マリ「超特急デネブ?」結月「そうです」

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146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:43:56.63 ID:9yYPGCGzo

栞奈「それにしても、さっきの似てなかったね〜」

報瀬「日向の物まね?」

栞奈「あーっはっはっは、こうでしょ」

結月「似てないです」

秋槻「もっと粘着的に笑うんじゃないかな」

栞奈「んふふ、アーッハッハッハ」

結月日向「「 似てる!! 」」

みこと「うん、そっくり」

栞奈「私、目覚めちゃったかな……」

一輝「モノマネ師に?」

栞奈「名役者にだよ!!」

秋槻「あはは、二人の息ぴったりだね」

栞奈「私たち、漫才の星になるって誓いましたから。な、相棒!」

一輝「バンドで武道館目指すんじゃなかったのかよ……?」

栞奈「方向性の違いで解散だバカモンー!」

みこと「方向が全然違う」

秋槻「あはは」

日向「いいぞいいぞ、もっとやれー」モグモグ

マリ「たこ焼き味ポテチって、想像通りの味だね」

結月「そうですね……もうちょっと冒険心のあるもの買えばよかったです」

日向「いや、美味しいだろこれ。無理に冒険しても後悔するだけだぞ。食べのに関しては」

みこと「うん」

報瀬「話はどうなったの?」

日向「おっと、忘れてた」

栞奈「一輝が参加するのって珍しいよね」

一輝「そうか?」

栞奈「個室に戻って、一人寂しく眠りに就いてる頃でしょ?」

一輝「昨日もこうやって集まってたけどな」

栞奈「へぇ〜、こんな宴会、毎晩やってるんだ? いいねいいね、明日も参加する!」

結月「そうなんですか?」

マリ「昨日……あったんだ、日向ちゃん」

日向「私は知らないな」

みこと「……」

一輝「明日はお前ひとり参加な。盛り上がれよ」

栞奈「意味のない嘘吐くな!! 誰が一人で騒ぐか!」

一輝「おまえが俺を根暗みたいに言うからだろ……!」

栞奈「なんだとぉ……?」

報瀬「そこの漫才コンビ、静かに」
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:46:53.16 ID:9yYPGCGzo

日向「秋槻さん、私たちのこと知ってたでしょ?」

秋槻「え?」

日向「私、キマリ、報瀬、ゆづ、この4人のこと」

マリ「ん?」

報瀬「……?」

結月「……」

みこと「……」

栞奈「何の話?」

一輝「さぁな」

秋槻「……どうしてそう思うの?」

日向「最初に、キマリは4人で乗車するって言ったんだけど、そこにみことは入ってなかったでしょ」

秋槻「一緒に行動してなかったからね」

日向「確かに……。私とキマリが一緒で、みことだけ別行動って変だよなぁ」

みこと「……」

秋槻「…………」

栞奈「あれあれ、秋槻さん……顔色が悪いですね」

秋槻「……はい、知っていました」

栞奈「ふふ、犯人は認めた。これで事件解決だ」

日向「って、おい! 勝手に話終わらせるなよ!」

報瀬「事件だったの?」

マリ「……多分」

結月「知ってたってことは……あの『南極チャレンジ』のことですか?」

秋槻「うん、それを観てたから」

みこと「――!」

報瀬「ま、まだ配信されてるの……?」

結月「そうですよ。そんなに時間経ってませんからね」

マリ「ずっと残るんじゃない?」

報瀬「」

一輝「真っ白になったぞ」

栞奈「なに、そのなんとかチャレンジって」

みこと「……」

結月「私たち、4人は南極行ったんです。その時にレポートもしてたんですよね」

マリ「その動画が配信されてるんだよ」

日向「私が次に引っかかったのは、3人目が乗るって時、秋槻さんは『誰が乗るの』って聞いてきた。
   まるで『どっちが乗るの』って言ってるようだったから気になったんだ」

マリ「まだ推理パートやってる……」

栞奈「検索したら出てくる?」

結月「はい、出てきますよ」
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:48:46.04 ID:9yYPGCGzo

栞奈「えーっと、南極チャレンジ……っと」ポチポチ

報瀬「あ、ちょっと貸して?」

栞奈「え、うん……動画を出してくれるんだ?」

報瀬「バッテリーを取ってしまえば……!」

みこと「……」

報瀬「あ、ダメだ! 一体型で取れない! 使えてしまう!!」

栞奈「はい、返してねー」

一輝「出てきた。へぇ、結構あるな」

報瀬「むんっ」バシッ

一輝「あ」

コロンコロン...

一輝「ちょっ……なにを!?」

報瀬「あ、ごめん。つい」

一輝「ついってなんですか!」

栞奈「ん? なんで敬語?」

みこと「……私のじゃ、観れない」

結月「みこと、今時珍しいよね。通話だけなんて」

みこと「他の機能、要らないって思ってたから」

マリ「みこっちゃんらしいね」

みこと「……」

マリ「私の貸してあげ――」

報瀬「駄目だって言ってるでしょ、没収!」スッ

マリ「え!?」

報瀬「ほら、持ってきちゃダメでしょ」スッ

栞奈「そんな……」

一輝「良かった……、傷は付いてない」

報瀬「ここをどこだと思ってるの」スッ

一輝「そんなバカな……」

報瀬「結月も出して」

結月「……」スッ

報瀬「まったく、各自、旅が終わったら取りに来るように」

結月「学校ですか」

日向「そして、私たちに馴染んでいる栞奈を見ても4人目だとは思わなかった。
   報瀬を見て初めて『4人揃った』と、秋槻さんは言ったんですよ!」

秋槻「……うん」

みこと「……」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:50:25.67 ID:9yYPGCGzo

日向「ふぅ……。これで事件は解決……ん?」

報瀬「どうしよう、これ」

日向「なんで報瀬に電話が集まってるんだ?」

マリ「取り上げられた」

秋槻「……俺は、仕事があるから渡せないけど」

報瀬「……」

一輝「電話鳴ったら対応お願いしますね」

栞奈「……なんで、報瀬にだけ敬語?」

結月「私のは鳴ったら持ってきてください。要件聞いてくれればそれでいいですけど」

栞奈「鳴ったら、私のフリしてくれればそれでいいよ」

日向「事件性を疑われるぞ」

報瀬「通信を禁止に設定できませんか?」

秋槻「出来るだろうけど、肉親じゃないと許可できないよ」

報瀬「何か他にいい方法があるはず」

日向「諦めろよ……」

マリ「返して、報瀬ちゃん〜」

みこと「……」スッ

マリ「なんで差し出したの!? 必要ないよね?」

みこと「なんとなく……」

結月「仲間はずれが嫌なんだよね」

みこと「……」

結月「無反応……」

日向「無言の肯定ってやつだぞ、ゆづ」

栞奈「ふふふ、楽しいね、デネブ」

一輝「……まぁ、退屈はしないかな」

秋槻「君、本当に馴染むの早いよね」

栞奈「これが私の取り柄なんです」フフン

マリ「今日の朝だよね、栞奈ちゃんに出会ったの」

結月「そうなんですよね……すごい能力です」

報瀬「……」

日向「よーし、それじゃ改めて、デネブに集いし8人の自己紹介からいってみよー!」

栞奈「いぇーい!」
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:52:05.11 ID:9yYPGCGzo

日向「はい、三宅日向です! 乗車した理由は、お仕事の為です!
   でも観光がメインになります、よろしくお願いします!」

結月「仕事そっちのけで観光行くって宣言しましたね」

一輝「大村一輝です。高2です」

栞奈「つまらん! 次!」

結月「白石結月です。一日車掌しています」

栞奈「かわいい! 次!」

報瀬「小淵沢報瀬です。騙されて乗りました」

栞奈「あれは笑った! 次!」

秋槻みこと「「 えっと 」」

栞奈「被った! 次!」

日向「なんでだよ、言わせろよ!」

マリ「玉木マリです。キマリって呼んでください。趣味は――」

栞奈「鳥羽栞奈です」キリ

一輝「バカンナって呼んでください」

栞奈「うらー! タイガートルネードチョォォップ!!」

ドスッ

一輝「いってッ」

マリ「私の趣味、まだ言ってない……」

日向「おー、すごーいな」

結月「なにがです?」

日向「ほら、外見てみろよ。ここ、大阪駅のホームなんだよ」

報瀬「そういえば……、人いないから忘れてしまうよね」

秋槻「駅の端っこに停車しているからね、デネブは」

日向「ホームに停車している列車でこうやって宴会してるって凄いんじゃないか?」

マリ「確かに! それで、私の趣味は――」

みこと「3日前には知らなかった人たちと……」

日向「そうそう、そうなんだよ。私ら他人だったんだから」

結月「すぐそこでは日常があるんですよね」

日向「そう、ここだけが特別な空間で、非日常」

栞奈「それって……凄いことだよね! 駅のホームで宴会してるって!」

報瀬「だから、その話をしているの」

栞奈「すいません。話途中から聞いていたもので……」

マリ「それでね、私の趣味は――」

一輝「……」

秋槻「……」


……


151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/10/22(月) 07:35:40.30 ID:LlWIaXwHo

―― 一時間後


栞奈「んっふっふ。僕の言うとおりにしていれば間違いないんだ。
    犯人逮捕に協力してくれるね?」

結月「そんなことで犯人は救われない」

栞奈「結月ちゃんさ、もうちょっと心込めて言ってみようか? 面倒くさがってない?」

結月「そんなことは」

一輝「本職の人にダメ出しするなよ」

マリ「へぇ〜、その探偵ドラマって原作があるんだ?」

報瀬「私も知らなかった」

みこと「うん、原作の方が私は好き」

秋槻「はは、大ファンみたいだね」

みこと「うん。一番最初のファンだから」

マリ「ファンクラブがあるんだね。
   作家さんにそういうのがあるなんて珍しいよね」

みこと「ないよ?」

マリ「みこっちゃん、ファンクラブ会員ナンバー1ってことじゃないの?」

みこと「違うよ?」

マリ「?」

みこと「?」

報瀬「日向が言ってた凸凹会話だ……」

秋槻「空中庭園にも行ってたんだ?」

日向「下から眺めただけだけどね……。誰かさんが『死んでも嫌ですッ』って言うから〜」

秋槻「ふぅん……? 誰だろ」

日向「あれ、似てなかったかな」

結月「本当に誰なんですかね……」ジー


日向「え、えー……、盛り上がっているところ申し訳ありませんが。
    これ以上、ここを使用していると車掌さんに迷惑かけそうなのでお開きにしたいと思います」


栞奈「えぇい、車掌さんがなんでぇーい! ジュースもっと持ってこーい!」

日向「さっき、迷惑かけたの忘れたのか?」

栞奈「あ、……忘れていました」

日向「それじゃ、短い間だろうとは思うけど、旅の間よろしくーってことで」

マリ「よろしくね、栞奈ちゃん、大村君、お兄さん、みこっちゃん!」

みこと「うん」

秋槻「よろしくね」

一輝「……よろしく」

栞奈「この出会いは、やっぱり運命だったんだね」

結月「まだなにも起こっていないのに結論付けるのが早いですね」

報瀬「……」
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/10/22(月) 07:38:40.78 ID:LlWIaXwHo

秋槻「やっぱり、走ってでも乗ればよかったかな……」

日向「……」

マリ「もちろんですよ。駅と駅の一区間だけですけど、その間にいろんなことあるんですから!」

結月「話に聞くと、キマリさんのせいなのに……」

マリ「うぅ……そうだったね」

日向「……」

報瀬「どうしたの、日向?」

日向「え、いや……?」

報瀬「急に黙るから……何考えていたの?」

日向「いや……。秋槻さんがさ」

秋槻「え?」

日向「列車が出発するのに、歩いてたなって思って」

栞奈「?」

みこと「どういうこと?」

一輝「間に合わないから、諦めたってことですよね」

秋槻「……うん」

日向「そうだよな。……うん、なにが気になってるのか自分でも分からないや」

マリ「なにそれ〜」

結月「……」

報瀬「多分、私にも分かる気がする」

日向「そうなの?」

報瀬「今日の朝、キマリと栞奈は全力で走って、デネブに乗車した」

栞奈「……」

マリ「そうだね……。日向ちゃんとみこっちゃんも巻き込んじゃったけど」

報瀬「秋槻さんがどうこう、じゃないです」

秋槻「……」コクリ

報瀬「大人だから、必死になる必要はないってことじゃないかなって」

日向「……」

秋槻「必死になってなかった、ってこと……だね」

報瀬「さっきも言いましたけど、秋槻さんが――」

秋槻「うん、分かってる。ありがと」

結月「私たち、必死で一生懸命な大人を見てますからね。
   だから、日向さんが思うところがあるのも分かる気がします……」

みこと「……」

一輝「……」

栞奈「……」

日向「あ、ごめん! なんか変なこと言って!」

秋槻「……いや、気にしないで」

日向「……って、言っても……空気が……あはは」

報瀬「……私も……ごめんなさい」

秋槻「……」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/10/22(月) 07:40:15.92 ID:LlWIaXwHo

マリ「私たちが経験したあの時間はみんなが一生懸命じゃないと生きていけない世界だった」

みこと「……」

マリ「私たちが経験しているこの時間はみんなが一生懸命じゃないと楽しめない世界だ」

秋槻「……」

マリ「そういうことだよね、日向ちゃん」

日向「う、うん……?」

栞奈「深いなぁ、良いこと言うね、キマリ」

マリ「そうかな?」

秋槻「……後になったら分かること、だね」

一輝「……」

結月「そういえば、どうしてキマリさん、乗り遅れそうになったんですか?」

報瀬「私も聞いてない」

日向「グラマラスでナイスバディな外国人女性に声かけられたって聞いた」

みこと「……」ジー

秋槻「ふぅん、そこだけ強調されてたんだ……」

マリ「胸が大きかったと思いました。綺麗な人だとも思いました」

結月「へぇ」

栞奈「男ってやつぁ……」

一輝「……ノーコメントで」

秋槻「ふぅん……」

マリ「あれ……?」

みこと「……」ジー

秋槻「俺が鼻の下を伸ばして道案内を引き受けたと……?」

マリ「そうは言ってないですよ〜」

秋槻「流れ的にはそうだったけどね」

マリ「もぉ、日向ちゃん!」

日向「私かよ!?」

秋槻「そうだ、写真撮ったんだよ。見る?」

結月「……え」

栞奈「……え」

報瀬「……え」

一輝「ドン引きしてますよ……」

マリ「見せて見せて、笑顔がチョーキュートだったよね」

みこと「……」

秋槻「ほら」

マリ「おぉ……」

みこと「……白いタンクトップ着てたんだ」

マリ「そうそう……、そうだよ」

日向「どれどれ……おぉ、こんなポーズ取ってたのかぁ」

一輝「陽気な人だ」

結月「……」
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/10/22(月) 07:41:48.39 ID:LlWIaXwHo

栞奈「いやいや、その女性を写真に撮るって……」

報瀬「……ない」フルフル

秋槻「いい思い出になったよ、俺にとってもね」

日向「そりゃそうだろうな〜。滅多に会えるわけじゃないし」

みこと「うん……また会えるといいよね」

秋槻「明日にでも、ね」

結月「……私にも見せてください」

マリ「ほら、ね、結月ちゃん」

結月「ぷふっ」

報瀬栞奈「「 ? 」」

結月「話が変だと思ったら……ぷふふ」

みこと「……両手挙げてるところが」

日向「おっと、皆まで言うな、みこと〜」

報瀬「……気になる」

栞奈「私にも見ーせて」

一輝「そろそろ時間だし、片付けて寝ましょうか」

秋槻「もうこんな時間か……そうだね、片付けよう」

報瀬「あ、あの……見せてください……」

栞奈「気になって眠れないんですよ!」

秋槻「明日、道頓堀に行ってみたら会えるよ」

報瀬栞奈「「 え? 」」

結月「ぷふふっ」

日向「いつまで笑ってるんだよ、ゆづ〜」

結月「だって……タンクトップ……ふふっ」

マリ「みこっちゃん、残ったお菓子、持って行っていいよ」

みこと「でも、食べないから」

マリ「じゃ、私が貰う! 夜食!」

日向「太るぞ」

マリ「それじゃ、日向ちゃんと別けるよ。それなら大丈夫」

日向「私も太らせる気か?」

一輝「……ずっと元気だな…」

みこと「あの、秋槻さん」

秋槻「?」

みこと「……あの、動画見せてもらってもいいですか?」

秋槻「今すぐ?」

みこと「……はい」

秋槻「……わかった。じゃ、はい」

みこと「……?」
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/10/22(月) 07:44:01.18 ID:LlWIaXwHo

