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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」
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350 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:40:40.34 ID:4VeOdYd2o
ザッ ザッ
提督「いつもなら土をかぶせるところまでユンボでやってるんだがな」
由良「いいんじゃない、大事な仲間だったんだもの。自分たちの手で弔いたいのよ」
提督「……まあ、別にそれに文句があるわけじゃあねえさ」
如月「司令官には司令官なりの埋葬の手順があるものね。いつもと違うから、手をつくし足りないって、感じてるんでしょう?」
提督「まあ、な」
ザッ ザッ
朝雲「それじゃ、最後に艤装を上にのせて……」
山城「こう?」
吹雪「はい。少し周りに土を寄せて……これで大丈夫です」
不知火「こちらをどうぞ」
扶桑「お線香ね、ありがとう……これは?」
不知火「紙パックですが、お酒です。妖精さんにお祓いしてもらいました」
山城「お神酒ってわけね。このままおいておくといいの?」
不知火「はい。最後に回収して振る舞います」
351 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:41:39.44 ID:4VeOdYd2o
五月雨「お経とか読まないんですか?」
不知火「残念ながらそういったことをできる人がいませんので」
吹雪「司令官も神様や仏様を信じてないので『俺がそういうことをするのはおかしい』と言ってました!」
如月(吹雪ちゃん、司令官の物まね上手ね……)
由良「でも、月に二回、妖精さんたちがお祓いをしてくれているから大丈夫よ」
提督「そういや、明日か明後日だったか」
初雪「そんなことしてたんだ……」
提督「お前が作った野菜とかもお供えしたりしてるんだがな」
初雪「知らなかった……」
吹雪「司令官、神仏は信じてないのに、沈んだ艦娘の供養はするんですね?」
提督「あー、まあな。幽霊の類は信じてるっつうか、この前見ちまったから信じざるを得ねえって感じか」
如月「え」
吹雪「は?」
初雪「なにそれ」
352 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:42:42.27 ID:4VeOdYd2o
五月雨「ゆ、幽霊が出るんですか!?」
不知火「……それでいきなり祠を建てると言い出したんですか」
由良「提督さん……本当なの?」
提督「揃いも揃って変な顔すんな」
朝雲「無理もないわよ、司令ってば幽霊信じてなさそうだし、実際に信じてなかったでしょ?」
扶桑「たとえ信じていなくても、見えてしまうものはたくさんありますよ」
全員「「!」」
扶桑「信じているけど見えないものも、見えているのに信じてもらえないものも、世の中にはたくさんありますから」
提督「……そうだな」
全員「「……」」
提督「時雨のほうはもういいのか」
扶桑「ええ、略式の略式ですが、つつがなく」
提督「そうか。俺たちも手を合わせさせてもらうか」
神通「那珂!!」
提督「ん?」フリムキ
353 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:43:46.95 ID:4VeOdYd2o
榛名「那珂ちゃん、どこへ行くんですか!?」
那珂「……」フラフラ
提督「なにやってんだ、あいつらは」
明石「あ、提督、こちらにいましたか」
提督「明石? どうした」
明石「いえ、さっき伝えそびれちゃったんですけど、目を覚ましてからの那珂さんの様子がおかしいんですよ」
明石「なんていうか、心ここに非ずって感じで、ふらふらっとドックを出てきちゃったんです」
明石「ああやって榛名さんや神通さんが呼び止めてもお構いなしで……それで追いかけたらこっちに来ちゃったんですが」
那珂「……」ヨタヨタ
山城「……あれは駄目だわ。目から光が失せてるもの」
那珂「……」
提督「やれやれ、いきなり暴れたりしないだろうな」
扶桑「それはないと思います。あの顔は……絶望しかしていない顔です」スッ
提督「扶桑?」
山城「扶桑お姉様!?」
スタスタ…
354 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:44:46.48 ID:4VeOdYd2o
扶桑「那珂さん?」
那珂「……」
扶桑「あなたの望みは、なんだったの?」
那珂「……」
扶桑「私には、なんとなくだけど、わかるわ。あなたのその目……全ての望みを失って、どこへ行ったらいいかわからない……」
扶桑「希望も行き場も失った人の目……そんな、目をしているわ」
那珂「……」
神通「那珂……!」
那珂「那珂ちゃんは……ううん、私は……」
那珂「みんなの前で、歌いたかった。ステージに立ちたかった」
榛名「……」
那珂「でも、もう、それもできなくなっちゃった」
那珂「轟沈した、艦娘は……元の場所に、戻れないって……」
那珂「私は……もう、『那珂ちゃん』に、戻れないって……」
那珂「私って……なんなのかな……」
神通「那珂……」
355 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:45:50.63 ID:4VeOdYd2o
山城「ちょっと、提督! あなた艦娘の責任者でしょ!? 那珂に何か言ってあげたらどうなの!?」
提督「ああ? 知らねえよ。そいつがどこへ行こうと、どこで沈もうと、俺の知ったこっちゃねえ」
山城「!?」
吹雪(また始まった……)
不知火(相変わらず言葉を選びませんね司令は……)
山城「ちょ、ちょっと!? 艦隊の司令官がそんな考えでやってていいの!? 部下の前よ!?」
提督「関係ねえよ。生きる意志のねえ奴を無理矢理生かしたって、どうせ行きつく先なんか決まってる」
提督「俺は扶桑にだって同じことを言ったし、ここにいる奴らにも言ってんだ。そいつだけ特別扱いして何になる」
山城「そんなのケースバイケースでしょ!?」
提督「違うね。ダブルスタンダードって言うんだよ、そういうのは」
山城「立ち上がるきっかけを作るくらいはできるでしょう!?」
提督「なんでそこまで世話焼いてやんなきゃなんねえんだよ、面倒臭え」
山城「めん……っ!?」
扶桑「……提督。あなたは、彼女を助ける気はないと?」
提督「そうだな。どっかで沈んでこの島に流れ着いたんなら、ここに埋葬するくらいの世話はしてやるさ」
扶桑「時雨のように、ですか」チラッ
356 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:47:03.69 ID:4VeOdYd2o
提督「ああ。時雨は無念だっただろうが、これでも幸せなほうさ。ここに埋まってるやつらは、みんな無縁仏だ」
提督「お前らみたいに、縁者が埋葬に参加することも、そいつを看取ってやることも、今までなかったからな」
五月雨「……」
神通「……」
那珂「……誰か……死んだの?」
提督「D提督鎮守府の時雨。扶桑と山城を追いかけてきて、轟沈して浜に流れ着いて、息を引き取った。今さっき埋葬を終えたばかりだ」
那珂「……」
提督「……」
那珂「そう、なんだ……」フラ…
榛名「那珂さん……?」
(時雨の艤装の前に立ち、艤装を見つめる那珂)
那珂「……」
明石「ど、どうしたんでしょう?」
提督「……好きにさせてやれ、思うところがあるんだろ」
357 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:47:47.66 ID:4VeOdYd2o
山城「だ、大丈夫なのかしら……」ハラハラ
扶桑「……」
那珂「……スゥ……」
那珂「♪ La …」
全員「「!?」」ドヨッ…
那珂「♪ Ah Ah …」
伊8「……いきなり歌いだすとか、なにがあったの?」ヒソヒソ
吹雪「さ、さあ……な、何か思うところがあったのかもしれないですけど……」ヒソヒソ
如月「ここは静かに聴きましょ?」ヒソッ
吹雪「……」コクコク
伊8「……」コクリ
榛名(那珂さん……!)ウルッ
358 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:48:39.14 ID:4VeOdYd2o
* 執務室 *
潮「え、遠征から帰還しました」
大淀「はい、お疲れ様でした」
朧「提督はまた砂浜ですか?」
♪〜……♪〜♪〜……
暁「? ……ねえ、何か聞こえない?」
霞「……外からみたいね」
* 厨房 *
♪〜♪〜……♪〜……
電「歌のように聞こえるのです」
比叡「……ほんとだ。誰かが歌ってる?」
朝潮「比叡さん、見に行ってみませんか? 朝潮、気になります!」
古鷹「行ってみましょう!」
359 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:49:52.31 ID:4VeOdYd2o
* 沖合 *
♪〜……♪〜♪〜……
利根「丘の上で誰かが歌っておるな?」
金剛「ここから聴いていても、excellent な歌声デスネ……」
大和「はい……でも、涙を誘われる、とても悲しげな声です……」ウルッ
敷波「ねえ、ちょっと丘に寄り道して行こうよ。ちゃんと聴きたいし」
初春「うむ。わらわも賛成じゃ」
長門「そうだな。演習結果の報告の前に、行ってみるか」
♪〜……♪〜♪〜……
* 丘の上 *
那珂「♪ La Lah... !」
(歌い終えて大きく息をつく那珂)
シ…ン
那珂「……」
360 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:50:47.97 ID:4VeOdYd2o
パチパチ…
那珂「!」
パチパチパチ…!
