【バンドリ】あなたと誰かの話【安価】

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66 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/22(金) 00:29:53.41 ID:oJ8Qiyhd0

――あなたの部屋――

あなた「今日は色んなことを知れたな……」

あなた(夜。宿題を済ませた俺は自分の部屋で独りごちる)

あなた(一番大きな情報は上原先輩に教えてもらった宇田川先輩のことだろう)

あなた(豚骨しょうゆラーメンが好きで、和太鼓のほかにもファッションが好き)

あなた(嫌いな食べ物は特にない。面倒見がよくて姉御肌の女性)

あなた(それからどうしてか『好きな男性のタイプはきっと放っておけないタイプ! 面倒見がいいからね、ちょろっと母性本能をくすぐればイチコロだよ!』なんてアドバイスまでもらった)

あなた(その情報に関しては俺の疎い分野なのでよく分からなかった。ただ、『そういう恋のことなら私に任せて!』と上原先輩が胸を張って言っていたし、きっと有益な情報なんだろう)

あなた(それと、家に帰ってきてからは和太鼓の動画を少し見てみた)

あなた(ただ叩くだけ、と思っていたが、プロの演奏となると魅せる叩き方のパフォーマンスなんかもあるようだった)

あなた(それはそれで『すごい』と思って見ていたが、やはり一番惹かれたのは大きな和太鼓をただリズムに乗って叩くシーンだった)

あなた(その動画を見るたびに、宇田川先輩が神社で叩いていた太鼓の音が頭の中に響くような気がした)
67 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/22(金) 00:34:50.71 ID:oJ8Qiyhd0

あなた(そんなことを考えていると不意にあくびが出る)

あなた(スマートフォンのデジタル時計は23時を表示していた)

あなた「……そろそろ寝るか」

あなた(少し早いと思わなくもない。だが健やかなる体を作るには成長期の睡眠が大切だとテレビで見たことがあった)

あなた(健全な魂は健全な肉体に宿るのだ)

あなた(宇田川先輩に近付くためにも、こうして早く眠れそうな時はしっかり眠った方がいいだろう)

あなた(俺は部屋の明かりを消して、布団に潜り込む)


あなた(暗い部屋でうとうと微睡みながら思う)

あなた(何にでも挑戦することはいいが、あれもこれもと手を出して、それで全てが中途半端になるのはきっと一番ダメなことだろう)

あなた(もちろん自分で始めたことにはすべて全力を注ぐ気持ちがある)

あなた(それでも、1つのことだけはより集中をして取り組んでいくべきだ)

あなた(中途半端にならないように、全力でやりきれるように)

あなた(だからしばらくは【安価↓3】に、特に力を入れていこう)

あなた(そう結論を出したところで、俺の意識は夢の中へ落ちていった)


1:羽沢珈琲店でのバイト

2:宇田川先輩との和太鼓

3:学校での勉強

↓3
68 : ◆KWjQNDTan2 [sage]:2018/06/22(金) 00:35:35.05 ID:oJ8Qiyhd0

お疲れさまでした

次は来週の水曜日になるかと思います
すいません
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/22(金) 00:52:38.54 ID:UWoQQ1V60
2かな
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/22(金) 01:08:23.57 ID:QMi0uA+HO
2
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/22(金) 21:04:39.33 ID:UWoQQ1V60
2
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/25(月) 19:24:06.51 ID:clVPXBJaO
待ってるよ
73 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 20:11:48.86 ID:OlbWkhBM0

――羽丘学園 教室――

あなた(昨日の夜に決めたこと)

あなた(それは宇田川先輩との和太鼓に全力を注ぐ、ということだった)

あなた(偶然に偶然が重なった結果だったが、この学園に入学して宇田川先輩と知り合えたこと、そして和太鼓を叩いているところに出くわしたのも何かの縁だろう)

あなた(宇田川先輩と、あの力強く鼓膜を打つ太鼓の音)

あなた(それらに心を奪われた――とは言い過ぎかもしれないが、強く惹かれているのは確かなことだ)

あなた(それに目標の近くにいた方が色々と分かりやすくていい)

あなた「……よし! そうと決まれば宇田川先輩に弟子入りだ!」

あなた(金曜日に神社で話したことを思い出す)

あなた(確か、宇田川先輩は木曜か金曜にあそこで太鼓を叩いていると言っていた)

あなた(今日は月曜日。今すぐにでも宇田川先輩のクラスに足を運びたいところだが、いきなり押しかけては迷惑だろう)

あなた(それにバイトのこともある。羽沢先輩には木曜と金曜は出来るだけシフトを空けさせて欲しいということも伝えなければ)

あなた(加えて、「友達を呼んできてもいい」と宇田川先輩は言っていた。きっとそれだけ和太鼓に興味を持つ人が少ないんだろう)

あなた(クラスの男連中にも軽く声をかけてみよう)

あなた(そう決めたところで、始業のチャイムが鳴り響く)

あなた(宇田川先輩との和太鼓に全力を注ぐと決めたが、だからといって他のことを疎かにしていい訳がない)

あなた(今はしっかりと勉強に力を入れよう)


――――――――――――
74 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 20:12:55.45 ID:OlbWkhBM0

あなた(そうしているうちに木曜日になった)

あなた(集中して物事に取り組んでいくと時間は早く過ぎるものだ)

あなた(それに今は毎日が新鮮だ)

あなた(初めてのバイトも、羽丘学園での生活も、全部が真新しい)

あなた(実に清々しい気分だ)

あなた(そんな気持ちを共感しようと、火曜日の昼休みに、クラスメートの男連中へ「何事も挑戦だ。和太鼓をやってみないか?」と声を掛けたら、みんな一様に「それはちょっと……」と首を横に振った)

