【SW】シス「わらわの弟子にならんか?」ジェダイ「断る!」【オリキャラ】

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125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/08(日) 17:35:52.90 ID:itCG4WEu0

マーズ「行くぞ……!」シュザッ ブウンッ!


 マーズがジット・セーバーを振りかぶって突進。
リズマめがけて横殴りの一撃を繰り出した。


リズマ「くっ!」ビシュンッ

マーズ「フンッ!」ブウンッ

リズマ「ふっ……!」バチッ!


 二人の力量差は数合打ち合っただけでも明らかだ。
しかしそのとき側面からシンノが割り込む。


シンノ「そこまでだ!」ブウンッ!

マーズ「チッ……!」バチッ!

シンノ「セイッ!」ブウンッ

マーズ「小癪な!」バチッ ドウンッ

シンノ「はあっ!」ドウンッ
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/08(日) 17:36:43.58 ID:itCG4WEu0

 双方のフォース・プッシュが激突し距離が開くと、すかさずリズマが飛び込む。
シンノが呼吸を整える一方で、マーズは連続での戦闘を強いられる。


リズマ「ミャーズクの借りを、返す!」ブウンッ

マーズ「ぬうっ!」バチッ

シンノ「まだまだあ!」シュザッ ブウンッ

マーズ「くっ……!」バチバチ


 マーズはリズマとシンノのライトセーバーをなんとか受け止める。
数の不利は明らかだが、彼女の心中で燃え盛る感情がダークサイドの力を増幅している。


マーズ「なめるなあ!」ドウンッ

シンノ「ぐおおっ!」ブワッ

リズマ「うあっ……!」ブワッ
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/08(日) 17:38:13.05 ID:itCG4WEu0

 一気に解放されたフォースの力が二人を吹き飛ばした。
マーズは目をぎらつかせつつ、立て続けにリズマに襲いかかる。


マーズ「はあっ!」ブウンッ

リズマ「ううっ……!」バチッ

マーズ「フッ」ニヤリ


 リズマは追撃を間一髪防いだが、マーズは更なる攻撃を隠し持っていた。


マーズ「フンッ!」クルッ ドスッ

リズマ「ッ……!」


 鍔迫り合いの形からセーバーをひねり、短い刃でリズマの腹部を突き刺した。


シンノ「!?リ、リズマ!」

リズマ「……」ガクッ ドサッ

マーズ「……次は貴様だ」クルッ

シンノ「……!」


 ――シンノの精神にジェダイ全滅の悲劇がフラッシュバックした。
ジェダイにあるまじき感情を燃料にして、マーズめがけ突進する。
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/08(日) 17:42:56.61 ID:itCG4WEu0

シンノ「うおおああッ!」ブウンッ

マーズ「うっ!?」バチッ

シンノ「この外道がッ!」ブウンッ

マーズ「こ、この力……だが!」バチッ クルッ


 マーズはその力に押されながらも再びジット・セーバーを回転させた。
惑星キイでの戦いのリフレインの如く、彼女のセーバーがシンノのセーバーを挟み取る。


マーズ「捕らえた――」

シンノ「ふんっ!」ジャキッ バシュバシュバシュ!


 しかしそれを吹き飛ばすよりも早く、シンノがブラスターを抜いた。
腰だめで放った連射がリズマの傷の意趣返しの如く、マーズの腹にいくつも穴を空けた。


マーズ「――き、貴様……ジェダイが、ブラスターを……」ヨロッ

シンノ「はあっ!」ブウンッ

マーズ「ぐあっ……」ガクッ


 シンノは乱暴にライトセーバーを引き離し、時計の針のように払った。
マーズの両手首が切り落とされて床にぼとりぼとりと落ち、ジット・セーバーが転がり出る。


シンノ「……」パシッ バチチ…

マーズ「……!」

 シンノはそれをフォースで引き寄せ、左手に握る。
二本のセーバーと交差させ、跪いたマーズの首に狙いを付ける。
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/08(日) 17:57:43.27 ID:itCG4WEu0

ネーア「よし、それでこそ我が弟子じゃシンノ……」


 ネーアは満足げに頷いた後、無感動に宣告した。


ネーア「さあ、殺せ」

マーズ「な……マ、マスター……」

ネーア「そなたのマスターになった覚えなど無いぞよ」

シンノ「……丸腰の相手は殺せない」

ネーア「カカカ、まだ言うか」


 ネーアは哀れむように、あるいは愛おしむように笑いかける。


ネーア「そなたが仲間を何より大切にしておるのはわかった。これはもっともな感情、実に道徳的な感覚じゃ」

ネーア「しかしライトサイドの力では、それを完全に守るには不足ぞよ」

シンノ「……不足……不足、では……」

ネーア「だからジェダイは滅びた」

シンノ「……」

ネーア「そなたはついさっき『怒り』の力を無意識に使い、このジェダイ崩れを破った。じゃがその不完全な力では、ダース・ヴェイダーや皇帝にはおそらく太刀打ちできん」

ネーア「彼らをも滅ぼせる本当のダークサイドの力……それを、妾が教えてやろうぞ。さすれば、いずれはジェダイ・オーダーの復讐も果たせよう」

ネーア「その最初の一歩として、そやつを殺すのじゃ。さあ早くやれ、シンノ」

シンノ「……」
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/08(日) 18:42:20.80 ID:bKwdb5On0
シスっぽい発言
シスだけど
ドゥークー感
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/09(月) 19:29:10.09 ID:XeC3p+aR0

 シンノはなおも逡巡したが、マーズの振る舞いを思い出すたび手に力が込もっていく。
だがそのとき、背後でリズマが意識を取り戻した。


リズマ「う……シ、シンノ、さん……?」

シンノ「!……俺は……」


 シンノは何度かかぶりを振った後、ジット・セーバーを投げ捨て、自分のセーバーも収めた。


シンノ「……俺は……ジェダイだ。仲間たちが、そうだったから」


 シンノがコンソールのほうに手を伸ばすと、モニターが何度か切り替わり、微かに響いていた低い音が途切れる。
バリアー発生器のスイッチが切られたのだ。
脱力して倒れ込むマーズを無視し、シンノはリズマに駆け寄る。

