マリ「超特急デネブ?」結月「そうです」

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46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/03(金) 12:03:29.02 ID:Ziseypbso

―― 食堂車


店員「いらっしゃいませ」


日向「あれ、結構空いてる」

店員「皆様、もう出られましたよ」

日向「なんだ、私たちが遅かったのかぁ」

みこと「まだ9時なのに……」

日向「夕方ですよね、出発するの」

店員「そうですよ。お好きな席へどうぞ」

日向「奥の席に座るか」

みこと「うん」

マリ「うーん……」

日向「何を悩む必要がある?」

マリ「ちゃんと伝えないと、結月ちゃんの第一印象に関わるでしょ」

日向「テレビで見たことは?」

みこと「ある」

日向「それでいいと思う。テレビの印象とあまり変わらないからなー。
    そんなことより、注文だ」

みこと「洋食」

日向「キマリは?」

マリ「……うーん」

日向「モーニングの洋食二つと、和食一つでお願いします」

店員「かしこまりました」

日向「もう一度聞くけど、なんでゆづのこと知りたいんだ?」

みこと「話を聞いてたら、印象と違うから」

日向「そうかぁ?」

マリ「そうだ、分かった!」

日向「どした、急に……」

マリ「日向ちゃん、結月ちゃんの物まねしてよ」

日向「はぁ、しょうがないですね」

みこと「……始まった?」

日向「キマリさんはいつも唐突ですからね」

マリ「今日はこの姿を見て理解してくれればいいよ」

みこと「うん……」

日向「今日一日ずっとか!?」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/03(金) 12:05:04.26 ID:Ziseypbso

マリ「日向ちゃん好きだよね、結月ちゃんの真似するの」

日向「ずっとやってても面白くない。たまーにやるのがいいんだよ」

みこと「……」ジー

日向「や、やだ……そんなジッと見られると恥ずかしいですぅ……おほほ」

マリ「絶対に言わないよね、それ」

日向「そんなことより、今日は夕方までどうするか決めよう」

みこと「……」

日向「はやく決めて、キマリ」

マリ「それ、報瀬ちゃんでしょ」

日向「お、よく分かったな」

マリ「もぉ、真面目にやってよ」

日向「お前な……人の真似を真面目にやれってどうなんだ」

みこと「……」ジー

日向「分かったよ……」

マリ「スペースワールドは?」

日向「それはどういう観光地なんですか、キマリさん」

マリ「宇宙がテーマのテーマパークなんだって」

日向「私たちにぴったりな場所じゃないですか! キマリさん!」

みこと「……閉園してるよ」

マリ「ゑ!?」

日向「なにー!?」

みこと「……」

日向「あらやだ私ったらはしたない……おほほ」

マリ「閉園ってどういうことみこっちゃん!」

日向「どういうことなんですか、キマリさん!」

マリ「私が聞いてるの!」

みこと「言った通りだけど」

マリ「なんだ……宇宙に一番近い場所だったのに」ガッカリ

日向「残念ですね、キマリさん」

店員「おまたせしました、モーニングセットです」

日向「あ、来ましたよ、キマリさん」

マリ「なんでいちいち私の名前を呼ぶの?」

みこと「……」


……


48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:35:41.90 ID:fg1dRoV1o

―― 博多駅


日向「結局、行先も決まらず外に出てきましたが……どうするんですか、キマリさん」

マリ「私、行ってみたいところがあるんだよね〜」

日向「それはどこです、キマリさん」

マリ「屋久島」

日向「世界遺産ですか、いいですね。無理ですけど」

マリ「縄文杉が見たいんだ」

日向「無理だって言ってるじゃないですか」

みこと「太宰府天満宮は?」

日向「それはどこですか、キマリさん」

マリ「……太宰府天満宮にあるよ。なんか適当になってない、日向ちゃん?」

日向「もう飽きたんだよ! やーだー! もうやりたくなーい!」

みこと「……」


……


49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:39:55.31 ID:fg1dRoV1o

―― 太宰府天満宮・近辺


日向「おいしいな、これ」モグモグ

みこと「お昼、これでいいの?」

マリ「うん」モグモグ

日向「うちでやってる豚まんより豚まんだな」モグモグ

マリ「そだね」モグモグ

みこと「饅頭屋さん?」

日向「違うよ、バイト先のコンビニ」

みこと「キマリさんも?」

マリ「私は辞めたよ」

みこと「……日向さん、受験生なのに続けてていいの?」

日向「私、学校行ってないからな」

みこと「…………」

マリ「それでも合格判定Aだからすごいよね。去年の話だけど」

日向「おい、今年は下がったみたいな言い方するなよ。ちょっとドキッとしただろ」

みこと「どうして?」

日向「ん?」

みこと「どうして行ってないの?」

日向「みこともズバッと聞いてくるな……。パクッ」

マリ「ジューシィだねぇ、おいひぃ」

みこと「……」

日向「人間関係が面倒でなぁ……、ただそれだけ。……ふぅ、ごちそうさん」

マリ「飲み物何がいい? 買ってくるよ」

みこと「……」

マリ「お茶でいい?」

みこと「……うん」

日向「キマリが好きな物以外だったらなんでもいい」

マリ「分かった。あっちにドリアンジュースがあったよ、それにするね」

テッテッテ

日向「やめろぉーー!! キマリーー!!」

みこと「……」

日向「振り返らずにまっすぐ進んで行ったな……」

みこと「……」

日向「不安が無かったって言ったら嘘になる」

みこと「……?」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:42:12.22 ID:fg1dRoV1o

日向「その不安を消すために勉強しまくってた」

みこと「……」

日向「コンビニのレジで、私と同じ歳の子たちが友達と楽しそうにしてる――」


日向「それを見てて冷めていく自分に、これでいいのかって思うこともあった」


日向「そんな時だ。キマリたちがうちに来たのは」

みこと「……」

日向「無理して学校行ってたら、キマリたちが見えなかったかもしれないな」

みこと「見えない……?」

日向「その他大勢の女子高生の内の一人としてしか見れなかったってことだよ」

みこと「……」

日向「人生、どうなるか分からないもんだな。私の選択は正しいのかどうかは分からないけど、
   間違ってはいないって思える」

みこと「……」

日向「キマリたちと一緒に目指した『あの場所』が、私の宝だったりするのだよ」

みこと「あの場所……?」

日向「世界の端っこだ」

みこと「……」

日向「今言ったことはキマリたちには言うなよ? 言ったらお仕置きがまってるからなぁ、にひひ」

みこと「――……」

日向「あれ、おーい、聞いてるかー?」


マリ「買ってきたよ〜、はい、日向ちゃん」

日向「おー、ありが……なんだ、サイダーか」

マリ「えー?」

みこと「……たちって、キマリさんと……?」

日向「報瀬って奴と、しょっちゅう話に出てるゆづのことだ」

マリ「何の話?」

日向「南極の話」


……




―― 太宰府天満宮


日向「……」

マリ「この旅が――」

みこと「――……」


……


51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:48:57.71 ID:fg1dRoV1o

―― デネブ


日向「もう夕方か……今日はずいぶんとゆっくり周ったな」

マリ「だね〜、結局お参りして終わっちゃった」

みこと「ここ、来たことあるの?」

マリ「え、ないよ?」

みこと「駅の周り、知ってる風だった」

日向「あぁ、それはな、私とキマリは朝に周辺を走ったからだよ」

みこと「え……?」

マリ「体力づくり! してるの」

みこと「……どうして?」

日向「それはな――」


prrrrrrr


日向「うぉぉぉおおお!!」

ダダダダッ


マリ「あぁっ、待って!」

タッタッタ


みこと「……」

テッテッテ


日向「わぁぁぁああ、どいてどいてーッ!!」


「えっ? うわぁ!?」


マリ「日向ちゃん!」


ガッ


日向「うわっ……!」


日向「とっとっと……!!」


「あっぶねぇ!!」サッ


日向「ぐぬぅぅううう!!」


ゴンッ


日向「あいたぁ!?」


マリ「大丈夫!? 日向ちゃん!」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:49:55.79 ID:fg1dRoV1o

「……」


みこと「転ばなくて良かったけど……結構強く頭ぶつけたよ……」

日向「急には止まれないな……でも、だいじょうぶ、だいじょーぶ」ヒリヒリ


プシュー


「……危ないだろ、気を付けろよ」


日向「いやぁ、ごめんごめん……駆け込み乗車はよくないな……あはは」


「……ふん」

スタスタスタ......


みこと「なにあれ……」

マリ「日向ちゃん、車掌さんところ行こ?」

日向「大丈夫だって、これくらい」

マリ「赤く腫れてるから」

日向「えっ、本当に?」

みこと「……うん」


ガタン

 ゴトン

ガタンゴトン

 ガタンゴトン


……


53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:50:59.21 ID:fg1dRoV1o

―― 売店車


車掌「…………」


日向マリみこと「「「 ごめんなさい 」」」


車掌「まだ何も言っていません」

日向「い、いつもと雰囲気が違うなぁ……と思いましてぇ」

みこと「……空気が…」

マリ「ピリピリしています……」

車掌「見ていましたよ、走りこんで来るところを」


日向マリみこと「「「 ごめんなさい 」」」


秋槻「……何したの」

店員「3人が駆け込み乗車した際に、強く頭をぶつけたそうです……」

秋槻「え……? 見たところ大丈夫そうだけど……」

店員「だから、怒られているんです」

秋槻「あぁ、そうだね……。無事だったからこうなっているんだ」

店員「……はい」


車掌「三宅さんはこちらへ」

日向「いやっ、こんなのツバつけとけば治――」

車掌「こちらへ」

日向「ハイ」

スタスタスタ......



みこと「……」

マリ「……」ビシッ


「敬礼するな!」


秋槻「ちゃんとツッコミは入れるんだね……」



……


54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:53:12.46 ID:fg1dRoV1o

―― 1号客車


マリ「広島に着いたらカキが食べたいんだ」

みこと「好きなの?」

マリ「ううん、そうでもないけど……ただ、美味しいって話だから」

みこと「あたると大変だって聞くよ」

マリ「なにに?」

みこと「カキに」

マリ「誰かが投げるの?」

みこと「なにを?」

マリ「カキを」

みこと「?」

マリ「?」


秋槻「……」


マリ「どういうこと?」

みこと「……?」


秋槻「物理的にあたるんじゃなくて、食中毒にあたるってこと」

マリ「あー……うん、なるほど」

みこと「……」


日向「あれ、どうして秋槻さんが居るの?」

秋槻「次の広島で3人目が乗るって聞いてたから、ちょっと興味があってね」

日向「ふぅん……? 興味?」

マリ「あ、日向軍曹……じゃなくて、えっと2階級特進だから」

みこと「准尉……? 少尉?」

マリ「よく分かんないから、兵長でいいや。お帰りなさいませ」ビシッ

日向「降格してるんですけど、それ」

マリ「見事な戦いでした、お勤めご苦労様です」

みこと「殉職してるんじゃないの?」

マリ「生還したよ?」

みこと「?」

マリ「?」

秋槻「さっきから同じやりとりしてるよね」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:55:03.23 ID:fg1dRoV1o

日向「それで、興味があるって?」

秋槻「誰が乗って来るのかなって」

日向「?」

マリ「一日車掌の結月ちゃん。白石結月ちゃんだよ」

秋槻「へぇ、一日車掌やるんだ」

マリ「まぁね」

日向「分からないなぁ、どうしてキマリがしたり顔なのかぁ」

みこと「……」

日向「あ……! 勝手に殉職させないでください」

秋槻「どうしたの急に?」

日向「失礼ですよ、キマリさん」

マリ「結月ちゃんの真似」

秋槻「……」

みこと「……」

日向「強く生きますね!」

みこと「?」

秋槻「?」

マリ「?」

日向「しまった……急すぎたか」

マリ「あー、分かった。結月ちゃんの口癖だ」

日向「滑った……ぁぁ…恥ずかしいぃ」


……





―― 展望車


マリ「見てみて、夕陽が綺麗〜」

みこと「日向さん、一人にしていいの?」

マリ「たまには、自分を見つめなおす時間も必要なんだよ」

みこと「……」


……


56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:58:25.69 ID:fg1dRoV1o

―― 動力車


「……」


日向「あれ、さっきの……」


「……なんだよ」


日向「いえ、……なんでもないです」

秋槻「君も車掌さんに用があるの?」


「……はい。……今は居ないみたいです」


秋槻「そっか……。それなら反対の車両にいるんだね」

日向「ですね……。どうします?」

秋槻「別に急いでるわけじゃないから」

日向「うーん……私も急いでる訳じゃないけど……暇だから探してみようかな?」

秋槻「無理して探す必要も無いんじゃない? 車掌さんも忙しいだろうし」

日向「そういわれると……。さっきも迷惑かけちゃったし……」


「……」


秋槻「なら、一緒に探したら?」

日向「え?」

「え?」

秋槻「目的は一緒でしょ?」

日向「私はいいけど……」

「……」

秋槻「博多から乗ってきたんでしょ?」

「……はい」

秋槻「なら、ちょうどいいんじゃないかな。案内がてら」

日向「なーんで私がー?」

秋槻「機会があれば広島でもなにか御馳走しようかなって思うんだけど」

日向「承りました!」

「別にいいよ、自分で探すから」

秋槻「そう? それなら――」

日向「ほら、遠慮するなよ! 私に任せとけ!」

「な、なんだよ……急に張り切りやがって……!」

秋槻「先は長いだろうから仲良くした方がいいと思うよ。……余計なお世話だったら悪いけど」

「…………」

日向「どこまで行くの?」

「金沢……だけど」

日向「名古屋の次かぁ……ふぅん」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:59:29.02 ID:fg1dRoV1o

秋槻「それじゃ、軽く自己紹介をしとくよ。俺の名――」


pipipipi


秋槻「おっと、ごめん。また後で」

プツッ

秋槻「はい、秋槻です。……はい……はい、そうです。今、博多を出た所で――」

スタスタスタ......


「……」

日向「……」


「大村一輝」

日向「え? ……あぁ、私は三宅日向。よろしく」

一輝「……」

日向「案内するから、おいでおいで」

一輝「……」

日向「うひひ、秋槻さん、3人分で済むと思ってるだろうなぁ」

一輝「……大丈夫だったか?」

日向「え、なにが?」

一輝「頭……」

日向「あー、うん。あの後、車掌さんに手当してもらったから大丈夫」

一輝「……そうか」

日向「心配してくれたんだ?」

一輝「別に……」


……





―― 4号客車


日向「はい、こちら、座席が赤色になっておりまーす」

一輝「……」

日向「では、ここで問題です。1号客車の座席は何色でしょーか」

一輝「……青だろ」

日向「はい、せいかーい。次、参りまーす」

一輝「……」


……


58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:01:30.21 ID:fg1dRoV1o

―― 娯楽車


マリ「ぬぉぉぉおお」

みこと「……危ない」

マリ「せいやぁぁああ」

みこと「上手……」

マリ「へへ〜、任せてよ」

ばばばばばーん



日向「と、このように、暇を持て余す若人たちには打って付けの施設もござーます」

一輝「……」


マリ「ぬぅぅぅおおおお」

みこと「……?」

日向「景色はいいのかよー。車窓を眺めるにはいい時間なんじゃないのかー?」

マリ「いぃぃやぁぁあああ……あ、セーフセーフ!!」

日向「聞いてないな」

みこと「……」

一輝「……車掌さんはどうなったんだよ」

日向「この次が展望車だから、そこにいるはず」

一輝「ん……」

スタスタスタ......


