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ダイヤ「死神」
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55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:15:14.50 ID:+K74wEm20
ダイヤ「やがて、回復する者もいれば、死の淵に瀕する者もいるでしょう」
ダイヤ「もちろん、死の気配など欠片も無かった者達です…現世に未練なんて山ほどあるでしょう……悪霊になる素質はバッチリです」
ダイヤ「そして最後に、死の淵に瀕した…傷つけた魂に止めを差す必要があります」
ダイヤ「弱り、衰弱し、悪霊となる魂を……始末するのは誰ですか?」
ルビィ「………あ」
ダイヤ「…そうです」
ダイヤ「殺したのは、私達です」
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:15:52.02 ID:+K74wEm20
ルビィ「……でも、ルビィたち…」
ダイヤ「ええ、知りませんでした……そんな、凶行に利用されているなんて」
ルビィ「………そんな、相手はどんな…?」
ダイヤ「ふふっ……死神が虐殺の片棒を担がされるなんて…滑稽もいいところです」
ダイヤ「だからこそ、私たちが潰さなければならない」
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:16:37.28 ID:+K74wEm20
ダイヤ「これは死神への、魂を扱う者に対しての挑戦状であり、冒涜よ、それも質の悪い」
ダイヤ「そして、なにより……」
ルビィ「……?」
ダイヤ「私達姉妹への、最大限の侮辱なの」
ダイヤ「わたくしはそれを…絶対に許さない」
ルビィ「お姉ちゃん……」
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:17:13.93 ID:+K74wEm20
ダイヤ「話はここまで、向かうわよ」
ルビィ「ど、どこに…!?」
ダイヤ「今現在、残念ながら相手の居場所への手がかりは掴めていないわ…」
ルビィ「うん……」
ダイヤ「そうである以上…私達は、犯行現場を調べるしかないの」
ルビィ「犯行現場…?」
ダイヤ「……私の憶測の上では、最も身近な被害者、よ…」
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:17:48.57 ID:+K74wEm20
内浦近辺、病院
曜「…………」
ルビィ「曜、ちゃん……対処が難しいからって駅前からこっちに送られて来たんだって…」
ダイヤ「曜さんのお母様が電話で話を通してくれたおかげで助かりましたわね…学校が無いか聞かれたときは焦りましたけど…」
ルビィ「お姉ちゃん…曜ちゃんの魂、見てみて」
ダイヤ「…………酷い崩れ様ですわ…死人に近い…」
ダイヤ「…ルビィ、あなた少しなら修復出来たわよね?」
ルビィ「うん……今出来るだけやってみるね…」
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:18:30.69 ID:+K74wEm20
ダイヤ「…後持って二、三日…間一髪でしたわね……遅かったら、友人を自ら手をかけることになっていたかも知れなかったわね…」
ルビィ「これ……死神に…」
ダイヤ「…間違いありません、これ程まで蝕むことが出来るはそれくらいのものでしょう…全く質の悪い…」
ルビィ「出来る限り元の形に戻したけど…数日したらまた崩れちゃうかも…」
ダイヤ「その前に解決を……否、それよりも被害を増やさないために一刻も早く向こう側を叩くべきですわね…」
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:19:11.97 ID:+K74wEm20
病院の外
ダイヤ「こうなった以上…私達は生きるべき生命を[
ピーーー
]かもしれない魂の処理を迂闊には行えません」
ルビィ「……うん、でも…」
ダイヤ「…そう、放っておけばどんどん悪霊が増えるばかり…そうすれば、またそれによって同じように、この世のありとあらゆる魂を蝕まれるでしょう…」
ルビィ「死神ほど強くないけど、悪霊にも魂を蝕む力がある……そんな魂がこの世の生命に鑑賞できるほど根付いてしまったら…」
