【艦これ】 続 外地鎮守府管理番号88

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:27:37.43 ID:PHQWvqIW0


提督「しかも、俺を上に上げた推薦人。まぁ、これを見てくれ。」

不知火「三元帥のうちの深海融和派と中立派のお二人ですね。」

提督「元帥方が三人でそれぞれ意見対立をして一方に傾かないようにして均衡を保ってる。」

提督「そんななかで荒くればっかり集めた一見、強固派に見えるここの指揮官をだ。」

不知火「まったく別の派閥の長が推薦して昇格人事ですか。」

提督「何を企んでいるのか不気味だ。」

提督「流石に辞退はできんよなぁ。将官も大分減ってきているとも聞くし。」

不知火「人材の枯渇ですか。」

提督「そんな所だ。」

不知火「人は育てるのに時間が掛かりますから。」

提督「育つ前に使い潰しているのが今の状況だからな。」

提督「艦娘を提督にするって話も進んでいるらしいし先が見えないのは良くないな。」

不知火「………。」

提督「なんとか俺達の代で終らせたいもんだ。」

不知火「はい。」

提督「年をとると面倒臭がりが増すのと、なにかと涙もろくなるから良くない。」

提督「年はとりたくないなぁ。」

不知火「不知火は今の司令が好きです。」

提督「ありがとうな。」


261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:28:19.99 ID:PHQWvqIW0


88鎮守府近海

一人の艦娘が単艦で海上を駆け抜けていた。

彼女が身につける制服はボロボロ。

そして、彼女が彼女足りうる理由の連装砲も1体は小脇に抱えられ。

他の2体も彼女の後ろを付いていくのがやっとの状態。

しかし、彼女は足を止める事無く、何かに取り付かれたように航行を続けていた。

262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:28:58.99 ID:PHQWvqIW0



「うちからの救援は出せない。」

「そんな!一番近いのがここなのに!」

「みんなが死んじゃう!」

「うちも助けを出せる程余裕がなくてね。」

「余所をあたってくれ。」


263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:29:35.59 ID:PHQWvqIW0


「うちからは助けにいけないなぁ。」

「なにぶんここは要衝なのでね。」

「敵からの攻勢が激しいから救援を出すほどの余裕がないんだよ。」

「本土まで行けば救援を出して貰えるかも知れない。」

「そんな!ここから本土までなんて!」

「燃料と弾薬くらいの補給は分けてあげよう。」

「私のところもなにぶん資材の余裕は少なくてね。」


264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:31:51.81 ID:PHQWvqIW0

「本土まで後、どれくらいかなぁ。」

「周りの鎮守府全てに救援を断られるだなんて……。」

「後、何日かかるかなぁ………。」

「でも、急がないと皆が待ってるし。」

ボン!

「あっ。」

「もう、駄目なのかな。」

「ここまで来たのに……。皆、ごめんなさい。」グス

川内「諦めるのはまだ早いよ。」

川内「と言うかどうしたのよ。」



機関が火を噴きついに力尽き前のめりに

沈んでいこうとしていた少女を抱き起こしたのは川内だった。



雪風「随分とボロボロですが何があったのですか?」

時雨「単艦でここら辺を航行している事から

   何かあったんだろうとは思うのだけど。」

長門「グラーフが島風を偵察機で発見したと連絡して来たから急行したが。」

長門「随分と酷い有様だ。」

島風「あっ。」



ぐるりと周囲を見渡せば同じ艦娘仲間達の顔。



島風「お願い!皆を助けて!」

川内「ん?」



そう一言、言うと島風は力尽き気絶した。
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:33:22.97 ID:PHQWvqIW0


88鎮守府埠頭



提督「何拾ってきた。」

雪風「付近を単艦で航行中でギリ中破でした。」



島風の状況を一瞥。

そして、付いてきていた不知火に、物珍しがって見に来た明石の二人に指示。



提督「不知火、所属全艦娘に出撃状態で待機命令を出してくれ。」

提督「その後、横須賀に問い合わせてくれ。」

不知火「何をですか?」

提督「救援依頼を出している鎮守府があるかどうか。」

提督「それと、俺の少将権限の再確認だ。」

提督「本来の意味での提督、1個戦闘団の指揮官としての提督なのかだ。」

提督「明石、所属を洗ってくれ。」

提督「それから治すのに時間はどれくらいかかる?」

明石「治せるかじゃなくて治すのに掛かる時間を聞いてきますか。」

提督「当たり前だろ。」

明石「なるだけ早くやりましょう。所属は直ぐに分かると思います。」ニカ

提督「頼む。」

時雨「提督、何か大事なのかな?」

提督「単艦でそれも、速さといえば艦娘で右に出る者のいない島風が

   こんな状態で彷徨ってるとくれば相場は決まってる。」

提督「所属鎮守府が襲撃にあい包囲網を強行突破。

   更に周辺鎮守府からの応援を望めなかったから本土へ向けて全力航行。」

提督「ここまでは頭がめでたい奴でも想像はつく。」


266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:35:02.13 ID:PHQWvqIW0


長門「で、不知火に自身の権限の確認をさせた理由は?」

提督「俺が最近昇進したんでな。将官といえば本来の意味での提督だ。」

提督「司令長官とか呼ばれて、そうだな旧海軍でいえば艦隊指揮を執る立場だ。」

提督「米軍とからな第○艦隊司令官とかの立場だな。」

提督「なんでな、場合によっちゃ現地の部隊再編も可能。後は分かるな?」

長門「成程な。与えられた権限は良く考えて有効に。

   そして上の言質をとった上でか。」

長門「悪党だな。」

提督「前にも言った事があると思うが俺ほど善人はいやしないさ。」

グラ「どうだろうか?」

摩耶「詐欺師は自分の事を詐欺師とは自己紹介しないもんな。」

川内「提督は詐欺師というより博打打ちの方が近いかな。」

川内「ポーカーとかで負け札でも平気でレイズして相手に心理的揺さぶり掛けた挙句。」

時雨「口八丁で相手を騙すのは得意そうだよね。」

雪風「相手にドロップさせる最低の博打打ちです。」

提督「やれやれ、散々な評価だな。」

長門「なに、それだけ皆提督が凄いと褒めているのさ。」

提督「博打ってのは運じゃねぇ。

   モナコのカジノに入店禁止になった、かの名将も言っている。」

提督「高等数学の確立から言って必ず勝てる時が来るから

   それまでひたすら待ち続ける事がカジノで勝つには重要ってな。」

提督「俺が運に頼るのは最後の最後さ。最悪の結果を踏まないように祈る時だけだ。」

長門「そうか。」

提督「そうだ。」

267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 00:43:53.75 ID:PHQWvqIW0
本日の更新はここまでです
今回のお話は今までの話と比べて一番重たくなる感じです(1基準で)
なので明るいSSを書いて気分転換を図りたくもなる訳です、はい
提督の呼称ですがゲーム内の提督は鎮守府責任者の扱いですが本来の意味で行くと将官以上(少将以上)
米軍基準でいくと准将、代将も含める形で艦隊指揮官、第七艦隊とかのあれを指揮する指揮官の事みたいですね
本来の鎮守府であれば提督でも間違いないのですが階級が少佐とか佐官がいるからあれれ?という状況
○○水雷戦隊とかの指揮官は司令官とか司令長官という呼称が正しいようです、ややこしいですね
その辺りは不備が有るかもしれない為詳しい方がいらっしゃいましたら指摘頂けると感謝です
ではでは、次回もお付き合い頂けると大変ありがたく思います
乙レス、感想レス、励みになっております、本当にありがとうございます
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 01:08:20.69 ID:+x2f0qNA0
おつおつ
色々とどす黒くて笑うべきか呆れるべきかw
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 07:29:25.39 ID:llkzI4mv0
オツカーレ

そもそもスタートの時点で新米少佐が鎮守府を任される末期状態だものw

秋津洲が可愛くて仕方ないかも!
出番増えて欲しいかも!
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 09:09:19.12 ID:DJ7zjYtHO
おつ!
毎度読み応えあって良いね
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 18:44:32.39 ID:9gvFvlMs0
やったぁ、連装砲ちゃんキター!
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:18:41.55 ID:AIWieGRW0
1です、1週間に1回の更新を目指すもあえなく失敗
また、中編を1度の更新で終わらせようと企むも2回に分けるような形に…
計画性ない作者だなという謗りが聞こえてきそう
感想レス、いつもありがとうございます、読み応えがあるとのありがたいお言葉
今後も精進してまいりますので引き続きお読みいただけると感謝
では、本日分の更新をさせていただきます、お時間宜しければお付き合い宜しくお願いいたします
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:19:46.26 ID:AIWieGRW0


