平沢進「東京のヒラサワです」翠星石「まきますか?まきませんか?」平沢進「違います」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:49:08.40 ID:qz0Tyjmc0
https://youtu.be/0qZvASiZ2Ic

♪luuktung or daai 平沢進 2003
(【Ruktun or die】 宮本優子(作詞作曲:平沢進)1999 /平沢進ver 2001)
(【ルクトゥン or die】 平沢進 2010)

紅蓮の怒りは古から時を跨いで
KIOSKの裏の吹き溜まりでぽーんと花咲いた
仏陀よ遅いよ人類なら
はるかな昔に堕落したし
でっちあげとか
ほったらかしで
こじれて ダサくて ほどけない

新橋の駅にお目見えです「これ修羅ども」と
改札の脇の人溜まりでぴょんと一躍り
仏陀よ遅いよ人類なら
疲れてムサくてやる気ないし
かったるいほど かっぱらわれて
いじけて もつれて 戻れない

踊りましょう 貴方
いとおしい 貴方

Luuktung or daai Luuktung or daai
外来語じゃハルマゲドン
Luuktung or daai Luuktung or daai
古の振りで Pai Duai kan krap
Luuktung or daai Luuktung or daai
踊れや歌えつるんで
Luuktung or daai Luuktung or daai
古の歌で Pai Duai kan krap


功徳のチャンスは てんこ盛りでがーんと気前よく
ごみ箱の隅の新聞記事にどーんとぶちまけて
仏陀よこのまま人類なら
怠けてアホけてシケていくし
けっとばしては のんだくれては
花見の酒乱で馬鹿騒ぎ

踊りましょう 貴方
いとおしい 貴方

Luuktung or daai Luuktung or daai
外来語じゃハルマゲドン
Luuktung or daai Luuktung or daai
古の振りで Pai Duai kan krap
Luuktung or daai Luuktung or daai
踊れや歌えつるんで
Luuktung or daai Luuktung or daai
古の歌で Pai Duai kan krap

Luuktung or daai Luuktung or daai
外来語じゃハルマゲドン
Luuktung or daai Luuktung or daai
古の振りで Pai Duai kan krap
Luuktung or daai Luuktung or daai
踊れや歌えつるんで
Luuktung or daai Luuktung or daai
古の歌で Pai Duai kan krap
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:49:51.12 ID:qz0Tyjmc0
翠星石「ひ、ひぃー!神様…!どうか受け入れられますように…」

平沢進「ここは仏陀にでも祈ったほうが良いのでは」

真紅「………」

真紅「……なかなか面白い曲なのだわ」

トモエ「…聴いたことないタイプですが、明るくて楽しいですね。歌詞は…えっと、一度聴いただけじゃ全部は分からなかったけど」

平沢進「そう?」
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:50:21.70 ID:qz0Tyjmc0
のり「お姉ちゃん、こ、今回は曲だって分かったわよ!何だか東アジア風なカンジの…」

ジュン「そこ自慢げにいうとこじゃないだろ!…えーと、つまりヒラサワさんは…?」

平沢進「そう。音楽家」

のり「へ、へぇ〜っ!音楽家さんなんですか!初めて会っちゃったかも!すごいね〜ヒナちゃん!」

雛苺「う、うん!なんだかよく分からなかったけど楽しかったのー!るくとぅんおあだい!るくとぅんおあだい!」

翠星石「……ほっ。何とかなったみたいですね。さすがは翠星石ですぅ!天運を味方につけるなんて!」

平沢進「電子機器のシャッフル・スイッチまでも天が監視しているとは。よほど暇なのかブラックなのか」
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:51:29.92 ID:qz0Tyjmc0
トモエ「…英語と日本語以外の言語が混じってましたよね。あれは…?」

平沢進「タイ語」

トモエ「タイ語…ですか?」

真紅「…『ルクトゥン』とは、タイ語で『歌謡曲』などを表す語なのだわ。タイの歌謡曲といえばモーラシンなどの時に死人が出るような激しい大衆音楽が有名…つまり、ルクトゥンオアダイとは死者が出るほどの熱狂的な音楽…という意味かしら。ルクトゥンの隣に外来語である英語のダイを並べるというのがまた独特なのだわ」

翠星石「へ、へー。翠星石はもちろん知ってましたけど、真紅も結構詳しいんですね」
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:52:03.96 ID:qz0Tyjmc0
真紅「宗教存在を引き合いに出して人類に対する諦めかヤケのようなものを歌詞に準えておきながら、実在のものや今風の言葉を用い、リズムと韻を重視していることでそれの閉塞感を感じさせないふうに工夫されている。曲調は明るいけれど、とても悲観的な歌ともとれる…不思議な曲…」

翠星石「はあ……さっきまでビビってやがったくせによく口の回るヤツですぅ」

真紅「!…こほん。私が謡曲を聴いて怯えるはずが無いでしょう。あちらの曲も、平易な言葉を使いつつ童の未知と神秘への探求心をくすぐるいい曲なのだわ。…まったく、何と見間違えたのかしら」

翠星石「えー?だって…あーなるほど!そういえば真紅は猫が怖いんですよね!だからさっきは、地球みたいにおっきいネコを想像して勝手におっかなびっくりしてたんですね!」

真紅「………」
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:52:36.53 ID:qz0Tyjmc0
翠星石「図星だからって黙られると困るですぅ」

真紅「…少し見ないうちに皮肉っぽくなったわね、翠星石」

ジュン「へー。真紅ってそんなに猫が怖いのか。というか、一つ目の曲やっぱりどこかで聴いたことあるような…?うーん…」

翠星石「お!これぞステルス・メジャーじゃねーですか?聞いたことはあるけど誰が作ったかは知らない、街で見てもその人だとは気づけないってヤツですぅ!」

平沢進「何故その業界用語をご存知?まさかTw(hz)を今でも監視しているとでもいうのか」

翠星石「あ、い、いやんなことねーですぅ!ギョーカイ用語ぐらい翠星石が知ってて当然に決まってるじゃねーですか!」
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:53:14.70 ID:qz0Tyjmc0
平沢進「…へえ、そう」

真紅「…少なくとも私の知識にはそんな業界用語はないのだわ。それについて私が無知なだけかもしれないけれど」

翠星石「あ、あははー!そ、そうです真紅ぅ!もっと勉強しないとぉ!あ、あはは……」

真紅「……まあ、そういうことにしておくのだわ」

ジュン「………うーん、思い出せないな。後で調べるか…」

真紅「ジュンがもっと子供だった頃に聴いたことがあるのかもね。幼い時の記憶というものは、なかなかすぐには戻らないものだから。けれど、消えてしまった訳ではないのだわ」
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:54:14.74 ID:qz0Tyjmc0
翠星石「そうかもですね。ネコが怖いってむっかしの記憶も、真紅からは全然消えてねーみたいですし!」

真紅「こほん!…コワいのではないわ。嫌いなのよ。あんなに野蛮な生物、他にはいないわ。どこへ逃げても追い回された時のあの恐怖といったら例えようも…」

ジュン「…それって、やっぱ怖いんじゃないのか?」

真紅「……この話はここで終わり!とにかく平沢の音楽家という素性が分かってスッキリしたのだわ!」

ジュン「逃げたな」

翠星石「逃げたですね」

平沢進「人形の遁走劇とは。日曜の朝にでも相応しそうな題目で」
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:54:50.31 ID:qz0Tyjmc0
真紅「こほっこほん!さあ、二人とも用事があるんでしょう。立ち話している時間は無いはずなのだわ。ほら、ジュンもトモエとの勉強会があったでしょう?机に向かいなさい」

ジュン「へいへーい」

トモエ「…そういえば、そうだったね」

翠星石「…まあ、今回は許してやるですぅ」

平沢進「では、またこ…」

…♪♪

翠星石「…ん?なんか音が…あ!音楽再生マシーンを止めるの忘れてたですぅ」

真紅「曲が流れ始めてるわね。…最後にこのもう一曲だけ聴いても?」

平沢進「…まあ、まだ定時前なので。ご自由に」
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:56:24.45 ID:qz0Tyjmc0
https://youtu.be/7qJ9HgxJM-I