みこと「……案内してたの?」

日向「まぁそんなところ。おい、キマリー」

マリ「おっとっとぉ……とと……これくらい余裕――」

ちゅどーん

マリ「ああぁあぁああぁぁあああ!!! 気を抜いたらこれだよーもぉー!」

みこと「さっきよりは進んだよ」

マリ「今のボスを倒せばクリアだったのに……くぅやしぃぃ……。あ、日向ちゃん、居たんだ」

日向「この集中力を勉強にも活かせたらなー!!」

マリ「大声で言わないでよぉ……。遊びに集中するのは当然のことだよ」

みこと「……」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:07:56.28 ID:fg1dRoV1o

一輝「車掌さん、いなかったぞ」


日向「え、……あ、そう」

一輝「……」

日向「分からん」

一輝「……は?」

日向「どこに居るかさっぱり分からん!」ドンッ

一輝「なんだよそれ……」

マリ「どうしたの?」

日向「車掌さんを探して動力車から順に歩いてきたけどさ、居ないんだよ」

マリ「ひょっとして……」

日向「思い当たる節でもあるのか?」

マリ「神隠し……」ゴクリ

みこと「……食堂車の厨房……とか」

日向「そうか、それかもなー」


……




―― 食堂車


店員「さっきまで居ましたよ。料理長と少し話をしていました」

日向「やっぱりそこですれ違ったのか……」

一輝「じゃあ今度は……動力車に進めばいいんだな?」

日向「そうなるな」

みこと「……」

日向「……」チラッ

マリ「……」

日向「じゃ、行くかー」

マリ「何か言ってよ!」

日向「神隠しじゃなくてよかったよかった。車掌さん、やっぱり忙しいんだなー」

マリ「そういうのも傷つく」


……


60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:12:54.47 ID:fg1dRoV1o

―― 寝台車


日向「みことまで来なくていいんだぞ?
    いじけてるキマリの相手してくれればそれで」

みこと「……うん」

一輝「別に俺一人でもいいって」

日向「せっかくだから……あ、居た」

みこと「……」


車掌「この進行ルートになり……高崎から東京になります」

秋槻「あれ……? あの子ら、ここで降りた方がいいんじゃないですかね?」

車掌「東京まで行く理由があるのかもしれませんよ」

秋槻「意外と、停車駅を把握してないかもしれない……」

車掌「確認してみてはいかがでしょう」

秋槻「そうですね、聞いてみます」


日向「車掌さーん」


車掌「あら、噂をすれば」

日向「噂?」

車掌「いえ、なんでも……。どうかなさいましたか?」

日向「私じゃなくて、こっちが用があるそうです」

車掌「新しく乗車された方ですね」

一輝「あ……えっと、博多から乗りました、大村一輝です。これからよろしくお願いします」

車掌「はい、こちらこそよろしくお願いします。では乗車券を拝見します」

一輝「はい……どうぞ」


秋槻「まだ会ってなかったんだ?」

日向「食堂車ですれ違ってしまって」

みこと「……」


……


61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:14:37.91 ID:fg1dRoV1o

―― 展望車


日向「みことはなんで付いて来たんだ?」

みこと「あの人、なんだか失礼だったから」

日向「そうかぁ? 男子だからあんなもんじゃないかな」

みこと「態度が悪いと思う」

日向「そういや、秋槻さんには敬語だったな……。いくつなんだろな」

みこと「……」


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


マリ「…………」


日向「黄昏て、どうした?」


マリ「……うん、ちょっとね、思い出してた」


みこと「……なにを?」


マリ「報瀬ちゃんと、広島に行った帰りの列車……。
   今と同じ風だったなぁって。景色は違うけど」


日向「物思いに耽る歳じゃないだろ」


マリ「次の広島はね、私が初めて旅した場所なんだよ」


みこと「……」


マリ「いろいろと考えてしまって、足を動かせない私を……報瀬ちゃんが引っ張ってくれた」


日向「……そうだったのか」


マリ「そうだよ。……新しい世界がそこにあった」


みこと「……」


……


62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:16:11.03 ID:fg1dRoV1o

マリ「すぅ……すぅ……」

日向「寝るのかよ」

みこと「すぅ……すぅ」

日向「こっちもか」

マリ「……ん……すぅ……」

日向「朝早かったし、昼はずっと暑い中歩いてたからしょうがないか……ふぁぁ」

みこと「……すぅ……すぅ」

日向「ねむ……」


……




プシュー


日向「ふぁぁぁ……着いたか……」

みこと「……ぇ?」

日向「ん〜〜」ノビノビ

マリ「すやすや」

みこと「……着いたの?」

日向「着いたよ」

みこと「そうなんだ……」

マリ「すぅ……ぴぃ」

日向「晩御飯どうしようかな……」

みこと「キマリさん、着いたよ」

マリ「んー……ん? んん?」

みこと「広島に着いたよ」

マリ「ひ…ろ……しま……?」

日向「広島?」

マリ「広島ッ!?」

みこと「……うん」


……


63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:18:42.79 ID:fg1dRoV1o

―― 小郡駅


日向「いや、着いてないからな! まだ山口だからな!」

マリ「あー……びっくりした」

みこと「……」

日向「私もびっくりしたわ」

マリ「小郡駅じゃん」

日向「私もちょっと寝てたなー……頭がボーっとする」

みこと「日向さんが着いたって言うから」

日向「だーれが広島に着いたって言ったかー?」

みこと「…………」

マリ「あ、ちょっと複雑な顔してる〜」

みこと「間違えた……」

日向「うむ、素直に認めるなら良し」


秋槻「本当はここ、小郡駅じゃないんだけどね」


日向「はい?」

マリ「でも、あの駅名標には『小郡』って書いてあるよ」

秋槻「あれは今日だけ……デネブの為に用意された標なんだよ」

みこと「……?」

秋槻「君らが産まれてから……少し経った頃に改称されてるからさ」

日向「デネブの為にわざわざ用意したの? 凄いな……!」

マリ「じゃあ、デネブちゃんが通り過ぎたら撤去されちゃうんだ……」

秋槻「いや、夏が終わるまではそのままにするんだって」

マリ「……なんだ」

日向「がっかりするなー。いい話なんだからがっかりするなー、キマリー」

マリ「お兄さん、今日だけって言ったのにぃ」

秋槻「……ごめん。言ってから思い出した」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:19:27.72 ID:fg1dRoV1o

日向「ヴェガが通った頃はまだ、本当に小郡駅だったんだな……」

秋槻「そういうこと」

みこと「……」

マリ「そっか……! 20年前の今日……ヴェガはここにあったんだ!」

秋槻「いや……」

日向「北から南に縦断だから……小樽辺りじゃないか?」

マリ「……夕陽が沈むね」

日向「間違いを認めないな」

みこと「写真、撮る?」

マリ「いいね!」

日向「はい、お願いしまーっす!」

秋槻「……いいけどね」


日向「はい……お、ご、お、り」

マリ「り!」

みこと「……り」


カシャッ


……


65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:21:26.91 ID:fg1dRoV1o

―― 売店車


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


マリ「ガイドブックください」

店員「はい、どうぞ〜」

マリ「ありがとうございます! よーし、調べるぞぉ!」

日向「これくらいの情熱を勉強――」

マリ「もみじ饅頭ぅ! もみじ饅頭だねぇぇ! みこっちゃんん!!」

みこと「う、うん」

日向「力強く遮られた……」

マリ「そういえば、車掌さんに聞きに行ったんでしょ? お勧めの観光地」

日向「みこと、私の役やれな?」

みこと「……?」

日向「車掌さん役は私がやるから。はい、スターット!」

マリ「再現するんだね」

みこと「……」

日向「ほら、やってみ?」

みこと「……お、お勧めのスポットを……教えてください……」

マリ「えっ!? こんなモジモジしながら聞いたの!? 日向ちゃんが!?」

日向「そんな驚くことか!?」

マリ「だって! えぇーー!?」

日向「というか、やってないから。ふっつうに聞いたから」

みこと「……」

マリ「だよね」

日向「『車掌さん、お勧めの観光地を教えてください!』」


日向「『そうですね、……お勧めの場所は……』」


日向「『わくわく、どきどき』」

マリ「はい、そこは嘘だと思います。日向ちゃんが『どきどき』とか言いませんから」

みこと「……」

日向「『お勧めは、自分で決めることです』」


日向「『えぇ〜、どうしてですかぁ〜』」

マリ「誰だろうね。第三の人物?」

みこと「……」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:23:16.51 ID:fg1dRoV1o

日向「『自分で決めて、自分で調べて、自分で足を運ぶ。
    その場所で何を感じるのか……期待以上でも期待以下でもどちらでも楽しめるものですよ。
    それが旅の醍醐味というものです』」

マリ「あぁ、分かる分かる」

日向「『そうなんですかぁ、車掌しゃんの言葉にぃ、日向、とぉっても感動しましたぁ……キラ☆キラ』」

マリ「噛んだね……車掌しゃん、だって」ププッ

みこと「多分、キャラづくりだと思う……」

日向「野次飛ばしてないでちゃんと聞けよ」

マリ「聞いてるよ、車掌しゃんの言葉は」

日向「うわ、性格悪ぅ」

マリ「悪いよ? 悪い?」

日向「悪いに決まってるだろー」

マリ「……あれ?」

みこと「……」

日向「どうした?」

マリ「そう返されると思わなかった」

日向「なんて返して欲しかった?」

マリ「ううん……別に、なんでもない」

みこと「よく分からない」

日向「そうだな。なんの話してるのか分からなくなったな」

マリ「観光地の話だよ!」

日向「明日は一日中停車してるんだったよな?」

みこと「うん」

マリ「カキでしょ、もみじ饅頭でしょ、あと何があったかな」

日向「あ、そうだ。喜べ、二人とも。秋槻さんにご飯奢ってもらう約束だ」

マリ「もぉ、またそんな勝手なこと言って」

日向「本当だって。善いことした後には良いことが待ってるんだからな」

マリ「いくらなんでも図々しいよ……ね、みこっちゃん」ペラペラ

みこと「さっきのページに、お好み焼きがあったよ」

マリ「あ、いいねぇ……本場だもんね。ここにしよう」

日向「連れてってもらう気満々じゃないか」


……


67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:26:41.18 ID:fg1dRoV1o

―― 展望車


日向「ここ好きだよな、キマリ」

マリ「うん、好き〜。景色が流れていくのがいいよね」

みこと「……」

日向「ご飯どうする? 食堂車で食べるしかないけど」

マリ「そうだね……。到着時間だと、お店閉まってるよね」

みこと「うん」

日向「あ、そうだ……近くのコンビニでさ、カップ麺買うのもいいんじゃないか?」

マリ「いいね、それ!」

みこと「……わざわざ?」

日向「そう、広島まで来てわざわざいつでも食べられるカップ麺を食べる。
    これが意外と美味いんだなー」

みこと「そうなの?」

マリ「普段と違うシチュエーションで食べる。これが新鮮で美味しいんだよ」

みこと「……そうなんだ」


……




日向「景色が流れてるんだろうけど、夜だからまったく分かりませんな」

マリ「……そんなことないよ」

日向「そう言いながら残念そうなんだけど」

みこと「……光」

マリ「?」

みこと「向こうに光があるでしょ」

日向「うん、あるな」

みこと「その光の下に……私たちを知らない人が生活をしているんだって」

マリ「……そうだね」

日向「ふぅん……」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:29:18.26 ID:fg1dRoV1o

みこと「お父さんとお母さんが、昔話してたよ」

マリ「……」

日向「深いな。知らない誰かがそこで当たり前のように生活してる……か」

みこと「うん」

日向「キマリも、前に同じこと言ったな」

マリ「……うん」

みこと「そうなんだ」

マリ「それって凄いよね」

みこと「うん、凄い」

マリ「世界は広いってことを教えてくれる」

日向「我思うゆえに、我あり」

マリ「ん?」

日向「人は、自分という存在を意識することで他人を発見できるのである」

マリ「また日向ちゃんの名言?」

みこと「デカルトだよね」

日向「みこと正解! キマリ、今日からゲーム禁止な」

マリ「なんでー!?」


……




日向「へぇ、仲いいな〜」

みこと「そうかな?」

マリ「うん、仲良いよ」

みこと「……」


秋槻「誰と誰が?」


日向「みことの両親が」

マリ「いいご両親だね」

みこと「……」

秋槻「よければ俺にも聞かせて欲しいな……。なんだか、気になるんだけど」

日向「テレビでさ、車窓の風景を流したり、街を散策するだけの映像が放送されてるでしょ?」

秋槻「あぁ、うんうん、あるね」

日向「みことのお母さんとお父さん、それが好きで二人で一緒に観てるんだって」

マリ「その映像を見て色々と想像して、会話が弾んだりしてるって」

秋槻「……」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:32:13.90 ID:fg1dRoV1o

みこと「……私は……いいのかどうか……よく分からない」

日向「みことにとってそれは当たり前だからだよ」

マリ「私たちから見て、それはいいことだと思う。うん、絶対ね!」

みこと「……秋槻さんはどう思います?」

秋槻「理想の夫婦だと思う」

みこと「……」

秋槻「二人は趣味が合うから……とか、それだけの感覚じゃなくて……なんて言えばいいのか……」

マリ「私たちじゃ知り得ない、二人の時間を共有してることが良いと思う!」

秋槻「そうそう、それ」

日向「7つ歳下の女子に言われてしまう演出家希望のフリーター……」

秋槻「う……」グサッ

日向「うひひ」

秋槻「だから、フリーターじゃないって……」

みこと「……」

マリ「みこっちゃんがいい子に育った理由がよく分かったよ」

みこと「……よく分からない」

マリ「そうだよね〜」

みこと「……」

マリ「我思うゆえに、我あり。だよ、みこっちゃん!」

みこと「……」

秋槻「……面白いこと言うね」

日向「最初に言ったの私〜」フフン


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


……


70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:33:41.98 ID:fg1dRoV1o

マリ「もう街中に入ってるよね」

秋槻「そろそろ減速しそうだ」

日向「お喋りしてたらあっという間だな」

みこと「うん」


ガタン

 ゴトン


日向「あ、減速した」

秋槻「それじゃ、明日の準備しようかな」

マリ「おやすみなさい〜」

みこと「……お休みなさい」

秋槻「……君たちはまだ寝ないの?」

日向「カップ麺が私たちを呼んでいる」

秋槻「……へぇ、そうなんだ。……でも、あまり夜更かししない方がいいと思うよ」

日向「親か!」

秋槻「観光に支障が出ると思って。まだ若いからそんなに気にしないかな」

みこと「……」

秋槻「それじゃ、お休み」

日向「明日、よろしく〜」


秋槻「……?」

スタスタスタ......


日向「首傾げながら行ったけど、忘れてないよな……」

マリ「それより、降りる準備しようよ。時間も時間だから」

日向「そうだな」

みこと「……」コクリ


……


71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:34:50.46 ID:fg1dRoV1o

―― 広島


プシュー


マリ「よっ」ピョン

シュタッ


マリ「広島、到着!」バッ


日向「キマリさーん、そこでポーズ取られたら邪魔でーす」

マリ「はい」

みこと「急ごう?」

マリ「はい、そうですね」

日向「駅の近くにコンビニがあるはずだぞ」


……




―― コンビニ


日向「ずるずる」

マリ「ずるずる」

みこと「……ずるずる」

日向「もぐもぐ」

マリ「もぐもぐ」

みこと「……もぐ……もぐ」


日向マリ「「 あれぇ? 」」


みこと「……?」

日向「おっかしいなぁ」

マリ「思ったより、普通のカップ麺の味だね」

みこと「ずるずる……」

日向「南極で食べたの、美味しかったよな……」

マリ「うん……。同じもの食べてるのに、なんで違うんだろ」

みこと「……もぐもぐ」

日向「暖かく感じたからか?」

マリ「そうかも……。ずるずる」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:36:34.35 ID:fg1dRoV1o

みこと「……あ」


ピンポーン


日向「いらっしゃいませー……って言いそうになるな」

マリ「いらっしゃいませー!」


一輝「!?」


マリ「ハッ!? しまった!」

日向「本当に言っちゃったよこの子……」

一輝「な、なんだよ」

マリ「つい、職業病で……」

一輝「……?」

日向「買い出しかー?」

一輝「歯ブラシを買いに、な」

みこと「……」

一輝「こんなとこでカップ麺かよ……良いご身分だな」

日向「ふぅ、やれやれ……あんなこと言ってますよキマリさん」

マリ「まったく、やれやれですな」

一輝「……な、なにがだよ」

日向「カップ麺を笑う者はカップ麺に泣くのである」

マリ「その通りである」ウンウン

一輝「意味が分からん」

みこと「歳、いくつ?」

一輝「は?」

みこと「言葉遣いが悪いよ」

一輝「そういうお前はいくつだよ?」

みこと「今年……17」

一輝「なんだ、タメじゃねえか」

マリ日向「「 えっ!? 」」

一輝「なんだよ?」

マリ「い、いえ……」

日向「なんでも……ない」

みこと「秋槻さんには丁寧に話してた。年上だからでしょ?」

一輝「普通はそういうもんだろ」

みこと「二人は、あなたより年上」

一輝「え!?」

日向「ふふん」

マリ「崇めたまえ」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:38:49.99 ID:fg1dRoV1o

一輝「そっちはともかく……お前が?」

日向「なんだよ、悪いかよ。背はちっちゃくても心は大きな日向ちゃんだぞ」

マリ「そっちって、こっち?」

一輝「……マジかよ」

みこと「だから、二人には失礼な態度取らないで」

一輝「う……。そ、そんなの知らん!」

スタスタスタ......


一輝「……」


一輝「……これで」


店員「ありゃしゃっしたー」


一輝「……」

スタスタスタ......


