岡崎泰葉「私の憧れの人」

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1 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/18(日) 00:49:33.24 ID:0rN593qB0
泰葉とフレちゃんとプロデューサーの物語です
後、このSSの泰葉はちょっと変だと思います

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1542469772
2 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/18(日) 00:52:01.90 ID:0rN593qB0
その人は軽薄な笑顔を浮かべながら目の前に現れました。
そしてとんでもないことに仕事をしている私に「楽しくなさそう」なんて言ってきたのです。
だから、初めての印象は最悪でした。それこそ、こんな思いを寄せるなんて思わないほど……
3 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/18(日) 00:52:28.75 ID:0rN593qB0
泰葉「だから、プロデューサーさんったら酷いんですよ……フレデリカさん、聞いてますか?」

フレデリカ「うん、聞いてる聞いてる」

泰葉「じゃあ今まで話したこと言ってみてください。」

フレデリカ「うーんとねえ、ヤスハちゃんのアプローチにプロデューサーが振り向いてくれないって話でしょ。」

泰葉「そうですけど、そうじゃなくて……」

フレデリカ「やーん、照れてるヤスハちゃんカワイイー!」

泰葉「ちょっ、フレデリカさんやめてください……!」

フレデリカさんに抱きしめられてしまいました。
私は細かいことを聞きたかったんですけど、ついフレデリカさんの言葉に照れて隙を見せてしまいました……
4 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/18(日) 00:52:56.37 ID:0rN593qB0
泰葉「わ、私はちゃんと細かいことも聞いてるか……」

フレデリカ「聞いてるよー、いつものでしょ?」

泰葉「いつも、とかじゃなくて……」

フレデリカ「ちゃんと聞いてるよ、ヤスハちゃんの話。」

フレデリカさんが私の目をじっと見つめる。
フレデリカさんは目力が強くて、こうして見つめられるとどうにも押しきられてしまう。
5 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/18(日) 00:53:24.75 ID:0rN593qB0
泰葉「むむぅ……まあ、いいです。プロデューサーさんったらつれないんですよ、私とプロデューサーさんの仲なのに。」

フレデリカ「プロデューサーとアイドルの関係だね。」

泰葉「チョコをあげたこともあるのに……」

フレデリカ「お仕事だね、一緒で楽しかったよ!」

泰葉「色んな姿を見られたのに……」

フレデリカ「お仕事の衣装だね!」

泰葉「そして、色んな壁をふたりで乗り越えたのに……」

フレデリカ「ビジネスパートナーとしてね!」

泰葉「フレデリカさん……」

余計な茶々を入れるフレデリカをじっと睨む。

フレデリカ「えっ、フレちゃんひとつも間違ったこと言ってないよ!」
6 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/18(日) 00:54:35.53 ID:0rN593qB0
泰葉「とにかく、いくら誘っても乗ってこないんです。ポッキーゲームもダメでしたし、背中のファスナーも特に反応なく上げられてしまいました……」

フレデリカ「うーん、それはショックだよね……」

泰葉「私に魅力がないんでしょうか……」

フレデリカ「そんなことないよ!たくさんのファンがヤスハちゃんにメロメロだし、もしプロデューサーがそんなこと言ったら真実の口に食べさせちゃうんだから!」

泰葉「フレデリカさん……ありがとうございます。」

フレデリカさんの励ましに気力が沸いてくる。彼女はそういうのが本当にうまいと思う。実際今回を含め何度も励まされた。
7 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/18(日) 00:55:05.04 ID:0rN593qB0
泰葉「それでプロデューサーさんを誘惑する方法ですけど……」

フレデリカ「それフレちゃんも考えなきゃダメ?」

泰葉「もう私には手がないんです……!」

フレデリカ「うーん、そう言われても……あっ!」

泰葉「何かありましたか!?」

フレデリカ「プロデューサーは放っておくといいと思うよ。」

泰葉「それ成り立つんですか?」

フレデリカ「そうだよそうだよー、押してダメなら引いてみろって言うでしょ。プロデューサーにはピッタリの作戦だと思うな!」

泰葉「……確かにプロデューサーさんはそういうことを気にするタイプですね。フレデリカさん、ありがとうございました!」

私は天啓を得ました、プロデューサーさんを落としてみせます!
8 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/18(日) 00:55:39.63 ID:0rN593qB0
泰葉「ぐうぅぅぅぅぅぅ……」

薫「泰葉ちゃん、大丈夫?すごい顔だよ?」

泰葉「だ、大丈夫……薫ちゃん、ありがとう……」

まさかみんながプロデューサーと遊んだり話をしているのを離れて見るのがこんなに辛いなんて……

フレデリカ「ヤスハちゃん、大変だねー。」

泰葉「う、裏切り者……」

このフレデリカさん、私には離れるように言って自分はプロデューサーさんに構って貰っていたのだ。裏切り者と言わざるを得ない。
9 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/18(日) 00:56:43.55 ID:0rN593qB0
フレデリカ「えー、でもアタシも一緒に離れていたらフレちゃんもプロデューサーの対象になっちゃうよ?」