♪NO ROOM P-MODEL(平沢進) 1992

四方に無敵の歌を聴き
ウルトラなヴォイスで謎を消す
アストロの夜明けは
アウトローな意味でも
監禁の部屋ならキミには無い

OH,NO ROOM
OH,NO ROOM

希望のいかつい道に立ち
ピープルの姿で嘘を解く
千年のかたわらバスに乗り
また身を切る部屋なら
キミには無い

OH,NO ROOM
OH,NO ROOM
IN OUT IN OUT IN(NO ROOM)
IN OUT IN OUT IN(NO ROOM)
IN OUT
IN OUT IN
(NO ROOM)
IN OUT IN OUT IN

四方に無敵の歌を聴き
ウルトラなヴァイブで光を放つ
アストロの夜明けに
アウトローな意味でも
ミステリーに輝くキミを呼ぶ

OH,NO ROOM
OH,NO ROOM

IN OUT IN OUT IN(NO ROOM)
IN OUT IN OUT IN(NO ROOM)
IN OUT IN OUT IN(NO ROOM)
IN OUT IN OUT IN

IN OUT IN OUT IN(NO ROOM)
IN OUT IN OUT IN(NO ROOM)
IN OUT IN OUT IN(NO ROOM)
IN OUT IN OUT
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:58:38.31 ID:qz0Tyjmc0
ジュン「……」

平沢進「はいここまで。近辺に著作権管理団体のレーダー探知機が無くて何より」

翠星石「…またヘンな曲ですね。まあ?この知的な翠星石には言いたいことは何もかもすんごく分かりましたけど?」

平沢進「では、アストロの意味とはなんでしょう」

翠星石「…さあヒラサワ!もうカラスが鳴くから帰るですよ!」

平沢進「言語野が手に負えんと泣くから帰りたくなった癖してカラスに責任転換とは。鳥類保護法に抵触してしまえばいいのに」

翠星石「う、うるせーです!カラスが鳴いてるのも事実だからいーんですぅ!じゃあ、真紅たち…」
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 21:59:33.59 ID:qz0Tyjmc0
ジュン「……」

真紅「……ジュン」

翠星石「…?」

平沢進「ははあ」

のり「……」

トモエ「……」

翠星石「……なんですか?みんな黙っちゃって。さっきの歌がそんなに心にずっしり来たですか?閉じ込めてる部屋なんてないからとっとと飛び出せってのがそんなに…」
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:01:46.50 ID:qz0Tyjmc0
雛苺「えっと…翠星石、ちょっとしーなの!しー!」

翠星石「は、はぁ?なんで黙らなきゃ…むごっ!」

ジュン「………この曲、最後が『OUT』で終わるんですね」

平沢進「はい。録音機器の不可逆的かつ有意的な不備によりそこで途切れた模様。作っておいたはずの最後の『IN』は無限の電子領域で先行き不安障を発症し迷子になってしまったようで」

ジュン「…そうですか」

ジュン「えっと、その…初対面の人に聞くのもおかしいんですが…」

平沢進「……」
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:04:08.68 ID:qz0Tyjmc0
ジュン「もし僕にしか見えない部屋があって、鍵を失くしたドアがついていて…そこから、どうやったら外に出られると思いますか?…いや、部屋なんて無いんだと信じられるようにはどうしたら…?」

平沢進「簡単。大声でそこの者に助けを求めるとよろしい。一人にしか見えぬ扉ならば、幾重もの南京錠が付いていようがいまいが、他の者は鍵を開ける必要すらなく。空気を切り分けるようにして侵入を受け、手を借り外に出るだけで良い」

平沢進「扉をすり抜け、振り返ればそこには無色の大気の端くれがあるだけでしょう。部屋が無いと意固地に思い込もうとするのでなく、無という事実を知ってしまえばその問は解決する」

ジュン「……」

平沢進「問題は、呼ぶだけの大声が出せるかどうか。今のうちより発声練習でシャウトでもするとよろしい。また、そこが四畳半の部屋ならば数千リットルの大気の端くれと声量出力が闘う必要もある。足腰と横隔膜を山男のごとく鍛えるとなおよろしい。あとは……」
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:04:47.10 ID:qz0Tyjmc0
平沢進「千年が傍らに居るのだから、そちらに聞けば。今のはほんの一例なので。私は三日娘の相手で忙しいのでこれ以上はコメントを控えさせていただく」

ジュン「……あ、真紅…」

真紅「………平沢」

翠星石「ヒラサワ………」

翠星石「……三日娘ってもしかして翠星石のことですか!?!?」

平沢進「さあ。ではまたこんど」

ジュン&真紅「ま、また今度…」
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:05:17.48 ID:qz0Tyjmc0
翠星石「ちょ、待つですヒラサワ!!何が三日ですか!翠星石は真紅より長生きですぅ!もっと色んなものを見てきたんですよ!」

平沢進「はあ、そう。では老いた人形さん、お足元にお気をつけてお玄関にお降りください」

翠星石「年寄り扱いしろって事じゃねーです!むき〜っ!……じゃあまたですよ!!さいならですぅ!」

雛苺「またなの〜!!」トモエ「またね」のり「じゃ、じゃあね〜」
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:06:12.91 ID:qz0Tyjmc0
のり「………行っちゃった。突風みたいな人たちだったね…」

トモエ「ええ。…変な人でしたけど、悪い人じゃなくて良かったですね」

雛苺「顔はコワいけどゆーまじゃなくてよかったの!翠星石も楽しそうだったし!」

真紅「…そうね。とりあえず安心したのだわ。些細な表情の変化も分かるなんて、翠星石もなかなか馴染めているようだったし。人見知りなあの子にしては驚きなのだわ」

のり「…よし!じゃあ色々あってお腹も空いてきたし、お夕食の準備でもしますか!トモエちゃん、一緒に食べてく?」

トモエ「あ…流石に申し訳ないのでこの辺りで…」
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:06:47.89 ID:qz0Tyjmc0
雛苺「えー、申し訳なくなんかないの〜!ご飯は、みんなで食べるととっても美味しくてたのしーのよ!ねえねえ、トモエも一緒に食べようよー!」

トモエ「えっと…」

真紅「…気になるなら、のりの料理のお手伝いをしてあげなさい。そうすれば、気負う必要も無くなるのだわ」

トモエ「…そうだね。じゃあ、のりさん、エプロン貸して頂けますか?」

のり「あ!ありがとうね!はいはいどうぞ〜。今日は色んなことがあったし、花丸ハンバーグ作っちゃおうかなっ!」

雛苺「は、花丸ハンバーグ!?ひ、ヒナも手伝うのっ!椅子持ってって、お野菜さん洗うの〜!」
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:07:13.49 ID:qz0Tyjmc0
トモエ「ふふっ…じゃあ、一緒に頑張ろう。ジュンくん、勉強会はまた今度で」タッタッ…

ジュン「あ…うん」

のり「あらあら〜!ヒナちゃんまでありがとね!今日は腕によりを掛けて頑張っちゃうわよ〜!」

雛苺「うん!ヒナも腕にお塩塗ってガンバるの〜!」

トモエ「雛苺、それは全然意味が違うよ…」
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:08:45.19 ID:qz0Tyjmc0
真紅「…みんな元気ね。さて、ジュン」

ジュン「ああ。……面白い人…と曲だったな」

真紅「ええ。部屋なんて無いという題名なのに、出たり入ったりを繰り返しているというのがヒトの逡巡を表しているようで面白いのだわ。(NO ROOM)という掛け声は、たぶんそうして迷い続ける人に呼びかけているのね。…たぶん、だけれど」

ジュン「たぶんな。僕には耳が痛いような、はっとしたような、なんとも言えない感じだったよ。あれを言葉で言われてたら反発してたかもだけど…歌と言葉だと、なんだか違うんだな」

真紅「そうね。歌には、歌詞の全ての裏側まで分からなくとも、何故か惹き付けられるものがあるのだわ。小説や詩などの言葉にももちろんそれはあるけれど、また違う…何が違うのか、までははっきりと言えないけれど」

真紅「…これ以上は、私にも何も言えないのだわ。音楽は人の心を震わせる現実の魔法のひとつ。…でも、私は聴くことしか知らないの。だから、詳細に語る事は出来ないのだわ」
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:11:22.80 ID:qz0Tyjmc0
真紅「金糸雀に訊いてみれば…彼女もあんな風に見えて、音楽という人に寄り添う力について造詣が深いはずなのだし。今度会ったら、一度詳しく話をしてみようかしら」

ジュン「ふぅん。…真紅が正直に知らないから教えてって言えるかどうかだな」

真紅「…こほん。私はいつだって正直なのだわ。何に対してもね」

ジュン「へー、どうだかな?」

真紅「どうだって、よ」

ジュン「……ははっ」真紅「……ふふ」
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:12:05.48 ID:qz0Tyjmc0
「あ、危ないっ!!トモエちゃん、ヒナちゃんを支えてあげてっ!」

