。それでは、泰葉さんはなんで楽しいことをしないのでしょう?」
泰葉「……それが甘えだからです。プロならば、周りの人の期待に応えるべきです。」
P「期待に応える、それは正しいね。でも甘えって何だろう?」
泰葉「この業界は夢を見れるような世界じゃありませんし、やりたいことをできるなんてありません。華やかなだけじゃないのが芸能界です。」
P「うん、でも厳しいだけじゃない。ずっと夢を見てもいられないけど、やりたいことはやってみればいいと思う。」
泰葉「周りの人が期待していないかもしれませんよ。」
P「周りの人たちも巻き込めばいい。楽しいは伝わる。」
泰葉「楽しいが、伝わる……?」
P「そう。泰葉さんは経験がない?」
泰葉「どうでしょう……わかりません……」
P「前も言ったけど、楽しくないことをずっとやっても続ける気力がなくなっていく。だったら楽しいを作り出していく方がいいんだ。」
泰葉「楽しいを作り出す……」
P「泰葉さんの『楽しい』を作らない?きっと素敵なことだよ。」
泰葉「わかりません……」
意気揚々と乗り込んでいったのに、プロデューサーさんに返されて何も言えないでいる私がそこにいました。
P「……じっくり考えてほしい。そして、私を、アイドルを選んでくれると嬉しいです。今度こそ楽しみな返事を待っていますね。」
その笑顔は出会った頃のように軽薄だったけど。
その奥に見えないものがあるようでどこか魅力的に思えました。
81 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:53:20.15 ID:WzcGs/l70
*
薫「せんせぇ、こんな感じだったんだ。でもこれって……」
泰葉「うん、プロデューサーさんはフレデリカさんの影響を受けてこうなった。それは忘れてないよ。」
泰葉ちゃんの顔に少し寂しさが見えました。まだ、色々考えているのかな……
薫「後、泰葉ちゃん本当に『楽しい』を見失っていたんだね」
泰葉「うん……。今は取り戻せて本当によかったよ。」
そう言って泰葉ちゃんは花束に目を落としました。心から、そう言っているのがわかるような言い方でした
泰葉ちゃん、本当に大変だったんだね……
泰葉「ここから先も話していくね。」
82 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:53:48.76 ID:WzcGs/l70
*
それから何日か考えて。私はアイドルになることを決めました。
泰葉「あの、おはようございます。……アイドルに、なろうと思います。」
P「そっか、よかった。大歓迎だよ。」
泰葉「一緒に『楽しい』を探してくれますか?」
P「ああ、探していこう。」
83 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:54:41.21 ID:WzcGs/l70
泰葉「おはようございます。今日のレッスン、よろしくお願いします。」
P「うん、よろしく。レッスン、どういうのがいいかな?」
泰葉「子役のモデル上がりだからって、特別扱いされるのは嫌です。アイドルの基礎から学びたいんです。まず、何をすればいいですか?」
P「そっか。じゃあビジュアルレッスンをしてみよう。」
泰葉「ビジュアルレッスンということは、お芝居ですよね。わかりました。どんな役を演じればいいですか?」
P「自分を、表現してみて」
泰葉「自分を、表現……?役を演じるんじゃないんですか?」
P「どうかした?」
泰葉「子役時代にそんな要求をされたことはなかったので、戸惑ってしまって……。」
P「……ふむ。」
泰葉「与えられた役に合うように演技するだけでしたから。自分を表現するには……どうしたらいいんでしょうか?わかりません……。」
P「こう……内なるパッションを……」
泰葉「何ですかそれ……」
全く分かりませんでした。
P「おう……視線が刺さる……。うーん、だったら自己分析だな。」
泰葉「自己分析……」
P「自分を表現するには自分がどういう人間か知る必要があると思うんだ。」
泰葉「……なるほど。たしかに、知らないものは表現できませんよね。自分、か……」
泰葉「……。そんな風に考えたことありませんでした。」
P「? そうなのか?」