泰葉「ぐうぅぅぅぅ……」

桃華「あの、プロデューサーちゃまから話してほしい気持ちはわかりますが、無理はよくないですわよ……」

泰葉「あ、ありがとう桃華ちゃん……もう耐えられないから帰るね……」

薫「泰葉ちゃん、気をつけてね……」

フレデリカさんと薫ちゃんと桃華ちゃんに見送られながら帰ることにした……
10 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/18(日) 00:57:09.81 ID:0rN593qB0
うぅ……まさかプロデューサーさん断ちがこんなに辛いなんて……
大した時間ではないはずなのに体が震えて心が凍えてしまいそうです……
そして気づいたのですが、今日帰るのであれば次の日も続けなければ意味がない……
恐ろしい、あまりに恐ろしすぎます!
プロデューサーさんと離ればなれになる恐怖に襲われながら、私は女子寮への道をとぼとぼ歩きます。
せめて、女子寮の仲間と触れあって回復しなければ……そう思いながら歩いていると後ろから聞き馴染んだ声が聞こえました。
嗚呼、あまりにプロデューサーさんが恋しくて幻聴まで聞こえたのか、そう思い振り返らないでいたのですが、更に大きく聞こえてきました。
流石に振り返り、目を向けるとそこには私に向かって駆けているプロデューサーさんの姿が!
フレデリカさん、ありがとうございます。あなたは私の救世主です。
11 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/18(日) 00:57:49.26 ID:0rN593qB0
P「おい泰葉、大丈夫か?」

泰葉「え、ええ。はい。」

P「よかった、様子が変だったから心配したんだ。もしかして俺に変なところあったか?」

泰葉「いえ、そんな……」

P「俺じゃないのか?俺のせいじゃなくても俺に出来ることがあったらなんでも言ってくれ。」

なんということでしょう、少し離れていただけでこんな台詞が出てくるとは……
フレデリカさん、私にとってあなたはアポロンでした……

泰葉「だだ、だったら……!」

P「おう、なんだ?」

泰葉「キス、してください……」

千載一遇のチャンスを逃さないこの要求!ママ、パパやったよ!私、これから大人になります……!

P「……ハァー」

え、今のため息なんですか?
12 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/18(日) 00:58:21.78 ID:0rN593qB0
P「あのなあ泰葉。それはダメだ。」

泰葉「なんでもって言ったじゃないですか……」

P「それは出来ないことだ。俺たちがアイドルとプロデューサーという関係である以上な」

泰葉「でも、でも……」

P「たまにそういう話も出るが良くないことだ。アイドルがプロデューサーの権力で手込めになっている。」

泰葉「でも私はプロデューサーさんが好きです……!」

P「それでもだ。誤解を与えることもあるだろうし、仕事の仲間としてそういったことはよくない。」

泰葉「プロデューサーさん……」

先程の天に舞い上がるような気持ちから一気に地獄に落とされた気分です。
プロデューサーさんは、あまりに理性的でした。

泰葉「プロデューサーさん、せめて何か……」

P「そうだなあ……」

そう言うと、プロデューサーさんは優しく頭を撫でてくれました。
いつもなら子供扱いしている、せっかく整えた髪が乱れる、そんなことを考えてしまうのだけど。
今日だけはその手に甘えたい気分でした。
13 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/18(日) 00:59:12.17 ID:0rN593qB0
泰葉「と、こういうことになりました。」

フレデリカ「へー、結構効果あったねー。」

泰葉「ここまで聞けたのもフレデリカさんのお陰です、ありがとうございました。」

フレデリカ「いやいや、アタシは大したことしてないよー」

泰葉「じゃあお礼もすんだし……さて、プロデューサーを落とすにはどうすればいいでしょうか……」

フレデリカ「ええー、まだやるのー?アイドルやっている内は脈なしじゃない?」

泰葉「そんなこと言って誰かと付き合ったらどうするんですか!最低でもアイドルやめた後付き合ってもらう約束をするまでやりますよ!」

フレデリカ「えー……」

この後もフレデリカさんは嫌な顔をしつつも付き合ってくれました。
14 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/18(日) 01:00:47.27 ID:0rN593qB0
ひとまず投下終了です
次の話は乙倉ちゃん、森久保の後輩ズと共にブドウ狩りに行く話の予定です
15 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/21(水) 03:27:53.47 ID:bZeEIxa30
乙倉悠貴「泰葉さん乃々さん、ぶどう狩りですよっ!」