秋槻「もう電話かかってこないだろうし、持ってていいよ。充電はしておいてね」

みこと「え……、いいんですか? プライバシーが……」

秋槻「仕事用じゃないから、コンプライアンスの問題もないし大丈夫」

日向「そういう意味じゃなくって……」

秋槻「分かってるって……コホン。
    観られて困るデータはないから。音楽だけだから入ってるの」

みこと「……」

マリ「じゃあ、私ので観る?」

みこと「いいの?」

マリ「いいよ。明日の朝、起こしてくれれば。目覚まし設定してるから」

みこと「……うん」

マリ「はい、どうぞ〜。あ、充電しておいてね」

みこと「ありがとう……キマリさん」

マリ「どういたしまして」

みこと「……あの、ごめんなさい、わがままいって」

秋槻「ううん、気にしなくていいよ」

報瀬「気になって眠れない……」

栞奈「明日って、どういうこと?」

一輝「行けば分かるって」

結月「ぷふふっ、タンクトップ……っ」

報瀬「気になる……!」

マリ「もぐもぐ……あ、これ美味しいね」

日向「片付けながら食べるな〜」


……


156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/06(木) 13:32:41.13 ID:mha1Smx5o

―― 夜中・ホーム


秋槻「……」


みこと「秋槻さん?」


秋槻「ッ!?」ビクッ

みこと「……」

秋槻「ど、どうしたの……こんな夜中に……?」

みこと「外の空気を吸おうと思って……」

秋槻「あぁ、そうか……ビックリした……」

みこと「どうかしたんですか?」

秋槻「確かに、非日常だなって思って。こんな経験、味わえないよなぁってさ」

みこと「……」

秋槻「ほら、月が見える」

みこと「……うん」

秋槻「いつも見ている月なのに、まったく別物に見えてしまう。やっぱり旅っていいな」

みこと「……」

秋槻「って思ってたんだよ」

みこと「私も、相談に乗ってくれたから、聞きます」

秋槻「悩んでるように見える?」

みこと「……うん」

秋槻「あはは。……じゃあ、聞いてもらおうかな」

みこと「……」

秋槻「さっき、彼女たちに言われて気付いた。俺も大人になってしまったって」

みこと「……」

秋槻「なんでもできるはずなのに。何もできなくなった大人になってしまったって」

みこと「……」

秋槻「必死になるのがカッコ悪いって、心のどこかで思ってることに気づいたよ」

みこと「カッコ悪いの?」

秋槻「頑張ることは当たり前だけど、必死になることはそうそうなくなったからね」

みこと「……」

秋槻「でも、彼女が言ってた通り、必死に頑張れる大人もいるんだよね」

みこと「……」
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/06(木) 13:34:03.35 ID:mha1Smx5o

秋槻「そういう人たちに憧れてたはずなのに……って、ショックだったなぁ」

みこと「だから、無理にみんなのノリに合わせたの?」

秋槻「そう見えた? あれが俺の地だったのかもしれないよ?」

みこと「そうだったら、日向さんと栞奈さんと気が合うよね」

秋槻「あはは、そうだね。一緒に盛り上がってただろうね」

みこと「……」

秋槻「……やっぱり、同い年だったらって思うよ。今は一緒に盛り上がれないかな」

みこと「カッコ悪いから?」

秋槻「…………」

みこと「……」

秋槻「7つも歳が離れてるのに、ノリを合わせて盛り上がろうとするのはカッコ悪いな」

みこと「……」

秋槻「でも、旅の途中だしな……とも思ってる」

みこと「カッコ悪くてもいい?」

秋槻「うん、少しずつ……そう思えるように……いや、思いたいなって」

みこと「……難しい」

秋槻「余計なことばっかり考えてしまうのは、俺の性分か、大人だからか」

みこと「面倒くさいね」

秋槻「本当に、大人って面倒くさい。素直に楽しめる大人になりたいなぁ〜」

みこと「……」

秋槻「と、そんなこと考えてた。聞いてくれてありがとう」

みこと「いい旅にするように、って約束したから」

秋槻「……え?」

みこと「みんなでいい旅にしたいから」

秋槻「そっか……」

みこと「うん」

秋槻「……――ありがとう」


……


158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/06(木) 13:35:48.59 ID:mha1Smx5o

―― マリの個室


マリ「よいしょ、っと」


コンコン


マリ「ん?」

コンコン

「私だけど、キマリ……もう寝た?」

マリ「起きてるよ〜。ちょっと待ってて〜」


ガチャ


マリ「どうしたの、報瀬ちゃん?」

報瀬「話、いい?」

マリ「いいよ〜。入って入って〜」

報瀬「うん、ごめんね、いきなり」

マリ「気にしないで。適当に座って」

報瀬「……うん」

マリ「話って?」

報瀬「私、この列車に乗っても、大した経験にならないって思ってた」

マリ「……どうして?」

報瀬「あの旅を経験しているから、それ以上の旅にはならないだろうって思って」

マリ「……」

報瀬「だけど、根本的に間違ってたみたい」

マリ「……根本的?」

報瀬「船の旅と、列車の旅。中身が全然違ったから」

マリ「そうだね〜。船は目的地までずっと一緒だけど、
   列車は目的地着いて出会ったり別れたりだから」

報瀬「うん」

マリ「でも良かった、そう言ってくれたら、もう楽しめるよね」

報瀬「なんか、脅迫みたい。楽しまないといけない、みたいな」

マリ「当然だよ。だって、次に列車が走るの、20年後だよ?」

報瀬「決定、なんだ」

マリ「うん、決定〜」

報瀬「まぁでも、うん……楽しまないとね」

マリ「うん!」

報瀬「さっきまで日向とも話してたんだけどね」

マリ「?」

報瀬「日向も同じだったみたい。車掌さんの話聞いて、見方が変わったって言ってた」

マリ「そうなんだ……」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/06(木) 13:36:58.56 ID:mha1Smx5o

報瀬「キマリは東京まで行くんだよね」

マリ「うん。あれ、報瀬ちゃんもでしょ?」

報瀬「違う。私と日向は高崎まで」

マリ「えーーッ!?」

報瀬「ちょっと、声が大きいから……っ」

マリ「むぐっ」

報瀬「そんなに距離変わらないでしょ」

マリ「変わるよ! 一区間だけでも色々あるってさっき話してたでしょっ」

報瀬「隣に迷惑だから」

マリ「う、うん……」

報瀬「…………それでも」

マリ「それでも?」

報瀬「旅はいつか終わるから」

マリ「……」

報瀬「明日はどうするの?」

マリ「……なにが?」

報瀬「走るの?」

マリ「うん!」

報瀬「分かった。せっかくだから、私も一緒に走るよ」

マリ「うん。今日の朝も走る気なかったって言ってたよね」

報瀬「4人揃って走るの、滅多にないから……」

マリ「……そうだね」

報瀬「どうかした?」

マリ「なんか、今の報瀬ちゃん……いつもとちょっと違う」

報瀬「そう?」

マリ「いつも以上に落ち着いてる感じ」

報瀬「夜だからでしょ。眠たいし……」

マリ「そうだね。もう寝ようか」

報瀬「ごめんね、勉強の途中……に……邪魔……した……みたいで?」

マリ「ううん、寝るとこだった」

報瀬「……そう。……それじゃ」ピッピッピ

マリ「うん……。……ん?」


ガチャ

 バタン


マリ「なんでスマホ触ってたんだろ?」

160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/06(木) 13:38:51.31 ID:mha1Smx5o


―― みことの個室


ピピピピ


みこと「……あ」

ピッ


『お姉ちゃんが勉強頑張ってるって、結月さんから聞いたよ。さすがお姉ちゃん!』


みこと「押しちゃった……。どうしよう」


……


161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/06(木) 13:40:11.55 ID:mha1Smx5o

―― 8月5日


マリ「ぅぅん……雷おじさんが地下に閉じ込められてる」


コンコン

マリ「……ん?」

コンコン


「キマリさん、朝だよ」


マリ「……え、ぁ……みこっちゃん……?」


……


162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:12:10.86 ID:KmpP0qP0o

―― 大阪駅前:早朝


報瀬「暑い……」

日向「朝でこの気温かよ……」

結月「今日も暑い一日になりそうですね……」


「おはよ〜」


報瀬「あ、来た」

日向「遅いぞ〜……って、あれ?」

結月「みことも……?」


マリ「お待たせ〜」

みこと「……おはよう」


報瀬「おはよう……」

日向「その格好は?」

結月「一緒に走るってこと?」

みこと「うん……」

マリ「よし、行くよー! ぬぉぉぉぉおお!!」ダダダッ

報瀬「あ、ちょっと!」

日向「いきなり走るな!」

結月「みこと、ペースは自分で作れる?」

みこと「う、うん……付いて行くから」

日向「……」


……


163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:18:38.16 ID:KmpP0qP0o

―― デネブ


みこと「はぁ……はぁっ……はぁ」

日向「大丈夫か、みこと?」

みこと「うん……っ」

結月「顔が真っ赤……ほら、タオル」

みこと「ん……っ」

結月「濡らしておいたから、気持ちいいでしょ」

みこと「……うん」

マリ「ちゃんと水分補給しておいてね」

みこと「うん」

報瀬「はやくシャワー入ろう」

日向「そうだな、周りの目が気になる」

結月「奇異な目で見られてますね……当然ですけど」


……


164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:21:07.67 ID:KmpP0qP0o

―― 食堂車


マリ「うん、今日もワーニングが美味い!」

結月「なんですか、それ」

日向「和食のモーニング、略しただけ」

報瀬「じゃあ、洋食のモーニングは?」

マリ「モーニングでいいんじゃないの?」

結月「それ、和製英語ですよね……」

マリ「そうだったんだ」

日向「ヨーニングって言って欲しかったんだよな、報瀬?」

報瀬「なんで負けた気分になるの!?」

結月「キマリさんにあぁ言われたらそうなりますよね」

マリ「なんでー?」


みこと「……」

栞奈「確かに美味しい、料理長に拍手しないと」

一輝「伝えればいいだろ」

秋槻「あっちの席が気になる?」

みこと「うん……」

秋槻「そっか」


報瀬「日向、そのバッチ……」

日向「え? あぁ、これ?」

結月「どうしてもう一つ付けてるんですか?」

マリ「あ、鵲だ」

報瀬「カササギなの、それ?」

日向「これさ、デネブとヴェガを紡ぐ意味があるんだ」

報瀬「?」

マリ「20年前を走った列車があってね。
   その列車の名前がヴェガっていうの」

結月「ヴェガ……こと座ですね」

日向「20年の時を越えて、今を走るデネブと、あの時走ったヴェガを紡ぐ」

マリ「そういう素敵な意味が込められてるんだよ」

報瀬「どこで売ってるの?」

マリ「もう売り切れちゃったよ。私たち4人で一つ、それで十分だよね」

報瀬「ちょうだい」

日向「は?」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:23:43.33 ID:KmpP0qP0o

報瀬「私にちょうだい」

日向「子供か!」

結月「4人で、一つ……」

報瀬「それなら私が持ってても不思議じゃないよね」

日向「いや……私がお金払ったし」

報瀬「いくら?」

日向「待て待て、それを払うから私に持たせろって言うのか?」

報瀬「そうだけど」

日向「友情にひびが入ること言うなよ!」

報瀬「私が持っててもいいでしょ?」

日向「でも……開封したばっかだし……」

結月「4人の物というなら、私が持っててもいいってことですよね」

日向「参戦するか!?」

マリ「もう、静かに食べようよ……。うるかにしてください」

結月「もぉ、いつまで言うんですか!」

マリ「あははっ」


店員「他のお客さんに迷惑ですので、お静かに願います」ニコニコ


マリ報瀬日向結月「「「「 すいません 」」」」


みこと「……」

栞奈「盛り上がってるね」

一輝「なんで朝からあんなに元気なんだよ……すげぇな」

秋槻「もぐもぐ」


日向「なんか、謝ってばっかりだな……私たち」

報瀬「ちょっと落ち着いた方がいいよね」

マリ「本当だよ……もぐもぐ」

結月「ところで、今日はどこ行くんです? 出発は12時ですけど」

日向「午前中だけか。あまり遠くへ行けないな〜」

マリ「ハーバーランドは?」

日向「午前中だけだから、あまり 遠 く へ は 行 け な い な!」

マリ「遠いの?」

報瀬「神戸だよ?」

マリ「……遠いの?」

結月「あとで地図見てください」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:26:03.06 ID:KmpP0qP0o

報瀬「私は特に理由は無いんだけど、道頓堀に行ってみようかと思う」


栞奈「あ、はい! 私も報瀬に付いてく!」


報瀬「分かった。特に理由はないんだけどね」


栞奈「そうそう。別にタンクトップの人がいるとか、興味ないんだけどね」


結月「ぷふっ」

日向「ツボなのか、それ……?」

マリ「片道40分? 近い近い! 行ってくるね!」

報瀬「もう9時だよ?」

マリ「行って、観て回って戻ってきて……うん、行ける行ける!」

日向「やめとけ、昨日のこともあるんだから」

マリ「大丈夫だって! ね、お兄さん!」


秋槻「……」スッ


マリ「なんで顔を逸らすの!?」

日向「信用されてないんだろ」

マリ「あれ……?」


みこと「……」

栞奈「このヨーグルトさ、ブルガリアから直送してもらったんだって」

一輝「適当言うな。一応聞くけど、誰が言ってたんだよ?」

栞奈「私!」

一輝「秋槻さんはどこに行くんですか?」

秋槻「通天閣に行ってみようかな」

みこと「……」


マリ「みこっちゃん、あまり食べてないけど、食欲無い?」

日向「?」


みこと「……ぇ……うん……ちょっと……」


報瀬「顔色……悪くない?」

結月「……そうですね」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:28:33.87 ID:KmpP0qP0o


みこと「……部屋……戻って……っ」ガタ

一輝「大丈夫か……?」

栞奈「……」

秋槻「……」

みこと「う……うぅぅ……うぷ」

秋槻「ッ!」ガタッ

栞奈「わっ!」

みこと「ん……んんっ」

秋槻「捕まって!」ガシッ

みこと「ん――……ッ」ギュッ

秋槻「――!」

タッタッタ


マリ「おぉ、お姫様抱っこ!」

日向「言ってる場合か! 報瀬!」

報瀬「車掌さんとこ行ってくる!」

結月「私は厨房に行ってきます!」

日向「任せた! 行くぞキマリ!」

マリ「うん!」

タッタッタ


栞奈「……」ポカーン

一輝「……」ポカーン

栞奈「ハッ!?」

一輝「あ、嵐が過ぎ去ったみたいだな……」


……


168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:35:55.79 ID:KmpP0qP0o

―― みことの個室


みこと「うぅぅ……」

マリ「まだ気分悪い?」

みこと「……吐いちゃった…」

マリ「トイレに間に合ったんだから、セーフだよ、セーフ」

みこと「……でも」

マリ「?」

みこと「恥ずかしい…とこ……見せ…ちゃった……」

マリ「お兄さんに?」

みこと「……うん」

マリ「必死になって助けようとしてたから、気にしてないと思うけど」

みこと「……」

マリ「あとでお礼言おうね」

みこと「……うん」

マリ「ごめんね……」

みこと「?」

マリ「無理、させちゃったよね」

みこと「……無理……?」

マリ「日向ちゃんが言ってた。『ランニングの後、クールダウンさせてなかった』って」

みこと「……」

マリ「始発からここまで、緊張もあったから……その疲れが熱になって表れたんだよ」

みこと「……疲れてた……のかな……」

マリ「自分でも気付かないうちに、溜まってたんだと思う。車掌さんもそう言ってたでしょ?」

みこと「…………」

マリ「栞奈ちゃんも同じこと言ってたよ。珍しく真剣な顔だったなぁ」

みこと「栞奈さんが……?」

マリ「心配してるんだよ。ちょっと待っててね〜。今リンゴ剥いてあげるから〜」

シュルルルル

みこと「……上手」

マリ「こう見えても家の手伝いしてるからね!」

みこと「自分のことは自分で……?」

マリ「うん! 出来ることは増やしておかないと……ね」

みこと「……キマリさん」

マリ「あ、失敗した……。うん、なに?」

みこと「ハーバーランドは……?」

マリ「行かないよ?」

みこと「…………」

マリ「というか、止められたからね。ひどいよね、みんな」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:37:44.01 ID:KmpP0qP0o

みこと「……私も……行ってみたかった」

マリ「そっか……」

みこと「……ごめんなさい」

マリ「え?」

みこと「私のせいで……行けなくて……ごめんなさい……」

マリ「夜景がきれいなんだって」

みこと「……」

マリ「昨日の夜に行っておけば良かったね。太陽の塔見てもしょうがなかったね〜」

みこと「……キマリさん」

マリ「でも、報瀬ちゃんが面白かったよね。太陽の塔見て、『夜の通天閣って怖いよね』って」

みこと「……うん」

マリ「一瞬空気が止まったよね〜」

みこと「……」

マリ「みこっちゃん」

みこと「……?」

マリ「私が、観光行くのを我慢して、無理してみこっちゃんの看病してると思ってる?」

みこと「ちがうの……?」

マリ「そう言うだろうって、気を遣うだろうからって、日向ちゃんたち、出かけたよ」

みこと「……」

マリ「日向ちゃんは結月ちゃんの仕事の付き合いでまた万博公園に行ってね」

みこと「……」

マリ「栞奈ちゃんと報瀬ちゃんは道頓堀。大村君とお兄さんはどこ行ったか知らない」

みこと「……」

マリ「私は自分の意志でここに居るんだよ」

みこと「……どうして?」

マリ「南極ってね、とても厳しい世界なんだよね」

みこと「……」

マリ「だから、自分のことは自分で、最低限のことは自分でやらなきゃいけないんだ〜」

みこと「……」

マリ「私が、アマゾネスになろうとしてるのは……何かあった時、隣の人を助けるため」

みこと「……」

マリ「なんて言ったら、厳しさを理解してないって怒られるかもしれないけど……私はそうありたい」


マリ「誰かを失うなんて、絶対に嫌だから」


みこと「――……」


マリ「だから、今はみこっちゃんの側にいさせてよ」


みこと「……っ」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:39:58.94 ID:KmpP0qP0o