第十一話 天国への扉 中編

274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:23:44.75 ID:AIWieGRW0

明石の工廠内

提督は簡素な椅子に座り紙巻に火を付けずに咥えていた。



秋津洲「吸わないの?」

提督「ん、なんとなくな。」

提督「火気厳禁じゃなかったか?」

秋津洲「アークにアセチレンやるから今更かも?」

提督「まぁ、屋内の灰皿が無いところでは吸うべきではないだろ。大人のマナーだ。」

提督「連装砲は直ったか?」

秋津洲「うん!直ったよ!」



工作艦としての経験もある秋津洲は手先が器用な為、

明石の艤装修理を手伝う事も多く、明石が島風の様態を見ている間に連装砲の修理を行っていた。



秋津洲「長10cm砲ちゃんの部品と共通が多いから割と助かったかも。」

提督「首から下は部品を共有できる所は共有しないと製造コストが跳ね上がるからな。」

提督「島風型はただでさえ姉妹艦がいない分、部品供給がきつい艦娘だからな。」

秋津洲「そうだね。生産数は確かに少ないかも。」

秋津洲「ほとんどワンオフに近い高価な艤装かも。」

秋津洲「テストベッドの天津風ちゃんとも違う部品が多いし。」

秋津洲「天津風ちゃんは陽炎型だから意外と使いまわせる部品が多いんだよ!」

提督「ほう、結構奇抜な艤装と思っていたがそうでもないんだな。」

秋津洲「実は雪風ちゃんや時津風ちゃんと部品の交換が可能かも。」

提督「艤装は色々知らない事が多いから勉強になるな。」
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:27:26.89 ID:AIWieGRW0


