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【ガルパン】まほ「アンツィオ高校で幻の戦車道を撃破する」
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163 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/11(金) 19:26:41.47 ID:QRdFzBdf0
まほ(……)
まほ(安斎が、必要だ。戦車に乗ったドゥーチェ・アンチョビではない)
まほ(安斎千代美が、私には必要なんだ)
まほ(黒森峰に再び栄冠をもたらす為にも、常勝不敗・西住流の戦車道を体現する為にも)
まほ(みほを喪った今の私には、今の弱い私には、再び強い私に戻るためには)
まほ(安斎千代美が必要なんだ)
まほ(隊に戻ったら、仮想敵からアンツィオ高校を外そう)
まほ(いや、安斎を黒森峰に呼ぼう。望むのなら、後輩二人も一緒でいい)
まほ(それで、一緒に戦車道をやるんだ)
まほ(大体なんだ、42人って。ほぼ1年生だけのチームでどうやって戦うつもりだ?)
まほ(他の学校ならいざ知らず、この私が率いる黒森峰戦車隊を相手に)
まほ(そもそもお前は何回約束を破った? というより本当に約束を守る気はあったのか?)
まほ(名古屋の時も豊田の時もプラウダの時も、挙句アンツィオでも結局2年間、パスタを茹でてただけじゃないか)
まほ(きっと今回だってどうせ、期待させるだけさせておいて1回戦か2回戦あたりであっさり負けるに違いない)
まほ(…いや、止そう。安斎はずっと、無理をしてきたんだ。私のために、無理をしてくれたんだ)
まほ(私が戦車に乗っていたから、戦車から降りられなかったから、前に進むことしかできなかったから)
まほ(追いつくために安斎は、無理をして戦車を用意したんだ)
まほ(アンツィオ高校なんかに行って、屋台を引っ張りパスタを茹でて、他にもきっと、色々な、私の知らない苦労をして)
まほ(それだけやって、やっとの思いで、あんな短砲身のセモヴェンテ1輌を用意して)
まほ(それで私に、会いに来てくれたんだ。私のために)
まほ(…今度は、私が迎えに行く番だ。もう二度と、安斎に苦労をさせはしない)
まほ(ティーガーだろうがパンターだろうがエレファントだろうがマウスだろうが、好きなだけ乗せてやる)
まほ(みほの代わりにお前を求める。私はきっと酷いやつなんだろう)
まほ(そのことを私は忘れない。それでも安斎、私にはお前が必要なんだ)
まほ(だから私は、お前に私の全てを捧げる。私の全てをお前にやる)
まほ(だから安斎、どうか、私を…)
しほ「まほ、話があります」
164 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/11(金) 19:27:40.20 ID:QRdFzBdf0
しほ「隊と共に暮らし、戦車と共に旅をする」
しほ「人馬一体、島田の境地に至る修行」
しほ「私達西住が、決して敗れてはならぬ相手」
しほ「全国大会で、アンツィオ高校と当たることがあれば」
しほ「西住流を継ぐ者として、全力で叩き潰しなさい」
しほ「いいですね、まほ」
165 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/11(金) 19:28:55.68 ID:QRdFzBdf0
まほ(なんで…どうして…どうしてお前は、島田流に行ってしまったんだ…?)
まほ(どうして…どうして私は、西住流なんだ…?)
まほ(あんざい…おまえは…ひどいやつだ…)
166 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/11(金) 19:30:08.65 ID:QRdFzBdf0
しほ(私はみほを、実の娘を、この手で殺めた)
しほ(本当は、みほが正しいと解っていたにも関わらず)
しほ(西住流を、戦車道の未来を守るために)
しほ(この罪は消えない。死ぬことすら私には許されない)
しほ(ならばせめて、私は戦車道を守ろう。西住を守ろう)
しほ(みほの犠牲を、無駄にしないためにも)
しほ(私の残りの人生の全てを賭して)
しほ(それが私の背負いし罰)
しほ(私にできる、私に許された、ただ一つの償い)
しほ(けれど、もし…)
しほ(もしもう一つだけ許されるのなら…)
しほ(まほだけは、一人残った、まほだけは…)
しほ(どうか…)
167 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/11(金) 19:31:23.84 ID:QRdFzBdf0
まほ(今夜は、みほの部屋で寝よう)
まほ(それで、全てを忘れよう。今夜…いや、今日と明日)
まほ(みほに包まれて眠る。それだけで、私は強くなれるから)
まほ(強い私に戻れるから)
まほ(私にはもう、何もない。西住流の他に、何一つとして残ってはいない)
まほ(なら、今日と明日…いや、この家に帰ってきたときだけ)
まほ(それで私は、ちゃんとやれるから。ちゃんと耐えていけるから)
まほ(…形見を一つだけ。それでこの家を出ても、学園艦に帰っても)
まほ(隊に戻っても、皆の望む西住まほでいられるから)
まほ(みほのぬくもりを、一つだけ)
まほ(それで、元の私に戻れるから)
まほ(また、頑張れるから)
168 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/11(金) 19:32:25.04 ID:QRdFzBdf0
―――――この無常の世界は守りきれなかったものばかりさ
169 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/11(金) 19:34:24.29 ID:QRdFzBdf0
ラジオ「おーいえー! って、2番はおーいえー言わないんだね、残念」
ラジオ「というわけで本日のラストナンバー、お送りしましたのはアイドルがひたすらカラオケしてるだけのCD2より」
ラジオ「南条光で『DIE SET DOWN』でした。うん、なんだかやけくそっぽさが楽しい歌だね。おーいえーのとことか。今度私も、歌おうかな」
ラジオ「というわけで『凛の気になるりん♪』本日のゲストはオダユウジさんでした。どうもありがとうございました」アリガトウゴザイマシタ
ペパロニ「…姐さん」
アンチョビ「なんだペパロニ?」
ペパロニ「何か今日、西住さんと会えてよかったっすね。本当に」
アンチョビ「そうだな。ホントによかった」
ペパロニ「…お母さんも、案外ふつうっしたね」
アンチョビ「そうだな」
ペパロニ「最初、姐さんが前みたいに『ブッ殺した』モード入っちゃうんじゃないかって、心配してたんすよ、私」
アンチョビ「はぁ!? なんで!? 私はむしろ殺されるんじゃないかって…」
ペパロニ「でも、なんつーか…普通でしたね、ホント」
アンチョビ「…そうだな、なんでだろうな。なんか、食わせなきゃって使命感、湧いたよな?」
ペパロニ「あ、やっぱり姐さんも感じました? 私もこう…」
ペパロニ「こいつにスパゲティを食わしてやりたいんですがかまいませんね! みたいな、魂の叫び、感じたっす」
アンチョビ「…多分、似たもの母娘なんだろうな」
ペパロニ「っすね」
アンチョビ「…頑張るぞ、ペパロニ。今年の全国大会、絶対に、西住と最高の試合をやるんだ」
アンチョビ「こうして楽しくやれてるのも、料理上手くなったのも、友達ができたのも」
アンチョビ「お前たちと出会えたのも、西住を好きになれたのも」
アンチョビ「全部戦車道のおかげなんだ。私の全部は、戦車道に貰ったものなんだ!」
アンチョビ「だから今度は、私が戦車道に恩返しする番だ。私達のアンツィオ戦車隊の手で、新しい戦車道の世界を見せてやるんだ!!」
ペパロニ「了解っす、姐さん。明日からまた、頑張りましょう」
170 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/11(金) 19:35:14.04 ID:QRdFzBdf0
アンチョビ「…おい」
アンチョビ「寝たのかペパロニ!?」
ペパロニ「ZZZ…」
アンチョビ「おい寝るな! 起きろペパロニ! 話をしてくれよペパロニーーーっ!!!」
ペパロニ「ZZZ…」
アンチョビ「いやホントに頼むよペパロニ! ドゥーチェももう限界なんだって! 一人で運転なんてしてたら、もう寝ちゃうんだって!!」
ペパロニ「ZZZ…」
アンチョビ「くっそう、ダメか! ひなも早々に、真っ先に寝ちゃったし!!」
ひな「すぅすぅ…」
アンチョビ「なんだよ一番体力がありそうな顔して真っ先に寝るとか! お前ホントに、たいっがいゆるゆるだぞ!」
ひな「んぅう…」ゴロン
アンチョビ「何が鋼の戦車女子だよ! 入学当初の、あのクールでかっこいい副官カルパッチョはどこに行っちゃったんだよーーーーっ!!」
アンチョビ「…くっそう、こんだけ騒いでもまったく起きない。というより私も…眠く…」コクリ
アンチョビ「あきらめて…ここをキャンプ地とする…か…?」コクリ
アンチョビ「…いいやダメだダメだダメだ!!」ブンブン
アンチョビ「私達は帰るぞ! アンツィオに帰るぞ! 絶対に帰るぞーーーっ!!」
アンチョビ「でけでん! っかわのみなぁもぉにぃい! ほおっぺたちかづけて…ぇ…」
カクン
ガシャン!!
