【SW】シス「わらわの弟子にならんか?」ジェダイ「断る!」【オリキャラ】

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:17:01.32 ID:0XOCVNPz0

 寒風吹きすさぶ夜の荒野の只中、キャンピング・トレーラー付きのスピーダーが一台。
今、そのトレーラーから一人の青年が姿を現す。

シンノ「うう、寒っ……」

 青年――シンノ・カノスは、ぶるりと震えてケープをかき合わせる。
その裏に隠したライトセーバーが、腰のブラスターとぶつかって音を立てた。

R3C3『ピポポ』

 シンノに続いて、赤いアストロメク・ドロイド――R3C3が姿を現した。

シンノ「おお、R3」

R3C3『ポポピーポ』

シンノ「ハハハ、何だ?寝ぼけてるのか?ドロイドのくせに……おっ、見ろ」

 シンノは地平線を指し示す。

シンノ「……夜明けだ……」

 ――その指先では紺碧の空が白み、眩い光がちらりと顔を出していた。
やがて姿を現す太陽が、荒野に暖かな光を投げかける……


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1522253821
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:17:52.30 ID:0XOCVNPz0


 遠い昔、遥か彼方の銀河系で……

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:18:52.28 ID:0XOCVNPz0


   エピソード3.4 蘇る希望


 ダークサイドの勝利!シスの暗黒卿のもと
万雷の拍手の中で誕生した銀河帝国は、恐怖
政治によってその威信を全宇宙へ轟かせつつ
あった。未だクローン戦争の残火燻る辺境の
QC星系も、古代文明ヤマタイトの末裔ミコ
ア姫を大執政官に奉じた帝国軍によって一応
の安定をみたのである。


 一方ジェダイ・ナイトの生き残りシンノ・
カノスは、帝国軍の追手から逃れQC星系に
辿り着いていた。彼は惑星キイに古代ジェダ
イ・テンプルの遺跡が存在すると知り、付近
の地理に詳しい探検家たちを雇ってそこを訪
れたのだが……

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:19:40.26 ID:0XOCVNPz0

シンノ「……こいつはひどい」

 シンノは遺跡の一室を見渡した。
引き出しという引き出しは乱雑に開け放たれ、ドアはことごとく力尽くでこじ開けられている。
爆破や焚火の跡まで残されており、経年劣化を差し引いてもひどい有様であった。

シンノ「ここはお前らしか知らないんじゃなかったのか?だから300払ったんだぞ」

探検家1「グルルルル……どうやら俺たちの他にも墓荒らしがいたらしいな」

探検家2『じぇだいドモハ禁欲的ダカラナ。ソノ遺跡ニモ金目ノ物ガ無インデ、人気ハ無イハズナンダガ』

探検家3「……」

 探検家はリーダー格のトランドーシャン、背の高いドロイド、下働きらしい物静かな少女の三人だった。

シンノ「このぶんではジェダイの資料も、遺産も、ろくに残ってはいまい……とんだ無駄足だ、これでもフルプライスか?」

探検家1「まあ待ちな、兄ちゃん。この前来た時に面白そうな場所を見つけたんだ。あそこは手つかずのはずよ」

シンノ「面白そうな場所だと?」

探検家1「案内してやる、ついてきな」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:20:29.55 ID:0XOCVNPz0

 辿り着いた部屋は円卓と、それを囲む形で椅子が並ぶ広間である。
古びた天窓から僅かに日の光が差し込み、損壊も他の部屋より少なく、厳かな雰囲気がそのままに残されている。
 
シンノ(古代のジェダイ・マスターたちがシスと戦うための作戦会議をした部屋だろうか……)

探検家1「グルルルル……この椅子だったか?いや、こっちか……」

探検家2『コノ椅子ダ』

 ドロイドが椅子の一つをぐいと押すと、据え置きかと思われた椅子はその力のままにずず、と滑る。
やがて四人の探検者の前に、地下へ通じる階段の入口が姿を現したのである。

シンノ「これは……!?」

探検家1「おっと、そこだったか……さあいくぜ」

探検家2『コノ下ダ』

探検家3「……」

シンノ(古のジェダイたちが遺した隠し通路……!)

 ずかずかと階段を下りる探検家たちに続いて、シンノは壁に手を触れながら、一歩ずつ暗闇の中に足を踏み出していった。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:21:00.19 ID:0XOCVNPz0

「グルル、到着だ」

「ここがそうなのか?暗くて何も……いてっ!」

『オイ、気ヲツケロ!』

「マオ!明かりを出せ!」

 丸っきり暗闇だった地下室がやにわ明るくなり、シンノは思わず目を覆った。
マオと呼ばれた少女がライトを灯したのだ。

シンノ「それで……面白そうな場所というのは、ここか?」

 慣れない目であたりを見回すと、そこは先ほどの広間よりずっと狭い空間である。
ランプの載った簡素な机が一つ置いてあるだけの、閑散とした部屋。
しかし異質なのは、その壁や床、天井までもが、滑らかな黒い石のような素材で出来ていることだった。

シンノ「変な場所だな……しかし、何かあるようには見えないが。ちょっとした隠し部屋ってだけじゃないのか」

シンノ(……しかし、ここはどうも居心地が悪いな……寒気もするような)

探検家1「まあ待て……この壁を見てみろ」

 探検家が指し示す壁には、胸くらいの高さに何かしらの文章が白く刻まれていた。
その文字はシンノにとっては始めて見るものであった。古代文字だろうか?

探検家1「グルル……この前、この文章を解読したんだが……どうやらこの向こうに、ジェダイの書庫があるらしい……」

探検家2『音響探索装置モ、コノ向コウニ広イ空間ガアルト示シテイル。じぇだいノ遺産ガ山ホドアルコトダロウヨ』

探検家1「だがこの壁は押しても引いても開かなくてな……どうだ?何か開ける方法に心当たりはないか?」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:21:53.02 ID:0XOCVNPz0

シンノ「この奥に……?」

 シンノが文字の刻まれた壁に近寄り、そっと手を触れる。
――指が壁をすり抜けた。

シンノ「うっ!?」

探検家1「これは!?」

 次の瞬間壁は消え、代わりに広大な暗闇の空間が口を開けている。
その奥からすえた匂いのする空気が流れ込んだとき、シンノの体を凄まじい悪寒が駆け抜けた。

シンノ(……な、何だ、この嫌な気配は……)

シンノ(これは……ダークサイドのフォース……!?)


探検家1「――おっと。もう十分だぜ。そこで止まれ、ジェダイの兄ちゃん」ジャキッ

探検家2『ゴ苦労様ダゼ』ジャキッ

探検家3「……」ジャキッ


 シンノはぴたりと動きを止めた。
探検家の言葉とともに、フォースを介して殺気を感じたのだ。
そして実際、三人の探検家のブラスター・ピストルの銃口が背後から彼を狙っていた。

シンノ「……どうして俺がジェダイだと?」

探検家1「グルル、前にも言っただろう。ジェダイの遺跡は『しけてる』」

探検家2『全クソノ通リデナ、ココデ見ツケタモンヲ全部売リサバイテモ雀ノ涙ダッタヨ」

探検家1「ああ。だからわざわざ探すような奴なんて限られる。俺たちのようなもの好きか、あるいは……ジェダイ」

シンノ「……上を荒らしたのは、お前らか」

 シンノの拳が固く握りしめられる。

探検家1「おっと、言っておくが……俺たちに何かあれば、町にいる仲間がお前のことを帝国軍に通報する手はずになっている。おかしなことを考えるなよ」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:22:37.33 ID:0XOCVNPz0

探検家2『サア、壁ニ手ヲツケ』

 シンノが指示に従うと、ドロイドの探検家はすかさずブラスターとライトセーバーを奪って机の上に放った。

シンノ「俺を誘い込んだのは、この壁を開けさせるためだな……ジェダイならここを開けられると知っていて……」

探検家1「あの壁の文字が教えてくれた……さて、お前はここでおとなしくしていな」

 トランドーシャンの探検家は少女を連れて暗闇の中に姿を消す。
しかしドロイドは机の上のランプに火を入れ、ブラスターでシンノを牽制し続ける。

探検家2『サテ、二人キリダナ。言ウマデモナイダロウガ、じぇだいノ催眠術ハ俺ニハ通用センゾ」

シンノ「……そのようだな」

探検家2『ソレト、すぴーだーノトコロニ待タセテアルオ前ノどろいど、俺ガモラウゼ。イイダロ?』

シンノ「……それより、この奥はシスの遺跡じゃないのか」

 シンノは喋りながらフォースに働きかける。
机の上のブラスターが僅かに震えた。

探検家2『壁ノ文章ニヨルト、ソウラシイナ。ヨクワカッタジャナイカ』

シンノ「とすると……貴様らの本命は、シスの財宝か」

 ブラスターがゆっくりと、ごくゆっくりと回転する。
やがてその銃口はドロイドの探検家のほうを指向していく。

探検家2『ソウサ。〈しす〉ハオ前ラト違ッテ太ッ腹ナンデナ』
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:23:24.90 ID:0XOCVNPz0

 そのとき、暗闇の方からトランドーシャンの叫び声が響いた。
続けてブラスターの発砲音、何かが激突するような音。

探検家2『何ダ!?』

シンノ「……」クンッ

 仰天したドロイドが僅かに銃の照準を逸らした瞬間、シンノはフォースで机の上のブラスターの引き金を引いた。

探検家2『グアッ!』

 光弾は過たずドロイドの脇腹を貫き、床に突き倒す。
その手からブラスターが零れ落ちて床に転がる。

探検家2『ウアッ、アッ』

 ドロイドはそれに手を伸ばすが、ブラスターはひとりでに動いてその手をすり抜けた。
やがて空中へ浮き上がると、振り返ったシンノの手に収まる。

シンノ「……さて、言うまでもないだろうが」ジャキッ

探検家2『待テ!じぇだいガ丸腰ノ相手ヲ殺スノカ!?』

シンノ「ジェダイのルールはドロイドには適用されない」バシュッ
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:23:56.79 ID:0XOCVNPz0

 武器を取り戻したシンノは壁の向こう、暗闇の中へ飛び込んだ。
むせかえるようなダークサイドのフォースの流れが彼を導いた。
やがて彼は灯り――少女の持っていたライトが地面に転がっているのを見つけ、そこへ駆け寄る。
すると近くの床に真新しい死体が二つ転がっているのが目に入った。

シンノ「これは……いったい誰が?」

 ブラスターを握ったトランドーシャンの死体と、少女の死体。
シンノはおびただしい血の臭いに思わず顔をしかめつつ、ライトを拾ってあたりを見回した。
先ほどの会議室と同じくらいの広さの、石造りの部屋である。
部屋の奥に簡素な祭壇があり、その上には何か箱状のものが置かれている。

シンノ(あれは……棺、か?)

 シンノは慎重に周囲の様子を伺いながら前進する。
……進路の左右に石像が建てられている。
人の背丈の三倍ほどの、槍状の武器を構えた半裸の男の像。
それが棺を守るかのように二体並んでいるのだ。

シンノ(……!)

 その武器の先端から血が滴っていることに気づいた瞬間、石像が鈍い軋みを上げながら動き出した!