日向「なんか、慌てて出て行ったな」

マリ「気まずそうだね」

みこと「……」

日向「それより、みことは中学生じゃなかったのか?」

マリ「それ、大事。どういうこと?」

みこと「今年15だよ。……あの人、態度悪いから……嫌だった」

日向「あ、そう」

マリ「みこっちゃんって、体育会系?」

みこと「……そうじゃないけど」

日向「旅先だから、そんなの気にしなくてもいいと思うけどな」

みこと「……」

マリ「早く食べて戻ろうよ。明日もあるんだから」

日向「そうだな。で、観光はどこ行くか決めたか?」

マリ「尾道ラーメンと海軍カレーが気になってるんだよね」

日向「またラーメンかよ……食べてばっかだな!」

みこと「厳島神社とか……」

日向「そこ行きたいんだな」

みこと「…………うん」

マリ「じゃあ、そうしよう」

日向「よし、今日はもう寝よう」


……


74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 21:45:11.19 ID:AUDLEXIxo

―― 8月3日


コンコン


「おーい、キマリ〜、起きろ〜」


マリ「うぇ……ぃ」


「走りに行くんだろ〜」


マリ「……うぇぁ」


「外で待ってるぞー」


マリ「……んー」


マリ「ふぁぁ……」


ピカッ ピカッ


マリ「ん……?」


マリ「……メッセージが……こんな朝早く……?」


マリ「……?」


マリ「えっ!?」


……


75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 21:46:46.20 ID:AUDLEXIxo

―― 広島駅・ホーム


「と、言うわけで、次の目的地は君の居る街だから待っててね!」


「はい、オッケーでーす」


「ありがとうございました〜」ペコリ


日向「……」パシャパシャッ


「あの、すいません、写真撮影は困ります」


日向「え、あ……すいません」


「あ、大丈夫です。その人は私の友達ですから」


「そうですか、失礼しました」


日向「すいませんでしたぁ」


「スタッフさんに迷惑かけないでください」


日向「あはは、ごめんごめん」パシャ


「勝手に撮らないでくれませんか?」


日向「友達だからオッケーだろ?」


「親しき中にも礼儀ありですよ」


日向「おー、いいねー、車掌服姿も可愛いよー、結月ちゃーん」


結月「思いっきり怪しい人物ですね……。スタッフさんに追い出してもらいますよ」

日向「やれるもんならやってみろ!」ドンッ

結月「はぁ……なにふんぞり返っているんですか。それで、キマリさんは?」

日向「キマリは報瀬を迎えに行った」

結月「え、報瀬さんって大阪からじゃなかったんですか?」

日向「朝に連絡があったんだよ。それより、早くカメラカメラ」

結月「後で渡します。なんでそんなにやる気なんです?」

日向「カメラがないと落ち着かないのだよ。なんていうのかな、芸術家魂というのかな」

結月「はいはい……」

日向「あ、そうだ……。旅仲間を紹介するよ」

結月「……はい?」

日向「えっと……あれ? さっきまでそこに居たんだけど……どこ行った?」


……


76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 21:52:45.21 ID:AUDLEXIxo

―― 呉港


「それじゃ、またね」


「……はい。それじゃ」


「……」

スタスタスタ......


「…………」


……




―― 呉駅


「……」


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


「…………」


ガタン
 ゴトン


プシュー


マリ「よいしょっ」


「……やっぱり来た」


マリ「えーっと……バスの方がいいかな……それとも走った方が……」


「もうすでに暑いから、走るのは止めた方がいいかも」


マリ「え……? あ……!」


「前に来た時と同じように、ここへ来るって思ってた」


マリ「報瀬ちゃん!」

77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 21:54:52.03 ID:AUDLEXIxo

報瀬「どうして来たの? 用事があるとしか言ってないのに」

マリ「そりゃ来るよ! だって、私の始まりはここから、ここから始まったんだから」

報瀬「……そう」

マリ「そうだよ。……それで、用事って?」

報瀬「吟さ――……隊長に逢いに……。ついでだったし」

マリ「隊長……って、吟さん? 帰ってたの!?」

報瀬「手続きがあるって。もう行ってしまったけどね」

マリ「…………」

報瀬「……?」


「……」サッ


報瀬「……???」

マリ「言ってよ! もっと早く言ってよ!」

報瀬「朝、連絡したでしょ」

マリ「遅いよ! この場所に居るとしか言ってないし!」

報瀬「……」


「……」


マリ「私だって逢いたかったのに……」

報瀬「ねぇ、キマリ……」

マリ「もういいよ……せっかくだから海軍カレー食べてこ?」

報瀬「私は別に……お腹すいてない」

マリ「せっかく来たんだから……! 朝ごはんもまだ食べてないんだよ〜!」

報瀬「……分かったから」

マリ「実は行くところ決めてあるんだ〜。行こ行こ」

スタスタスタ

報瀬「……うん」チラッ


「……」


マリ「でも、なんだか懐かしいな〜。まだ1年とちょっとしか経ってないのに」

報瀬「印象が強ければ、それだけ記憶に残るから」

マリ「ここもあまり変わってないね〜」

報瀬「1年しか経ってないからね」


「……」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 21:56:20.29 ID:AUDLEXIxo

報瀬「ねぇ、キマリ」

マリ「奢れ、なんて言わないから大丈夫〜」

報瀬「そうじゃなくて……あの子、キマリの知り合い?」

マリ「え?」


「……」サッ


マリ「……? どこに居るの?」

報瀬「いま、隠れた」

マリ「???」

報瀬「……」

スタスタスタ


報瀬「あなた、誰?」


「ッ!」ビクッ


マリ「そこに誰が居るの……って、みこっちゃん?」


みこと「……っ」


マリ「どうしたの? あ、海軍カレーが気になったんだ?」

みこと「しらせ……って人が……どんな人か……気になって……」

報瀬「私?」

みこと「……」コクリ

マリ「よく話に出てきたから、気になったんだね」

報瀬「それで、誰なの?」

マリ「旅仲間だよ」


……


79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 21:58:56.60 ID:AUDLEXIxo

―― デネブ


ピロリン♪

日向「なんだよ、キマリに付いて行ったのか」

結月「誰なんです?」

日向「中三の女の子。一人でデネブに乗ったんだって」

結月「そうですか……。仲がいいんですね」

日向「始発から一緒に居るからなぁ……。なんだかんだで……観光も一緒に……」

結月「どうしたんですか?」

日向「そういや、ずっと一緒に居るなと思って……。知り合ってそんなに時間経ってないのに」

結月「……」


「あ、見てっ、白石結月ちゃんよ」

「本当だ……きゃー、車掌服姿かわいい〜」


「白石結月だ……」

「うーわ、本物は違うな〜」


ざわざわ

 ざわざわ


日向「人が集まってきたな……。ゆづって本当に有名人だったんだな!」

結月「バカにしていますよね」


「白石さーん」


結月「あ、はーい。今行きまーす」

日向「まだ仕事?」

結月「そうです、これから打ち合わせが……。日向さんはどうします?」

日向「ゆづ、忙しそうだから……キマリたちと合流するよ」

結月「……」

日向「観光行って来るとしよう! ひゃー楽しみ〜♪」

結月「軽く殴りますよ」

日向「冗談だよ。私はずっと……ゆづの隣にいるから」キリ

結月「本当ですか?」

日向「やっぱり嘘! 退屈は嫌だから観光行く!」

結月「そう言うと思いました……。それでは、またあとで」

日向「今日は時間作れない?」

結月「打ち合わせで分かります」

テッテッテ


日向「遊びで乗ったわけじゃないからしょうがないか……」


……


80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 22:04:05.19 ID:AUDLEXIxo

―― 厳島神社


マリ「日向ちゃーん! こっちこっち〜!」


「おー!」


報瀬「ふぅん……これが神社なんだ」

みこと「……」

日向「よぉ、報瀬〜」

報瀬「これが世界遺産……ね」

日向「無視するなよ!」

マリ「建物と後ろの自然が見事に融合……溶け合って……そんな感じで評価されたんだよ」

日向「もうちょっとうまく表現しような」

みこと「……」

報瀬「それにしても、人がいっぱいいる……」

マリ「世界遺産のパワーだね」

日向「いや、私には分かる。この土地のパワーが人を集めるんだ」

報瀬「なにそれ」

日向「あの山には神が宿っているから、人はそれに惹きつけられるのさ」

報瀬「逆じゃないの? 畏れ多いから神には近づけないでしょ」

日向「……難しいことは分からん!」

マリ「おいでおいで、って手招きしてる神様なんだよきっと」

日向「そういうことだぞ。報瀬はもうちょっと自由な発想をだな〜」

報瀬「日向も分からないって言ってたじゃない……」


みこと「……」



「キマリさ〜ん!」

テッテッテ


報瀬「あ……」

日向「あれ……?」

マリ「結月ちゃん!」


結月「はぁ……はぁ……わ、私も一緒に周ってもいいですか……っ」

マリ「もちろん! 久しぶりだね、結月ちゃん!」

報瀬「本当、久しぶり」

結月「そうです。2か月ぶりですね」

報瀬「そんなに前だっけ?」

マリ「そうだよ。時間が経つの早いよね」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 22:07:11.59 ID:AUDLEXIxo

日向「というか、ゆづ、仕事は?」

結月「夕方まで自由にしていいって。デネブに乗ったら結構自由な時間多いんですよ」

日向「仕事も限られるからな」

結月「そういうことです……ふぅ、暑い……」

報瀬「走ってきたの?」

結月「はい、日向さんに追い付こうと思って……」

日向「なんだ、連絡してくれれば」

結月「しました」

日向「……」

ピカッ ピカッ

日向「気付かなかった……。そうか、ここは神の領域だからなのか……!」

結月「?」

報瀬「日向は此処の神様に嫌われてるって話」

日向「なんでだよ!」

結月「あぁ……」

日向「納得するな!」

マリ「……あれ?」


みこと「……」


マリ「みこっちゃん、こっちおいでよ〜」

みこと「……うん」

結月「さっき言ってたの……この子ですか?」

日向「そう、デネブで知り合った旅仲間」

結月「……」

マリ「ほら、結月ちゃんだよ」

みこと「うん……」

マリ「挨拶挨拶〜」

みこと「初めまして……」

結月「はい、初めまして……白石結月です」

みこと「……」

報瀬「人見知りするタイプ?」

日向「多分、そんな感じだな」

結月「……」ジー

みこと「……っ」ササッ

マリ「どうしたの?」

みこと「み、見てるから……」

日向「ゆづ、みことがどうかしたのか?」

結月「い、いえ……なんでも」
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 22:09:47.87 ID:AUDLEXIxo

報瀬「それより、中入ってみない? 回廊を歩いてみたい」

マリ「私もそう思ってた! 行こう行こう!」

報瀬「なんだか、異次元に繋がってそう」

日向「ひねくれ者は現世に戻ってこれないらしいぞ」

報瀬「日向はここで待ってて」

日向「なんでだよ! 満場一致で報瀬だろ!?」

報瀬「私はひねくれてないから」

マリ「ほら〜、結月ちゃんの時間もあるんだからのんびりしてられないよ〜、行くよ〜」

スタスタスタ

みこと「……」サササッ

日向「キマリから離れたら消えてしまう妖怪か何かか」

結月「……磨けば光るかも」

報瀬「どうしたの、結月……?」

結月「……あ、いえなんでもありません」


……




マリ「広島の人って赤が好きなのかな」

報瀬「どうして?」

マリ「ほら、コンビニとかお店を赤色にしたところが多いでしょ?」

日向「野球ファンが多いんだろ」

結月「回廊も赤でしたからね」

みこと「……」

日向「それは関係ないだろ、ってゆづに突っ込むところだぞ」

みこと「……っ」

報瀬「困ってるでしょ」

結月「き、キマリさんが回廊出た後にあんなこと言うからです!」


……


83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/06(月) 23:38:30.11 ID:nLWK+N10o

―― 広島駅


マリ「弥山と屋久島ってどっちが凄いの?」

報瀬「どっちも」

日向「ちょっと小腹が空いたな〜」

結月「それでは、私は列車に戻りますね」

マリ「えっ、もう?」

結月「そろそろ戻らなくてはいけませんから」

マリ「え〜、残念〜」

日向「まぁ、次の都市でも一緒に周れるさ。そうだろ、ゆづ?」

結月「そうですよ……」

日向「さーて、私らはこれからお好み焼きパーティだっぜ♪」

結月「強く殴りますよ」

日向「まぁ、怖い」

報瀬「一言も話してないけど、大丈夫?」

みこと「……」コクリ

報瀬「……」

結月「あ、そうだ……。キマリさん、この子、預かっていいですか?」

マリ「え、みこっちゃん?」

みこと「……?」

マリ「うん、いいよー」

みこと「!?」

日向「おい、本人の意思を無視するな。どうしてだ、ゆづ?」

結月「この子、化けるかもしれません」

マリ「……」スッ

報瀬「宙を見て、どうしたの?」

日向「ひょっとして、月を探してるのか?」

マリ「うん……みこっちゃんはオオカミ娘だったのかー」

日向「どうなるか楽しみだな、好きにしていいぞー」

結月「それではまた後で。それじゃ、行くよ」グイッ

みこと「ちょっ……まっ」

報瀬「あ、喋った」

マリ「ふぇぇぇ……無視しないでぇ」


……


84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/06(月) 23:47:27.04 ID:nLWK+N10o

―― 広島駅・駐車場


結月「あのぉ、さくらさん……居ますか?」


スタッフ「さくらさんなら、あの車だよ」


結月「そうですか、ありがとうございます」

みこと「……っ」

結月「こっちに来て」

スタスタスタ


みこと「な…なんで……」

結月「さくらさーん」


さくら「あら、結月ちゃん、それじゃ本番前にメイクしちゃうわね」


みこと「っ!?」

結月「いえ、それはまだ後で」

さくら「あら、それならなにか別用?」

結月「この子なんですけど、見て欲しいんです」

さくら「?」

結月「髪の量を減らして――」

さくら「何が言いたいか分かっちゃった。ふふ、腕が鳴るわぁ」

みこと「……ッ!?」

結月「よろしくお願いしますね」

みこと「!?!??」

さくら「うふふ、さぁ、こっちへいらっしゃい〜♪」

結月「それじゃ、リハーサル終わったら戻って来るから」

みこと「ま…待って……行かないで……結月さん……っ」

結月「安心して、さくらさん、心は乙女だから」

テッテッテ



さくら「要望があったら聞くわよぉ? うふっ」

みこと「――」


……


85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/06(月) 23:54:12.11 ID:nLWK+N10o

結月「さくらさん、どうですかー?」

さくら「あら、戻ってきたわね」

結月「滞りなくリハは終わりま――」


みこと「……」


結月「……さすがですね、さくらさん」

さくら「私じゃないわよ。この子のルックスがあってこそよ」

みこと「……なんだか……落ち着かない」

結月「みことの両親は……」

みこと「……?」

結月「あ、いえ……なんでも」

さくら「次は結月ちゃんね、時間もないでしょ」

結月「その前に……。あの……その……」

みこと「?」

結月「その……勝手に……髪を切らせちゃって……。
    リハの途中で悪いことしたって気づいて……」

みこと「……さくらさん……聞いてくれたから」

結月「え?」

みこと「切ってもいいのか……って」

結月「……」

さくら「私とこの子の同意の許で切ったのだから、気にしなくてもいいのよ」

結月「……はい。……でも、ごめんなさい」

みこと「……ううん」


結月「……」

みこと「……」


さくら「さ、結月ちゃんはこっち」

結月「は、はい」


みこと「……」


……


86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/06(月) 23:58:28.25 ID:nLWK+N10o

―― デネブ


みこと「……ん……やっぱり……」


秋槻「……あ」


みこと「……?」

秋槻「あ、いや……知り合いに似て……」

みこと「秋槻さん……今から……観光……?」

秋槻「なんだ、本人か……。また知らない子に声かけて不審者扱いされるかと……」

みこと「?」

秋槻「なんでもない。……雰囲気変わったね」

みこと「大人っぽく見えますか?」

秋槻「……え?」

みこと「17くらいに……見えますか……?」

秋槻「ど、どうだろうね」

みこと「……そうですか」

秋槻「大人っぽく見えるかどうかは分からないけど……似合ってるよ」

みこと「……」

秋槻「そう見られたいから、そうしたの?」

みこと「……ううん」

秋槻「それじゃ、どうして?」

みこと「自分が嫌だったから」

秋槻「……」

みこと「キマリさんの……友達が……来て……それで」

秋槻「展望車に移動しようか。今は人いないだろうから」

みこと「……うん」


……


87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/06(月) 23:59:56.80 ID:nLWK+N10o

