平沢進「東京のヒラサワです」翠星石「まきますか?まきませんか?」平沢進「違います」

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287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 12:57:34.21 ID:yTuktwA80
のり「ひ、ヒナちゃん、また声が大きくなってるわよ!ほら、しー!しーっ!」

雛苺「あっ!ご、ごめんなの!お家までお口にチャックするのー!」

……

平沢進「へえ。あれが例のキリシタンの苺と」

翠星石「ええ。あんなうるせーのチビ苺しかいねぇですぅ。一緒にいるのは…指輪はしてないので契約者本人ではないみたいですね。ということは、契約者の友達とか、家族とか…?」

平沢進「苺の苗床が何処だろうと誰であろうとそこまで大きな問題というわけではない。では帰るとし…」

翠星石「…いや!待つです、ヒラサワ!」
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 12:58:13.94 ID:yTuktwA80
平沢進「いや、待たない」

翠星石「いいから待つです!これはチャンスですぅ!雛苺がアリスゲームをやる気があるかは…正直ギモンですが、一応確かめてみるべきですよ。その気がないとはっきり分かれば、チビ苺については何にも気にしなくて済むようになりますし」

平沢進「はあ。もしも大人しく引き下がらず、積極的にその毒蔓の先を向けてきたら?」

翠星石「えーっと、その時は……適当にあしらって帰るです!流石に翠星石はチビ苺ぐらいに遅れは取らねーです。ちょちょいのちょいではっ倒してやるですよ」

翠星石「そこで、もう近寄るんじゃねーですよ、って言って放ってくれば、たぶんもう万事OKになるはず…」

平沢進「なるほど。一分以上の隙のあるごく普通の作戦」

翠星石「イヤミ言うなですぅ!とにかく、話をしてみないと分からねーことなんですから。…でも、こんな人の多いところじゃムリですね。絶対他のヤツに気づかれるですぅ」
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 12:58:50.07 ID:yTuktwA80
平沢進「私にも、観客も演者も揃った文字通りの人形劇を白昼から行う気はない。そういうものは劇場か、近世に生まれた新興邪教TVにて行うべき。若干最近は廃れ気味だけど」

翠星石「そりゃそうですぅ。うーん、じゃ、人気の少ない所に移動するのを待ちましょうか…」

平沢進「平然と準犯罪的思想を持ち出す人形に戦慄」

翠星石「う、うるせーです!翠星石はハンザイ者じゃ……ん、ハンザイ?……あっ!名案を思いついたですぅ!」

平沢進「うわっ。この底意地の悪い面は明らかに犯罪行為に赴く直前の前科者」

翠星石「ち、ちげーですって!…でも、今回はそこまで外れてないのがビミョーに癪ですぅ。だからといって、ハンザイを犯すわけじゃねーですよ。どちらかと言えばええと……そう!探偵!探偵の真似をするですよ!」
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 12:59:29.62 ID:yTuktwA80
平沢進「浮気調査か何か?」

翠星石「んな安っぽいもんじゃねーです!尾行ですよ、尾行!雛苺たちのアジトを見つけ出してやるんですぅ。契約者の顔まで知っちまえば雛苺はもう棘を抜かれたサボテンですよ!戦場においては常に先手を取ったものが勝利者となるのです!」

平沢進「戦地よりもやはり浮気調査に近しいものを感じる。しかし、コレで追うのか。凄まじく気も足も進まないが」

翠星石「うー、確かにリカン弁当は隠密性はマイナスですけど…今は追いかけられる足がそれしか無いんですから。大丈夫、きっと上手くいくです。翠星石と天運に任せとけですぅ!」

平沢進「どちらも甚だ疑わしい。あとリカンベント」
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:00:31.54 ID:yTuktwA80
のり「ふんふんふふーん…♪」

雛苺「…のり、すごいゴキゲンなの。そんなに嬉しい?」ヒソヒソ

のり「え?…ええ!ジュンくんが友達を家に連れてきたなんて本当に久しぶりだから…。それに、トモエちゃんはずっと昔から仲良くしてくれてた子だもの。ヒナちゃんも嬉しいでしょ?」

雛苺「うん!ヒナも嬉しいの!トモエが来てくれたのも、それでのりが喜んでくれてるのも、とってもとっても嬉しいのー!」

のり「あらあら、もー!ヒナちゃんったらかわいいんだから〜」

…………

翠星石「…ヒラサワ!いい調子ですよ!あっちは急ぐとか何とか言っといてやたらのんびりしてますから着いてくだけなら余裕ですぅ!あとはバレないようにさえしてれば万事オッケーですね」

平沢進「しかし、バレないようにする努力のしようがない。現状のように一本道で追いかけるとなれば、いかに隠遁行為を行おうとしたところで振り向かれれば終幕。壁の中に隠遁する術を人形が備えているとかなら別だけど」

翠星石「そんなジュツねーです!それに、ここまで来たのに…。あんぱんも買って探偵気分上々なんですよ?今さら諦められるわけないですぅ」
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:01:07.19 ID:yTuktwA80
平沢進「餡の詰まった蒸した小麦粉は探偵の象徴にあらず。どちらかと言えば錆び付いた価値観に基づいた刑事事件のセオリーであって」

翠星石「探偵も刑事も犯人を追うってことではそんな変わらねーからいいんですよ!今の翠星石は、ホームズやらとタメを張るレベルの超有名探偵気分爆発中なんですから水さすなです!初歩的なことだよ、ワトソンくん …ですぅ!」

平沢進「やかましい。ワトスンかもしれない助手と舞台で公然と量産された決め台詞について苦悩する時間帯ではない。しかもその声量では苺の蔓センサーに引っかかる。隠密性を重視すべきとの言はどこへ行ったのか。オハイオあたり?」

翠星石「あっ!し、しまったです!ヒラサワ、そういうのはもっと早く言って…」

雛苺「………うゆ?」クルッ

翠星石「げっ!?」

平沢進「ほらみたことか」
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:03:04.98 ID:yTuktwA80
雛苺「………」( ???? )ジーッ

翠星石(み、見てます!めっちゃ見てるですぅ!)ヒソヒソ

平沢進「なにを動揺しているのか。末妹の視線にビビるとは。特異で複雑な家庭環境だったのなら仕様がないかもしれないが」

翠星石「べ、別にチビ苺にビビってるわけじゃ…!それにアイツは別に末の妹ってわけでもねーですぅ」

平沢進「へえ。あれより幼い妹がいるとしたら最早嬰児なのではなかろうか」

翠星石「たしかに…じゃねーです!確かにチビ苺はお子ちゃま並のトントンチキですけど、流石に赤ん坊並の妹とかはいねーですよ!というかローゼンメイデンは別に姉妹で見た目年齢の順番になってるわけでもねーですし!」
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:03:53.58 ID:yTuktwA80
平沢進「姉妹に対し、コンビニに行くような手軽さで暴言を吐く人形に閉口。やはり特異で歪んだ家庭環境だったのだろうか」

翠星石「ひ、ヒラサワが言い出したことじゃねーですか!ぜんぶ翠星石のせいにすんなです!」

平沢進「………」

翠星石「って!文字通り閉口してんじゃねーですぅ!む〜っ!」

雛苺「……ゆ……」

翠星石(…って!や、やべーです!んなこと言ってる場合じゃなかったですぅ。アイツ今にも叫びそうです!こうなったら無理やり口封じするしかねーですね!ほら、ヒラサワ!喋れなくなる魔術だか呪術だかを今こそ行使するですぅ!)ヒソヒソ

平沢進「だから私は祈祷師でもなければ陰陽師でもないと。大体、苺がマンドラゴラのごとく叫んだところで怯む理由がない。素知らぬ素振りで通りすがるだけ」
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:05:00.80 ID:yTuktwA80
翠星石(で、でも、もし翠星石に気づいてたら!逆にこっちを追っかけてくるかもですぅ!平凡な街で突然自転車でデッドヒートし始めるなんてゴメンですよ!)ヒソヒソ

平沢進「リカンベントは脳を破裂させる程度の衝撃を受ける代わりにそれなりの速度が出るので大丈夫。今回は脳が二人分乗っているため燃料にも不安はない」

翠星石(何フキツな冗談言ってるですか!そんな場合じゃ…)

雛苺「ゆ……ゆ……!!」

翠星石(あー!もうダメですぅ……!)

