相棒×聲の形「灯台下暗し」

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200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:47:51.64 ID:5sCMbn110
右京「………」

「そう言って頂けると、幸いです………」


と、右京は安心の意を見せた。

何故、わざわざいとに呼び掛けたのか?

それは、この件はあくまで西宮家の問題であるからだ。

八重子が姉妹を虐待していたというなら話しは別だが、
今回のケースは、硝子の事を考え過ぎたが故の失敗に近い。

相手が犯罪者でない以上、警察がうかつに足を踏み込んでいい領域ではない。
例え杉下右京個人として言ったところで、第三者の横槍と断じられるのも目に見えている。

そもそも、自分達が今追っているのは6年2組のいじめ問題……

西宮家の問題の解決ではない。

西宮家の問題は西宮家の人間に解決させなければならない。

それが、彼女らの為なのだ。
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:50:29.48 ID:5sCMbn110
いと「ところで、今日は何のご用で?生憎、硝子は学校ですが……」

右京「その事なんですがねぇ……」

「独自に調べてみたところ、硝子ちゃんにわざわざ話を伺う必要はないことが判明しまして……」

いと「では、その事をお知らせに?」

右京「えぇ……」

「しかし、それとは別に『ある物』が必要になりました」

いと「ある物?」

右京「それはですねぇ……」
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:54:36.51 ID:5sCMbn110


―水門小学校―


男「お願いです!どうかこの通り…!」


学校の事務室にいる事務員の前で、1人の男が両手を合わせ頭を深々下げながら何かを頼み込んでいる。
どうやら、この学校に何か用事があって来た者のようだ。
そこへ、職員に連れられて水田校長がやって来る。


水田校長「この人かね?」

職員「はい……先程から、あなたに会うまで絶対帰らないと言って聞かないもので……」


職員の説明を聞き「ふむ……」と言ったのち、水田校長は男に声を掛ける。
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:55:15.31 ID:5sCMbn110
水田校長「君……私が、校長の水田ですが」

青木「おぉ!やっと来ましたか……あぁ、これはどうも初めまして!」

「僕、『青木年男』と言いましてね、どうしてもこの学校に用がありまして……

「その為に、どうしてもあなたと話がしたかったんですよ〜」


なんと、この学校を訪れた男の正体は警視庁サイバー対策課の青木であった。

何故彼が、ここにいるのか?

一方、目の前の青年が警察の人間だと知らないまま、校長は質問を続ける。
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:56:47.62 ID:5sCMbn110
水田校長「用事とはなんだね?」

青木「実は、僕の友人が教師の勉強やってましてね、その勉強の為に小学校の授業を見学しようと思ってたみたいなんですが……」

「運が悪い事に高熱でぶっ倒れて、出来なくなってしまったらしくて……」

「だから僕が代わりにその様子を見学して、見た内容まとめて持って来いって頼まれたんですよ」

「僕は断ったんですが、この時期のこの学校じゃないと絶対駄目だと言って聞かないもので……」

「ですのでここは、あなた様直々に見学許可を頂きたいと……」

職員「こ、校長……どうします?」

水田校長「うーむ……」

青木「もちろん、授業の邪魔になる事は一切やりません!廊下から黙って見てるだけなんで…!」

「用が済んだら、すぐ帰りますから……ね?」
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:57:44.85 ID:5sCMbn110
水田校長「………」


青木の頼みに、水田校長は少し考えたのちこう答える。


水田校長「分かった…そう言う事なら、好きにして構わんよ」

青木「ありがとうございます!では、ちゃっちゃと行ってちゃっちゃと終わらせてきます」


と言って青木は、早々に学校の奥へと足を進めて行った。
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 05:58:32.91 ID:5sCMbn110
職員「校長……良かったんですか?」

水田校長「見学くらいなら構わんだろう」

「それに、これが元でこの学校に注目が集まるかもしれんし……」

職員「は、はぁ……」
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:00:25.71 ID:5sCMbn110
―水門小学校内の廊下―

青木「ふぅ……」

「何で僕がこんな遠くまで来て、こんな猿芝居打たなきゃなんないんだか……」


廊下を歩きながら愚痴る一方で、
「しかし、こんなにあっさり通してくれるなんて……あの水田とか言う校長、とんだ無能だな」と校長の事を嘲笑ってもみせた。


青木「さて…6年2組の教室はっと………」


6年2組の教室を探し歩く青木。しばらくそうしている内に、彼はその教室を発見する。


青木「あったあった……何の授業やってるんだ?」


青木はこっそりと6年2組を覗き込むと、竹内が授業内容を黒板に書いて生徒を指導している最中であった。
そこに書かれた文字や、生徒達が開いている教科書を見る限り、国語の授業をやっているようだ。
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:01:04.88 ID:5sCMbn110


青木「撮影開始……」

209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:01:53.59 ID:5sCMbn110
それを確認するや、青木は懐からスマホを取り出して動画撮影を開始した。
しかしそのスマホは、良く見れば彼のものではない。

そして、彼が『誰かのスマホ』で撮影している授業風景は、次のようなものだ。
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:06:58.36 ID:5sCMbn110
竹内「次は朗読だ。西宮、読んでみろ」

硝子「………」


教科書の内容を読むよう、竹内は硝子に指示する。


硝子「あ、う……ひ…………」


映像の中の硝子は、必死に教科書に書かれた内容を口にするが、呂律が回らず意味不明な言葉になってしまう。


竹内「何やってんだ……」

「おい植野、どう読むか教えてやれ!」

植野「………」

「はい……」


それを見かねた竹内は、隣に座る黒髪の少女……

即ち、植野直花に梢子の朗読のサポートを指示すると、植野は渋々了承した。


植野「ほら……ここはね、こう読むのよ」

硝子「う…いぃ……」

植野「違うわよ!……あぁ、もう!」


隣から大きな声で発音の仕方を教える植野だったが、
耳の不自由な硝子がすぐに理解出来るはずがなく、授業は中々進まない。

そうしている内に、植野の表情はあからさまに険しくなり、
周りの生徒達も笑っていたが、竹内はと言うと笑うのを止めるよう喝を入れただけで、
硝子と植野を助けようとはしなかった。

