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千歌「勇気は君の胸に」
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302 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/16(土) 01:17:19.71 ID:Mv6rJ+dn0
ダイヤ「……それを貴女に説明して何の意味があるのです?」
果南「何だと?」
ダイヤ「説明したところで鞠莉が死んだ事実は変わらない」
果南「ッ! 開き直ってるんじゃないよ!」
ダイヤ「最も、貴女が居ようが結果は変わらなかったでしょう」
ダイヤ「いや……死体の数が一つ増えるだけか」フフ
果南「この……ッ!!!」グイッ
ダイヤ「……いつまで掴んでいるつもりですの?」
果南「はあ?」
ダイヤ「いい加減、その手を離しなさい」ピトッ
―――パキッ、パキパキパキ!!!
果南「ッッッ!!!?」
梨子「手が一瞬で凍り付いた!?」
ダイヤ「便利な力でしょう? リング無しでも扱えるし失った右腕も作り出せる」パキパキ
果南「な、何でダイヤが『氷河』属性の炎を使える!?」
ダイヤ「口の利き方には気を付けなさい。女王に対して無礼極まりないですわよ」
梨子「女王……?」
ダイヤ「ええ、わたくしが浦の星王国の女王となるのです」
果南「は……?」
303 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/16(土) 01:18:57.48 ID:Mv6rJ+dn0
ダイヤ「ルビィに鞠莉の代わりは務まらない。だからわたくしが女王になります」
果南「何勝手な事を言ってんだ! 普通に考えてルビィに決まってるでしょ!」
梨子「果南さんの言う通りです。いくら何でも無理がある」
ダイヤ「……そうですか、ならば先にルビィを始末するしか無いですわね」
果南・梨子「「!!?」」
ダイヤ「ルビィは城に居ますわね?」
梨子「ほ、本気でルビィ様を消すつもりなんですか!? 実の妹を!!?」
ダイヤ「殺しはしませんよ。先ずはわたくしに王位を譲るよう話をするだけです」
果南「脅すの間違いじゃないの……?」ギロッ
ダイヤ「果南、反抗的な態度を取るのはおススメしませんわよ」
ダイヤ「その凍った両手を今すぐ砕いたって構わないのですから」
果南「ぐッ……」
ダイヤ「今後の事は追って連絡します。それまで二人は待機していなさい」
ダイヤ「それでは」スタスタ
果南「……」
梨子「……行っちゃいましたね」
果南「うん」
梨子「一体これからどうなっちゃうんだろう……」
果南「ダイヤ……」
304 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/16(土) 01:22:46.06 ID:Mv6rJ+dn0
―――間も無くしてダイヤは浦の星王国の女王となった。
ルビィとどんな話があったのか知らない。
本人が目の前に居るけれど、大体の予想は出来るし。
ダイヤの就任は公には公表されず、鞠莉が死亡した事、女王が変わった事のみが伝えられたんだ。
女王になったダイヤが真っ先に行った事は他の二国に対しての宣戦布告だ。
他の国は女王や最高戦力である守護者の大半を失った事態を把握し切れていない。
この混乱に乗じて一気に支配しようと目論んだんだ。
国の重要な施設は勿論、街や自然も焼き払う。
抵抗してくる敵は徹底的に叩き潰す。
誰が支配者かを知らしめるため、過剰な戦力を投入して。
鞠莉達が築いてきた国同士の関係をダイヤはぶち壊したんだ。
私はそれが許せなかったんだ―――。
ダイヤ「――果南、こんな所で何をしているのです?」
果南「……」
ダイヤ「梨子と共に虹ヶ咲の守護者の生き残りを排除するように命令したはずですが?」
果南「……説得はしたんだ」
果南「でも梨子は私のお願いよりもダイヤの命令に従った」
ダイヤ「女王の命令に従うのは当然の事ですわ」
ダイヤ「だからこそ理解できない……何故、貴女は今ここに居る?」
果南「これ以上戦争を続ければ取り返しのつかない事になる」
305 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/16(土) 01:25:52.66 ID:Mv6rJ+dn0
ダイヤ「それが?」
果南「鞠莉や先代の女王達がどれだけ苦労して平和な世界を作ってきたか知ってるでしょ!?」
果南「ダイヤのしている事はそれに対する裏切り行為だ」
ダイヤ「……だから?」
果南「今ならまだ間に合う……」
ダイヤ「はぁ、何を言いだすかと思えば」
ダイヤ「――命令に従いなさい。わたくしからは以上ですわ」
果南「……そっか」
ボオォ―――!!!
ダイヤ「……何のつもりですか?」
果南「ダイヤの暴走を止める」
果南「話してもダメなら力尽くでも止めてみせるっ!」
ダイヤ「……ぷっ」
果南「ああ?」
306 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/16(土) 01:27:17.55 ID:Mv6rJ+dn0
ダイヤ「ウフフフ、アハハハハハハハッ!!!」
果南「……何が可笑しい?」ギロッ
ダイヤ「アハハハハッ……はあーあ、久々に大笑いしましたわ」
ダイヤ「力尽くでも止める? 貴女が? このわたくしを?」
ダイヤ「貴女如きが、わたくしに勝てると本気で思っているのですか?」
果南「―――ぁ」プツンッ
ダイヤ「リングに炎を灯した時点で明確な反逆行為。極刑は免れない」
ダイヤ「光栄に思いなさい、女王であるこのわたくしが直々に刑を執行致しますわ」
ダイヤ「思い残す事無いよう全力で掛かって来なさい」
ダイヤ「もっとも、一瞬で片が付くと思いますがねぇ」
果南「――上等だよ……」ギリッ
ダイヤ「いつでもどうぞ」ニコッ
果南「……ダイヤアアアアアアアァァァアァ―――!!!!!」
307 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/16(土) 01:28:34.95 ID:Mv6rJ+dn0
――私はダイヤと戦った。
勿論今まで本気でやり合った事は無かったけど、勝算はあった。
力尽くでも止めるとは言ったけれど、あの時は殺すつもりで挑んだんだ。
……その結果、私は敗れた。
右眼もこの時の戦いで潰されたんだ。
まるで歯が立たなかった。
戦いにもならなかった。
ダイヤは終始無表情。
機械的に私を処理し始めた。
息を吸って吐くだけの肉塊と化した私を凍らせては溶かし、凍らせては溶かしを繰り返す。
意識を失いかければお腹に風穴を開けて強引に起こされた。
三回目以降は数える事すらも止めた。
何度も、何度も何度も何度も何度も繰り返される。
私も流石にこの時はもうダメだと思ったよね……。
“死にたくない”よりも“早く殺してくれ”と強く強く願った。
そして、私の意識は何の前触れもなくプツンッと途切れてしまった――。
308 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/22(金) 22:09:34.95 ID:kfSVeD8K0
果南「―――……っぁぐぅ」パチッ
ルビィ「果南さん」
果南「ル、ビィ……?」
果南「ここは……車の中、なの?」
よしみ「そうですよ」
ルビィ「よしみさんの車の中です」
果南「ん……体に力が入らない」
よしみ「当たり前ですよ。本来なら死んでてもおかしくない怪我だったんだから」
よしみ「ルビィ様に感謝しなよ? なぶり殺しにされかかってた果南さんをギリギリで助けて下さったんだから」
よしみ「治療が後数分遅かったらあの世行き」
果南「そっか……ありがとうルビィ」
ルビィ「いえ……いいんです」
309 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/22(金) 22:17:41.94 ID:kfSVeD8K0
よしみ「予め言っておくけど、その怪我を治すのに晴の炎をフルパワーで使ったから」
よしみ「多分数十年分の寿命が縮んだと思うけど文句は言わないでね」
果南「うん、死なずに済んだだけいいよ」
果南「でも私を助けたって事はどういう意味か分かっているの?」
よしみ「……」
ルビィ「……うん」
ルビィ「果南ちゃんを助けに入った時、一瞬だけお姉ちゃんと目が合ったの……冷たい目だった」
ルビィ「あの人はもうお姉ちゃんじゃない……完全に別人」
果南「……」
ルビィ「それに『逆らうならば殺す』って言われたの。本気だった……お姉ちゃんは本気で私に殺すって言ったんだよ」ポロポロ
ルビィ「……もう覚悟を決めるしかないと思った」
よしみ「私もダイヤ様のやり方には反対でしたから。味方するならこっち側かな、と」
果南「味方になってくれるのは嬉しいけどさ……」
果南「……私の技や匣兵器じゃ歯が立たなかった。ルビィとよしみが増えた所で意味が無いよ」
よしみ「私達が無策で飛び出してきたと思う?」
310 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/22(金) 22:25:43.51 ID:kfSVeD8K0
ルビィ「これを見てください」ゴトゴトッ
果南「匣兵器? でも見たことないやつだね」
よしみ「これは最近開発に成功したAqoursリングでしか開口出来ない、守護者専用の匣兵器さ」
果南「っ!? 完成したんだ……」
よしみ「ルビィ様が大空、嵐、霧以外の匣を持ち出して来てくれた」
よしみ「あとは散り散りになったAqoursリングを回収して新たな適合者を見つければ……」
ルビィ「お姉ちゃんを女王から退けられる可能性はあるっ!」
果南「……それだけじゃ足りない」
よしみ「足りない?」
果南「実際にダイヤと戦った私には分かる。強力な匣兵器を使っても、ダイヤの“あの技”の前には無力なんだ」
果南「“あの技”を何とかしないと勝ち目は無い」
311 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/22(金) 22:32:11.57 ID:kfSVeD8K0
よしみ「策はあるの?」
果南「Aqoursリングの回収と同時にあのヘルリングも探し出す」
よしみ「ヘルリングに頼るのか……」
ルビィ「晴属性の果南ちゃんでも使えるヘルリング? ……って、まさか!?」
果南「私がその力を得てダイヤを倒す」
よしみ「本当に呪いの力が必要なの?」
果南「……うん」
よしみ「でも呪いを受けるのが果南さんである必要性はどこにも無い。道中で見つけた同士でも、なんなら私でもいいのでは?」
果南「よしみの力は絶対に失えないし他の人に呪いを押し付けるなんて出来ない」
果南「となれば、私以外には居ない。戦闘スタイルの面においても私が適任だと思うし」
よしみ「……っ」
果南「何はともあれ、リングも適合者も見つけ出さない事には始まらない」
果南「仲間を集めて、私達ももっと力をつけないと」
果南「過酷な日々が始まると思う……それでも私について来てくれる?」
ルビィ「うん!」
よしみ「ついて行くけど、途中でうっかり死なないでよね?」
果南「ん……善処するよ」
312 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/22(金) 22:54:21.05 ID:kfSVeD8K0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
果南「――これが二年前の話」
果南「こうして私達の散り散りになったリングを探しつつ、適合者を探す旅が始まった」
果南「その道中で花丸と出会ったんだ」
