マリ「超特急デネブ?」結月「そうです」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 23:01:48.46 ID:vsgfQLE8o


―― 初夏:玉木邸


pipipi


「ん?」


pipipipipi


「あ、結月ちゃんだ」


プツッ


「はいもしもし〜」


『こんばんは、キマリさん』


マリ「こんばんは〜、久しぶりだね、結月ちゃん!」


『三週間前にあったばかりじゃないですか』


マリ「充分久しぶりだよ〜。どう、元気してた?」


『あの時、東京で会って以来変わりありません』


マリ「そっかそっか、よかったよかった」


『キマリさん、今って何をしていました? 電話しても大丈夫ですか?』


マリ「え? あぁ……うん……ベンキョウシテタトコロダケド」


『……遅れを取り戻すって、報瀬さんとも話してましたよね』


マリ「だーからー! 勉強してたのー! ……休憩してたけど」


『え? 最後がよく聞こえませんでした』


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1532959308
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/07/30(月) 23:06:08.75 ID:vsgfQLE8o

マリ「そ、そんなことより……何か用事? なんでも話聞くよ〜!」


『……まぁいいです。……キマリさん、今年の夏って予定空いてますか?』


マリ「えっ!? ひょっとして、南きょ――!」


『違います』


マリ「まだ全部言ってない〜!」


『南極は関係ありません。八月の一日から、一週間程度なんですけど」


マリ「……えっと、あると言えばあるけど、無いと言えば無いかな」


『どっちなんですか』


マリ「一週間ずっと……だよね?」


『そうです……』


マリ「何があるの?」


『あの……ですね……。また――』


マリ「……?」


『――また、旅に出ませんか?』


……


3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 23:58:07.55 ID:4buLCb/vO
拡散希望
あやめ速報、あやめ2ndへの掲載拒否を推奨します
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あやめ速報に掲載されてしまった貴方のSSを消すように訴えて下さい
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あやめ速報は今もなお不祥事、言い訳、謝罪するふり、もみ消しを繰り返しています
http://megalodon.jp/2018-0713-0835-12/ayame2nd.blog.jp/archives/24875080.html
http://megalodon.jp/2018-0723-0018-22/ayame2nd.blog.jp/archives/25110791.html

あやめ速報の誠意ある対応を待っております
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:17:46.71 ID:Vc83JUW6o

宇宙よりも遠い場所 × お嬢様特急 
https://www.youtube.com/watch?v=kFByZt2YdYA
https://www.youtube.com/watch?v=d83gJaPF7pY
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:31:48.53 ID:Vc83JUW6o

―― 8月1日:鹿児島県夢の崎



マリ「ん〜〜! いい天気ー!」ノビノビ


マリ「絶好の出発日和だね!」


マリ「これが……デネブ号ちゃん……!」


マリ「これから一緒に北海道に向けて旅をするんだ……!」


マリ「なんか、ワクワクするぅ〜!」


「なぁ、キマリ〜」


マリ「二週間とちょっとをともに旅を……!」

「おい、キマリー!」

マリ「もぉ……なぁに、日向ちゃん……。せっかく気分が盛り上がってたのに」

日向「ゆづは?」

マリ「結月ちゃん? あっちのセレモニーに参加してるんだよきっと」

日向「居なかったぞ?」

マリ「じゃあ、まだ来てないんだよ。遅刻だね」

日向「さっき発車のアナウンスあったのにか……もう間に合わないだろ……」

マリ「それとも、車掌さんと打ち合わせしてるとか? 一日車掌だから」

日向「……この時間に姿が見えないっておかしくないか?」

マリ「それより、デネブちゃんにしっかり挨拶しようよ。
   私たちを運んでくれる大切な仲間なんだよ?」

日向「よろしくな。それじゃ、個室行ってくる」

スタスタスタ

マリ「仲間を蔑ろにする仲間は仲間じゃないよ!」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:32:52.47 ID:Vc83JUW6o

パシャ


マリ「……?」


パシャ

「んー……、もうちょっとこう……」


マリ「あのお兄さん、デネブちゃんを撮ってる……?」


パシャ


マリ「なんであんな角度から……?」

prrrrrrrrrr


マリ「あ、いけないっ! 早く乗らないと!!」

テッテッテ


「やっべぇ!!」

ダダダダッ


マリ「よいしょ―っ!」

ピョン


マリ「セーフ!」


プシューゥ


マリ「……あのお兄さん、前の車両に乗ったのかな……?」


ガタン ゴトン


マリ「あ……」


ガタンゴトン


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


マリ「……始まったんだ」


マリ「私たちの旅が、また――」


マリ「始まったんだ……!」


……


7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:35:01.12 ID:Vc83JUW6o

―― マリの個室


マリ「うん、出発したよ〜」


『気を付けてね、お姉ちゃん』


マリ「うん! 大丈夫だよ、だって……わくわくしてるもん!」


『その大丈夫っていう根拠もよくわからないけど……』


コンコン


マリ「あ、はーい。……それじゃ、お母さんによろしくね、リン」


『うん、また夜に電話してね』


マリ「分かってるよ。バイバイ〜」

プツッ


コンコン


マリ「はいはい〜、いま開けます〜」


ガチャ


マリ「あ、車掌さん」


車掌「失礼します。乗車証の確認をさせていただきます」


マリ「はい、どうぞ……。このピンバッチを見せればいいんですよね」

車掌「そうです。乗車中は必ず身に付け、各駅の駅員にも見える位置にお付けください」

マリ「はい、分かりました」

車掌「ご用の際は、気軽にお申し付け下さい。では、良い旅をお楽しみください」

マリ「はい、ありがとうございます!」


車掌「……」

スタスタスタ


マリ「綺麗な人だなぁ……」


日向「あまり説明されないんだな、キマリは」


マリ「説明?」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:36:28.57 ID:Vc83JUW6o