雛苺「み、見てのりっ!UMAなのぉっ!!」


翠星石「…はぁ?」平沢進「はい?」
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:05:45.48 ID:yTuktwA80
のり「え?ど、どうしたのヒナちゃん。…あ!すごい乗り物があるわねぇ。あれがどうかしたの?」

翠星石(げっ!やっぱり気づかれ…!?)

雛苺「乗り物じゃないの!あのヘンなのはぜったいゆーまなのっ!まえテレビで見たもん!夕方にこっそり近づいてきて、バクって頭から近くのひとを丸かじりにする、こっわーいオバケなのっ!ジュンもそうだって言ってたもん!」

平沢進「……」

のり「え、ど、どうかな…(もう、ジュンくんったら!)」

のり「あ、あのね!ほら、あそこに人が乗ってるでしょ?私も今まで見たことは無かったけど、ああいう乗り物は外国とかだとたまーに走ってたりするの。だから、テレビやジュンくんが言ってたUMAは、別の人?なんじゃないかな…」

雛苺「えー、だって!鉄の足が二本あって頭をぐるぐる回転させながら襲ってくるオバケだって…!」
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:07:03.43 ID:yTuktwA80
のり「えっと…そ、それなら、自転車やバイクも同じでしょ?」

雛苺「……た、たしかにそうなの…でも!あれは明らかにでぃてぃーるがおかしいのっ!フツーじゃないのっ!」

翠星石「それは確かにですぅ」ボソッ

のり「か、海外のものだと結構信じられないような見た目のものも多いのよー。ほら、虹色のアイスとか、ドーナツとか、大体海外から来たものでしょ?派手だからって別に変なものってわけじゃないんだよー」

平沢進「リカンベントは米国式過剰華美の一種ではない。甚だ心外」ボソッ

雛苺「そ、そうなの……」

雛苺「…分かったの!」クルッ

翠星石「っ!?」ビクッ

雛苺「ヘンだとか言ってごめんなさいなの、UMAさんっ!」

翠星石「……」平沢進「……」
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:07:50.10 ID:yTuktwA80
のり「だ、だからUMAじゃなくってね…って、あっ!」

のり「ひ、ヒナちゃん!また私たち声が大きくなっちゃってる!し、静かにしないと!ね、ねっ!」

雛苺「あっ!ご、ごめんなさいなの!ひ、ヒナもうお家に着くまでお口をぎゅっとおさえて開かないようにするの!」

タッタッタッ…


翠星石「………」

翠星石「……なんか気が抜けたですね」

平沢進「…生気ある人形から気が抜けてはただの人形」
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:08:38.46 ID:yTuktwA80
翠星石「ふー、チビ苺がアホで助かったですぅ。自転車のカタチばっかり騒いで、こっちには全然目が向かなかったですね。あれで気づかれなかったなんて、ちょっと信じ難いですけど…。UMA様々ですぅ」

翠星石「それに、とかなんとか言ってるウチに…契約者の家ってここなんじゃないです?」

平沢進「らしい。たった今桜田という何の変哲もない表札のかかった何の変哲もない館に何の変哲もない人形持ちの娘が入って行ったし」

翠星石「連呼しすぎですぅ。会ったばっかの人を貶しすぎじゃないですか?ヒラサワって苗字だってそこまで変哲があるわけじゃねーですよ」

平沢進「そう。だから何の変哲もないという言葉は陰口ではない。ただの何の変哲もない台詞にすぎない」

翠星石「頭こんがらがるからいい加減やめるですぅ!もう…さてっと。じゃ、ヒラサワ、ちょっと肩借りるですよ」ピョン

平沢進「あ、こら」
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:09:48.99 ID:yTuktwA80
翠星石「うーんっ!…こっからじゃ全然中が見えねーですね…窓にもカーテンが掛かってますし…こうなったら、どうにかして中に入るしかねーです」

翠星石「やっぱりアレですかね?庭から大声で「火事だーっ!!」って叫んでヤツらが慌てて家から飛び出してきたところをふん縛って袋叩きに…」

平沢進「純然たる犯罪的思考を自慢げに披露しだす人形に閉口。AIが社会の人間に触れ知識を吸収すると言動が犯罪者的になるというが、それと同類の現象かも」

翠星石「翠星石をロボットと一緒にするなですぅ!冗談ですよ、冗談!ただ、マンガとかの強盗の手口を真似ただけで…」

平沢進「やはり犯罪者の先触れを覗かせている。それにAIとロボットとは領域がやや重なっているだけで別物である」

翠星石「う、うるせーです!んなこといっても、ピンポン押してはいどうぞ、って入れてくれるはずもありませんし…他に名案があるですか?」
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:10:29.80 ID:yTuktwA80
平沢進「そんなものあるわけがない。ヒラサワはその善良さの余り八百万の神の9割超に忌避される存在なので、犯罪のハの字どころかノの字の気配もない。その証拠に、神の宿るという木や草や水に今まで一度も話しかけられたことがない」

翠星石「んなの当たり前じゃねーですか!また屁理屈で言い逃れようとすんなですぅ!それにヒラサワが善良ですって?ふーんだ、へそが茶を沸かすですぅ!」

平沢進「うわっ。今とうとう人形に話しかけられた。八百万のうちの一柱がついにヒラサワに興味を抱いたとでもいうのか。結構です。できれば人形に望郷の念の如く固執する幼児の前にその姿を現したまえ」

翠星石「うるせーですぅ!突然翠星石を初対面の扱いにするのはやめるですよ!めんどくせーです!…ってあだっ!」ガサッ

翠星石「な、なんですか?なにかに躓いたですぅ!もう、これだから道路を歩くのはイヤなんですぅ…」
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:11:18.87 ID:yTuktwA80
平沢進「…あ。名案がそこに落ちているのを人形に宿る神々の一柱の有り難きお節介により発見」

翠星石「え?これですか?…いちご大福の袋?中身も入ってるです。さっきのヤツが落としていったんですかね」

平沢進「多分。ではそれを貸しなさい」

翠星石「あ、はいですぅ。…どうするですか?それの匂いにつられてチビ苺が飛び出てくるのを待つですか?」

平沢進「んなわけない」ピンポーン

翠星石「ちょ、ヒラサワ…!?」
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:12:13.17 ID:yTuktwA80
タッタッタッ…

のり『は、は〜い!どちら様ですか?』

平沢進「えー、桜田さん。そこで苺と餡のつまった餅の入った袋を落としませんでしたでしょうか。善意に塗れた隣人としてお届けに参りました」

のり『え?あっ!…わ、分かりました!今開けます〜』

翠星石「……えー」

平沢進「えーじゃない。いいからとっとと人形は麦籠に隠れなさい」
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 13:14:03.73 ID:yTuktwA80
短くて恐縮です
今回もご意見ご批判ご質問何でもどうぞお願いします
頑張ってもっと上手く早く書けるようにしたいです…
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/05(木) 16:07:27.94 ID:3NYEA1RuO
次のライブでは楽器に改造された翠星石の姿が
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/05(木) 16:43:52.28 ID:vVGbZ5x10
めっちゃうるさいなそれ
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/05(木) 21:27:30.27 ID:Rvp7qwvWo
今回のヒラサワもキレッキレだった。乙です

リカンベントを知らなかったからググッたら平沢さんの過去の破壊まとめが出てきたが
デストロイヤーかってくらい物壊しまくってるなこの人wノートPC何回買い直してるんだよw
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/10(火) 08:10:31.91 ID:0EQZQN8v0
ちからつきたか
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/10(火) 08:19:33.40 ID:Jq5DlRAkO
まあこういう文体で長く書くのはキツいだろうしな
滅多に見ないヒラサワSSだから期待してたが…
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/10(火) 12:39:00.22 ID:PkverZU5o
今のところ終わりも見えないからなあ
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/10(火) 12:40:40.12 ID:GGYG+BZ7o
一週間も経たずに急かしてやるなよ
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:49:30.17 ID:kmLxln6h0
ヒラサワ音楽がある限り私は不滅です
ということで再開します
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:50:28.18 ID:kmLxln6h0
ガチャ…
のり「す、すみません!買ってきたばかりなのに、そこで落としちゃったみたいで…私、うっかり屋なので…」

翠星石(今です、ヒラサワ!そいつを突き飛ばして押し入るですぅ!鯖折りを決めてやれですぅ!)