花丸「リングの適合者が守護者の定義とするなら今はマルが雲の守護者ずら」
果南「これまでに見つけたリングは『雲』と『雷』。残りの『雨』も場所の目星は付いている」
曜「『雨』……」
千歌「『雷』は適合者は見つかっているの?」
果南「うん。ここに居るよ」
千歌「え、誰?」
ルビィ「わ、私です……」
千歌「ルビィちゃんが!?」
果南「意外でしょ? ただ、ルビィが戦闘する事は出来るだけ避けたいけどね」
曜「それはダイヤさんを倒した後に女王になってもらう為に?」
果南「まあ……最初はそれが理由だった」
果南「私達の当初の目的はダイヤを王座から退かせる事。話し合いで解決出来ない以上、退かせる方法はダイヤを殺すしかない」
ルビィ「……でもそれじゃダメなの」
果南「私達はダイヤの死を望んでいない。これがこの旅を始めてから辿り着いた本心」
313 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/22(金) 23:00:14.17 ID:kfSVeD8K0
曜「……何で?」
果南「ん?」
曜「果南ちゃんは殺すつもりで戦ったって言ってたじゃん。それで逆に殺されかかった」
果南「無様にも返り討ちにされたね」
曜「鞠莉さんが築き上げてきてもの全部壊した事を憎んでないの?」
果南「憎いさ、それは絶対に許さないよ」
曜「今だって色々な人に酷い事をしている。そんなダイヤさんを生かしておくべきだと思う?」
曜「本当にダイヤさんの死を望んでいないの?」
果南「……そうだねぇ……」
果南「ダイヤは鞠莉が死んだ事で別人に変わってしまった。冷徹で冷酷な、最低最悪の女王になってしまった」
果南「―――でもね、たとえどんなに変わってしまっても……ダイヤは私の友達なんだよ」
曜「友、達……?」
果南「友達が間違った事をしたらそれを正す。友達なら当たり前の事だよね」
果南「だから私はダイヤの所に辿り着いたら、一発ぶん殴ってやるんだ」
314 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/22(金) 23:05:20.64 ID:kfSVeD8K0
曜「分からない……それはもう友達の域を超えているよ……友達とは言っても赤の他人じゃん」
曜「自分の人生を、命まで掛けて……私には分からないよ」
果南「曜だって千歌を命懸けで守ったじゃん」
曜「それとは状況が違うよ。ダイヤさんは果南ちゃんの事をもう友達とは思ってないもん」
果南「んー、千歌なら分かるよね?」
千歌「うん、ちょっとは」
千歌「もしも曜ちゃんがって想像したら、果南ちゃんと同じ事考えると思う……かな」
曜「それは千歌ちゃんの世界の“私”の場合の話?」
千歌「それもそうだし、この世界の曜ちゃんでも同じだよ」
千歌「曜ちゃんが悪い事をしていたら止める。絶対に止めてみせるよ」
曜「……」
果南「大丈夫、曜にも理解できる日がきっと来るよ」ニッ
曜「……そうだといいな」
315 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/22(金) 23:10:31.49 ID:kfSVeD8K0
果南「いつかもう一度、ダイヤと一緒に冗談を言い合ったり笑い合ったり……そんな当たり前だった日常を取り戻す」
果南「これが私とルビィの望み、夢かな」
ルビィ「またお姉ちゃんの笑顔が見たい。……叶う、かな?」
花丸「違うずら、必ず叶えるんだよ」
よしみ「その為にここまで頑張って来たんですから!」
千歌「花丸ちゃんはどうして果南ちゃんと仲間になったの?」
花丸「マルも二人と似たような理由ずら」
千歌「友達関係って事?」
花丸「まあね。果南ちゃんと一緒の方が色々と都合が良かったから」
花丸「何も言わずに居なくなった友達を連れ戻す。それがマルの夢ずら♪」
曜「私には……みんなみたいに夢とか目的が何もない……」
果南「無理に見つけようとする必要は無いよ。私達が特殊なだけ」
花丸「そうずら。曜ちゃんだって自分から望んでこの場に居るわけじゃないんだし」
果南「はたから見れば私達、ただのテロリストだもんね」
よしみ「曜ちゃんは元の生活に戻る為に戦えばいいんだよ」
曜「……そうなのかな」ボソッ
千歌「……」
316 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/22(金) 23:11:31.22 ID:kfSVeD8K0
果南「――さて、話はこれでお終い。花丸、明日は私と雨のリングを回収しに行くから準備しといてね」
花丸「明日っ!? その体で行くずらか!?」
果南「悠長に休んでる場合じゃ無くなったんだ」
千歌「痛みを感じないからって無茶しすぎだよ……」
よしみ「言っても聞かない人だからさ……諦めて」
果南「数日は帰って来ないから留守は任せたよ、よしみ、曜」
よしみ「うむ、任された」
曜「わ、私も?」
果南「何か変な事言ったかな?」
曜「……ううん、分かった任せてよ!」
317 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 00:14:43.16 ID:1wzK0UIw0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜二日後〜
曜「……ふわぁぁっ」ポケェ
よしみ「何呆けているのさ?」
曜「休憩しているだけだよー」
千歌「さっきまで花丸ちゃんから出されていたメニューをこなしてましたから!」
ルビィ「本当だからね?」
よしみ「そ、そんなに疑ってないですよ」
千歌「よしみさんが持ってるそのバスケットはなーに?」
よしみ「そろそろお腹がすく頃かなと思って」ゴソゴソ
よしみ「ほら、サンドイッチ作ってきたよ」
曜「おおーっ!」キラキラ
千歌「先に言ってくれれば手伝ったのに」
よしみ「いいのいいの」
曜「ねえねえ食べていい? 食べていいよね?」
318 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 00:16:06.55 ID:1wzK0UIw0
ルビィ「がっつき過ぎだよぉ……」
よしみ「あはは、早く食べなよ」
曜「頂きまーーす!」
曜「もぐもぐ……ん〜〜、美味しい!!」
千歌「本当だ凄く美味しい」モグモグ
よしみ「ふっふっ、作った甲斐があったよ♪」
ルビィ「果南ちゃんと花丸ちゃんはちゃんと見つけられたのかな」
千歌「場所の目星は付いてるって言っていたよね?」
曜「具体的な場所は言ってなかったけれど、どこなの?」
よしみ「確か、湖の中だったような……」
千歌「湖!? ダイビングの装備なんて持って行って無かったよね」
曜「この時期に潜ったら冷たすぎて死んじゃうよ!?」
よしみ「果南さんなら温度に関係なく潜れるから平気平気」
ルビィ「それに『熱いお茶』があれば水中呼吸もバッチリだもんね」
319 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 00:18:01.89 ID:1wzK0UIw0
千歌「……へ?」
曜「あ、『熱いお茶』ぁ?」
ルビィ「うん、『熱いお茶』」
曜「何で『熱いお茶』があれば水の中で息が出来るのさ?」
ルビィ「さぁ?」
曜「知らないの!?」
ルビィ「だって花丸ちゃんが本に書いてあったって言ってたんだもん!」
曜「んなアホな」
よしみ「実際に息が出来たし、深く考えなくてもいいかなと」
曜「ええっ、マジか……」
千歌「ファンタジーだなぁ」
曜「ん、待てよ……今、私はよしみさんがサンドイッチと一緒に持ってきたお茶を飲みました」
千歌「飲んだね」
曜「これは熱々のお茶でした」
よしみ「作りたてのお茶だからね」
曜「つまり……水の中で息が出来る条件が揃っている……?」
ルビィ「揃ってるね」
曜「………」
千歌「よ、よーちゃん?」
320 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 00:20:33.11 ID:1wzK0UIw0
曜「い、いけるのか……? いやでも……まさか……」ブツブツ
よしみ「まあ嘘だけどね」
ルビィ「うん、嘘」
曜「っ!!?」
千歌「だよねー」
よしみ「――さて、そろそろ休憩はお終いだよ」
よしみ「午後からは私も一緒に付き合うからさ」
曜「はーい」モグモグ
よしみ「千歌ちゃんはルビィ様と夕食の準備をお願いね」
ルビィ「戻ろうか」
千歌「うん」
千歌「じゃあ曜ちゃん、頑張ってね〜」フリフリ
何気ない、平和な日常。
勿論こんな日々が長く続くとは思っていない。
果南ちゃん達が戻ってくれば国を相手に戦いを挑む事になるんだもん。
世界を超えても出会うことが出来た大好きなAqoursのメンバー。
みんなと笑いながら過ごす日々が少しでも続けばいいのに。
それだけで私は幸せなんだ……。
…………崩壊はいつも唐突に訪れる。
321 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 00:24:35.21 ID:1wzK0UIw0
曜「ありがとう! がんばる………ん?」
曜「あっちから誰か歩いて来るよ? お客さん?」
ルビィ「お客さん……よしみさん?」チラッ
よしみ「いや、そんなのが来るなんて聞いてません……」
千歌「あの髪色に髪形……あのシルエット………ぁ」
よしみ「……バカな!? 何でここにあの人が来るっ!!?」
曜「……っ!!」
梨子「―――……へぇ、こんな所に潜んでいたのね。裏切者さん」
ルビィ「梨、子……さんっ」
梨子「ルビィ様も元気そうで何よりです」ニコッ
ルビィ「……うゆぅ」ビクッ
322 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 00:27:35.07 ID:1wzK0UIw0
梨子「あれ? 善子ちゃんの報告では果南さんも居るはずなんだけど、どこなの?」
よしみ「答える義理は無い」
梨子「……別に構わないわよ。今回の目的は果南さんでもルビィ様でも無いし」
梨子「――そこの君、高海 千歌に用事があるの」
よしみ「千歌ちゃんに!?」
千歌「……久しぶりだね、梨子ちゃん」
梨子「まさか、あの夜に出会った子が別世界から来てたなんて夢にも思わなかったわよ」
梨子「それに、まだその子と一緒に行動してるとも思わなかった」
曜「……」ギロッ
よしみ「どうしてこの場所が分かった?」
梨子「それは簡単よ。高海 千歌の居場所を特定する方法があったから」
千歌「私を?」
曜「発信機か何か付けられているって事!?」
梨子「ご名答♪」
ルビィ「そんなバカな……ここは花丸ちゃんが特製の結界を張っている! あらゆる電波、炎の反応だって遮断する結界を!」
よしみ「仮に発信機があったとしても、周囲三キロを覆う結界で反応は消せる」
よしみ「それ以前に部外者がこの場所に近づいた時点で私が察知出来る! ……出来るはずだったのにっ」
323 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 00:30:56.87 ID:1wzK0UIw0
梨子「善子ちゃんが倒された時間帯に近くにあった反応を追跡したの」
梨子「あなた達の言う通り、この場所から三キロ離れた場所でロストしたわ。でもそれさえ分かれば十分」
梨子「下手に大勢で行けば探知される恐れがあったから、こうして私一人で来たって訳」
よしみ「私の探知用の結界をすり抜けるとは……流石は守護者と言うべきか」
梨子「無駄話はもういいでしょ。早く高海 千歌を渡して」
曜、よしみ、ルビィが庇うように千歌の前へと出る。
曜「簡単に渡すと思う?」
よしみ「千歌ちゃんは私達の仲間だ!」
ルビィ「……ぅ!!」
千歌「みんな……」
梨子「はぁ……まあそうなるわよね」ポリポリ
ゴオオオォォ―――!!!