吹雪「那珂さん、すごかったです!」パチパチ
五月雨「私も感激しました!」
朝雲「アーとかラーだけなのに、すっごい綺麗だった!」
山城「すごすぎて涙が出てきたわ……」グスッ
扶桑「ええ、素敵だったわ」ウルッ
那珂「……」
如月「まさか司令官が涙するところを見られるなんて思わなかったわ」クスッ
提督「泣いてねえよ。むしろ泣いたのはお前らじゃねえか」プイ
明石「いや、でも本当すごかったですよ!」ウンウン
由良「うん、外なのにアカペラで、あれだけよく響く声、聞いたことないわ」
榛名「そんなの、当然です……! 榛名は知っています……那珂さんが、ずっと歌の練習をしてたこと……!」
那珂「…………」
榛名「やっと……やっと、みんなに聞いてもらえて……榛名は、感激しています……!」ブワッ
361 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:51:47.09 ID:4VeOdYd2o
那珂「……そっか……これで、良かったんだ……」
神通「那珂、あなたはどうして、ここで歌ったの?」
那珂「……誰かに聞いてもらいたかったんだと思うの……」
那珂「私も、轟沈して……ステージに立つ夢は見られなくなっちゃった……」グスッ
那珂「ここには、私とおんなじ、沈んだ人たちがいて……私と同じ人たちがいて……」
那珂「悲しいだろうな、悔しいだろうなって思ってたら、なにか、してあげたくなっちゃって……」
那珂「そう思ったら、歌いたくなったの。私には、歌しかないから……私の歌を聞かせてあげたい……聞いてほしい、って……」ポロポロ…
神通「那珂……」
那珂「神通ちゃん。那珂ちゃんは、幸せでした。最後にこんなに拍手をもらって……もう、思い残すことはないよ」ニコ
神通「な……」
山城「馬鹿なこと言ってんじゃないわよ!!」ガッシ
那珂「!?」ビクッ
山城「何が『思い残すことはない』のよ!?」
山城「あなたがそうでも、こっちはあんな歌聞いて感動してるところに、これでお別れですはいさようならとか、冗談じゃないわ!」
那珂「え……でも……」
吹雪「っていうか、山城さん、あんな歌って……」
山城「いいから黙ってなさい」ギンッ
吹雪「ハイ」ビクッ
362 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:52:48.35 ID:4VeOdYd2o
山城「こほん。あなたが死ななきゃいけない理由って何よ?」
那珂「え……だって、私、もうアイドルになれないし……」
山城「そんなの誰が決めたのよ」
那珂「轟沈したら……轟沈したらもうチャンスはないって言われてたんだよ!?」
山城「だったらもう一回チャンスを作ればいいじゃない」
那珂「そんな簡単に……」
山城「提督准尉。この島には特例があるのよね?」
提督「お、おう」
山城「轟沈した艦娘でも、この鎮守府に着任すれば艦娘として活動できる、っていう特例。私にも、この子にも適用できるんでしょう?」
提督「おう、できるぞ。ただ……」
山城「ただ、なによ」
提督「那珂と榛名は所属不明だ。こいつらが所属していたっていう艦娘養成所ってのが、海軍の施設にはない」
山城「なんですって!?」
那珂「……」
榛名「どういうこと……!? それじゃ、私たちは……!?」
提督「ドロップ艦と言っても通用するかもな」
那珂「……!!」
363 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:53:43.27 ID:4VeOdYd2o
山城「じゃあ、轟沈したことも隠せるってこと?」
提督「まあ、そうしようと思えば、できるだろうな」
神通「そ、それじゃ、那珂は問題なく戻ることができるんですか!?」
提督「ただなあ、その養成所ってのがどうもキナ臭くてな。榛名の話からも、怪しい匂いがぷんぷんしやがる」
提督「だからあまり外に出してやりたくないな。着任の時期も、実際の轟沈の時期と少しずらしたほうが良さそうだと思ってる」
提督「下手にこいつらが養成所と関わりがあることがばれると、面倒臭いことが起こりそうだからな……もちろん、杞憂ならなによりだが」
提督「あと、ほかにも心配なのは、那珂が工廠で見せたフラッシュバックみたいな症状だ」
提督「あれがなくなるまでは人前に出ないほうがいいんじゃねえか?」
那珂「……」
提督「それで、だ。一番肝心なことを聞くぞ」
提督「那珂。お前、生きていたいか、それとも死にたいか、どっちだ」
那珂「……!」
山城「そんなの決まってるでしょう!?」
提督「お前には聞いちゃいねえよ。那珂、お前の口から答えろ」ズイ
那珂「……あ……」
神通「那珂……!」
榛名「那珂さん……!」
364 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:54:36.71 ID:4VeOdYd2o
那珂「わたし、は……」
暁「あ、いたわ!」
那珂「!?」
提督「なんだ?」クルリ
タタタタッ
電「さっき歌っていたのは那珂さんだったのですか!?」
大淀「執務室にもあの声が届いていたので、急いできてみたんですが……」
古鷹「私たち、ここに来る前に歌が終わってしまったから、まともに聞けなかったんです!」
朧「もう一回、歌ってもらえませんか?」
那珂「え……!?」
長門「おお、提督たちもここにいたのか。コンサートはもう終わってしまったのか?」
大和「切ないながらも、とても綺麗な歌声でした」
金剛「Encore をお願いするネー!」
那珂「……」ポロッ
敷波「ちょっ、な、なんで泣いてんの!? 大丈夫!?」
365 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:56:00.40 ID:4VeOdYd2o
榛名「那珂さんは嬉しいんですよ。人前で歌って感想を聞くのが初めてですから」ニコ
利根「なるほど、そうであったか。初舞台ではやむを得まいな」
山城「……どうするの? 歌うの?」
那珂「うん……私……ううん、那珂ちゃんは、アンコールに応えます!」ビシッ
那珂「准尉さん! ここで、レッスンを続けさせてくださいっ!!」
提督「……大淀がいるから丁度いいな。今の那珂の台詞、聞いたな?」
大淀「はい。那珂さんも着任ですね」
扶桑「……提督」
提督「ん?」
扶桑「扶桑型超弩級戦艦、姉の扶桑です。先の挨拶では、お見苦しいところをお見せしました……申し訳ありません」
扶桑「私も、改めまして、妹の山城ともども、よろしくお願いしたいと思います……!」ペコリ
山城「扶桑お姉様……!!」
扶桑「山城、ごめんなさい。私の勝手な思い込みで、あなたまで危険な目に遭わせて……」
扶桑「時雨は、私たちの無事を喜んでくれたわ」
扶桑「山城も、私を助けようとしてくれた……それだけじゃなく、那珂も助けようとした」
扶桑「勝手に世を儚んで、命を粗末にするのはあなたたちへの背信でしかない、って思ったわ……」
扶桑「私も生きてみようと思うの。あなたが、那珂を……彼女を一生懸命に励ましたように」
366 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:56:48.85 ID:4VeOdYd2o
扶桑「あなたの姉として、恥じない生き方を、選んでみようと思うの」
山城「扶桑お姉様……っ!!」ヒシッ
扶桑「時雨は、許してくれるかしら……」
ポツ…
朝雲「!」
ザァァ…
不知火「雨……ですか!?」
如月「嘘っ、雲一つないのに!?」
サァ…ッ
暁「……すぐに止んじゃったわ」
古鷹「通り雨だったんでしょうか?」
山城「……時雨だわ。時雨が、扶桑お姉様を心配してくれているんですよ……」ウルッ
扶桑「そうね……優しい、雨だったものね」グスッ
提督「……」
扶桑「あの……提督?」
提督「ん」
扶桑「ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします」
提督「おう。まあ、楽にしてくれ」
367 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:57:37.26 ID:4VeOdYd2o
榛名「あ、提督! 榛名も! 改めて、よろしくお願いいたします!」
提督「ああ、わかったわかった」
金剛「Umm, どういうことかよくわかりまセンガ、とりあえず happy end デショウカ?」
神通「いえ、これからがスタートなんだと思いますよ?」ニコッ
霞「それで、那珂さんの次の公演はいつなの?」
那珂「公演……っ!」ジーン
那珂「あ、那珂ちゃんのことは、那珂さんじゃなくて那珂ちゃん、って呼んで欲しいなー!」
朧「那珂ちゃんさんですね!」
那珂「さんはつけなくていいよ!?」ガビーン
霞「さんは外しちゃ駄目でしょ?」
朧「朧も良くないと思います!」
那珂「真面目なの!?」ガーン
由良「ま、まあ、本人が言ってるんだから、いいんじゃない?」
潮「い、いいんですか?」
那珂「うん! 駆逐艦のみんなも、気兼ねなく那珂ちゃん、って呼んでね!」
368 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 22:58:55.08 ID:4VeOdYd2o
朝潮「朝潮! 僭越ながら那珂ちゃんに質問があります」キョシュ
由良(言葉に違和感があり過ぎだわ……)
朝潮「先程那珂ちゃんが歌っていた歌は、なんという歌でしょうか!」
那珂「えっ? えーっと、実は……アドリブで歌ってたんだ〜」
電「えええ!?」
那珂「思い付きっていうか、その時に思い描いたメロディを、そのままコーラスにしただけで……」
那珂(本当にその場のノリで、切なさを思いっきり歌っただけなんだよね……)
那珂(私のキャラクターと方向性が全然違うし……こんなこと、みんなには言えないよ〜……)タラリ
古鷹「すごいです! シンガーソングライターみたいです!」
暁「恰好いいわ!」
那珂「で、でも、那珂ちゃんの本職はアイドルだから……」
長門「……ところで、アイドルというのはどういうものなんだ?」
大和「歌手とは違うのでしょうか」
比叡「別にアイドルじゃなくてもいいですよね?」
那珂「それは言っちゃダメェェェ!!」
369 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 23:00:37.20 ID:4VeOdYd2o
不知火「……」
提督「……不知火? どうかしたか」
不知火「些細なことなのですが」
不知火「那珂さんが歌っていたとき、風が止まっていました」
提督「それは珍しいな」
不知火「それどころか波の音も止まっていました」
提督「……」
不知火「何者かが、那珂さんの歌を聞きたくて、舞台を整えたのではないか、と……」
不知火「司令の仰った、幽霊の仕業ではないか、と、ふと思っただけです」
提督「……かも、な」
370 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/28(金) 23:01:22.14 ID:4VeOdYd2o
今回はここまで!
371 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/12/28(金) 23:21:29.64 ID:cobAN91L0
今回もお疲れ様!!
372 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/29(土) 16:47:12.68 ID:m2Hb6Qn+O
凄い良い話だった
373 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/30(日) 20:36:05.45 ID:FyyjOElCo
実は、一番時間がかかったのが那珂ちゃんの再起の場面で、
ここから下の部分は先週中に書き終えてました。
というわけで、裏で蠢く人たちのお話。
続きです。
374 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/30(日) 20:37:04.24 ID:FyyjOElCo
* 舞鶴 市街地某所 小さな居酒屋 *
トクトクトク…
J少将「H大将殿にお誘いいただけるとは恐縮至極です」
H大将「ああ、そんなに畏まらんでくれ。君とは一度こういう席で話をしてみたかったんだ」
H大将「遅くまで職務に励んでいるし、深海棲艦の邀撃にも積極的だというのに、艦娘とあまりコミュニケーションもとっていない」
H大将「人付き合いが苦手なだけなのか、それとも何か事情があるのか、ざっくばらんに話してみたくてな」チビッ
J少将「や、私にはそこまで深い事情は……」
H大将「ふむ。そうは言うが、深海棲艦の跋扈を忌々しく思っているところは、俺と同じじゃないのか?」
J少将「……」チビッ
H大将「やつらのせいで、俺たちは多くの船と仲間を失った。海軍を再編せねばならんほどに」
H大将「漁船や貨物船の安全も損なわれ、シーレーンをずたずたにされ、俺たちの生活も、戦力と誇りもずたずたにされた」
H大将「君もそれが心底気に入らないからこそ、今の君の戦果があると思っているんだが、どうだ」
J少将「……それは、仰る通りです」
J少将「海を守るために結成された我々が手も足も出ない……これを悔しいと言わずして何と言いましょうか」
J少将「しかも、深海棲艦に対抗できるのが、艦娘などという年端もいかぬ小娘の姿をしたものたちです」
375 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/30(日) 20:38:25.33 ID:FyyjOElCo
J少将「情けない。常日頃から心身ともに鍛えていた我々が、あのようなものたちに、自分の命運を委ねなければならない」
J少将「我々は、何のためにここにいるのか。艦娘に生かされている状態に、忸怩たる思いしかありません」
H大将「なるほど。君の思いは尤もなことだ」
J少将「H大将殿。あなたは、艦娘の運用について、何の抵抗も、歯痒さもないと仰いますか」
H大将「いいや、君と同じだ。女子供を矢面に立たせ、俺たちは陸の上でただ彼女たちの帰りを待つ……本来ならば逆だろうさ」
H大将「だが、深海棲艦に我々の攻撃も知識も通用しない以上、戦いは艦娘たちに頼らざるを得ないのが現実だ」
H大将「そして、俺たちが第一に考えなければならないのは海の平和だ。この順番だけは覆しようがない」
H大将「だとすれば、深海棲艦を駆逐し、無力化できる艦娘に頭を下げることこそが、俺の仕事になるのは当然の流れだと思っている」
H大将「いくら男としてのプライドがそれを邪魔しても、今はそれを曲げるしかない」
J少将「……あなたは、それでよろしいのですか」
H大将「ああ、相手が人間ではないからな。言葉は悪いが、亡霊の相手は亡霊にしてもらうしかない」
J少将「亡霊……と、仰いますか」
H大将「旧海軍の艦の名前を名乗っているうえに、その艦の記憶まで持ってきているとなれば、そう呼んでも間違ってはいないだろう」
376 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/30(日) 20:39:22.65 ID:FyyjOElCo
H大将「だが彼女たちは、人間を守ると言ってくれている。彼女たちは亡霊ではなく、英霊なのだ」
H大将「英霊と呼ぶには、少々……いや、えらく垢抜けてはいるがな」
J少将「……」
H大将「しかしだ。艦娘と深海棲艦の何が違うかと言えば、うまく答えることはできん」
H大将「今もって彼女たちと轡を並べることが本当に正しいことなのか、今もわからん」
H大将「俺たちは、都合よく現れた彼女たちに舌先三寸で言いくるめられて利用されているだけではないか……?」
H大将「そんな得体の知れない者たちに、この国の未来を託している現状は、非健康的というか、望ましい姿とは言えんな」
J少将「は。私もそう思います」
H大将「多くの疑念はある。だが、今は戦争中だ」
H大将「勝たねば人間の存続すら危ぶまれるのなら、手段を選んではおれんのも事実」
J少将「……」
H大将「自画自賛するつもりじゃないが、俺も艦娘の信頼を得て、西方海域の一部を奪還した」
H大将「今なお膠着状態ではあるが、その戦線を維持できているのも、前線に立つ艦娘とそれを指揮する司令官の努力によるものだ」
H大将「そればかりは、評価されて然るべきだと俺は思っている。いかに艦娘の正体がわからないとしてもな」
J少将「……この戦争が、艦娘と深海棲艦との自作自演である可能性があったとしても、ですか」
J少将「奴らのやっていることは、人の家の庭に入り込んで戦争ごっこを始めた傍迷惑な子供と同じです」
377 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/30(日) 20:40:43.80 ID:FyyjOElCo
H大将「そうだな……民間にしてみれば、戦っている相手が化け物だろうと人間だろうと関係はないし、戦争行為に変わりはない」
H大将「だからこそ、戦争を終わらせるためにも、俺は艦娘を頼るしかないと思っている。艦娘がその後どうするのかはわからんが」
H大将「どこへ行くのだろうな。この戦争が終わったら、彼女たちは……考えたことはあるかね?」チビッ
J少将「H大将殿。まさか、この期に及んで戦争が終わって欲しくないなどとお考えではないでしょうな」
H大将「それはない。不謹慎ながら、良い夢を見させてもらっている、とは思うがね」
J少将「……女性に囲まれた職場が、ですか?」
H大将「それはそれで否定はしないな。君は嫌か」
J少将「いえ……まあ、確かに賑やかというか姦しいというか……非日常的と言いますか」
H大将「苦手かね」
J少将「……否定は致しません」グイッ
J少将「男の見栄に理解を得られずケチをつけられるのは、少々こたえますな」
J少将「それどころか、色気づいて浮き足立つ若い連中に、何度頭が痛くなったことか……」
J少将「スイーツが何やらコスメが何やら……一昔前では考えられません」
H大将「確かにな」フフ
J少将「それから……敢えて言わせていただきますが、H大将殿が秘書艦にしている大井。聊か言葉がきつくありませんか」
H大将「いや、いいんだ。あれこそ俺にとっては良い夢だからな」
378 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/30(日) 20:41:36.91 ID:FyyjOElCo
J少将「? ……と、仰いますと……」
H大将「大井は、俺の死んだ妻にそっくりなんだ」
J少将「こ、これは失礼を……!」カバッ
H大将「いや、いいんだ、気にするな。俺が勝手にそう思っているだけだ」
H大将「それに、大井は艦娘の大井であって妻じゃない、似ているだけの別人だ。一緒にするわけにはいかんよ」
H大将「だが、あのきつい言い方が懐かしくてな。ついつい傍に置きたいと思ってしまうんだ」
H大将「もし妻が生きていて、軍に配属されていたとしたら、あんな感じだったんだろうなと……思わずにおれん」グイ
J少将「……」
H大将「大井が俺の気持ちにどれほど気付いているかは知らんが、この話をあいつにする気はない」
H大将「もしこの戦争が終わって、大井が消えてしまうのなら、それこそ亡霊だ。入れ込むわけにはいかん」
H大将「そういう意味でも、戦いが長引くとつらい。俺があいつにのめりこまないうちに、カタをつけたい」
H大将「この戦争が終わった時に、良い夢を見せてもらったと……そう思って終わりたいと思っている」
J少将「……左様でしたか」
H大将「それから……J少将、お前の腹も少し見えてきた」
H大将「艦娘に良い思いはしていないにしても、お前自身は、お前の力で海を守りたいと強く望んでいる……」
J少将「……はっ」コクリ
379 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/30(日) 20:42:21.95 ID:FyyjOElCo
H大将「それがわかれば重畳。人間を守る気概があることを知って安心したよ。お前には俺の背中を任せても良さそうだ」
J少将「は……恐れ入ります」
H大将「まあ呑んでくれ、ここは俺が奢……」
PPPP... PPPP...
