千歌「勇気は君の胸に」

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502 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/22(土) 23:54:10.18 ID:7YKhWNNh0

千歌「ぐぅ、何も見えな……」



光で視界がハッキリしないが

光の中、魔法陣の中心付近に黒い影が見える。


影の大きさからそれは人型の何かだった。



カツン……カツン……



千歌「……? 足音?」




「―――確かにヨハネの言う通り、何もしなければ奇跡は起こらないわ」


千歌「!?」



「それはどんなに無様でも、見苦しくても、不恰好でも……足掻いて足掻いて足掻いて、それでも足掻き続けた者だけが最後に掴み取れる」



ヨハネ「その声……その姿……貴様は……っ!」









鞠莉「……奇跡は起きるものじゃない、起こすものだから!」


503 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 17:22:28.21 ID:iHDRX92w0



千歌「……ま、りちゃん……鞠莉ちゃん!!!」

鞠莉「やっと会えたわね……千歌っち♪」


ヨハネ「馬鹿な……貴様はこの手で確実に殺したはず!?」

鞠莉「ええ死んでるわ。千歌っちの技で生き返ったの」

鞠莉「使用者と強い絆で結ばれた者を死後の世界から再び現世へと転生蘇生させる技よ」

ヨハネ「転生、蘇生……だと!? そんな技がこの世界に存在するはずが無い!!」

鞠莉「当然よ。だってこれは私、歩夢、雪穂の三人がそれぞれが持つ、過去と未来、無限に広がる世界線に干渉する能力を掛け合わせて生み出した新技だもの」

ヨハネ「三人の能力を掛け合わせた技なら何故、高海千歌一人で……っ!?」

鞠莉「……これ、なーんだ?」ジャラッ

ヨハネ「……音ノ木坂を虹ヶ咲のリング……っ、まさか」


鞠莉「そ、死の直前に歩夢が発動させた技で私達三人の魂は融合したのよ。千歌っちの中に融合した私達が宿っていたからこの技が発動した」

鞠莉「三人の中で誰が表に出るかは不確定だったけど……誰が出てもヨハネを目的は変わらなかったから問題無かったしね」



千歌「鞠莉ちゃん……なんだよね?」

鞠莉「Of course♪ 初めましてのはずなんだけど、もっと昔から仲が良かった感じがするわね!」ニコッ

千歌「……なんだろ、今までこの世界で会って来たメンバーと何か違うような……」

千歌「ううん、違うっていうのは正しくない、私が知ってる鞠莉ちゃんの姿そのものなんだよ……服も浦の星の制服だし」


鞠莉「その認識で間違っていないわ。千歌っちのイメージから生成された小原鞠莉の体に、この世界の私の魂が入っているんだもの」

鞠莉「だからまた全盛期の若い体になってと〜〜っても気分がいいわ♪ 十代って素晴らしい!!」ニコニコ

千歌「あはは……私の知ってる鞠莉ちゃんと全然変わらないや」

504 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 17:25:39.97 ID:iHDRX92w0

ヨハネ「小原鞠莉……貴様が生き返ったのは想定外だが、何も問題は無い」

鞠莉「……む」

ヨハネ「女王である貴様は戦闘に特化した技を持ち合わせていない。私の攻撃を防ぐ事は出来ても、倒す事は出来ない!」

千歌「そ、そうなの?」

鞠莉「ええ。敵の迎撃はもっぱら守護者に任せていたから、私はそれを補助する技しか習得してないわ」

千歌「うそおぉ!? じゃあどうやってヨハネを倒すのさ!!?」

鞠莉「まあそう焦らないで。力が足りないなら他で補えばいいのよ」

鞠莉「……それは道具でもいいし、頼れる仲間でもいい」

千歌「仲間……それって……っ!」


鞠莉「炎の残量的にあと二人転生蘇生出来るわ」

千歌「!」

鞠莉「転生蘇生人間の条件は二つ、“その者と強い絆で結ばれている事”と“この世界に存在していた人間である事”よ」

千歌「だったら……っ!」

鞠莉「多分千歌っちは真っ先に曜を候補に挙げたと思うけど、曜は条件の後者に該当しない」

千歌「なんで!?」

鞠莉「曜の存在は、先のヨハネの攻撃を喰らった影響で生きていた痕跡を完全に抹消された。呼び出す魂が無ければ蘇生出来ない」

千歌「じ、じゃあ……曜ちゃんはもう……」

鞠莉「大丈夫、曜の事は後で何とかなるわ。その為にもヨハネをここで倒さないといけないけどね」


ヨハネ「ハっ! 私を倒すなど不可能よ!」

ヨハネ「技の起点となっている高海千歌を消せば貴様も共に消える! それでジ・エンドよ!!」



真上に突き上げた右手に夜の炎が再び集中し始める。

それは巨大な火球となり二人をまとめて消し去るには充分の威力を秘めている。



鞠莉「攻撃が来るわ!」
505 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 17:28:30.21 ID:iHDRX92w0