秋津洲「連装砲ちゃんが自立型艤装の走りなのは提督も知っていると思うけど

    自立型は使用者負担が重いから適正のある子は意外と少ないかも。」

提督「? 自立型なら使用者が操作しなくていいから負担は少ないんじゃないのか?」

秋津洲「AI自体が処理してくれるから索敵とか迎撃とかは使用者が指示すれば良い訳なんだけど。」

秋津洲「連装砲ちゃんへの命令を出すのは使用者だから

    常にデーターのやり取りを使用者とする事になるのね。」

提督「あー……、つまり、つねに3人から、

   ねぇねぇ、どうする、どうする?って話しかけられるみたいな物か。」

提督「恐ろしくうざいな。」

秋津洲「長10cm砲はその辺を押さえたんだけど……。」

提督「成程、長10cm砲が単独で水上航行出来ないのは使用者負担軽減の為に機能をオミットしたからか。」

明石「ですね。機能削除しただけで使用者への負担が60%減ですからね。」

提督「おっ、明石、治療は終ったのか。」

明石「えぇ、後は王子のキスを待つだけです。」

提督「洒落た事を。」

明石「島風型の量産性が無いのは艤装の軽量化の為に演算処理を使用者の脳負担に任せている所為ですよ。

   内緒のお話ですけどね。」

明石「連装砲の一番大きいサイズを3つ運用させたら脳負担が大きすぎて被験者が廃人に。」

提督「そんなやばい代物だったのか。」ウヘァ

明石「そんなギリギリのやばい代物だから島風型以外の自立型航行機能付きの艤装は出て無いんですよ。」

明石「負担が増すと脳が沸騰しますからね。」

提督「なかなか酷ぇ代物なんだな。」

明石「艦娘運用初期に出てきて色々模索されていた時期だからこそ黙認された倫理観の欠如って奴です。」

明石「秋月型なんかは自立型ではありますが自力航行はしませんし

   普段使用は腰の艤装と接続して使用者負担の処理をかなり減らしていますから。」

提督「島風の適正持ちが個体能力値が高いのはそういった理由があったからなんだな。」

明石「艤装も今は大分見直しが入っていますし初期の娘達の艤装も

   改二や丁改、乙改等で見直し、機能、性能の向上は進んでいますしね。」

明石「今の技術ならもう少し負担を減らして性能向上はやれますよ。」

提督「時間が経てば積み上げた屍から経験値を重ねられるという事か。」

明石「そうなりますかね。」



提督の言葉にどちらの屍かという事を問わず。

しらけたとも、やるせないともとれる表情で言葉を返す明石。


276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:31:12.31 ID:AIWieGRW0


提督「島風の所属は分かったか?」

明石「修理に合わせて色々機関の入れ替えもやりましたからね。」

明石「通常整備ではやらない、

   封印入っている箇所も分解してやりましたので艤装の製造番号から辿れましたよ。」

明石「そしてですね、提督。驚く事無かれ、

   彼女、あのネームドの『 最速 』の島風です。」

提督「あの…、あの、ブルーリボンのか……。」



まさしく絶句。



提督「俺が提督候補生として海軍大学に通っていた頃の憧れみたいな艦娘がねぇ。」

明石「あら、珍しい話ですね。」

提督「大学生の皆で観覧した観艦式の余興でな、ネームド達による模擬戦で一際目を引く強さと速さだった。」

提督「敵の魚雷をその速度で交し、艦載機による急降下爆撃をその身のこなしの軽さで交し。」

提督「俺達提督候補生は皆、一様に駆逐艦島風すげぇって、それこそ少年の様に目をキラキラさせていたもんだ。」

明石「どこの小学生ですか。」

提督「航空主兵論ばっかりの提督の卵には劣勢の中、

   敵の攻撃をものともせずに一矢報いようとする島風が御伽噺の主人公の用に見えただけさ。」

明石「大艦巨砲主義とかいなかったんですか?」

提督「そんな頭のめでたい奴はそもそも入学できねぇよ。」

提督「だいたいそれが前大戦の敗因の一因でもあるだろうが。」

明石「ですよねー。」

提督「日本人は判官贔屓、勧善懲悪。とにかく弱い奴が強い敵を倒すって言うのは大好物だろ。」

提督「提督候補生皆がいつかは自分達もあんな凄い部下を持ちたいものだって夢を語ったものさ。」ホウ



提督の昔話、それも提督になる前の、いや、提督になる志を抱いた者達を虜にした憧れ。

そんな懐かしみを、遠くを見る目で提督はしみじみと語った。


277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:33:17.99 ID:AIWieGRW0


時雨「ブルーリボンって何だい?」

提督「何だ、いたのか。」



時雨がいた事に少し照れを感じたのかぶっきらぼうに返す。



時雨「島風の様子を見にね。それで、ブルーリボンって何だい?」

提督「昔の話だ。20世紀初頭にな大西洋航路最速の客船に贈られたブルーリボン賞ってのになぞらえてな。

   海軍の中で速さの記録持ちをそう呼んでいた時期があったのさ。」

提督「トラックやパラオといった南方と本土を物資を積んで行き来する。

   その掛かった日数の少ない艦娘を毎年選んで表彰していたんだ。」

提督「その速さ類まれなる優秀艦、体のいい飛脚便みたいな扱いだったがな。」

提督「艦娘が積める物資なんざ、たかがしれているしな。」

時雨「それは、その…。」

提督「察しの通りだ。激戦地で独楽鼠の様に休み無く働かせたんだよ。」

提督「島風って艦娘になる奴はどいつもこいつも気のいい奴らでなぁ。」

提督「自分が利用されているってのが分かっていても動くけなげな奴よ。」

提督「俺が提督になって直ぐに持った鎮守府でパシリ扱いしていた戦艦連中をどつきまわした事もあったなぁ。」

時雨「提督、意外と苛烈な一面もあったんだね。」

提督「最初に持った鎮守府は他人の異動により空いた所に就いた形だったからな。」

提督「戦力は整っていたが艦種によるヒエラルキーがあったんだ。」

提督「ついたその日に目の前で駆逐艦に銀蝿を強用する連中をみたりと最悪だったな。」

提督「んで、意識改革して艦娘の戦艦と空母連中を半分くらい他所と入れ替えたりとかな。」

提督「とにかく派閥解体工作よ。そして、駆逐艦の地位向上の為にまぁ、色々だ。」ニヤリ

時雨「あっ、悪党の顔だ。」

提督「初期艦にして秘書艦の叢雲が新任新米の俺には過ぎた出来た奴でな。」

提督「その後も幾つか鎮守府を渡り歩く事になるんだが随分助けてもらったもんさ。」



昔を懐かしむ滅多に見せない提督の顔に意外と人らしい所もあったんだなと思う時雨。

はたと気付く事もあったがそれは今、聞くべき事ではないのだろう。

そして、タイミングよく不知火が提督の下へやって来る。


278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:33:52.13 ID:AIWieGRW0


時雨「ブルーリボンって何だい?」

提督「何だ、いたのか。」



時雨がいた事に少し照れを感じたのかぶっきらぼうに返す。



時雨「島風の様子を見にね。それで、ブルーリボンって何だい?」

提督「昔の話だ。20世紀初頭にな大西洋航路最速の客船に贈られたブルーリボン賞ってのになぞらえてな。

   海軍の中で速さの記録持ちをそう呼んでいた時期があったのさ。」

提督「トラックやパラオといった南方と本土を物資を積んで行き来する。

   その掛かった日数の少ない艦娘を毎年選んで表彰していたんだ。」

提督「その速さ類まれなる優秀艦、体のいい飛脚便みたいな扱いだったがな。」

提督「艦娘が積める物資なんざ、たかがしれているしな。」

時雨「それは、その…。」

提督「察しの通りだ。激戦地で独楽鼠の様に休み無く働かせたんだよ。」

提督「島風って艦娘になる奴はどいつもこいつも気のいい奴らでなぁ。」

提督「自分が利用されているってのが分かっていても動くけなげな奴よ。」

提督「俺が提督になって直ぐに持った鎮守府でパシリ扱いしていた戦艦連中をどつきまわした事もあったなぁ。」

時雨「提督、意外と苛烈な一面もあったんだね。」

提督「最初に持った鎮守府は他人の異動により空いた所に就いた形だったからな。」

提督「戦力は整っていたが艦種によるヒエラルキーがあったんだ。」

提督「ついたその日に目の前で駆逐艦に銀蝿を強用する連中をみたりと最悪だったな。」

提督「んで、意識改革して艦娘の戦艦と空母連中を半分くらい他所と入れ替えたりとかな。」

提督「とにかく派閥解体工作よ。そして、駆逐艦の地位向上の為にまぁ、色々だ。」ニヤリ

時雨「あっ、悪党の顔だ。」

提督「初期艦にして秘書艦の叢雲が新任新米の俺には過ぎた出来た奴でな。」

提督「その後も幾つか鎮守府を渡り歩く事になるんだが随分助けてもらったもんさ。」



昔を懐かしむ滅多に見せない提督の顔に意外と人らしい所もあったんだなと思う時雨。

はたと気付く事もあったがそれは今、聞くべき事ではないのだろう。

そして、タイミングよく不知火が提督の下へやって来る。


279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 00:35:31.41 ID:AIWieGRW0
あっ、ダッブってしまった……
>>278は無しでお願いいたします、申訳けありません
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:37:24.92 ID:AIWieGRW0