―― 展望車


秋槻「自分を変えるために――……か」

みこと「……」

秋槻「君の決心を否定したいわけじゃないけど」

みこと「……っ」

秋槻「ゆっくりでいいと思うけどな」

みこと「でも……」

秋槻「デネブの運行は15日……。この2週間はきっと短い」

みこと「…………」

秋槻「その途中で彼女たちは降りていくから、焦るかもしれないけど……。
   その中で得たものは一生残るよ。それを焦って見落したらもったいない」

みこと「……」

秋槻「それに、あの二人は君の良さを知ってるから、それを大事にした方がいいと俺は思う」

みこと「……良さ? ……私に?」

秋槻「俺が酒に酔ってるとき、水をくれたでしょ。そういう気遣い、心配り。
   そういうことを自然と出来るってのは紛れもなく良いところだよ」

みこと「……」

秋槻「なんて、ごめん……説教臭かったな」

みこと「……」

秋槻「俺も協力するからさ」

みこと「……?」

秋槻「だから、君も協力して」

みこと「協力……?」

秋槻「いい旅になれるように、協力」

みこと「――……うん」

秋槻「よかった」

みこと「……」

秋槻「ところで、一人で戻ってきたの?」

みこと「……ううん。結月さんと」

秋槻「そうか……3人目が彼女だったな……」

みこと「……」ソワソワ

秋槻「それじゃ、話は終わりだね」

みこと「う、うん……それじゃ」スクッ

秋槻「……」

みこと「あ、ありがとうございました」ペコリ

秋槻「え……?」

みこと「……また」

テッテッテ


秋槻「……」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/07(火) 00:02:01.02 ID:pNg+A1G5o

秋槻「……ふぅ」


車掌「どうかされましたか?」

秋槻「……いえ。……アドバイスになれたかなって」

車掌「気持ちは伝わったと思いますよ」

秋槻「……そうですかね。……なんだか、彼女の気持ちも否定しちゃったし」

車掌「まるで経験があるような言い方でしたね」

秋槻「分かりますか? 
   俺もあの子くらいの歳に思い切ったんですよね。髪を染めたりして」

車掌「まぁ」

秋槻「だから、ちょっと心配だったんですよ」

車掌「この旅は一人ではありませんから。きっと大丈夫ですよ」

秋槻「そうですね」

車掌「立ち聞きしてしまって申し訳ありませんでした」

秋槻「いえいえ! 
    俺も、正しいことなんて言えないですから。聞いてくれて助かります」

車掌「そう言っていただけると」

秋槻「大人になったから言えますけど……、あの子たちが羨ましいです」

車掌「……」

秋槻「デネブが走り続ける限り、日常を越えていられるんですから」

車掌「ふふ、嬉しい限りです」



……



89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/07(火) 00:03:55.95 ID:pNg+A1G5o

―― 広島駅


報瀬「また戻ってきたけど……なにかあるの?」

日向「もうちょっと歩き回りたいんだけど〜、キマリ〜」

マリ「だって、みこっちゃんが心配で……」

日向「その割に、ゆっくりお好み焼き食べてたな」

マリ「美味しかったからね!」

報瀬「あの子って、無理して一緒に居るんじゃない?」

マリ「そうかな?」

報瀬「だって、あまり喋らないから」

日向「私も最初はそう思った」

報瀬「そうじゃないの?」

日向「無理してるかどうかは分からないけど、嫌だとは思ってないだろう、と思う」

報瀬「どうして?」

マリ「小さいところで私たちを気遣ってくれるんだよ。なんだかんだで一緒に居てくれるし」

日向「嫌だと思ってたらそういうことしないだろ?」

報瀬「……うん」

マリ「あれ、向こうに人だかりが出来てる……なんだろ?」


ざわざわ……

 ざわざわ……


報瀬「テレビでも来て……あ」

日向「ゆづの撮影だな」

マリ「あれ……? あれって……」


みこと「あ……」


マリ「違った……。みこっちゃんに似てるから間違えたよ」

日向「おい……」

報瀬「服を見て、服を……」


みこと「……っ」


マリ「みこっちゃん!?」

日向「ゆづが連れて行った理由はこれか〜」

報瀬「前髪切ったんだ……表情が見えると違うね」

日向「おぉ、顔が見えると雰囲気も変わるなぁ……」

みこと「……」

マリ「でも、みこっちゃんはみこっちゃんだよ」

日向「したり顔で言ってるけど、間違えたよな?」

報瀬「キマリは本当に……」

マリ「ほ、本当になに……?」
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/07(火) 00:06:29.07 ID:pNg+A1G5o

報瀬「……」

マリ「続き言ってくれないとどんどん傷ついていくよ……」シクシク

みこと「……結月さんに……お礼……言いたかったけど……」

マリ「あとで言えばいいよ」


一輝「……ちっ」


日向「お、どうした少年? 舌打ちなんかして」

一輝「駅に入れないだろ……邪魔だなアレ……」

マリ「あっちから迂回していけば入れるよ」

一輝「なんで俺が……」ブツブツ

スタスタスタ...


マリ「なんか機嫌悪いね」

日向「不良っぽいよな、アイツ」

みこと「……」

報瀬「今の人も知り合い?」

マリ「うーん……旅仲間?」

日向「仲良くはないけどな」

みこと「……ならなくていいよ」

マリ「そういうこと言わないの。ちゃんと仲良くしなきゃいけんばい」

日向「親か! そしていきなり広島弁!」

みこと「あ……」

報瀬「?」


さくら「私、こういう者です」

秋槻「はぁ……スタイリスト……ですか」

さくら「うふっ、いい男☆」ウィンク

秋槻「う……ッ」ゾクッ

さくら「この後、時間は空いていますか?」モジモジ

秋槻「忙しいので失礼します!」ダッ

タッタッタ

さくら「お待ちになってぇ〜ん!」

ダダダダッ


みこと「……」

日向「なんだ、今の?」

マリ「お兄さん、青ざめてたけど……どうしたんだろ」

報瀬「……」


……


91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/07(火) 00:11:08.80 ID:pNg+A1G5o

―― 温泉


マリ日向「「 ふぅ〜、極楽極楽 」」

報瀬「おじさんみたい」

日向「旅の疲れを癒すにはやっぱりこれだなぁ。熱燗できゅっといきたいねぇ」

マリ「風呂上がりにきゅっとねぇ」

みこと「……」

報瀬「お酒は駄目でしょ」

日向「報瀬がおじさんみたいって言うからだろ。やらざるを得ないじゃないか」

報瀬「なによそれ」

マリ「ふぃ〜〜」

みこと「結月さんも……一緒ならよかったのに」

マリ「しょうがないよ〜。有名人だから〜」

日向「そうだぞ。だから、帰ったらどれだけ良かったか伝えてあげるんだ」

みこと「……うん」

報瀬「騙されないで。結月が悔しがるの見て笑う気だから」

日向「うひひ」

みこと「……」

日向「今度は個室……というか、貸し切りのとこで、ゆづも一緒にのんびりしようじゃないか」

みこと「……うん」

マリ「日帰りで温泉っていいよね」

報瀬「うん……。でも、列車に戻るのに日帰りって……変な感じ」

日向「あー、確かに」

マリ「あ、そうだ。明日どうしよっか、日向ちゃん」

日向「なにが?」

マリ「走るの」

報瀬「ここでも走ってるの?」

日向「知らない所を走るの面白いんだよ。朝の時間とか特にさ」

マリ「これから日常が始まるんだって空気がいいよね」

日向「な!」

みこと「……」

報瀬「それで、なにが気になってるの、キマリ」

マリ「デネブちゃん、明日の朝に出発でしょ」

日向「7時出発だって」

マリ「うーん……じゃあそんなに走れないね」

日向「そうだな。30分くらい走って戻ろう。乗り遅れたら大変だ」

マリ「分かった。報瀬ちゃんはどうする?」

報瀬「列車に慣れてないから……いい」

マリ「おっけー。みこっちゃんどうする?」

みこと「……え?」
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/07(火) 00:12:52.30 ID:pNg+A1G5o

日向「走らせる気か?」

マリ「聞いてみただけ。無理強いはしないけど、一緒にどう?」

みこと「……」

マリ「さっきも言ったけど、結構楽しいよ。走ろうよ、ね?」

報瀬「無理強いしてるから」

日向「みことは部活とか入ってるのか?」

みこと「うん……文化部」

マリ「図書部だ。壁際の席で佇んでいる姿が見えたね、私には」

みこと「ううん」フルフル

日向「どうして見えたんですかね?」

報瀬「妄想でしょ」

マリ「じゃあ吹奏楽部だ。コンクール目指してトランペット吹いてる姿が見えるね」

みこと「ううん」フルフル

日向「じゃあ、文芸部」

みこと「うん」

マリ「やっぱりね」

報瀬「なにがやっぱりね、なんだか」

日向「小説書いてんの?」

みこと「……うん」

日向「読ませて♪」

みこと「だ、ダメ」

日向「いいじゃないか! 人に読ませることで登場人物たちが活躍できるんだぞ!」

報瀬「じゃあ、運動は得意じゃない?」

みこと「……うん」

マリ「どうしたの?」

みこと「お父さんとお母さん、運動得意な方だから……どうして私は出来ないのかな……って」

マリ「運動音痴なんだ」

みこと「……うん」

日向「安心するがよい。ゆづもキマリも運動音痴なのだから」

みこと「……そうだんだ」ホッ

マリ「なんでホッとしたの?」

報瀬「まぁ、二人は出来なさそうではある」


……


93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/07(火) 00:14:35.79 ID:pNg+A1G5o

―― デネブ・マリの個室


コンコン


マリ「ん?」


「キマリさん、私です」


マリ「結月ちゃん?」

ガチャ


結月「遅くにすいません。話があるので、失礼してもいいですか?」

マリ「うん、いいよ。どうぞどうぞ」

結月「……」

テクテク

マリ「勉強してたところだけど、大丈夫だよ。勉強の息抜きにちょうど良かったよ」

結月「……ふむ」

マリ「やっぱり勉強するのに体力は必要だね。たくさん勉強したからクタクタだよ」

結月「聞いてもいないのに勉強勉強……なるほど」

マリ「どうしたのかな? 勉強中だけど、話を聞くくらいの時間はあるよ」

結月「……この参考書で勉強してたんですよね」

マリ「そ、そうだよ」

結月「……」パシャッ

マリ「? なんで写真撮ったの?」

結月「リンに送るためです」

マリ「え?」

結月「頼まれたんですよ。勉強の内容を調べて欲しいって」ピッピッピ

マリ「やめて!」

結月「送りました」

マリ「……」


マリ「…………」


pipipi


マリ「ぎくっ」

結月「……」

マリ「うぅ……」ポチポチ


『南極北極だけじゃなく、数学日本史古文英語もね(笑顔のマーク)』


マリ「はやい……早すぎる……お母さんに伝わるの早すぎるっ!!」

結月「心中お察しします」

マリ「気力が無くなった……」ガクッ

結月「……」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/07(火) 00:17:34.70 ID:pNg+A1G5o

マリ「いいもんいいもん、報瀬ちゃんだけだもん。
   勉強勉強言わないの……私の味方は報瀬ちゃんだけだもん」

結月「そんなことよりですね」

マリ「そんなこと?! 私を追い込んだの結月ちゃんだよ!」

結月「みことのことなんですけど」

マリ「え? みこっちゃん?」

結月「私の勝手で、髪を切ってしまったんですよ……」

マリ「あぁ、うん。聞いてるよ」

結月「それで……なにか……変化というか……」

マリ「ううん、特に変化はなかったよ。昨日と同じみこっちゃんだった」

結月「……そうですか」

マリ「気にしてたんだ」

結月「……まぁ、はい……そうです」

マリ「外見が変わっただけで、中身は簡単に変わらないよ」

結月「……意外と、そうでもないんですよね」

マリ「?」

結月「自分の容姿が変われば……自分が特別だと気付いたら……
   中身が変わる人……居るんですよね」

マリ「そうなの?」

結月「……あ、いえいえ、なんでもありません!」

マリ「???」

結月「み、みことのご両親って……なんていうか……格好いい、綺麗って感じがしますよね!」

マリ「あぁ、分かる分かる。みこっちゃん、可愛いっていうか、美人系だよね。もちろん可愛いけど」

結月「ですよね!」

マリ「お母さん似かもしれないね。言ってたよ、髪の量が多いのお母さんも一緒だって」

結月「……そうですか」

マリ「私も母親似って言われる」

結月「でしょうね」

マリ「リンと連絡取ってるんだね?」

結月「私たちが南極に行ってる間、連絡取りあってたみたいですから。
   うちの母とキマリさんのお母さん……。そこから繋がったんですよね」

マリ「そっかそっか」

結月「キマリさん、覚えてますか、夏の始まりに連絡した時のこと」

マリ「?」

結月「ほら、『また、旅に出ませんか?』って私が聞いた時です」

マリ「うん、覚えてるよ。デネブちゃんのこと聞いたんだよね」

結月「少し説明したんですよね」

マリ「うん、『超特急デネブ?』って聞いてね」

結月「私が『そうです』って言っただけで、『乗りたい!』って」

マリ「列車の旅ってしたことなかったから、すごくワクワクしたんだ」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/07(火) 00:19:35.05 ID:pNg+A1G5o

結月「それで……どうですか、2日過ぎましたけど」

マリ「すっごく楽しい!」

結月「……そうですか」

マリ「明日から楽しみ。だって、また4人になったでしょ、それに――」

結月「それに……?」

マリ「みこっちゃん、お兄さん、大村君」

結月「?」

マリ「まだ知らない誰かに会えるかもしれない。だから楽しみ!」

結月「――……」

マリ「これからが本番って感じだね」

結月「今まで助走だったわけですね」

マリ「そうだけど、そうじゃない。デネブちゃんと一緒に走ってきたから」

結月「難しいこと言いますね」

マリ「そうかな」

結月「まぁ、いいです。それより、明日からの仕事よろしくお願いしますね」

マリ「うん!」

結月「報瀬さんにはまだ伝えてないんですよね」

マリ「日向ちゃんが『黙っていた方がいい』って」

結月「私もそれは同意です」

マリ「なんで?」

結月「必ず断るからです」

マリ「……そうなんだ」

結月「それでは、私は個室に戻りますね」

マリ「もう話、終わり?」

結月「勉強の邪魔をしてはいけませんから」

マリ「……いいんだよ? もっと話しようよ」

結月「明日、私も一緒しますから、寝坊しないでくださいね」

マリ「……ふぁい」


結月「それでは、おやすみなさい」

ガチャ


マリ「うん、おやすみ〜」


バタン

マリ「……今日はもう寝よう」

pipipi

マリ「ん?」


『お姉ちゃん、勉強頑張ってね!』


マリ「ふぇぇぇ、寝ようとしたのバレてるぅ」


……


96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:28:58.84 ID:BmPgE/vWo

―― 8月4日


日向「ゴォール! 日向選手一着です! おめでとー! ありがとー!!」

報瀬「朝から元気ね」

マリ「はぁ……ふぅ……」

結月「ふぅ……ふぅぅ……」

日向「ほら、人があまりいないうちにストレッチしておくぞー」

報瀬「そうね……。人の目があると嫌だから」

マリ「まだ出発まで1時間あるから平気だよぉ」

結月「いえ、早めに戻りましょう」

日向「そうだな。ゆづが乗り遅れたら面白――……大変だからな」

結月「期待には応えませんので」

マリ「ふぁぁ……昨日も遅くまで勉強してて眠いよぉ……」

報瀬「確かに、知らない街を走るって面白いね」

日向「私たちの知らない場所で、知ることのない一日が始まる……なんか不思議な感覚だ」

結月「イッチニ、サンシー」

マリ「朝にはランニング、昼には目的地へ疾走、
   夜には勉強のリレー。充実した一日だね」

報瀬「勉強のリレーって?」

日向「触れてやるな。やたらと勉強してますアピールしてるから、
   感心して欲しいだけなんだよ」

結月「報瀬さん、車掌さんに挨拶しましたか?」

報瀬「うん、一応……」

結月「……そうですか」

日向「してないのか?」

結月「手続きをしただけっていうか……」

マリ「結構お世話になるから、ちゃんとしておこう!」

結月「そうですね。シャワー浴びたら行ってきます」

報瀬「それじゃあ、私も」

マリ「行こう行こう」

日向「キマリー、ちゃんと体ほぐしておかないと疲れが残るぞー」

マリ「もうちょっとやったほうがいい?」

日向「うん。距離は短めだからといって、甘く見ないこと」

マリ「わかった!」

報瀬「駅員さんにこれ、見せなきゃいけないんだよね」

日向「そうそう。バッチを見せないとデネブに戻れないからな」

結月「可愛いですね、これ」


……


97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:30:42.28 ID:BmPgE/vWo

―― デネブ


報瀬「改めて、これからよろしくお願いします」

結月「よろしくお願いします」

車掌「はい、こちらこそよろしくお願いします」

結月「忙しいところ申し訳ありませんでした」

車掌「お気になさらず。それでは、列車の旅をお楽しみください。私はこれで失礼します」

スタスタスタ...