「ひ、雛苺。まったく、そんなに両手で野菜を持つから…!」

「だ、大丈夫なのっ!ヒナだって、これくらい…うわぁっ!?」

ジュン「えっ!?お、おい!大丈夫か!?まったく、何やってるんだよ!」タッタッタッ…

真紅「……」

真紅「…何度でも手を貸して、部屋から連れ出してあげるのだわ、ジュン。一進一退で、また部屋に戻ってしまっても、必ず…ジュンの心は、外へと向かっているんだもの」

真紅「アリスゲームとはまた違う、ジュンの戦い。音楽とはまた違うけれど…人に寄り添うお人形として、私には見届ける義務があるのだわ」

「真紅!そこで突っ立ってないで手伝ってくれ!」

真紅「…はいはい。分かったのだわ!…まったく、手のかかる子たちね。…ふふ」タッタッ…
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:12:45.62 ID:qz0Tyjmc0
翠星石「ヒラサワ!…ヒラサワ!!もう麦籠から出してくれてもいーんじゃねーですか!」

平沢進「駄目。まだ潰れかけのフリークショーに訪れる悪趣味なタイプの観客がちらほら」

翠星石「道行く人をけなしすぎじゃねーですか!?歩いてるだけでそんなカテゴリに分けられてるなんてカワイソーに…」

平沢進「人はカテゴリ分けをするのが大好きなので。そのほうが何かと楽なために。結果、互いが互いを団体の一部として見合うために最近は広辞苑の個人の項目が黄点滅しているとのウワサ」

翠星石「は、はぁ……まあ、分かりますけどね。翠星石も昔は、みんなを「ニンゲン」ってひとくくりで見てたこともあった…かもですぅ」
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:13:39.84 ID:qz0Tyjmc0
平沢進「へえ、そう」

翠星石「ヒラサワみたいな仙人みたいなのもいれば…のりみたいにド能天気なのもいて…トモエみたいな無口ーなのも、チビ人間みたいな何かに悩んでるのも…色々いるんですよね。それも、見た目と中身はぜんぜん違ったりしますし」

翠星石「ニンゲンってのは不思議ですぅ。何百年も見てきたはずなのに、今でもちっともよく分からねぇですぅ。今の翠星石には、カテゴリなんかじゃ全然分けられねーです」

平沢進「喋る人形という不思議の権化に不思議がられても」

翠星石「あ!ま、まあそうかもですけど!」

平沢進「それに、何かに悩んでいるのは特異なことではない。チビ人間という卑小的な渾名を付けられた彼の年代は、悩みというものがカラー・コンタクトの如く視界を覆い、見るものの色を変えてしまいがちというだけ。大体は暗めの色に」
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:14:38.52 ID:qz0Tyjmc0
翠星石「ふーん…」

平沢進「更にそれを他人が拭い去ろうとすれば、悩みとは他者には見えぬもののために誤って目を突いてしまうなど事故も多発する。そのため彼は、千年人形に左手を引いて貰いつつ、自らの右手で目隠しの結び目かカラコンのケースか不可視の鍵を探すのがよろしかろう」

翠星石「……まあ、何となく意味は分かったです。…ヒラサワも何かに悩んだりしてるですか?いまも?」

平沢進「当然。例えば、我が家の窓の破片は今頃何を思いこの夕闇の空を見上げているだろうか、とか」

翠星石「……あ。真紅にせっかく会ったのに直してもらうよう頼むの忘れてたです…」

平沢進「たまにはそういうこともある」
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:15:08.22 ID:qz0Tyjmc0
翠星石「ま、まあそうですよね!手間がかかるのもたまにはいいってもんですぅ!」

平沢進「手間を充実に変換するのもたまにはいいが、それは気休めという逃避の一手段であることも忘れてはならない」

翠星石「はいはい!次会う時にはしっかりくっきり伝えるですよ!さあ、もっとトバして帰るですぅ!」

平沢進「だから、ヒラサワにブルーカラー的期待はするなと。ホワイトな速度で二輪車を走らせるため気を多少長めにするように」

翠星石「はーい!分かったですよ!」
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:17:10.14 ID:qz0Tyjmc0
ーあろるの館(庭)ー

「…ぶえっくしゅ!」

金糸雀「う〜、さ、寒いのかしら…!翠星石のアジトに張り込んで早半日…いつになっても家主さんが帰ってこないのかしら!窓も壊れたままなのに、いったいどこに行っちゃったのかしら……」

金糸雀「はあ…新しい曲が聴けるかなって、ちょっと期待してきたのに、最近は骨折り損の草臥れ儲けまくりなのかしら……」

金糸雀「これ以上遅れたら、またみっちゃんを心配させちゃうし…どうしよう…」

金糸雀「……へっくち!う〜…っ」

金糸雀「きょ、今日のところは引き上げなのかしら!なかなか尻尾を掴ませないわね、翠星石!カナは再三再四何度でも戻ってくるわよ!オーッホッホッホ!」
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:17:57.98 ID:qz0Tyjmc0
金糸雀「…………」

金糸雀「……ついでに、窓も直しておくのかしら。悪気はないけどカナが壊しちゃったんだし。こんな寒い空気が部屋に入ったら大変だもの。…べ、別に翠星石が心配な訳じゃないのかしら!家主さんのことを心配してるだけ…」

金糸雀「…それもおかしいのかしら。あの人だってアリスゲームの敵対者なんだから…」

金糸雀「はあ。カナったら、一人で騒いでへんなの…」パァアア…
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:21:02.73 ID:qz0Tyjmc0
一旦ここまでです
相当好きな三曲をご紹介出来て喜びに打ち震えています
長めに書きすぎて前後でキャラがおかしくなってたりするかもなのでいくらでもご意見ご批判ご質問お願いします
あとルクトゥンオアダイとノールームは歌詞の表記ゆれが多くてどこかたぶん間違ってます ゆるして
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/21(土) 22:25:10.04 ID:qz0Tyjmc0
あと真紅が多少の歌詞解釈をしていますがきっといろいろとそこ違わない?ってのがあると思います
まあ真紅もヒラサワさんの曲を長く聞いてるわけじゃ無いと思うので勘弁してあげてください(責任転嫁)
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/21(土) 23:59:45.78 ID:ML8OrBCjo
地球ネコすき
続き待ってる
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 00:00:21.84 ID:JKsFFRsDo
乙でした!
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 16:48:03.44 ID:YIrO2qHzO
のーるーむすき
今日もよかったわ
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 16:51:22.20 ID:B8rBuWTxo
ルクトゥンなんて言葉よく知ってるな真紅w

適当にYouTubeのリンクを聞いて回ってみたけど
庭師KINGって曲が格好良かった
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 18:54:16.37 ID:XP1emz8DO
なんでこの組み合わせでスレ立てたのか少し見えた気がしたな
おつおつ
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/28(土) 19:37:44.48 ID:5KJFsZi6O
ツヅキハ マダ ナノカ
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/28(土) 20:38:18.79 ID:dEgKLLTn0
NO ROOM好きでよく聴いてるが歌詞の意味なんて一切考えたことなかったな
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 14:08:32.99 ID:ocVsgkA20
ゴタゴタしてて更新遅れてます
マジすんません…
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 16:24:29.06 ID:fo7686Yd0
(報告さえあれば)ええんや
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:00:34.44 ID:8wUzBgZD0
遅れてて大変申し訳ないです
ほんのちょっぴりだけ更新します
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:01:21.33 ID:8wUzBgZD0
翠星石「んー…不思議ですぅ…」

翠星石「なんで窓が再び直ってるんでしょうか?真紅があの後超高速であろるの館に侵入して直してってくれたとは思えんですし…電気屋さんが光の速さで見積もりと修理を終えたとも考えにくいですしね…」

平沢進「電気屋に30万キロメートル毎秒の即応性を求めてどうしようというのか」ヌッ

翠星石「うわぁっ!…でも、他になんか考えられることがあるですか?まさか、金糸雀が直してくれるわけはねーですし…」

平沢進「そのまさかという可能性も。「まさか」は観測が滞ることが多いだけで、その辺に意外と転がっているものなので」

翠星石「えー?だって、金糸雀が直す理由がねーですよ。それに、この館に来たっていう証拠もないですし」

平沢進「実は証拠ならばある。これ」

翠星石「はい?ハート型の髪飾り…あ!こ、これは確かに金糸雀のいつも付けてたヤツですぅ!」
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:02:04.95 ID:8wUzBgZD0
平沢進「やはり。まあ、金色の極小道具という時点でそうだろうと思っていたが」

翠星石「じゃあ、金糸雀はヒラサワが一度見つけた以降もここに来てたですか…きっと翠星石のローザミスティカを狙ってたんですね!」

平沢進「ならばなぜ窓を修繕するのか。鳥類人形が修繕を趣味とする善意の塊系人形だというなら話は別だが」

翠星石「あ…確かにですぅ。金糸雀は別に直すのが大好きってわけでもねーのに、なんで敵方の館の修理なんか…うーん…」

翠星石「翠星石とアリスゲームをする以外に、何か目的があったとか…?はっ!」

平沢進「……」

翠星石「そういえば、金糸雀は音楽に精通したヤツなんでした!きっとヒラサワの館を見て、たぶん…!」
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:02:49.82 ID:8wUzBgZD0
翠星石「たくさん転がってる謎楽器を目の当たりにして、音楽家根性に火がついて盗む算段をしてたんですぅ!そうに違いねーです!だから、窓が割れてる内に他のヤツが盗みに入らないように、直しておいた…どうです!この名探偵翠星石の推理は!」