不知火「司令。仰せつかった件。調べて参りました。」



不知火は一気呵成に報告を始める。

それは、先程までの会話を聞いていてその先に続いたかもしれない言葉を遮るためかのように。



不知火「艦隊司令部では意味がないと思い軍令部へ直接連絡を取りました。」

不知火「権限の確認の為、人事局責任者へ話を通し人事参謀長へ確認。」

不知火「人事における将官の権限ですが現地部隊の再編の人事権も

    緊急時に於いて認めると言質を引き出しました。」

提督「ほう。あまり時間が経っていない割りによくそこまで連絡を取れたな。」

提督「人事参謀長の言質について録音は?」

不知火「抜かりなく。」

提督「救援依頼を出している鎮守府については?」

不知火「現状としては無い事を確認しています。」

提督「もし、それを受けていながら報告をせずに握りつぶしている鎮守府があったとしたら?」

不知火「海軍省法務局に問い合わせ、万一その様な事態があったと証明されるのであれば

    利敵行為として軍法会議への出頭を命じる可能性も有り得ると確認済みです。」

不知火「当然ですがこれも担当者とのやり取りは録音済みです。」

提督「俺が次に何を考えているか分かるな?」

不知火「先日、陥落させ現在米軍が管理している基地に連絡をとり

    観戦武官の参加と引き換えに揚陸指揮艦のレンタル交渉を行っています。」

不知火「あちらからは二つ返事で了承を頂いています。補給艦も手配済みです。」

不知火「また潜水艦の娘達にも作戦の発令に向け待機させています。」

提督「パーフェクトだ、不知火。」ニチャァ

不知火「感謝の極み。」



正しく不敵。

そう表現するのがぴったりな笑顔を見せ提督は明石の方へ向き直る。


281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:38:28.52 ID:AIWieGRW0


提督「明石、何機用意出来る?」

明石「何機御所望で?」

提督「予算の範囲内でだ。」ニタリ

明石「標準でいいですか?」

提督「あぁ、今回は数重視だ。」

提督「不知火。今年の予算割り当ての残額だが。」

不知火「こちらに。」



ここに回される任務だけでは緊急時、それこそ突発的な事態に対応出来ない事もある。

そんな時の為に毎年幾らかの予算が組まれていて提督が不知火に訊ねたのはその残り。

言うまでも無いが明石の協力の下、毎年の予算の残りは形を変えプールされていたりする。

戦争とはとかく金が掛かるものなのだ。



提督「全員に払う金はあるか。」フン



不知火の提示した書類に記載された金額を確認。



提督「でだ、明石、島風の所属はどこだ?」

明石「こちらですね。」



明石が女袴の笹ひだ部につけたポケットから海図を取り出し位置を示す。

ふーっと提督が大きな溜息を一つ。


282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:40:18.26 ID:AIWieGRW0


提督「明石、お前の事だからここの提督の素性も調べていると思うんだが。」

提督「優秀か?」

明石「並ですかね。」

明石「ただ、周辺から比べれば階級こそ低いものの良。ですね。」



頭に手を当てやれやれと言いたげな提督。



提督「凸部じゃねぇか。まったく。せめてそこそこの階級の奴をあてがえよ上も。」

時雨「凸部?」

提督「あぁ、敵さんへ食い込む形での凸部だ。救援に行くにも相当面倒な事になる。」

提督「敵もそりゃ本腰いれて落としに来る訳だ。」

提督「明石。すまないが島風が目を覚ましたら執務室によこしてくれ。」

提督「ちょいと気軽に助けに行ける場所じゃない。」

提督「きっちり作戦を練らないとこっちがやられちまう。」

不知火「執務室へ戻り必要な物を用意しておきます。」

提督「頼む。」



そして、提督は足早に執務室へ戻ろうとして振り向く。



提督「秋津洲。お前が重要になる。島風が目を覚ましたら来てくれ。」

秋津洲「かも!?」


283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:41:44.78 ID:AIWieGRW0


執務室



提督「さぁてと、上の盆暗ぶりに嫌気が差してきたな。」

提督「さらに言えば周辺鎮守府の提督どもを皆、物理的に首を挿げ替えたいくらいだ。」



不知火が用意した海図にマジックで色々と書き込み現状確認を進めていく提督。



提督「ここの重要性を軍令部で理解出来る奴がいないってのは質の低下が激しいのか。」

提督「はたまた襲撃されている事を知らないから暢気に構えているのか。」

提督「どちらなのかねぇ。」

グラ「Admiral、入るぞ。」

提督「ん?どうした?」

グラ「あぁ、明石から頼まれたので島風を連れてきた。」



目を覚ました島風を連れて執務室に来たのはグラーフ。



提督「明石は?」

グラ「予想される物資の用意に忙しいんだそうだ。

   だから私が島風の付き添いで来たんだ。」

グラ「各所に追加注文をしなきゃと慌しく動いていたぞ。」

提督「商売人だな。」

グラ「それと秋津洲も一緒だ。」

秋津洲「提督、来たかも!」


284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:43:20.26 ID:AIWieGRW0


島風「あの!助けていただきありがとうございました!」

提督「礼にはおよばんよ。」



島風の謝辞に返事を返し、海図を再度見直しフムと考え、一同に向き直る。



提督「グラーフも居てくれた方がいいか。守りの要はグラーフになるだろうしな。」

提督「と、私がこの鎮守府の指揮官である提督だ。」

提督「普通の鎮守府には場所が知らされていない中、

   ここの近くを航行していたのは運が良かったと言える。」

提督「おおよその状況は理解している。詳細を島風の口から話してもらってもいいかな?」

提督「あぁ、そうだ。島風が自分の所の提督に義理立て等があるなら

   俺の呼称は適当に呼んでくれてかまわんよ。」

島風「あの、おじさんがここの提督さんなの?」



妥協の上での提督『 さん 』呼び。

おじさんかと苦笑しつつそうだと答える提督。


285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:45:09.05 ID:AIWieGRW0


島風「提督さん、あのね、私の居た所がね。」



そして、島風から、島風が包囲網を抜け出てきた段階での敵勢の確認。



提督「日数的に陥落していてもおかしくないな。」



情報を改めて整理して感想を一言。



島風「そんなぁ……。」

提督「おいおい。俺は救援に向わないとは一言も言ってないぞ?」

提督「最悪敵の手に渡っているかもしれないが落されてすぐなら奪還する。」

グラ「それ程の要衝なのか?」

提督「まぁ、見てくれ。」

グラ「………。」

グラ「これは、攻守の違いがあれど、バルジの戦いみたいな状態だな。」

提督「日本でなら有名所で長篠の戦だな。」

提督「面で構成される敵との防御線にこちら側が敵側に凸る形で食い込んでいる。」

提督「陸の場合でもそう変わりはないんだがこういう風に

   飛び出た部分は敵地へと侵攻していくのに重要な火点に成る場所だ。」

提督「逆に敵からしてみればわざわざ飛び出てくれているから叩きつぶしやすいという一面もある。」

提督「そして、敵にしてみれば放っておくと蟻の一穴になりかねない。」

提督「攻める側にしても守る側にしても確保しておきたい場所だな。」

秋津洲「それで私が呼ばれた理由はなにかも?」

提督「先日の瑞鶴とグラーフの模擬戦覚えているだろ?」

秋津洲「あぁ、明石さんが試していた新システムの奴かも?」

提督「あれの幾つかの問題点を考えられる範囲内での改善をして実戦に投入してみようと思ってな。」


286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:46:54.56 ID:AIWieGRW0


提督「それでいくと航空管制でバトルオブブリテンを経験している

   ドイツ娘のグラーフに守りを任せるのが適任だろ?」

グラ「負けた側だがいいのかな?」クックック

提督「なぁに、問題ないさ。紅茶ジャンキーどもが構築したシステムだ。」

提督「科学技術だけなら何処にも負けないドイツ様のお前がやるんだ。」

提督「他の誰よりもあてにしているさ。」

グラ「嬉しい事を言ってくれるなぁAdmiralよ。

   だが、電探等の性能は英国の方が上だ。」

提督「今回の戦争は前の戦争の勝ち組、負け組み皆仲間だ。負けようがない。」

グラ「イタリアも一緒だが?」クックック

提督「………、ポーランドボールネタはやめてくれ。」クックック

グラ「だが、かなりの距離の移動に拠点確保も難しいようだが

   艦載機の補充が追いつくだろうか。」

提督「それは心配しないでくれ。我に秘策有りだ。」

287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:48:57.55 ID:AIWieGRW0


提督「不知火。留守番組の選定は任せる。」

提督「これより3時間後にブリーフィングを行う。

   その後、米軍に挨拶して救援へ向うぞ。」

島風「あの!提督さん!救援を待っているみんなの所に知らせに行ってもいい!?」

提督「それは許可出来ない。」



島風からの問いに即答。



島風「どうしてぇ!?」

提督「お前さんが単独で航行していたことから鎮守府通信設備が

   破壊されている等で艦娘が直接乗り込んで知らせるしかないというのは分かっている。」

島風「だから私が!」



島風の必死の訴えを手で制し言葉を続ける提督。



提督「更に敵からしてみれば島風が包囲網から抜けた事で

   何がしかの救援が来る事は予想している筈だ。」

提督「つまり、島風が今から救援が来るよと知らせに帰るのは

   敵が手ぐすね引いて待っている所に自分から突っ込んでいく愚行だ。」

提督「俺たちは戦争をしている。だから犠牲を出さずに勝てるなんて甘っちょろい青二才な考えは持っていない。」

提督「だがな、出す必要性のない犠牲を出す気は毛頭無い。」

提督「救援が出ている事を知らせる為だけの犠牲を出すような真似をするのは無駄の極みだ。」

島風「………。」



切り捨てるような言い方だが提督のいう事は最も。

しかし、理屈では分かっても感情では理解できない事も時としてあるのだ。

今しばらく食い下がるかと思ったがあっさりと引いたのを見てとる提督。


288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:49:52.42 ID:AIWieGRW0


提督「不知火。暫く島風を監視しておいてくれ。」

提督「単独で抜け出して救援先に行くような素振りを見せたら力尽くでとめろ。」

不知火「了解しました。」



とぼとぼと執務室を出て行く島風の後姿を見送り不知火に指示。



提督(止められるだろうか…。)



艦娘としての最古参、そして最速の名を頂く駆逐艦。

手負いなれば止められるかもだが明石が修理して万全の状態ともなれば。



提督(止めようとしたという口実作りでもあるが…。)

提督(不知火には損な役回りをさせる。)



そして、提督が執務室にて秋津洲とグラーフとで綿密な打ち合わせを行って丁度3時間後。

いつぞやの敵北海道侵攻作戦を挫いた時の再現のように大会議室には艦娘達が勢ぞろいしていた。


289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:51:58.52 ID:AIWieGRW0


提督「今回の救援については敵を徹底的に叩く事が主目的だ。

   そこはいつもと変わりがない。」

提督「ただ、敵の指揮官については今までと毛色が違う事が予想される。」

川内「どーしてー?」

提督「今までどおりにお馬鹿さんな相手なら

   自陣地に凸った地点なんか放置していただろうからさ。」

提督「現に今回の救援対象の鎮守府は設立されて結構な年数経っている。」

提督「俺が敵の指揮官なら鎮守府施設なんか作られる前に潰しているよ。」

長門「今回の作戦にはゴーヤ達も参加するのか?」

提督「俺の学生時代に潜水艦娘を上手く指揮して演習で痛い目合わせてくれた同期が居てな。」

提督「そいつから面白い手品の種を聞いているんだ。」

提督「敵のほうが数は多い。当然ながら潜水艦連中もいるだろうよ。」

提督「ならこっちも使って遊んだところでばちは当たらんだろ?」

長門「米軍から海底データを貰うつもりか。」

提督「あぁ、目的地周辺はあちらの方が詳しいだろうからな。」



提督と部下達の軽い冗談のようでお互い手の内を知っている者同士の応酬。

それが終われば留守番の者達も含めて全員に作戦内容の連絡。



時雨「それで、提督。勝てるのかな?」

提督「勝てるのかな?じゃない。勝つだ。」

提督「勝算の無い作戦など立てんよ。」

摩耶「提督ぅ〜、えらい自信が有るみたいだけど大丈夫かよ〜。」

提督「当たり前だ。いいか?物語ってのは主人公が勝つように出来てんだよ。」

提督「人外の良く分からん生物対人間とくれば

   古今東西、人間様の勝ちって相場が決まってんだ。」

提督「それなら人間側の俺達の勝ちだろが。」

摩耶「ひでぇ根拠だな。」

雪風「ですが、何故か説得力があります。」

グラ「まぁ、我々はやるべき事をやる。それは今までとなんら変わらんさ。」



こうしてブリーフィグを済ませた一同は米軍基地へと移動を始めたのである。



290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 01:02:19.00 ID:AIWieGRW0
本日の更新は此処までです
残りは近日中に更新を予定しております、お待ちいただけると幸いです
そして中編の山場は後半、次回更新の方……、計画性無くてすみません
連投が途中あり御迷惑をお掛けしました、今後の予定としてはこの島風の話が終われば
スレを落そうかどうか思案している所です、燃え系のSSって増えないですね……、なんでだろう……
スレの始めの方で触れましたが砂の薔薇的な番外のような本編の様なのもプロット書きが終了して
少しずつ書き溜めをしている所なのでどこかのタイミングで上げれればなぁとは思っています
最近SSまとめ速報なる存在を知り、このSSも纏められコメントがついて居る事に驚きました
SSまとめ速報でコメントを下さっている読者の皆様、コメントありがとうございます
後、もし宜しければ本スレの此方も覗いてこちらにレスいただけるとありがたいです(←レス乞食)
長々と長文での挨拶失礼いたしました、感想レス、応援レス、いつもありがたく拝読しています
次回以降の更新も宜しければお付き合いいただけると感謝です
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 01:06:14.67 ID:MpivStNto
初期艦叢雲で沈没済み……いや、違うんだろうけど
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 01:06:55.22 ID:MpivStNto
っと乙、HKの方も期待してます
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 06:54:04.24 ID:Q/uTBaQqO
おつ
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 07:24:48.10 ID:WPmZlLt80