報瀬「出発してからの方が良かったかな……」

結月「そうですね……。でも、気にしなくてもいいって言ってくれましたから」

報瀬「……うん」

結月「綺麗な人ですね」

報瀬「うん」


……




報瀬「キマリが居ない……?」

日向「個室にも、どの車両にもいない」

結月「そのうち、ひょっこり現れるでしょう」

日向「そうだといいんだけど……いやーな予感がしてなぁ……」

報瀬「みことと一緒にいるんじゃない?」

日向「いや……それが……」

結月「あ、来ましたよ」


みこと「……」


報瀬「あれ、一人?」

日向「その様子だと居ないみたいだな……」

みこと「うん、いない……」

結月「えぇ……、出発まであと10分もありませんよ?」

報瀬「さ、探す?」

日向「ミイラ取りがミイラになりかねん……!」

みこと「……改札まで見てくる」

タッタッタ

結月「あっ、みこと!」

日向「私も見てくるから、二人は待ってて!」

タッタッタ

報瀬「……」

結月「なんか、緊迫してきましたね……」ハラハラ


……


98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:32:16.26 ID:BmPgE/vWo

―― 改札口


マリ「えー、えーっと……原爆ドームはどこだろ……」

外国人「hmm...」

マリ「広島電鉄……に乗ればいいんだよね……」

外国人「ヒロシマデンテツ?」

マリ「イエスイエス! ……多分」

秋槻「……どうしたの?」

マリ「あ、お兄さん……この人に原爆ドームの行き方を教えてたんだけど……」

外国人「Please tell me how to get to that Atomic bomb dome.」

秋槻「ふむ……。そうだ、観光ガイドじゃなくて、案内図で教えてあげたら分かりやすいんじゃない?」

マリ「あ、そっか……!」

外国人「?」

秋槻「俺が案内するから、君は戻って」

マリ「え、でも……」

秋槻「時間、無いよ」

マリ「あ、本当だ……!」

外国人「……」

秋槻「えーっと……Please come over here.」

外国人「Cheers!」

マリ「うー……ごめんなさい! アイムソーソーリー!!」

タッタッタ


「キマリ―!!」


マリ「あ、日向ちゃん!」


「なにしてんだよ! 急げ―!!」


マリ「うん!」

タッタッタ

「わぁ、やばいやばい!!」

タッタッタ


日向「なんか、並走してくる人がいるぞ」

みこと「……うん」


マリ「ひぃひぃ……!」

タッタッタ

「ぎゃー! 荷物が重ーい!!」

タッタッタ
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:34:10.21 ID:BmPgE/vWo

マリ「ん、んん?」

タッタッタ

「振ーりー回ーさーれーる―!」

フラフラ

マリ「デネブちゃんに乗るの!?」

「そうだけどー!?」

マリ「貸して!」

「え!?」

マリ「私も乗るから! 手伝ってあげる!!」

「任した!!」

マリ「よし! って、重ッ!?」ズシィ

「よっしゃー! 急げ―!!」

タッタッタ

マリ「振ーりー回ーさーれーる―!」

フラフラ

みこと「手伝う……!」

マリ「お願い!」

みこと「うぅ……」

マリ「ぐぬぅ……」

フラフラ

日向「そんな重いのか!?」

みこと「お、重たい……!」

マリ「な、なにが入ってるのこの鞄……!」

日向「私も持つ……! けど、掴むところがないから、みこと交代だ!」

みこと「う、うん!」

マリ「あ、楽になった! 日向ちゃんアマゾネスだ!」

日向「あとで軽く殴りますね!」

マリ「こんな時に結月ちゃんの真似するなんて……!」

日向「いいから走れー!!」

マリ「よっしゃぁぁ!!」

タッタッタ

みこと「……っ」

タッタッタ


「ほらー、急いで急いで! 乗り遅れるよー!!」


日向「誰の鞄のせいだー!?」


「あはは」


日向「あははじゃない!!」
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:37:12.85 ID:BmPgE/vWo

マリ「ひぃ、ひぃぃ……危なかった」

みこと「ふぅっ……ふぅ」

「ありがとね、3人とも、手伝ってくれて」

日向「いいけど……なにが入ってるの、これ」

「鉄アレイでしょ、砂袋でしょ……」

マリ「えぇー……」

みこと「……」

日向「そんな荷物ここに置いてけー!」

「ウソウソ、冗談だって」

報瀬「なにしてるの、早く乗って」

結月「遊んでる場合ですか」

「あ、テレビで見たことある! 車掌服カワイイー!!」

日向「いいから早く乗れ!!」グイッ

「おぉっと!」

マリ「……」

みこと「キマリさん?」

マリ「どーしよー……」

みこと「?」

マリ「お兄さんが……まだ来ない……」ウルウル

prrrrrrrrr


「ふぅ、一時はどうなることかと……良かった良かった」

結月「誰なんですか、この人」

「君の運命の相手さ」キラン

結月「……」

報瀬「ちょ、ちょっと狭いから……」

日向「客車移動するぞー」

「そうだね、ゆっくりと先のことを話そう。さ、行くよお姫様」

結月「……」

みこと「あ……!」

マリ「お兄さん……!」

日向「……?」

プシュー

マリ「ああぁあぁぁぁぁ!!」

みこと「…………」

ガタン

 ゴトン


マリ「どどどどどうしよう!! 乗り遅れちゃった!!」

みこと「……そんな」

日向「……」


……

101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:38:25.06 ID:BmPgE/vWo

―― 車掌室


日向「この人のせいで秋槻さんが乗り遅れました」

「よく分かりませんが、そうらしいです……すいません」

車掌「そうですか……」

マリ「ち、違うよ、私が困ってたから助けてくれて……」

日向「あ、そうなの? 間違えたよ、あはは」

「あははじゃないでしょ!?」

車掌「……」

「漫才やってる場合じゃないって。えっと……私、鳥羽栞奈って言います」

車掌「……」

日向「かんな……栞奈ね」

マリ「栞奈ちゃん歳いくつ?」

栞奈「高校三年生、17歳なのだよ」

日向「私たちと一緒だな」

栞奈「そうなんだ。これからよろしく〜」

マリ「よろしく〜」

車掌「……」

栞奈「えっとぉ……車掌さん?」

車掌「……失礼しました。それでは、乗車券を」

栞奈「はい、どうぞ」

日向「なんで改札に居たんだよ。あんな時間に」

マリ「始まりだな……って思って……改めて駅を見ておこうと思ってたから……」


……


102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:40:16.72 ID:BmPgE/vWo

―― 展望車


日向「それでは、ミーティングを始めます」

結月「よろしくお願いします」

報瀬「なんのミーティング?」

日向「話を始める前に、キマリ」

マリ「え……?」

日向「秋槻さんは次の大阪まで追いかけるって連絡があったんだから」

マリ「そうだけど……」

日向「下を向くな、前を見ろ! 私たちは進み続けるしかないんだからな!」

マリ「……そうだね……ごちそうになれなかったし」

日向「その仕打ちにしては酷いな」

マリ「ち、違うよ! 前向きになろうとして言っただけだから」

結月「誰なんですか? 昨日も聞きましたけど」

日向「始発から乗車した仲だな」

マリ「うん、あとでちゃんと謝ろう! プリンシェイクをお詫びに!」

日向「……」

報瀬「……日向?」

日向「え? なに?」

報瀬「急に静かになったから」

日向「……歩いてたな……と思ってさ」

報瀬「歩いて……?」

日向「いや、なんでもない。それじゃ、話を始める!」

報瀬「議題は?」

マリ「大阪の名物とはなにか、これしかないよね」

結月「それじゃありません」

報瀬「……?」

日向「まず初めに、私たちがデネブに乗った理由を聞かせてもらおう」

報瀬「キマリが商店街の福引で特賞を当てたからでしょ」

結月「そういうことにしたんですか」

マリ「うん」

報瀬「違うの?」

日向「よーく考えて欲しい、報瀬」

報瀬「?」

日向「私たちの町にだ、プレミアが付いたこの豪華列車の乗車券を、
   それも4枚も用意できるのかどうか」

報瀬「出来てるから、乗っているんでしょ?」

日向「報瀬、キマリを信じるその心はとても美しいよ」

マリ「……良心が痛むね」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:42:31.25 ID:BmPgE/vWo

結月「嘘なんですよ、それ」

報瀬「ウソ?」

日向「実は……ゆづの事務所が用意したんだ」

報瀬「ふぅん……」

結月「……」

報瀬「ん?」

マリ「……」

報瀬「ちょっと待って、嫌な予感がする……」

日向「そして、このカメラ!!」ドン

報瀬「あの時のカメラ……?」

日向「そう、あの時のカメラである」

報瀬「まさか……!」

日向「……」

報瀬「嫌だ! 降りる!!」

マリ「まだ詳しく説明してないのに!?」

報瀬「いーやーだー!!」

結月「ネット配信された南極での動画ですが、南極を紹介しているより、
   普段の私たちの会話を撮影した動画の方が再生数多いんですよね」

報瀬「なにそれ、聞いてない!」

日向「言ってないからな」

報瀬「ちょちょ、著しゃく権侵害だから!」

結月「どちらかというと、肖像権……ですね」

報瀬「いつ撮ってたの!?」

マリ「私が……撮ってたんだけど……そのまま置いて忘れてた映像があったの」

報瀬「なんでそんな酷いことするの!?」

マリ「だ、だから忘れてたんだよ……」

報瀬「ぐすっ……信じてたのに……キマリ……」シクシク

マリ「うっ……」グサッ

日向「いや、傷つく必要ないぞキマリ」

結月「そうですよ、黙ってたのは悪かったですけど……。
   プライベートな部分はカットしてますし、なにより好評でしたから」

報瀬「結果が良ければ過程はどうでもいいの?」

結月「うっ……」グサッ

日向「ゆづまでやられたか……仕方ない、私が説得するしかない」

報瀬「こんなの横暴よ、勝手すぎる! 私は断固として抗議するから!」

日向「お嬢さん、そんなこと言っていいんですか?」

報瀬「なによ、いいに決まってるでしょ」

日向「契約書、サインしましたよね」

報瀬「……!」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:45:36.51 ID:BmPgE/vWo

日向「お祖母ちゃんと一緒に、あなた……ちゃんと読みましたよね?」

報瀬「そ、それは……! というか、なによそのキャラ」

日向「ゆづの事務所がやったことぁ……法に触れてませんのですぜ?」

報瀬「人道に反する! 許されることじゃない!」

日向「なんか主張が大きくなってる気がするな……」

報瀬「契約って言うなら、もう終わってることでしょ!?」

日向「デネブに乗ってるんだからそんなこと言ってもしょうがないだろ!?」

報瀬「だからそれが横暴だって言ってるの!」


栞奈「もぐもぐ」


日向「じゃあ、報瀬はこの企画に乗れないって言うんだな」

報瀬「そう言ってるでしょ」

日向「まぁ、降りろとは言わないだろう。ゆづの事務所は」

報瀬「……」


栞奈「もぐもぐ」

みこと「……」


日向「……だけどだ」

報瀬「……」


マリ「あ、おいしいね、これ」

栞奈「売店にあったんだよね。限定ポテチ」

みこと「……」



日向「だけど……だ」

報瀬「……だけど、なに?」


マリ「あとで買ってこよう」

栞奈「残念、最後の一つなんだなぁ」


日向「報瀬を説得してるんだから協力しろよキマリ!」

マリ「日向ちゃんに任せた!」

栞奈「食べる?」

結月「いえ、これから撮影がありますので」


日向「栞奈、報瀬の代わりにやるか?」

栞奈「うん、やるやる」

報瀬「……」

日向「いいんだな、報瀬」

報瀬「……ぅ」

日向「私たちが後で映像を観た時、そこに報瀬は居ない――」

報瀬「分かった! やる、やるから!!」

日向「じゃ、決定〜」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:48:41.27 ID:BmPgE/vWo

栞奈「あれ、私は?」

結月「無かったことにしてください」

栞奈「ひどい、利用するだけ利用して……簡単に捨てるのね……!」

日向「うん」

栞奈「人道に反する! 許されることじゃない! 徹底抗議よ!」

報瀬「ま、真似しないで……」


みこと「……」

マリ「みこっちゃんも食べる? 残り少ないから食べておいた方がいいよ」

みこと「……あの人、もう打ち解けてる」

マリ「栞奈ちゃん? ああいう性格なんだろうね。日向ちゃんと気が合うみたい」モグモグ


報瀬「日向、台本書いて」

日向「日常会話が必要だって言ってるんだから台本いらないだろ」

結月「そうですよ、無い方がいいです」

報瀬「台本のある日常があっていいと思う」

結月「嫌ですよ、そんな日常……」

栞奈「あーっ!? もう無くなってる!」

マリ「おいしくて、つい……てへ☆」

みこと「……」


一輝「なんか、うるさいな……増えてるし」


栞奈「てへ☆ じゃなーい! どうしてくれんの?」

マリ「ご、ごめんなさい。代わりに夜食用に買ったおやつを」

栞奈「何味?」

マリ「プリン味!」

栞奈「却下」

マリ「そんなー……」


一輝「あのさ、秋槻さん知らないか?」

日向「え……」

マリ「あ……」

一輝「え、なに?」

報瀬「……」

結月「……」

みこと「……」

一輝「なんで急に黙るんだよ……?」

日向「そうか……知らないのか……」

マリ「もう……居ないんだよ」

栞奈「なんの話?」

報瀬「さぁ……?」

結月「また悪ノリしてる風にも見えますね」

みこと「……」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:53:26.94 ID:BmPgE/vWo

一輝「降りた……ってことはないだろ……?」

日向「乗ってないことが事実なんだ」

一輝「……そうか。……ご馳走になったお礼をしたかったんだけど」

日向「なぁにぃ……?」

一輝「ん……?」

結月「?」

一輝「あ……! 白石結月……!?」

栞奈「お、ここで再会とは運命だね」

マリ「え、そうなの?」

結月「い、いえ……知らない……はず……」


報瀬「というか、誰なの?」

みこと「見ての通り、失礼な人です」

報瀬「……ふぅん」


一輝「い、いやテレビで見たことあるだけで……一方的に知ってるだけで」

結月「そうですか」

一輝「なんか、変なコスプレしてる人いるなと思ったら……」

結月「な……!?」

マリ「似合ってるよ、結月ちゃん」

結月「こ、コスプレ……! 確かにそうですけど……そうですけど……!」

日向「今、仕事の打ち合わせしてるんで、
   サインなら地球が砕け散ってからにしてくれませんか」

一輝「断ってるだろそれ」

栞奈「あはは!」

報瀬「仕事……」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:55:03.47 ID:BmPgE/vWo

一輝「……えっと……なんの話してたっけ」

みこと「秋槻さんのこと」

一輝「あ、そうそれ……。居ないならしょうがない……」

日向「むぅ……今度絶対にご馳走になっちゃる!」

一輝「今度って……降りてないんだな?」

マリ「うん」

一輝「紛らわしい言い方すんなよ……!」

スタスタスタ...


栞奈「怒らせたね」

みこと「……」

マリ「結月ちゃん、列車に乗ってるときはずっと車掌服?」

結月「いえ、違います。仕事がある時だけです」

日向「じゃあ、さっそく撮るか、練習がてら」

マリ「よし来た!」

みこと「居ないよ」

日向「……よーし、カメラ回したぞー」

栞奈「私はね、常日頃、宇宙について考えているんだよ」

日向「おい、カメラ回ったからって面白いこと言おうとするなー」

結月「居ないって誰が……」

マリ「あ……報瀬ちゃんが居ない!」

日向「逃げたか……」


……



108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:56:19.25 ID:BmPgE/vWo

―― 3号客車


報瀬「……信じられない……こんな罠があったなんて」


報瀬「ハッ!?」


報瀬「……」ササッ


......テッテッテ

「探せ探せー! 報瀬を見つけた者には金一封、キマリの財布から出るぞー!」

「よっしゃぁぁ!」

「わー! やめてやめてー!」


報瀬「……」コソコソ


結月「乗客のみなさんに迷惑ですから、静かにしてくださいー!」

みこと「……本当に車掌さんになってる」

テッテッテ......