千歌「鞠莉ちゃんの技で防げないの!?」

鞠莉「私の技で防ぐには規模がデカすぎる。確実に相殺出来るかビミョーね」

千歌「じゃあどーするのさ!?」

鞠莉「あれを一撃で相殺する事が出来て千歌っちと強い絆で結ばれている仲間……そんな人なんて限られているわ」

千歌「で、でも……その人とはこの世界ではそこまで……」

鞠莉「それを言ったら私だってそうでしょう? 転生蘇生に必要な絆の力は元の世界のものが適応される! 無数に存在する世界で私達と強い絆で結ばれた人間は唯一あなただけ。だから千歌っちを選んだ!!」


千歌「来てくれる、かな……?」

鞠莉「信じなさい……あの子なら、きっと来てくれるから!」ニコッ



千歌のリングに炎が灯る。

そして、もう一度地面を叩く。


鞠莉の言葉を、自分が築いてきた絆を信じて……。



千歌「お願い、来てっ!!!」カアァァッ!!!



ヨハネの攻撃と同時に二つの魔法陣が展開される―――――。





「―――――――『絶対零度(ズェーロ・アッソルート)!!!!』」





火球は一瞬で凍結

運動エネルギーを失い、そのまま落下した。




「―――ひゅ〜〜、流石だね。あの規模の炎を一瞬で凍らせちゃうなんてさ」


「褒めても何も出ませんよ。そもそも、あなたがもっと早く動けば無駄な力を使わずに済んだのですがね……」


「そんな事言われもさぁ……まさか右手の力が標準であるとは思わないじゃん?」


「ヘルリングも同じ人間に三度も使われるとは予想外だったのでしょう。体が呪いに打ち勝ったのとだと思いますよ」


「嬉しい誤算だよ」ニヤッ




魔法陣から現れたのは浦の星女学院の制服を着た二人の少女。


一人は美しい青い髪の長いポニーテール。

もう一人は黒髪ロングの痩躯の麗人。


絶望的な状況は変わらないが

その後ろ姿と声を聞いて、千歌と鞠莉は思わず笑みがこぼれてしまう。
506 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 17:31:11.59 ID:iHDRX92w0




千歌「ああ……良かった、本当に来てくれたんだね……」ポロッ


鞠莉「―――ダイヤ、果南!」


果南「……久しぶり、鞠莉」

ダイヤ「お互いに随分と若い姿になりましたわね」フフ


鞠莉「さあ! Come on、二人とも!」バッ!!

果南「……はい?」

ダイヤ「あの、鞠莉さん? 何故、両手を広げているのです?」

鞠莉「……あ、あれ? 感動の再会で泣き崩れる二人をハグするつもりだったんだけど……意外と冷静?」

ダイヤ「……馬鹿なのですか? 状況を考えなさい状況を!」

果南「再会を喜ぶのは後回しかな。……よっ!!!」キュイィィン!!



果南はヨハネからの横槍を右手で難なく打ち消す。



果南「油断してると思った?」

ヨハネ「チッ、しっかり警戒してるか」


鞠莉「全く……空気読めないわね、アイツ」ハァ

ダイヤ「当然の攻撃です。わたくしが敵でも同じ事をしていますわ」

鞠莉「ダイヤ……嫌な奴になったわね。その考え方は嫌いよ」

ダイヤ「んなっ!?」

果南「鞠莉が知らない間にダイヤは変わっちゃったからさ……あの頃の清純なダイヤはもういない」

鞠莉「そうね、あの頃のダイヤはもっと……ん? そもそもダイヤって昔からこんな感じゃなかったっけ?」

ダイヤ「氷漬けにしてやりましょうか? ええ?」ニコニコ

千歌「悪ふざけしてる場合じゃないのに……」



鞠莉「さてと……挨拶はこのくらいにして、そろそろ始めないとね」

鞠莉「果南とダイヤは好きなように暴れなさい。私が後方でバッチリ援護する! 千歌っちは辛いとは思うけど、全力で炎を灯し続けて!」

千歌「私が三人の炎の供給源になってるから、だよね? 任せて! 絶対に……死んでも炎は消さないから!!」
507 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 23:14:21.54 ID:iHDRX92w0