ダイヤ「……そうなれば正真正銘、詰みです」
62 :
>>61修正
[saga]:2018/08/17(金) 00:19:44.72 ID:+K74wEm20
病院の外
ダイヤ「こうなった以上…私達は生きるべき生命を殺すかもしれない魂の処理を迂闊には行えません」
ルビィ「……うん、でも…」
ダイヤ「…そう、放っておけばどんどん悪霊が増えるばかり…そうすれば、またそれによって同じように、この世のありとあらゆる魂を蝕まれるでしょう…」
ルビィ「死神ほど強くないけど、悪霊にも魂を蝕む力がある……そんな魂がこの世の生命に鑑賞できるほど根付いてしまったら…」
ダイヤ「……そうなれば正真正銘、詰みです」
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:20:25.05 ID:+K74wEm20
ルビィ「……悪霊さんって、なんで悪さをするんだろう」
ダイヤ「恨みや憎しみ、強い感情で生物は突き動かされるわ、ただ、悪霊にはそれを制する理性が無いの」
ルビィ「理性……」
ダイヤ「ええ、彼らのブレーキを超えるだけのも感情を抱えた魂が…悪霊になるの…」
「アァァォ………ナ…ァォ…」
64 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:22:38.14 ID:pDqqOMkKO
ダイヤ「あれは…?」
ルビィ「……!エオ……!」
「ガァァ……グガァァ……」
ルビィ「……酷い…体も、魂もボロボロ……」
ダイヤ「………魂は、傷を負ってから時間が経っていないわ…」
ルビィ「もしかして、この近くに……」
ダイヤ「…可能性が高いですわ」
65 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:23:37.89 ID:+K74wEm20
ルビィ「お姉ちゃん……エオの手当を……」
ダイヤ「……ダメよ」
ルビィ「え……」
ダイヤ「自らを[
ピーーー
]この世界全てを恨む……手負いの獣なんて最も悪霊になりやすいわ、分かっているでしょう?」
ルビィ「でも…エオは……」
ダイヤ「あなたも死神でしょう……死にかけの命を放置しておくことがどれほど危険か、分かるはずよ」
ルビィ「でも…!ちょっとの、ほんの少しの間でも…!エオは……エオは家族だったもん……」
ダイヤ「…………」
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/17(金) 00:24:30.71 ID:+K74wEm20
ダイヤ「……自分で手当てなさい」
ルビィ「お姉ちゃん!」
ダイヤ「それと…もし、三時間経って戻ってきた時に回復の兆しが無ければ…」
ルビィ「……無かったら…?」
ダイヤ「私が、その場で殺します」
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:25:24.94 ID:+K74wEm20
ルビィ「よしよし……これで、よしっと」
「フガァァ……ガァッ……!!」
ルビィ「キャッ…!」
ダイヤ「ルビィ!」
ルビィ「大丈夫、お姉ちゃん…ただの威嚇だったから」
ダイヤ「…気を付けなさい、傷ついた獣は自分を守るため、見るもの全てに牙を剥くのですから」
ルビィ「う、うん……」
ダイヤ「…行きますわよ」
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:26:22.48 ID:+K74wEm20
ダイヤ「…………」
ダイヤ「(全てに、牙を剥く……)」
ルビィ「お姉ちゃん……?」
ダイヤ「(この現象の原因である死神が、仮に、何の理性も無かったとしたら?)」
ダイヤ「(私はまだ、この事件の犯人の目的も、本質も、何も理解できていない)」
ダイヤ「(………その不可解の理由が、理解の出来ず…辿り着けない物だから、だとしたら?)」
ダイヤ「(一切の考えも、私たちを利用しようという打算も無く、ただ周りにあるもの全てを傷つけていたとしたら?)」
ダイヤ「(まさに…この世全てを恨み、暴れ狂う手負いの獣の本能の様に…)」
69 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:27:34.07 ID:+K74wEm20