シンノ「リズマ、大丈夫か?」

リズマ「……たぶん……ちょっと、歩けそうには、ありませんが……ゲホッゲホッ」


 ネーアは不服そうに鼻を鳴らした。


ネーア「やれやれ、強情な奴じゃ……ふうんっ!」


 彼女がフォースでどうにか拘束を外して二人の下へ戻ったとき、背後の扉が開いた。


ワイマッグ「――そこまでだ、ジェダイ」
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/09(月) 19:29:54.69 ID:XeC3p+aR0

 ワイマッグ提督と、十数人のストームトルーパーが姿を現す。
トルーパーたちは入口の周囲を固めるように展開し、ブラスターライフルやエレクトロスタッフを油断なく構える。
シンノがリズマをかばいつつ警戒する一方、ネーアは能天気に話しかける。


ネーア「ふむ、そなたが大ボスのようじゃな?」

ワイマッグ「そんなところだ。私は帝国軍QC方面軍司令官、セード・ワイマッグ……」


 ワイマッグは床に倒れ込んでぴくりとも動かないマーズに目をやった。


ワイマッグ「……貴様らのことは彼女から聞いている。シンノ・カノス、リズマ・ショーニン、そして……ええと、何某ネーア」

ネーア「な、何某とは何事じゃ!妾は――」


 シンノがやや無気力に目配せし、ネーアは押し黙った。
ワイマッグはその仕草が気に入らなかったように少し目をひそめる。


ワイマッグ「……とにかく、貴様らが反乱軍と繫がっていることはわかっている。とりあえずヘファイストスの尋問室まで来てもらおう。俺はそこのバカのように決闘を申し込んだりはしな――」


 そのとき突如激震が走り、制御室の面々は大きく揺すぶられた。
照明がめちゃくちゃに点滅したあと、緑色の光が閃いた。
シンノが抜き放ったライトセーバーの光だ。
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/09(月) 19:30:37.97 ID:XeC3p+aR0

ワイマッグ「何だ――いかん!奴らを射殺しろ!」
シンノ「突っ切るぞ!」


 シンノは好機を逃さず、リズマを左肩に担いで入口に突進した。
ネーアもありったけのフォースを脚に注ぎ込みこれに続く。
ストームトルーパーたちがめちゃくちゃに発砲する中をすり抜ける。
かろうじて組み付いてきたトルーパーを斬り捨て、押しのけ、出口へ。


ワイマッグ「貴様らは全員、クローン戦争で死ぬべきだったのに!」ガシャッ バチバチバチ


 トルーパーが取り落としたエレクトロ・スタッフを拾い、ワイマッグが立ちはだかる。
走り抜けようとするシンノめがけ、帯電した棍棒で水平に薙ぎ払う。
シンノはとっさにネーアの手を掴み、跳躍した。


ワイマッグ「なんのォ!」ビュンッ ビュウンッ!

シンノ「ハアッ!」ブウンッ!


 ワイマッグはおそるべき速さで背後にスタッフを繰り出したが、着地したシンノの振り向きざまの斬りつけが一歩早い。


ワイマッグ「ぐうっ!?」バチュンッ


 スタッフは柄を切断され、刃はワイマッグの右頬をかすめる。
彼が怯んだ隙に、シンノはドアを潜り抜けた。
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/09(月) 19:31:38.42 ID:XeC3p+aR0

ワイマッグ「くっ……追え!隔壁を封鎖しろ、絶対に逃がすな!」


 ワイマッグの号令の下、何拍か遅れてトルーパーたちがそれを追う。
ワイマッグ自身は右頬から白煙を上げながらもコンソールに駆け寄る。


ワイマッグ(バリアーのスイッチが切れている。やはり奴らの主目的はバリアーの排除……だとすればさっきの振動は!)カチカチ


 すばやくコマンドを入力し、バリアーの再起動を試みる。
しかし駆動音が聞こえてくることはなく、かわりに返ってくるのはバリアー放射器損傷を示すエラー。


ワイマッグ(バリアー放射器が破壊されている……やはり反乱軍の!)


 ワイマッグが顔を上げると、その推測の答え合わせのごとくXウィングの三機編隊が展望窓の前を通り過ぎていく。
その先頭をいく機体のキャノピーに、コマンダー・コーチのものによく似た装甲服……マンダロリアン・アーマーが見えた気がした。
彼らはバリアーが切れる瞬間を待ち受け、放射器にプロトン魚雷を打ち込んだに違いない。
ワイマッグは焦燥に駆られながらコンソールを操作し、ジェダイ侵入をうけて旗艦に応援を呼びに行ったコーチに連絡を取った。


コーチ『提督、敵の奇襲です!今すぐシャトルでそちらに戻ります、シュコー、シュコー』

ワイマッグ「こっちは私がなんとかします、コマンダーはTIEファイターでラグナロクを守ってください!いかにバリアーを剥がされようと、ラグナロクだけは守らなければ……!」

コーチ『承知しました……!』
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/09(月) 19:32:43.19 ID:XeC3p+aR0

 ワイマッグはすぐに通信を切り、メインコントロール・ルームへ戻ろうと踵を返す。
そのとき、床に横たわるマーズの体が微かに震えている気がして足を止めた。


マーズ「……ヒッグ……グスッ……」


 腹と腕にひどい傷を負っているが、たしかに息がある。
ワイマッグはすっ飛んでいって彼女を抱え起こす。


ワイマッグ「マーズ管理官!?お怪我は――」

マーズ「……じゃあ、私はぁ……私は、どうすればよかったのよぉ……グスッ」


 彼女は泣いていた。
傍若無人なダークジェダイであるはずのジヒス・マーズが、少女のように弱弱しく泣きじゃくっていた。


マーズ「父さんも……マスターも……ヴェイダー卿もっ……ヒッグ……みんな、私を見てくれないっ……」

マーズ「私がどんな気持ちでいるか知らないでっ……ズズッ、置いて、いく……見捨てていく……ねえ、教えてよっ」


 マーズはワイマッグの襟元を掴む――
否、手首が切り落とされているので、虚しくもがいただけだ。


マーズ「私はどうすればよかったのっ……何を信じればよかったのよっ……」

マーズ「なんで……なんでこんなことになっちゃったのよぉ……」


 マーズは泣きはらしたまま意識を失った。
ワイマッグは眉間にひどく皺を寄せた。
しかしすぐにコムリンクを取り出して、医務室の番号をプッシュした。
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/09(月) 19:33:17.59 ID:XeC3p+aR0