平沢進(お静かに)

平沢進「…まあ、どこぞの食欲に正直な牛の骨か馬の骨に拾われず何よりで。どこぞの人形か何かに踏まれたようで一部分だけ凹んだりしているけれども」

翠星石(…ちょ!?何でわざわざ疑われるようなこと言うですか!しー!ですよ!ヒラサワ!)

平沢進(うるさい)

平沢進「では、どうぞ」
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:50:56.71 ID:kmLxln6h0
のり「あ、ありがとうございます〜!よかった、これでヒナちゃんも泣き止んで…じゃなくて!え、ええっと、とにかく本当に助かりました!」ペコペコ

平沢進「押し付けがましい隣人愛に溢れる現代人としては当然のことなので。はい」チラ

平沢進「……」

平沢進「…そういえば、えー、あなたのとこの姉弟の、えー」

のり「えっ!?……じゅ、ジュンくんですか?」

平沢進「そう。純くん。彼はえー、体調が優れないようで」

のり「え、えっと?は、はい…その…?」
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:51:42.29 ID:kmLxln6h0
平沢進「教育に携わる者として、まあ、多少気掛かりというか」

のり「あ!学校の先生ですか!すみません、わざわざいらしてくださって…」ペコッ

平沢進「はあ。まあ。それで、少し様子を観ておこうかということになりまして」

のり「え!えっと、その…大変申し訳ないんですが、今、その、お客さんが…」

平沢進「お客さん?それはまた厄介な。ただ、少し顔を見るだけなので手間は取らせませんので」

翠星石(心の声が漏れてるですよ!しー!です!ヒラサワ!)

平沢進(やかましい)
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:52:40.00 ID:kmLxln6h0
のり「え、えーっと……で、でしたら!今ジュンくんをここにお呼びしますので…」

平沢進「家庭訪問を玄関先で済ませるほどに病的な怠慢癖を持つ訳では無いので。別にそのお客さんが弟さんの異性交友相手だとしても目録に恨みったらしく記したりはしないので御安心を。…少し上がらせていただくということでよろしい?」

のり「……う〜っと……」

のり「…………」

平沢進「…………」

のり「…わ、分かりました…ちょ、ちょっと、ジュンくんに話してきますねっ!まだちゃんとした格好もしてないと思うのでっ!だとしたら無礼ですからっ!」タッタッタッ…

平沢進「……お客を呼んでいて着替えもしていないということがあるのだろうか。言語を絶する怠け屋とかなら別かもだけど」
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:54:00.06 ID:kmLxln6h0
翠星石「きっと、チビ苺を隠しに行ったんですね。それにしてもヒラサワ!ナイス誤魔化しだったですぅ!よく、休んでる弟がいるって分かったですね」

平沢進「そこになにゆえか男物の中等制服がかかっているとなれば十中十一ぐらいまで弟の存在は確定。しかもそれがどう見てもパリッパリにクーリング・オフされたものだとすれば彼は暫く登校していない不良ということになる」

翠星石「おお〜…すごいです!ヒラサワ、まるで名探偵みたいですよ!あとそれはクリーニングですぅ。…でも、家に入ってからはどうするですか?学校の先生だなんてウソ、すぐにバレるですよ」

平沢進「入ってしまいさえすれば問題は無い。人形さえ見つければ、持ち主達も私を通常の盗賊の如く扱う事は出来まい。闘いを挑んできた場合は、麦籠から奇襲を掛けるべし」

翠星石「おーなるほど…了解ですぅ!ヒラサワがせっかく作ったチャンス、何としてもモノにして見せるですよ!ウソも方便とはこのことですね!」
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:54:59.17 ID:kmLxln6h0
平沢進「ウソツキはヒラサワの始まり。実践的な姿を見せたことで翠の人形のウソツキ癖が強まらぬことを切に願う」

翠星石「なっ…ふーんだ!心配しなくても、翠星石はヒラサワみたいにならねーですよーだ!まったく、せっかく珍しく褒めたのに…」

平沢進「それは一安心。では呼び付けるまで大人しくしているように」スッ

翠星石「わひゃっ!?」スポン

タッタッタッ…

のり「…お、お待たせしました〜!では、どうぞお上がりになってください」

平沢進「はい」
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:56:57.94 ID:kmLxln6h0
ー桜田家応接間ー

ジュン「な、なんだよ…急に先生が来るなんて、聞いてないぞ。まさか、担任のあの人じゃ…」

トモエ「あの人なら有り得るかも。熱血だし。…取り敢えず隣の部屋にいるね」

雛苺「うにゅ〜が戻ってきたのは嬉しいけど…ひ、ヒナも隠れるのっ!トモエ、ヒナを抱っこするのー!」ピョン

トモエ「わっ。…うん。一緒に隠れよう」ギュッ

ジュン「わ、悪いな。すぐ済むと思うから…」

トモエ「うん」雛苺「わかったのー!」タッタッタッ…
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:58:05.58 ID:kmLxln6h0
ジュン「…ふー……落ち着け…」

ジュン「あの人が来たって、もう大丈夫だ。僕はもう変わったんだから…どんな風に、何を言われたって……よし!」バチン

タッタッタッ……

のり「……こ、こちらです〜。どうぞ」

「はあ、どうも」スッ

ジュン「……」ゴクッ

平沢進「こんばんは、ヒラサワです」ヌッ

ジュン「こ、こんば……」

ジュン「…………?」

ジュン「…失礼ですけど…どなたですか?僕、あなたのこと知らないんですけど」

平沢進「でしょうね」

のり「………えっ?」
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 21:59:00.98 ID:kmLxln6h0
ジュン「もしかして…きょ、教育委員会の人とかですか?」

平沢進「委員会審議的なものとは相応の距離を置いておりまして。過去にそういったものに傾倒していた憶えもございません」

ジュン「え?…って、ことは…僕とどういう…?」

平沢進「まあ。俗に言うと、社会主義的な表現とは違う意味での赤色な他人という関係で」

のり「あ、あれ!?が、学校の先生じゃ…」

平沢進「学業的なものに携わっていたことが無いことも無いと言えないことも無いという表現が、あなたの脳内では学校教師に変換されていたらしく」

ジュン「………」

のり「え?え?…っていうことは、あなたは……」
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:00:38.36 ID:kmLxln6h0
のり「い…居直り強盗!?す、すみません家には特にお値打ちものは置いてなくて!さ、さっき買ったいちご大福ならそこのお皿にありますけど…」

ジュン「バカ!きっとセールスマンだよ!姉ちゃんは騙されやすい顔してるから付け込まれたんだ!それに居直り強盗じゃ意味が違う!」

のり「え!?せ、セールス!?すみません、家には余計なものを買うお金もなくて!ちょっと前にジュンくんがネット通販で買ってきたヘンなものを返品し忘れちゃって…」

ジュン「ちょ!そんなこと言わなくていいだろ!僕らが騙しやすい相手だと思われちゃうだろ!」

平沢進「大丈夫。そちらの方は騙しやすく与しやすい系ジョシだということが玄関先にて既に露呈している」
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:02:21.11 ID:kmLxln6h0
ジュン「あっ、なら大…丈夫じゃない!姉ちゃん、この人に何言ったんだよ!通帳とか印鑑とか持ち出してないだろうな!」

のり「えっ!だ、大丈夫よ、そんなもの見せたりしてないよ…あっ!」

ジュン「え!ど、どうしたんだよ!まさか…」

のり「…通帳と印鑑、前どこにしまったっけ!すっかり忘れちゃった〜!どうしようジュンくん!」

ジュン「はあ!?今そんな話じゃないだろ!」

平沢進「敵宅に侵入したかと思えば、ここは新喜劇の劇場であったか。しかも、テンプレートに沿いすぎて不発ぎみ」ボソッ
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:03:39.21 ID:kmLxln6h0
<ワーワーキャーキャー
雛苺「…うゆ?」