あなた(どうやらみんなはあまり和太鼓に関心がないらしい)

あなた(「どうせ楽器をやるなら軽音楽部がいい」と、太鼓の話からそんな話に話題がズレていったのを思い出す)

あなた(興味がないなら仕方がない。放課後、宇田川先輩の元へは俺1人で向かおう)


……………………
75 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 20:15:23.31 ID:OlbWkhBM0

――神社 神楽殿――

巴「おー、来たな!」

あなた(そしてその放課後、羽丘からまっすぐに神社へ向かうと、今日も法被姿に白いハチマキを巻いた姿の宇田川先輩がいた)

あなた「お疲れさまです、宇田川先輩!」

巴「ああ、お疲れ! ここに来たってことはアレか、和太鼓、やってみたくなったんだな?」

あなた「はい! 俺を宇田川先輩の弟子にしてください!」

あなた(と、宇田川先輩は期待するような表情で俺を一瞥する。それに応えられるように、俺は大きく返事をした)

巴「そうかそうか! ……って、弟子?」

あなた「俺は楽器の経験もありません! 和太鼓の教えを頂く俺にとって、宇田川先輩は師匠です!」

巴「おお、なるほど。それで弟子に師匠か。うん……いいなぁ、いい響きだ」

巴「ぃよーし、そんじゃあお前は今日からアタシの一番弟子だ!」

あなた「今日からよろしくお願いします、師匠!」

巴「おうよ! じゃ、裏手の方から神楽殿に上がれるから、こっち側に回り込んで上ってきてくれ」

あなた「はい!」


……………………
76 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 20:16:10.06 ID:OlbWkhBM0

あなた(それから2時間ほど、宇田川先輩……改め師匠に和太鼓の叩き方を教えて頂いた)

あなた(間近で見た師匠の手さばき、太鼓から発する音の力強さに改めて惚れ惚れした)

あなた(俺もその見様見真似でバチを握り、太鼓に向き合ってみたのだが、どうにも上手くいかない)

あなた(情けない音が神社を取り囲む木々に吸い込まれていくだけだった)

あなた(師匠はそんな俺を見てカラカラ笑い、「最初はそんなもんだ」と励ましてくれた)

あなた(それから「一番大切なのは楽しむこと、それと気合だ!」というアドバイスを貰った)

あなた(とてもシンプルで分かりやすかった)

あなた(そのアドバイス通り、難しいことを考えず、ただ全身に力を込めて太鼓を打った)

あなた(するとどうだろう。師匠には遠く及ばないが、段々とマシな音が出るようになっていくのだった)
77 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 20:17:33.33 ID:OlbWkhBM0

巴「よし、今日はこの辺までにしとくか」

あなた「はい、ありがとうございました、師匠!」

巴「ああ。しっかし、お前はなかなか筋がいいなぁ。1日で結構いい音が出るようになったし」

あなた「それは師匠の教え方がいいからですよ! 大切なのは楽しむことと気合……分かりやすくて為になりましたから!」

巴「お、流石アタシの一番弟子。和太鼓の神髄をしっかり分かってくれたみたいだな」

あなた(師匠はそう言ってうんうんと頷いていた)

巴「あ、そうだ」

あなた「はい?」

巴「なぁ、連絡先を教えてくれないか? 木曜か金曜のどっちかってだけだと不便だし、アタシもアフターグロウのライブ前にはそっちに集中するからさ」

巴「せっかくここまで足を運んでもらったのにアタシがいない……ってんじゃ、お前に悪いからさ」

あなた「そういうことでしたら、是非」

あなた(師匠に答えて、俺は神楽殿の隅に置いたバッグからスマートフォンを取り出す。そしてトークアプリを開いて師匠に差し出した)

巴「ん、サンキュ。えーっと、じゃあこのQRコードを読んでっと……ほい、完了」

あなた「お気遣い頂いてありがとうございます、師匠」

巴「いやいや。そしたらアタシがここに来れる日は連絡するからな。お前もなんかあったら気軽に連絡してくれな」

あなた「分かりました!」

巴「これからよろしくな!」

あなた「はい!」


……………………
78 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 20:18:43.18 ID:OlbWkhBM0

あなた(それから週に1度、師匠と連絡を取り合い、神社で和太鼓を叩くことが習慣になった)

あなた(師匠はいつでも気さくに笑いかけてくれて、和太鼓の魅力を楽しそうに語ってくれた)

あなた(俺は師匠の期待に応えたくて、一生懸命にバチを振り、太鼓を打ち込んだ)

あなた(そんな俺を師匠はよく褒めてくれる。それに少しの誇らしさを感じた)

あなた(加えて、なんと呼べばいいのか自分でもよく分からない、くすぐったいような感情が胸の中で疼くようになった)

あなた(最初はその得体のしれない気持ちに首を傾げていたが、それは別に不快なものではなく、むしろなんだかやる気を生み出してくれるような気がするものだった)

あなた(ならそれでいいか、と思って、その気持ちの正体は不明のままで置いておくことにした)

あなた(また、師匠との和太鼓以外にも、勉強に励み、バイトに励んだ)

あなた(瀬田先輩に教わった「その人になりきること」を勉強で実践したみて、確かにただ漫然と机に向かうよりはずっと集中が出来たこと)

あなた(羽沢先輩の指導の下、だんだんと羽沢珈琲店で自分の出来る仕事が増えていくこと)

あなた(それは充実した日々だった)

あなた(目に見えて自分が成長しているように感じられる日々だった)