 三人はラグナロクの無機質な廊下を駆け抜ける。
時折目の前を遮るトルーパーや隔壁が現れればそのたび迂回、あるいはシンノがライトセーバーで排除した。
ジェダイの身体能力にも限界はあり、やがてその歩みは遅くなる。
しかし決定的な阻止に遭うこともなく、ジェダイたちの脱出の試みは続いていた。


シンノ「急げ、ドッキング・ベイまでもう少しだ」

ネーア「ドッキング・ベイたって、船はどうするんじゃ?ここただの砲台じゃろ、ろくな船なかろう」

シンノ「R3にコールして、近くまで呼び寄せておく。ベイを占領したらそのまま乗り込んでおさらばだ」

ネーア「なるほどのう!」

シンノ「……なあ、ダース・ネーア」


 再び意識を失ったリズマを担いだまま、シンノは後ろからついてくるシス卿に話しかけた。


ネーア「何じゃ?」

シンノ「……俺は、たしかにあまりジェダイに向いていないのかもしれない。あまりにも、執着が強すぎる」

ネーア「ふむ」


 シンノは担いでいるリズマの右手を見た。
彼女は腹に穴を空けられてもなお、貸してやったライトセーバーをしっかりと握っていた。


シンノ「でも、だからこそ……だからこそ、俺は、ジェダイであることを諦めたくない」

シンノ「仲間たちが殉じたものを、貶めるようなことだけは……したくは、ないんだ」


 シンノは悩まし気に俯いた。
自分の手の中の、ジェダイとシスとどっちつかずのセーバーが目に入った。
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/09(月) 19:35:31.37 ID:XeC3p+aR0

ネーア「うんうん……」コクコク

シンノ「……何か、ないのか?」

ネーア「何かって?」

シンノ「『そんな考えは甘い!』とか……」

ネーア「甘いのか?」

シンノ「いや、そういうわけじゃないが……」

ネーア「カカカカカ!」


 ネーアはシンノの悩みを笑い飛ばす。
なんでもないような口調で、若きジェダイの背中に言葉を投げかける。


ネーア「そなたがそうしたいならそうせい。ジェダイ・オーダーは滅びたのじゃ、そなたが何かに執着していようと誰も気にはせん」

ネーア「執着の果てに善行があるのなら、人々はそなたに憎んだり恨んだりはせん。感謝こそすれ……」

ネーア「満足がいくまでジェダイを名乗るがよい、シンノ。それができるのがこの時代に生まれた特権ぞよ」


 彼自身、ネーアの言葉はあまりにも都合がいいと思った。
しかしたとえば――たとえば今後も反乱同盟軍の一員として戦うならば、その生き方が障害になるようなことはないのでは――。


ネーア「もっと気楽になれ、シンノ」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/09(月) 19:36:14.51 ID:XeC3p+aR0

シンノ「……」

シンノ「……ああ、そうしてみるかな……しばらくは」

ネーア「うむ。それでジェダイに飽きたら妾の弟子になることじゃ。カカカカカ!」


 そして、笑ってごまかしてはいるが、彼女の言葉には何か底知れぬ感慨が含まれているような気がして。


シンノ「……なあ、ネーア。このライトセーバーの刃、緑色にもなるんだな」

ネーア「ん?ああ……それ、妾のセーバーか……うむ……よく見つけたのう」

シンノ「……『この時代に生まれた特権』と言ったが……お前はそれが、得られなかったんじゃないのか」

ネーア「……どういう意味じゃ?」

シンノ「……お前も、『ジェダイ崩れ』なんじゃないのか」


 シンノは足を止め、振り返った。
ネーアは依然笑顔だった。
しかしいつものからから笑いとは違う、どこか寂し気な、失った何かを懐かしむような笑顔だった。


ネーア「……やれやれ。半端者同士、隠し事はできんようじゃな。弟子は師匠に似るものか」

ネーア「ならば妾もマスター・ヨーダのように、迷いなくいられるはずだったんじゃがな」
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/09(月) 19:37:11.76 ID:XeC3p+aR0

ユスカ「なろぉっ!」グインッ カチッ


 Xウィングは捻り込むような機動でTIEファイターに襲いかかり、レーザー砲の四連射を浴びせた。
偏向シールドも持たないTIEファイターはあっという間に火だるまになって爆発四散する。


ユスカ「これで4機目……!」


 ユスカは照準スコープをどかし、斜め後方から接近する新たな敵機をローリングで振り払いつつ周囲を見回す――あたり一面敵、敵、敵。
すでに何度か僚機によってラグナロクへの突入が図られているが、ラグナロクや護衛艦隊の対空砲火、あるいはTIEファイターの妨害によっていずれも失敗に終わっている。
果敢に攻撃を続けてはいるが、反乱軍戦闘機部隊の消耗は激しい。
しかしシカーグやユスカはバリアー放射器への攻撃で魚雷を使い果たしており、援護に徹するしかなかった。


ユスカ「あっ、バカ!」


 焦りからかYウィングが一機、単独で突入を図り、直上から襲いかかったTIEファイターに滅多打ちにされて炎上した。
ユスカはその機体のペイントに見覚えがあった。
パイロットの顔も知っていた。
その両方が、次の瞬間纏めて巨大衛星砲台に激突して粉々になった。

 ユスカは下手人の敵機――やけに動きのいいTIEファイターを目で追った。
僚機が仇討ちとばかりに襲いかかったが、キリモミ回転しながらの巧みな方向転換で振り切られてしまう。
ずっと視界の隅で見えていた気がする――突入経路を見抜き、ずっとその周辺に陣取る姿。
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/09(月) 19:37:58.62 ID:XeC3p+aR0