シンノ「こいつらがッ!?」

石像1「グゴゴゴゴ」

石像2「グギギギギ」

 シンノは石像がX字に振り下ろした武器をバク転で回避し、ライトセーバーを抜いた。
青色の光刃が闇の中に煌めく。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:24:31.24 ID:0XOCVNPz0

石像1「グゴゴッ」

シンノ「フンッ!ハアッ!」

 襲い来る石像に飛びかかりざま二太刀を浴びせ、両腕を切断。
床に落ちた腕と武器が振動と粉塵を巻き起こし、無力化された石像がその中に膝をつく。

石像2「グギギギギ」

シンノ「はああ……!ぜあっ!」

石像1「グゴッ」フワッ ビュンッ

 シンノの気合とともに一体目の石像が浮き上がり、迫る二体目に直撃。
巻き起こった更なる粉塵の中にシンノは飛び込んでいく。

 数秒後、石像の戦士たちはばらばらに解体されて沈黙していた。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:25:14.13 ID:0XOCVNPz0

シンノ「古代のシスの……防衛装置か」

 ――シンノがそう呟いて残身を解いたとき。

?『ふああ……なかなかいい素質を持っているようじゃな、若きジェダイよ』

シンノ「!?」

 広間に響く誰の物とも知れぬ声を耳にして、シンノは油断なくライトセーバーを構えた。

シンノ(ダークサイドの力を……おそろしく近くに感じる……!)

?『そなたが妾の復活に立ち会ったのも、フォースの意志……そなたは妾の〈器〉となるためここに導かれたのじゃ……』

シンノ「器だと……何を言っている。喋ってばかりいないで、姿を見せたらどうだ……!」

?『カカカカカ!そう焦るでない、言われずとも見せてやろうぞ!』

 その言葉とともに、祭壇の上の棺の蓋が恐ろしい勢いで吹き飛んだ。
その中から煙のような暗黒のオーラが噴出し巨大な女性の輪郭を形作るのを、シンノは呆然と眺めた。

シンノ「な……お、お前は……」

 オーラの塊がシンノにぐいと顔を近づけ、言葉を発する。

?『妾は〈ダース・ネーア〉――正統の、シスの暗黒卿じゃ!』
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:26:00.71 ID:0XOCVNPz0

シンノ「――そ、そんなはずはない。シスはこの世に二人のはず……皇帝と、ダース・ヴェイダー……」

 ネーアはシンノを無視して、横の壁に目をやる。
そこにはシリンダーを組み合わせたような装置――液体金属の滴下を利用した、半永久的に動く時計が埋め込まれていた。

ネーア『むう、500年も寝ていたようじゃの……何?ダース・ヴェイダー?そなたの言っておるのは、妾の弟子のその弟子の、ずーっと先の弟子じゃろうて』

シンノ「ごひゃ……じゃあお前は、過去のシスの……幻影?」

ネーア『チッチッチ……違うんじゃな、これが』

 オーラの塊は挑発的に人差し指を振った。

ネーア『妾はたしかに弟子にすべてを譲り、眠いに就いた。そのとき肉体は滅びた……じゃがそれは一時的なものに過ぎん』

ネーア『シスの教えが断絶したとき、妾はフォースの導きによって蘇ることになっておるのじゃ。いわば妾はシスの断絶を防ぐ安全装置、生きた〈シスの種子〉よ!』

シンノ「……今はシスの教えは途切れていないはずだが?」

ネーア『うむ、そうらしいのう。……あれ?』

シンノ「……」

ネーア『……えーと』
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:26:46.41 ID:0XOCVNPz0

シンノ「とりあえず、シスは滅ぼす。その棺を壊せばいいのか?」

ネーア『わーっ!待て!待つのじゃ!』

 ネーアは泡を食ったように手をぶんぶん動かした。

ネーア『シ、シスが健在にも関わらず妾が目覚めるということは、フォースに相当の乱れが生じているはず……』

ネーア『そうじゃ!いかに強力と言えどシスはたった二人……皇帝とダース・ヴェイダー、じゃったか?正体まで判っておるのに、ジェダイはなぜ放っておく!?』

シンノ「……!」

 シンノが言葉に詰まると、オーラの塊はそれを見透かすように顔を近づけた。

ネーア『……なるほどな』

シンノ「――!何を!」

 シンノはそちらへライトセーバーを振りぬくが、ネーアはそれをふわりとかわした。

シンノ(今、頭の中を覗かれた……!)

ネーア『クローン戦争……クローン・トルーパー……オーダー66……銀河帝国。ジェダイが滅びるとはのう』

 5世紀前のシスは狂喜乱舞するかと思いきや、顎に手を当てて考え込んでいるようだった。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:27:24.96 ID:0XOCVNPz0

ネーア『……マスター・ヨーダも死んだのか?』

シンノ「……ああ、多分……笑わないのか?シスにとっては、この上なく嬉しいニュースだろう」

ネーア『まあ、そうじゃな。しかし妾以外のシスが大きな顔をしているのも気に入らん……』

シンノ「仲間割れでもするつもりか」

ネーア『弟子が師匠を殺し、師匠が弟子を殺す……それがシスじゃ』

ネーア『妾が現役のシスに成り代わっても、最終的に二人になればそれでよい――さて、お喋りはもう十分ぞよ』

シンノ「……なんだと。何をしようって言うんだ」

 ネーアはふわりと空中へ浮かび上がった。
その目があるべきところがきらりと輝く。

ネーア『なに、そなたには予定通り、妾の器となってもらうだけ……さあ、妾を受け入れよ!カーッ!』

 ネーアの体が渦を巻き、圧縮し――電撃のごとくシンノを襲う。

シンノ「な――お、お断りだ!」

 シンノは咄嗟に横へ飛び退いた。
暗黒のオーラがシンノの横を通り過ぎ――どん、という音が響いた。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:29:10.28 ID:0XOCVNPz0

 シンノはぱっと背後を振り返り、その行方を捜す。
……「それらしきもの」が、むくりと起き上がった。

少女「……カカ、カカカカカ!さあ、これで妾は完全復活――」

 先ほど石像に殺された少女の体が。

少女「って、なんじゃこりゃあ!?」

シンノ「……お前……ダース・ネーアか!?」

 信じがたいことに、このシスの暗黒卿の魂は死体に新たな命として宿ったようだった。
立ち上がってシンノに近づく仕草は生き生きとして、血に濡れた服の切れ目から覗くはずの傷は綺麗にふさがっていた。

ネーア「避けちゃダメじゃろ!?」

シンノ「避けるに決まってるだろう!」

ネーア「な、何てことじゃ、そうそう乗り移れるものではないというに……うわっ、しかもこの体フォースの加護カッスカッスぞよ……」

 ネーアはしばらく深刻な顔で黙りこんだ。
そしてシンノの表情が困惑から呆れに変わり始めたころ、意を決したように口を開く。

ネーア「……で、ではこの際……そなた!名はなんという?」

シンノ「え?……シンノ・カノスだが……」

ネーア「よし、シンノ・カノス――」


ネーア「そなた、妾の弟子にならんか?」


シンノ「……は?こ、断る!」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:30:11.57 ID:0XOCVNPz0


R3C3『ピポポ』

シンノ「ああ、R3……」

 遺跡の外、スピーダーとともに待機していたR3C3は、入口から姿を現した主人に近寄った。

ネーア「ほう、これはお前のドロイドか?」

R3C3『プウー……』

 しかしそれに続いて出てきた探検家の少女を見るやいなや後ずさった。
ドロイドなりに何かよからぬ気配を感じたのかもしれない。

シンノ「……そうだ」

ネーア「500年でドロイドの見た目も変わったものぞよ。眠りに就く前は蜘蛛の化け物みたいな奴ばかりじゃったが……」


R3C3『ピポポ ポポピーポ』

シンノ「……そうだR3。そいつは別人だ……シスの暗黒卿ダース・ネーアだ」

R3C3『ピアアアアア!プウウー』

シンノ「俺だってそう思った!ここに置いていけば探検家の通報で駆け付けた帝国軍に捕まって、皇帝に処刑されるだろうが……」

シンノ「そうなったら俺の居場所を通報してやるって言うんだ、こいつは……憎たらしいちんちくりんが!」

ネーア「妾くらいになれば、そなたのような未熟者のフォースを追跡するくらいわけはないぞよ。こんなちんちくりんの器でもな」

ネーア「ところでそなたはどうじゃ?星系越しでフォースを探れるか?ダース・シンノよ」

シンノ「ダースを付けるな、弟子にはならん」

ネーア「妾を殺すという手もあるな。妾は丸腰じゃが」

シンノ「もうわかった!早くスピーダーに乗れ、くそ!」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:31:01.52 ID:0XOCVNPz0

 スピーダーはキャンピングトレーラーを切り離し、ジェダイとシスとドロイドを乗せて走り出す。
東の地平線では真っ赤な太陽が――惑星キイは西向きに自転する――沈みつつあり、荒野は夕闇に包まれようとしている。
惑星唯一の宇宙港都市キイポートまでの道すがら、シンノはR3C3に遺跡での顛末を語った。

R3C3『ピポポ ポポピーポ』

シンノ「いや、あの手の連中がよく使うサバイバルガジェットにはバイタルサインを監視する機能もあるはずだ……探検家の仲間はあいつらが死んだことにすぐ気付く」

シンノ「通報を受けた帝国軍が到着するまで丸一日ってとこだろう、それまでにこの星から出なきゃあ」

ネーア「モグモグ、船の当てはあるのか?」

 ネーアはトレーラーから分捕ってきたチョコレート・バーを齧りながら尋ねた。

シンノ「俺の船がある。黙って乗ってろシスめ」

ネーア「そう邪険にするでない……モグモグ、それにしてもこれ、美味いのう」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:31:40.87 ID:0XOCVNPz0

 ――QC星系における帝国軍の本拠地「ダン・ザ・フロー」は惑星ヤマタイティアの衛星軌道上に存在した。
無軌道に拡張を繰り返した結果、鉄条網の塊のような醜い姿に成り果てた巨大宇宙ステーションである。

 その奥深くの中央司令室で、一人の男がビューポートに向かって立っていた。
銀河帝国QC星系総督にして駐屯艦隊の司令官、セード・ワイマッグである。
顔立ちには未だ若さが残っていたが、そのたたずまいには高級将校らしい貫禄を感じさせた。

?『シュコーッ、シュコーッ……ワイマッグ提督。興味深いお知らせが』

ワイマッグ「……コマンダー・コーチ。この時間はお休みになっているはずでは」

 ワイマッグは呼びかけられたほうへ振り返る。
背後に居たのは、T字スリットのヘルメットが印象的な装甲服に身を包んだ男。
ヘルメットにはいくつも撃墜マークが書き込まれていたが、その腰はひどく曲がり、杖を勧めたくなる危うげな足取りだ。
周期的に鳴るガスが漏れるような音は、装甲服に組み込まれた生命維持装置の呼吸音だった。

コーチ『休んでなどいられませぬ、この星系に潜んでいる分離主義者の残党を滅ぼすまでは……ゲホゲホ!』

ワイマッグ「もっとお体を労わってください、またバクタ・タンクに入ることになりますよ……天国の父も悲しみます」

コーチ『あなたの御父上のためにもです。あなたの御父上は分離主義者のドロイドに殺されたのですぞ!……私はその場に居ながら……お助けできませんでしたが』

ワイマッグ「そのことはもう気にしていないと申し上げたはずです、コマンダー」

 ワイマッグは労わりと苛立ちがないまぜになった表情であった。

ワイマッグ「それで、『興味深いお知らせ』というのは何です?」

コーチ『シュコーッ、シュコーッ……惑星キイに、ジェダイがいるという通報がございまして……』

ワイマッグ「……コマンダー、今までもその類の誤報はいくらでもあったでしょう。また棒ライトを振り回す酔っ払いの見間違いでは」

コーチ『しかしもし本当だったら?ジェダイは排除しなければなりませぬ、確実に。よい兵士は命令に従うものです』

ワイマッグ「まあ……たしかに、皇帝陛下からも最重要任務の一つとは言われておりますが……」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:32:41.50 ID:0XOCVNPz0