青木は、この一連の様子を念入りに撮影した。
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:08:43.35 ID:5sCMbn110
青木「これで良しっと……」


動画撮影を終える青木。だが、彼の目的はこれで終わりではなかった。

次の目的達成の為、彼は手近な男子トイレの個室に身を潜めた。
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:09:09.16 ID:5sCMbn110


―西宮家―


右京「わざわざ無理を言ってしまって、申し訳ありませんね」

いと「いえいえ…構いません。刑事さんの役に立てるのなら、それで充分です」


どうやら、ある物を借りる事に成功したらしく、右京は礼を述べながら西宮家の玄関に足を運ぶ。

そんな中、いとはある疑問を投げ掛ける。


いと「しかし、どうしてそれが必要なんですか?」

右京「申し訳ありません。現段階では、お話しする事は出来ないものでして……」

いと「守秘義務…ですか?」

右京「えぇ……」

「しかし、全て終わったらきちんとお返ししますので、どうか心配なさらずに……」

いと「はい、分かりました」


いとの返事を確認すると、右京をお辞儀をした後立ち去ろうとしたが、
「あ!最後にひとつだけ……」と言いながら振り返り、次のような事を聞いた。
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:09:50.29 ID:5sCMbn110
右京「石田君の事で、硝子ちゃんは何か言っていませんでしたか?」

いと「えぇ……昨日、あの娘が学校から帰った後、結絃が聞いていました」

右京「彼女は何と?」

いと「それが……何も答えてくれなかったそうです」

右京「何も答えなかった?」

いと「えぇ…結絃は、『まるで石田君の事を庇ってるみたいだ』と言っていましたが……」

右京「そうですか。いや、少し気になったものでしてね……」

「では、今度こそ失礼します」


そう言うと、右京は西宮家を後にする。

そして、『ある場所』へと向かって行くのだった。
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:12:28.09 ID:5sCMbn110


―水門小学校 校内―


チャイムの音を合図に、青木はトイレの個室から出てくると
廊下に出ている生徒に見付からないようにしながら、再び6年2組の教室に向かった。


???「ねえアンタ…どういうつもりなの?」

青木「ん…?」


そして、例の教室を訪れると、怒気の籠った声が聞こえる。

それは、先程硝子のサポートを指示されていた、植野直花……

彼女は、腕を組んだ格好で席に座る硝子を睨んでいる。


硝子「………」

植野「どうしていつもいつも、あたしがあんだけ教えてやってるのに分かってくれないの?」

硝子「……………」

植野「そうやってまた、だんまり決め込もうっていうの?」

「ふざけんなよ!」
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:13:07.84 ID:5sCMbn110
パチン―――!

怒鳴りながら植野は、硝子の頬に平手打ちを叩き込む。

痛みで顔を歪める硝子。


一方、周りの生徒達はというと……
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:13:44.00 ID:5sCMbn110
川井「〜♪」


川井みきを始めとした、多くの女子・男子生徒は知らん振りしており、
中には何事もないかのように談笑している者達もいた。

見ている生徒もいるにはいたものの、その多くが硝子の姿を見て笑っている。


硝子「…………」


しかし、硝子は自衛の為だろう、愛想笑いを浮かべている。
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:14:34.75 ID:5sCMbn110
川井「何だよ……笑って許される問題じゃねぇんだよ!」

「大体、アンタが来てからこんな事ばっか……」

「石田もいじめられるようになったし、あたしもアンタのせいで恥かいてばっかだし……」

「アンタが来てから、何もかもがおかしくなったのよ!分かってる?」

「いや……分かってないだろ!」
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:15:11.86 ID:5sCMbn110


「この悪魔……!!」

219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:15:54.56 ID:5sCMbn110
硝子「…………」


と、硝子を罵ってみせる植野。

硝子も聞こえているわけではないが、植野の様子から何を言われているのか何となくは感じ取っている。

一方、こんな事になっているにもかかわらず、周囲の生徒達は止めに入らない。

それどころか………
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:16:44.14 ID:5sCMbn110
女子生徒A「あーあ……可哀想に」

女子生徒B「けど、いい気味よね」

女子生徒C「アイツのせいで私らの授業、滅茶苦茶だもんね〜」


と、陰口を叩いている生徒が大多数であった。

青木は、その様子も『誰かのスマホ』で撮影している。
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:17:35.70 ID:5sCMbn110



男子生徒「おっちゃん、何やってんだ?」

青木「い!?」


その時であった。たまたま近くを通り掛かった
他のクラスの生徒に話し掛けられ、青木は思わず変な声を上げてしまう。

そして、急いで『誰かのスマホ』をポケットにしまい込む。
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:19:12.08 ID:5sCMbn110
男子生徒「今、なんか隠さなかった?」

青木「隠してない!隠してないよ〜……」

男子生徒「つーか、おっちゃん誰?先生じゃないよね?」

青木「あ、あのね……『お兄さん』はね、学校のお勉強に来てる人でね………」

女性教師「どうしたの?」


そこへ、他のクラスの教師がやって来る。
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:20:26.72 ID:5sCMbn110
男子生徒「変なおっちゃんが、こそこそ何か覗いてたんです」

「しかも、何か怪しいもの隠しました」

女性教師「え!?」

青木「ち、違います!僕は、友達の頼みで学校の勉強に来た者です!」

女性教師「そうなんですか?」

「けど……今は休み時間ですけど」

青木「休み時間の様子観察も、学校の勉強の内なんです!」

「それに、見学許可もちゃんともらってます!後で校長先生に聞いてみれば分かります!」

「それに、もうそろそろ帰りますんで、校長先生にそう伝えておいて下さい!」

「それじゃ!!」


と言って強引に押し切ると、青木は足早に逃げ出した。

そんな彼に、生徒と教師は呆気にとられるのであった。
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:22:13.77 ID:5sCMbn110
―水門小学校 敷地内―


青木「はぁ…はぁ……危なかった………」

「たく……何がおっちゃんだよ、あのガキ!僕はそんなに言われる程老け込んでないっつーの!」

「……うん?」


青木は、ふと前を見ると、そこには池があった。


青木「池……」

「丁度いい……ここにある物拾って、こんな学校さっさとおさらばだ!」


そう言いながら、青木は池の中を覗き込んでみる。

覗いた先にあったものは果たして……?
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:23:19.42 ID:5sCMbn110