日向「私には色々と話を聞かせてくれたけどな。この列車の車両について、とか」

マリ「あぁ、うん。私も説明聞いたよ。発車する前に少し話したから」

日向「ふぅん……。っていうか、キマリ」

マリ「?」

日向「ゆづ、乗ってないぞ」

マリ「ウソ!? 乗り遅れちゃったの!?」

日向「違う。今日じゃないんだって、乗車するの」

マリ「へ?」

日向「明後日の広島から乗車するんだって車掌さんから聞いた」

マリ「……あ、そうなんだ」

日向「キマリはゆづから話聞いてただろー?」

マリ「いやぁ、発車前は忙しいから会えないって聞いてたから」

日向「あのなぁ……そういう大事なことは聞き漏らすなよぉ」

マリ「あはは……ごめんごめん」

日向「報瀬はその後だろ。……そうなると、私たちが始発から乗る意味ないわけだが」

マリ「そんなことないよ! せっかくなんだから、始発からのほうがいいじゃん!」

日向「……まぁいいけど。キマリ、暇なら車内探検しないか?」

マリ「うん、しようしよう!」

日向「それじゃあ――」

マリ「最初に行く車両は――」


日向「動力車!」

マリ「展望車!」


日向「真逆なんだけど」

マリ「気が合うね、私たち」


……


9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:38:03.32 ID:Vc83JUW6o

―― 動力車


日向「この列車の先頭車両がここか……」

マリ「あ、車掌室って書いてある」

日向「車掌さんに用事があるときくらいだな、ここに来るのは」

マリ「そうだね。あと勉強教えてもらったりとか」

日向「また他力本願か」

マリ「だって受験生だよ私たち……!」

日向「なんで崖っぷちって顔してるんだよっ」


……




―― 寝台車


日向「……で、ここが私たちの個室がある寝台車……と」

マリ「個室って結構広かったね」

日向「そうだなぁ……あの4人部屋よりはいいかもな」

マリ「船の4人部屋ね。あれはあれで楽しかったけど」

日向「そうだなぁ〜、うんうん」

マリ「なんて言うんだっけ、こういう個室部屋のこと」

日向「スィングルディラァックス」

マリ「はい」

日向「はいじゃないだろ」

マリ「シングルデラックスですね、はい」

日向「だから、はい、じゃないだろ! 言わせたろ、今!」

マリ「はい」


……


10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:39:41.21 ID:Vc83JUW6o

―― 売店車

 
日向「シャワー室もある売店車」

マリ「すごいね、至れり尽くせりだね」

日向「なにか記念になるもの売ってないかなー?」


店員「いらっしゃいませ」


日向「ここでしか売ってない、珍しいものってありますか?」

店員「それでしたら、こちら」

マリ「お?」

店員「20周年記念バッチになります」

日向「これは……鳥だな」

マリ「なんの鳥?」

店員「鵲ですよ」

マリ「カササギ……?」

日向「これが鵲かぁ〜」

店員「はい、夏の大三角形の一つです」

マリ「あれ? 大三角形は、アルタイルとデネブとベガ……」

日向「デネブがカササギなんだよ」

マリ「でもこれ、乗車証バッチは白鳥だよ? 白鳥なのにカササギ……?」

日向「あー……、一緒にしちゃったか」

店員「クスクス」

マリ「???」

店員「コホン。申し訳ありません、笑ってしまいました」

マリ「いえいえ」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:41:25.42 ID:Vc83JUW6o