梨子「―――邪魔する者は排除していいって命令されているのよ?」ギロッ
梨子の右手から凄まじい熱量の炎が発生。
彼女から放たれる突き刺さるような殺意と熱波で千歌達は一歩後ずさった。
曜「な、何なのあれ!?」
よしみ「梨子の使う炎は常人のそれとは規格が違う! 破壊力だけなら一、二を争うレベルだよ!」
324 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 00:36:39.12 ID:1wzK0UIw0
ルビィ「き、来ます!!!」
右手から放たれる巨大な光球の炎。
曜は千歌を、よしみはルビィを抱えて左右にダイブして回避。
炎は地面を抉りながら背後にあったアジトに直撃した。
たった一撃で全体の三分の一が損傷。
鉄筋コンクリートで出来た建物は一部が一瞬で灰と化した。
梨子「避けられちゃった……」
曜「危なっ……!?」
千歌「で、デタラメな威力じゃんっ」ゾッ
よしみ「ぐ、ぐうう……」ジュウウウゥゥ
ルビィ「よしみさんっ!?」
千歌「嘘っ!?」
よしみ「申し訳、ございません……避けきれません、でした……」
ルビィ「背中が焼けただれてる……早く治療しないと!」
よしみ「この程度問題ありません……痛っっ!!」グラッ
梨子「無理しない方がいいんじゃない?」
325 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 00:38:25.00 ID:1wzK0UIw0
梨子「……動かれると一瞬で灰に出来ないから嫌なのよ。だからじっとしていて?」
よしみに向けられる右手。
既に攻撃の準備は整っていた。
よしみ「ッッ!! 離れてルビィ様!!!」
梨子「――バイバイ♪」
曜「―――『水の鎖(カテーナ・ディ・アクア)!!!!』
梨子に巻き付いた鎖が右腕を真上に引き上げた。
発射された光球は何も無い空へと逸れる。
梨子「……何?」ギロッ
曜「ルビィちゃん!!」
ルビィ「は、はい!」
326 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 00:40:53.22 ID:1wzK0UIw0
曜「ここは私が何とかするから、千歌ちゃんとよしみさんを連れて逃げて!!」
よしみ「っ!? む、無茶だ!! いくら修行したとは言え、梨子とはまだ戦いにもならない!!」
曜「私は果南さんに留守を任されたんだ」
曜「誰が相手だろうと関係ない……私は、私に与えられた役目を果たす!」
梨子「ふふ、威勢だけは一人前ねぇ」
曜「……うるさい」
よしみ「ダメ、だ……曜ちゃん一人じゃ殺される……私も……」
千歌「私はここに残るよ」
よしみ「なっ!?」
千歌「だって私の居場所は筒抜けなんでしょ? ならルビィちゃん達と一緒に逃げても意味が無い」
千歌「それに曜ちゃんが全力で戦う為にも私も残らなくちゃ」
よしみ「……無謀だ」
曜「なら、その傷を治して戻って来て下さい」
曜「この場所がバレてしまった以上、コイツは絶対に倒さなきゃいけないし」
梨子「……♪」ニコニコ
ルビィ「……行こう、よしみさん」
よしみ「……はいっ」ギリッ
327 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 00:44:09.25 ID:1wzK0UIw0
よしみ「曜ちゃん、千歌ちゃん! 直ぐに戻るからそれまで待ってて!!」
曜「……」コクッ
梨子「ねえねえ、この状況をちゃんと理解しているの?」
梨子「自分で言うのもアレだけど、私はこの前君が倒した人形兵(マリオネット)や逆に倒された『雷電』使いの子とは格が違うんだけど」
曜「理解していないのは桜内 梨子、アンタの方だよ」
梨子「?」
曜「今回は最初から千歌ちゃんが側に居るんだ。だから、今の私は誰にも負けない」
梨子「……『同調』だっけ? そんな他力本願な力で強気になるなよ」
巻き付いた鎖を嵐の炎で分解し、引き千切る。
梨子「一先ず、この一撃を防げるかな?」
三発目の光球。
曜は両手を地面に叩きつけて水の壁を作り盾を張った。
最初の一発より一回り小さかったが威力は絶大。
水の壁は一瞬で蒸発し、二人は後方に吹き飛んだ。
千歌「きゃっ!」
梨子「おお! 今ので貫けないのね!」
曜「くっ……炎は消せても、衝撃までは無理か!?」
梨子「ほらほら、避けなきゃ死ぬよ」
―――ゴッ!! ゴオッ!! ゴオォォ!!
曜「嫌らしい攻撃だなっ!」
328 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 00:47:19.96 ID:1wzK0UIw0
曜は千歌を抱え、飛んでくる光球を回避する。
梨子の目的は千歌を無傷で連れて帰る事。
その際、邪魔者は排除しなければならない。
邪魔者の排除は難しくは無い。
しかし、その強すぎる火力ゆえに対象も巻き込むリスクが伴う。
曜もまた、千歌を梨子の魔の手から守る立ち回りをしなければならない。
……梨子はそこを逆手に取った。
先程の攻撃で曜の『水の壁(ムーロ・ディ・アクア)』のおおよその耐久力は把握出来た。
ならば、それよりもほんの少し高威力の光球を千歌を狙って放てばいい。
そうすれば曜は千歌を守らざる得ない。
今は避けられているが、その内逃げ場は無くなる。
詰むのは時間の問題だ。
梨子「その子に自身を守る術が無い以上、君に勝ち目は無いわよ?」
千歌「梨子ちゃんの言う通りだよ! 曜ちゃんの得意な接近戦に持ち込まなきゃ!」
曜「それじゃ前の二の舞になっちゃうよ!」
千歌「攻撃が全部私に向けられているのは分かってる。だったら私を囮に――」
曜「ダメ、それだけは絶対に嫌だ!!!」
千歌「ならどうするのさ!?」
329 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 00:49:03.40 ID:1wzK0UIw0
梨子「……やーめた」
曜「は?」
千歌「攻撃を止めた…?」
梨子「このまま続ければ確実に仕留められるけど、それじゃ物足りないわ」
梨子「私に恐れずに挑もうとしてくれてる。こんな機会は久しぶりだもの……勿体無いわ」
曜「……勿体無い、か」
梨子「気に障ったかしら?」
曜「いいや、お手上げ状態だったから寧ろ有難いよ」
曜「最後までそうやって慢心していてくれるともっと嬉しいかな」
梨子「君には私が慢心してるように見える?」
ジャラジャラッ―――!!!
梨子の周囲に『水の鎖』を生み出す。
全身に巻き付かせて動きを封じる算段だ。
梨子「その技はもう見たよ!」
鎖が梨子の体に触れる前に一瞬で空中分解する。
身体の周囲に嵐の炎を纏わせてバリアを張っていたのだ。
このバリアがある限り『水の鎖』は勿論、『激流葬』も通じない。
330 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 00:51:50.94 ID:1wzK0UIw0
曜「はあぁぁぁッ……!!!」
梨子へと向かい迫る曜。
眼前まで迫り、右手のトンファーを振り抜きバリアを打ち破る。
もう片方のトンファーで顎を狙う。
が、梨子はとれを片手で軽々と受け止める。
梨子「いいわねぇ! 恐れずに接近してくるその勇気!」
曜「……ッ、素手で止めるの…!?」
梨子「素手? 違うわよ」
―――ゴオオオォォッ!!
梨子はインパクトの瞬間、手の平から炎を出して衝撃を和らげていた。
今度はその炎で掴んだトンファーごと曜の左腕を焼く。
曜「ぅぐああああッ……!!」
誤って沸かしたてのやかんに触った時とは訳が違う。
まるでマグマの中に腕を突っ込んだような、そんな痛みと熱さが曜を襲う。
曜は咄嗟に飛び退き、距離を取る。
曜「……ッぁ、あ゛あ゛あ゛あ゛……ッッ!」
331 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 00:59:39.66 ID:1wzK0UIw0
梨子「炭化させたつもりだったんだけどな……雨の炎で守ったのね」
曜「ぁ……ぐぅ、はッ……」
手を握ったり開いたりして動きを確かめる。
皮膚はただれ、意識が飛びそうになる程痛いが腕は死んでない。
……まだ、戦える。
曜「……行くぞッ!!!」
梨子「……」
……今の一撃で折れなかったのは意外だったな。
あの子の左腕はほぼ使い物にならなくなった。
片方のトンファーに炎を集中させての連続攻撃。
速く、鋭い連撃。
果南さんと修行を積んだのは嘘じゃないみたいだね……。
―――ゴッ!!!
曜の攻撃が梨子のこめかみにヒット。
体勢が大きく崩れた。
曜「チャンスだ……ッ!!」
332 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 01:05:08.27 ID:1wzK0UIw0
千載一遇の好機。
ここで畳みかけて一気に決着をつける。
曜の炎は更に大きく燃え上がる――。
……梨子の目は曜の動きを完全に捉えていた。
勝敗を決する要因は様々存在する。
体力、体格、筋力といった基礎能力。
モチベーションや精神状態などのメンタル力。
これまでに培ってきた経験値。
これらは戦いが始まる前から現れる差だ。
梨子と曜にはこの時点で圧倒的に差がついている。
しかし実戦では何が起こるか分からない。
思わぬラッキーパンチが敵に致命傷を与えるかもしれない。
戦いの中で急激な成長があるかもしれない。
感情の高ぶりで突然新たな力が発現するかもしれない。
……否だ。
百歩譲ってラッキーパンチの可能性はあるだろう。
だが、今回の曜が与えた一撃は違う。
梨子が気まぐれで思い出に一発プレゼントしてあげただけ。
現実では都合よく新たな力は発現しないし、圧倒的な実力差をひっくり返すほどの成長は起こらない。
気持ちが勝敗を分けるのはお互いの実力が拮抗している時のみの話だ。
……勝負は始まる前から既に決まっている。
曜が勝てる見込みなんて最初からゼロなのだ。
333 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 01:06:54.89 ID:1wzK0UIw0
梨子「もういいわよ」
曜「や、やばッ……」
体勢を崩した梨子だが、右手は曜の体の方に向けられている。
回避はもう、間に合わない―――。
―――ゴオオオォォッッ!!!
梨子の炎が曜の全身を焼き尽くす。
コンクリートを一瞬で灰にする火力。
人間に直撃すれば体は一瞬で蒸発する。
……曜の体は残っていた。
間一髪で雨の炎を全身に纏わせるのが間に合ったのだ。
しかし防げたのはごく一部。
辛うじて即死を免れたに過ぎなかった。
全身重度の火傷状態。
曜は力なくその場に倒れ込んだ……。
334 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 01:08:22.66 ID:1wzK0UIw0
曜「っ、ぁ……」ドサッ
梨子「……蓋を開けてみれば大した事無かったわね」
梨子「久々に歯向かってくる敵だったからちょっぴり期待しちゃった」
曜「あ、あぁ……ぁ…」シュウゥゥゥ
梨子「結局、よしみは間に合わなかったか。残念だったね」
曜「ぁぐ……ぐっ、はぁ………っ」
梨子「苦しそうね? 安心して、今楽にしてあげるから」
梨子の手の平に高純度の嵐の炎が集中する。
先ほどは直撃だったとは言え、僅かながら雨の炎で威力を軽減していた。
だが、今の曜に次の攻撃を和らげる力は残っていない。
梨子の攻撃を受ければ今度こそ消し炭にされる。
……はずだった。
梨子「………何のつもり?」
335 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 01:11:00.69 ID:1wzK0UIw0
千歌「……」
曜「ぢ……が、ちゃ………ん………?」
千歌「………っ!!」キッ!!
千歌が曜と梨子の間に割って入る。
両手を横に広げ、鋭い目つきで梨子を睨み付けている。
千歌「――止めて! もう曜ちゃんを傷つけないでっ!!」
梨子「涙目で睨まれてもねぇ……いいから、そこをどきなさい」
千歌「どかない……!!」フルフル
梨子「―――どけ。私をこれ以上怒らせるな」ギロッ
千歌「……ッ!? い、嫌だ……絶対にどかない!!」
千歌「あなたの目的は私でしょ? どこにでもついて行くから……だからもう止めて……!」
曜「ッ!!?」
梨子「そうね……でも、ここにいる反逆者を見逃すわけにはいかない」
千歌「……だったら」
千歌はポケットから先の尖がったガラス片を取り出し、刃先を自分の喉元に突き立てる。
梨子「……正気?」
千歌「私が死ねば、あなたは任務を遂行出来ない。それは凄く困るんじゃないの?」
336 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 01:12:57.19 ID:1wzK0UIw0
梨子「……そんな脅しは無意味―――」
―――ザクッ!!!