―職員室―


島田と広瀬は、急に竹内にこの場所に呼び出された。


広瀬「お、おい……先生、どうして急に俺達を呼び出したんだ?」

島田「知らねぇよ……お前、何かしたんじゃないのか?」

広瀬「やってねえよ……!」


竹内「お前達……」


そのようなやり取りを交わす2人の前に、竹内が姿を現す。
それを見た2人は、ぴたりと黙って彼と向き合った。
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:23:57.92 ID:5sCMbn110
竹内「実は聞きたいことがある……正直に答えてくれ」

島田「な、何ですか…?」

竹内「お前達、最近石田へのことで、やり過ぎてはいないだろうな?」

島田と広瀬「「!」」


竹内の問いに、2人は背筋を凍らせた。

彼は、自分達の石田いじめに対しては、ほとんど無関心だったはず……

どうして今頃、そんな事を聞かれなければならないのだろうか?

その疑問に答えるかのように、竹内は次のような事を話す。
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:24:53.16 ID:5sCMbn110
竹内「実は昨日、校長先生に呼び出されてな……」

「『この学校の生徒が、暴力を振るわれている現場を見た』と、警察に聞かれたらしいんだ」

島田「け、警察の人に?」

竹内「そうだ……」

「お前達は特に石田に手を出しているからな……何か目を付けられる事でもしたんじゃないか?」

島田「そ、そんな訳ない……な?」

広瀬「う、うん……!」
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:25:44.12 ID:5sCMbn110
竹内「…………」

「そうか、ならいいんだ」

「だが、くれぐれもやり過ぎないように……いいな?」

島田と広瀬「「はい」」


こうして、2人は開放された。

だが、何故竹内にあんなことを聞かれたのか……

その疑問は尽きなかった。
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:26:58.19 ID:5sCMbn110
広瀬「島田……一体、どういう事なんだろうな?」

島田「…………」

広瀬「何で急に、竹内先生はあんな事聞いてきたんだろ?」

「それに、警察の人がどうして校長先生のところに……?」

島田「……」

「は!」


その時であった……島田の脳裏に、ある人物の姿が思い浮かぶ。

それは、二度に渡って自分達のいじめを妨害した、あの男……

冠城亘の姿が……
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:29:21.41 ID:5sCMbn110
島田「まさか!アイツ……!」

「ん……?」


冠城の正体に勘付く島田。

するとその時、教室にいたくなくてウロウロしていたのだろう……

目の前の廊下を歩く石田の姿が目に留まる。


島田「…!」


その姿を見るや、島田は速足で石田に駆け寄ると、胸倉を掴んで壁に押し付ける。


石田「!? な、なんだよ……!」


突然の出来事に困惑する石田。

そんな彼の事などお構いなしに、島田は「おい……知ってる事全部話せ!」と問い掛ける。
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:33:03.87 ID:5sCMbn110
石田「何の事だよ……?」

島田「とぼけんじゃねぇよ……昨日、お前を助けた奴いただろ?」

石田「あ……あの、男の人?」

島田「そうだ……」

「アイツ、誰だ?」

石田「へ…?」

島田「誰だって聞いてんだよ!」


そう言って島田は、乱暴に石田の体を揺すった。

彼の行動の理由が分からず、石田はますます混乱する。
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:36:40.86 ID:5sCMbn110
石田「だ、だから何なんだって……!」

島田「さっきな……竹内先生からお前のことを聞かれたんだよ!」

石田「俺のこと……?」

島田「あぁ……」

「校長先生から『警察の人から、俺がお前をボコボコにしてること聞かれた』ってな!」

石田「け、警察が校長先生に?」

「……け、けど、それと俺に何の関係が?」

島田「昨日と一昨日、俺達の邪魔したアイツ……警察だろ?」

「アイツに何か話したんじゃないのか?」

石田「……!」


島田の問いに、石田は思わず反応してしまう。

その様子を島田は見逃さない。
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:37:10.13 ID:5sCMbn110
島田「やっぱ知ってんのか?アイツのこと……」

石田「そ、それは……」

島田「一体、何話した?正直に言え……!」

石田「…………」


鬼気迫る様な島田の問いに、石田は一瞬言おうか否か迷ったが、
すぐに冠城が言ってくれた、あの言葉が彼の脳裏を過ぎった。
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:37:59.02 ID:5sCMbn110


『大丈夫……君から聞いた事は、上司以外には誰にも話さない』


『僕の上司も、同じ対応を取ってくれるだろう』

235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:38:46.97 ID:5sCMbn110
石田「…!」


そうだ、彼も自分が全てを話した事を秘密にしてくれると約束してくれたのだ、

だったら、自分も……!
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:39:14.86 ID:5sCMbn110
石田「さ、さあ……?」

島田「はあ?」

石田「だ、誰なんだろうな?あの人……」

島田「…………」

「お前、それ本気で言ってるのか?」

石田「あ、あぁ……」

「確かにあの人、俺のこと助けたけどさ……」

「あの後、すぐに俺を家の側まで届けてくれて……」

「だから、警察の人なのか全然分からないし、なんにも話してない……」

島田「…………」

「ふざけてんのか?」

石田「ふざけてねぇよ……」

「大体、お前が正直に言えっつったんじゃねぇか……」

島田「……………」
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:41:03.24 ID:5sCMbn110
こうして、しばし無言で石田を睨む島田。

同じく無言で見つめる広瀬……

そして……
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:41:35.03 ID:5sCMbn110
ドカッ―――!

