相棒×聲の形「灯台下暗し」

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300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 08:08:16.44 ID:5sCMbn110
右京「ある程度想像は出来ていますが、現段階では僕の妄想でしかない状態です」

「とにかく今は、目の前の問題の解決を優先すべきだと思います」

冠城「そうですね。事件を解決した後、ゆっくりと調べましょう」


こうして、特命係も眠りに就く事となった。

明日に迫る、『終止符を打つ時』に備えて……
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/01(金) 08:09:01.28 ID:5sCMbn110
3日目(第3話)はここまでです。

これにて、問題解決の仕込みは完了ですが、
色々と都合良過ぎな展開になってしまったかな……

何はともあれ、第4話である4日目は、いよいよ特命係がいじめ問題に直接切り込みます。

果たして、彼らの賭けは吉と出るか凶と出るか!?

次回は結構独自設定入るので、一応注意です……
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/01(金) 20:41:01.00 ID:+d8Ou/hl0
乙です
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:15:09.59 ID:od/pvmOg0
続きです。

前回の最後にあった通り、独自設定が入ってくるので一応注意です……
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:15:46.75 ID:od/pvmOg0
相棒×聲の形 〜4日目〜


次の日の朝……


西宮家の人間も石田家の人間も、普段通りに学校や仕事に足を運んでいった。

硝子と石田は、またしてもいじめに苛まれる時が来たと不安を……

美也子は客足が少なく、息子の罪の重さを実感する時がまたきたと……


それぞれの思いを抱いて。
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:17:15.81 ID:od/pvmOg0
そして、職場へ向かう八重子は……


八重子「…………」


彼女は、昨晩のいとの言葉が心の中で響いていた。
あの時こそ一蹴してみせたものの、内心は少しずつだが揺らぎを見せていたのだ。


八重子(そんな事はない…私は、間違っていない……!)


首を横に振ると、八重子は振り払うように職場へと向かっていった。
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:17:48.04 ID:od/pvmOg0
―西宮家―


結絃は、急にいとに呼び出された。


結絃「婆ちゃん、どうしたんだよ?話があるって……」

いと「…………」

「ゆずや……母さんの事なんだけどね………」

結絃「アイツがどうかしたの?」
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:18:14.95 ID:od/pvmOg0
いと「……」

「婆ちゃんはね、ずっと母さんの事を見守って来たんだよ……」

「あんまり、口出しし過ぎるのは、母さんとお前達の為にはならないと思ってね」

結絃「…………」

いと「けど……それも、そろそろ終わりにしなくちゃならない……」

「昨日、刑事さんに言われて、ようやく気付いたんだよ」

「だから、これからお前には、母さんが今まで何を考えて生きて来たのか、教えようと思うの」

「後で、硝子にも教えておやり……」

結絃「………」
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:18:50.49 ID:od/pvmOg0
あまりにも突然の事なのか、結絃は押し黙ったままだ。

かと言って、何も話さないわけにはいかない……

これも、彼女達の今後の為だ。
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:19:24.30 ID:od/pvmOg0


いと「実はね……」

310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:21:20.15 ID:od/pvmOg0
一方特命係は、今日の朝食を終え、自分達の部屋に足を運んでいるところであった。

その最中、冠城は何やら不満をもらしている。


冠城「右京さん……今日までこの旅館で、美味しいごはんを頂いてもらっていますが……」

「この4日間注文した料理は全て、ご飯と味噌汁の定食……あまりにも庶民的過ぎやしませんかね?」

右京「仕方がないじゃありませんか。本来、この旅館に泊まる事は想定していなかったこと……」

「だからこそ、無駄な出費を避けつつ、栄養バランスの良い料理を注文しているのです」

「それに、そこまで不満があるのでしたら、個別に注文すればいい話しですよ」

冠城「有無言わさずに俺の分まで勝手に注文しておいて、よく言いますよ……」

右京「君が注文するのがあまりにも遅いからですよ」
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:22:04.71 ID:od/pvmOg0
冠城「…………」

「もしかして右京さん、4日前俺が自分好みの料理の店に連れて行ったの、根に持ってません?」

右京「それは誤解ですよ……」

冠城「本当ですか?」

右京「本当です」

冠城「…………」


頑なに否定する上司。その姿に冠城は、「やっぱり根に持ってるんだな……」と感じた。
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:23:22.10 ID:od/pvmOg0
ブイー!ブイー!

その時であった。自分のスマホが震え出したので、右京はポケットからスマホを取り出す。

すかさず冠城は横から画面をのぞき込む。

そこには『伍堂清太郎』の名前が表示されていた。


冠城「右京さん……」

右京「……………」
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:24:01.98 ID:od/pvmOg0




「ついにきましたか…」



314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:25:06.32 ID:od/pvmOg0
2、3時間後……


水門小学校の校長室に、制服姿の2人の男性が押し掛ける。


1人は、若い男性……

もう1人は伍堂刑事を威厳ある顔立ちにしたような、髭面の年配の男性であった。
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:25:58.34 ID:od/pvmOg0
水田校長「だ、誰だね君達は?」

