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果南「彦星が泣いた日」
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118 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:16:23.60 ID:Hp889MgaO
病室
内浦に帰ってからは、わたしは入院生活となった。さすがに自分すら誤魔化した身体への負荷は相当なものだったみたい。
しばらくして地区大会の結果が届いたけど、結果は落選。わたしたち……ううん。わたしのスクールアイドルの人生は幕を閉じたのである。
でも、Aqoursは終わらない。わたしがいなくても、AqoursはAqoursだ。そうだって信じてる。
お見舞いには代わる代わるみんなが来てくれた。大会のショックとわたしのことでダメージがいってるみたいだけど、笑顔は見せてくれる。
部室には集まってはいるみたいだけど、練習はできてないみたい。わたしがいたら変わったの?なんて意地悪な質問をしてみた。そしたら、みんな謝るばかりで申し訳なくなった。
119 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:17:18.52 ID:Hp889MgaO
志満「…それは、千歌ちゃんが意地悪…かな?」
千歌「や、やっぱりそうかな?」
志満「昔、私が所属していた部活でもね、千歌ちゃんみたいなムードメーカーみたいな先輩がいたの」
志満「その先輩がいるだけで、楽しくてドキドキして、毎日が楽しかったのを覚えてるわ」
千歌「へぇ〜」
志満「でも、その先輩が卒業したら部活の雰囲気は一気に変わっちゃった。今まで楽しかったことも楽しくなくなったり、簡単にできたことが難しくなったり…」
志満「人って、誰かに影響をされやすい生き物なの。憧れとか信頼とかね。それがあるから人は強くもなるし、弱くもなるんだよ?」
120 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:17:54.03 ID:Hp889MgaO
志満「千歌ちゃんでいうと、μ's…かしら?その子たちを知ってから変わったでしょ?」
千歌「うん」
志満「たぶん、千歌ちゃんはAqoursのみんなにとってのそれなんじゃないかな?」ニコッ
千歌「わたしが?ないないない!わたしより、スゴい子なんてAqoursにはいっぱいいるよ!というか、わたし以外みんなスゴいんだから!」
志満「こーら!」ポンッ
千歌「あだっ!?志満姉が叩いた!?」
志満「千歌は充分、スゴいよ。お姉ちゃんなんかより、ずっと、ずーっとスゴい」ギュー
千歌「志満姉…」
121 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:18:58.60 ID:Hp889MgaO
志満「私は、千歌ちゃんのこと聞いた時、ただただ泣いちゃったの。大切な妹が私より先に…なんて、お母さんやお父さんの方が辛いはずなのにね」
志満「千歌ちゃんの顔を見たら、私、すぐに泣いちゃうんじゃないかって。でも、千歌ちゃんはいつも通りの笑顔で『あっ、志満姉!』って呼んでくれた」
志満「素直にスゴいなって思ったよ。いつの間にこんなに強くなったんだろうって…」
千歌「…」
志満「………千歌?」
千歌「うん?」
志満「あなたは私の自慢の妹。そして、あなたは普通な女の子じゃなくて、普通だけどスゴい女の子なの。自分を卑下しちゃダメだからね?」ニコッ
千歌「ありがと、志満姉…」ギュッ
122 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:19:48.43 ID:Hp889MgaO
いつもおっとりで、わたしと美渡姉の喧嘩もやんわり止めてくれて。頼ってばっかりの志満姉からの励ましの言葉はくすぐったくて、でも、とても嬉しかった。
そっか。わたしはみんなの役に立ててたんだな。だったら、リーダーらしく、けじめをつけなくちゃいけないよね。
Aqoursのこれからのために。
123 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:20:43.41 ID:Hp889MgaO
部室
重苦しい空気が部室の中を充満させている。千歌の件があってから、目的はなくとも集まるわたしたち。
特に何かするでもなく、会話するでもなく、ただ無言で過ごす毎日。千歌がいたらどんな会話が飛び交ってるんだろう。
『ダメだったか〜!自信作だったのに〜!』
『まだまだ努力が足りないってことだね!練習あるのみだ〜!行くよ、みんな!』
『あっ、良いこと思い付いた…!』
きっと、そんなことを言いながら、わたしたちを導いてくれるだろう。けど、その先導者はここにはいない。この先もずっと。
124 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:21:29.36 ID:Hp889MgaO
Aqoursというグループはやっぱり千歌がいたから成り立ってた。一年生を勧誘したのも、三年生の仲を取り持ったのも、二年生の友情を強固なものにしたのも、全部千歌が成し遂げたのだ。
もしかしたら、わたしたちは千歌がいなければ薄っぺらい関係なのかもしれないとまで思ってしまった。
そんな進歩のない毎日を過ごしていたある日、各々のフラストレーションはピークに達していた。
125 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:22:29.75 ID:Hp889MgaO
曜「あー!もうッ!!」ガタッ
曜「みんな何しにここに来てるの!?何も言わないで、ただ無駄に時間が過ぎて…!こんなことしてるくらいなら帰った方がましでしょ!?」
鞠莉「よ、曜…。確かにそうかもしれないけど、みんな気持ちの整理がつかないから、こんな状態で…」
曜「気持ちの整理?そんなのする気ないからいつまでもうじうじしちゃってるんでしょ?行動に起こそうとしてないのが何よりの証拠じゃん!」
鞠莉「行動ならしたいわよ!けれど、何から始めたらいいのかわからないから、こんな状態なんでしょ!わかってよ!」
曜「………千歌ちゃんがいなかったら、ただのお荷物だったくせに」
鞠莉「………はあ?」
126 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:23:49.45 ID:Hp889MgaO
梨子「ちょっ、曜ちゃん…」
