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千歌「勇気は君の胸に」
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477 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/05/31(金) 01:05:09.45 ID:guC+9QV20
ダイヤ「―――まさか」
発動の直前、果南の体や右目から晴の炎が消えていた。
最初は土壇場で『最高の輝き(ラストサンシャイン)』の効果切れだと思い込んでいたが、実際は違う。
再びヘルリングを指にはめた事で呪いの力が復活したのだ。
効果範囲は初期の右手首より下に狭まっているが
空間に全体に展開する『絶対零度(ヅェーロ・アッソルート)』は勝手に右手に当たるので打ち消す事が出来る。
発動そのものが無意味となるのだ。
ダイヤ「わざわざ一度死んでまで外したリングを……!?」
果南「―――届いたよ、ダイヤ」
果南「私の切り札は最初から“これ”だ。それにあの状態のまま殴ったらダイヤが死んじゃうからね」
果南は右の拳を硬く握りしめ、力強く左足を一歩踏み込む。
果南「さぁ……すっっごく痛いのいくから覚悟してね?」
果南「……歯ぁ食いしばりな」ギュウゥゥ
ダイヤ「うっ……やめ―――」
果南「―――ダイヤあああああああああああ!!!!!!」
―――バキャッッ!!!!!
ダイヤ「ごっ……お……ぉ」
渾身の右ストレートがダイヤの顎下にクリーンヒット。
地面に叩きつけられる。
ダイヤは意識と共に、彼女の心の奥底にある何かが打ち砕かれた―――。
478 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/07(金) 23:44:59.41 ID:AMx4KjrE0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ダイヤ「…………ん」
……どのくらい眠っていたのでしょう。
場所が変わっていない所から察するにそれほど経ってはいないですかね。
口の中が痛い、頭もガンガンする……。
果南さんめ……女性の顔を本気でぶん殴るやつがありますか。
当の本人は一体どこに……ん?
ダイヤは左手の違和感に気が付き、首をゆっくりとその方向へ向ける。
そこにはダイヤの手を握りながら仰向けに倒れている果南の姿があった。
半開きの目でぼんやり天井を見つめている。
ダイヤ「……果南さん」
果南「………」
ダイヤ「いいパンチでしたわ。おかげで綺麗に整っていた歯が何本か折れてしまいました」
ダイヤ「脳震盪で起き上がるどころか指一本動かせない……詰みです」
果南「………」
ダイヤ「……あなたの……あなた達の勝ちですわ」
ダイヤ「敗者は大人しくこの世から立ち去ります。好きなように殺しなさい……わたくしはもう……疲れました」
果南「………」
ダイヤ「……鞠莉さんの愛したこの国を守りたかった。ただそれだけだったはずなのに……わたくしは、一体どこで間違ってしまったのでしょう……ね?」
果南「………」
ダイヤ「……愚問でしたね。どこで間違えたか、なんて明らかですわ。最初から何もかもが間違っていた。感情に身を任せてしまったが故に引き返す地点を全て見逃した……」
ダイヤ「気がすむまで罵倒して下さい……言いたい事は山ほどあるのでしょう?」
果南「………」
ダイヤ「……ちょっと、いつまで無視して―――」
ダイヤ「―――果南さん?」
よく観察すると果南の右手からヘルリングが外れ、床に転がっているのが見えた。
これが何を意味するのか。
今更考えるまでもないだろう。
果南の技、『最高の輝き(ラストサンシャイン)』による体への負荷は生物の限界値を遥かに超えている。
動力源である心臓がたった数分で一生分の鼓動数に達してしまうほどに。
ダイヤ「……果南さん、あなたって人は勝手なんだから……」
ダイヤ「はぁ……戦いに不要な感情は全て凍結させたのに……あのパンチで全部元通りになった………」
ダイヤ「……ホントっ、余計な事をしてくれましたねぇ……っ」ポロポロ
479 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/07(金) 23:59:39.46 ID:AMx4KjrE0
千歌「果南ちゃん……」
梨子「終わったわね。大きな犠牲を払ったけれど、これで一区切りよ」
曜「……戦いは終わってない」
梨子「何? まだやろうって言うの?」
曜「違う、ダイヤさんが倒そうとしていた“本当の敵”がまだ残ってるんだ」
曜「―――そうでしょ? 千歌ちゃん」
千歌「よ、曜ちゃん……どうしてそれを―――」
「あれー? もしかして、もう終わっちゃったずら?」タッタッタッ
千歌「花丸ちゃん!」
花丸「急いで来たんだけどなぁ……間に合わなかったみたいだね」
梨子「……そう、善子ちゃんは負けちゃったか」
千歌「頭から血が……全身傷だらけじゃん!?」
花丸「大丈夫大丈夫、見た目だけで実際は大した怪我はないずら」
千歌「今そっちに行くね」
千歌は花丸の元へ駆け寄る。
曜「……花、丸……ちゃん?」
外見も声も間違いなく花丸ちゃんだ。
それなのに、姿を見た瞬間からずっと私の中にある警報が最大レベルで鳴り響いてる……。
付き合いが長いわけじゃないけど断言出来る。
――あれは花丸ちゃんじゃない……!
曜「ダメだ千歌ちゃん……そいつに近寄るな!!!」
480 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/08(土) 00:10:08.79 ID:m1rd4QUO0
千歌「ほぇ?」
花丸「………フフ」
―――バンッ!!!
曜が叫んだのとほぼ同タイミングで銃声が響く。
弾丸は花丸の頭部に被弾、そのまま仰向けに倒れた。
千歌「な……っ、り、こ……ちゃん………?」
花丸「………」
梨子「……撃って良かったのよね?」
曜「うん、ありがとう。それにしても流石だね……いきなりの早撃ちで寸分の狂いなく眉間ど真ん中を撃ち抜くなんてさ」
梨子「どーも」
曜「これで死ぬなら大した敵じゃなかったって事で万事解決」
梨子「もしそうじゃなかったら――」
「あー……ったく、いきなり発砲するとか酷いじゃない。リリー」シュウゥゥゥ
千歌「は、花丸ちゃんが善子ちゃんになった!?」
曜「幻術で化けていた……? でも何か引っかかる……」
善子「一歩間違えば死んでたんだからね。本当勘弁してほ」
バンッ!! バンッ!!
善子「っ!?」
梨子「―――誰よ、あなた」
善子「ちょっ……何言ってるのよリリー? 私は善子よ。変な事言わないで頂戴」
梨子「いいえ、あなたは善子ちゃんじゃない」
梨子「私の知ってる善子ちゃんは私を“リリー”だなんて呼んだ事は一度もない」
梨子「……あなたは一体誰だ?」
善子「……あー、なるほど。この世界では呼んでなかったのか……凡ミスだ」
千歌「あ、あなたが善子ちゃんじゃないのなら本物の善子ちゃんや花丸ちゃんはどこに……?」
善子「善子なら目の前にいるじゃない。外見は全く同じ、入れ替わったのは中身だけよ」
善子「花丸は……言わなくても分かるでしょう?」ニタァ
千歌「ひぃっ!」ゾワッ
曜「なんて歪んだ笑顔なの……」
梨子「私の質問に答えなさい! お前は誰だ!!」カチャッ
善子「誰、か……そうね教えてあげるわ」
481 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/08(土) 00:11:35.77 ID:m1rd4QUO0
ヨハネ「――――私の名はヨハネ。世界の破壊神よ」
482 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/08(土) 00:24:18.96 ID:m1rd4QUO0
千歌「うそ……ヨハネって……っ」
ダイヤ「ヨ、ハネ……ヨハネだと……!?」
ヨハネ「久しぶり、元気そうね?」ニコニコ
ダイヤ「どう、して……よりにもよってこのタイミングで現れた!?」
ヨハネ「割と前から準備は整っていたのよ。ただ、呪いの力が発動中だと私の世界を消す技が使えなかった」
ヨハネ「あの子に実感は無かっただろうけど、私という脅威からずっと世界を守っていたわけ」
ダイヤ「果南、さんが……?」
ヨハネ「皮肉なものねぇ……親友を切り捨て、他国を切り捨て、己の信念を切り捨てたあなたの覚悟は全くの無意味だった」
ヨハネ「……いや、松浦 果南という世界の守護者の死を早めたのだからその罪は極めて重い……あなたのせいで世界は滅びるのよ」
ダイヤ「……わたくしの、せいで……?」
ヨハネ「私を倒す為に色々準備していたみたいだけど、それも肝心な時に役に立たない! あなたの三年間は全部、ぜ〜〜んぶ無駄だったのよ!」
ダイヤ「……ぁ、ああ、ああああっ!!!」
ヨハネ「ほらどうした! 私を殺したんでしょ? 必ず殺すと誓ったんじゃないの!? 仇は目の前にいるぞ、ほらっ!!」
ダイヤ「〜〜〜〜ッッ!!!!」ギリッ!!!