年配の男性「岐阜県警捜査一課の者です。校長の水田門木さんですね?」

若い男性「ちょっと署までご同行願えませんか?」


警察手帳を見せながら署への同行を頼む警察の男性。
これに、校長は動揺の色を見せる。
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:26:26.44 ID:od/pvmOg0
水田校長「わ、私は何もやってませんよ……!」

若い刑事「ですから、その確認の為来てもらいたいんです」

年配の刑事「お時間は取らせませんので……」

水田校長「……………」


確認の為に来て欲しいとせがむ警察官。

これ以上拒否するとかえって怪しまれると思ったのだろう、
水田校長は渋々了承するしかなかった。
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:27:03.54 ID:od/pvmOg0
そして、彼が警察署へ行ったという一報は、瞬く間に教員達に伝わった。


―6年2組―


竹内「みんな、本当なら今は算数の時間だが、緊急の職員会議が入った事により、この時間は自習とする」

「先生が戻って来るまで、教室を出ないように」


そう伝えると、竹内は教室を後にした。


広瀬「緊急の職員会議?何があったんだ?」

島田「知らねぇよ」


突然の事態に、ざわつく6年2組の教室。
石田も硝子もその輪に加わる事はなかったが、同様の反応であった。
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:29:34.29 ID:od/pvmOg0
―岐阜県警本部 取調室―


任意同行に応じた水田校長は、デスクを挟む形で年配の刑事と向かい合う格好になっていた。


水田校長「あ、あの……お話を聞くんじゃなかったんですか?」

「それにここ……取調室ですよね?」

年配の刑事「実はあなたにお話を聞きたいのは、私達ではないんです」

水田校長「そ、それはどういう事で…?」

年配の刑事「もう少々お待ち下さい。部下の者がその方達を連れて来ます」

若い刑事「警部、お連れしました!」


と、丁度良いタイミングで、若い刑事が『ある2人組』を連れて取調室に入ってきた。
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:30:48.03 ID:od/pvmOg0
水田校長「な…!」


連れられた2人を見て校長は驚いた。

それもそのはず、彼が連れて来たのは4日前に自分のところへ来た特命係だったからだ。

そんな彼を尻目に、警部と呼ばれた年配の刑事は席を立ち、彼らと向き合う。
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:31:53.77 ID:od/pvmOg0
伍堂警部「面と向かっては始めてですね。私が、岐阜県警捜査一課の伍堂清太郎……」

「今あなた方をここへ案内したのは、部下の坂木です」

坂木「坂木利久男です。よろしくお願いします」

伍堂警部「そして、あなたが警視庁特命係の杉下右京に……」

冠城「冠城亘です」

右京「あなたが、伍堂圭三刑事のお兄様ですか」

伍堂警部「はい。弟の警察手帳の件は、本当に感謝しています」

冠城「お礼を言われる程のことではありませんよ。特別に与えられた命令に従ったまでです」
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:34:32.21 ID:od/pvmOg0
そのようなやり取りの末、右京は「構いませんか?」と言って
校長の向かいに座っていい尋ねると、伍堂警部は「どうぞ……」と返した。

向かい合う校長と右京……

その時水田校長は、どうして自分がここに連れて来られたのかを理解した。
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:35:10.89 ID:od/pvmOg0
水田校長「なるほど、あなた達の差し金だったんですね……」

右京「申し訳ありませんねぇ……安全に事を運ぶには、あなたをここに連れて来るしかなかったもので……」

水田校長「安全?それは、どういう事ですか?」
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:35:47.78 ID:od/pvmOg0
右京「……………」

「解決せねばならない大きな問題が、あなたの学校で起きているという事ですよ……」

水田校長「な、何を言ってるんですか?我が校ではそんなこと……」

冠城「起こっていない……あなたはそうやってまた、嘘を吐くつもりですか?」

「本当はあの学校では、大きな事件が起きていたんじゃありませんか?」

「そう……6年2組の西宮硝子ちゃんいじめという事件が………」
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:36:14.78 ID:od/pvmOg0
水田校長「…………」


「調べたんですか?」


冠城「ああ言われると余計に調べたくなってしまうのが、我々なもので……」

水田校長「…………」


冠城の言葉に、水田校長は少しばかり絶句したが、すぐにこう返す。
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:37:55.40 ID:od/pvmOg0
水田校長「そ、そこまで調べたのなら知っているはずですよ」

「あの件は、石田君のお母さんが西宮さんの補聴器の弁償して……それで片が付いたんです」

「これって示談の成立でしょう?示談が成立した案件に、警察は口を挟んではいけないはずですよ」
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:38:21.56 ID:od/pvmOg0
右京「確かにその通りです……示談交渉の成立が認められた場合、被害者と加害者が和解したとみなされ不起訴処分となる」

「少なくとも、石田家と西宮家は形式上は、補聴器の弁償を行うことで和解が認められます」

「そこに我々が口を挟む事は出来ません。しかし……」

「もしも、石田君に共犯者がいたとしたらどうでしょうか?」

「その共犯者達が主犯の彼に罪を擦り付けた結果が、石田家が西宮家に170万円を支払うことだったのだとしたら?」

「そうなってくると、西宮家と和解していない加害者は大勢いる事になります」

「それを放っておいて、いいのでしょうかねぇ……」
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:39:09.61 ID:od/pvmOg0
水田校長「まさか…そんな……あり得ませんよ……!」