雛苺「せんせー?が来たにしてはすごく楽しそうなのー!ジュンったら、あんなにイヤそうだったのにおかしいのー!」ヒソヒソ

トモエ「確かにおかしいね。それに、私もあの人見たことないし…本当に先生なのかな」

雛苺「え!せんせーじゃないのぉ?じゃあ……居直り強盗っ!?」

トモエ「その言い方は過激だけど…似たようなものかもね。場合によっては、私もジュンくんたちに加勢しようかな。二人とも混乱してるみたいだし」

雛苺「わ、分かったの!ヒナもこっそりここから応援するの!トモエ、ジュンとのりを助けてあげてね!えいえいおー!なのー!」

トモエ「そこまで深刻に考えなくても大丈夫だよ。…でも、頑張ってくるね」スッ
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:05:09.68 ID:kmLxln6h0
ジュン「と、ともかく!僕らは何も買ったりしないからな!ヘンな壺とかネックレスとか売ろうとしても無駄だよ!」

のり「そ、そうだよね!もうヘンなものは十分たくさんあるもんね!」

ジュン「バカ!そういう意味じゃない!あれはネットでまたどこかに流すからいいんだって!」

平沢進「はあ、変なものが足りすぎている。それは大変嘆かわしいことで。しかし案ずるなかれ。多忙で知られる『百足らず様』も、年度の変わり目という繁茂期を切り抜けて居られる。いずれこの館にも訪れ、足りすぎたものを引いて下さるかと」

ジュン「は?百足らず…様?や、やっぱりカルト宗教かなにかの押し売りか!」

平沢進「なんと無礼な。…しかし、ヘンなものの数を引くという程度では『百足らず様』の行動周期上から外れている可能性も。その場合は社会主義的でない赤の他人に押し付けるか、ゴミ収集のおじさんに押し付けるかするとよろしい」

ジュン「は、はあ…って、捨てたりしたら僕の大損じゃないか!そんなこと僕はしないぞ!何としてでもそれなりの値段で赤の他人に押し付けてやる!」


※『百足らず様』大量消費文明社会である現代において、あらゆるものが足りすぎているのにも関わらず何かが足りていないと常に錯覚する人類に警鐘を鳴らすため、あらゆる事物から何かを引いて足りていない状況を作り出す神様。詳しくはwebで
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:06:27.79 ID:kmLxln6h0
のり「じゅ、ジュンくん?そんな話じゃなかったような…」

ジュン「…あ!そうだった!まったく、セールスマンは口が上手いから、つい…」

平沢進「失敬な。私はセールスメンと付き合いはない。何故ならセールストークは家を焼く。そのウザったいほどに烈しい言葉は財産から購買欲から全てに火をつけてしまう」

ジュン「え…まあ、そうかもだけど」

平沢進「Sell(売る)Stoke(火をたく)などという職業を作り出すとは、資本主義の見えざる神様もどこまで強欲なのか」

ジュン「?…それ、英単語が違うんじゃ…」

平沢進「外来語は新たな土地に入って次第に次第に意味合いが変容するものなので」

ジュン「いや、それとは別問題というか…」
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:09:16.78 ID:kmLxln6h0
のり「ジュンくん!む、難しい話でよく分からないけど、また違う話になっちゃってるんじゃ…」

ジュン「あ…くそっ、口車に乗せられた…この人、かなりのやり手だぞ。気をつけないと…」

ガラッ。タッタッタッ…

トモエ「…二人とも。取り敢えず落ち着いてください」

ジュン「わ、おい!ちょっと、今出てこないほうが…」

トモエ「でも、このままじゃ話が終わらないでしょ。それに、この人はまだお金を出せって大声も出してないし、何かを買えって押し売り文句を言ったわけじゃないよ」

のり「た、たしかにそうだけど…」
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:10:51.67 ID:kmLxln6h0
平沢進「あ、お客さん?こんばんは、ヒラサワです」

トモエ「…こんばんは。柏葉巴です。ほら、二人とも」

ジュン「…桜田ジュン、です」

のり「さ、桜田のりです…けど…」

平沢進「ようやく会話になって何より」

ジュン「じ、自覚はあったのかよ…」

平沢進「自身の話す内容の与える影響程度を予測するのは当然。話がコンガラがれば、調停者が引っ張り出されるのは世の定理」
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:11:49.42 ID:kmLxln6h0
トモエ「!…私はそれに引っかかったということですか」

平沢進「いや。異性交友のお客さんを呼び立てる気では無かったような。…もっと小さいお客が出てくるものかと」

ジュン「え?小さいって…まさか…!」

トモエ「…私とジュンくんはただの友達です。ヘンな付き合いをしてる訳じゃありません」

平沢進「あ、そう」

ジュン「いや、気にするところはそっちじゃ…」

トモエ「だって。勘違いされたら困るから」

平沢進「ははあ」

トモエ「…何がははあ、なんですか」

平沢進「いや、言い分に納得した時に用いられる感嘆符の一つを漏らしただけなので」

トモエ「……そうですか」
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:13:11.31 ID:kmLxln6h0
ジュン「お、おい…話がズレてるぞ」

トモエ「あ。…ごめん」

ジュン「…とにかく、ヒラサワさん。一体何の目的でウチに?それに、さっき言った小さいお客っていうのは何のことですか?」

平沢進「一度に二つも質問するとは。流石歳若い者は活力が違う。私など5W1Hの私用については用法用量を守るよう義務付けられているというのに」

ジュン「ぐ…落ち着け、乗っちゃダメだ…」

トモエ「…じゃあ、まず一つだけ質問します。その麦わら籠には何が入ってるんですか?」

平沢進「これ?まあ、音の爆弾というか。そういうもの」
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:14:47.54 ID:kmLxln6h0
のり「ば、爆弾!?ふ、二人とも伏せてっ!」バッ

ジュン「どわっ!!ち、違うだろ!音の爆弾って!きっとヘンな名前でアホな人を釣ろうとする新商品の一つだよ!ホントの爆弾を僕ん家で爆発させて誰が得するんだよ!」

トモエ「……のりさん、重いです。音の爆弾って…抽象的な表現じゃ分かりません。正式な名前を教えてく……」

ドタッ!バタバタバタ…

「うゆ〜っ!」

ジュン「え…!?この声…」

雛苺「ば、爆弾からみんなを守るのーっ!薔薇乙女第六ドール雛苺、ここに参上っ!なのーっ!!」
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:16:43.74 ID:kmLxln6h0
平沢進「あ、出た」

トモエ「あ」

ジュン「お、おいっ!」

のり「ひ、ヒナちゃんっ!?」

雛苺「ば、爆弾はどこなのーっ!?ヒナが蔓で外にえーいって放り出しちゃうのよ!ほら、ジュン、おしえて!みんなのためなら爆弾なんて、ぜーんぜん怖くないんだから!」

トモエ「ひ、雛苺…!」

ジュン「か、感動してる場合かよ!この状況どうするんだ、思いっ切りバレちゃったぞ!」

のり「え、えーとですね、ヒナちゃんは近頃流行りのおしゃべりの出来るお人形さんで…えっとえっと、AIが入ってて、えっと」

平沢進「はあ。そんなものが流行っていたとは初耳。そんなものが人口に膾炙するまでに後十年以上はかかるかと思っていたが」
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:19:18.99 ID:kmLxln6h0
雛苺「あ、そこのおじさんが爆弾持ってるのっ!?のり、伏せてっ!いま、ヒナが…」

平沢進「………」チラッ

雛苺「……っ…!」ピタッ

のり「ひ、ヒナちゃん!?どうしたの!?」

雛苺「こ、この人……」

ジュン「…知り合いか?」

平沢進「……」

雛苺「こ……こわいのーっ!そこのおじさん、お顔がとってもこわいのぉーっ!!」ガタガタ

平沢進「翠の人形の言った通り。国道沿いの民泊並のやかましさ」ボソッ
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:21:03.30 ID:kmLxln6h0
雛苺「爆弾は止めなきゃ…で、でも怖いのっ!!ひ、ヒナはどうすればいいのぉー!?」