鞠莉「理解してるならそれでいいわ!」



果南「……ふふふっ」

ダイヤ「何を笑っているのです?」

果南「だってさ……私達付き合いは長いけど、こうやって肩を並べて戦う機会って一度も無かったじゃん? だから嬉しくなっちゃって」エヘヘ

ダイヤ「……ふっ、精々足を引っ張る事は無いようにお願いしますね」

果南「そっちこそ、女王様特有の慢心であっさりやられないでよ?」




「「「―――形態変化(カンビオ・フォルマ)!!!」」」




三人はAqours匣を開口、専用武器が出現し、『MIRAI TICKET』衣装へと換装した。


ダイヤは日本刀型の匣兵器『時雨』

鞠莉は両手首に補助装置の『ブレスレット』

果南は左手から腕まで覆う『ガントレット』


果南「初めて装備したけど、長年使い込んだみたいにしっくりくる」

ダイヤ「驚いた……この匣兵器は曜さんが使っていたので、それ相応の調整がしてあると思っていたのに……」

果南「匣兵器の調整が出来るような技術者は居なかったからさ」

ダイヤ「全く手を加えずにあれだけの……っ! つくづく恐ろしい子ね……わたくしを追い詰めただけの事はありますわ」フフ



鞠莉は果南とダイヤの背中に手を当てる。

二人の体に橙色の炎がオーラの様に薄っすらと纏わりつく。



鞠莉「身体のリミッターを外した。今なら100%の力を発揮出来るわ」

果南「死ぬ気弾の効果と似てるね」

ダイヤ「身体へのリスクとタイムリミットは?」

鞠莉「私が二人に使う技にリスクはなんてあるわけ無いわ」

果南「サラッととんでもない事を言い切るな……」

鞠莉「タイムリミットは千歌っちの炎……正確には千歌っちの中に居る私と歩夢、雪穂の炎が尽きるまでよ」

ダイヤ「もっと具体的に!」

鞠莉「どう、千歌っち?」
508 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 23:17:44.54 ID:iHDRX92w0

千歌「感覚になっちゃいますけど……多分さっきダイヤさんが使った技を連続で二回使ったら空っぽになると思います」


ダイヤ「それが分かれば十分ですわ」カチャッ


ダイヤは刀を構える。
『時雨』の刀身は美しい蒼炎色を放つ。

この匣兵器は元々ダイヤ専用に調整されたもの。
それを曜が使用していたのだから、多少は改造されていて当然だと踏んでいた。

しかし、実際には調整など全くされていなかった。

それでも曜はこの匣兵器の性能を十二分に引き出していたのだ。
その適応力にダイヤは感嘆したのだ。



ダイヤ「わたくしも負けていられませんわね。曜さん以上に使いこなせねば黒澤家の名が廃りますわ!」



果南も鞠莉の技に上乗せする形で自身の技である『最高の輝き(ラスト・サンシャイン)』を発動。

鞠莉の補助により『最高の輝き(ラスト・サンシャイン)』の欠点である身体への負荷は完全克服している。

ガントレットで手を覆っているのでリングが砕ける心配は不要。

全力で殴っても体が自壊することは無い。
解除後に寿命で力尽きる事もない。

その肉体はあらゆる逆境を砕き、明るく照らす日輪となる。



果南「うん、最高のコンディション……負ける気がしない!」



鞠莉「さあ、二人とも……思う存分暴れて来なさい!!」


果南・ダイヤ「「ッッ!!!」」ダッ!!!


走り出す二人。

それに対してヨハネは夜の炎を弾丸状にして掃射する。


果南は強化された反射神経で体に当たる炎だけを正確に右手で打ち消す。

一方、ダイヤは防御の姿勢を全く見せない。
このままでは直撃は免れない。


千歌「ダイヤさん!?」

鞠莉「大丈夫よ、ダイヤは既に型に入ってる」


ダイヤ「――――守式四の型 『五風十雨』」


迫り来る攻撃の呼吸に合わせ、高速で躱す。

鞠莉の補助とAqours匣の相乗効果で弾丸程度の速度なら当たる事は無い。


千歌「速すぎて残像が出来てる……っ!」
509 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 23:25:27.79 ID:iHDRX92w0

鞠莉「あの程度の攻撃なら止まって見えるでしょうね」


ヨハネ「クッ、範囲攻撃じゃ陽動にもならないか!」



最短距離で突っ込んで来た果南が拳の届く範囲まで接近。



果南「うりゃああ!!!」ブウゥン!!