乃々「ぶどう狩り……ですか?」

乃々さんが怪訝そうな顔で聞く。

P「うん、この前悠貴とぶどう狩りに行ったら気に入られてね。お仕事として受けることになったんだ。」

そうなんです、お休みに行く予定が行けなくなったって話したら連れていってくれて。プロデューサーさんって本当に優しいですっ。

泰葉「なるほど、そうなんですね。それでなんで私と乃々ちゃんもなんですか?」

P「他にも何人か欲しいって言われたんだ。乃々は合いそうなイメージ、泰葉はバランサーだ。」

泰葉「バランサーならフレデリカさんが適任じゃないですか?」

確かに泰葉さんの言う通り、フレデリカさんは周りの事をよく見ていてあの人がいると大体うまくいきます。

P「フレデリカはレイジー・レイジーの仕事がある。それに乃々と泰葉という選択は全体のバランスも考えて選んだんだ。
  撮影には俺もついていくが、期待に応えてくれると助かる。」

乃々「そ、そうなんですか……」

悠貴「泰葉さんも乃々さんも、一緒にお仕事したことありますもんね!」

泰葉「そういえばそうだね、あの時は乃々ちゃんを机から出すのが大変で……」

乃々「あぅぅ、掘り起こすのはやめてほしいんですけど……」

悠貴「ふふっ、あの時のお仕事も楽しかったし、ぶどう狩りのお仕事もきっと楽しくなりますよねっ。」

P「そうだな。軽く打ち合わせるから机の方に来てくれ。」

そこから段取りなど少しだけ打ち合わせました。
16 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/21(水) 03:28:55.97 ID:bZeEIxa30
悠貴「今日はぶどう狩り当日ですね、頑張りましょう!」

泰葉「はい、頑張りましょう。」
乃々「はい〜……」

P「それじゃあぶどう農園まで行くぞ。」

泰葉「じゃあ私、助手席に乗りますね。」

P「んー、ふたりはそれで大丈夫か?」

悠貴「? はい、大丈夫ですけど……」
乃々「もりくぼは助手席嫌なんですけど……」

P「……ならいいぞ。ふたりは後ろの席に乗ってくれ。シートベルトも忘れないでな。」

泰葉「はい、わかりました。」
悠貴「はいっ。」
乃々「はい、着けます……」

プロデューサーさんは慣れた動作で車を起動させて、出発しました。車を運転する男の人ってカッコいいですよね、少し憧れますっ。

泰葉「それで、今日行くぶどう農園は採った後にぶどうジュースにして飲むこともできるところなんですよね。」

悠貴「はいっ、ぶどうジュースとってもおいしかったですっ。」

乃々「もりくぼはぶどうをちまちまと食べていたいです……」

P「そういうのも果物狩りの魅力だよな。カメラを気にする必要もあるけど、基本的には各自で楽しんでほしい。
  それがぶどう農園の魅力の宣伝になるしな。」

泰葉「はい。」
悠貴「はいっ。」
乃々「はい。」
17 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/21(水) 03:30:16.73 ID:bZeEIxa30
その後はとりとめのない話をしていたんですけど、私はある噂を思い出して聞いてみました。

悠貴「そういえば、泰葉さんがプロデューサーさんに告白したって本当なんですか?」

P「えっ……」

泰葉「そうなんですよね、好きって言っちゃいました。」

乃々「す、すごいですね……」

悠貴「憧れちゃいますっ。」

P「いや、いやいやいや……」

悠貴「プロデューサーさん、どうしたんですか?」

P「いや、プロデューサーとアイドルの関係上そういうのはよくないよ。俺も色々断ったしね。」

乃々「あ、それもそうですね……」

悠貴「残念です……」

P「まあ、年頃だしね。付き合うこと自体を否定するつもりはないけど。
  相手がどういう人間か、もし公になった時誤解を与えないかとか色々気にしてやってほしい。
  後、基本的には付き合っているのは隠す方向で。」

悠貴「わー、大変ですねー」

泰葉「くっ、既成事実を掴むチャンスが……」

P「そういう悪巧みはね、本当にやめてね。心臓に悪いから……」

この話の後はまたとりとめのないような話に戻り、ぶどう農園まで向かいました。
18 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/21(水) 03:31:00.10 ID:bZeEIxa30
カメラマン「今日はね、楽しい表情をたくさん撮らせてもらうから。よろしくね。」

泰葉「はい、よろしくお願いします」
悠貴「はいっ、よろしくお願いしますっ。」
乃々「は、はい、よろしくお願いします……」

P「じゃあみんなで楽しくぶどうを採ろうか。」

泰葉「プロデューサーさんも楽しみですか?」

P「んー、そうだな。この前も楽しんだし、それがまた味わえるのはいいな。
  ただそれよりも、泰葉と乃々がそれを体験して楽しんでくれるのが一番だよ。」

乃々「プロデューサーさん……私、嬉しいです……」

泰葉「私もです。目一杯楽しんできますね。」

P「うん、楽しんできてね。」

そして撮影が始まりました。色んな表情を撮ってもらいました。途中で乃々さんが落ちそうになってプロデューサーさんがかばうハプニング(泰葉さんは羨ましそうでした)がありましたが、凡そ順調。そして、採る時間が終わって食べる時間です。