マリ「私がここにいるのは、その時誰かを助けられる為でもあるんだから、ね?」


みこと「……うん……っ」


マリ「多分、私だけじゃないんだよ」

みこと「……日向さんたちも……?」

マリ「話をしたわけじゃないんだけど……。私と同じかもしれないって思うな」

みこと「…………」

マリ「あ、ちょっと押し付けがましいかな……?」

みこと「ううん……同じ……だと……思う」

マリ「それならいいんだけど……。はい、うさぎさん!」

みこと「……ありがとう」

マリ「あ、食べられる?」

みこと「うん……」

マリ「よかった。タオル変えるね。結月ちゃんが厨房で借りてきてくれたんだよ」

みこと「……ありがとう、キマリさん」

マリ「いえいえ。どういたしまいて」


……


171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:43:10.42 ID:KmpP0qP0o

―― 出発時刻:デネブ


報瀬「……」ドンッ

栞奈「……」ドドンッ


一輝「なんであの二人、仁王立ちしてるんですか?」

車掌「さぁ……?」


―― 物陰


結月「どうして隠れるんです?」

日向「見ろよ、あの二人……」

結月「……なんで乗らないんでしょう」

日向「いかにも、怒ってますって雰囲気出してるだろ」

結月「風神雷神みたいです。……何かあったんですかね」

日向「いや……私たちがくだらないこと言ったから期待値高めに道頓堀行ったんだろう……」

結月「あぁ……タンクトッぷふっ」

日向「そうそれ。一夜引っ張って、あれを見た時の落胆たるやいやな」

結月「ガッカリしたんでしょうねぇ」

日向「したんだろうなぁ……あ」

結月「あぁ……秋槻さんが近づいて行きましたよ」

日向「まぁ、なんとかなるだろ。私たちは展望車から乗るぞ」

結月「はいっ」



―― デネブ


秋槻「どうしたの、しかめっ面で」

報瀬「会いましたよ、例の写真の人」

秋槻「……ん?」

栞奈「おやぁ? 覚えていらっしゃらない?」

秋槻「ごめん、なんだっけ?」

報瀬「道頓堀に行きました」

秋槻「あぁ……! あれね!」

栞奈「そう、あれです」

秋槻「いや、もっと早く気付くと思ってたからさ……」

報瀬「大人ってずるい」

栞奈「私も見てみたかったんですよ。グラマラスでナイスバディな外国人さんに!」

秋槻「そっか、残念だったね」

報瀬「……ん?」

栞奈「残念ってそんな簡単に片付けていいことでは……ありますけども!」

報瀬「……なにをコソコソと」
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:45:21.09 ID:KmpP0qP0o

―― 4号客車


日向「よし、ここからみことの個室に行こう」

結月「あの二人は放っておくんですか?」

日向「ほとぼりが冷めるまでそうしておく」

結月「……分かりました」



―― 2号客車


結月「というか、コソコソしている必要あるんですか?」

日向「何言われるか分からないだろ? 『よくも騙したぬぁあああ!?』とかさ」

結月「それ、報瀬さんの真似ですか?」

日向「うむ」


報瀬「ふぅん」


日向「あー……、本日はお日柄もよく、絶好の観光日和でございますね〜」

報瀬「猛暑だけどね」

結月「……」スィー

日向「なんだよ! 気付かない方が悪いだろ!」

報瀬「騙したことには変わりない」

日向「ゆづはすぐに気づいただろ! な、ゆづ!? いなーい!」


―― ホーム


結月「ふぅ……。あ、キマリさん」

マリ「あれ、中に居たの?」

結月「いえ、戻ってきたばかりですよ。中にいたのは別の理由です」

マリ「ふぅん?」

栞奈「あのタンクトップの人、お前たちもグルだったのかぁ!?」

マリ「うん」

結月「そうですよ?」

栞奈「あっさりと認めたね、じゃあ許す」

秋槻「暑いのに元気だね……」

一輝「だから元気なんじゃないですか?」

秋槻「だとしたら危険信号だよ」

栞奈「だれの頭がのぼせてるって?」

一輝「おまえだ」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:47:24.56 ID:KmpP0qP0o

日向「おい、ゆづ! 置いてくなよ!?」

結月「もういいじゃないですか、何言われたって……」

日向「ワー結月ちゃんだ! スカート短くて足ながーい! チョーカワイイー!!」

結月「強く殴りますよ。二回ぐらい」

日向「何言われたって気にしないんじゃないのかー」

マリ「車掌服姿で戻ってきたの?」

結月「着替える暇なかったですからね。恥ずかしいですけど」

日向「ゆづの仕事はしっかり見届けて参りました!」ビシッ

栞奈「ご苦労様です!」ビシッ

マリ「あぁ、栞奈ちゃんっ、私のセリフなのにぃ」

結月「日向さん、私が炎天下の中で仕事してたのに、日陰で涼んでいましたよね」

日向「エ? ナンノコト???」

結月「かき氷食べてたって、さくらさんから聞いたんですけど」ズイ

日向「チカイデスワ、ユヅキサン???」

報瀬「そんなことはどうでもいいから、みことはどうなの?」

秋槻「……」

マリ「うん、気分は戻らないけど、食欲はあるみたいだから」

日向「熱は?」

マリ「まだ高いままかな。あ、でも平熱より少し上ってだけだから」

一輝「一応、栄養ドリンクとか買ってきたから。飲ませてやって」

マリ「ありがとう〜、あとで渡しておくね」

栞奈「お、優しいじゃん」

一輝「別に、そんなんじゃねえよ」

マリ「結月ちゃん、持って行っててくれる?」

結月「え? いいですけど……」

マリ「すぐ戻るから」

報瀬「ちょっと待って、どこ行くのキマリ?」

マリ「お土産買ってなかったから、駅の売店見てくる!」

テッテッテ

日向「待て待て待て待て!! ちょっと待てキマリーーーー!!」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:48:42.73 ID:KmpP0qP0o

秋槻「出発まで……あと、10分もないけど」

栞奈「よっしゃ! 私も行ってくるぜ!」

タッタッタ

結月「二次災害!?」

一輝「……中継地点まで見てくる」

タッタッタ

日向「大丈夫かよ……。私も見てくるな」

タッタッタ

報瀬「……秋槻さんは乗っててください」

秋槻「そうさせてもらおうかな……」


……


175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:51:38.22 ID:KmpP0qP0o

―― 11:58


一輝「急げ―!! 2分切ったぞ!」


ダダダダッ

栞奈「ひぃっ、ひぃぃっ」

日向「なんで時間無いのに選んだ!?」

栞奈「面白いキーホルダー多すぎるんだよぉぉぉおお!!」

マリ「ひぇぇええ!」

日向「キマリみたいに直感で買えばよかったろ!?」

栞奈「予算の都合上しょうがないっしょ!」


一輝「ケンカしてないで全力で走れよ!!」


栞奈「走ってますぅうう!!」


ダダダダッ
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:52:35.49 ID:KmpP0qP0o

―― デネブ


報瀬「急いで! 早く!!

結月「あ、あぁ……っ」ハラハラ


ダダダダッ


マリ「よし、間に合った!!」

日向「報瀬! ゆづ!!」

栞奈「どいてどいてー!」


ダダダダッ


マリ「セーーッフ!!」

日向「ふぅぅ……はぁぁ」

栞奈「ひぃ……ふぅぅ……いやぁ、スリルあって面白かったねぇ」


プシュー


報瀬「……本当に、何してるの」

結月「……」

マリ「でも、間に合った……!」

日向「そうそう……あれ?」

一輝「……」

栞奈「どうしたの、一輝」

一輝「時計、見てみ?」

栞奈「……12時2分」

日向「ッ!?」

マリ「……?」

結月「アウトです」


ガタン

 ゴトン



……


177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:53:29.10 ID:KmpP0qP0o

―― 動力車


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


車掌「…………」


栞奈「窓ふきでもしましょうか?」

車掌「結構です」

日向「バカ……!」

栞奈「いや、だって……」

マリ「ごめんなさい……!」ペコリ

車掌「これで、何度目でしょうか?」

栞奈「二度目……?」

日向「いえ、三度目……です……」

栞奈「あ……私が乗る前にもやったのね……」

マリ「…………ごめんなさい」

車掌「……ふぅ」

日向「……」

栞奈「……」

マリ「……あの、お願いがあるんですが」

車掌「え……?」


……


178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:54:51.55 ID:KmpP0qP0o

―― 展望車


さくら「それで発車が遅れたのねぇ」

結月「はい……、秋槻さんが事情を話してくれたから車掌さんが時間に猶予をくれて」

報瀬「おかげで、乗り遅れずに済んだよね」

結月「助かりましたね」

さくら「そんな簡単なことじゃないのよ?」

報瀬「?」

さくら「ダイヤが乱れるとお客さんが困っちゃうでしょ。特に日本では」

報瀬「……?」

結月「大都市ではそうですよね……」

さくら「でも、粋なことするのねぇ。感心しちゃうわ、その人♪」

報瀬「これから、キマリは外出禁止にしよう」

結月「そうですね」


ピンポーン


さくら「あら、車内放送ね」

結月「発車前にも説明がありましたよね」

報瀬「車掌さん、可哀想に――」


『み、みなさんこんにちは、玉木マリといいます』


結月報瀬「「 え!? 」」


『発車が遅れたのは私のせいです。
 この場を借りてお詫びさせていただきます。ごめんなさい!』


結月「……」

報瀬「……」


『お土産に何買おうかって迷ってしまって……。――あ、それはどうでもいい?』


結月「日向さんが止めてるんですかね……」

報瀬「というか、この放送を止めてよ日向……」

さくら「うふ」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:56:09.47 ID:KmpP0qP0o

『え、えっと……とにかく、申し訳ありませんでした!』


『ゴンッ』


『はぅあ!』


ピンポーン


結月「今の音、なんです?」

報瀬「頭下げて、マイクにぶつけたんでしょ……」

結月「なんて定番な……」

さくら「これを聞いて怒る人いないでしょ。結月ちゃん、いい友達持ったわねぇ」

結月「はい!」

さくら「あら、いい返事」


……


180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:59:20.86 ID:KmpP0qP0o

―― 食堂車・厨房


車掌「もぅ……あの子たちったら……」

料理長「なんだよ、来て早々愚痴か?」

車掌「そうじゃないです。予想を超えてくるから対応に困ってるんです!」

料理長「それを愚痴って言うんだよ。それで、あの放送は?」

車掌「謝らせてくれって言ってきて。……お客様一人一人に謝りたいって言うんですよ」

料理長「それで車内放送か。まぁ、イベントがあれば乗客も喜ぶだろ」

車掌「旅行列車ですからね、お客様からのクレームはありませんでしたけど……」

料理長「駅長に何か言われたか?」

車掌「……はい。先ほど連絡がありました」

料理長「あっはっは、いい経験したじゃないか」

車掌「他人事だと思って」

料理長「トラブルなんてマニュアル通りにいかないことばかりだ。
     悩むのはいいけど、あの子らの前でその態度見せるなよ」

車掌「……」

料理長「本当に困ってるのか?」

車掌「あ、いえ……。私たちの時も車掌さんを困らせてたのかなって思って」

料理長「まぁそうだろ。でも、うまく対応してたぞ」

車掌「……そうですよね」

料理長「思い通りに行く旅なんてつまらないからな。そう思ったから放送を許したんだろ?」

車掌「そう……です」

料理長「私は悪くないと思ったよ。だから、自信持て、『車掌さん』なんだから」

車掌「……そうですね。今は、私が『車掌さん』なんですから」

料理長「話くらい聞いてやるから、また来いよ」

車掌「はい、ありがとうございます」


店員「りょーりちょー、注文入りまーす」


料理長「おいこら、なんだその気合の入らない声は」

店員「……すいません」

車掌「同い年の子たちが楽しそうにしてるから、羨ましいんですよね」

店長「車掌さん……分かってくれて嬉しい〜っ」キラキラ

料理長「はいはい、理解が足りない上司で悪かったね」

車掌「ふふ、それでは」

スタスタスタ...

店長「格好いいなぁ、車掌さん……本当、憧れるな」

料理長「はやくオーダーを言え!」


……


181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:01:49.09 ID:KmpP0qP0o

―― 展望車


マリ「それで、みんなを集めてどうしたの?」

日向「みことは?」

マリ「日向ちゃんが迎えに行ってる」

日向「私、ここに居るんですけど? 行けってことか?」

マリ「あ、栞奈ちゃんね。間違えちゃった〜」

日向「白々しいな」

栞奈「その栞奈ちゃんも此処に居るんだけどね」

日向「ゆづが行ったんだな」

報瀬「これ、限定コーヒーなの?」

マリ「うん、そうだよ」

報瀬「縦縞だ……」

栞奈「みんな、食べていいよ」

日向「面白い恋人?」

報瀬「白い恋人の……パクリ?」

栞奈「オマージュって言うんだぜ、お嬢さん」


結月「お待たせしました」

みこと「……」


日向「おー、顔色良くなったな」

みこと「……うん、薬飲んだら熱も下がって」

栞奈「良かった良かった」

マリ「私の寝ずの看病のおかげだね」エッヘン

結月「3時間くらいで威張らないでください」

みこと「うん、ありがとう……」

マリ「冗談だから、真に受けないで〜」

栞奈「うん、美味しい」モグモグ

結月「え、白い恋人……? じゃないですね」

栞奈「面白い恋人」

結月「ふぅん」

日向「この反応は道民の反感を買うってことか」

結月「勝手に北海道代表にしないでください」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:06:00.67 ID:KmpP0qP0o

マリ「それで、話は?」

日向「待って。ゆづ、大村と秋槻さんは?」

結月「見かけませんでしたよ?」

日向「そっか……」

栞奈「二人が居ないとダメな話?」

日向「まぁ、人数的にな」

マリ「なになに?」

日向「この旅の目標を考えてみました」

報瀬「目標?」

日向「それは……」

マリ「私たちと意思疎通が出来るようになること!」

結月「なんです、それ」

日向「キマリが勝手に決めたみことの目標だな」

みこと「うん」

報瀬「他人の目標を勝手に……。先に自分のを立てるべきだと思う」

マリ「同じこと日向ちゃんにも言われました」

栞奈「もぐもぐ……喉乾いたな」

日向「それでな、金沢で面白いイベントがあるのを見つけたんだよ」

マリ「祇園祭だっけ」

報瀬「それは次の京都ね」

結月「適当に覚えてますね」

みこと「金沢……?」

栞奈「なにかあったっけ? あ、ちょうどいいとこに」


一輝「……ん?」


栞奈「一輝〜、ちょっとジュース買ってきてよ〜」

一輝「ふざけんな」

スタスタスタ...


