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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」

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450 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:05:01.49 ID:7M0DvzEGo

妙高「ところで提督准尉、どうしてこんなところを通って行くんですか?」

提督「こっちに厨房の勝手口がある。今日は長門が飯を作ってるからな」

龍驤「は? なんで長門が!?」

妙高「間宮さんもいないんです、この鎮守府は」

提督「厨房もこの鎮守府の艦娘で回り番だ」

龍驤「……」

提督「ここだ。長門、ちょっといいか」ゴンゴン

提督「……」

 扉<ガチャ

長門(エプロン着用)「なんだ、まだ仕込みの最中……ん?」

提督「よう。ちょっと付き合ってくれるか」

長門「陸奥……!」

陸奥「長門……っ!」ウルッ

陸奥「長門おっ!!」ダキツキ

長門「うお!? む、陸奥! どうしたんだ!? 提督、これはいったい……!」

提督「まあ、察してくれ。陸奥も龍驤も、さっき余所の鎮守府から来たばかりでな」

長門「……!」
451 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:06:24.47 ID:7M0DvzEGo

 * 中庭(厨房裏) *

長門「そうか、あのN中佐が……」

妙高「結果的にですが、このお二人が以中佐鎮守府焼失の罪をかぶる形で、ここへ異動することになったんです」

長門「大変だったんだな。だが安心すると良い、この鎮守府ならセクハラなんて絶対起き得ないからな」ニッ

龍驤「そこまで言えるんか……」

長門「ああ、この提督が筋金入りのカタブツだからな。誰がベッドに潜り込んでも絶対に手を出さないほどだ」

龍驤「ただのヘタレやん!」

提督「……」

龍驤「それともアレか、ホモなんか!」

提督「……」

龍驤「……ツッコミはどないしたん。反論しいや」

提督「いちいち反応すんの面倒臭え」

龍驤「コミュ障かい!」

妙高「いえ、本当に面倒臭いんです、提督准尉は……」

龍驤「どんだけ人間関係捨ててんねん……」
452 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:07:18.11 ID:7M0DvzEGo

長門「いや、提督は口こそアレだが面倒見はいいと思うぞ? 冗談や軽口には滅多に乗ってくれないだけだ」

龍驤「マジか……」

長門「そもそも彼がいなければ、この鎮守府も鎮守府として存在していなかっただろう」

龍驤「なんやそれ……」

提督「まあ、それはそれとしてだ。長門は陸奥に抱き着かれっぱなしで大丈夫なのか?」

陸奥「……」ギュゥ

長門「この陸奥がここまでとなると、ちょっと厳しいな。しばらくは私の部屋で休ませてやったほうが良さそうだ」

提督「出撃はどうする、控えたほうが良さそうか」

長門「そうだな……だが、ここ最近で戦艦も増えた。戦力としてはそこまで悲観することはないだろう?」

提督「人数はな。練度で言うならお前が抜ける穴はでかいぞ?」

長門「ならば、龍驤に代わりをお願いしたいがどうだろうか」

龍驤「うちが?」

長門「この鎮守府初の航空母艦だ。空母が入った編成は、この鎮守府では初めてだろう?」

提督「そういう話なら頼みたいところだが、今、陸奥をフォローできるのは長門と龍驤だけだからな」
453 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:07:58.50 ID:7M0DvzEGo

提督「できればもう一人くらいサポートできる奴がいてほしいところだが……」

 <ナガトサーーン!

長門「潮!」

長門から離れる陸奥「!」ビクッ

 タッタッタッ

潮(エプロン装備)「あ、あの、今日の分、下拵えまで終わりましたから、もう、厨房は大丈夫、です……!」

長門「終わったのか? 全部任せてしまってすまないな」

潮「ふ、古鷹さんにも、手伝ってもらいましたから……!」

龍驤「……」ジトォ

潮「……ひっ!?」ビクゥ

提督「おい、何してんだ龍驤」

龍驤「ん……!? あ、ごめん……今、うち変な顔しとったん?」

潮「あ、あの、提督さん……!?」プルプル

提督「……どいつもこいつも、いろいろ抱え過ぎだ」ハァ

長門「貴様が言うか」

妙高「……」
454 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:09:31.91 ID:7M0DvzEGo

 * 執務室 *

提督「どうすっかな……」

大淀「今度はなんですか?」

提督「陸奥もそうだが、龍驤もそれなりに傷がでけえな」

大淀「と仰いますと?」

提督「龍驤に胸の話は禁句だってところだよ。妙高もさっき見てたろ?」

妙高「はい」

提督「さっき陸奥を長門に会わせたときに、厨房で仕込みを手伝ってた潮が走って来たんだが、龍驤がすげえ目をして潮を睨んでたんだよ」

提督「多分だが、背が高くなくて胸がある艦娘を龍驤の傍に置いとくと、あいつも気に病みそうだ」

大淀「……離してあげたほうが良いと?」

提督「ああ。ただ、陸奥は俺が関わりに行かなきゃいいだけだが、龍驤の場合はそうもいかねえ」

提督「こんな時に限って、駆逐艦の半数が長期遠征ときたもんだ。確か、小柄なやつが選ばれてなかったか?」

大淀「はい、ええと……朝潮さん、霞さん、朝雲さん、暁さん、電さん、五月雨さんですね」

提督「タイミングが良くねえんだよな。周りがでかい奴ばかりじゃ、龍驤も気が休まる場所がなくねえか?」

大淀「そうは仰いますが、そこまで神経質にならなくても……」
455 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:10:51.37 ID:7M0DvzEGo

提督「ちょっと神経質くらいのほうがいいぜ? 俺、正直に言うと大和が苦手なんだよ」

妙高「それは……どうしてですか?」

提督「俺よりでけえ、っつうのがな……劣等感を煽られるっつうか、コンプレックスを刺激されるというか」

提督「本人に悪気はなくても、当人は勝手に気にしちまうもんなんだ。多分、龍驤もそうだ」

提督「俺が空母かって訊き返したときも過剰反応してたし、他人より小さい分だけ余計に気になっちまうんじゃないか?」

提督「ガタイのいい長門なら諦めもつくだろうが、潮みたいな例外を見るとやっぱり、なあ?」

大淀「……あるかもしれませんね」

提督「俺は男だから、女の龍讓の気持ちはそこまでわからないが、むしろあいつの方が過敏になってるよな」

提督「そういう意味じゃあ、はっちゃんあたりも会わせたらまずいよなあ……」

 ドタドタドタ

提督「……おい、もしかしてもうそうなったか?」アタマカカエ

大淀「そんなまさか……」

妙高「そうですよ、いくらなんでも、こんなに早く……」
456 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:12:08.01 ID:7M0DvzEGo

 ガチャバーン!

伊8「たいへん! 大変です!!」

提督「……どうしたよ」ハァ

伊8「龍驤さんが、初雪ちゃんと揉み合って、それから、すごい顔して出て行っちゃったんです!」

提督「そうかよ……どうしてこうなるかねえ……」ガックリ

大淀「……」

妙高「……」

提督「大淀。旗艦敷波、以下神通、那珂、利根で第3艦隊編成、電探と偵察機積んで龍驤の捜索に当たってくれ」

大淀「は、はい!」

提督「俺は初雪のところに行ってくる。はっちゃん案内しろ」

伊8「こっちです!」タッ

大淀「……あ、もしもし明石? 今そちらに利根さんはいますか?」

妙高「この鎮守府も大変なんですね……」
457 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:13:12.15 ID:7M0DvzEGo

 * ビニールハウス *

畑の真ん中で蹲っている初雪「……うう」

伊8「こっちです!」ザッ

提督「初雪!」ザッ

初雪「!」ビクッ

提督「初雪、大丈夫か!?」

初雪「来ないで……っ!!」

提督「!? 来るな……って、あの白い帯はなんだ? 包帯か? 怪我してたのか?」

伊8「さらしです。あれで胸を隠してたみたいなんです」

初雪「来ないで……見ない、で……!!」グスッ

提督「……わかった。だが、見るなってのはなんでだ?」

初雪「……」

提督「……」

初雪「だって……私、普通じゃ、ないし」

初雪「私は、普通で、いい……こんな、の、別に、欲しかったわけじゃないし」

初雪「胸が、大きいからって、みんなと違う目で、見られるの、嫌、だったし」グスッ

初雪「目立ちたくないのに、隠したら、隠したで……いろいろ、言われるし……!」ポロポロ

初雪「ひそひそ、言われるのは、いや……!!」

提督「……」
458 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:14:04.66 ID:7M0DvzEGo

 * 寮 廊下 *

提督の上着を羽織った初雪「……」

提督「……」キョロキョロ

伊8「……」サッサッ(←『来てもOK』のハンドサイン)

提督「……」タタタッ

初雪「……」コソコソッ

伊8「……あのときと逆ですね」

提督「そういやそうだな」

初雪「……誰も、いない?」

提督「ああ、いまのうちだ」タッ

 ガチャ パタン

伊8「ふう」

提督「遠征や演習で出払ってるやつが多くて助かったな」

初雪「……あ、あの……あ、りがと……ございます」ポ

提督「おう」ゴソゴソ
459 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:14:54.32 ID:7M0DvzEGo

伊8「提督、なにしてるんですか」

提督「ドアに明石の隠しマイク仕込まれてないか確認してる」

初雪「!?」

伊8「さすがにそれはないと思います……」

提督「ま、仕込む理由がないから大丈夫だと思うが一応な」

初雪「……」

提督「とりあえず、初雪が胸をさらしで隠してたのは、変な目で見られたくなかったって認識でいいんだな?」

初雪「……はい」コク

伊8「別に隠さなくてもいいと思うんだけど」

提督「本人が言いたくないって言ってんだから、そうしようぜ。目立ちたくない、放っておいて欲しい、って気持ちは俺も少しわかる」

提督「だから俺はこのことは他言しねえ。はっちゃんも内緒にできるか?」

伊8「ん……わかりました。誰にも言いません」

初雪「……!」

提督「よし、残る問題は龍驤だな。わざわざさらしを巻いて胸を隠してた初雪にまで突っかかるあたり、重症だ」

伊8「龍驤さん、あのまま沖に出て行っちゃったんです。とにかく連れ戻さないとどうにもできません」
460 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:16:10.30 ID:7M0DvzEGo