コーチ『シュコーッ、シュコーッ……今回は画像もあるのです。盗撮のようですが』

 コーチがデスクに置いた3Dプロジェクターから、椅子に腰かけた若い男の映像が投射される。

ワイマッグ「……これがジェダイ?私より若いようですが……」

コーチ『ジェダイを見た目で判断してはなりませんぞ』

 そのとき司令室のドアが開いて、黒装束の若い女性が姿を現す。

ワイマッグ「……マーズ管理官」

 ジヒス・マーズ管理官は整った容姿にも関わらず、どこからともなくおそろしい威圧感を発する女性だった。
マーズは相変わらず鉄面皮のまま二人に近づく。
ワイマッグの表情は明らかに警戒を孕んだもので、コーチは威嚇する動物のごとく背筋を伸ばしさえした。

マーズ「――提督。『ラグナロク』が最終チェックを終えたのはお聞きになりましたか」

ワイマッグ「わかっている。それだけ言いに来たのか」

マーズ「いえ、皇帝陛下からの下賜品を組み込んでおりますから、死蔵せず近々お使いになるよう進言に伺ったのです」

ワイマッグ「下賜?……下賜、ね」

 ワイマッグはマーズの言葉を鼻で笑った。

ワイマッグ「ゴミ捨て場に出せない厄介なゴミを目につかないところに捨てただけに思えるがね。なんだあのバカでかいレーザー砲は?何かの試作ひ――ぐっ、ぐぐぐ」

 そこでワイマッグは突然喋るのをやめ、不自然に呻いた。
首をかきむしる。顔が青くなる。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:33:33.40 ID:0XOCVNPz0

コーチ『!何をしている!』

 コーチが銃を抜くに及んで、マーズはようやくフォースで首を絞めるのをやめた。

ワイマッグ「――ゲホッ!ゲホッ!貴様……!」

マーズ「皇帝陛下のなさることを貶めるとは……それに、下賜品のことは機密扱いのはず。無遠慮にべらべら喋るのはやめていただきたい――むっ?」

 マーズはデスクの3D映像に目をつけた。
何らかの感情のもと、その目が細められる。

マーズ「……これは何です」

ワイマッグ「……惑星キイに、ジェダイがいると通報があった。そいつがジェダイだというんだ。また誤報だろうと思うがね」

マーズ「誤報ではありません。こいつは本物のジェダイです」

 マーズは断言した。

ワイマッグ「何故わかる?」

マーズ「フォースです」

ワイマッグ「フォース?またわけのわからん魔法――ぐっ、ぐぐぐ」

マーズ「信念への侮辱は不愉快です」

コーチ『貴様!いい加減にせんと本当に撃つぞ!』ジャキッ

マーズ「……とにかく、今すぐ艦隊を惑星キイに送っていただこう。私も同行します」

ワイマッグ「――ぷはあっ!ゲホッ、ゲホッ……わ、わかった……」

 マーズはそれっきり一言も口を利かず、コーチの突き刺すような視線も感じないかのように部屋を後にした。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 01:34:14.80 ID:0XOCVNPz0


コーチ『シュコーッ、シュコーッ……皇帝の犬、ダース・ヴェイダーの腰巾着めが……我々はあんな奴らのために戦ったのではない……!』

ワイマッグ「……よせコマンダー。不敬罪になりかねんぞ」

23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 14:52:59.58 ID:RB4cQfkf0
のじゃ
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 16:46:30.95 ID:2vYkiISjo
きたい
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 23:29:52.16 ID:0XOCVNPz0

 ――いくらかの時間の経過の後、物語は惑星キイに戻る。
夜通しスピーダーを走らせたシンノたちは朝方、都市キイポートに到着していた。
シンノは船を停めてある着陸パッドでR3を下ろし整備を命じておいて、シス卿を連れて金策と買い出しに向かった。
時間は惜しいが、帝国軍との逃避行は準備無しでできるものではない。
帝国軍の到着は夕方頃になるだろうという推測もあってのことだ。


シンノ「150だと!?バッチリ動く4WDスピーダーだぞ!桁を間違ってるんじゃないのか!?」

車屋「きゃんきゃん騒ぐんじゃねえ、寝起きの頭に響く……それにどうせ盗品だろうが、そうそう高値を出せるかよ」

ネーア「なあシンノ、まだ終わらんか?妾は退屈じゃあ」

シンノ「お前は黙ってろっ!」


 キイポートは多くの辺境の町の例に漏れず、夜はやたら騒がしいのに、朝は誰も彼も二日酔いで動きが鈍い。
シャッターをガンガン叩いて車屋を引きずり出したはいいが、値段交渉ではシンノが折れて安値でスピーダーを売り払うこととなった。
車屋と同じやり方でジャンク屋から宇宙船のスペアパーツを買い、いくらか早起きな雑貨屋で食料と日用品を調達し……もう一つ。


ネーア「おおっ!これはまさしく黒色のローブ……シス卿の正装!シンノ!これがよい!これを買え!」

シンノ「シス卿の!?……くそっ、わかったわかった……」

服屋「……妹さんですか?」

シンノ「いや……まあ、はい、そんなところで……」

服屋「元気で可愛いじゃありませんか。裾と袖を詰める代金は結構ですよ」

シンノ「えっ……ああ、はい、どうも……」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 23:30:38.84 ID:0XOCVNPz0

 買い物が済むと、二人は服屋を後にした。
シンノは苦虫を噛み潰したような顔だったが、黒のローブに着替えたネーアは踊り出さんばかりに上機嫌だ。


ネーア「やっぱりこれじゃのう〜!これが一番落ち着く、しっくりくるわ!」

シンノ(ええい、俺はどこまでこいつの言いなりになれば……ん?)

ネーア「む?」


 二人は同時に上を見上げる。
シンノは後になってから、それが何らかのフォースを感じてのものだったと気づいた。

 ひたすらに広がる、青く晴れ渡る朝方の空――
その彼方、遥かな高空に、楔型の何かが唐突に四つ出現した。


ネーア「……なんじゃあれは」

シンノ「……ま、まずい。早い!早すぎる……!」

ネーア「な、何だって言うんじゃ!?」

シンノ「帝国軍のスター・デストロイヤーだよ!買い物はもう終わりだ、船のところへ行くぞ!」


 顔を真っ青にしたジェダイとシスは転がるようにして着陸パッドへ駆けだした。
ぶら下げた買い物袋からバンサ・ミルクの瓶が零れ落ちて地面に転がる。

 五分としないうちに、白い装甲服のストーム・トルーパーの集団がその瓶を蹴とばし、踏み割って、ミルク溜まりを踏みつけて走り抜けた。
彼らは少し後ろからついてくる黒装束の人物の誘導によって正確にジェダイたちを追跡し、距離を詰めていくのだった……。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 23:31:52.70 ID:0XOCVNPz0

シンノ「R3!準備はできてるか!?」

ネーア「ぜえ、ぜえ、はあ、はあ、こ、この体、ひ弱すぎるぞよ……」


 ドーナツ型の建物の中央に位置する着陸パッドに、ジェダイとシスが息を切らして駆け込む。
そこにはちょっとしたスピーダー・バスほどの大きさの小型宇宙船が駐機されていた。
逆ガル翼が印象的な重戦闘機「Wウィング」である。


R3C3『ピポポ』

シンノ「よし、じゃあすぐに出発だ。帝国軍の追手がすぐそこまで来てる!」

R3C3『ポポピーポ』


 忠実なR3C3はランプ扉から機内に滑り込み、専用リフトで天井のドロイド用ソケットに着席した。
機体外部、翼の付け根あたりからR3C3のドーム型の頭が顔を出す形である。

 シンノは息も絶え絶えのシス卿と荷物をまとめて機内に押し込むと、自分もその後に続こうとした。
しかしそのとき、ロックしておいたドアが爆破され、煙の中から白い装甲服の集団が姿を現したのである!


肩当トルーパー「あいつだ!撃て!」バシュッバシュッバシュッ

トルーパー1「ジェダイ野郎めが!」バシュッバシュッバシュッ

トルーパー2「銀河帝国万歳!」バシュッバシュッバシュッ
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 23:32:26.47 ID:0XOCVNPz0

シンノ「くそっ、間に合わないか……!」ビシューンッ


 シンノはライトセーバーを抜き、「第三の構え」をとった。
ブラスターの防御に優れる剣さばきが、飛来する光弾を次々にはじき返していく。


トルーパー1「ぐわあっ!」バスッ

トルーパー2「ぎゃあっ!」バスッ

肩当トルーパー「しゃ、射撃中止!ロケットランチャーはまだか!?」

トルーパー3「持ってきました!」ガチャッ

肩当トルーパー「よし、船を狙え!」

シンノ「させん!」ジャキッ バシュッ


 トルーパーがランチャーを構えるのを見ると、シンノは左手でブラスターを抜いた。
そしておそるべき射撃精度でランチャーの弾頭を撃ち抜き、爆発させた!


トルーパー3「うわあーっ!」ボカーンッ

肩当トルーパー「お、おわあーっ!?」ボカーンッ
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 23:32:58.32 ID:0XOCVNPz0

シンノ「……よし、R3!」

ネーア「まだじゃ、シンノ!」

シンノ「何?」


 ブラスターをしまって機内に向かいかけたシンノは、ネーアの警告によって踏みとどまりドアのほうに向き直った。
――爆炎の中に、黒い影が浮かび上がる。
熱を感じないかのように悠然と、その女は死神のごとく姿を現した。


マーズ「……」ザッ


 息を呑むシンノを見据えつつ、懐からライトセーバーを取り出す。


マーズ「……ジェダイ」ビシューンッ ビシュッ


 通常の長い刃と、鍔の前端から伸びる短い刃――二つの赤い光刃が、シンノに殺意を剥き出しにした。


マーズ「――死ね!」シュザッ ブウンッ!