ヨハネ「……あの時と同じよう無様に這いつくばっていなさい。お前に国を、世界を守る力なんてこれっぽっちも無かったのだから」
梨子「――――ちょっと、何好き勝手な事言ってるのよ」
ヨハネ「……何?」
梨子「さっきの戦いでは命令に背いたけど、私のダイヤ様への忠誠心は変わってない。自分の女王が侮辱されて黙っていられると思う?」
ヨハネ「忠誠心ねぇ……この女王様のどこに魅力を感じたのやら」
梨子「分かって貰わなくて結構」
483 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/08(土) 00:32:54.31 ID:m1rd4QUO0
ダイヤ「梨、子……さん」
梨子「ダイヤ様も感情的に叫ぶなんてらしくないですよ。あなたはいつもみたいに凛とした振る舞いをしていればいいのです」
梨子「ダイヤ様のやってきた事は無駄なんかじゃない。私がそれを証明してみせる!!」
ヨハネ「この世界の連中は威勢だけはいい……一人で勝負になると思ってるの?」ヤレヤレ
千歌「――……一人じゃないよ」
曜「そうだ、私達三人が相手だ!」
ヨハネ「………へぇ」
梨子「別に敵のあなた達の力なんて必要ないわ」
曜「意地を張ってる場合? 実弾で攻撃してたくらいだからもうほとんど力残ってないでしょ」
梨子「それはそっちも同じじゃない。『時雨之化(じうのか)』に全部使ってガス欠状態なのは知ってるんだから」
千歌「だったら尚更協力しなきゃ勝てないじゃん」
曜「コイツを倒さなきゃ世界が滅ぶなら、因縁とか敵味方とか言ってられない。安心してよ、後できっちり仕返ししてやるからさ」
梨子「……どさくさに紛れて後ろから斬らないでよ?」
曜「そっちこそ、流れ弾だーとかで頭撃ち抜いてこないでね?」
梨子「―――ふっ!!」
梨子は下に向けていた拳銃を素早くヨハネの方向へむ――――。
―――ガシッ!!
動作に入るよりも速くヨハネは梨子の手首を掴んだ。
梨子「ッ!?」
ヨハネ「遅い遅い、欠伸が出るくらい遅いわ」フワアァァ
千歌「瞬間移動した……っ!」
虚を突かれた梨子。
ヨハネは梨子の口元へ頭突き。
硬い物質にヒビが入る嫌な音が響く。
梨子「ぅがあッッ!?」
曜「桜内っ!」
曜もヨハネに斬りかかるが、刀は空を斬る。
ヨハネ「『瞬間移動(ショートワープ)』、私が使う『夜の炎』で使える技の一つよ」シュンッ!!
曜「このっ! 当たらない!」ブンッ! ブンッ!
ヨハネ「人間の反応速度よりも遥かに速いんだから当たるわけが無いわよ」シュンッ!!
484 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/08(土) 00:38:54.08 ID:m1rd4QUO0
曜「ならこの技で……ッ!」
曜は『繁吹き雨(しぶきあめ)』の構えに入る。
ヨハネ「回転しながら周囲を斬り裂くその型なら当たると……安直ね」
ヨハネは手のひらから黒い炎を点火し、曜の刀にぶつけた。
小規模の爆破が発生。
曜は後ろに吹き飛んだ。
曜「ぐっ……危っ」
千歌「か、刀が……っ」
曜「マジか……折れた!?」
ヨハネ「よく見なさい、折れたのならその刃先はどこにいったのよ? 『夜の炎』の特性『消滅』で消し去った」
千歌「さっきから言ってる『夜の炎』って何!? ダイヤさんの『氷河の炎』といい炎は七属性以外に何種類あるのさ!」
ヨハネ「これはベースとなる大空以外の六属性の突然変異種。『氷河』は『雨』、『夜』は『嵐』の特性が極端に向上した炎よ」
ヨハネ「私の『夜の炎』は匣兵器も炎も、この世界に存在するあらゆるモノを跡形も無く消し去れる」
ヨハネ「―――こんな風にね」シュン!!
ヨハネは『瞬間移動(ショートワープ)』で曜の目の前へ。
曜「……あっ」ゾッ
梨子「このバカッ!!! 避けなさい!!!」ドンッ
梨子は立ちすくむ曜を思いっきり突き吹き飛ばした。
―――ゴオオオォォッ!!!!!
曜「痛ッ……何す……!?」
千歌「……え?」
ヨハネの炎が直撃した梨子。
炎が消えると梨子が居た場所には塵一つ残っていない。
攻撃範囲から外れていた突き飛ばすときに使った腕のみが床に転がっていた。
千歌「梨子……ちゃん?」
曜「な、んで……」
ヨハネ「これは予想外。まさか身代わりになるなんて」
485 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/08(土) 00:43:19.00 ID:m1rd4QUO0
曜「庇ってくれなんて頼んでない……余計な事しないでよ……っ」ギリッ
曜「何で……死ぬのが分かってて敵の私を助けたのさ!!」
ヨハネ「ほとんどどころか全く力が残って無かったのよ。匣も技も使えない自分より、お前が生き残った方がいいと判断した」
ヨハネ「……無駄死になのは変わらないけどねぇ」
曜「くそッ……ダイヤさんいつまで倒れているんですか! コイツは仇なんでしょ!? 根性で立ち上がって下さいよ!!」
ダイヤ「やか、ましい……さっきからやってますわ!!」グググッ
ヨハネ「無理無理、完璧に顎に決まったのなら暫く立ち上がれない。これは気持ちだとか根性だとかで解決出来る事じゃ無い、人体の構造上の不可能よ」
ヨハネ「あー……一人一人消すのも面倒ね。もう一気に消滅させちゃうか」
―――ゴオオオォォッ
ヨハネ全身から禍々しい黒い炎が大量に噴き出し、背中から漆黒の翼が生成された。
千歌「うぐっ!? 風強っ」
曜「あんなの人間が出せる炎圧じゃない……!?」
ヨハネ「私は破壊神、神よ? そっちの物差しで量らないでくれる?」
ダイヤ「ダメ……ヨハネに技を使わせてはなりません! どんな手段でもいい……絶対に阻止して下さい!!」
千歌「曜ちゃん!!!」
曜「ぐっ! 激流―――」
ヨハネ「もう遅い、結局世界を守る事は叶わなかったわね……黒澤ダイヤ!!」
ダイヤ「っ!!!!」
ヨハネ「―――完全抹消(オールデリート)」
触れるもの全てを無に還す炎がヨハネを中心に急速に広がってゆく。
それは瞬く間に城内、浦の星王国、島全土……そしてこの世界の全てを包み込む。
―――こうして、世界は終焉を迎えた。
486 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/17(月) 23:35:30.32 ID:sdpHIkmp0
ヨハネ「……で、終わる予定だったんだけどな。今回は上手くいかなかったか」
千歌「………どう……なったの? ここはどこ? ダイヤさん! 曜ちゃん!」キョロキョロ
ヨハネ「高海千歌……やはりこの世界においてイレギュラーな存在であるお前が生きている限り、完全消滅は叶わないか」
千歌「答えてよ! この一面真っ暗なこの場所はどこ!? みんなはどうなったの!?」
ヨハネ「消したわ」
千歌「……消し、た?」
ヨハネ「この世界を構成するあらゆるものを綺麗さっぱり、存在していた痕跡すら残さずね」
千歌「みんな……死んじゃったの?」
ヨハネ「お前の言う“死”がどのような定義かは分からないけど、生物的にも精神的にも完全に死んでるわね」
千歌「精神的……?」
ヨハネ「では、試しにこの世界での思い出を一つ聞くわ。『高海千歌がこの世界に来て初めて出会った子は誰?』」
千歌「そんなの簡単だよ!……ええっと ……え、あ、あれ……?」
ヨハネ「思い出せないでしょ?」クスッ
千歌「何で……そんな馬鹿な話があってたまるか! だってついさっき私は名前を叫んだじゃん!」
ヨハネ「誰の名前を?」
千歌「それはっ! そ、それは……っ」
ヨハネ「顔はどう? 頑張って思い浮かべて!」
千歌「………ぅぁ」ガタガタ
ヨハネ「ほら、名前も顔も思い出も、何もかもぜーんぶ消えた。もう何も残ってない!」
ヨハネ「この場所は言うなれば更地よ。精神が体感する時間の流れも通常の数億倍、一秒で三、四年のスピードで老いてゆく。もう間も無くその他の思い出だけでなく自分が何者かすらも分からなくなる」
ヨハネ「お前はこの空間にたった1人、圧倒的な孤独感に蝕まれながら死ぬのよ」
千歌「ひ、ひとり……? 死、ぬ??」
ヨハネ「ん〜〜いい顔ねぇおんぷ その恐怖と絶望に打ちひしがれた表情はいつ見ても惚れ惚れしちゃう」ニタァ
487 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/17(月) 23:41:16.22 ID:sdpHIkmp0
千歌「帰れない……? 私はもうみんなの所に帰れないの……?」
みんな……みんな? みんなって……誰?
誰、だれ?
顔が塗り潰されて見えない。
……何の為に必死になってたんだっけ?
思い出が朽ちてゆく。
私はどこに帰りたいの?
かえる場しょって何?
私は……わたし、わたし?
私は私、私って誰わたしわたワタシ何私しししし――――――。
「消えないよ」
「消えてない、全部残ってる。何一つ消えたりなんかしない」
……だ、れ?