島田は、石田の顔を殴りつけた。


石田「いって……!」


殴られ、赤くはれた頬を押さえ、その場に跪く石田。

一方、殴った本人は忌々しそうに舌打ちしたのち、
「行くぞ!」と言って、広瀬と共にその場から離れて行った。


石田「…………」
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:43:38.53 ID:5sCMbn110
広瀬「お、おい……島田、大丈夫なのかよ?さっき竹内先生に……」

島田「あぁ……だからさっきは、一発殴るだけで済ませてやった」

広瀬「けど、石田の奴、本当にアイツのこと何も知らないのか?」

島田「分からない。けど、あんなんじゃ聞くだけ無駄だろ」

「とにかく、ほとぼりが冷めるまでアイツへのインガオーホーは、しばらく休みだ」

広瀬「あぁ……」
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:44:12.32 ID:5sCMbn110


だが、島田達はまだ知らなかった……

こうしている間に、自分達を裁こうとする者達が、着々と準備を進めていることに……

241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:47:19.44 ID:5sCMbn110


水門市内某所カフェ……

このカフェの一角で、1人の青年がコーヒーをたしなんでいた。

冠城亘である。

そこに、水門小学校でやるべき事を終えた青木年男が姿を見せる。
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:47:56.50 ID:5sCMbn110
青木「やれやれ……」

「こっちはやりたくもない猿芝居やらされるは、正体バレそうになって肝を冷やす思いをしたっていうのに……」

「あなたと言う人は、安全地帯でコーヒー飲んでサボタージュですか?」

「お高く留まった身分だ事ですねえ!」

冠城「別にサボって何かねぇよ。お前が来るまでの間、する事がないから休憩してただけだ」

青木「はいはいそーですかっと!」


あからさまに納得していない声色で、青木は冠城の向かい側の椅子に腰かける。
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:48:40.89 ID:5sCMbn110
冠城「それで?ちゃんと撮ってきたんだろうな」

青木「その前にひとつ言いたい事があります」

冠城「なんだよ?」
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:50:27.25 ID:5sCMbn110
青木「顔も身分も明かしてて入りずらかったと言うのも分かりますし……」

「いきなり岐阜県警に頼む事も出来ないと言うのも分りますよ?」

「けど……何で僕なんですか!?」

「僕はサイバーセキュリティー課の特別捜査官であって、潜入捜査官じゃないんですよ!」

「大体、こう言うのは伊丹さん達に頼むのが筋ってものじゃありませんかね?」

冠城「まあまあ……あの2人だって、わざわざ遠くの小学校に忍び込みに来てくれる程暇じゃないんだよ」

「それに引き換え、お前は今日は非番……つまり休暇中」

「偶然にも、彼らや俺達以上に動きやすい立場だったんだ」

「おまけに、遅刻する心配もない……上から怒られないだけマシだろ?」

青木(休暇じゃなかったら遅刻させる気だったのかよ……)


心の中で呟きながら、青木は恨めしそうな目線を送る。

それに気付いているのかいないのか、冠城は「それに、お前を選んだ理由はそれだけじゃない」と言う。
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:53:21.96 ID:5sCMbn110
青木「それだけじゃないって、どういう事ですか?」

冠城「よく考えてみろ……」
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:55:30.89 ID:5sCMbn110



「芹沢さんはともかく、伊丹さんのあの顔は潜入に向いてないだろ?」


247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:56:25.30 ID:5sCMbn110
青木「…………」

「確かに、それは言えてますね」

「あんなこっわ〜い顔の人がやってきたら、門前払いは確実です」

「それどころか、ヤクザか何かと間違われて通報されるかもしれませんね」

冠城「だろ?」


この間、警視庁にいる本人が背中のかゆみを訴えながら「誰かが俺のこと、悪く言ったような気がする」と言い出し、
芹沢から「病院予約しますよ?」とブラックジョークを飛ばされたのかどうかは定かではない……
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:57:00.91 ID:5sCMbn110
青木「しかし、貴重なお休みの時間を潰した罪は重いですよ」

冠城「それは悪かったっと……」

青木「本気で謝ってるんですか?それ……」

冠城「一応は……」

青木「…………」

冠城「それより、早いところ結果を報告しろ」

青木「分かりましたよ……」


冠城の受け答えにイラっとしつつ、青木は『誰かのスマホ』を差し出した。
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:57:52.84 ID:5sCMbn110
青木「ほら……要求通り、『あなたのスマホ』にばっちり収めてきましたよ」

冠城「どれどれ……」


出された『誰かのスマホ』=自分のスマホを手に取ると、
冠城は先程青木が撮影した事の一部始終を確認した。


青木「どうですか?」

冠城「……よく撮れてるじゃないか。さすが、お向かいさんを覗き見する趣味があるだけの事はあるな」

青木「失敬な!あの時は、たまたま事件が起きたのが目に入ったので、とっさに撮影しただけです」

「そんな趣味断じてありません!」
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 06:59:21.68 ID:5sCMbn110
冠城「はいはい……それで?」

青木「何です?」

冠城「だから……西宮硝子ちゃんの筆談用ノート。それも回収したんだろ?」


そう言いながら、硝子のノートを出すよう促す冠城。

だが、青木は……
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:02:47.13 ID:5sCMbn110
青木「残念ながら回収出来ませんでした」

冠城「はあ?何で?」

青木「それらしい池を見付ける事は出来ました。しかし、そんなものなかったんですよ」

冠城「ど、どうしてだよ?」

青木「こっちが聞きたいですよ……」

「本当にその石田とかいう少年は、学校の池にノートを捨てたと言ったんですか?」

冠城「あぁ、間違いない」

青木「だとしたら、騙されたんじゃありませんかね?」

冠城「とか言って、ホントはちゃんと確認しなかったんじゃないのか?」


疑いを掛ける冠城に対し、青木は何も分かっていない奴を見るような目でこう返した。
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:03:59.14 ID:5sCMbn110
青木「あのですね……あの池は、それなりに深さはありましたが、かと言って底が見えない程でもありませんでした」

「ノートなんか沈んでたら分かりますよ」

「まあ……仮にあったところで、証拠隠滅の為に学校が処分したと思いますよ」
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:04:55.35 ID:5sCMbn110



「なんせあの学校、腐ってますからね」


254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:08:32.71 ID:5sCMbn110
冠城「腐っている?」

青木「えぇ……あのクラスの様子を見てすぐ分かりましたよ」

「クラスの担任は西宮硝子の授業を生徒に丸投げ、あのクラスのガキんちょはその事で西宮硝子に八つ当たり」

「それでもって周りの連中はガン無視決め込んで、ケラケラ笑って陰口叩く始末……」

「挙句の果てに、校長は僕をあっさり通す無能ときた」

「何とまあ、ド低能なこと!」

「これを腐っているといわずに何と言いますか?」

冠城「……………」
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:09:55.70 ID:5sCMbn110
青木「けど、何処の学校もこんなものなんでしょうね」