 フォースで倍化されたジャンプで一気に距離を詰めての横一閃。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 23:33:44.32 ID:0XOCVNPz0

シンノ「うおおっ!?」シュザッ


 シンノはとっさに横へ転がって難を逃れる。


マーズ「フンッ!」ブウンッ

シンノ「くうっ!」ビシュンッ


 起き上がるところへ打ち込まれる一撃をセーバーで防ぐ。
鍔迫り合いの形――赤と青の光の刃がスパークして火花を散らす。


シンノ「お、お前は……何者だ?なぜ帝国に……」バチバチ

マーズ「……私はヴェイダー卿の影――」バチバチ

ネーア「シンノ、そやつの得物は『ジット・セーバー』――武器を奪われぬよう気をつけい!」

シンノ「何っ?」

マーズ「――いずれ成り代わる弟子でなく、永遠の忠臣よ!」クンッ


 マーズが自分のセーバーをひねると、二本の刃とそれに伴うフォースの力場がシンノのセーバーを「挟み取る」。


シンノ「うっ、これは!?」

マーズ「はあっ!」ブンッ


 すかさずマーズがセーバーを思い切り振り抜く。
シンノのライトセーバーはその手を逃れ、あらぬ方向へ吹き飛ばされてしまった。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 23:34:17.26 ID:0XOCVNPz0

ネーア「ああっ、だから言ったろうに……!」

マーズ「セイッ!」ブウンッ

シンノ「くそっ……!」サッ


 この高速戦闘の中ブラスターを抜けるわけもなく、丸腰となったシンノは回避に徹するしかない。
フォースでセーバーを引き寄せたいが、マーズはそれを遮るように立ち回り、更なる一撃を繰り出す。


マーズ「フンッ!」ブウンッ

シンノ「くっ――うっ!?」サッ ドンッ


 それもなんとか回避するシンノだったが、背後はWウィングの主翼でありもはや逃げ場はない。
マーズは勝ち誇ってジット・セーバーを振りかざした。


マーズ「これまでだな、ジェダイ……喰らえ!」ブウンッ

ネーア「――シンノ!これを使うのじゃ!」ポイッ


 そのとき、機内から躍り出たネーアが何か筒状のものをシンノに投げて寄越した。


シンノ「!これはっ!」パシッ ビシューンッ

マーズ「!」ビシュンッ


 ――赤い刃のライトセーバーがジット・セーバーを受け止めた。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 23:34:58.87 ID:0XOCVNPz0

マーズ「バカな、その色……そのセーバーはシスの……」バチバチ

シンノ「はあっ!」ブウンッ


 シンノは混乱するマーズを力任せに押しのける。


マーズ「くっ……」ヨロッ

シンノ「だあーっ!」ドウンッ

マーズ「うおおっ!?」ブワッ


 そして立て続けにフォース攻撃を放ち、マーズを大きく吹き飛ばした。


マーズ「貴様……!」ズザザッ

R3C3『ピポポ』

マーズ「!」


 マーズはドアの外側でようやく踏みとどまったが、そこをめがけてWウィングの後部レーザー砲が火を噴いた。
彼女はこれをかわしたようだったが、今度はドア上部に砲撃が加えられ壁が崩壊。
落下した瓦礫によって道は完全に塞がれてしまった。


シンノ「いいぞR3!すぐに出発だ!」


 シンノは自分のセーバーを拾って機内に飛び込む。
マーズがフォースで瓦礫を退けて着陸パッドに再突入する頃には、Wウィングは飛び立ち、雲の向こうへ姿を隠そうとしていた。
マーズは珍しく不快そうな表情を表しながら、コムリンクでワイマッグ提督の艦隊に連絡を取った。


マーズ「……取り逃がしました。敵はWウィングで逃走……撃墜してください、ハイパースペースに逃げられる前に」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 23:35:28.59 ID:0XOCVNPz0

シンノ「R3、惑星ハクカまでのハイパースペース・ジャンプの計算を」

R3C3『ポポピーポ』

ネーア「やれやれ、危ないところじゃったの……」


 Wウィングは惑星キイの大気圏を離脱しつつあった。
遠ざかっていく黄土色の荒野の星と対照的に、頭上の宇宙は黒く、星々が宝石を散らしたように瞬いている。
Wウィングの機首先端は透明金属張りのドームであり、そこに面した操縦席にシンノが座る。
ネーアはその後ろ、乗客用座席の一つに腰かけていた。


ネーア「それにしても、一つ貸しじゃのう、ええ?」

シンノ「……これのことか」


 シンノはうんざりした顔で、さっき投げ渡されたライトセーバーを取り出した。


ネーア「そうじゃ。妾がそれを貸してやらねば死んでいたであろう?……あんなジェダイ崩れ相手にのう、情けない」

シンノ「お前、この前自分のことを丸腰だって言っていなかったか。嘘じゃないか」

ネーア「えっ!……いやー、それは……」

シンノ「貸し借りは無しだ。それと、これは俺が預かっておく」

ネーア「ぐぐぐ……」ギギギ

シンノ「……あいつ、ジェダイ崩れなのか?」

ネーア「へ?どう見てもそうじゃろ。足さばきなんか明らかにジェダイじゃったぞ」

シンノ「そうか……ジェダイの生き残りが、ジェダイを……」

ネーア「……なに、ジェダイがダークサイドに転向するというのはとてもよくある話ぞよ。とてもな」


 その言葉には何か含みがあるような気がして、シンノはネーアの方をちらりと振り返った。
しかし二人のフォースの隔絶のごとく、星灯りに照らされた操縦席に比べ乗客用座席は薄暗い。
シスの暗黒卿の表情は少しも伺えなかった。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 23:36:09.81 ID:0XOCVNPz0

ネーア「……まあ、シス流の訓練も少しは積んでいるようじゃったがな。ジット・セーバーもシスの武器ぞよ」

ネーア「かといってあの口ぶりだと正統のシスでもないようじゃし……ダーク・ジェダイといったところかのう」

シンノ「ダーク……ジェダイ……」

ネーア「あーあ、全盛期の妾ならばあんな半端者、指一本で倒せたんじゃがなあ。この器では……ぬう!ふんっ!」


 ネーアが買い物袋に向かって手を伸ばすと、その袋がぶるぶる震え出し――その中からチョコレート・バーが一本飛び出した。


ネーア「やれやれ、今はこのくらいが限界じゃのう。気長に鍛えなおすとするか……モグモグ」

シンノ「鍛えなおすんじゃない、シスめ……む!」


 そのときやにわ警報音が鳴り響いた。
操縦席のコンソールでランプがしきりに点滅し、天井のR3まで騒ぎ始める。


R3C3『ピポポ ポポピーポ プウウー』

シンノ「ああわかってるよR3。計算はまだか?」

R3C3『ポポピーポ』

シンノ「チッ、参ったな。ドンパチは避けられそうにないか」

ネーア「モグモグ、何じゃ?何事じゃ?」

シンノ「舌噛みたくなきゃ食べるのやめたほうがいいぞ。さっきのヴェネター級がTIEファイターを差し向けてきた」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 02:01:22.51 ID:mO9RNCVV0
かわいいのじゃ
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 02:03:45.75 ID:4HZhuxay0
実にいい
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:06:53.04 ID:nNKGDZUc0

 シンノは偏向シールドをスタンバイしつつ、スコープで敵影を確認する。
垂直の主翼で球形の機体を挟み込んだ特徴的なシルエットがいくつもモニターに映し出された。


シンノ「9機、いや少し遅れてもう3機……12機か!熱烈な出迎えだな」

ネーア「そんなに!?……だ、大丈夫なんじゃろうな、この船?」

シンノ「任せろ。こいつは少しばかり図体はでかいが、れっきとした『戦闘機』だ……」

シンノ「それもクローン戦争を戦い抜いた、な。R3、後部レーザー砲は頼んだぞ」

R3C3『プウウー』

シンノ「なんだ、お前まで。今更弱音を吐くな!……そら、おいでなすった!4時30分!」


 戦いの口火を切ったのは敵機のレーザー砲だった。
しかし緑色の光線はひどく逸れたうえに長い距離を飛ぶうち減衰し、弱弱しい光となって惑星キイの景色の中に消えていく。


シンノ「焦ったな、バカめ」グンッ

ネーア「おわっ、たっ、たっ、た」フラフラッ

シンノ「シートベルト締めてろ!……おらっ!」バシュシュシュシュ


 シンノは機体を急旋回させて続く射撃を回避し、敵編隊の斜め上方に位置取った。
そこから一気に急加速し、大胆にもレーザー砲を連射しながら敵編隊を突き抜ける。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:07:31.91 ID:nNKGDZUc0

TIEパイロット1『な、なんだこいつ――ウワーッ!』ボカーンッ

TIEパイロット2『ぎゃあっ!』ボカーンッ

TIEパイロット3『ハッ、ハッ、ア』ボカーンッ


 2機のTIEファイターが木っ端みじんに吹き飛び、逃げながらの後部レーザー砲攻撃によってさらに1機が爆散した。


TIEパイロット4『ぶ、分隊長!分隊長がやられた!』オロオロ

TIEパイロット5『敵はどこに行った!?』ワタワタ

TIEパイロット6『お、落ちつけ!たしか教本では……!』アワアワ


 途端に、編隊は糸を抜かれた縫物のように混乱状態に陥った。
敵を探してうろうろするもの、まったく見当違いな方向に飛ぶもの、母艦に戻ろうとするものまで出る有様であった。


ネーア「……あれ?なんか敵さん、一回攻撃しただけで滅茶苦茶になっとらんか?」

シンノ「こんな辺境に派遣されるようなパイロットなんてたかが知れてる。TIEファイター自体も安物だしな……そらっ!」バシュシュシュ


TIEパイロット7『うわあ、火が!母さーん!』ボカーンッ


シンノ「よし、あと『たった』5機だ」

ネーア「……肩透かしくらった気分ぞよ」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:08:04.93 ID:nNKGDZUc0

 襲う側と襲われる側が逆転し、容赦なく繰り返された攻撃によって9機の編隊は壊滅した。
7機が撃墜され、残りの2機も傷ついてほうほうの体で逃げ去る――それとすれ違うようにして、無傷の2機が近づいてきた。


シンノ「あと2機……ん?」


 シンノはその景色に違和感を感じた。
先ほど見たスコープでは、確か……
――フォースを通じて彼の精神におそろしく嫌な予感がよぎった。


シンノ「ふんっ!」グンッ


 シンノはそれに従い、とっさに機体を急旋回させた。
それが彼の命を救うこととなった。
数秒後、今までとっていた進路上にレーザーが降り注いだのである。


シンノ「3機目か!」


 そして彼はあたりを見回し、頭上に3機目のTIEファイターを見つけた。
3機目は機体を捻り、太陽を背にして突っ込んでくる。目が眩む!


シンノ「うっ……!」ガッ


 シンノは逆噴射ペダルを蹴っ飛ばすようにして踏んだ。
主翼前面のスラスターによって急制動をかけて銃撃を回避する――二度通用する手ではない。
シンノは下方へ走り抜けていく3機目を目で追いつつ、その偏差射撃の正確さに舌を巻いた。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:08:42.06 ID:nNKGDZUc0

ネーア「な、何じゃ今のは!?おそろしく動きが良いぞ!?」

シンノ「こいつ、手練れだ……まんざら、肩透かしでもなくなったかもしれん」


 ――彼はクローン・トルーパーを思い出していた。
クローン戦争を共に戦い、最後には裏切ってジェダイのほとんどを屠った優秀な兵士のことを……


コーチ『シュコーッ、シュコーッ……ぬっふっふっふっふ、かわしたか……それでこそジェダイよ』


 コマンダー・コーチは装甲服の裏で満足げに笑みを浮かべながらTIEファイターの機首を引き上げた。
Wウィングの動きに注視しつつ、残る2機の僚機に通信で指示する。


コーチ『よいか、ドッグファイト中はお前らは手を出すな。Wウィングが逃げにかかったら背中から撃てばよい』

TIEパイロット10『しょ、承知しました』

TIEパイロット11『しかしコマンダー、くれぐれもご無理は……』

コーチ『ここは戦場だぞ、無粋なことを言うな!……さあジェダイ、逃げ場はないぞ!』


 コーチは斜め下から突き上げるようにWウィングに襲いかかった。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:10:11.14 ID:nNKGDZUc0

シンノ「くっ!」グンッ


 シンノは再度機体を旋回させ、紙一重で銃撃を回避する。
同時に後部レーザー砲がぐりぐり動き、上方へ駆け抜けたTIEファイターにレーザーを浴びせかける。


コーチ『ぬうん!』グインッ


 コーチのTIEファイターは鮮やかに身を翻し、レーザーをすり抜けてWウィングの後方に向かう。


シンノ「ケツにはつかせん……!」ガッ


 シンノはペダルを思い切り踏みこんで急加速した。
後方の三機目を振り切り、あわよくばそのまま戦場から離脱しようと――


TIEパイロット10『そこだ!』バシュシュシュ

シンノ「うおっ!くそ!」グインッ


 しかし側面から狙いすました援護射撃が飛んできてそれを阻止した。
なんとか回避するが速度は落ち、後方、コーチ機に接近を許してしまう。


コーチ『喰らえい!』バシュシュシュ

シンノ「うおおっ……!」ガガンッ
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:11:25.26 ID:nNKGDZUc0

 シンノは激しく揺すぶられながらもコンソールを確認する。


ネーア「シ、シンノぉ!」

シンノ「大丈夫だ、全箇所異常無し。偏向シールドがなんとか防ぎ切った」

シンノ(とはいえこのままじゃジリ貧だ……何もかも削ぎ落とされて手詰まりになる前に、勝負に出るしかない!)