果南の右ストレート。

ガントレットが装備されてない右手だが、夜の炎の影響を全く受け無いでダメージを与えられる。

翼で防げば打ち消され、腕で防げば最低でも骨折。


ヨハネは『瞬間移動(ショートワープ)』で躱す。



ダイヤ「ええ、あなたならそう避けるでしょうね」

ヨハネ「!?」ゾッ


ワープで移動した先には刀による突進攻撃
攻式 一の型 『車軸の雨』を繰り出すダイヤが居た。

想定外の攻撃に回避は間に合わず、翼による防御で軌道を変え、致命傷だけは防ぐヨハネ。


ダイヤの攻撃はこれで終わらない。



ダイヤ「――――『車軸の雨』から攻式 五の型……」


ヨハネ「追撃ッ!」バッ!


ダイヤの手の動きから次の斬撃の軌道を予想。
翼による防御体勢を整えた。



ヨハネ「……はぁ?」


……が、斬撃は来ない。

翼の手前を素早く手が横切っただけ。

ダイヤは直前まで左手に持っていた刀を空中に置き去りにし、右手に持ち替えたのだ。

相手の守りのタイミングを狂わせ、変幻自在の斬撃を放つ攻式の型。



ダイヤ「――――『五月雨』」



ズバッ!!!



ヨハネ「うぐうぅッ!!!?」

ダイヤ「……浅いか! ギリギリで後ろに飛んで避けられた!!」チィッ


ヨハネは一旦『瞬間移動(ショートワープ)』でダイヤの斬撃が届く範囲から脱出を図る。



ダイヤ「……移動範囲は自身を中心に半径三メートル、ですね」ニヤッ

ダイヤ「―――果南さん!!!」
510 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 23:26:58.36 ID:iHDRX92w0


果南「……ふっ!!!」ゴオオッ!!


攻撃準備を完了している果南が待ち構えていた。
左の拳に炎を集中させている。


ヨハネ「果南ッ!? 何故移動先に居る!!?」


反射神経が良いとか勘が鋭いとか、そんなんじゃない。
移動先を完全に読まれている……?


ヨハネ「……違う、私が誘導されていたのか!」

ダイヤ「ご名答ですわ」ニコッ


果南「ぶっっっ潰れろおおぉ!!!!」

ヨハネ「ッッッッ!!!!!?」ミキミキミキッッ!!!



巨大な氷塊を一撃で粉々にした拳がヨハネの頬を捉えた。
鼓膜が破れんばかりの爆発音と共にヨハネは地面に叩きつけられ、小規模のクレーターを作る。

ほんの一瞬だけ意識が飛んだヨハネだが、すぐにワープで距離を取った。



果南「むっ、手ごたえアリだったんだけど……意外と硬いな」

ダイヤ「いいえ上出来ですわ。見なさい、相当のダメージを与えられている」


ヨハネ「ゼェ、ゼェ……き、貴様……『瞬間移動(ショートワープ)』の間合いを……ッ」

ダイヤ「このわたくしが曜さんと梨子さんの戦いをただ眺めていただけだとお思いで? じっくり観察させて頂きましたわ」

ヨハネ「だとしても、その情報は果南に伝えて無かったはずだ! なのに何故あれだけの連携を……っ」

ダイヤ「この程度、一瞬のアイコンタクトで充分可能ですわ」

果南「そーゆー事」コキッ、コキコキッ


ヨハネ「こ、この私が人間ごときに……ッ」ギリギリッ!!

ダイヤ「鞠莉さん、千歌さん! 次の攻撃でケリをつけます。もっと炎を回してもらっても構いませんか?」

千歌「勿論です!」


ヨハネ「調子に乗るな!!」


ヨハネの六枚の翼が数倍の大きさに膨張。

ダイヤは『時雨』で、果南は右手で咄嗟に防御体勢を取る。

二枚の翼はそれぞれの足元へ振り落として動きを制限させ、残り全てが鞠莉と千歌に向けて薙ぎ払われた。

千歌は曜が残した盾の後ろに居るが、この攻撃はその盾を避けるように多方向から襲い掛かって来ていた。



鞠莉「―――――『カランコエの花(アイアス)!!!』」



鞠莉は襲い掛かってくる全ての翼に対して、同様の盾を瞬時に展開させた。



ヨハネ「……」

鞠莉「安直な攻撃ね? 力の供給源である私達の守りが甘い訳無いじゃない」

鞠莉「そして、今の攻撃で決定的な隙が生まれた」
511 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 23:30:17.62 ID:iHDRX92w0