千歌は突き立てたガラス片を左腕に突き刺す。
傷口からは真っ赤な鮮血がドクドクと流れ出てきた。
千歌「〜〜〜ぅ痛ッッ!!!!!?」ボタボタッ
梨子「んな!?」
千歌「……あ、侮らないでよ。私だって覚悟してこの場所にいるんだから……ッ!」ジワッ
梨子「!」ギリッ
千歌「これ以上誰も傷つけないって約束するなら、大人しくついて行くよ」
梨子「誰もって誰の事?」
千歌「曜ちゃんは勿論、よしみさんやルビィちゃん、花丸ちゃん、果南ちゃんも含めてだよ」
千歌「金輪際、みんなを襲わないって約束して」
梨子「……」
千歌「……ねぇ、どうするの?」
梨子「私がその条件を受け入れたとして、こっちにメリットはあるの?」
千歌「女王様が私を探している理由は分からない。でも、どんな要求でも断らないし全面的に協力する」
梨子「……仮に、要求が“命”だったとしても?」
千歌「………うん」
曜「!!?」
梨子「そう……なるほどね」
曜「だ……め、だよ……行っちゃ、だめだ……!」
337 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 01:14:44.74 ID:1wzK0UIw0
梨子「いいよ。その条件、受け入れてあげる」
梨子は手の炎を消す。
梨子「ただし―――」
千歌の隣を横切り、倒れている曜の指からリングを取り外した。
千歌「ちょっと、何を―――」
―――パキパキパキッ
千歌「……あっ」
梨子「このリングは破壊する。微々たる戦力でも削らせてもらうわ」
曜「ぁ、ぅあ……」
曜『――このリングもパパから譲ってもらった宝物なんだ!』エヘヘ
曜「……う、うぅぅ、うわあ、あぁ」ポロポロ
千歌「曜、ちゃん……」ギリッ
梨子「さあ、ついてきなさい」
千歌「……はい」
338 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 01:16:46.73 ID:1wzK0UIw0
曜「……ま、て……待って、よ………」グググッ
梨子「あ?」
曜「……わ、たさ、ない……私は、まだ……戦え、る…!!」
……立て……立て立て立て立て!! 立てよッ!!!!
立ち上がらないと千歌ちゃんが……千歌ちゃんが連れて行かれるんだ!!!
何の為に強くなろうと決めたんだ。
絶対に守るって約束だってしたじゃないか。
今立ち上がらなくちゃ意味が無い!!
くそッ!! 言う事聞けよ私の体あああ!!!!
…… お願いだから……お願い、だからッ!!
千歌「――よーちゃん」
必死に立ち上がろうとする曜の頬に
千歌はそっと手を添える。
曜「ちか、ちゃん……?」
339 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/03/26(火) 01:19:24.98 ID:1wzK0UIw0
千歌「ごめん……ごめんね……私にも戦う力があれば、曜ちゃんがこんなに傷つく事は無かったんだよね」
曜「……ぅぁ」
……違う、千歌ちゃんは悪くない。
千歌「私と出会ったせいで曜ちゃんの人生を滅茶苦茶にしちゃったよね」
千歌「本当にごめん……」
曜「……っ、ち……が……っ」
……嫌だ……千歌ちゃん……。
行かないでよ……ねぇ……。
千歌「―――バイバイ、今までありがとうね」ニコッ
340 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/02(火) 22:10:33.23 ID:14MbcLkM0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
治療を終えたよしみ。
曜の増援へ向かう為、ルビィと共に戦場へ走る。
あの場から離れてから約五分。
到着まではもう一分も掛からないだろう。
ルビィ「……閃光と轟音が止んだ……?」
よしみ「嫌な予感がする……っ!」
ルビィ「もうすぐ着きます!」
曜「……ぁ、ぉっ……ぁ」
よしみ「……っ!! 曜!!」
ルビィ「ひ、酷い火傷……っ!」
341 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/02(火) 22:12:10.74 ID:14MbcLkM0
よしみ「直ぐに治療を始めます! ルビィ様!」
ルビィ「は、はい! アジトから道具一式を持ってきます!!」ダッ
よしみ「曜! もう少しだけ耐えて!」ボッ!!
曜「……ち、……か……ちゃ…が」
よしみ「……喋らなくていい分かってる」ギリッ
よしみ「間に合わなくてごめん……」
曜「……っ………っっ」ガクガクッ
よしみ「ま、マズイ!?」
ルビィ「持ってきました! ……えっ」
よしみ「ショック状態だ!! 早くそれを渡して!!」
ルビィ「はい!」
よしみ「死なせない……! こんな所で死なせて堪るか!!」
ルビィ「曜ちゃん頑張って!! 曜ちゃん!!!」
342 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/02(火) 22:18:29.22 ID:14MbcLkM0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜浦の星王国 城内〜
梨子「――はい、これで手当てはお終いよ」
千歌「うん、ありがとう」
梨子「全く……あんな瓦礫で体を傷付けるなんてどうかしてるわよ」
千歌「心配してくれるんだ」
梨子「……別に、無傷で連れてこられなかったのが嫌だっただけ」
千歌「私はこれからどうなるの?」
梨子「女王様の……ああ、名前は知ってるんだっけ?」
千歌「うん、ダイヤさんだよね」
梨子「あなたをダイヤ様の所へ連れて行く」
千歌「……私、殺されちゃうの?」
梨子「さあね。少なくとも直ぐには殺されないとは思うわ」
梨子「ただ、今ダイヤ様は立て込んでいるのよ」
343 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/02(火) 22:22:20.34 ID:14MbcLkM0
千歌「じゃあ、私は牢屋に……」
梨子「いいえ」
千歌「へ?」
梨子「監禁するつもりは無いわ。城内から出なければ自由に行動しても構わない」
千歌「……逃げ出すかもしれないよ?」
梨子「言わなくても逃げ出せばどうなるかくらい分かるよね?」
千歌「うぅ……はい」
千歌「でも本当にいいの? 入っちゃいけない部屋とかは?」
梨子「心配しなくてもその部屋には入ろうとしても入れないから」
千歌「そっか」
梨子「……」ジッ
千歌「な、何でしょう……か?」
梨子「かしこまらなくていいわ。そっちの世界だと私達は友達なんでしょ?」
千歌「そう、だけど……」
梨子「前は私があなたの事を知らなかったからあんな事を言っただけ」
344 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/02(火) 22:28:15.89 ID:14MbcLkM0
千歌「じゃあ……梨子ちゃん」
千歌「質問したい事があるんだけど、いい?」
梨子「内容によるけどいいわよ」
千歌「果南ちゃんはダイヤさんが女王様になった時にこの国から出て行った。それはダイヤさんのやり方に納得できなかったから……」
千歌「でも梨子ちゃんはどうして今もダイヤさんの守護者をやっているの?」
梨子「……」
千歌「この世界に来てみんなと会って、話して、それで分かったんだよ」
千歌「確かに私の知ってるみんなとは年齢も生活も人間関係も全然違う」
千歌「……でもね、曜ちゃん、果南ちゃん、花丸ちゃんにルビィちゃんも私の知ってるままだった」
梨子「偶然よ」
千歌「そんな事無い。世界が違ってもその人の内面を作っているものは変わらないんだよ」
千歌「だから梨子ちゃんだってきっと――」
梨子「やめて」
千歌「……っ!」
梨子「他の人がどうだったかなんて関係ない。私は私なの。それ以外の何者でもない」
梨子「勝手にあなたの中の像を押し付けないで」
千歌「……ごめんなさい」
梨子「質問はどうして私がダイヤ様に仕えているか、だったわね」
345 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/02(火) 22:33:50.41 ID:14MbcLkM0
千歌「うん」
梨子「簡単よ、私はダイヤ様に恩義があるから」
千歌「恩義……?」
梨子「私は元々、音ノ木坂の人間だったのよ」
梨子「生まれも育ちも音ノ木坂でね、将来の夢は守護者になる事だった」
梨子「その為に必死で努力した。努力して努力して……音ノ木坂では誰にも負けないくらい強くなったわ」
梨子「……でも、私は守護者になれなかった」
千歌「リングに選ばれなかったんだね……」
梨子「音ノ木坂で守護者になれるのは一部の血筋を引く者だけだった。私には初めから挑戦権すら無かったってわけ」
千歌「……」
梨子「哀れでしょ? 最初から知っていれば叶うはずの無い夢を見る事も無かったのにね」
梨子「嵐の守護者になったのは『西木野家』の人間だった。……実力は私の方が上なのにっ」ギリッ
梨子「まあ、誰一人認めてくれなかったけどね」
梨子「……自分より弱い人の下につく気はさらさら無い。だから私は国を出て行った」
346 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/02(火) 22:47:55.78 ID:14MbcLkM0
千歌「……」
梨子「……そんな事の為に出て行ったのって思ってる?」
千歌「ううん、思ってないよ」
千歌「梨子ちゃんにとって重要な事だったんでしょ? ならその選択は間違いじゃない」
梨子「そう……」
梨子「当ても無く彷徨っていた私はダイヤ様と出会ったの」
梨子「あの人は私の力を認めてくれた……私が必要だと言ってくれた」
梨子「――そして、ダイヤ様のおかげで私は夢だった守護者になれた」
梨子「私だってダイヤ様の女王としての振る舞いは正しいとは思わない」
梨子「……思わないけど、それは私がダイヤ様の敵に回る理由にはならないわ」
千歌「そうなんだ……」
347 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/03(水) 00:00:58.99 ID:TCkwwZxf0
梨子「あなたはダイヤ様が悪だと思っているの?」
千歌「……違うの?」
梨子「果南さんからどんな話を聞いたか知らないけど、片方の話だけで決めつけるのはどうかと思うわ」
梨子「正義の反対は悪じゃない、もう一つの正義よ」
千歌「梨子ちゃんは何か知っているんだ」
梨子「いいえ、ダイヤ様は私達にも何も話していない」
梨子「でも……あなたになら話すかもね」
千歌「私がお客さんだから?」
梨子「……すぐに分かるよ」
348 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/03(水) 00:02:23.54 ID:TCkwwZxf0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜三日後〜
よしみ「―――以上が、二人が外出中に起こった事の全てです」
果南「そっか……報告ありがとう」
よしみ「いえ……留守を任されていたのに申し訳ございません」
果南「梨子相手に全滅しなかっただけ良かった。よく生き残ってくれた」
よしみ「……はい」
果南「……それで、曜の具合は?」
よしみ「全身に重度の火傷を負っていましたが、一命は取り留めました」