 Wウィングは急旋回し、2機のTIEファイターに背を向けて全速力を発揮した。


コーチ『シュコーッ、シュコーッ!逃がさん!』


 コーチ機がすかさず追尾する。
自分の機体で僚機の射線を遮るのが敵の狙いであることはすぐに察しがついた。
射角を変えようにも戦場の外側で待機していた僚機は追いつくことさえ難しく、2機の姿はあっという間に見えなくなった。


コーチ(なかなか賢明だ……だが味方などハナからそれほどあてにしてはおらん。私の手で直接葬るまで……!)

シンノ「R3、偏向シールドを全部後方に割り振れ。後部レーザー砲も派手にぶっ放して弾幕を張るんだ……!」


 シンノは機体を左右に揺らし、猛然と迫る敵機の照準を逸らそうと試みる。
しかし敵の狙いはおそろしく正確で、弾着の衝撃は繰り返され、偏向シールドの耐久力はあっという間に削り取られつつあった。


シンノ(くそっ、もう少し……もう少しだけもってくれ……!)


 その祈りとは裏腹に、一弾が光の防御壁を突き抜けてWウィングの機体に直撃した。
機体に振動が走り、構造材がギシギシと軋む。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:12:09.11 ID:nNKGDZUc0

 さらに立て続けに二発、三発――機内に風のような音と、気圧低下を知らせるアラート音が鳴り響き始めた。


シンノ「――まずい!空気が漏れている!」

ネーア「なんじゃと!?」


 不幸にも次の瞬間、次弾が破孔を直撃しぐいと押し広げた。
機体後部の天井に穴が空き、機内の空気がおそろしい勢いで流れ出る。


ネーア「うあっ、あ」フワッ


 着弾の衝撃でシートから僅かに浮き上がったネーアは、その空気の流れに捕まった。
体格に合わないシートベルトは何の役にも立たず、大きな手に引きずり出されるがごとく天井の破孔へと――


シンノ「!ネーアっ!」サッ


 シンノが素早く操縦席を離れ、右手でネーアの手を掴んだ。
左手で操縦席のシートを掴み、機外に吸い出されるのをこらえる。


ネーア「!?シ、シンノ!何を……しておる!」


 シンノが操縦桿を離したためにWウィングは回避機動を止め、着弾の衝撃は二倍に増えた。
どういうわけか後部レーザー砲の弾幕も止まっており、背後からTIEファイターがぐんぐん距離を詰めてくる。


ネーア「離せ、操縦席に戻れ……!お前まで死ぬぞ!」

シンノ「離すかよっ……」

ネーア「妾はシス、そなたはジェダイ!仇敵ぞよ!それなのになぜ……なぜ助ける!?」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:12:46.57 ID:nNKGDZUc0

コーチ『とどめだ、ジェダイ……!』


 コーチは満身創痍の敵機めがけ、無慈悲にプロトン魚雷を発射する。
Wウィングのレーダーはこれを感知し、操縦席ではけたたましくアラートが鳴った。
シンノはネーアの手を掴んだまま、力を振り絞って操縦席にしがみつき、コンソールに手を伸ばす。


シンノ「そうだ、俺はジェダイだ……だからこそ、もう二度と目の前で誰も死なせやしない!」


 彼の脳内ではオーダー66に始まる悲劇がフラッシュバックしていた。
渾身の力で点滅するスイッチを押す――いつのまにか計算が終了した、ハイパースペース・ジャンプ。
窓に覗く星々がスター・ボウに変わる。
Wウィングはハイパースペースに突入し、魚雷とコーチのTIEファイターを振り切って姿を消した。


コーチ『!……ば、ばかな……』


 コマンダー・コーチはさっきまでWウィングがいたところを呆然と眺めた。
プロトン魚雷は虚空を飛び、やがて時限装置によって虚しく爆発した。


コーチ『……シュコーッ、シュコーッ……』
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:13:46.98 ID:nNKGDZUc0

シンノ「うわっ!?」ドタッ

ネーア「あうっ!?」ドタッ


 機内の空気の流出はハイパースペースに突入すると同時に止み、二人は床に放り出された。


R3C3『ポポピーポ プウウー』


 心配げな電子音を鳴らしながら、天井からR3C3が降りてきた。
そのボディからは、超速乾性の修復剤を噴射するノズルが突き出している。
彼が機外から修復剤を噴射して破孔を塞いだのだ――二人はそんなことを考えているヒマはなかった。


シンノ「ハアーッ、ハアーッ……息……息ッ!」

ネーア「――」パクパク


 機内の気圧は著しく低下していた。
シンノは壁に据え付けられたケースからやっとのことで非常用酸素マスクを取り出す。
そして一つを自分の顔にはめ、もう一つをネーアのほうへ放った。


シンノ「はあーっ、はあーっ、ふうー……」

ネーア「はあ、はあ、はあ……」


 二人はようやく人心地つき、顔を見合わせた。


シンノ「……ふっ」
ネーア「……カ」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:15:00.94 ID:nNKGDZUc0

シンノ「ははははは!生きてる!生きてるぞォ!」

ネーア「カカカカカ!助かったー!カカカカカ!」
 

 緊張から解放された反動。
R3C3はてっきり主人の頭がおかしくなってしまったのではないかと思った。
直後、慌てて酸素マスクに顔を戻すことになったが。


シンノ「R3、機内の気圧を調整してくれ……」

R3C3『ポポピーポ』


 アストロメク・ドロイドは天井のソケットに戻り、生きている回路を組み合わせてなんとか空調を復旧した。
合成空気を放出するシューという音が数分続いた後、機内は酸素マスク無しで動き回れる快適さを取り戻す。


ネーア「ああ、生き返ったわ……我が弟子よ、さっきは助かったぞよ。貸し借りはチャラじゃな」

シンノ「バカいえ、貸し一つだよ。あと弟子にはならねえ」

ネーア「いけずじゃのう。それで、これからどうするんじゃ」

シンノ「惑星ハクカまでは自動航行だ……ちょっと待て」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:16:14.89 ID:nNKGDZUc0

  シンノは操縦席の下から紙製のアナログ地図を引っ張り出し、床に大きく広げた。
あぐらをかいてそれに向かうシンノの肩の上からネーアが覗き込む。


シンノ「今ハイパースペースだが、リアルスペースに換算すると……だいたいこのあたり。で、ハクカというのはこっちだ」

ネーア「うむ、星の軌道は五百年経っても変わっとらん……その一つ内側を回っとるのが惑星ヤマタイティアじゃろう?」

シンノ「そうだが?」

ネーア「なに、妾が眠りにつく前はヤマタイト共が星系を股にかけて大暴れしとったんじゃ……まだ元気か?」

シンノ「いや、とっくに衰退した」

ネーア「諸行無常じゃのう」

シンノ「最近帝国軍が王族の末裔を大執政官に祭り上げたというのは聞いたがな……で、ここの衛星軌道上に『ダン・ザ・フロー』……帝国軍QC星系方面軍の本拠地がある」

ネーア「む、ハクカに近いな……よもや、ハクカに帝国軍が待ち構えているようなことはあるまいな?」

シンノ「惑星ハクカは星系一賑やかだが、同時に星系一いかがわしい星だ。帝国軍はいないことはないが、隠れ場所には困らない……反乱軍の秘密基地があるという噂まである」

ネーア「いつの時代もそういう場所はあるものじゃのう。それで、その後は?」

シンノ「その後?顔隠して運び屋の仕事でも探すさ。働かなきゃ食っていけん……少しばかりあった蓄えも、今回の旅行に全部つぎ込んじまったんでね」

シンノ「いやそれどころじゃない、帝国軍に顔が割れたし、船もボロボロ。大損だ。手に入ったのはこのちんちくりん一人ときてる」

ネーア「カカカ、いい買い物をしたのう」

シンノ「……言っておくが、お前にも働いてもらうぞ。奴隷商人に売り飛ばされたくなけりゃあな」

ネーア「ええー……」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:17:05.39 ID:nNKGDZUc0

 同時刻、惑星ハクカの某所。
夜の闇に沈む工場の上空に、一隻の宇宙船がホバリングしていた。
そして地上にチカチカと控えめな発光信号を送る。

 すると工場の天井が音もなく左右に開き、秘密の発着場が姿を現した。
宇宙船――オルデランの外航船タンティヴィ4は、しずしずとその中に降下し、姿を消す。
天井が閉じると、反乱軍の秘密基地は再び秘匿性を取り戻した。

 上空からは見えなかったが、工場の内側ではXウィングやYウィングが羽根を休めていた。
しかしその数は反乱軍の本拠地ヤヴィン4に比べればずっと少なく、帝国軍に戦いを挑むにはあまりにも心もとない。
着陸したタンティヴィ4から降り立ったオルデランの王女――レイア・オーガナは、それをあらためて見てとった。


シカーグ「レイア姫。お越しいただいて光栄です」

レイア「……シカーグ将軍。お出迎え感謝します」


 歴戦の貫禄を感じさせる中年男性――テダッフ・シカーグが、奥から姿を現した。
彼はQC星系の反乱同盟軍のリーダーで、この秘密基地の責任者だった。


ユスカ「あっちに……あー、あちらに、部屋を……お部屋を、ご用意しております」

C7-BDB『アッチャー、見テイラレネエ。ゆすか、姫ハ俺ガゴ案内スルゼ』

ユスカ「あんたは引っ込んでなさいよっ!」


 それに続いて出てきたのは活発そうな若い女性と、銀色の料理人ドロイド。


レイア「……ユスカ・ショーニンと、C7-BDB、でしたか」

ユスカ「覚えてるの!?……じゃなかった、覚えていただけてたんですか?」

レイア「ええ、前会ったときもあなたたち、ずっと大きな声で喧嘩していたから。フフ」

ユスカ「ああ……それは、どうも……」

C7-BDB『ヘヘヘ、コリャ参ッタナ』

ユスカ「全部あんたのせいよっ!」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:18:13.62 ID:nNKGDZUc0