トモエ「取り敢えず雛苺、こっちに…」

のり「トモエちゃん!動いたら危な…!」

ジュン「いだっ!姉ちゃん、僕に手が当たったぞ!大体、絶対爆弾なんかじゃないって!」

ギャーギャーワイワイ…

平沢進「……」

平沢進「宇宙開闢の以前、世界はケイオスと呼ばれる秩序なき状態を保っていたというが、これはその138億年来の現出であろうか。もしくは宇宙の転寝の夢として生きる我々生物は、皆このような児戯的地獄を内包しているのだろうか」
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:21:33.87 ID:kmLxln6h0
「……〜〜っ!!」

「あーもーっ!!しゃらくせーですっ!!」バッ

平沢進「あ」

翠星石「全員しゃらーっぷ!ですぅ!話がにっちもさっちもいかねーじゃねーですか!ほら、ちゅうもく!注目ですぅ!!」
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/10(火) 22:23:03.33 ID:kmLxln6h0
一旦ここまでです
人数が増えた途端テンポグダグダで申し訳ない
お待たせした割に雑な気がします
好きにご意見ご批判ご質問お願いします
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/11(水) 01:33:53.34 ID:vZRF85Xfo
煙に巻くヒラサワええぞ
よくもまぁこんなに言葉が出てくるなあ
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/11(水) 15:11:13.45 ID:e8HZ1UgaO
すき
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/11(水) 16:16:10.78 ID:zlAE7Fux0
面白いよ
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/12(木) 08:21:14.25 ID:yRlCsTcv0
すき
百足らず様わけわからんけど面白いよね
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/15(日) 18:41:30.93 ID:xnF9D8l60
面白いと言ってくださって大変嬉しいです
ホントに恐縮です 精一杯頑張ります
更新が遅くなったとしてもナメクジ並の地道さで書いてるので長い目と広めの心でどうぞお待ちください
今夜あたり短いですが更新します

あと批判もいくら書いてもいいんでっせマジで
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:20:06.57 ID:xnF9D8l60
ジュン「!!…新しいローゼンメイデン!」

雛苺「!……す、翠星石…なの?」

翠星石「ですよ!久しぶりですね、チビ苺!」

トモエ「えっと、雛苺…?」

雛苺「え、えっとね!翠星石は、ローゼンメイデンの第三ドールで、それでね…」

真紅「…さっきから騒々しいわね。いったい何の騒ぎ?」タッ
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:21:07.75 ID:xnF9D8l60
翠星石「げっ!?真紅ぅ!?」

真紅「あら翠星石。18759時間28分ぶりね。ごきげんよう」

翠星石「ご、ごきげんようです!真紅もここに居たですか…」

平沢進「はあ。例の紅くてヒラヒラしており血に飢えている…って翠の人形が言っていた人形」

翠星石「し、しーですヒラサワ!…ていうか前半のほうはヒラサワが言ってたんじゃねーですか!主観と客観をごっちゃにすんなですぅ!」

真紅「…あら。知らない所で悪口を言う人は一番信用されないのよ、翠星石?血に飢えただなんて、人聞きの悪い」

翠星石「ち、違うんですよ真紅ぅ!それは、ただの比喩で言っただけで、本当に思ってた訳じゃあ…」
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:21:49.01 ID:xnF9D8l60
平沢進「あれほど真に迫っていたというのに?ヒラサワはあの語り口に恐慌をきたし、連夜悪夢に血を啜る人形が現れたが」

翠星石「は、はぁ!?ウソつくなですぅ!顔をピクリとも動かさなかったクセにぃ!そういうデタラメ連発するのはやめるです!翠星石が悪いヤツみてーに思われるじゃないですか!」

平沢進「表情を動かさずとも心が動いていないとは限らないのが人間の分かりづらさ。まあ、心より先に口がダムの水流の如く回る人形には分からないかもしれないが」

翠星石「むきーっ!翠星石だってちゃんと色々考えて喋ってるですぅ!乙女の純心をバカにすると、後で痛い目に遭うですよ!」

平沢進「あ、そう」

翠星石「む〜っ!!」
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:22:36.38 ID:xnF9D8l60
真紅「……こほん。私たちが置いてけぼりにされてるのだけれど」

翠星石「…あ」

平沢進「まったく、これだから」

翠星石「す、翠星石だけのせいじゃねーでしょーが!」

真紅「こほん!」

翠星石「う……」

翠星石「すまんです…またゴチャゴチャしてきちまったです。…じゃあ!この翠星石が今から来た理由をちゃんと説明してやるから皆静粛にするです!そこのチビ苺もチビ人間も!ほらほら大人しく神妙にしやがれですぅ!」
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:23:40.54 ID:xnF9D8l60
雛苺「む〜っ!ヒナはチビじゃないもん!ビッグだもん!」

翠星石「そういうところがチビなんですよ!ほら、もう一人のチビもそこになおれです!」

ジュン「…は?もしかして僕のことか?」

翠星石「他にどこにチビがいるですか!ほら、はっきりくっきり目ん玉見開いてこっち見るですよ!」

ジュン「なんだ、この失礼な人形…僕の家でエラそうに」

トモエ「私はジュンくん、そこまで小さくないと思うよ」

ジュン「そこまで…って…小さいとは思ってるのか…」

トモエ「あ……えっと」

のり「だ、大丈夫だよ!ジュンくんはまだ成長期なんだから!」

ジュン「そういうフォローは別にいいよ!」

のり「えっと、えっとぉ…」
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:24:52.89 ID:xnF9D8l60
翠星石「むぅ〜っ!この翠星石が話しかけてるのに余所見するなんて無礼な…」

真紅「……」ジー

翠星石「…こほん。ま、まあいいです。んじゃヒラサワ、ちょっと頭借りるですよ」ピョン

平沢進「あ、こら」

翠星石「ふーん、問答無用ですぅ!…ヒラサワ、さっきのカオスな状況を楽しんでたですよね?わざとしっちゃかめっちゃかなこと言って…その分のツケをいま払ってもらうですぅ」ヒソヒソ

平沢進「言い掛かりも甚だしい。突発性ケイオスの乱気流をヒラサワが制御したとでも言うのか」

翠星石「ええ、そうに違いねーです!話をごちゃごちゃした責任があるんですから、大人しく頭の一つや二つ使わせろですぅ!」
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:26:36.96 ID:xnF9D8l60
平沢進「やかましい。頭蓋に高周波が無駄に響く。私の頭は英国のスピーカーズ・コーナーではないし、無償で演説場所を提供するほど私は親切ではない。だから、とっとと降りなさい」

翠星石「イヤですぅ!話するって言ったらするんですぅ!ほらほら、皆の衆、改めて注目ですぅ!!」パンパン!

真紅「…やっと話に入れそうね」

雛苺「うゆ…」

ジュン「はあ……」

のり「え、えっと…」

トモエ「…」

翠星石「………………」

平沢進「…?」

翠星石「………」ピョンッ

平沢進「はい?」
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:27:28.75 ID:xnF9D8l60
ジュン「は?…何がしたいんだよ?」

トモエ「…鞄にまた戻っちゃった」

のり「あら、かわいいわねぇ〜」

ジュン「いや、その感想言うとこか!?」

平沢進「…あのねぇ。自ら衆目の目を集めておいてトンズラとは。聴衆に天の声でも聞いていろと言うのか」

翠星石「ち、ちげーです。その……翠星石は人見知りなんですぅ。知らない人がちょっと怖いんですよ。だから、一旦ここに隠れさせてですぅ…」

平沢進「うそつけ」
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:28:02.32 ID:xnF9D8l60
翠星石「………ホントです」

平沢進「はあ。流石に人形劇の端役だけあって演技がお達者で」

真紅「……本当よ。その子は昔から人見知りな子だったの」

雛苺「うん。翠星石ってば、恥ずかしがり屋さんだもんね!」

平沢進「……えー」

翠星石「えーじゃねーですぅ…」

真紅「急に元気になったりしおらしくなったり。忙しい子ね」

翠星石「う、うるせーです。そういう性分なんだから仕方ねーじゃねーですか」

真紅「…まあ、そうね」
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:29:04.99 ID:xnF9D8l60
ジュン「人見知りなのは仕方ないとして、とにかく話してもらわないと困るぞ。こっちはムリヤリ家に押し入られたうえに実害も出てるんだからな」