平沢進「……」

翠星石「な、なんですかその顔は!この翠星石の推理のどこに穴があったですか!」

平沢進「月の表面並みに穴だらけ。第一、体良く侵入したところで人形がどうやってこれを運ぶというのか」

翠星石「えっ?そりゃ、こうして…ん〜!!お、重っ…」

平沢進「でしょ」

翠星石「……ふぅ。まあ名探偵にも間違いはありますからね!かの名探偵ホームズも、くんくんもコナンも、犯人を取り逃しちまった事はたまにあるです!そういう失敗を引きずらないのが翠星石のいいとこなんです!」

平沢進「出来ることなら囚人の足枷の如く引きずって教訓として貰いたいもの」
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:03:24.37 ID:8wUzBgZD0
翠星石「うるせーです!翠星石を縛るものなんて失敗だろうと後悔だろうとなんにもねーんですぅ!」

翠星石「さて…じゃあ、金糸雀をとりあえずふん縛る算段を始めますかね!その髪飾りを囮に使えば、金糸雀は餌に釣られた野鳥のごとくあれよあれよという間に飛んでくること間違いナシです!」

平沢進「ははあ。野鳥狩りならぬ人形狩りと。野外でのそれはヒラサワも初見。安全圏から死合を眺める金持ちのごとくあろるの館内より観戦させて頂く」

翠星石「ふっふーん!任せとけですぅ!金糸雀なんかちょちょいのちょいで捕まえてやるですからね!あ…」

翠星石「あと、一つだけヒラサワにも協力して貰いたいことがあるですぅ。安心してください、カンタンなことなので!」

平沢進「…まあ、手の届く半径2m以内で済むことでしたら」
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:04:36.50 ID:8wUzBgZD0
ガサガサ……ガサガサ…

金糸雀「……ぷはっ!」ポンッ

金糸雀「う〜…!ここにもないのかしら…ど、どうしよう…」

ピチカート「…」チカチカ

金糸雀「そっちにも無かったの?はぁ…これで、昨日の帰り道は全部探し終わっちゃった…」

金糸雀「他に落ちてる場所があるとしたらあの歌手さんのお宅…そこにも無ければ、もう誰かに拾われちゃったとか…?」

金糸雀「みっちゃんも髪飾りのこと凄く気にしてたし…見つからなかったらきっと一緒に探しに出てくれると思うけど…お仕事で忙しいみっちゃんに、これ以上迷惑かけるわけには…」

金糸雀「はあ…」テクテク…
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:05:30.72 ID:8wUzBgZD0
金糸雀「こんな情けないことでお父様から頂いた髪飾りを無くしちゃったら…カナは…カナは……」グスッ

ピチカート「…!」チカチカ

金糸雀「はっ!な、泣いたりしてないのかしらピチカート!カナは強い子なんだから…」ゴシゴシ

金糸雀「ふぅ。とにかく気を取り直して、お庭で飾りを探すのかしら、植物の緑に金の飾りだから、きっと目立つはず…」

金糸雀「……歌手さんがそれで気づいて拾っちゃってたら、その時はどうしよう…」

♪…♪…

金糸雀「……はっ!?」バッ

金糸雀「お、音楽が…!も〜っ、なんでカナはこう間が悪いのかしら!これを目当てに来た時には聴けなくて、探し物に来た時に限って流れてくるなんて…」

♪…♪…

金糸雀「…まあ!とりあえず聴くのかしら!音楽は人の心を外から揺さぶる魔法なのだし!どんな曲かは分からないけれど、きっとカナの集中力を高めてくれるはず…なのかしら!」

平沢進「……」カタカタ
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:07:38.01 ID:8wUzBgZD0
https://youtu.be/an2VLnLfzP0

♪狙撃手 平沢進 2003

塔の遥か上 広告の影
赤いスーツのスナイパーを見ろ
遠のくキミを飽くまで追う
ああ 逃亡の展望も砕く

ヒューと口笛吹き
路地から また路地へと
ヒューと逃げる演技
さあ軽やかに家路へと
DDT! DDT!

見渡す限り真実の墓地
さあ戦場から惨状だけ聞け
慄くキミをどこまで追う
さあ戦場から惨状だけ聞け

ヒューと嗚咽を吐き
悪夢からまた悪夢へ
ヒューと胸を鎮め
さあ弾道を読む静寂を
DDT! DDT!

安息の日も木陰で待つ
黄色いスーツのスナイパーを見ろ
行き交う人 恐怖はピーク
ああ戦場の緊張にも増し

ヒューと口笛吹き
シアターからまたシアターへ
ヒューと恐れるフリ
さあ冷ややかに観劇を
DDT! DDT!
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:09:34.51 ID:8wUzBgZD0
金糸雀「……」ポカーン

金糸雀「今度もまた…凄い曲なのかしら…どっちかというとコワイ系の…」

金糸雀「これも現実に即した曲なのかしら?狙撃手っていうと戦争とか狩りとか…?DDTっていうのは何かの略称?うーん…どきどきトルクメニスタン…とか?そんなんじゃないよね…」

ガサ……ガサ……

金糸雀「うーん……」

「赤いスーツ……」ドバアッ

金糸雀「!?えっ…うわあああああああっ!!こ、これは世界樹の…!?う、動けない…」

ピチカート「!」ピュンッ

金糸雀「あっ、ぴ、ピチカート!バイオリンを…!」

「黄色いスーツときて…」パァアア

ピチカート「…!?」ギュルッ

金糸雀「ぴ、ピチカートっ!」

「ふふふ…おめーをふん縛るのは!」

金糸雀「こ、この声と能力は…」バッ

翠星石「ふっふーん!緑の装いの翠星石ですぅ!金糸雀狩り、ものの見事に大成功ですぅ!!」
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:10:48.38 ID:8wUzBgZD0
翠星石「ヒラサワ、ヒラサワー!任務完了したですよ!翠星石の接近を隠すための音楽トラップもナイスですぅ!髪飾りを撒き餌に使うまでも無かったですね!」

ガラッ

平沢進「トラップなど仕掛けた覚えはない。勝手にトラップとして利用されただけ」

金糸雀「あっ!…(か、歌手さん…!?)」

平沢進「しかしこれが人形狩りと。現代のヘルシー志向にのっとり、減バイオレンス、増メルヘンとは気が利いている。まあ、食品添加物がいくら入っているかは不明だが」

翠星石「思いっきし天然だから気にすんなですぅ!それよりどうですか?猟友会もびっくりのこのお手並みは!ほらほら、翠星石をもって褒め称えるですよ!」

平沢進「よっ!退いてるねぇ」
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:13:12.89 ID:8wUzBgZD0
翠星石「…はぁ?何言ってやがるです?翠星石は褒めてって言ったんです!翠星石に退いてるとこなんてどこにもねーです!」

平沢進「え。これはかの潤布が現行の中了潤布帯に移行した時分に好んで用いられた称賛言葉だが。ご存知ないとは言うまい」

翠星石「え?あ、っと……も、もちろん知ってるですぅ!退いてる退いてるです!翠星石はあらゆるところが退きまくりですぅ!」

平沢進「ふーん」

翠星石「……もしかして今の真っ赤なウソですか!?ビミョーにホントっぽい小噺はやめるですよ!紛らわしーです!」

※中了潤布帯=現行のネクタイ 潤布と呼ばれる地面を這うほどの異様に長いネクタイが長さが「足りすぎている」うえに不衛生と極まりないという理由で百足らず様によって開発指揮されたことで生まれた ネクタイの長さが「退く」ことで使い勝手が良くなったため、その時分には「退く」という言葉が褒め言葉として使われた 詳しくはwebで
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:14:06.41 ID:8wUzBgZD0
平沢進「そんなことより。「そんな事じゃねーです!大問題ですぅ!」うるさい。そこの鳥類人形に用があったのでは」

金糸雀「う…」プラーン…

翠星石「はっ!そ、そうでした!まったく、ヒラサワのせいで本題を忘れるところですぅ。…じゃあ金糸雀!オメーが捕まってる理由は自分でもう分かってるですね?」

金糸雀「…カナはその、探し物に来ただけで…」

翠星石「んなことはもう知ってるですぅ、このトントンチキ!ほれ、探し物はコレですよね?」チャラ…

金糸雀「あっ!…よ、良かった…」

翠星石「良くねーですよ。まだ返すと決めたわけじゃねーんですから。この髪飾りを返して欲しかったら、あろるの館に夜毎現れる理由を説明して貰うですぅ!」

金糸雀「えっ!…な、何度も来たこともバレてたの…!?」
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:15:20.41 ID:8wUzBgZD0
翠星石「当然ですぅ!そんなピカピカしたホタルみたいな格好しといて、翠星石の目を逃れられると思ってるですか?」