 シカーグは言い争う二人に悩まし気な視線を向けたあと、苦笑しながらレイア姫に話しかける。


シカーグ「レイア姫、部下がみっともないところを……とりあえず今夜は長旅の疲れを癒していただいて、話は明日にでも」

レイア「いいえ、残念ながらそれは出来ないのです、シカーグ将軍。我々はこのあとすぐ出発しなければなりません」

レイア「この秘密基地の位置がすでに帝国軍に露見しているという情報があるのです。長居することはできないし……援軍の話も……」

シカーグ「援軍は……来ないのですか?」

レイア「……申し訳ありません。この秘密基地はいずれ放棄してもらうことに」

ユスカ「嘘でしょ……」

C7-BDB『見捨テラレタッテコトカァ?』

レイア「いえ、決してそういうわけではありません。私が来たのは直接謝るためと、もう一つ……新しい秘密基地の候補地を紹介しに伺ったのです」


 レイア姫は懐からメモリーディスクを取り出してシカーグに手渡した。


シカーグ「……活用致します」

レイア「決して帝国軍に漏れないよう取り計らってください。QC星系での反帝国運動はあなたの肩にかかっています」

シカーグ「しかしレイア姫、リズマ・ショーニンのことは?彼女がこの星の帝国軍基地に捕まったままです」

ユスカ「……」


 その名前に触れたとたん、背後のユスカの表情が曇った。
周囲の戦闘機に向かって整備作業にいそしんでいた兵士の中にも、何名か顔を上げるものがいた。


シカーグ「彼女はジェダイです、必ず今後の運動に役に立つ……そして、ここにいるユスカの妹でもあります」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:19:03.43 ID:nNKGDZUc0

レイア「私もお力添えしたいと思っておりますが……率直に申し上げれば、反乱同盟軍からの援助は難しいと思います」

シカーグ「そうですか……いえ、我々とて組織です。仕方ない……」

レイア「――ですが、ここに来る途中、興味深い帝国軍の通信を傍受したのです。ジェダイが惑星キイに居ると」

シカーグ「ジェダイが?惑星キイに?」


 シカーグは顎に手を当ててしばらく考え込んだ。


シカーグ「あまり知られていませんが、たしかあそこにはジェダイ・テンプルの遺跡があります。そこを訪れたというのは十分ありうる話だ……」

レイア「もちろん罠という可能性もありますが、ジェダイというのは餌にしてはあまりにも陳腐です。信じる価値はあると思います」

レイア「……もう殺されているという可能性もありますが……もしも彼、あるいは彼女を味方に付けられれば、救出作戦も現実的に……」


 レイア姫は手首のガジェットで時間を確認して、ばつが悪そうに切り出す。


レイア「……申し訳ありませんが、もう行かなければ。帝国に監視されているかもしれない」

シカーグ「いえ、お越しいただいてありがとうございました……我々はきっと『全員』で、ここに逃れてみせます」


 シカーグは微笑とともにメモリーディスクを示す。
レイア姫もにこりと笑って応じると、すぐにタンティヴィ4に乗り込んで秘密基地を去った。
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:20:25.27 ID:nNKGDZUc0

ユスカ「……将軍、本気なの?」

シカーグ「何のことだ?」

ユスカ「全員でここから逃げるって……リズマを、助けに行くって」

シカーグ「本気だ。むろん、撤退は同時並行で行うが」

C7-BDB『正気ノ沙汰トハ思エネエ……一刻モ早ク逃ゲナキャナラネエノニ』

C7-BDB『ナニ?じぇだいダ?生キテルカドウカモワカラナイシ、手ヲ貸スカドウカモワカラネエジャネエカ』

シカーグ「仲間を見捨てれば我々の中から正義感が失われる。そうなれば我々はなんのために立ち上がったのかわからん」

シカーグ「ジェダイのことも、クローン・トルーパーの攻撃以来ずっと逃げ延びてきたんだ。簡単にくたばるとは思えん」

シカーグ「反乱軍の一兵士ならともかく、同胞ジェダイの救出なら……そして仮にもリーダーである俺が直接頭を下げて頼めば、きっと手を貸してくれるさ」

ユスカ「直接?……将軍!惑星キイに行くつもりなの!?危ないって、きっとまだ帝国軍がうろうろしてる……!」

シカーグ「そんなことはこの運動に関わった時から覚悟している。もし俺に何かあっても、この撤退のタイミングだ。指揮権限移譲もスムーズだ」

ユスカ「……じゃ、じゃあ、私も行く!」

シカーグ「お前も?……よせ、危険だ」

ユスカ「リズを助けに行くためなんでしょ?だったらその姉の私が引っ込んでちゃ、カッコがつかないじゃない……!」

C7-BDB『ヘヘヘ、呆レタ奴ラダゼ……放ッテオケネエ、俺モツイテイクゼ』

シカーグ「お前たち……はあ、わかった。流石に護衛の一人二人は欲しかったところだしな」


 シカーグは自分のガジェットにメモリーディスクを差し込んで一通り中身を確認すると、副官を呼んでそれを手渡す。
そして撤退準備についてテキパキと指示を出したあと、ユスカのほうへ戻ってきた。


シカーグ「さて、ここの船は撤退に必要だ。俺たちは自分で惑星キイ行きの船を探さなくちゃあ」

C7-BDB『ソレモ帝国軍ニ見ツカラズニ惑星きいヘ侵入デキル、ナ』

シカーグ「よくわかってるじゃないか」

ユスカ「そんな船……あてはあるの?」

シカーグ「こういうことを頼むには密輸業者がうってつけだ。そういう奴らに会うのは簡単だ、いかがわしい酒場にいけばいい」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:21:51.05 ID:nNKGDZUc0

 その頃、ヴェネター級スター・デストロイヤー四隻からなる帝国軍QC星系駐屯艦隊は、いくらかの地上部隊を残して惑星キイを離れていた。
旗艦「ヘファイストス」艦橋で、ワイマッグ提督は相変わらず仏頂面でビューポートを睨みつけている。


コーチ『シュコーッ、シュコーッ……失礼します。提督、先ほどはむざむざと敵を取り逃がしてしまい……』

ワイマッグ「……敵は相当『やる』ようでした。逃げられたのはあなた以外の部下の練度不足が主な原因でしょう」

ワイマッグ「無事に帰ってきてくれただけで十分です、コマンダー・コーチ」

コーチ『……も、もったいないお言葉……』

ワイマッグ「航路監視システムにハイパースペースを抜けたWウィングが映りこみました。どうやら敵は惑星ハクカに向かっているようです」

コーチ『あそこは星系一の暗黒街。逃げ込まれたら厄介ですな……』

ワイマッグ「反乱軍の基地もあります。奴との間に繋がりがあるかどうかはわかりませんが、合流されたら面倒なことになります」

ワイマッグ「これから我々はダン・ザ・フローで補給を済ませたらすぐに惑星ハクカに向かい、反乱軍の基地を攻撃します」

ワイマッグ「これまではリスク管理のために監視をつけるに留めておきましたが、先ほども国籍不明の宇宙船が出入りしていたようです。あまりにも不穏……ジェダイの一件抜きでも放置するのは限界です」

コーチ『シュコーッ、シュコーッ、なるほど……ではこの際、〈ラグナロク〉を使われては?』

ワイマッグ「『ラグナロク』?それは名案ですな!一応マーズ管理官に了承を取ってきましょう」

コーチ『では私もお供しますぞ……』


 二人はエレベーターで艦橋から下り、マーズ管理官の執務室に向かった。


ワイマッグ「管理官!……マーズ管理官!」トントン

コーチ『……お留守ですかな?』

ワイマッグ「……いや、中から何か聞こえるような……?」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:22:35.32 ID:nNKGDZUc0

<……ッ、グ……ガッ……


ワイマッグ「……あえぎ、いや、呻き……?」

コーチ『あっ……ま、また今度に致しましょう、提督』


 そのときドアがひとりでに開いたので、二人は仰天した。


ワイマッグ「うおっ!」

コーチ『ぬおっ!?ゲホッゲホ!』


『――盗み聞きとは感心しませんな、ワイマッグ提督』


 薄暗い卓上の通信機から青白いホログラムが映し出されている。
その甲冑じみた異様な装甲服と黒いケープは見間違えようがない――ダース・ヴェイダー。


ワイマッグ「ヴェイダー卿……マーズ管理官!?」


 そして足元に、ジヒス・マーズが転がっていた。


マーズ「グ……グググ……」


 顔を真っ青にして呻き、しきりに首をかきむしっている。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:23:09.63 ID:nNKGDZUc0

ヴェイダー『今、出来の悪いしもべに罰を与えているところです』

ワイマッグ(この前私がやられたのと同じフォース・チョークか?さっきドアを開けたのもフォース?ヴェイダー卿はホロネット越しでもフォースが使えるのか!)

ヴェイダー『……それで、何か用ですかな?』

ワイマッグ「い、いえ、『ラグナロク』の――この前下賜していただいたスーパーレーザー砲を組み込んだ兵器を、惑星ハクカの反乱軍基地に対して使用する許可を頂きに参ったのです」

ヴェイダー『なるほど、では私が許可します……他に何か無ければご退室願いましょう、それから盗み聞きのような真似は二度となさらぬよう』

ワイマッグ「はっ、失礼します……」


 ワイマッグとコーチがいそいそと退室するのを見送り、ホログラムのヴェイダー卿はマーズに向き直る。


ヴェイダー『この愚か者めが。何のために貴様を生かしておいたと思うのだ』グググ…

マーズ「ググ……も、申し訳、ございま……グウ……」

ヴェイダー『ジェダイを狩らせるためだ。それをむざむざと取り逃がしおって……』グググ…

マーズ「お、お許し、ください……私は、あなたの、忠臣として……」

ヴェイダー『忠臣?思い上がるな。貴様はただの奴隷、下僕にすぎん――よく頭に刻んでおけ』パッ

マーズ「ぷはっ!ゲホッ、ゲホッ!」

ヴェイダー『では次の指示を下す。お前はダン・ザ・フローで艦隊と分かれ、一足先に惑星ハクカの帝国軍基地へ向かえ。以前お前が捕らえた反乱軍のジェダイがそこに収監されている』

ヴェイダー『ハクカの反乱軍基地がスーパーレーザーで消滅するならば、奴が反乱軍本拠地への唯一の手掛かりだ。どうにかして本拠地の在処を吐かせるのだ』

マーズ「はっ……了解、致しました」

ヴェイダー『二度と私を失望させるなよ。次はない』


 重い言葉を残してホログラムは消滅した。
マーズは首をさすりながら、自分の中のヴェイダーへの忠誠心が薄れていくのを感じていた。
そして惑星キイで見た、シスの武器を知り、シスの武器を持つ謎の少女を思い出す……
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/01(日) 17:02:57.73 ID:Fjgaok1E0

シンノ「帰ったぞ……おおい、ネーア?どこだ?」

ネーア「グウー……スウー……ムニャムニャ」ボリボリ

シンノ「……呆れたな。まだ寝てるのか」


 シンノの隠れ家は惑星ハクカ郊外の廃工場にあった。
太陽は既に高く、ちょっとした体育館ほどの空間を高窓から差し込んだ陽射しが照らしている。
その中にあちこち穴が空いたり焼け焦げたりした満身創痍のWウィングも駐機されている。
すぐ横の折り畳みベッドにいるシスの暗黒卿と同様、戦いに疲れ果てて眠っているかのようなくたびれた姿であった。


R3C3『ピポポ』ウィーン

シンノ「おおR3、頼まれた部品は買ってきたぞ。なんとかなりそうか?」ポイッ
 
R3C3『ポポピーポ プウウー』パシッ


 機体の陰から姿を現したR3C3はシンノが投げ渡したパワーセルをアームで器用にキャッチし、電子言語で弱音と不平を並べ立てた。
この赤いアストロメク・ドロイドはクローン戦争以来シンノの相棒だが、少々ネガティブなきらいがある。
彼はハクカに到着した直後からWウィングの修理に励んでいたが、惑星キイで買ったスペアパーツを全部使ってもなお機体の修理は終わらないようだ。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/01(日) 17:03:38.74 ID:Fjgaok1E0

シンノ「はは、そりゃあハードみたいだな。ちょっと待ってくれ、武器の手入れと……飯だけ食ったら手伝う」

シンノ「修理が終わったらリペイントと、識別装置の調整もしなきゃな。帝国の奴らに身元がばれないように」


 シンノはあっけらかんと答え、渋々作業に戻るR3C3を見送って近くの折りたたみ椅子に腰かけた。
デスクにブラスターとライトセーバーを二本取り出す……


シンノ(二本?)