泰葉「子役時代は、良い子でいることが正解でしたから。大人の言う事をよく聞いて、ワガママを言わずに子供らしく……。」
P「……」
泰葉「でも、ここでは違うんですね。自分で考えて、それを表現することが大切で。」
P「そうだな、それが大事だ。」
泰葉「それがわかっただけでも、アイドルになった意味は合ったのかもしれません。では、以上を踏まえて……もう一度、お願いします。」
P「ああ、自分の表現、やってみてくれ!」
84 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:55:18.93 ID:WzcGs/l70
P「んー、やっぱ流石だな。」
泰葉「なんでしょうか?」
P「自分の表現ってとこでは躓いたけど、後は流石の演技だったよ。」
泰葉「そうですか、ありがとうございます。」
P「この調子なら案外すぐ見つかるかもな、『楽しい事』。」
泰葉「それだといいのですけど……」
演技は子役の延長線上にあったから出来たこと。私はこの時点ではまだ悲観的でした。
泰葉「でも、私自身を知って成長できれば……。後、プロデューサーさんの事も知ってみたいです。」
P「……人が他人を理解できることなんてないよ。」
泰葉「……そうでしょうか。」
P「そうだよ。」
このセリフだけどうにも夢をよく語るプロデューサーの発言の中で浮いていて。なんとなく気になっていました。
85 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:56:25.58 ID:WzcGs/l70
*
薫「それって、せんせぇの問題なのかな?」
泰葉「うん、多分。」
せんせぇはフレデリカちゃんの影響を受けているけど、全部が全部じゃない
影響を受けていないところもあって、そこに問題がある。それはかおるにもわかっていました
薫「泰葉ちゃんは、どんな問題か分かる?」
泰葉「ううん、でも過去に何かあったのかな……」
そうして考える瞳は真剣そのものでした
86 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:57:17.09 ID:WzcGs/l70
*
そしてレッスンを積んで、宣材写真も撮って。
私はアイドルとして初めてのステージに立つことになりました。
泰葉「……」
P「んー、大丈夫?」
泰葉「人前で歌う機会は前にもありましたし、今回の歌詞もダンスもカンペキに覚えました。その面では大丈夫なんですけど……」
プロデューサーさんの顔を見ます。相変わらずよくわからない笑みを浮かべていて、なんとなく軽薄なイメージが拭えません。
泰葉「ここまで来ても、まだ楽しめる事の答えがわかりません。本当にこのままお仕事をして見つかるものでしょうか……。」
P「……見つかるよ、きっと。」
そう言った時のプロデューサーさんは本当に確信しているようで。どこか底知れず、それに自分も触れてみたいと思ったのでした。
87 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:57:58.00 ID:WzcGs/l70
泰葉「……………………。」
私は呼ばれてステージに出たのですが、上手に出来ませんでした。
P「大丈夫?」
泰葉「あ、はい。いえ、その……。お客さんの反応がよくなくて……。」
P「……うん、そうだったね。」
泰葉「私、何か失敗したでしょうか……。プロデューサーさんは分かりますか?」
P「泰葉は、自分を表現できた?」
泰葉「自分を表現……そんなこと考えてもいませんでした。そうでしたね……。いつかのレッスンで言われたのに……。」
P「……。」
プロデューサーは何かを秘めるように笑っていました。
泰葉「私、プロ失格です。お客さんのこと、何も考えていなかった。……でも、どうしたら……。」
P「何をしたらいいと思う?」
泰葉「……わかりません。どうしたらいいんでしょう……。」
P「泰葉は前、子役として活躍していたよね。ステージもやっていた。その時は成功していた。そこに鍵があると思わない?」
泰葉「私の、過去に鍵が……?」
P「泰葉は子役の時、どうやってお仕事をしていた?」
泰葉「周りの大人の言う事を聞いて、いい子として……」
P「……そうだったね。じゃあなんで子役のお仕事をしようと思ったの?」
泰葉「それは、親に言われて始めたんです。」