店員「七夕伝説と星座を一緒にしてしまったみたいですね」

マリ「違うんですか?」

日向「違うな。星座はギリシャ神話が深くかかわっているけど、七夕は世界的な話じゃないから」

マリ「えー!?」

日向「そんなに驚くことか?」

マリ「だって、小さい頃から知ってる七夕の話だよ!?」

日向「じゃあ、キマリはギリシャ神話を知ってるのか?」

マリ「まったく知りません」

日向「だろ? 世界から見れば日本の行事なんてそんなもんだって。逆もまた然り」

マリ「えー……あんなにいい話なのに……。織姫と彦星の話は涙なしには語れない……」

日向「で、その天の川に橋となって二人を会わせたのがカササギだよ」

マリ「なるほど」

店員「お客様が身に付けている乗車証が白鳥ですね」

日向「はい、そうです」

店員「20年前に日本を縦断した列車の名前がヴェガになります」

マリ「ヴェガ?」


……


12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:43:02.96 ID:Vc83JUW6o

―― 1号客車


日向「店員さんから面白い話聞けたな。今度、報瀬とゆづにも教えてやろう」

マリ「ヴェガはハープが乗車証になってたんだね」

日向「今回は白鳥か……ふむ、いいねいいね」

マリ「テンション上がってきたね!」

日向「よーし、探検を続けるぞ、キマリ隊員!」

マリ「ラジャー!」

日向「で、だ。……一つ気になってたんだけどさ」

マリ「なに?」

日向「私らと歳の近い人って……いないのな」

マリ「そういえばそうだね。……いないね」

日向「こんなことしていいのか私たち!?」

マリ「今は今しかないからいいんだよ!!」

日向「特にキマリ! 受験勉強大丈夫かキマリー!」

マリ「付け足さないで! 日向ちゃんと一緒だから! ダイジョウブダカラ!」

日向「なんだよ一緒って」

マリ「一緒に居るからって意味」

日向「……報瀬も乗ったら勉強会しようか」

マリ「…………お願いします」ペコリ


……


13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:44:24.15 ID:Vc83JUW6o

―― 2号客車


日向「客車ごとにシートの色が違うんだな」

マリ「自分がどこにいるのか色で把握できるようになってるんだね」


……




―― 3号客車

日向「ここは緑席かー」

マリ「それにしても、どんどん流れていくね、景色が」

日向「博多まであっという間だろうな〜」

マリ「次は阿蘇駅だよ」

日向「分かってるよ。夕方だろ、博多に到着するの」

マリ「着いたら何食べようかな〜?」


……


14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:45:37.70 ID:Vc83JUW6o

―― 4号客車


マリ「……あ」

日向「どうした?」

マリ「向こうから人が来るよ」

日向「先に通ってもらおう。キマリ、こっちに寄って」

マリ「あいよ」

日向「そういえば、キマリは乗り物酔いの薬、持ってきてる?」

マリ「そんなのいらねえぜ」

日向「どこからくるんだ、その自信は……」

マリ「だって――」


スタスタスタ

「……」


マリ「私はあの過酷な旅を終えたんだからな! 私たちはな!」

日向「なんのキャラだよ!」


「あの、ちょっといいかな、君たち」


マリ「はい?」

日向「?」


「少し話を聞かせてほしいんだけど……いいかな?」


マリ日向「「 話? 」」


……


15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:48:18.75 ID:Vc83JUW6o

―― 食堂車


「……で、注文は以上です」


店員「かしこまりました、少々お待ちください」


マリ「……」

日向「……」


「俺の名前は秋槻悟。適当に呼んでくれて構わないよ」


日向「歳はいくつですか?」

秋槻「いきなりそこを聞くんだ?」

マリ「大人ですよね」

秋槻「うん、まぁね。歳は今年で25だよ」

日向「私は18、こっちも18」

秋槻「じゃあ受験生だね?」

マリ「ワタシハ、マダ、17デス」

秋槻「?」

日向「現実逃避が趣味です。玉木マリです」

マリ「ソウデス、ワタシハマダ17サイノ、タマキマリデス」

秋槻「あぁ、そう……。まぁ、そうだね……うん。受験なんて言葉、もう出さないから」

日向「そうしてやってください」

秋槻「二人はどこまで行くの?」

マリ「東京までです。地元が群馬なので」

秋槻「夏休みを利用して旅行……と、いいねぇ。俺もしたかったなぁ」

日向「私は高校に通っていません」

秋槻「……どうして?」

日向「人間関係が面倒なので」

秋槻「なるほど」

マリ「……」

日向「……」

秋槻「二人で乗車?」

マリ「いえ、四人です!」

秋槻「そうなんだ……。俺の叔父もね――」

日向「……あの、ちょっといいですか?」

秋槻「う、うん? どうかした?」

日向「これって、なんです?」

マリ「?」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:50:47.07 ID:Vc83JUW6o

秋槻「これって……?」

日向「私たちを食堂車に連れてきて、根掘り葉掘り話を聞こうとしている……この状況」

秋槻「あー……、不安にさせちゃったかな」

日向「……」

マリ「話聞きたいってだけだよ?」

日向「……そうだけどさ」

秋槻「じゃあ、そうだな……俺も自己紹介をするよ」

日向「……」

秋槻「名前はさっき言ったか……。職業は……ライター関係ってとこかな」

マリ「製造会社に勤めているんですね」

秋槻「……ん?」

日向「ライターの製造販売、と勘違いしております」

秋槻「あ、あぁ……そっちじゃないよ。書き手のほう」

マリ「そっちだったかぁ」

日向「この列車に乗ってるんだからそっちしかないだろ!?」

秋槻「深読みするね、君は……」

マリ「じゃあ、旅行雑誌のライターさん?」

秋槻「ちょっと違うかな。……脚本家とか、演出家とか……そっちを目指してる」

日向「脚本家?」

秋槻「色んな人の話を聞いて、色んな人をみて、勉強してるってところ」

マリ「芸術家の卵……!」

秋槻「……大袈裟だよ、それは」

日向「……」

秋槻「……ごめん、不快にさせちゃった?」

日向「いえ、そこまでは」

マリ「食事、奢ってもらっちゃったからね、むしろラッキーだよね!」

秋槻「そう言ってもらえると助かるよ」

日向「この列車って、日本を縦断しますけど……秋槻さんはどこまで?」

秋槻「とくには考えてないんだよねぇ……。まぁ、時間はあるから最後まで行ってみようかなって」

日向「仕事は?」

秋槻「だ、だから……勉強中。……あ、一応就職はしてるよ? 仕事は無いけど」

日向「フリータ―?」

秋槻「だから、職には就いてるって……」

マリ「あ……♪」


店員「おまたせ致しました。プリンアラモードと、ジャンボパフェでございます」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:52:42.81 ID:Vc83JUW6o

マリ「キタ! プリン♪」

日向「って、でかッ!?」

秋槻「ご、50cmはあるね」


店員「それでは、ごゆっくりどうぞ」

スタスタスタ


マリ「いただきま〜す♪」

日向「いただきまーす」

秋槻「どうぞどうぞ」

マリ「パクッ」

日向「はむっ」


マリ「ん〜〜っ」

日向「お〜〜っ」


マリ日向「「 あま〜い!! 」」


秋槻「幸せそうでなにより」

マリ「いままで食べた中で3番目くらいの美味しさだよ!」

日向「1番にしとけ、キマリ。ここは1番にしとくもんだぞキマリ」モグモグ

マリ「そうだね、それじゃ1番で」モグモグ

秋槻「その会話、コックさんに聞かれたら怒られるよ?」

マリ「もぐもぐ」

秋槻「……食べるのに夢中で話できそうにないね」

日向「もぐもぐ……くぅ、食べても食べても底が見えない幸せ♪」

マリ「お兄さん、発車前にデネブちゃんを撮ってましたよね」モグモグ

秋槻「え? あぁ、見られてたんだ……。そうだよ」

マリ「変な角度から撮ってるな〜って」モグモグ

秋槻「車体と風景だけを撮りたくてね。まだマスコミがいたから苦労したよ」

マリ「甘いね!」

秋槻「え!?」

マリ「このとろけるような甘さ! 絶品だよ! やっぱり2番にしとくよ、日向ちゃん!」

日向「色んな意味で人の話聞けよ! 1番にしとけって言っただろ、あと秋槻さんの話も聞け!」

マリ「はい」モグモグ

秋槻「写真撮影の心得がなってないって言われたかと思った……」

マリ「もぐもぐ……。あぁ、もう無くなっちゃう」

日向「もぐもぐ……。あぁ、まだ底が見えない」

秋槻「……」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:55:57.34 ID:Vc83JUW6o

マリ「お兄さんはヴェガって知ってます?」

秋槻「夏の大三角の一つの?」

マリ「そうじゃなくて……。超特急ヴェガのこと」

秋槻「うん、知ってる。20年前を走った列車のことだよね」

日向「もぐもぐ」

マリ「詳しく知ってたら教えて欲しいんです!」

秋槻「調べた程度の情報だけど、それでいい?」

マリ「うん」モグモグ

秋槻「超特急ヴェガは、今日と同じ日に北海道の稚内を出発し、
   15日間をかけて日本を縦断したんだ」

日向「もぐもぐ」

秋槻「稚内を出発後、順に札幌 青森 仙台 東京……
   終着駅は、さっき俺たちが出発した夢の崎駅だね」

マリ「ふむふむ」

日向「ということは、今回のデネブはその逆を進行するのか」

マリ「逆だったんだね」

秋槻「各都市を24時間停車。車内の設備はデネブとヴェガ同じ」

日向「ふぅん」

秋槻「ヴェガは北から南へ。デネブは南から北へ。……違いはそれだけみたい」

マリ「ううん、違うのは他にもある」

秋槻「?」

マリ「乗客だよ」

日向「……」

秋槻「……確かに。その通りだ」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:57:11.39 ID:Vc83JUW6o