栞奈「アイツ、モテないね。こんな麗しき乙女に暴言吐くなんて」

結月「大体の人はそう思うと思いますよ」

みこと「なにがあるの?」

日向「金沢の片町ってとこでさ、大なわとび大会というものがあるんだよ」

報瀬「……そう」

マリ「むむっ!」ビビビ

結月「町内会の大会、とかじゃないんですか?」

日向「私もまだ規模とかは分からないんだけどさ、10人で参加できるんだ」

栞奈「ほぉ、それに参加したいと?」

日向「YES!」
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:09:14.16 ID:KmpP0qP0o

マリ「軽く電気が流れる感覚キタ……! 出よう!!」

報瀬「……言うと思ったけど。……誰が参加するの?」

日向「私、キマリ、報瀬、ゆづ、みこと、栞奈、大村、秋槻さん」

みこと「8人だよ……?」

報瀬「あと2人は?」

日向「車掌さんとか?」

結月「巻き込むつもりですか」

日向「他に知り合い居ないんだもん!」

マリ「……」ポチポチ

みこと「……?」

栞奈「……あの、さ」


一輝「ほらよ」


栞奈「?」

一輝「いや、飲み物欲しいって言っただろ……売店で買ってきたんだけど……」

栞奈「おー、ありがとー。気が利くじゃん! モテる男は違うね〜」

結月「さっきと言ってることが正反対ですね……」

日向「大村さ、金沢での予定空けておいてな」

一輝「……?」

報瀬「栞奈、さっき何か言いかけてなかった?」

栞奈「あぁ、うん……私さ、松本で降りるんだよね」

マリ「え!? そうなの!?」

日向「……そんな驚くことか?」

マリ「だって……!」

栞奈「そのなわとび大会……参加できないんだよね」

報瀬「なんで?」

栞奈「いや、だからね……松本で降りるから」

結月「???」

一輝「栞奈……おまえ、勘違いしてないか?」

栞奈「勘違い?」

日向「金沢の次が松本なんだけど……?」

栞奈「知ってた」

報瀬「じゃあ、なんで参加できないの?」

栞奈「持病の睡眠不足が……」

日向「特に問題ないわけだな」

栞奈「……はい」

一輝「やっぱり勘違いかよ」
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:11:50.00 ID:KmpP0qP0o

みこと「キマリさん、どうして驚いてたの?」

マリ「……松本の次が高崎だから」

みこと「?」

日向「私と報瀬、そこで降りるんだよ」

結月「そうでしたね」

マリ「私とみこっちゃん、東京まででしょ」

みこと「……うん」

結月「私もですよ。忘れないでください」

マリ「忘れてないよ。うっかりだよ」

一輝「……」

栞奈「一輝は?」

一輝「……金沢」

日向「あ、そういえばそうだった」

結月「ということは、東京からこの列車、私たち誰も乗っていないんですね」

マリ「……」

みこと「……」

日向「なんか、想像できないな」

報瀬「そんな先のこと考えるより、その大会のこと考えるべきじゃない?」

栞奈「そうだね。作戦を練ろうか。まず最初に私が飛ぶでしょ」

日向「順番とかないぞ。全員一緒に跳ぶんだからな」

栞奈「なるほど、そういう方向ね。ということは、滞空時間を計算に入れつつ、
   金沢の重力と私たちの跳躍力も考慮していかなければならないわけだが」

報瀬「ごめん。悪いけど、ちょっと黙ってて?」

栞奈「……」

結月「バッサリですね」

一輝「そんな悲しそうな顔するなよ」

栞奈「……うん」

一輝「というか、その大会ってなわとび?」

マリ「そうだよ」

一輝「……俺も数に入ってるのか?」

栞奈「光栄に思いなさいよ〜? 
    こんな美少女とジャンプできる機会なんてそうそう無いんだからね」

一輝「復活早いなお前。……まぁ、考えとく」

マリ「考えとくじゃなくて、決定ね! 数が合わないから!」

結月「あと2人はどうするんです?」

マリ「私に考えがありまして。そこは任せてください」

みこと「だれ?」

マリ「お楽しみってことで」
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:13:39.61 ID:KmpP0qP0o

日向「よし、じゃあ、全員参加でいいな?」

報瀬「いいよ。どうせ大した規模じゃないでしょ」

結月「そうですね。みんなで何かやるのも面白そうですし」

みこと「……秋槻さんの確認は?」

日向「まだだ」

マリ「私、声かけてくるね!」

テッテッテ

みこと「……」

報瀬「練習とかは?」

結月「ぶっつけ本番は無しですよ?」

日向「そこは相談だ」

栞奈「一輝、おにぎりが食べたい。食堂車行って――」

一輝「ふざけんな、マジで」

栞奈「分かったわよ! 私が行けばいいんでしょ!」ガタッ

一輝「なんでキレてんだよ!」

栞奈「一輝はいつもそうなんだから。あの頃から何も変わってない……」

スタスタスタ...

一輝「ちょっと待て! おまえと会ったの昨日の朝だぞ!?」

スタスタスタ...


結月「なんですか、あれ」

みこと「夫婦漫才……」

日向「まさにそれだな」

報瀬「本当に息が合ってるよね」


秋槻「……ケンカしてるんだか、漫才してるんだか」


日向「あ……」

結月「キマリさん、話したんですかね」

報瀬「聞いてみればわかるでしょ。……みこと?」

みこと「……ッ」

報瀬「顔赤いけど、大丈夫?」

みこと「……う、うんっ」
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:14:14.85 ID:KmpP0qP0o

秋槻「なにか話があるって聞いたけどなにかな?」

日向「キマリからなにも聞いてない?」

秋槻「……うん」

結月「日向さん、みことを個室へ連れていきますね」

日向「え?」

報瀬「体調が悪くなったみたいで」

日向「わかった……。大丈夫か、みこと?」

みこと「うん……っ」サササッ

結月「あ、ちょっと待って」

テッテッテ

報瀬「様子見てくる」

日向「うん、任せた」

秋槻「まだ良くなってないんだ?」

日向「さっきまで大丈夫そうだったけど……」

秋槻「……」

日向「それで、話というのが――」


……


187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:15:18.82 ID:KmpP0qP0o

―― 食堂車


マリ「えっと、店員さんのお名前は?」

店員「私?」

マリ「うん」

店員「私の名前は、宮城綾乃」

マリ「みやぎ……? ひょっとして沖縄の人?」

綾乃「そうだよ」

マリ「なんくるないさーだよね」

綾乃「それ、よく言われるよ。沖縄の方言ってそれがメジャーになってるみたいでさ」

マリ「あ、よく聞くとイントネーションが違う」

綾乃「あの、仕事中なので用事が無かったらお喋りはこれくらいでいい?」

マリ「ごめんなさい、邪魔しちゃって」

綾乃「ううん、気にしないでいいよ」

マリ「また後で話できる?」

綾乃「うん、いいけど。なにがある?」

マリ「じゃあ手短に。私たちとなわとび大会に参加して欲しいんだ〜」


……


188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:16:01.32 ID:KmpP0qP0o

―― 売店車


マリ「よし、綾ちゃんも参加決定……と、後は――」

店員「京都の観光ガイド、いかがですか?」

マリ「ください!」

店員「はい、どうぞ」

マリ「ありがとうございます」

店員「どこか行かれる場所はお決まりですか?」

マリ「祇園祭に行きたいなって」

店員「……そうですか」

マリ「よし、みんなで行こう」

店員「そういえば、先ほどお友達の三人が急いで通って行かれましたよ」

マリ「三人?」

店員「はい、あの中学生の子が慌てていた様子でした」

マリ「……そうですか、分かりました。行ってみます」


……


189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:19:12.24 ID:KmpP0qP0o

―― 寝台車


報瀬「あぁ、キマリ」

マリ「みこっちゃん、どうしたの?」

報瀬「具合が悪くなったみたいで、いま結月が看てくれてる」

マリ「そっか……。ぶり返したのかな」

報瀬「それ、観光ガイド?」

マリ「そうだよ、見る?」

報瀬「うん」

マリ「どうぞ」

報瀬「ありがと……。どこ行くか決めてるの?」

マリ「祇園祭」

報瀬「ふぅん」

マリ「みんなで、行こうね」

報瀬「人多くない?」

マリ「人が集まるから祭りになるのではなく、祭りだから人が集まるのである」

報瀬「うーん、20点」

マリ「低い……」


ガチャ


結月「あ、キマリさん……。報瀬さんも待っててくれたんですね」

マリ「みこっちゃんはどう?」

結月「大丈夫みたいですよ。中に入って話してみれば分かります」

マリ「そうだね。みこっちゃん、入るね〜」

スタスタスタ...

報瀬「やっぱりまだ回復してなかったんだ?」

結月「いえ……原因は別にあるような気がします」

報瀬「?」

結月「なんでもありません」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:20:29.63 ID:KmpP0qP0o

報瀬「というか、キマリ……部屋の扉開けっ放し……」

結月「もぉ、ちゃんとしてくださーい」


「あ、ごめーん」


秋槻「様子はどう?」


報瀬「大丈夫みたいです」

結月「……秋槻さんも様子を見に?」

秋槻「これを渡しに。お粥なんだけど――」


バタン!


報瀬「うわっ、びっくりした!」

結月「……」

秋槻「あ、ごめん、デリカシーが無かったね」

報瀬「そんな勢いよく閉めなくても……」

結月「まぁ、女の子の部屋ですからね」

秋槻「それでさ、これ料理長から」

報瀬「作ってくれたんですか?」

秋槻「車掌さんが栄養のあるの物をって相談してくれたみたいで」

報瀬「分かりました。食べさせます」

結月「……」ジー

秋槻「うん、よろしく……」
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:21:10.46 ID:KmpP0qP0o

結月「……」ジー

秋槻「……な、なにかな」

結月「いえ、なんでも」

秋槻「それじゃ……」

スタスタスタ...

報瀬「冷める前に食べてもらおう」

コンコン

ガチャ

報瀬「うわっ、早いっ」

みこと「……中、見られた?」

報瀬「秋槻さんに?」

みこと「……」コクリ

結月「……」

報瀬「角度的に見えなかったと思うけど」

みこと「……」ホッ

キマリ「みこっちゃん、見た目元気そうなんだけど……勢いよく扉閉めたし」

結月「……なるほど」

報瀬「散らかってないし、変でもないよ?」

マリ「うん、見られても困らないよね」

みこと「……そうだけど」

結月「これだから、報瀬さんとキマリさんは……」ハァ


……


192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:22:06.10 ID:KmpP0qP0o

―― 3号車


栞奈「えっ、あの子、中学生なの?」

日向「うん、なぜか大村には17だと言い張るんだけどな」

栞奈「へぇ、どうしてよ」

日向「なんか、プライドがあるんだろ」

栞奈「……プライド、ねぇ」

日向「だから、あまり弄るなよ?」

栞奈「分かった。みことちゃんに関してはね」

日向「なんだそれ、大村に関してはイジるってか。……まぁ、栞奈の好きにしたらいいけど」

栞奈「というか、なんでみことって呼んでるの?」

日向「キマリがそう呼び始めたからだよ。本人も嫌がってないからいいかなって」

栞奈「ふぅん」

日向「って、話してる場合じゃない。京都はすぐ着いてしまう」

栞奈「あ、撮影ね? こっちの準備は出来てるよ」

日向「……」


……


193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:24:07.84 ID:KmpP0qP0o

―― 展望車


結月「またここですか?」

日向「ここが画的に自然なんだよ。な、プロデューサー」

みこと「……え?」

日向「まだ熱あるのか?」

みこと「ううん。いつの間に昇格したのかと思って」

日向「ナウだ」

結月「それ……死語ですよね」

栞奈「死語だね、日向は古いな〜。昭和か?」

日向「冷静に突っ込まれたらなんか腹立つな……!」

マリ「それ知ってるよ。ナウなギャングにバカウケ。だよね」

みこと「どういう意味?」

報瀬「今時の物騒な人たちが爆笑してるってこと?」

マリ「そういうこと!」

栞奈「あはは」

みこと「これを撮ればいいのに」

日向「そうだな、もう回すぞー?」

マリ「それでは始めてみますどすえ」

栞奈「いつでも来いどすえ」

結月「怒られますよ、京都以外の人たちにも」

マリ「全国を敵に回す発言だった!?」

報瀬「待って! 台本は!?」

日向「だから、無いって。栞奈は大人しくしててくれ」

栞奈「オッケー!」

日向「信用してるからな?」

栞奈「ふふふ」

日向「……なんかやる気だな。まぁいいや、みこと、合図して」

みこと「……スタート」
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:26:44.57 ID:KmpP0qP0o


「つ、次は京都ですってー」

「あからさまな説明ですね……」

「京都弁ってかわいいよね」

「……」

「言葉が柔らかいですよね。私も好きです」

「結月ちゃん、言ってみてよ」

「……」

「えぇ……。じゃあ……、よ、よろしおすぇ……?」

「ん?」

「……」

「分からないんじゃないですか!」


日向「報瀬ー、喋れー」


「きょ、京都はどこ行くー?」

「清水寺に行ってみたいんですよね」

「行こう行こう」

「……」

「報瀬さんはどこ行きたいですか?」

「えっ!?」

「なんで驚いてるの……?」


みこと「油断してたよ」

日向「話題振ったら仕事終わったって顔してたな……」


「やぁやぁ、どーもどーも、鳥羽栞奈でーす」

「あ、栞奈ちゃん入ってきた……!」


日向「おい、こらー!」

みこと「駄目なの?」

日向「そりゃ……私たちの……動画だから……」

みこと「契約とかあるってこと?」

日向「どうなんだ、ゆづ?」

結月「この件での契約はないですよ。むしろ自由でいいそうです」

みこと「それなら、問題なし?」

日向「ふむ……そうだな……」

栞奈「発声練習はしてたし、かちゅゼツだって問題ないでしょ?」

日向「そこで噛むなよ!」
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:28:42.65 ID:KmpP0qP0o

マリ「練習してたの?」

栞奈「あいうえお! かきくけこ! 百日紅!」

日向「誰がコイツをコントロールするんだ?」

結月「……」

マリ「……」

栞奈「自分のことは自分で、でしょ?」

日向「出来てないから言ってるんだよ……」

みこと「日向さんは?」

日向「え、私?」

みこと「配信された動画でも参加してたよね」

日向「それはそうだけど……」

マリ「決まりはないんだから、やってみようよ」

栞奈「キマリだけに!」

結月「ダメもとでやってみましょう。当たって砕けましょう」

日向「ポジティブなのかネガティブなのか……諦めてないか?」

結月「あれこれ決めていたら進まないからです。半分諦めてます」

日向「確かに……それもそうだな」

栞奈「あのさ、一つ決めた方がいいと思うことがあるんだよ」

マリ「なに?」

栞奈「無視をするのはやめよう、これは絶対に」

マリ「あ、分かる! 寂しくなるよね!」

日向「報瀬どこ行った?」

みこと「あっちでお婆ちゃんと話してる」


「楽しそうなことしてるのねぇ」

報瀬「みんな勝手なことばっかりするから、困ってしまって」

「自由にできることはいいことよ。でも、まとめ役も大変ね」

報瀬「本当に、自由気ままな連中をまとめるのも大変です。アハハ」


マリ「あんなこと言ってる……」

結月「あの方って、報瀬さんが言ってた……?」

日向「お子さんからプレゼントされたって人か」

栞奈「なにそれ?」


秋槻「気になる」


みこと「――ッ!」

日向「え、あぁ、……えっと」

秋槻「声かける気は無かったんだけど、気になってね」

マリ「還暦のお祝いに乗車をプレゼントされたって言ってた」

栞奈「いい話おすな」
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:29:57.29 ID:KmpP0qP0o

秋槻「詳しく話聞きたいな……」

結月「私もです……」

日向「秋槻さんはともかく、なんでゆづまで?」

結月「乗客のみなさんにインタビューしてるんですよ。乗車した理由を」

マリ「今だったらいいんじゃないかな、報瀬ちゃん通して」

結月「そうですね、行ってきます」

テッテッテ

秋槻「俺も付いて行こう」

スタスタスタ

マリ「私もー」

テッテッテ

栞奈「なんで秋槻さんが?」

日向「仕事で色々話聞きたいんだって」

栞奈「ふぅん……仕事、か」

日向「どした?」

栞奈「ううん、なんでもない……」

日向「……?」

みこと「……ふぅ」

日向「みこと、大丈夫か?」

みこと「え?」

栞奈「顔赤いよ?」

みこと「だ、大丈夫……うん」

日向「……」


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


日向「観光地でもカメラ回すか……」

みこと「……」ジー

栞奈「金閣寺と銀閣寺とパール閣寺に行くけど、付いてこれる?」

日向「はいはい」

栞奈「流すのも禁止!」


……


197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/02/14(木) 23:50:10.85 ID:d0w3nVrno

―― 京都


プシュー


マリ「よっ」

ピョン

マリ「第4の都市、到着!!」バッ

結月「キマリさん、そこでポーズ取られると邪魔です」

マリ「はい」

日向「今日もいい天気で最高だな! ひゃっほー!」

報瀬「自棄にならないで」

みこと「……ぅ、暑い」

マリ「大村君から帽子借りてきたよ」

みこと「?」

結月「野球帽ですね」

マリ「ほら、被って」

みこと「ううん、いい」

マリ「でも、熱中症が怖いでしょ?」

みこと「大丈夫だから」

報瀬「……」

日向「少しでも対策しないなら置いて行くぞー」

みこと「……」

結月「でも、嫌がってますよ」

マリ「うーん……」


秋槻「あぁ、居た居た」


マリ「?」

秋槻「ほら、帽子……って、もうあるんだ」

結月「麦わら帽子……?」

日向「えっ、それ女性用じゃ……?」

報瀬「そんな趣味が……」ゴクリ

秋槻「無いから。食堂車の店員さんに借りたの」

マリ結月報瀬日向「「「「 ホッ 」」」」

秋槻「よかった、疑惑が晴れて」

みこと「……っ」

秋槻「はい、暑さ対策は必ずね」

みこと「…………うん…」

秋槻「それじゃ」

みこと「……あ……ありが」

秋槻「お礼なら車掌さんに」

スタスタスタ...