アンチョビ「!!」ビクッ
グラサンの屈強な黒のカリスマ「ガッデム! 免許持ってんのかゴルァ!!」
アンチョビ「うああああああっ! や、やっちゃったぁーーーっ!!?」
――――この後、事情を聴いた心優しいグラサンの屈強な黒のカリスマが佐多岬まで運転してくれました。
171 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/11(金) 19:37:52.30 ID:QRdFzBdf0
今回は以上です。ありがとうございました。
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/05/12(土) 04:53:06.13 ID:HsjWQBMYO
乙です
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/05/12(土) 12:51:35.52 ID:Gk/MSGwn0
乙
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/05/16(水) 11:56:15.24 ID:5nMCKjk/0
乙
西住親子がスゴい勢いで地獄に転がり墜ちてく……
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/05/16(水) 21:12:09.77 ID:ObrmkSLjO
とりあえず戦車道関係者、特に黒森峰とその周囲の奴は全員惨たらしい死を迎えるべき
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/05/17(木) 06:59:31.05 ID:OSFBU6+Z0
>>175
誰もそこまで言ってない、ってかこの話の中の黒森峰はむしろ被害者側だろうが
読み直してきて、どうぞ
177 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/22(火) 23:35:17.63 ID:5TsFLnTk0
投下します。全て理由あってのことだったのは間違いありません。
178 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/22(火) 23:36:54.71 ID:5TsFLnTk0
<高校2年の3月・大洗女子学園艦・校門前>
ペパロニ「…とりあえず昼の波はおしまいみたいっすね、姐さん」
アンチョビ「あとは放課後までパラパラと、か…」
ペパロニ「結構渋い感じっすねぇ、大洗。放課後はトッピング増し無料で在庫掃いちゃいましょう」
アンチョビ「そうだな、こうなったらちょっとでもお客さんに喜んで貰おう。明日の仕入れもちょっと考えないと…はぁ」
ペパロニ「…残念っしたね、姐さん。今年の2月は、西住さんに会いに行けないで」
アンチョビ「こうなる覚悟はしてたよペパロニ。アンツィオ屋台は戦車道だけじゃないんだ」
アンチョビ「黒森峰が出禁だって話なら航路を変えてでも他を探すのが当然だろう?」
ペパロニ「…っすね」
アンチョビ「あっはっは、そんな顔するなよペパロニ! どのみち西住は来なかったさ! 何せ今のアイツは本気の西住まほだからな!」
アンチョビ「今私達にできるのは、じゃんじゃんパスタを回して演習費を稼ぎ出すこと! 何せ4月になれば一気に大所帯だ!」
アンチョビ「今まで埃被ってた残りの戦車たちも、全部動かせるようにしてやらなくちゃだもんな!」
アンチョビ「…まあ、カルパッチョ抜きの二人体制で余裕で回せてる時点で、売上は渋いことになりそうだけどなぁ」ガックリ
ペパロニ「そういやうちはスパイとかいいんすか? ひなのヤツ、整備にかこつけて格納庫にたかちゃん連れ込んでると思いますけど」
アンチョビ「大丈夫だ。大洗に戦車道はないし、それにそもそもうちの戦車の編成なんて、調べる気になればすぐ調べられるだろ」
アンチョビ「誰かさんがTVで宣伝しちゃった所為でな」ギロリ
ペパロニ「あっはっはっは! そういやそうでした! やー、懐かしいっすねぇ!」
アンチョビ「ペーパーローニー! まあでも、そのおかげでその後の勧誘が上手く行ったってのはあるけどな」
ペパロニ「でしょう? やっぱ嘘なんてついてもダメなんですって!」
杏「やあやあ、チョビ子ゥー!」
アンチョビ「!!」
ペパロニ「あぁん? なんだテメェ、姐さんをチョビ子呼ばわりなんて」ギロリ
桃「…!」ザッ
アンチョビ「お、おい止せペパロニ! 生徒会長の角谷さんだぞ!!」
杏「かーしま」
桃「はっ」スッ
アンチョビ「ほっ…」
杏「そんで、まだやってるかいチョビ子? 生徒会の仕事で、お昼ずれちゃってさぁ」
アンチョビ「お疲れ様です、角谷会長。まだまだやってますよ。何にします?」
杏「あー、そんな堅苦しくしなくていいよー。タメ年なんだからさぁ」
ペパロニ「えっ、姐さんとタメ年!? オメェ、1年じゃねぇの!?」
アンチョビ「なっ、何言ってるんだこのバカロニーーーーーっ!? すみません会長! こいつペパロニなもんで!!」
杏「あっはっはっは! いいよいいよ。そんじゃ…この鉄板ナポリタンを」
杏「肉抜き卵抜き自家製魚肉ソーセージトッピング山盛りで」
179 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/22(火) 23:37:42.42 ID:5TsFLnTk0
ペパロニ「!!」
アンチョビ「はい! かしこまり…」
ペパロニ「姐さん!!」ガシッ
アンチョビ「…ペパロニ?」
ペパロニ「下がっててください、姐さん。この人の相手は、私がします」ドドドドドド
杏「んっふっふっふ…!」ゴゴゴゴゴゴゴ
アンチョビ「えっ、ちょっと待てなんだこの空気!? お、おいペパロニ!?」ビクビク
桃「お前には私の相手をして貰おうか、安斎」ズズズズズズ
アンチョビ「ぴぃっ!? こ、こっちにも来たァ!? や、止めろ! そういうの無理なんだって!」
アンチョビ「ドゥーチェそういうノリは無理なんだってばぁーーーーーーっ!!!」
杏「ふぃー、ごっつぉさん。美味しかったよ」
ペパロニ「へっへっへ、でしょう? これが本物のナポリタンっすよ会長サン」
杏「いい後輩連れてんだねぇ、チョビ子。この子の腕ならどこでもやっていけるよ」
アンチョビ「ふふん! そうだろうそうだろう! うちの自慢の後輩だ!!」
ペパロニ「うへへ、姐さんに褒められた」
杏「そんでさ、こんだけ美味しいナポリタンをこの値段で出して…実際どうなのよ?」
アンチョビ「どうって、何がだ?」
杏「ちゃんと儲かってんの? チョビ子んとこはパスタ道科ってわけじゃないんでしょ?」
アンチョビ「当然だろ! 全ては戦車道全国大会に出場、いや優勝するためにやっていることだ!」
アンチョビ「まあいろいろ無茶な合宿とかしたせいで結構カツカツだけど、それでも演習費くらいなら余裕で稼げてるぞ!」
アンチョビ「そして今のペースなら念願の秘密兵器導入だって夢じゃあない! 相手チームの恐れおののく姿が目に浮かぶわ!!」ビシィ
ペパロニ(姐さんも結構ノリと勢いで余計なこと言っちゃうよなぁ)
アンチョビ「でもなんでそんなこと聞くんだ角谷? なんか欲しいもんでもあるのか?」
杏「んー、うちでも戦車道やろうかなって」
アンチョビ「!!」
杏「色々聞きたいことがあるんだよね、アンツィオ戦車道の救世主ドゥーチェ・アンチョビにはさ」
杏「それも込みで大洗の航路をアンツィオに寄せ…」
ガシッ
アンチョビ「戦車道はいいぞ! これからどんどん盛り上がっていくスポーツだ!」
アンチョビ「角谷、一緒に戦車道やろう!!」ギュッ
180 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/22(火) 23:38:58.80 ID:5TsFLnTk0
杏(うおっ、ちけー)