あなた(集中した時は時間の流れが早いものだ、とは前にも思っていた)

あなた(しかしそう自覚していても、いつの間にか4月の終わり、ゴールデンウィークになっている)

あなた(つまりはそれだけ自分が全力で色んなことに打ち込めていたんだと思うと、師匠に褒められた時に似た誇らしさが胸の中に生まれるのだった)


……………………
79 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 20:28:10.22 ID:OlbWkhBM0

――羽丘学園 教室――

あなた(月が替わった5月の1日)

あなた(今年のゴールデンウィークは変則的で、今日明日は平日だった)

あなた(朝には教室のそこかしこから聞こえてきた「めんどくさいなぁ」という声も、昼休みの時間になるともう誰も口にしなくなっていた)

あなた「今日の弁当の中身はなんだろうな……」

あなた(母さんが作ってくれた弁当の中身を考えつつ、弁当箱を手にして、いつものようにクラスメートの男連中の元へ向かおうとした時だった)

「…………」

あなた(ふと教室の入り口から見覚えのある顔が室内を覗いているのが見える)

あなた(その人物は俺と目が合うと、こちらに声をかけてきた)

教室に来た人物は

1:宇田川巴

2:上原ひまり

↓1
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/27(水) 20:38:33.76 ID:Cdc67d9lO
1
81 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 21:27:50.53 ID:OlbWkhBM0

巴「よぉ!」

あなた「あ、師匠! どうしたんですか?」

巴「いやな、ちょっとお前に伝えることがあってさ」

「あれ、おねーちゃん?」

あなた「え?」

あなた(隣の席から聞こえた声に、素っ頓狂な声を出した)

あなた(そちらに視線を送ると、隣の席の内部進学の女子生徒――宇田川あこがいた)

巴「おー、あこ! なんだ、お前たち同じクラスだったのか」

あなた「はい……?」

あこ「うん……?」

あなた(師匠はそう言って笑うが、当の俺と宇田川は互いを見合って首を傾げた)

あこ「えーっと……そういえば君、前におねーちゃんのクラスがどこかって聞いてきてたね」

あなた「ああ。いつも羽丘のことを教えてくれて助かってるぜ」

あなた「宇田川は……あっ、そういえば師匠と名字が一緒だ!」

あなた「そうか、姉妹だったんだな」

あこ「え、今さら? てっきり知ってて聞いてるのかと思ってたよ……」

あなた「まったく気付かなかったぜ……珍しい偶然ってあるもんだな」
82 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 21:32:30.78 ID:OlbWkhBM0

巴「ん? どうしたんだ、2人とも?」

あこ「ううん、何でもないよおねーちゃん」

あなた「はい。ちょっとした偶然に驚いただけです」

あなた「それで、俺に何か用が?」

巴「ああ、そうだった。今週の和太鼓のことなんだけどさ、知ってるかもしれないけど、金曜日にアフターグロウのライブがあるんだよ」

あなた「師匠、ライブが近いって言ってましたね。ということは今週の練習はなしですか?」

巴「ん、そういうことだ」

あなた「分かりました! 知らせに来ていただいてありがとうございます!」

巴「いや、実は用はそれだけじゃなくてだな……」

あなた「はい?」

巴「あー、なんだ。上原ひまりって知ってるか? アタシの幼馴染の」

あなた「はい、上原先輩にはその節ではお世話になりました!」

巴「ああ、やっぱ知り合ってたんだな。そんでな、なんかひまりの奴がアタシたちのライブのチケットを押しつけてきたんだよ」

巴「『これ、最近話題のあの子に渡してきなよ!』って」

あなた「最近話題?」

巴「それはこっちの話だから気にしないでくれ」
83 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 21:39:51.90 ID:OlbWkhBM0

巴「で、どうだ? もし金曜日に暇があるなら、ライブ見に来ないか?」

あなた「それは渡りに船です! 元から行こうと思ってましたし、チケットが頂けるのであれば嬉しいです!」

巴「なら良かったぜ。一応2枚あるからな、友達も誘ってきてくれていいぞ」

あなた(師匠はそう言って笑い、俺に2枚のチケットを差し出してくる)

あなた「ありがとうございます、師匠! 楽しみにしてます!」

あなた(それを受け取って俺は礼を言う)

巴「ああ。お前の前でハンパな演奏は出来ないからな、アタシも気合入れてやってやるぜ!」

あこ「ねぇねぇおねーちゃん、お昼ご飯はどうするの?」

あなた(と、師匠の話が終わると、それを待っていたように宇田川が声を出す)

巴「ん? 特には決めてないけど……まぁ教室に戻っていつも通りって感じだな。それがどうしたんだ?」

あこ「じゃあじゃあ、あこと一緒に食べない?」

巴「そうだな。せっかくあこのクラスまで来たんだし、それもいいな」

あこ「やったー! 決まりだね!」

あなた(宇田川とそんなことを話す師匠。その顔にはいつもよりもずっと優しい笑顔が浮かんでいた)

あなた(羽丘のことを知ってて頼りになる、という印象があった宇田川の幼げな一面)

あなた(それを受け止める師匠の姉としての優しい一面)

あなた(何か特別なものが見れたような気持ちだ)

あこ「それじゃあおねーちゃん、食堂行こっ!」

巴「ああ」

あなた(相変わらず優しい顔で宇田川に頷いたあと、師匠はこちらへ顔を向ける)

巴「それじゃあな。金曜日、CiRCLEで待ってるぜ!」

あなた「はい!」

あなた(その返事を聞くと、師匠は軽く手を振ってから、宇田川とともに教室を出て行った)