H大将「うん? 俺か? ……すまんな、少し外で電話してくる」ゴソゴソ
H大将「もしもし? ああ、俺だ……」ガララッ
J少将「……」
J少将「……」トクトクトク
J少将「……」チビッ
J少将「……」
パチンッ!
J少将「む……!?」フリムキ
隼鷹(私服)「あんた、何考えてんのさ!」
飛鷹(私服)「ちょっと、隼鷹! いきなりひっぱたくとか、何を考えてるの!」
隼鷹「いいから飛鷹は黙ってて。R提督、いくらなんでも、あんまりだと思わないのかい!」
R提督(私服)「……」ヒリヒリ
380 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/30(日) 20:43:18.00 ID:FyyjOElCo
隼鷹「あたしはいいさ、もともと酒好きだし、ここで言われても構わないよ。あたしはそういう女だからね!」
隼鷹「でもねえ! 飛鷹はそうじゃないんだよ! こんなところで、あたしと一緒くたにしていい女じゃない!」
飛鷹「隼鷹! やめてったら!」
隼鷹「わかってんの!? R提督! カッコカリとはいえ、こういう話ってのは一大事なんだよ!」
R提督「……すまない」
J少将「何を騒いでいるのかね」スッ
飛鷹「す、すみません、すぐ静かにしますから……!」
J少将「……R提督、と言っていたかな。私はJ少将だ」
隼鷹「げ……っ!」
R提督「! こ、これは大変失礼いたしました!」バッ
J少将「ん……軽空母、隼鷹だな。貴様、艦娘でありながら、酒の席とはいえ自身の司令官に手をあげるというのはどういうことかね」
隼鷹「う……」
J少将「R提督。我々が守るべき国民もいるような席上で痴話喧嘩など、見苦しいぞ。恥を知りたまえ」
R提督「も、申し訳ありません!」
381 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/30(日) 20:44:01.67 ID:FyyjOElCo
隼鷹「い、いや、J少将、ここはあたしが悪いんですよ。こういうお店に行ってみたいってR提督に……」
J少将「ふう……どうやら教育が行き渡っておらんようだな」
R提督「申し訳ありません!!」
飛鷹「と、とにかくお店を出ましょ!? J少将、申し訳ございませんでした」ペコリ
J少将「……」クルリ
飛鷹「ほら、R提督も、早く!」
R提督「……二人とも、ごめん」
隼鷹「……ま、まあ……出ようよ、な?」
ガラララッ
H大将「うん? 今出て行った3人組……女のほう、なんかどっかで見たような……」
J少将「気のせいでしょう」
H大将「そうか?」
J少将「……」
382 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/30(日) 20:44:44.18 ID:FyyjOElCo
* ???? *
白衣の男「……ええ、残念ながら、反応は確認できませんでした。轟沈後も1時間計測しましたが、変化なしです」
白衣の男「はい、計測器は轟沈後1時間で自動的に壊れる仕組みでして。はい、仕様です」
白衣の男「出撃させる前にも、同型艦を見せしめに殺して見せたんですが……はい」
白衣の男「ご期待に添えず申し訳ありません……いえ、本当に申し訳なく思っていますよ。我々としても残念な結果で……はい」
白衣の男「しかし……本当にどちらが早いでしょうかね。深海棲艦の鹵獲と、艦娘から深海棲艦を作るのと」
白衣の男「諦めるなど滅相もない。あれらは我々の貴重な研究材料です」
白衣の男「頭の先からつま先まで、髪の毛一本無駄にする気はありません。はい……はい……承知しております」
白衣の男「鹵獲する際のリスクを考えれば、深海化させることができたときのメリットは計り知れません……ええ」
白衣の男「はい、我々としては、いただけるならミンチでも構いませんよ。やつら、倒すと文字通り水の泡になりますからね」
白衣の男「かけらが残るだけでもありがたいというもの……はい」
白衣の男「はい。では、2日後に……はい、お待ちしております。失礼いたします」
ピッ
白衣の男「……ふう」
スーツの男「いつも悪いな」
383 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/30(日) 20:45:35.86 ID:FyyjOElCo
白衣の男「いいさ、あの人はなんだかんだで気難しいからな。機嫌を損ねて研究が続けられなくなるのは俺も困る」
白衣の男「とはいえ、あそこまでやったなら、少しは深海化の兆候が現れてもいいと思うんだが……」
スーツの男「艦娘に絶望を与えてやれば深海化すると言われてはいるものの、そういった事実を直に確認したわけでもない」
スーツの男「奴らもなまじ思考が人間らしいから、どうショックを与えればいいか、個体差も考慮しないと駄目なんだが……」
白衣の男「艦娘は戦争中の船の記憶を引き継いでるやつもいる。少々残酷なシーンを見せた程度じゃ動じないだろう?」
スーツの男「一部のクライアントの意向だよ。若い娘の無残な姿に興奮するのか、なにかと理由をつけて派手な処刑を見たがるんだ」
白衣の男「やれやれ、平和だな。この前の、艦娘切り裂き事件の犯人のほうが余程可愛げがある」
スーツの男「ああ……あれか。重巡の艦娘をバラして飾ってたやつ」
白衣の男「そいつの精神構造には興味がわいたな。お前はどう思う」
スーツの男「好きな画家のいろんな作品を集めておきたいコレクター、ってところじゃねえか?」
白衣の男「なるほど。ともあれ、わざわざ防腐処理をして綺麗に飾っておいたというあたり、まともじゃない奴だってことは確かだ」
スーツの男「俺たちが言えたセリフか?」ククッ
白衣の男「それもそうだ」フフッ
ゴポッ
白衣の男「ああ……そうだ、さっきの電話だが、軽巡ヘ級を鹵獲できたそうだ」
スーツの男「なに!?」ガタッ
384 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/30(日) 20:46:35.43 ID:FyyjOElCo
白衣の男「現地で冷凍処置済み、あさってここに届くらしい」
スーツの男「そうかそうか! そりゃあ楽しみだ!」
ゴポゴポッ
スーツの男「お? なんだ? お仲間の到着を待ちわびてるのか?」
白衣の男「あまり刺激するな、データが取れなくなる。お前、暴れたら抑えられるのか?」
スーツの男「首だけだぞ?」
白衣の男「噛みつかれても知らんぞ」
スーツの男「大丈夫だ、お前も負けじと噛みついてきてるじゃないか」
白衣の男「……」
スーツの男「冗談だよ、そんな顔するなって」
白衣の男「そいつにはもう少し役に立ってもらわなきゃ困る。少しは丁重に扱え」
スーツの男「わかってる、わかってるって。で、できそうなのか? 例の話」
白衣の男「J准将がいい話を持ってきてくれた。昔、深海棲艦の艤装の武器化を考えてて捕まったやつがいたよな?」
白衣の男「そいつの仲間の中佐とか言うやつが、その時の成功例と失敗例のデータを隠し持っていたらしい」
スーツの男「残ってたのか!? 全部特警に消されたと思ってたのに!」
385 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/30(日) 20:47:44.19 ID:FyyjOElCo
白衣の男「ああ。それもあさって一緒に届く予定だ」
スーツの男「おいおい、そっちのほうが重要じゃないか! やったな!」
白衣の男「どれだけ信用できるデータかわからないからな。まあ、検証してうまくいけば儲けものだ」
白衣の男「お前のほうこそうまくやれよ。ヘ級を捕まえるのにだいぶ骨を折ったらしい、深海化の話も釘を刺されたぞ」
スーツの男「ああ、それなんだが、ここまでのデータで、艦娘を深海化させるのには深海棲艦からの干渉が必要だと見込んでるんだよ」
スーツの男「できればそのヘ級、俺にも使わせてもらえると嬉しいんだが?」
白衣の男「……そういうことなら、仕方ないな。所長にも掛け合ってみるか」ギシッ
スーツの男「助かる!」ガタッ
白衣の男「善は急げだ。所長に新しい設備の話もしなきゃな」ピピッ
スーツの男「ああ!」スタスタスタ
扉<ガチャッ ガシャン
(部屋を出ていく男たち)
(重い鉄製の扉が閉まって、部屋の明かりが落ちる)
コポッ…
(発光するモニターと計器類、そして、部屋の中央に置かれた、青い液体に満たされたカプセル)
(無数のコードを突き刺された、首だけの姿の重巡リ級の薄く開かれた目が、青く淡い光を放っている……)
386 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2018/12/30(日) 20:50:38.15 ID:FyyjOElCo
今回はここまで……で、一箇所ミスしてました。置換お願いします。
>>384
誤)
白衣の男「J准将がいい話を持ってきてくれた。昔、深海棲艦の艤装の武器化を考えてて捕まったやつがいたよな?」
正)
白衣の男「J少将がいい話を持ってきてくれた。昔、深海棲艦の艤装の武器化を考えてて捕まったやつがいたよな?」
次のお話で登場人物のアルファベットを使い切ってしまうので、
イロハで名前をつけようか悩み中。
そして次は誰を出そうか悩み中。
ここまで雑談で出てきた質問にもいくつか答えようと思います。
387 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/12/30(日) 21:28:30.92 ID:Grwuny5lO
乙ですギリシア語とかは?
αやβとかあるし
388 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/31(月) 14:29:12.14 ID:dMbXOoyA0
乙です
本編で占拠した研究施設関連かな?
イロハ呼び…一番目は痛ぇ督ですな
389 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/02(水) 14:20:08.64 ID:lCGYe8oeO
深海側がカタカナのイロハ使ってる感じするからギリシア文字か、漢字の以呂波使うとか
390 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/02(水) 14:24:52.16 ID:wRGVZRSS0
甲乙丙丁?