悠貴「ここでは、採ったぶどうをジュースにして貰うことも出来るんですっ。私たちもジュースにしましょう!」

泰葉「食べる分は……これくらいで事務所へのお土産はこれくらいかな。じゃあこの分をジュースにお願いします。」

農家「はい、わかりました。こうして、実の部分を皮ごとミキサーに……
   はい、できました。新鮮なうちにどうぞ」

乃々「……わっ。美味しいですね、本当に」

泰葉「はい、ぶどうの豊かな風味がちゃんと出ていて、フレッシュな味が喉を通り抜けます」

悠貴「ですよねっ、私も以前来たときに飲んで感動したんですっ。この味をTVの前のみなさんにも体験してほしいですっ」

乃々「悠貴さん、熱がすごい……」

悠貴「えっ、そうでしょうか……?興奮しすぎましたね」

泰葉「ジュースにしても美味しいですけど、もちろんそのまま食べても美味しいです。皆さん、ぜひ来てみてくださいね。」

カメラマン「……うん、よかったよかった。これで撮影は終わりだね。後は好きに楽しんでよ。」

泰葉「はい、ありがとうございました。」
悠貴「はい、ありがとうございましたっ。」
乃々「あ、ありがとうございました……」
19 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/21(水) 03:31:53.84 ID:bZeEIxa30
P「……うん、やっぱり美味いな。みんな今日はどうだった?」

乃々「ぶどうを採るのは大変でしたけど、ぶどうは美味しかったですしよかったです」

P「ぶどうを採るのもみんなと楽しく出来たし、こうして食べる時のスパイスになったよな」

乃々「はい、そうですね。もりくぼもそう思います」

泰葉「お仕事でこうした色んな体験が出来て嬉しいです。乃々さんがプロデューサーさんに抱き留められていたのは嫉妬しましたけど」

P「……そうだな。泰葉も仕事を通して色んな体験をして、感性もさらに豊かになったと思うよ」

泰葉「そうですね、お芝居の仕事とかにも生かせそうです。それで、私も抱き留めてくれませんか?」

P「……悠貴はどうだった?」

……ええっと、泰葉さん大丈夫なんでしょうか?

悠貴「この前来た時すごく楽しかったですし、ぶどうも美味しかったのでこうして仕事という形でまた来れてよかったですっ。」

P「そうだな。悠貴の表情が一番光っていたと思うし、以前きた経験も生きていてよかったよ。」

プロデューサーさんに褒めてもらえたっ……!

悠貴「ありがとうございますっ!」

泰葉「あの、私への返事は……」

P「泰葉、今日はまとめ役としてちゃんとしてくれて助かったよ。これからも頼りにしているからな」

そういうとプロデューサーさんは泰葉さんの頭を軽くポンとしました。

泰葉「もう、こうすればいいと思っているんですから……」

そう言いながらも泰葉さんは顔を赤くしていました。やっぱり好きなんですね、素敵ですっ。
この後は色々お仕事の話をしながらぶどうを食べたり、ジュースを飲んだりしました。
20 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/21(水) 03:32:33.77 ID:bZeEIxa30
悠貴さんと岡崎さんは車に乗ってしばらくすると寝てしまいました。もりくぼとプロデューサーさんだけが起きています。

P「あーあ、泰葉まで寝てる……まあ大丈夫なんだけどな。森久保も寝てていいぞ」

乃々「あっ、大丈夫です……」

P「そうか?じゃあ話に付き合ってもらうけど」

乃々「もりくぼも聞いてみたいことあるんですけど……」

P「んー、なんだ?」

乃々「なんで泰葉さんの思いに応えないんですか?」

P「前も言ったけど、誤解を与えるような関係はダメだよ。元々ビジネスパートナーなんだし……」

乃々「嘘、ですよね?」

P「……なんで嘘だって?」

プロデューサーの顔に不穏な物が見えます。それでも、私は聞きます。恩がある岡崎さんのためですから……

乃々「わかるんです、プロデューサーさんはそういう建前を使うけどそこまで重要だと思っていないし……」

P「酷い言い分だなあ……」

乃々「その時のプロデューサーの顔は恐れて拒絶している顔です」

P「!」

プロデューサーの顔から余裕が消えます。私に見抜かれたことを猛烈に恐れているんでしょう……

P「それで、何が聞きたいんだ?」

乃々「……なんで正直に答えないんですか?」

P「……それを教えるわけにはいかない」

プロデューサーは苦汁を舐めたような顔でそう言いました。恐らく本質に関わる事で答えるわけにはいかないのでしょう。

乃々「じゃあ……プロデューサーさんは岡崎さんをどう思ってますか?」

P「……好意を寄せてきて面倒くさい、ただの担当アイドルだよ」

……嘘はなさそうでした。果たして岡崎さんの恋は叶うのでしょうか……
21 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/21(水) 03:33:07.55 ID:bZeEIxa30
私のLINEにメッセージが届きました。