曜「だって、梨子ちゃん?この人わたしたちのファーストライブの時に無理難題引っ掻けて来るわ、スクールアイドル部の承認も自分の都合のために動いてたんだよ?」
曜「果南ちゃんやダイヤさんと仲直りしたいからって、関係ないわたしたち巻き込んでさ。おまけに理事長とかいう肩書きを据えて我が物顔で。何様って話だよ!」
鞠莉「黙って聞いてれば…!」
ダイヤ「…」ピクッ
果南「…」バッ
鞠莉「果南…」
曜は誰よりも優しく、誰よりも要領のいい子。でも、心の支えだったあの子はここにはいないし、これからは…。千歌がいたから、曜は強い子でいられた。千歌が期待してくれるから、期待に応えようと。
それが無くなった今、曜は行き場のない気持ちをどこにぶつければいいのかわからないのだろう。千歌がいない今、わたしがなんとかしないと。
127 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:24:24.93 ID:Hp889MgaO
果南「曜、言い過ぎ。鞠莉に謝りな」
曜「本当のことじゃん」
果南「謝れ」
曜「いやだ」
果南「曜っ!」ガシッ
曜「なに?結局、力でなんとかしようとする訳?」
梨子「曜ちゃん、もうやめて…」ウルッ
128 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:25:17.33 ID:Hp889MgaO
曜「あー、そっか!果南ちゃんには千歌ちゃんがいるもんね?そりゃ〜わたしたちとは違う対応を少なからず千歌ちゃんはしてくれるんだろうね〜?」
曜「あれ?よく考えたら果南ちゃんも千歌ちゃんがいないとなんの価値もないじゃん!ただ恋人ってだけで、海好きな女子高生でさ!あははははっ!」
果南「曜、お前…!」プルプル
さすがに我慢の限界だった。前までは面白おかしく言い合ってた冗談みたいな内容。けれど、今は『千歌』という存在の喪失が冗談成り得ぬ空気にさせている。
わたしは今にも曜に手を上げようとした時、この空気を断ち切ったのは意外な人物だった。
129 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:26:55.69 ID:Hp889MgaO
善子「や、やめてよ!こんなのやだよ…!」グスッ
花丸「みんな、落ち着いてよぉ…」グスッ
ルビィ「…」
ルビィ「二人とも、どいて?」
善子「え?ルビィ?」
花丸「ルビィ、ちゃん?」
ルビィ「…」テクテク
130 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:28:05.47 ID:Hp889MgaO
曜「殴りたいなら殴ったらいいじゃん!なんの取り柄もない暴力女になりたいならね!」
果南「こんの…!」
ルビィ「果南さん、どいてください」
果南「え?」
バチィンッ!!
ルビィ「…」
曜「………え?」ヒリヒリ
ダイヤ「る、ルビィ…?」アセアセ
鞠莉「嘘…」
梨子「ルビィちゃんが…」
131 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:28:33.07 ID:Hp889MgaO
ルビィ「すぅーっ…」
ルビィ「はぁー…」
曜「…」ボーッ
ルビィ「んっ!」キッ
曜「っ!?」ビクッ
ルビィ「しっかりしてよ!曜ちゃん!」
132 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:29:20.53 ID:Hp889MgaO
ルビィ「今は誰が間違ってるかを決めてるんじゃないでしょ!?第一、間違ってる人なんて誰もいないよ!!」
ルビィ「ルビィたちがしないといけないのはこれまでの間違い探しじゃない!これからのことでしょ!?」
ルビィ「千歌ちゃんが千歌ちゃんがって…それは過去に逃げてるのと同じでしょ!?」
曜「…」
ルビィ「こんな時だからこそ、みんなで協力しなきゃいけないんだから!」
ルビィ「だから…だから……」ウルウルッ
ルビィ「こんなの、もうやめようよぉ!!!」グスッ
曜「…」
133 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:30:24.95 ID:Hp889MgaO
果南「………ルビィ」ギュー
ルビィ「うぅっ、ひぐっ…うぇ、うぇぇ……」
曜「る、ルビィちゃ……」アセアセ
果南「うりゃ」コツン
曜「あだっ!?」
果南「はい、これでおしまい。ルビィに免じて、今回は許してあげる」ニコッ
曜「…」チラッ
134 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:31:19.41 ID:Hp889MgaO
曜「あの、鞠莉ちゃん……」
鞠莉「………ふふっ」
鞠莉「ぶっちゃけト〜ク!第二回、出来たね?」ニコッ
曜「うっ」ウルッ
曜「うっ、ひぐっ…うわぁぁぁぁぁん……」ボロボロッ
鞠莉「あらら…」
曜「ごめ、ぐすっ、ごめ、んなさぁぁぁぁぁい……」ギュー
鞠莉「ううん。曜が言ったこと、本当だもの。私の方こそ、ごめんね?ごめんね…?」グスッ
曜「まりぢゃぁ、ひぐっ、うぅ……」
鞠莉「鼻水まで出して…。曜は子どもっぽいんだから。可愛い…♪」ナデナデ
135 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:32:15.07 ID:Hp889MgaO
梨子「よかったぁ……」
よしまる「はぁ〜……」
善子「それにしても、ルビィのあんなとこ初めて見たわ」
花丸「マルも初めてずら」
ダイヤ「わたくしもですわ」
善子「わあっ!?びっくりしたぁ!」
ダイヤ「妹の成長を見られて嬉しいですが…」
ダイヤ「(わたくしの愛するルビィを泣かせた罪は重いですよ、曜さん?)」ギラリッ
曜「ひぃっ」ビクッ
136 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:33:50.13 ID:Hp889MgaO
鞠莉「どうかした?」
曜「なんか、悪寒が…」
鞠莉「オカン?マミー?」キョトンッ
曜「ここでボケられても…」
果南「………うん!」
果南「やっといつも通りになってきたね!」
ルビィ「えへへっ、そうですね」
果南「ルビィのおかげだよ?ありがとね!」ニコッ
ルビィ「ぴぎゃっ!ルビィはそんな…」
果南「あのままだと、わたし、曜をフルボッコにしてたと思うから…」
ルビィ「あ、あはっ、あはは…」
果南「でも、今回わかったことがあるの。曜のおかげで、Aqoursのこれからについて、さ」
ダイヤ「Aqoursのこれから、ですか?」