391 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2019/01/03(木) 15:45:09.61 ID:DSLt00QcO
ギリシャ語なら
α(アルファ)β(ベーター)Ω(オメガ)Δ(デルタ)Θ(シータ)η(イーター)Σ(シグマ)ψ(サイ)などなど色々使えるよ
392 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/01/03(木) 18:06:05.30 ID:NqQruqkKo
本年もよろしくお願い申し上げます。
では続きです。
393 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/01/03(木) 18:07:06.23 ID:NqQruqkKo
* 舞鶴 J少将の部屋 *
ガチャ
J少将「……戻ってきていたか」
K中佐「はっ。本日の任務、完了しました」
J少将「ん、良くやった。先方は良い反応だったか?」
K中佐「はい」コクリ
J少将「そうか。ならば良い」
K中佐「……少将閣下、意見具申、お許しを」
J少将「なんだ?」
K中佐「あの男は……中佐は信用できるのでしょうか」
K中佐「彼奴は保身のために仲間を売り渡した男です。そんな男と……」
J少将「フ、心配するな。そも、奴をお前と同等に扱う気はない」
K中佐「……」
J少将「中将の息子とはいえ、所詮は血の繋がりも、誇りも品位もないどこぞの馬の骨だ」
J少将「馬車馬のように働かせ、馬脚を現す前に使い捨ててしまえばよい」
K中佐「は……」コクリ
394 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/01/03(木) 18:08:02.02 ID:NqQruqkKo
J少将「調子には乗せておけ。奴の情報の見返りの餌くらいはわけてやると良い」
K中佐「承知しました」
J少将「ん……それから、R提督というやつの処分が必要だ。酒の席で艦娘に平手打ちをくらっていた」
J少将「そのような情けない男など、我らの同胞には要らん。適当な場所に捨て置くよう、調べて手配しろ」
K中佐「はっ、承知いたしました。失礼します」
扉<チャッ パタン
J少将「……」
カーテン<シャッ
ドアの鍵<カチャン
部屋の照明<プチッ
J少将「……」ギシッ
(カーテンを閉じて部屋の照明を落とし、真っ暗な部屋で椅子に座って目を閉じるJ少将)
J少将(……私は、海を守るためにこの仕事を選んだ)
J少将(私はこの仕事に文字通り命を懸けて、様々な犠牲を払い、決断し、この地位にまで上り詰めた)
395 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/01/03(木) 18:09:42.07 ID:NqQruqkKo
J少将(それを……我々の培った技術や戦術を深海棲艦にぶち壊しにされ……)
J少将(我々の職場や規律を艦娘に乗っ取られ……未曽有の危機に若い部下たちは鼻の下を伸ばして迎合する始末)
J少将(何より、妖精などという不確かな存在が見えると言うだけで、何の経験もない民間人を鎮守府の責任者に据えるなど前代未聞……!)
J少将(ふざけるな……! これまでの、私の努力はなんだったのだ……!!)ギリッ
J少将(上層部も上層部だ……! 得体の知れない存在たちにへらへらと媚び諂い、戦争の主導権を握らせる……)
J少将(終いには、単なる艦娘のリミッター解除を、ケッコンカッコカリなどという浮かれた儀式に倣って、身も心も明け渡す……)
J少将(これでは残るのは艦娘に飼い慣らされた腑抜けばかりだ……まったくもって腹立たしい……!)ミシッ
J少将「……」
J少将(だが、今少しの辛抱だ)
J少将(艦娘がいなくても、戦争を終わらせることができれば良いのだ)
J少将(深海棲艦の装甲を武器に加工する……)
J少将(何をどうやったのか知らんが、鹵獲した深海棲艦を武器にする技術を、中佐とやらが作ったと聞く)
J少将(それが事実ならば、深海棲艦を効率よく駆逐するための、最上の手段として利用できる……!)
J少将(更に別の話を聞いていけば、艦娘と深海棲艦はもとは同じだと言う……)
J少将(同じ時期に出現し、お互いを攻撃し始めたのだからな。この戦争は艦娘と深海棲艦の自作自演だとしか思えん)
J少将(いずれにしても、もとが同じ存在なのなら、艦娘を素材に武器を作ってしまえば、両方とも駆逐できる……)
J少将(我々の戦場を、仕事場を取り戻せる!)
396 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/01/03(木) 18:10:44.99 ID:NqQruqkKo
J少将(勿論、艦娘のまま、やつらを武器にしたのでは反発も買うだろう)
J少将(艦娘をどうにかして深海棲艦にすることができれば、その心配もない。それどころか、艦娘運用の危険性も周知させられるというもの)
J少将(そのためにも、あの研究所には成果を出して貰わねばならん……)
J少将(そのためにも……)ギリッ
J少将(この顔は、何が何でも隠しておかねばなるまい)スッ
J少将「……ふう……」
部屋の照明<カチッ パッ
ドアの鍵<カチャン
カーテン<シャッ
J少将「……本営に戻るか」スクッ
397 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/01/03(木) 18:11:35.94 ID:NqQruqkKo
* 一方その頃、屋外 *
コツコツコツ…
K中佐「……」
K中佐「……!」クルリ
K中佐「……?」
コツコツコツ…
ガチャ バタン
ブロロロロ…
青葉「……」コソッ
* * *
* *
*
398 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/01/03(木) 18:13:45.87 ID:NqQruqkKo
* それからしばらくして *
* 墓場島鎮守府 執務室 *
榛名「♪〜」ニコニコ
提督「……」シンブンナガメ
榛名「♪♪〜」ニコニコ
提督「……榛名」
榛名「はいっ!」ニッコニコー
提督「近い。ちょっと離れろ」
榛名「そうでしょうか? 触ってはいないのですが」チョコン
提督「……もう少し離れろ」
榛名「ちょっと離れろと言うことでしたので、一寸、つまり3センチ弱離れてみたのですが、不足でしたでしょうか」クビカシゲ
提督「せめて1メートルは距離とれよ……ほぼ密着状態じゃねえか」ハァ
提督「俺がソファで新聞読んでんのに、その隣に座って肩くっつけて新聞じゃなくて俺を見てる秘書艦ってなんなんだよ」
榛名「榛名は少しでも提督のお傍にいたいと思いまして!」
提督「なんでだよ……」
榛名「榛名は嬉しいんです。榛名の知っている男性は、みんな私たちを『もの』としか見てくれませんでした」
榛名「でも、提督の目は違います。ちゃんと、私たちとお話ししてくれる、安心できる瞳です!」
提督「……どうだか」
399 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/01/03(木) 18:14:38.15 ID:NqQruqkKo
榛名「ふふふっ、そんな風に冗談を言っていただけるのも、榛名は嬉しいんですよ?」
提督「冗談言ったつもりはねえんだがな……それにしたって、随分な場所にいたんだな」
榛名「はい。今思えば、自由や、希望のない場所だったと思います」
榛名「薄暗い独房のような部屋で、誰とも触れ合えず……たまに外に出られたと思えば、四六時中監視されて……」
榛名「それが普通だと思っていました。実際には、全然違っていたんですね」
提督「……」
榛名「那珂さ……那珂ちゃんは、隣の部屋だったんです」
榛名「そこから漏れ聞こえてくる歌声が、とても元気で、綺麗で……もっとたくさんの人が聞ければいいのに、と思っていました……」ウツムキ
榛名「あのとき集められたメンバーは、その独房から選ばれた人たちでした」
榛名「集められて任務を任され、出発する直前に……」
提督「那珂の同型が殺されるところを見せられたのか」
榛名「はい……そうして、榛名と那珂ちゃんは、運よくこの島にまで流れ着きました」
榛名「でも、それ以外の……随伴していたみんなは、もうどこに行ったのか……」
提督「……」
榛名「今、榛名は幸せです。ですが、こんなに幸せで良いのでしょうか」
400 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/01/03(木) 18:15:39.54 ID:NqQruqkKo
榛名「本来なら、あの時一緒に出撃したみんなも、一緒に幸せになれたのではなかったのでしょうか」
榛名「私は……私だけが、幸せになって良いのでしょうか」
提督「……そんなもん、考えたって意味ねえよ」
榛名「!」
提督「誰だって自分の命が惜しいだろ。自分だけで手一杯の奴が誰かを助けようとしたって、まともな結果になりゃしねえよ」
提督「それとも、お前がもっと強かったらこんなことにはならなかった、ってか? それこそ思い上がんなって話だ」
榛名「……」
提督「ま、沈んだ連中にしてみりゃあ、なんでお前らばかり、って嫉妬されるかもしれねえな」
提督「それが嫌なら……そうだな、毎日あの丘で手を合わせるとかしてりゃ、許してもらえるかも……な」
榛名「提督……!」ウルッ
扉<コンコン
金剛「金剛デース!」
榛名「!」
提督「おう。入れ」
401 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/01/03(木) 18:17:40.08 ID:NqQruqkKo
扉<チャッ
金剛「Good morning ! Oh, 今日の秘書艦は榛名でしタカ……ン? 目元が赤いデスネ?」
榛名「は、榛名は大丈夫です!」アセアセ
金剛「つらい記憶でも思いだしまシタカ? 素直に私に言うといいデス、くれぐれも無理はイケマセンヨー?」ニコッ
榛名「は、はいっ!」
金剛「ところでテートク、何か御用デスカ?」
提督「……お前に、悪い報せだ」シンブンサシダシ
金剛「!」ガサッ
提督「ここの、お悔み欄に載っているQ中将。お前がいた鎮守府の司令官で間違いないな?」
榛名「え……!?」
金剛「……」ペラッ
金剛「……その通りデス」コクッ
金剛「そうデスカ……亡くなられたのデスネ」
提督「ああ。それから、これを見ろ」スッ
金剛「! これは……!!」
提督「Q中将の奥さんからの手紙だ」
金剛「!!」シャッ ガサッ ペラッ
提督「……」
402 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/01/03(木) 18:20:34.55 ID:NqQruqkKo
金剛「……」ペラッ
金剛「……良かった……奥様は、Q中将と仲直りできたそうデス……!」ウルッ
提督「……」
金剛「Q中将は強情な方でシタ……頑なに見栄を張っていマシタガ、奥様の愛が、やっと通じたんデスネ……!」
金剛「Letter には、Q中将と最後の時間を過ごすことができたと……書いてありマス」グスン
金剛「喪主も、つとめられると……本当に、良かったデス……!」
提督「……しかし、そうなると鎮守府はどうなるんだ」
金剛「Ah, それでしたら、既にQ中将の代理の司令官を立てていたそうデスから、その方が正式に着任することになると思いマス」
提督「なるほど。じゃあ、心配はしなくていいな?」
金剛「いいと思いマス」ニコッ
提督「そうか」
金剛「……テートク。私も、奥様にお返事を出したいと思いマス」
提督「そうか、いいんじゃねえか。明石のところで便箋も何種類か扱ってるはずだ、いいのを探してこい」
金剛「そうさせていただきマース! 善は急げ、デスネー!」ダッ!