泰葉
ごめんね、訊きづらいこと訊かせて……

あの質問は、岡崎さんに頼まれての事でした。悠貴ちゃんが寝た場合、私も寝たふりをするから訊いてほしいと。

もりくぼ
大丈夫です、岡崎さんはもりくぼを助けてくれる人ですから。
もりくぼも岡崎さんを助けたいです。

そう送ります。もりくぼを助けてくれる岡崎さんへの本心。
あんなことを言われていましたけど、やっぱり岡崎さんに報われてほしい。
切にそう願います。

泰葉
そう?今日は本当にありがとう。
またがあったらよろしくね。

そう返ってきました。また……
今度はもっと岡崎さんの力に……
22 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/11/21(水) 03:34:40.06 ID:bZeEIxa30
以上です。泰葉の恋は叶うのか、森久保の決意でどう動くのか……
次回は事務所のアニバーサリーで、今までに登場した所属アイドルが全部出てくる予定です
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/30(金) 21:09:36.44 ID:cKKS9yoK0
終わり?
24 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 06:11:39.30 ID:nsR+2CgA0
すいません、まだ続きます
今回からつづくって入れますね
後、間隔が空いたのも申し訳ないです
それでは投下していきます
25 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 06:13:35.02 ID:nsR+2CgA0
岡崎泰葉「私達のメモリアル」

……プロデューサーさんは、私の事を「好意を寄せてきて面倒くさい、ただの担当アイドルだ」と言った。
乃々さん曰く嘘はついてなさそうとの事。だから多分、プロデューサーさんからの私の認識はその程度、という事になる。
そして、私の告白に正直に答えず嘘があるという事。あの時の態度からそれ自体が嘘である可能性は薄そう。
プロデューサーさんも色々抱えているという事なのだろうか。だとすれば私の手で解きほぐせばプロデューサーさんは靡いてくれる……?
そうして色々考えて歩いていたら、もう事務所に着いていた。
気になる事は多い。それでも私は歩いていく。
アイドルという道も、プロデューサーさんのお嫁さんになる道も。
そう決意して私たちのプロジェクトルームの扉を開いた。
26 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 06:15:36.59 ID:nsR+2CgA0
プロジェクトルームに入るとみんな大体集まっていた。

P「お、泰葉も来たな。という事は後はフレデリカだけか……」

泰葉「あれ?みなさん早いですね。確かまだ時間に余裕ありますよね。」

悠貴「事務所のメモリアルって聞くと、なんだか緊張して落ち着かなくって……」

乃々「もりくぼはプロデューサーさんが迎えに来ました……」

P「いざという事があるといけないからな。」

乃々「そんな事恐れ多くて出来ないんですけど……」

うーん、信頼が無いのはかわいそう……

泰葉「乃々さんの事もうちょっと信じていいと思いますよ。」

P「それもそうだな。乃々、ごめんな。」

乃々「あー、いえ。あまり気にしないでください。」

薫「かおるもね、朝からそわそわしてた!」

悠貴「ですよね、こんなの初めてですからっ!」

薫「うん、今日はたくさん頑張りまーっ! 桃華ちゃんも落ち着かなかった?」

桃華「いえ、わたくしはレディとして早めの集合を心掛けただけですわ。」

乃々「さすがですね、桃華さんはプロ意識が高いです。」

桃華「そのプロ意識なら泰葉さんの方がすごいと思いますわ。いつも意識を働かせて、今日もしっかり早めに来てますし。」

泰葉「うーん、桃華ちゃんより遅れてきたのに褒められても困るかな。」

桃華「いえ、泰葉さんはわたくしの目標のひとつですから。」

泰葉「じゃあ目標でいられるように今日も頑張るね。」

悠貴「後はフレデリカさんですけど、フレデリカさんがいないのも珍しいですね。」

P「まあ、そうだな。大体早めに来て遊んでいたりするし。」

桃華「まだ集合時間ではないと言えばそうなのですが……大丈夫ですわよね?」

P「まあその点については大丈夫……だと思う。」

少しずつトーンダウンするプロデューサーさん。

泰葉「もっと信じてあげてくださいよ。」

P「いや、そりゃあ以前から言ってたけど何か別の用事が出来たとかありえなくもないからな……」

別の用事……フレデリカさんが事務所のみんなで集まる撮影を放って行くとはなかなか考えづらいですけど、何か重大な事があったらって事なんでしょうか……

泰葉「うーん……」

P「まあ深刻になっても仕方ないよ、何かしらあるならあるで連絡するだろうし適当に待っていよう。」

プロデューサーさんもそう言いましたし、私たちはこれからの撮影についてなど話しながら待っていました。
27 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 06:16:47.29 ID:nsR+2CgA0
そうして待っていると、ノックの音が聞こえてきました。

P「……開いてますよ、どうぞ」

フレデリカ「ふむ。ここが君たちのプロジェクトルームか。」

フレデリカさんが大仰な感じで入ってきました。

桃華「?一体何を……」

フレデリカ「君。」

P「はい、なんでしょう。」

プロデューサーさんは飽きれ気味で向かいました。
すると、フレデリカさんはプロデューサーさんのネクタイを持って……!