マリ「ごちそうさまでした」

日向「これ、さっき売店で買ったんだけど」

秋槻「ピンバッチ?」

日向「20周年記念の限定品」

秋槻「それは急いで買わないと……」ガタ

日向「話は終わり?」

秋槻「うん、ありがと。……と、そうだ」

マリ「?」

秋槻「展望車に君たちの仲間になれそうな子がいるよ。……それじゃ」

日向「展望車?」

マリ「誰だろ……気になる!」ガタッ

日向「あ、ちょっと待て! まだ食べ終わってない〜!」

マリ「先行ってるね、日向ちゃん!」

テッテッテ


マリ「ごちそうさまでした!」

店員「あ、ありがとうございました……」


……


20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:01:16.51 ID:Vc83JUW6o

―― 娯楽車


ちゅどーん

 ばばばばばーん


マリ「お、おぉ……!」

店員「遊んで行かれますか?」

マリ「はい!」

店員「メダルゲームとビデオゲームが――」

マリ「あ、そうじゃなかった! すいません、また後で日を改めてきます!」

店員「は、はぁ……?」

マリ「ゲームしてる場合じゃないっ」


……


21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:02:19.05 ID:Vc83JUW6o

―― 展望車


マリ「お仲間は〜どこ〜?」


「……」


マリ「って、どんな人なのか聞いておけばよかったなぁ……」


「……」


マリ「おぉ……空が見える……。眩しいけどそこまで暑くない」


「……」


マリ「……あ」


「……?」


マリ「じー……」


「……」スッ


マリ「あの」

「……?」

マリ「お名前は?」

「え――?」


……


22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:03:53.79 ID:Vc83JUW6o

―― 阿蘇駅


マリ「う〜ん、いい景色〜」

「……」

マリ「ここね、本当は阿蘇駅じゃないんだよ」

「?」

マリ「デネブちゃんが通るから今日一日だけ特別に阿蘇駅になってるんだ〜」

「……」

マリ「って、車掌さんから教えてもらった」

「……そうなんだ」


「おーい、キマリ〜」


マリ「あ、日向ちゃーん」


日向「車内全部探しちゃったよ」

マリ「停車したから外に出てみようと思って」

「……」

日向「あ、その子が?」

マリ「うん、そう」

「?」

日向「私は、三宅日向。よろしくな!」

「は、はい……」

日向「というか、若いな!」

マリ「今年15になるんだって」

日向「ふぅん……って、中三かぁ」

マリ「若いっていいよねぇ」

「……っっ」

日向「困ってるだろぉ」

マリ「日向ちゃんが先に言ったんだよ」

日向「いや、言ってない」

マリ「若いって言った」

日向「言ってな――……いや、言ったな。そんなことより、名前は?」

「わ、私は……」

マリ「みこっちゃん」

日向「はい?」

マリ「みことちゃんだから、みこっちゃん」

日向「みこと、ね」

みこと「…………」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:04:49.56 ID:Vc83JUW6o

そよそよ


マリ「ん〜、ここではこんな風が吹くんだねぇ」

日向「風が運ぶのは空気だけではない。人の気持ちも乗せていくのである」

マリ「出た、名言!」

みこと「……誰のお言葉なんですか?」

日向「私!」

みこと「……」

マリ「困ってるでしょぉ?」

日向「フッ……。旅は人の心を運んで行く……、それはまるで風のようだ」

マリ「風と旅はどこか似ているね」

日向「そうだな……どこかで生まれて、どこかへ消えていく……」

マリ「儚いね」

日向「あぁ、儚い」


みこと「…………」


日向マリ「「 困ってるだろぉ(でしょぉ) 」」


日向「キマリが変なこと言うから」

マリ「日向ちゃんが変なこと言うから」


みこと「……」


マリ「う〜ん……笑わないね」

日向「というか、リアクションが無い……」


……


24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:06:26.49 ID:Vc83JUW6o

―― 1号客車


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


マリ「動き出したよ」

日向「そうだな〜……まだまだ始まったばかりだ」

みこと「……」

マリ「みこっちゃんはどうしてこの列車に?」

みこと「……私の」

日向「?」

みこと「両親に勧められて……」

マリ「どこ出身なの?」

みこと「埼玉……」

日向「じゃあ、東京で降りるんだ?」

みこと「……うん」


スタスタスタ

秋槻「……あ、もう仲間になれたんだ?」


マリ「もちろん」フフン

日向「なんでしたり顔なんだよ」

みこと「……」

マリ「買えました?」


秋槻「うん、最後の一個だった。……それじゃ、ね」

スタスタスタ......


マリ「ういうい」

日向「もう売り切れたのかぁ、そんなに時間たってないのに」

みこと「……?」

マリ「記念のバッチが売られてたんだよ。私たちは一つでいいかなって」

日向「そうそう、4人で一つ」

みこと「4人……?」

マリ「あとで、結月ちゃんと報瀬ちゃんが乗って来るの。旅仲間だよ」

みこと「……」

日向「……ん?」

マリ「どうかした?」

日向「……なにか引っかかったんだけど……まぁいいや」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:07:59.12 ID:Vc83JUW6o

マリ「みこっちゃんは一人旅?」

みこと「……はい」

マリ「じゃあ寂しくなったらいつでも話しかけてね、私は……私たちはいつでもオッケーだから」

日向「その私たちには私も入ってるんだよな……。別にいいけど」

みこと「……」

マリ「あ……もしかして一人の方がいいのかな」

みこと「……そんなことは」

マリ「それならよかった」

日向「今は真新しい事ばかりだから新鮮で楽しいけど、
   それも慣れてきたら退屈するからな」

みこと「……」

マリ「無理に誘ったりしないから安心して。でも大体は無理に誘うから」

日向「それを矛盾という」

みこと「……」

マリ「やっぱりガイドブックは必要だよね、売店にあったかな」

みこと「……」コクリ

マリ「あ、あったんだ? じゃあ後で買いに行こう〜」

日向「そうだ、ゆづのことで気になってたんだけどさ、キマリ」

マリ「なに?」

日向「ゆづって、こういう……一日車掌ってやりたがらないと思ってたんだけど」

マリ「そう?」

日向「だって、アイドルみたいだし」

みこと「……」

マリ「うーん……」

日向「なんだか、妙に乗り気だったように思えてさ……気になってたんだよ」

マリ「なんか、話を聞いたって言ってた」

日向「話?」

マリ「そう、旅の話。……誰から聞いたのかは分からないけど」

日向「……そうか」

みこと「……ゆづきって人、アイドルなの?」

日向「……それは」

マリ「そうだよ」

日向「嫌がるだろ、そういう風に分けると」

マリ「大丈夫だよ。今は居ないから」

日向「適当だな、お前は……。まぁ、どちらかというと、女優かな」

みこと「……女優、アイドル……ユヅキ……結月? 白石結月?」

マリ「正解! よく分かったね!」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:09:15.89 ID:Vc83JUW6o