あなた「……まさか師匠の方から誘って頂けるなんて、感激だ……」

あなた(残された俺は、憧れの人から、憧れのきっかけになったライブに誘って貰えたことが嬉しく、そんな呟きを漏らすのだった)


……………………
84 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 22:18:13.74 ID:OlbWkhBM0

あなた(そして、金曜日)

あなた(師匠から貰ったチケットは2枚。誰を誘おうか少しだけ考えて、親友を誘った)

あなた(俺からの誘いに二つ返事で「行く」と答えたあいつとは俺の家で待ち合わせ、揃ってCiRCLEへと向かう)

あなた(その道すがら、お互いの近況を話した)

あなた(俺は魅力的な先輩方に出会えたこと、バイトをしていること、和太鼓を始めたことを話す)

あなた(その折に、「まさかアフターグロウの人たちが羽丘にいるとは思わなかった」と言ったら、親友はポカンとした顔で「てっきり知ってて羽丘に行ったんだと思ってたわ」と返してきた)

あなた(……なんでも、ガールズバンド好きの間では「羽丘女子学園のアフターグロウ」は結構有名だったらしい)

あなた(家から近かったから、という俺の志望動機を聞いた親友は「ま、その方がお前らしくていーや」なんてバカにしてるんだか褒めてるんだか分からないことを言っていた)
85 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 22:19:04.30 ID:OlbWkhBM0

あなた(そんな他愛のない話をしているうちに、CiRCLEへたどり着く)

あなた(受付でチケットを手渡して、カウンターでドリンクを頼み、会場へ足を踏み入れる)

あなた(ちょうどライブが始まったところだった)

あなた(今回のライブは師匠たちだけでなく、いくつかのバンドが出演するもので、アフターグロウの出番は最後だ)

あなた(俺は他のバンドの演奏に耳を傾けつつ、ドラムばかりを凝視していた)

あなた(太鼓とドラム。楽器の形は違えど、打楽器であるのには間違いない)

あなた(何か参考にできるものがないか、と、そんな目線でいた)

あなた(隣の親友はどのバンドの演奏にも、楽しそうに持ち込んだサイリウムを振っていた)

あなた(知らないバンドの知らない曲でもなんとなく合わせて盛り上げようとするその姿)

あなた(やっぱり良い奴だなぁ、なんて俺はぼんやりと考えていた)
86 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 22:31:08.00 ID:OlbWkhBM0

あなた(そうしているうちに次から次へとバンドが入れ替わり、遂にアフターグロウの出番になった)

あなた(ステージに、ギターを下げ、黒髪の一部に赤いメッシュを入れた女の子が姿を現す)

あなた(続いて同じくギターを下げてパーカーのフードを被った女の子、それから上原先輩、師匠、羽沢先輩という順番で、アフターグロウのメンバーが登場する)

あなた(ボーカルの人と師匠の時だけやたらと黄色い歓声が上がっていた)

あなた(それに対して、上原先輩が「私には声援ないの!?」と言いたげな、不服そうな顔をしているのが何だか面白かった)

「アフターグロウです」

あなた(静かな、芯のある声が会場に響く)

あなた(ボーカルの人の声だ。観客席のざわめきが小さくなる。視線もその子に集まる)

あなた(そんな中、俺は師匠の姿をジッと見つめていた)

あなた(ステージの師匠と観客席の俺)

あなた(その距離をかなり遠いと感じてしまうのは、それだけ師匠に近づけたことの証拠、なんだろうか)

あなた(ふと思ったことによく分からない焦燥感のようなものが胸の内に生まれたような気がした)

巴「…………」ニッ

あなた(と、そこで師匠と目が合う。師匠はいつもの気っ風のいい笑顔を浮かべ、グッと握った右拳を俺の方へ突き出してきた)

あなた(それだけで先ほど生まれた得体のしれない感情がどこかへ霧散していったような気がした)

あなた(俺も同じように、握りしめた拳を掲げて師匠に応える)

あなた(それから口パクで何かを伝えられた気がした)

あなた(多分、「楽しんでいってくれよ!」という形だった、と思う)

あなた(だから俺はそれに大きく頷いた)
87 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 22:44:11.40 ID:OlbWkhBM0

あなた(それから、師匠から視線を外してステージを見回してみる)

あなた(今度は上原先輩と目が合った。何かニマニマとした表情で俺と師匠とを交互に視線を送っていた)

あなた(次に羽沢先輩と目が合った。先輩は何か微笑ましいものを見るような、どこか優しい目をしていた)

「……いくよ、みんな」

あなた(そうしているうちに、最初のMCは終わっていた)

あなた(ボーカルの静かな声のあと、ギターの子が頷く姿が見えた)

あなた(続いてステージの他のメンバーが頷く。それからフードを被った女の子のギターが大きくかき鳴らされる)

あなた(このギターから始まる曲は、確か「Scarlet Sky」だった)

あなた(アンプから轟く1つのギターの音。それに一気に他の4つの楽器の音が重なる)

あなた(それに「おぉ……」と隣の親友が感嘆していた)

あなた(俺はといえば、やはり師匠から目が離せないでいた)

あなた(半年前に憧れた姿。それと変わらず、いや、もっと輝いているように見える姿)

あなた(そのカッコよさに改めて惚れ直した)

あなた(そんな心境だった)


……………………
88 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 23:20:54.81 ID:OlbWkhBM0