平沢進「気づいてなかったくせに」

翠星石「しーですヒラサワ!…ほれほれ、とっとと答えるですよ。負い目がねーなら言えるはずですぅ!」

金糸雀「え、えっと……カナは、その……」チラッ

平沢進「……」

金糸雀(音楽を聴くために来てたなんて、翠星石の前ではとても言えないのかしら…)

金糸雀(ウソをつくわけじゃないもん!ここは最初からの目的の…)

金糸雀「……も、もちろん、アリスゲームをする為なのかしら!夜な夜な翠星石のスキを伺ってたのかしら!」
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:16:20.27 ID:8wUzBgZD0
翠星石「ホントですか?」

金糸雀「えっ!?な、な、なんで疑ってるのかしら!ほ、ホントに決まってるわよ!」

翠星石「………」 ジーッ

金糸雀(な、なんで翠星石がこんなに…!?まさか、読心術でも使えるっていうんじゃ…)

翠星石「……ま、とりあえずそういうことにしとくです」

金糸雀「……」ホッ

翠星石「…それにしても、よくも大っぴらにんなことを言えたもんですぅ。金糸雀が翠星石の寝首をかこうなんて十年、いや千年はええってもんです!」

金糸雀「む〜!翠星石のクセになんてナマイキな…カナが本気なら、アナタ達双子だって倒してみせるんだから!」
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:17:17.86 ID:8wUzBgZD0
翠星石「おーっほっほ!負け犬の遠吠えが聞こえるですね!がんじがらめのぐるぐる巻き状態で言っても見苦しーだけですよ!」

金糸雀「ぐ…く、悔しいのかしら…!」

翠星石「さてヒラサワ!金糸雀の処遇をどうしてやるです?鉢植えに金色の薔薇として活けてやるですか?それとも今夜の晩御飯のおかずの隠し味にでもしちまうですか!?」

金糸雀「ひ、ひぃーっ!!」

平沢進「……」

翠星石「……?なんですか、そのカオ…」

平沢進「…蒼の人形がかつて言ったように、鳥類と翠のが集まるとやかましいことこの上ない。私の経年劣化の進む有機受信機も不運なことにモスキート音として排除できず、そのぐらいは未だ感じ取れる模様」
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:19:03.25 ID:8wUzBgZD0
翠星石「あ…!か、金糸雀!もっと静かにするですよ!ヒラサワはうるさいのが大嫌いなんですぅ!何せこの前なんて…」

翠星石「…あ!」ニヤッ

金糸雀「……?」

翠星石「…この前なんて、ヒラサワの眼前でギャーギャー喚き散らした雛苺が、ヒラサワの目からビームを受けて見るも無惨な姿になっちまったんですぅ!思い出すだけでも涙が出るですぅ…よよよ……」

金糸雀「え……え…?」バッ

平沢進「…あのねぇ」

翠星石「ヒラサワの眼光は、草を焼き鉄を焦がすおっそろしいモンですぅ…でも、真に恐ろしいのはそこじゃねーんです。ヒラサワ・アイは特殊な電磁波で、人形が浴びるとあろうことか、サイボーグに変身してしまうんですぅ!」
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:19:48.13 ID:8wUzBgZD0
金糸雀「え…えっ!?……だ、だ、騙されないのかしら!す、翠星石、そんなウソでカナを騙そうとしても無駄なのかしら!て、て、天才軍師のカナは、そんな嘘八百に動じたりしないのかしらぁ!」

翠星石「信じる信じないは金糸雀の自由ですぅ…でも、この証拠を見たら信じずにいられねーハズですよ…」

金糸雀「え…しょ、証拠……?」

翠星石「この苺大福を見るです…一見なんの変哲もない大福に見えますが、実は……」

金糸雀「……」ゴクッ

「ワタシ ヒナイチゴナノー カナリア ヒサシブリナノー」

金糸雀「んぎゃあああああああああああああっ!!!!」
443 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:21:07.70 ID:8wUzBgZD0
平沢進「そこまで。あろるの館は人形向けの青空劇場ではない。しかもやかましさが倍増している。本題を置き去りに茶番を推し進めるのは箱型電脳小教会の中だけでよろしい」

翠星石「あはははははは!だ、だって面白いんだから仕方ねーですぅ!思った通りに引っかかったんですから!あはははは!!」

金糸雀「ま、まだカナは機械になりたくないのかしらぁっ!!お、お助……えっ!?だ、騙したの翠星石!」

翠星石「あははは!…こほん。さあ?どうですかねぇ?金糸雀は天才軍師で翠星石のウソには絶対騙されないらしいですし?」

金糸雀「な、な…!こ、こんな屈辱初めてなのかしら!あ、後で覚えとくのかしら、翠星石!」

翠星石「負け犬の遠吠えも二回目じゃオチがつかねーですよ?まあとにかく、これで分かったですかね!天才軍師の冠は金糸雀なんかじゃなく、この翠星石にこそふさわし…あだっ!」

平沢進「そこまでと言っていように。いくら薔薇の化身人形とは言え、バラ・エティに会話を似せる必要などあるまい」

翠星石「ん〜…まあ、このままじゃ話が進まねーですしね。金糸雀いじりはこの辺にしとくですぅ」
444 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/03(木) 11:22:04.70 ID:8wUzBgZD0
ここまでです
ペースを戻せるよう尽力します
ご自由にご意見ご質問ご批判お願いします
445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/03(木) 11:27:34.90 ID:4uBMUC//O
ヒラサワかわいい
446 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/03(木) 13:02:06.47 ID:DV/uxa4aO
ヒラサワ初心者にも優しい曲を使ってくれ
オーロラとか上空初期値とか
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/06(日) 11:59:03.70 ID:DMMlAfJ70
確かにちょっと趣味に走りすぎたかもです!
これからは馬の骨を培養増殖するためにも優しい曲を…
使ったり使わなかったりします

ではたぶん今夜更新します
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/08(火) 20:10:44.13 ID:K2vZ0huD0
翠星石「こほん…んじゃ金糸雀。アリスゲームを挑みに来てるってことは、相応の覚悟をして来たんですよね?」

金糸雀「ひっ…も、もちろんなのかしら!さあ、煮るなり焼くなり揚げるなり好きにすればいいのかしら!」

翠星石「その言葉、偽りはねーですね?じゃあ……神妙にしやがれですぅ!」バッ

金糸雀「!!」ギュッ

シュルル…

金糸雀「…え?」

翠星石「あははは!また引っかかったですね!」

平沢進「あのねぇ」
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/08(火) 20:11:36.59 ID:K2vZ0huD0
翠星石「えー、今回は翠星石は悪くねーですぅ!だって金糸雀が好きにしろって言ったんですから!勝手にあっちが勘違いしただけですぅ、翠星石はなーんにも知らんですぅ」

金糸雀「……??えっと、なんでカナが解放されてるのかしら?だって、アリスゲームのルールに従うなら…」

翠星石「ん?まだ状況が分かってねーですか?ニブイヤローですね。だから、翠星石はそのアリスゲームをしねーってことですよ」

金糸雀「…アリスゲームをしない?」

翠星石「何度も言わせんなですぅ。とにかく、翠星石は攻撃する気はねーですから、金糸雀も大人しく…」

金糸雀「……」

翠星石「……?どうしたですか、ピーチクパーチクうるさかったのに突然黙って…」
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/08(火) 20:13:43.12 ID:K2vZ0huD0
金糸雀「それは、これから先もずうっとしないということなのかしら」

翠星石「え?まあそうですけど」

金糸雀「…個人の感情で、それが許されるものなのかしら。だってアリスゲームは、お父様が決めたことなのよ」

翠星石「…」

金糸雀「姉妹で闘い、最後に生き残った一人が至高の乙女、アリスになる。そう義務づけられて生まれてきたのが私たちローゼンメイデン…」

金糸雀「…いえ、義務づけられたでは少し違う…正確に、使い古された言葉で言うなら…それが運命、なのかしら」

平沢進「……」

金糸雀「「アリスゲームをしない」ってカンタンな事のように言ったけど…運命に抗うということは個人が思っただけでどうにかなるものじゃないのかしら」
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/08(火) 20:14:51.28 ID:K2vZ0huD0
翠星石「…んなこと分かってるです」

金糸雀「いいえ、分かってないのかしら。第一、アリスゲームを止めてどうするのかしら?私たちにとって、戦うことが生きること。生きることをやめて…時の流れに身をまかせるつもり?ただの人形として?」