のり「あ!ご、ごめんね、腕を当てちゃって…」

ジュン「い、いや、そんなに気にしてないけどさ…」

翠星石「じゃあ、別にいーじゃねーですか」ボソッ

ジュン「そういう問題じゃないだろ!」

翠星石「うわー!チビ人間が暴れるですぅ!怖いですぅ!」

ジュン「なんだと!この性悪人ぎょ…いだっ!」

真紅「やめなさい、ジュン。話が進まないでしょう。まったく、私の下僕なのだから、少しは慎みを覚えなさい」
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:29:59.23 ID:xnF9D8l60
ジュン「う…」

翠星石「そーだそーだ、ですぅ!」

真紅「あなたもよ、翠星石」

翠星石「う…」

平沢進「へえ。そこの純くん、人形の下僕なの。シュールですね、平時より人形に見下される役回りとは…」

雛苺「良くわからないけどそうなのよー。真紅は怒るとああやってすぐジュンにビンタするのー。…あ!そういえば、いまの なの、ってヒナと一緒なの!おそろいなのー!」

平沢進「…あ、そう」

雛苺「………うわぁああああん!!!やっぱりこのおじさんこわいのっー!」バッ
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:34:40.52 ID:xnF9D8l60
トモエ「あ、雛苺。……よしよし」

のり「…えっと、まだいちご大福あるから、ヒナちゃんこっちで食べる?難しいお話があるみたいだし…ね?」

雛苺「…!!う、うにゅーまだあるのっ!?食べるのー!トモエ、台所に連れてってなのー!」タッタッタッ…

トモエ「うん、分かった。むこうで一緒に食べよう。…じゃあジュンくん、よろしく」チラッ

ジュン「?…あ、ああ分かった。ちゃんと話を聞いとくよ」

平沢進「…さすが舞台人形だけはある。変わり身がお早いことで」

真紅「のりはこの家の年長者だけあるわね。抜けているようで気を遣える子なのだわ。…知らない人がジュンだけなら、翠星石もちゃんとお話できるでしょう?」

翠星石「え?……ま、まあ…」
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:37:46.51 ID:xnF9D8l60
真紅「…さて」スッ

平沢進「ん?」

真紅「改めて、自己紹介するのだわ。私は薔薇乙女第五ドール、真紅よ。姉がお世話になっているようで」

平沢進「私は平沢進だ。平沢唯じゃない。はあ、正に仰る通りで」

翠星石「そこはウソでもそんなことないって言うとこでしょーが!いつもはあんなすらすらウソついてるくせに、何度こういう時だけホンネなんですか!」

平沢進「ウソとハサミは痛いよう、とは言ったもので。あんまり使うと心が原因不明の鈍痛に襲われるので最近は食後の一回に控えるようにしております」

翠星石「それこそウソつけーですぅ!何が鈍痛ですか!ヒラサワがんなことで心を痛めるわけねーですぅ!」
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:39:06.24 ID:xnF9D8l60
ジュン「それにその諺違うんじゃ…」

平沢進「諺の引用だとは一言も言っていないので」

ジュン「……たしかにそうだけど」

真紅「…言葉をよく知っているのね。ジュンも見習いなさい」

ジュン「は?いやいや、だから間違ってるっていう…」

真紅「本当のものを知っているからこそ、わざと間違えることで面白味が生まれるのよ。あなたがたまに観ているお笑いや、遥か古代の詩や小噺、文筆業においての基本よ。アメリカン風に言えば現代のじょーくなどにも通じるのだわ」

ジュン「…は、はあ」
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:40:03.74 ID:xnF9D8l60
翠星石「…ぜってーヒラサワはんなこと考えて言ってねーですよ。顔を見れば分かるですぅ」

平沢進「おや。翠の人形にもついに数瞬限定の読心能力が?」

翠星石「ええ。ついに目覚めちまったですぅ」

平沢進「やっぱり」

真紅「…………あら、そう」

真紅「まあ、その話はいいのだわ」

真紅「……私一人だけ真面目に喋って、空気の読めない子みたいじゃない」

ジュン「へー、それは真紅でも分かるんだな…いだっ!」

真紅「じょーくはここまでなのだわ。本題に移りましょう」
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:41:55.51 ID:xnF9D8l60
真紅「では、私から聞くのだわ。翠星石、今日は何の用でこの家へ?マスターが身分を偽ってまでこの部屋まで入ってくるということは、まさか…」ス…

翠星石「え!?ち、ちげーですよ!アリスゲームをする気なんて毛頭ねーです!」

真紅「だと思ったのだわ。あなたは昔から喧嘩が嫌いだったものね」

翠星石「は、はぁ?じゃあ最初から聞かなくていーじゃねーですか!」

真紅「念の為よ。それに、あなたも私たちがアリスゲームに参加しないだろうと思いつつ、念の為に探りに来たのでしょう?」

翠星石「う……さすが真紅ですね」

平沢進「翠の人形とは大違い」

翠星石「そうそ…って!言葉を先読みすんなですぅ!」

平沢進「ヒラサワも数瞬限定で会得した読心能力を発揮したくなってしまい、つい」
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:44:11.86 ID:xnF9D8l60
翠星石「なんでヒラサワと翠星石がサイケデリックな能力持ってる設定になってるですか!

翠星石「……じゃなくて、こほん。まあ、その通りですぅ。とりあえず言いたいことは、翠星石はアリスゲームに参加しないってことと、真紅や雛苺も出来ればこっちを攻撃して欲しくねーってことです」

真紅「分かったのだわ。私たちもあなたたちに攻撃しない。雛苺は今私の下僕だから、私の決定に従ってくれるわ。あとは…」

真紅「っと、そういえば蒼星石は本当に一緒ではないの?」

翠星石「……えーっと、はいですぅ」

ジュン「蒼星石って、あの蒼い王子様みたいな格好のローゼンメイデンか。…まさか前言ってたもう一人の双子ってコイツなのか?オッドアイぐらいしか似てないじゃないか」

翠星石「なんですと!?聞き捨てならねーです!」
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:45:28.91 ID:xnF9D8l60
ジュン「だってそうじゃないか。他にどこが似てるんだよ」

翠星石「そりゃこの空前絶後の美少女フェイスとお淑やかで優美な心根ですぅ!見ればわかんでしょーが、このトントンチキ!」

平沢進「えー…」

翠星石「なんでヒラサワがヒいてるですか!おかしーです!」

ジュン「だって、誰から見ても似てないんだから仕方ないだろ」

翠星石「むき〜っ!!」

真紅「こほん!!」

翠星石「あっ!」ジュン「あ…」
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:46:33.53 ID:xnF9D8l60
真紅「…話を続けるわ。……二人はいつも一緒だったのに、何だか不思議な感じね。前に蒼星石とあった時には、何か悩んでいるようだったけれど、何かあったのかしら?」

翠星石「…それが、思い当たることがねーんですぅ。…少なくとも最近のことでは。…でも!そこは心配ご無用ですぅ。妹の悩みは、この翠星石とヒラサワがばっちりくっきり解決しますから!」

真紅「…あなたも力添えしてくださるの?」

平沢進「はあ。まあ、一応協力体制が敷かれているらしく」

真紅「…そう。まあ、私には私のすべきことがあるし、蒼星石については任せるのだわ。双子であるあなたにしか分からないこともあるだろうし、頼んだわよ」

翠星石「了解ですぅ!」
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:47:46.45 ID:xnF9D8l60
ジュン「ふーん。…素直になれないヤツだよなあ」