扉<チャッ パタン
榛名「……」
403 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/01/03(木) 18:22:52.94 ID:NqQruqkKo
提督「……急いでても扉の締め方は優雅なんだな」フフッ
榛名「金剛お姉様は……」
提督「前の鎮守府の司令官……Q中将が倒れた時に、奥さんを呼んだのがQ中将は気に入らなかったらしい」
提督「それでこの島に追い出されてきたんだ。理不尽だと思わねえか?」
榛名「……」
提督「それでも金剛は、Q中将夫婦のことを心配してたわけだ。ったく、どんだけお人好しなんだかな」
榛名「……いえ、それでこそ金剛お姉様です。榛名は自分のことしか考えられず、未熟でした……」
提督「そうか? お前も仲間のことを案じてたじゃねえか。そこまで気に病むな」
提督「だが、この鎮守府には、大事な相手を失った奴が金剛以外にも数人いる。あんまり刺激しないように頼むぜ」
榛名「そうなんですか……! わかりました、自重致します」ペコリ
提督「ああ」シンブンペラリ
新聞『勤務地移動:R提督(舞鶴→ショートランド泊地)』
提督「……」
新聞『退役:S提督(呉)』
提督「……こいつ……!」
榛名「?」
スクッ
キャビネット<ガシャ
提督「……」ペラッペラッ
ファイル『 ○ S提督鎮守府 吹雪 ○月×日 』
提督「……」
榛名「提督? どうかなさったんですか?」
提督「……いや、なんでもねえ」パタン
榛名「……?」
404 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/01/03(木) 18:25:30.01 ID:NqQruqkKo
というわけで今回はここまで。
ちょっと雑談を挟みます。
前スレ968
> 溺れた人への蘇生措置と言えば古来より
> マウスtoマウスですが、ふふ、誰が奪ったのかな
暁ちゃんの判断で肺活量を考慮した結果ということで、はっちゃんがやってました。
もともとはっちゃんも、二度と酷い目に遭いたくないがための
打算ありきで動いてますので、願ったり叶ったり。脅し文句に使う気満々です。
利根もやろうかと言い出してましたが、これも暁ちゃん判断で
心臓マッサージをしてもらっていました。こちらは下心なし。
>>94
> ここのひえーさんは悪い意味で浸透したメシマズネタのとばっちりを
> 理不尽に喰らってるという割とリアルも絡んだ笑えない生々しさを感じる。
>>188
> 長門がすごく可愛い、利根のツールはTONE製のいい奴に違いない
>>290
> 今更ながら意外とこの鎮守府の由良さんて逞しいというか
> サバサバしてるなぁ。基本癒しオーラ全開娘なイメージというか。
比叡のメシマズネタと長門の駆逐艦好きネタは、かなり補正を入れてます。
他にも補正入れてるのは利根と暁。由良はサービス開始初期のクールな感じが強めです。
なお、利根のツールボックスは言うまでもなくTONE製です。それしか考えられませんでした。
405 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/01/03(木) 18:28:01.59 ID:NqQruqkKo
>>344
> 夜提督のベッドに忍び込んでる子って誰々いるのかな。
提督のベッドに潜り込む人たちはこちら。潜り込む動機は様々です。
如月(頻繁に。隙あらば潜り込んで抱き着いて寝ている)
大和(こちらも頻繁に。頻度は如月といい勝負、こちらも抱き着いたりしているが、提督が起きないようにやや控えめ)
伊8(それなりに。だんだんと頻度が増えてきている。ぴったりくっついて寝ている)
朝潮(それなりに。誰かと枕を並べて一緒に眠るのが嬉しいようで、隣で気を付けの姿勢で寝ている)
電(それなりに。単純に独り寝が寂しいらしく、長門や暁のところにも行く。よく脚にしがみついて寝ている)
吹雪(たまに。喧嘩→仲直りの一件から回数が増えた。そっと手を握ったり腕に触れて寝ている)
金剛(まだ数回。提督の同意を得ず忍び込む、というのが本人は気に入らないが、後れを取りたくはないので葛藤している)
初雪(まだ数回。どっちかというと新しいベッド目当て。恥ずかしいので提督に背を向けて寝ている)
利根(数回。愛情のなんたるかを体験したいらしいが、最近は神通のほうが気にかかるので、それどころではないっぽい)
敷波(男性に興味が出て、一度だけ提督のベッドに潜りこんだことがあるが、恥ずかしくてまともに眠れなくて途中で逃げた)
大淀(未遂。一度だけ提督の部屋に入り込むも、恥ずかしさのあまり何もせず逃げた)
榛名(みんなが提督の部屋というか寝床に忍び込んでいることを最近知って、参加を希望している)
番外:長門と一緒に寝てる人たち
潮(頻繁に。前の鎮守府のときから長門が心の支え。依存症の気がある?)
初春(それなりに。長女ではあるが甘えたいときもあるのじゃ)
朝潮(それなりに。理由は前述)
電(それなりに。こちらも理由は前述)
五月雨(まだ数回。初春が嬉しそうだったからとお試し期間中)
そのほか
比叡→暁(比叡がたまに暁を誘って一緒のベッドでおしゃべりしてるらしい)
朝潮→明石(理由は前述の通り。霞も誘って川の字で寝るのが楽しみだとか。霞も満更ではない様子)
電→暁(こちらも理由は前述の通り)
406 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/01/03(木) 18:29:58.06 ID:NqQruqkKo
個人的まとめ:これまでの登場人物
中佐(のちの大佐)の部下になる人たち
・A提督:明石に横領を強要し、それを調査していた朝潮と霞に濡れ衣を着せ、雷巡になったばかりの北上に3人を雷撃処分させた。
・B提督:初期艦だった電と、その随伴艦由良を大破進軍で失う。それを咎めた敷波を捜索に向かわせ、そのまま行方不明扱いに。
・D提督:験を担ぐあまり扶桑と山城を毛嫌いし、わざと勝ち目のない海域へ向かわせ轟沈させた。時雨がその後を追い轟沈してしまう。
・E提督:潮に対して繰り返し変態行為を迫ったため、長門の手引きによって二人に逃げられる。
・C提督:(未登場なので割愛)
その他
・F提督:神通の元上官。ケッコンを約束した仲だったが、深海棲艦共存派であったため徹底抗戦派と戦争継続派に襲われ没する。
・G提督:神通をF提督から引き離し我が物にしようとした男。神通に考えを当てられ続け、恐怖のため精神に異常をきたし入院。
・I提督:暁の元上官、女性提督。深海棲艦から長期間兵糧攻めに遭い正気を失う。秘書艦の翔鶴を手にかけ、鎮守府とともに炎に消えた。
・L提督:古鷹、朝雲の元上官、登場時は少佐。秘書艦だった古鷹に上げ膳据え膳で立場を勘違いしたために、観艦式を古鷹抜きで挑んで
盛大にやらかす。中尉に降格するも新たな秘書艦香取によって更生し、現在は大尉に。ババ抜きは弱いが将棋はプロ級。
・M提督:利根の元上官、准将。利根への歪んだ愛情のためか、秘書艦以外の利根を殺害し地下室に飾っていた。露見後は罪を認め自害。
・N提督:中佐。深海棲艦殲滅のため違法ツールに手を出し、初雪が過労で島に漂着。過去には朧も捨て艦で沈めていた。現在裁判中。
・O提督:もと中佐の部下の下士官、現在は少尉。中佐の不在時に中佐の権力を使って艦娘を救ったのを評価され昇進。中佐から独立し、
伊8を大破進軍で沈めた鎮守府に、新しい責任者として着任した。態度は柔和だが、やってることはしたたか。秘書艦は木曾。
・P提督:五月雨の元上官、少将。レ級に部下を沈められ、五月雨を嘘の罪で墓場島へ護送後、報復の特攻を目論むも特警により射殺される。
・Q提督:金剛の元上官、中将。息子を失い自責の念に駆られ、疎遠になった妻との仲を取り持とうとした金剛を島に追放する。その後病没。
・R提督:隼鷹の上官。飛鷹と隼鷹に酒の力を借りてプロポーズカッコカリするも隼鷹に激怒され、その現場をJ少将に見つかり左遷される。
・S提督:吹雪の元上官。退職したっぽい。
本編にも出てる人たち
・大将:軍人だが、終戦のために深海棲艦と和睦を結びたい人。声がでかくて威勢のいいおやじさん。猪突猛進のきらいがある。
・H大将:秘書艦は大井。お堅いおっさん。深海棲艦を殲滅したい人たちの筆頭的存在で、人類を守るために精力的に活動している。
・J少将:H大将の部下。地味で人のよさそうな細身のおっさんだが、自分たちの活躍の場を奪った艦娘を密かに嫌悪している。
艦娘を運用せずに深海棲艦を打倒する方法を模索しており、そのためには艦娘や深海棲艦を実験材料に使うことも厭わないほど。
・K中佐:J少将の部下、のちに大佐。要領が悪く海軍内の評価はほどほどだが、目立つなというJ少将の意向に忠実に従い活動している。
X提督とその同期組
・X提督:秘書艦は祥鳳、大将の甥。見た目も性格も軍人には向かない、酒匂に似てるとよく言われる。主力は潜水艦と海外艦。
・W提督:秘書艦は伊勢、「日向に似てきた」と言われている。主力は航空火力艦、他には球磨、多摩、鈴谷、熊野など。
・V提督:比叡の元上官。酒飲み友達に感化され、比叡の料理を褒めずに貶めたため比叡が轟沈。ピストル自殺を図るが一命を取り留める。
・U提督&Y提督:飲み友達。
407 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/01/03(木) 18:32:56.43 ID:NqQruqkKo
上の補足
X提督の伯父の大将にTを当てていたので、Tは使わない予定。
>>387-391
いろいろ考えていただいて感謝です。
ギリシア文字は、機種依存文字があることと、
あまり浸透してない読みの文字が多いこと(イプシロンとかオミクロン、シータやエータなど)、
大文字ではアルファベットとかぶる文字が出ること(アルファはA、ゼータはZなど)を踏まえて、敬遠の予定。
甲乙だとまた別の意味になりそうなので、こちらも見送り予定。
今は、漢字の以呂波かカタカナのイロハを、後ろから(スセモヒシミメユ〜)使うといい感じかも? と思ったりしてます。
次回は多分、N中佐のその後になるかと思います。
改めて、今回はここまで。
408 :
344
[sage]:2019/01/06(日) 20:55:51.89 ID:wfo/n16l0
毎回楽しみに読ませてもらってます。
わざわざご返答ありがとうございます>>ベッドに潜り込んでる娘
皆が皆ベッドに潜り込んでるわけではなかったんですね。
提督Loveの如月と大和がダントツなのは予想できましたが、はっちゃんの頻度がその次と言うのは意外でした。
これに榛名が参戦すると更に激戦になりそう…
そしてムッツリ大淀の結局潜り込めなかったというヘタレ具合が最高ですね笑
409 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/26(土) 14:23:55.75 ID:nAKoeL9f0
保守
410 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/02/13(水) 18:15:23.25 ID:Yr76zZrX0
ほ
411 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/02/26(火) 04:38:24.52 ID:vUetPIt70
ほしゅ
412 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/03(日) 18:41:22.59 ID:E2VKzWIyo
書いて消し、書いて消して結局全部消して書き直し。
ようやく話の筋ができたので、続きです。
なお、登場人物の名前は漢字の以呂波にしました。
(呂はろーちゃんがいて紛らわしいので、飛ばす予定です)