ダイヤ「(だとしたら、この近くにいるはず……捕まらない様に逃げるなんて判断をすることがない…否、そもそも追われるなどという発想も無いはず…)」
ダイヤ「ルビィ、この近くを隈なく探すわ、近くにいるかもしれない」
ルビィ「……うん、分かった」
ダイヤ「一度目を瞑ってみなさい、何か感じる?」
ルビィ「……この先を真っ直ぐ20メートル、その先を曲がったところ…そこから先の植物の魂が根こそぎ傷つけられてる」
ダイヤ「……つまり」
ルビィ「…うん」
ルビィ「“何か”がこの先に…いる」
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:31:33.63 ID:+K74wEm20
コンクリート塀の曲がり角を右に曲がった所に“それ”は居た
馬の様な生物に乗っていた。二メートルを超す体躯に漆黒の毛並み。体中に鎖が巻かれ、本来鬣のあるべき首の後ろには血濡れになった剥き出しの骨が突き刺さっていた。
“それ”は黒いローブで全身を覆っていた。痛々しいほど曲がった背中。ちらりと隙間から除く腕や顔には肉が無く、全てが白みがかった骨そのものだった。
骨で出来た掌には一本の鉄鎌が握りしめられていた。禍々しい見た目だった。馬上からでも先端が地面へと触れてしまうほどに柄は長大、剥き出しとなっている白銀の刃は、側面、刀身、逆刃、あらゆる箇所に無数の傷が存在していた。
馬の体には多くの生傷が刻みつけられていた、乗者がその傷を、何のためらいもなく蹴り飛ばすと馬は痛みからか怒り狂い、暴れ出す。その動きを乗りこなしたまま“それ”は気が狂ったように鎌を振るい、その場にある草を、花を、動物を、全ての魂を砕かんと振り回していた。
異様な光景だった。そこにある全ての命が、そこにあるというだけで傷つけられ、破壊されていた。
“それ”がこの一連の事件の原因だということは、その異常な光景から痛いほど理解できた
一目で判断が付いた。彼もまた、命を奪う『死神』であり、現世での魂の成れの果て『悪霊』であると
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:33:20.66 ID:+K74wEm20
ダイヤ「ルビィ……3秒後、手筈通りに」
ルビィ「…うん、お姉ちゃん」
ゆっくりと、コンクリート塀の影に隠れながらその場でダイヤは姿勢を低くし、屈む
その後ろ…目を瞑り、意識を尖らせたルビィがゆっくりと、ダイヤの背に軽く手を当てる、ぽん、力を込めるとその瞬間に、その場からダイヤの姿が消えた
神としての権能を使う対象は基本的に、近ければ近いほど、より高い制御性で扱うことが出来る
“操作”の力を高い精度で制御することによって生身の肉体に行使する、その事はそれらの権能に長けたルビィには容易いことだった
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:34:07.14 ID:+K74wEm20
ダイヤはその場から真っ直ぐに射出され、件の魔物との距離を瞬く間に詰める
狙うは首元、全生命の急所。悪霊となり果てた神魂であろうとも、その理は変わらない!
ダイヤの手元には銀に光る一本の短剣
制服の懐に忍ばせていたその得物を素早く取り出し、短い動作で素早く切り払う!!!
ダイヤ「ハァァァッ!!!!!!」
ダイヤ自身が練りあげた魔の力を纏った刃は正確無比に、馬上の主の首元を捉えた
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:35:57.10 ID:+K74wEm20
ルビィ「やった……!」
ダイヤ「いや…まだよ」
「ガァァァァァァ!!!!!」
首をはねられ、頭が落ちる。ヒビの入った骸骨は地面に叩きつけられ、粉々に砕け散った
悪霊は、悲痛な声で叫びながら、怒り、狂った
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:36:43.21 ID:+K74wEm20
彼は手に持った刃を、見えない目で馬の横っ腹に突き立てた。腹から臓腑があふれ出し、黒泥のような血がアスファルトへとしたたり落ちた。
悪霊の掌がどす黒く、光っていた。練りあげた光弾を狙いも付けず、ただ闇雲に打ち出し続ける。
着弾した地点が溶け出していた。怒り狂い暴走する黒馬に乗り、死の銃弾を暴走機関のように幾重にも打ち出す!