翠星石「っ……」

金糸雀「ほら、応えられないのかしら。お茶会をする為に生まれてきたのならそれもアリかもしれないけど、私たちは薔薇乙女。薔薇乙女の本分を捨てることを、あなたに肯定できるだけの理由がある?」

翠星石「…もちろんあるです。翠星石はケンカがきらいです。姉妹で傷つけ合うなんて真っ平御免ですぅ。だから戦わないんです!」

金糸雀「それはただのワガママなのかしら、翠星石。ちゃんとした理由なんかじゃ…」
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/08(火) 20:15:43.57 ID:K2vZ0huD0
翠星石「んなことねーです!ちゃんとした理由ですぅ!戦いたくないから戦わない、それのどこが悪いんですか!」

金糸雀「真っ平御免でもしたくなくても、すべきことというのがあるのかしら。すべきことから、嫌だという理由で目を背けることが正しいわけがないのかしら!」

翠星石「むっ…ぐ……」

平沢進「ワガママなのは確かに同意」

翠星石「っ……ヒラサワまで…」

平沢進「何故悄気る。自ら我がままの道を選んだのなら他人に文句を言われようと気にかける必要はあるまい」

金糸雀「…?」
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/08(火) 20:16:44.33 ID:K2vZ0huD0
平沢進「この監視社会において群衆を尻目に脇道に逸れれば、「正道に戻るべし」と窘められるのは当然。その当然を前提とすれば我儘という他評を気に病む無意味さが分かるはずだが」

翠星石「!」

翠星石「…そうです。翠星石は遊びや気の迷いでアリスゲームを止めると言ってるんじゃねーんです。これは翠星石の本気のワガママなんですぅ!金糸雀がなんと言おうと、運命だろうがなんだろうが変えるつもりはねーですよ!」

金糸雀「……そう。じゃあ、話してもラチが開かないのかしら。考えが真っ向から違うんだもの」

翠星石「ふん。それはコッチのセリフですぅ。…水銀燈みたいなことを金糸雀が言うとは思わなかったです」

金糸雀「…水銀燈がアリスゲームに打ち込んでいるのは、言い換えればローゼンメイデンのすべきことに最もまっすぐに向き合っているということなのかしら。愛か憎しみかで向き合っているのかは分からないけど」
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/08(火) 20:22:27.02 ID:K2vZ0huD0
翠星石「そんなの、ただ闘いたいから暴れてるだけですよ。あのキョーアクな顔を見れば分かるです」

金糸雀「ホントに?翠星石、アナタは水銀燈のことをほとんど知らないでしょう」

翠星石「…それは確かにそうですけど。でも、あんな好戦的な顔やセリフを聞きゃあ分かるにきまって…」

金糸雀「表情や話す言葉だけで、人は測れないものかしら。誰にだって、人には話せない秘め事があるんだから。互いに心の内に誰にも見せない何かを抱えて…その上でみんなお互いにため息をつくのよ。誰も自分をわかってくれないって」

金糸雀「…あなたも、そういう経験ないのかしら?双子の蒼星石ですら、全てのことを知ってもらっているわけでもないし、全てのことを知っているわけでもない。…そうじゃないの?」

翠星石「……」
455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/08(火) 20:23:53.59 ID:K2vZ0huD0
金糸雀「こほん。話が逸れた上に長話になったわね。じゃあ…今日はお邪魔したのかしら。今回は翠星石が攻撃してこなかったし、それなのにこっちから攻撃するのは道義にもとるからアリスゲームはやめておくのかしら」

金糸雀「でも、カナはアリスゲームを放棄したりしないのかしら。少なくとも今のカナには、どんな事情だって、アリスゲームをやめる理由になるとは思えないから」

翠星石「……」

金糸雀「じゃあ…」

平沢進「はいこれ。失せ物」

金糸雀「あ!…ありがとなのかしら。えっと…」
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/08(火) 20:27:08.31 ID:K2vZ0huD0
平沢進「私は平沢進だ。平沢唯じゃない」

金糸雀「…自己紹介がまだだったのかしら。カナは…私は、薔薇乙女第二ドール金糸雀。…では、さよな」

平沢進「じゃ、またこんど」

金糸雀「!っと……」

翠星石「………………」

翠星石「………またです」ボソッ

金糸雀「……またこんど、なのかしら」タッタッタッ…
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/08(火) 20:28:53.75 ID:K2vZ0huD0
翠星石「……」

平沢進「……」

翠星石「……ふぅ〜っ。金糸雀も中々強情なヤローですぅ」

平沢進「しかし鳥類人形にも理はある」

翠星石「…ま、そうですね。とりあえず、あのボーッとした金糸雀から本音が聞けただけよしとしますか。アリスゲームに賛成するドールがいるのもそりゃ当然ですし。どっちかといえばこっちがヘンなんですから」

平沢進「ワガママな三男坊ならぬ三女をもってお父様とやらも霊体の頭蓋を抱えていることだろう」

翠星石「……そうでしょうか。やっぱり翠星石のやってることって、お父様に逆らうことなんでしょうか…」
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/08(火) 20:29:51.97 ID:K2vZ0huD0
平沢進「まあ、統計的手法に尋ねれば子は親に逆らうものらしいので。別段気にすることでもないのでは」

翠星石「ん…まあ、そうですかね…」

平沢進「……」

翠星石「……ねえ、ヒラサワ。ヒラサワは、運命ってのがホントにあると思うです?」

平沢進「さあ。運命というものは映画か歴史か小説の中にはリアルとして存在するが、現実に観測されたことは無く。観測出来ぬものについては「そんなもの無い派」と「そういうの有る派」が必ず闘争を始め、そしてそれに終わりはない」

翠星石「えっと、つまり…そういうの気にしても仕方ないってことです?」
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/08(火) 20:30:31.60 ID:K2vZ0huD0
平沢進「世のすべての難問に対し「可」の成績を残すような回答をされてはお手上げ」

翠星石「む…ふーんだ!別に「可」で上等ですぅ!難問を無理に解こうとしてあーだこーだ路頭に迷うより、えーいって突っ走っちゃったほうが正しいこともあるんです、きっと!ウンメーだのテンメーだのでくよくよしてたら何事も始まらんです!」

平沢進「なるほど。威力的な理屈だが論理破綻を起こしているわけでもない。翠の人形にしては高度」

翠星石「……それって褒めてます?」

平沢進「現行の日本語では伝わらなかった?では…論理が中々退いておられる。これでお分かり?」

翠星石「そっちじゃもっとワカンネーですぅ!もっと素直に褒め言葉を使いやがれです!」
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/08(火) 20:31:27.96 ID:K2vZ0huD0
平沢進「褒め言葉まで強請始めるとは。強要して手に入れることで価値の下落するものを求める様は、退き具合が足りていないと言わざるを得ない」

翠星石「はあ?退くのが足りてない…あーもう!頭がしっちゃかめっちゃかにこんがらがっちまうですぅ!ほら、頭使ってお腹減ったのでご飯にするですよ!今日は野菜でガマンしてやるですからとっとと作るです!」

平沢進「何がガマンだ。私は苦慮の末に野菜を選んでいる訳ではない。どちらかといえば粗食の範疇を超えかけている糖分過多菓子類のほうが…」

翠星石「はいはい!そんなに欲しいなら昼もスコーンかベーグルを焼いてやるです!翠星石もちょうど食べたかったとこですしね!」ヒューン

平沢進「………人形に言葉が通じないのは元よりだが、一度通じてしまうと常に通じるべきと望んでしまうのが慣れというものの恐ろしさ」

平沢進「………」

平沢進「しかし、薔薇人形が戦うために作られたのならば、何故戦いを拒む系人形と戦いを好む系人形に分かれるのだろうか。…それが作り手の趣味だと言うならそれまでだが」スタスタ
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/08(火) 20:32:55.41 ID:K2vZ0huD0
短くて恐縮です
何か五月病的風土病に罹った気がします
御意見御質問御批判御自由にお願いします
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/09(水) 13:43:23.23 ID:1QxL28jz0
5月病だわー、
おつ
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/16(水) 08:07:08.81 ID:yuGGXJSVO
待ってるから気長に書きたまえよ
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/21(月) 14:52:33.24 ID:C8AfUWCp0
のんびりでもまっておりますので。
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/25(金) 23:38:20.45 ID:RuCWqfrR0
金糸雀「………」

ピチカート「………」

金糸雀「……あーもうっ!!カナのバカバカバカっ!」ポカポカ

ピチカート「?」チカチカ

金糸雀「あっ、驚かせてゴメンなのかしら。…はぁ」

ピチカート「…」

金糸雀「さっきはアリスゲームの話になったからつい熱くなっちゃったけど…あんなふうに辛辣に言うことなかったのに。カナだってアリスゲームを全面肯定してるわけじゃないんだから、もっと素直におしゃべり出来てれば…はぁ〜……」
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/25(金) 23:39:11.35 ID:RuCWqfrR0
金糸雀「翠星石、絶対怒ってるのかしら。たぶん歌手さんも…どうしよう…こんなことになったら、流石に庭に隠れて音楽を聴くなんて出来ないかも…」