果南「うん。やっぱり、わたしたちは…!」
137 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:34:34.01 ID:Hp889MgaO
それぞれの想いは、言葉に出さないと伝わらない。そんなのわたしたち三年生が一番知ってたのにさ。
今回は前よりも醜い言い合いになっちゃったけど、これがきっかけでまた前に進めた気がする。
そして、Aqoursのこれから。ついでに、わたしのこれからも漠然とだけど決まった。
千歌、最期までわたしたちと…。
138 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:35:37.01 ID:Hp889MgaO
病室
コンコンッ
千歌「あ、はい〜」
美渡「…」
果南「失礼、します」
7人「…」
千歌「失礼しますなんて、気を使わなくていいのに」
善子「何もあんたになんか使ってないわよ」
千歌「それはそれでひどくない!?」
善子「バカ。気を使う必要なんてないじゃない。信頼してるもの…」
千歌「ヨハネちゃん…!」
139 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:36:10.87 ID:Hp889MgaO
善子「ふふっ、善子よ!……あっ、違ったヨハネ」
曜「おやおやん?」ニヤニヤ
善子「いや、待って」
ルビィ「うゆうゆ?」ニヤニヤ
善子「今のはほんと素で…//」
果南「ほ〜ほ〜ほ〜〜〜ん???」
善子「うにゃ〜!!//」バタバタ
140 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:36:44.82 ID:Hp889MgaO
美渡「…で、私も呼んだってことは話は私か?」
果南「ううん、千歌と美渡姉の二人に話があるの」
千歌「そっか…」
果南「みんなで決めたの。だから聞いてほしい」
美渡「わかった…」
果南「じゃあ、わたしから伝えるってことでいいよね?」
7人「…」コクコク
果南「ん」
果南「えーっと、わたしたちAqoursは…」
果南「解散します!」
千歌「………え?」
美渡「…」
141 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:37:31.33 ID:Hp889MgaO
千歌「なんで、なんでさ!?」
果南「決まってるでしょ?千歌?あなたがいないからだよ?」
千歌「で、でもみんな普通なわたしよりスゴくて…それで可愛くて……なのに。だ、ダメだよ!」
果南「そう思っているのは、千歌だけじゃないんだよ?」
千歌「え…」
果南「みんな、なんでAqoursに入ったと思う?」
千歌「それは、わたしが無理矢理巻き込んだから…」
果南「違うよ。みんな、あなたに惹かれてAqoursに入ったんだよ?」
千歌「ふぇ…?」
142 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:38:26.00 ID:Hp889MgaO
果南「……わたしは個人的にはやだけど、みんなが千歌を好きなのはいいけど」ムスッ
曜「こーら、果南ちゃん?」
果南「ごめんごめん」
果南「とにかく、あなたの頑張る姿に、そして何かわたしたちが知らないものを見せてくれるような期待感。いろんな魅力を秘めたあなたがいたから、みんな頑張れたんだよ?」
千歌「わたしが、いたから…?」
果南「Aqoursはもう、千歌そのものなんだよ。千歌無しではAqoursは輝けないの」
果南「だから、Aqoursはおしまいにする」
千歌「………そっか」
千歌「嬉しいような、悲しいような…不思議な気持ちだよ」
143 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:39:10.51 ID:Hp889MgaO
美渡「……まあ懸命な判断だし、ウチの妹をそこまで褒めてくれるのは素直に嬉しいよ」
美渡「あんがとな」
果南「………でも!」
果南「わたしたちは、もう一度千歌と歌いたい!」
千歌「えっ?」
果南「千歌!ライブやろう!Aqoursとのお別れライブを!この沼津で!」
美渡「はあ?お前らふざけてんのか!?」
果南「美渡姉……ううん、美渡さん!こんなの無茶だし、千歌もどうなるかわからない…。でも!これがわたしたちの答えです!お願いします!!」
7人「お願いします!!!」
美渡「お前ら…!」
144 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:40:03.37 ID:Hp889MgaO
千歌「美渡姉」
美渡「千歌…」
千歌「ありがとう、心配してくれて…」
千歌「でも、わたしもさ。ちゃんとお別れは言いたいって思ってたんだ。Aqoursに…!」
千歌「それに…果南ちゃんはわたしに無茶はさせないと思うし」ニコッ
美渡「バカッ!ライブなんてとっくに無茶な領域だろ?なんで、お前はいつも、いつも…」
果南「千歌は、センターでスタンドマイクで歌ってるだけでいい。あとはわたしたちが全力でサポートする」
千歌「わかった」
美渡「けど、万が一のことが…」
145 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:40:35.35 ID:Hp889MgaO
ガララッ
志満「美渡、もういいから」
美渡「だけど、志満!」
志満「……千歌ちゃん?千歌ちゃんからもみんなに話があるよね?」
千歌「そだね、うん…」
果南「わたしたちに…?」
千歌「わたしね、みんなにも、美渡姉にも内緒でやってたことがあるの」
千歌「志満姉、持ってきたよね?」
志満「ええ。はい、どうぞ」スッ
梨子「あっ、それって……」
146 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:41:36.55 ID:Hp889MgaO
千歌「うん、歌詞ノート。学校にも行けないし、ずっと歌詞考えてたんだ」
千歌「志満姉に頼んで、秘密で進めてたの」ニコッ
千歌「やっぱり、わたし歌いたいんだなって」
千歌「みんなと一緒に!!!」
美渡「…」
美渡「なんで、だよ…」
志満「美渡…」
147 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:42:21.41 ID:Hp889MgaO
美渡「なあ!?悪いとこがあるなら直すからさ!ちゃんとお姉ちゃんらしくするからさ!」
美渡「だから、千歌ぁ…無謀なことなんてやめろよ……」