家屋は全て、溶けだしていた。そこにある全てのものが貫かれ、破壊されていった
事態は悪化していた、地獄絵図だった
その一帯、草木も、動物も、生きとし生けるもの全てがその凶弾の餌食となった
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:37:31.20 ID:+K74wEm20
ダイヤ「あの光弾は生命力で出来てる…削った魂を少し喰らっていたみたいね…首を落としたからいずれは死ぬけど…あの様子では、放っておいたらどれだけ被害が出るか分からない…」
ルビィ「あ……ぁ……」
ダイヤ「……ルビィ、しっかりなさい」
ルビィ「でも……でも、あんな…滅茶苦茶に打ち出して…そもそも何万も魂を食べたバケモノなんか…無理だよ勝てっこないよ!」
ダイヤ「それでも……命が、私達の手にかかっているのです」
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:38:14.10 ID:+K74wEm20
ダイヤ「…私達が“死神”として…姉妹として産まれ落ちてからそれは変わりません」
ルビィ「…………お姉ちゃん」
ダイヤ「時間が無いわ、一つだけ私に作戦があります」
ルビィ「作戦……?」
ダイヤ「あれは目が見えていません、今は無差別に暴走してますがそのうち馬に指示を出してこちらに襲い掛かって来るでしょう」
ルビィ「……うん」
ダイヤ「チャンスは一度きり、それには……ルビィ」
ダイヤ「あなたの力が必要よ」
ルビィ「お姉ちゃん………分かったよ…」
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:39:14.46 ID:+K74wEm20
悪霊は、少し落ち着きを取り戻していた。漆黒に輝く光弾を放つことを止め、自らの首を落とした犯人を探しているようだった。
「…………」
ダイヤ「……我らが黒澤姉妹の領分で働いた狼藉の数々、その魂の死をもって償いなさい!!!」シュッ
「…………!」
ダイヤはその言葉と同時に一本、短剣を馬上の者に向かって投げつけた
そのブレのない投擲は正確に首の落ちた、悪霊の右肩を貫いた
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:39:55.23 ID:+K74wEm20
「ァァ……ァァァァァ!!!!」
その言葉に反応してか、はたまた傷つけられた怒りを持ってか、悪霊は猛然とダイヤにむかって突進し始める!
ダイヤ「来ました、ルビィ!準備なさい!」ダッ
ルビィ「うん!お姉ちゃん!!」
追ってくる悪霊に背を向ける形で逃げ出すダイヤ、その進行方向にいるルビィに向かい、全速力で走り出す
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:41:18.55 ID:+K74wEm20
ルビィの居る場所にたどり着くと、ダイヤは足を止めた。地面に置かれた荷物を拾い、握りしめる。
手にしたのは浦の星の生徒なら誰しも、常日頃から使っている鞄、スクールバッグ。
ダイヤ「………よいしょ……ハアッ…!!」
その鞄を無造作に掴み、手にした中身を仕分けることなく乱暴に全て頭上へと放り投げる!
投げられたのは教科書、筆記用具、体操服。ありとあらゆる学校用具が宙にばらまかれる
それらの用具と共に舞うは…無数に仕込まれていたスペアのナイフ
それらが今、暴走列車の如く飛び込んでくる悪霊の頭上の空を、一面覆うかのように散らばる!
80 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:43:00.00 ID:+K74wEm20
ダイヤ「ルビィ、やりなさい!!」
ルビィ「うん!!お姉ちゃん!!」
ダイヤの号令と共にその場に跪いていたルビィが意識を研ぎ澄ませる
目を瞑り、頭をクリアにする。一本一本に指を這わせるように神経を宙に舞うナイフ全てに這わせる。
脳内に描くのは完璧なイメージ、空間上の無数の金属片を掴み、並び替える。
それらの意識をシャープにする、一切の迷い無く凄まじい速度で全てを叩きつける!!!