提督「ったく、どうしたもんかね……あ」

伊8「どうしました?」

提督「お前、さっき龍驤と初雪が揉めてた、って報告してたよな? 理由を聞かれたらやばくねえか?」

初雪「……!!」サーッ

伊8「うーん……それなら、はっちゃんが突き飛ばされたことにしましょう?」

提督「なに?」

伊8「というか、はっちゃんも龍驤さんに突き飛ばされたんです。揉み合いを止めようとしたせいで」

伊8「なので、はっちゃんが龍驤さんに突き飛ばされたところを、初雪ちゃんが注意したら揉み合いになった、ってことにすればいいと思います」

提督「……悪くねえな。初雪もそれでいいか?」

初雪「は、はい」

提督「ところで野暮なことを聞くが、N中佐も初雪の胸のことは見抜いてたのか?」

初雪「それは、わかんない、です……噂されるのが嫌で、ずっと部屋に引き籠ってたから、呼び出されたと思うんだけど……多分」

提督「そうか……そうだな。むしろ知ってたらさらしを解くように命令してたかもしれねえな、あのイヤホンで」

初雪「え……それって」

提督「あいつ、胸のでかい艦娘が好みらしい」

初雪「」
461 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:17:06.13 ID:7M0DvzEGo

提督「今なら、その胸とさらしのおかげでお前がここに漂着した、って推測できるな」

伊8「どうしてですか?」

提督「胸を隠すように巻いてたら、その分圧迫されて苦しいだろ。他の艦娘より疲れるのが早いはずだ」

初雪「……」

提督「偶然が重なったとはいえ、お前が倒れてここに来たのも、ちゃんと理由があったってことだな」

提督「畑仕事も重労働だ、頑張ってくれるのはありがたいが、ちゃんと休んでおけよ?」

初雪「……はい……」コク

提督「で、はっちゃんは怪我とかしてないのか?」

伊8「ああそうだ。はっちゃん、突き飛ばされたときに尻餅ついちゃったんですけど」フリムキ

伊8「おしりに痣ができていないか、見てください」ミズギグイッ

初雪「!?!?」カオマッカ

提督「……いや、特に青くも赤くもなってねえな」

伊8「んん、そうですか。Danke」ゴソゴソ

提督「触って痛みがあるなら、すぐ工廠へ行けよ?」

伊8「はい、わかりました」
462 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:17:59.47 ID:7M0DvzEGo

提督「じゃあ、俺は執務室へ戻る。初雪、上着返してもらっていいか」

初雪「! ……!」コクコク

提督「よし、じゃあ、落ち着いたら適当に持ち場に戻ってくれ」ガチャ

 パタン

伊8「……」

初雪「……ね、ねえ」カオマッカ

伊8「はい?」

初雪「し、司令官に、おしり、見せてたけど……大胆すぎる、と、思う……」

伊8「提督は、性行為にトラウマがあるみたいなの。無意識に考えないようにしてるっていうか、遮断してるっていうか」

伊8「多分、おっぱい見せても、絶対手を出してくれないよ? だから、提督にはばれても変なことにはならないから、きっと大丈夫」

初雪「……そ、そうなの?」

伊8「うん。裸で迫っても、提督の魚雷は全然反応してくれなかったし」

初雪「ぎょ……!?」ボフッ

伊8「あ、今の話は内緒ね?」

初雪「……」コクコク

伊8「あと……この島に流れてくる艦娘の遺体をたくさん見てることも、影響してるかもしれない」

初雪「……!」

伊8「提督が、ちょっとでも間違ってはっちゃんに手を出してくれれば、その拍子でトラウマも直せると思ったのに」

初雪「……わ、私の部屋で、そういうことしないで……」ミミマデマッカ

伊8「オウ……ごめんなさい」
463 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:18:50.18 ID:7M0DvzEGo

 * 一方その頃 太平洋上 某所 *

龍驤「……」

龍驤「……」

龍驤「……あかん」

龍驤「ここ……どこ?」ゴーーーン

龍驤「うそやん……うち、自分で自分の居場所見失うくらいまで思い詰めとったんか」

龍驤「ああもう、なにやっとんねん! 早く戻らんと……」

 ズズズ…

龍驤「……な、なんか、聞こえたかな」

 ズゴゴゴゴ゙…

龍驤「……え、えらい近くで、い、嫌な気配がするなあ……?」

 「アラァ、嫌ダナンテ……」

龍驤「……」フリムキ

戦艦棲姫「ゴ挨拶ネェ……!!」

龍驤「ーーーーー!!」パクパク
464 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:19:48.08 ID:7M0DvzEGo

戦艦棲姫「コンナトコロニ、独リデ来ルナンテ……道ニ迷ッタノカシラ?」

龍驤「せ、戦艦棲姫……な、なんでこんなところに……!」

戦艦棲姫「ナンデ? ウフフ、ヤッテ来タノハ貴女デショウ? 折角ダカラ、ユックリ寛イデイクトイイワァ……!」ニィッ

龍驤「は、ははは……で、できれば遠慮させてもらおかな……!」ジリッ

戦艦棲姫「遠慮ナンカシナイデ……ココデ、海ノ底ニ……」ガシャン ガシャン

龍驤「……っ!」クルッ ザァッ!

戦艦棲姫「沈ンデ、逝キナサァイ……!!」ガシャン!

 ドガガガァン!

龍驤「ひいいいいい!!」ザザザァッ!

龍驤「あかん! めっちゃあかん! こんなとこ、うち一人でなんとかなるわけないやん!!」

龍驤「まともな艦載機も積んでないのに、戦闘なんかできるわけないて!」

 ドガガガァン!

龍驤「ひいいいい! またきたあああ!」

 バシャバシャー

龍驤「危な! めっちゃあっぶなあ!! ちょっちかすったでええ!!」

龍驤「けど……もうちょいや、もうちょい距離が開けば……!」チラッ

龍驤「……うん、このくらいの間合いなら……よっし、逃げるで!!」ザァァァッ
465 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:20:41.18 ID:7M0DvzEGo

 *

龍驤「……ひぃ、へぇ、はぁ、ふぅ……」ゼーゼー

龍驤「こ、ここまでくれば大丈夫やろ……」

 ゴン

龍驤「おわっ!?」バシャーン

龍驤「な、なんや!? なんに蹴躓いたんや! 流木かなんかか!?」

骸骨?「」プカ

龍驤「ひわぁぁぁあああ!?」ビクウウウウ!

龍驤「ほっ、ほ、ほ、骨やあああ!?」

骸骨?「……」

龍驤「え、なに!? なんなん!? い、生きとるんか、この骨!?」

骸骨?「……す……」

龍驤「うん……?」

骸骨?「た……す……」

骸骨?「……け……て」
466 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/09(土) 11:23:20.55 ID:7M0DvzEGo

龍驤「も、もしかして、生きてるん?」

骸骨?「生き……て……る……」

龍驤「もう、骨と皮みたいなもんやないか……ずっと海を漂っておったんか!?」

骸骨?「……そ、う……」

龍驤(こんな餓死寸前の子、初めてや。向こうの鎮守府じゃあ、食べたくなくても食べさせられたくらいなのに)

龍驤(やっぱり、どこかで世の中は繋がっとるんや。向こうの歪みが、こっちにしわ寄せてきとるんや……!)

龍驤「こんなん可哀想すぎるやんか……しっかりしいや!」

骸骨?「……」

龍驤「あ、あかん! 寝たらあかんて! うちが鎮守府まで連れて行くから、しっかりしい!」ヨイショ

龍驤「って、軽! 予想はしとったけど、軽すぎや!」

龍驤「うん、これならそんなにスピード落とさへんでも行けるわ! ええか、飛ばすでぇ!!」ザァァァッ!

骸骨?「……」

龍讓(この子は、死なせちゃあかん……絶対に、うちが助けるんや……!!)
467 : ◆EyREdFoqVQ :2019/03/09(土) 11:24:25.70 ID:7M0DvzEGo
今回はここまで。
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/09(土) 15:26:46.96 ID:b8O1RKoeO
更新乙です雲龍登場だぁ!
ここまで食ってないといきなり良いもの食わせると
ショック死するな、看病大変だろうなぁ
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/09(土) 18:53:13.98 ID:RNnJ3kMno
乙乙。おっぱい!おっぱい!…提督も大変だな…(遠い目
470 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:06:11.43 ID:R/s+Uw8ko
続きです。
471 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:07:30.18 ID:R/s+Uw8ko

 * 墓場島鎮守府 執務室 *

龍驤「迷惑かけて、ほんまに、すいませんでした」ドゲザ

提督「……いいけどよ、別に。被害もねえわけだし」

敷波「司令官、本当に大丈夫なの? 戦艦棲姫と出会って逃げてきたとかさあ、あたしたちにとっちゃ未知の相手だよ?」

提督「見つかったとはいえ、一発も当てずに逃げてきただけだから、向こうも躍起になってこっちを探すようなことはないだろ」

敷波「だといいけど……」

神通「追いかけてくる可能性は極めて低いと思います」

敷波「そうなの?」

神通「戦艦棲姫のような大物は、本営が発表する大規模作戦時に姿を現します」

神通「逆に言えば、特定の時期、特定の海域にのみ出現しますから、余程のことがない限りその海域から出てくることはありません」

敷波「そっか、良かったぁ……」

提督「龍驤は、たまたまその特別な時期の海域に迷い込んで、戦艦なんとかと鉢合わせた、ってことか」

敷波「ついてなかったんだねー……」
472 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:08:18.07 ID:R/s+Uw8ko

神通「私は運が良かったと思いますよ。あの戦艦棲姫から逃げおおせたんですから」

那珂「提督さーーん!」キラキラキラ クルクルクル スターーン!