〜幕間〜

――ライブ後 控室――

ひまり「うーん、今日のライブも良かったねぇ〜!」

つぐみ「うん。お客さんも楽しんでくれてたね」

青葉モカ「でもひーちゃん、またあのフレーズミスってたよね〜」

ひまり「うっ……や、やっぱりバレた?」

美竹蘭「うん、目立ってたね」

巴「ああ。まぁ練習の時からミスってる時の方が多かったからな。アタシは特に気になんなかったけどさ」

モカ「あー、確かにそれは言えるかもねぇ」

ひまり「ちょ、それはそれで何かヒドくない!?」

蘭「……確かにミスしてる時の音の方が耳に残ってるね」

ひまり「うぅ……蘭まで〜……!」

つぐみ「え、えーっと、どんまい、ひまりちゃん」

ひまり「つぐ〜! 私の味方はつぐだけだよぉ〜!」

モカ「んー……でも「どんまい」としか言ってないよねぇ、つぐも。フォローになってるのかなぁ」

巴「それは言ってやるな、モカ」
89 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 23:21:43.63 ID:OlbWkhBM0

ひまり「あ、そうだ。ねぇねぇ巴!」

モカ「流石ひーちゃん、もう復活した」

つぐみ「あ、あはは……」

巴「ん、どうした、ひまり?」

ひまり「あの子、ちゃんと来てたねぇ」

巴「ああ、あいつな。来てくれてたな」

つぐみ「……あれ、あの子がそうなの?」

ひまり「つぐも知ってるの?」

つぐみ「うん。ウチでバイトしてくれてるから。そっか、あの子だったんだね」

ひまり「へぇ〜、なんだか意外と関りがあるんだね」

モカ「うーん……?」

蘭「……何の話してるの?」

ひまり「あ、モカと蘭は面識がないんだ。ほら、最近巴がよく話す和太鼓の……」

モカ「あー、あの話の」

蘭「なるほどね、ひまりが「チケット渡してきなよ!」って言ってた下級生……」

ひまり「そうそう! いやぁ、ちゃんと来てくれるなんて義理堅くていい子だねぇ」
90 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 23:23:26.75 ID:OlbWkhBM0

ひまり「それでさ、巴」

巴「うん?」

ひまり「ぶっちゃけ、巴はあの子をどう思ってるの?」

巴「あいつのこと? そうだなぁ……うん、あいつはなかなか筋がいい。アタシのアドバイスでしっかり伝えたいことを分かってくれるしな」

巴「目に見えて叩くのも上手くなってるし、それにやっぱり男だと太鼓の音も迫力があるからな……アタシも負けてられないぜ!」

ひまり「違うよぉ〜、そういうんじゃなくてさぁ〜!」

巴「え、それ以外になんかあるか?」

ひまり「ほらほら、若い男女が一緒に一つのことに打ち込んでてさ、何かあるでしょ? こう、青春の甘酸っぱ〜い出来事とかさぁ」

巴「そう言われてもなぁ……」

モカ「でもトモちん、その子の話する時って結構楽しそうだよねぇ〜」

蘭「うん、確かに」

ひまり「でしょでしょ! 蘭とモカもそう思うでしょ! ほら、だから巴、ここは正直に白状しちゃいなって!」

巴「いや、白状もなにもないんだが」

ひまり「んー、煮え切らないなぁ。じゃあじゃあ、巴はあの子のことどう思ってるの?」

巴「あいつは、そうだな……弟?」

つぐみ「あー……」
91 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 23:24:17.37 ID:OlbWkhBM0

巴「あこが弟だったらこうなのかなぁってよく思うな。それに、あいつとは結構気が合うんだよ。あとなんか放っておけないっていうか……まぁそんな感じか?」

ひまり「ホントにそれだけ〜?」

つぐみ「私、なんとなく巴ちゃんの気持ちが分かるなぁ」

つぐみ「ウチでバイトしてる時のあの子を見ると、私も巴ちゃんが年下の男の子だったらこうなのかなって思うし」

つぐみ「まっすぐで、いつも元気で……なんていうか、大きなワンちゃんみたいな子だよね」

巴「だろ? アタシに似てるって部分は分からないけど、なーんか放っておけないんだよな」

モカ「ほうほう。その子はトモちんに似てると。まぁ類は友を呼ぶって言うしね〜……トモちんだけに」

蘭「……モカ、それあんまり上手くない」

モカ「えぇー、モカちゃんしょっく〜……」

ひまり「放っておけない……弟のような存在の中に、ふと感じる男らしさ……それに胸キュンする展開……うん、いい!」

つぐみ「……ひまりちゃん?」

巴「大丈夫か、俯いてブツブツ呟いて」

ひまり「巴!」

巴「お、おう?」

ひまり「私、恋の相談なら乗るからね!」

巴「……恋?」

ひまり「そう、恋! 大丈夫、恋愛経験が(少女漫画の知識で)豊富な私がいつでも話を聞いてあげるから!!」

モカ「おぉ、ひーちゃんが赤く燃えている……」

つぐみ「なんていうか……ひまりちゃん、世話焼きだもんね」

蘭「いや、ひまりのアレはただのお節介でしょ」

ひまり「そこ、うるさい!」

ひまり「とーにーかーくっ! 何かあったら遠慮なく相談してね、巴!」

巴「そんな相談するようなこともないと思うけどなぁ……」


――――――――――――
92 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 23:56:01.62 ID:OlbWkhBM0

――羽丘学園 教室――

あなた(アフターグロウのライブも終わり、ゴールデンウィークも明けた月曜日)

あなた(また新しい週が始まる)

あなた(外は気持ちのいい青空が広がっていた。それに清々しい気持ちになる)

あなた(なるのだが、どうしてか心の中に一点の染みのような、気になる部分があった)

あなた(それは師匠に誘われたライブの中で感じた、焦燥感に似たものだ)