杏「やー、でもそんなに簡単に始められるもんなの? 実際のところさー」
杏「大洗でも昔は戦車道やってたみたいで、戦車はあるっぽいんだよ」
杏「でも実は私、ただやるだけじゃなく、優勝したいんだよねー。戦車道で」
桃「っ…」
アンチョビ「いいねぇいいねぇ! やるからにはてっぺん目指さなくちゃだよなぁ!」
杏「そうそう。で、どうよ? 実際。戦車さえあれば、できちゃうもんかね? 戦車道」
アンチョビ「できるできる! 最初の戦車さえあれば、戦車道なんて案外簡単に始められちゃうもんなんだ!」
アンチョビ「最初の研修なんかも1日で終わるぞ。座学なんて全然なくって」
アンチョビ「『戦車なんてバーっと動かしてダーッと操作してドーンと撃てばいい!』ってな感じの挨拶みたいな話があるだけで」
アンチョビ「後はもう戦車乗ってみんなで模擬戦だ!」
杏「えぇ…マジ?」
アンチョビ「マジマジだ! 私は中学の実習とシニアに入った時との2回初回研修受けたけど、2回ともそうだったから間違いない!」ビシィ
アンチョビ「違う人だったけど、どっちの時もいい感じの自衛官のお姉さんが来てさぁ。多分、連盟に電話すれば学校まですぐ来てくれるぞ」
杏「学園艦でも?」
アンチョビ「多分来る。輸送機に戦車乗っけて飛んでくるんだもの、教官。で、戦車落として帰ってったなぁ。2回ともそうだった」
杏「はは、想像つかないや」
アンチョビ「すぐに実物見られるって! 戻ったらすぐ電話してみろよ!」
アンチョビ「それにな、角谷。いきなり始めて優勝したいならやるべきは戦車道だ。これは絶対、間違いない!」
杏「んー、なんで?」
アンチョビ「他のスポーツだったら、それこそ小学生のころからずっとやってないと試合なんてできないだろ?」
アンチョビ「小学生のころからやってた奴らが強豪校に集まって、そういう学校が優勝争いをしてる」
アンチョビ「そこにぽっと出の学校が優勝したいったって、どうにもなんない」
アンチョビ「あ、でもあれだな。渋谷凛のラジオによく出てる野球選手の人とか、無名校を一人で甲子園まで連れてったとか…」
杏「!!」ギラリ
アンチョビ「なんて人だったかは忘れちゃったけど…」
杏「タダノカズヒト投手だね。八千代松陰高校をほぼ単身で甲子園に導いた後、立教大学に進学」
杏「怪我などの理由でドラフトには掛からなかったけど単身渡米して野球を続け」
杏「07年、ついに北海道日本ハムファイターズに1位指名」
杏「NPBでは通算18勝して日本シリーズにも出場したけど、14年に戦力外通告を受ける」
杏「それでも独立リーグに移って17年に現役を引退するまで決して野球を手離さなかった、不屈の男だ」
アンチョビ「お、角谷野球詳しいのか?」
杏「野球はあんまし。でもネットの人気者だからねぇ、タダノは。チョビ子も今度調べてごらんよ」
アンチョビ(ネットの人気者かぁ。1年生もいっぱい入ってくることだし、そういう流行の情報も調べておいた方がいいのかな?)
181 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/22(火) 23:39:47.57 ID:5TsFLnTk0
アンチョビ「って、話逸れたな。とにかく普通のスポーツはそれこそ小さいころからの繰り返しの練習があって初めて試合になる」
アンチョビ「けど戦車道は違う。いや、もちろん練習は大事だぞ? でも何というかアレだ」
アンチョビ「普通の人がいきなり始めても、ちゃんと試合ができるんだよ、戦車道は」
アンチョビ「理由は簡単。戦車は近代兵器だからだ。普通の人が戦争に参加するようになってから造られた兵器だからだ」
アンチョビ「武術を究めた無双の武将が一人で何千人も倒してた時代とは違う、一般人が兵士として、戦地に出てった時代の兵器だからな、戦車ってヤツは」
アンチョビ「だから訓練をすれば誰でも動かせる。十年や、二十年なんて修行はいらない」
アンチョビ「アクセル踏めばちゃんと走るし、狙って撃てばちゃんと当たるし、撃って当たればちゃんと倒せる」
アンチョビ「150kmのボールを投げたり40ヤードを4秒台で走ったり、ベンチプレスで100kg持ち上げたり、或いは身長を190cmにしたり」
アンチョビ「そういうのよりはよっぽどちゃんと、人間が出来ることなんだ。戦車を動かして戦うってことはさ」
アンチョビ「どうだ角谷? 出来そうな気がしてきただろ!?」
杏「チョビ子こそスポーツ詳しいじゃん。アメフトとか野球とか」
アンチョビ「…サンダースで屋台やってるとさ、運動部の子達が楽しそうに話してくんだ。部活のことをさ」
アンチョビ「ごっつい体でわらわらやってきて、バカ話で笑いながら大飯を食らってく。すっごい楽しそうに…ホント、青春って感じでさ」
アンチョビ「そういう楽しみって、運動できる子だけのもんだと思ってたんだ」
アンチョビ「そういう子達が集まって輪を作って…私みたいにあんまし動けない子はそれを外からずっと眺めてて」
アンチョビ「でも戦車道なら、誰だって輪に入れる! いや面白いぞ、ホントに!」
アンチョビ「私の中学時代の実習チームなんて操縦手はバスケ部で砲手は弓道部、そんで車長の私は図書委員だ!」
アンチョビ「フッフッフ、何を隠そうこの編成で私はあの西住まほに勝ったからな!」ビシィ
杏「えっ、マジ?」
アンチョビ「…いや、正確には負けちゃったんだけど、ほぼ勝ちかけた! あの黒森峰の西住まほにだぞ!」
アンチョビ「どうしてそういうことになるのかって言うと、戦車道が最高のチームスポーツだからだ!」
アンチョビ「戦車道はホント、色んなことが詰まってるからな!」
アンチョビ「体力や運動神経、集中力なんかはもちろん要る、スポーツだからな。でも作戦を立てたりシュトリヒ計算したりなんかは完全に優等生の領分だ」
アンチョビ「でもって戦車の整備や知識なんかはマニアの子達の領域で、相手と戦う闘争心なんかはそれこそ『俺は今からお前たちを殴る!』の世界だろ?」
アンチョビ「ホント、色んな子達が関わっていける、交わっていける。それが戦車道の一番いいとこ、最高に楽しいとこなんだと私は思ってる」
アンチョビ「黒森峰みたいに戦車一筋の子達を集めれば話は早い。でも、普通の学校でも戦車隊は作れる。大洗にもいるだろ? 色んな子達がさ」
杏「…いるね。色んな子達が」
アンチョビ「フフ、そういう子達のいいところをうまく組み合わせてやれば、どんな学校でも戦車隊は作れる。戦車道はできる!」
182 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/22(火) 23:40:37.69 ID:5TsFLnTk0
アンチョビ「どうだ角谷!? 戦車道やりたくなってきただろ!?」
杏「まあ、できるのはわかったよ。サンキューチョビ子。でもさぁ、できるのと勝てるのは違うでしょ?」
杏「学園艦を挙げて取り組むからには結果が欲しい。やるからには絶対したいんだよねぇ、優勝」
アンチョビ「優勝か…ふっふっふ、角谷。私はあえて断言するぞ。ぽっと出の学校でも、戦車道なら優勝できる!」
アンチョビ「言ったろう? 戦車は撃って当てれば倒せるんだ。一騎当千の武人の戦いじゃない。戦車隊を作れたのなら、あとはココの使い方さ」アタマツンツン
アンチョビ「もちろん戦車隊の練度は重要だ。装甲も火力も大切だろう。でも、どんな戦車でも撃って当てれば倒せるのなら」
アンチョビ「最後に重要になるのは隊長の立てる作戦だ。特に、装甲と火力と練度に恵まれた学校ほど、奇策には弱い!」
アンチョビ「宣言するぞ、角谷。今年の戦車道全国大会、西住率いる最強の黒森峰を破り優勝するのは!!」スッ
アンチョビ「このドゥーチェ・アンチョビ率いるアンツィオ高校だぁーーーーっ!!」ビッシィ
ペパロニ「おお、姐さんカッケーっす」
アンチョビ「ふっふっふ! そうだろうそうだろう! それじゃあ一丁アレをやるか!? せーの!」
アンチョビ「ドゥーチェ!! ドゥーチェ!! ドゥーチェ!! ドゥーチェ!!」ウデブンブン!