ルビィ「ごめんなさい、悪霊さん!鎮まってください!!!!」
宙を舞う無数のナイフの刃先、その全ては勢いを弱めることなく突進している悪霊を向いていた
81 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:45:23.68 ID:+K74wEm20
「アアア……!!!………ァァァァ……」
おびただしい数の短剣の射出を食らった悪霊は馬から崩れるように落ち、日に焼けたアスファルトの地面に叩きつけられた
まだ僅かに息があるようで少しもがくものの、その体を短剣で地面に縫い付けられたように刺され、動くことは能わなかった
ダイヤ「この黒澤の治める地に土足で上がる不届き者よ、その度胸だけは褒めて差し上げますわ」
ダイヤ「でも、それもここまでです」
ダイヤ「……無様を晒して灰塵と成り果てなさい!!!!この下郎が!!!」
82 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/17(金) 00:46:24.51 ID:+K74wEm20
ダイヤの組み上げた最大火力、黒き炎の如き力の奔流がその一帯の空間を焼き尽くすかのように力を振るった
純粋たる破壊、死の観念。全力を纏ったその権能は一つの魂を焼き切るには十分な力であった
「ア“ア”ア“ア”ア“ア”ア“…!!!!!!」
それらは…悪霊の魂を薪にするが如く、完全に飲み込み、焼き尽くした
83 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:47:38.27 ID:+K74wEm20
ルビィ「ハァ…ハァ……」
ダイヤ「ルビィ!?大丈夫…!?」
ルビィ「うん……だ…いじょうぶだよ……お姉ちゃん」
ダイヤ「……早く帰って休みましょう、幸い傷は無いようですし…無理に力を使わなければ治るでしょう」
ルビィ「うん……ありがと…」
「ブオァァァァァァ!!!!!!」
ダイヤ「今の叫び声は……!?」
ルビィ「ルビィ達の後ろ……あっ…ちの方から…っ…き、聞こえた」
84 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:48:38.86 ID:+K74wEm20
彼女…黒澤ダイヤには誤算が二つ有った
ナイフの射出と最大火力での焼却、その二つをもって悪霊を倒す際、黒馬も巻き込むことが出来ず、取り逃がしてしまったこと
もう一つは、例え倒しきれなくても、主を失った荒馬が一匹、それほど脅威にはならないだろうという算段だった
しかしその二つは、目の前の光景によっていとも容易く打ち破られたのだった
ダイヤ「あれ…は………」
85 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/17(金) 00:50:18.83 ID:+K74wEm20
「ゴアァァァァァッ…!!!!!」
唸るような、吠えたてる様な咆哮と共に黒馬がその口元から勢いよく地面に向けて何かを吐き出す
血塗れの布切れのような見た目だった、アスファルトに叩きつけられ、形を保てないボロ雑巾の様だった
よく見ると、それは肉塊だった。破けた肉から骨が剥き出しになって覗かせており、千切れ、無残な姿になった漆黒の毛皮が所々に張り付いていた。
ルビィ「…エ……オ…?」
ダイヤ「…魂を…丸ごと喰らいましたね」
ルビィ「そんな…い、いゃ…いや…だ…!」
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:51:01.91 ID:+K74wEm20
ダイヤ「……」
ルビィ「エオが…エオが……あんな………!!」
ダイヤ「…私が、差し違えてでも止めてきます」
ルビィ「………お姉ちゃん…!ダメだよそんな…」
ダイヤ「あの黒馬は霊体でありながら、生身の肉体まで一部食らいました、ただの肉食獣の狩りとは話が違う……本気で魂と肉体…命を飲み込んだ者がどれほどの力を持つのか…見当もつかない」
ルビィ「でもお姉ちゃんだって…楽じゃないのに全力を使って……もう体が……!」
ダイヤ「ふふっ……」
ルビィ「お姉ちゃん…?」
ダイヤ「安心なさい……私を誰だと思ってますの…?」
ルビィ「え………」
ダイヤ「この地の魂を治める万家の長…黒澤家の、長姉です」
ダイヤ「この姉に、まかせておきなさい」
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:51:40.04 ID:+K74wEm20
ダイヤ「(とは言え私の力も後僅か……こちらの戦力が伴わない今遠巻きに狙って消耗するのは下策、相打ち覚悟でも一撃で鎮めるべき…)」
ダイヤ「(ばら撒いてしまいましたから…残る短剣は手元にある予備の一本だけ……)」
ダイヤ「(正面突破…しかないですわね…)」