提督「報告にエフェクトとターンとポージングは要らん」

那珂「そんなぁ!? 最重要項目ですよ!?」

神通「なにがあったんですか?」

那珂「龍驤ちゃんが連れてきた艦娘、誰だかわかったの! 空母の雲龍さんだよ!」

提督「雲龍?」

那珂「うん! ただ、修復剤の効きが悪いみたいで、まだ目を覚まさないの!」

提督「まあ、あの姿じゃ無理もねえな。龍驤、いつまでも土下座してねえで、雲龍の様子でも見に行ってこい」

龍驤「え、ええのん?」

提督「雲龍を助けてきたのはお前だ。お前が看に行かないで誰が行くってんだ」
473 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:09:19.78 ID:R/s+Uw8ko

 * 工廠 入渠ドックの外 *

明石「龍驤さんとの遭遇がもう少し遅かったら、手遅れでしたね」

提督「なんでこんなことになったんだ?」

明石「雲龍さんなどの一部の艦娘は、特定海域でしか邂逅できないんです」

提督「特定海域? 神通が言ってた特別な海域のことか」

明石「はい。深海棲艦の群れが大きくなると、鬼級や姫級と呼ばれる強力な深海棲艦が発生しやすくなります」

明石「鬼級や姫級は世界にとって大きな脅威となりますので、本営はこれを掃討するために大規模作戦の開始を発令するわけです」

明石「しかし同時に、そういう大物のいる海域は、特別な艦娘が生まれやすい環境でもあるんです」

提督「雲龍はそういう特別な条件下の海域でしか出てこない艦娘だということか」

明石「はい。深海棲艦の存在によって海域の『なにか』が変わって、その海でのみ特殊な艦娘が生まれるというのが、私が信じてる説です」

明石「今回は、その深海棲艦の群れがたまたま近くの海域を移動中で……」

明石「たまたまそこに迷い込んだ龍驤さんが、その中にいた雲龍さんをたまたま発見し、救助できたんだと思います」

明石「前回の大規模作戦が半月ほど前ですから、おそらくその時期に発生した群れの生き残りなんでしょう」

提督「雲龍もそのくらいに生まれたってことか」

明石「だと思います。で、その作戦時に誰にも見つけてもらえなかったと」

提督「そうなったら、そのまま死ぬのか?」

明石「そうなるでしょうね」

提督「……理不尽なもんだ」

明石「そこは割り切るしかありませんよ。戦争ですもの」
474 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:10:15.62 ID:R/s+Uw8ko

 * ドック内 *

 (風呂のような水槽に痩せこけた骸骨?→雲龍が浮かんでいる)

龍驤「まだまだ骨みたいやなあ……」

利根「うむ。明石が言うには、もうしばらくは修復剤に浸しておかねばならんそうだ」

雲龍「……」

利根「もう少ししたら修復剤に栄養剤やら肌の保湿剤やらを混ぜてゆっくり体に浸透させて、それから食事の練習じゃな」

利根「衣服も準備してやらねばならん。痩せ細ったせいで、元の衣装ではサイズが合わなくて着られなくなっておる」

利根「とにかく何も食べずにおったから、普通の水すら飲むのに難儀するであろうよ」

利根「まずは重湯から作るべきじゃが、暁が遠征で不在じゃからなあ……比叡に頼むか習うかせねばな」

龍驤「ひ、比叡!? じょ、冗談やないで! 毒を作れっちゅうんか!?」ガクゼン

利根「……その反応も毎度恒例じゃなぁ」ハァ

475 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:11:10.30 ID:R/s+Uw8ko

 * それから3日後 執務室 *

潮「おはようございます……!」

陸奥「おはようございます……」

提督「よう。陸奥、あんまり顔色良くないみたいだが、大丈夫か?」

陸奥「は、はい、なんとか……」

提督「そうか、無理すんなよ」

大淀「今日は昨日お知らせしたとおり、潮さんと陸奥さんが秘書艦です」

大淀「長門さんからは、潮さんのおかげで陸奥さんも鎮守府に馴染めできていると聞いています」

大淀「今日はその区切りといいますか、仕上げの段階、と言う感じですね」

提督「思ったより早かったな?」

大淀「やっぱり、鎮守府内に男性がいないのが大きかったと思います」

提督「そうか。とりあえず俺はいつも通りでいいんだろ?」

大淀「はい。提督と一緒にいられるかどうかが一番重要ですから」

潮「あの、私と同じように、陸奥さんに接してもらえれば、大丈夫だと思います……!」
476 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:11:57.25 ID:R/s+Uw8ko

提督「そういうもんか? まあいいや、試すだけ試してみるか。陸奥、無理があるようならすぐに言えよ?」

陸奥「は、はい……!」

提督「それから、今朝は工廠へ行って雲龍の様子を見て回ってきた」

提督「起き上れるくらいには回復したが、まだ食い物が受け付けられないらしい」

大淀「お腹が弱っているということでしょうか」

提督「多分な。無理に食わせても戻しちまうから栄養が取れなくて、立って歩くのもつらそうだった」

提督「龍驤も付きっきりで看病してるが、さすがに疲れてきてるみたいだな」

大淀「そうですか……」

提督「ただ、俺たちが気をもんでも何にもならねえ。明石もいるし、俺たちは俺たちの仕事をする」

大淀「はい」

陸奥「……」

潮「あの、陸奥さん、なにかあったら、すぐ教えてくださいね」

陸奥「……ありがとう」
477 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:12:51.69 ID:R/s+Uw8ko

 * 昼 *

提督「潮ー」

潮「は、はい!」ガタッ

提督「今月の申請書はこれで全部だ。確認頼む」

潮「わかりました……!」

提督「人数が増えたもんで食費が馬鹿になんねえな。もう少し自給自足できりゃあいいんだが……」

提督「畑は初雪が見てくれてるけど、もう少し拡張しないと自給が追いつかねえ」

潮「……でも、初雪ちゃん一人で見るのは大変だと思います」

提督「そうだよなあ……もう一人くらい専任がいてもいいよな」ウーン

陸奥「……」

潮「……陸奥さん?」

陸奥「! な、なに?」

潮「なんだかぼーっとしてましたけど、大丈夫ですか?」

陸奥「う、ううん、なんでもないわ。大丈夫」

潮「……やっぱり、顔色が悪い気がしますけど」

陸奥「大丈夫よ……!」
478 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:14:11.07 ID:R/s+Uw8ko

潮「やっぱり、提督さんがいると落ち着かないんですか?」

陸奥「そんなことはないわ……あの鎮守府に比べたら天国と地獄みたいだもの」

潮「そ、そんなにひどかったんですか」

陸奥「ええ、いつ迫られるか、気が気じゃなかったから……」

陸奥「でも、准尉はなにかするときに必ず声をかけてくれるし……今ここで過ごすこと自体は、全然苦痛じゃないから」

潮「陸奥さん……」

 コンコン

大淀「大淀です。失礼します」チャッ

大淀「提督、そろそろ昼餉に致しましょう。比叡さんからお弁当をいただいてきました」

提督「弁当?」

大淀「はい、今日は屋外で作業している方が多いので、お弁当を作ってみたそうです」

大淀「ポットにお茶も入っています、今ご用意しますね」

提督「弁当か……比叡の飯は向こうでも大好評だったんだよな」

潮「む、向こうって……朧ちゃんや初雪ちゃんがいた鎮守府ですか?」

提督「ああ。からあげとか一口ハンバーグとかあったんだけど、あっちの卯月と望月がすっげー勢いで全部食いやがってな」
479 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:15:18.44 ID:R/s+Uw8ko

提督「そのあと、こっちに来た鳳翔が比叡に作り方を教えてもらってたから、今頃向こうでも流行ってるんじゃねーかな」

潮「おいしいですからね……!」ニコニコ

大淀「提督、どうぞ。こっちが潮ちゃんと陸奥さんのぶんです」コトッ

提督「おう、ありがとな」

潮「ありがとうございます……!」

陸奥「……」

提督「……相変わらず手が込んでるな。今日は由良と如月が手伝ってたんだっけか」カパ

大淀「はい。如月さんからは味わって食べてくださいと言伝を預かってますよ」

提督「そうか」

潮「そ、それじゃ、いただきます! ……もぐ、もぐ……んん……っ」ニコー

提督「相変わらず幸せそうに食べるな……」

大淀「ですね」ニコニコ

陸奥「……」

提督「……陸奥? どうした」

陸奥「……」

潮「陸奥さん……?」

陸奥「……ぅ、ぐ……!」グラッ

 ドタッ

提督「陸奥!」ガタッ

潮「む、陸奥さん……陸奥さんっ!?」

提督「おい! しっかりしろ! 陸奥! おい!!」ユサユサ

陸奥「ぅ……」

提督「……大淀! 明石に連絡だ!」

大淀「は、はいっ!!」
480 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:15:55.67 ID:R/s+Uw8ko

 * 工廠 入渠ドック *

提督「龍驤も倒れただと!?」

明石「はい、真っ青な顔をして倒れてしまって……!」

提督「飯は食ったのか?」

明石「食べたんですけれど……」

提督「けれど?」

明石「尋常じゃなく早食いだったんですよ。余程お腹が減っていたのか、雲龍さんのために用意した重湯まで食べたいと言い出して……」

提督「……」

明石「陸奥さんは食べる前に倒れたんですよね?」

提督「そうだ。腹を抱えていたから胃痛の類だと思うが……明石はなんともないのか?」

明石「は、はい。同じお弁当を食べたんですけど、私はなんともないですよ」

提督「じゃあ、弁当が原因じゃねえんだな……」

明石「そ、そうですね……!」

提督「……もしかして、どっちも摂食障害ってやつか?」

明石「え?」
481 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:19:12.30 ID:R/s+Uw8ko

提督「俺も急に食生活が変わった時に経験したんだが……仮説として聞いてくれ」

提督「龍驤と陸奥は、前の鎮守府で大食いを強要されていた」

提督「無理矢理胃袋をでかくさせられて、ある日いきなり普通の量の飯を出されたら、それは足りなく感じるよな?」

明石「え、ええ……」

提督「龍驤の場合は空腹で倒れたんだろう。食べ過ぎても、必要な栄養分だけ吸収するように体が順応したとしたら……」

提督「食べる量が減れば、その分吸収できる栄養も減って、栄養失調になる。それで倒れた、って考えられる」

明石「……!」

提督「陸奥は背負ってドックへ連れてくるときに、頻りに気持ち悪いと訴えていたし、酸っぱい匂い……多分胃液だな、それが出過ぎてる」

提督「大量の飯を食べるのに慣れたせいで胃酸過多になって、胃を壊したように思えるな」

明石「よ、よくそこまでわかりますね!」

提督「適当だけどな。どっちにしても、俺はいきなり食事量が変わったせいで起きたことだって推測してる」
482 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:20:02.33 ID:R/s+Uw8ko

提督「そういう観点で、なにか治療法はねえのか」

明石「そんなこと言われても、私はどちらかと言えば外科医みたいなものですし……!」

提督「これは内科医の仕事か……」

明石「い、いったいどうしたら……」

提督「……」

明石「……」

提督「そうだ……おい明石。バケツは今どのくらいある」

明石「へっ?」

提督「あれの中身を……修復剤をあいつらに食わせたら、体の内側を直せないか?」

明石「え、ええええ!? あ、あれ、食べられるんですか!?」

提督「N大尉の鎮守府の厨房にあのバケツが置いてあったのを見たんだ。鳳翔に聞いたら、料理に混ぜてくれってリクエストが来るらしい」

提督「どういう理屈か知らねえが、修復剤は怪我とかを直すんだろう? 胃袋に直接流し込んでやれば、効果あるんじゃねえか!?」

明石「……私はやったことありません。でも、試してみる価値はあると思います!」

明石「その話が本当だとしたら、大発見ですよ!!」グワッ

提督「お、おう……」
483 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:20:52.39 ID:R/s+Uw8ko

 * ドック内 病室 *

潮「陸奥さん、しっかりしてください!」

長門「龍驤も倒れただと!?」ダダッ

大淀「な、長門さん落ち着いて!」

長門「し、しかし……!」

利根「気持ちはわかるが静かにするんじゃ」

 ガチャバーン!