ペパロニ「ドゥーチェ!! ドゥーチェ!! ドゥーチェ!! ドゥーチェ!!」
ひな「ドゥーチェ!! ドゥーチェ!! ドゥーチェ!! ドゥーチェ!!」
アンチョビ「ってカルパッチョ、こっち来てたのか?」
ひな「はい、全戦車の整備完了しました。これでいつでも、新入生を迎えられます」
アンチョビ「おおそうか! ご苦労だったな!」
アンチョビ「ようし、今一度みんなで! 全国大会優勝を目指してのドゥーチェコールだぁーーーっ!! せーの!」
杏「ねぇ、チョビ子。それ、うちでやらない?」
アンチョビ「…へ?」
杏「うちにおいでよ、チョビ子。後輩も一緒にさ。たった2人しかいないんでしょ?」
杏「来年度大洗女子は学園の総力を挙げて戦車道をやる。アンツィオ以上の支援ができると思う」
杏「戦車だって、地元のスクラップ工場を通せば大洗に持ち込める」
杏「優勝するなら、戦車道やるならアンツィオじゃなくてもいいでしょ?」
アンチョビ「……」
杏「うちにおいでよ、安斎。大洗で、一緒に戦車道やろう」
183 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/22(火) 23:41:56.89 ID:5TsFLnTk0
アンチョビ「…いや、それはできない」
杏「……」
アンチョビ「うちには来年、私と一緒に戦車道をしてくれるって仲間が39人入ってくる」
アンチョビ「全国大会や、冬の合宿で、私自ら声をかけて、そしてその声に応えてくれた大事な仲間達だ」
アンチョビ「その子達を裏切ることはできないよ」
アンチョビ「それに、私はアンツィオに育てられたんだ。ドゥーチェ・アンチョビはアンツィオの風が育てた」
アンチョビ「黒森峰でもプラウダでも、私はきっとダメだったんだ。アンツィオだったから私は、安斎千代美はここまで来れたんだ」
アンチョビ「だから、私の歩んだ戦車道は、私を育てたアンツィオ高校に捧げたい」
アンチョビ「私はアンツィオのドゥーチェ・アンチョビだ」
杏「…そっか、ごちそうさん」ガチャ
アンチョビ「明日も食べに来い、角谷。私が読んだ入門書、全部やるよ」
杏「え?」
アンチョビ「初回特典ってやつだ。このドゥーチェの注釈入りだぞ!」
杏「ちょっと待って、いいの?」
アンチョビ「大洗に転校することはできないが、それでも私は嬉しいんだ」
アンチョビ「一緒に戦車道をやる仲間が増えたことがな!」
アンチョビ「わからないことがあったら何でも聞け! 私にわかることなら全部教えてやる!」
アンチョビ「そんでもってもし全国大会で当たることがあったら」
アンチョビ「その時はこのドゥーチェ・アンチョビが直々に、戦車道の楽しさを実地で教えてやろう!!」ニカッ
アンチョビ「戦車道はいいぞ! 戦車道は楽しいぞ!」
アンチョビ「角谷、一緒に戦車道やろう!」
杏「…サンキュー、チョビ子」
184 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/22(火) 23:43:12.62 ID:5TsFLnTk0
桃「…よろしかったのですか?」
桃「安斎千代美は現高校戦車道で唯一、うちに来てくれる可能性のあった隊長」
桃「どんな手を使ってでも引き入れるべきだったのでは」
杏「どんな手を使ったって無理だよかーしま」
杏「だから私達はこうやって、戦車道やろうとしてんじゃないか」
桃「…そうでしたね、会長」
杏「ま、チョビ子の言を信じるなら、戦車道自体は始められそうだし」
杏「後は在校生の中からやれそうな子を集めるしかないでしょ」
杏「かーしまは、チョビ子の入門書で猛勉強よろしくー」
桃「はっ」
prrrrrrrrrrrrrrrrrr…
杏「っと、小山から電話だ。もしもーし」
柚子「朗報です会長! 新年度から我が校に…!!」
柚子「西住みほさんが転校してきます!!」
185 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/22(火) 23:44:01.18 ID:5TsFLnTk0
<アンツィオ高校学園艦・アンチョビの部屋>
アンチョビ(タダノカズヒト、検索っと)
アンチョビ(お、なんだろうこの動画? ドラマかな?)
アンチョビ(いい声してるなぁ…そういえば渋谷凛もしきりに声を褒めてたっけ)
アンチョビ(野球選手なのに俳優もやってたんだ…二足のわらじですごいなぁ)
アンチョビ「う”あ”あああああ””ああああああああああああ!!!!???」
アンチョビ「なっ、な”あ”あああああ””ああああああああああああ!!!!???」
アンチョビ「わ”あ”あああああ””ああああああああああああ!!!!???」
ペパロニ「どうしたんすか姐さん!?」ガチャッ
ひな「大丈夫ですかドゥーチェ!?」
アンチョビ「うわああっ!! み、見るなぁ! 見るんじゃなぁい!!」
ペパロニ「…何見てんすか? 姐さん」
ひな「なんだこれは…たまげたなあ」
186 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/22(火) 23:44:46.82 ID:5TsFLnTk0
<おまけ・少し先の未来・大洗女子学園艦>
杏(…ホントにバーッと走らせてドーンと撃ってで座学が終わった)
杏(確かにそれで動かせちゃったけど…)
杏(…大丈夫なのかなぁ、これ)
187 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/05/22(火) 23:45:20.73 ID:5TsFLnTk0
今回は以上です。ありがとうございました。
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/05/23(水) 06:21:49.10 ID:OhO0uaYJO
乙!
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/05/23(水) 07:42:58.38 ID:YWUXwqGSO
パッチョ姐さんwwwwww
190 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/05/24(木) 08:49:56.38 ID:ed8IPq1i0
乙
チョビ子はどこに行っても元気だなぁw
191 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/05/24(木) 11:20:24.66 ID:IxDyh4db0
モブがやたら濃かったりホモビ見たりまほチョビの可能性とは一体…うごごご!