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/17(金) 00:52:56.84 ID:+K74wEm20
「ボァァァァァァ!!!!!」
ダイヤ「彷徨える霊馬よ!!覚悟なさい!!」
置かれた状況とは裏腹に強気な口上と共にダイヤが黒馬との間合いを、直線距離で一気に詰める
残り僅かな力を振り絞り捩じ切れんばかりの足にブーストを掛ける、一切の回避の素振りもなく、ただ直線の突進で敵の懐へと肉薄する
ダイヤ「(残り僅かな私の“力”…短剣を通して奴の核に直接注ぎ込む…!)」
ダイヤ「駄馬よ!!!この地を治める死神が一柱、黒澤ダイヤが殺して差し上げます!!沈みなさい!!!!」
「ゴアッァァァ…!!ガァァァァァ!!!!!」
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:54:47.87 ID:+K74wEm20
「ァァ…………アァァ……」
「…ォ………オァァァァァ!!!!!!」
ダイヤ「…傷が…浅かったですか…」
ダイヤの短剣によって鋭く、傷を受け、暴れようとする黒馬
タガが外れたかのように荒れ狂い、周りの物を、際限無く踏みつぶし、破壊しつくす黒馬
最接近していたダイヤは当然の如く、その災厄に巻き込まれる
90 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:58:17.03 ID:+K74wEm20
ダイヤ「(差し違えることも出来ず……ここまで、ですか…)」
「ア…!……ァァ……ォァ……………」
しかし突如、黒馬の様相が変わった
金縛りに遭ったかのように固まり、その場の空間に磔にされていた
ダイヤ「(……動きが…止まった…何故…?)」
ルビィ「んぐぐぐぐぐぐ……!!!!」
91 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 00:59:38.48 ID:+K74wEm20
ダイヤ「ルビィ…!?あなた何を!?」
ルビィ「ルビィに力は殆ど残ってないけど…こうして口から…体の中を直接掴めば…っ…少しは…力が通るからっ!」
ダイヤ「ルビィ、腕が……!!」
ルビィ「いいから、早く!!お姉ちゃん!!」
ルビィ「この街の人々の魂は!今!お姉ちゃんに掛かってるの!!」
ダイヤ「………!」
92 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 01:04:24.34 ID:+K74wEm20
ダイヤ「…分かったわ、ルビィ」
力の過剰行使で手の感覚が潰れて来ている。それでも痺れた掌に力を込め、短剣を深く、深く突き立てる
練りあげるは死の観念、何度も、幾度となく放ってきた、死した魂すら破壊する冥主の力。
その全てを纏め上げ、今一点にて解き放つ
ダイヤ「これが!!私達死神の、黒澤姉妹の!最後の足掻き!!」
全力、全ての体重を短剣に乗せる、練りあげた死の観念は獰猛な獣と成り果てる。全てを喰らい、飲み込む魂喰らいの殺戮者!!
ダイヤ「悪しき魂よ!!私が喰らって差し上げます!!!その存在の破滅をもって鎮まりなさい!!!!!!!」
「アァ…ァ…オ“ア“ァ”ァ“ァ”ァ“ァ”ァ“…!!!!!」
93 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 01:06:10.77 ID:+K74wEm20
「ァォ…!……ァ………!……」
「……………………」
ダイヤ「はぁっ……はぁ……やった…ようですわね」
ルビィ「………うぁっ……こひゅ…っ……」
ダイヤ「ルビィ…!あなた腕が…!」
ルビィ「あはは……ごめ…ん、ルビィ力足りなくて…最後に、噛み切られちゃった」
ダイヤ「しっかりなさい!気を確かに持って!今救急車呼びますから!」
ルビィ「……ううん、もういいよ、お姉ちゃん」
ダイヤ「……ルビィ…?」
94 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 01:07:18.10 ID:+K74wEm20
ルビィ「こんなに血が出てたら…もう絶対助からない、自分の事だから分かるよ…」
ダイヤ「し、しかし……!」
ルビィ「それに、こんな…腕を食いちぎられた人間なんて…お医者さんにどう説明するの?」
ダイヤ「………それは…」
ルビィ「ふふっ…ルビィに言いくるめられるなんて…なんか、いつものお姉ちゃんらしくないや…」
95 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 01:08:11.34 ID:+K74wEm20
ルビィ「ルビィね…ずっと怖かったの、悪霊さんだからって、直接じゃないからって…魂をずっと壊し続けるの…なんだか人殺しみたいで、怖かった」
ルビィ「でも、やらなくちゃいけないことだった…お姉ちゃんが教えてくれた」