日向「フォロワー5万人の有名人だからな」

みこと「……」

マリ「デネブちゃんで一日車掌するんだって。だから私も誘われたんだ〜」

みこと「……」

日向「相変わらず反応が無いな〜。一応有名人だぞ! 朝ドラの友人役で出てるだろ!?」

みこと「……うん」

マリ「あの大物女優、飯山みらいと共演したんだよ?
   サインを貰ってきてって言ったら断られたけど!」

日向「私、そういうの嫌いです」フンッ

マリ「そう、こんな風に!」

みこと「……」

日向「まぁ、でも……私と報瀬とキマリの分、三枚貰うってのは……さすがにダメだよなぁ」

マリ「私のだけで良かったのに」ボソッ

日向「聞こえたぞ。抜け駆けするくらいの薄い友情なのか私たちは」

マリ「……」

みこと「……」

マリ「そんなことないよ!」

日向「今の間はなんだ!」

みこと「貰えなかったんだ……」

マリ「ううん、結月ちゃんは貰ってたよ」

みこと「?」

日向「『結月さんへ』って書いてあったな。それを自慢げに見せられたよ」

マリ「それからはもう大げんか。私のだー、私のだーってサイン色紙の奪い合いだ」

みこと「……」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:10:10.19 ID:Vc83JUW6o