報瀬「ふぅ……」

「うふふ、賑やかでいいわねぇ」

報瀬「あ、すいません……連れが騒がしくしてしまって」

「いいのよぉ、若い子はこれで」

報瀬「……」

「あなたは行かないの?」

報瀬「静かな方が好きなので」

「ふふ、そう」


みこと「……」


報瀬「ヒッ!?」ビクッ


みこと「私しかいないよ」


報瀬「なんだ……驚かさないでよ」

「はい、二人とも、これをどうぞ」

みこと「……?」

報瀬「みかん? ……あ、冷たい」

「さっき売り子さんから買ったの。でも、私ひとりじゃ食べきれなくて」

報瀬「ありがとうございます。いただきます」

「さ、あなたもどうぞ」

みこと「……ありがとうございます」
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:58:00.48 ID:BmPgE/vWo

報瀬「お婆ちゃんは、おひとりですか?」

「ううん、お爺さんと乗車したのよ。今は個室で休んでるわ」

みこと「……」

報瀬「お二人で旅行ですか……。仲がよろしいんですね」

「うふふ、子供たちから還暦のお祝いにって、プレゼントされたの」

みこと「――……」

報瀬「素敵なプレゼントですね」

「私たち、若い頃からずっと忙しくてね……。子供たちと一緒に居る時間は少なかったんだけど……」

みこと「……」

「元気でいてくれればそれでいいって思っていたんだけどね……。だから、とっても嬉しいわ」

報瀬「……」

「あら、ごめんなさい……。こんな話……」

報瀬「とても感謝していると思います。……私の親も……そうですから」

みこと「……」

「そうなの?」

報瀬「自分のやりたいことの為に、家を空けていることが多くて」

「あらあら」

報瀬「だけど、そんな母が今では好きだって思えます」

「そう……それはとても素敵なことだわ」

報瀬「そう思えるのも……友達のおか……げ――!?」

みこと「?」


日向「嬉しいこと言ってくれるじゃないか……」グスッ

結月「報瀬さぁん……」グスッ

マリ「うぅ……」グスッ

栞奈「私のことをそんな風に……」グスッ


報瀬「あなたは違うから! さっき会ったばかりでしょ!?」


栞奈「いやぁ、ここは感動しておこうと思って」

報瀬「変に空気読まないで!」


「いいお友達にめぐり会えたのね」

報瀬「は……はい……」カァァァ
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:59:26.96 ID:BmPgE/vWo

日向「お、顔が真っ赤ですなぁ」

結月「茶化さないでください、よけい照れるじゃないですか」

マリ「うぇぇぇん……報瀬ちゃぁぁん」


報瀬「トイレ! トイレ行ってくるから!」ガタッ


日向「おい! 花も恥じらう乙女が大声で言うことじゃないぞ!」


「お花摘んで来るからぁぁぁ!」

タッタッタ


栞奈「摘むっていうより毟ってきそうな勢いだねぇ」

日向「あはは! よし、追うぞー!」

結月「そこは放っておきましょうよ!」

マリ「そうだよ〜。追い打ち掛けちゃだめだよ」

みこと「……」

「あなた達から友愛の深さを感じるわ。
 ずっとそうであって欲しいって思ってしまうくらい」


マリ日向結月「「「 はいっ!! 」」」


みこと「…………」

栞奈「ちぇー……。ここで一緒に返事できないのが辛いとこだなー」


……


111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 13:01:27.30 ID:BmPgE/vWo

―― 展望車


結月「はい、ここが展望車です! 見てください、天井がガラス張りですよ!
   それに景色が広く見えるよう窓が大きく設計されています!」


ディレクター「今日の白石さん、ノリがいいねぇ」

さくら「なにか良いことあったのかしらぁ?」


日向「ゆづが仕事してるとこ見るの初めてだな」

マリ「そういえばそうだね」

報瀬「よくあんなカメラ向けられて平気でいられるよね……」

日向「はい、カメラ回った―!」

報瀬「……ッ!」シュッ

日向「消えた!? 忍者かよ!」

みこと「……こっち」

マリ「え? あ、椅子に隠れてた」

報瀬「なんでバラすの!?」


ディレクター「君たち、見学するなら静かにお願いね」

日向マリ報瀬「「「 すいません 」」」

みこと「……」


……


112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:15:55.45 ID:JIKGxwEno

―― 売店車


報瀬「わ、わー、売店があるー」

結月「なにか珍しいものありますか?」

報瀬「あー、これなんて珍しいんじゃないかなー、わーきれいー」

結月「……お菓子の包装紙がそんなに珍しいんですか。……それも、量産されてる商品」

報瀬「どんな味がするんだろー、わーきれいー」

結月「チョコ味です、書いてあるじゃないですか」

報瀬「あー、このキーホルダー、珍しー。わーきれいー」

結月「確かに珍しいですけど……。報瀬さんの目にはなんでも綺麗に映るんですね」

報瀬「うなぎのマスコットだー、わーかわいー」


店員「ナマズですよ」


報瀬「?」

結月「『なにが違うの?』って 顔しないでください」


一輝「……何やってんの? コント?」

日向「やっぱそう思うか……」

マリ「アドリブだよ」

一輝「え……!?」

みこと「台本通りにやってるみたい」

日向「だよなぁ……これじゃ本番なんて出来ない」

マリ「うん……」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:17:43.11 ID:JIKGxwEno

栞奈「そこで私の出番ですよ」

日向「いきなり出てきたな。……じゃ、やってみ?」

栞奈「よーし」

みこと「いいの?」

日向「報瀬の緊張を解くことができるかもしれない」

マリ「ものは試しだね」

一輝「……」


栞奈「へーい、そこのカワイイ彼女たちー、一緒にお茶しなーい?」

報瀬「……」

結月「……」

栞奈「あれ……!?」

日向「二人のテンション落としてどうすんだよ!?」

栞奈「じゃあ日向やってよ! 面白くできるんでしょ!?」

日向「嫌だよ、お前のせいでハードル上がってるだろ」


一輝「うるさいだけだな……。四バカ……」

スタスタスタ...

店員「いらっしゃいませ」

一輝「シャワー室空いてますか?」

店員「はい、空いてますよ」


マリ「あはは……四バカだって」

みこと「……」


……


114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:19:48.71 ID:JIKGxwEno

―― 展望車


みこと「さくらさん達、スタッフさんは個室ですか?」

さくら「違うのよぉ。各都市で宿とってあるからそこで泊まるの。
    都市間だけ乗車させてもらってるのよぉ」


報瀬「……みこと、よく話できるね」

結月「さくらさん、良い人ですよ。それより、四バカってなんです?」

日向「大村が言ってたんだよな」

マリ「うん」

日向「栞奈、報瀬、ゆづ、キマリの四人をバカって言ってるんだよ」

結月「えぇ?」

マリ「なんだってー!?」

報瀬「なんで私が!」

栞奈「私、テンション上がると自分でもよく分からないこと言っちゃうんだよね」

マリ「私じゃないよ、日向ちゃんだよ!」

日向「ちがーうだろ!?」

報瀬「栞奈、結月、キマリ、日向の四人でしょ」

マリ「なんでよ! 私、さっき大人しくしてたのに!」

日向「いやいやいや、報瀬はさっきのリハーサルで思いっきりバカやってたから」

結月「さくらさん、私たち四バカですって!」

さくら「あら、結月ちゃん嬉しそうねぇ」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:20:42.88 ID:JIKGxwEno

みこと「……栞奈さんと結月さんは決定?」

日向「あと報瀬もな!」

報瀬「おかしいでしょ!」

マリ「それはこっちのセリフだよ! 日向ちゃんも入れて四人、はい決定!」

栞奈「まぁまぁ、そんなことでケンカしないの」

日向「ほとんどおまえのせいだろ!」

マリ「そうだよ! なんでナンパしてるの!」

報瀬「そうだそうだ!」

結月「そうだそうだー」

栞奈「なにぃ、今度はこっちに集中砲火かよぉ」

みこと「……」


一輝「こっちでも騒いでるのか……。五バカだったな……」


日向「……」

報瀬「……」

結月「……」

栞奈「決定しちゃったね」

マリ「……うん」

みこと「……」


……


116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:28:17.05 ID:JIKGxwEno

―― 岡山駅


マリ「わっ、見て! 面白い噴水があるよ!」

日向「おぉー、変なの〜!」

報瀬「……うん、変」

結月「なんだか腹が立ちますね、あの人……人のことをバカって言うなんて」

みこと「うん……!」

マリ「みこっちゃんが力強く同意した……珍しい」

日向「まぁ、そんな怒ることじゃないだろ。気にするな」

報瀬「また言われたら?」

日向「この黄金の右手で日向ちゃんパンチをお見舞いしてやる!」

マリ「それよりどうするの? 全然撮影してないけど」

結月「そうですよ。今日の夜には方向性決めておかないと」

日向「そうは言ってもなぁ……。
   報瀬が普段通りに喋ってくれないと話にならないんだよなぁ」

報瀬「カメラを止めればいい」

日向「バカ」

報瀬「ば、バカにバカって言う方がバカなんです!」

結月「なんですでにテンパっているんですか……」

みこと「……」

マリ「みこっちゃん、いい案ない?」

みこと「……カメラを他に向けて喋るとか?」

日向「ん?」

報瀬「どういうこと?」

みこと「日常会話だけ撮りたいなら、映像に映ってなくてもいいから」

日向「あぁー、なるほど」

マリ「どういうこと?」

日向「報瀬にカメラを向けるとテンパるから、映さなければいいわけよ」

結月「……そうですね。好評だった動画は私たちの姿、映ってませんから」

報瀬「ラジオみたいにするってこと?」

みこと「そうすると、臨場感? がないから……映像は車窓を撮るだけで」

マリ「おぉー、いいねいいね! それならルックス関係ないし!」

日向「メガトンコークスクリューヘビースマッシュ日向ちゃんパーンチ!」

ドスッ

マリ「あ痛ぁッ!?」

結月「そういう番組、どこかで見たような……」

日向「要約すると、カメラは車窓を映して、私たちは勝手に喋ってるだけってことだ」

報瀬「……それなら」

マリ「やってみよう!」


pipipi

みこと「……?」

117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:34:31.66 ID:JIKGxwEno

日向「行き詰りそうだったところにいい案出したな」

マリ「みこっちゃん、私たちのディレクターに決定〜!」

結月「勝手に決めないでください。……でも、それもいいかもしれませんね」

報瀬「別の視点があって、助かるかも」

マリ「って、あれ?」

日向「向こうで電話してる」



みこと「うん、今岡山に着いたところだよ。……うん」


マリ「ほぉー……」

結月「どうしたんですか、変な声出して」

日向「……あんな表情のみこと、初めてみた」

報瀬「……」


みこと「……うん、変な噴水があって」


マリ「ふぅむ……誰なんだろ?」

結月「楽しそうな表情ですね」

日向「これは……ひょっとして」ゴクリ

報瀬「ひょっとして?」

日向「相手は……お、男……なんじゃなかろうか」

マリ「え!?」

結月「と、とということは……!」

報瀬「お父さん?」

日向「おバカ!」

マリ「かかかか、彼氏さん!?」

結月「……な、なるほど、あり得ますね……年頃ですから」

報瀬「まだ早いでしょ!」

日向「静かにしろー、大声出すなー」

報瀬「い、いやだって……まだ中三でしょ?」

マリ「真実の愛に、歳は関係ないんだよ」

結月「なにを急に悟っているんですか」

日向「なんか急に大人に見えるな……みことのヤツ……」

結月「私たちもそういう年頃なんですけどね……、一応」

報瀬「わ、私は……別に……ねぇ、キマリ?」

マリ「……なんで私に振るの?」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:36:42.19 ID:JIKGxwEno


みこと「……どうしたの?」

日向「い、いやぁ、別にぃ?」

報瀬「電話の相手、誰?」

日向「直球かよ!?」

マリ「私は分かってるからね。みこっちゃんのこと応援してる」

結月「母親ですか」

報瀬「わ、私はまだ早いと思う! り、理由があるなら今度連れてきなさい!」

日向「おとんか!」

みこと「お母さんを?」

日向「へ?」

マリ「ほへ?」

報瀬「電話の相手、お母さん?」

みこと「……うん」

マリ「……なんだ」

結月「そんなオチだろうと思いました」

みこと「?」

報瀬「ごめん。三バカが勝手に話をややこしくしてしまって」

日向「おぉい!」

マリ「報瀬ちゃんも動揺してたのに!」

結月「そうですよ、私たち四人で四バカじゃないですか!」

日向「誇って言うことじゃないぞ、ゆづ……」


……


119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:40:25.36 ID:JIKGxwEno

―― 1号客車


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


マリ「結月ちゃんと日向ちゃんは?」

報瀬「結月は撮影で、日向は見学してる」

マリ「向こうの撮影は順調みたいだね」

みこと「結月さんのノリがいいからスムーズに進むってスタッフさんが」

マリ「気合入ってるもんね」

報瀬「……気になってるんだけど、結月が仕事に乗り気なのって珍しいんじゃない?」

みこと「そうなの?」

マリ「うーん、どうなんだろ? いつも仕事に関してははプロ意識持ってやってるから」

報瀬「それはそうなんだけど……」

マリ「でも、日向ちゃんも似たようなこと言ってた。
   一日車掌ってアイドルがやることじゃないのかーって」

報瀬「アイドルがやるものとは決まってないと思うけど」

みこと「一日署長なら聞いたことある。警察とか」

マリ「んー……確かに」

報瀬「キマリ、何も聞いてないの?」

マリ「特には……」

みこと「旅の話を聞いたって、キマリさん言ってたよ」

報瀬「旅の話?」

マリ「あぁ……そうだった。それが理由なのかな?」

報瀬「誰から?」

マリ「分からない。『旅の話を聞いて、やってみたいと思ったんです』ってだけ」

みこと「結月さんがキマリさんを誘ったのは何時……?」

マリ「え?」

みこと「誘った時はまだ、一日車掌をすること決まってなかった……?」

マリ「うーん……?」

報瀬「みことは何が気になってるの?」

みこと「キマリさん達が乗車しなかったら……結月さん、この仕事引き受けなかったみたいに思えて」

マリ「あぁ……うん……んんー?」

報瀬「キマリは頭使わなくていいから」

マリ「みこっちゃん、難しいこと言わないでよ〜」

みこと「……」

報瀬「あとで本人に聞いてみたら?」

みこと「……うん、そうする」

報瀬「みことはどうして、デネブに乗車したの?」

みこと「お父さんとお母さんに勧められて……」

マリ「可愛い子には旅をさせよって言うもんね!」


……


120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:45:29.56 ID:JIKGxwEno

―― 寝台車


ディレクター「はい、オッケー」

結月「ありがとうございました」

「いえいえ、インタビューなんて初めてだから緊張したけど……うまく出来たかな?」

結月「全然問題ありません。ちゃんと受け答えしてくれましたから、話も進めやすかったです」

「そっか〜、よかった〜」

ディレクター「逆に結月ちゃんがフォローしてもらってる感じだったね」

結月「う……」

「あはは、そうなんだ〜。でも、ちゃんと出来てよかったよ〜。それじゃ、私はこれで」

ディレクター「ありがとうございました〜」

結月「ありがとうございました!」


日向「……」


ディレクター「それじゃ、休憩挟んであと一人撮ろう」

スタッフ「はい、わかりました。それでは10分休憩でーす」


日向「狭い中でよくやるなー」

結月「あの、日向さん」

日向「なに?」

結月「暇なんですか?」

日向「そうだけど」

結月「キマリさん達の所へ行ってください」

日向「邪魔だからどっか行けって言うのか! 横暴だ! こんなこと許され――」

結月「ジーっとみられると、なんだかやりづらいんですよ」

日向「最後まで言わせろー。なんだよ、やり辛いって?」

結月「いつもは茶化してるような目で見てるじゃないですか。なんで今は真面目に見てるんです?」

日向「茶化すような目ってなんだ」

結月「含み笑いしてるっていうか」

日向「日向ちゃんスマイルをニヤついてるって言うのか、失礼な……!」

結月「いいですから、気になってしょうがないんですよ」

日向「ディレクターさんにもダメ出しされてたくらいだもんなぁ」

結月「もぉー……!」

日向「あはは、ごめんごめん。ちょっと気になっててさ」

結月「なにがです?」

日向「ゆづ、この仕事に積極的だよなぁ、と思って」

結月「……」

日向「そのミニスカートだって、本当は嫌だろ?」

結月「うぅ……今だって恥ずかしくて死にそうです」

日向「……」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:48:21.21 ID:JIKGxwEno