「待ってて……すぐに連れ戻すから――」
……ぅ、眩し―――。
千歌「ハッ!?」ガバッ
千歌「こ、ここは……城の中…? 元に戻った?」
ヨハネ「……これは誤算だったな。まさか生き残りがもう一人いるとは」
ヨハネ「渡辺曜……『同調』で高海千歌のイレギュラー性が共有されたから消滅せずに残ったって所か」
曜「………」
千歌「よーちゃん……?」
曜「よかった……ちゃんと思い出せたんだね」
千歌「あれは全部幻だったの?」
曜「そうだったら良かったんだけどさ……残念ながら事態はそれほど好転してないかな」
488 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/17(月) 23:44:27.68 ID:sdpHIkmp0
ヨハネ「その通り。渡辺曜の存在により世界の一部分だけ、恐らく城内のみが復元されたに過ぎない。首の皮一枚繋がっているに過ぎない」
……世界は観測者が居なければ存在を確定出来ない。
自分の背後、遠く離れた国、空に見える月、果てしなく広がる宇宙ですら人間の意識なしでは存在しえない。
人間による観測という行為があって初めて実存していると断定出来る。
城内のみが復元されたのは曜と千歌が観測出来る範囲がこの場に限定されているが故。
ヨハネの『完全抹消(オールデリート)』は観測者に該当する人間とそれに酷似した生き物全てを殺す技。
観測者を失い存在を確立不可能とさせる事で世界を消滅させる。
ヨハネなら何もかも全て焼き尽くす事も可能だが、それよりも低エネルギーで実行出来る。
千歌「質問……いい?」
ヨハネ「ん?」
千歌「あなたが世界を消滅させようと思わせる基準って何? 私は全てを見てきたわけじゃない。けどみんなが理不尽に消えなきゃいけない程悪い事をしているとは思えないよ」
ヨハネ「“全てを見てない”からそう思うだけ。私は全部この目で見てきた」
曜「適当な事を……っ」
ヨハネ「嘘じゃないわ? 私と契約した私達(リトルデーモン)は世界中にいるもの。リトルデーモンが見聞きした情報は自由に引き出せるし、私が直接乗っ取る事も出来る」
「例えばね」っと言いながら片手で自分の顔を軽く撫でる。
すると善子だった顔が一瞬でよしみの顔へ。
それに合わせて身体もよしみと同じシルエットになるよう変化した。
よしみ(ヨハネ)「どーかしら?」
489 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/17(月) 23:47:07.83 ID:sdpHIkmp0
千歌「声も全く同じ……っ」
よしみ(ヨハネ)「私はリトルデーモンとなった者と顔、声、指紋、血液型エトセトラエトセトラ……。あらゆる身体情報を完全再現出来る。この能力を使って――」
スウゥゥ
亜里沙(ヨハネ)「――ある時は女王の側近として会合に参加したり」
いつき(ヨハネ)「そしてある時は敵の実力を見定める為の噛ませ役になったりしたわ」
曜「あ、あの時の……っ」
花丸(ヨハネ)「うっかり殺されそうになったお前達を助けた事もあったわ」
少女A(ヨハネ)「ダイヤと果南、二人を同時に無力化させるのにお前達の存在は必要だったから」
少女B(ヨハネ)「万全な状態のダイヤと果南が手を組んだら私も無傷で済まないからね……」
星空(ヨハネ)「思惑通り潰し合ってくれて助かったわ。これで楽にやれるもの」
ヨハネは再び善子の顔に戻す。
ヨハネ「この身体は馴染むわ……思わずこの姿を維持したくなってしまう」
千歌「……ずっと私達を見ていたの?」
ヨハネ「ええ、なんせお前達は……いや、高海千歌、お前はあの生意気な金髪女王の“切り札”らしいからね」
千歌「……」
ヨハネ「『精々「今」は勝ち誇っていなさい。私が賭けたのはこの先の「未来」よ』」
ヨハネ「あの女が死に際に言い放ったセリフ。大口を叩いた割にはこのザマ、拍子抜けよね……未来を託した相手が他所の世界の人間なんて」ハァッ
ヨハネ「この世界に期待出来なかった、という点では私と変わらなかったってわけね」
曜「どういう意味さ?」
490 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/17(月) 23:57:16.06 ID:sdpHIkmp0
ヨハネ「リトルデーモンから色々と情報を集めたわ」
ヨハネ「どいつもこいつも『うちの国の方が歴史が古いから偉大だ』だの『文明の発展に貢献したのは我々だ』だの『我々こそが最先端を行く』だの……“自分の国こそが最も優れている”と思い込み、お互いを尊重する意識のカケラすら無かった」
ヨハネ「国のトップは多少歩み寄る姿勢は見せていたけど……大衆の意志に影響を与える事は決して無い。自分の側近すら変えられていなかったんですもの」
ヨハネ「口では達者な事を言っていた人間も潜在意識では同類だった。醜い争いを永遠と続けるくらいなら無くなった方がマシでしょう? お前達に未来なんて必要ない」
曜「……っ」
ヨハネ「っとまあ、それっぽい理屈は並べたけれど、この程度の問題なんてどの世界線も抱えているしもっと悲惨な世界も存在してたのよね」
千歌「じゃあ何で……」
ヨハネ「お前達は運が悪かったのよ。草むしりと同じ感覚ね。無数に存在する世界の中から偶然私の目に留まったのよ」
曜「それ、だけで……たったそれだけの理由で?」
ヨハネ「ええ、それだけで。それが私の役割だから」
曜「………」
千歌「………」
ヨハネ「―――さて、お喋りもここまで」ボッ!!
曜・千歌「「!?」」ゾッ
世界を一瞬で焼き尽くしたあの黒炎がヨハネの右手に集まる。
ヨハネ「私も暇じゃないのよ。庭に生えた雑草はまだまだ沢山あるからさ」
千歌「このっ!」
曜「……させるもんか」
ヨハネ「何?」
曜「何者であろうと誰かの未来を一方的に奪っていいはずがない! 例え、それが神様であってもだっ!」
ヨハネ「だったらどうするつもり?」
曜「……勝ち取るさ。世界の、私達の未来はこの手で勝ち取ってみせる!!」
ヨハネ「ふっ、ふふふふ……確かにそれ以外に方法は無い。でもそれは可能なのかしら?」
ヨハネ「お前はこれまでたった一度でも格上相手に勝った事があった?」
曜「……」
ヨハネ「―――ゼロ、ゼロよ! ただ一度の勝利もない!! これが現実。そして今回も例外じゃない」
曜「分かってないなぁ」
491 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/17(月) 23:59:57.67 ID:sdpHIkmp0
ヨハネ「はあ?」
曜「神様の癖に全然分かってない」
曜「パパが言ってたよ、本当の勝利っていうのは自分より格上の相手に勝つことじゃない」
曜「―――大切な人を守り抜いた時だってね!!」
ボオオッ―――!!
曜のリングから今までとは比べものにならない程の炎が噴き出す。
しかし、この炎はAqoursリングから出ていない。
梨子によって破壊され、ルビィと花丸が形だけ修復した形見のリングから出ている炎だ。
ヨハネは使えないはずのリングから炎が出ている事にも驚いたが、それ以上に衝撃を受けたのは炎の色だった。
千歌「綺麗な橙色……凄く温かい…」
ヨハネ「何故だ……何故貴様が大空の炎を出せる!?」
曜「さあね? 神様なら自分で考えなよ」
ヨハネ「……貴様ぁ」ギリッ
曜「千歌ちゃん、ここが正念場だよ。次の攻防で全て決まる」
千歌「うん……ただ、私が直接出来る事は何もないのが悔しいな……」
曜「じゃあさ、私の手を握って欲しいな」
千歌「手を? あ、確か体に触れてる方がより力が伝わるんだったよね!」
曜「ま、まあそれもあるけど……勇気を分けて欲しいなって思って」
千歌「!」
曜「これから使う技は心の状態が大きく影響するの。少しでも迷いもあったら多分ダメ」
曜「覚悟は出来てるつもりだったんだけどさ……まだ、ほんのちょっぴりだけ怖いの。もし次の攻撃から千歌ちゃんを守りきれなかったらって思ったら……」
―――ギュッ
千歌「大丈夫、出来るよ。曜ちゃんなら絶対に出来る」
曜「うん……」
千歌「世界がどうとか私がどうとかは考えなくていい。曜ちゃんは自分の未来の為に戦って」
千歌「私は曜ちゃんを信じてるから」ニコッ
曜「……はは、やっぱり千歌ちゃんは強いなぁ」
曜「―――ありがとう。勇気が湧いてきたよ」ニッ
492 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/18(火) 00:07:27.86 ID:3zeUavV40
ヨハネ「作戦会議は終わったかしら?」
曜「うん、バッチリね」ゴオオッ!!
黒と橙
二種類の炎が空間を奪い合うように燃え広がる。
一度辺りに拡散した炎は循環し、徐々に手の平へと集中、圧縮されてゆく。
夜の炎はより漆黒へ近づき
大空の炎はより透明度の高い蜜柑色へと近づいた。
『……き、こえる?』
曜「この声は……」
『返事は要らないわ、今曜の心に直接話しかけてる。そのまま聞いて頂戴』
……分かった。
『これから技の発動に必要な詠唱文を教える』
え、今時詠唱を使う技なの?
『記号化された魔法陣を伝えてもいいけど、ぶっつけ本番なら詠唱の方が発動出来る可能性が高い』
『……それに、こっちの方が展開的に燃えるでしょう?』
……えへへ、一理あるかな!