「確かに、6年2組のみんなは犯人は石田君だと言ってたし……」

「竹内君だってそうです!それに彼からは、あれ以来あの教室は平和だと聞いています!」


必死で訴え出す水田校長。

その様子から、少なくともこの言葉に嘘はないと彼らは察した。
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:40:13.39 ID:od/pvmOg0
右京「なるほど……その様子だと、あなたも『硝子ちゃんいじめの犯人は石田将也である』としか聞かされなかったのですね?」

水田校長「それは……どういう事ですか?」


右京に問い掛ける水田校長。

ここで、今まで黙っていた伍堂警部が口を開く。


伍堂警部「あなたの学校では、西宮硝子さんへの授業体制に問題があり……」

「それが原因で彼女にいじめが発生した事をあなたが隠したのではないかと、こちらのお二人が疑いを掛けていらしたものでしてね……」

「事実の確認の為、こちらに来てもらう運びになったというわけです」
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:41:51.97 ID:od/pvmOg0
右京「しかし今の反応を見る限り、どうやら違ったようですねえ」

冠城「けれど、全くの無問題ではない……」

「4日前の我々の質問に対し、あなたはいじめなんか起きていないと嘘を吐き、先程も同様の事をしようとした……」

「これは立派な偽証ですよ」

右京「それだけではありません」

「あなたは竹内先生から、事実の一端しか聞かされていなかったのは、ほぼ間違いない……」

「となると、竹内先生はあなたに虚偽の報告を行った疑いがあります」

水田校長「そ、そんな馬鹿な!何で竹内君が嘘なんか……」
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:42:42.38 ID:od/pvmOg0
伍堂警部「今言ったじゃありませんか。硝子さんへの授業体制に問題があった疑いがあると……」

「竹内先生の不備で、西宮硝子ちゃんに対するいじめが発生した……その事を咎められるのを恐れ、あなたに嘘の報告をした」

「理由は、それで充分でしょう?」

水田校長「し、しかし……」
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:43:41.74 ID:od/pvmOg0
右京「…………」


まだ信じられないといった様子の校長。

そんな彼に対し、右京は真剣な面持ちで問い掛ける。
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:44:16.11 ID:od/pvmOg0
右京「しかし、水田校長……あなたは、ちゃんと事の真偽を確かめたのですか?」

「立場上あなたは、常日頃から6年2組を観察しているわけではない……」

「彼らがそれを利用して、全ての事実を語らずにいたという可能性も充分考えられたはずです」

「一度でも、そのような事を考えたことがありましたか?」

水田校長「そ、それは…………」


右京の問いに、水田校長は何も答えられなかった。

案の定、彼は竹内らの言葉を鵜呑みにし、それ以上の詮索は一切していなかったようだ。

それを見た右京は、次の一手に出る。
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:45:27.50 ID:od/pvmOg0
右京「ちなみに、証拠も既に挙がっています」

「冠城君………」

冠城「はい」


右京に言われ、冠城は自分のスマホを取り出すと、昨日青木に撮らせた映像を水田校長に見せた。
映像を見た水田校長は、驚きの表情を見せる。
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:46:23.59 ID:od/pvmOg0
水田校長「こ、これは…!」

冠城「昨日、同期の奴に無理矢理撮らせた映像ですが……」

「これの何処が平和なんですか?」

水田校長「…………」

伍堂警部「ちなみに、例の件で破損させられた硝子ちゃんの補聴器も調べましたが……」

「それからも疑わしい点が出て来ました」
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:47:16.63 ID:od/pvmOg0
右京「それだけではありません」

「石田君に全てが押し付けられた結果が、石田家と西宮家の示談交渉なのだとすれば……」

「石田君もまた、何かしらの危険に曝されている可能性があります」

「それでいて、西宮硝子ちゃんは未だいじめに遭っている……」

「6年2組で起こった問題は、何も解決していないんですよ」

「それを放っておいて、いいんでしょうか?」
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:48:48.72 ID:od/pvmOg0
水田校長「…………」

「一体、何が望みなんですか?私にどうしろと……?」


疑問を投げ掛ける水田校長。
これに対し右京は、少し間をおいてこう答えた。
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:49:47.23 ID:od/pvmOg0
右京「我々警察が、6年2組に立ち入ることを許可して頂きたい」

水田校長「立ち入りの許可……」

冠城「証拠が挙がっている以上、あなただって無視は出来ないでしょう?」

水田校長「そ、そうですが………」
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:50:15.64 ID:od/pvmOg0
右京「水田校長……これは、子供達の今後に関わる事なのです」

「このまま、全てが明らかにならないままだと、彼らは間違った道を進み続け、いずれ後戻り出来なくなる……」

「そうなれば、人としての道を踏み外す事になってしまうでしょう」

「本来学校とは、子供達を正しき道へ導く為にあるべき所です……」

「違いますか?」
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:51:11.96 ID:od/pvmOg0
水田校長「…………」

右京「あなたが一言でもYESと言って頂ければ、それでいい……」

「たったそれだけで、彼らの未来に一条の光を指す事が出来るのです」

「なので……どうか立ち入りの許可を頂けないでしょうか?」
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:52:16.87 ID:od/pvmOg0
真剣な面持ちで頼み込む右京。

そんな彼に、水田校長が出した答えは……?