フレデリカ「アイドルの仕事を取る時、一番最初に見るのは君だ。身だしなみには気をつけたまえ。」

P「どうも……」

薫「せんせえの服を直しただけだったね」

フレデリカ「……えーっと」

P「フレデリカ。」

フレデリカ「ん?」

P「似てないぞ。」

フレデリカ「ええっ、酷い!プロデューサーはいつからそんな冷たくなったの……」

P「……」

フレデリカさんは物真似をしていたんですか……。でもネクタイ直すのは必要だったのかな……

乃々「泰葉さん……?」

泰葉「あっ、うん、大丈夫大丈夫!」

よくないものが漏れ出していたらしい。嫉妬して表に出すなんてよくないですよね……
28 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 06:18:18.25 ID:nsR+2CgA0
P「まあ、これで全員揃ったな。時間もちょうどいいくらいだし、説明しながら向かうぞ。」

プロデューサーさんによると、今回のお仕事は事務所のメモリアルアルバムの撮影。今までのお仕事で撮った写真からいくつか出しつつ、それぞれの部門で一緒に撮影した写真も使ってアルバムを作るらしい。
そのための部門の写真をこれから撮りに行くというわけだ。

悠貴「うわー、たくさんありますね!」

撮影する部屋に着くと、風船や遊具がたくさんあった。これで遊んでいる姿を撮るらしい。

P「この撮影で遊ぶのに抵抗があるアイドルもいるかもだけど、頑張ってほしい。」

桃華「大丈夫ですわ!わたくしだってプロですもの!」

私もそのセリフに倣って頷く。こうして遊ぶのは子供っぽい姿かもしれないけど、お仕事だしみんなでやるから大丈夫だ。
ちなみに最年長のフレデリカさんは特に聞かずに遊んでいる。プロデューサーの思いは知っているのだろうか……
29 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 06:19:39.57 ID:nsR+2CgA0
カメラマン「うん、泰葉ちゃんその調子その調子!いいよー!」

基本はみんなが遊んでいる姿を勝手に撮っていくスタイルみたいだけど、時々ポーズとかのリクエストが来る。
それに応えながら遊び、撮影はどんどん進んでいく。

カメラマン「うん、最後にみんなで撮ろっか!」

空いているスペースにみんなで集まり、簡単なポーズをとり決める。

カメラマン「うん、これでいいかな。」

薫「ねえねえ、後ひとついい?」

カメラマン「ん?なんだい?」

薫「せんせえも一緒に写真撮りたいな!」

悠貴「あっ、そうですね。私も撮りたいですっ!」

プロデューサーさんも一緒に……隣を取りたいな。

P「えー、俺はいいよ。」

プロデューサーさんは否定的でした。でも……

桃華「わたくしは、プロデューサーちゃまも一緒に撮るべきだと思いますわ」

乃々「もりくぼもそう思います……」

泰葉「わ、私も!」

桃華ちゃんが援護射撃をしたのに合わせて、乃々ちゃんと私も言いました。

P「フレデリカ……」

フレデリカ「んー、撮るくらいいいんじゃない?」

P「……そうだな。じゃあ撮ろうか。」

薫「やったー!」

薫ちゃんの満面の笑顔。これを見られただけでも賛成した価値はありますけど……プロデューサーさんの隣は譲れません!
30 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 06:21:12.82 ID:nsR+2CgA0
P「なあ、ここじゃなきゃダメか?」

悠貴「ダメです♪私たちのプロデューサーさんですからっ。」

立ち位置は前に左から薫ちゃんと桃華ちゃん、中間に私、プロデューサーさん、乃々ちゃん、後ろに悠貴ちゃんとフレデリカさんになりました。
なんとか身長を理由に隣を確保しましたよ……!そうそう、プロデューサーさんはみんなのということで、立ち位置は真ん中になりました。

カメラマン「それじゃあ撮るよ、はいチーズ。」

パシャリ

撮るかどうか、立ち位置がどうとか言ってた割に撮るときは一瞬で決まりました。

桃華「では、この写真は人数分お願いしますわ」

薫「カメラマンさん、ありがとうございまー!」

薫ちゃんのお礼に合わせてみんなで頭を下げる。この写真も含めてどうなるか楽しみだ。
31 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 06:22:09.00 ID:nsR+2CgA0
フレデリカ「それにしてもこの一年、色々あったよねー。」