『さあ、行くわよ曜。私に続いて……声では無く心で、そして祈るように唱えなさい』
曜「……ふぅ」
曜は右手を突き出し、軽く目を瞑る。
曜「―――揺らぐ事無き聖なる想いが、あらゆる絶望を拒絶する」
曜「『夢』、『勇気』、『希望』、『覚悟』、我が想いに呼応し、四枚の花弁となりて迫り来る災を打ち払わん!!」
ヨハネ「何をしたところで無意味! 今度こそ魂すら消滅させてやる!!」キイイィィィィンン
曜「現出せよ―――」
ヨハネ「消え去れ―――」
曜「―――『擬/カランコエの花弁(モールド・アイアス)!!!!!』」
ヨハネ「―――『終焉の一撃(コルポ・フィーネ)!!!!』」
―――ゴオオオォォッ!!!!!
493 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/18(火) 23:17:50.80 ID:3zeUavV40
何もかも焼き尽くす漆黒の炎。
これを凌げる物質はこの世界には存在しない。
……だが、それは一般的な物理現象の話。
曜が作り出した蜜柑色の四枚の花弁は『心』そのもの。
穢れ、迷い、恐怖、不安。
その一切が無ければ傷一つ付かない完全無欠の盾となる。
曜「――――ああ、ぁあああああああ!!!!」
曜パパ『いいかい? リングの炎に必要なのは想いの強さだよ』
曜パパ『自分が心から守りたい、救いたいと思ったその時、そのリングは曜に力を貸してくれる。どんな強敵にも立ち向かえる勇気を与えてくれるんだ』
……へへ、本当だ……パパの言う通りだったよ。
これなら千歌ちゃんを守り切れそうかな。
千歌「ぐっ、ぐうぅぅ……よ、ようちゃん!!」
曜「……ねぇ! こんな時になんだけど聞いて欲しい事があるんだ!」
曜「千歌ちゃん前に私に謝ったよね?『自分のせいで私の人生をめちゃくちゃにしちゃってごめん』ってさ」
千歌「い、言ったけど……」
曜「……全くその通りだよ! 平凡だった私の世界はガラッと変わってさ……今は神様と戦ってるんだよ!? こんなの想像出来る? ほんっと予想外過ぎて訳が分からない!」
千歌「うぅ……」
曜「……でもね、謝る必要は全然無いよ。寧ろ感謝してる」
千歌「!」
494 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/18(火) 23:26:39.41 ID:3zeUavV40
曜「私さ、あの日あの砂浜で倒れてる千歌ちゃんを見つけた時、実はものすっっごーーーくワクワクしたんだ! この子と一緒ならきっと劇的な何かが起こる、根拠なんて何一つ無かったけどそんな予感がしたの……」
曜「そりゃ沢山痛い事や辛い事、悲しい事もあったし、死にかけた事だって何度もあった」
曜「……それでも、私は千歌ちゃんと出会った事を後悔した瞬間は一度だって無い!!」
千歌「……待ってよ、どうして今そんな事を……」
曜「千歌ちゃんと出会えて……本当に…心から幸せだった!」
千歌「いやだ……聞きたくない! そんな最期みたいなセリフ……っ!」
曜「あー……だよね、ごめん……どうしてもこれだけは伝えたかったからさ」
曜「―――ここでお別れだよ……役目は最後までちゃんと果たすから安心して」
千歌「一人にしないでよ!! 私が……私だけが残った所でどうしたらいいのさ……っ」
曜「大丈夫、千歌ちゃんの中に必要なものは全部揃ってる。あとは、ほんの少しの勇気だけ」
曜「私に分けてくれた勇気を自分に使えば、ね?」
千歌「ウソだよ……私には何も……」
曜「信じてあげて……自分だけの、千歌ちゃんだけの力をさ」
曜「――――――――……信じてるから」ニコッ
千歌「よ――――――――」
――――――――カッッ!!!!!
――――――――――――
――――――――――
――――――――
――――――
――――
――
495 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/22(土) 23:36:42.70 ID:7YKhWNNh0
ヨハネ「守り切った……か」
千歌「………うっ、うぅ」ポロポロ
曜は消滅した。
それでも彼女の強い想いが影響し
盾だけは今なお、傷一つ無い状態で残り続けている。
ヨハネ「今度こそ一人になったわね。あいつは必死になって守っていたけれど、『同調』しか使えないお前が残った所で何が出来るのやら」
千歌「……」
ヨハネ「大空の炎を使われた時は少し焦った。あれは私の夜の炎に対抗出来る数少ない炎の一つだからね。お前も大空のAqoursリングを持っているのは知っている。……それを使えないのもまたね」
千歌「……リング」ジャラッ
ヨハネ「もう諦めなさい。これ以上抗っても意味がない……奇跡は起こらない」
千歌「………」
496 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/22(土) 23:38:32.31 ID:7YKhWNNh0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜ある日の飛込み大会 選手控え室〜
曜『………』シャン、シャンシャン
千歌『よーちゃん! 応援に来たよ!』ガチャッ
梨子『ちょっ!? 他の選手も居るんだから静かに入らないと!』
千歌『ふっふっふ、この部屋に曜ちゃんしか居ないことは既に把握済みなのだ! だから大丈夫!』
梨子『あ、なら……って、それでも曜ちゃんに迷惑かけてるじゃない!』
曜『………』シャンシャン、シャン
梨子『……あれ? 曜ちゃん?』
千歌『目瞑って音楽聴いてて気が付いてないや』
曜『……ん』パチッ
曜『あっ! 千歌ちゃんに梨子ちゃん! 来てくれたんだね、ありがとう!』
梨子『ごめんね? 試合直前に押しかけちゃって……』
曜『いいよいいよ。二人の顔を見たらリラックス出来て緊張もほぐれるし』ニシシ
497 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/22(土) 23:42:47.91 ID:7YKhWNNh0
千歌『イヤホンから音漏れするくらいの大音量で何を聴いてたの?』
曜『Aqoursの歌だよ。最近の試合前は必ず聴いてるんだ』
梨子『Aqoursの?』
曜『飛込みの大会ってライブの時と違って一人じゃん? すぐ近くに励ましてくれる仲間が居ないから緊張と心細さで頭が真っ白になったり、逃げ出したくなったりしちゃう事が結構あるんだ』
梨子『ちょっと意外かも……何度も大会に出場してるから緊張には慣れっこだと思ってた』
曜『そうでもないよ。前までは無理矢理にでも奮い立たせて飛込み台に向かってた。でも今は違う』
曜『歌詞が、メロディーが、歌声が……弱気な私に勇気と力を与えてくれる。「何でも出来るぞー!」、「今の私は無敵だぞー」って気持ちになれるんだ!』
梨子『勇気と力を与えてくれるその歌、曜ちゃんも歌ってるけどね』フフッ
曜『まあね』アハハ...
千歌『ちなみに、今はAqoursのどの曲を聴いてたの?』
曜『ええっとね……あ、これこれ!』ポチポチ
曜『――――この曲だよ!』
498 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/22(土) 23:46:48.43 ID:7YKhWNNh0
――――――――――――
――――――――――
――――――――
――――――
――――
――
千歌「―――勇気を…出して………みて。本当は……こ、わい、よぉ……」
ヨハネ「なんだ…? 技の詠唱……?」
千歌は歌う。
敵は簡単に世界を消し去るほどの圧倒的な力を持つ。
頼れる仲間はもういない。
それでも自らを奮い立たせる為、今にも消えそうな震える声で歌う。
千歌「―――…強さを、くれ……たんだ……あきらめ……なきゃ、いいん……だ」
ヨハネ「違う……これは“歌”か」
千歌「何度だって……追い、かけ、ようよ……負けない……でぇ……」ポロポロ
ヨハネ「……無駄だ。仮にそれが技の発動のトリガーだったとしても、リングに炎が灯らなければ発動しない」
千歌「……う、う…うぅ………」ポロポロ
……ヨハネの言う通りだよ。
私は一度だってリングに炎を灯せていない。
この世界の住人じゃない私じゃ……無理だったんだよ。
曜『―――千歌ちゃんと出会えて……本当に…心から幸せだった!』
499 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/22(土) 23:48:09.30 ID:7YKhWNNh0
千歌「………ぃ」
花丸『――何も言わずに居なくなった友達を連れ戻す。それがマルの夢ずら♪』
千歌「………エナイ」ボソッ
ヨハネ「ん?」
ルビィ『―――またお姉ちゃんの笑顔が見たい。……叶う、かな?』
千歌「………消えない」ボソッ
果南『―――いつかもう一度、ダイヤと一緒に冗談を言い合ったり笑い合ったり……そんな当たり前だった日常を取り戻す。これが私の夢かな』
千歌「………夢は、消えない」
曜『――――――信じてるから』
千歌「――――――夢は消えない……消させない!!!!」
500 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/22(土) 23:49:27.17 ID:7YKhWNNh0
涙を拭い、拳を固め、再び立ち上がる。
力強く。
ヨハネ「………」
千歌「そうだ……ここで諦めたら今度こそ何もかも終わっちゃう!! そんなのはダメだ!!」
千歌「だって私が……最後の希望なんだから!!!」
ヨハネ「……それで? いくら粋がったところで、貴様ではこの状況をひっくり返すことは出来ないだろ?」
千歌「……曜ちゃんが『信じてる』って言ってくれた」
ヨハネ「は?」
千歌「私の大切な人が信じてるって言ってくれたんだ。命を賭けて守ってくれた。希望を託してくれたんだ! 諦めるわけにはいかない」
ヨハネ「……くだらない。リングに炎すら灯せないお前に、一体何が出来る?」
千歌は首にぶら下げていたチェーンを引きちぎる。
そして大空のAqoursリングを右手の中指にはめ込んだ。
ヨハネ「無駄だ。体の構造が異なるお前にそのリングに炎を灯すのは不可能だ」
千歌「……いいや、そんな事は無い」
ヨハネ「何?」
――ボオオッ!!