341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:52:56.40 ID:od/pvmOg0
数時間後……

水門小学校の6年2組の教室に、会議を終えた竹内が戻って来た。


竹内「みんな…落ち着いて聞いて欲しい。今から1時間前、校長先生が警察に連れていかれた」


水田校長が警察に連れていかれた……

竹内の一言で、生徒達は騒然とする。
その彼らを宥めるように、竹内はこう続ける。


竹内「職員会議で話し合った結果、今日の授業は続けられないという答えが出た」

「よって、お前達は早急に家に帰るように……」
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:53:22.18 ID:od/pvmOg0



???「お帰りになるのはまだ早いですよ」


343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:54:19.96 ID:od/pvmOg0
その時であった。

聞き慣れない男性の声が聞こえ、竹内達は声のした方を見てみると、
そこには両手を後ろに組んだ格好の杉下右京が立っていた。
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:54:52.38 ID:od/pvmOg0
広瀬「お、おい!島田、あの眼鏡のおっさん、アイツ(冠城)と一緒にいた奴だよな?」

島田「な、何でアイツが…?」


石田をいじめていた2人は突然の右京の登場に動揺するが、動揺しているのは彼らだけではない。
今日まで何度か顔を合わせた硝子と、4日前に彼を見た石田もだ。

そんな彼らの反応をよそに、右京は竹内の側に歩み寄った。
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:55:28.03 ID:od/pvmOg0
竹内「な、何ですかあなたは?」

右京「警察の者です。子供達を帰すのは、もう少し待って頂きたい」


警察手帳を見せる右京に対し、竹内は「警察が、誰の許しでこんな所に?」と返す。
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:56:17.85 ID:od/pvmOg0
右京「水田校長ですよ」

竹内「校長先生!?」

右京「ですので、今この場の指揮は、我々がとらせて頂く事になります。よろしいですね?」

竹内「それは構いませんが、一体どういう事なんですか?」

右京「すぐにでもお話ししたいところですが、まだ人数が足りません。話しはその時に……」


こうして右京は、彼らにこの場で少しの間待つよう促した。

それから少しして、冠城が1人の女性を連れてやって来た。
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:56:44.70 ID:od/pvmOg0
冠城「右京さん。喜多先生を連れて来ました」

右京「ご苦労様です」


連れて来られた女性は、この学校の音楽教師の喜多であった。

喜多は、いきなりこの教室に……しかも警察に連れて来られたからか、とても不安そうだ。
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:57:21.25 ID:od/pvmOg0
喜多「あ…あの……なんで、私が?」

右京「あなたも、硝子ちゃん達と繋がりがあるそうでしてねぇ……」

「その事で、是非とも知ってもらいたい事があるものです」

冠城「別にあなたを疑っているとかではないので、どうぞご安心を……」

喜多「は、はぁ……」


それでもまだ少し不安そうにしている喜多。
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:57:59.97 ID:od/pvmOg0
伍堂警部「こちらです……」


続いて、伍堂警部と坂木がそれぞれある女性を連れてきた。

西宮八重子と石田美也子である。
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:58:31.61 ID:od/pvmOg0
母親がこの場に連れて来られた事に驚く2人。

一方2人の母親も、目の前に右京達がいて驚きを隠せないでいた。


美也子「あなたは……一昨日の刑事さん?」

八重子「どうしてあなた達がここにいるのよ!?」

伍堂警部「彼らだけではありませんよ。我々も警察……岐阜県警捜査一課の者です」


そう言って伍堂警部と坂木は警察手帳を八重子達に見せた。
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 13:59:08.24 ID:od/pvmOg0
八重子「あ、あなた……この学校の人じゃなかったの?」

美也子「私もてっきり……」

坂木「騙すような真似をして、申し訳ありません」

伍堂警部「こちらの杉下警部から『あなた方を連れて来るなら、警察である事は伏せた方がいい』と助言されたものでして……」

右京「あなた方は一度、我々と顔を合わせていますからねえ」

「正直に名乗らせたら、警戒されるのではないかと思いまして………」

冠城「何はともあれ、これで全員揃いましたね」

右京「えぇ……」


喜多、八重子、美也子……

三名の到着を確認した彼は、いよいよ話しの本題に取り掛かる。
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:01:46.58 ID:od/pvmOg0
右京「ご存知の方もいらっしゃると思いますが、この学校の校長先生を任意同行で連れて行く運びとなりました」

伍堂警部「現在、彼の身柄は岐阜県警が預かっています」

美也子「校長先生が?」

竹内「丁度良かった……どうして、急に校長先生を連れていったんですか?おかげで、我々教職員は大混乱ですよ」

右京「ご迷惑をお掛けして、申し訳ないと思っています」

「しかし、どうしても我々の下に来てもらわなくてはならない理由があったものでして……」

竹内「理由って?」

冠城「彼が、このクラスで起こった出来事を、隠している疑いが持ち上がりましてね……」

「その事の真相を、確かめる為に……」

竹内「え…?」


冠城の一言に、竹内の表情が一瞬曇った。

彼だけではない、硝子と石田以外の生徒も……
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:04:57.48 ID:od/pvmOg0
美也子「ここで起きた事を隠してるって…?」