「自分達の失敗を怒られるのが怖いから、知らん振りを決め込んで……」

「いざ咎められそうになれば、いじめた奴に全部擦り付けて自分達だけはのうのうと仕事を続けていく……」

「子供連中も、そんな奴らの背中を見て、真似をして……そして汚い大人に育っていく」

「まるで犯罪者育成教室……う〇こだ!」
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:10:23.32 ID:5sCMbn110



「そして、こんなう〇こどもを満足に掃除出来ず、日本中にゴロゴロさせている警察はもっとう〇こですよ」


257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:13:24.78 ID:5sCMbn110
冠城「…………」


普段なら反論するところであったが、今回冠城は珍しく青木の言い分を真面目に聞いていた。

警察嫌いの青木の事だ、学校問題にかこつけて警察の事を叩きたかっただけなのかもしれない……

だが、言っている事自体は割と的を得ていた。

この日本には今回のような事件が起きた学校は、数が知れないだろう。
それらちゃんと解決出来ているのか聞かれると……

それは出来ているとは胸を張って言えない。

学校内のいじめは、限られた空間内で行われている。
それが故に、警察が気付くのに遅れ、そして気付いた時には既に内密に処理された後であることが大半だ。
今、こうしている間も、何処か別の学校でも同じ事が起こり、その真実が闇に葬られ続けているに違いない。

この問題で一番罪深いのは、ある意味日本警察なのかもしれない……
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:13:58.95 ID:5sCMbn110
そう思った時、ふと冠城は昨日の右京の表情を思い出した。

石田の話しを聞いて何を感じたのかと問い掛けた際に見せた、あの真剣な表情が……


恐らく……いや、間違いなく彼も分かっている。

今回の問題は、水門小学校に限った事ではないことを……

他の学校の過ちを裁けず、野放しにしてしまっている日本警察の現状を……


今この瞬間、冠城は自分達が今回の件に関わるのがいかに大事なことであるのかを再認識させられた。


そして「まさか……お前にその事を教えられるなんてな………」とボソリと呟く。
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:15:40.51 ID:5sCMbn110
青木「何か言いました?」

冠城「ん?あぁ……」

「『ノートがなくても、これくらいあれば充分だ』ってな」


と言って誤魔化す冠城。誤魔化しと知らないまま、
青木は「それは良かった。また行って探して来いと言われたら、どうしようかと思いましたよ」
と言ってみせた。
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:16:46.71 ID:5sCMbn110
青木「という訳で、僕はこれで……」

冠城「おいおい……せっかくここまで来たんだし、一杯くらい飲んでけよ」

「ここのコーヒー、美味しいぞ?」

青木「お断りします。休みと言えども暇ではないんで……」


冠城の誘いを突っぱねると、青木は席を立って足早に帰っていった。
そんな彼の後ろ姿を見送ると、冠城は静かにまだカップに残ったコーヒーに口を付ける。

その後、飲み終え、会計を済ませると、『ある場所』へと向かって行った。
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:18:20.17 ID:5sCMbn110
所変わって水門市のとある交番……

今この場所で、1人の男性が勤務に当たっていた。
一昨日、特命係から警察手帳を返された伍堂刑事だ。


???「失礼します……」

伍堂刑事「ん?」


その際中、外から声がしたもので振り返ってみると、そこには右京が立っていた。
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:19:34.91 ID:5sCMbn110
ミスりました……

×その際中〜 → 〇その時〜
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:20:20.12 ID:5sCMbn110
右京「本部に問い合わせたところ、謹慎処分が解かれ、復帰したと聞きましてねぇ………」

伍堂刑事「あなたは……杉下さん?」

冠城「伍堂さーん……あ!右京さんも来てましたか」


そこへ冠城もやって来る。

彼も同様の手段で、伍堂刑事がここにいる事を突き止めたのだろう。

一方、伍堂刑事は冠城までまだここにいる事に驚く。
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:22:21.60 ID:5sCMbn110
伍堂刑事「冠城さんまで……一体、どうしたんですか?僕はてっきり、本庁に帰られたものかと……」

冠城「そうしたかったんですが、色々と野暮用が出来ちゃったもので……」

右京「冠城君、そちらはどうでしたか?」

冠城「青木の奴、上手くやってくれました」

「ただ、ノートは池にはなかったって言うんですよ……」

「アイツは、学校が処分したんじゃないかって言ってましたけど……」

右京「そうですか…では、今回集めた物だけで何とかしましょう」

冠城「そう言えば、そちらは目的のもの、手に入ったんですか?」

右京「えぇ……修理可能か確かめる為、いとさんがまだ保管してくれていました」
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:25:21.72 ID:5sCMbn110
伍堂刑事「あ、あの……何の話をしてるので?」

右京「おっとこれは失礼……」

冠城「実は、あなたに見て欲しいものがあるんです」

伍堂刑事「見て欲しいものって?」

冠城「これなんですがね……」


そう言って冠城は、自分のスマホを取り出すと、先程青木に撮らせた映像を伍堂刑事に見せる。


伍堂刑事「ん…?」


見せられた映像に目を向ける伍堂刑事。その横で右京も映像をジッと確認する。


伍堂刑事「この娘は?」

冠城「西宮硝子ちゃん……耳が不自由で、言葉を上手く発する事が出来ない女の子です」

伍堂刑事「障害がある娘なんですか?」

「なのに、こんな事が……?」


驚きを隠せないでいる伍堂刑事。

その後彼は、2つの映像全てを見せられた。
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:27:48.50 ID:5sCMbn110
冠城「これで全部です。どうです?」