よしみ「酷いケロイドが顔や全身に残っているものの特に後遺症はありません」
よしみ「……ただ、精神面のダメージが深刻で」
果南「……」
よしみ「ずっとうなされているんですよ……見てるこっちも辛くなる程に……」
果南「目の前で千歌を連れ去られて、大切にしていたリングも壊されれば無理もないよね……」
よしみ「……恐らく曜ちゃんはもう――」
果南「曜は今起きてるの?」
よしみ「え、あ、はい」
果南「ちょっと二人で話してくるよ」
よしみ「……分かりました。後はよろしくお願いします」
349 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/04(木) 21:51:09.18 ID:4H6J/4r50
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
曜「………」ボーッ
果南「やっほ、帰って来たよ」
曜「あぁ……果南さん」
果南「怪我の具合はどう?」
曜「……見た通りだよ。皮肉?」
果南「そうじゃない、本人の口からも聞きたかったの」
曜「そう……」
果南「……」
曜「………」
果南「……私の代わりにみんなを守ってくれてありがとね。曜のおかげで―――」
曜「気休めは止めて。私は何も守れなかった」
果南「………」
350 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/04(木) 21:54:10.53 ID:4H6J/4r50
曜「何も……ね……」
……重苦しい空気が医務室に漂う。
果南も曜も何も話さない。
長い長い沈黙が続く。
……そんな沈黙を打ち破ったのは曜だった。
曜「―――……歯が立たなかった」
果南「うん?」
曜「あれが守護者の実力なんだね。私の攻撃が全く通用しなかったよ……そもそも戦いにすらなって無かった」
曜「……このバカ曜は自惚れていたんだよ。千歌ちゃんが居れば誰にも負けないって思い込んでいた」
曜「その結果このザマ……ボロボロにされて、千歌ちゃんは連れ去られて、形見のリングも壊された」
曜「私は……私はっ……弱い……っ!!」ポロポロッ
351 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/04(木) 21:56:52.04 ID:4H6J/4r50
果南「……」
曜「あの女王のことだ、近い内に千歌ちゃんは必ず殺される……」
曜「もうぅ…… 二度と千歌ちゃんに会えない……」
曜「ねぇ、果南ちゃん……私はこれからどうすればいいの? ……どうしたらいいの?」
果南「どうすればいいか……か」
曜「もう分からない、分かんないよ……」
果南「悪いけどそれは私が決める事じゃないな」
曜「っ! だよ、ね……」
果南「でも、んー……強いて言うならそうだなぁ」
果南「――取り敢えずさ、難しいことは一旦置いておこうよ」
352 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/04(木) 21:59:37.31 ID:4H6J/4r50
曜「えっ……?」
果南「相手が誰だとか、自分の力がどうとか、そんなものは一回忘れよう」
果南「私は曜の本心が聞きたい」
曜「本心……?」
果南「確かに千歌は連れ去られた。でも、連れ去ったという事はダイヤは千歌に何かしら要件があるってことだ。すぐには殺されない」
果南「まだ曜は大切なものを全て失ってない。まだ取り返しがつく」
果南「……それを踏まえて聞くよ、曜はどうしたいの?」
曜「………ぁ」
果南「言ってごらんよ」
曜「………たい」ボソッ
果南「ん?」
曜「……千歌ちゃんに、会い、たい…」ポロポロ
果南「うん」
曜「こんな殺伐とした所だけじゃなくて、この世界の楽しい所を見せてあげたい」
果南「……うん」
曜「千歌ちゃんが元の世界に帰るその瞬間まで……私が一番長く側に居たい」
曜「千歌ちゃんと話したい事も……一緒に行きたい場所も沢山あるんだよぉ……」ポタッポタッ
果南「……うん」ナデナデ
曜「だから……だからぁ……う、うぅぅ……ひっく、ちか、ちゃんに……会い、たい」
果南「……それが曜の本心なんだよね?」
曜「……うん」
353 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/04(木) 22:03:07.36 ID:4H6J/4r50
果南「立ち向かう勇気はある?」
曜「……ひっく、……え?」
果南「もう一度、戦う勇気はある?」
曜「……でも私にはもう――」
果南はポケットから何かを取り出し、それをテーブルの上に置いた。
曜「これって、まさか」
果南「雨のAqoursリングとその専用の匣だよ」
果南「これを曜に託す」
曜「!」
果南「確かに曜は弱い。でも力が足りないなら、別の何かで補えばいい」
果南「曜の覚悟が本物なら、このリングと匣は必ず力を貸してくれる」
曜「……力」
果南「ただし、ここでその覚悟を示せないのならそれまで」
果南「千歌の事は諦めるんだね」
曜「……」
354 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/04(木) 22:15:22.97 ID:4H6J/4r50
果南「どうする? ……決断して」
曜「……答えなんて決まってる」
曜は机の上に置かれたリングを掴み、右手の中指にはめた。
曜の想いに呼応し、リングから雨属の青い炎が灯る。
灯った炎は不純物が殆どない、透き通るような青色の炎。
炎の純度はリングの性能にも左右されるが、
大きな要因は使用者の想いの強さだ。
混じり気の無い純粋な想いを持つ者に
リングはその力の全てを還元する。
曜「凄い綺麗だ……」
果南「曜はそのリングに認められた。雨の守護者に選ばれたんだよ」
曜「私が、守護者に……? 実感がわかないなぁ」
果南「これでメンバーが揃った。ダイヤ達に挑む為のメンバーがね」
曜「でも雷が……」
ルビィ「私が居るよ」ガラガラッ
曜「る、ルビィちゃん……!?」
355 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/04(木) 22:16:01.95 ID:4H6J/4r50
ルビィ「私も戦う……戦わなくちゃダメなんだ」
ルビィ「もう、後悔したくないから」
花丸「一度やると決めたルビィちゃんは誰にも止められないずら」
果南「ルビィ、花丸……勝手に入って来ちゃダメだよ」
ルビィ「ごめんなさい……」
花丸「でもさ、改めて考えるとマル達はイカれた事考えてるよね」
花丸「たった六人で国相手に挑もうとしているんだもん。正気の沙汰じゃ無いずら」
ルビィ「目的もバラバラだしね」
曜「いくらリングが凄い力を持っているからって、この人数で勝算はあるの?」
果南「勿論」
果南「みんな無事で終わるのが理想だけれどね。少なくとも私は死ぬからさ」
曜「……」
花丸「まあ……うん、そうだよね」
ルビィ「果南さん……」
356 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/04(木) 22:21:01.44 ID:4H6J/4r50
果南「もう! みんな暗い顔しないの!」
果南「私はこの力を得た事を後悔してない。命の使い方を自分で決めただけ」
花丸「……言い方だけはカッコいいずらね」
果南「――曜!」
曜「!」
果南「これから新しい力の使い方をマスターしてもらう」
果南「時間が無い……死ぬ気でやりなよ?」
曜「……分かってるさっ!」
357 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/04(木) 22:25:36.99 ID:4H6J/4r50
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
千歌「――あっ」
善子「げっ」
善子「マジか……私が最初に見つけちゃった……」
千歌「私を探していたの?」
善子「そうよ。女王がアンタと話がしたいってさ」
千歌「……そっか」
善子「そもそも、何勝手に城内をウロウロしているのよ!」
千歌「だって梨子ちゃんがいいよって言ってたから……」
善子「梨子がぁ?」
千歌「聞いてないの?」
善子「……まあいいわ、案内するからついて来なさい」
善子「……」
千歌「……あー、その」
善子「何?」
千歌「怪我は大丈夫?」
善子「あぁ、うん、別に何ともない」
358 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/04(木) 22:28:14.17 ID:4H6J/4r50
千歌「なら良かった」
善子「……変な人ね」
善子「ねえ、アンタ」
千歌「千歌だよ」
善子「千歌は普通に梨子や私と会話しているけど、怖くないの?」
千歌「怖い? どうして?」キョトン
善子「自覚無しか……ならそれでいいわ」
千歌「気にかけてくれてありがとうね」
善子「別に」プイッ
千歌「ふふ、善子ちゃんは善子ちゃんのままだね」
善子「千歌がそう思うならきっとそうなのかも」
善子「ただ、油断して心を許すような真似はしない事ね」
善子「私にとって千歌は友達どころか知り合いでもない、赤の他人なんだから」
千歌「今から友達になれないの?」
善子「……はぁ?」
359 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/04(木) 22:29:49.57 ID:4H6J/4r50
千歌「な、何さ……?」
善子「あのね……敵対組織の人間同士が友達になれると思う? 無理でしょ」
善子「それとも千歌は果南達を裏切ってこっち側の人間になるって言う訳?」
千歌「それは……うぅ……」
善子「どーせ短い付き合いになるんだし、無理して関わる必要は無いわ」
善子「っと、話している間に着いたわよ」
千歌「ほぇ……大きな扉だね」
善子「この中で女王が待っている」
千歌「ダイヤさんが……」
善子「千歌の知ってる女王がどんな性格かは知らない。けど、同じように接するのは止めておきなさい」
千歌「……うん、気を付けるね」
善子は自分の身長の数倍大きな扉を開ける。
その向こうには、RPGでよく見る『王の間』と同じ様な空間が広がっていた。
扉から最奥にある玉座まで赤い絨毯が敷き詰められている。
玉座には一人の女。
退屈そうに頬杖をつきながら。
じっと千歌の目を見据える。
……冷たい。
視線、空気感がとにかく冷たかった。
今にも氷漬けにされそうな感じ。
震えが止まらなかった。
千歌「……ダイヤさん」
ダイヤ「ダイヤ……ああ、久しぶりにその名で呼ばれましたわね」
360 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/04(木) 22:34:49.75 ID:4H6J/4r50
ダイヤ「何をしているのです、もっと近くまで来なさいな」
千歌「う、うん……あ、はい、分かりました」
ダイヤ「普通の言葉遣いで構いませんよ。貴女にとってわたくしは女王ではないのですから」
ダイヤ「ふむ、実際にこの目で見て見ると……」ジロジロ
ダイヤ「何と言うか……普通、ですわね」
千歌「うぐっ」
ダイヤ「崩壊のリスクを冒してまで鞠莉がわざわざ別世界から呼び寄せた人物にしては普通過ぎる……」
千歌「……私だって好き好んで来た訳じゃ」ムスッ
ダイヤ「ああ、気分を害されたのなら謝罪しますわ」
千歌「え、いや、大丈夫です、よ?」
……あれ?
思っていたより普通に話せるぞ??