日向「私の名前が書いてあるから私のなんですぅ!」

マリ「うるせぇぃ! そんなのはちっさい問題でぇぃ!」

日向「やめてください! やめてくださいぃ!」

マリ「離せぇぃ! そう簡単に渡してたまるかぁぃ!」

日向「ひぇぇ、あんまりですぅ!」

マリ「泣いたって無駄でぇぃ! とっとと諦めやがれぇぃ!」

みこと「……」

日向「どこ向かってるんだ、これ」

マリ「……博多」

日向「そうだな」

マリ「……」

日向「……」

みこと「……」

マリ「やっぱりラーメンだよね、博多と言えば」

日向「明太子じゃないか?」

みこと「今のは……なに……?」

マリ「なにが?」

みこと「小芝居?」

マリ「え? ん? 芝居?」

みこと「芝居じゃないの?」

マリ「柴犬?」

日向「見事に話が噛み合っとらんなぁ」


……


28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:11:04.17 ID:Vc83JUW6o


―― 売店車


マリ「ガイドブックください」

みこと「……」

店員「はい、どうぞ」

マリ「ほぉ、どれどれ〜」

ペラペラ

マリ「みこっちゃん、どこ行くか決まった?」

みこと「……ううん。よく知らないから」

マリ「じゃあ、一緒に観光行く? 日向ちゃんも一緒に」

みこと「……」

マリ「早めに行くとこ探そう」

みこと「……日向さんは?」

マリ「私に任せるって」


……


29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:12:18.65 ID:Vc83JUW6o

―― 4号客車


日向「ん〜……嫌な予感がする」


車掌「どうかなさいましたか?」


日向「あ、車掌さん」

車掌「心配事でしょうか?」

日向「聞かれましたか? いやぁ、キマリが……
   一緒に乗った相方が勝手に話進めてそうで」

車掌「と、いいますと?」

日向「次の観光地、私に相談も無しに決めてそうだなぁって予感がして」

車掌「まぁ」クスクス

日向「どこかお勧めスポットってありますか?」

車掌「そうですね……。中洲なんてどうでしょう」

日向「ナカス?」

車掌「西日本一の繁華街です」

日向「そっかぁ……。でも私たち、東京を知ってるからなぁ……なんちゃって」

車掌「旅先で、見知らぬ土地に来たと実感できる要素はいくつかありますが」

日向「?」

車掌「その気持ちを大きく占める要素の一つに方言……つまり、その土地の言葉があります」

日向「言葉……?」

車掌「馴染みのないイントネーション、言葉は同じなのに意味が全く異なったりとか……色々」

日向「…………」

車掌「一日の停車ですから、現地の人とのコミュニケーションは中々難しいことだとは思いますが――」

日向「それ面白そう!」

車掌「……」

日向「話しかけるのは無理かもだけど、聞き耳を立てるくらいはできる!」

車掌「くれぐれも」

日向「分かってますよ〜。盗み聞きはしませんって〜あはは」

車掌「それなら良かったです」

日向「他に、他にありますか? 実感できる要素!」

車掌「食べ物がそうですね。あとは、自動販売機なども面白いかもしれません」

日向「え、自動販売機? 飲み物?」

車掌「常識が土地ごとに違うのですから、販売されている飲み物も多少は違いますね」

日向「おぉー……例えば、プリンシェイクとか」

車掌「?」

日向「あぁ……車掌さんが知らないってことは、あれは地元でしか売られてない……!」

車掌「ふふ、そういうことです」


……


30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:13:19.38 ID:Vc83JUW6o

―― 3号客車


マリ「プリンシェイクは全国区だよ!?」

日向「……え、そうなの?」

マリ「そうなの!」

日向「だってキマリしか飲んでないじゃんあれ!」

マリ「じー……」

日向「どうすんだよ! 車掌さんに間違った情報教えちゃったよ!!」

マリ「訂正してきて」

日向「いや……でも、車掌さん知らなかったし」

みこと「……」

日向「みことも知らないだろ!? プリンシェイクっていう飲み物」

みこと「……」チラッ

マリ「……」コクリ

みこと「……知らない」

マリ「あれ?」

日向「いまアイコンタクト取らなかったか?」

みこと「嘘ついて話し合わせるより、本当のこと言った方がいいと思って」

マリ「あ、そうだったんだ……。私に話合わせてくれるのかと思ったよ」

日向「私もそう思ったよ」

みこと「……」

マリ「目標を立てよう」

日向「突然だな……なんの目標?」

マリ「この旅の目標!」

日向「いいだろう、言ってみたまえ」

みこと「……」

マリ「みこっちゃんは私たちと意思疎通できるようになること!」

日向「人の目標を勝手に……。まずは自分の目標を決める方が先だと思いまーす」

マリ「私はほら、勉強があるから……受験生だし」

みこと「……」


……


31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:14:38.12 ID:Vc83JUW6o

―― マリの個室


マリ「うぅ……まさかこんなことになるなんて」


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


マリ「揺れてる中で勉強なんて無理……!」

ガタッ

マリ「……むん!」


ガチャ


マリ「よし……!」


「おやおやキマリさん、どちらへ行こうというのですか〜?」


マリ「ギクッ」


日向「受験生だから勉強しなきゃいけませんよねぇ」

マリ「いやぁ、ちょっとシャワーを浴びに」

日向「こんな時間にぃ?」

マリ「……」

バタン


みこと「戻った……」

日向「な、私の言った通りになっただろ?」

みこと「……うん。数分で出てきた」


……


32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:15:11.79 ID:Vc83JUW6o

―― マリの個室


マリ「……」

ガタンゴトン

 ガタン


マリ「あ……」


ゴトン


マリ「減速した!」


ガタン

 ゴトン


マリ「着いたんだ……!」


……


33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:16:27.56 ID:Vc83JUW6o

―― 博多駅


マリ「最初の停車駅、到着!!」

日向「キマリって、いつ勉強するつもりなんだ?」

マリ「博多に着いて最初の言葉がそれ?」

日向「いや、だってさ……列車で移動してるときは揺れててできないだろ?」

マリ「うん」

日向「着いたら着いたで観光だーって言うな?」

マリ「うん!」

日向「だから、いつ勉強するのかなって。親と約束したって言ってたのに」

マリ「寝る前にするよ。うん、もちろん」

日向「……」

マリ「嘘じゃないもん」

日向「……」

マリ「信じてよ〜!」

日向「別に、否定してないだろ」


秋槻「二人で観光?」


マリ「みこっちゃんを待ってます」

秋槻「……みこ……?」

日向「あー……、新しい仲間ですよ」

秋槻「あぁ、あの子の名前ね。さっそく仲良くなったんだ。いいね、若いって」

マリ「お兄さんの7年前を私たちは生きてます!」

日向「おぉ、名言っぽい!」

秋槻「……言われた方は傷つくんだけどね」


みこと「……?」


マリ「あ、来た」

日向「準備できたかー?」

みこと「うん」


秋槻「じゃ、観光楽しんでね」

スタスタ


マリ「はーい」

みこと「……あの人」

日向「あんまり知らないけど……まぁ、同じ列車に乗ったよしみってことで」

みこと「……」

マリ「よし、それじゃ海の中道へレッツゴー!」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:17:49.44 ID:Vc83JUW6o

日向「レッツゴー! ……って待てぇぇぃい!!」

マリ「……?」

日向「いやいや、キョトンとするな」

みこと「……?」

日向「お前もだよ! なんで私に相談もなく決めた!?」

マリ「日向ちゃんの気持ちに応えようと思って」

日向「私の反応はどうだ、みこと」

みこと「驚いてた」

日向「それは私の気持ちに応えられてないってことなんだよ」

マリ「大丈夫だよ、夏休みは21時までやってるから」

日向「だぁれが時間を気にしたかー!?」


車掌「どうかなさいましたか?」


日向「車掌さーんっ、やっぱりキマリが勝手に観光地決めてましたぁ〜」ウルウル

車掌「まぁ」


マリ「この時間ならウミホタルの発光実験に間に合うよ」

日向「やったー! 行こう行こう! 光の実験なんて楽しみだな〜♪」

みこと「……」

日向「ってならないからな、そんなマニアックなイベントで。
   イルカショーが無いなら私行かないぞ!」プンスカ

マリ「今から急げば間に合う!」

日向「じゃ、車掌さん、行ってきまーっす!」

車掌「行ってらっしゃいませ」

日向「ほら、行くぞみこと!」

みこと「……驚いたり泣いたり怒ったり笑ったり」

マリ「これが日向ちゃん」


……


35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:19:44.22 ID:Vc83JUW6o

―― 海の中道


日向「おぉ、これがウミホタル……!」

マリ「日向ちゃんっ、イルカショー!」

日向「思ったより神秘的だなぁ……」

みこと「……」

日向「綺麗だなぁ……みこともそう思うだろ?」

みこと「……うん」

日向「だよな……へぇぇ……ほぉぉ」

みこと「……」

日向「おぉ、ここからの角度もいいねぇ」

みこと「日向さん」

日向「これがさ……海の中に居るんだぞ……想像してみ?
   大きな大きな海の中をこの幻想的な光が漂う姿を」

みこと「……」

日向「海の大きさに比べれば、人間は小さな存在だけど」

みこと「……」

日向「この姿を想像して想いを深められるのもまた、人間だけなのだよ」

みこと「……」

日向「人間は小さい存在だけど、海のように大きな存在でもあるんだ」

みこと「キマリさん、行ったよ」

日向「は?」


……




『イルちゃん、ルカちゃんに盛大な拍手を〜〜!』


マリ「わぁー!」パチパチパチ


パチパチ

 パチパチパチ


子「あーんな高くジャンプしてたっ」

親「すごかったねぇ〜」


マリ「海の生き物の生命力ってすごいね……うんうん」ウンウン


日向「こら」


マリ「あ、日向ちゃん。イルカショー、もう終わっちゃったよ」

日向「だろうな……。イルカたちも一仕事終えたぜって感じで泳いでるもんな」

みこと「……」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:21:29.50 ID:Vc83JUW6o