みこと「……」ギュッ
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/02/14(木) 23:52:26.03 ID:d0w3nVrno

報瀬「水も持ってるよね?」

みこと「うん」

結月「あ、似合う似合う」

マリ「白いワンピース買いに行こ! 絶対に似合うから!」

栞奈「あと、虫かごと虫取り網も!」

日向「ワンパク小僧にする気か!」

みこと「……」

報瀬「本人は乗り気じゃないみたいだから、却下ね」

マリ「う〜ん……惜しいなぁ」

栞奈「絶対に似合うと思うんだけどな〜」

結月「似合ってたまりますか。都会の真ん中で虫かごと虫取り網なんて」

日向「栞奈も一緒に行くか?」

栞奈「どこ行くの?」

マリ「祇園祭だよ、氷見でやってる」

栞奈「……ん?」

報瀬「……?」

結月「ひみ……?」

日向「調べてみる……」ポチポチ

みこと「祇園祭はもう終わってるよ」

マリ「え、だって……台風で延期になったって書いてあったよ」

みこと「ううん、京都の祇園祭は終わってるってこと」

マリ「そんなまさか」

結月「内心焦ってますよね」

報瀬「平静を装ってるけどね」

日向「氷見の祇園祭って、富山だろ……。それも終わってるし」

みこと「……」

マリ「………………」


マリ「…………」


マリ「……」


マリ「どんまい!」

栞奈「私は行きたいね、祇園祭。いや、行こうじゃないか」

一輝「行けるなら行けよ」

栞奈「なんでアンタは私に辛口なの?」

一輝「やってないって言ってるのに行きたいって言うからだろ」
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/02/14(木) 23:54:08.15 ID:d0w3nVrno

マリ「大村君、これありがとー」

一輝「あぁ……うん」

みこと「……」

一輝「なんだ、あったのか」

報瀬「借りたんだけどね」

一輝「それならいいですけど」

栞奈「貸して」

マリ「はい」

栞奈「……どうよ?」

結月「あ、似合う」

みこと「うん」

報瀬「意外と似合うね」

日向「栞奈、ボーイッシュだからな」

栞奈「これでパリコレ出たらどうなるかな、注目の的?」

一輝「そうだな、指さされて笑われるだろう」

栞奈「この!」ドカッ

一輝「痛っ」

結月「というか、なんでパリコレ……」

マリ「じゃあ、どこ行く?」

報瀬「祇園でいいんじゃない? 清水寺も近いでしょ」

日向「でも、暑くないか?」

結月「この気温ならどこも暑いですよ」

みこと「……私に気を遣わなくてもいいよ?」

マリ「何を言ってるの、熱中症を甘く見ないほうがいいよ」

みこと「……っ」

栞奈「強く言いすぎじゃない?」

日向「いや、キマリの言うとおりだ」

報瀬「対策はしてるし、私たちが気を付けていれば大丈夫でしょ」

結月「……そうですよ」

一輝「……」

マリ「今のみこっちゃんは平常な状態とは言えないんだからね」

日向「うん、無理するくらいなら観光はしないほうがいいな」

みこと「……でも」

報瀬「別に無理をさせるって話じゃないでしょ?」

結月「塩分の濃い飴も持っていますから」

マリ「それなら、涼しいところにしよう」

栞奈「海とか川とか? 川と言ったら、鴨川があるね」

マリ「もっとこう、涼やかな……目を閉じるとそこは……雪国でした、っていう」

栞奈「涼しい通り越して寒いでしょ」

マリ「イメージだよ、イメージ」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/02/14(木) 23:55:55.28 ID:d0w3nVrno

栞奈「じゃあ、北極、かな」

マリ「涼しい通り越して痛いよ。寒いレベル超えたら痛いんだよ?」

栞奈「知ってるよーん」

一輝「バカなこと言ってる場合じゃないって」

マリ栞奈「「 え? 」」

みこと「……っ」

日向「まだ休んでいた方がいいだろ、
   今は大丈夫でも外に出たら歩いてるだけでも倒れる危険性があるんだぞ」

報瀬「だからそうならないように対策とってるでしょ。私たちも気を配るから」

日向「自分で無理だって思った時点でもう遅いってのは知ってるだろ」

報瀬「ここはそこまで警戒するほどの場所じゃない」

日向「そういうこと言ってるんじゃない」

報瀬「じゃあなに?」


栞奈「どうしたの?」

結月「みことを休ませたい日向さんと、観光に行かせたい報瀬さんで対立しているんです」

マリ「……」

一輝「止めないのか?」

マリ「二人が納得しないと意味が無いかなって」

一輝「……」


みこと「……っ」

日向「もし、もしだぞ。みことが倒れて、家に連絡がいったとしたら……両親がどう思うのか」

報瀬「……」

日向「……それだけは、あってはいけないって……思うんだよ」

報瀬「うん」

日向「だから、私は安全を最優先したい」

報瀬「分かった」

日向「報瀬は?」

報瀬「私は、出来るなら行動した方がいいと思ってる」

日向「……」

報瀬「デネブが停車している時間は24時間。たった24時間しかないから」

日向「そうだな」

報瀬「この時間を無駄にしてはいけないって思う」

日向「分かった」

報瀬「……」

日向「……」
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/02/14(木) 23:56:44.78 ID:d0w3nVrno

みこと「やっぱり……私が……」

日向「みこと、私はなにも観光に行くな、とは言ってないぞ」

みこと「……っ」

報瀬「だからと言って、みことが遠慮したら何も解決しない」

みこと「どうすればいい……?」チラッ

マリ「え? あぁ……えっとぉ……」

結月「気温が下がる夕方から移動を始める……とか」

栞奈「まぁ、それが最善策かな?」

一輝「……」

マリ「うーん……安全に移動できればいいんだよね……」

報瀬日向「「 どうやって? 」」

マリ「簡単に答え出せたら言い合いになってないよ!」


秋槻「一つ、案があるんだけど」


みこと「……え?」

マリ「ん?」


……


202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/02/14(木) 23:58:13.34 ID:d0w3nVrno

―― 京都駅周辺・レンタカーショップ


報瀬「この手があった……!」

日向「車かー!」

みこと「大きい……」

マリ「さっそく一番〜」

ヒョイ

結月「あ、ずるいですよキマリさん!」

栞奈「二番〜♪」



―― 車内


秋槻「えっと……ギアはこれで……」

一輝「どうして戻ってきたんですか?」

秋槻「忘れ物を取りに……。えっと、サイドブレーキがこれかぁ……慣れない配置だ……」

一輝「……」

秋槻「よし……。じゃ、ナビよろしくね」

一輝「いいですけど、カーナビがあるじゃないですか?」

秋槻「まぁ……うん。そうなんだけどさ……」

一輝「……もしかして、信用してない、とか」

秋槻「まぁね……。ある程度は信じてるんだけど、細かい場所は不安でね……」

一輝「いいですよ。俺も父さんの助手席でナビしてますから」

秋槻「助かるよ。……というか、心強い」

一輝「……」


栞奈「いやぁ、いいねぇ! 安全に移動出来て時間を無駄にしない方法!」

マリ「最高の一手だね!」

日向「大人がいるっていいな〜! 車だぞ車!!」

報瀬「うるさい、しずかにして」

結月「みこと、車酔いは大丈夫?」

みこと「うん、薬飲んだから」


一輝「後ろ煩いですけど、大丈夫ですか?」

秋槻「うん……うん……」カチッ

ドルルルン


栞奈「あ、エンジン入った! もぉ、ワクワクしちゃって楽しい〜!」

マリ「うんうん! なんかテンションあがる〜!!」

日向「さぁ、秋槻さん! レッツラゴーー!」

報瀬「三バカ……」

結月「レッツラゴー!」

みこと「結月さんまで……」
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/02/14(木) 23:59:51.06 ID:d0w3nVrno

一輝「お前らな……」


栞奈「どうした、一輝? テンション低いぞ〜! こんな経験滅多にないんだぞ〜!?」

日向「そうだぞ〜! 楽しまなきゃソンソン!」

マリ「踊らにゃ損々♪」

栞奈日向「「 私らは阿呆か!! 」」

報瀬「その通りでしょ」

日向「こりゃ一本取られたな!」


栞奈日向マリ「「「 あははは!! 」」」


結月「酷いテンションですね」

みこと「……」


秋槻「……」ゴクリ


報瀬「あれ……?」

結月「……秋槻さんの雰囲気がおかしい」

みこと「うん……」


一輝「秋槻さん、凄い緊張してるんだよ」


栞奈日向マリ「「「 ……え? 」」」


秋槻「じゃあ、出発……!」


ドルルルン

 プスン


マリ「え?」

日向「止まったぞ……?」

栞奈「……これは?」


一輝「エンストした」

秋槻「ご、ごめん……」


報瀬「……」

結月「……」

みこと「……」
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/02/15(金) 00:01:04.61 ID:Lq37L7IXo

ドルルルン

秋槻「……出発!」


ブォーン


秋槻「よし……」

一輝「……」

秋槻「あれ、出口は……?」

一輝「あっちです」


日向「……大丈夫か、これ」

栞奈「……アタリマエデショ」

マリ「ウン」

報瀬「……」

結月「……」

みこと「……」


シーーン


……


205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/04/08(月) 09:09:44.20 ID:MQ6xVShUo

―― 比叡山ドライブウェイ


ブォォォ


マリ「なんか、運転慣れたっぽい?」

日向「ふぅ……一時はどうなることかと」

結月「えっと、綾乃さん……でしたね」

綾乃「うん、そうだよ」

報瀬「おかげで助かった……ありがとう」

綾乃「ううん……私は別に……なにもしてないよね?」

栞奈「助言のおかげで、秋槻さんも落ち着けたからね」

みこと「同乗者が緊張したら運転手も緊張するって……」

綾乃「私もよく分からないけど、そう言うもんだってオト―が言ってたから」

日向「オト―? お父さんのこと?」

綾乃「うん。でも、こっちこそありがとね、誘ってくれて」

マリ「駅前で見つけてラッキーだったね」


一輝「運転歴、無いわけじゃないですよね?」

秋槻「免許取りたてのころは遠出したもんだけどね、
    仕事が忙しくなったらそれもできなくなって」

一輝「通りで。ペーパードライバーってわけでもなさそうですから」

秋槻「こんなに乗せての運転は初めてだけど」

一輝「そうですか……。あ……」

秋槻「ここから京都が一望できるんだね」


栞奈「みんな、見て!」

マリ「おぉー! 京都だ!」

結月「いい景色ですね……」

綾乃「わ……こんなの初めて見た」

報瀬「そうなの?」

綾乃「うちの地元じゃ、山から見下ろしたらすぐ海だから……こんな開けたとこ無いよ」

マリ「……」

みこと「キマリさん……?」

マリ「みんな、それぞれの世界があるんだね」

みこと「…………」

日向「電車移動だったら見られなかったな」


……


206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/04/08(月) 09:11:27.25 ID:MQ6xVShUo

―― 延暦寺


ミーンミンミン

 ミーンミンミン


栞奈「せみ時雨 あっという間に 雷へ」

日向「……解説のキマリさん、今の句はどう解釈すればいいのでしょう」

マリ「セミの鳴き声が雨のように降り注いでいたら、あっという間に雷が鳴ったと。
   夏の天候の変わりやすさを表現しているわけですね」

日向「はぁ、なるほどぉ……。
   浅いようでいて、実はそうでもないわけでもなかったわけですね」

結月「つまり、浅いままだと」

栞奈「空の青 吸い込まれそうな エメラルド」

日向「解説を」

マリ「これは彼女独特の世界がありまして……私ごときでは、解読できそうにありません」

結月「つまり、わけが分からないと」

日向「報瀬と綾乃はどこ行った?」

結月「東塔を見てくるって言ってました。国宝ですからね」

日向「国宝か……それは見ておかないとな!」

マリ「行こう! みこっちゃん達はどうするー?」


みこと「……」フリフリ

秋槻「それじゃ、俺もここで待ってるか」

一輝「……俺も」


マリ「分かったー。あとでねー」

栞奈「国宝を いただきます 怪盗より」

日向「もう俳句でも何でもないよな」

結月「大村さん、邪魔ですね……」

マリ「え?」

結月「いえいえ、なんでも」

栞奈「腹減った あとで食べよう 名物を」

日向「誰かこいつを止めてくれー」


ミーンミンミン

 ミーンミンミン

207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/04/08(月) 09:13:39.25 ID:MQ6xVShUo

一輝「行ってしまったけど、良かったのか?」

みこと「……うん」

秋槻「なにか買ってこようか、冷たいモノでも」

みこと「あるから、大丈夫」

秋槻「あ……そう。……気を遣ったつもりなんだけど」

みこと「?」

秋槻「いや、なんでもない。……ここ、座って」

みこと「……うん」

一輝「日陰とはいえ、暑いですね……」

みこと「結月さんと綾乃さん、表情が全然違ったよ」

秋槻「……そう?」

みこと「綾乃さん、涼しい顔してた」

一輝「……確かに」

秋槻「北海道出身と沖縄出身だから、慣れの違いがあるんだろうね」

みこと「……うん」

一輝「北海道まで行くのか宮城……凄いな……」

秋槻「食堂車でバイトして、そのまま北海道へ行って……そして沖縄へ帰る。
   俺があの子と同じころ、そんなこと少しも考えなかったけどなぁ……」

みこと「その頃ってなにしてたんですか?」

秋槻「友達と遊んでばっかりだったよ。部活も遊び感覚で、気合入ってなかったし……」

一輝「……」

秋槻「なんとなく過ごしてたな……。だから、彼女たちの動画見てさ、なんていうんだろ……」

みこと「感動した?」

秋槻「感動か……それもちょっと違うかな?」

一輝「衝撃を受けた?」

秋槻「それも違う。……というか、それって君たちの感想だったり?」

みこと「……」

一輝「……」

秋槻「図星?」

みこと「……」コクリ

一輝「ノーコメントで」

秋槻「あはは。……まぁ、嫉妬したわけだよ」

みこと「え……?」

一輝「嫉妬……?」

秋槻「動画の最初と最後で、彼女たちの表情が違うんだ」

みこと「――……」
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/04/08(月) 09:15:13.02 ID:MQ6xVShUo

秋槻「だから、この経験はきっと宝物になるんだろうって思って観てた」

一輝「……」

秋槻「今の彼女たちを見ていてもそれはやっぱりそうなんだろうって、確信めいたものがあるよ」

みこと「……日向さんも」

秋槻「え?」

みこと「ううん、なんでもない。……口止めされてるから」

秋槻「はは、そっか」

みこと「……」ジー

一輝「秋槻さんは同じ年の頃を考えると、後悔するんですか?」

秋槻「いや……。それなりに楽しい高校生活だったよ。
   今もその時代の友達と会ったりしてバカだったなぁって笑ってるからね」

一輝「じゃあ、なんで嫉妬?」

秋槻「さっきも言ったけど、その宝物は一生ものなんだよな……。
   俺も持ってるとは思うけど……彼女たちと比べたら霞んでしまう」

みこと「もしかしたら、憧れてる……?」

秋槻「そうだね、俺も彼女たちのようにナニカをしたかったんだと思う」

一輝「……」

秋槻「比べるのは、そういう気持ちがあるからだと思う」

みこと「……」

秋槻「というか、なんで俺の話ばっかり?」

一輝「コイツが聞き出したんですよ」

みこと「コイツって言わないで。みことって呼んで」

一輝「それ、本名じゃないだろ」

みこと「……」

秋槻「そういえば、どうしてみこと?」

みこと「キマリさんが最初に呼んでくれたから」

一輝「こだわりでもあるのか?」

みこと「……違う……自分だから」

秋槻「そっか……」

一輝「聞こえなかったんだけど……?」

秋槻「まぁ、それなりの理由があるんだよ」

みこと「……」

一輝「……」

秋槻「……うーん」


ピピピ

みこと「あ……」


秋槻「俺ら、離れてようか」

一輝「はい……」


みこと「ううん、私が……」

テッテッテ
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/04/08(月) 09:16:34.61 ID:MQ6xVShUo

プツッ


みこと「はい」


『もしもし?』


みこと「私だよ、お母さん」


『こと? 声がいつもと違うような気がするけど』


みこと「ちょっと……あの……」


『ひょっとして、体調崩してるの?』


みこと「……うん、でも大丈夫。みんな、良くしてくれるから」


『……そう』


みこと「今ね、比叡山に居るんだよ。延暦寺で休んでる」


『……その、キマリさんと?』


みこと「うん、他にも知り合った人たちとも一緒に」


『……』


みこと「お母さん?」


『そこね、私とお父さんの思い出の場所なのよ』


みこと「…………」


『なんだか懐かしくなってきちゃったわ』


みこと「お母さんにとっても、それは宝物?」


『えぇ、もちろん』


みこと「……」


『どうしたの? 宝物、だなんて』


みこと「みんな、特別な経験したらそれが宝物になるって聞いたから」


『……』


みこと「私も――……。お母さん?」


『いい旅をしてるのね』
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/04/08(月) 09:18:27.75 ID:MQ6xVShUo