ユスカ「あのTIEファイターは……?」

?『集中しろユスカ!』

ユスカ「えっ!?うわっ!」グインッ


 ユスカは無線の警告で背後の敵機に気づき、慌てて急旋回した。
間一髪、レーザー光弾が横をすり抜けていく。


ユスカ「ありがとう……誰?将軍?」

シンノ『俺だ。シンノ・カノスだ』

ユスカ「シンノ!?脱出できたんだ!」


 ユスカは喜色満面でビーコン反応を追い、ラグナロクの対空砲火から退避してきたWウィングを見つけた。


シンノ『苦戦しているようだな……今度は俺が突入する、援護してくれ』

ユスカ「でも、突入経路には妙に強いのが居座ってて……!」

シンノ『ああ、あの動き……奴はたしかに手練れだ』


 シンノはそのコックピットから、かのTIEファイターを睨みつけた。
その機動とフォースの感覚が、彼に惑星キイ上空での戦闘を思い出させた。


シンノ『……だが、相手をするのは初めてじゃない』
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/14(土) 22:07:19.92 ID:NEKMlIf50

管制官「ワイマッグ提督!」


 ラグナロクのメインコントトール・ルームは反乱軍の迎撃に忙しい。
右頬に絆創膏を貼ったワイマッグはその中央で指揮を執っていたが、そこへ管制官が声をかける。


ワイマッグ「何だ?」

管制官「ただいま、反乱軍の攻撃を分析したのですが……どうやら、ラグナロクのバイタルパートへの直接攻撃を狙っているもようです」

ワイマッグ「バイタルパート……リアクターか?」

管制官「はい、少々危険かと……」

ワイマッグ「……コマンダ・コーチもいる、そうそう防御が破られるとは思えんが……よし、とりあえず私はマーズ管理官を移送するシャトルに便乗してヘファイストスに戻る」

ワイマッグ「だが決して貴様らを見捨てるわけではないぞ。的確な敵の攻撃を防ぐには、旗艦からの指揮で護衛艦隊を連携せしめることが必要だ。ところで砲撃準備は?」

管制官「エネルギー充填、現在90%まで完了しております」

ワイマッグ「よろしい、完了し次第砲撃せよ。反乱軍基地を蒸発させてやれ」


 そう言い残し、提督はコントロール・ルームを去った。
責任者となった管制官は額に滲んだ汗を拭いつつ、手元のコンソールに目をやった。
90%の表示が91%に変わる。
それはそのまま、ハクカの反乱軍が絶滅するまでのカウントダウンだ。
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/14(土) 22:07:45.39 ID:NEKMlIf50

コーチ『シュコーッ、シュコーッ、何人来ても同じこと――ぬう!?』


 コマンダー・コーチはTIEファイターのキャノピー越しに見覚えのある機影を見とめた。


コーチ(Wウィング……あのジェダイか!ラグナロクから脱出したというのか!?)


 Wウィングは反乱軍機を何機か引き連れ、一本の矢のごとくラグナロクに突進してくる。
頭上のヴェネター級艦から熾烈な砲撃が降り注ぎ、護衛を何機か撃墜、あるいは離脱せしめる。
しかしWウィングとXウィングが一機、蛇行で砲撃を潜り抜け、依然として接近しつつあった。


コーチ『〈アルテミス〉!こちら〈ヘファイストス〉ファイター部隊!直下の敵機への砲撃を止めろ、我々が仕留める!――マシャス!ヴァン・リー!行くぞ!』

TIEパイロット1『はっ!』

TIEパイロット2『はっ!』


 コーチは砲撃を止めさせ、二機の僚機を引き連れてWウィングに襲いかかった。
上方から急接近しすかさずレーザー砲を撃ち込むが、敵機は二手に分かれてこれを回避した。


コーチ『貴様らはXウィングをやれ……ジェダイは私が相手をする!』
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/14(土) 22:08:16.29 ID:NEKMlIf50

シンノ「来たか……!」

ネーア「例の奴じゃな。集中しろ、シンノ!」

R3-C3『ピポポ ピポポ プウウー』


 シンノは自分の背後に回りつつある例のTIEファイターに全神経を集中した。
二機に追われるユスカ機、背後のシートでぐったりしているリズマも気になるが、片手間に勝てる相手ではない。


コーチ『シュコーッ、シュコーッ……さっきのはほんの挨拶代わりよ!』


 一旦突入ルートから逸れて様子を見るシンノ機の斜め下方から、コーチのTIEファイターが再度襲撃する。


シンノ「R3ッ!」グインッ

R3-C3『ポポピーポ』


 Wウィングは捻りこむようにしてレーザーをかわし、再度ラグナロクへの接近を図る。


コーチ『逃がさん!』グインッ


 しかしコーチはひらりと回転して上向きの慣性を殺し、ほとんど距離をおかずに追従してくる。
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/14(土) 22:09:15.78 ID:NEKMlIf50

シンノ「やはりついてくる……だが今回は、それが命取りだ……!」


 シンノは減速覚悟で機体を急旋回させ、コーチ機の視界から消えた。


コーチ『焦りおって……ぬうっ!?』


 コーチは目を見開いた。
シンノ機を狙ったラグナロクからの対空砲火が猛然と襲いかかったのだ。
機体をロールさせてこれを回避するコーチだったが、その一瞬は致命的な隙となった。

 コーチ機の上に影が差す。
ヤマタイティア星系の太陽を背に、Wウィングが突っ込んでくる。


シンノ「喰らえ!」


 Wウィングのレーザー砲の連射がコーチのTIEファイターをハチの巣にした。
吹き飛んだ破片がコーチの装甲服を貫き、全身のあちこちに食い込む。


コーチ『――ぬ、ぬかった……ゴボッ』


 コマンダ・コーチはみるみる赤く染まる視界の中に、ラグナロクのほうへ駆け抜けていくWウィング――ジェダイの背中を見た。


コーチ(――これで、私のクローン戦争も終わりか)


 直後、彼のTIEファイターは爆散した。
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/15(日) 00:53:39.67 ID:u5zHSJfS0
老兵去る
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:34:29.84 ID:0odu4eHO0

 Wウィングは四散したコーチ機の破片を撥ね飛ばしながら、三度ラグナロクへ接近を図った。
ラグナロクの表面に棘のように立ち並ぶターボレーザー砲群がそれを狙い、頭上のスター・デストロイヤーからの砲撃も再開される。
緑色の光弾が猛烈な吹雪のように飛び交う中をどうにか潜り抜けるようにしてジェダイは進む。