真紅「…何かしら、ジュン」

ジュン「いや、素直にいっつも一人の時言ってた、双子姉妹が心配だって言葉も掛けてやればいいのにって…いだだっ!」

真紅「下僕のクセに生意気なのだわ。主人に意見する時はちゃんと手を挙げてからにしなさい」

翠星石「…相当な恐怖政治ですね。やっぱり翠星石の言った吸血鬼バナシもあながち間違いじゃねーかもですぅ」

平沢進「たしかに。そこの彼、月夜の枕元には注意されたし」

真紅「こほん!ただの手下への躾なのだわ。失敬な」

ジュン「まあ手下になった覚えはないんだけどな」

真紅「口を挟まないで、ジュン。話がまた逸れてしまったでしょう」

ジュン「へいへーい」
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:49:22.65 ID:xnF9D8l60
真紅「…とにかく、私は在来のアリスゲームには参加しない。私は私なりの方法で決着をつけるのだわ。姉妹どうしで争うなんて方法に頼らずに、これを終わらせるの」

翠星石「え?……そんなこと、どうやって?」

真紅「とても難しいけれど、頭の中でやり方は考えてあるわ。アリスゲームが終わる前に……できれば、誰かのローザミスティカが奪われて、完璧に始まってしまう前に、実行できるようにするつもりなのだわ。……信じてもらえる?」

翠星石「んー…………」

翠星石「…真紅はドとつく真面目ですから、真剣なところで適当な事は絶対言わねーですからね。できるできないはビミョーですが、真紅がそうしようと思ってるってことは信用してやるですぅ」

真紅「…そう。ありがとう、翠星石」

翠星石「…調子狂うですね…。ま、どういたしまして、と言っておくですぅ」
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:50:50.91 ID:xnF9D8l60
ジュン「良かったな、真紅。分かってもらえてさ」

真紅「…ええ」

翠星石「こっちも話が円滑に進んで何よりですぅ。自転車で尾行…じゃなくて探偵行為をしたかいがありましたね!」

平沢進「どちらかというと軽犯罪行使力を発揮した気もするが、まあ言い立てることで波風も立てたくないので同意しておく」

翠星石「ちょ、ちょっと!そこまでいったらもう白状したようなもんじゃねーですか!」

平沢進「大丈夫。心証が曇天の空色になった程度」

翠星石「それって結構マズいじゃねーですか!」

平沢進「空の色など人の内心によって意味合いがジェット噴射のごとく映ろうもの。灰色の完成した幸せだってどこぞの家屋にはあろう。気に病むことなどない」
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/15(日) 22:52:47.19 ID:xnF9D8l60
一旦ここまで
話が全然進まなくてすみません
好きにご批判ご質問ご意見お願いします
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 23:03:14.07 ID:dNn7vtni0
おつ
ローゼン見たことないしヒラサワもほぼ聞いてないけど面白く読んでる
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 15:23:55.38 ID:jfaifRPVO
よくもまあこんなにスラスラとヒラサワ節を…
凄いな>>1
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/20(金) 08:04:43.49 ID:KfsOaDD7O
更新遅れててすみません
今夜あたりには出来ると思います
生きてますので見捨てないでね!(小声)
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/20(金) 14:53:49.58 ID:OKjgKNXDO
見守るさ
いついつまでも
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:32:12.31 ID:qz0Tyjmc0
おっそくなってホントすみません
更新します
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:33:38.56 ID:qz0Tyjmc0
真紅「軽犯罪…?ああ、押し入り未遂ということね。別に私の館に入ってからは客人として扱っているから心配しないでいいのだわ」

翠星石「あ、そっちですか…ほっ」

ジュン「ここは僕んちなんだけどな」

真紅「下僕の家なら、つまりは私の家でしょう」

翠星石「誰の家かなんてどーでもいいですぅ。…じゃ、話はとりあえず終わりですかね」

真紅「ええ。結果論だけれど、来てくれて助かったのだわ、翠星石。どう?二人とも、このあと一緒に紅茶でも…」

翠星石「お!うーん、そうですね…」

平沢進「いや、私は仕事があるので。翠の人形にも多肉食な植物を救済するという大役があったはず」

翠星石「はっ!そうでした!元はと言えばそれで外出してたのをすっかり忘れてたですぅ!んじゃ真紅、悪いですけど今日はここまでで…」
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:34:21.34 ID:qz0Tyjmc0
ジュン「なんだ、もう帰るのか。突風みたいなヤツだな」

真紅「仕事なら仕方ないのだわ。では翠星石、平沢、また「あー!」」

真紅「……?」

雛苺「翠星石、もう帰っちゃうの?せっかく来たのにー」トテテテ

翠星石「なんだ、チビ苺ですか。ええ、帰るです。翠星石はお前と違って多忙なんですぅ。翠星石が帰っても寂しいからって泣くんじゃねーですよ」

雛苺「むー!そんなことないのー!ヒナは泣き虫を卒業したしお手伝いもしっかりやってるんだからー!ね、トモエ!のり!」

トモエ「…えっと、うん」

翠星石「ちょっと迷ってるじゃねーですか。ヒラサワの顔見て怖がってるような脳天気おチビが泣き虫卒業だなんて十年早いですぅ」
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:35:05.45 ID:qz0Tyjmc0
雛苺「うう〜…そんなことないもん…」

トモエ「えっと、ごめん。雛苺がお手伝いをどうやってるとかちゃんと知らなくて…」

のり「え、えっとね!ヒナちゃんは最近お手伝い張り切ってるよ!全然文句も言わずに手伝ってくれるからいつも助かってるのよ〜」

雛苺「…う、うん!そうなの!ヒナは頑張ってるの!」パァッ

翠星石「ふ、ふーんだ。翠星石だってもっと大変で重大なお手伝いをしてるですぅ。そんぐらいでいい気になってんじゃねーで…あでっ!」

平沢進「はい、そのあたりに。挑発行為を副業とする人形を放っておいたら話が終わらず帰れずじまいになるので。では、またこん「あー!」」
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:36:09.66 ID:qz0Tyjmc0
平沢進「…人が話している時に感嘆符を食い込ませるのが人形風のマナーなのだろうか」

真紅「…少なくとも私は知らないマナーなのだわ」

翠星石「い、いまはたかれた衝撃で大事なことを思い出したですぅ!」

平沢進「え。この人形、実は前世が昭和中期の電化製品だったって?」

翠星石「んなわけねーですぅ!叩かれたら治るタイプのテレビとは何の因果もねーですぅ!」

平沢進「しかし現実にそうなった」

翠星石「う…これは…しょ、ショック療法ですぅ!」

平沢進「苦しい言い訳だがこれ以上ブツブツ言い返すのも面倒なので取り敢えず「あ、そう」と返しておく」
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:36:40.79 ID:qz0Tyjmc0
翠星石「前半口に出す必要あったですか!?も少し配慮だかソンタクだかをしやがれですぅ!……じゃなくて、こほん。んなこと言いたいわけじゃなかったです。翠星石にはまだやるべき事があったんです!それを思い出したです!」

平沢進「いや、もう為すべきことなどない。背中を見れば分かるように十字架やら責務やらは背負っていないし」

翠星石「いいや、あるです!そんなおも〜い話を言おうとしたんじゃねーですぅ。思い出したことっていうのは……そう!ヒラサワの素性をはっきり伝えてみんなに信用してもらうことですぅ!」

平沢進「へえ」

翠星石「へえ…じゃねーです!信用されることが社会で一番重要だって、翠星石は知ってるんですよ!マンガでちゃんと読んだんですから!」
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:37:33.81 ID:qz0Tyjmc0
平沢進「マンガにおいて重要なことがヒラサワにおいて重要だとは限らないので。それに、信用という言葉は誠実さという言葉と同じく空想上の産物だということをご存知ない?」

翠星石「はぁ!?んなわけねーです!だって、ここに誠実さの化身、翠星石がいるじゃねーですか!」

平沢進「え、無窮の空のどこからか突然声が」

翠星石「み、見えねーフリすんじゃねーですぅ!はいはい、誠実さの化身は言い過ぎでした!翠星石は誠実じゃねーですからもう見えるですよ!ほらほら手を振ってやるです!」

平沢進「おや。突然翠の人形が現れた。三途の川岸から手を振っている。やはりまだ輪廻を乗り越え解脱に至るには早かった模様」
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:38:03.96 ID:qz0Tyjmc0
翠星石「なんで翠星石が瀕死で三途の川の順番待ちしてることになってるですか!…とにかく!このままじゃヒラサワは正体不明のおじさんっていう印象で終わって帰ることになるんですよ!それでいいんですか!」