ネーア「グウー……グゴゴゴゴ……」

シンノ(そうか、ネーアのライトセーバーを預かってるんだった)


 シンノはネーアのライトセーバーを取り上げ、何気なくスイッチを入れた。
光の刃が伸び、隠れ家の中を赤く照らす。


シンノ(シスのライトセーバーも、刃の色以外にはジェダイのものとさほど違いはないのか……ん?)


 スイッチを切って手放しかけたとき、柄の先端が少し動いたような気がした。
気になっていじくりまわしていると、そこに仕込まれていた蓋が開く。
その断面に隠されていたのは、用途不明のサムターンだった。
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/01(日) 17:04:29.50 ID:Fjgaok1E0

 シンノは少し躊躇したが、やがて好奇心にかられてサムターンを回す。
……かちりという音がライトセーバーの中から聞こえた気がした。


シンノ(爆発しやしないだろうな……何が変わった?)


 その答えはすぐにわかった。
もう一度スイッチを押したところ、今度は「緑色」の刃が出現したのだ。


シンノ(これは……?)

ネーア「……ううーん、ああ、よく寝たわい……!」ノビー

シンノ「!」カチッ


 シンノはとっさにライトセーバーのスイッチを切ってデスクに放った。


ネーア「おお、シンノ。いい朝じゃな」

シンノ「……もう昼だぞ」

ネーア「こ、これはしたり。五百年も寝ていたからか、生活リズムガタガタぞよ……ふああ」

シンノ「まあ昨日はいろいろあったから、仕方ないといえば仕方ないさ」

シンノ「これが終わったら飯にするから、顔でも洗ってきたらどうだ。洗面所はそこの奥、突き当りを右だ」

ネーア「うむむ、了解ぞよ……」フラフラ
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/01(日) 17:05:09.84 ID:Fjgaok1E0

 シンノは武器の点検をおざなりに済ませてキッチンに向かった。
キャッシーク芋を蒸し器へ入れ、温めて油を敷いたフライパンに缶詰のバンサ肉を放り込む。


シンノ(緑色のセーバーはジェダイの持ち物のはず……なぜシスのセーバーにあんな機能が……?)ジュージュー

ネーア「ふう、さっぱりしたぞよ……おお、いい匂いがするのう〜」クンクン

シンノ「雑だが勘弁してくれ……そういえばお前、料理とかできないのか?」ジュージュー

ネーア「シス卿は家事なんてしないぞよ☆」キャピッ

シンノ(この野郎、意地でも働かせてやる……)ジュージュー


 やがて二人はいくつか皿の並んだ食卓を囲むことになった。
ジェダイとシスが一緒に食事をとるというなんとも奇妙な状況だったが、傍から見れば兄妹にしか見えないだろう。


ネーア「モグモグ、ガツガツ、ゴクゴク!」ガチャガチャ

シンノ「……ちょっと早食いしすぎじゃないのか……?」

ネーア「ぷはあ、まともな食事は五百年ぶりじゃ!もう何でも死ぬほど美味いわい――モグモグガツガツ」ガチャガチャ

シンノ「そ、そりゃあよかった……なあ、あのライトセーバー、いつから使ってるんだ?」

ネーア「モグモグ、ゴクン!あれか?妾がシスになったときからぞよ」

シンノ「シスになったっていうのは……」

ネーア「ダース・メドーに弟子入りしたんじゃ。いけすかないパウアンの親父ぞよ。モグモグ」ガチャガチャ

ネーア「ちなみにダース・メドーの師匠はダース・グレイヴス。妾はその孫弟子にあたるかの……ゴクゴク」

シンノ(ああ、ジェダイ・マスターたちよ、シスは滅んでなんていませんでした……俺の知らない名前がどんどん……)
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/01(日) 17:05:52.16 ID:Fjgaok1E0

ネーア「プハア、メドーが言うには、ダース・グレイヴスは妾と同じように眠りについたらしいんじゃが……これはたぶん嘘じゃろう。メドーが殺したに違いないぞよ」

シンノ「それがシスの代替わりなんだもんな?」

ネーア「そうじゃ。妾のように平和的に一線を退くのはごくごく少数の例外。シスの暗黒卿は弟子に殺されて生涯を閉じるものじゃ……モグモグ」

ネーア「ゴクン、とはいっても、これは妾が自分でシスの古文書を調べて知ったことぞよ。メドーは教えてはくれなんだ」

シンノ「そりゃあそうだろうな。自分が殺されちゃかなわない」

ネーア「一般的な感覚で言えばそうじゃろう……だがシス卿としては情けないなんてもんじゃないぞよ、それこそ除名ものの腰抜けじゃ」

ネーア「しかし代替わりについて嘘を吹き込んでもなお、ダース・メドーは妾が力をつけていくのを見て、いずれ殺されるんじゃないかと怖くなったようじゃな……ゴクゴク」

シンノ「……それで、メドーはどうしたんだ?お前を破門したのか?」

ネーア「プハア。妾を殺そうとしたのじゃ」

シンノ「殺そうと!?……それで、お前は?」

ネーア「返り討ちにしたぞよ」


 ネーアはこともなげに言い放ち、デスクの上の自分のライトセーバーを指差した。


ネーア「ちょうどそのライトセーバーで、首を……おっと、食事中じゃったな。すまん」

シンノ「……いや……いいんだ」ゴクリ


 シンノは目の前でサンドイッチにぱくついている相手がシスの暗黒卿であることをあらためて思い知らされた。
しかしこれまでまったく未知だった敵が内情をあけすけに語ってくれる状況に好奇心をくすぐられ、インタビューを続行する。
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/01(日) 17:08:05.23 ID:Fjgaok1E0

シンノ「それで、今度はお前がマスターになった……と」

ネーア「そうじゃ。ダース・ベインから数えて……えーと……何代目かは忘れたが。モグモグ」

ネーア「ゴクン、それで、ひとしきり古文書を漁った後、何とかっていうエイリアンを弟子にしたんじゃ。ダース・ノートと名付けた……いいネーミングじゃろ?」

シンノ「ああ、悪くないね。どんなやつだったんだ?」

ネーア「最初は素直じゃったが、鍛えるにつれておそろしく乱暴になっていったぞよ。いやむしろ、あれが本性なのかも知れんが」

ネーア「妾も殺されるにしても相手を選びたいからのう。教えるだけ教えた後、惑星キイの別荘に逃げてふて寝したんじゃ」

シンノ「その別荘があの遺跡か?上にジェダイ・テンプルが建ってたじゃないか」

ネーア「あれには妾も驚いたぞよ。なんであんなことになってるんじゃ?そなたジェダイじゃろ、知らんのか?」

シンノ「そんなこと言われてもな……うーん。遺跡の上にテンプルが……」


 シンノは首をひねり、サンドイッチを一口齧った後、なんとか推測をひねり出した。


シンノ「……たしか惑星コンサルトのジェダイ・テンプルも、シスの遺跡の上に建てられていた。そこから湧き出るダークサイドのフォースを封じ込め、浄化するために」

ネーア「シスとしてはなんだか気に入らん話ぞよ」

シンノ「やかましい。……つまり、それと同じなんじゃないか?お前の別荘を見つけたジェダイが古代シスの遺跡と勘違いして、それを封じるためにあのテンプルを建てたんだ」

ネーア「むっ……あの別荘新築だったんじゃが。失礼な話ぞよ」

シンノ「たぶんお前が眠りについてから二、三百年経ってから見つかったんじゃないか。惑星キイは気候が厳しくて風化も早い、年代を読み違えても不思議じゃない」

ネーア「なるほど!そなた、頭いいのう!」


 ネーアははしゃいで膝をぱんと叩く。
その仕草はシンノの中の「シスの暗黒卿」のイメージから余りにもかけ離れたものだ。
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/01(日) 17:08:33.80 ID:Fjgaok1E0

シンノ「……なあ。お前、本当にシスなのか?」

ネーア「は?なんじゃ今更……力は失っておるが、妾はれっきとしたシスの暗黒卿ぞよ!……ちょっと見ておれ」


 ネーアは憤慨した様子で立ち上がり、バンサ・ミルクの空き瓶を取り上げてテーブルの隅に置いた。
席に戻り、その瓶のほうへ手を差し伸べる。


ネーア「ふうんっ……ふううううんっ!出ろ〜……出ろ〜……はあっ!」


 顔を真っ赤にして手を震わせて散々力んだ末、彼女の指先からパチッと小さな雷のようなものが走った。
雷は空き瓶を突き倒し、空き瓶は床に落ちて割れた。


ネーア「やった!やった!出たぞよ!シンノ、見たか今の!?今のが『フォース・ライトニング』じゃ!シス卿の必殺技ぞよ!」


 ネーアはよほど嬉しかったのか、シンノの肩を叩きながらぴょんぴょん跳ね回った。
その様子はますますシスらしくなく、シンノの心中は複雑だ。
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/01(日) 17:09:11.44 ID:Fjgaok1E0

シンノ「空き瓶倒すだけの必殺技かよ……どうも調子狂うんだよなあ。お前、ジェダイのほうが向いてるんじゃないか」

ネーア「……え?妾が?」


 ネーアはそれを聞くとぴたりと跳ねるのをやめた。
シンノが怪訝な顔をすると、彼女は少し寂しげに笑って答えた。


ネーア「……それは違うぞよ。妾はジェダイにはなれん」

シンノ「なれない?……どうして言い切れる?」

ネーア「――弟子になったら教えてやるぞよ、カカカカカ!」

シンノ「な……じゃ、じゃあいい!」


 ネーアはにやにやしながら食事に戻った。
シンノは勧誘に辟易して口を利かなかったが、内心ではネーアとそのライトセーバーの謎について考えていた。
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/01(日) 17:42:57.69 ID:u11QJeo40
ちょっとすごいスタンガンみたいなライトニング
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/01(日) 20:42:03.50 ID:128R0jhg0
R3-C3くんかわいい 磨いてあげたい
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/02(月) 17:14:03.33 ID:1NqFu9AL0

 銀河標準時の時計の短針が半回転した頃、惑星ハクカの首都キタクシーに夜がやってくる。
反乱同盟軍の将軍と女兵士、料理人ドロイドはその繁華街を訪れていた。
けばけばしいネオンサインとごちゃ混ぜの音楽の中を、雑多な人混みが血液のごとく流れていく。
巡回警備中のストームトルーパーもいくらか混じっていたが、その数は人間とエイリアンとドロイドが入り混じった群衆に対してあまりにも少なかった。


シカーグ「はぐれるなよユスカ……うわっと!」ドンッ

<オイキヲツケロ!