明石「みなさん! 治療のご協力をお願いします!」

大淀「明石!?」

潮「な、なんですかその脚立!?」

提督「おい明石、このバケツはどこに置くんだ!」ガシャガシャ

長門「提督も来たのか!?」

明石「とりあえずここにお願いします! 陸奥さんから治療を始めましょう!」ガシャッ

潮「え? ど、どういうことですか!?」
484 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:21:37.60 ID:R/s+Uw8ko

明石「話はあとです! 提督、陸奥さんの上体を起こして、顔は上に向けてください!」

提督「こ、こうか!?」グッ

陸奥「……う、うう……」ムクッ

明石「はい! そのまま、口を開けさせてください!」

提督「わかった」グイ

 ガポッ

陸奥「……もが?」

潮「な、なんですか、あれ。漏斗?」

大淀「ろうと、というより、じょうごですかね……サイズ的に」

明石「よし、それじゃ行きますよ!」キャタツノウエデバケツカマエ

提督「え」

陸奥「!?」ギョッ

潮「!?」

大淀「!?」

利根「!?」
485 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:22:36.20 ID:R/s+Uw8ko

長門「明石!?」

明石「修復剤、投入!!」バケツザバーー

陸奥「もぼがばごぼっ!?」ゴボボボー

潮「む、陸奥さあああああん!?」

大淀「な、なにをしてるんですかああああ!?」

明石「修復剤を胃袋に直接流し込んでいるんです!」ドヤッ!

長門「そんな無茶苦茶な流し込み方があるかああああああ!!」

陸奥「……も……! ごぼ……っ! お……!」ジタバタ

提督「おい明石、大丈夫なのかこれ!?」

明石「提督は動かないで! もう少しです! もう少しで終わりますから!」

陸奥「……っ……っ!」プルプル

潮「あわわわ……!」

利根「……」アングリ

提督(……俺、余計なこと言わなきゃ良かったか?)タラリ
486 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:23:33.34 ID:R/s+Uw8ko

明石「よし! これでオーケーです!」バケツカラッ

陸奥「」チーン

長門「何がオーケーなものかあああああ!!」

潮「む、陸奥さん? 陸奥さぁぁん!」オロオロ

明石「今回陸奥さんが倒れた原因は消化器系の問題と思われます! だとしたら修復剤を直接お腹に入れるのが一番効果的です!」

大淀「だとしても、やり方に問題があるとしか言えませんよ!?」

明石「次は龍驤さんですね!」

大淀「話聞けよ!」ゴォッ

潮(提督さんそっくり!?)ビクッ

提督(誰だ今の!?)ビクッ

龍驤「う、うう……なんや、騒がしいなあ……」

陸奥「」シロメ

龍驤「」

明石「提督、さっきと同じように龍驤さんを抑えててください! 早く!!」ギラッ

提督「あ、ああ」ガシ

利根(あの提督が気圧されておる……)タラリ
487 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/17(日) 18:25:26.07 ID:R/s+Uw8ko

龍驤「ちょっ、な、なにするん!?」

明石「大丈夫、龍驤さんのお腹の治療です! 治療ですよ!」ギラギラッ

龍驤「あ、明石! その血走った眼はなんやねん!?」

明石「いいから口を開けてください!」ガポッ

龍驤「がぼっ!?」

明石「はい、上を向いてぇ! 投入うう!!」バケツザバー

龍驤「ごぼがばぼべーーーー!?」ゴボボボー

潮「」シロメ

大淀「」シロメ

利根「なんなんじゃこの地獄絵図は……」

提督「これで治らなかったらどうする気だ……」タラリ

長門「陸奥! しっかりしろ、陸奥ーーーー!!」
488 : ◆EyREdFoqVQ :2019/03/17(日) 18:26:16.33 ID:R/s+Uw8ko
今回はここまでー。

どうしてこうなった……。
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/17(日) 21:19:09.13 ID:efJPCC1Ko
乙!
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/18(月) 13:50:12.06 ID:lzg+TCAP0
ワロタww
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/22(金) 14:12:10.72 ID:qvk9sm/A0

 
ちりょう(治療)+し(タヒ)= ちしりょう
492 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:06:14.44 ID:Qs9vb849o
それでは続きです。
493 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:08:05.09 ID:Qs9vb849o

 * 工廠 *

明石「あいたたた……どうして長門さんからげんこつをもらわなきゃいけないんですか」タンコブ

提督「お前ノリノリだったじゃねえか、目が怖かったぞ。つーか、お前のせいで俺までげんこつ食らったんだからな?」タンコブ

明石「発案者は提督じゃないですかー」

提督「そうだけど、あんな治療法あるかよ。もうちっとスマートにできなかったのか?」

明石「カテーテルでもあればできたでしょうけど、そう都合よく持っていませんでしたし!」

明石「とにかく、小一時間もすれば胃腸に浸透して効果も出てくるでしょうから、お茶の時間にでも見に行きますよ」

提督「……うまくいくといいがな」

明石「そうですね。雲龍さんにも少量ですが似たように処方しましたし、これでうまくいかなかった人はまた別の方法を試してみましょう」
494 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:08:59.79 ID:Qs9vb849o

提督「……無理はさせんなよ?」

明石「ええ」ニマー

提督「なんつうか不安になる笑顔だな……まあいい、俺は執務室に戻る。陸奥を連れてきて昼餉を食べ損ねたからな」

明石「はい、こちらはお任せください! それにしても、修復剤を料理にですか……どんな味がするんでしょうね」

提督「修復剤自体は無味無臭だったな。水あめみたいな感じだった」

明石「……え」

提督「? どうかしたか」

明石「い、いえいえ!」ブンブン

提督「? ……とりあえず俺は執務室に戻るぞ」

明石「はい!」

 パタン

明石「……提督が、修復剤を食べたってこと……!? そ、それこそ大丈夫なの……!?」
495 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:09:59.66 ID:Qs9vb849o

 * その日の1530 食堂 *

龍驤「……うまいなあ、このパンケーキ」モギュモギュ

陸奥「本当……」モグモグ

龍驤「比叡が作るっちゅうから、どうなるんかめっちゃ不安やったけど……」モギュモギュ

陸奥「見ただけでお腹が鳴ったものね……」モグモグ

龍驤「それに、好きな分だけ食べられるて、ええな……」ポロ

陸奥「そうね……幸せだわ」ウルッ

龍驤「食事までトラウマになったら、うちらどうしたらいいかわからんし」ポロポロ

陸奥「もう……泣きながら食べたらしょっぱくなるわよ」グスッ

龍驤「陸奥やってそうやんか」グシグシ

提督「……よう」

陸奥「!」ビクッ

龍驤「な、なんや!?」ビクッ
496 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:10:58.21 ID:Qs9vb849o

提督「あー……その、昼間は悪かったな。修復剤の件、明石に持ちかけたのは俺だが、考えてた以上に荒っぽいっつうか……」

龍驤「そーやなあ! 無理矢理やったなあ!」

提督「……」

龍驤「な、なんや、文句あるんかい」

提督「いや。すまなかった」ペコリ

龍驤「……!」

陸奥「……!」

龍驤「い、いや、いつまでも怒っとるわけやない。やり方は考えて欲しいんや! な!?」オタオタ

陸奥「そ、そうね……」オロオロ

龍驤「結果オーライやったけど、同じことを起こしたらあかんねん! な?」

提督「そうだな。次がないのが何よりだが、もしあったらもっといい方法を考えなきゃな……明石にも相談する」

龍驤「……ところで、雲龍には修復剤を少ししか飲ませんかったって聞いたけど、なんでや?」

提督「龍驤たちは食べさせられすぎて胃拡張気味だったと思うが、雲龍は逆に飲まず食わずだからな。胃縮小を心配したんだ」

龍驤「うちらにがぶ飲みさせたんは、大食いしてたからなんか……」

提督「つっても、あそこまでやる気はなかったがな……」
497 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:11:59.14 ID:Qs9vb849o

陸奥「雲龍には、普通の食事は駄目なの……?」

提督「しばらくは重湯やおかゆで食べ物に慣れてからだな。余所じゃ修復剤を混ぜて食べさせてる例もある」

提督「お前たちがこんなに早く回復したんだから、雲龍もすぐにここに来られるようになるんじゃないか?」

龍驤「……だとええなあ」

提督「しばらくは様子見だ。お前たち自身も、落ち着く時間が必要だろ」

龍驤「そうやね……」

提督「それでだ。今なら、死にたいとは言わないよな?」

陸奥「……!」

龍驤「……まあ、せやね。やっとまともな生活できそうやし、考えたほうがええかなあ」

陸奥「そうね……」

山城「有耶無耶に、そうね、じゃなくて、はっきり言っておいたほうがいいわよ」ズイ

龍驤「!?」

提督「山城……!」

山城「私よりも薄幸そうなオーラを放ってる一団だもの、この辺で決意表明でもしておいて、腹を括ったほうがいいんじゃない?」

提督「まあ確かにな。そうすりゃ出撃とかも任せるつもりだ」

陸奥「……出撃……」
498 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:13:02.68 ID:Qs9vb849o