192 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/06/03(日) 20:46:53.85 ID:JyO0DgQv0
投下します。まほチョビは超隠しルートです。
アンツィオをちゃんと育てないとたどり着けないんです。
193 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/06/03(日) 20:50:02.75 ID:JyO0DgQv0
<高校3年の4月・アンツィオ高校学園艦・アンチョビの部屋>
アンチョビ「この子はアマレット、この子はパネトーネ…この子はジェラート先輩と同じ名字だから、ジェラートでいいな」
アンチョビ「…鈴井はやっぱり、どうしてもミスターって呼びたいなァ。食べ物じゃなくても…イタリアっぽければ別にいいか!」
アンチョビ「よし、イタリアっぽさマシマシでミスタにしよう! 奈良はナランチャ、汐華はジョバーナ…いや、名前から持ってきてジョルノだな!」
アンチョビ「うーん、去年と違って人数多いからソウルネーム考えてやるのも大変だなァ…うへへ、今から会うのが楽しみだぁ!」
コンコン
ひな「失礼します、ドゥーチェ」ガチャ
ペパロニ「こんばんはっす、姐さん」
アンチョビ「ん? おお、どうした二人とも? ドゥーチェは今新入生の子達のソウルネームを考えるのに忙しいんだ」
ペパロニ「おっ、恒例のアレっすね! どれどれ…食べ物くくりじゃないんスか姐さん?」
アンチョビ「ああ、そいつらは中学時代からの後輩だ…いや! ダメだぞ!? 鈴井のヤツは絶対にミスタって呼ぶんだ! そこだけは譲らん!」
ペパロニ「や、別にいいっすよそんなん…何スかそのこだわり?」
アンチョビ「…小さいころ、ムンクさんになりたかったんだよ私は」
アンチョビ「まあこんだけ人数増えたからな。その辺はもう緩々で行こうかなってさ」
アンチョビ「で、どうしたんだひな? 何か用事があったから来たんだろ?」
ひな「はい、単刀直入に言います。イメチェンしましょう、ドゥーチェ」
アンチョビ「…はい?」
ひな「イメチェンです、ドゥーチェ。イメージチェンジ。よりアンツィオ戦車道の総統として相応しいドゥーチェへと」
アンチョビ「おいひな…それじゃまるで、私がドゥーチェに相応しくないみたいじゃないか!」
ひな「はい。今のドゥーチェでは、この先のアンツィオを率いていくことは不可能かと」
アンチョビ「なあ゙っ!? お、おいカルパッチョ、お前…」プルプル
ひな「覚えていますか? ドゥーチェ。去年の今頃、私達2人が出会った日のことを」
アンチョビ「…そんなの、忘れるわけないだろ? 私にとって、初めての後輩だったんだからな、お前は」
アンチョビ「確か、『茨城に帰るーーーーっ!! たかちゃんといっしょの学校行くーーーーーっ!』って大泣きしたっけなお前」
アンチョビ「そんでもって私も『お願いだから逃げないでくれーーーっ!!』って、2人して泣いちゃって…いやぁ、懐かしい」
アンチョビ「でも、アンツィオに残ってよかったろ?」ニカッ
ひな「それはまあ…って、そっちじゃないんです! 思い出してほしいのは、その前! その前の私の態度です!!」
アンチョビ「その前…? んー…」
―――そうですね。それじゃあ、パスタがいっぱい売れて
―――せめて砲塔のついた戦車が買えるようになったら
―――その時に、改めて勝負を挑ませて貰いますね。ドゥーチェの座を賭けて
アンチョビ「はっ!? まさかカルパッチョお前、いよいよこのドゥーチェの座を狙って!?」バッ
ペパロニ「何!? ひなテメェ、姐さんの寝首をかこうってかァ!?」ザッ
ひな「違うわよペパロニ。今更そんなことしないわ。私だって、ドゥーチェのこと大好きだもの…そう、『私は』ね」
アンチョビ「『私は』って…それじゃあまさかペパロニが!?」
ペパロニ「いやいや姐さん! 私が姐さんを裏切るわけないじゃないッスかぁ! 流石に怒りますよ?」
ひな「…でもペパロニ、あなた最初にドゥーチェと出会った時にこう言ったでしょう?」
―――弱っ!? 戦車道って格闘技っすよね? こんなんで大丈夫なんスか?
―――びびって怒って泣いて笑って、そんでもって歌まで歌いだして…戦車道やってる奴ってあんな感じだったかなぁ?
ペパロニ「あー、そういや確かに。最初はそんなこと思ったっけなぁ」
アンチョビ「お、おいペパロニ?」
194 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/06/03(日) 20:50:57.43 ID:JyO0DgQv0
ペパロニ「基ッ本的に弱そうなんすよねぇ、姐さんは。そこがかわいいんスけど」
アンチョビ「ペパロニ!?」
ひな「そう、そこなのよペパロニ。ドゥーチェはいっつも笑ってて、優しくて、楽しそうで…もちろんそれがドゥーチェのいいところなのは解ってますよ?」
ひな「でもそのせいでドゥーチェは…はっきり言って威厳ゼロです。戦車道の隊長に必要不可欠な威厳が全く、なくなっちゃってるんですよ」
アンチョビ「威厳ゼロ…」
ひな「想像してみてくださいドゥーチェ。あなたはアンツィオ戦車道科の新入生です。中学時代はバリバリ戦車道やってました。今日は初顔合わせです」
ひな「ガレージに入ったらツインテールの隊長がチョビチョビニコニコしながらパスタ茹でてました。さあどうします?」
アンチョビ「ニコニコはともかくチョビチョビってなんだよ…パスタ食べて自己紹介?」
ひな「はい0点。正解は勝負の二文字です…いえ、ひょっとしたらパスタ食べてから勝負かもしれませんけど」
ひな「普通、戦車道やってる子は我が強いんですよ。常に自分が一番でありたい。強い自分でいたい」
ひな「それは戦車女子の美徳でもありますが、同時に欠点でもある。だからこそ、そんな彼女達を束ねる隊長には威厳というものが必要不可欠なんです」
アンチョビ「威厳…」
ひな「…あの頃からは信じられないことですが、この一年でアンツィオ戦車隊は大きく変化しました」
ひな「39人の新入生を迎えればもう、9輌の戦車を運用できる立派な戦車隊です」
ひな「資金だって、あと少しで新戦車だって導入できるくらいにまで貯まりました」
ひな「しかも私達には他校にはない、自力で軍資を稼ぎ出せるという強みまである」
ひな「私が入ってきたころの、ドゥーチェがオンボロ屋台で一人でパスタを茹でていたころとは違う」
ひな「アンツィオ戦車隊は、十分に魅力的な部隊になったんです…そう、乗っ取るには十分過ぎるくらいに」
アンチョビ「……」
ひな「ですから! イメチェンが必要なんですよ、ドゥーチェ」
ひな「私とペパロニは、ドゥーチェのことが大好きです。ドゥーチェの凄さも優しさも、全部全部知ってます」
ひな「でも、新入生たちはそうじゃない。だからドゥーチェは、変わらなければいけないんです」
ひな「大きくなったアンツィオ戦車隊を率いるにふさわしい、強くて大きな鋼のドゥーチェに!」
アンチョビ「強くて大きな鋼のドゥーチェ…!!」ゴクリ
ひな「私も、偉大なドゥーチェの側に控える鉄の副官に戻ります。そしてペパロニも、屋台の気のいい姐さんの顔だけじゃなく、戦車隊に相応しい顔を持たせます」
ペパロニ「えー、私も?」
ひな「…立ち振る舞いは私が教えます。小学生の頃から戦車道の世界に首までずっぽり浸かっていた、この私が」
ひな「これがアンツィオ戦車隊戦車担当副隊長としての、この私の最初の大仕事。そしてここまで連れてきてくれたドゥーチェへの最初の恩返し!」
アンチョビ「!!」
ひな「…やってくれますね? ドゥーチェ」
アンチョビ「ひな…ようし、お前の思いはよくわかった!」