右京「我々は、とある事情で水田校長を尋ね、この学校で何かトラブルがなかったかどうか伺いました」

「その際彼は、『この学校では何も起きていなかった』と答えたのですが……」

「後で調べてみたところ、このクラスで西宮硝子ちゃんに対するいじめ問題が起こっていた事が判明しました」
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:06:08.49 ID:od/pvmOg0
冠城「つまり彼は、我々に対し偽証を図った……だから、彼を任意で連れて行った訳なんです」

右京「なので、今一度確認させてもらいます……」

「このクラスで、そこにいらっしゃる西宮硝子ちゃんへのいじめは、起きていましたか?」


右京は、片手で席に座る硝子を指しながら、この場にいる者達に問い掛けた。

そこで返ってきた答えは、言うまでもなく……
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:06:45.23 ID:od/pvmOg0
八重子「えぇ、そうですよ!そこの石田さんの息子さんが、ウチの硝子をいじめました」

喜多「私も…石田君が西宮さんをいじめていると、聞きました……」

島田「そうだ、おっさ……じゃなくて刑事さん!石田の奴が西宮の事いじめてたんだ!」

川井「しかもそれだけじゃないわ!石田君、最初に来た時からずっと西宮さんの事悪く言ってたもん!」

植野「…………」


八重子と喜多の言葉を皮切りに、次々と硝子いじめの犯人は石田だと主張し始める生徒達。
その中で、植野だけ複雑そうにしているのを、右京は見逃さない。
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:07:33.19 ID:od/pvmOg0
一方、彼らの姿に美也子は辛そうな表情を浮かべ、石田と硝子も俯いている。
その3人の様子も確認しつつ、右京は竹内に向き直る。


右京「なるほど……これ程までに証人がいるとなれば、石田君が硝子ちゃんをいじめたと見て間違いはありません」

「それを水田校長は、内密に処理したというわけですか……」

竹内「当たり前じゃないですか。石田が犯人じゃなければ、誰が西宮をいじめたと言うんですか?」

「そもそも、処理されていると知っているなら、わざわざあなた方が出てくるような話ではありません」

「校長が勝手に吐いた嘘に、我々を巻き込まないで頂きたい!」


突き放すような言葉を発する竹内。

右京はそんな彼に擬古的な視線を向けながら、こう切り返した。
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:09:01.11 ID:od/pvmOg0
右京「ところが、そうも行かないんですよ……」

「何故なら解決したのは、『石田君が』硝子ちゃんをいじめた事だけなんですから……」

竹内「は…はあ?」

冠城「要するに、石田君以外にもいじめの犯人がいるという事です」

「その犯人達は今、何もなかったかのように過ごしている……」

右京「我々は、その事実を確かめるよう水田校長に頼まれ、ここへ来たというわけです」
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:10:07.25 ID:od/pvmOg0
生徒達「…!」

竹内「…………」


特命係の2人の一言に、生徒達の背筋が凍り付き、
竹内の表情も少し濁ったが、平静さを保ってこう返した。


竹内「石田以外に犯人がいるなんてあり得ませんよ。私もちゃんと見てたんですから」

右京「それは間違いありませんね?」

竹内「もちろんです」

右京「それでは……今度は硝子ちゃんと石田君、双方のお母様に尋ねます」

「石田君が硝子ちゃんをいじめたという事実をこの学校から聞かされたのは、間違いありませんか?」
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:12:17.42 ID:od/pvmOg0
八重子「もちろんです!私が補聴器の事で訴えたら、『犯人は石田君だ』という答えをもらいました」

美也子「私も、そちらの竹内先生から電話で………」

右京「その事で他に何かお話は?」

美也子「先日お話しした通りです。将也が、西宮さんの娘さんをいじめたこと以外、なにも………」

八重子「私もよ」

右京「なるほど……」

「つまり、あなた方は石田君と硝子ちゃんがどのような状況に置かれていたのか、その詳細までは知らされなかったのですね?」

美也子「確かにそういうことになりますが………」

八重子「大体、そんなこと知って何になるのよ?知ろうが知るまいが、関係ないことよ!」
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:12:47.47 ID:od/pvmOg0
美也子とは対照的に、重要な問題ではないと突っぱねてみせる八重子。

しかし右京は「ところが、それが一番問題なんですよ……」と返した。


八重子「はあ?」


彼の言葉の意味が分からず、小首を傾げる八重子。
その疑問を解消すべく、右京は次のようなことを語る。
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:14:51.08 ID:od/pvmOg0
右京「西宮八重子さん、石田美也子さん……」

「保護者と言う立場上、あなた方は学校内でのお子様の状況を確認する事は、基本的に不可能です」

「彼らの状況を知るには、学校関係者に問い合わせる必要がある……」

「それしか知る術がなかったあなた方は、学校側の言葉を信じるしかありません」

「しかし裏を返せばそれは、学校側が言った事はどのようなものだろうと、あなた方にとっての真実になってしまうという事を意味します」
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:15:20.32 ID:od/pvmOg0