みこと「……そうかな?」


『だって、列車に乗る前のあなたはそんなこと言わなかったわ』


みこと「……」


『最後まで、後悔の無いように、ね』


みこと「お母さんも後悔しそうになったの?」


『どうして?』


みこと「……なんとなく」


『ふふ、そうね……。もう少しで、とてつもないくらいの大きな後悔をするところだったわ』


みこと「…………」


『キマリさんに代わってくれる? 挨拶しておきたいから』


みこと「……今、近くに居ないよ」


『え? じゃあ……今一人なの?』


みこと「ううん、三人で休んでるから」


『……』


みこと「あとでかけ直すね」


『その近くに居る人に代わってくれる?』


みこと「どうして?」


『母親の勘よ』


みこと「???」


秋槻「みんな戻ってこないね」

一輝「なんだかんだで楽しんでるんでしょう」


みこと「秋槻さん」スッ

秋槻「ん? 電話?」

みこと「お母さんが代わってくれって」

秋槻「え゛ッ!?」

一輝「うわ……」

秋槻「いやっ、大村君が出てっ」

一輝「なんで!? 秋槻さん指名ですよっ」
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/04/08(月) 09:19:58.75 ID:MQ6xVShUo

秋槻「いやいや、無理があるってっ」

一輝「こっちも無理ですってっ」


みこと「……出たくないって」


『ふふ、是非とも代わってくれないかしら?』


みこと「是非とも代わって欲しいって」


秋槻「う――!?」

一輝「マジか――!?」


みこと「……」


秋槻「分かった……」ゴクリ

一輝「おまえ、鬼だな」

みこと「……」


秋槻「も、もしもし、秋槻といいます……」


一輝「可哀想に……」

みこと「……」


秋槻「いえっ、とんでもないっ……私の方こそ色々とっ」ペコペコ


一輝「上司に怒られてるみたいだ……」

みこと「なんの話してるんだろう……」


秋槻「え……はい。……それは大丈夫かと。旅仲間に恵まれてますよ」


一輝「……」

みこと「……?」


日向「会社からの電話か?」

報瀬「青い顔してる。青ざめた顔してる」

結月「気の毒なくらい分かりやすいですね」

マリ「みこっちゃん達も行こうよ、歴史の重みを感じるから」

栞奈「それっ、私の言葉でしょ! 安易に使われると言葉の重みが……!」


秋槻「あ、戻ってきたので代わります」


マリ「?」

みこと「あの、電話に出て欲しいってお母さんから」

結月「えっ!? お母さんだったの!?」

報瀬「秋槻さんが出ると色々と不味いのでは……?」

日向「面白いな」

一輝「一人足りないんじゃないか?」

栞奈「綾乃ちゃんはもう少し見て回るって。寺が珍しいみたいで」
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/04/08(月) 09:21:57.29 ID:MQ6xVShUo

秋槻「はい、はい……。それでは……」


マリ「凄い緊張してるね」


秋槻「ふぅ……はい」スッ

マリ「え?」


みこと「お母さんが挨拶したいって……」

マリ「え……私と!?」

秋槻「はい、どうぞ」

マリ「…………ごくり」


日向「何の話してたの?」

秋槻「旅の間、娘をよろしくって……。ふぅ、変な汗かいた」


マリ「はい……はいっ、いえっ、こちらこそお世話になってっ」ペコペコ


一輝「秋槻さんと同じ姿勢だ……」

秋槻「なぜかああなってしまう……。人の親と会話なんて無いからなぁ……」


マリ「みこっちゃ――」


日向「おいっ」


マリ「……こ……琴ちゃんはいつも冷静に私たちを見てくれててっ」


『みこと、って呼んでるのね?』


マリ「は、はい……」


『鶴見 琴で、みこと……なるほどね』


マリ「わ、私も玉木マリで、キマリって呼ばれてます」


『ふふ、そう』


マリ「あの、ごめんなさい……」


『あなたはその愛称で呼ばれるの嫌?』


マリ「い、いいえ」


『それならいいのよ、あの子も嫌がってないのでしょう?』


マリ「……それは…」


みこと「……」
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/04/08(月) 09:23:11.54 ID:MQ6xVShUo

マリ「……」


『それより、あの子のことをよろしくお願いします』


マリ「は、はい、それはもちろん。一緒に楽しくやっていきます」


『ありがとう』


マリ「い、いえ……礼を言われるほどじゃ……」


『どうも親離れできない所があって、
 デネブにも本人は乗り気じゃないのに乗せてしまって』


マリ「……」


『でも、楽しそうなら良かった』


マリ「私たちも、みこ……琴ちゃんと一緒で楽しいです」


『うん……ありがとう』


マリ「楽しい旅を続けられています」


『あなた達はあなた達の旅を、あの子にはあの子の旅を、ね』


マリ「――はい」


『それじゃ、長話もなんだから、これで』


マリ「あ、ちょっと待ってください……今本人に……」


『いいのよ、帰ってきてから話はいくらでもできるから』


マリ「……はい。それでは、失礼します」


『いい旅を』


プツッ
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/04/08(月) 09:25:04.53 ID:MQ6xVShUo

マリ「……」


みこと「お母さん、なんて言ってたの?」

マリ「みこっちゃんをよろしくって」

みこと「……」

マリ「落ち着いてて綺麗な声だったな……」


秋槻「うーん……どこかで聞いたことあるような……」

みこと「え?」

秋槻「なんだろう、このモヤモヤ」

結月「会ったことあるとか?」

秋槻「そうなのかな……? だとしても全然思い出せない……」

栞奈「すれ違いざまに体中にショックが走ったとか」

秋槻「そういうのじゃないなぁ」

日向「じゃあ、仕事関係で会った?」

秋槻「あ……!」

みこと「?」

秋槻「あー、あぁー! やっとモヤモヤが晴れた!」

マリ「んー?」

秋槻「君に会ってから、不思議な感覚があったんだよ。どこかで会ったかのような」

みこと「よく言ってたよ」

秋槻「会ったんじゃなくて、似ているからそんな気になったんだ……!」

報瀬「どういうことですか?」

秋槻「うん、君のお母さん、鶴見さとみさん、だろ?」

みこと「う、うん……」

マリ「みこっちゃんのお母さんに会ったことあるってこと?」

秋槻「うん、一度だけ。仕事でね」

日向「秋槻さんの仕事って演出家だったよな……」

秋槻「演出家志望のライター……ね」

結月「お母さん、何をしてる人?」

みこと「小説書いてる」

結月「さとみ……? あ、千歳さとみさん!」

秋槻「そう、その人。ベストセラー作家の」

結月「あー……分かります分かります。みことが……その人の娘さんなんだ……」

報瀬「結月は会ったことがあるの?」

結月「あ、いえ……会ったというほどでは……。
   飯山みらいさんと共演したドラマの原作者なので」

マリ「へぇ〜」

日向「世間は狭いようで広いな〜」

報瀬「逆だから、この場合」

栞奈「あ、それいいね。今度使おう」メモメモ

一輝「話聞けよ」
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/04/08(月) 09:27:11.69 ID:MQ6xVShUo

結月「そういえば、みらいさんと仲が良さそうでしたね……」

みこと「そうなの?」

結月「うん、ただの知り合いってだけの関係じゃないみたいだったよ」

みこと「……そうなんだ」

秋槻「最初のファンってそういうことか……」

栞奈「んっふっふ。つまり、こうだ……。
   みことちゃんのお母さんと、秋槻さんは一度面識があり、その娘さんとこの旅で出会った、
   そういうわけですね!」

秋槻「うん、そういうこと」

栞奈「フッ、私の推理に間違いはないのだよ」

一輝「おまえ、話をまとめただけだよな?」

みこと「結月さん、どうしてこの仕事を受けたの?」

結月「え?」

みこと「日向さんと報瀬さんが、こういう仕事を受けるのは珍しいって言ってて」

結月「そういうこと言ってたんですか?」

日向「うん、気になっててな」

報瀬「キマリから旅の話を聞いたからって聞いた」

マリ「うん、聞いたって言った」

結月「そうですよ。でも、それだけじゃなくて」

秋槻「……」

栞奈「……」

一輝「……」

みこと「……」

結月「え、そんな聞き入ることでは……」

日向「話の流れで注目するよな」

マリ「どうして?」

結月「……みらいさん、私がデネブに乗るかもって話を聞いたらしくて、
   ヴェガの話とか、楽しそうに話してくれたんですよ」

栞奈「ベガ?」

一輝「20年前を走った列車のことだ。デネブと同じようにな」

栞奈「ふぅん……ん?」

結月「話終わってから、寂しそうな顔したんですよね」

日向「寂しそう?」

報瀬「何かあったのかな?」

結月「ほんの少しの間でしたけど……」

マリ「聞いたの?」

結月「そんな、なにかあったのか、なんて聞けるわけないじゃないですか」

秋槻「それは本人だけの秘密だろうね」

みこと「秘密?」

秋槻「まぁ、大人の勘ってやつ」

結月「それで、私はその寂しそうな顔をした理由が知りたいと思ったんですよ」

日向「……なるほどなー」
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/04/08(月) 09:29:34.45 ID:MQ6xVShUo

栞奈「飯山みらい……。確か、母さんが友達だとか言ってたな……」

報瀬「本当に?」

栞奈「でも、ホラ吹きだから、うちの母さん……信用できないね」

一輝「母親譲りか」

栞奈「ちょっと! 母さんはともかく、私のことを侮辱するのは許さないよ!?」

一輝「普通逆だろ! さっそく使ったな!?」

日向「うるさいな、この二人……」

みこと「うん」

栞奈「私に付いてこれるのは一輝だけだよ」ギュッ

一輝「……この握手はなんだよ?」

秋槻「さて、話は落ち着いたところで、これからどうしようか」

日向「秋槻さん、車はいつまでレンタルしてるんですか?」

秋槻「今日の夜までだけど、なんなら明日の出発まででもいいよ」

結月「それまで付き合ってくれるってことですか?」

秋槻「うん。要望があればね」

報瀬「せっかくですけど、お気持ちだけいただきます」

栞奈「どうして? 厚意で言ってくれてるのに」

マリ「私たちは私たちの、年相応の旅をした方がいいと思って」

秋槻「うん、分かった」

みこと「……」

日向「だけど、今日はご厚意に甘えたいと思います。よろしくお願いしまっす!」

秋槻「うん、任せて」

結月「あ、でも……。いろいろとお金を出してもらってますけど……」

秋槻「前も言ったんだけど、社会人だからそれは気にしないで。
   こっちも目的の為に乗車してて、助かってることもあるから」

一輝「目的……?」

マリ「人間観察ですよね」

秋槻「そうなんだけど……そう言われるとなにか違う気もする……」

栞奈「青春を取り戻そうとしてるんですよね」

秋槻「それは違う。全然違う」

日向「たくさんの人生を見て学び、よりよい作品を生み出すことが目標なんだそうだ」

秋槻「まぁ、そういうこと」

栞奈「惜しいな」

一輝「掠ってもいないって。完全否定されてただろ」

秋槻「お婆さんの話が聞けたように、君たちのおかげで乗客の人たちと話しやすくなってるから。
    なんというか……そのお礼……ってことで」

みこと「……」

マリ「私たちのおかげ?」

日向「なにも特別なことしてないけどな」
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/04/08(月) 09:31:40.23 ID:MQ6xVShUo

報瀬「でも、分かる気がします。良くも悪くも目立ってますからね……キマリとか」

マリ「私? なんで?」

結月「発車ギリギリで乗車したりとか」

マリ「ふぅん……そうなんだ」

日向「それ、悪い方で目立ってるから、気を付けろよ?」

マリ「それ言ったら、日向ちゃんだって毎回ギリギリだよね」

日向「原因は誰だよ!」

栞奈「はいはい、お喋りはここまで」パンパン

報瀬「引率の先生みたい」

一輝「そうだな、次の観光地決めないと」

栞奈「それより、さっきの話で気になったことがあるんだよね」

みこと「?」

日向「話進めるんじゃないのか……」

栞奈「バニラ味は王道だけど、チョコミント味も定番だよね。変化球としてカニアイスも」

日向「この時間だとあと一箇所かなぁ」

結月「金閣寺なんてどうでしょう」

報瀬「私は銀閣寺に行ってみたい」

マリ「映画村は?」

日向「みことはどこ行きたい?」

みこと「お任せする」

栞奈「……」

一輝「誰もその話してなかっただろ?」

栞奈「私、飽きられてる?」

一輝「時と場合を考えてみれば? それで無視されたらそういうことだろ」

栞奈「一輝、言いたいことズバッと言うよね」

一輝「遠慮しててもしょうがないからな……嫌だったか?」

栞奈「私はいいと思うけどね。でも、よく誤解されるんじゃない?」
   
一輝「それで人が離れてくのはしょうがないだろ……」

栞奈「悲しい青春時代を送ってるんだね〜」

一輝「うるせえよ」

秋槻「……ふむ」

マリ「綾ちゃん戻ってきた」

綾乃「ごめん、ゆっくりしすぎた〜」

報瀬「じっくり見て回ってたね」

綾乃「こんな大きなお寺は珍しいよ。文化の違いってやつで面白かったさ」

日向「ふぅん……」

綾乃「みんなこれから観光だよね」

結月「そうですよ」

マリ「みんなの行きたいところ聞いてるんだけど、綾ちゃんは?」

綾乃「私は戻るよ。夜から明日の仕込み手伝いがあって」

マリ「えーっ!?」
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/04/08(月) 09:33:44.34 ID:MQ6xVShUo

報瀬「休みじゃなかったんだ?」

綾乃「うん、ちょっと時間が空いただけだから。誘ってくれてありがとね」

秋槻「電車で戻るの?」

綾乃「うん……。そういえば、京都駅のスタンプラリー、みんな知らないの?」

日向「知ってるけど、別にいいかなって」

綾乃「そうなんだ。……それじゃ、また列車で、バイバーイ」

スタスタスタ...

栞奈「バイバイ〜」

みこと「……」

結月「スタンプラリー……」

マリ「えー……」

報瀬「いつまでショック受けてるの」

マリ「だってー……。なわとび大会のため、団結力を高めていかないといけないのに」

日向「あー……それなんだけど、キマリ」

マリ「?」

日向「もう一人、探さないといけないんだ」

マリ「どういうこと?」

秋槻「……ごめん」

マリ「?」

秋槻「参加、遠慮させてもらうよ」

マリ「えーっ!?」

一輝「秋槻さんが出ないなら……俺も……」

栞奈「あらら……」

結月「なら、2人探さなくてはいけませんね」

みこと「……決まってるもう一人って誰?」

日向「さぁ? キマリ教えてくれないんだよ」

報瀬「他に、誘える人いないよね」

結月「売店の店員さんと、食堂車にもう一人店員さん居ますが……」

マリ「時間、空いてないって……」

栞奈「それなら、新しく乗車してくる人に期待しよう」

日向「今考えてもしょうがないよな……」

マリ「あぁ、困ったなぁ」チラッ

結月「困りましたねぇ」チラッ

報瀬「……」チラッ

日向「本当だよ……」チラッ

みこと「……」ジー

秋槻「いや……うん。……心から悪いと思っております」

一輝「……」


……


219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 03:58:32.43 ID:NvaB0sZQo

―― 車内


ブォォォオオオ


日向「料理長に頼んでみるとか」

報瀬「本当に頼めるの? 本当に?」

日向「いえ、僅かな可能性を示しただけなので……」

結月「10人じゃないと参加できないんですか?」

マリ「どうなの、日向ちゃん?」

日向「うん……ルールで決まってるみたいだな……」ポチポチ

みこと「次が名古屋、その次が金沢……」

栞奈「さぁ、緊迫してまいりました。
   果たして我々は無事になわとび大会に参加できるのでしょうか」

報瀬「……?」

栞奈「ご期待ください」

報瀬「ハッ!? もしかして撮ってる!?」

マリ「あ、バレちゃった」

結月「栞奈さんが説明口調になるからです」

報瀬「こういう隠し撮りは止めてって言ってるでしょ!?」

日向「報瀬以外は知ってるから隠し撮りとは言わないんだよー!」

報瀬「なにその犯罪者の理論」

日向「酷いこと言うな」


一輝「後ろ、結構揉めてますよね」

秋槻「歳の近い子って、他に……居ないよね……」

一輝「いないですね……」

秋槻「……」


みこと「夕陽が綺麗だよ」


秋槻「え……あ……うん」

一輝「雨の影響かな……」

秋槻「雨?」

一輝「少し降ったみたいですね」

秋槻「そういえば、夜景が見える場所があるけど」

一輝「後ろに聞いてみます」


報瀬「やっていいことと悪いことがあるってこと言ってるの!」

日向「これはやっていいことだろ!
   プライベートな部分はカットするっていってるのに、この分からず屋!」

報瀬「何屋さんなの!? 何売ってるの!? 何で利益出してるの!?」

日向「商売してる店ちゃうわ!」

マリ「京都ラーメンというものがあるんだって」

結月「キマリさん、ラーメンばかり食べてるんですよね。飽きませんか?」

みこと「夕陽が……」

栞奈「山道だからね、すぐ隠れちゃうね」
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 03:59:37.80 ID:NvaB0sZQo