美渡「お前は、私の、わたしの……」グスッ
志満「そうだったね、美渡…」
美渡「うっ、うぅ…」
志満「あなたも昔から千歌ちゃんに負けないくらい泣き虫だったよね」
千歌「美渡姉………っ!」ゴシゴシッ
千歌「みんな、歌おう!絶対にそれまで生きるから!」
148 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:42:51.24 ID:Hp889MgaO
果南「うん!絶対だからね!それから結婚式だ!」
千歌「うん!結婚式………ふぇ?」
7人「え?」
みとしま「え?」
149 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:43:45.63 ID:Hp889MgaO
果南「うん。結婚式。わたしと千歌のね」
果南以外「えええぇぇぇ〜〜〜〜!!?」
千歌「けっ、結婚式って……果南ちゃん?///」
果南「本気だよ」ニコッ
果南「だから、美渡姉?千歌を返してもらうとか言ってたけどさ、ごめん」ダキッ
千歌「きゃっ//」
果南「渡さないから」
美渡「……上等だ、バカなん」
果南「…」
美渡「今日、夕方にウチの前の砂浜に来い」
果南「わかった」
150 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:44:33.18 ID:Hp889MgaO
千歌「ま、まさか喧嘩するんじゃ…」
美渡「逃げんなよ?」
果南「そっちこそ」
美渡「……帰るわ」
曜「美渡姉…!」
美渡「…」
曜「勝ってね、果南ちゃんに!」
美渡「………え?」ピタッ
151 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:45:26.63 ID:Hp889MgaO
曜「もう、けちょんけちょんにやっていいから!」
美渡「いやっ……はあ?」
花丸「そうずら。正義の鉄拳ずら」
鞠莉「わたしも加勢しまーす」
果南「え?ちょっと、みんな??」アセアセ
ダイヤ「わたくしも。果南さんは反省すべきです」
ルビィ「あはは……だね」
美渡「な、なんで?お前ら果南の味方じゃないの?」
梨子「なんで、ですか?」
善子「だって、私たち果南から…」
7人「そんな話、一言も聞いてない」
152 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:46:51.47 ID:Hp889MgaO
曜「なんかさ、わたしたちAqoursが出しに使われたみたいでムカつくんだもん」
鞠莉「三年生は自己中が多いからね〜」
ダイヤ「間違いないですね」クスッ
果南「いやいやいや!確かに教えなかったのは悪かったけど、それはないでしょ!?なんか平然に言ってたけど、心臓バクバクしてんだからな!?」
果南「というか、公開プロポーズしたんだぞ!?恥ずかしくて死にそうなのに、その対応はどうなんだよ!!?」
志満「果南ちゃんって、極限に恥ずかしくなると男口調になるよね?」クスッ
果南「志満姉!!//」
志満「あははっ」
153 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:47:53.69 ID:Hp889MgaO
志満「やられたね、美渡?」ニコッ
美渡「……ちっ」
7人「うふふ」
美渡「と、とにかく夕方砂浜だ!いいな?」
果南「は、はい…」
バタンッ
果南「…」ムスッ
曜「……頑張ってね、果南ちゃん」ニコッ
果南「なんか、曜さ。あれ以来少し変わった?」
曜「あははっ、そうかも」
果南「あらま」
154 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:48:34.09 ID:Hp889MgaO
千歌「あれ、以来?」キョトンッ
曜「千歌ちゃんには関係ない話だよ」
千歌「え?気になるんだけど…」
曜「わたしたちに内緒で歌詞書いてたんだから、おあいこであります」
千歌「聞いた感じ度合いが違うような…」
155 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:49:27.61 ID:Hp889MgaO
梨子「千歌ちゃん?歌詞は??」ニコッ
千歌「はい!まだ完成してません!」
梨子「じゃあ、また催促に来るね♪」
千歌「お、お手柔らかに…」
梨子「完成するまで死んじゃダメだからね?」
千歌「なんか今までで一番の無理難題来た!?」
梨子「信じてますから」ニコッ
千歌「期待が重い…」
ルビィ「…」ギュッ
千歌「ルビィちゃん…」
ルビィ「絶対、絶対に一緒に歌おうね!」
千歌「うん、もちろん!」
156 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:50:12.43 ID:Hp889MgaO
ダイヤ「では、わたくしたちも練習を再開しなくちゃですわね?」
鞠莉「ええ!なんだかんだ長い時間やってなかったからね…」
善子「再び、この堕天使の力を発揮する時が来たようね。くくくっ…!」
梨子「よっちゃんはまず体重からね〜」
善子「ちょっ…なんで知って!?」
梨子「え?ほんとだったの?」
善子「り、リリー、こら〜!」
花丸「やめるずら」ペシッ
善子「いった!ずら丸〜?」
花丸「えへへっ、久しぶりに聞いたずら」
157 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:50:55.85 ID:Hp889MgaO
果南「じゃあ、ケリ付けてくるね」
千歌「果南ちゃん」
果南「ん?」
千歌「わたしを……お嫁さんにしてね?///」ウワメ
果南「…」
果南「千歌、ごめん」
千歌「ふぇ?」
果南「グッと来たから、もっかい言ってくれない?録音するからさ」
千歌「バカッ!!!///」ペチンッ
果南「ひゃんっ」
曜「なんか幸せそうだね…」
梨子「バカップルなだけだよ…」
158 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:51:40.94 ID:Hp889MgaO
砂浜
美渡「来たな………って、なんで頬腫れてんだよ」
果南「愛のビンタをもらいまして」
美渡「ふーん」
美渡「言っとくけど手加減とかしねーからな?」
果南「当然。もう、昔のわたしじゃないもん」
果南「負けないよ」
美渡「上等だ!構えろ!」
果南「ん…!」
159 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:52:15.12 ID:Hp889MgaO
ダッ!