金糸雀「でも、カナの思ってたことを言っただけなんだし、別に後悔する必要なんて…でも、もう少し言い方があったかもだし…ん〜」

ピチカート「……」チカチカ

金糸雀「!…まあ、そうね。過ぎたことを気にしても仕方ないのかしら。ほとぼりが冷めたころを見計らってこーっそり庭に近づけば、多分大丈夫…なハズ!またこんどって一応は言ってもらえたんだし!レッツポジティブシンキングなのかしら!」

金糸雀「じゃ、とにかく一旦帰るのかしら!髪飾りが見つかったことをみっちゃんに報告して、安心させてあげないとね!さ、ピチカート、急ぐのかしら!」

ピチカート「…」チカ
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/25(金) 23:40:31.10 ID:RuCWqfrR0
ーあろるの館ー

翠星石「…あ!そういえば、結局金糸雀がホントにアリスゲームと落し物の為だけに来たのか分からなかったです。問い詰めた時、なんか怪しいカンジだったのでやっばり他に理由がありそうな気がしたんですが…翠星石の名探偵の勘がビビッと反応したんですけどねぇ」

平沢進「勘を指標に物事を決定づけられるのは小説内の警察かその真似事に従ずる人物だけなので。証拠が無い以上状況証拠で類推せざるを得ないため、確信を持つべきではない」

翠星石「えー?でも、さっきヒラサワは金糸雀の侵入にはアリスゲーム以外の理由がありそうって言ってたじゃねーですか」

平沢進「あくまで可能性の話なので。ただしその可能性を捨て去れと強要するつもりもなく」

翠星石「ふーん、そうですか。…まあ、あんだけ真剣に語られた後だと、ホントにアリスゲームの為だけに来たってことも十分考えられる気がしますしね…取り敢えずアタマの中に、他の理由もあるかもって残しとくだけにしますか」
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/25(金) 23:41:42.21 ID:RuCWqfrR0
翠星石「さて…金糸雀はアリスゲームに賛成ってことで、水銀燈と合わせて賛成派が二人、雛苺と真紅の反対派が二人ですか…。そこに翠星石を入れたにしても、戦力的に二つに分かれましたね…」

平沢進「蒼の人形は如何に?」

翠星石「……………そりゃあもちろん!アリスゲームに反対に決まってるですよ!本人に聞くまでもねーです!」

平沢進「長すぎる沈黙が自身の言葉を疑わしく思う胸中を雄弁に物語る。蒼の人形は翠の人形と正反対であるし、そこにも確信が持てないのでは」

翠星石「う…………まあ…でも!翠星石が話せば絶対分かってくれるハズですぅ。だから蒼星石はアリスゲームに反対で決定!これで四対二ですぅ!いくら水銀燈がキョーアクで金糸雀がそれなりに厄介だとしても、これだけ居れば…」
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/25(金) 23:43:49.63 ID:RuCWqfrR0
平沢進「あ、そう。しかしあと一体の無名人形が公式に含まれていないようだが」

翠星石「あー、第七ドールは…その、一度も会ったことないのでどういう考えなのかさっぱり分からねーんですぅ。ま、未知数って感じですね。でも、ソイツがアリスゲームに賛成する側についたとしても、こっちがまだ数で優るです!…うんうん、今回の戦、もう勝ちが見えてきましたね!」

平沢進「捕らぬ狸の皮算方式を採用した敗北シーケンスの起動をここまで堂々と行うとは。最早呆れの範疇を越え憐れみさえ覚える」

翠星石「む…だって、こっちが有利なのは事実なんですからいーじゃねーですか!」

平沢進「歴史に学べば、兵力は一要素に過ぎぬ事を知るはずだが。ただ薄ぼんやりと数世紀を過ごしてきただけのとある人形には得がたい知恵かもしれないが」

翠星石「な、なぁっ!?薄ぼんやりなんかしてねーです!翠星石はどんな人間よりも濃厚な年月を送ってきてるです!」
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/25(金) 23:44:41.69 ID:RuCWqfrR0
平沢進「冗談はさておき。「冗談じゃねーです!」うるさい。ヒラサワは人形と話すことで精神の安定を図る系統の人種ではない。そのため朝から庭での金切音人形芝居を観たことで残業週80時間の従業員のごとき極度の疲労に強襲を受けている」

翠星石「へ?そんな無表情で言われても説得力がねーですぅ」

平沢進「元より分からず屋人形を説得する気は無い。というわけでヒラサワは翠と人形に染色されたあろるの館より一時逃亡し、多様性の摂取に向かう」

翠星石「多様性の摂取…?あ、つまり散歩ですか」

平沢進「保育器内で語られる喃語レベルの簡易な人形語に訳すと、そう」

翠星石「なっ!翠星石は赤ん坊じゃねーです!ばぶばぶ言うのは雛苺で十分です!」

平沢進「人形の喃語は最早鳴き声とそう変わりない。理解し難い囀りを耳にしつつもヒラサワは多様性の観点からこれを排除すべきではないとの心的啓示を受け、無言でその場を後にする」
471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/25(金) 23:45:27.10 ID:RuCWqfrR0
翠星石「む〜っ!また言葉が通じないフリして…!ふーんだ、もーいいです!そっちがそのつもりなら…」

翠星石「こほん。…あれぇーおかしいですぅー翠星石も今から突然ヒラサワ語がわかんなくなったですぅー。ヒラサワ、さっきから一体何を言ってるですかぁ?翠星石には読唇術の心得が無いので一切合切サッパリ分からねーです!良くわかんねーので掃除の時そのへんのキケンブツに触っちまうかもですぅ!」

平沢進「奇っ怪な囀りを目の当たりにし、ヒラサワは一抹の危惧に駆られる。喃語人形による有機ポルターガイスト現象が起きれば、ヒラサワは不本意ながら有機お祓いを清浄屋に通告しなくてはならない。そんなことになれば、まずそこに放られたどこぞの故知らぬ骨董鞄など、真っ先に質屋に投げ込まれることになろう」

翠星石「ちょ、ちょっと!!…あー!翠星石の突発性ナンチョーがとつぜん治ったですぅ!ヒラサワ、散歩行ってらっしゃいですぅ!掃除と水遣りはやっとくですし、ヒラサワの大事なものには指一本触れねーので安心して行って来やがれです!」

平沢進「あ、そう。では」

翠星石「いってらしゃいですぅ!」
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/25(金) 23:46:19.52 ID:RuCWqfrR0
翠星石「……はあ。何だかいっつもヒラサワには言い負かされてる気がするです。この手八丁口八丁の才色兼備の翠星石が、こうもカンタンにあしらわれるなんて…」

翠星石「まあ、翠星石が言い負かす相手はチビ苺とか金糸雀とかグレードの低いヤツばっかですからね…。練習相手が弱くちゃ、いくら勝っても強いヤツには勝てねーです。こんど真紅とか蒼星石とかを相手にやってみるですかね…」

翠星石「んじゃ、気を取り直してっと。掃除と水やりの開始ですぅ!ほら、そこのストーン、今日はヤシの木の脇に飾ってやるですよ。南国気分をしっぽり味わうがいいです!」

ストーン「…………」

翠星石「よしよし、そこで大人しくしとくですよ。さて、えーと、箒とちりとりはどこにしまったでしたっけ…」

チカチカ

翠星石「…ん?」
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/25(金) 23:47:04.24 ID:RuCWqfrR0
翠星石「ありゃ、パソコンがつけっぱなしですぅ。まったく、この節電が叫ばれる世の中で罪なことをするもんですぅ!」

翠星石「この翠星石が代わりに切っといてやるですよ。えっと…えっと?電源ボタンはどれでしょうか…これ?」ポチ

翠星石「うわぁあっ!?画面が真っ青になったですぅ!どうしたですか、気分が悪くなったですか?ど、どうしましょう、パソコンを病気にしちまったらヒラサワは真っ赤になって怒るに決まってるですぅ!うーんと…」カタカタ

翠星石「…何も反応しないです……」

翠星石「え、ええいままよですぅ!ほらほら、直るです、直るですぅ!」カタカタカタカタ

♪…♪…

翠星石「んあ?な、何か音楽が流れ始めたです!?まさかこれが辞世の句って奴ですか!?ぱ、ぱそこん!まだ逝くには早いですぅ、三途の川から戻ってきてですぅ!」カタカタカタ
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/25(金) 23:47:48.56 ID:RuCWqfrR0
ガタッ!