「例えそれが、事実の一部が欠けた内容であったとしても……」

363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:15:53.36 ID:od/pvmOg0
八重子「…?」

美也子「ちょ…ちょっと待って下さい。それってひょっとして……!」


美也子が何か勘付いたのを見て、右京は
「そのひょっとしてですよ……」と言ってまた竹内の方に顔を向け、こう続ける……
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:16:31.52 ID:od/pvmOg0
右京「竹内先生が石田君・硝子ちゃん双方の詳細な状況を語っていれば、この件はまた別の見方が出来た可能性があるんです」

「『石田君に共犯者がいた』という見方が……」

「それだけではない、いじめ問題が起こった原因もです」

「よって竹内先生……あなたは、伝えるべき事実を全て伝えていない疑いがあるのですよ」
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:18:08.23 ID:od/pvmOg0
右京の指摘で、八重子と美也子はハッとした。

言われてみると、自分達は学校側の言い分を聞いただけで、その信憑性を疑った事はなかった。

相手が嘘……もしくは不都合な事実を隠している可能性だってあったはずだ。

どうして今まで、そのような考えが思い浮かばなかったのだろうか?

2人の母親は、そのことを不思議に感じた。
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:18:42.27 ID:od/pvmOg0
竹内「ふ、ふざけないで下さい!さっきみんなが言った事を忘れたんですか?犯人は石田であると……!」

右京「えぇ確かに、先程皆さんが言ったことは事実でしょう」

「補聴器が紛失及び破損させられたという事実がある以上、何者かが硝子ちゃんをいじめていたのは確実です」

「その何者かこそが、石田将也君……」

「だからこそ、君達は石田君が犯人だと名指しした」
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:19:54.46 ID:od/pvmOg0
川井「そうですよ」

広瀬「そうじゃなかったら、石田が犯人だなんて分からないじゃんか!」

右京「しかし、それがかえって腑に落ちないんですよ……」

広瀬「え…?」

右京「君達が、石田君が犯人であると主張したという事は、少なくとも石田君の行いに否定的であったはずです」
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:20:40.97 ID:od/pvmOg0






「なのに何故、君達は石田君を止めることが出来なかったのでしょうか?」




369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:21:33.51 ID:od/pvmOg0
生徒達「!!!!!」


右京の投げ掛けた疑問に、6年2組の生徒達の表情はまたしても凍り付いた。
その反応を確認しながら、右京はこう続ける。
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:22:08.75 ID:od/pvmOg0
右京「犯人が石田君1人で、ここにいる全員が否定的だったのならば、事態が悪化する前に止めに入る子がいてもおかしくなかったはずです」

「たった1人のいじめ加害者とクラスの生徒全員……どちらに分があるのか、言うまでもありません」

「しかし、そうであるにもかかわらず石田君の硝子ちゃんいじめは、彼のお母様が補聴器の賠償金を支払う程にまで悪化しています」

「どうして君達は、そうなる前に石田君を止める事が出来なかったのか……」

「その理由を教えて下さい」
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:22:57.05 ID:od/pvmOg0
島田「え、えっと……」

広瀬「それは…………」


右京の問い掛けに、答えに詰まる島田と広瀬をはじめとした6年2組の生徒達。

その様子は動揺している以外の何物でもない。
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:25:58.78 ID:od/pvmOg0
竹内「それはきっと、みんな石田の仕返しが怖かったんですよ」


だが、それを見た竹内はまるで助け舟を出すかのように、横槍を入れだす。
これに生徒達は安堵の表情を浮かべるが、
右京は気にせず「これ程、同じ思想の子が沢山いたのにですか?」と疑問を投げ掛けた。
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:26:43.65 ID:od/pvmOg0
竹内「逆に考えてみて下さいよ、これだけの多くの子がいるんです」

「みんな、自分と同じ考えを持っていたなんて、知らなかったんですよ」

「なあみんな、そうだろ?」

島田「先生の言う通りだ!」

広瀬「みんなの考えも知ってたら、俺達だって石田を止めてた!」

川井「そうよ!私達、石田君に仕返しされるのがとても怖かったの!ね?」

植野「え?え、えぇ……」


またしても竹内に続くように、口を揃えて答える6年2組の生徒達。
だが、相変わらず植野だけはあまり乗り気ではなさそうで、むしろ複雑そうな様子である。

彼らの姿を右京が黙って見る中、伍堂警部が竹内に歩み寄る。
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:27:45.19 ID:od/pvmOg0
伍堂警部「随分と彼らの肩をお持ちになりますね」

竹内「当たり前じゃないですか。彼らは曲りなりしも、私の生徒です」

「あらぬ疑いを掛けられた彼らを守るのも、教師である私の役目ですよ」

伍堂警部「まあ、確かにそれは間違っていませんね」

右京「しかし、本当にそれだけなのですか?」

竹内「……何ですか?何か他意があるとでも?」


聞き返す竹内。そんな彼の目を見ながら右京は……
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:28:19.29 ID:od/pvmOg0