マリ「はぁ〜、満足満足。……さ、デネブちゃんに戻ろうか」

日向「なんで置いてった?」

マリ「ずっと呼び掛けてたのに聞かないからだよ。ね、みこっちゃん」

みこと「うん」

日向「そりゃ、あれだけ幻想的な光に魅せられたら足は止まるよ。動かないってもんよ!」

マリ「いくらなんでも一時間はないよ。ないよ、一時間は……いくらなんでも」

日向「二回も言うな」

みこと「オットセイは、見た?」

マリ「私が来たときは終わってたよ」

みこと「残念だったね」

マリ「うーん……。私たち、アザラシ見てるから、そうでもないかな。イルカが可愛かったな〜」

みこと「アザラシ……?」


日向「あ、寄ってきたぞ、イルカ」


マリ「そう、アザラシ〜。並んで横になったんだ〜」

みこと「……?」


日向「きゅいきゅ〜い」

イルカ「キュイ」

日向「あはっ、可愛い〜」


マリ「日向ちゃ〜ん、親不孝通りはいいの〜?」


日向「どこだよそれ。中洲に行くんだぞ」

みこと「若者が集まってた場所って、ガイドに」

日向「過去形か」

マリ「まぁ、私みたいな親孝行者が行くところじゃないよね〜」

日向「そうだな〜。若者は何事にも勉強だからな〜。
   キマリのお母さんは心配事が少なくて安心だろうな〜」

マリ「もぉ、また勉強って単語出して。
   それ言えば私が大人しくなると思ったら大間違いだよ!」

日向「何言ってんだ。勉強ってのは単語を覚えることだけにあらず。
   人は生涯勉強する生き物なんだからな」

マリ「そっか……! そうだったんだ……!
   みんな勉強中なんだ! 良いこと言うね日向ちゃん!!」

みこと「テレビかなにかで聞いたことある」

日向「あ、バレた? 人生経験豊富な爺様が言っててさ感銘を受けたね私は」

マリ「なんだ……」


……


37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:23:25.00 ID:Vc83JUW6o

―― 中洲


日向「ふーむ……」

マリ「喉乾いたの?」

日向「いや、ちょっとね〜。珍しいモノを探して」

マリ「あ……!」

日向「マジか……!」

マリ「プリンシェイク!!」

みこと「……あ」


秋槻「ん……飲みすぎたか」


みこと「……」


ガシャン

マリ「ふふふ」

日向「買うなよ! 博多まで来て!」

マリ「だってぇ……買わずにはいられなくって」

日向「どうせ買うならこっちだろ、みかんジュース」

マリ「日向ちゃんが買いなよ〜。私はこれがあれば充分♪」

日向「あ、そ。……みことも飲むか? って、あれ?」

マリ「ぷはー、おいしかった〜。やっぱりこれだね」

日向「もう飲んだのかよ。それより、みことどこ行った?」

マリ「え?」


秋槻「すぅ……ふぅ……」

みこと「……」

秋槻「?」

みこと「……」

秋槻「あれ? 君、どこかで会った?」


日向「ちょっと! 相手中学生ですよ! いい年した大人がナンパなんて――」

マリ「お兄さんだ」

日向「なんだ、驚かすなよなぁ」

秋槻「……通りで見たことあるはずだよ」

みこと「具合悪そうだったから」

マリ「本当だ……。この人の多さに酔っちゃったんだね」

日向「そっか……。田舎から出てきてこの大都会の雰囲気に飲まれちゃったんだな……」

秋槻「酒に酔ってんの。……田舎から出てきて中学生をナンパって最低じゃないか、俺……」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:24:38.26 ID:Vc83JUW6o

マリ「お酒? アルコール?」

秋槻「そこの焼き鳥屋でね」

日向「おぉー、屋台だ! テレビで見たことある! もちろん入ったことはない!」

マリ「私もない! みこっちゃんは?」

みこと「ううん」フルフル

秋槻「橋の向こう側も賑わってるよ。
   行くなら早めの方がいいね、これから人も増えるだろうから」

日向「煙と匂いが凄いな〜!」ワクワク

マリ「何食べる? 何食べる!?」ワクワク

みこと「……おでん、焼き鳥、ラーメン?」

日向「全部食べるのかよ、みことは見かけによらず大食いだな〜」

マリ「それいいかも! でもちょっとずつにしよう!」

みこと「……うん」

秋槻「いや、もうそんな時間は……」

日向「あ、キマリ―、もうこんな時間ダゾー」

マリ「ホントウだー。追い返されちゃうカモ―」

秋槻「……」

日向「じー」

マリ「じぃー」

みこと「……」ジー

秋槻「そうだね……、責任者が居れば追い返されないかもね。何が食べたいの?」


……


39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:26:11.11 ID:Vc83JUW6o

―― 屋台


マリ日向「「 いただきまーす! 」」

みこと「いただきます」

秋槻「……酒の締めにラーメン……俺もいよいよって感じだなぁ」

日向「ずるずるっ」

マリ「ん〜〜っ」


日向マリ「「 おいしぃ〜〜 」」

秋槻「この光景、昼にも見たんだけど……まぁいいか」

みこと「……はい」

秋槻「……? 水?」

みこと「もう空だったから」

秋槻「あぁ、ありがとう」

日向「やっぱり屋台で食べるラーメンは一味違うな〜!」

マリ「うんうん……ずるずるっ」

みこと「もぐもぐ」

秋槻「ずるずる……ん、うまい」


……




日向「ごちそうさまでしたー」


店長「はいよ、またきんしゃい」


日向「また博多来た時に寄りまーす」

マリ「面白いね、博多弁って」

みこと「……うん」

日向「はぁ〜、おいしかった〜。ちゃんぽんっていいな!」

みこと「あの、お金……」

秋槻「え? いやいいよ、これくらい奢るって」

みこと「でも……」

秋槻「話聞かせてもらったから、お礼ってことで。そっちの二人もそうしたから」

日向「でもなんか悪いっちゃ。本当に奢ってもらってよかと?」

マリ「よかよ! 気にせんといてー」

秋槻「なんで君が言うかな……いいけど」

みこと「……」

日向「気にせんでよかー、じゃないのか?」

マリ「そっちっぽい」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:27:00.17 ID:Vc83JUW6o