ダイヤ「首にぶら下がっているそのリング」
千歌「これですか?」ジャラッ
ダイヤ「それを触媒に召喚されたのですね」
361 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/04(木) 22:37:59.81 ID:4H6J/4r50
千歌「そうなんですか? 私には分からないですけど」
千歌「あ、これには触らない方がいいですよ。何かバリアみたいな物が張られているみたいで……」
ダイヤ「ご心配なく、貴女からそのリングを没収するつもりはありませんから」
千歌「大空のリングですよ?」
ダイヤ「現状それを使える人物はこの世に居ない。誰が持っていても関係ありませんわ」
ダイヤ「わたくしが貴方を連れて来させたのは大空のリングが欲しかったからではありません」
ダイヤ「貴女の力……いいや、正確には“貴女の中にある力”が欲しかったからです」
千歌「私の中にある……力?」
ダイヤ「貴女が唯一使える技の『同調』。これは元々鞠莉の技だという事は知っていますか?」
千歌「知ってるよ」
ダイヤ「では、本来なら貴女はこの世界の力を扱えない事は?」
千歌「……?」
ダイヤ「別世界から来た貴女と私達は体の作りが若干異なります」
ダイヤ「貴女には私達と違って炎を灯す為の生命エネルギーの波動が流れていない」
362 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/04(木) 22:45:07.84 ID:4H6J/4r50
ダイヤ「ですが貴女が使っている『同調』はれっきとした炎を使った技です」
千歌「……何? どういう事??」
ダイヤ「使えないはずのものが使える理由はただ一つ」
ダイヤ「――貴女の中には鞠莉の魂が宿っているんですよ」
ダイヤ「それ故に貴女には大空の波動が流れ、鞠莉の技が使えるのです」
ダイヤ「恐らく、そのリングも使えるでしょうね」
千歌「……意味が分からないよ」
千歌「私の中に鞠莉ちゃんが? そんなバカげた話が……」
ダイヤ「信じてもらう必要はありません」
千歌「……ダイヤさんは私の、私の中の鞠莉さんの力を使って何をするつもりなの?」
ダイヤ「世界を救います」
千歌「……は?」
ダイヤ「私の行動、決断は全てこの国を守る事、そして世界を救う事に重きを置いている」
363 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/04(木) 22:47:31.22 ID:4H6J/4r50
千歌「話が全く読めないよ……ダイヤさんは悪者なんじゃないの!?」
ダイヤ「では逆に質問しますが、わたくしは誰にとっての悪者ですか?」
ダイヤ「浦の星ですか? 虹ヶ咲ですか? それとも音ノ木坂ですか?」
ダイヤ「まあ、少なくとも後者二つにとっては悪に見えるでしょうね」
千歌「……そうだよ! ダイヤさんが戦争を仕掛けたせいで大勢の人が亡くなっている!」
千歌「星空さんやあの姉妹だって死ぬことは無かった!!」
ダイヤ「………」
千歌「他の国を強引に侵略して、罪の無い人を大勢殺して……これがダイヤさんがやりたかった事なの……?」
千歌「答えて……っ!」
ダイヤ「………黙りなさい」ギロッ
千歌「ひっ!?」
千歌は心臓を鷲掴みにされたような感覚に襲われた。
……殺される。
彼女の本能はそう直感した。
ダイヤ「……失礼。“怒り”は残している数少ない感情ですのでつい高ぶってしまいました」
364 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/04(木) 22:49:56.57 ID:4H6J/4r50
千歌「……はぁ、はぁ」ドクンッ、ドクンッ
ダイヤ「高海 千歌、貴女には知る権利がある」
ダイヤ「何故この世界に呼び寄せられたのか、そして貴女がこの世界で成すべき使命を」
千歌「……ダイヤさんが呼び寄せた訳じゃないのに知っているわけが……」
ダイヤ「おおよその検討はつきますとも」
ダイヤ「全ては二年前、鞠莉を始めとした多くの主要人物が殺されたあの会合での事件ですわ―――」
――
――――
――――――
――――――――
――――――――――
――――――――――――
365 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/06(土) 14:31:34.32 ID:IUh86TrAO
ついに真相がわかるのか
366 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/06(土) 23:39:34.31 ID:U1qz22Pu0
〜二年前 虹ヶ咲王国某所 城内〜
鞠莉「―――じゃあ、ダイヤ以外はここで待っていて」
【浦の星王国 第八代目女王 小原 鞠莉】
「承知いたしました」
「のんびり待ってますよ〜」
「後は任せたよ、ダイヤ」
ダイヤ「鞠莉様、行きましょう」
【浦の星 雨の守護者 黒澤 ダイヤ】
―――ガチャッ
鞠莉「チャオ〜♪」
「……遅い、やっと来たよ」
「待ってましたよ、鞠莉さん」
367 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/06(土) 23:46:19.55 ID:U1qz22Pu0
鞠莉「あら、私が最後だったのね。遅くなってしまってごめんなさい」
鞠莉「――雪穂、歩夢♪」
【音ノ木坂王国 第十代目女王 高坂 雪穂】
【虹ヶ咲王国 第三代目女王 上原 歩夢】
歩夢「あ、謝らなくていいですよ! それほど待っていませんので」
鞠莉「んん〜、やっぱり二人は優しいわね!」
雪穂「……私は別に許してないんですけど?」
歩夢「まあまあ、いいじゃないですか」
鞠莉「ごめんってばユッキー」テヘペロ
雪穂「ユッキー言うな!」
亜里沙「馴れ馴れしいですよ、浦の星の女王」ギロッ
【音ノ木坂 霧の守護者 絢瀬 亜里沙】
鞠莉「……むぅ、ソーリー……」
ダイヤ「……」
368 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/06(土) 23:49:19.36 ID:U1qz22Pu0
かすみ「……ねえ、歩夢」
【虹ヶ咲 雲の守護者 中須 かすみ】
歩夢「どうしたの?」
かすみ「本当にあれが浦の星の女王様なの?」
歩夢「うん、そうだよ」
かすみ「……ふーん」
歩夢「どうかしたの?」
かすみ「初めて直に見たけど、なんか拍子抜けって感じー」
歩夢「ち、ちょっと!?」
かすみ「愛先輩もそう思いません?」
愛「愛さんに聞いちゃう?」
【虹ヶ咲 晴の守護者 宮下 愛】
愛「うーんまあ……威厳っていうかオーラ? みたいのが無いよね」
かすみ「やっぱり? かすみんの感覚に狂いは無かった!」
369 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/06(土) 23:51:21.35 ID:U1qz22Pu0
鞠莉「Oh……散々な言われようデース」シュン
歩夢「あわわわわわ」
雪穂「鞠莉が女王としての風格に欠けているのは確かだよ。もっと自覚持った方がいいんじゃない?」
鞠莉「親しみやすさを売りにしてるからいいのよ」ムッ
雪穂「でもさ……」
亜里沙「親しみやすさ……ねぇ」
ダイヤ「………」ジッ
かすみ「……何? さっきからかすみんの事ジロジロ見てさ……キモイんですけど」
ダイヤ「はて、わたくしは別に貴女の事など見ていませんが」
かすみ「嘘だね! 確かに視線を感じてましたー!」
ダイヤ「……随分と自意識過剰な方ですわね」
かすみ「はあ?」イラッ
愛「なら愛さんの方かな?」
370 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/07(日) 00:00:00.32 ID:U1qz22Pu0
ダイヤ「ですから、あなた達の様な下劣な人など見ていないと申しています」
愛「ありゃりゃ、下劣だってさ、私達」ケラケラ
かすみ「愛先輩……笑う所じゃないですよ」
鞠莉「ちょっとダイヤ、言葉には気を付けなさい!」
亜里沙「もっとも、女王に対して呼び捨てで呼んだり、キモイなどという下品な言い方をする辺り……まともな守護者ではないのは確かですけどね」
亜里沙「風格が欠如した女王といい、人間として低レベルな守護者を選別した女王といい、どちらも本当にどうしようもないですね」
ダイヤ「……はっ?」ピキピキッ
かすみ「……なーーんか、イラっとしましたね」
愛「はは……愛さんでも今のはちょーっと聞き捨てならないかなー?」ニコニコ
亜里沙「ん? 私、何か間違った事言いましたか?」
371 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/07(日) 00:04:43.32 ID:Zj9NQIuv0
ダイヤ「………」
かすみ「………」
愛「………」
亜里沙「………」
―――ボオオオッ!!!!
四人が放つ炎が部屋全体を覆う。
かすみ「増援呼ばなくていいんですかー? こっちには守護者が二人いるんですけどぉ?」
ダイヤ「構いませんわ。あなた達程度、わたくし一人で十分」
愛「女王を侮辱した事……後悔させてやる」
亜里沙「いい機会だね。全員ここで消す……!」
女王達「―――止めなさい」
四人「ッッッ!!!?」ビクッ
372 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/07(日) 00:08:08.03 ID:Zj9NQIuv0
雪穂「亜里沙、誰が戦えと命令した?」
亜里沙「ぅ……ごめん、なさい」
歩夢「二人共……自分が何をしようとしたか理解してるの!?」
かすみ「……だって」
歩夢「かすかす!!」
かすみ「……はい」シュン
歩夢「愛さんもだからね!」
愛「あはは……申し訳ない」
鞠莉「らしくないじゃない? 果南なら冷静に対処したと思うわよ」
ダイヤ「ええ……完全に頭に血が上ってしまいました……反省しています」
鞠莉「全く……どうして険悪な雰囲気になっちゃうのかしらね?」
歩夢「長い間争っていた仲でしたから仕方ないですよ」
鞠莉「私達は凄く仲良しなのにねぇ」
雪穂「……えっ、仲が……いい?」
鞠莉「ちょっ、冗談キツイよ……ユッキー」
雪穂「悪かったよ、マリー」フフ
歩夢「あ、あははは……」ホッ
373 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/07(日) 00:22:42.95 ID:Zj9NQIuv0
歩夢「ゴタゴタはありましたが、一先ず座って下さい」
歩夢「私達は争う為に集まったんじゃ無いのですから!」
鞠莉「そうね!」ヨイショ
雪穂「早速本題に入ろう。マリー」
鞠莉「ええ」
鞠莉「……私が並行世界を観測する力がある事は知っているわよね?」
雪穂「うん」
歩夢「私達女王がそれぞれ持つ特異能力ですから」
雪穂「マリーの国は別世界から色々な知識、技術を会得して発展してるんだもんね……反則だよ、全く」
鞠莉「私がその能力で観測していた世界が次々と消滅している」
歩夢「消……滅……?」
雪穂「文明が滅んだとかじゃなくて?」
鞠莉「人類が滅亡したとか地球が吹き飛んだとかそんな次元の話じゃないわ……まるで世界(宇宙)全てを消しゴムで消したように綺麗さっぱり、痕跡一つ残っていない」
歩夢「――まさか」ゾッ
374 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/07(日) 00:41:46.13 ID:Zj9NQIuv0
鞠莉「歩夢なら聞いた事があると思うわ」
鞠莉「私と同じ様な能力なんだもん、どこかの世界線で見聞きしたはずよ」
歩夢「……っ」
雪穂「何? 早く教えてよ」
歩夢「……『ヨハネ』ですよね?」
雪穂「『ヨハネ』……?」
鞠莉「この世界は鏡合わせのように無数の世界で構成されているのは知っているわね」
雪穂「今更説明されなくても大丈夫だよ」
歩夢「けれど維持できる世界の数には限界があります」
鞠莉「『ヨハネ』は並行世界の数を間引いて調整する……言ってしまえば神みたいな存在ね」
雪穂「……そのヨハネが世界を消す基準は?」
鞠莉「正確には分からない……私はヨハネが“この世界には未来が無い”と判断した時に役目を実行すると予想している」
歩夢「私はヨハネの気分次第って聞きました」
雪穂「曖昧な基準だな……」
鞠莉「つい先日消滅した世界の“私”が消滅間際にこう言っていたわ」
鞠莉「――『覚悟しなさい、ヨハネは貴女の世界に向かった』ってね」
歩夢「……」
雪穂「……そう、選ばれちゃったか」
375 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/07(日) 22:12:24.45 ID:Zj9NQIuv0
かすみ「……デタラメだ」
かすみ「浦の星の女王は私達を陥れる為にデタラメを言ってるんだ! 世界が消滅する? ありえないっ!!」
歩夢「かすかす……」
かすみ「確か音ノ木坂の女王は、過去と未来のモーメントリング継承者とコンタクトが取れるんだったよね!?」
愛「そうか……! 未来に継承者が存在していれば……!」
雪穂「……」
亜里沙「ど、どうなの……?」
雪穂「……残念ながらマリーの言っている事はデタラメじゃないよ」
かすみ「っ!!?」
雪穂「真っ暗だった……未来に私達は、いや、私達の世界は存在していない」
亜里沙「そん、な……」
鞠莉「このまま何もしなければ私達の世界は確実にヨハネに消される」
ダイヤ「相手は神なのですよね? 何か手段はあるのですか?」
376 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/07(日) 22:15:48.27 ID:Zj9NQIuv0
鞠莉「……愚問ね、何の為に三人の女王が集まるこんな場を用意したと思っているの?」
歩夢「ヨハネによる間引きが実行された並行世界で消滅しなかった所が僅かながら存在しています」
鞠莉「撃退出来るって事なの、ヨハネの襲撃はね」
雪穂「神を相手に真っ向から挑もうってか……」
雪穂「……面白いじゃない」ニヤッ
愛「……なんだか急に分かりやすい話になってきたね!」
愛「早い話『私達で協力して強大な敵を退けよう!!』って事でしょ!」
ダイヤ「人々が団結するのに共通の敵の存在は好都合ではありますが……」
かすみ「協力する、なんて出来るの? 私達でさえあのザマだったのに他の奴らじゃ到底無理よ」
歩夢「出来なかったら消滅するだけだよ」
かすみ「むぅ……それはイヤだな」
愛「やるっきゃないでしょ!」
377 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/07(日) 22:23:54.86 ID:Zj9NQIuv0
ダイヤ「具体的にどんな作戦で?」
鞠莉「まず第一に――」
「―――楽しそうな話をしているじゃない、私も混ぜてよー」
一同「っっ!!!!?」ギョッ!