ヨハネ「!?……橙の、炎…だと!?」
千歌「……私の中には鞠莉ちゃんの魂が宿っている。曜ちゃんが『同調』で大空の炎が使えたのなら、宿主の私だって使えても不思議じゃない」
千歌「私に足りなかったのは勇気……誰かの為に、例え一人でも立ち向かおうとする勇気が足りなかったんだ」
ヨハネ「この土壇場で……っ」
501 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/22(土) 23:51:09.99 ID:7YKhWNNh0
ヨハネ「―――だが、お前は技どころか匣兵器すら持っていない。ほぼ丸腰状態でどう戦う!?」
千歌「技ならある。とっておきのものが一つだけね!!」
ヨハネ「何ぃ?」
……ウソ、今のはただのハッタリ。
それでも私が技を使える可能性はゼロじゃない。
果南ちゃんや花丸ちゃん、他のみんなは知らなかった。
曜ちゃんだけが知ってた裏ワザ。
鞠莉ちゃんが知っていたかは分からない。
けれど、もうこの方法に賭けるしか無い!!!
千歌「お願い鞠莉ちゃん……力を貸して………ッ!!!」
曜が独自に見つけた魔法陣を一つだけ記憶させる事が出来るリングの隠された特性。
もし鞠莉もこれを知っていれば、何らかの魔法陣を記憶させている可能性がある。
どんな魔法陣を記憶させているのか?
この状況をひっくり返せる技なのか?
そもそもこの裏ワザを鞠莉が知ってるのか?
全て賭けである。
千歌はリングをはめた手を高らかに振り上げ、力の限り叩きつける。
千歌「はあああああああ!!!」バンッッ!!!
――――キイイィィィィンッ!!!
叩きつけた手のひらの前方に眩い光を放ちながら魔法陣が生成される。
ヨハネ「は、発動した……っ!?」
502 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/22(土) 23:54:10.18 ID:7YKhWNNh0
千歌「ぐぅ、何も見えな……」
光で視界がハッキリしないが
光の中、魔法陣の中心付近に黒い影が見える。
影の大きさからそれは人型の何かだった。
カツン……カツン……
千歌「……? 足音?」
「―――確かにヨハネの言う通り、何もしなければ奇跡は起こらないわ」
千歌「!?」
「それはどんなに無様でも、見苦しくても、不恰好でも……足掻いて足掻いて足掻いて、それでも足掻き続けた者だけが最後に掴み取れる」
ヨハネ「その声……その姿……貴様は……っ!」
鞠莉「……奇跡は起きるものじゃない、起こすものだから!」
503 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 17:22:28.21 ID:iHDRX92w0
千歌「……ま、りちゃん……鞠莉ちゃん!!!」
鞠莉「やっと会えたわね……千歌っち♪」
ヨハネ「馬鹿な……貴様はこの手で確実に殺したはず!?」
鞠莉「ええ死んでるわ。千歌っちの技で生き返ったの」
鞠莉「使用者と強い絆で結ばれた者を死後の世界から再び現世へと転生蘇生させる技よ」
ヨハネ「転生、蘇生……だと!? そんな技がこの世界に存在するはずが無い!!」
鞠莉「当然よ。だってこれは私、歩夢、雪穂の三人がそれぞれが持つ、過去と未来、無限に広がる世界線に干渉する能力を掛け合わせて生み出した新技だもの」
ヨハネ「三人の能力を掛け合わせた技なら何故、高海千歌一人で……っ!?」
鞠莉「……これ、なーんだ?」ジャラッ
ヨハネ「……音ノ木坂を虹ヶ咲のリング……っ、まさか」
鞠莉「そ、死の直前に歩夢が発動させた技で私達三人の魂は融合したのよ。千歌っちの中に融合した私達が宿っていたからこの技が発動した」
鞠莉「三人の中で誰が表に出るかは不確定だったけど……誰が出てもヨハネを目的は変わらなかったから問題無かったしね」
千歌「鞠莉ちゃん……なんだよね?」
鞠莉「Of course♪ 初めましてのはずなんだけど、もっと昔から仲が良かった感じがするわね!」ニコッ
千歌「……なんだろ、今までこの世界で会って来たメンバーと何か違うような……」
千歌「ううん、違うっていうのは正しくない、私が知ってる鞠莉ちゃんの姿そのものなんだよ……服も浦の星の制服だし」
鞠莉「その認識で間違っていないわ。千歌っちのイメージから生成された小原鞠莉の体に、この世界の私の魂が入っているんだもの」
鞠莉「だからまた全盛期の若い体になってと〜〜っても気分がいいわ♪ 十代って素晴らしい!!」ニコニコ
千歌「あはは……私の知ってる鞠莉ちゃんと全然変わらないや」
504 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 17:25:39.97 ID:iHDRX92w0
ヨハネ「小原鞠莉……貴様が生き返ったのは想定外だが、何も問題は無い」
鞠莉「……む」
ヨハネ「女王である貴様は戦闘に特化した技を持ち合わせていない。私の攻撃を防ぐ事は出来ても、倒す事は出来ない!」
千歌「そ、そうなの?」
鞠莉「ええ。敵の迎撃はもっぱら守護者に任せていたから、私はそれを補助する技しか習得してないわ」
千歌「うそおぉ!? じゃあどうやってヨハネを倒すのさ!!?」
鞠莉「まあそう焦らないで。力が足りないなら他で補えばいいのよ」
鞠莉「……それは道具でもいいし、頼れる仲間でもいい」
千歌「仲間……それって……っ!」
鞠莉「炎の残量的にあと二人転生蘇生出来るわ」
千歌「!」
鞠莉「転生蘇生人間の条件は二つ、“その者と強い絆で結ばれている事”と“この世界に存在していた人間である事”よ」
千歌「だったら……っ!」
鞠莉「多分千歌っちは真っ先に曜を候補に挙げたと思うけど、曜は条件の後者に該当しない」
千歌「なんで!?」
鞠莉「曜の存在は、先のヨハネの攻撃を喰らった影響で生きていた痕跡を完全に抹消された。呼び出す魂が無ければ蘇生出来ない」
千歌「じ、じゃあ……曜ちゃんはもう……」
鞠莉「大丈夫、曜の事は後で何とかなるわ。その為にもヨハネをここで倒さないといけないけどね」
ヨハネ「ハっ! 私を倒すなど不可能よ!」
ヨハネ「技の起点となっている高海千歌を消せば貴様も共に消える! それでジ・エンドよ!!」
真上に突き上げた右手に夜の炎が再び集中し始める。
それは巨大な火球となり二人をまとめて消し去るには充分の威力を秘めている。
鞠莉「攻撃が来るわ!」
505 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 17:28:30.21 ID:iHDRX92w0
千歌「鞠莉ちゃんの技で防げないの!?」
鞠莉「私の技で防ぐには規模がデカすぎる。確実に相殺出来るかビミョーね」
千歌「じゃあどーするのさ!?」
鞠莉「あれを一撃で相殺する事が出来て千歌っちと強い絆で結ばれている仲間……そんな人なんて限られているわ」
千歌「で、でも……その人とはこの世界ではそこまで……」
鞠莉「それを言ったら私だってそうでしょう? 転生蘇生に必要な絆の力は元の世界のものが適応される! 無数に存在する世界で私達と強い絆で結ばれた人間は唯一あなただけ。だから千歌っちを選んだ!!」
千歌「来てくれる、かな……?」
鞠莉「信じなさい……あの子なら、きっと来てくれるから!」ニコッ
千歌のリングに炎が灯る。
そして、もう一度地面を叩く。
鞠莉の言葉を、自分が築いてきた絆を信じて……。
千歌「お願い、来てっ!!!」カアァァッ!!!
ヨハネの攻撃と同時に二つの魔法陣が展開される―――――。
「―――――――『絶対零度(ズェーロ・アッソルート)!!!!』」
火球は一瞬で凍結
運動エネルギーを失い、そのまま落下した。
「―――ひゅ〜〜、流石だね。あの規模の炎を一瞬で凍らせちゃうなんてさ」
「褒めても何も出ませんよ。そもそも、あなたがもっと早く動けば無駄な力を使わずに済んだのですがね……」
「そんな事言われもさぁ……まさか右手の力が標準であるとは思わないじゃん?」
「ヘルリングも同じ人間に三度も使われるとは予想外だったのでしょう。体が呪いに打ち勝ったのとだと思いますよ」
「嬉しい誤算だよ」ニヤッ
魔法陣から現れたのは浦の星女学院の制服を着た二人の少女。
一人は美しい青い髪の長いポニーテール。
もう一人は黒髪ロングの痩躯の麗人。
絶望的な状況は変わらないが
その後ろ姿と声を聞いて、千歌と鞠莉は思わず笑みがこぼれてしまう。
506 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 17:31:11.59 ID:iHDRX92w0
千歌「ああ……良かった、本当に来てくれたんだね……」ポロッ
鞠莉「―――ダイヤ、果南!」
果南「……久しぶり、鞠莉」
ダイヤ「お互いに随分と若い姿になりましたわね」フフ
鞠莉「さあ! Come on、二人とも!」バッ!!