提督「どうする?」

龍驤「……そうやなあ。うちは、ここで人生始め直しても、ええかもしれんなあ。陸奥はどうするん?」

陸奥「そうね……出撃、させてもらおうかしら」

陸奥「いろいろ、たまってたのかもしれないわ。外で思いっきり、鬱憤を晴らすのもいいかも、ね……!」

提督「……陸奥もやっと笑ったか。これなら一安心だ」

陸奥「!」

山城「なにそれ。ナンパでもしてるつもり?」

提督「してねえよ。やけに突っかかってくるな、お前」

山城「あなたの態度に納得いかないだけよ。私や扶桑お姉様には踏ん反り返って上から目線だったくせに」

提督「ああ? 踏ん反り返った記憶はねえぞ」

山城「は? だったらどうしてこの二人には、私たちのときよりペコペコ頭を下げてるのよ! 弱みでも握られたの!?」

提督「いや……明石が二人にやらかしたことを聞いたら納得すると思うが」

山城「はぁ? いったい何をしたのよ……」
499 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:14:03.19 ID:Qs9vb849o

龍驤「うちらの口にじょうご突っ込んで、高速修復剤を流し込んだんや。ダバーって」

提督「それもバケツ一杯分な」

山城「……はあああ?」ドンビキ

提督「な? そういう顔になるだろ?」

山城「鬼畜」ジリッ

提督「それは明石に言えよ、俺は修復剤を食わせたらどうだって言っただけだぞ」

山城「部下に責任転嫁するの? 鎮守府を預かる提督のくせに、逃げるなんて最悪ね」

提督「そうじゃねえよ。お前も口が減らねえな、明石といい勝負だ」

山城「あなただってそうでしょ、ああ言えばこう言うし……!」

提督「……負けん気が強すぎるぞ、お前」

山城「まだ言うの!?」

龍驤「仲ええなぁ」ニヤァ

陸奥「そうね」フフッ

山城「ちょっと!? そ、そういうのとは違いますから! そもそも着任して日も浅いし!」
500 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:15:03.05 ID:Qs9vb849o

扶桑「そうかしら? 山城、そう言う割に提督ととっても仲が良く見えるわよ? ふふふっ」ニコニコ

山城「」シロメ

山城「」シロメ

山城「」ヒザカラクズレオチ

山城「不幸だわ……」ガクーッ

提督「なにやってんだよこいつは……」

龍驤「一人上手やなー」ケラケラ

扶桑「ところで……二人はもう体調はよろしいんですか?」

龍驤「!」

提督「扶桑……お前、いつから異常に気付いてた?」

扶桑「何度か食事で近くに座っただけですが、その時に。龍驤さんは食べるスピードが異常に速かったですし……」

扶桑「陸奥は食べるのを怖がっていたように見えましたので。潜水艦の子から病気に関する本をお借りして、調べていました」

扶桑「過食症ですとか、拒食症ですとか……当てはまりそうな症状にあたりを付けてから、ご報告するつもりでいましたが」チラッ

扶桑「必要、なかったみたいですね」ニコ

提督「いや、そういうことなら早めに教えて欲しかったぜ。結局二人とも倒れたわけだしな」
501 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:15:58.07 ID:Qs9vb849o

提督「実際今はどうなんだ? 食べてて違和感ないか?」

龍驤「嘘みたいに調子ええよ。前は食べても味もせんかったし、こう……食べ物がちゃんと喉を通ってお腹に収まる感触がなかったしなあ」

陸奥「私もよ。何か口にすると胃液の味がして気持ち悪かったんだけど、今は全然そんなことないわ」

提督「……もしかして修復剤、効果あったのか?」

陸奥「認めたくないけど……」メソラシ

龍驤「あれはあれで別のトラウマになるで……」トオイメ

提督「もうあんな使い方はしねえよ、コップで飲むようにするか医療用の細い管でも取り寄せるかするさ」

提督「とりあえず、正式な着任の手続きは大淀が受け付けてる。そろそろこっちに来るだろうから、各々適当に申請してくれ」クルッ

扶桑「提督、どちらへ?」

提督「執務室。まだやることがあるんでな」

 スタスタ…

扶桑「……」

龍驤「なあ扶桑? あんた、うちらのことよう見てたなあ」

扶桑「ええ、なんでも、ちゃんと見て、向き合うことにしているの。今までは、この世の全てから、目を逸らしていたから……」
502 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:16:56.75 ID:Qs9vb849o

龍驤「あんたも、なにかあったんやな?」

扶桑「……ええ、いろいろと」フフッ

扶桑「山城? そろそろ立ち直って? 一緒におやつにしましょう?」

山城「……はっ!? ふ、扶桑お姉様!? 私はいったいなにを!?」

扶桑「そこまでショックを受けてたなんて……さすがに少し心配よ?」

龍驤「……」

陸奥「嬉しそうね、扶桑……ずっとにこにこしてて」

龍驤「そうやなあ……なあ、陸奥、どうなん? あの提督、信用できそうか?」

陸奥「……まだ、乱暴は受けてないから……何とも言えないけど」

陸奥「でも、あんなふうに、男の人に頭を下げられたのは初めてだわ」

龍驤「そういえばそうやなあ……」
503 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:18:06.30 ID:Qs9vb849o

 * 一方その頃 *

 * 海軍本営近くの病院 *

 (ギプスで全身を固められたN大尉がベッドに寝かされている)

N大尉「……艦娘が羨ましいな。俺にも高速修復剤が使えたら良かったのに」

妙高「安静にしててくださいね。焦ってもいいことはありませんから」

N大尉「わかってるよ。とにかく、以中佐の艦娘の体調不良はなんとかなりそうなんだな?」

妙高「はい。高速修復剤を体内に取り込むことで、お食事の異常を直せることが実証できました」

N大尉「もと部下たちがごはんに高速修復剤を混ぜてたのも、あながち無意味じゃなかったんだな」

妙高「入渠時間が惜しい子たちから、良く依頼されていたと鳳翔さんが仰っていました」

妙高「それから、N大尉の立てる計画はいつもカツカツでしたので、ストレスを感じていた子が結構いたみたいですよ」チラリ

N大尉「ぐ……」

妙高「確かに『時は金なり』と申しますが、無駄がないというのは余裕がないとも言い換えられます」

妙高「その時その時の最大効率を出したいのはわかりますが、適度に息抜きも必要でしょう」
504 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:18:57.86 ID:Qs9vb849o

妙高「せめて食事くらいは、ゆっくりとれる時間を持ったほうが良いと思いますよ」

N大尉「……ああ」ムスッ

妙高「N大尉?」

N大尉「許してくれ。この年にもなると、自分の続けてきたことに合わない説教をされると、こういう顔になるんだ」

N大尉「妙高の言うことは理解できる。ただ、長年自分が信じていたものを否定されるのはきつい」

妙高「ええ、そんなことだろうと思っていました」

N大尉「……」

妙高「新しいもの好きの割に、そういうところは頑固ですよね」

N大尉「妙高……少し性格がきつくなったんじゃないか」

妙高「長いこと構ってもらえていませんでしたので」ニコリ

N大尉「んぐ……」

妙高「仕方ありませんよね、提督准尉のような世捨て人ならまだしも、世の中の男性は胸の大きい女性に目が行くのは当然なんでしょうね」

N大尉「みょ、妙高! 俺は別にそんなつもりは……!」

妙高「でしたら、私より愛宕を重用するようになったのはどうしてなんでしょうね」ジトッ

N大尉「」
505 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:19:57.56 ID:Qs9vb849o

妙高「駆逐艦の子たちも、あからさまにぱんぱかぱーんな趣味が出ているようですし?」

N大尉「い、いや、それはその……」

妙高「この件ばかりは、以中佐のことを言える立場にないと思いますが、いかがでしょうか」

N大尉「……か、返す言葉もなく……!」

妙高「はぁ……こういう感情を、やれやれと言うのでしょうね」

N大尉「だ、だが、この場合、俺の趣味というか、好みはあまり関係ないと……」

妙高「ええ。あなたがこれまで私たちに対して、節度を持って接しておられたことは間違いありません」

妙高「ですがそれ以上に、あなたは、あまりに事を性急に進めようとしていました。ご自身の余裕を削ってまで」

N大尉「……仕方ないだろう。俺は、ただただ、父さんや母さんの生き甲斐が消えていくのを防ぎたくて……」

妙高「だからこそでしょうね。今思えば、あなたとこんな風に雑談すること自体、なかったような気がします」

N大尉「俺が戦えれば一番良かったんだ。多少無理をしても、戦果を挙げれば誰にも文句を言われない」

N大尉「だが、お前たちしか戦えないのなら、俺はそのバックアップを完璧にやらなきゃいけない」

N大尉「ゆとりなんか持ってる場合じゃないと思っていたんだ。いつの間にか、お前たちにもそれを押し付けていたわけだがな……」
506 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:20:58.85 ID:Qs9vb849o

妙高「それでツールに手を出したんでしたね。時間設定で艦娘に指示ができるからと」

N大尉「あ、ああ……それから、胸が大きい艦娘ばかり選んでたのは本当に無意識だった」

妙高「どうだか? 胸の小さな子たちを軽視していたのでは?」ツーン

N大尉「そ、それはない! 誓って本当だ! その……母さんがそうなんだ。だから軽んじたりはしていない!」

妙高「それでも胸の大きい女性が好きなんですか」

N大尉「……その、隣の家に住んでた姉さんがな、あー……憧れてたというか……な?」

妙高「そうですか……」ハァ

N大尉「……そ、それに……少し、お前に似ていて……」ポ

妙高「!?」

N大尉「お前にあのイヤホンを渡すのをためらったのも、その、深い理由はないんだが……」

N大尉「付けさせたら、どこかへ消え去ってしまいそうで……その、あのときは、なんとなく……そう思ったんだ」メソラシ

妙高「……」

N大尉「……」

妙高「そんな嘘で誤魔化せるとお思いですか」ジトッ

N大尉「嘘じゃないよ!」ガーン
507 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/23(土) 14:22:12.47 ID:Qs9vb849o