まじで面白いからいつも更新楽しみにしてる
できるだけ長く続けて欲しいなあ
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 11:45:01.05 ID:0GkYu2uh0
島風鳥居強右衛門説
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 14:45:58.69 ID:YjPL8qXA0
まだ時雨の謎と不知火登場編見てないんだが
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/13(水) 14:36:58.53 ID:xUswDFZdO
オツカーレ

実はまとめからきたんですよね
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/13(水) 19:11:59.53 ID:E2AFYQFiO
まとめから来ました。
今まで見てきた艦これのssの中で最高に面白い!
毎回更新楽しみにしてるので、最後まで書ききって欲しいです。

299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/13(水) 23:43:16.61 ID:S8287FqX0
おつ
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/14(木) 03:56:49.47 ID:Pj3sFZoho
まとめサイトとかいうクソみたいな悪習もSS作者からしてみればいい宣伝の場にもなるのよなぁ
不愉快な思いをするのが元々いる住人だけってのがせめてもの救いか
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/14(木) 10:33:23.43 ID:eD/fmY0JO
個人的にはお間抜け熊さんのガンちゃんのその後が見たくある
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:29:50.58 ID:IyUJskK70
黒潮改二!先日の春のミニイベでカタパルト3枚とったから設計図使って
五航戦二番艦を一気に改二にしたり軽空鈴熊を増やしたから設計図は1枚しかなかったんだ!
伊勢の改造はその内、便利なんだろうけどまぁ、急ぐものでもないかなぁと思っています
陽炎、不知火を先に改二にしてたのでハブる訳にもいきませんしね、可愛い、黒潮病、1は致命傷で済みました

本日の更新をさせていただきます、また、本日の分の更新で中編は終了です
お時間宜しければお付き合いいただけると幸いです
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:34:28.74 ID:IyUJskK70


提督達の一行が米軍基地へ向けての行軍を行う中、

1人の艦娘がこっそりとその列を離れようとしていた。

隊列から少しずつ少しずつ距離を離し、違和感無く外れていった。

そして、行軍の列から外れると彼女は海上を別方向へと航行していく。



島風「もうそろそろ全力航行に移ってもばれないよね。」

島風「えへへ。あれだけ沢山の人達が救援に来てくれるんだから。」

島風「皆、絶対助かるよね。」

島風「皆に知らせてあげないと。」ウキウキ



連装砲達もそれに同意するように頷く。



不知火「お気持ちは分かりますがそれは阻止させていただきます。」

島風「オゥッ!?」



島風の後ろから声を掛けるのは不知火。



不知火「死なない程度に壊すことは司令より許可をいただいています。」

不知火「貴方が救援に向かっている事を知らせる事により

こちらの打つ手が幾つか潰されるのは困ります。」

不知火「また、何より許すまじは司令が貴方の身を案じ知らせる事を許可しなかった

その心を貴方が理解していない事です。」



淡々と、しかしその怒りはまさしく怒髪天を衝く。



不知火「故に、多少の痛みは覚悟していただきます。」



言い終わると同時に動き始める。

艤装のパワーを全力で乗せた手刀による突き。

ひゅうと風を斬る音が手が突き出てきた後に聞こえたのは気のせいか。

304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:35:41.29 ID:IyUJskK70


島風「執務室で観察していて猛者揃いの鎮守府だとは感じていたけど。」

島風「避けなかったら確実に殺られていたかも。」タラリ



背筋に冷たいものが流れる。



不知火「挨拶代わりです。司令に憧れを抱かせた艦娘だけありますね。」ギリッ



周囲の空気が震える。

艦娘達の中でも一際頭の螺子が外れた連中が集まるのが陽炎型。

その一人一人が何がしかのエピソードを持ち、

雪風の様に幾つもの大きな海戦を駆け抜け終戦まで生き抜いたような猛者も居る。

その他の姉妹は華々しく、戦場の華として散っていった。

その2番艦不知火。艦名の由来は九州八代海の夜に現れるという蜃気楼。

科学が発達していなかった昔は妖怪の仕業とされていたとか。

その名の由来の如く、不知火は海上の波の上下動を利用し島風の空間認識をずらし始めた。



島風「あれ!?」



連装砲に不知火を撃たせ討ち取ったと思うが、その砲撃は逸れてしまう。



不知火「その様な砲撃は当たりませんよ。」



ぐいと島風の眼前に迫りその顔に拳をみまう不知火。


305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:37:09.81 ID:IyUJskK70


島風「へぶぅ!?」



まるで漫画表現の様に宙を舞う島風。

しかし、華麗に着水。



不知火「さぁ、駄々をこねていないで帰りますよ。」



ぐしと唇を切ったらしく垂れる血をふき取る島風。



島風「強いね。」



そして島風もまた纏う雰囲気が変わった。

ここからは、さながら頂上決戦の様相を呈した戦闘が行われていく。

蹴りを繰り出す不知火をいなしその懐に潜り込み拳を繰り出す島風。

更にそれを交し先に繰り出した蹴りの勢いを生かして回し蹴りを繰り出す。



島風「体裁きのレベルが高い。」



感心するように不知火に声を掛ける。



不知火「最古参の艦娘である貴方に褒めて頂けるとは恐悦至極。」



島風が回し蹴りも交し距離をとったのを見て取りインファイトスタイルで構えなおす不知火。



島風「ごめんなさい。私はここで時間をとられる訳には行かないの。」

島風「どうして主砲と魚雷を使わないのか理由は知らないけど。」

島風「武器を使わないで私を止める事なんて出来ないんだから!」

不知火(来る!)



最速の名に恥じない全力の突撃。

その動きを予測し体を逸らし島風の突撃をかわす!

だが…………



不知火「おうふぅ。」



島風の突撃をかわしたと思ったら足に感じる激痛とわき腹に感じる痛み。

島風の陰に隠れての連装砲からの砲撃。

一瞬ふら付いた不知火の体勢を見逃さずに不知火の背中の艤装に手を掛け一気に後ろへ引っ張る。


306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:38:36.03 ID:IyUJskK70


島風「えへへ。速き事。島風の如し!だよ!」

不知火「くっ。」



体勢の崩れたところに島風が足をかけ転倒させ排気煙突を海面に水没させる。

ボスボスボス



不知火「機関に海水が入りましたか…。」



機関の燃焼に違和感を感じ若干の出力低下を確認。



不知火「逃げられてしまいましたか。」ハァー…



不知火を始めとする背負い式の艤装は後ろ側に重心がよりやすい為、引っ張られると転倒しやすい。



不知火「背負い式の弱点を突かれましたね…。」



最速の二つ名は伊達ではなく、そして『 島風 』の名を頂く艦娘の系譜。

初代の駆逐艦島風が沈んだ後に2代目駆逐艦島風が島風の名前を付けられた過去の経緯を思い出し。

『 その速き事、島風の如し 』

この言葉がその魂を引き継いだ事を意味していた事を思い出す。



不知火「負けたとは思いませんが、司令にご迷惑をお掛けする事になりそうです。」ゲホッ



痛む脇腹を押さえ足を引き摺りながら島風を行かせてしまった事を報告すべく

不知火は提督達の居る方向へ移動を始めた。


307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:42:20.52 ID:IyUJskK70
米軍基地内

(会話は英語で行っていると脳内補完いただけると幸いです。)



提督「アメリカ級揚陸艦なんて豪華な物は出していただかなくて大丈夫ですよ。」

米海軍中将(以下中将)