果南「……はい?」
ダイヤ「あの、鞠莉さん? 何故、両手を広げているのです?」
鞠莉「……あ、あれ? 感動の再会で泣き崩れる二人をハグするつもりだったんだけど……意外と冷静?」
ダイヤ「……馬鹿なのですか? 状況を考えなさい状況を!」
果南「再会を喜ぶのは後回しかな。……よっ!!!」キュイィィン!!
果南はヨハネからの横槍を右手で難なく打ち消す。
果南「油断してると思った?」
ヨハネ「チッ、しっかり警戒してるか」
鞠莉「全く……空気読めないわね、アイツ」ハァ
ダイヤ「当然の攻撃です。わたくしが敵でも同じ事をしていますわ」
鞠莉「ダイヤ……嫌な奴になったわね。その考え方は嫌いよ」
ダイヤ「んなっ!?」
果南「鞠莉が知らない間にダイヤは変わっちゃったからさ……あの頃の清純なダイヤはもういない」
鞠莉「そうね、あの頃のダイヤはもっと……ん? そもそもダイヤって昔からこんな感じゃなかったっけ?」
ダイヤ「氷漬けにしてやりましょうか? ええ?」ニコニコ
千歌「悪ふざけしてる場合じゃないのに……」
鞠莉「さてと……挨拶はこのくらいにして、そろそろ始めないとね」
鞠莉「果南とダイヤは好きなように暴れなさい。私が後方でバッチリ援護する! 千歌っちは辛いとは思うけど、全力で炎を灯し続けて!」
千歌「私が三人の炎の供給源になってるから、だよね? 任せて! 絶対に……死んでも炎は消さないから!!」
507 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 23:14:21.54 ID:iHDRX92w0
鞠莉「理解してるならそれでいいわ!」
果南「……ふふふっ」
ダイヤ「何を笑っているのです?」
果南「だってさ……私達付き合いは長いけど、こうやって肩を並べて戦う機会って一度も無かったじゃん? だから嬉しくなっちゃって」エヘヘ
ダイヤ「……ふっ、精々足を引っ張る事は無いようにお願いしますね」
果南「そっちこそ、女王様特有の慢心であっさりやられないでよ?」
「「「―――形態変化(カンビオ・フォルマ)!!!」」」
三人はAqours匣を開口、専用武器が出現し、『MIRAI TICKET』衣装へと換装した。
ダイヤは日本刀型の匣兵器『時雨』
鞠莉は両手首に補助装置の『ブレスレット』
果南は左手から腕まで覆う『ガントレット』
果南「初めて装備したけど、長年使い込んだみたいにしっくりくる」
ダイヤ「驚いた……この匣兵器は曜さんが使っていたので、それ相応の調整がしてあると思っていたのに……」
果南「匣兵器の調整が出来るような技術者は居なかったからさ」
ダイヤ「全く手を加えずにあれだけの……っ! つくづく恐ろしい子ね……わたくしを追い詰めただけの事はありますわ」フフ
鞠莉は果南とダイヤの背中に手を当てる。
二人の体に橙色の炎がオーラの様に薄っすらと纏わりつく。
鞠莉「身体のリミッターを外した。今なら100%の力を発揮出来るわ」
果南「死ぬ気弾の効果と似てるね」
ダイヤ「身体へのリスクとタイムリミットは?」
鞠莉「私が二人に使う技にリスクはなんてあるわけ無いわ」
果南「サラッととんでもない事を言い切るな……」
鞠莉「タイムリミットは千歌っちの炎……正確には千歌っちの中に居る私と歩夢、雪穂の炎が尽きるまでよ」
ダイヤ「もっと具体的に!」
鞠莉「どう、千歌っち?」
508 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 23:17:44.54 ID:iHDRX92w0
千歌「感覚になっちゃいますけど……多分さっきダイヤさんが使った技を連続で二回使ったら空っぽになると思います」
ダイヤ「それが分かれば十分ですわ」カチャッ
ダイヤは刀を構える。
『時雨』の刀身は美しい蒼炎色を放つ。
この匣兵器は元々ダイヤ専用に調整されたもの。
それを曜が使用していたのだから、多少は改造されていて当然だと踏んでいた。
しかし、実際には調整など全くされていなかった。
それでも曜はこの匣兵器の性能を十二分に引き出していたのだ。
その適応力にダイヤは感嘆したのだ。
ダイヤ「わたくしも負けていられませんわね。曜さん以上に使いこなせねば黒澤家の名が廃りますわ!」
果南も鞠莉の技に上乗せする形で自身の技である『最高の輝き(ラスト・サンシャイン)』を発動。
鞠莉の補助により『最高の輝き(ラスト・サンシャイン)』の欠点である身体への負荷は完全克服している。
ガントレットで手を覆っているのでリングが砕ける心配は不要。
全力で殴っても体が自壊することは無い。
解除後に寿命で力尽きる事もない。
その肉体はあらゆる逆境を砕き、明るく照らす日輪となる。
果南「うん、最高のコンディション……負ける気がしない!」
鞠莉「さあ、二人とも……思う存分暴れて来なさい!!」
果南・ダイヤ「「ッッ!!!」」ダッ!!!
走り出す二人。
それに対してヨハネは夜の炎を弾丸状にして掃射する。
果南は強化された反射神経で体に当たる炎だけを正確に右手で打ち消す。
一方、ダイヤは防御の姿勢を全く見せない。
このままでは直撃は免れない。
千歌「ダイヤさん!?」
鞠莉「大丈夫よ、ダイヤは既に型に入ってる」
ダイヤ「――――守式四の型 『五風十雨』」
迫り来る攻撃の呼吸に合わせ、高速で躱す。
鞠莉の補助とAqours匣の相乗効果で弾丸程度の速度なら当たる事は無い。
千歌「速すぎて残像が出来てる……っ!」
509 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 23:25:27.79 ID:iHDRX92w0
鞠莉「あの程度の攻撃なら止まって見えるでしょうね」
ヨハネ「クッ、範囲攻撃じゃ陽動にもならないか!」
最短距離で突っ込んで来た果南が拳の届く範囲まで接近。
果南「うりゃああ!!!」ブウゥン!!
果南の右ストレート。
ガントレットが装備されてない右手だが、夜の炎の影響を全く受け無いでダメージを与えられる。
翼で防げば打ち消され、腕で防げば最低でも骨折。
ヨハネは『瞬間移動(ショートワープ)』で躱す。
ダイヤ「ええ、あなたならそう避けるでしょうね」
ヨハネ「!?」ゾッ
ワープで移動した先には刀による突進攻撃
攻式 一の型 『車軸の雨』を繰り出すダイヤが居た。
想定外の攻撃に回避は間に合わず、翼による防御で軌道を変え、致命傷だけは防ぐヨハネ。
ダイヤの攻撃はこれで終わらない。
ダイヤ「――――『車軸の雨』から攻式 五の型……」
ヨハネ「追撃ッ!」バッ!
ダイヤの手の動きから次の斬撃の軌道を予想。
翼による防御体勢を整えた。
ヨハネ「……はぁ?」
……が、斬撃は来ない。
翼の手前を素早く手が横切っただけ。
ダイヤは直前まで左手に持っていた刀を空中に置き去りにし、右手に持ち替えたのだ。
相手の守りのタイミングを狂わせ、変幻自在の斬撃を放つ攻式の型。
ダイヤ「――――『五月雨』」
ズバッ!!!
ヨハネ「うぐうぅッ!!!?」
ダイヤ「……浅いか! ギリギリで後ろに飛んで避けられた!!」チィッ
ヨハネは一旦『瞬間移動(ショートワープ)』でダイヤの斬撃が届く範囲から脱出を図る。
ダイヤ「……移動範囲は自身を中心に半径三メートル、ですね」ニヤッ
ダイヤ「―――果南さん!!!」
510 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 23:26:58.36 ID:iHDRX92w0
果南「……ふっ!!!」ゴオオッ!!
攻撃準備を完了している果南が待ち構えていた。
左の拳に炎を集中させている。
ヨハネ「果南ッ!? 何故移動先に居る!!?」
反射神経が良いとか勘が鋭いとか、そんなんじゃない。
移動先を完全に読まれている……?
ヨハネ「……違う、私が誘導されていたのか!」
ダイヤ「ご名答ですわ」ニコッ
果南「ぶっっっ潰れろおおぉ!!!!」
ヨハネ「ッッッッ!!!!!?」ミキミキミキッッ!!!
巨大な氷塊を一撃で粉々にした拳がヨハネの頬を捉えた。
鼓膜が破れんばかりの爆発音と共にヨハネは地面に叩きつけられ、小規模のクレーターを作る。
ほんの一瞬だけ意識が飛んだヨハネだが、すぐにワープで距離を取った。
果南「むっ、手ごたえアリだったんだけど……意外と硬いな」
ダイヤ「いいえ上出来ですわ。見なさい、相当のダメージを与えられている」
ヨハネ「ゼェ、ゼェ……き、貴様……『瞬間移動(ショートワープ)』の間合いを……ッ」
ダイヤ「このわたくしが曜さんと梨子さんの戦いをただ眺めていただけだとお思いで? じっくり観察させて頂きましたわ」
ヨハネ「だとしても、その情報は果南に伝えて無かったはずだ! なのに何故あれだけの連携を……っ」
ダイヤ「この程度、一瞬のアイコンタクトで充分可能ですわ」
果南「そーゆー事」コキッ、コキコキッ
ヨハネ「こ、この私が人間ごときに……ッ」ギリギリッ!!