一輝「おーい」


栞奈「助手席から声がかかりました。一輝さーん、どうしましたー?」


一輝「あ? まだ撮ってんのか?」


栞奈「分からないけど、一応、状況説明しとこうかと」


一輝「まぁ、別にいいか。……えっと、夜景の見える場所があるんだけど、どうする?」


栞奈「夜景ですか、それはいいですね。みことちゃんはどう思いますか?」

みこと「うん」

栞奈「……判断付かないリアクションですが、いいでしょう。残りの4人にも聞いてみましょう」

結月「液晶の光が強く感じますね……。あまり見てると目を悪くしますよ」

マリ「うん、もうちょっと〜」ポチポチ

報瀬「あれ? どこにカメラあるの?」ガサゴソ

日向「さぁ、どこでしょうな」

栞奈「オッケー!」


一輝「本当にオッケーなのか? ……いいや、行きましょう」

秋槻「どこでも自由だね、君たちは……」


ブォォォオオオオ


……


221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 04:03:05.61 ID:NvaB0sZQo

―― 夢見ヶ丘


ザァァアアアアア


秋槻「暑くない?」

一輝「適温ですよ。それよりエンジン付けっぱなしで大丈夫ですか?」

秋槻「まだまだ大丈夫だね」

一輝「それならいいですけど」


マリ「お腹空いた……なにか買っておけばよかったね」

報瀬「……」

結月「報瀬さん、今は撮ってませんから……」

栞奈「どう? 見える?」

みこと「……ぼんやりと」

日向「……」


ザァァァアアアアア


みこと「急に降って来たよね」

栞奈「夏はこういうことあるからしょうがないね。らしくて好きだけど」

日向「で、この雨、いつ止むんだ?」

マリ「もうちょっと」

日向「そのもうちょっとって、一時間前から言ってるけど一向に止む気配がないんだが」

報瀬「日向、イライラしてる?」

日向「車の中で一時間以上ジッとしてるんだぞ、我慢の限界だ」

報瀬「そう、ふふふ」

日向「なんで笑う」

報瀬「天罰って、本当にあるんだなって」

日向「報瀬ぇぇ! 表出ろぉぉお!!」

マリ「もぉ、落ち着いてよぉ」

みこと「雨に濡れたら気分良くなるかも」

結月「確かに、気分は晴れそうですね」

栞奈「でも、着替え持ってきてないでしょ」


一輝「他にも車止まってましたけど、諦めて行ってしまいましたね」

秋槻「あ、本当だ……。よし、絶好の位置に止めよう」

ブォォー

一輝「あの辺りがいいんじゃないですか?」

秋槻「そうだね、良さそうだ」
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 04:04:57.25 ID:NvaB0sZQo

みこと「私、タオル持ってきてるよ」

日向「お、ナイス!」

報瀬「待って!? 本当に外に出る気!?」

日向「ちょっとぐらいなら平気平気〜」

ガチャ


結月「何してるんですか日向さん!?」

マリ「みんな、日向ちゃんを抑えて!」

ガシッ

日向「嫌だ、離せ! 退屈な日常なんてうんざりなんだー!」ジタバタ

栞奈「あとちょっとだけ待って!」

日向「あとちょっとって、どのくらい?」

栞奈「30秒」

日向「いーち、にーい、さーん」


ザァァアアアアア


みこと「止む気配がないよ」

報瀬「秋槻さん! 今のうちに発進してください!」

マリ「今すぐ! ライトナウ!!」


秋槻「どうしようか……」

一輝「一時間も待ったんですから、今帰ると……負けな気がしますね」

秋槻「じゃあ、もうちょっと待とうか」

一輝「ですね」


栞奈「クックック、一輝〜、やるじゃん」


一輝「……なにが?」


栞奈「別に〜」


報瀬「秋槻さん!?」


秋槻「君たちはいつでも自由でしょ?」


報瀬「え?」

マリ「……」
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 04:07:46.96 ID:NvaB0sZQo

日向「にーじゅご、にーじゅろく」

結月「わぁぁああ! 本当に出る気ですよ!」ギュッ

みこと「……」

日向「にーじゅはち、にーじゅきゅう!!」

ガチャ


マリ「結月ちゃん、離しても大丈夫だよ」

結月「え?」


ザァァアアアアア


日向「さんじゅう!!」


ガラッ



日向「たぁっ!」


ピョン


結月「あ……!」

報瀬「本当に……出てしまった……」

マリ「私も!」

ピョン


結月報瀬みこと「「「 あ…… 」」」


ザァァアアアアア


日向「ひゃー、気持ちいい〜!!」

マリ「本当だ〜!!」


栞奈「あーあ、びしょ濡れじゃん」

みこと「……」


日向「雨はすべてを洗い流してくれるようだ」

マリ「天然のシャワーだよね」


栞奈「あんな風に両手広げて空を見上げてる風景、映画にあるんだよね〜」

みこと「……うん」

224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 04:09:28.60 ID:NvaB0sZQo

ザァァアア


報瀬「なんか、ずるい」

ピョン

結月「本当ですよ」

ピョン


ザァァアア


日向「なんだよ、報瀬とゆづも来たのかー?」

報瀬「二人が楽しそうにしてるからでしょ」

結月「後先なんて考えずに……ずるいです」

マリ「あはは、でも、気持ちいいよね〜!」


栞奈「……」

みこと「……っ」


秋槻「行かないの?」

一輝「……冗談」

秋槻「でも、俺はこれからコンビニへ行ってタオルを買いに行くわけだけど」

一輝「……」

秋槻「彼女たちを置いてはいけないよね」

一輝「あぁ、もう……なんて迷惑なっ」


栞奈「負けておけば良かったのにね」


一輝「うるさい。お前は降りないのかよ?」


栞奈「女性用の下着やらを秋槻さんに買わせるのかい?」


一輝「くっ……あっそ」

ガチャ


日向「なんだ、大村まで来たよか〜?」

一輝「仕方なくだ」

報瀬「あ、何やってるんだろう、私たち」

結月「素に戻らないでください! まだ早いです!!」

マリ「みこっちゃん!」


ザァァアア


みこと「……!」
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 04:10:54.36 ID:NvaB0sZQo

マリ「おいでよ!」スッ


みこと「う、うん……っ」スッ

ギュッ


マリ「ようこそ、レインパラダイス!」グイッ

みこと「……っ」

日向「あはは、なんだそれ!」

報瀬「雨の楽園!」

結月「そうです、雨の楽園! そのまんまです!」


ザァァ......


マリ「あれ……?」

みこと「え?」

報瀬「あ……」

結月「止みましたね」

日向「止んだな」

一輝「……嘘だろ」

みこと「向こうの空、晴れてる」

マリ「ほんとだ……! もう雨は降らない?」

日向「そういうことだな」

報瀬「……ふふ」

結月「なんですかね、これ」

一輝「あとちょっと待てばよかったんじゃないか!」


栞奈「アハハ! もう後の祭り!!」


秋槻「それじゃ、買いに行ってくるから」


……


226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 04:15:07.95 ID:NvaB0sZQo

―― 温泉


マリ「はぁぁ……」

報瀬「貸し切り風呂があるなんて、運がいいよね」

日向「あとでちゃんと礼を言わないとな」

結月「そうですね。栞奈さんにも言わないといけません」

みこと「……ふぅ」

マリ「大丈夫? 疲れてない?」

みこと「ううん、全然……。特に何もしてないから」

マリ「そっか……ふぃぃ。体冷えちゃってたから気持ちいい〜」

報瀬「栞奈って、日頃あんな調子だから、たまに驚いてしまうよね」

日向「そうだよな。いっつも変なこと言ってるけど、先のこと考えてたりするな」

結月「たまに真面目になったりしますね。たまーにですけど」



―― コインランドリー


栞奈「くしゅっ、くしゅっ……へっくしゅん!」


ゴォン ゴォン


栞奈「グスッ……。誰か私の噂してるな……?」


一輝「よう」

栞奈「グスッ」

一輝「……どうした?」

栞奈「くしゃみしたから鼻水が出ただけ。どうしたの?」

一輝「別に、暇だったから」

栞奈「ちょっとぉ、キマリたちの下着があるんだから――」

一輝「おい、やめろ」

栞奈「あり、冗談だったんだけど」

一輝「洒落にならないとこ、見てるだろ?」

栞奈「確かに」

一輝「本当、やめろよ……」

栞奈「……そんなに嫌がるとは思ってなかったなぁ」

一輝「嫌に決まってるだろ」

栞奈「ふぅん……。気に入ってるんだ?」

一輝「なにが?」

栞奈「この旅が」
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 04:16:22.60 ID:NvaB0sZQo

一輝「……なんでそうなる」

栞奈「関係が壊れちゃ、この旅は終わっちゃうもんね」

一輝「なんだそれ。よく分からんな」

栞奈「本当は分かってるくせに」

一輝「……」

栞奈「あ、ごめん。なんか知った風なこと言っちゃった」

一輝「……別に」

栞奈「えっと……秋槻さんは?」

一輝「仕事の話かな……。電話してる」

栞奈「……そっか」


ピー

栞奈「あ、終わった。……乾燥機に入れるから、一輝はアッチ向いてて」

一輝「いや、外出てるわ」

栞奈「えー、話し相手になってよー」

一輝「……分かったよ」

栞奈「いいって言うまで向かないでよ」

一輝「はいはい」

栞奈「よーいしょっと」

一輝「栞奈さ、なわとび大会に出るんだろ」

栞奈「もちろん。……これでよし、っと」

ピッ

 ゴォン


栞奈「一輝、本当に出ないの?」

一輝「……」

栞奈「秋槻さんが出ないから?」

一輝「……うん」

栞奈「まぁ、それも選択の内よね〜。今乾燥中だけど」

一輝「滑ってるぞ」

栞奈「なんでデネブに乗ったの?」

一輝「……それを聞いてどうする?」

栞奈「ただの興味本位」
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 04:17:16.09 ID:NvaB0sZQo

一輝「親が、20年前に日本縦断した列車、ヴェガに乗ってたんだよ」

栞奈「ふぅん……」

一輝「それは後から知ったんだけど……。
   父さんに『乗ってみるか?』って聞かれて、それで」

栞奈「乗ってみようと思ったわけだ?」

一輝「興味沸くだろ。こんな豪華列車……。調べれば調べるほどな」

栞奈「あぁ、分かる分かる」

一輝「乗車して、最初は『こんなものか』って気分だったけど」

栞奈「今は違うんだ?」

一輝「……さぁな」

栞奈「はぁ、素直じゃないね」ヤレヤレ

一輝「ちっ……。じゃあ、車戻ってるからな」

栞奈「あ、そういや、一輝は平気なの? 温泉入らなくて」

一輝「あまり濡れてなかったからな。乾いたよ」

栞奈「男って便利ね」

一輝「すぐ止んだからだよ。そういう機能があるみたいに言うな」


……


229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 04:18:16.31 ID:NvaB0sZQo

―― 駐車場


マリ「ありがとう、栞奈ちゃん」

栞奈「いえいえ」

報瀬「洗濯してくれて助かったよ、ありがとう」

栞奈「いえいえ」

結月「私たちだけお風呂入っているなか、そんなことさせて申し訳ないです」

栞奈「いえいえ」

日向「栞奈が居てくれて良かった!」

栞奈「いえいえ。とりあえず、高級名物をそれぞれ持ってきてくれればそれでいいからさ♪」

マリ報瀬結月日向「「「「 えー 」」」」

栞奈「あら、大ヒンシュク」

一輝「殊勝すぎて怪しいと思ったよ」

みこと「……」

秋槻「何か食べてから戻ろうか」

みこと「うん」


結月「……おかしい」

マリ「なにが?」

結月「あ、いえ……なんでもありません」

マリ「?」


……


230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 04:20:45.05 ID:NvaB0sZQo

―― 京都駅


日向「……にしんそば食べたかったなぁ」

マリ「京都ラーメン美味しかったよね?」

日向「そうだけど……そうなんだけど……」

報瀬「じゃんけんに負けたんだから、グチグチ言わない」

日向「そうなんだけど……! もっとこう、ならではなものが食べたいのだよ!」

みこと「あ、戻ってきた」

結月「……」


秋槻「お待たせ、それじゃ戻ろうか」

一輝「今日はありがとうございました」

栞奈「ありがとうございましたー!」

結月「ありがとうございました」

秋槻「うん、どういたしまして……!」ビクッ

マリ「?」

秋槻「……ま、まずい」サササッ

報瀬「???」


「……」


結月「そんなところで、何をしてるんです?」


「何も聞かないでくれ……!」


日向「何を隠れてるんだ……?」

栞奈「どうしたんだろね」


さくら「あら、結月ちゃん」

結月「あ、さくらさん、今まで観光だったんですか?」

さくら「そうなのよぉ。どこかでバッタリ王子様と逢えるんじゃないかって」

マリ報瀬日向「「「 王子様? 」」」

一輝「?」

栞奈「出会いを求めてるんですか?」

さくら「そうじゃないのよぉ。私はもう見つけているの、王子様☆」

みこと「それは誰?」

さくら「あらん、野暮なことは聞かないの☆」


「……」ゴクリ
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 04:24:29.64 ID:NvaB0sZQo

みこと「……」

さくら「あら、みことちゃん……顔色が少し悪いわねぇ」

マリ「え……!?」

日向「無理させてしまったか……!?」

みこと「あ、ううん、大丈夫」

さくら「夏バテかしら? 栄養はちゃんと摂らなきゃ美貌は保てないのよ」

結月「疲れがたまってたみたいで……」

さくら「あら大変。それじゃ今日は早く寝ることね」

みこと「……うん」

さくら「私も、早く寝なくちゃ。この歳になるとお肌にすぐ表れちゃうからぁ」

一輝「違いがよく分からないけどな……」

さくら「あら、私のこと口説いてるのね。おませさん」

一輝「ッ!?」

さくら「でも私、若い子に興味は無いの。ごめんね……」

一輝「」

栞奈「桜が散り、春が終わった男が一人。
    その気持ちを詩に込めて、今日も男は謡います」

日向「演歌みたいだな」

栞奈「さぁ、唄っていただきましょう……大村一輝、『失恋櫻』」

一輝「」

報瀬「おばあちゃんがよく見てた、そのテレビ番組」

さくら「うーん? でも、気配は感じるのよね……」

マリ「気配……?」


「……」


さくら「気のせいね。それじゃ、みんなおやすみ♪」

スタスタスタ...

みこと「おやすみなさい」

結月「おやすみなさい……」

マリ「気配って……?」

結月「さくらさん、前は格闘やってたらしいんです。その名残かもしれません」

栞奈「通りでごついわけだ」

みこと「闘うスタイリストさん、って呼ばれてるって」

一輝「通り名もごついな……」


秋槻「……ふぅ」


マリ「どうしたの、お兄さん」

秋槻「いや、なんでもない」
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 04:27:07.88 ID:NvaB0sZQo

みこと「顔色が悪いよ」

秋槻「ちょっと疲れちゃったかな……はは」

日向「今日はもう、みんな寝ようか」

栞奈「宴会は?」

報瀬「無し」

栞奈「これから毎日やるって言ってたのに……」

結月「誰も言ってません」


……



―― デネブ


車掌「お帰りなさいませ」

秋槻「ただいま戻りました」

車掌「お疲れのようですね」

秋槻「久しぶりの運転で緊張してしまって……」

車掌「あらあら」


みこと「……」

結月「……」

日向「ふぁぁ……私先に戻ってるな……。おやすみぃ〜」

報瀬「私も、もう寝る……また明日……」

栞奈「それじゃーねー」

一輝「お前元気だな……。それじゃ、俺も」

マリ「私は売店行ってくるね」

結月「は、はい……」


秋槻「雨が降ったおかげで、空気が澄んでて、夜景が綺麗でした」

車掌「晴れて良かったですね」


みこと「……」ジー

結月「みことって、秋槻さんのこと……」

みこと「?」
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 04:28:28.12 ID:NvaB0sZQo

結月「あ、えっと……秋槻さんの印象どうなのかなって」

みこと「お父さんみたい?」

結月「そう……なんだ」

みこと「……うん」

結月「うーん……?」


秋槻「スタンプラリーの参加者はどのくらいいますか?」

車掌「まだ景品をもって訪れた方はいませんので、何とも言えません」


みこと「……なんだろう、ざわざわする」

結月「どういうこと?」

みこと「よく分からない」

結月「……それって」


さくら「結月ちゃん、ちょっといいかしら」


結月「え、あれ?」

さくら「ごめんなさいね、用件をすっかり忘れちゃって……。これなんだけど」

結月「……明日の段取りですね」

さくら「そうなの。ディレクターさんに渡すよう言われてたのに、ごめんね」

結月「はい、分かりました。謝ることないですよ」

さくら「でも、私ったら、ついはしゃいじゃって……」ションボリ

結月「あ、ちょっと待ってくださいね」

さくら「?」

みこと「……」ジー


秋槻「明日の夕方出発ですから、昼頃から食堂車は混むかもしれないってわけですか」

車掌「乗車されているお客様は、発車してからご利用いただければ良いかと」

秋槻「あぁ、そうですね。それなら景品を有効活用できる」


結月「みこと、耳貸して」

みこと「?」

結月「ひそひそ」

みこと「……?」

結月「その、ざわざわの正体、わかるかも」

みこと「……」
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 04:29:41.00 ID:NvaB0sZQo