美渡「おらー!!」
果南「たぁー!!」
シュンッ
美渡「…」ピタッ
果南「…」ピタッ
美渡「……なんで止めてるんだよ」
果南「……美渡姉こそ」
美渡「はぁ…」
果南「わたしは、美渡姉からどうであれ千歌を奪ったのは間違いないから。だから、全力の一発は受けようって決めてたの」
美渡「…」
160 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:52:47.75 ID:Hp889MgaO
美渡「殴れる訳、ないだろ……」
果南「美渡姉…」
美渡「私も昔から一緒にいたんだ。千歌ほどじゃないけど、お前の不器用な優しさは充分理解してる」
美渡「それに、もう認めてんだよ」グイッ
果南「わわっ」
美渡「私の、もう一人の大切な妹だってな」ギュー
果南「美渡姉…」ウルッ
161 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:54:01.58 ID:Hp889MgaO
美渡「千歌のこと、最期まで頼むぞ?」
果南「うん…!」
果南「にしても…」ギュー
美渡「うわっ」
果南「美渡姉とのハグ、久しぶりで嬉しいな♪」
美渡「……バーカ」クスッ
千歌のことがわたしに負けないくらい大好きで、千歌のことを最優先に考えて行動する、美渡姉。わたしの憧れの人。
美渡姉とは小さい頃、たくさん喧嘩した。勝ち負けにこだわるわたしたちだったから遊びでも本気になって、最後には泥んこになるくらいの喧嘩。
千歌が泣きながらやめてって言って止めてくれるまでやめなかったなー。泣く千歌を慰めるために、二人で慌てて対応してたら、志満姉に見つかって美渡姉と仲良くにゲンコツもらって。
そんな懐かしい日々をなんとなく思い出してた。
162 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:54:41.14 ID:Hp889MgaO
果南「大丈夫、千歌は幸せにするから」
美渡「……当たり前だ」
美渡「幸せにしなきゃ一緒に棺桶にぶちこんでやる!」
果南「絶対、幸せにします!!!」
美渡「にししっ!」
それからわたしたちの、Aqoursの最後の挑戦が開始されて、気付けば年を越していた。
163 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:55:10.73 ID:Hp889MgaO
閉校祭・学校
果南「まさか、Aqoursだけでなく浦女ともお別れすることになるとはなぁ…」
鞠莉「わたしたちがAqoursを動かさなくなった時点で統廃合は決まったみたいなものだったからね。仕方ないわ」
果南「ごめんね、鞠莉。せっかく、理事長になってまで廃校を救おうとしたのに…」
鞠莉「今更よ。それに、やっぱりあのままちかっちがいないまま挑戦したって、私たちはきっと予選すら通過出来なかっただろうし」
鞠莉「もう、割りきれてるよ」ニコッ
果南「そっか」
164 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:55:45.50 ID:Hp889MgaO
曜「鞠莉ちゃ〜ん!果南ちゃ〜ん!」
果南「あっ、曜」パッ
曜「ダ〜イブ!」ギュー
鞠莉「きゃっ!……飛び付いちゃ危ないでしょ?めっ!」
曜「えへへ〜、ごめ〜ん」
果南「…」
鞠莉「果南…?」ニヤニヤ
果南「あっ、来たみたい!こっちこっち〜!」
鞠莉「誤魔化したでーす…」
165 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:56:15.50 ID:Hp889MgaO
キキーッ ガチャッ
千歌「んしょっと」
果南「大丈夫?」
千歌「うん、なんとか」
果南「じゃあ、行こっか。曜、準備はいいんだよね?」
曜「バッチリであります!」
果南「よしっ、千歌?」
千歌「ん?」
果南「結婚式、挙げよっか?」
千歌「……はい//」ニコッ
166 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:57:06.56 ID:Hp889MgaO
体育館
花丸「それでは新郎新婦……あれ?新婦新婦?」
善子「どっちでもいいわよ!」
花丸「ご、ご入場ずら〜!梨子ちゃん、お願いずら!」
梨子「うん!」ポロロン
~♪
「きゃー!きれーい!」
「果南先輩カッコいい…!」
「千歌も可愛いよ〜!」
千歌「……えへへ//」フリフリ
果南「…//」ドキドキッ
167 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:57:47.29 ID:Hp889MgaO
わたしたちが行った結婚式は、女子校だからこそ出来たとも言える。世間一般的に、同姓で、しかも学生のわたしたちが結婚するなど夢物語。
けれど、女子の憧れである結婚式、お嫁さんをレクリエーションとして行えば、表向きには厳しい目では見られないだろう。
いや、わたしたちは勿論本気だけど。
168 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 19:58:15.03 ID:Hp889MgaO
鞠莉「ではでは〜、果南?ちかっちのことを末永〜く愛することを誓いますか?」
鞠莉「ちかっちだけに、ね♪」
果南「もう、鞠莉ってば…」
果南「うん、誓います」
鞠莉「じゃあ、ちかっち?果南のこと、いつまでも支えることを誓いますか?」
千歌「誓います…!」ニコッ
169 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:00:06.65 ID:Hp889MgaO
鞠莉「では、ネックレスの交換を…!」
果南「じゃあ、ベール上げるね?」
千歌「うん…」
果南「じゃあ、付けるよ」
千歌「うん…//」ニコッ
交換に使ったネックレスはわたしが千歌の誕生日に渡したもの。あの時、なんで逆じゃないのなんて言われたけど、まさかこんな早くバレることになるなんてな…。
果南「……出来たよ」
170 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:00:59.67 ID:Hp889MgaO
千歌「ありがとう。じゃあ、ちょっと屈んでくれるかな」
果南「うん」カガミ
千歌「んしょっ」
二人の首で光る、イルカとみかんのネックレス。指輪には負けるかもしれないけど、わたしたちには充分過ぎるものだった。
千歌「もう少し待ってね…」
果南「(あれ?もう付け終わってるよね?なんで?)」
171 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:01:41.65 ID:Hp889MgaO
千歌「果南ちゃん、愛してるよ」ニコッ
果南「えっ?」
チュッ
ダイヤ「へ…?」ポカーン
善子「あっ、ダイヤ初めてか」
ダイヤ「あ、あれは…?」
ルビィ「キスだよ?」
ダイヤ「いやいやいや!」
曜「まあ、こうなるよね〜」
花丸「でも、幸せそうずら」
172 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:02:10.56 ID:Hp889MgaO
鞠莉「皆さん、ほら拍手!拍手〜!」
パチパチパチパチッ!!
「おめでとう!!」
「きゃー!!」
「お幸せに〜!」
美渡「……バーカ」グスッ
志満「泣いてるよ、美渡」クスッ
美渡「ち、ちがっ…!」
173 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:02:36.24 ID:Hp889MgaO
果南「///」カァァ
千歌「えへへ//」
果南「……ばかちか//」
そして、閉校祭は無事に進行していき、残るはわたしたちAqoursの『最期』のライブだけとなった。
174 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:03:19.09 ID:Hp889MgaO
特設ステージ
鞠莉「それでは本日の、そして、この浦の星女学院のフィナーレを飾るのは……私たちAqoursのライブ!リーダーから一言もらいま〜す!」
パチパチパチパチッ!