ダイヤ「鞠莉さん、千歌さん! 次の攻撃でケリをつけます。もっと炎を回してもらっても構いませんか?」
千歌「勿論です!」
ヨハネ「調子に乗るな!!」
ヨハネの六枚の翼が数倍の大きさに膨張。
ダイヤは『時雨』で、果南は右手で咄嗟に防御体勢を取る。
二枚の翼はそれぞれの足元へ振り落として動きを制限させ、残り全てが鞠莉と千歌に向けて薙ぎ払われた。
千歌は曜が残した盾の後ろに居るが、この攻撃はその盾を避けるように多方向から襲い掛かって来ていた。
鞠莉「―――――『カランコエの花(アイアス)!!!』」
鞠莉は襲い掛かってくる全ての翼に対して、同様の盾を瞬時に展開させた。
ヨハネ「……」
鞠莉「安直な攻撃ね? 力の供給源である私達の守りが甘い訳無いじゃない」
鞠莉「そして、今の攻撃で決定的な隙が生まれた」
511 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 23:30:17.62 ID:iHDRX92w0
ダイヤ「―――――――『絶対零度(ズェーロ・アッソルート)』」パキッ、パキパキッ
注意が逸れた瞬間に大技を発動する準備を整えていたダイヤ。
仮に『瞬間移動(ショートワープ)』を使用されても逃さぬよう、ヨハネの周囲数メートルを瞬く間に凍らせた。
一度氷河の炎で凍らされた者は自力でその氷を溶かす事は決して出来ない。ヨハネの動きは完全に―――。
―――果南はヨハネの攻撃に違和感を覚えた。
当たれば即死なのは変わりないのだが、これまで使用された技と比較すると威力が極端に弱い。
鞠莉に軽々防がれるのは容易に予想出来る。
ヨハネにしては明らかにお粗末な攻撃。
果南「……ッ!? ダイヤ!!!」
ダイヤ「い、居ない……っ、氷の中にヨハネの姿がッ!!?」
果南「まさか―――――――」バッ!!
二人は鞠莉と千歌のいる方向を向く
『瞬間移動(ショートワープ)』
自分の体を目視出来る場所へ一瞬で移動させる技。
場所と場所を『線』ではなく『点』で結ぶので移動中に外部から影響を受ける心配は無い。
移動距離が長いほど発動までにタイムラグが生じ、三メートルの移動には発動から移動完了まで約0.5秒。
ダイヤが予想した移動可能範囲は正確では無い。
この技は体に大きな負荷が掛かる。
果南の『最高の輝き(ラストサンシャイン)』と同等かそれ以上の負荷だ。移動距離が伸びれば伸びるほど反比例して増加する。
三メートルとは移動出来る限界値では無い。
ヨハネが安全が保障される距離である。
リスクを度外視すればいくらでも距離は伸ばせるのだ。
ヨハネと千歌との距離はおよそ15メートル。
タイムラグは2.5秒。
ヨハネの致命的な隙を生んだと思われた攻撃は発動までのタイムラグを稼ぐ為のもの。
ヨハネ「――――神はサイコロを振らない。始めからこうすれば良かったのよ」
千歌「………えっ?」
千歌と盾の丁度中間地点
ヨハネはそこに移動先を設定した。
反動で全身ズタボロの状態になっているが、丸腰の千歌を殺すには影響は無い。
ヨハネ「発動者のお前を殺せば三人も消える。馬鹿正直に相手をする必要は無いのよ」
512 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 23:33:33.48 ID:iHDRX92w0
ダイヤ「こ、の………ッ!!!」ゴオオッ!!
この愚か者ッ!
どうして移動範囲が三メートルだけだと決めつけた!?
慢心するなと果南さんに忠告されたではありませんか! なんて無様な失態ですの……っ!?
果南「ちかあああぁぁッ!!!!!」ダッ!!!
この距離、最大出力で何秒掛かる?
三秒? 二秒?
ダメだ全然間に合わない!!
……間に合わない?
違う、間に合わせるんだ!!!
千歌は絶対に死なせない!!!
鞠莉「……ち、か!!!」ボオッ!!
ダイヤと果南は間に合わない。
だから一番近くに居た私が何とかしなきゃならない。
でも……この大馬鹿は完全に油断してた!!
ヨハネはちょっと手を伸ばせば千歌っちに届く位置に居る。
私も隣に居るけど驚いて反応が一瞬遅れた!!
技で防ぐ時間は無い。
ギリギリ突き飛ばして身代わりに……!?
ヨハネ「もう遅い手遅れだ!」
千歌「ヨ、ハネ……っ!」
ヨハネ「これで……終わりよ!!!」
ヨハネは夜の炎を纏わせた右手を伸ばす。
触れれば即死。
千歌に防ぐ術は何も無い。
……ああ、なんて呆気ない最期だ。
せっかくダイヤさんと果南ちゃん、鞠莉ちゃんが協力して勝てそうだったのに。
私が不甲斐ないせいで台無しにしちゃった……。
ごめん、みんな……
ごめん、曜ちゃん………ごめんね。
死を悟った千歌は思わず両目を強く瞑った……。
513 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 23:38:56.15 ID:iHDRX92w0
―――ジャラジャラジャラッッ!!!
千歌「……………ぅ?」
……どれだけ待っても死が訪れない。
恐る恐る目を開けてみると
体中を鎖で縛り付けられ、自由を封じられたヨハネの姿があった。
ヨハネ「……な、にいぃ……!?」ギチッ、ギチギチ
千歌「止まった……?」
ヨハネ「た、盾から……盾から鎖が発生した、だと!??」
千歌「こ、これって……曜ちゃんの技じゃ……」
果南「何で曜の技が発動したの……? だって曜はもう消滅して……」
ダイヤ「……あぁ、そういう事ですか」
鞠莉「ぷっ、あははははははは!! 曜、全くあなたって子は……死してなお、使命を全うしたのね」
ヨハネ「どういう事だッ!!?」
鞠莉「……あなたの炎は曜をこの世から消す事は出来たけど、『千歌っちを守る』強い想いまでは消せなかった」
果南「曜の想いが具現化した盾だから発動者の死後もその効果は続いて……」
千歌「……ははっ、やっぱりよーちゃんは凄いや……感謝しても仕切れないよ……」グスッ
ヨハネ「バカな……こんな、事が……ッ」
ダイヤ「強い願い、強い想い、強い祈りは必ず届く……か。曜さん、お見事ですわ」
鞠莉「喜びなさい、曜……これはあなたの勝利よ。まさか初勝利の相手が神だなんてね夢にも思わなかったでしょうね」フフッ
間もなく、駆けつけたダイヤによってヨハネは体、精神共に完全に凍結。
こうして、世界の命運を賭けた戦いに終止符が打たれた。
514 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 23:41:07.72 ID:iHDRX92w0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
千歌「これで全部終わったんだね……全部」
果南「最終的には勝てたけれど、失ったものが多過ぎる……」
ダイヤ「わたくし達以外は全員死亡しています。この先どうすればいいのか……」
鞠莉「心配には及ばないわ。ヨハネさえどうにかすれば、後はなんとでもなるから」
千歌「そう言えばあの時も似たような事を言ってたよね?」
ダイヤ「何をするつもりですの?」
果南「私達を生き返らせた技を全員に使うとか?」
鞠莉「それは無理。蘇生させるにも、それを維持するにも莫大な炎が必要だし、発動者の千歌っちが一生帰れなくなっちゃうわ」
千歌「……帰る? またみんなの所に帰れるの!?」
ダイヤ「本当に言っていますの? 別世界から呼び寄せる技は存在しますが、こちらから送る技が存在していた記憶は無いのですが?」
鞠莉「ええ、無いわ」
千歌「えっ」
鞠莉「仮にそんな技があったとしても、この世界で過ごした時間と同じ分だけ向こうの時間も進んでいる」
果南「あ、それだと千歌は半年近く行方不明の状態なのか」
鞠莉「私の勝手な都合で千歌っちの大切な時間を奪うなんてNo goodデース」
ダイヤ「まさか、時を巻き戻すなんて馬鹿げた事を言うつもりじゃ……」
鞠莉「大当たり♡」
ダイヤ「………」
果南「ダイヤが絶句してる」
鞠莉「正確には、雪穂の『過去』を司る能力を応用してヨハネをこの世界から追い出す。この過程で千歌っちを元の世界に送り届けるわ」
千歌「ん? んんっ?」
鞠莉「ヨハネの存在を過去に遡って無かった事にするのよ。そうする事でこの世界を『ヨハネが居なかった世界』へと再構成させる」
鞠莉「ヨハネが居なければ雪穂や歩夢やその守護者、その他大勢の人が死ぬ事も、ダイヤが最低最悪の女王として君臨する事も、私が千歌っちをこの世界に呼び寄せる事もない」
ダイヤ「タイムパラドックスってやつですわね」
515 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 23:47:02.99 ID:iHDRX92w0
鞠莉「これで千歌っちから奪ってしまった時間を丸々返せるって算段よ」
千歌「それは嬉しいんだけど……それって、ここでの思い出も無かった事になるんじゃ……」
鞠莉「Oh……勘が鋭いわね」
鞠莉「恐らく、長い夢を見た時と同じ感覚になるでしょうね。目覚めた瞬間はなんとなく覚えているけど、すぐに全部忘れちゃうと思う」
千歌「……せっかくこの世界でもみんなと仲良くなれたのに……全部消えちゃうなんて嫌だよ……」
果南「心配しなくたって消えないよ。例え記憶に残らなくたって心にはちゃんと残るさ。曜の強い想いがそうだったみたいにね」ニコッ
千歌「果南ちゃん……」
果南「それで、私達も同じように忘れちゃうの?」
鞠莉「私が技を発動した瞬間、この世界は数年前ヨハネが現れた瞬間から今日までの日々をすっ飛ばして再構成される。二人は今までの事を全部覚えているけど、それ以外の全員は二人とは違う時間を過ごしているから何も覚えていない」