妙高「本当ですか? 話が出来過ぎですよ」

N大尉「本当だよ! ……滅茶苦茶恥ずかしかったのに、こんなことまで茶化されるのか……ぐううう」

妙高「今までやってきたことのツケが回ってきたと思ってください」

N大尉「ぐぬ……今の俺は何を言っても三枚目ってことか」ガックリ

妙高「序二段あたりではないでしょうか」

N大尉「辛辣だな!! しかも意味が微妙に違わないか!? うまいこと言ったと思ってるだろう!?」

妙高「いいえ?」シレッ

N大尉「笑顔が白々しいぞ! ったく……お前に、そんな冗談を言われるとは思わなかった」

妙高「真面目一辺倒では疲れますから。N提督も、執務から離れて一休みしても良いでしょう?」ニコ

N大尉「……厳しいんだか、優しいんだかわからないな」ハァ



妙高「ところで……あの駆逐艦隊に初雪さんを加入させたのはどうしてです?」

N大尉「……勘でしかないんだが、あの初雪、絶対何かを隠してると思ってな……!」

N大尉「育てたらいい線行くんじゃないかと思ってたんだ」

妙高「それでは、島に行ったときに連れていた磯波さんは」

N大尉「彼女も期待ができると思う」

妙高「それは胸部装甲的な意味でですか?」

N大尉「そちらは更に期待できる」キラッ

妙高「……げんこつ一回分、ツケておきますね」ピキッ

N大尉「!?」
508 : ◆EyREdFoqVQ :2019/03/23(土) 14:22:50.78 ID:Qs9vb849o
今回はここまで。
509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/25(月) 09:32:02.28 ID:XBw54/yS0
胸なんて飾りなのです、偉い人にはそれがわからないのです。
510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/03/25(月) 11:41:22.06 ID:Z386oyuAO
>>509
じゃAカップ以下の女の子の胸しか見たらあかんで
511 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:40:41.46 ID:KnApYcbEo
続きです。
512 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:41:53.17 ID:KnApYcbEo

 * それからさらに3日後の朝 *

 * 墓場島鎮守府 食堂 *

提督「雲龍の回復もあっという間だったな」ウドンズルズル

明石「はい、予想以上でした」ソバズルズル

提督「やっぱり、高速修復剤入りの食事が効いたのか?」

明石「だと思います。あとは、食べて寝てを短いサイクルで繰り返したので、回復を促すことができたのが大きいかと」

提督「食っちゃ寝してたってことか」チラッ

明石「身も蓋もない言い方をすると、そうですね」チラッ

雲龍「……」モグモグ

明石「おかげで食べるのがすっかり楽しみになっちゃったみたいで、今朝も早く食堂に行きたいって言ってましたよ」

提督「仕込みの最中からここに来てたらしいな?」

明石「どんなふうに作ってるのかを見たいし、時間をかけてゆっくり食べたい、とも言ってましたからね」

提督「そうか……それにしても、やっぱ目立つな。あの胸は」

明石「ああ、そーですねー……提督でも目が行きますか」

提督「今まで見たことねえサイズだからな。神通やはっちゃんが口開けて驚いてるとこも初めて見たぞ」
513 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:42:47.09 ID:KnApYcbEo

明石「那珂ちゃんも笑顔のまま目を見開いて固まってましたからねー」

提督「神通もそうだが、那珂のトレーニング風景見たことあるか?」

提督「あいつら、アスリートでも目指してるのかって感じにハードでストイックだからな」

提督「胸ってのは脂肪の塊らしいから、那珂にせよ神通にせよ、今のトレーニング続けてたら絶対大きくならねえぞ」

明石「……すいませんねえ、脂肪の塊で」

提督「当て付けのつもりはねえぞ。っつうか、相手によっちゃあその一言も嫌味に聞こえたりするんだろ? 本っ当、面倒臭えな」

明石「まあ、そうですねー……気にするなって言われても、どうしても気になることですよ」

提督「難しいもんだな……」

金剛「Good morning, テートクゥ!!」

比叡「司令、おはようございます!」

榛名「おはようございます!」

提督「おう」ズゾゾ
514 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:43:48.80 ID:KnApYcbEo

榛名「お、お二人とも、朝から麺類ですか!?」

明石「……驚かれるようなことですかね?」モギュモギュ

提督「別に珍しくねえだろ?」クビカシゲ

榛名「そ、そうなんですか?」

比叡「うん、司令はたまに厨房借りて作ってたりするよ?」

金剛「ンー、 balance の良い食事を心掛けないとよくありまセン……ヨ……」

提督「?」

榛名「どうかなさいましたか、金剛お姉さ……」

比叡「何を見てるん……」

明石「あ」

比叡「ひええええ! おっぱいでっか!!」

提督(声がでけえし感想がどストレートすぎる)

金剛「……テートク……あの White haird big breast はいったい誰デース……」ハイライトオフ

提督「雲龍だ。少し前に戦艦棲姫のいる海域で見つけた、飢え死に寸前の艦娘がいたろ?」
515 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:44:53.40 ID:KnApYcbEo

比叡「えええ!? あの骨みたいな人が、あんなにおっぱいおっきくなったんですか!?」

金剛「比叡……おっぱい連呼するのははしたないデース……」

比叡「でも良かったですね、元気になって!」

提督「ああ、まあな……って、榛名?」

榛名「……」ボーゼン

明石「榛名さん、大丈夫ですか?」

榛名「……」

榛名「榛名は……」

榛名「榛名はだいじょばないです……」ヒザカラクズレオチ

比叡「は、榛名ーー!?」

金剛「榛名!? 榛名、しっかりするデース! 傷は浅いデスヨ!?」ダキカカエ

提督「落ち込むのはあとにして、とりあえず飯にしてこい」

金剛「Yes...行きマスヨ、榛名ー」ズリズリ

榛名「ハイ……ハルナハダイジョウブデス……」ズルズル

比叡「金剛お姉様も元気を出してください!」
516 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:45:49.38 ID:KnApYcbEo

提督「……比叡は大丈夫そうだな」

明石「他人に悪意を向けたり、嫉妬したりするタイプじゃないですからねー」

明石「それをさておいても、比叡さんもそれなりにあるほうですから。そこまで羨ましいと思ってないんでしょう」

提督「まあ、とにかく……しばらくすりゃあ見慣れると思うんだが、それは楽観視しすぎか?」

明石「大半の人はそれで大丈夫だと思いますが……この件で致命的にショックを受けてる人がいますからね」

提督「……それ、もしかして龍驤か?」

如月「ええ、そうみたいよ?」スッ

提督「如月……?」

如月「お隣失礼しますね、司令官」ニコ

陸奥「……おはようございます」

提督「陸奥も一緒か。顔色も悪くなさそうだな」

陸奥「え、ええ……おかげさまで、ね」

提督「飯もまともに食えてるようなら、あとは鎮守府の雰囲気に慣れてもらうだけだな」

陸奥「……」コク
517 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:47:09.21 ID:KnApYcbEo

如月「……陸奥さん、大丈夫?」

提督「緊張してんだよ。陸奥と龍驤も前の鎮守府でひどい目に遭わされたからな」

如月「そういうことなら大丈夫ですよ? 司令官は、私たちに意味もなく手をあげたりしないもの」ニコ

提督「そこは理屈じゃねえよ。刷り込みみたいなもんだから、ゆっくり時間をかけて馴染んでもらうしかねえさ、マイペースにな」

明石「ひどい目に遭わされた、という点では私たちも同じですから。力になれることがあれば相談に乗りますよ」

陸奥「そ、そうなの?」

提督「まあな。ところで陸奥、今日は龍驤と一緒じゃないのか」

如月「それなんだけど、龍驤さんが部屋から出ようとしなくって……陸奥さんにどうしたらいいかって声をかけられたの」

提督「もしかして、それが雲龍絡みか?」

陸奥「……」コクン

如月「陸奥さんは潮ちゃんにお願いするつもりだったんだけど、今朝は大和さんと厨房に入る予定だったし……」

如月「ショックを受けてる理由が雲龍さんのそれだとしたら、潮ちゃんも……ね?」
518 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:47:49.65 ID:KnApYcbEo

提督「なるほど……思ったより深刻だな。とりあえず朝餉済ませて龍驤を訪ねてみるか」ズズッ

如月「私たちも一緒にいいかしら?」

提督「……そうだな、頼む」

如月「ええ」ニコー

提督「それで、龍驤は部屋にいるのか?」

陸奥「え、ええ、そうよ」

 ズイッ

雲龍「少し、いいかしら」ヌッ

提督「うお……!? ど、どうした」

雲龍「龍驤が、部屋から出てこないって聞いてるんだけど」

提督「……ああ、そうだが」

雲龍「私も、話がしたいの。できれば、工廠で」

提督「……工廠?」
519 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:48:47.19 ID:KnApYcbEo

雲龍「そう。もし、話ができるなら、工廠で待ち合わせをお願いしたいのだけれど」

提督「……明石。場所、借りられるか?」

明石「うーん……わかりました。そういうお話なら、片付けてきますので少々お時間ください」

雲龍「ええ。よろしくお願いね」スッ

 スタスタスタ…

提督「……雲龍は何考えてんのか、いまいち掴めねえな」

明石「……」

如月「……」

提督「どうした?」

明石「い、いや、まあ……間近で見ると迫力ありますね」

提督「あー……そうだな、いきなり視界にでん、と入ってくるからな。正直、俺もびびった」

如月「……」ムニムニ

提督「……」

如月「気にしてないつもりだったけど、やっぱりちょっとショックね……」ガックリ

提督「どうやって龍驤を立ち直らせるかねえ……骨が折れるぞ、これ」ハァァ

陸奥「……」
520 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:49:38.12 ID:KnApYcbEo

 * 工廠 *

龍驤「うちを呼び出すとか……なんなん」

提督「四の五の言わずに付き合え。雲龍がお前と話をしたいんだとよ」

龍驤「用があるんはあんたやないんか」

提督「なくはねえ。が、俺は後でいい」

龍驤「さよか」

如月「……明石さんと雲龍さんはどこへ行ったのかしら?」

明石「何をしてるんですか!!」

(のこぎりや電動の丸鋸を抱えて奥の部屋から出てくる明石)

如月「明石さん!?」

提督「そんなもの抱えて走ると危ねえぞ」

明石「それどころじゃありませんよ! 雲龍さんが自分を切ろうとしてるんですから!」

提督「なに?」

雲龍「明石。それを貸して」ヌッ

明石「嫌です! 貸せません!」
521 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:50:30.37 ID:KnApYcbEo

雲龍「……そう。なら、厨房で包丁を借りるわ」

提督「おい待て雲龍。お前、自殺でもする気か」

雲龍「自殺? 違うわ。私は、この胸を切り落としたいだけよ」

提督「なに?」

陸奥「胸を……って、のこぎりで!?」

雲龍「別に道具はなんでもいいわ」

雲龍「私は胸を切り落とせるなら、それでいいの」

龍驤「!?」

如月「何を考えてるんですか! そんなことしたら、大怪我どころの話じゃすみませんよ!?」

提督「雲龍、どうしてそんなことをする」

雲龍「龍驤が悲しんでるから」

龍驤「……!!」
522 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:51:24.34 ID:KnApYcbEo