P「そっか。なんで断らなかったの?」
なんで断らなかったのか?何故だろう……
泰葉「……芸能界の光に、憧れがあったからでしょうか。明るくて、楽しそうで……」
そうだ、その憧れがあったから飛び込めた。
P「そうして始めたお仕事はどうだった?」
泰葉「……楽しかったです。私の演技で、ステージで、みんなが笑ってくれて……」
P「……。」
プロデューサーさんは笑っている。私を慈しむ様に。
泰葉「そうです、楽しかったんです。みんなが笑ってくれるのが……!」
P「じゃあ、やるべきことは決まったね。」
泰葉「やるべきこと?」
P「みんなを笑わせよう。そのために……」
88 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:58:28.17 ID:WzcGs/l70
プロデューサーさんのアドバイスを受けて、私は再びステージに立ちます。
泰葉「みなさん、すみません。私は自分を見失っていました。」
泰葉「私は……私は!みなさんを楽しませたいです。みなさんの笑顔が見たいです。」
泰葉「だから見ていてください。そして笑って欲しい。私らしいステージを。」
今度こそ、私はステージを成功させました。
89 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:59:12.72 ID:WzcGs/l70
*
薫「せんせぇの協力があって、ステージ成功したんだね!」
泰葉「……うん」
泰葉ちゃんの様子は少しおかしかった。まるで……
薫「嘘?」
泰葉「!?」
薫「あー、泰葉ちゃん嘘ついたんだー!」
泰葉「えっ、だって恥ずかしくて……」
薫「恥ずかしいって?」
泰葉「その、プロデューサーさんが可愛くって言って……頑張ったら沈みかえって……」
薫「せんせぇ……」
せんせぇの悪戯好き、そこでもやったんだ……。
泰葉「もういい?じゃあ先に行くよ?」
90 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 07:59:45.89 ID:WzcGs/l70
*
泰葉「プロデューサーさん!」
P「おー、泰葉。よかったぞ。」
泰葉「可愛くって……沈みかえったじゃないですか!」
P「あはは、そうした方がやりやすいかと思って。」
泰葉「やりづらかったですよ!」
P「でも、うまくいっただろ?」
泰葉「はい、それもプロデューサーさんのおかげです。」
P「俺はちょっと手を貸しただけだよ。答えは泰葉の中にあった。」
泰葉「そうですね、私の中に……」
でも、それを探し当てたプロデューサーさんには感謝の気持ちしかありませんでした。
ちょっと変なことされましたけど。
泰葉「プロデューサーさん。私、もっとアイドルしたいです。プロデュースしてくれますか?」
P「おう、これからよろしくな。」
91 :
岡崎泰葉「ふたりの始まり」
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 08:00:23.29 ID:WzcGs/l70
泰葉「これが、私とプロデューサーさんの馴れ初めです。」
薫「馴れ初め……」
使い方あってるっけ?
泰葉「この後も、プロデューサーさんは私に向き合ってくれて……。でも今は向き合っていない。」
薫「うん、そうだね……」
せんせぇは泰葉ちゃんの気持ちに対して誤魔化し続けている。
泰葉「だから、問題を解決して無理やりこっちを向かせてみせます!」
薫「……」
泰葉ちゃんは冗談めかしているけど、その眼は本気でした
せんせぇと泰葉ちゃん。ふたりの意思はきっといつかぶつかり、何か起きそうです
その時、かおるには何が出来るんだろう
お仕事が始まるまで、自分に問いかけ続けました
92 :
◆cTsEE87S4.
[saga]:2019/02/16(土) 08:01:36.64 ID:WzcGs/l70
投下終了です
次はプロデューサーの過去を知っているアイドルが出てきて〜みたいな感じです
よろしくお願いします
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荒巻@中の人 ★
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