シンノ「くっ……このっ……!」グイン グインッ


 しかし一発が偏向シールドの右側を掠めた。
機体がガタガタと揺すぶられ、乗客席のシス卿が騒ぎ始める。


ネーア「や、や、や、ヤバいぞよ!ヤバいぞよシンノ!と、と、と、とりあえずさっきのは片付けたんじゃし、一旦出直すのは――」

シンノ「駄目だ!長引けば長引くほど、反乱軍の犠牲は増える……!」


 シンノは魚雷の照準画面に目をやった。
ラグナロクのリアクターへのロックオンは完了しているが、対空砲火に追い立てられているせいで速度が出すぎている。
このまま突っ込んでしまえば攻撃ステーション激突は必至。
かといって軌道をずらせば魚雷まで外れかねない。

 さらにスコープが、背後に三機のTIEファイターが出現したことを報せる――さっきの手練れの仇討ちか。
ラグナロクの対空砲に加えて背後の敵機までもがなりふり構わず集中砲火を浴びせてくる。
立て続けの被弾で偏向シールドが悲鳴――強度低下のアラートを上げる。
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:34:57.73 ID:0odu4eHO0

シンノ「フウウーッ、大丈夫だ、大丈夫。キイのときと同じだ……」

ネーア「そ、そなた……怖くないのか!?」

シンノ「怖ぇよっ!怖ぇけど……ジェダイだから……ジェダイでいるって決めたから、カッコつけなきゃな……!」


 並みのパイロットならば緊急退避を優先するところを、シンノは逆にさらに加速した。
そしてラグナロクのリング状構造の下部、骨格の隙間に飛び込む。
追跡中だったTIEファイターもこれにはついていきかね、急旋回して激突を回避するが、対空砲火の誤射で一機が爆発した。
いっぽうWウィングは粒子加速器の内側のようなごくごく狭いカーブした空間を、おそろしい速さで潜り抜ける。


ネーア「うああああ!シンノそなた正気かああー!?」

シンノ「ハア……ハア……!」


 しかし機体は徐々に減速しつつあった。
去り際、大きく曲がる軌道でラグナロクのリアクターに魚雷を撃ち込める速度まで――


シンノ「ここだっ……!」


 シンノは発射ボタンに置いた親指を押し下げた。
緊張のあまり感触は覚束なかったが、青白い噴射炎を引いて飛んでいく二発の魚雷が見えて、慌てて骨格の隙間から宇宙へ飛び出す。
思わぬ敵機出現に驚いた散発的な対空砲火を振り切り、ラグナロクを離れる。
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:35:37.21 ID:0odu4eHO0

 やがて対空砲の射程外に逃れると、シンノはキャノピーに背後の映像――ラグナロクの様子を投射し、ネーアとともにそれを見守った。
攻撃ステーションはすでに遠く、魚雷の行方は定かでない。


ネーア「……」ゴクリ

シンノ「……」ゴクリ

ネーア「……あ、当たったのか?」

シンノ「その、はず……」

 
 二人が少し不安になり始めたころ、ラグナロクの頂点部分から火花が走った。


シンノ「ん!?」

ネーア「シンノ、今のは――」


 立て続けに同じところからプロミネンスのごとき炎が高く、高く立ち昇った。
炎が直上のスター・デストロイヤーの船底をあぶるとともに、誘爆はリング状構造、そして砲身へと広がった。
ついにメイン・リアクターにも火が入る――光が迸る。

 次の瞬間、ラグナロクは木っ端みじんに吹き飛んだ。
無数の破片が周囲に飛散し、そのうちのいくつかがWウィングの偏向シールドを掠める。
その振動が、脅威の消滅を二人に現実味を持って伝えた。


シンノ「……」

ネーア「……」

シンノ「……や」

ネーア「や、やっ――」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:36:26.92 ID:0odu4eHO0

ユスカ『やったああああああ――っ!』


 横合いからXウィングが踊るようにローリングしながら接近してきた。
それを追う敵の姿はなく、ユスカの撃墜スコアは二つ増えたとみえる。


シンノ「ちょ……」

ユスカ『ヒャッホー!シンノ、やったね!キスしてあげたい気分!帝国のクソキャノンが……お見事!ボカーン!たーまやー!』


 Xウィングはパイロットの狂喜乱舞そのままにクルクルとアクロバットを披露した。
喜ぶタイミングを逸したシンノとネーアは顔を見合わせ、苦笑いする。


リズマ「うう……姉さんの、声……?」

シンノ「リズマ!?」


 その声を聴きつけ、後方のシートでリズマが意識を取り戻した。
なんとか起き上がろうとするのをシンノが止める。
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:37:04.94 ID:0odu4eHO0

シンノ「リズマ、大丈夫か!?」

ネーア「無理に動くでない!」
 
リズマ「シンノさん……大丈夫、です……たぶん」

ユスカ『リズマ?リズマに何かあったの!?』

リズマ「……大丈夫、姉さん、私たちは、勝ったから……みんなで、帰る……」ガクッ

ユスカ『リズマ?リズマっ!?』

シンノ「脈は安定している」

ユスカ『……あ、あらそう……』

ネーア「あんな雑な応急処置もやらないよりはマシらしいのう」

シンノ「じゃあお前がやればよかっただろ」

シカーグ『細かい話はあとだ、諸君』

シンノ「シカーグ将軍?」


 二機目のXウィングがWウィングの右側に現れる。


シカーグ『だがシンノ、私からも一言だけ祝わせてくれ。本当に、よくやってくれた』


 その風防越しに、マンダロリアン・アーマーの男がサムズアップを寄越した。


シンノ(……ユスカはあんたに似たらしいな)


 シンノは黙って同じ仕草でそれに答える。
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:37:33.05 ID:0odu4eHO0

シカーグ『とにかく、帝国軍が混乱してるうちに脱出しなければならん』


 シンノは再度後方の映像に目を向ける。
将軍の言う通り、帝国軍の艦船や航空機は煙を吹くものやらめちゃくちゃに飛び回るものやら、あからさまに混乱しているものばかりだ。