「いや、是非使ってくれ。

というよりもだ。我が国の実験的部分でのデーターも取りたいのでね。」

提督「国力に余裕のある国は考える事のスケールが大きいですね。」

中将「景気対策は元より軍艦製造の技術継承を考えると

年で1隻は何がしか作らないといけないという呪いだ。」

中将「1隻受注させれば起工から就役まで数年分の仕事が出来る。」

提督「議会が煩くはないのですか?」

中将「議員へ積極的にロビー活動している投資家連中の耳元に、船が沈むぞと耳打ちすれば議会は黙る。」

提督「ははは。」



アメリカという国が本当に恐ろしい理由は食料から石油まで、川上から川下まで。

その気になれば全てを自国内だけで賄う事が可能という点にある。

何せ第二次世界大戦中、多くの国が食料困窮で配給制度などを用いて糊口を凌いでいたのに対し。

アメリカは嗜好品への切符制配給はあったものの他の国と比べれば不足と言うには些少な物。

タイムライフ社の「パールハーバーの衝撃」という写真集には

ガダルカナルでビール片手にステーキを焼く小隊の写真が掲載されていたり

食事にステーキが出なかった事に抗議行動を行う米兵の写真があったりと

記録宣伝用写真というのを割り引いてみても前線へ食料を過不足無く送ることが出来た能力は

同じガダルカナルで戦っていた日本側が飢えに苦しんでいたのを考えると

圧倒的であると言えるだろう。

また、コーヒーや砂糖といった嗜好品が軍用携行食糧に必ず付いていた事も

その国力の豊かさを象徴すると言える。

そして、陸続きでもある南北アメリカ大陸の上へ下へと手を伸ばせば

不足する資源も揃えられると正に無敵。

その有り余る生産力は他国へ輸出する形で余剰分を解消している為、

中将の船が沈むぞという脅しは各種価格を一気に乱高下させる可能性のある脅しなのだ。

提督が乾いた笑いで返すのも無理からぬ事である。

308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:43:08.91 ID:IyUJskK70


提督「富める国は更に富み、貧しきはより貧しく、ですかな。」

中将「あぁ、同盟国である日本が艦娘というのを発明してくれて実に助かっているよ。」

中将「艦娘を大量に用意して我が海軍が世界の海に平和を取り戻す。」

提督(典型的なパクスアメリカーナの軍人か。やれやれ。)

中将「君の救援策に同行する観戦武官だが、私の部下の大佐をつかせよう。」

中将「それから我が軍からサラトガとアイオワも出すから好きに使ってくれ。」

提督「宜しいのですか?」

中将「あぁ。私の予感が正しければ我が国が今後考えている艦娘運用を君が行うだろうという気がしてね。」

中将「君がそれに彼女達を組み込んでくれれば今後の運用が楽になるという事だよ。」

中将「まさか拒否はしないよな?」



にこりと笑う笑顔は否やを言わせぬ脅し。



提督「えぇ、喜んで。」


309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:44:34.63 ID:IyUJskK70


米軍基地埠頭

明石「こりゃぁまたどえらいの貸してくれましたね。」

貸してくれたアメリカ級揚陸艦に持ってきた色々を積み込み据付、

さらにゴニョゴニョしながら明石が感心する。



提督「さらに艦娘を2名も貸してくれる気前の良さだ。」

明石「ひゃぁー。ありがた過ぎて涙がちょちょぎれますねぇ。」

提督「皮肉が過ぎるなぁ。」マッタク

明石「あからさま過ぎて。」シレッ

提督「まぁな。だが、同盟相手が強くなってくれるなら俺達の負担も減るだろ。」

明石「ですかね。」

秋津洲「提督〜!この船、凄いかも!まるで移動式鎮守府かも!」

提督「なんというかまぁ、凄いよなアメリカさんは。」

もともと12番艦まで建造が決まっていた強襲揚陸艦が深海棲艦の出現により建造が停止されていたのだが、

艦娘の出現により深海棲艦を駆逐していく事に成功。

これに自信をつけたアメリカ海軍は揚陸指揮艦としての機能も持たせた

ワスプ級の次級として建造予定があったアメリカ級の設計を見直し揚陸艦としての広大な格納スペース。

指揮艦としての通信、電探設備、3番艦以降に復活したウェルドック。

これらをそれぞれ入渠ドック、出撃ドックと改造改装し、

開発、建造、解体といった機能を削除、

空いたスペースに艦娘用の資材に燃料、弾薬、食料を積み。

更に居住スペースを追加して簡易式移動海上鎮守府を作ったのだ。



提督「国力がアホほどないと構想は出来ても実現は出来んなこれは。」



ましてや気前良く貸し出すなどという真似は出来る訳が無い。



310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:45:54.31 ID:IyUJskK70


秋津洲「つくづくおかしな国と思うかも。」

提督「なー。」アキレ

長門「ましてや動かす人間まで貸してくれるのだからな。」

長門「太っ腹以外のなにものでもないだろ。」

提督「俺としてはブルーリッジ級くらいかと思っていたんだがな。」

長門「運用実績とデーターとりだろ。お互いにWinWinという奴だ。」

提督「ここの総司令中将殿の掌の上感が半端ないな。」

長門「踊るのは得意だろ?」

提督「俺が踊ると腹踊りになっちまわなぁ。」

明石「実際これだけのサイズの艦を動かそうとすると

護衛の艦娘がかなり必要になりますからね。」

秋津洲「大きさが大きさだけに的になりやすいかも!」

提督「最近就役したジョン・C・バトラーの船が居ただろ。」

明石「あぁ、対潜の尖った性能持ちのサムちゃん。」

提督「安価で大量供給可能な目処がたって護衛用駆逐艦娘の当がついたからって事なんだろうさ。」

明石「大量生産大量消費がこの御時勢に可能ってのは流石アメリカですねぇ。」

提督「なー。」



敵じゃなくて味方で良かったそんな感想を抱きつつ明石と艦を見上げていたところに不知火が帰ってきた。


311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:47:36.63 ID:IyUJskK70


不知火「司令、申訳ありません。」ケホッ

提督「力尽くで止めろとは言ったが沈めろとは言わなかったからな。」

提督「おおかた兵装の使用をせずに止めようとして返り討ちにあったんだろ?」

提督「明石。手当てをしてやってくれ。秋津洲。瑞鶴、川内、雪風、時雨を呼んできてくれ。」

不知火「司令。」



不知火の頭に手を当て言葉を続ける。



提督「島風の力量を見誤っていた俺の落ち度だ。不知火。良く帰ってきてくれた。」

提督「生きていてくれて良かった。命があれば次に生かせる。次の作戦に備えゆっくり治せ。」



そう優しく声を掛け。提督は強襲揚陸艦へと繋がるタラップを艦内へ向け歩みを進めていった。

ザザァ。

提督達の乗った船より先行して移動している瑞鶴一向。



川内「提督とゆく楽しい遊覧観光の旅が―――……。」

瑞鶴「強行偵察ね……。」



瑞鶴に伝えられた指示は強行偵察。

つまりは島風の救出は無理と提督が判断したという事。



時雨「実際島風が本気で航行した場合は僕らじゃ追いつけないよね。」

雪風「救出は無理なのでしょうか……。」

瑞鶴「島風も分かっていて向っているんだろうから覚悟の上だと思うわ。」

瑞鶴「提督が強行偵察をわざわざ出したのは最期を看取らせる為なんじゃないかな。」

瑞鶴「それとプレゼントも渡して来いって言われているし。」

川内「提督も私達に指示を出す時、相当に渋い顔していたからね。」

川内「本当は死なせたくはないんだと思うよ。」

瑞鶴「さてと、そろそろ偵察機を出す頃合かしら。」



背中の矢筒から彩雲の矢を取り出し提督に渡されたプレゼントを括り付け弓に番え放つ。

ぶんと一際強いエンジン音を轟かせ彩雲は消えていく。



瑞鶴「拡張スロにケーブル挿して。視界の共有してあげるから。」



彩雲の搭乗員妖精の視界を時雨達も見られるようにケーブルで瑞鶴の艤装と接続。



瑞鶴「島風の勇姿。きっちりと見届けてあげようじゃないの。」

雪風「………。」


312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:48:30.63 ID:IyUJskK70


救援予定鎮守府近海



提督や瑞鶴の予想通りに島風は捕まっていた。

艦娘同士が使う短距離用無線の通信範囲内に入る前の事である。

捕らえられた後、連装砲達は全て破壊、艤装の通信機能も壊されていた。

島風が突破した事を知っていた深海側は周囲に近づく者達へ厳重な警戒網を敷く。

そこに救援の知らせを持った島風が帰ってきたのだ。

敵が手ぐすね引いて待っている所に帰ってきてしまったのだ。

そして、今、その島風の周囲には姫、鬼級。深海棲艦の指揮官達がずらりと集まる。

戦艦水鬼、戦艦棲姫、重巡棲姫、空母水鬼、空母棲姫。

駆逐棲姫に駆逐古姫。

例えるならG7首脳会談といった様相。


313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:50:58.48 ID:IyUJskK70


戦艦水鬼(以下戦鬼)「あなた、最速の島風よねぇ?」



妖艶な雰囲気を漂わせ艦娘の血で紅を引いていると噂されるその唇から底冷えのする声が漏れる。



戦鬼「あなたの事は知っているわぁ…。敵でありながら目を引く強さだったもの。」

戦鬼「それが、使いぱっしりなんてねぇ。」

戦艦棲姫(以下戦姫)「水鬼ともなると何度か拳を交えた事があるのね。」

戦鬼「えぇ。ただ、多くの場合が戦闘能力の高いこの娘を単騎突撃させて攪乱させる。」

戦鬼「なーんて、策も何もあったもんじゃない命を捨てて来いって形が多かったわ。」

駆逐古姫(以下古姫)