果南「なるほど」
ダイヤ「……鞠莉さんはどうなるのです?」
鞠莉「ん?」
ダイヤ「これだけ世界に影響を与える技なのです……使用者の鞠莉さんに全くリスクが無いとは到底思えない」
鞠莉「……」
ダイヤ「答えなさい。鞠莉さんにはその義務があります」
果南「どうなの、ダイヤ?」
鞠莉「……ま、黙っていてもすぐにバレちゃうもんね」
鞠莉「この技の代償は“私の存在”よ。ヨハネと共に私はこの世界に最初から居なかった事になるわ」
ダイヤ「……え」ゾッ
千歌「最初からって……どこから?」
鞠莉「言葉の通りよ、生まれた事自体が無かったことになる。過去に存在しないのだからタイムパラドックスを起こしても私は生き返らないし、誰の記憶にも残れない」
ダイヤ「そんな……鞠莉さんはそれでいいの!?」
果南「誰の記憶にも残らないなんて……そんな、あんまりだよ……っ」
鞠莉「ああ、果南とダイヤの記憶にはバッチリ残るわよ?」
果南「へっ?」
鞠莉「だから後でバレるって言ったの。言わなかったせいで二人に闇落ちされてもシャレにならないし」
果南「……な、なんで平気な顔してられるの? 記憶に残らないなんて死ぬより悲惨じゃん!?」
鞠莉「んー……二人の中には確実に残るからだと思うな」
鞠莉「果南とダイヤ、大好きな二人に覚えていてもらえるなら……私はそれで満足っ」ニコッ
果南「………っ」
鞠莉「って事だから、浦の星王国の女王は任せ―――」
516 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 23:50:14.93 ID:iHDRX92w0
ダイヤ「無理です……わ」
鞠莉「ダイヤ?」
ダイヤ「無理です……実際に女王をやってみて痛感しました……私では遅かれ早かれ国を滅ぼしてしまいます」
ダイヤ「私は鞠莉さんの代わりにはなれない……っ」
果南「……」
鞠莉「ダイヤ……」
千歌「―――大丈夫だと思いますよ」
ダイヤ「気休めは止してください」
千歌「気休めなんかじゃないです! 確かに、これまでのダイヤさんのやり方は最善じゃなかったし、周りからの評価も悲惨なものだった」
千歌「……それでも、根底にあったのは鞠莉さんと同じ『国を守りたい』という純粋な想いだったはずです」
ダイヤ「……っ!」
千歌「今までの選択がどれだけ間違いだらけだったとしても、その想いだけは決して間違いなんかじゃない。今のダイヤさんならきっと大丈夫」
千歌「……私はそう思います」
ダイヤ「……千歌さん」
鞠莉「ダイヤに失敗した自覚があるなら問題無い。幸運にも今回はやり直せるのだから、この経験を活かしなさいな」
果南「仮にまたダイヤが間違えたとしても、私がぶん殴って正してあげるからさ。安心して間違いなよ」ニッ
ダイヤ「……それは勘弁して欲しいですわね」
鞠莉「――――さてと、名残惜しいけれどそろそろ始めましょうか」
鞠莉「千歌っち、大空のAqoursリングを渡して頂戴」
千歌「分かった」
鞠莉「Thank you♪」
517 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 23:53:02.37 ID:iHDRX92w0
ダイヤ「音ノ木坂、浦の星、虹ヶ咲の三つのリングが揃った」
鞠莉「このままヨハネに触れて技を発動させる。目が覚めれば新しい世界、元の世界に帰っているわ」
千歌「これで本当にお別れなんだね……」
鞠莉「千歌っち……怖い思いも痛い思いも沢山あったよね……私の勝手な都合でこんな事に巻き込んじゃってごめんなさい」
ダイヤ「わたくしからも謝罪します……申し訳ございませんでした」
千歌「……うん、いいよ、二人共許してあげる。ダイヤさんも立派な女王様になってね」
鞠莉「優しいわね……ありがとう」
ダイヤ「……ええ、善処しますわ」
果南「千歌……ありがとう。そっちの私にもよろしくね? ……覚えて無いと思うけどさ」アハハ
千歌「……果南ちゃんもありがとう。果南ちゃんが味方で本当に良かった! ルビィちゃんや花丸、よしみさんによろしく伝えて置いて!」
果南「うん、任せてよ♪」
―――ボオオォッ!!!
鞠莉「始めるわよ」
千歌「……うん」
ダイヤ「あっ……体が透けて……」スウゥゥ
果南「いよいよって感じだね」
千歌「あ……れ………い、意識が………だん、だん………」ウトウトッ
――――――――果南、ダイヤ、千歌……ありがとう! ………元気でね!
518 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 23:54:28.77 ID:iHDRX92w0
――――――――――――
――――――――――
――――――――
――――――
――――
――
「………歌………ん?」
「……ーい………千……!」
「おーい、千歌ちゃーーん」ペチペチ
千歌「……ん」パチッ
曜「やっと起きた。爆睡だったね」
千歌「……ここは?」
曜「バスの中だよ。寝ぼけてる?」クスクス
千歌「バス……ああ、そっか……戻って来れたんだ!」
曜「戻る? どこから??」
千歌「どこからって……あれ、どこからだろう?」
曜「もう、やっぱりまだ寝ぼけてるね」
千歌「なんだろう……凄く長い夢を見ていた気がするんだよね……」
曜「ふーん、どんな夢だったの?」
千歌「それが全く思い出せないんだよ。怖かったような、痛かったような、嬉しかったよな、楽しかったような……とにかく不思議な夢だった気がする」
曜「へぇ……まあ、夢ってよく忘れちゃうものだし」
千歌「そうなんだけど……何か大切な事を忘れているような……」
―――プシューーッ
曜「あ、着いたね」
千歌「……ちょっと気持ち悪いけど、そのうち思い出せるかなぁ」ウーン
519 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 23:55:33.80 ID:iHDRX92w0
千歌「まあいっか。行こう、曜ちゃん」スクッ
曜「うん」
曜「………」
『どんなことがあっても元の世界に帰るまで千歌ちゃんを守るよ―――』
曜「……フフ、良かった」
曜「……お疲れ様、千歌ちゃん―――」
千歌「んー? よーちゃん何か言った?」
曜「……えっ、何が?」
千歌「だって今ボソッて何か言ってたじゃん」
曜「私が? 何も言ってないけど……?」
千歌「あれぇ……おっかしいなぁ」
曜「変な千歌ちゃん」
千歌「………あっ!!!!」
曜「うぉ!? 何!?」
千歌「思い出した……一部だけだけど思い出したよ!」
曜「夢の内容を?」
千歌「あのね! あー……やっぱナシ、何でもない」
曜「えー! 何でさ!?」
千歌「いや、だってその……///」カアァァ
曜「え、何で顔赤くしてるの?」
千歌「何でもない! 何でもないから///」ダッ
曜「ちょっ、千歌ちゃん!? 待ってよーー!!」
520 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/06/30(日) 23:57:27.32 ID:iHDRX92w0
『―――……きっと、そっちの“私”は千歌ちゃんの事がよっぽど大好きなんだね』
『へ……?///』
『いやー…愛は世界線をも超えるのかぁ。一途といいますか、重すぎるといいますか……ヤバイな、そっちの“私”』
『なんかめっちゃ恥ずかしいんだけどぉ……///』
『あははは! 今度本人に確認してみなよ。元の世界に帰るまで、私が代わりに千歌ちゃんを守るから―――』ニッ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
千歌「勇気は君の胸に」
――END――
521 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/07/01(月) 00:02:34.97 ID:EjTce2t+0
去年の今頃に投稿を始めた作品でしたが、いかがだったでしょうか?
大変長らくお付き合い頂き、誠にありがとうございました!
522 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/07/01(月) 00:09:13.08 ID:isO78FVeo
おつおつ!
もう1年も経ってたのか
めちゃくちゃ面白かったよ!
長期間お疲れ様でした
523 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/07/01(月) 00:46:22.72 ID:G42gRj+A0
一年経っていたのか…
乙でした
524 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/07/01(月) 02:07:11.21 ID:T4AZouD8o
おつ
525 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/07/01(月) 19:17:13.14 ID:snNlMpx40
めっちゃ面白かったです
おつでした
526 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2019/07/03(水) 03:25:42.14 ID:4mQUswoQ0
超大作でした
終盤の展開は最高に熱かった
乙でした……!
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