ダイヤ「ルビィ…ルビィ……もうじっとしてなさい…!…無理に喋らなくて、いいから…!」
ルビィ「いいの、いいんだよお姉ちゃん……お姉ちゃんの妹でいられて……ルビィは…ルビィは…よか…っ……」
ルビィ「…………」
ダイヤ「ルビィ…?ルビィ…!!!」
96 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 01:08:51.85 ID:+K74wEm20
結局の所、どれも私の甘さが引き起こしたのかもしれません
事の重大さを察知し、もっと早く手を打たなかったこと
甘さを消し、冷徹に成り果ててでもあの猫を始末しておくべきだったこと
そのどれもが出来なかった結果、妹を失う結果に終わったこと
全ては、私の未熟さと覚悟の足りなさから起きた出来事だったのです
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/17(金) 01:09:32.23 ID:+K74wEm20
ルビィは死ぬ間際もその様相とは裏腹に、辛い顔を一切見せず静かに息を引き取りました
最後まで、私に気を使ったのでしょうか、今となっては知る術もありません
アスファルトに横たわるルビィを抱きかかえて、顔をのぞき込めば、穏やかな死に顔がこちらを覗きます
耳を澄ませば寝息が聞こえてくるような、そんな健やかな顔でした
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 01:10:27.55 ID:+K74wEm20
しばらくすると、ルビィの胸から何かが、競り上がる様に出てきました
ばくり、ばくり。ゆっくりと鼓動するかのように大きくなりながら“それ”は真紅の宝石の形となって姿を現しました
悪霊に成り果てるのは、現世にて恨み辛み、未練を残して彷徨う魂です
そして…未練の無い魂は、この世に姿を現しません
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 01:12:14.93 ID:+K74wEm20
ダイヤ「………結局私は最後まで、あの子の事を何も分かって…いませんでしたね」
私は、少しの間の後、躊躇することなくその魂を包む様に手の内に収めます
きらきら、輝いていました。まるで彼女の心の様でした。私の掌すら、透き通って見える程に綺麗でした
輝く宝玉に私は、力が抜けて小刻みにふるえる右の掌で、まるで首を絞めるかのように、ゆるやかに力を加え始めました
宝石に滴が二つ、落ちました。私の頬を伝った、涙でしょうか。力を込めるのに必死で出た、脂汗かもしれません
私の残り僅かな力を込めた魂は、いとも容易く粉々に砕け、壊れてしまいました
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 01:13:19.78 ID:+K74wEm20
行く当てのない私達はどこへ行くのでしょうか?
まるでその綺麗な物が、綺麗でなくなる前に壊してしまおう
汚れてしまう前に、この世から消してしまいたい
そんな倒錯した心が死神としての行いの前に、在ったような気がしました
行くあてのない私達はどこへ行くのでしょうか?
私には…いまだ、分かりません
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 01:14:53.68 ID:+K74wEm20
手に残った粉々になった破片はまるで水が蒸発するかのように、跡形もなく姿を消しました
ふと、周りを見渡すと知らぬ間にかなりの時間が経っていたのか、辺りは薄暗く、電信柱の作る影も色濃く、港町を覆います
既に山の奥を覗けば真っ暗で、数歩行った先も見渡せないような漆黒に木々の間が塗り潰されていました
ルビィを連れて、ほんの少し歩いた先の砂浜へとやって来ました
白く泡立つ波は穏やかで、規則的な動きで地面に紋様を描きます
あまりに涼しげな波だったので、一緒に泳ごうかとおもいましたが、あの子はカナヅチだったのを思い起こして、止めました
海の果てを見つめれば、西の空から夜が、始まろうとしていました
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/08/17(金) 01:15:36.19 ID:+K74wEm20
おわり
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/17(金) 02:15:46.89 ID:tjR8hgzY0
otu
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/17(金) 22:47:43.48 ID:ADN911pbO
見覚えあるスレタイだけどどっかの建て直し?
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