ダイヤ「―――――――『絶対零度(ズェーロ・アッソルート)』」パキッ、パキパキッ




注意が逸れた瞬間に大技を発動する準備を整えていたダイヤ。
仮に『瞬間移動(ショートワープ)』を使用されても逃さぬよう、ヨハネの周囲数メートルを瞬く間に凍らせた。

一度氷河の炎で凍らされた者は自力でその氷を溶かす事は決して出来ない。ヨハネの動きは完全に―――。




―――果南はヨハネの攻撃に違和感を覚えた。

当たれば即死なのは変わりないのだが、これまで使用された技と比較すると威力が極端に弱い。

鞠莉に軽々防がれるのは容易に予想出来る。
ヨハネにしては明らかにお粗末な攻撃。



果南「……ッ!? ダイヤ!!!」

ダイヤ「い、居ない……っ、氷の中にヨハネの姿がッ!!?」

果南「まさか―――――――」バッ!!


二人は鞠莉と千歌のいる方向を向く




『瞬間移動(ショートワープ)』
自分の体を目視出来る場所へ一瞬で移動させる技。
場所と場所を『線』ではなく『点』で結ぶので移動中に外部から影響を受ける心配は無い。

移動距離が長いほど発動までにタイムラグが生じ、三メートルの移動には発動から移動完了まで約0.5秒。


ダイヤが予想した移動可能範囲は正確では無い。

この技は体に大きな負荷が掛かる。
果南の『最高の輝き(ラストサンシャイン)』と同等かそれ以上の負荷だ。移動距離が伸びれば伸びるほど反比例して増加する。

三メートルとは移動出来る限界値では無い。

ヨハネが安全が保障される距離である。

リスクを度外視すればいくらでも距離は伸ばせるのだ。



ヨハネと千歌との距離はおよそ15メートル。
タイムラグは2.5秒。

ヨハネの致命的な隙を生んだと思われた攻撃は発動までのタイムラグを稼ぐ為のもの。



ヨハネ「――――神はサイコロを振らない。始めからこうすれば良かったのよ」


千歌「………えっ?」


千歌と盾の丁度中間地点
ヨハネはそこに移動先を設定した。

反動で全身ズタボロの状態になっているが、丸腰の千歌を殺すには影響は無い。



ヨハネ「発動者のお前を殺せば三人も消える。馬鹿正直に相手をする必要は無いのよ」
512 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 23:33:33.48 ID:iHDRX92w0


ダイヤ「こ、の………ッ!!!」ゴオオッ!!


この愚か者ッ!
どうして移動範囲が三メートルだけだと決めつけた!?
慢心するなと果南さんに忠告されたではありませんか! なんて無様な失態ですの……っ!?



果南「ちかあああぁぁッ!!!!!」ダッ!!!


この距離、最大出力で何秒掛かる?
三秒? 二秒?
ダメだ全然間に合わない!!

……間に合わない?

違う、間に合わせるんだ!!!


千歌は絶対に死なせない!!!



鞠莉「……ち、か!!!」ボオッ!!


ダイヤと果南は間に合わない。
だから一番近くに居た私が何とかしなきゃならない。

でも……この大馬鹿は完全に油断してた!!
ヨハネはちょっと手を伸ばせば千歌っちに届く位置に居る。
私も隣に居るけど驚いて反応が一瞬遅れた!!

技で防ぐ時間は無い。
ギリギリ突き飛ばして身代わりに……!?



ヨハネ「もう遅い手遅れだ!」

千歌「ヨ、ハネ……っ!」

ヨハネ「これで……終わりよ!!!」


ヨハネは夜の炎を纏わせた右手を伸ばす。
触れれば即死。
千歌に防ぐ術は何も無い。



……ああ、なんて呆気ない最期だ。
せっかくダイヤさんと果南ちゃん、鞠莉ちゃんが協力して勝てそうだったのに。

私が不甲斐ないせいで台無しにしちゃった……。

ごめん、みんな……

ごめん、曜ちゃん………ごめんね。


死を悟った千歌は思わず両目を強く瞑った……。




513 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 23:38:56.15 ID:iHDRX92w0









―――ジャラジャラジャラッッ!!!