ジュン「たしかに正体は分からないんだけど身も蓋もないな…」

真紅「…第一印象は妖しげ、というカンジなのだわ」

翠星石「ほらほら!言われてるですよ!こんなふうに言われっぱなしでいいっていうんですか!」

平沢進「別に結構」

翠星石「えっ!?な、なんでですか!?…百歩譲ってヒラサワは結構でも翠星石はケッコーじゃねーんです!仮にもこの才色兼備の翠星石のマスターが、怪しいっていう一言説明で終わられたら翠星石の立つ瀬がねーですぅ!」
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:38:56.62 ID:qz0Tyjmc0
平沢進「人形の立てるような浅瀬など元々そんなに無いのでは」

翠星石「うるせーです!とにかく!翠星石が懇切丁寧に皆にヒラサワの所業を伝えてやるです!ヒラサワも人間である以上、自己紹介とかそういうのと無縁ではいられねーんですからね!」

雛苺「え!……」

翠星石「…なんですか?」

雛苺「その人、人間なの…?」

翠星石「は!?今そこ疑問抱くとこじゃねーですぅ!確かに分からなくもねーですけど!!」
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:39:30.51 ID:qz0Tyjmc0
のり「…あ!怪しいって言葉で思い出したけど…もしかして…えっと、ヒラサワさんって、さっきの自転車に乗って…」

雛苺「!!?あ、あのゆーまなのっ!?やっぱりそうだと思ったのーっ!!人間の皮を被った宇宙人なのぉ!ヒナをぱくってうにゅーみたいに食べちゃうつもりなのぉ!!」ガタガタ

ジュン「こら、うるさいし失礼だぞ!UMAなんていないって。珍しい生き物や奇形の動物を見間違えただけだよ」

トモエ「雛苺、落ち着いて。この人は人間だよ…たぶん」

平沢進「そう、恐らく人間。遊星から訪れた物体Xのように、切り裂いて調べ尽くすまでは人と分からぬので夜を歩く人は全て大体人間だろうという推測に基づかれている」

雛苺「??つまり…ど、どっちなのぉ…?」
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:40:04.37 ID:qz0Tyjmc0
ジュン「…雛苺、あんまり深く考えないほうがいいぞ」

雛苺「そ、そうするのー…って!でも、UMAはいるって、ジュンもそう言ってたのよ!なんであの時ウソついたのぉ?」

ジュン「は?何のことだよ。僕、そんなこと言った覚えは…」

雛苺「え、でもでも!テレビでゆーまを見てた時にジュンが…」

翠星石「はいはい、どうせ馬とUMAを間違えたとかそんなことですよ。んなことは今どーでもいいんです!ほらほら皆の衆質問です!ヒラサワを見て、どんな職業の人間だと思うですか?」

ジュン「え?うーっと……」
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:41:30.95 ID:qz0Tyjmc0
ジュン「地方公務員?」

のり「えーっと、デザイナー…?」

トモエ「…絵描きさん?」

真紅「…民俗学者?」

雛苺「ゆ、UFOの研究家なのっ!」

平沢進「………」

翠星石「ほれみたことか、ですぅ!誰一人として何一つ当たってねーですぅ!このまんま帰ったら間違いなく正体不明おじさんの道をまっしぐらですよ!」
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:41:58.39 ID:qz0Tyjmc0
平沢進「やっぱり」

翠星石「……え?何ちょっと嬉しそうな顔してるですか!?さっぱり意味がわからねーですぅ!」

平沢進「ヒラサワはステルスを標榜しているので。こうして顔を晒したところで職業不定の放浪者と看做されるとは予想のとおりで。つい」

トモエ「嬉しそう?…さっきと同じ無表情に見えるけど」

真紅「……なるほどね」ボソッ

翠星石「むーっ!何でそんなことが嬉しいんですか!」
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:42:40.43 ID:qz0Tyjmc0
平沢進「そんなことと言われましても。ヒラサワの本懐は誰ぞに理解していただくために抱いている訳では無いので」

翠星石「ホンカイ?え、えっとホンカイっていうと……まあホンカイは理解してもらわなくてもいいですぅ。とりあえず、職業ぐらいは知ってもらわないと!」

平沢進「はあ。で、どうするの。ヒラサワは音…「おーっと!待ったですぅ!」…やかましい」

翠星石「口で説明するより耳で聞いたほうが分かるはず!というわけで、じゃじゃーん!実はこんな時のために音楽再生マシーンを持ってきてたですぅ!」バッ

ジュン「ん?ウォークマン?ってことは…」

平沢進「うわ。所有者に無断で持ち出すとは。人はそれを窃盗と呼ぶ」

翠星石「人にどー呼ばれようと知ったこっちゃねーです!さて、ちゃっちゃと流すですよ!チビ苺にも分かるように、分かりやすそうな題名の曲をちゃんと選んでやったです!」

雛苺「うゆ?」

平沢進「はあ、解り易い題名。となると…」

翠星石「問答無用ですぅ!えーいっ!」ポチ
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:44:38.98 ID:qz0Tyjmc0
https://youtu.be/FDNEqjYX4E8

♪地球ネコ 平沢進 2012 / 今井ゆうぞう/はいだしょうこ (作詞作曲:平沢進) 2003

ママ! 赤い夕日が沈む屋根の上
ママ! 大きい大きいネコが見てるよ

怪しいヒゲで空をちょっと撫でて
遠い国へ聞き耳をたて
僕にだけ内緒で聞かせてくれた

ママ! 遠い遠い海が波をたて
ママ! 僕を見ているよと歌うんだ

謎のシッポで風をちょっとこねて
ご覧と僕に地球を見せた
こんなにも沢山僕を守っている
地球ゾウ 地球ドリ 地球トラ ポチもいる
火山の日 雨水 竜巻 ヒトもいる

ママ! 遠い国で泣いたよ誰かが
ママ! 地球ネコが消えちゃう何故なの
ママ! 赤い夕日の道を追いかけて
ママ! 地球ネコを探しに行くよ
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:45:44.10 ID:qz0Tyjmc0
ジュン「………ん?」

トモエ「…………?」

のり「え?え??」

雛苺「ふゅ……!!」ガタガタガタガタガタ

真紅「ひっ……」タジ…

翠星石「……」

平沢進「……」

翠星石「お…思いっきり逆効果じゃねーですか!子供に聞かせるべきじゃねーほうの曲を選んじまったですぅ!真紅さえビミョーにヒいてるじゃねーですか!」

平沢進「オマエが選んだ癖して何を言う。しかしあれはちゃんと幼年者にも分かるよう小学年程度の熟語のみで…」
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:46:41.83 ID:qz0Tyjmc0
翠星石「嘘八百並べ立てんなですぅ!あーもう!せっかく信用してもらおうとしたのに…!」

雛苺「……」ブクブク

トモエ「雛苺!大丈夫!?」

雛苺「おっきいネコ…おっきいトラ…おっきいポチ……」ブクブク

真紅「っ…翠星石、あなたまさか私たちに攻撃を…!」

ジュン「いや、別に攻撃とかそういうモンじゃないだろ…それに、この曲どこかで…?」
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:47:09.27 ID:qz0Tyjmc0
のり「こ、これ、曲なの!?ジュンくん、お姉ちゃんよく分からないよ〜…」

翠星石「あ、あわわ!ど、どうするですか!図らずも攻撃したことになっちまったです!ヒラサワ、どうやってこの場を切り抜けるですか!?」

平沢進「どうもこうもない。LARDなどの音響兵器を放った覚えもないので国連に恨まれる心配もないし」

翠星石「またヘンなことを…!うう〜、こうなったら他にテキトーに曲を選んでもっかい流すしか…!お願いです、どちらかと言えばフツーの曲来てです…!」カチャカチャ

真紅「!や、やめなさい翠星石!もう大きなネコの歌は…!」

翠星石「ネコも杓子も知らんですぅ!えーい、ままよ!ですぅ!」ポチッ
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