アンチョビ「私だってチーム・ナックスに憧れた身だ! 完璧に演じてやるさ!!」
アンチョビ「大きくなったアンツィオ戦車隊を率いるにふさわしい、強くて大きな鋼のドゥーチェというやつをなァ!!」ビッシィ
195 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/06/03(日) 20:51:55.57 ID:JyO0DgQv0
<高校3年の4月・アンツィオ高校学園艦・戦車道科格納庫>
ひな「ひぐっ…ぅううううっ…うわああああああんっ!!!」ボロボロ
アンチョビ「あー…」
ひな「返してよ…私達のドゥーチェを返してよぅ…うああああああんっ!!」ギュウウ
アンチョビ「よしよーし、大丈夫だぞー。お前たちのドゥーチェはどこにも行かないぞー」ナデナデ
ペパロニ「やー、姐さん…っと、いけね。ドゥーチェだドゥーチェ…ドゥーチェ、演技上手いっすねぇ? 超意外っしたよ」
アンチョビ「フフン、こう見えて演劇とか結構興味あったからな! 実は割と自信あったぞ」
アンチョビ「戦車道始めてなかったら、大学なんかで演劇研究会に入るつもり…っ、いだだだだっ! 泣くのはいいけど装填手パワーで絞めるなひなぁ!!」ジタバタジタバタ
ひな「ひっく…ひっく…ドゥーチェは一生戦車道するんだもん…演劇部なんかにあげないもん…!!」ギチギチミシミシ
ペパロニ「あー、アレっすね。姐さ、ドゥーチェ戦車女子をダメにする電波とか出してません?」
アンチョビ「おいなんだ? 今度は人を怪人扱いか? まあ、言いたいことはわかるけど」
ひな「ぅう…違う…違うもん…ダメじゃないもん…ダメになんてなってないもん…」グスングスン
アンチョビ「よしよし…しっかし、そんなに怖かったか? こう、ひなの言う隊長イメージに私なりの鋼のドゥーチェ分を加えて演じてみたんだけど…」
アンチョビ「まさか言いだしっぺのひながここまでダメージ食うとはなぁ」ナデナデ
ペパロニ「あー、怖いッつーかなんつーか…嫌、ッスかね?」
アンチョビ「嫌?」
ペパロニ「去年の決勝んとき、姐さんブチ切れたじゃないっすか。あんときと似た感じっすね」
アンチョビ「ああ、あれかぁ…あれと同じかぁ。そういえばあの時もひなはこんな感じになってたなぁ」
アンチョビ「じゃあアレか? ペパロニも嫌か? 勝利第一の西住風アイアン・ドゥーチェは?」
ペパロニ(あ、やっぱり西住さん意識してたんすね姐さん)
ペパロニ「あんまし見たくないっすねぇ。必要ならしょうがないっすけど」
ペパロニ「でもぶっちゃけ、あんなん見るくらいなら調子こいた1年坊を片っ端から焼き入れて回る方がずっとマシっすね」
ひな「ぐすっ…私もやる…さっきまで新入生だったものを辺り一面に転がしてやる…!」ギラリ
アンチョビ「なっ、ダメだダメだダメだ!! そんなこと絶対にダメだ2人とも!! そんなんやっちゃあ2年前に逆戻りだぞ!!」
ペパロニ「えー、でも戦車道チームならちょっとくらいそういうのもアリなんじゃないすか? それこそ黒森峰辺りじゃ…」
アンチョビ「っ…」
(筋肉モリモリマッチョマンの逸見エリカとさっきまで新入生だったものが辺り一面に転がるイメージ)
アンチョビ「いーや、ナシだナシ! 例え黒森峰がそうだとしてもアンツィオじゃそんなの絶対に許さん!」
アンチョビ「大体黒森峰と同じことやったってうちが黒森峰に勝てるわけないだろ!?」
アンチョビ「むしろ黒森峰で逸見…逸見サンがその筋肉と剛腕で新入生達を大虐殺しているならうちは逆をやらねばならん!!」
アンチョビ「黒森峰が力と恐怖で支配するのなら、うちは…うちは、なんだろう?」
ペパロニ「いや、私に聞かないで下さいよ。話してんの姐さんじゃないっすか」
アンチョビ「うーん…上手くは言えないけど、アレだ。すごーい!とたのしー!で支配しよう!」
アンチョビ「いや、支配ってのも違うな。何だろう? 何て言えばいいんだろうな? むむむ…」
ペパロニ「姐さん…姐さんも戦車女子ダメにする電波にやられてません?」
アンチョビ「やられてない! まあ、とにかくアンツィオはそんな感じで行きたい! それがアンツィオの戦車道だ!」
196 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/06/03(日) 20:53:27.92 ID:JyO0DgQv0
ひな「…それで、具体的には何をするんです? ドゥーチェ」
アンチョビ「お、復活したなカルパッチョ」
ひな「ひなです。さっきまでの私は忘れてください。それで、いったい何をされるつもりですか?」
アンチョビ「ふっふっふっふ…聞いて驚け! 在校生VS新入生、2対5の模擬戦だ!!」
ひな「2対5の模擬戦!?」
ペパロニ「正気っすか姐さん!?」
アンチョビ「ああ、正気だペパロニ! これで勝ったら新入生たちも絶対、私達のことを凄いと思うだろ? 私達のことを認めるだろう?」
ひな「いえ、それは認めるでしょうけど…」
ペパロニ「勝てるんスかドゥーチェ。大見得切って負けたら超かっこ悪いっすよ?」
アンチョビ「西住は中学ん時、こっちの5輌の包囲をほぼ単騎で突破したぞ? それにペパロニ、お前ケンカなら1対5で勝てるって言ってたじゃないか」
ペパロニ「いや、そりゃ素手なら5人でも10人でも辺り一面に転がしてやりますけど、ねぇ?」
ひな「…何か作戦がおありなんですね? ドゥーチェ」
アンチョビ「作戦、というよりは策略だな」ニヤリ
アンチョビ「まず一つ、この新歓模擬戦は豆戦車のみを使おうと思う。ひな、お前リトルやシニアで、豆戦車どれだけ乗った?」
ひな「それは…」
アンチョビ「ほとんどないだろう? うちの新入生達もきっとそうだと思う。豆戦車なんて言うと低く見られがちだけど、あれはあれで特性ってヤツはある」
アンチョビ「操縦と機銃とで戦う豆戦車の戦い。そこに慣れない最初の最初だからこそ、この模擬戦は私達に有利なはずだ」
アンチョビ「何せ操縦なら、私達は強豪校にだって負けないくらいの訓練を積んできているからな。そうだろう!?」
ひな「…確かに。『校外実習』の名目で1日中戦車を走らせられた私達は、その点では通常の授業も受けなければいけない強豪校よりも恵まれていますね」
ペパロニ「まあ途中でパスタ茹でたりもしてたッスけどね」
アンチョビ「次に一つ、今年の新入生は結構バラバラなところからうちに入学してくる点」
アンチョビ「リトルやシニアの経験者もそこそこまあまあいるけれど、一つのチームからまとめての入隊は、それこそ豊田シニアの奴らくらいだ」
アンチョビ「つまり、大半の車両は互いの癖もわからないまま模擬戦に挑むことになる。まして車間の連携など望むべくもない」
ひな「対するこちらの2輌は阿吽の連携で戦いに臨める…!!」
アンチョビ「その通り! 2対5の戦いと言いつつその実この模擬戦、2対1を5回繰り返すだけというわけだ!」
ペパロニ「なるほど! だったら楽勝ッスね姐さん!」
アンチョビ「2対1×5の状況に持っていくには地形の把握が最も重要となる…だがその点ここアンツィオ演習場は我々の庭も同然! これもまた一つ!!」
アンチョビ「ちなみにこちらのチーム分けはひなとペパロニで1輌、私の1輌には豊田のジョルノを機銃手につけようと思う」
アンチョビ「人が足りないから顔見知りの後輩を引き入れる。何の不自然もない行為だが…これで豊田シニアの連携も阻害できる」
197 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/06/03(日) 20:54:09.92 ID:JyO0DgQv0
アンチョビ「以上、3つの策略を以てこの新歓模擬戦は我々の勝利で終わるというわけだ! どうだ? すごいだろう!?」