鞠莉「じゃあ、ちかっち。お願いね!」
千歌「はい!」
千歌「みんな、楽しんだか〜!?」
イエーイ!!
千歌「あははっ、全然声出ないや…ごめんね」
175 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:03:51.58 ID:Hp889MgaO
千歌「久しぶりに浦女の制服を着たのに、閉校祭だなんて。少し複雑な気分であります…」
千歌「でも、この学校が大好きだったから、わたしたちAqoursは生まれたんだと思います」
千歌「皆さんも知ってると思いますが、わたしは約半年前から入院していました。大腸がんで、もう助かりません」
千歌「明日には死ぬかもしれない、明後日かもしれない。そんな先の見えない闇の中を歩いてる。そんな感覚でした」
176 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:04:23.17 ID:Hp889MgaO
千歌「でも、それはわたし以外のAqoursのみんなも一緒だったみたいです。こんなわたしだけど、みんなの支えになれてたんだって、嬉しかった」
千歌「そんな中、わたしたちが決めたのはAqoursの解散です。この9人でAqoursなんだって、みんなが教えてくれたから…!」
千歌「だから、これが最期の…Aqoursとわたしの最期のライブです。わたしはもう、踊れないけど頑張って歌います、全身全霊で…!」
パチパチパチパチ…!
千歌「ありがとう…」グスッ
千歌「…」ゴシゴシッ
千歌「それでは聞いてください!」
千歌「『勇気はどこに?君の胸に!』」
177 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:04:54.31 ID:Hp889MgaO
~♪
勇気を出してみて 本当は怖いよ
僕だって最初から 出来た訳じゃないよ
『わたしね、小学校の頃からず〜っと思ってたんだ。千歌ちゃんと一緒に夢中で、なにかやりたいな〜って!』
『よーちゃん……』
『だから、水泳部と掛け持ち…だけど!』
『えへっ!はいっ!』ニコッ
178 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:05:47.00 ID:Hp889MgaO
いっぱいつまづいた 悔しい思いが
強さをくれたんだ 諦めなきゃいいんだ
『私は曲作りを手伝うって言ったのよ?スクールアイドルにはならない!』
『ええっ!?』
『そんな時間はないの』プイッ
『無理は言えないよぉ…』
『そうだねぇ…』
『じゃあ、詞をちょうだい♪』
179 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:06:13.68 ID:Hp889MgaO
信じてみたいと 君の目が濡れて
迷う気持ちも(涙も) バイバイ(さあ、出発だ)
『これ、なんて読むの?』
『A…q…ours……』
『あきゅあ?』
『もしかして、アクア?』
『水ってこと?』
『水かぁ…!』
180 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:06:39.82 ID:Hp889MgaO
何度だって追いかけようよ 負けないで
失敗なんて 誰でもあるよ
夢は(消えない) 夢は(消えない)
『ルビィね!花丸ちゃんのこと見てた!ルビィに気を使って、スクールアイドルやってるんじゃないかって!ルビィのために無理してるんじゃないかって…!心配だったから…!』
『でも、練習の時も、屋上でいた時も、みんなで話してる時も…花丸ちゃん嬉しそうだった』
『それ見て思った!花丸ちゃん、好きなんだって!ルビィと同じくらい好きなんだって!スクールアイドルが!』
『あっ、マルが…?まさか…』
181 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:07:27.27 ID:Hp889MgaO
何度だって追いかけようよ 負けないで
だって(今日は) 今日で(だって)
目覚めたら 違う朝だよ
『んー、やめとく…迷惑かけそうだし。じゃあ…』
『少しの間だけど、堕天使と付き合ってくれてありがとね。楽しかったよ』ニコッ
『どうして堕天使だったんだろう…』
『マル、わかる気がします。ずっと、普通だったんだと思うんです。わたしたちと同じで、あまり目立たなくて…』
『そういう時思いませんか?これが本当の自分なのかな〜って。元々は天使みたいにキラキラしてて、何かの弾みでこうなっちゃってるんじゃないかって…』
182 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:07:56.85 ID:Hp889MgaO
やり残したことなどない
そう言いたいね いつの日にか
『わたしが…私が果南を想う気持ちを、甘く見ないで!』
『だったら…だったら、素直にそう言ってよ!リベンジだとか、負けられないとかじゃなく、ちゃんと言ってよ!』
『だよね?……だから』チョンッ
『…』
『ハグ………しよ?』ニコッ
183 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:08:32.47 ID:Hp889MgaO
そこまではまだ遠いよ
だから僕らは 頑張って挑戦だよね
『じゃあ、ダイヤさんもいてくれないと!』
『えっ?わたくしは生徒会長ですわよ?とてもじゃないですけど、そんな時間は…』
『それなら大丈夫です!鞠莉さんと果南ちゃんと、あと、6人もいるので!』
『る、ルビィ?』
『親愛なるお姉ちゃん、ようこそAqoursへ!えへっ!』
184 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:09:14.21 ID:Hp889MgaO
Aqours「Ah 熱くなる意味が わかりかけて」
千歌「心が求める誇らしさ」
千歌「走り続けて 掴める未来」
千歌「夢が!」
8人「たくさん!」
千歌「夢が!!」
「たくさん!!」
千歌「消えない!!!」
「「「夢が!!!」」」
千歌「……ありがとう」ニコッ
185 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:09:41.13 ID:Hp889MgaO
何度だって追いかけようよ 負けないで
失敗なんて 誰でもあるよ
夢は(消えない) 夢は(消えない)
何度だって追いかけようよ 負けないで
だって(今日は) 今日で(だって)
8人「目覚めたら」
千歌「違う朝だよ」
8人「ああ 太陽が」
千歌「笑いかけるよ」
~♪
186 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:10:26.45 ID:Hp889MgaO
千歌「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
果南「千歌、大丈夫?」
千歌「うん、なんとか」
果南「よかった…」ホッ
千歌「みんな、どうだった……」
パチパチパチパチッ!!!