あなた(師匠と共にいる時は気にならないのだが、1人でこのことを考えるとどうにも落ち着かない)

あなた(正体が分からないからそんな気持ちになるのかと思い、ゴールデンウィークの間に似たような感情を列挙しては胸の中にある気持ちと見比べてみたが、未だにその手掛かりさえ掴めそうになかった)

あなた「……分からないことを考え続けても仕方ないか」

あなた(俺は頭を振った。そして思う)

あなた(悩んだらまず行動。悩まなくてもとりあえず行動)

あなた(兵は神速を尊ぶ。いい言葉だ)

あなた(1人で分からないことなら誰かに相談すればいい)

あなた(その方がずっと建設的だろう)

あなた「よし、そうと決まれば(安価↓3)に相談してみよう!」


知り合った人物(巴、ひまり、つぐみ、あこ、薫)の中から
↓3
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/27(水) 23:57:28.96 ID:Z+gb4uxm0
ひまり
94 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/27(水) 23:57:33.87 ID:OlbWkhBM0

お疲れさまでした。
多分明日に続きます。

安価が少なくてすいません。

そしてハッピーバースデーイヴちゃん。
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 00:04:01.61 ID:/LZUKgw60
つぐみ
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 01:28:11.57 ID:1xSt+I5WO
ひまり
97 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/28(木) 19:25:37.59 ID:F3pd5Vcz0

あなた(ここは羽沢先輩に相談してみよう!)

あなた(羽沢先輩はバイトの時にいつも優しく指導してくれる)

あなた(丁寧で穏やかな先輩のことだ、きっととても為になることを教えてくれるだろう)

あなた(ちょうど今日はバイトが入っていた。バイトが終わったら、先輩の手の空いた時間を見て相談してみよう)


……………………
98 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/28(木) 19:26:23.11 ID:F3pd5Vcz0

――羽沢珈琲店 従業員控室――

つぐみ「今日も1日お疲れ様でした」

あなた「お疲れ様でした、それと今日もご指導ありがとうございました、羽沢先輩!」

あなた(放課後。羽沢珈琲店でのバイトを終えた俺は、控室で羽沢先輩と話をしていた)

あなた(教室で考えていたことを相談するにはもってこいの場面だった)

つぐみ「ううん。もうずいぶんとウチの仕事にも慣れたね。このままなら私が教えることもすぐ無くなっちゃうよ」

あなた「いえいえ、まだまだ俺には先輩の教えが必要ですよ!」

つぐみ「そ、そうかな?」

あなた「はい! いつも頼りにしてます!」

つぐみ「そう言ってくれると嬉しいな。ありがとう。……やっぱり人懐っこいワンちゃんみたい」

あなた「先輩? 何か言いましたか?」

つぐみ「ううん、こっちの話だから気にしないで?」

あなた「分かりました!」

つぐみ「……素直でいい子だし、巴ちゃんが放っておけないって言うのも分かるなぁ」
99 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/28(木) 19:27:46.31 ID:F3pd5Vcz0

あなた「あ、そうだ。羽沢先輩、今ってお時間ありますか?」

つぐみ「え?」

あなた(と、羽沢先輩は壁に付けられた時計に目をやる。釣られて俺も時計を見る)

あなた(時刻は19時を少し過ぎたところ。流石に一ヵ月もバイトをしていると、この時間はお店が忙しくないことは分かっていた)

あなた(ただ、先輩には先輩の用事があるだろう。もし何かやることがあるなら、俺の相談は後回しにしよう)

つぐみ「……うん、大丈夫だよ」

あなた(先輩はそう言ってニコリと微笑む。それにホッと胸を撫でおろしたい気持ちになった)

あなた「そうしたら、手前勝手なことだとは思うんですが、少し相談に乗って頂けませんか?」

つぐみ「相談?」

あなた「はい。羽沢先輩を人生の先輩と見込んで、聞いてもらいたい話があるんです」

つぐみ「じ、人生の先輩として……そんなに重大な相談が……」

あなた(俺の言葉を聞いた先輩は、居住まいを正し、コホンと1つ咳ばらいをする)

つぐみ「その、私で答えられることかは分からないけど、頑張って聞くよ」

あなた「ありがとうございます!」

つぐみ「う、うん。それで、どんな悩みが……?」

あなた「はい。実は、俺……」

つぐみ「…………」

あなた「自分の中にある気持ちの名前が分からないんです」

つぐみ「気持ちの名前が分からない?」

あなた「はい。得体の知れない気持ちがあって、これは一体何だろうと考えてしまうんです」

つぐみ「……もしかしてそれ、巴ちゃん絡み?」

あなた「!? 羽沢先輩、もしかしてエスパーですか!?」

つぐみ「ち、違うよ? ただ、なんとなくそうなんじゃないかなって」

あなた(口にしようと思っていたことを見透かされて驚いてしまう。羽沢先輩はそんな俺を見て少しホッとした顔をしていた)

つぐみ「でも、よかった。生活に行き詰ったとか、そういう重い話かと思っちゃったよ」
100 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/28(木) 19:29:25.80 ID:F3pd5Vcz0

つぐみ「それで、どういう気持ちになるのかな?」

あなた「えぇと……寂しいというか、焦りというか、その2つがごちゃごちゃに混ざったような、というか……本当によく分からない気持ちなんです」

つぐみ「それってどんな時になるの?」

あなた「この前、アフターグロウのライブがあったじゃないですか。あっ、羽沢先輩、遅れましたけどライブお疲れ様でした! ステージの先輩、輝いててカッコよかったです!」