右京「問題ありません。これなら、充分証拠になるでしょう」

伍堂刑事「あ、あの……これは一体?」

冠城「伍堂さん…あなたは水門小学校って学校ご存知ですよね?」

伍堂刑事「もちろんですよ。この市内にある学校ですし…」

冠城「この映像は、その学校の中のものなんですが……」

「4日前、あの学校で生徒がいじめられていると思しき現場を、見ちゃったんです」

右京「そこで僕達は、校長先生を尋ねました。しかし……」

冠城「校長先生は、あくまで喧嘩であり、学校内でいじめなんかなかったと言いました」

右京「ところが、その後調べてみた結果、あの学校で西宮硝子ちゃんを巡るいじめ問題が起きている事が判明しました」

冠城「その件自体は、加害者の親が硝子ちゃんの親に賠償金を支払って解決した事にはなってるみたいなんですけど……」

「見ての通り、他にも犯人がいて、いじめが続いていたんです」
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:28:19.21 ID:5sCMbn110
右京「その上、今の映像から見ても担任教師の対応は不適切です」

「あの学校の校長先生は、これらを隠す為に我々に偽証を図った可能性が高い」

冠城「こんなの……警察官として許せますか?」

伍堂刑事「許せませんよ!何とかしてあげないと……」

右京「なので、他に証拠になりうるものを持ってきました」


そう言って右京は、スーツの中からある物を取り出した。

それは、壊れた補聴器であった。
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:30:04.83 ID:5sCMbn110
伍堂刑事「これは?」

右京「いじめの被害者である、西宮硝子ちゃんが付けていた補聴器です」

「これらは全て、いじめ問題の際に破損させられた物……つまり、犯人の指紋が付着している可能性が非常に高い」

冠城「少なくとも西宮家は4人、加害者とされているお子様は1人……」

「それ以上の指紋が出た場合、彼らの関与も疑うべきです」

右京「そこで、あなたには岐阜県警にこの事を調べてくれるよう、進言して欲しいんです」

伍堂刑事「僕がですか?」

冠城「俺達は、違う所轄の人間だ。その上、厄介者扱いまで受けている窓際部署……」

「そんな連中の話なんて、そう簡単に通るものじゃないでしょう?」

伍堂刑事「え?えぇ……」

右京「なのでお願いします」
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:32:45.57 ID:5sCMbn110
伍堂刑事「………」

「そんなの気にしなくていいですよ。兄に言えば一発なんですから」

右京「兄?」

冠城「あなた……お兄さんがいらっしゃるので?」

伍堂刑事「えぇ…『伍堂清太郎』と言いまして、岐阜県警本部の一課の警部をやってるんです」

「おまけに義理堅い人でしてね……僕の手帳を届けてくれたあなた達の頼みと聞けば、絶対に断りませんよ」

冠城「…………」

「右京さん、意外な所に味方がいましたね」

右京「では、早速お願いします」

伍堂刑事「了解です!」


こうして伍堂刑事は、兄に知らせるべく電話を掛ける。
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:33:53.48 ID:5sCMbn110
伍堂刑事「あぁ、兄さん……ごめんね、そっちも忙しいのに」

「それでさ、一昨日僕に警察手帳届けてくれた、本庁の刑事さん2人のこと覚えてるよね?」

「今、その人達が兄さんの助けを必要としてるんだよ」

「……………」

「うん、分かった。杉下さんに替わるね」


兄と会話を交わした末、伍堂刑事は「はい」と言って右京に受話器を差し出す。

右京は、受話器を受け取ると、そのまま伍堂刑事の兄に話しかける。


右京「替わりました。警視庁特命係の杉下右京です」

伍堂警部『伍堂清太郎です。何やら事件があったそうですが?』

右京「えぇ……」


こうして右京は、伍堂警部に水門小学校のいじめ問題の事を全て話す。
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:34:38.23 ID:5sCMbn110
伍堂警部『小学校のいじめか……それは穏やかではありませんね』

右京「ですので、こちらも証拠を揃えて来ました」

「ご協力、願えませんか?」

伍堂警部『もちろんです』

『ただ、私は今少し手が離せない状況でしてね……』

『部下の坂木を代わりに遣しますので、弟に全て預けておいて下さい』

右京「分かりました」

「では、また後程……」

伍堂警部『えぇ、後程……』


こうして、右京は伍堂警部との電話を終え、受話器を元に戻す。
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:35:20.16 ID:5sCMbn110
冠城「どうでしたか?」

伍堂刑事「兄はなんと?」

右京「これから証拠品を取りに部下の方を遣すそうです」

「その間、あなたに預けてくれと……」

伍堂刑事「僕にですか?」

右京「出来ますか?」

伍堂刑事「もちろんですよ!大事な物ですからね、絶対渡しておきます」

右京「では、これも預かってくれませんか」


そう言って右京は、伍堂刑事にあるものを差し出す。

それは今朝、硝子が拾って渡したハンカチだった。
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:36:32.66 ID:5sCMbn110
伍堂刑事「ハンカチ?」

右京「今朝、偶然硝子ちゃんとぶつかった際、彼女が拾ってくれましてねぇ……」

「彼女の指紋が付着しているはずなので、他の指紋と区別を付けるのに使って下さい」


もちろん、偶然など真っ赤な嘘……

硝子に触らせる為にわざと落としたは、言うまでもない。


伍堂刑事「分かりました!では、補聴器と映像入りの冠城さんのスマホと共にお預かりします」

冠城「それは構いませんが、警察手帳みたいになくさないで下さいよ?」

「特にこれ……俺の大事なスマホですから」

伍堂刑事「さすがにそんな事まではしませんよ!とにかく、お任せ下さい!」

右京「お願いします」

「それと、何か報告したい事があったら、僕のスマートフォンに電話を掛けるようにとも伝えておいて下さい」

「ちなみに、番号はこちらです」


そう言って右京は、自分のスマホの番号をメモに書き写して伍堂刑事に渡した。


伍堂刑事「分かりました。兄にそう伝えるよう、部下の人に言っておきます!」


と、びしっと敬礼してみせる伍堂刑事。
それを確認すると、特命係の2人は彼に後を任せて交番を後にした。
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:38:12.14 ID:5sCMbn110
冠城「さて……後は、岐阜県警が結果を出すまで待つだけですかね?」

右京「いえ……まだやらねばならない事があります」

冠城「え……?」

「ちょ、ちょっと待って下さい。今日、僕達がしないといけないのは、証拠集めだったんじゃ……」

右京「そのはずだったんですが、急遽やらなければならない事が増えたんです」

「これから、市内の住宅街を回りますよ」

冠城「は、はい……」
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:39:11.12 ID:5sCMbn110
どうも腑に落ちないながらも、冠城は右京の言う通りにする事にした。