ひな「すごいですドゥーチェ!」
ペパロニ「姐さんちゃんと作戦考えられたんすね!」
アンチョビ「当然だ! 私だって戦車道がやりたくて、こうして頑張ってきたんだからな! 念願の、我が校初の模擬戦だ! 作戦を立てるこっちだってこう、気合がな!!」ビシィ
アンチョビ「…まあ、半分くらいだまし討ちみたいな感じになっちゃうのは申し訳ないから、最後にはネタばらししようと思うけどな」
ひな「ええっ!? そんなことしたら…」
アンチョビ「いや、そうした方がいいんだ。この模擬戦の目的は私達が勝つことじゃない」
アンチョビ「あくまで私達が、アンツィオ戦車道が弱くないということをわかってもらうこと」
アンチョビ「一緒にやっていけばもっともっと強くなっていけるってことをわかってもらうことが目的なんだ」
アンチョビ「そしてもっと言えば、作戦次第で戦力差なんていくらでも覆せるってこと、つまりアンツィオの戦車道を知ってもらうことが目的なんだ」
アンチョビ「だから、ちゃんとネタばらしはしなきゃダメだ。敵じゃなくて仲間なんだからさ」
ひな「…ですが、それをしてしまえば模擬戦での勝利の意味が半減してしまうのでは?」
アンチョビ「まあな。だから、半減する前に次の作戦を実行するんだ」
ひな「次の作戦? それはいったい」
アンチョビ「決まってるだろう?」ニカッ
アンチョビ「みんなで美味い飯を作って食べる! それが私達の戦車道だ!」
198 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/06/03(日) 20:55:06.13 ID:JyO0DgQv0
<高校3年の4月・アンツィオ高校学園艦・戦車道演習場>
アンチョビ「こぉらーーーーーーーーーっ!!」
アンチョビ「誰だ機銃弾出しっぱにしたヤツはぁ! こんなとこ置いてちゃ危ないだろぉっ!!」
アンチョビ「脱いだ服はちゃんと畳めぇ!! いやその前に戦車乗るときは脱いじゃダメだ!! 怪我しちゃうだろぉ!!」
アンチョビ「お前ら約束の時間だぞーーーっ!! 時間になったらちゃんと集まれぇーーーーーーっ!」
アンチョビ「今はドゥーチェが大事な話してるんだぞォ!? 時間だからって勝手に解散するなぁーーーーっ!! いや時間守れとは言ったけどぉ!!」
アンチョビ「好き放題勝手に走り回るなーーーーっ!! 孤立したらすぐやられるって模擬戦で教えただろーーーーーっ!!?」
アンチョビ「あーーーーーもーーーーー! ちーーーーがーーーーうーーーーだーーーーろーーーーーっ!!!」
ペパロニ「やー…今日も頑張ってんなぁ、姐さん」
ひな「そうねー。今日も今日とて、みんなのドゥーチェとして頑張ってるわねぇ」
ペパロニ「結局、全部要らなかったな。演技の練習とか、アイアンドゥーチェとか」
ひな「あら、模擬戦は大成功だったじゃない? ドゥーチェも『これがアンツィオ戦車道だぁーーーーっ!!』なんて大はしゃぎしちゃって」クスクス
ペパロニ「でもアレだろう? 私が言うのもなんだけど、あんなノリで大丈夫なのか? 戦車道って」
ひな「大丈夫よ。みんな、あんなノリでも戦車を動かすのは好きな子ばっかりだから」
ひな「走り込みなんかの地味な基礎練も、ジョルノがいい具合に皆を挑発してくれてるし」
ペパロニ「あー、アイツいいよなぁ。アマレット達、アイツにだけは負けたくねぇって躍起になって走り込んでるもんなぁ」
ペパロニ「あとアレだな。エッタとかリコとか、あの辺の幸薄そう組にも負けたくねぇって」
ひな「ふふ、あの子達もまだまだ伸びるわよ? 中学3年間のブランクがあるわけだしね」
ひな「料理の方はどうなのペパロニ?」
ペパロニ「とりあえず、アマレット、パネトーネ、ジェラートはイケるな。食うのが好きなら、作るのも大体覚えるのは早ぇ」
ペパロニ「他は全員、去年のお前並だ」
ひな「あら、パスタドーム?」
ペパロニ「ま、5月までには全員形にするけどな! せっかくドゥーチェが食う量の多い船舶科の学食当番取ってきてくれたんだ」
ペパロニ「これだけ人手が多くなって、屋台だけで養うのはもう無理だ。この仕事を逃すわけにはいかねーよ」
ひな「ええ、燃料も弾薬も、びっくりするくらいの早さで減ってくものね…やっぱり列島縦断合宿、無駄だったんじゃないかしら?」
ペパロニ「馬鹿言え。あれやったからこそ、こういうメンツが揃ったんだろうが」
ひな「ふふ、それもそうね」
199 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/06/03(日) 20:56:26.09 ID:JyO0DgQv0
ペパロニ「…ひな、お前さ。こうなることわかってただろ?」
ひな「ん?」
ペパロニ「うちらで顔見て声かけた奴らだ。姐さんの寝首をかこうなんてのはいないって、わかってたはずだろ?」
ペパロニ「そんなギラギラした、『真っ当な』戦車女子はうちになんてそもそも来ないだろ」
ひな「私は来たんだけど…まあ、豆戦車と自走砲しかないって知ってたら絶対来なかったでしょうね」
ペパロニ「お前、なんであんな、鉄のドゥーチェなんて言い出したんだ?」
ひな「そうねぇ…ホントはこの機会に、ドゥーチェを自分好みの隊長に仕立てて遊ぼうかなとか思ってたんだけど」
ひな「まさか、あんなにドゥーチェが演技上手だったなんて…完全に油断してました」
ペパロニ「それで泣くとか、バカじゃねーの?」
ひな「はい、馬鹿でした」
ひな「…でもね、ペパロニ。普通はこうじゃいけないのよ? あんな風に、隊長がみんなにがなってるのに」
ひな「誰も何も堪えてない。そんなんじゃ戦車隊は、やっていけないの」
ひな「少なくとも、普通の戦車道ならね。普通の戦車道なら、それこそ力と恐怖と規律とで、まとめ上げなきゃやっていけない」
ひな「少なくとも私は、そういう戦車道の中で生きてきた」
ペパロニ「……」
ひな「…不安、だったのかな? このままでいいのかなって。このままで大丈夫なのかなって」
ひな「せっかくここまでドゥーチェが育んできたアンツィオ戦車道が、バラバラのメチャクチャになってしまう」
ひな「そんなのは絶対嫌だったし、そうなったときのドゥーチェを見るのはもっと嫌」
ひな「だったら、私も何かしなくちゃなって。私には何ができるかなって」
ひな「でも、そんな心配要らなかったみたいね…」
ペパロニ「昔お前の言った通りだったろ。ドゥーチェはすごいんだ」
ひな「ええ、本当…何だかんだでドゥーチェはちゃんと考えてて」
ひな「1年生の子達も、出自も考えもバラバラでも、ちゃんとみんなで戦車に乗れてる」
ひな「お昼や夕方には、パスタを茹でたり、屋台をやったり、ちゃんとやれてる」
ひな「ちゃんとみんなで、ドゥーチェの下でまとまれて…」
アンチョビ「だーーーかーーーらーーーーっ!!」
アンチョビ「おやつを減らさないと新戦車買えないんだって! うちはお金ないんだって!!」
1年生A「えー、でもペパロニ姐さん言ってましたよー? この調子なら新戦車買えるって」
1年生B「そーそー、今年の冬にはバッチリ金貯まるってさー!!」
アンチョビ「冬じゃ間に合わないだろーーーーーっ!?」
1年生C「間に合わないって何に?」
1年生D「何にでしょう?」
アンチョビ「何にでしょうって、夏大会に決まってるだろーーーーっ!!?」
1年生E「別に夏大会に間に合わなくったっていいんじゃねーの?」
アンチョビ「ぬなぁ!?」
ペパロニ「まとまれて?」
ひな「……」スッ
200 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/06/03(日) 20:57:57.99 ID:JyO0DgQv0
パンパン!