つぐみ「あ、うん、ありがと」

あなた「それで、えーっと……なんだったっけか……」

あなた「そう、それで、ステージに立った師匠を見て、なんだか遠いなって思ったんです。その時に特に強く感じました」

つぐみ「師匠って、巴ちゃんのこと?」

あなた「はい! 宇田川先輩は和太鼓の師匠ですから!」

つぐみ「なるほどね。ステージの巴ちゃんが遠く感じて、それで寂しいとか焦りがごちゃごちゃに混ざった気持ちになったんだ」

あなた(と、そこで何故だか羽沢先輩は慈愛に満ちた表情で俺を見つめてくる)

あなた(それに何だか気恥しい思いがして、ややそっぽを向きながら言葉を発する)

あなた「ええ、そうなんです」

つぐみ「そっか……ふ、ふふ……」

あなた「先輩?」

つぐみ「あ、ごめんね。ちょっと、なんていうか微笑ましくて……私もひまりちゃんのこと言えないなって」

あなた「は、はぁ……?」

あなた(羽沢先輩はちょっと困ったように頬を掻く。それから俺を優しい目で見つめてきた)
101 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/28(木) 19:30:21.63 ID:F3pd5Vcz0

つぐみ「君が巴ちゃんに対して抱える名前の分からない気持ち。それはね、巴ちゃんの傍にずっといれば分かることだと思うよ」

あなた「そういうものなんですか?」

つぐみ「うん、そういうものだと思う」

つぐみ「それにね、多分私や他の人がその答えを教えてあげることが出来るけど、きっとそれは自分で考えて出さなきゃいけないものだと思うんだ」

あなた「な、なるほど……?」

つぐみ「ピンと来ない?」

あなた「……はい。すいません」

つぐみ「ううん、謝る必要なんてないよ。えーっと、君に分かりやすく伝えるには……」

あなた(羽沢先輩は少し思案顔をしたあと、うん、と1つ頷いてから再び口を開く)

つぐみ「分からないことがあったら、きっと君は調べたり人に聞いたりするよね? バイトの時も何かあったら周りの人にすぐに聞きに行くし」

あなた「はい。自分で考えて分からないことはそうした方が手っ取り早いですから」

つぐみ「それと同じだよ。巴ちゃんに関わることが分からないなら、巴ちゃんの傍にいればいいんだよ」

あなた「あ、確かに」

つぐみ「ね?」

あなた「はい、言われてみればその通りですね!」

あなた(本当にそうだ。師匠が関係することでそんな気持ちになるなら、師匠の近くにいればいい)

あなた(実に単純明快な話だ。そうすれば答えもすぐに分かりそうだった)
102 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/28(木) 19:30:52.76 ID:F3pd5Vcz0

あなた「ありがとうございます、羽沢先輩! 迷いが晴れました!」

つぐみ「ううん、君の力になれたなら良かった」

あなた「よーし、早速明日から、出来るだけ師匠の傍にいてみよう!」

つぐみ「ふふ、頑張ってね」

あなた「はい! 相談に乗ってくれてありがとうございました、先輩!」

つぐみ「はーい。……私もお節介焼きだなぁ」

あなた「それじゃあ、俺はこれで失礼します!」

つぐみ「うん。車に気を付けてね?」

あなた「いつもお気遣いありがとうございます! それでは!」

あなた(先輩に頭を下げて、羽沢珈琲店をあとにする)

あなた(例の感情の正体を考えるとまだモヤモヤとした気持ちにはなる)

あなた(だが、やるべきことが見えている分、朝よりもずっと気持ちが軽かった)

あなた(……羽沢先輩に相談して本当に良かったぜ!)


――――――――――――
103 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/28(木) 19:33:22.13 ID:F3pd5Vcz0

――羽丘学園 教室――

あなた(羽沢先輩に相談に乗ってもらった翌日の火曜日)

あなた(昨日よりもずっと落ち着いた気持ちで俺は考える)

あなた(師匠に関することが知りたいなら師匠の傍にいればいい)

あなた(実に単純な答えだった)

あなた(羽沢先輩のアドバイスを早速生かしていこう)

あなた(そうと決まれば師匠の近くに居れる時間を作ろう)

あなた(確かしばらくはバンドの練習もないと言っていたし、師匠も自由な時間があるだろう)

あなた(さて、どうしようか……)


1:昼食を一緒に、と誘う

2:放課後どこかへ行かないか、と誘う
(出来れば場所もお願いします)

3:その他自由安価
(R18なことや公序良俗に反することはバッドですごめんなさい)

↓1
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 19:35:14.13 ID:VAWnOGFio
1
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 19:35:43.56 ID:qpqXnwxE0
2 遊園地へナイト
  パレード見物に
106 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/28(木) 20:10:46.17 ID:F3pd5Vcz0

あなた(よし、昼飯に誘ってみよう!)

あなた(早速師匠に連絡だ!)