シカーグ『我々はこれからハイパースペースを通り、基地を脱出した艦隊との合流地点に向かう。君も一旦そうするのがよかろう、座標を送信する』

シンノ「……よし、受信した。R3、計算を頼む」

R3-C3『ピポポ ピポポ』

シンノ「それで、新居のあてはあるのか?」

シカーグ『ある。ただ、家探しのあいだは船で暮らすことになる……もしよければ、君もどうだね?』

シンノ「……」


 シンノはほんの少しだけ不安げな表情をして、隣のネーアを見た。
ネーアはニカッと笑って、彼の肩をぶっきらぼうに叩く。
シンノは同じように笑ったあと、無線に応答した。


シンノ「喜んで!」
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:38:05.39 ID:0odu4eHO0

ターキン『衛星砲台を破壊され、一度は居場所を特定した反乱軍を取り逃がした……か』

ターキン『ごく辺境のこと、スケールは小さい。主力艦にも沈んだものはいない。戦略的には無視しうるインシデントだ』

ターキン『――とはいえ敗北は敗北。このことが知れ渡れば帝国軍の不敗伝説を台無しにしかねないぞ、提督』

ワイマッグ「……承知しております。まことに申し訳ない、大失態でございます」


 翌日、ダン・ザ・フローの秘密通信室にて、ワイマッグ提督は3D映像に向かって頭を下げた。
映し出されているのはグランドモフ・ターキン――その影響力はヴェイダー卿をも超える、皇帝に次ぐ銀河帝国ナンバー2の人物だ。


ターキン『――お前をQC宙域提督から解任する。QC方面艦隊司令官からも解任』


 ワイマッグはヴェイダー卿との対面とは違う意味で息が詰まるような思いだった。
生々しい右頬の傷の上を汗が一粒伝っていく。


ターキン『オルトロ宙域の第二艦隊……インペリアル級スター・デスロイヤー四隻をQC宙域に移動する』

ターキン『その司令官、タクージン・シカーグをQC宙域提督および艦隊総司令官に任命』


 ワイマッグは滝のような汗をかきながら「お前は処刑だ」の一言を待っていたが、ふと彼の頭に疑問が浮かんだ。
自分が処刑やそれに等しい左遷の処分を受けるなら、なぜ後事のことを話してくれるのだ?


ターキン『この艦隊をQC宙域第一艦隊とし、これまで第一艦隊だったヴェネター級四隻は第二艦隊と改称』

ターキン『その司令官にセード・ワイマッグ、お前を任命する』
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:38:41.21 ID:0odu4eHO0

ワイマッグ「……!総督、私は……私は処刑されないのですか!?」

ターキン『通常の軍規に従えば、間違いなく処刑だ。しかし今回は三つの要因により、お前にもう一度チャンスを与えることにした』

ターキン『一つは防諜。辺境とはいえ提督……宙域のトップに君臨する者を処刑するのは、今回の敗北を察知される原因になりかねない』

ターキン『二つ目は人材不足。知っての通り、大戦中QC星系は分離主義勢力のホームグラウンドだった。ゆえに共和国軍、そしてその後継である帝国軍には、ここの地理や事情に精通している者はほとんどいないのだ――戦後、現場で経験を積んだお前を除けばな』

ターキン『その知識を処刑場の露にするには惜しいと判断した。シカーグ新提督も、QC宙域は足を踏み入れることさえ初めてだろう……よろしくサポートしろ、第二艦隊司令官』

ワイマッグ「……は、はっ!お任せください!」

ターキン『……そして、お前のその傷』

ワイマッグ「……?この頬の傷、でしょうか」

ターキン『反乱軍にジェダイがいるという報告は受けた。その傷は彼にライトセーバーで斬りつけられたんじゃないかね』

ワイマッグ「はっ、まったくもってその通りです……ご慧眼……」

ターキン『何年もジェダイと一緒に戦っていれば、その切り口くらい嫌でも覚える。お前の父も覚えていたはずだ』

ワイマッグ「……父をご存じなのですか」

ターキン『……その思い出と、ジェダイに立ち向かった胆力に免じて。これが三つ目の要因だ』


 ワイマッグは父の話を持ち出されたことに不満を表すでもなく、ただ、感慨深そうに黙り込んだ。
父の思い出、そしてその戦友であるコマンダー・コーチ……今はもう帰らぬ先達の思い出が、彼の頭の中を駆け巡る。


ワイマッグ「――はは、今日ほど親の七光りを有難く思ったことはありません」


 再び口を開いた時、彼の表情から緊張は消え、人間らしい感情と、若き将校らしい不敵な自信が戻っていた。
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:39:11.30 ID:0odu4eHO0

ターキン『だが気をつけることだ。その七光りも二度は通じん』

ワイマッグ「承知しました。シカーグ新提督のもと、必ずや反乱軍を殲滅してご覧に入れます……ところで」

ターキン『何だ?』

ワイマッグ「ヴェイダー卿の指揮下にある、ジヒス・マーズ管理官のことですが」

ターキン『ああ、彼女のことなら、ヴェイダーが今度……手を下す、と言っていたが』


 ワイマッグの背中に冷たいものが走る。
しかし彼は怖気づくことなく、強気に申し出た。


ワイマッグ「……では総督、もしよろしければ、彼女を私に引き渡すようヴェイダー卿に口を利いていただくことはできませんか?」

ターキン『……出来ないことはないが、お前は今の自分の立場をわかっているのか』

ワイマッグ「もちろんタダでとは申しません。『ラグナロク』は、完成以前に一度小惑星に向かって砲撃試験を行いました。私はそのときのデータを保管しております」

ターキン『それは私や関連部署に提出して当然のものではないかね。取引材料として成立していない』

ワイマッグ「いえ、データはもとより差し上げるつもりです。私が申し上げているのは……そうですね、言葉は悪いですが、口止め料とでも申しましょうか」

ターキン『誰に対してだ?』

ワイマッグ「クレニック長官へです」


 ターキンは口ごもった。
現在秘密裡に進められている超兵器計画のイニシアチブをターキンと争っている人物だ。
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:39:49.93 ID:0odu4eHO0