結月「この仕事を引き受けるかどうか迷っているとき、旅の話を聞いたんですよ」

日向「誰に?」

結月「飯山みらいさんに、です」

日向「飯山みらい……? 旅とは縁のなさそうな人だけど?」

結月「日向さん達から見ると、そう見えるんですね」

日向「?」

結月「本人と直接話をしてみて、共演させてもらって思ったんです。
   見識がある、見聞が広いなぁって」

日向「……」

結月「それに、みらいさん、20年前に私と同じことしてたんですよ」

日向「同じこと?」

結月「20年前に、同じように発車した列車があって」

日向「ヴェガに乗ってたってことか?」

結月「え、……知っているんですか?」

日向「知ってる……。へぇ……ふぅん……」

結月「……どうしたんですか?」

日向「飯山みらいと話をして、迷いは無くなった?」

結月「そうです」

日向「キマリを誘ったのは、新しい旅を始めるため?」

結月「……そうです」

日向「キマリというか……私たちだな」

結月「わざわざ言い直さないでください……!」

日向「よしっ、車掌さんと話してくる!」

テッテッテ

結月「え……!? 見ていかないんですかー?」

「見られるの嫌なんだろー?」

結月「……それはそれで釈然としないっていうか」

さくら「あら、年相応にわがままなのねぇ。結月ちゃん」

結月「う……、居たんですか……聞かなかったことにしてくださぃ……」

さくら「うふっ☆」


……


122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:49:06.55 ID:JIKGxwEno

―― 動力車


栞奈「こんなとこで何してんのよー、純情少年」

一輝「別に、なにも」

栞奈「車掌さん美人だもんねぇ、うんうん、分かる分かる」

一輝「何が分かるんだよ」

栞奈「車掌さんに用事があるふりして、会いにきただけなんでしょ?」

一輝「なんでだよ……。こじつけ酷いぞ」


日向「なにしてるんだ、こんなとこで?」


一輝「変な女に絡まれててな……助けてくれ」

栞奈「失礼なヤツ!」

日向「車掌さんは?」

一輝「居ないけど」

栞奈「だから、ガッカリしてるの、この少年は」

日向「じゃ、反対側だな。サンキュー」

テッテッテ

一輝「あぁ……行ってしまった」

栞奈「あらら、もう目映りしちゃったのー?」

一輝「鬱陶しいなお前……!」


……


123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:53:43.40 ID:JIKGxwEno

―― 1号客車


マリ「それでね、出てきたのがザーサイだったの」

みこと「……!」

報瀬「そんなことってあるんだ……?」


日向「……」


マリ「あ、日向ちゃん」

日向「ザーサイがどうしたって?」

マリ「ううん、なんでもないよ」

みこと「……あり得ない」

報瀬「絶対にね」

日向「ザーサイがどうしたって!?」

マリ「大したことじゃないから気にしないで〜」

みこと「キマリさんだから経験できた?」

報瀬「そういう考えもある……かな」

日向「お願い! ザーサイがどうしたのか教えてくれー!」


……




―― 3号客車


日向「たくあんじゃなくて……ザーサイ……くっだらない……」

マリ「えー? 大したことじゃないって言ったのにー?」

日向「いや、あそこまで引っ張られたら気になるって……」

みこと「和食屋でザーサイだよ」

報瀬「中華屋じゃないんだから、それはおかしいでしょ」

みこと「うん」

日向「お前たち、世間知らずにもほどがあるぞ」

マリ「ところで、どうして車掌さんを探してるの?」

日向「聞きたいことがあってさ」


……


124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:55:40.67 ID:JIKGxwEno

―― 食堂車


日向「そういや、お腹空いたなー」

マリ「ちゃんとご飯食べてないよね」

みこと「食べる?」

報瀬「でも、もうすぐ大阪着くから」

日向「でもなぁ、食堂車のご飯も美味しいからなぁ」

マリ「どうしようか迷うね」

みこと「……」


店員「あのぉ、ちょっといいですか、玉木さん、三宅さん」


日向マリ「「 はい……? 」」

報瀬「?」

みこと「?」


店員「お願いと言いますか、やめてほしいことがありまして」

日向「……」

マリ「……」

報瀬「なにしたの、二人とも」

日向「な、なにしたっけ……?」

マリ「え、えっと……あれとか……これとか……」

みこと「思い当たる節あるんだよね」

店員「食器を片付けるのを止めていただきたいのです……」

報瀬「?」

日向「ダメでした?」

店員「私たちの仕事ですので……」

報瀬「そんなことしてたの?」

マリ「ついやっちゃうんだよね……。自分のことは自分でって感覚失くしたくなくて」

店員「えっと……しょ、少々お待ちください……!」

テッテッテ

報瀬「店側からしたら、困るかも。気持ちは分かるけど」

みこと「奥へ入っていったよ」

日向「ま、まさか……料理長呼びに行ったんじゃなかろうか」

マリ「ど、どうしよう? 逃げていいかな、日向ちゃん……?」

日向「私が行くから、キマリはここで待っててくれっ」ダッ

マリ「待ったぁー!」ガシッ

日向「嫌だっ、離せっ!」ジタバタ

マリ「私が先にっ」

日向「いいや私がっ」

ジタバタ

 ジタバタ
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:58:46.02 ID:JIKGxwEno

報瀬「誰か来たよ」

日向マリ「「 はっ!? 」」

「こっちとしては有難いことなんだけどさ、他のお客さんに影響与えちゃってるから」

日向マリ「「 はい、すいません 」」

「いや、謝ることじゃないんだけどね」

みこと「料理長さん?」

料理長「あぁ、ここを任されてるよ」

報瀬「暴れてた二人が大人しくなった」

料理長「自分のことは自分で、って気持ちはすごく大切だけど」

マリ「さっき言ってた影響って……どういう?」

料理長「他のお客さんたちも、ここはセルフでって間違えちゃってさ」

日向「……そういうことですか」

料理長「ふーむ、困ったね」

マリ「迷惑ですか?」

料理長「迷惑じゃない。君たちが間違えてるわけじゃないからね。
     ただ、他の人たちを戸惑わせていることが後々問題になりかねないから」

みこと「……」

料理長「もう一度言わせてもらうけど、私としては、下げ膳を止めて欲しい」

マリ「私としては自分のことは自分でやりたいです。旅の途中であるなら、なおさらです」

料理長「君も?」

日向「はい」

料理長「そっちの二人も?」

報瀬「はい」

みこと「……」コクリ

料理長「そうか、分かった。こっちとしては、もう言わない」

店員「いいんですか?」

料理長「習慣でやってるのなら、止められたけど。
     それ以上の意志があるみたいだから、止められないよ」

マリ「ありがとうございます、料理長!」

料理長「礼を言われることでもないって。それじゃ」

スタスタスタ...

店員「……と、言うわけなので……よろしくお願いします?」

日向「はい。……お願いします?」

マリ「ぷふっ、このやり取り変だ」

店員「アハハ、確かに」

日向「すいません、わがまま言って」

店員「それはもう言いっこなしにしましょう。それでは、お食事になさいますか?」

マリ「はい! デザートをいただこうかと思います!」

みこと「……」

報瀬「……」


……


126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 02:00:14.33 ID:JIKGxwEno

―― 厨房


料理長「なんだ、また来たのか」

車掌「だって、ここが一番落ち着くから」

料理長「ヴェガの車掌さんの真似は大変だよな」

車掌「こんなに難しいなんて思わなかったよ」

料理長「お客さんの前でそのくだけた態度見せるなよ?」

車掌「分かってます〜。イメージを壊しません〜」

料理長「それが壊してるんだって……。やるなら隙を見せないくらいの気持ちでだなぁ」

車掌「それより、なにかあったんですか? 菜々子さんが表に出るの、珍しいですよね」

料理長「名前で呼ぶなっつの。……あの子たちが、下げ膳してることは聞いてるな」

車掌「え、そうなんですか?」

料理長「知らなかったのか。まぁ、そういうわけだから、止めさせたかったんだよ」

車掌「……」

料理長「だけど、止められなかった」

車掌「どうしてですか……?」

料理長「固い意志を見せられたから。なにか目指してるものがあるんだろうね」
 
車掌「……」

料理長「ほら、サボってないでさっさと仕事に戻りな」

車掌「はーい」

料理長「くれぐれも幻滅させることのないように」

車掌「はい、それでは失礼いたします」キリ

料理長「はいはい」

車掌「あ、そういえば……」

料理長「?」

車掌「お客様から聞いたことがあります。
   『自分のこと自分でやるんだね、私も見習うよ』と」

料理長「……ということは、少なくとも悪い影響は与えていない……とみていいのか」

車掌「その時はお願いしますよ、菜々子さん」

料理長「分かってるって。だから、名前で呼ぶなっての」


……


127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 02:02:19.81 ID:JIKGxwEno

―― 食堂車


日向「展望車まで見てきたけど、車掌さん居なかった」

マリ「え、また神隠し?」

みこと「……」

報瀬「ねぇ、二人とも」

日向「?」

マリ「なに?」

報瀬「私たちが食器を片付けていることで影響が出てるって言ってたでしょ」

日向「……」

マリ「うん」

みこと「……?」

報瀬「それで、後々問題が出るかもしれないって」

日向「……言ってたな」

マリ「……」

みこと「でも、了承してくれたよ」

報瀬「そうだけど、それは――」

日向「後々に出る問題は、店員さんや料理長に流れていくってことだ」

マリ「あ……」

みこと「……」

報瀬「それを受け止めるって言ってくれた事、忘れないで」

マリ「うん……!」

日向「そうだな。中途半端なことは絶対に出来ないな」

みこと「……」

マリ「そうだ、出来ることはやろう!」

日向「……なんだろ、嫌な予感」


……


128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 02:03:00.05 ID:JIKGxwEno

―― 厨房


店員「りょーりちょ〜〜」

料理長「なんだよ、変な声出して……。やること山ほどあるんだから気合入れな」

店員「そうじゃなくって〜〜」

料理長「あっちにある人参の皮むきやって」

マリ「人参ですね! わっかりました!」

店員「手を止めて話を聞いてください〜〜」

料理長「こっちは忙しいんだから要点を――」

マリ「えっと、ピーラーはどこかな」

料理長「な、なに!?」


……


129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 02:05:06.55 ID:JIKGxwEno

―― 2号客車


マリ「追い出された……」

日向「当たり前だ」

結月「なにがあったんです?」

報瀬「まぁ、いろいろと」

みこと「……」

マリ「ピーラーなんて使うなって怒られたよ。
   あったのに使うなって……それで追い出すなんて厳しいよね」

日向「そういう問題じゃない」

結月「ピーラー……?」

みこと「キマリさんが手伝いたいからって、厨房に入っていったから」

結月「あぁ……またそんな非常識なことを」

マリ「いつもやってるみたいに言わないでよっ」

報瀬「私たち、止めたよね」

マリ「手伝えることいっぱいあると思ったから……忙しそうだったし」

結月「撮影始めませんか?」

日向「そうだな、どこで撮ろうか」

報瀬「……明日にしない?」

みこと「報瀬さん、明日も同じこと言いそう」

報瀬「ぎくっ」

日向「お、報瀬のことよく分かってるじゃないか」

結月「本当ですね」

マリ「私の話終わらせないで!?」

栞奈「日向〜」

日向「ん?」

栞奈「車掌さんを探してたみたいだったけど」

日向「それが、見つからないんだよ」

栞奈「今、車掌室にいるよ」

日向「え、いつの間に……。でも、急いでる訳じゃないからいいや。ありがと」


……


130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/15(水) 23:10:24.01 ID:TlaqlvlZo

―― 展望車


マリ「やっぱりここだよね」

日向「そうだな。じゃあ、さっそく撮る?」

報瀬「台本は? 台本……」

結月「そうですね、使うにしても没にするにしても、編集が決めることですし、撮っちゃいましょう」

栞奈「これってギャラは出るの?」

日向「出ないぞ?」

栞奈「ふぅん……」

マリ「前の旅の宣伝みたいなものだから」

みこと「……前?」

マリ「そう、南極のね」

みこと「それって……」

栞奈「ギャラが出ないってことは自由だよね、私が出てもいいんだよね?」

報瀬「じゃあ、お願いしてもいいかな?」

栞奈「喜んで!」

報瀬「よかった……」ホッ

マリ「ディレクターみこっちゃん、どうしたらいいかな?」

みこと「え?」

日向「段取りだよ」

みこと「どうして私がディレクターなの?」

マリ「ノリで」

結月「軽い気持ちでやってくれていいから」

みこと「えっと……最初から?」

マリ「そうだよ」

みこと「最初は紹介が良いと思う」

日向「そうだな。私らのこと知ってる人が見てるとは限らないからな」

結月「では、この動画の流れも紹介しましょう」

マリ「じゃ、並ぼ並ぼ」

栞奈「るんるん♪」

結月「日向さん、この位置でいいですか?」

日向「あー、そこの一般人さん、出てくれませんかねー」

栞奈「カメラマンからの指示だよ、キマリ」

日向「あんただよ! なんで真ん中にいるんだよ! 報瀬、入れ替わって!」

栞奈報瀬「「 話が違う!! 」」

結月「二人が勝手に決めた話ですよね……」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/15(水) 23:12:59.93 ID:TlaqlvlZo

マリ「のんびりしてると大阪着いちゃうよ」

みこと「……はい、スタート」

日向「まだ準備出来てないのにスタート入ったぞ!」

結月「もうちょっと時間をちょうだい?」

みこと「……」

報瀬「なんでこうなるんだろ……」

栞奈「私を使わない気だな……。こうなったら野次飛ばしてやろうか」

日向「や め ろ !」


……




結月「――そういうわけで、前以上に中身のないグダグダな内容になると思いますが、
   それでも楽しんでいただければ嬉しいです」

マリ「えへへ」

報瀬「よ、よろしく……オニガシマす……」


日向「……」ソワソワ


栞奈「……」

みこと「……オッケー?」

日向「よ、よし、オッケーだな」

マリ「報瀬ちゃん、鬼が島すって……」

報瀬「間違えたの! も、もう一回……やるのぉ?」

日向「なんでやり直しの要求しながら嫌がってるんだよ」

報瀬「だ、だって……」

結月「というか、日向さん……集中してませんでしたよね」

日向「そ、そうだっけ?」

マリ「うん、なんかそわそわしてた」

日向「か、栞奈がいつ間に入って来るかって……気が気じゃなくてさ……」

栞奈「そこらへんは弁えてるから」

日向「……」

マリ「あとは大阪到着まで観光地を吟味しようか」

報瀬「もう終わり?」

結月「そうですね、今日の分はこれでいいかと。あとは編集に任せましょう」

日向「じゃあ、観光地行きたいところを挙げていこ――」

みこと「それを撮ったらいいと思う」

マリ「……」

結月「……」

報瀬「……」

日向「……」

みこと「え?」

栞奈「いやぁ、見かけによらず仕事熱心なディレクターだ」

132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/15(水) 23:14:35.47 ID:TlaqlvlZo

……




「異人館でしょ、通天閣でしょ、海遊館でしょ、万博記念公園、あと通天閣に梅田空中庭園も行きたい」

「そんなに周れますかね」

「同じ場所二回行くの?」

「そうだ、忘れちゃいけないのがハーバーランド」

「無理ですよ、そんな数を観光なんて……24時間停車なんですから」

「大阪城は?」

「頑張れば行けるよ、頑張れば」

「また無計画ですね……観光地に着いてもちゃんと観て回れなければ意味が無いです」

「通天閣一回にして、大阪城かアメリカ村行きたい」

「そうだね、行くだけじゃなくて、名物も食べたい!」

「私、お好み焼き食べたいんですよね」

「ねぇ、大阪城……」


日向「……報瀬が相手にされてないっぽいんだけど」

栞奈「ぽい、じゃなくて、相手されてないでしょ」

みこと「声だけで分かるのかな」

日向「それが結構分かるみたいで、コメントも反応あるんだよな」

みこと「……3人とも特徴ある声してるから?」

日向「そうそう、そういうこと」

栞奈「私も観光の準備してこようかな」

日向「行くのか?」

栞奈「うん、それじゃーね〜」

スタスタスタ...

 ガタンゴトン


日向「もう着くな……私らも準備するか」

みこと「……」


……


133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/15(水) 23:28:11.23 ID:TlaqlvlZo

―― 大阪駅


シュタッ

マリ「着いた! 大阪!!」バッ

報瀬「ちょっとキマリ、そこに居ると邪魔」

マリ「はい、すいません」

日向「あっつ!!」

結月「うへぇ……」

みこと「午前中から30度超えてるって」

マリ「今だけ雨降らないかな」

日向「そんな都合のいいこと起こるわけないだろ?」

マリ「そうだけどぉ」

結月「みなさん、すぐに観光行きますか?」

報瀬「大阪城行ってくる」

日向「そんなに行きたいのかよ……こう言っちゃなんだけど、期待しすぎないように」

報瀬「?」

みこと「結月さんは、仕事?」

結月「うん……」

マリ「残念だよね」

結月「後で合流できそうなら電話しますね」

マリ「結月ちゃん、海遊館に行きたいんだよね」

結月「はい」

マリ「オッケー。そこに行けるようにしとくね」

日向「うーん……私もゆづと一緒に行くことにするよ」

報瀬「どうして?」

日向「ゆづを一人に……しておけないだろ……!」

結月「暑いからですよね」

日向「その通り! 正解者には日向ちゃんポイントが10くらい入りまーす!」

みこと「ポイント制なの?」

日向「そうだぞ、だから100ポイント溜まるまで頑張れ!」

報瀬「100ポイント溜まったらどうなるの?」

日向「考えてないけど、なにか贈呈しようと思う。肩たたき券とか」

マリ「いらないね」

一輝「採点の基準は?」

マリ「あ、食いついた」

日向「その時の私の気持ちで変わる」

一輝「気分次第かよ」

スタスタスタ...