右京「では、竹内先生……ひとつお聞きしますが………」

376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:29:02.66 ID:od/pvmOg0





「何故あなたは、同じ6年2組の生徒である硝子ちゃんの事を守れなかったのですか?」




377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:29:38.49 ID:od/pvmOg0
竹内「!!」


上記のようなことを問い掛けた。これに竹内は目をギョッとさせた。
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:30:30.72 ID:od/pvmOg0
右京「あなたも、彼ら同様石田君が梢子ちゃんをいじめている事実を把握していたんですよね?」

「それなのに何故、こんな事になったのでしょうか?」

「このクラスで一番の力を持っているのは、担任であり大人でもあるあなたです」

「あなたがもっと積極的に動いていれば、石田君を止める事は出来たでしょうし……」

「生徒達もそれに便乗し、石田君を止めるよう動けるようになったはずだと思います」

「なのにどうして……?」
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:30:57.66 ID:od/pvmOg0
竹内「な、何言ってるんですか?」

「私は石田が西宮をいじめているのを、何度も注意しました。それでも彼は止めなかったんです!」

右京「それは確かですか?」

竹内「えぇ…職員室にいた他の教員……」

「例えば、そこにいる喜多先生が見ているはずですよ!」

喜多「え!?」


いきなり竹内に指をさされ、喜多は少しばかり驚く。
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:34:14.33 ID:od/pvmOg0
右京「喜多先生……それは本当ですか?」

喜多「えっと……」


「………あ!」


「そ、そう言えば確かに、竹内先生が石田君に何か言っているところを見たことがあります」

右京「なるほど……あなたが見たと仰るのなら、そうなのでしょう」


納得の言葉を発する右京に、竹内の表情は一瞬緩んだが……
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:35:43.82 ID:od/pvmOg0
右京「しかし竹内先生。あなたが彼にしたという『注意』ですが………」

「本来この言葉は、他者が犯した誤りを指摘する行為を指します」

「いわば、口頭による忠告……その場で仲裁するのとは、わけが違う」

「石田君は普段からお母様に叱られた事がなく、無茶をすることも多かったそうです」

「そのような子が、口で忠告しただけで止められるとは思えません」

「そうなると、別の手段が考えられたはずです」

「例えば、石田君の行動を頻繁に監視し、硝子ちゃんに手を出しそうであれば阻止するか……」

「お母様に、石田君が問題行動を止めない事を相談するか……」

「とにかく、止める手段はいくらでもあったはずなんです」

「しかし聞いてみれば、石田君のお母様はあなたの電話を受けるまで、息子さんが硝子ちゃんをいじめていた事を知らなかったそうですし……」

「あなたご自身の口からも、注意したという言葉は出ても直接的に止めたといった表現は出てきていない」

「つまり………」
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:36:49.69 ID:od/pvmOg0



「あなたは、石田君のいじめそのものを止めるのに、消極的だった事が認められるんですよ」


383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:39:25.09 ID:od/pvmOg0
竹内「!」


右京の指摘に竹内は表情を曇らせたが、それでも引き下がらない。


竹内「そ……そんなのデタラメだ!」

「大体、何の得があって、そんないい加減な事しなくちゃならないんです?」

右京「それは、硝子ちゃんいじめの原因に、思い当たる節があったからです」

「2人のお母様に全ての事実を伝えなかったのも、それが大きく絡んでいる……」
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:40:52.61 ID:od/pvmOg0
竹内「え…?!」

美也子「それは、どういう事ですか?」

八重子「そうよ!硝子がいじめられた原因を知ってるのに、どうしてその事を隠す必要があるの?!」


当然の疑問を投げ掛ける2人の母親。

彼女らに対し、右京は少し間を置いてある事を問う。
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:41:19.24 ID:od/pvmOg0
右京「お二人は、硝子ちゃんいじめが起こった原因は何だと思いますか?」

美也子「そ、それは……」

八重子「石田君が硝子の障害を馬鹿にしたからに決まっているじゃないですか!」

右京「確かに……それもあると思います」

「しかし、石田君に共犯者がいたとなると、原因はそれだけではなかったと思われます」

八重子「それだけじゃない?」


首を傾げる八重子。それは美也子も同様だ。

そんな彼女らに対し、右京はこう続ける。
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:41:57.73 ID:od/pvmOg0
右京「仮に石田君の共犯者がここにいる生徒達だったと考えると、その理由は何なのか?」

「石田君と思想が一致したからと考えるのが自然ですが……」

「そう考えると、何の理由があってその様な思想を抱くに至ってしまったのかという疑問が生じます」

「そこで考えられるのが、『硝子ちゃんが難聴であり、それが元で確執が生じた』と言うものですが……」

「それだと、また別の疑問が生じます」


そこまで言いながら、右京は竹内の方を向き直し……
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:42:40.02 ID:od/pvmOg0
右京「何故、竹内先生がいながらこんな事になったのかです」

「通常、教員は障害を持つお子様とそうでない子が衝突しないよう、障害のあるお子様への理解を深めるよう配慮しなければならなかったはず……」

「しかし、現にこのクラスでは、硝子ちゃんへのいじめが発生している……」

「教員が場を取り持っていれば、起こり得ない事態です」

「これは、どうしてなのでしょうかねぇ……?」


わざとらしい喋り口調で、右京は竹内に疑問を投げつけた。
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:43:16.27 ID:od/pvmOg0
竹内「今度は何を言いたいんですか?」