千歌「……………ぅ?」


……どれだけ待っても死が訪れない。

恐る恐る目を開けてみると
体中を鎖で縛り付けられ、自由を封じられたヨハネの姿があった。



ヨハネ「……な、にいぃ……!?」ギチッ、ギチギチ

千歌「止まった……?」

ヨハネ「た、盾から……盾から鎖が発生した、だと!??」

千歌「こ、これって……曜ちゃんの技じゃ……」

果南「何で曜の技が発動したの……? だって曜はもう消滅して……」



ダイヤ「……あぁ、そういう事ですか」

鞠莉「ぷっ、あははははははは!! 曜、全くあなたって子は……死してなお、使命を全うしたのね」

ヨハネ「どういう事だッ!!?」


鞠莉「……あなたの炎は曜をこの世から消す事は出来たけど、『千歌っちを守る』強い想いまでは消せなかった」

果南「曜の想いが具現化した盾だから発動者の死後もその効果は続いて……」



千歌「……ははっ、やっぱりよーちゃんは凄いや……感謝しても仕切れないよ……」グスッ

ヨハネ「バカな……こんな、事が……ッ」

ダイヤ「強い願い、強い想い、強い祈りは必ず届く……か。曜さん、お見事ですわ」



鞠莉「喜びなさい、曜……これはあなたの勝利よ。まさか初勝利の相手が神だなんてね夢にも思わなかったでしょうね」フフッ





間もなく、駆けつけたダイヤによってヨハネは体、精神共に完全に凍結。




こうして、世界の命運を賭けた戦いに終止符が打たれた。





514 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 23:41:07.72 ID:iHDRX92w0


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




千歌「これで全部終わったんだね……全部」

果南「最終的には勝てたけれど、失ったものが多過ぎる……」

ダイヤ「わたくし達以外は全員死亡しています。この先どうすればいいのか……」


鞠莉「心配には及ばないわ。ヨハネさえどうにかすれば、後はなんとでもなるから」

千歌「そう言えばあの時も似たような事を言ってたよね?」

ダイヤ「何をするつもりですの?」

果南「私達を生き返らせた技を全員に使うとか?」

鞠莉「それは無理。蘇生させるにも、それを維持するにも莫大な炎が必要だし、発動者の千歌っちが一生帰れなくなっちゃうわ」

千歌「……帰る? またみんなの所に帰れるの!?」

ダイヤ「本当に言っていますの? 別世界から呼び寄せる技は存在しますが、こちらから送る技が存在していた記憶は無いのですが?」

鞠莉「ええ、無いわ」

千歌「えっ」

鞠莉「仮にそんな技があったとしても、この世界で過ごした時間と同じ分だけ向こうの時間も進んでいる」

果南「あ、それだと千歌は半年近く行方不明の状態なのか」

鞠莉「私の勝手な都合で千歌っちの大切な時間を奪うなんてNo goodデース」

ダイヤ「まさか、時を巻き戻すなんて馬鹿げた事を言うつもりじゃ……」

鞠莉「大当たり♡」

ダイヤ「………」

果南「ダイヤが絶句してる」


鞠莉「正確には、雪穂の『過去』を司る能力を応用してヨハネをこの世界から追い出す。この過程で千歌っちを元の世界に送り届けるわ」

千歌「ん? んんっ?」

鞠莉「ヨハネの存在を過去に遡って無かった事にするのよ。そうする事でこの世界を『ヨハネが居なかった世界』へと再構成させる」

鞠莉「ヨハネが居なければ雪穂や歩夢やその守護者、その他大勢の人が死ぬ事も、ダイヤが最低最悪の女王として君臨する事も、私が千歌っちをこの世界に呼び寄せる事もない」

ダイヤ「タイムパラドックスってやつですわね」
515 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 23:47:02.99 ID:iHDRX92w0

鞠莉「これで千歌っちから奪ってしまった時間を丸々返せるって算段よ」

千歌「それは嬉しいんだけど……それって、ここでの思い出も無かった事になるんじゃ……」

鞠莉「Oh……勘が鋭いわね」

鞠莉「恐らく、長い夢を見た時と同じ感覚になるでしょうね。目覚めた瞬間はなんとなく覚えているけど、すぐに全部忘れちゃうと思う」

千歌「……せっかくこの世界でもみんなと仲良くなれたのに……全部消えちゃうなんて嫌だよ……」


果南「心配しなくたって消えないよ。例え記憶に残らなくたって心にはちゃんと残るさ。曜の強い想いがそうだったみたいにね」ニコッ

千歌「果南ちゃん……」


果南「それで、私達も同じように忘れちゃうの?」

鞠莉「私が技を発動した瞬間、この世界は数年前ヨハネが現れた瞬間から今日までの日々をすっ飛ばして再構成される。二人は今までの事を全部覚えているけど、それ以外の全員は二人とは違う時間を過ごしているから何も覚えていない」