「どう? いいよね?」
雪穂「何コイツ!? どこから入って来た!!?」
歩夢「う、嘘……」ゾッ
愛「歩夢下がって! かすみ!!!」
かすみ「分かってますよ愛先輩っ!!!」
ダイヤ「何の前触れも無く現れた……っ!?」
鞠莉「………っ」
ダイヤ「鞠莉! わたくしの後ろに――」
378 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/07(日) 22:26:07.64 ID:Zj9NQIuv0
鞠莉「また会ったわね、『ヨハネ』」
鞠莉「あっ、“この世界”では初めましてだった」
ヨハネ「みなさん初めまして。私が噂の『ヨハネ』よ」
ダイヤ「ヨ、ハネ……コイツが」
愛「背中から黒い羽根なんか生やして……これって」
かすみ「神って言うより堕天使って感じ?」
ダイヤ「見た目なんてどうでもいいですわ!!」
ダイヤ「重要なのは我々が倒さねばならない敵が今目の前に現れた! それだけです!!!」
かすみ「……アンタに言われなくても分かってますー!」ボオッ!!
愛「他の守護者も直ぐに駆けつけて来る。サクッと倒して世界を救っちゃおうか!」ボオッ!!
雪穂「……あれ?」キョロキョロ
379 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/07(日) 22:28:24.81 ID:Zj9NQIuv0
ヨハネ「挑むんだ、この私に」
ヨハネ「ちょっと予定より早いけど……ま、いっか」
―――ゴオオオオッッ!!!
ダイヤ「ッ!? 黒い炎!?」
ヨハネ「今すぐこの世界を消すけど……いいよね?」
歩夢「あの炎を使わせちゃダメッ!!」
かすみ「って言われてもさぁっ!!」
愛「間に合わない……ッ!」
ダイヤ「私の技で防ぎきれ――」
鞠莉「……ダイヤッ!!!」ドンッ!!
ダイヤ「えっ」
カッ―――!!!
380 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/07(日) 22:36:56.11 ID:Zj9NQIuv0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ダイヤ「―――……ぅぅ」パチッ
……天井が見える。
わたくしは倒れているのですか……?
……身体中が痛い。
右腕の感覚が――あぁ、肘から先が無いのか。
鞠莉さんに突き飛ばされた後の記憶がありませんわ。
自分の呼吸音しか聞こえない。
戦闘は既に終わった?
ヨハネ「……目が覚めたみたいね」
ダイヤ「ッ!!!? ヨ、ハネ……ッ!?」
ヨハネ「初撃で全滅させられなかったのは久々だったわ……ちょっと舐めてた」
ダイヤ「鞠莉は……鞠莉さんは……?」
ヨハネ「マリ? ああ、金髪のあれか!」
ヨハネ「あの個体は中々にしぶとかったよ。最期まで抵抗してきたしね」
ダイヤ「……殺した、のですね」
ヨハネ「ええ、この場で生き残っているのはあなただけ」
ダイヤ「この世界は消されるのですか……」
ヨハネ「そうしたいのは山々なんだけど直ぐには出来なくなった」
ダイヤ「……えっ?」
381 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/07(日) 22:52:16.70 ID:Zj9NQIuv0
ヨハネ「三人の女王を殺すのに力を使い過ぎちゃったのよ。だから暫くは回復に専念するわ」
ヨハネ「良かったわね? 寿命がほんの少し伸びて」ニコッ
ダイヤ「……わたくしを殺さなくていいのですか?」
ヨハネ「あなた程度ならいつでも殺せる」
ダイヤ「……ッ」ギリッ
ヨハネ「完全回復には数年掛かるわ。せいぜいそれまでに私と互角に戦えるだけの戦力を整える事ね」スウゥゥ...
ヨハネの姿は霧のように消えた。
ダイヤ「……死んだ……鞠莉さんが……死んだ」
……どうして鞠莉さんが死んでわたくしが生き残った?
黒澤 ダイヤ、貴様の使命は女王を守る事では無かったのか?
何故守るべき人に逆に守られた?
お前が、オマエが弱いせいで鞠莉さんは死んだ……。
ダイヤ「――……っあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
ダイヤ「何が守護者だ! 肝心な時に役に立たないじゃない!!」
ダイヤ「憎い! 自分の弱さが……憎い……ッ!!!」
ダイヤ「……わたくしを生かした事を必ず後悔させてやるぞ……ヨハネェェェェェェ!!!!」
―――パキッ、パキパキパキパキッ!!!
――――――――――――――
――――――――――――
―――――――――
―――――――
―――――
―――
382 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/07(日) 23:20:52.12 ID:Zj9NQIuv0
ダイヤ「……こうして、激しい憎悪をキッカケにわたくしは『氷河の炎』を発現しました」
千歌「……」
……ヨハネ。
それって善子ちゃんがいつも言ってるやつだよね。
これは偶然なの?
もし予想が正しければ善子ちゃんがヨハネの正体になる。
けれど善子ちゃんは当時あの場に居ない。
それどころか守護者にもなってないから流石に違うか……。
千歌「……今の話は果南ちゃんから聞いてない」
ダイヤ「当然です、話したのは貴女が最初なのですから」
千歌「そんな重要な事をどうして黙っていたんですか!?」
ダイヤ「……ヨハネは突然あの会合場所に現れました」
ダイヤ「そしてわたくし以外のあの場に居た全員を殺した」
ダイヤ「ですが、あの場に居た人数と死体の数が合わなかったのです」
千歌「数え間違いでは?」
ダイヤ「中には原形を留めていない死体もありましたが、確実に一人分足りなかった」
383 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/07(日) 23:22:34.51 ID:Zj9NQIuv0
ダイヤ「……つまり、ヨハネはあの場に居た人間の“誰か”に化けていた可能性がある」
ダイヤ「変装……と言うよりは変身に近い、もしくは寄生虫のように誰かの身体を乗っ取っていたのかもしれない」
千歌「ならヨハネは今も誰かの身体に潜んでいる……?」
ダイヤ「ヨハネがどのように身を隠しているか分からない以上、不用意に話すべきじゃないと判断しました」
ダイヤ「貴女に話したのは鞠莉が召喚した人物だったからですわ。ヨハネに対抗する切り札なら奴が潜んでいる可能性は極めて低い」
ダイヤ「もっとも、既に乗っ取られていたのなら詰みですけどね」
千歌「そんなの自分じゃ分からないよ……」
ダイヤ「構いませんわ。どちらにせよ話すつもりでしたから」
ダイヤ「ヨハネの存在が明るみに出れば世界は大混乱に陥る。存在を隠しつつ戦力を増強しなければならない」
ダイヤ「……人が強くなるのに最も重要な感情は知っていますか?」
千歌「……憎しみ、ですか?」
ダイヤ「ご名答」
384 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/07(日) 23:24:14.94 ID:Zj9NQIuv0
ダイヤ「わたくしを殺す為に強くなろうとする人が増えれば増える程、ヨハネに対抗出来る戦力も増える」
ダイヤ「及第点の戦力はヨハネに奪われない人形兵(マリオネット)としてストック、その過程でわたくしよりも強い人が現れればそれでも良かった」
千歌「果南ちゃん達と決別したのは……」
ダイヤ「それはご想像にお任せしますわ」
ダイヤ「“罪悪感”“同情”“悲しみ”……わたくしが憎しみの対象になるのに不要な感情は全て『氷河の炎』で凍結させました」
ダイヤ「生き残ったわたくしにはこの国を、この世界を守る義務があります……例え鞠莉の理想を踏みにじってでも」
千歌「そんな……」
ダイヤ「色々とやってきましたからきっと地獄に……いえ、その更に下へ落ちるでしょうね。ですがそれでいいのです」
ダイヤ「――業を背負うのはわたくし一人で充分ですから」
千歌「ダイヤさん……」
ダイヤ「果南の事です、数日以内に貴女を取り戻しにここへ乗り込んで来るでしょう」
千歌「!」
ダイヤ「果南かわたくしか、どちら側につくか決めて置いて下さい」
ダイヤ「話は以上です――」
385 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/12(金) 19:55:59.42 ID:NHs/6jEaO
まってるぞい
386 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/14(日) 23:44:33.61 ID:ceyo8NM50
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜四日後 車内〜
花丸「最後にキュッと締めて完成!」
ルビィ「うぎゅぅ!?」
花丸「ずらっ!?」
ルビィ「ぐ、苦しいよぉ……」
花丸「ごめんね……直ぐに緩めるずら」
曜「……もぐもぐ」
果南「お、美味しそうなハンバーガーじゃん。私も貰っていい?」
曜「えー……果南ちゃんさっきも食べてたよね?」
果南「そう固いこと言わないでさー」
曜「結構高いやつ買ったんだけど……」
387 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/14(日) 23:49:44.59 ID:ceyo8NM50
よしみ「そもそも味が分からない人が食べても意味無いよねー」
果南「うるさいぞ!」ドガッ!!