翠星石「どわぁっ!?……!!!…お、終わったです…ぱそこんの中の大切な何かが折れた音がしたです……」

翠星石「ど、どうすればいいですか…今回は部屋に水を撒いちゃったのとはワケが違うですよ…流石にヒラサワも許してくれないかも……」ドヨーン…

「……こほん」

翠星石「修正テープとか貼れば直らないですかね…バンドエイドとか消毒液もあるんですが…無理ですよね…」

「…こほん!」

翠星石「うわっ!?な、何ですか?ま、まさかヒラサワがさっき言ってたポルターガイスト!?す、翠星石を食べても美味しくないですぅ!た、食べるならそこのストーンにするです!鉄分たっぷりな上にヘルシーですからっ!」ガバッ

ストーン「………」

「…僕はポルターガイストじゃないし、そのパソコンも壊れてないと思うよ」

翠星石「え?ホントですか!?よかった…って………あれ?その声…」バッ

蒼星石「……久しぶりだね、翠星石」

♪……♪…
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/25(金) 23:49:40.36 ID:RuCWqfrR0
https://youtu.be/d9Aet_MGUaI

♪Welcome P-MODEL(平沢進) 1995

(サバイ ディー ルー!!)
Welcome to the sphere 開けましょうか
根源の園のドアをば
Welcome to the sphere 腰掛けて
電源のそばのシートへ
遥か僻地のグルを連れて
普通の人が寝てる隙に

Welcome to the sphere 見せましょうか
現象の花の秘密を
Welcome to the sphere 落ちついて
懸賞の札をなくさず
明日は電子の船をこいで
普通の人が寝てる隙に

Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉

Welcome to the sphere 開けましょうか
根源の園のドアをば
Welcome to the sphere 腰掛けて
電源のそばのシートへ
遥か僻地のグルを連れて
普通の人が寝てる隙に

Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/25(金) 23:51:55.70 ID:RuCWqfrR0
平沢進「…………」スタスタ

平沢進「………」

平沢進「あ。あんなところに正体不明の洋風屋敷が。薔薇園が当然の顔で付属しているとはまた豪勢な」

平沢進「…薔薇とは近頃常ならぬ因縁がある。見えない糸を見えると信ずるほどにロマンチストではないが、薔薇をただ眺める程度ならしてみてもいいかもしれない」

平沢進「…………」スタスタ

平沢進「ははあ。近場で眺めるとこれまた壮観な。余程ロマンチストな金の縁者が住居としているのだろうか。これほどの物量、維持するにも手間と手間代がかかるはず」

平沢進「…………」

「………」

「…それほどそこの薔薇園が気になりますかな?」
477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/25(金) 23:53:21.47 ID:RuCWqfrR0
平沢進「はい?はあ、まあ」

お爺さん「ほほう!それは結構なことで。最近は花というものに興味関心を持つ人があまりおりませんでな。まったくけしからんことです」

平沢進「で、あなたはどちら様で」

お爺さん「おっと!これは失礼、儂は毎日この辺りを散歩道にしておる年寄りです。散歩の途中によくこの薔薇園を眺めるのですが、今日は先客のあなたが居ましたので、興味深く思って話しかけた次第です。ご迷惑でしたかな?」

平沢進「いや、別に」

お爺さん「それは良かった。では少し話しませんか。…花がお好きなのですかな?」

平沢進「好悪の感情を持っているかは生育環境により異なるので応えられませんが、多少の興味は。花は咲く場所を選ぼうとも選ばずとも、損なわれぬものを持つのが特色なので。そこが仕事に少々の関連性がある為に」
478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/25(金) 23:54:26.59 ID:RuCWqfrR0
お爺さん「ほうほう。…お仕事とは、芸術の類ですかな。たしかに花には、このように場所を誂えずとも変わらぬ美しさや健気さがあります。しかし、薔薇は他の花々とは一味違いますぞ」

平沢進「へえ。なんでしょう」

お爺さん「それはですね、「トゲ」があるということです」

平沢進「…………」

お爺さん「おやおや、そう『何を分かりきったことを』という表情をされずとも」

平沢進「いや。これは『何か興味深い事物が聞けると有難いが』という顔です」

お爺さん「おや、それは失敬。ではその期待に添えるよう、意気込んで話しましょうかな。…こほん」
479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/25(金) 23:56:19.14 ID:RuCWqfrR0
お爺さん「トゲがなぜ付いているかはご存知ですかな。虫や動物から身を守る刃物…だと世間一般ではよく言われております」

平沢進「……」

お爺さん「しかし、あのトゲの大きさでは虫に相対するには大きすぎる。実際虫たちは、あのトゲを気にもせず枝の上を行き来しとります。つまり、虫を防御するために発達したものとは言い難い」

平沢進「ふむ」

お爺さん「トゲが身を守る為についている、というものは人の推測に過ぎないそうです。まあ実際、野薔薇が他の植物に比べ動物には食べられにくいのではないか、という予測は正しいだろうとされております。ただ、予測は予測です」

お爺さん「他にも推論はあります。例えばトゲが薔薇の茎の生育を促すだの、トゲで他のものに引っかかり、陽に近い場所へと動きやすくするためだの…」

お爺さん「しかし、これらは全て机上の答えに過ぎんのです。明白な理屈はまだ分かっていない。…どうです?なかなかミステリアスで面白いでしょう」
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/26(土) 00:05:05.22 ID:I8LyTokO0
平沢進「ははあ」

お爺さん「…おほん!そこまで興味深くは思っていただけなかったようですな。ただ、そのミステリアスさが、薔薇の花により味わいを齎しておるのですぞ。トゲのある女は美しい…という言葉のように、ただ痛いだけでなく、トゲに隠された謎があるからこそ、花の美しさが際立つのです」

平沢進「へえ。まあ、ただ害があるのみならば、人の手が加わった手前消滅していておかしくないもの。それが残るのには、植物の生育そのものとヒトの個人的な利益に纏わる理由があるかということになりますか」

お爺さん「…ほう。花に詳しいというのは本当のようですな。植物の生育に関わるためという推論は論じましたが…トゲを残すことで得るヒトの利益とはなんです?」

平沢進「はあ。薔薇園とは遥か以前より、金に縁のある者達により運営されてきたものでした。そして、彼らは交配という科学の行使で、あらゆる新種を生み出す力があった。トゲの消滅を目論むのに暇も金も十分にあったことでしょう」

お爺さん「ふむ」
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/26(土) 00:11:05.54 ID:I8LyTokO0
平沢進「それをスルーしたのはもちろん倫理や慈愛の為でなく。トゲは金持ちに都合が良いからでありまして。金持ちには、薔薇の花に寄る虫のごとく、切ってきれぬ仲の仕事人が居りました。現代での名を盗っ人と」

お爺さん「…ははっははは!なるほど、泥棒から家を守るのに役立つということですか!トゲとは薔薇だけでなく、財産までも守るものなのですな。そう思うとまた、薔薇を見る目が変わるというものです。ただ…」

お爺さん「人に都合のいい部分は残され、違う色を観るために交配は重ねられるとは…薔薇には気持ちなど無いでしょうが、あんまりな仕打ちですな」

お爺さん「遥か昔より人に寄り添うものとは、ただ寄り添っているままでは居られんのですな。人に都合のいいように…。動物も植物も、その影響からは逃れられないのでしょうか」

平沢進「まあ。それが人の世の常なので」
482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/26(土) 00:12:41.39 ID:I8LyTokO0
更新遅れてホントすみません…
何か薔薇についてはそこまで自信が無いです…
483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/26(土) 10:39:17.85 ID:GJRz9FwUO
スレタイ二度見したわ
平沢とドールって分からなくもない組み合わせだけどもマジか
484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/26(土) 11:17:16.73 ID:DFzAoDjro
乙乙
485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/30(水) 04:39:13.36 ID:gWDROoQB0
いまみた、おつ
言い負かされる翠星石かわいい
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/03(日) 19:12:12.78 ID:yEb0tPq50
♪…♪…

蒼星石「ここを押せば止まると思うよ。あと、青い背景はこのウィンドウが開いてしまってるだけだよ」カタカタ

ピ…

翠星石「お…おぉー!流石は蒼星石ですぅ!ぱそこんをあれよという間にカタカタっターンッ!と操作しちまうなんて!ピコピコした音楽も止まって何よりですぅ。英語があんだけあると翠星石は頭痛が痛くなっちまうですよ」

蒼星石「あれもヒラサワさんの曲かな。根源の園っていうのは…ネットワークのこと?でも、現象の花の秘密っていうのはなんだろう?」

翠星石「あ、こら、蒼星石!ヒラサワの歌の歌詞なんて真面目に考えたら頭がショートしちまうですよ!せっかく遊びに来たのに、すぐプシューってなっちまったら翠星石とお話が出来ねーじゃねーですか、まったくもう!」

蒼星石「…うん。そうだね」
288.07 KB Speed:0.2   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)