ひな「はいみんな聞いてー! ドゥーチェはねー! 3年生なのよー!」
ひな「今年の夏大会で引退しちゃうのー!」
1年生E「えっ!? ドゥーチェ3年生だったのかよ!?」
1年生G「僕らの2年上なんですから3年生に決まってるでしょう」
1年生I「ひな姐さん達と同い年かと思ってた」
ひな「みんなー! ドゥーチェだけ新戦車に乗れないの、かわいそうでしょうー!?」
1年生A「そりゃかわいそうだ」
1年生C「かわいそうっす!」
ひな「だったらみんなー! おやつ我慢できるよねー!?」
1年生B「じゃあしょうがねーか」
1年生D「そうですねー」
1年生H「ひな姐さんが言うならしゃーねーかー」
ひな「ありがとうみんなー! ほら、ドゥーチェもありがとうしましょうねー?」
アンチョビ「ああ、ありがとう皆…ってオイ! 私にまでそのノリでしゃべりかけるのはやめろ!」
アンチョビ「お前たちもここは幼稚園じゃないんだぞー!? 栄光のアンツィオ戦車隊なんだぞー!? 少しは恥ずかしいと思えーーー!!」
カンカンカン!!
ペパロニ「オメーら! いつまでもグダグダやってんじゃねーぞ飯の時間だーっ!!」
ペパロニ「さっさと支度しろー! 今日もビシビシ行くからなァーーーーっ!!」
アンチョビ「あっ、おいペパロニ! 私の話はまだ…」
1年生A「ペパロニ姐さーん、たまには学食行きましょうよー!」
1年生B「私らもうくたくたですよー!」
1年生C「せっかくアンツィオなんだからー」
ペパロニ「ダメだ! てめーの飯も作れねー分際で学食なんざ10年早ぇ!!」
ペパロニ「ここはアンツィオ高校だ! 料理で食ってく術を学ぶ場所だ!!」
ペパロニ「学食よりも美味い飯を作るくらいの気合を持てーーーっ!!」
1年生H「そんなん無理だぜペパロニ姐さーん!」
1年生E「マルガリータが食いたーい!」
ペパロニ「ピッツァなんざ100年早ぇ! いいからまずはパスタを覚えろ!!」
アンチョビ「いやいやちょっと待てペパロニ! だったら今日はピッツァにしよう!」
ペパロニ「いやちょっとダメっすよ姐さん、こういうのは順番に…」
アンチョビ「せっかくピッツァのリクエストがあったんだ。だったらこの機に覚えさせた方がいいだろ?」
アンチョビ「5月には学食やんなきゃなんないんだからな!」
ペパロニ「えー、私にも段取りがあるんスけど」
アンチョビ「そんなの気にするな! こういう時こそノリと勢い、そうだろう!?」
201 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/06/03(日) 20:58:41.98 ID:JyO0DgQv0
アンチョビ「いいかよく聞け諸君! パスタは一応卒業だ! 今日から炊事訓練はピッツァをやるぞ!!」バッ
1年生H「ヒャッホーイ!」
1年生E「さっすがドゥーチェ! 話がわかるゥ!!」
ペパロニ「ちょっ、姐さんそんな勝手に!」
アンチョビ「その代わり! やるからには本気でやるぞ! 学食なんかよりずっと美味いピッツァを焼くんだ!!」
アンチョビ「いいかお前らー! 今夜は夜通しピッツァ焼くぞぉ! ひたすら焼いて食って焼いて食ってを繰り返す!!」
アンチョビ「おやつを減らす代わりに食事はきっちりガッツリ採る!!」
アンチョビ「今夜は夜通し、ドゥーチェ・アンチョビのピッツァ祭りだーーーーっ!!」
オオーッ!!
アンチョビ「ドゥーチェ!! ドゥーチェ!! ドゥーチェ!! ドゥーチェ!!」ウデブンブン
1年生達「「「「ドゥーチェ!! ドゥーチェ!! ドゥーチェ!! ドゥーチェ!!」」」」
アンチョビ「ドゥーチェ!! ドゥーチェ!! …ほらペパロニもーっ!!」グイッ
ペパロニ「姐さん…ったく、しょうがないなぁ…ドゥーチェ!! ドゥーチェ!!」
アンツィオ戦車隊「「「「「ドゥーチェ!! ドゥーチェ!! ドゥーチェ!! ドゥーチェ!!」」」」」
ひな(撃てば必中、守りは堅く、進む姿に乱れなし。鉄の掟、鋼の心)
ひな(西住流に限らず、戦車道とは力と恐怖と規律で形作られるもの)
ひな(程度の差はあるかもだけど、それが普通の戦車道…)
ひな(でももしも…)
ひな(もしも『好き』と『楽しい』だけで、それでまとまれる戦車道があるならば)
ひな(それはきっと、全く新しい戦車道の世界…)
ひな(ねぇ、ペパロニ。ねぇ、ドゥーチェ)
ひな(戦車道に詳しくない二人にはちょっとわからないかもしれないけれど)
ひな(実は私達、すごいことしようとしてるのよ?)
ひな(変で、あり得なくて、とても変で)
ひな(それでも…)
アンチョビ「カルパッチョー! お前もピッツァは苦手だろー!? いつまでも幼稚園のお姉さんモードで眺めてるんじゃないぞーーーっ!!」
ひな「はーい、今行きまーす」
ひな(それでも、あなたなら。あなたとなら、きっと…)
202 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/06/03(日) 20:59:49.43 ID:JyO0DgQv0
――――その半月後
――――そんな私の馬鹿げた幻想は
――――木端微塵に粉砕されることになるのでした
絹代「吶ッ喊ッ!!」
203 :
◆Bkxeh6JCZU
[saga]:2018/06/03(日) 21:02:12.43 ID:JyO0DgQv0
今回は以上です。ありがとうございました。
204 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/03(日) 22:18:39.99 ID:/SU1DYFs0
乙
なんか将来的にギャングスタになりそうな奴が混じってるぞ新入生w
あとチョビの中でのエリカに対するイメージが愉快にヤバい方向に走ってるじゃねーかwww
205 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/04(月) 10:04:09.02 ID:1W8zvONU0
乙
いつも面白かったけど今回の更新が一番好きだな
最初のもそうだけど、ガチ泣きひなちゃんかわいい
206 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/03(火) 12:45:12.09 ID:mp3XCKs20
乙
もう1か月だな
>>1
大丈夫かな
207 :
◆Bkxeh6JCZU
[sage]:2018/07/04(水) 22:13:38.82 ID:snF25DMT0
お待たせして申し訳ない。リアル多忙につきまともに創作できてない状態です。
秋頃に戻れたらいいなと。
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/02(木) 07:02:05.99 ID:KknNMJYK0
待つよ、いつまでも!
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/10/15(月) 09:14:46.73 ID:gvBRgTba0
そろそろ秋だな
210 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/19(月) 12:17:20.15 ID:rhe++jGF0
11月なってる
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/09(水) 17:55:27.44 ID:k63njbWq0
秋とは2019年のかもしれないな
212 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/01(日) 16:07:06.37 ID:WFvlJUb80
2021年の秋に期待
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