413 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/03(日) 18:42:34.44 ID:E2VKzWIyo
* 太平洋上 某所 *
(輸送船の甲板上で、N提督が佇んでいる)
妙高「N大尉」
N大尉(中佐から降格)「……」
妙高「……N提督。中にお入りにならないのですか?」
N大尉「ん、ああ……そうだな、今の俺は大尉だった。すまん、妙高」
妙高「お寒くありませんか?」
N大尉「寒いには寒いが、もう少し、この景色を眺めていたいんだ。見ろ、大湊がもう見えなくなった」
妙高「……」
N大尉「俺は、何を見ていたんだろうな」
N大尉「お前たちのことをろくに見ていなかったのに、こんな大きな海を見張っていた気になっていたと思うと、情けなくて仕方ない」
妙高「……」
N大尉「あいつらには、詫びを入れることすら許されなかった。一目会って、頭を下げたかった」
N大尉「いや、そもそも許してもらおうと思うほうが間違っているか。俺の顔も見たくないだろうしな」
妙高「……」ハァ
414 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/03(日) 18:43:35.56 ID:E2VKzWIyo
N大尉「妙高。お前も俺みたいな男についてくる必要はなかっ」
ゴンッ
N大尉「あだっ!?」
妙高「N大尉。私、言いましたよね? 今後そういう後ろ向きなことを言ったらげんこつですよ、って」
N大尉「本気だったのか……」ジンジン
妙高「良い大人なんですから、何度も言わせないようにお願いしますね」
N大尉「わかった。気を付ける」
妙高「はい」コクリ
N大尉「ただな、妙高……俺の処遇は本当にこれだけで良かったんだろうか?」
妙高「言った傍から、まだ仰いますか」
N大尉「腑に落ちないんだよ。これから向かう単冠湾は、大湊の目と鼻の先だ」
N大尉「俺に対する罰も、艦娘の指揮権の剥奪と二階級の降格だけ」
妙高「十分ではありませんか」
N大尉「……十分だと思うか?」
妙高「N大尉は変なところが厳しいんですね」ハァ
N大尉「俺はな、この処罰の軽さは、中佐が一枚噛んでるんじゃないかと疑っているんだよ」
415 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/03(日) 18:44:35.26 ID:E2VKzWIyo
妙高「中佐……中将のご子息の、ですか」
N大尉「大鳳はあいつの部下だ。親のコネを使って、俺を管理しやすいところへ連れて行く魂胆じゃないかと思ってるんだ」
N大尉「あの中佐なら、艦娘管理ツールのことを狙ってくるに違いない」
妙高「……それで、刑を軽くして、こちらに貸しを作ったと?」
N大尉「ああ。そのうちあいつから何らかの接触があって、俺を陥れようとしてるんじゃないかと思ってる」
妙高「それは考え過ぎではないでしょうか。そもそも中佐は、墓場島で大怪我を負い入院してると聞いてますし」
N大尉「は? ……なにかあったのか、あの島で」
妙高「はい。中佐が大和さんに振られたついでに酷い目に遭ったそうです、盛大に」
N大尉「やっぱりあいつも大和を狙ってたのか……だが、それで怪我したとなると、大和や提督准尉にお咎めが行ったんじゃないのか?」
妙高「そういうお話は聞いていませんね」
N大尉「……どういうことだ? その話の出所は?」
妙高「中佐の元部下です」
N大尉「もと?」
妙高「はい。中佐が墓場島から大和さんを連れ出すときに、一緒に連れて行った部下たちだと聞いています」
妙高「なんでも、大和さんを墓場島から連れ出せなかった責任を押し付けられて、中佐の鎮守府から追い出されたそうですよ」
N大尉「……」
416 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/03(日) 18:45:44.17 ID:E2VKzWIyo
妙高「彼らが言うには、中佐は最初から大和さんに拒絶されていて、誰が説得しても連れ帰るのは無理だった、言うことらしく……」
妙高「逃げ帰る理由になった中佐の大怪我も、もとは中佐が大和さんの逆鱗に触れたからだ、と、言って回っているそうです」
妙高「追い出された腹いせに言いふらしているらしいですから、どのくらい誇張されているかはわかりませんが」
N大尉「……なんともはや、だな」
妙高「N大尉も、一歩間違えばそんな目に遭っていたかもしれませんね」ジトメ
N大尉「……耳が痛いな」メソラシ
妙高「それからもうひとつ、妙な噂がありまして」
N大尉「なんだ?」
妙高「あの島は『わけあり』なんだそうです」
N大尉「わけあり、か……その話も今更だな」
妙高「あの島の記録は海軍にもほとんど残っていません。なのに、かなり古くから鎮守府が置いてあったようなんです」
妙高「本当は流刑地だっただの、あの島で数千人が餓死しただの、こちらもどこまで本当なのかわからないような噂があります」
N大尉「まあ確かになあ……ただ、仮にそうだとしても、提督准尉は順応していて、最低限とはいえ戦果も挙げているんだ」
N大尉「それに加えて、轟沈経験艦も引き連れているのに大きな事故も起きてない」
妙高「はい……」
417 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/03(日) 18:46:54.64 ID:E2VKzWIyo
N大尉「とはいえ、俺も金縛りなんて生まれて初めてかかった。お前と鳳翔も幽霊を見たんだったよな?」
N大尉「俺たちが体験したことは事実だが、今の噂も含めて、誰かに話したところでまともに取り合ってもらえるとは思えないな……」
妙高「……このお話はそのくらいにして、そろそろ船内に入りましょう。どうせ船内にいたがらないのも、周囲の目が気になるからなんでしょう?」
N大尉「……お前にはすべてお見通しか」
妙高「ええ。ですから、諦めて暖を取ってください。お茶もお入れしますよ」ニコ
N大尉「……ああ、わかった。甘えさせてもらうよ」
妙高「ところで、これから向かう単冠湾の以中佐がどんな方か、N大尉は御存知ですか?」
N大尉「以中佐は、単冠湾の中でも指折りの戦果を挙げていると聞いている。だが、どんな人物かは詳しく聞けなかった」
N大尉「だが、その鎮守府の艦娘はみな意気軒昂で士気が高く、出撃となればこぞって先陣に立つ勇猛果敢な猛者ばかりだと聞いている」
妙高「ここまで聞くと、相当な人格者のように思われますね」
N大尉「ただ……見た目が世紀末的な人だ、とだけ聞いた」
妙高「世紀末? ……蝋人形の館……」ボソ
N大尉「? 何か言ったか?」
妙高「いえ」ニコニコー
N大尉「? ……とにかく、しばらくは以中佐の補佐官として職務に励めというお達しだ。あの中佐とは仲が良くないことを祈るばかりだ」ハァ
* * *
* *
*
418 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/03(日) 18:47:55.52 ID:E2VKzWIyo
* それから数日後 *
* 墓場島鎮守府 執務室 *
提督「どーすっかねえ……」ハァ
コンコン
大淀「失礼します」チャッ
朧「失礼します。あれ? 提督、おひとりですか?」
提督「んー」
朧「……また考え事してるみたいですけど、どうかしたんですか」
提督「まあ、な……」ジーッ
提督「朧なら聞いても良さそうだ。ちょっと聞いてくれ」
朧「なんでしょう?」
提督「吹雪が前にいた鎮守府の、司令官が退官したそうだ」
朧「!」
大淀「!」
419 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/03(日) 18:48:51.51 ID:E2VKzWIyo
提督「吹雪にこのことを伝えるべきか否か。どう思う」
朧「……難しい、ですね」
提督「ま、即答はできねえよなあ」
大淀「吹雪さんは前の鎮守府に戻りたがっていたんですよね?」
朧「はい。前の司令官に元気な自分の姿を見せたいって言ってたんです」
提督「成長した姿を見せる相手がいなくなったんじゃあな……」
大淀「ゴール地点を失ったってことですか」
提督「……この話は保留だな。吹雪の保護者だったS提督がなんで海軍を辞めたのか、理由がわからねえと吹雪への説明もできやしねえ」
朧「朧もそう思います。吹雪を犠牲にしてまで勝ちたかったはずの人が、簡単に海軍をやめるなんて……!」
提督「朧だって憤慨するのに、吹雪がこの話を聞いたらどうなるか……ったく、面倒臭え事態を作ってくれたもんだ」ハァ
提督「とりあえず、朧も大淀も、この話は余所に漏らすなよ。いいな?」
朧「はいっ」
大淀「承知しました」
提督「で、朧はどうかしたのか」
朧「ハチさんから、提督の人間ドックの日程はどうなったか聞いてきて、と頼まれたんです」
420 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/03(日) 18:49:47.93 ID:E2VKzWIyo
提督「……まだ返事は来てねえよな?」
大淀「はい。ですが、本営では医療船を各泊地へ数隻ずつ配備することがほぼ決定していまして」
大淀「泊地へ医療船を送るついでにこの島に立ち寄ってくれる、ということらしいです」
提督「……マジか」
朧「提督、そんなにお医者さんが嫌なんですか」
提督「嫌に決まってんだろ」
朧「……妖精さんの話を信じてもらえなかったからですか?」
提督「……」
大淀「もしかして、図星ですか」
提督「そんなとこだよ。あいつら、俺を気狂いか可哀想なものを見る目で見やがって……人間の医者なんてろくなもんじゃねえよ、くそが」
大淀「朧さん、よくわかりましたね……」ヒソヒソ
朧「提督のあの性格は、周りにちゃんと話をしてくれる人がいなかったからだと思うんです。多分」ヒソヒソ
大淀「提督、今回来るお医者様は妖精さんの存在を理解してくださってますから、そこまで心配なさらなくても大丈夫ですよ」
提督「だといいけどなあ」ムスッ
大淀「明石みたいに面倒見の良いお医者さんもいるはずですから」
提督「……まあ、明石はな。明石は悪くねえ」
朧(大淀さんもだいぶ提督の操り方がわかってきたみたい)
421 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/03(日) 18:50:41.61 ID:E2VKzWIyo
大淀「提督のお体に異常がないかどうかを調べるだけです。どうかご自愛ください」
提督「……わかったよ」アタマガリガリ
提督「それで、大淀のほうはどうした。その封書は」
大淀「はい、それが……」
コンコン
榛名「提督! お客様です!」ガチャ
提督「ああ?」
妙高「失礼致します。お久しぶりです、提督准尉」スッ
提督「……お前、妙高か? N中佐んとこの」
妙高「はい! ……って、その様子だと、何も聞いてらっしゃらないのですか? 事前にご連絡していた筈なのですが……」
大淀「それなんですが……つい先程その書類が届いたんですよ」スチャ
妙高「……」
提督「……」
朧「なにやってんでしょうね、本営は……」
榛名「???」クビカシゲ
422 :
◆EyREdFoqVQ
:2019/03/03(日) 18:52:59.90 ID:E2VKzWIyo
今回はここまで。
お待たせして申し訳ありません。
以中佐鎮守府でのN大尉の活躍の場は収拾がつかないので全カット!
マジごめんよう……。
423 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/03(日) 22:04:09.43 ID:6IKybmZMo
乙です。長くなると整合性とか大変そうだ…
気長に待つんで無理せず納得がいく続きを書いてください
424 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/04(月) 04:36:54.01 ID:17nAXR0/O
生きとったんかワレェ!?