シカーグ「ああ、すまんすまん……」

ユスカ「ここは相変わらずゴチャゴチャしてて……私、キライだな」

<ヨーソコノネーチャン、オレトノマネーカ?

C7-BDB『オイオッサン、ヤメトイタホウガイイゼ。ソイツ、トンダジャジャ馬ダカラヨ!』

ユスカ「あんたはいちいち私をバカにしないと喋れないわけ!?」

シカーグ「おいおい、そのへんにしておけ。例の酒場に着いたぞ」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/02(月) 17:14:52.01 ID:1NqFu9AL0

 シカーグは睨み合う一人と一体を引き連れて「いかがわしい酒場」に入る。
真っ先に耳に飛び込んできたのは、真っ黒な目をしたエイリアンが奏でる陽気なメロディ。
薄暗い店内の客席では、様々な姿の客たちが様々な言語で言葉を交わしている。
ここにもいくらかストームトルーパーが混じっていたが、ヘルメットを脱いで酒をあおっているところを見ると警戒する必要はないか。


ユスカ「……やれやれ、ここも外とあまり変わらないみたい」

店主「おいあんたら!ドロイドはお断りだ、外で待たせてくれ!」

シカーグ「……だそうだ。C7、悪いが……」

C7-BDB『ハイハイ。どろいどハ損ダゼ』スタスタ

ユスカ「……あー、しょうぐ……シカーグさん。私も外で待ってていい?」

シカーグ「この類の店にはこれからも来ることがあるだろう、この機会になれるんだな……このあたりに居ろ、俺は運び屋を探してくる」

ユスカ「はいはい……」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/02(月) 17:15:39.61 ID:1NqFu9AL0

 ユスカは店の奥に向かうシカーグと反対に出ていくC7-BDBを見送ると、カウンターに腰掛けた。
隣の客の飲み物を指差して、これと同じもの、と店主に声をかける。
やがて店主が不愛想な顔で差し出したジャワ・ジュースを一口飲むが、思わず顔をしかめて呟いた。


ユスカ「うええ、まっず……」

隣の客「ん?おう、なんだ姉ちゃん、喧嘩売ってるのか?」

ユスカ「あっ、ごめん。あんたの味覚にケチつけてるわけじゃないの、決して……」

隣の客「お前、俺のことをバカにしてるだろ?」

ユスカ「してないって。謝ったでしょ、絡まないでよ」

隣の客「なんだと!?」ガタッ

ユスカ「何よ!?」ガタッ
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/02(月) 17:16:38.94 ID:1NqFu9AL0


ジャワ「……!……?」

C7-BDB『オイコラ!売リ物ジャネエゾ!?』ガー

ジャワ「!」タタタ…


 その頃店外の軒下では、C7-BDBが物欲しげに近寄ってきたジャワを追い払ったところだった。


C7-BDB『フン!ドコノ田舎者ダカ知ラネエガ、どろいどダカラッテナメルヤツハタダジャオカネエ……』

R3C3『ポポピーポ』

C7-BDB『ン?何ダあすとろめく。オ前モ待タサレテルクチカ?』

R3C3『ピポポ プウウー』

C7-BDB『アア、マッタクダゼ。充電ト少シノおいるダケデ動ケル俺タチガ、アンナ面倒臭イえねるぎー補給ノタメニ待タサレルナンテヨ』

R3C3『ポポピーポ ピポポ』

C7-BDB『オ前ハ料理人ドロイドダロッテ?イヤ、ソレハ外側ダケダ。俺ノ電子頭脳ハレッキトシタばとる・どろいど。生マレナガラノ兵士サ』

C7-BDB『ソレヲゆすかノ奴……トイウノハ俺ノ手下ノ人間ダガ、俺ヲマルッキリ馬鹿ニシテイヤガルンダ。失礼ナハナシダ』

R3C3『プウウー ポポピーポ』

C7-BDB『エ?ツイサッキボロボロノ宇宙船ヲ修理サセラレタッテ?オ前モ苦労人ダナ、主人ハドンナヤツダ?』
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/02(月) 17:17:34.94 ID:1NqFu9AL0

 ――物語は店内、カウンター席に戻る。
些細なことから始まった喧嘩は今、最高潮に達しつつあった。


隣の客「このメスガキが!俺は十二の星系で死刑を宣告されてる札付きだぞォ!?」

ユスカ「ハッ、その歳でそれしか自慢することないわけ?」

隣の客「こんの……!もうガマンならねえ!」ジャキッ


 怒り心頭の悪人はついにブラスターを抜く。


ユスカ「じゃあどうするっていうのよッ!」ジャキッ バシュッ


 しかし相対するユスカはそれを上回る速さで発砲した!


隣の客「うぎゃあっ!?――あああ!俺の腕がぁ!」

ユスカ「……あっやば……」チラッ


 吹き飛んだ右手首を押さえてのたうち回る相手を見て正気に戻ったユスカは、顔を青くして店内を見回した。
談笑と音楽が止まり、客と音楽家の視線がユスカに集まる。

 ――しかし三秒もしないうち、何事もなかったかのように音楽が再開。
それに続いて喧噪も戻る。
ストームトルーパーさえも面倒くさそうに目をそらし、見て見ぬふりを決め込んだようだった。
ユスカはこの酒場において発砲が日常茶飯事であることを理解する。


ユスカ(やることやっといてなんだけど……私、やっぱりここキライ……)
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/02(月) 17:18:46.68 ID:1NqFu9AL0

 隣の客はちぎれた手首を拾ってすごすごと店を後にした。
運が良ければ縫合できるだろう。
それと入れ替わりに、店の奥からシカーグが姿を現す。
どういうわけか、その後ろから毛むくじゃらのエイリアン――ウーキーがついてきた。


シカーグ「ん?何かあったのか?」

ユスカ「え、ええまあ、ちょっとしたトラブルが……それより、そのウーキーは?」

シカーグ「彼はチューバッカ、ちょうどよさそうな船の副操縦士だ」

チューバッカ「ムオオーン……」

シカーグ「向こうに正操縦士もいるらしい、一緒に行くぞ」


 シカーグとユスカとチューバッカは店の奥に向かった。
他の席から区切られたブース席で、それらしきコレリア人の男がショッチ酒をちびちび飲んでいる。


チューバッカ「ムオオーン」

ハン「おっ、チューイー。今度はマシな商売相手を見つけてきたか?……お初にお目にかかるな、俺はハン・ソロ。『ミレニアム・ファルコン』号の船長だ」

シカーグ「よろしくミスター・ソロ。私は……そうだな、ギメールとでも呼んでくれ」

ハン「ギメール?ハッ、人妻とホテルにしけこむとき台帳に書くような名前だな。まあいい、座れよ。そっちの嬢ちゃんも」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/02(月) 17:19:36.88 ID:1NqFu9AL0

 シカーグとユスカはハンの向かいの席に座った。
チューバッカが隣に座るのを一瞥してから、ハンは話を切り出した。


ハン「で、荷物は何だ?」

シカーグ「私と彼女、あとドロイドが一体」

ハン「それだけか。行先は?」

シカーグ「惑星キイだ。往復でな……そうそう、向こうで一人増えるかもしれない。そいつも運んでもらおう」

ハン「惑星キイか……あのあたり、昨日から帝国軍の検問が厳しくなってるんだよな。俺たちは平気だが、あんたたちは?」

シカーグ「行きは大丈夫だが、帰りは状況による」

ハン「フン、その『向こうで増える奴』が厄介者らしいな……前金で3000、帰ってきたら4000頂こう」

ユスカ「7000!?星系内なのに!?」

ハン「俺は帝国軍相手のリスクは嫌いでね。そのくらい貰わないとやる気が出ない」

ユスカ「しょうぐ……シカーグさん。こいつ吹っ掛ける気だよ、他の奴を探そう」

ハン「最近QC星系は物騒だからそうそう居ないと思うがね」

シカーグ「……4000にならないか?」

ハン「……6500」

シカーグ「どう頑張っても4500しか払えん」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/02(月) 17:20:20.47 ID:1NqFu9AL0

ハン「……駄目だね。そこまであんたを信用できない」

シカーグ「偽名だからか?」

ハン「そうじゃない。あんたのその目だ」

シカーグ「嘘つきの目か」

ハン「逆だ。バカがつく正直者の目だ。いつも貧乏くじを引く厄介のタネだ」

シカーグ「……当たってる。他を探すよ」ガタッ

ユスカ「……」ガタッ

ハン「幸運を祈るぜ、ミスター・ギメール、お嬢さん」


 ハンは席を立つ二人をキザな仕草で送り出した。


チューバッカ「ムオオーン……」

ハン「ああ、そうだなチューイー。届け物のついでに小銭でも稼ごうかと思ったが……QC星系はどいつもこいつもしけてる」

ハン「おとなしくジャバの使い走りをやってる方が儲かりそうだ。船に戻ろうぜ」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/02(月) 17:20:58.92 ID:1NqFu9AL0

ユスカ「いけすかないヤツ!」

シカーグ「まあ人を見る目はあるみたいだったがな。さて、どうしたものか」

「おい、お二人さん」


 ブースを出た二人に、背後から声をかける人影がある。
振り返った二人はぎょっとした――そこにいた男が、祭で売っているようなお面を被っていたからだ。


ユスカ「……何よそれ、変装?」

お面の男「船を探してるんだろ。俺の船なら4500で請け負うぜ」

シカーグ「……盗み聞きしていたな。4000にしろ」

お面の男「びた一文まからないね」

ユスカ「何よコイツ、話にならない。しょうぐ……シカーグさん、もう行こうよ」

店主「おい、ドロイド野郎!勝手に入ってくるんじゃあねえ!」


 そのとき、入口の方から店主の罵声が聞こえてきた。


C7-BDB『ウルセエ、緊急ダヨ!黙ッテロ!』ノシノシ


 銀色の料理人ドロイドがその制止を振り切って店内に踏み込んでくる。
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/02(月) 17:21:55.14 ID:1NqFu9AL0

C7-BDB『オウ、オ二人サン!』

ユスカ「C7!何勝手に入ってきてるの!?」

シカーグ「はあ、お前ってやつは……」

C7-BDB『何ダヨソノ態度ハ?トビキリ良イにゅーすヲ持ッテキテヤッタッテイウノニ……』

ユスカ「とびきりいいニュース?」

C7-BDB『アア、ッテイウノモ――アレ?何ダ、モウ知リ合イニナッテタノカ?』

お面の男「……?」


 独り合点するC7にユスカは苛立った。


ユスカ「何の話?もったいぶってないでさっさと言いなさいよ」

C7-BDB『ナンダト!?』

シカーグ「C7、教えてくれないか?」

C7-BDB『……ソノオ面ノヤツガ〈尋ネ人〉ナンダヨ』

ユスカ「こいつの船に乗るってこと?冗談じゃない、こんな得体の知れない奴!」

C7-BDB『違ェヨバカ!イイカ、ヨク聞ケ』

シカーグ「お、おい、声が大き――」
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