ターキン『……』

ワイマッグ「……」

ターキン『……フン。どこから聞きつけたんだか……政治が上手いな。実に小賢しい』

ワイマッグ「父よりも上手いでしょうか?」

ターキン『どうかな……マーズ管理官の件、ヴェイダーに言っておこう。データはひとまず私の執務室に送れ』

ワイマッグ「承知しました。整理して今日中にアップロード致します」

ターキン『……私でなければ気分を損ねてお前を処刑していたかもしれんぞ。どうしてこんな危ない橋を渡る?あのジェダイ崩れに惚れでもしたか』

ワイマッグ「……父上のことを思い出して、センチメンタルになりました」

ターキン『よく言う。ダークジェダイの手駒をどうする気か……とにかくデータは間違いのないよう取り扱えよ、口止め料まで取ったのだからな』


 ターキンは最後に釘を刺し、通信を切断した。
映像が消えると、ワイマッグはがくりと姿勢を崩した。
膝が笑って歩くことさえままならない。
汗がいよいよ激しく噴き出し、ワイマッグは何度も汗を拭う。
どうにか緊張の反動が消えると、彼は一度深呼吸をしてから通信室を出た。


マーズ「提督……」

ワイマッグ「うおっ!?」ビクッ


 部屋を出た途端、ワイマッグは飛び上がらんばかりに驚いた。
ドアの横に当のマーズが俯き加減で立っていた。
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:40:48.00 ID:0odu4eHO0

ワイマッグ「な、何をしている、こんなところで……」ドギマギ

マーズ「……その、お話が……たまたま、耳に入ったと申しますか……」ボソボソ

ワイマッグ(秘密通信室の壁が音を漏らすはずはない……こいつ、フォースか何かで盗み聞きしていたな)


 ワイマッグはヴェイダーに脅されたときのことを思い出しつつ、あらためてマーズを見やった。
いつもの黒装束は駄目になったと見えて、一般士官用の軍服を着ている。
両手には黒い手袋をはめているが、おそらくその下は機械義手だ。


マーズ「……なぜ、あのような……」ボソボソ

ワイマッグ「……なんだって?」


 ワイマッグが聞き返す羽目になったのは、マーズの声はひどく小さかったからだ。
表情に乏しくわかりにくいが、顔にも憔悴の色が見える気がした。
そして何より、いつも無差別に放射していた威圧感が嘘のように消えている。
今はむしろ、いかめしい装甲服のトルーパーたちの行き交う帝国軍基地の中で、彼女の体はひどく小さく見えた。
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:41:16.03 ID:0odu4eHO0

マーズ「……なぜ、あのような危ない取引までして、私を……?」

ワイマッグ「……」

マーズ「私は提督に何度も手を上げました、それなのに……それなのに、どうして――」

ワイマッグ「……たしかにお前は乱暴で、鉄面皮で、フォースを鼻にかけたいけすかない奴だ」

ワイマッグ「だけどどうしようもなく寂しがりやで、弱虫でもある……だったら、一人くらい」


 ワイマッグはマーズの頭を撫でた。


ワイマッグ「一人くらい、お前のことを見てやる奴がいてもいいだろう」

マーズ「……私、を……」


 マーズが噛みしめるように呟くと、あっという間にその目に涙が溜まる。
そしてすがるように手を伸ばすのを、ワイマッグは思わず抱きとめる。
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:41:51.65 ID:0odu4eHO0

ワイマッグ「お、おい……?」

マーズ「……うぅ……うぐぅ……」ボロボロ


 マーズはワイマッグに抱き着いて恥も臆面もなく泣きじゃくり始めた。


マーズ「てぇとくぅ……」ボロボロ

ワイマッグ「お、おい……!だいたい俺はもう提督じゃ……」オロオロ


 廊下を行き交うストームトルーパーたちが歩く速さを緩め、二人を怪訝な目で見やる。
ワイマッグの地獄耳は曲がり角の向こうの話し声を聞きつけた。


トルーパー1「……あの管理官が……提督ってすげえ人たらしだなあ」ヒソヒソ

トルーパー2「ていうかあれはもうデキてるだろ……」ヒソヒソ

トルーパー3「元ジェダイっていうからには純潔……」ヒソヒソ

ワイマッグ「そ、そんなんじゃないっ!そんなんじゃあっ!貴様ら全員営倉送りになりたいかあああ!?」

マーズ「うぐ……えっぐ……」ボロボロ
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:42:22.82 ID:0odu4eHO0

 数日後、惑星ハクカを逃れたQC宙域の反乱軍はヤヴィン4の反乱同盟軍本拠地に身を寄せていた。
秘密基地に改造された古代遺跡のバルコニーから西の空、ジャングルに沈む夕焼けを眺める。
眼下の発着場に視線を下ろせば、QC反乱軍の艦船と戦闘機が新天地探求の旅に備えて給油と整備を受けている。


シンノ「ネーア、こんなところにいたのか」

R3-C3『ピポポ ポポピーポ』

ネーア「……シンノ」


 シンノは西日に目を細めつつ、R3-C3とともにバルコニーに姿を現した。
ネーアが胸壁めいた石造りの手すり越しに景色を眺めていたのを見て取ると、少し眉を上げてから彼女を抱え上げ、手すりの上に座らせてやる。


シンノ「こっちのほうがよく見えるだろ」

ネーア「ほほう……」


 ネーアは日陰から日向へ移り、一気に視界が広がり少し上機嫌になった。
しかしシンノがさりげなくローブの裾を掴んでいるのに気付いて眉を潜める。
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:42:53.31 ID:0odu4eHO0

ネーア「……その手を離せ。落ちやせんわ、子供じゃあるまいし」

シンノ「……しかし、せっかく反乱軍の皆が俺の歓迎会を開いてくれたってのに、お前だけ抜け出してこんなところでずっと黄昏て。年寄臭いぞ」

ネーア「元から年寄ぞよ」ツーン

シンノ「おいおい……ちょっと薄情なんじゃないか?」

ネーア「苛立つか?」

シンノ「寂しいね」

ネーア「カカカ、よく言うわい」

R3-C3『ポポピーポ プウウー』

シンノ「お、おいおい……R3のやつ、『むしろせいせいしてた』とかなんとか……」

ネーア「こいつが一番薄情ぞよ」

シンノ「……まあ、臆病者のくせにこんなこと言えるくらいには、R3もお前のことは信頼してるってことさ」

ネーア「どうじゃろうな。いつか叩き壊してしまうかもしれんぞ」フン

R3-C3『プアアアー!』ガタガタ
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:43:23.60 ID:0odu4eHO0