桃華「はい。みんなプロデューサーちゃまに見出され、アイドルになって……」

悠貴「確かフレデリカさん、泰葉さん、桃華ちゃんと薫ちゃん、そして私と乃々さんの順で所属したんですよね。」

泰葉「そうだね、私がアイドルになった時にはフレデリカさんは既にいたよ。」

薫「かおるたちがいなかった時の面白い話ってある?」

フレデリカ「んー、特にないかなー」

撮影が終わってみんなでプロジェクトルームに戻って思い出話をしています。思えば本当に色々ありました。
あの頃の私と今の私はまるで別人で。それでもどちらも私で。
その時の話をすればみんな楽しんでくれるのかなとか考えたりして。

泰葉「私は、あの頃とはだいぶ変わったなって思うよ。」

思えば口をついていた。こういうところも変わったところかもしれない。

乃々「そうなんですか?どう変わったんでしょう」

泰葉「あの頃はみんなに心を閉ざして、大人の言うことを聞くことに精いっぱいだったと思う。
   プロデューサーさんの印象もあんまりよくなかったし。」

悠貴「以外かもです。泰葉さんが思いを寄せているのをずっと見てきたから……」

泰葉「プロデューサーさんは私に真剣に向き合ってくれて……だから私もプロデューサーさんに向き合いたいんですよね。」

フレデリカ「……そうなんだ。」

桃華「泰葉さん、そういうことを考えてらしたんですね。」

泰葉「うん……。これ以上話すと湿っぽくなっちゃうかな。フレデリカさんの初仕事はどうだったんですか?」

フレデリカ「んー、頑張った♪」

乃々「あの、どう頑張ったかを聞きたいと思うんですけど……」

フレデリカ「どう頑張ったか……あんまり覚えてないかも。」

薫「そうなんだ、残念……」

この後も色々話しました。プロデューサーさんってこんなことしてたんだってお話していて知ったり。
あっ、嫉妬はしてませんよ!……そんなには
32 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 06:24:28.36 ID:nsR+2CgA0
楽しく話していると時間が経つのが早いものです。そして、最後に

フレデリカ「こうやっていろんなお仕事をやって、そのことをお話しできるのもプロデューサーのおかげだよね。」

泰葉「本当にそうですね、プロデューサーさんには頭が上がりません。」

桃華「これからも、プロデューサーちゃまと共に歩んでいきたいです。」

薫「うん!だからせんせぇ!まだアニバーサリーには早いけど……」

「「「「「「いつもプロデュースしてくれてありがとう!!」」」」」」

つづく
33 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 06:27:24.45 ID:nsR+2CgA0
なんとなくどうだったか調べてみたら薫ちゃんのがせんせえじゃなくてせんせぇであることが判明
最後の以外間違ってます……うーむ
次は泰葉が関ちゃんと一緒に恋愛映画を撮るお仕事。今度は近いうちに投下できると思います
34 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 17:20:51.43 ID:nsR+2CgA0
よく見たら途中の乃々さんが乃々ちゃんになっている……
お前の呼称ガバガバじゃねーか
修正したのはpixivに上げているんでもしよろしければ

それでは投下していきます
35 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 17:22:33.74 ID:nsR+2CgA0
岡崎泰葉「私と『彼女』の恋心」



それはアルバムの撮影の四日後。私はプロジェクトルームに呼ばれました。

泰葉「えっ、私が恋愛映画のヒロインですか?」

P「ああ、メインの子じゃなくてちょっと意地悪な役なんだけどな。
  泰葉、やってくれるか?」

泰葉「……私の演技経験を買っての役なんですよね。」

P「うん、そう聞いているよ。」

泰葉「そう聞いたら受けないわけにはいきませんよね。」

恋愛映画の意地悪なヒロイン。難しい役で、もしかしたら損をするような役かもしれないけど。
私なら出来る、演じて魅せれると判断してくれたのならそれに応えたいと思いました。

P「そっか。何か手伝えることがあったら言ってくれ。」

泰葉「はい、わかりました。」

プロデューサーさんは私の事をあまりよく思っていないみたいだけど、私の事は変わらず友好的に接してくれます。
それはプロデューサーとしての立場から来るものかもしれないけど、そこから私の事を知って好きになってくれたら……と淡い希望を持ってしまいます。
実際にはそううまくいかず、私からプロデューサーさんを知る必要があるんでしょうけど。

泰葉「用件はそれだけですか?」

P「ああ、今は特にないな。」

泰葉「それじゃあ失礼します。映画のお仕事、楽しみにしてますね。」

P「ああ、またな。」

またな。そう言ってくれて何度も会えるのが嬉しいのはきっと恋心。
この恋心を映画の演技に生かせるだろうか?そんなことを考えながら帰っていきました。
36 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 17:23:30.99 ID:nsR+2CgA0
P「台本、届いたぞ。」