結月「言うだけ言って去っていきましたね」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/15(水) 23:29:51.63 ID:TlaqlvlZo

日向「ゆづ、仕事はいつ終わりそう?」

結月「夕方くらいには。大阪駅の場面撮るだけですから」

報瀬「キマリとみことはどうする?」

マリ「うーん、どうしようかな」

日向「みことも私たちと夕方から行動しよう。熱中症が怖いからな」

みこと「……うん」

マリ「時間もったいないから、私は報瀬ちゃんと行くよ」

報瀬「うん」

栞奈「やぁやぁ、みんなは観光どこ行くの〜?」

マリ「大阪城だよ」

栞奈「そっか。私はまず通天閣に行ってくるよ。それじゃーね」フリフリ

スタスタスタ...

マリ「それじゃーねー」

みこと「私も、報瀬さんと一緒に」

日向「オッケー。ちゃんと水分補給しとけよー?」

みこと「うん」

報瀬「それじゃ、行こうか」

マリ「うん! レッツゴー!」

結月「それでは、また後で」

日向「うーん……やっぱり――」

結月「日向さん、夕方から一緒に行動するんですよね」

日向「はい」


……


135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/15(水) 23:47:14.22 ID:TlaqlvlZo

―― 夕方・海遊館


日向「おーい、こっちこっち」

結月「……なんだか、元気ありませんね」


マリ「……」

報瀬「……」

みこと「……」


日向「一体どうした?」

マリ「報瀬ちゃんが……」

結月「どうかしたんですか?」

報瀬「どうして天守閣にあんなもの……もう城じゃないでしょあれ」

みこと「同じことずっと言ってる」

日向「報瀬はしつこいからな」

マリ「シロナガスクジラ楽しみだね、結月ちゃん!」

結月「はい?」

マリ「ん?」

結月「……すいません、なんて言いました?」

マリ「シロナ……ぁ……ェエザメ!」

報瀬「途中で気付いたみたい」

マリ「ィンェエザメ……そう、ジンベエザメ!」

結月「見苦しい言い直しですね」

マリ「頭の中で大きな生き物が泳いでいたから間違えたんだよー」

日向「だったら言い直さないで間違えたって言えばいいだろ」

マリ「結果的には間違ってない!」ドン

みこと「沖縄の水族館じゃないの?」

報瀬「なにが?」

みこと「ジンベイザメ」

マリ「ジンベエだよ」

日向「どっちにもいるぞ」

みこと「……そうなんだ」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/15(水) 23:48:40.06 ID:TlaqlvlZo

結月「美ら海水族館の方は、数頭泳いでいるそうですね」

報瀬「迫力ありそう」

マリ「どうせならそっち行こうよ」

日向「酷いこと言っていいか?」

マリ「ふぇぇ、言わないで〜」

日向「行けばいいだろ!!」

マリ「言わないでって言ったのに!」

日向「言わずにはいられなかった……許せ」

結月「あ、エリアマップがありますよ」

日向「日本……モンタレー……世界の生き物が居るのか。……あ」

マリ「ふぅん……」

報瀬「南極大陸……」

結月「へぇ、そういうのまであるんですね」

みこと「……」

日向「どれ……」

マリ「どのくらいのものか……」

報瀬「見に行こうか……」

ザッザッザ


みこと「……顔つき替わった」

結月「本場を知ってるからってすごい勝ち誇った顔……」


……


137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/15(水) 23:52:11.79 ID:TlaqlvlZo

―― 南極大陸エリア


マリ「いいんじゃないかな、南極の雰囲気あると思うよ」

日向「あぁ、悪くないね」

みこと「ペンギンがいる」

報瀬「ふんっ……ふんー! やっぱりカワイイ!」

結月「って! まっすぐここに来ることないじゃないですか!」

みこと「木を見て森を見ず」

マリ「周りは海だけどね!」

日向「お、上手いね! 座布団一枚!」

結月「さっきまでの上から目線はなんだったんですか」

マリ「本物を知っている身としてはね……」

日向「人が創った南極大陸を見ておこうと思うものさ」

結月「うわー……人ってこうも悟ってしまうものなんですねぇ……」

マリ「冗談だよ、冗談。ちょっと言ってみたかっただけー」

報瀬「ふんーっ、ぺんッぎんっ」

みこと「……っ」

日向「報瀬、みことが引いてるから、ちょっと抑えような……?」


……




―― 写真撮影エリア


みこと「ペンギンと撮影って。報瀬さん、どう?」

報瀬「フッ」

みこと「鼻で笑った」

日向「本物と撮った私たちに、お金を払えですって、キマリさん」

マリ「その必要はないですわね」

結月「まだその目線ですか……」

日向「セレブ風に言ってみたですのよ」

マリ「お土産エリアに行こう? ぬいぐるみがあるって」

みこと「報瀬さん、買う?」

報瀬「私にはペンギンのぬいぐるみがあるから、別にいい」

マリ「あ! 報瀬ちゃん、いつ返してくれるの!?」


……


138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:22:56.66 ID:9yYPGCGzo

―― 大阪駅


結月「可愛いですよね、ジンベエザメのぬいぐるみ♪」

日向「いまのゆづが一番可愛いよ」

結月「む……なんですか、今の言い方」

日向「なんで怒る!?」

報瀬「……今日はもう寝よう」

マリ「まだ早いよー」

日向「あれ、みことはどこ行った?」

マリ「たまに居なくなるよね」


「うーん……やっぱり君とは会ったことある気がする」

みこと「そうですか?」


マリ「あ……」

日向「ナンパされてるぞ!」

報瀬「えっ!?」

結月「ど、どうしますか!?」

日向「助けるに決まってるだろ!」

ピッピッピ

日向「報瀬、警察に連絡! 番号は打っておいたから、はいこれ!」ポイッ

報瀬「ゑッ!?」

日向「私はみことの安全を確保する!」

タッタッタ

報瀬「え、えっと、もしもし!」

ピンポンパンポーン

『八月三日の大阪府の天気は――』

報瀬「て、天気……!?」

マリ「……」


...タッタッタ

日向「ちょっと待ったー! まーたみことをナンパですかー!?」

秋槻「……次言ったら無視するからね」

日向「にゃはは」

みこと「さっき着いたって」

秋槻「一人旅は遠く感じたよ」

日向「ふぅん、私たちはあっという間だったけどな」

みこと「うん」
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:31:06.90 ID:9yYPGCGzo

栞奈「おいっすー、何してんの、日向〜」


日向「特に何もしてないぞ〜」

栞奈「面白そうなこと言ってたけど〜」

秋槻「ひょっとして、デネブの新しい乗客……?」

栞奈「あれ、どうして分かったんですか?」

秋槻「俺は始発からの乗客で、彼女たちと親しそうだから」

栞奈「ふぅん」

日向「暇をつぶしてたとこだ」

秋槻「あのね、暇つぶしで俺の人生も潰そうとしないでね」

日向「あ、いいツッコミ!」

秋槻「冗談で言ってるんじゃないんだよ? さっきの周りの目って気づいてないでしょ」

日向「あれ、結構本気で注意されてる?」

栞奈「……ひどい、これでも私……一生懸命だったのにっ」

日向「くっ、大人って……私たちをいつも子供扱いしてっ」


「えー、なにあの人……」

「高校生だろ、あの子たち……」


みこと「注目されてるよ」

秋槻「これはいけないな……。俺は先に列車に戻ってるから」

栞奈日向「「 冗談冗談 」」

秋槻「だから、洒落にならないって……。崖っぷちにいる気分なんだから……」

一輝「他人の人生で遊ぶなよな」

みこと「いたんだ」

一輝「居ちゃ悪いかよ」

秋槻「……」

栞奈「顔色悪いよね」

日向「もうやめよう」

秋槻「そうしてくれると本当に助かる」

マリ「あ、あの……お兄さ――」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:32:46.93 ID:9yYPGCGzo


報瀬「ちょっと、日向!」

日向「ん?」

報瀬「私のこと弄んだでしょ!」

日向「……」ススッ

報瀬「なんでそんなことするの!? 私心配してたんだから!!」

日向「……」スススッ

報瀬「もう信じられない! 次こんなことしたら絶対に許さないから!」

秋槻「ちょっとちょっと、移動して俺が言われてるように仕向けないでくれる?」

日向「ばれたか」


「今度はあの子まで……?」

「あの人、何者なんだよ……」

ざわざわ

 ざわざわ


秋槻「……」

栞奈「あっはっは!」

一輝「笑いごとじゃないんだって……秋槻さんの顔色がどんどん白く……」


結月「ひ、日向さんっ、連れてきましたよっ!」


日向「え?」


駅員「誰だー! 中学生を軟派する奴ァーー!」


日向「え……」

栞奈「あっちゃぁ……」

一輝「……マジで洒落にならん……」

報瀬「え、え? なに?」

みこと「……」

マリ「結月ちゃん……」

結月「え、あれ? なんですか、この空気……?」


駅員「お前かぁ!!」

秋槻「――」


……


141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:34:49.15 ID:9yYPGCGzo

―― 駅事務室


駅員「まったく、限度ってものがあるでしょう」

秋槻「すいませんでした」

駅員「なにやってるんだかなぁ……」

秋槻「すいません……」

車掌「誠に申し訳ありませんでした」

駅員「車掌さんが出てくることはないでしょうに」

車掌「私の大切なお客様ですから……」

駅員「……」

秋槻「お騒がせして申し訳ありませんでした」ペコリ

駅員「もういいから、帰った帰った」

車掌「それでは、失礼します」

秋槻「……失礼します」


駅員「人騒がせな人たちだ……」ハァ


ガチャ


車掌「……あら」

秋槻「?」


マリ「お、お兄さん……」ウルウル

日向報瀬結月栞奈「「「「「 ごめんなさい!! 」」」」

みこと「ごめんなさい」ペコリ

一輝「……」

秋槻「い、いいから、頭上げて……。車掌さんのおかげでお咎め無しになったから」
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:35:48.39 ID:9yYPGCGzo

日向「私が悪いんです……調子に乗ってしまって」

報瀬「そうです、全面的に日向が悪いんです」

結月「本当にそうです。悪ノリばっかりして」

日向「う……っ」グサッ

マリ「ううん、元はと言えば私が……私が……? 私、なにしたっけ?」

みこと「おいて行ったよ」

マリ「あ、そうだった」ウッカリ

秋槻「あぁ、4人揃ったんだね……」

日向「……?」

報瀬「それで、誰なの、この人?」

栞奈「うん、誰?」

マリ「旅仲間だよ」

一輝「おまえ、初対面なのに悪ノリに付き合ったのかよ」

栞奈「面白そうだったから、つい、ね」

車掌「……」

日向「ん〜……?」

みこと「日向さん、どうしたの?」

日向「なんだろ、なにかが引っかかるな……」

秋槻「ふぅ……長い一日だった……」シミジミ


……



143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:38:54.47 ID:9yYPGCGzo

―― デネブ


車掌「それでは、私はこれで」

秋槻「すいませんでした。それと引受人になってくれて、ありがとうございました」

車掌「これっきりにしてくださいね」メッ

秋槻「……はい」

日向報瀬結月「「「 ごめんなさい 」」」

栞奈「すいませんでしたぁ!」

車掌「後で思い起こして、この件が笑い話になるような旅にしていただければと思います」

マリ「頑張ります!」

車掌「ふふ、それでは」

スタスタスタ...

みこと「怒られなかったね」

一輝「懐が深いな」

結月「メッ、されましたよ」

栞奈「されたね〜。一輝はされなかったけど……」

一輝「される理由がないだろ。残念そうな目で見るな」

日向「……」

秋槻「ふぅ……。俺はもう個室戻るから、それじゃ」

マリ「あ、あの……」

秋槻「……?」

マリ「すいませんでした!」ペコリ

秋槻「もう終わった話だから、気にしないで」

マリ「今回のことじゃなくて……私のせいで乗り遅れちゃったこと……」

秋槻「あぁ……うん」

マリ「私だけ乗ってしまって……」

秋槻「俺は大人だからさ、これくらいなんともないよ。……気にしないで」

マリ「……」

日向「……ふぅむ」

報瀬「私たちも、もう寝る?」

結月「でも、まだ早くありません?」

栞奈「私、列車に泊まるの初めてなんだよね〜」ワクワク

一輝「そういえば、栞奈って、今日の朝に乗車したんだよな……」

栞奈「そうだけど、なによ?」

一輝「……いや、別に」

みこと「馴染むの早いよね」

栞奈「そう? 始発から乗ってるように感じる?」

みこと「…………」

栞奈「どうして黙っちゃうの?」

みこと「言おうとしてたこと言われたから……」

栞奈「あっはっは、そっかそっか〜」
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:40:01.89 ID:9yYPGCGzo

報瀬「私たちより馴染んでいるよね」

結月「そうですね……」

日向「あ、分かった……!」

マリ「な、なにが分かったの?」

秋槻「……去るタイミング失ってたけど、それじゃあね」

日向「待って待って、秋槻さん!」

秋槻「え?」

日向「聞きたいことがあるんだけど、いいですか?」

秋槻「うん、……いいけど」

日向「んふっふ〜、僕に任せれば間違いないんだ。謎なんて簡単に紐解ける」

報瀬「なによ、そのキャラ」

結月「……私、知ってます」

栞奈「私も知ってる〜。探偵ドラマに出てくるヤツだよね」

一輝「あぁ、それか……。俺も知ってる」

マリ「わ、ワタシモシッテル」

結月「その動揺した声……キマリさん、知りませんね?」

マリ「探偵ドラマの主人公でしょ? 私たちの世代じゃ知らないのは時代遅れだよね」

みこと「主人公のライバルだよ。とても嫌な人物」

マリ「……そうそう、そっちそっち」

秋槻「それで……なにを知ってるの?」

日向「ここじゃなんだから、展望車へ。……くっくっく、あーっはっはっは〜」

報瀬「何がしたいの、日向は?」

マリ結月「「 さぁ? 」」


……


145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:42:13.14 ID:9yYPGCGzo

―― 展望車


日向「えー、謎が解けて……いや、謎って言うか、
   引っかかりが取れてテンション上がってしまった私、三宅日向ですが」

マリ「……」

日向「なぜかこうして、音頭をとっている次第で……、誠に遺憾であります」

マリ「なんで?」

日向「秋槻さんに話し聞きたかっただけだぞ、なんでみんな集まってるんだよ」

栞奈「だって、興味あるし。面白そうだし」

一輝「気になるな」

結月「そうですね、あのテンションの日向さんは中々見られませんでしたから」

報瀬「同じく」

みこと「…………」

秋槻「俺が一番気になるんだけどね」

日向「それはいいよ、だけどなんでお菓子やお飲み物もあるんだよ。パーティーか!」

マリ「そうだよ、これは、第一回、デネブに集まりし者たちの集い!」

結月「なんの決起集会ですか」

みこと「意味が被ってるよ」

栞奈「早く始めてよ、ポテチ開けちゃうよ?」

日向「じゃ、カンパーイ」

結月「あっさりですか!」

一同「「「 かんぱーい 」」」

結月「あ、か、かんぱーい」

報瀬「ごくごく……ふぅぅ」

栞奈「お、いい飲みっぷりだね!」

報瀬「買い出しで喉乾いてたから」

みこと「報瀬さん、オレンジとアップルがあるよ」

報瀬「アップルで」

みこと「はい、どうぞ」

報瀬「ありがとう」

マリ「お兄さん、お詫びの品です。お納めください」

秋槻「うん、ありがとう」

マリ「ささ、ぐいっと」

秋槻「え……」

マリ「?」

秋槻「あ、えっと……後で飲むから」

マリ「温くなると美味しくないですよ?」

秋槻「うん……んん……そうだね……」

マリ「ささ、ぐぃぃっと、一気に」

秋槻「…………」

一輝「あんな甘そうなの、一気飲みしろってか……」
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