「ありがとぉー!!!」
「Aqours最高!!」
「お疲れ様ー!!」
千歌「……あはは」グスッ
千歌「みんな、せーのっ……」
Aqours「ありがとうございました!!!」
187 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:11:05.20 ID:Hp889MgaO
その日、Aqoursの、わたしの輝きは幕を閉じた。活動期間は半年くらいだったけど、これだけたくさんの人が応援してくれた。
バイバイ、Aqours。今まで、ありがとう。
188 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:11:47.97 ID:Hp889MgaO
それからは、ゆったりと時間が過ぎていった。卒業式、浦の星女学院の閉校、病室デート、こっそり屋上で天体観測…とか千歌と出来ることいっぱいやった。
鞠莉はまた海外へ、ダイヤは東京に行った。けど、わたしは千歌を置いて内浦から出るなんて考えられなかった。ダイビングショップは父さんがまだやれると言って手伝い程度。
だからわたしは今、十千万でお世話してもらっている。おばさんやおじさん、志満姉の指導のもと旅館の仕事を必死に覚えている。
この件についても、美渡姉と一悶着あったんだけど…まあ、今回はおとなしく喰らいました。生半可な覚悟ではないことは伝わったみたいだから、よしかな?
189 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:12:18.94 ID:Hp889MgaO
そして春を越えて、またあの日がやってきた。
190 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:13:05.08 ID:Hp889MgaO
7月7日 七夕 夜
トントンッ
果南「しつれいしまーす……」ソローッ
千歌「こんばんは、かなんちゃん…」
果南「急に美渡姉から連絡が来て、行けって言われたんだけど。どうしたの?」
千歌「えへへ、おそといきたいなーって」
果南「外って屋上?冷えるよ?」
千歌「ううん、たなばただからさ。いつものとこ」
191 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:13:39.92 ID:Hp889MgaO
果南「は?病院抜け出すの!?絶対ダメだって!」
千歌「だいじょーぶ、きょかは、もらってるから」
果南「で、でも…」
千歌「かなんちゃん、おねがい」ニコッ
果南「……これっきりだからね。ヤバくなったらすぐに言うんだよ?」
千歌「うん、ありがとう…」
192 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:14:06.70 ID:Hp889MgaO
果南「車イスにする?」
千歌「おんぶが、いいな」
果南「……わかった、ゆっくりね」
千歌「んしょっ、んしょっと……」
果南「よしっ、捕まった?」
千歌「うん」
果南「じゃあ、行くよ」
千歌「うん…」
ガララッ
193 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:14:51.70 ID:Hp889MgaO
山道
果南ちゃんのおんぶに揺られながら、今までのことを思う。よくよく考えたら果南ちゃんと恋人…ていうか、夫婦なのか、もう。今日で一年経ったんだな。
果南ちゃんとは毎年ここに来てるのに、今日はいつもよりもっと特別に感じる気がする。もう少しで頂上だ。
けど、マズいな。なんか眠くなってきちゃった。これ、たぶん寝ちゃったらダメなヤツだな。
意識もぼんやりしてきた。さっきから果南ちゃんが話し掛けてくれてる気がするけど、全然に頭に入ってこない。
参ったな〜、もう少しで頂上なのに。
194 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:15:33.72 ID:Hp889MgaO
果南「ほら、千歌?もう少しでいつものとこだよ?」
千歌「………うん」
果南「今日は天気悪そうだったけど、夜は晴れて良かったよ。天の川もよく見えるよ。見える?」
千歌「………うん」
果南「流れ星も見えるといいね!あとでどっちが多く見つけられるか勝負しようね?」
千歌「………うん」
果南「あと、疲れたら言ってね?休んでいいからさ?」
千歌「………うん」
千歌「じゃあ、ちょっと、ねてもいい……?」
195 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:16:04.70 ID:Hp889MgaO
果南「さすがに疲れちゃったか。いーよ!」
千歌「うん、ありがとう……」
果南「どういたしまして」
千歌「…」
千歌「かなんちゃん……」
果南「ん〜?」
196 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:16:33.92 ID:Hp889MgaO
千歌「ちゃんと、おこして、ね…?」
千歌「わたし、おねぼうさん…だから……」
果南「わかってるよ!いつものことじゃん!」
千歌「あはは…」
千歌「じゃあ、おやすみなさい……」
千歌「ありがとう……」
果南「おやすみ、千歌…」
197 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:16:59.16 ID:Hp889MgaO
ありがとう、果南ちゃん。
バイバイ。
ずっと、ずっと……大好きだよ。
198 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:17:42.46 ID:Hp889MgaO
「さあ着いたよ、千歌?」
「とりあえずいつものとこ座ろっか」
「よいしょっと……」
「よく寝てるなぁ、ほんと…」
「千歌、着いたよ〜?」
「……もう少し寝かせてあげようかな?」
「わたしも疲れたし、それまでは、ね…」
「わたしの疲れが取れたら、起こすから、さ……」
「はぁ……」
199 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:18:15.22 ID:Hp889MgaO
「あれ?織姫の星が雲で見えないな〜?」
「おかしい、なぁ……さっきまでみえてたのに…」
「みえなく……なっちゃったなぁ…」
「ねぇ、おきて……ちかぁ…おりひめさま、みえなく……ぐすっ、なっちゃった…」
「どうして、かなぁ……くっ…」
200 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:19:03.15 ID:Hp889MgaO
冷たくなった千歌の身体をわたしは抱き締めながら泣き続けた。
天の川を挟んでたたずむ彦星の辺りから、一つ流れ星が流れていった。
201 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:19:44.68 ID:Hp889MgaO
高海家・墓前
果南「…」
果南「千歌がいなくなって、もう二ヶ月が経つんだ…」
あの日、わたしは千歌をおんぶして山を降り、そのあとは気付いたら葬式が終わってて、納骨も終わって、今に至る。
みんなには心配されたけど、なんとか立ち直った。というか、立ち直された。美渡姉に。
202 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:20:12.48 ID:Hp889MgaO
果南「みかん、置いとくね?カラスに取られないように気を付けるんだよ?」
志満「やっぱりいた」
果南「志満さん、どうしたんですか?」
志満「……もう、志満姉って呼んでくれないの?」シュンッ
果南「いや、職場上しょうがないというか…」
志満「全く、もう…」
203 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:20:58.88 ID:Hp889MgaO