果南「なるほど」


ダイヤ「……鞠莉さんはどうなるのです?」

鞠莉「ん?」

ダイヤ「これだけ世界に影響を与える技なのです……使用者の鞠莉さんに全くリスクが無いとは到底思えない」

鞠莉「……」

ダイヤ「答えなさい。鞠莉さんにはその義務があります」

果南「どうなの、ダイヤ?」


鞠莉「……ま、黙っていてもすぐにバレちゃうもんね」

鞠莉「この技の代償は“私の存在”よ。ヨハネと共に私はこの世界に最初から居なかった事になるわ」

ダイヤ「……え」ゾッ

千歌「最初からって……どこから?」

鞠莉「言葉の通りよ、生まれた事自体が無かったことになる。過去に存在しないのだからタイムパラドックスを起こしても私は生き返らないし、誰の記憶にも残れない」

ダイヤ「そんな……鞠莉さんはそれでいいの!?」

果南「誰の記憶にも残らないなんて……そんな、あんまりだよ……っ」


鞠莉「ああ、果南とダイヤの記憶にはバッチリ残るわよ?」


果南「へっ?」

鞠莉「だから後でバレるって言ったの。言わなかったせいで二人に闇落ちされてもシャレにならないし」

果南「……な、なんで平気な顔してられるの? 記憶に残らないなんて死ぬより悲惨じゃん!?」

鞠莉「んー……二人の中には確実に残るからだと思うな」

鞠莉「果南とダイヤ、大好きな二人に覚えていてもらえるなら……私はそれで満足っ」ニコッ

果南「………っ」

鞠莉「って事だから、浦の星王国の女王は任せ―――」

516 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 23:50:14.93 ID:iHDRX92w0



ダイヤ「無理です……わ」


鞠莉「ダイヤ?」

ダイヤ「無理です……実際に女王をやってみて痛感しました……私では遅かれ早かれ国を滅ぼしてしまいます」

ダイヤ「私は鞠莉さんの代わりにはなれない……っ」

果南「……」

鞠莉「ダイヤ……」


千歌「―――大丈夫だと思いますよ」


ダイヤ「気休めは止してください」

千歌「気休めなんかじゃないです! 確かに、これまでのダイヤさんのやり方は最善じゃなかったし、周りからの評価も悲惨なものだった」

千歌「……それでも、根底にあったのは鞠莉さんと同じ『国を守りたい』という純粋な想いだったはずです」

ダイヤ「……っ!」

千歌「今までの選択がどれだけ間違いだらけだったとしても、その想いだけは決して間違いなんかじゃない。今のダイヤさんならきっと大丈夫」

千歌「……私はそう思います」

ダイヤ「……千歌さん」

鞠莉「ダイヤに失敗した自覚があるなら問題無い。幸運にも今回はやり直せるのだから、この経験を活かしなさいな」

果南「仮にまたダイヤが間違えたとしても、私がぶん殴って正してあげるからさ。安心して間違いなよ」ニッ

ダイヤ「……それは勘弁して欲しいですわね」




鞠莉「――――さてと、名残惜しいけれどそろそろ始めましょうか」


鞠莉「千歌っち、大空のAqoursリングを渡して頂戴」

千歌「分かった」

鞠莉「Thank you♪」

517 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 23:53:02.37 ID:iHDRX92w0

ダイヤ「音ノ木坂、浦の星、虹ヶ咲の三つのリングが揃った」

鞠莉「このままヨハネに触れて技を発動させる。目が覚めれば新しい世界、元の世界に帰っているわ」

千歌「これで本当にお別れなんだね……」



鞠莉「千歌っち……怖い思いも痛い思いも沢山あったよね……私の勝手な都合でこんな事に巻き込んじゃってごめんなさい」

ダイヤ「わたくしからも謝罪します……申し訳ございませんでした」

千歌「……うん、いいよ、二人共許してあげる。ダイヤさんも立派な女王様になってね」

鞠莉「優しいわね……ありがとう」

ダイヤ「……ええ、善処しますわ」



果南「千歌……ありがとう。そっちの私にもよろしくね? ……覚えて無いと思うけどさ」アハハ

千歌「……果南ちゃんもありがとう。果南ちゃんが味方で本当に良かった! ルビィちゃんや花丸、よしみさんによろしく伝えて置いて!」

果南「うん、任せてよ♪」




―――ボオオォッ!!!