よしみ「うおっ!? 運転の邪魔しないでよ!!!」
果南「今のはよしみが悪い」プンプンッ
ルビィ「ネクタイ結べたよ!」
花丸「意外と苦労したずら……」
曜「お疲れ様」
果南「うん、良く似合ってるよ」
ルビィ「えへへ」
果南「この服は守護者が着ているものと全く同じものでね、耐炎性の高い繊維で作られているの」
ルビィ「炎の攻撃から身を守ってくれるんだね」
よしみ「その繊維、凄く苦労して手に入れたんだぞー」
388 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/14(日) 23:52:38.45 ID:ceyo8NM50
曜「いい素材で出来た服なのは分かったんだけど……」
果南「何か不満なの?」
曜「不満と言うかその……どうして全員黒いビジネススーツ風な訳?」
花丸「しかもメンズタイプだし。どうせなら女の子らしいのが良かったずら」
よしみ「何でって、分からないの?」
花丸「機能性を重視した?」
ルビィ「全身を覆えるから?」
果南「そんなのカッコイイからに決まってるじゃん!」
花丸「えぇ……」
果南「完全に私の好みです。異論は認めませーん」
よしみ「それに戦闘服と言えば黒スーツって相場が決まってるしね!」
果南「そうそう」
ルビィ「それは違うような……」
花丸「曜ちゃんも何か言ってやってよ!」
389 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/15(月) 00:06:02.61 ID:EgyrcWXx0
曜「……なるほど、うん、カッコイイのは分かる! なんかマフィアみたいでいいかも!」
ルビィ「多数派になっちゃった!?」
果南「でしょ!? 流石は曜、分かってるねっ!」
果南・曜「「イェーイ!!」パチンッ
ルビィ「ハイタッチまでしちゃったよ」
花丸「服装だけでモチベーションが上がるならいいんじゃないかな」
よしみ「……っと、明るい雰囲気なのはいいけどさ、そろそろ着くよ?」
果南「……ん、りょーかい」
―――ブロロロロッ……
曜「到着っと」トンッ
果南「すんなり着いたね」
ルビィ「入口の門が開いたままだ……」
花丸「門番も居ないずら」
よしみ「どうぞ入って来いってか……楽だから有難いけどね」
390 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/15(月) 00:08:07.59 ID:EgyrcWXx0
曜「……」
果南「怖い?」
曜「ううん、そうじゃないよ」
曜「まさか、憧れの場所にこんな形で来る事になるとは思ってなかったからさ。なんか不思議な気持ち」
果南「予想できないからこそ面白いんだよ」
曜「確かに。いつの間にか守護者にもなっちゃったし」フフ
ルビィ「ねぇ、曜ちゃん」
曜「ん?」
ルビィ「これ渡しておくね」
曜「……えっ、これってパパの……」
ルビィ「形見だったんだよね、このリング」
ルビィ「写真とかが無かったから記憶を頼りに花丸ちゃんと一緒に作り直してみたの」
花丸「見た目だけそっくりなハリボテのリングだけどね」
ルビィ「戦いには使え無いけど……受け取ってくれますか?」
曜「……当たり前だよ……まさかまたこのリングを手に出来るなんて! 本当にありがとう!!」ウルッ
ルビィ「うん! どうたしましてっ」
花丸「良かったずら♪」ニッ
391 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/15(月) 00:11:23.53 ID:EgyrcWXx0
よしみ「ねえみんな、この戦いがぜーーんぶ終わって丸く収まったらさ……何しよっか?」
曜「私は沢山あるんだよなぁ……」ウ-ン
花丸「マルは千歌ちゃんに歌を教えて貰うずら! 教えてくれる約束、まだ果たされてないからね」
ルビィ「一緒にダンスも教えてもらえるかなぁ……」
よしみ「じゃあ、その流れでアイドルやっちゃうってのは?」
花丸「ずらっ!?」
ルビィ「ぴぎぃ!?」
果南「お、それいいかも! みんな可愛いし人気出るんじゃ無い?」
曜「衣装作りなら私に任せるであります!」
よしみ「何言ってるの? 二人も一緒にやるんだよ」
果南「私も?」
曜「いやいや、この顔で人前に出るのはちょっと……ねぇ」
よしみ「設備の整った病院で手術すれば元の顔に治せるから心配しないで」
曜「この傷治るの!?」
392 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/15(月) 00:12:29.43 ID:EgyrcWXx0
よしみ「果南さんは……うん、命尽きるまで頑張ろ!」
果南「私だけ雑だなぁ……」
花丸「果南ちゃんもやるなら、マルはやってもいいずら」
果南「ちょ、本気で言ってるの!?」
ルビィ「私も!」
曜「楽しそうだし、やってみようよ!」
果南「マジか……」
よしみ「……どーします?」フフ
果南「……はいはい、分かったよ」
果南「もうこの際、千歌の世界と同じメンバーでグループ組んじゃおうよ!」
ルビィ「お姉ちゃん達も入れるの!?」
よしみ「それは思い切ったねぇ!」
393 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/15(月) 00:14:00.02 ID:EgyrcWXx0
曜「実現したら千歌ちゃんもきっと喜ぶよ!」
ルビィ「……実現するかな?」
果南「夢は声に出して言っちゃえば叶うんだよ」
花丸「あはは、ぶっ飛んだ夢ずら」
よしみ「ホント、あの氷の女王がふりふりひらひら衣装着て歌って踊る姿を想像したら……くっ、くふふふふ」
果南「あはははは、全然想像できないや!」
曜「楽しそうではあるけどね」アハハ
「―――ふふ、あはははははは♪」
よしみ「ははは………はぁ、笑った、笑った」
曜「………ふぅ」
ルビィ「………笑ったね」
花丸「………うん、満足したずら」
果南「―――よし、みんな行こうか」
394 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/15(月) 00:26:58.34 ID:EgyrcWXx0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
曜「ここって本当に王都なの? 誰も歩いてないじゃん」
よしみ「多分私たちが来るのを予想して外出禁止令が出たんだよ」
ルビィ「本当は人が沢山いるのに何か不気味な感じ……」
花丸「黒スーツ着た集団が横一列で歩いてる方がよっぽど不気味だと思うずら」
果南「無関係の人を巻き込まなくて済むのは有り難いかな」
よしみ「いつ襲って来るか分からない。気は抜かないで」
果南「……っと、敵の団体さんが見えてきたね」
城へと続く一本道。
その行先には無数の人形兵と王立軍の兵士が群がっていた。
曜「も、物凄い数だね」
果南「ザッと見て200人くらいって感じ?」
よしみ「意外だな……本気で倒す気は無いのか」
曜「この数で!?」
395 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/15(月) 00:30:30.32 ID:EgyrcWXx0
花丸「ここは敵の本拠地だよ? その全兵力がこの程度の訳が無いずら」
ルビィ「お姉ちゃんは何を考えているんだろう……」
果南「ともあれ、邪魔するなら蹴散らすだけだよ。……花丸」
花丸「『村雲』の出番ずらね!」
果南「範囲攻撃で半分くらいは片付けて欲しい」
花丸「……了解ずらっ!」ボウッ!!
よしみ「――いや、狙うのは入り口に向かうのに邪魔な敵だけに絞っていいよ」
花丸「えっ、そんなピンポイントでいいの?」
よしみ「これから強敵と戦うのに無駄な体力を使う事無いよ」
よしみ「『村雲』で隙を作ったらみんなは一気に城内に駆け込んで。連中とは私一人で戦う」
ルビィ「よしみさん!? む、無茶だよ!?」
花丸「よしみさんでもこの数を一人では……」
396 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/15(月) 00:33:57.74 ID:EgyrcWXx0
よしみ「数が多いったって全員守護者より弱いから大丈夫大丈夫!」
よしみ「それにAqoursリングを持たない私じゃこの先足手まといになる。ヒーラーは真っ先に狙われるポジションだしなおさらね」
よしみ「私が役に立てる場面はここしかないの」
果南「……」
果南はよしみの耳元へ顔を近づけ小声で話しかける。
果南「……さっきあんな事言った癖に自分は死ぬ気なの?」
よしみ「その言葉、そのまま果南さんにお返しますよ」
果南「うぐっ」
よしみ「果南さん側につくと決めたあの日からこうなる覚悟は出来てました。この世に動く体がある限り、死んでも連中は足止めしてみせます」
果南「……ごめん」
よしみ「その代わり、あの女王様をちゃんとブン殴って来なよ?」ニコッ
果南「――よしみの提案に乗ろう」
曜「本気!?」
果南「よしみはこの中で『二番目』に強い。数が多くても有象無象が相手なら一人で問題無い」
よしみ「みんなには話してない“奥の手”もあるし!」
397 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/15(月) 00:38:43.95 ID:EgyrcWXx0
果南「花丸、お願い」
花丸「……ずら」ボオッ!!
匣の中から日本刀型の武器『村雲』を取り出す。
手に取った『村雲』を刀身からそっと地面に落とすと、まるで水面に落としたように地中に吸い込まれていった。
次の瞬間、花丸の背後の空間に円形状の光の扉が大量に発生した。全ての扉からは『村雲』の刀身が飛び出ている。
高らかに右腕を突き上げ、標準を定める。
花丸「―――……一掃せよ、『村雲』!!!」
腕を振り下ろしたと同時に、待機中の『村雲』が敵陣へと一斉掃射された。
狙われた範囲に居た人形兵や兵士の体を次々と貫く。
果南「今だ!!! 走れ!!!」ダッ!!
曜「うん!」ダッ!!
花丸「後で合流しようね!」ダッ!!
ルビィ「待ってるから……っ!」ダッ!!
「くそっ……何てデタラメな匣兵器だ…」
「しまったっ!? 何人か侵入された!」
「追え、人形兵(マリオネット)!!!」
よしみ「……おっと、ダメダメ、追わせないよ?」
「……はあ?」
「おいおい……この数相手に一人で戦うのか?」
398 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/15(月) 00:40:52.15 ID:EgyrcWXx0
よしみ「………」ニコッ
「……人形兵、殺れ」
命令を受けた人形兵が一斉によしみへ襲い掛かる。
それぞれ多様な属性、匣兵器で武装した人形兵。
よしみは匣兵器を使う素振りすら見せない。
よしみ「――ッうらあああああッ!!!」
実にシンプルな攻撃だった。
最初に届く範囲に来た人形兵の顔を掴んで振り回したのだ。
たったこれだけで、掴まれた人形兵の顔はひしゃげ、巻き込まれた三体も機能を停止した。
「腕力だけでこんな……んな!?」
「な……なんだっ!? その“腕”は何なんの!!?」
人形兵を掴んだよしみの腕の筋肉は異常なまでに巨大化していた。
……実に通常時の約五倍。
よしみ「……驚いた? 肉体が炎の特性を匣兵器並に生かせるように体をちょーっと改造(いじ)ってるんだよね」
「バカな……そんな技術がいつの間に実用化されていたの……?」
399 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/15(月) 00:42:20.66 ID:EgyrcWXx0
「あの人は以前、人形兵開発の最高責任者だった人よ。未発表の技術の一つや二つあっても不思議じゃない」
よしみ「私の持つ属性は『雲』と『晴』の二つ」
よしみ「雲の増殖による『筋肉の異常増殖』+晴の活性による『過剰活性』の複合技」
よしみ「―――差し詰め、『肉体変異(メタモルフォーゼ)』とでも名付けようかな」
―――メキッ、ミキミキミキッ!!!
二種類の炎の力で右腕だけではなく左腕、両足も同じく巨大化
よしみの見た目はもう完全に化け物となった。
「こ、これが人間の姿……なの……?」
よしみ「一人で残ったのはこの醜い姿を見られたくなかったのもあるんだよねぇ!!」
「……この化け物めっ」
よしみ「――さあ、いつでもいいよ……死にたい奴から掛かって来なぁ!!!」
400 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/18(木) 22:41:20.34 ID:tYHAcBhr0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜城内 三階 大広間前〜
花丸「……静か過ぎる。私達の足音しかしないずら」
曜「ねえ、城の中って普段から誰も居ないの?」
果南「まさか」
ルビィ「曲がり角とかから襲って来てもおかしくないのに……」
花丸「最短距離で王の前に向かっても良さそうだね」
ルビィ「お姉ちゃんがそうさせてる気もするけど……」
果南「廊下の突き当たり、扉の向こうの大広間を抜ければ直ぐに着く!」
花丸「……扉の向こう……何か、嫌な感じがするずら……」
曜「うん……誰か居るね」
ルビィ「迂回する?」
果南「時間が惜しい。このまま突っ切る」
曜「分かった……」ゴクッ
401 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2019/04/18(木) 22:47:35.65 ID:tYHAcBhr0
果南「……開けるよ!」
果南は大広間への扉を勢いよく蹴り開ける。
中に居たのは―――。
梨子「……来たわね」
ルビィ「う、嘘っ!?」ビクッ
曜「……桜内、梨子っ!!」
梨子「君は……あんだけコテンパンにしたのにまだ戦う意思が残っていたんだ……」
梨子「ついでにAqoursリングも手に入れちゃったと」
曜「……お陰様でねっ」ギロッ
果南「城内でも人形兵が襲って来ると思ったんだけど……初っ端から梨子か……っ!」
梨子「城の中で人形兵が襲って来る事は無いわよ」
梨子「この上の階に善子、そして王の間にはダイヤ様と高海 千歌が居る」
花丸「本当ずらか?」
梨子「そんなつまらない嘘は言わない」
果南「先に進みたかったら梨子を倒すしかない訳だね」
梨子「その通り」キイィィン
―――ゴオオオォォッ!!!
放たれる強大な光球。
果南は右手を突き出してそれを打ち消した。
梨子「凄っ! 本当に問答無用で打ち消しちゃうんだ!!」
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