こうして、特命係の2人は水門市内の住宅街である事を聞いて回る事になった。
しかもどういう訳か、水門小へ歩いて通学出来る距離にある住宅街を重点的に当たった。
だが、どんなに聞いて回っても右京の望むような情報は、入って来ない。
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:40:32.69 ID:5sCMbn110
右京「なるほど……それを聞いて安心しました。では、これで……」


お礼を言いながら、家から離れていく右京。ここでも情報は手に入らなかったらしい。
そこへ、途中で別れて聞き込みに行った冠城が、合流してくる。


冠城「右京さん!」

右京「冠城君、そちらは?」


右京の問いに、「全然です」と返す冠城。

そんな彼らの姿を、不思議そうに見ている女性が背後に1人……

それに気付かないまま、2人は話しを続ける。
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:42:32.85 ID:5sCMbn110
右京「そうですか……」

冠城「けど、右京さん……」

「いくら、あの学校へ歩いて通学できる範囲内に絞ってるとはいえ、俺達だけで探すなんて無謀じゃないですか?」

右京「自分達の足で地道に探すのは、警察の基本ですよ」

冠城「いや、それもそうですけど……」

「というか、何でいきなりこんなこと始めたんです?」
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:42:59.40 ID:5sCMbn110


女性「あ、あのぉ……」


と、冠城が疑問をもらし始めたその時、後ろから見ていた女性が声を掛けてきた。
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:46:46.89 ID:5sCMbn110
右京「おや……あなたは?」

女性「私……ですか?『佐原』と申します……」

「先程から、色んな家を聞いて回っていますが、あなた達は……?」

右京「警視庁特命係の杉下右京です」

冠城「冠城亘です」

佐原「刑事さん……何か、事件でも?」

右京「最近、不登校児童の非行が問題になっていましてねぇ……」

「なので、実態調査を行っているんですよ」


不登校児童の非行の実態調査……

無論、怪しまれないようにする為の嘘なのであるが、それを聞かされた佐原と名乗った女性は、
「不登校児童の?!それは、本当ですか?」と、まるで会いたかった人に会えたかのような様子で聞き返してくる。
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:47:44.06 ID:5sCMbn110
右京「えぇ…そうですが?」

佐原「丁度よかった……是非とも、刑事さん達に会って欲しい子がいるんです!」

冠城「会って欲しい子がいる?」

右京「もしかしてその子、水門小学校に通っていたりしますか?」

佐原「そうです!良く分かりましたね」

右京「………」

冠城「……………」


彼女の答えに、特命係の2人はお互い顔を見合わせる。

ようやく、目的の人物に会えるかもしれないという期待を滲ませて……
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:49:09.48 ID:5sCMbn110
―通学路―


学校が終わって、家路に就く石田と硝子。

植野の平手打ちを喰らった硝子の頬は、若干の赤みを帯びていたが、それも少し引いている。
一方、島田に殴られた石田の頬は、先程より腫れは引いたものの、不完全であった為かガーゼが貼ってある。


硝子「…………」


硝子はそれを心配そうに見つめている。

だが、石田は……
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:49:47.77 ID:5sCMbn110
石田「何だよ?これが面白いのか?」

硝子「…………」

石田「ホント、感じ悪いよな……お前」

硝子「……………」


石田の言で、何とも気まずい空気が漂う。

その空気が漂ったまま、2人はお互いが別れる道に差し掛かる。


石田「…………」


しかし石田は、特に何も言わずに硝子と別れ、帰っていく。
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:50:28.81 ID:5sCMbn110
硝子「……………」


その姿を、硝子は黙って見ていたのだった。

それを知らないまま、石田は帰宅する。
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:50:56.34 ID:5sCMbn110
美也子「お帰りショーちゃん」

石田「ただいま母ちゃん……」

美也子「あら……そのほっぺた、どうしたの?」

石田「また学校で暴れ過ぎた」

美也子「またなの?来年は中学生なんだから、いい加減馬鹿騒ぎは止めなさいよ」

石田「分かってるよ……」


と言ってランドセルを降ろし、手を洗いに向かう石田。
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:51:46.75 ID:5sCMbn110
美也子「…………」


しかし美也子は、石田の頬のガーゼの正体が、また学校でいじめられた傷跡なのではないかと思った。

本来なら、転校させればいい話しだが、そんなにすぐに出来るものではない。

そもそも、本人はそれを望むのだろうか?

果たしてそれが、彼の為になるのだろうか?

美也子は、分からなかった……
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:52:57.89 ID:5sCMbn110
―夜―


硝子と結絃が寝静まった西宮家の西宮いとの部屋に、八重子は呼び出された。


八重子「何なの母さん?私、明日も早いんだけど」


突拍子もなく呼び出してきた母に対し、八重子は軽く愚痴を漏らした。


いと「本当にすまないね……けど、本当に大事な話しなんだ。聞いてくれるかい?」

八重子「構わないけど」


素っ気無く返す八重子。

だが、母親であるいとは、それが彼女なりの了解の意思表示である事がすぐに分かった。

なので、心置きなく話しを切り出す……
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:54:22.18 ID:5sCMbn110
いと「八重子、ちょっと早いかもしれないけどね……」

「私が話したいのは、硝子の進学先についてなんだよ」

八重子「硝子の進学先?」

いと「あぁ……」

「硝子も来年で中学生になるけど……」

「中学になっても、あの娘を普通の学校に入れるつもりなの?」

八重子「今更聞くまでもないでしょう」
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:55:08.90 ID:5sCMbn110
いと「………」

八重子「……なに?」

いと「八重子…悪い事は言わないよ。それは止めておやり」

八重子「はあ…?」

いと「普通の学校に入れたところで、あの娘が苦しむだけだって事よ」

八重子「それは……来年から養護学校かろう学校に入れろって事なの?」


八重子の問いに、いとは無言で頷いた。

それを見て、一気に表情が険しくなる。
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:56:12.92 ID:5sCMbn110
八重子「ふざけた事言わないでくれる?それじゃあ、硝子が強くなれないじゃない」