雲龍「私を助けてくれた龍驤が、私を見て俯くの」

雲龍「だから、私は彼女が気にしているところを、なくしたいだけ」

雲龍「それの何が悪いの?」

如月「……そ、それは……!」

明石「別にそう思うのは構いませんけど、そういうことになら私の道具は貸せませんし、協力もできません!」

雲龍「それはどうして?」

明石「成功するビジョンが見えないからですよ。治療ならまだしも、体形をいじる手術なんて私の専門外です」

提督「厨房の包丁も無理だな。比叡や暁なら、包丁は料理を作るものであって、人を怪我させるものじゃない、って言い張るだろうさ」

雲龍「……そう。なら、それ以外の刃物がどこかにないか……」

龍驤「……けんな……!」

如月「!」

龍驤「ふざっけんなやああ!!」

雲龍「!?」ビクッ
523 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:52:34.58 ID:KnApYcbEo

龍驤「馬鹿にしとるんか!? それとも、うちを憐れんでるつもりなんか!! 舐めんのも大概にしいや!!」ブワッ

龍驤「そんなもんぶった切ったところで、うちが喜ぶ思たんか!! うちが満足する思たんか!!」ボロボロボロ

龍驤「思い上がんなや! このドアホ!!」ダッ

雲龍「え!? え……!?」オロオロ

如月「龍驤さん……!」

提督「やめとけ。下手に刺激しないほうがいい」

如月「……」ウツムキ

雲龍「なんで……!? ……どう、して……!?」オロオロ

提督「どうして? 胸を切ったところで満足するのはお前だけじゃねえか」

提督「龍驤は自分の体にコンプレックスを持ってるんだ。お前のやることは、それの解決に繋がらねえ」

提督「下手すりゃ、お前以外の胸がある奴が、お前と同じように切らないといけないのか、と悩むようになったり……」

提督「最悪、龍驤は雲龍の胸を切除するように迫ったひどい奴、なんて噂が立つかもしれねえな」

雲龍「そ、そんなこと……!!」

提督「他人がどう見るかはお前がコントロールできる話じゃねえよ」
524 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:53:43.10 ID:KnApYcbEo

提督「龍驤はお前を助けたくて、うちの連中と揉めて喧嘩別れしたのを土下座して謝ってきた」

提督「そこまでしてお前を助けたいと思ってた奴が、お前が傷付くのを容認できると思うか?」

雲龍「……」

雲龍「だったら」

雲龍「だったら、私はどうすればいいの……」ヘタッ

雲龍「私は……」ウツムキ

雲龍「助けてもらったお礼をしたかっただけなのに」

明石「……」カオヲ

陸奥「……」ミアワセ

提督「礼をしたいなら最低でも自傷行為はやめとけ。胸を切ったお前を見るたび、龍驤が罪悪感に苛むかもしれねえからな」クルッ

明石「提督!? どこに行くんですか!」

提督「この話、今の俺じゃ、これ以上首を突っ込んでも役に立てねえよ」スタスタ

如月「司令官……」
525 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/03/31(日) 14:54:43.57 ID:KnApYcbEo

陸奥「……仕方、ないのかしら」

明石「まあ……デリケートな問題ですからね」

雲龍「……」ウナダレ

陸奥「……雲龍、気を落とさないで」

雲龍「……」

陸奥「あなたは龍驤にお礼を言いたかったんでしょう?」

雲龍「……」コクン

陸奥「とにかくまずは謝ってきましょ? それから、あなたの思いを、真剣に伝えればいいわ」

雲龍「でも……」

陸奥「許してもらえるかどうかわからないけど……それでも、あなたは龍驤を傷付けるつもりなんかなかったんでしょ?」

陸奥「それだけは伝えないと。大丈夫よ、龍驤は面倒見がいいの。きっとあなたを見捨てたりしないわ」ニコ

雲龍「……」
526 : ◆EyREdFoqVQ :2019/03/31(日) 14:55:46.72 ID:KnApYcbEo
今回はここまで。
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/31(日) 23:10:30.81 ID:+Jj9/1yrO
更新乙です
毎回の更新お待ちしています
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 11:57:28.82 ID:JSna9MLhO
あまりにもデッカいとやっぱ単純に衝撃的だよねぇ
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/02(火) 01:28:46.70 ID:QtcpBdfgo
ずっと楽しみに読んでます。
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/20(土) 01:08:53.92 ID:PrqfVsBs0
保守
531 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:36:52.12 ID:03VeN8f5o
ローソン山雲に2回くらい心臓を止められてました


続きです。
532 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:37:55.37 ID:03VeN8f5o

 * 龍驤の私室 *

(龍驤が自分のベッドの上で、うつぶせになって枕に顔をうずめている)

 コンコン

龍驤「……」

 チャッ

雲龍「……龍驤」ソロッ

龍驤「……」

雲龍「……」

(龍驤のベッドのそばの床に正座する雲龍)

雲龍「……ごめんなさい」ペコリ

龍驤「……」

雲龍「……」
533 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:38:53.32 ID:03VeN8f5o

龍驤「……なにしとん」モゾ

雲龍「……」

龍驤「土下座なんかされたって、なんにもならんで」

雲龍「……」

龍驤「別に雲龍が悪いわけやないんやし」

雲龍「え……!?」ミアゲ

龍驤「うちが勝手に嫉妬して、醜態さらしとるだけやろ」

龍驤「……まあ、雲龍がアホなこと言い出したのも気に入らんのは確かやけどな」

龍驤「うちに同情してあんなこと言うたんやろうけど、うちにとっては屈辱や」

雲龍「……本当に、ごめんなさい」ションボリ
534 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:39:53.76 ID:03VeN8f5o

龍驤「もうええねん……うちがうじうじしとったのが悪いんや」

雲龍「でも……」

龍驤「少し前に扶桑が言うとったんやけどな。扶桑は、うちが羨ましいんやて」ムクッ

雲龍「……?」

龍驤「うちが雲龍を助けたこと、立派やと。もっと胸を張るべきや、って言うんよ」

雲龍「……」

龍驤「扶桑は、前の鎮守府で冷遇されてて、自暴自棄になっててな。そのあと、そこの司令官に嵌められて轟沈させられたんや」

龍驤「扶桑はそれを受け入れたらしい。夢も希望もありゃしない、やから、それに乗じて沈んでしまおうとしたんや」

龍驤「だけど扶桑は、この島に流れ着いて助かった。逆に扶桑を心配した友達が、扶桑を探して追いかけたせいで轟沈したんやって……」

雲龍「……!」

龍驤「扶桑は、自分がつらい現実から目を背けて逃げたせいで、大事な友達が沈んだのを、めっちゃ後悔してる」

龍驤「だから扶桑は、もうどんなことからも逃げたくない、目を逸らさんで、何にでも向き合う……そう、決めたんやて」

雲龍「……」

龍驤「さっきまで腐ってたんやけど、扶桑が言ってたこと思い出してな」

龍驤「なんや、うちも逃げてるだけやなあって……」
535 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:41:10.35 ID:03VeN8f5o
龍驤「変わりたくても変われなかったんが現実で。雲龍に当たり散らしたってしゃあない。なんの解決にもなってへん」

龍驤「それどころか、うちの心配してくれる雲龍にこんなことさせて……我ながら情けなくて涙出てくるわ」

雲龍「情けなくなんかないわ」

龍驤「そんなことないねんて」

雲龍「いいえ、あなたがあなたを蔑むのはおかしいと思うもの。きっと、おかしくなっていたのよ」スクッ

龍驤「……さよか」

雲龍「……」

龍驤「……」

雲龍「ねえ、龍驤」

龍驤「うん?」

雲龍「私はあなたに助けてもらった。私は、あなたの力になりたいの」

雲龍「さすがに体を取り換えることはできないけれど……そうね」

雲龍「龍驤。私の体、好きにしていいわ」ニコ

龍驤「……うん??」
536 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:42:21.84 ID:03VeN8f5o

雲龍「私は、あなたのものになる。だから、何をしてもいいの」

龍驤「……雲龍、何を言うてるん???」

雲龍「うん。それがいいわね」ズイ

雲龍「龍驤。私のことは、煮るなり焼くなり好きにして」

龍驤「だからさっきから何言うとんねん!!?」

雲龍「私は本気よ?」ズズイ

龍驤「お、おう……って、そうじゃなくて!」

雲龍「!」

龍驤「……ど、どしたん?」

雲龍「声が出てる。元気になったみたいで良かった」ニコ

龍驤「な、なんか調子が狂うなあ……そんなにうちのことが気になるん?」

雲龍「ええ」

龍驤「なんでそんなにうちのことばかり気にするんよ? もう少し、自分のこと心配したほうがええんちゃうか」

雲龍「私はいいわ。あなたのことが大事。それだけよ」
537 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:43:01.05 ID:03VeN8f5o

龍驤「うちに酷いこと言われてもか?」

雲龍「私があなたに嫌われるのは、それなりに原因もあるし、受け入れるわ。でも、だからと言って私はあなたを嫌いになりたくないの」

龍驤「……はぁ、かなわんな。どうやったら嫌いになれるねん、こんなお人好し」

雲龍「……」

龍驤「な、なんや、急に黙りこくって」

雲龍「良かった」ポロ

雲龍「本当は嫌われたくなかったから」ダキツキ

龍驤「わぷ!?」モニュ

雲龍「本当に良かった……」ニコ

龍驤(あー……あかんわ。こんな泣きながら子供みたいな笑顔向けてくる相手、憎むようになったら終わりや)

雲龍「……♪」スリスリ

龍驤(それにしても……)

龍驤「……ほんまに、でかいなこれ……」モミ

雲龍「触ってみる?」

龍驤「……ええんか?」

雲龍「ええ」
538 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:43:31.06 ID:03VeN8f5o

龍驤「うちに酷いこと言われてもか?」

雲龍「私があなたに嫌われるのは、それなりに原因もあるし、受け入れるわ。でも、だからと言って私はあなたを嫌いになりたくないの」

龍驤「……はぁ、かなわんな。どうやったら嫌いになれるねん、こんなお人好し」

雲龍「……」

龍驤「な、なんや、急に黙りこくって」

雲龍「良かった」ポロ

雲龍「本当は嫌われたくなかったから」ダキツキ

龍驤「わぷ!?」モニュ

雲龍「本当に良かった……」ニコ

龍驤(あー……あかんわ。こんな泣きながら子供みたいな笑顔向けてくる相手、憎むようになったら終わりや)

雲龍「……♪」スリスリ

龍驤(それにしても……)