さくら「うーん、また気配を感じちゃうわぁ……。はぁ、逢えないと辛い……」

みこと「あっちに居るよ」

さくら「え?」

みこと「ほら、車掌さんと話して――」


シュンッ


みこと「――いるでしょ? ……あれ?」

結月「消えた……!」


車掌「あら?」

秋槻「どうかしま――っ!?」ゾクッ

さくら「捕まえた」

秋槻「――あ――ぅ」

さくら「やっと、捕まえた……私の王子様☆」

車掌「王子……?」

秋槻「な、なんでもありませんよ。……っと、時間だ。私はこれで」

さくら「あなたと私、二人の時間がこれから――」

秋槻「これから仕事がありますので……! 失礼します!!」

スタコラサッサ

さくら「あぁん、……逃げられちゃった」

車掌「あの……?」

さくら「逃げられると、追いかけたくなっちゃうのよね」ゴゴゴゴ

車掌「は、はぁ……?」

さくら「あら、ごめんなさい、車掌さん」

車掌「いえ……」


結月「どう?」

みこと「ざわざわしたの、なくなった……?」

結月「……やっぱり」

みこと「?」

結月「とりあえず、今日はもう寝ようよ」

みこと「……うん。……明日はどうするの?」

結月「明日の朝は、散歩するだけみたいだから」

みこと「うん、分かった」


……


235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 04:31:33.07 ID:NvaB0sZQo

―― マリの個室


マリ「私たちは私たちの旅を……かぁ……」


マリ「うーん……」


マリ「どういう意味だろ……?」


コンコン

「キマリさん、勉強してるとこ悪いんですけど、少しいいですか?」


マリ「……」

ガチャ

結月「すいません、勉強の邪魔をしてしまって」

マリ「してなかったから平気だよ……。どうぞ入って入って」

結月「そうですか。あのですね、話というのは……」

マリ「『やっぱりな』って空気を感じる……!」

結月「明日の観光のことなんですけど、金閣寺とか名所を回るんですよね」

マリ「うん、そうだけど?」

結月「私の撮影が清水寺であるんですよ」

マリ「そうなんだ?」

結月「さっきの雨の影響で、予定が変更になりまして」

マリ「じゃあ、一緒に行くよ。ちょうど良かった」

結月「あ、いえ……。えっと……行きたいところ行って欲しいんです」

マリ「行きたかったところだよ?」

結月「そ、それだと計画が……」

マリ「?」

結月「みなさん、一緒ってことですよね。みことも……」

マリ「……」

結月「……キマリさん?」

マリ「結月ちゃん、私たちには私たちの旅があるんだよね」

結月「どういう意味です?」

マリ「みこっちゃんのお母さんに言われたんだけど、よく分からなくて……」

結月「話の流れからすると……みことはみことの旅があるってことですよね?」

マリ「……うん」

結月「それなら、明日別行動してみませんか?」

マリ「それぞれ違う観光地に行くってことだよね」

結月「はい、そうです。それで、キマリさんが分からないところも見えてくるのではないかと」

マリ「……」

結月「無理して別行動する必要はありませんけどね」
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/06/03(月) 04:32:18.49 ID:NvaB0sZQo

マリ「ちょっと心配だけど、そうしてみようかな……?」

結月「みこともただの子供ではありませんから問題はないはずです。やってみましょう」

マリ「うん、明日の朝、話してみよう。それで、結月ちゃんの話って?」

結月「いえ、私の計画とも合っていますからそれはいいです」

マリ「計画って?」

結月「いえいえ、なんでも……。そ、それじゃ遅いですから失礼しますね」

マリ「計画ってなに?」

結月「なんでもないって言ってるじゃないですか……。
   私は寝ますから、勉強頑張ってください」

マリ「鬼だ……!」

結月「リンに頑張ってたって伝えておきますね。……それでは」

ガチャ

 バタン

マリ「鬼だ……」シクシク


……


237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/08/01(木) 12:00:36.03 ID:redis/s9o


―― 8月6日


綾乃「いらっしゃいませ」


マリ「おはよう、綾ちゃん」

日向「おはよー」

綾乃「おはよう。みんな早くに出て行ったけど、どこ行ったの?」

結月「どうして知っているんですか?」

報瀬「まだ太陽昇ってなかったのに」

綾乃「見たから。朝早いからね、うちの食堂」

マリ「少し周りを歩いてたんだよ。お寺行って、公園でラジオ体操して」

綾乃「ずいぶんと健康的だね。お喋りはこれくらいにして、それではご注文を承ります」

結月「みなさん、和でいいんですよね」

マリ「うん」

日向「もち」

報瀬「今日は私、洋で」

結月「和三つに洋を二つお願いします」

綾乃「二つ?」

結月「すぐにみことも来ますので」

綾乃「はい、かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

スタスタスタ...

日向「確かに健康的だな。早寝早起き、散歩してラジオ体操」

報瀬「長生きできるね」

マリ「あの席に座ろう」

日向「はぁ、腹減った〜」ストッ

結月「あ、待ってください。5人じゃ座れませんから、分かれましょう」

日向「そうだな。じゃ、報瀬あっちで、あとはこっち〜」

報瀬「そういうの良くないと思う」

結月「私があっちに座りますね」

マリ「じゃ、私も〜」

報瀬「……私も」


日向「私一人かよ。こういうの、良くないと思うんだ」
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/08/01(木) 12:02:25.14 ID:redis/s9o

マリ「洋にしとけばよかったかな」

結月「明日食べればいいじゃないですか」

マリ「気分によって変わるから、明日は明日の風が吹くってね」

報瀬「それ、使い方間違ってるから」

マリ「そうなの?」


日向「……」


みこと「……?」


日向「おー、みことー、こっちこっち」

みこと「どうして、日向さん一人なの?」

日向「分からないんだよ。私が何をしたんだかな……。まぁ、座りなさい」

みこと「……うん」


報瀬「因果応報でしょ」

マリ「日向ちゃん、何をしたの?」

報瀬「私を除け者にしようとした」

結月「今日の夕方でしたよね、出発」

報瀬「そうだよ、忘れないで、キマリ」

結月「夕方ですよ、ゆ う が た。分かりましたか、キマリさん」

マリ「……」


日向「30分前には乗車しとけよ〜」

みこと「……」


マリ「なぜか私だけがいつも乗車ギリギリみたいな言い方されるけど、いいです。
   今日でその汚名を返上させていただきます」

報瀬「嫌に自信あり気ね」

結月「なにか策でもあるんですか?」


みこと「今日はもう観光行かない?」

日向「なるほど、それなら乗り遅れないな」


マリ「行きます。観光には絶対に行きます」

報瀬「じゃあ、どうするの?」

マリ「大したことじゃないけど……。
   まぁ、日向ちゃんが言ったように30分前には乗っていますから、
   なんならみんなにおかえりって言うくらいの余裕がありますね」

結月「この自信……」


日向「なんで不安になるんだろう……」

みこと「……」
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/08/01(木) 12:04:11.54 ID:redis/s9o

マリ「今日の出発を楽しみにしていてください」フフン

報瀬結月「「 これは…… 」」


日向「駄目かもな……」

みこと「……」


マリ「なんで!?」


一輝「朝から元気だな……本当に」

栞奈「おいっすー。ここ座っていい?」

日向「どうぞー」

みこと「……」

綾乃「先にご注文を伺います」

栞奈「私は洋食で、一輝は中華でお願いします」

綾乃「申し訳ありません、モーニングは洋食か和食のみになります」

栞奈「だってさ」

一輝「俺がいつ、それを頼もうとした? 望んですらいねえよ」

栞奈「和食だそうです」

綾乃「かしこま――」

一輝「洋食でお願いします。お前、他人に迷惑かけるな」

栞奈「はーい」

綾乃「洋食二つですね、かしこまりました〜」

スタスタスタ...

みこと「綾乃さん、笑ってた」

日向「笑ってたな」

栞奈「笑わせるなんて、やるじゃん」

一輝「お前だろ? それに、笑われてたんだからな間違えるなよ」


報瀬「朝から漫才やってる」

結月「あの、いいですか、話」

報瀬「え、うん」

マリ「話?」

結月「えっと、駅の看板にもありますけど、スタンプラリー知っていますよね」

マリ「うん」

報瀬「それがどうかしたの?」

結月「その景品なんですけど、知っていますか?」

マリ「京都の高級料理店とか、お土産とかだったよね」

結月「他には?」

マリ「他? あったっけ?」

報瀬「興味無かったから……知らない」

結月「ですよね」
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/08/01(木) 12:06:03.77 ID:redis/s9o


栞奈「スタンプラリー、参加するの?」


結月「はい、その提案をしようとしています」

マリ「分からないけど、他になにが景品なの?」

結月「デネブでのお食事券です」


栞奈「汚職事件……! ボス、私と一輝で捜査行ってきます」ガタッ

みこと「うん」

日向「いや、うんじゃないだろ」ビシッ

一輝「刑事ごっこはいいから、大人しくしてろ」


報瀬「食事券?」

結月「そうです、二名様ご招待とありました」

マリ「参加したら誰でも招待されるの?」

結月「いえ、ネットで抽選ですけどね。あとは参加賞の記念ボールペン」


栞奈「あ、もしかして昨日のお礼に私をご招待してくれるの? やったね、嬉しー!」


結月「いえ、違います」


栞奈「……」

日向「げ、元気出せ」

みこと「はい、水」

栞奈「……うん」

一輝「ぬか喜びか……残念なヤツ」


報瀬「結月……」

マリ「結月ちゃん……」

結月「あ、いえ……! あとでお土産を買ってきますから……!」


栞奈「ううん、いいんだよ……そんな気を遣わなくても」

日向「珍しくテンション低いな……」

みこと「このお冷、京都の名水だって言ってたよ」

一輝「それは励ましになるのか?」


報瀬「結月……!」

マリ「結月ちゃん……!」

結月「え、えぇ……!? えっと……こ、高級なお土産ですよ!」


栞奈「地元の人たちに愛されて150年……
   変わらぬ味を守ってきた誇りと歴史を持つ老舗和菓子屋の……?」


結月「妙に具体的ですね……」

報瀬「商品指定されてそう」
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/08/01(木) 12:07:55.96 ID:redis/s9o

マリ「あ……、おはようお兄さん」


秋槻「うん、おはよう」


みこと「……おはよう」

日向「あー、座るならそっちだな」


秋槻「交代してくれない?」


日向「私はさ、ハブられてるから……」

栞奈「沖縄だけに……」

一輝「調子取り戻したからお土産とか気にしなくていいよ」


結月「……分かりました」


栞奈「くぉら!」ドスッ

一輝「痛ってッ! 殴るな!」

栞奈「余計なこと言うからでしょ」

一輝「何が沖縄だけにだよ、宮城のセリフだろ」

綾乃「いやー、それは言わないよ。座らないんですか? 他は空いてませんけど」


秋槻「悪いけどいいかな? コーヒーだけ」

マリ「いいですけど、食べないんですか?」

秋槻「すぐ出ようと思ってたから。コーヒーを」

綾乃「かしこまりました〜」

秋槻「あ、ちょっと待って」

綾乃「?」

秋槻「料理長、昨日出掛けてたでしょ?」

綾乃「はい……そうですけど?」

秋槻「どこへ行ったのか聞いてる?」

綾乃「確か、京都鉄道博物館……って言ってたような?」

秋槻「そっか、うん、ありがとう」

綾乃「いえいえ」

スタスタスタ...

マリ「鉄道?」

秋槻「車掌さんと出掛けたらしくて、どこか分からなくて」

結月「なんで行先を知りたがるんですか……」

報瀬「……」ジー

秋槻「鉄道と言ったらアレかな、二人が共通してるモノ」アセアセ

結月「どうして焦っているんですか……」

秋槻「またあらぬ疑いをかけられるかと思って」

マリ「二人が共通?」

秋槻「そう……ヴェガのこと。二人とも乗ってたらしい」
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/08/01(木) 12:11:54.24 ID:redis/s9o

マリ「あの料理長さんが……」

報瀬「車掌さんも乗ってたって……、車掌さん、若いよね」

結月「はい、いくらなんでも当時も車掌をやってたとは思えませんけど」

マリ「じゃあ、乗客だった……ってことだよね?」


日向「あ、それを聞きたかったんだよ、車掌さんに」

栞奈「どうして?」

日向「含蓄のある言葉を聞いててさ……それに私は色々と感銘を受けたからな」ウンウン

栞奈「なるほど、含蓄のある言葉を聞いて、日向は色々と感銘を受けたわけだ?」

一輝「お前はなんで繰り返し言うんだよ」

栞奈「オウムだからだよ」

一輝「そうか……意外だわ」

みこと「……」


結月「話が外れましたけど、いいですか、スタンプラリー」

報瀬「観光地を周るだけでしょ?」

結月「そうです」

マリ「うん、それならついでに押せばいいよね」

秋槻「えっと、周る場所は……金閣寺と清水寺、映画村に新京極だったね」

結月「そうです。あと、比叡山もですけど、昨日貰ってますから行く必要はありません」

報瀬「いつの間に……」

マリ「スマホでコードを読み取るだけでいいんだよね」

秋槻「みたいだね。共有は出来るけど、
   不正出来ないシステムみたいだから、ズルはできないよ」

報瀬「共有はできる……?」

結月「スタンプとして使用できるのは一回ってことです」

マリ「じゃあ、誰かのスマホにスタンプを集めよう」

報瀬「よく分からないけど、それでいいと思う」

結月「夕方まで時間はありませんから手分けしません?」

マリ「どうするの?」

結月「そうですね……。私が清水寺――」
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/08/01(木) 12:12:47.23 ID:redis/s9o


日向「あはは、全然そうは思えないけどー?」

一輝「心配するくらい大人しいからな……」

栞奈「なによ、人を二重人格者みたいに」

日向「いや、今までの栞奈とイメージと違うから」

栞奈「私、一輝の前では自分を出せなくて……」モジモジ

一輝「ハハッ」

栞奈「凄い乾いた笑い方したね」

みこと「……聞いてるから、大丈夫」


結月「……うん。後で伝えておいてね」

報瀬「私たちはどうする?」

マリ「うーん、そうだなぁ」

秋槻「夕方までに4箇所周って4つだね」


綾乃「お待たせしました、モーニングセットです〜」


……


244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/08/01(木) 12:14:33.94 ID:redis/s9o

―― 京都駅


日向「なーんで私が清水寺なんだよー!」

報瀬「さっき、『それでいい?』って聞いたら頷いたでしょ?」

日向「そうだけど……ちゃんと聞いてるか確認しないとダメなんじゃないのか!」

報瀬「とにかく、そう決まったから結月と行ってきて」

日向「イヤだイヤだ! 納得できないー!」

報瀬「はぁ……分かったから」

日向「よし、駄々っ子成功!」

報瀬「ほら、飴玉あげる」

日向「……」


マリ「えっ!? 博物館にヴェガがあるの!?」

結月「みたいですよ。キマリさん、話聞いてなかったんですか?」

マリ「だって……! プリンアラモードに夢中だったから……!」

結月「見に行くって秋槻さん、行きましたけどね」

みこと「……」


報瀬「それじゃ、私も行ってくるから」

日向「私も金閣寺銀閣寺ルートがいい!」

報瀬「私 一人 行く。日向 結月 一緒 行く」

日向「なんだその片言! バカにしてんのかー!?」

結月「日向さん、清水寺行ったらスタンプ押して移動すればいいじゃないですか」

日向「嫌だよそんな……木を見て森を見ないなんて」

マリ「……うーん、どうしよ」

みこと「ヴェガを見たいの?」

マリ「うん!」

みこと「私一人で映画村行ってくるから、いいよ」

マリ「でも……」

みこと「大丈夫だから。いつもキマリさんに付いて行ってただけだから……」

マリ「……」

みこと「今日は一人で行ってみる」

日向「……」

結月「……」
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/08/01(木) 12:15:23.58 ID:redis/s9o

マリ「うん、分かった。じゃ、これ」スッ

みこと「え? 私が持ってていいの?」

マリ「というか、スマホでデータ取らないといけないんだよ?」

みこと「あ……うん。借りるね」

結月「触ったことある?」

みこと「……うん、ちょっとだけ」

結月「それなら教えてあげる」

日向「考えてみたら、みことと別行動って初めてだな……大丈夫か?」

マリ「うん……。そうだよ、みこっちゃんにはみこっちゃんの旅があるんだから」

日向「……ふぅむ」

マリ「じゃあ、栞奈ちゃん達も行ったみたいだし、私たちも行動開始!」

日向「そうだな。……報瀬はいつの間にかいないし!」


……


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