志満「あの時はごめんね?果南ちゃんに辛い役押し付けたみたいで…」
果南「あの時って、千歌が亡くなった日ですか?」
志満「そう」
果南「いいえ。むしろ、最期を見届けさせてくれて嬉しかったです。ありがとうございました」ペコッ
志満「……あれね?実は美渡が果南ちゃんに任せようって言い出したんだよ?」
果南「えっ?美渡姉が?」
志満「……ずるい」シュンッ
果南「あっ、ごめんなさ……すみません」
志満「惜しい」
204 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:21:32.75 ID:Hp889MgaO
志満「……お礼を言うなら美渡に言ってほしいな」
果南「わかりました…!」
志満「今日はお昼からだっけ?」
果南「はい、そうなってます」
志満「じゃあ、千歌ちゃんの部屋に行ってみてくれる?」
果南「千歌の部屋に、ですか?」
志満「いいから行ってみて♪」ニコッ
果南「は、はぁ…。じゃあ、失礼します」ペコッ
志満「………確かに届けたよ、千歌ちゃん」
205 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:22:06.48 ID:Hp889MgaO
高海家・千歌の部屋
果南「んしょっ…」
果南「久しぶりの千歌の部屋だな〜」
果南「最近じゃ、宿の方しか見てなかったから、すごく懐かしく感じる…」
果南「あっ、ネックレス………と、何これ?」
206 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:22:38.72 ID:Hp889MgaO
果南ちゃんへ
千歌より
207 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:23:04.46 ID:Hp889MgaO
果南「千歌!?」
果南「いつこんなのを……開けていいんだよね?」
ペリッ
208 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:24:21.03 ID:Hp889MgaO
果南ちゃんへ
果南ちゃん、元気ですか?わたしは、たぶんこの手紙を読んでる頃にはいないんだろうなって思います。だから、これは果南ちゃんが落ち着いたら渡してもらうようにしてもらおうかな?美渡姉は隠すの下手だから、志満姉に頼もう。
手紙を書くからって特に伝えたいことなんてないんだけどさ、こういうの残してた方がいいかな〜って。まあ、暇潰しとも言う。うむ。
じゃあ、わたしが果南ちゃんに恋をした理由とか教えちゃおうかな?教えたことなかったし。
わたしが果南ちゃんに恋をしたきっかけはね、いつだったかの中学の文化祭。あの時、確かよーちゃんと回ってたと思うんだけど、途中果南ちゃんを見つけてテンション上がっちゃってさ。声かけようかなって思ったら、なんかすっごく楽しそうな笑顔の果南ちゃんがいたんだ。
209 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:24:50.59 ID:Hp889MgaO
今思えば、その時一緒にいたのは鞠莉ちゃんとダイヤさんだったのかもね。それでもなんかショック…だったんだよね。わたしやよーちゃん以外にもあんな笑顔を見せたりするんだって思うと、なんか悔しかった。
だから、そのあと頑張ってアピールしたんだよ!わたしといる方が楽しいよ!たくさん楽しいことできるよって!でも、普通なわたしが声を大にして誘えること少なくて。
でも、時々だけど果南ちゃんに会えると嬉しい!ハグされるとドキドキする!一緒にいるだけで楽しくなる!それを感じた時、わたしは果南ちゃんを一人の女の子として好きなんだって気付いたんだよ?
それからは…あれ?紙が足りない!しょうがない、好きな気持ちは行動で示そう。また無理矢理キスとかするか。よしっ。
最後に果南ちゃん。わたしがいなくなっても変わらないでね。いつまでもわたしが大好きな果南ちゃんでいてね。ずっと、ずっとだよ!
大好きだよ、果南ちゃん!
千歌より
210 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:25:17.35 ID:Hp889MgaO
果南「…」
果南「……なんだよ、これ」
果南「こんなの、手紙でもなんでもないじゃんか」
果南「ほんと、千歌は……」
果南「千歌が大好きな、わたし……か」
果南「敬語とか…似合わない……かな?」クスッ
果南「……頭空っぽで行きますか!」
211 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:25:44.50 ID:Hp889MgaO
ありがとう、千歌。
バイバイ。
212 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:26:12.78 ID:Hp889MgaO
美渡「ただいま〜……っと」
果南「あっ、美渡姉お疲れ様」ニコッ
美渡「おう…って、なんだその格好は!?」
果南「何って……練習着にエプロンだけど?」
美渡「お、お前仲居の服は?」
果南「あー、なんかキツかったからやめた。あと、動きづらいし」
美渡「いやいやいや……えぇ」
213 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:26:51.30 ID:Hp889MgaO
志満「あっ、美渡。お帰りなさい」ニコッ
美渡「ただいま…って、いいのか果南のあれ!」
果南「あっ!志満姉!廊下の雑巾かけ終わったよ♪」
志満「ほんと?二階もやった?」
果南「あっ、まだだ!やってくる!」
志満「よろしくね〜」
志満「やっぱり果南ちゃんには、志満姉って呼ばれる方がいいわね」ニコッ
美渡「いや、あの…」
214 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:27:22.83 ID:Hp889MgaO
志満「……確かに見た目は注意すべきかもしれない。けど、今までの果南ちゃんは見てられなかったから」
志満「仕事っていう型にはめ込まれたような、果南ちゃんに似合わないスタイルだったし」
美渡「まあ、そうかもしれないけど…」
志満「わたしも最初、あの姿で現れた時はびっくりしたけどさ」
果南「二階〜♪二階〜♪」
志満「生き生きしてると思わない?」
美渡「…」クスッ
美渡「……そうかもな、にししっ!」
215 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:28:32.38 ID:Hp889MgaO
千歌?
わたしはわたしのままで。
これからも全力で生きていくよ。
あなたが好きになってくれたわたしで。
だから、心配しないで。
いつまでも見守っててね?
216 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:29:16.33 ID:Hp889MgaO
おしまい
217 :
◆6/2mKHzyrM
:2018/07/07(土) 20:31:17.29 ID:Hp889MgaO
過去作です。
美渡「こらー!バカチカー!!」
http://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1498050360/
梨子「歩こう、一緒に」
http://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1497106366/
千歌「愛哀傘」
http://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1498315159/
お目汚し失礼しましたm(_ _)m
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