425 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:30:58.38 ID:3ZSsUeMvo
方向性が決まれば筆が進むんですがね……。
では続きです。
426 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:32:10.51 ID:3ZSsUeMvo
* 応接室へ向かう廊下 *
提督「うちに艦娘を引き取れってか」
妙高「申し訳ありません。ただ、事情が事情でして……この鎮守府でないと引き取ってもらえないだろうと、N大尉が」
提督「ふーん、N中佐は大尉に降格したのか。裁判は終わったのか?」
妙高「はい。条件付きで降格と配置換えという寛大な処分を受けまして……」
提督「条件?」
妙高「はい。ある鎮守府への潜入捜査です」
提督「……つまり、そこの鎮守府の問題児を引き取れと?」
妙高「問題児と呼ぶには語弊がありますが」
コンコン
(応接室前に到着し、ドアをノックする妙高)
妙高「提督准尉が入ります」
カチャ
妙高「提督、お入りください」
提督「おう」スッ
427 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:33:00.42 ID:3ZSsUeMvo
立ち上がってむくれている龍驤「……」
立ち上がって俯いている陸奥「……」
提督「……引き取れってのは、この二人か?」
妙高「はい」
提督「ふーん……じゃあ、とりあえず聞いとくか」
提督「お前ら、生きたいか死にたいか、どっちだ」
妙高&龍驤「「はああ!?」」
陸奥「!?」アゼン
妙高「いきなり何を言うんですか!?」
龍驤「妙高! こいつアホなんか!?」
提督「何言ってやがる、こっちは大真面目だ」
提督「もう死んでもいい、みたいに考えてる奴を面倒見たくないっつってんだよ。面倒臭えからな」
妙高「提督准尉!?」
龍驤「……しょっぱなから何言っとんのや、こいつ」ドンビキ
陸奥「……」ナミダメ
提督「そういう場所なんだよ、ここは。まあいいや、とりあえず突っ立ってねえで座れ」
428 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:33:51.04 ID:3ZSsUeMvo
提督「俺は提督准尉、この鎮守府の責任者だ。お前らは?」
龍驤「……うちは軽空母の龍驤や。こっちは戦艦の陸奥」
陸奥「……」ペコリ
提督「空母? 空母ってお前、航空母艦なのか」
龍驤「なんや、うちが空母やったらなんか文句あるんか!」
提督「いや、空母って言ったら……」
龍驤「胸か! 胸がないちゅうんか! 悪かったなあこんな体で!」グワッ
提督「あぁ? 何言ってんだお前」
妙高「り、龍驤さん落ち着いて! 提督准尉はそういう方ではありませんとさっきも……!」
龍驤「だったらなんやっちゅうねん!」
提督「胸なんか知らねえよ。お前、飛び道具はどうした」
龍驤「……なんのことや?」
提督「空母だったら飛び道具持ってんじゃねえのか? 例えば赤城とか、鳳翔とか……あと大鳳もだったよな?」
妙高「は、はい、そうですけど」
429 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:34:50.90 ID:3ZSsUeMvo
提督「赤城や鳳翔は弓を持ってたし、大鳳のはクロスボウか? 矢なり弾なり飛ばすための道具持ってたろ」
提督「お前はそういうもん持ってこなかったのか、って聞いてんだ」
龍驤「……」
提督「俺、なにか変なこと言ったか?」
妙高「いえ、でも勘違いも無理もないことでして……」
龍驤「……あー、ごめんな。うちの早とちりやった」ジャラ
提督「ん? なんだその手錠は」
龍驤「これ? ていうか、うちらがここに連れてこられた理由、あんた知らんの?」
提督「資料が来るのが遅くてな。妙高が来るのと同じくらいに届いたくらいだ」
龍驤「んなアホな……どこまで連絡不行き届きなん」
提督「まあいいや、とにかく話を聞く。資料に嘘が書いてあるようならすぐ言えよ」
* *
提督「鎮守府をまるっと燃やしたって?」ペラリ
龍驤「うん。全部、跡形もなく燃やして、瓦礫の山にしたったん」
提督「それで手錠か。お前にはそこまでする理由があったわけだな?」
龍驤「うん。いろいろ許せんかったんよ。以中佐は、本当に人でなしやった」
430 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:35:44.09 ID:3ZSsUeMvo
提督「以中佐ね……」ペラリ
妙高「あ、それです。その写真が以中佐です」
提督「……なんだこのデブ。CGじゃねえよな?」
妙高「実在の人物です。身長が2メートル20あります」
提督「はぁ!? マジかよ……腹回りも同じくらいあるんじゃねえの」
妙高「N大尉は『ハート様みたいだ』と言ってましたが……何の事だかわかりますか?」
提督「はーと? 悪い、ちょっと意味わかんねえ」クビカシゲ
妙高「そうですか……あとでN大尉に教えて貰います」
提督「で、こいつがやらかしたことってなんだ?」
妙高「平たく言えば、鎮守府の私物化でしょうか。私設警察団を作って、艦娘を……自分のものにしようとしたんです」
提督「自分のものに……?」ペラリ
提督「……」
提督「おい、なんだこれ。妙高、書き間違いじゃねーのか」
提督「朝飯に肉が1キロとか、なんの冗談だ?」
妙高「冗談ではありません。以中佐は、その食事量を艦娘に強要させていたんです」
431 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:37:01.93 ID:3ZSsUeMvo
提督「馬鹿じゃねーのか? 昼も夜も食わせすぎだ、これじゃ艦娘もまともに動けねえだろうが」
妙高「はい。ですが、食べなければ罰せられる規則になっていました」
提督「なんでそんなことさせんだよ……」
妙高「以中佐は、自分と同じことを艦娘にさせようとしていたんだと思います」
提督「だからって食事もか。デブの基準で食事量考えんじゃねーよ……なんでこんなやつが海軍にいやがんだ」ハァ
妙高「実は、以中佐もちょっと特殊な経歴を持っていまして、もともとは格闘家だったそうなんです」
提督「格闘家?」
妙高「はい。それも、生身の人間でありながら、深海棲艦を撃退したという」
提督「はぁ!?」
妙高「陸に上がった駆逐艦を、体当たりで気絶させたそうで……それでそこの住人が助けられたという証言もあったそうです」
妙高「海軍は彼に感謝状を送り、『提督』として働けないかスカウトしたらしいんです」
妙高「彼のような格闘家なら、艦娘にも近接戦闘の心得などを伝授できるんじゃないかという思惑もあったみたいで……」
妙高「彼自身も艦娘に格闘技を教えられるのならと、同じ量の食事を用意しようと考えたんでしょうか」
提督「本当に手当たり次第だな、海軍の連中は……ちったあ考えろよ」
妙高「いえ、最初のうちは戦果もあげていたんです。しかし、以中佐の交友関係や人柄の評判は決して良いものではなく……」
妙高「評価が上がると海軍の特別警察隊を本営に帰し、親しかった犯罪者まがいの人間を集めて私設警察隊を作ったのを皮切りに」
妙高「徐々に艦娘を縛る規則を作り上げ、鎮守府を支配していった、というのが顛末です」
432 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:37:51.02 ID:3ZSsUeMvo
提督「何やってたんだよ本営の連中は……」
龍驤「その辺は仕方ないと思うで。曲がりなりにも、単冠湾にある鎮守府の中じゃあ、一番戦果をあげとったしなあ」
提督「!」
龍驤「残念なことにあいつは口も上手いんよ」
龍驤「特警には、単冠湾も離島やから地元民じゃなきゃ家族と離れて暮らすのはつらいやろ、って、殊勝なこと言って帰らせたんや」
龍驤「それから、私設警察のメンバーに服役中の犯罪者を入れて、以中佐が更生させるっちゅうプランも挙げとった」
龍驤「一石三鳥か四鳥くらいの大風呂敷を広げて、本営をうまいこと丸め込んだんちゃうかな」
妙高「以中佐が普通に強いというのも一因ですね。私設警察に登用した人材の殆どが軽犯罪者で、以中佐に勝てそうな人がいませんでしたし」
龍驤「経費を節約してその分食事に回す言うてたから。じゃなきゃあ、あんな大量の食糧、供給してもらえるわけがないんよ」
提督「……こすいな」
龍驤「それから、たくさん食わせる狙いはほかのところにもあるで」
提督「? そりゃどういう意味だ」
龍驤「あいつはな、艦娘を太らせたかったんよ」
提督「あぁ?」
龍驤「肉をつけさせて、胸の大っきい娘を侍らせたかったんよ。それで、目ぇ付けられたんが、陸奥や」
陸奥「……」ウツムキ
433 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:38:52.04 ID:3ZSsUeMvo
龍驤「陸奥ももともとはこんな内向的な性格やないねん。どっちか言うたら、よってくる男を軽くいなすお姉ちゃんな感じやったんよ」
龍驤「けど、あいつは力尽くで、嫌がる陸奥を無理矢理、遠慮なーくべたべた触りよってな……」
龍驤「その触り方というか纏わりつき方というか、とにかくキモい以外の感想が出てこんかったわ」
提督「それでトラウマになったってか」
陸奥「……」コク
龍驤「ま、そんなとこやな。以中佐が格闘技やっとった言うのも本当みたいで、反抗した艦娘が返り討ちにあったことも何回かあるんや」
龍驤「遣り込められて、見せしめにセクハラまでされて……うちらがだんだんと以中佐に刃向わなくなったのも、その辺が理由やね」
提督「腕も立つのか。そりゃ面倒臭えな」
龍驤「それから、食事の話で言うなら間宮もひどい目に遭っとんねん。毎日、あの量の料理を準備させられてみ?」
提督「まさかあれを一人で作らされたのか……!?」
妙高「そうです。提督准尉、この写真を見てください。以中佐鎮守府の間宮さんです」スッ
提督「……これが間宮だと? 痩せすぎだろ!?」ゾッ
妙高「彼女は今、私がいた鎮守府でリハビリに入ったそうです。治療はなかなか進んでいませんが……」
提督「最悪だな……それで龍驤は鎮守府に火をつけたってか」
龍驤「まあ、そうやけど……本音は、もっと違うとこや」
434 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:39:45.89 ID:3ZSsUeMvo
龍驤「さっき、以中佐が陸奥を狙ったって言うたな? ほんじゃあ逆に、以中佐はうちのことをどう思ってたと思う?」
提督「どう? ……見た目のことを言って悪いが、子供っぽいって言われそうだな」
龍驤「せやね。うちは見ての通り、ちんちくりんのお子様体型や」
龍驤「それを以中佐は……あいつは、うちのことを『まな板』やら『洗濯板』やら言うとったんや」
龍驤「『軽空母』なら言われたことはある! せやけどうちは、あいつにただの一遍も『龍驤』って呼ばれたことがないんや!」
提督「……」
龍驤「そう呼ぶのがあいつだけならええねん。あいつはそれを、ほかの艦娘に強要しとったんよ」
龍驤「それを嫌がると、お仕置き部屋に連れてかれて、以中佐と私設警察とかいうチンピラどもに、酷いことされるんよ……」
龍驤「そんなん繰り返されたら、みんなおかしくなるやんな? うちと距離おくのも、しゃあない……しゃあないねん」
龍讓「そんで、あの日……うちは我慢できひんかった。なんの魅力もないって言われてたようなもんや。だから、全部燃やしたんよ……」
龍讓「毎日毎日、顔を見るたびにねちねちぶちぶち嫌み言われて……何もかも嫌になっとったなあ」
龍讓「まあ、毎日触られてた陸奥に比べれば……」
陸奥「そんなことないわ……龍讓、あなたは他の艦娘たちを庇っていたんでしょ……!?」
龍讓「……」
提督「妙高。その辺はどうなんだ?」
妙高「は、はい、それは事実です。龍讓さんは、他の艦娘が以中佐に迂闊に近寄らないように、鎮守府の中を見回っていたのは本当です」
435 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:40:45.70 ID:3ZSsUeMvo
提督「そうか。で、そのくそったれの以中佐はちゃんとぶっ殺してきたのか?」
龍驤「ちょっ、そんなことできるわけないやんか!」ギョッ
提督「なんだ、殺ってこなかったのか」
龍驤「いや、確かに殺ってやりたいのはやまやまやけど! あかんて!」
陸奥「……」ポカーン
提督「おい妙高、お前らが潜入捜査に行ったって言ってたけど、N大尉は何してたんだ?」
提督「折角なんだから、こいつらに代わって以中佐の息の根止めてやりゃあ良かったじゃねえか」
龍驤「言うことがいちいち物騒やなキミィ!!」
妙高「提督准尉はこういう方なんです」アハハ…
龍驤「いや、苦笑いで誤魔化したらあかんやろ……」
妙高「それで、N大尉ですが、実は以中佐の鎮守府滞在3日目で音を上げまして……」
提督「短けえな! それで捜査になったのかよ!」
妙高「残念ながら十分でしたよ。陸奥さんへの過剰なセクハラや龍驤さんへの執拗な罵倒、食糧の浪費に間宮さんへの過剰労働……」
妙高「そして、私設警察の横暴と、それによる艦娘への……とにかく、不愉快な3日間でした」
妙高「その生活を長きにわたって強いられていた龍驤さんたちの心情は、筆舌に尽くすことができないものだと思います」
436 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:41:46.85 ID:3ZSsUeMvo
龍驤「まあ、そのうちらの扱いに異を唱えてくれたんがN大尉やったんや」
龍驤「恰好良かったで。大見得切って啖呵切って、うちらをかばってくれて」
龍驤「その直後に以中佐に体当たり貰って伸されてたんは、まあ、しゃあないわな」
龍驤「でも、それがきっかけでうちは腹を決めたんや。うちらの味方になってくれる海軍の人間がおるんなら、うちらは間違ってない」
龍驤「間違ってるのは、以中佐や、て」
提督「……で、それからどうなったんだ?」
妙高「龍驤さんが艦載機を放って、執務室内を爆撃しました。それを機に、ほかの艦娘が次々と加勢して、瞬く間に本館が炎上……」
妙高「私は負傷したN大尉を背負って建物を脱出したので、それ以後は館内の避難誘導を行っていました」
妙高「所属の艦娘は全員保護。私設警察は一部を捕縛しましたが、取り逃した者たちは散り散りになって海へ逃亡しました」