龍驤「……ほんまに、でかいなこれ……」モミ

雲龍「触ってみる?」

龍驤「……ええんか?」

雲龍「ええ」
539 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:44:08.54 ID:03VeN8f5o

龍驤「うちに酷いこと言われてもか?」

雲龍「私があなたに嫌われるのは、それなりに原因もあるし、受け入れるわ。でも、だからと言って私はあなたを嫌いになりたくないの」

龍驤「……はぁ、かなわんな。どうやったら嫌いになれるねん、こんなお人好し」

雲龍「……」

龍驤「な、なんや、急に黙りこくって」

雲龍「良かった」ポロ

雲龍「本当は嫌われたくなかったから」ダキツキ

龍驤「わぷ!?」モニュ

雲龍「本当に良かった……」ニコ

龍驤(あー……あかんわ。こんな泣きながら子供みたいな笑顔向けてくる相手、憎むようになったら終わりや)

雲龍「……♪」スリスリ

龍驤(それにしても……)

龍驤「……ほんまに、でかいなこれ……」モミ

雲龍「触ってみる?」

龍驤「……ええんか?」

雲龍「ええ」
540 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:46:19.62 ID:03VeN8f5o

龍驤「なら、遠慮なく……」

 フニッ

龍驤「……」

 モニュ

龍驤「……」

 モニュモニュモニュ

龍驤「……」

龍驤「なんやこれ……」

龍驤「なんやこれえええええ!!」

龍驤「めっちゃやわっこい! なんやのこれ!!」ワシッ

龍驤「うわ、ぽよんぽよん跳ねるくせにめっちゃ重た!」

龍驤「発見や……こんなもん胸にぶら下げてたら洒落にならんわ」タラリ

龍驤「な、なあ雲龍、その……もう少し触っててもええか?」ドキドキ

雲龍「ええ」コク

 * * *

 * *

 *
541 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:47:53.94 ID:03VeN8f5o

 * 執務室 *

提督「……」ウーム

大淀(提督、また考え事をしてるみたいですね)

提督「なあ大淀、ちょっと聞いていいか」

大淀「はい。なんでしょうか」

提督「もし、嫌いな相手とどうしても話をしなきゃならないとき、お前ならどうする?」

大淀「嫌いな相手……ですか?」

提督「ああ」

大淀「そうですね……できるだけ余計なことを言わないで、用件だけを事務的に接すると思います」

提督「そうか……大人の対応だな」

大淀「私は、人の好き嫌いを言えるような立場ではありませんから」

提督「そういう話かよ。いくら役割とはいえ、健全じゃねえな」

大淀「そうでもありませんよ。ここに来てからは、それなりに言いたいことを言わせていただいてます」

提督「そうか? まあ、ストレスになってなきゃいいんだが……」
542 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:49:46.74 ID:03VeN8f5o

提督「こう言っちまうとなんだが、うちの艦娘はほぼ全員まともな配属のされ方してねえからな」

提督「難しい境遇の艦娘同士、衝突もあって当然だと思ってたから、ここまで内部分裂起こしてねえのが奇跡だと思ってる」

大淀「お互いの立場を慮れる人たちばかりですから」

大淀(ここを追い出されたら行く当てがないと言うのもあるかもしれませんが)

大淀「それに案外、居心地がいいと思ってる人も少なくないと思いますよ」

大淀(提督のそばにいたいって人、それこそたくさんいますからね……)

提督「なんか一言二言言いよどんでる気がするが……」

大淀「気のせいです」ニコー

提督「……本当かよ」

大淀「それより、どうしてそんな質問を? 嫌いな相手と話さなければならなくなったんですか?」

提督「俺じゃねえよ。龍驤と雲龍だ」

大淀「ああ……」

提督「龍驤が雲龍を身体的特徴で敵視しちまうのはどうしようもねえと思う。少なくとも俺が口を挟んでどうこうできると思うか?」

大淀「デリケートな問題ですし、下手に口を出すべきではないかもしれませんね」

提督「そうなるよなあ……」
543 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:50:48.62 ID:03VeN8f5o

大淀「提督こそことあるごとに人間を嫌ってますが、これまではいったいどうなさってたんですか?」

提督「開き直って無視してただけだ。まあ、妖精がいたから孤独じゃあなかったし、一人のほうが楽だったしな」

提督「嫌われる側はそれでいいんだが、龍驤に好意を抱いてる雲龍にそれをさせるのは酷だ」

提督「嫌う側の龍驤だって、これから毎日雲龍と顔を突き合わせることになりゃあ、否応なしにストレスたまっちまう」

大淀「ですが、あの二人を引き離しても大丈夫でしょうか……」

大淀「餓死寸前の雲龍さんを、絶対助けると息巻いていたのは、ほかでもない龍驤さんですよ?」

提督「そうかもしんねえけど今回のケースはなあ……助けた相手が親の仇、みたいなもんだろ?」

提督「だとしたら、血を見る前に隔離したほうがいいと思わねえか?」

大淀「雲龍さんを余所の鎮守府に異動させるということですか」

提督「そうするしかないんじゃねえかな……」

提督「龍驤がこの島に送られてきた罪状を考えると、龍驤がこの島を出たとしても受け入れてくれる鎮守府はないだろ」

大淀「雲龍さんも邂逅した状況が複雑ですよ?」

提督「そりゃあな……」

 コンコン

龍驤「ちょっとええか?」ガチャ

提督「……龍驤!?」
544 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:51:35.22 ID:03VeN8f5o

龍驤「あー、なんかうちらのことで揉めとるん?」

雲龍「失礼するわ」

大淀「雲龍さんも……!」

提督「もしかして聞いてたのか、今の俺たちの話」

龍驤「うーん、まあ……聞こえてきてもーたなあ」ポリポリ

雲龍「私を余所の鎮守府に、ってあたりからね」

龍驤「でも、あれや、大丈夫や。もう心配あらへんよ」

提督「なに?」

龍驤「うちと雲龍は和解できたから。気を遣わんてくれて大丈夫や」ニコ

大淀「え?」

雲龍「一応聞くのだけれど、私と龍驤が仲良くなれば、どちらかがこの島を離れる必要もなくなるのよね?」

提督「あ、ああ……そうだな」

雲龍「いらない心配をさせてしまって、ごめんなさい」ペコリ

大淀「い、いえ、そういうことでしたら何よりです……ね、提督?」

提督「そう……だな」
545 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:52:45.47 ID:03VeN8f5o

龍驤「ほな、工廠に行ってくるわ。明石たちにも謝らなきゃなあ」

雲龍「ええ」コク

提督「……」

大淀「……」

 パタン

提督「……」

大淀「……」

提督「なにがあったんだ?」

大淀「……さあ……」

提督「……」

大淀「……」

提督「わけわかんねえ。なんでこんなにうまく回ってんだこの鎮守府!?」

大淀「て、提督……?」

提督「おかしいだろ!? あんなに取り乱してたやつが、簡単に心変わりするもんか!?」

大淀「提督、落ち着いてください!」
546 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:53:41.93 ID:03VeN8f5o

提督「俺が見てきたやつらに、あんな風に理解のある連中なんか……!!」

提督「……人間じゃあ、ないからか?」

提督「艦娘だから……だからここまで、諍いがすんなりおさまるのか?」

大淀「提督……?」

提督「……」

大淀「……」

提督「やっぱ人間は一度滅んだほうがいいな」ハイライトオフ

大淀「て、提督!? 何を言い出すんですか!?」

提督「あぁ? だってそうだろうが。あんな下らねえ連中がのさばっていい理由がどこにある」

大淀「いけません! そのような発言は控えてください!」

提督「なぜだ? お前だって人間から拒絶されたクチじゃねえか、なんであいつらを庇う」

大淀「そうじゃありません! どこで誰が聞いているかわからないんですから、口を慎んでください!」

提督「……」

大淀「それに提督、その思想は危険です」

提督「俺の偽らざる本音だぞ」

大淀「そうであっても! そう言うのをやめてほしいと私は言っているんです!」
547 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:54:39.07 ID:03VeN8f5o

大淀「いつその不用意な発言が誰かの耳に入って、あなたの身を脅かすようになったらどうするおつもりですか!」

提督「そうなったらそうなった、だ」

大淀「先日! 吹雪さんが何と訴えていたか、もうお忘れですか!」ツクエバシッ

大淀「自殺をほのめかすようなことを言うなって泣かれたこと、もうお忘れになったんですか!」

提督「……忘れちゃいねえよ」プイ

大淀「吹雪ちゃんだけじゃありませんよ……! 私だって同じ思いです」

大淀「任務管理役として役立たずになった私を……私の我儘を受け入れて、私に役割を与えてくださったのは、提督です」

大淀「提督の……あなたの代わりはどこにもいません。あなたがいなければ、私の居場所もきっとどこにもありません」

提督「……」

大淀「提督。どうか、ご自愛ください」

大淀「私には、あなたが必要なんです」

提督「……」

大淀「……」

提督「……お前もそこまで言うのかよ」アタマガリガリ

提督「わかったよ、自重する。だから、そんな泣きそうな顔すんのはやめてくれ」

大淀「そ、そんな顔してません!」カオマッカ
548 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2019/04/21(日) 17:55:34.65 ID:03VeN8f5o

提督「え……お前自覚ないのかよ。滅茶苦茶落ち込んで泣きそうだっ」

大淀「そんなことありませんっ!!」ツーン!

提督「いや、おま」

大淀「だいたい! 提督はご自身を軽んじすぎておられます!」クワッ!

大淀「少しはご自身の立場というものをご理解ください! いいですね!?」ズイッ

提督「……わかった。わかったよ」ハァ

大淀「また同じようなことがあったらお説教ですからね! まったくもうっ!」プンスカ

提督「散々だな今日は……まあ、大淀の言うことも尤もだ」

提督「妖精たちもその辺で聞き耳立ててるし、迂闊なこと言って心配させねえほうがいいか」

大淀「……!?」

島の妖精たち「」コソコソッ

大淀「」

提督「まあ、自嘲はできるだけ言わないようにするが……人間への文句は言いたくなる時があるから、そっちは勘弁してくれ」

大淀「……」カオマッカ

提督「どうした?」

大淀「なんでもありませんっ!!」プイッ

提督「……なんなんだ、いったい」
549 : ◆EyREdFoqVQ :2019/04/21(日) 17:56:31.22 ID:03VeN8f5o
>538-539は書き込みミスのため無視をお願いします。
なんで連投になっちゃったんだろう……。

今回はここまで。
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