あなた(ええと……)

あなた『お疲れ様です、師匠! もしよかったら、昼飯を一緒に食べませんか?』

あなた「送信、と」

あなた(それからしばらく待っていると、スマートフォンが震える。師匠からの返信だ)

巴『ああいいぜ。したらお前の教室に行けばいいか?』

あなた『いえ、師匠のお手を煩わせる訳にはいきません! 俺から向かいます!』

巴『ん、オッケー。じゃあ待ってるぜ』

あなた「よし、約束は取り付けた。昼休みが楽しみだぜ!」


……………………
107 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/28(木) 20:11:52.20 ID:F3pd5Vcz0

――昼休み――

あなた「こんにちは! 師匠、いますかー!」

巴「おー。悪いなぁわざわざアタシの教室まで」

あなた「いえいえ! 俺から誘ったことですから!」

あなた(言いつつ、師匠の教室からいくつかの視線を感じて、そちらへ目をやる)

ひまり「…………」

つぐみ「…………」

あなた(上原先輩がニマニマした顔で、羽沢先輩が『頑張って!』と言いたげな表情で俺を見つめていた)

「おー、あれが噂の……」

あなた(それからアフターグロウのギターの先輩が、よく感情の掴み取れない表情で俺を見ていた)

巴「んじゃ、ちょっとこいつと飯食ってくるわ」

ひまり「んーん、ごゆっくりぃ〜♪」

つぐみ「こっちは気にしないでね」

「行ってらっしゃ〜い」

あなた「じゃあ……食堂でいいですか?」

巴「ああ。行こうぜ」


……………………
108 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/28(木) 20:13:08.68 ID:F3pd5Vcz0

――食堂――

巴「それで、どうしたんだ?」

あなた「はい?」

あなた(食堂に着いて、俺は自前の弁当を広げ、師匠は注文したラーメンを持って席についたところで、不意に尋ねられた)

巴「急に飯を食おうだなんて、アタシに何か用があったんじゃないのか?」

あなた「用といえばこれ自体が用ですね」

巴「ん? なんだそりゃ?」

あなた「えぇと……」


1:師匠と一緒にいたかったから、と言う

2:羽沢先輩に相談に乗ってもらって、と言う

3:その他自由安価

↓1
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 20:13:53.47 ID:qpqXnwxE0
110 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/28(木) 20:53:05.49 ID:F3pd5Vcz0

あなた「羽沢先輩に相談に乗ってもらったんです」

巴「つぐに? なんて?」

あなた「この前ライブの時にですね、ステージの師匠を見て……こう、変な気持ちになったんです」

巴「変な気持ち?」

あなた「はい。寂しいというか、急かされるような感じというか……なんだか師匠が遠いような気がしたんです」

巴「……なんかよく分からん感情だな」

あなた「俺もまったく分からないです」

巴「それで、その気持ちをつぐに相談したって感じか?」

あなた「はい。そうしたら、『師匠のことで分からないなら師匠の傍にいればいい』とアドバイスを頂きました」

巴「んーなるほどなぁ……」

あなた「すいません、手前勝手な理由でお誘いして」

巴「いやいや、気にすんなって。お前となら飯くらいいつでも行ってやるって」

巴「可愛い後輩の悩みがそれでなくなるなら安いもんだ」

あなた「師匠……ありがとうございます!」

巴「はは、やっぱお前は悩んでる顔より明るい顔してる方がずっとイイな」

あなた「はい! 俺も悩むより笑ってる方がずっと好きです!」

あなた(師匠はニカッと笑顔を浮かべる。俺もそんな風に笑う)

あなた(そうしているとあの気持ちも気にならない。それもなんだか不思議だった)
111 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/28(木) 20:56:03.67 ID:F3pd5Vcz0

巴「あ、そうだ。そういやさ、6月の最初の日曜って、ヒマか?」

あなた「6月の最初の日曜……ええと、そこならバイトも入ってなかったですし、平気だと思います」

巴「そっか、なら良かった。ほら、前に神社で6月に祭りがあるって話したよな?」

あなた「はい。あ、祭りってことは……」

巴「そう、和太鼓を叩くんだ。予定がないならそこがお前の祭りデビューになるんだが、どうだ?」

あなた「何を差し置いてもやります!」

巴「お前ならそう言うと思ってたぜ! したら今月の終わりからは太鼓の練習が増えるから、ワリィけどそのつもりでいてくれるか?」

あなた「望むところです! 師匠、これからもご指導よろしくお願いします」

巴「ああ! ビシバシしごいてやるからな、そのつもりでいろよ!」

あなた「はい!」

あなた(それから昼飯を食べ終え、予鈴が鳴るまで師匠と他愛のない話をした)

あなた(そうしていると、あの気持ちの名前やなんだなんてそんなに気にしなくてもいいことか、と思えた)

あなた(案ずるより産むが易し。きっと、師匠といればそのうち分かることなんだろう)


……………………
112 : ◆KWjQNDTan2 [saga]:2018/06/28(木) 21:17:19.18 ID:F3pd5Vcz0

――教室――

あなた(師匠を昼飯に誘った日から、なんとなく師匠との距離が近くなったような気がする)

あなた(学校ですれ違えば立ち止まって会話をするし、師匠の方から飯を食べないかと誘ってくれることもあった)

あなた(今日は金曜日。太鼓の練習がある日だ)

あなた(本格的に練習を増やすのは再来週の木曜日から、と師匠は言っていた)

あなた(それまではいつも通り、短い時間の練習になるんだろう)

あなた「…………」

あなた(太鼓の練習も師匠と一緒の時間になる訳だが、それ以外の時間も師匠と過ごしてみたい)

あなた(羽沢先輩のアドバイスを抜きにして、そんなことをよく考えるようになった)

あなた「……寄り道に誘おうか」

あなた(今週の土日はバイトだ。直近で誘えるのは練習後、だろう)

あなた(よし、そうしたら……)

1:練習終わりに寄り道しないか、と誘う
(出来れば場所も)
2:何もせず練習に打ち込む

3:その他自由安価

↓1
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/29(金) 01:26:47.66 ID:AJQUXStJ0
1 楽器店で自分のバチを買うとか
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 01:12:06.84 ID:i+3znC6cO
続きよみてえ....
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/23(木) 18:29:42.52 ID:RdACeCIbO
キャラの口調とか上手かっただけに残念だ....
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