右京「…………」


疑問を投げ掛ける竹内。

そんな彼に対し、右京は唐突に手を使ったジェスチャーを見せる。
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:43:44.76 ID:od/pvmOg0
竹内「な……何ですか?」

右京「なるほど、そうですか……」

竹内「だ、だから……何なんですか?!」

右京「今のは手話なのですが……」

「竹内先生……あなた、手話の知識がありませんね?」
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:44:13.66 ID:od/pvmOg0
竹内「……………」

「当たり前じゃないですか。普段から、西宮のような子と接する機会もありませんでしたし……」

「そもそも、西宮は筆談で会話していました。出来なくても問題ない」
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:44:55.93 ID:od/pvmOg0
右京「確かに、硝子ちゃんは筆談でコミュニケーションを取っていたそうですが……」

「筆談は手話のような高度な知識を必要としない反面、文字を書く作業を挟むが故、互いの意思を表示するまでに時間が掛かるという欠点がある」

「場合によっては、手話を用いた方が効率よくコミュニケーションを取れる場面があったはずです」

「硝子ちゃんはどちらかというと、手話での会話が得意な娘です。その上、筆談用ノートも紛失したようですからねぇ……」

竹内「……………」
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:46:02.76 ID:od/pvmOg0
右京「ちなみに、今のは『この手話、分かりますか?』と言う内容だったのですが……」

「それを理解する事が出来ず、尚且つ障害のある子と接する機会もなかったというあなたが」

「硝子ちゃんに対応しきれるものなのでしょうかねぇ……?」

竹内「は…!」


その瞬間、竹内は右京にはめられた事に気付くが、それももう後の祭り……

彼の反応を右京は見逃さない。


美也子「刑事さん、どういう事なんですか?」

八重子「そうよ!さっさと説明して頂戴!」
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:46:29.26 ID:od/pvmOg0


説明を求める2人の母親に対し、右京は「事件の全容は、恐らくこうです」と言って、いよいよ事件の核心に迫る推理を始める。

394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:47:09.69 ID:od/pvmOg0
右京「八重子さんの意向により、硝子ちゃんはこの学校に転校し、このクラスの生徒となった」

「ところが、竹内先生は硝子ちゃんに対応する術を持たなかった。そんな彼にとって、硝子ちゃんは重荷でしかない……」

「しかし一度生徒として預かってしまった以上、そう簡単に手放すことは出来ません。それこそ、職務放棄を咎められる危険性がある」

「自身が西宮硝子と言う重い荷物から逃れるには、荷物持ちが必要だった」

「そこで彼が取った行動は、6年2組の生徒達に硝子ちゃんの世話を任せる事でした」

「生徒が他の児童にフォローを入れることは違法ではない」

「それどころか、健常な子供達が障害あるお子様を手助けしていると言う構図が出来上がる……」

「そうする事で、『自分は何のダメージを負わないまま、硝子ちゃんから逃れられる』と考えたのでしょう……」

竹内「…………」
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:48:43.32 ID:od/pvmOg0
右京「しかしそれは、生徒達も同様でした」

「彼らも普通学級の人間であるが故に、障害あるお子様へ対応する術を持たなかったのです」

「そのような人間が、果たしてまともに授業を受ける事が出来るでしょうか?」

「常識的に考えて、難しいと思います」

「そこで本来ならば、教師が対策を取るところですが、硝子ちゃんと関わりたくなかった竹内先生は現状維持を貫いた」

「障害を持つお子様と対応出来ず、教師からの助けも得られない……」

「このような状況に、彼らは酷くストレスを感じたはずです」

「その最中、石田君は硝子ちゃんを頻繁に手を出し、日に日にそれが悪質な方向へエスカレートしていった」

「梢子ちゃんの世話でストレスを感じていた彼らは、それを見てどう思ったでしょうか?」

「恐らくは………」
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:49:13.53 ID:od/pvmOg0



「『石田君がストレスの元凶に制裁を与えてくれている』」


397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:50:03.67 ID:od/pvmOg0
「そう感じたと思います」


そう言いながら生徒達に目を移す右京。
彼に目を向けられた生徒達は、全員焦った様子で目を反らした。

一方美也子は、何かに気付いたのか「ま、まさか……!」と声を上げる。
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:50:49.86 ID:od/pvmOg0
右京「そのまさか……」

「こうして彼らは、いつしか石田君の硝子ちゃんいじめを肯定し、共謀するようになったのです」

「共謀しなかった生徒も、硝子ちゃんいじめを見て見ぬふりをしていたと考えられます」

「一方、自分達の行いがバレた時の事も考えたはずです」

「ストレスの発散が出来たところで、事が明らかになればそれこそ大きなダメージを負う事になる……」

「それから逃れるには、『誰か』に自分達の罪と責任を持って行ってもらう他ありません」

「その誰かと言うのが……」
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/05(火) 14:51:32.57 ID:od/pvmOg0
と言って右京は、石田に目を向ける。


右京「石田君、君だった…」

石田「…………」
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