龍驤「海へ逃げた連中は助からんやろうね。なんでかんで深海棲艦が多数潜んでる海域やし、今頃はあいつらの餌になっとんちゃうか」
提督「以中佐はどうしたんだ」
龍驤「うちらが逃げる直前に陸奥に抱き着いて助けを請うてたけど、陸奥がびっくりして第三砲塔が過熱してなあ」
龍驤「艤装が炸裂して、以中佐は火だるまになって吹き飛んで、そのまま海へどぼーん、や! ざまあないで、まったく!」クックック
陸奥「……」ムスッ
437 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:43:46.81 ID:3ZSsUeMvo
龍驤「陸奥は笑いごとやなかったけど、うちらは見ててすっきりしたわ」
龍驤「でもまあ、以中佐のとどめは刺されへんかったし、あいつどさくさに紛れて逃げよったから、その辺は悔いが残るけど……」
龍驤「とにかく、うちがこの騒動を引き起こした。そう本営に伝えて、解体処分してちゃんちゃんにしてもらうつもりやったんよ」
妙高「ですが、龍驤さんは今回の事件の被害者のひとりですし、彼女の反抗がなければ他の艦娘の未来もありませんでした」
妙高「龍驤さんの助命の嘆願が集まったこと、N大尉が以中佐鎮守府の実態を証言したことで、龍驤さんは異動ということになったんです」
龍驤「限りなく追放に近い形やと思うけどな?」
妙高「それから陸奥さんは、以中佐に直接危害を加えたということで、龍讓さんと同じ扱いという形になってしまいましたが……」
龍驤「ま、余所の鎮守府に行っても働けないんちゃうかな。陸奥のトラウマも相当なもんやで」
陸奥「……」ウツムキ
龍驤「んで、うちらはこれから、どんな罰を受けることになるん?」
コンコン
提督「ん?」
朧「朧です。お飲み物をお持ちしました」
提督「ああ、入ってくれ」
朧「失礼します」チャッ
438 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:44:40.65 ID:3ZSsUeMvo
妙高「朧さん! お久しぶりです」ニコッ
朧「お久しぶりです!」ニコッ
提督「妙高、二人の手錠を外してやってくれ、手錠したまま飲み物ってわけにはいかねえだろ」
妙高「! 承知しました、そのように致しましょう」スクッ
龍驤「はぁ!? ええんか!?」
陸奥「!?」
提督「別にいいだろ。何か不服か?」
龍驤「いや、普通こんなあっさり手錠外すとか……なあ?」カチャカチャ
陸奥「……」コク
提督「いいっつってんだろが、しつけえな。俺はお前らのやったことが悪いなんて思っちゃいねえよ」
陸奥「……!」
龍驤「……ほんまかいな」アッケ
妙高「提督准尉は無罪を主張するということですね?」ニコ
提督「以中佐は張っ倒されて当然だろ。ざまあねえやってのが俺の感想だ。悪いか?」
龍驤「いやいや全然! 悪いどころか、そこまで言ってもらえてすっごい嬉しいよ? なあ?」
陸奥「ええ」コク
439 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:45:35.41 ID:3ZSsUeMvo
妙高「提督准尉、手錠を外し終わりました」チャラッ
提督「ん。まあ、飲み物でも飲んで一息入れてくれ。とりあえずここがどんなところか、説明するからよ」
朧「話が終わったら呼んでください。片付けますから」
提督「朧も気が利くな、わざわざ悪いな」
朧「いえ、古鷹さんに言われて持って来ただけですから……」ニコ
妙高「朧さん、元気そうでなによりです。鳳翔さんも気にかけておられましたよ」
朧「本当ですか!? ありがとうございます!」
龍驤「なんや、随分仲がええなあ。もしかして、妙高と古い知り合いなん?」
朧「え? ええ、まあ」
龍驤「なら、N大尉のことも知っとるんか?」
朧「……」
妙高「……」
龍驤「な、なんや、二人してビミョーそうな顔して……」
提督「そういや妙高、N大尉はどうしてる」
妙高「は、はい、今は入院しています。最低1か月は安静にしておくべきだと……」
440 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:46:30.64 ID:3ZSsUeMvo
朧「……あの人が、何かしたんですか」
提督「早い話が、迫害されてたこの二人を助けようとして大怪我したんだと」
朧「……そうですか」
龍驤「いや、そうですか〜って、ちょっと冷たいんちゃう!? N大尉は体を張ってうちらを助けようとしてくれたんよ!?」
朧「……そんなの、今更ですよ」クルッ
朧「失礼します」
パタン
龍驤「な、なんやあれ……今更て、なんかあったんか」
提督「まあな。朧の話は後だ、お前らこそN大尉のことをどう思ってんだ?」
龍驤「え? ええっとなあ……最初は、以中佐がスケジュール管理が得意な人材を取った、とかいう触れこみでな?」
龍驤「うちらはてっきり、時間の鬼みたいなやつが来るんかーって、絶望しとったんよ」
龍驤「でも、来てみたらまあなんというか、えらい神妙にした感じの普通の男の人やったから、拍子抜けやったっけな」
提督「……それから?」
龍驤「で、鎮守府を案内したら、うちらのやることにやたらと驚くし、以中佐のやることに眉をひそめてたし」
龍驤「もしかして、以中佐の息がかかっとらん、完全に外部の人か、と思って声をかけたのが2日目の夜やな」
龍驤「そんで、N大尉にうちらがもう限界や! 助けて、なんとかしてー! って直談判して、3日目の昼にN大尉が以中佐へ具申したんや」
441 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:47:27.35 ID:3ZSsUeMvo
龍驤「最初は静かな話し合いやったんやけど、話していくうち以中佐の語気もだんだん荒ぶってきてなあ」
龍驤「それでも一歩も退かずに以中佐に物申してくれたんや。最初は頼りない印象やったけど、あれで見直したんよ!」
提督「今の話、本当か?」
妙高「はい。まさかその返事を暴力で返されるとは思ってもいませんでしたが」
龍驤「で、あいつはN大尉だけじゃなく妙高も始末しようとしたん。それでもう、うちもやる気になって、腹を括ったわけよ」
妙高「その龍驤さんの発艦に呼応して、空母の皆さんが爆撃支援を始めて、結果的に艦娘全体の反乱になったわけです」
龍驤「みんな不満がたまってたからねえ。私設警察の連中以外は、みんな協力して避難してくれたから、人的被害は少なかったんや」
妙高「龍驤さんと陸奥さんだけは、少しやけどをしてしまいましたけどね」
陸奥「……私はいいわ。慣れてるから……でも、龍驤は……」
龍驤「うちもええんや。誰かがやらんと、みんな壊れたん。たまたまうちが引き金引いただけや」
提督「よく本営の連中に信じてもらえたな、今の話」
妙高「以中佐の鎮守府の様子は、私がすべて小型カメラで映像に残しましたから」
提督「そうか、潜入捜査だったな」
妙高「はい」
442 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:48:20.53 ID:3ZSsUeMvo
陸奥「……ねえ、潜入捜査ってどういうこと……? どうしてN大尉が私たちの鎮守府に来たの……?」
妙高「海軍本営は、以中佐鎮守府の成績が異様に良いことを気にしていました」
妙高「本営からの人材なしに、ここまで戦果を挙げられる理由は何か? と……」
提督「妬み嫉み成分が多そうだな?」
妙高「……丁度そのときに、N大尉は身柄を勾留されていたんです。ある事件の容疑者として」
龍驤「容疑者て、なにをやったん……?」
妙高「……それは……」
提督「艦娘管理ツールっつうか、洗脳装置みたいなもんだな。それをN大尉が使ってた」
龍驤「洗脳装置ぃ!?」
陸奥「嘘でしょ……!?」
提督「嘘じゃねえよ。現にこの鎮守府に、そのツールが原因の過労で漂着した艦娘がいる」
龍驤「なんでN大尉がそんなもんを……」
提督「深海棲艦を効率的に邀撃するためだ。やつらのせいで故郷の漁村が過疎で廃村寸前なんだとよ。だから形振り構わずツールに手を出した」
提督「事情はどうあれ、本営はそのツールの使用を禁じた。N大尉は、それで身柄を本営に移されたんだ」
443 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:49:22.26 ID:3ZSsUeMvo
妙高「その後、本営では不正行為を行ったN大尉の処分をどうするかと言う話になりました」
妙高「そんな折に、以中佐鎮守府から人員補充の依頼が来たんです。それも、N大尉を名指しで」
提督「そんなことできんのかよ」
妙高「これはよくあるお話ですよ。降格した『提督』の能力を求めて、あちこちからスカウトされるんです」
妙高「話が前後しますが、その艦娘管理ツールを使って一番戦果を挙げていたのは実はN大尉なんです」
妙高「あのツールは、使用者がきちんとスケジューリングしないと、使ってもあまり効果が得られません」
妙高「もともと綿密なスケジュールを作って執務をこなしていたN大尉だからこそ、ツールを使った戦果が顕著だったとも言えます」
提督「……以中佐は、N大尉の能力を見抜いてたってことか?」
妙高「見抜いたかはわかりませんが、以中佐が艦娘のスケジュール管理を行おうとしていたのは事実です」
妙高「以中佐の鎮守府には、私設警察という犯罪者の更生が建前の組織もありますし……」
妙高「N大尉をそこに編入させて、スケジュール管理を担当させるつもりだったのではないかと」
提督「……もっとストレートに、以中佐の狙いがツールそのものだとしても、おかしくはねえな」
提督「ツールを使って洗脳しちまえば、龍驤でも陸奥でもおとなしく言うことを聞くようになる」
提督「たとえ直接手に入れられなくても、実物を知ってるN大尉から、どこから手に入れたか情報を得られれば無駄じゃあない」
提督「本営相手にN大尉は捕まったんだ。以中佐はN大尉を『同族』と見たのかもな?」
妙高「かもしれません」ウツムキ
444 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:50:36.08 ID:3ZSsUeMvo
龍驤「ちゅうことは、朧はそのツールの被害者なんか?」
提督「いいや、その件の被害者はまた別だ。朧はN大尉に捨て艦にされたんだ」
龍驤「はあ!?」
陸奥「沈んだの……!?」
妙高「……」ウツムキ
提督「ああ、N大尉がツールを使うよりずっと前にな。理由は同じだ」
提督「朧がいい顔しなかったのはそういうことさ。言ってたろ? 今更だって」
陸奥「……」
龍驤「……なら、あんたは」
提督「ん?」
龍驤「あんたはどうなんや。あんたは何をしてここに来たんや」
提督「俺か? 上司に嫌われたんだよ。妖精と話ができると都合が悪いらしい」
龍驤「そんだけなん……!?」
提督「別にいいさ、人間なんか俺含めてどいつもこいつも碌なもんじゃねえし、俺も人間の役に立とうなんて気はねえ」
提督「うちの連中には好きなことをさせてやれるなら、それでいい」
445 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:52:28.07 ID:3ZSsUeMvo
龍驤「……さよか。誰が善人で誰が悪人かなんて、案外わからんもんやな」
提督「N大尉は悪人じゃあねえが、方法を間違って咎められた人間だ」
提督「以中佐みたいに私利私欲にまみれた根っからの悪党じゃねえよ。なあ、妙高?」
妙高「……はい」コクッ
提督「で、そういう愚直なやつほど、他人に利用されやすいもんさ」
提督「あのツールを使うことになったのも、誰かに便利だから試してみろとか唆されたからじゃねえのかね。何のリスクも説明されずに」
提督「ま、N大尉のやったことを好意的に捉えれば、の話だがな」
龍驤「……」
提督「ところで……陸奥。お前、そんなに俺が怖いのか?」
陸奥「!」ビクッ
龍驤「当たり前やんか。向こうでどんな目に遭わされたか……」
提督「その話はいいや、どうせ俺が聞いてもしょうがねえ」
龍驤「おい!?」
提督「そうだろうが。俺がその辺の話を聞いて、薄っぺらい同情の台詞吐いたら何もかも解決するわけじゃあねえだろ」
龍驤「言い方っちゅうもんがあるやろが! 言い方っちゅうもんが!!」
陸奥「……」ビクビク
妙高「……」ハァ
446 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/05(火) 23:53:10.04 ID:3ZSsUeMvo
今回はここまで。
というわけで、今回は龍讓と陸奥のお話になります。
447 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/06(水) 18:22:51.28 ID:mSiV7YLbO
へい
448 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/09(土) 11:02:17.69 ID:7M0DvzEGo
続きです。
449 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2019/03/09(土) 11:04:06.13 ID:7M0DvzEGo
* 非常口→中庭 *
龍驤「轟沈した艦娘が集まる島、ねえ」
提督「6割……いや、7割がそんなところか。あとは余所から逃げてきたやつや、追い出されたやつばかりだ」
提督「知らないか? 轟沈した艦娘をそのままにしてると深海棲艦になるから危険だって話」
龍驤「うちらは知らんかったわ……そんで憲兵も特警もおらんのかいな」
提督「ああ。人間も男も俺しかいねえ。俺さえ陸奥に関わらなきゃ、陸奥のリハビリにはちょうどいいんじゃねーの?」
陸奥「そ、そうね……」キョロキョロ
妙高「大丈夫ですよ陸奥さん、本当にこの島には提督准尉以外の人間がいませんから」
陸奥「わ、わかってるけど……」
提督「こりゃトラウマも相当なもんだな」
龍驤「まあねぇ……で、ほんまにここに長門がおるんか?」
提督「ああ、最近は戦艦ばっかり増えててな。長門はその中でも一番最初に来た戦艦だ」
龍驤「普通逆やろ……!?」
提督「本当だって。戦艦で言うと、長門が来て、次が比叡で……次が大和か」
龍驤「嘘や!!」
提督「だからうちは普通じゃねえんだよ……」
龍驤「せやかて信じられへんしなあ……大和、うちにもおらんかったし」
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