  「島風自体は強いのだけどそれを妬ましく思う他の娘達が連携を嫌っていた事が多かったな。」

空母水鬼(以下空鬼)「俊敏な動きで艦載機の爆撃をよく避けられたものよ。」ニッコリ

戦鬼「島風頼みの一点突破型の強攻策を何処の戦場でも採っていたわね。」

戦鬼「それが正解になってしまうほどにあなたは本当に強かった。」



捕らえられ口に猿轡を噛ませられている島風の頬をついと撫でる水鬼。



戦姫「となればそうそうに始末するのかしら?」

重巡「そうだな。見せしめに惨たらしく殺すのがいいんじゃないのか?」

戦水「まぁ、待って頂戴。私は思うのよ。」

空母棲姫(以下空姫)「何をかしら?」

戦鬼「この島風は私達に近いんじゃないかって。」

一同「?」

戦鬼「ねぇ、島風。私は見たことがあるわ。

    貴方が庇って被弾したにも関わらず庇われた相手が

    礼を言うどころか差し出したその手を跳ね除けるのを。」

戦鬼「そんな仲間以下の相手を助ける意味なんてあるのかしら?」

戦鬼「島風が良ければ私達、深海陣営に来ない?歓迎するわよ?」

戦鬼「あなたの強さがあれば姫、ううん。水鬼級の強さを発揮できるわ。」



そして、耳元で囁く。


314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:51:51.35 ID:IyUJskK70


戦鬼「あなたの魂は私達深海に近しいと思うの。」

島風「………。」

戦姫「確かに魂の有り様で新たな姫級の誕生を見るのも面白いわね。」

重巡「艦娘のまま我々の姫級として指揮官にか。」

古姫「まぁ、いいんじゃない?実力主義が私達の基本なんだし。」

駆逐棲姫(以下駆逐)「……、それより猿轡外さないと何も喋れないんじゃないかな。」

古姫「あぁ、忘れていたわ。」ゴソゴソ

古姫「これで話せるでしょ?」

戦鬼「ねぇ、島風?どうかしら?私達の仲間にならない?」

戦鬼「一緒にあなたを苦しめてきた連中を沈めていきましょう?」

島風「……、それってそんなに気持ちがいいの?」

重巡(しめた。乗ってきた。)

島風「確かに私は今まで酷い扱いを受けてきた。」



島風の目から光が消え、纏う雰囲気が影を背負う。


315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:53:10.13 ID:IyUJskK70


島風「もう、人間を守る為に戦うなんてうんざり。」

戦鬼「いいわ。実にいいわ!そう、強き者はそうあるべきよ?」

島風「手始めに目の前の鎮守府の残党を血祭りにあげたい。」

重巡(こちらに傾いてきているか…。新たな姫の誕生も間近かな?)

重巡(そういえば、地中海での戦いで生まれた同級の重巡棲姫も艦娘由来だったな。)フフン

古姫(強者の艦娘が元の姫。どんな強者に生まれ変わるか。見物ね。)クスクス

戦鬼「それじゃぁ、目の前の連中に絶望を味合わせてあげるなんてどうかしら?」

島風「絶望?」

戦鬼「えぇ、あなたは確か救援を呼びに包囲網を突破して出て行ったのよね?」

戦鬼「今も目の前の拠点に、鎮守府施設が破壊されているにも関わらず

   周辺の森や茂みに隠れて貴方の元仲間は殊勝にも抵抗を続けているの。」

戦鬼「その連中の心を、そう、抵抗を続けている連中の心を折ってしまいましょう。」ンフフ

戦鬼「拘束を解いてあげるから抵抗を続けている連中に貴方が私達の無線で語り掛けるのよ。」

戦鬼「自分は援軍を、救援を呼びに行ったけどどこも応じてくれなかった。援軍は来ないって。」

戦鬼「援軍が来ると、貴方に全てを押し付けてしまっている糞みたいな連中の絶望に沈む顔が見えて来ない?」

駆逐(サディストねぇ。)

島風「その提案、いいね。」

島風「援軍が来ない。皆は死ぬしかないって言えばいい?」

戦鬼「えぇ、それでいいわ。」ンフフ



そして、島風は立つ。

嘗て、味方だった艦娘達へ援軍は来ないと伝える為。

316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:54:38.44 ID:IyUJskK70


戦鬼「周波数は何かしら?」

島風「自分でやる。無線機ごと貸して。」



周波数を聞いてくる戦艦水鬼へ無線機を渡してくれと言う島風。



島風「絶望を叫ぶ連中の声を聞きたいの。」



その返事に満足し無線機を渡す戦艦水鬼。

ブロロロロロ



戦姫「あら?あれは敵の偵察機かしら?」

重巡「ほう。島風が此方側に寝返ったのを敵へ視覚的に見せるのに丁度いいじゃない。」

古姫「撃ち落すのは止めておいた方がよさそうね。」

戦鬼「操作は分かるかしら?」

島風「何となく。」



機械操作に長けた人が良くやる何となく操作。

説明書は困った時に読めばいいのあれで島風は無線機を操作。

そして、嘗ての仲間達の艤装に積まれている短距離用無線を呼び出すことに成功した。



ブゥン ――――――

ザリッザリッ


317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:56:11.06 ID:IyUJskK70


「○×鎮守府の皆!」



島風は呼びかける。



「この声は島風?」

「島風の声だ!」



目の前に広がる森林から歓声こそ上がらないものの

島風が帰ってきたことに沸き立つ雰囲気は伝わってくる。

そして、身を隠しながら沖合いを見やれば敵に囲まれた状態で海上に立つ島風が見えた。



「嘘。」

「島風が捕まってる………。」

「えっ…、じゃぁ、救援は来ないって事?」



広がり始める動揺。



「そんなぁ……。」



救援が来るかもしれないという一筋の希望が見えてからの絶望。



「皆!近隣の××鎮守府からの救援は来ない!」

「△×、□○鎮守府も皆、皆、救援を断ったの。だから近隣からの救援は来ない!」



正に奈落の底へ、絶望に底と言う物があるならその底へ叩き込む。

助かるかもしれないと言う蜘蛛の糸を見せ上り始めた所を鋏でぶった切るかの如き言葉。



戦鬼(あぁ、実に素晴らしいわぁ。)

戦鬼(敵の顔が絶望に歪むのが見えて来そうよ……。)



島風の呼び掛けに恍惚の表情を浮かべ満足そうに笑う戦艦水鬼。



「もう、助けは来ないのか……。」



ぽつりと漏れる悲痛な叫び。



島風「皆、後、もう少し頑張れば楽になるから!」

古姫(死を楽になると言うのであればなんという鬼畜)クスクス

駆逐(その変わり身の素早さは驚嘆に値します。)


318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:57:01.68 ID:IyUJskK70





                     「だって………。」




319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:58:19.65 ID:IyUJskK70






          「もっと、もぉ――――――っと強い鎮守府の人達が助けに来てくれるもん!」





320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:59:47.96 ID:IyUJskK70


ざわりと騒ぎ出したのは深海棲艦達かはたまた立て篭もる艦娘達か。



島風「私達の使っている装備よりずっと洗練された装備を持っている娘達。」

島風「その鎮守府に居た人達は皆、皆、一目見れば強いって確信できる人達だったもん!」

島風「すごいんだよ!全力で避けようとした私の顔に拳を入れる娘が居たんだよ!」

島風「こんな、へなちょこ深海棲艦なんか簡単にやっつけちゃうんだから!」

島風「だから!」

島風「だから皆!希望を捨てないで待っていて!」

島風「救援は今もこっちに向って来ているから!」



一気に言い切った島風から無線機を奪いとる駆逐棲姫。

しかし、島風が追いすがりそれを奪おうとしたため已む無く破壊。



「救援が来る!」

「島風が強いと言うとてつもない精鋭が来る!」



目の前の敵拠点が一気に熱を帯びてくるのが分かる。

島風の言葉は立て篭もり耐えている艦娘達にとってこれ以上ない希望となった。


321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 01:02:08.17 ID:IyUJskK70