鞠莉「始めるわよ」

千歌「……うん」


ダイヤ「あっ……体が透けて……」スウゥゥ

果南「いよいよって感じだね」

千歌「あ……れ………い、意識が………だん、だん………」ウトウトッ









――――――――果南、ダイヤ、千歌……ありがとう! ………元気でね!








518 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 23:54:28.77 ID:iHDRX92w0

――――――――――――
――――――――――
――――――――
――――――
――――
――




「………歌………ん?」


「……ーい………千……!」


「おーい、千歌ちゃーーん」ペチペチ



千歌「……ん」パチッ


曜「やっと起きた。爆睡だったね」

千歌「……ここは?」

曜「バスの中だよ。寝ぼけてる?」クスクス

千歌「バス……ああ、そっか……戻って来れたんだ!」

曜「戻る? どこから??」

千歌「どこからって……あれ、どこからだろう?」

曜「もう、やっぱりまだ寝ぼけてるね」

千歌「なんだろう……凄く長い夢を見ていた気がするんだよね……」

曜「ふーん、どんな夢だったの?」

千歌「それが全く思い出せないんだよ。怖かったような、痛かったような、嬉しかったよな、楽しかったような……とにかく不思議な夢だった気がする」

曜「へぇ……まあ、夢ってよく忘れちゃうものだし」

千歌「そうなんだけど……何か大切な事を忘れているような……」



―――プシューーッ



曜「あ、着いたね」

千歌「……ちょっと気持ち悪いけど、そのうち思い出せるかなぁ」ウーン

519 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 23:55:33.80 ID:iHDRX92w0


千歌「まあいっか。行こう、曜ちゃん」スクッ

曜「うん」




曜「………」





『どんなことがあっても元の世界に帰るまで千歌ちゃんを守るよ―――』





曜「……フフ、良かった」









曜「……お疲れ様、千歌ちゃん―――」








千歌「んー? よーちゃん何か言った?」

曜「……えっ、何が?」

千歌「だって今ボソッて何か言ってたじゃん」

曜「私が? 何も言ってないけど……?」

千歌「あれぇ……おっかしいなぁ」

曜「変な千歌ちゃん」



千歌「………あっ!!!!」

曜「うぉ!? 何!?」

千歌「思い出した……一部だけだけど思い出したよ!」

曜「夢の内容を?」


千歌「あのね! あー……やっぱナシ、何でもない」

曜「えー! 何でさ!?」

千歌「いや、だってその……///」カアァァ

曜「え、何で顔赤くしてるの?」

千歌「何でもない! 何でもないから///」ダッ

曜「ちょっ、千歌ちゃん!? 待ってよーー!!」

520 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/06/30(日) 23:57:27.32 ID:iHDRX92w0











『―――……きっと、そっちの“私”は千歌ちゃんの事がよっぽど大好きなんだね』



『へ……?///』



『いやー…愛は世界線をも超えるのかぁ。一途といいますか、重すぎるといいますか……ヤバイな、そっちの“私”』



『なんかめっちゃ恥ずかしいんだけどぉ……///』



『あははは! 今度本人に確認してみなよ。元の世界に帰るまで、私が代わりに千歌ちゃんを守るから―――』ニッ 











〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


千歌「勇気は君の胸に」


――END――
521 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2019/07/01(月) 00:02:34.97 ID:EjTce2t+0
去年の今頃に投稿を始めた作品でしたが、いかがだったでしょうか?
大変長らくお付き合い頂き、誠にありがとうございました!
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/01(月) 00:09:13.08 ID:isO78FVeo
おつおつ!
もう1年も経ってたのか
めちゃくちゃ面白かったよ!
長期間お疲れ様でした
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/01(月) 00:46:22.72 ID:G42gRj+A0
一年経っていたのか…
乙でした
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/01(月) 02:07:11.21 ID:T4AZouD8o
おつ
525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/01(月) 19:17:13.14 ID:snNlMpx40
めっちゃ面白かったです
おつでした
526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/07/03(水) 03:25:42.14 ID:4mQUswoQ0
超大作でした
終盤の展開は最高に熱かった
乙でした……!
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