泰葉「あっ、ありがとうございます。早速ホン読みしますね」

台本を読んでいき気になった所、大事だと思った所にマークを入れていく。
時に実際に演技しながら、『彼女』の事を解釈していく。

P「んー、見事なものだなあ。」

泰葉「あっ、プロデューサーさん見ていたんですか?」

P「ああ、ちょっとだけな。しかし、まだ始まってもいないのに色々書いているな。
  こういう解釈って実際に聞いた方が早くないか?」

泰葉「これだけの量を一気に聞いたりできないですよ。それに……」

P「それに?」

泰葉「私は自分自身で理解しようとするのが大事だと思うんです。
   彼女はその世界で生きているからその思いを私の手で汲み取りたいんです。」

P「……へー。」

なんとなく、溜めのあるへーでした。私の話に思うところでもあったんでしょうか?
37 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 17:24:10.98 ID:nsR+2CgA0
泰葉「香澄役の岡崎泰葉です、よろしくお願いします。」

そして、いよいよ演者の顔合わせです。メインヒロインの役を射止めたのは関裕美ちゃんでした。
歌った曲とタイアップしたドラマ『礼節と灼熱の嵐』での演技を見込まれて抜擢されたのだとか。

裕美「泰葉ちゃん、私慣れないところもあるだろうしよろしくね。」

泰葉「うん、一緒に頑張ろうね。」

裕美ちゃんはユニットでの活動の他プライベートでも仲良しです。
他の役者さんや演出の方、監督も優しそうな人だったり気心が知れていたりで、この撮影も楽しくできそうです。
38 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 17:24:46.80 ID:nsR+2CgA0
   *

「なあ、花。一緒に遊びにいかない?」

裕美「なんで?」

「えーと、俺が花に興味あるから……」

裕美「私、軽い人って嫌いなんだ。失礼するね。」

「あー、クソッ!ダメだったか……」

泰葉「……」
39 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 17:25:35.48 ID:nsR+2CgA0
   *

泰葉「ねえ、翔くん。私、あなたの事好きだよ。」

「そんな事言われても困るよ。俺には好きな人がいるんだ。」

泰葉「それって、花ちゃん?」

「! なんでそれを……」

泰葉「私、ずっと翔くんを見ていたもん。気づくよ。
   翔くん、花ちゃんは自分に自信がなくてそんな自分を誰かが好きになるなんて信じられない人だよ。
   ずっと、からかっているんだと思って振り向かないよ。だから私を見て……?」

「香澄……!」
40 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 17:27:00.53 ID:nsR+2CgA0
   *

裕美ちゃんの撮影が終わって、水を持っていきます。

泰葉「裕美ちゃん、大丈夫?」

裕美「うん、大丈夫。ありがとう泰葉ちゃん。」

慣れないこともある中で裕美ちゃんは懸命に『花』という役を演じています。
繊細で健気な『彼女』の邪魔をするのは心が痛みますが、『香澄』としては仕方のない事です。

裕美「やっぱり泰葉ちゃんってすごいね。」

泰葉「裕美ちゃんも経験を積めばもっと出来るようになるよ。」

裕美「そう、かな?」

泰葉「うん、そう。」

ふたりの間に暖かい空気が流れます。

裕美「演技をしている時はちょっと怖いけど、こうして話すといつもの泰葉ちゃんで安心するな。」

泰葉「ふふっ、裕美ちゃんと花ちゃんは結構近いよね。」

裕美「うん、なんとなく共感できるところが多くて……彼女と会えて本当によかったよ」

泰葉「演技畑の人間としてはそう言って貰えて本当に嬉しい。ありがとう。」

裕美「そんな……!お礼を言われることじゃ……」

泰葉「裕美ちゃん、これからも頑張ろうね。」

裕美「うん、泰葉ちゃん!」
41 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 17:27:43.68 ID:nsR+2CgA0
   *

裕美「翔くん、どんな人なのかな……」

泰葉「翔くんは私と付き合っているよ。」

裕美「え、なんで……」

泰葉「私が告白したの。そうしたら付き合ってくれた。」

裕美「そっか、やっぱり誰でもよかったのかな……」

泰葉「……そうかもね。」
42 : ◆cTsEE87S4. [saga]:2018/12/16(日) 17:28:42.53 ID:nsR+2CgA0
   *

撮影はどんどん進んでいきます。花ちゃんに翔くんに、二枚舌を使う彼女を演じるのは罪悪感もあるけど、きっと彼女も感じていて。
そこまでするのはひとえに翔くんが好きで誰にも譲りたくないから。
彼女の気持ちを理解し、それを演技へと反映していく。
それはいつも通り、とても楽しいことでした。

P「泰葉、大丈夫か?」

泰葉「大丈夫です。私はやりきって見せます。」

P「そうか……」

役にのめり込む様子が危うく見えるのか、プロデューサーさんが心配してきます。
私はプロデューサーさんを独占できるようで、なんだか嬉しくなりました。

P「演技って、生で見るとこんなにすごいものなんだな……」

泰葉「プロデューサーさんも演技が好きになってくれたら嬉しいです。」

それと一緒に私も好きになってくれたらもっと。
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