いと「本当にそうなのかねぇ……」

「この6年間、あなたはそう言ってあの娘を普通学校に入れてきたけれど……」

「そうやって上手く行った試しがあったかい?」

「何処へ行っても、不当な扱いを受けては転校しての繰り返しだったじゃないか」

八重子「それは、硝子が強くなろうとしないからよ。あの娘が強くなれば、そんなこと……」

いと「それは無理な相談だよ。子供なんて、いじめには無力なものよ」

「ゆずだって障害がないのに、いじめに耐えかねて不登校になってしまった……」

「それだけじゃない。あなただって、小さい頃いじめられた時は、よく私に泣き付いてたんだよ?」


八重子の幼少期の事を例題に挙げてみるいとであったが、当の本人は「そんな昔の事、忘れたわ」と冷たくあしらった。
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:57:09.10 ID:5sCMbn110
いと「覚えてないなら構わない」

「けど、どうして石田君や今まで通って来た学校の子達は、硝子をいじめたのか……」

「お前は、一度でもその理由を考えた事があるかい?」

八重子「それは硝子の事を馬鹿にしたからでしょう?あのクソガキどもは、あの娘の事何も分かっちゃいないのよ!」

いと「分かっているじゃないの……」

「そうさ、学校にいる人達からしてみれば、硝子は赤の他人……あの娘の事情なんて知った事ではないんだよ」

「結局、あの娘に理解のある人がいなければ、どんなに強い娘にする事を望んでも意味がないんだよ」
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:57:58.86 ID:5sCMbn110
八重子「そんな事で、あの娘を障がい者用の学校に入れろというの?」

いと「そんな事なんかじゃない。あの娘にとって大事なことよ……」

「お前が、あの時の事を今も引きずっているのは分かるよ。だから私もずっと、お前の事を見守ってきた……」

「今更、お前のやり方を否定する気はない。捨てろという気もない」

「けどね……せめてあの娘を入れる学校の事だけは、見直して欲しいのよ」

「あえて不利な環境に入れて、成長を促そうというつもりなのでしょうけど……」

「必ずしもそれが、障害に負けない強い娘を育てる方法とは限らないよ」

「それに硝子だって、自分の障害が周りに影響を与えている事を気にしているはずさ」

八重子「…………」
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:59:08.54 ID:5sCMbn110
いと「あの娘は、私なんかと比べるとまだまだ先が長い……」

「障害に甘えない強い娘にするのは、もっと大きくなってからでも遅くはないはずだよ」

「専門の学校でもいじめられないとは限らないけれど……」

「お前が、真に硝子がいじめられない事を願うなら、安全性が高い学校に入れてあげるのが筋ってものだよ」

「そうすれば、結絃だってあなたへの認識を改めるだろうさ」

八重子「………………」


いつになく真剣な表情で訴えるいと。

その姿に、八重子は一瞬だけ何か思う表情を見せたものの……
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 07:59:45.74 ID:5sCMbn110
八重子「言いたい事はそれだけ?」

いと「え…?」

八重子「突然説教臭い事言い出して、一体どういう風の吹き回し?」

「今になって母親面でもしたくなったのかしら?」

いと「八重子……」

八重子「同じ家族と言えども、硝子を育てるのは母親の私の務めなの」

「あの娘の事をどう育てるのか、どの学校に入れるのかを決めるのは、私の役目……」

「もちろん、結絃の事も……」

いと「………」

八重子「年寄りの気紛れに付き合っていられるほど、私は暇じゃないの」

「だからもう……休ませてもらうわ」


そう言って八重子は、その場を立つと部屋から出て行ってしまった。
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 08:00:33.90 ID:5sCMbn110
いと「……………」

1人自室に残されたいとは、その姿を黙って見送るしかなかった……
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 08:01:00.29 ID:5sCMbn110
同じ頃、特命係が泊っている旅館の一室……


右京「そうですか……どうもありがとう」


誰かから電話が掛かったのだろう、スマホ越しで相手に礼を言って右京は電話を切る。

そこへ、冠城がトイレから戻って来る。


冠城「内村刑事部長に、ここで好き勝手に動いている事がとうとうバレたんですか?」


戻って早々、冗談を言ってみる冠城であったが、
右京には「それなら、わざわざお礼を言いますかね?」と真面目に返されてしまう。
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 08:02:04.19 ID:5sCMbn110
冠城「ちょっと冗談言ってみただけじゃないですか……ホント、ノリが悪いですね」

右京「こっちはふざけている訳ではありませんよ」

冠城「それは失礼しました……」


と言って謝ると、冠城は改めて「じゃあ、真面目にお聞きします。今の電話、誰からです?」と聞いた。
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 08:02:46.69 ID:5sCMbn110
右京「伍堂警部からです。たった今、例の補聴器の鑑定が始まったと……」

冠城「ようやく番が回ってきましたか……」

右京「話しによると、明日にでも結果は出るそうですよ」

冠城「じゃあ、今日俺達が出来る事は、今度こそ終わったんですね?」

右京「そう言う事になります。しかし……」

「冠城君、ひとつ聞きたいことがあります」

冠城「何ですか?」
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 08:04:01.53 ID:5sCMbn110
右京「昨日君は、石田君がいじめられそうになったところを助けたと仰っていましたが……」

「その現場に、硝子ちゃんはいましたか?」

冠城「あ……そう言えば確かにいましたね、硝子ちゃん」

「あの時は、石田君の安全が優先だったんで、声は掛けませんでしたが……」

「そう言えばあの娘、一昨日も石田君がいるところにいたんでしたっけ?」

右京「えぇ……」

「やはり彼女、石田君がいじめられている現場をいつも覗いていたようですね」
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 08:04:36.33 ID:5sCMbn110
冠城「けど、どうしてでしょうか?」

「硝子ちゃんからしてみれば、石田君は自分をいじめた相手……」

「そのような子が虐げられている現場にわざわざ足を運んで、何を考えてるんでしょうか?」

「まさか……ああ見えて、自分をいじめた相手の惨めな姿を見て楽しんでいる何てこと、ないですよね?」

右京「どうでしょうかねぇ……真実は、意外なものかもしれませんよ?」


何処か意味深な言い回しを見せる上司に、冠城は「もしかして右京さん、何か知っているので?」と尋ねた。
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