みこと「……」

秋槻「社会人に気を遣わないくてもいいよ。
   まぁ、他人だったわけだし、難しいだろうけどさ」

日向「そうだな、お礼言ってないぞ、キマリ」

マリ「ごちそうさまでした、お兄さん」ペコリ

日向「ごちそうさま〜」

秋槻「うん」

みこと「……ごちそうさまです」

秋槻「はは、なんだか親戚の子を相手してるみたいで面白い」

マリ「あ、あそこからいい匂いが」

日向「秋槻おじさん、焼き鳥をお土産によかと?」

秋槻「もう時間も遅いし、列車に戻るよ!」

みこと「……」

マリ「怒られたよ、日向ちゃん」

日向「なんだよ、フリだったんじゃないのか、今の」

マリ「えー、チガウヨー」

秋槻「君たちの性格、よーく分かったよ」

日向「お礼と言っちゃなんだけど、ジュース奢っちゃる!」

マリ「じゃあ、私も〜」

みこと「……」


……


41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:46:38.85 ID:Vc83JUW6o

―― デネブ


マリ「それじゃ、おやすみなさ〜い」

日向「おやすみー」

みこと「……」ペコリ


秋槻「お休み」


テッテッテ

「シャワー浴びてさっさと寝よう、明日に備えて」

「あれ、勉強は?」

「ふぇぇぇ」

「……また、明日」

「おやすみ、みこっちゃん〜……ふぇぇ」

「泣くなよ。じゃあな、みこと〜」

「うん」


秋槻「ずっと元気だな……」


車掌「おかえりなさいませ」


秋槻「あぁ、車掌さん……こんばんは」

車掌「一緒に観光ですか?」

秋槻「いえ、中洲で会って……そこで一緒に夕飯を」

車掌「そうですか。なんだか嬉しいです」ニコニコ

秋槻「……俺もあの歳の頃ってあんなだったかなぁって思い返すんですけどね」

車掌「ふふ、女子と男子では違うものですよ」

秋槻「それもそうですね。……ところで、車掌さん」

車掌「はい?」

秋槻「これ、貰い物ですけど、どうですか?」

車掌「まぁ……。これがプリンシェイクですか」

秋槻「つぶ入りみかんと一緒に貰ってくれると助かります」

車掌「どうしたんですか、缶ジュースを三つも……?」

秋槻「あの子たちにお礼ってことで貰ったんですけど……みかんはともかくプリンは……」

車掌「よろしいんですか?」

秋槻「プリンはここじゃなくても飲めますからね」

車掌「本当はいけないんですが……お言葉に甘えて」

秋槻「どうぞどうぞ」

車掌「話を聞いて少し興味があったんです」

秋槻「それはよかった」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:47:48.23 ID:Vc83JUW6o

車掌「それでは、仕事がありますので、私はこれで失礼します」

秋槻「あ、車掌さん」

車掌「はい?」

秋槻「車掌さん、ヴェガに乗ってたんですよね」

車掌「はい」

秋槻「20年前も……ヴェガもこんな雰囲気だったのでしょうか?」

車掌「はい、そうですよ」

秋槻「……そうですか」

車掌「乗客は変わっても、人の心は変わらないものですね」

秋槻「……?」

車掌「人は何かを求めるから、旅に出るのでしょう」


……


43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:49:16.35 ID:Vc83JUW6o

―― マリの個室


マリ「……」カリカリ

マリ「……む」

マリ「公式、忘れちゃった……どこにあったかな」

ペラペラ

マリ「あったあった……」

マリ「……」カリカリ


日向「……」


マリ「……」チラッ


日向「……」


マリ「……日向ちゃん、参考書読むだけ?」


日向「んー」


マリ「……こほん」


日向「……」


マリ「……」スッ


日向「……キマリさん?」


マリ「……はい?」


日向「それ、違う参考書ですよね」


マリ「そうですね」


日向「数学の勉強に必要ですか?」


マリ「いいえ」


日向「……」


マリ「なんでバレたんだろ……本読んでるはずなのに……」


日向「手の動き止めてこっちの様子見るからだろ。怪しすぎて気になる」


マリ「……」


日向「集中しないと身に付かないぞー」


マリ「はーい」


日向「……」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:55:55.96 ID:Vc83JUW6o

マリ「……」カリカリ


日向「……あのさ、キマリ」


マリ「ん〜?」カリカリ

日向「みことって、無理してるかな」

マリ「どうして?」

日向「あんまり喋らないし、反応も無いからさ、無理して一緒にいるのかなって」

マリ「日向ちゃん、気が付かなかった?」

日向「なにが?」

マリ「みこっちゃん、屋台で美味しそうに食べてたよ」

日向「それは知ってるけど」

マリ「心配?」

日向「んー……そうだなぁ。デネブに乗った理由って親に勧められたからだろ」

マリ「そう言ってたね」

日向「親の目も無いし、自由だー! 観光だー! ってキマリみたいにならないのかなって」

マリ「うーん……私、そんなにノビノビしてるかな」

日向「してるしてる」

マリ「みこっちゃんのことは気にしなくてもいいと思うよ」

日向「そうだな……。ちょっとお節介だったか」

マリ「そうじゃなくて。これから、だから」

日向「だな。旅はまだ始まったばかりだ……」スクッ

マリ「部屋戻るの?」

日向「うん。それじゃ、お休み」

マリ「また明日ね〜」

日向「勉強勉強ってしつこく言ってた私が言うのもなんだけど、あまり遅くまでやるなよ?」

マリ「そうだね、これでお終いにするよ」

日向「あともうちょっと頑張れよ……。あと、寝坊するなよ〜」

ガチャ

 バタン

マリ「うー……」


……




―― みことの個室


『フォローバックが止まらない〜♪』


みこと「……」


……


45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/03(金) 11:59:15.97 ID:Ziseypbso

―― 8月2日


日向「おはよー。よく眠れたかー?」


みこと「うん」

マリ「……」


日向「ふぁぁ……やっぱり二度寝はいいですなぁ」

マリ「……」

日向「って、どうした、キマリ?」

マリ「あのね、日向ちゃん……」

日向「う、うん……。なんか、テンション低いな……」

マリ「結月ちゃんのこと……なんだけど……」

日向「……うん……ゆづが……どうした?」

マリ「あの……」

日向「……ごくり」

マリ「どんな人なのって……みこっちゃんが」

日向「はい?」

みこと「……」

日向「深刻な面持ちで言うことか?」

マリ「どう説明したらいいかなって考えたら難しくて」

日向「とりあえず、朝ごはん食べに行くぞ」

マリ「……結月ちゃん……って、うーん……」

日向「なんでそんなことを? 明日乗って来るのに」

みこと「気になるから」

日向「ふぅん」


……


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