 シンノは戦慄するR3-C3を見てにやにやしたあと、手すりに肘をついて、発着場の整備作業を見物し始めた。
ネーアはそっぽを向いたまま話しかける。


ネーア「……歓迎会に戻ったらどうじゃ。そなたにとっては復権の場じゃろう」

シンノ「復権?」

ネーア「そうじゃ。ジェダイとしての復活と言い換えてもいい。再び正義、希望の看板を背負って、ライトセーバーを振り回すための……」

シンノ「……まさか、自分がシスだからそういう場に顔を出すのはよくないとか思ってるんじゃないだろうな?」

ネーア「……あのなあシンノ。妾は『執着』の感情からダークサイドに足を踏み入れたゆえ、あれが欲しいとかこれが欲しいとかその程度で、比較的温厚なのは間違いない。だが勘違いしてはいかん」

ネーア「妾の師匠のメドーは『殺意』、弟子のノートは『破壊』、グレイヴスはたしか『支配』……カッコよく脚色されて語られがちじゃが、シスは基本的にそういうろくでもないクズの掃きだめぞよ。忌避して当然じゃぞ」

シンノ「……でも、お前はお前だろ」

ネーア「は?」

シンノ「何だ、腹立つな……いいこと言っただろ」ムッ

R3-C3『ポポピーポ プププ』ガタガタ

シンノ「R3、黙らないと電源落とすぞ」

R3-C3『……』
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:44:29.84 ID:0odu4eHO0

シンノ「ネーア……お前が言うのはたしかに一つの真実なのかもしれない。出会ってすぐの俺もそう思ってた。でも気づいたんだ」

シンノ「キイで、ハクカで、ラグナロクで……意識したにしろ、してなかったにしろ、お前は俺の原動力になってくれてた」

シンノ「ありのままの俺を受け入れて、励ましてくれさえした。俺にとってはお前が希望って言ってもいいくらいだ……そんなやつと仲良くなることが、悪いことのはずはないさ」


 シンノは空を見上げた――夕焼けはこんなにも美しい。
たとえ温かく明るい昼が終わり、冷たく暗い夜が訪れようとしているとしても。
三人で見ているから、いつか惑星キイで見た朝日よりももっと。


ネーア「……」

ネーア「なあ、シンノ」

シンノ「何だ?」

ネーア「そなた、自分で言ってて恥ずかしくないのか?」

シンノ「てめえ突き落としてやろうか!?」

ネーア「カカカ、冗談ぞよ、冗談!……冗談ぞよ!?ど、どうしてそんな……怖い顔……」

R3-C3『……』ガタガタ


 そのとき階下からシンノを呼ぶ声が響く。


ユスカ「ちょっとシンノ、どこー!?主役いないんじゃパーティになんないじゃん!」

シカーグ「オーガナ議員が話を聞きたいと仰ってるぞ!」

C7-BDB『娘ダケジャネエ、ぱぱノホウモダゼー!』

リズマ「シンノさあ〜ん!?私の話も聞いてくださいよぉ〜!?」

ユスカ「ちょ、ちょっとリズマ飲みすぎじゃ……」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:45:33.12 ID:0odu4eHO0

シンノ「……」

ネーア「……やれやれ、じゃな。仕方ないから、妾も付き合うぞよ」

シンノ「……そうか……じゃあ、戻るか!」

R3-C3『ポポピーポ』


 二人は黄昏のバルコニーを後にして、明るく照らされた、賑やかなパーティ会場に戻った。
パーティにも終わりは来るが、少なくとも今の彼らにとっては、それはずっとずっと遠い先……


ネーア「久々に飲むぞよ!」

シンノ「その体で飲んで大丈夫なのかよ……?」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:46:02.89 ID:0odu4eHO0


ED(スターウォーズメインテーマ)

スタッフロール略

165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:46:56.56 ID:0odu4eHO0

「マスター。ご所望の、ハクカ会戦の資料をお持ちしました」スッ

『思ったより早かったな。ご苦労』パシッ

「帝国軍では機密扱いになっておりました」

『そうだろうな……うん、例のジェダイのことも載っているな』ペラペラ

「例のジェダイとは……?」

『この戦闘があったとき、ハクカ上空に強いダークサイドの力を感じたのだ。強力な素質の持ち主の出現だ……それがおそらく、彼』スッ

「……『シンノ・カノス』……」

『彼を味方につければ帝国転覆の大きな助けとなろう……とはいえ、下手に接触すればいたずらに危険を招くばかり』

「では……どうなさいますか」

『……ふむ……〈あいつら〉を利用するときが来たか』
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:47:26.04 ID:0odu4eHO0

「またライトセーバーのコレクションが増えたわ!」


「ザイン・ザ・ハット様は『処刑を執行しろ』と仰っています」


「……私はダース・テイティス……シスの暗黒卿が一人」


「ぶ、無礼者ですわっ!いやしくもヤマタイトの末裔である私に、なんという……」


「俺は第九の尋問官、ナインス・ブラザー」


「マンダロリアンらしく、一対一で決着をつけようじゃないか!」


「ジェットパックが!?」


「お前のせいで……!」


「ようこそ、独立星系連合へ」



 STARWARS エピソード3.5

   公開日未定

167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 00:50:09.09 ID:0odu4eHO0
以上となります
最後まで読んでいただいて本当にありがとうございました
HTML化依頼は近々出しておきます
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 01:05:04.47 ID:QEBpDYhVo

続きも書いてくれよ〜頼むよ〜
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 01:17:13.23 ID:c/TrJIpl0
オーツーカーレー
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 03:18:36.16 ID:Q5UMbtS30
完成度高いな
続きまってるで
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 08:17:23.34 ID:k8bmztAsO

次が楽しみ
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/17(火) 14:47:05.86 ID:j6/jo2fcO
日本の今の若いファンを取り入れるならこれくらい膾炙が必要なんだろうな
コテコテのラノベテイストから原作愛を感じたぞ
フォースとともにあらんことを >>1
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 15:30:06.46 ID:bviolHxi0
フォースとともにあらんことを
シス勢力が魅力的に描けるなんて驚いた
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 19:39:34.55 ID:VgLFA6Yf0
うーん面白かった、乙
全体の流れもちゃんとSWしてるし
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