戦姫「やってくれたわねぇ。」フフフ

戦姫「いえ、その見上げた根性。天晴れと言うベきね。」



味方と連絡を取る為の無線機を壊され、

必死に考えた結果が演技をし敵の無線を利用する事で味方達に希望を与えるという事。

そこに自分の命の事など一切を考えない高潔さ。

してやられたはずの戦艦棲姫をして天晴れと評価する程の自己犠牲。



戦鬼「でも、困ったわね。私達深海陣営に加わらないのなら死んでもらうしか無いわね。」



そう、深海棲艦陣営に寝返る事が島風生存の為の絶対条件。

先程の無線での援軍が来る連絡は間違いなく反故にする連絡。



重巡「普段なら艦娘の死体なんざ、イ級達のおやつなんだがなぁ。」



ぽりぽりと頭をかきながら語る重巡棲姫。



重巡「肉片を残さず綺麗に吹き飛ばしてやるよ。」

重巡「私はねぇ、あんたみたいに根性が座った奴は嫌いじゃないんだよねぇ。」



なればこそ。



重巡「その死体を下級連中の餌にするのは忍びない。」



方向の捩れた敵への敬意の払い方。だがそれは彼女なりの最大限の賛辞なのだろう。

そして速やかに刑は執行へ移される。



戦鬼「あなたが私達の仲間にならなくて残念だわ。」

戦鬼「これは心からの本音よ。」



戦艦水鬼、戦艦棲姫、重巡棲姫、そして駆逐棲姫に駆逐古姫。

主砲を一斉に向け、更には魚雷を持つものは魚雷発射管を島風へ向け。


322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 01:03:28.16 ID:IyUJskK70


戦姫「最後に言い残す事はあるかしら?」

島風「えへへ。そうだなぁ、あえて言うなら…。」

島風「悔いは無い、かな!」

戦鬼「総員!砲撃始め!」



ドン!



複数の砲声が鳴り響き、複数の魚雷が炸裂。

標的艦への砲撃演習かの如く全弾島風に命中し、島風は文字通り跡形も無く散った。

深海棲艦達の哨戒網ぎりぎりの所で瑞鶴達は偵察機の視界を通してそれを見ていた。



瑞鶴「島風……。」

時雨「……。」

雪風「島風さん……。」

川内「格好よく散っていったね。」

瑞鶴「提督さんから言われたプレゼントを敵に渡したら私達は帰るよ。」

瑞鶴「皆も分かってると思うけど、あいつらをぶっ潰すのは私達なんだから。」



静かに闘志を燃え上がらす瑞鶴に同意する一同。

グオォォォォオン

彩雲に括り付けていた荷物が切り離され戦艦水鬼前に落ちてゆく。


323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 01:07:41.39 ID:IyUJskK70


駆逐「爆撃!?」

戦姫「いえ、落下傘が開いたわ。別の物の様よ。」


静かに着水。

それは軍用ではなく民生品のごくごく有り触れた無線機だった。

ザザッ


「そこに総指揮官はいるか?」



無線機から漏れ聞こえるは年齢を重ねた男の声。



重巡「爆弾の可能性もあるかも?」

古姫「やるつもりならこんな回りくどい遣り方しないわよ。」


呼び掛けに応える戦艦水鬼。


戦鬼「私が総指揮官よ。何か用かしら?デートのお誘いには思えないけど?」

「あぁ、あんたが総指揮官か。名前を聞いてもいいか?」

「俺は今からお前さん達の頬っ面を引っ叩きに行く予定の少将提督だ。」

戦鬼「私の名前は戦艦水鬼よ。

   それにしてもレディの頬を引っ叩くなんて紳士にあるまじき行為じゃないかしら?」

提督「はっはっは。寝ぼけてるんじゃねぇや。お前ら深海棲艦どもがレディなんて名乗ってみろ。」

提督「暁が泣くぞ。」クックック

戦鬼「暁?あぁ、貴方達の駆逐艦にそんな娘が居たわね。

   私達を駆逐艦程度に見ているのかしら?」

戦鬼「随分と下に見られたものね。」

提督「ははは。馬鹿言うな。お前達はそれ以下だ。

   なぜなら俺が率いる部隊が貴様らを海の藻屑に変えるんだからな。」

提督「未来の死体が何をかいわんやだ。口を慎みやがれ。」

戦鬼「女性への口の利き方と言うのをまったく知らない下衆の様ね。」

提督「悔しかったら俺の顔にビンタの一発でも決めてみせるんだな三下。」

戦鬼「分かったわ。女性の扱いを知らない馬鹿に教育をしてあげる必要が有る様ね。」


提督からの安い挑発。


提督「あっはっは。」


戦艦水鬼を完全に馬鹿にした大笑い。


提督「出来るもんならかかって来い。俺は逃げも隠れもしねぇ。」

提督「待ってるぜぇ。」


ブツン

言いたいだけいい提督は無線を切った。


324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 01:08:37.49 ID:IyUJskK70


戦鬼「何て失礼かつ馬鹿げた態度をとった奴なの!」



島風の様に敵でありながら尊崇の念すら抱かせるような敵をいれば。

なんて失礼極まりない。目の前にいれば唾を吐きかけて殴りつけてやるというのに。

提督がとった態度に戦艦水鬼は激怒した。

その憤怒の相は周囲の味方達が提督の挑発に対して激怒した事を忘れさせるほどに気持ちを引かせた。

325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 01:09:35.71 ID:IyUJskK70


強襲揚陸艦内 艦橋



米海軍観戦武官大佐(以下大佐)「随分な挑発をされますね……。」

提督「ははは。大佐。これくらいで引いていちゃ軍を率いていけませんぜ?」



少将という上の階級でありながら友人の様に気さくに話しかける提督。



提督「とりあえず敵を幾らかこっちに吊り上げない事には始らないんですよ。」

提督「まぁ、吊り上げるのに失敗したところで痛くもないですがね。」

提督「あの程度の安い挑発で吊り上げられるくらいなら金を払ってでも吊り上げたいもんですよ。」

大佐「勉強になりますな。」

提督「大佐。気楽に行きましょうや。」


326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 01:10:36.14 ID:IyUJskK70


提督「敵は島風が……、

   恐らく自己犠牲により我々が救援に向っている事を知らせた事に感動しているでしょう。」

提督「逆の立場でも私は感動しますからね。

   感動して、その余韻が残る所に私からの挑発ですよ。」

大佐「あぁ…、感動映画を見た後にスタッフロールでお笑いNGシーンを見せられる様な。」

提督「そうです。感動をぶち壊し。怒らない奴などいない。」

大佐「怒りは通常以上の力を発揮させる可能性がありますが?」

提督「怒りは冷静さを失わせる。戦場で最初に死ぬのは冷静さを失った奴からですよ。」

大佐「相手の心理を手玉に取る為に怒らせますか。」

大佐「少将殿は随分と豪胆な神経をお持ちの様だ。」

提督「とんでもない。私ほど臆病者は海軍の何処を探しても居ませんよ。」

提督「大佐。戦場で長生きするのは臆病者ですぜ?」

大佐「肝に銘じておきましょう。」

327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 01:11:49.49 ID:IyUJskK70


秋津洲「提督!準備出来たよ!瑞鶴さん達もこっちに向ってきているって!」

提督「随分と早いじゃねぇか。」

秋津洲「深海棲艦達をぶちのめすっていきまいているよ。」

提督「……、冷静になれと言ってやれ。出番は俺が作ってやる。」

提督「まだ、ミュージカルの幕は上がってねぇ。」

大佐「ミュージカルですか。」

提督「えぇ、命が燃え尽きるまで舞台の上でそれぞれ与えられた役を演ずる。」

提督「殺す、殺す、殺す、と歌を謳い敵の断末魔がそれを彩る痛快ミュージカル。」

提督「コーラスラインからこっち側で役を演じられたいのでしたら

   無用な口出しは止して頂けると助かりますよ。」ニヤリ

大佐「ははは。少将殿は日本海軍より我々米軍に居た方がいらぬ頸木に捕らわれずに活躍出来そうですね。」

提督「ははは。」



提督と大佐。

艦橋に響く士官達の笑い声は他の乗員達にどの様に聞こえたか。

開戦の幕が上がるのはもう、間もなくである。


328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/15(金) 01:27:06.91 ID:IyUJskK70

本日の更新は以上で終了です

前回の更新において叢雲が轟沈済み、島風が鳥居強右衛門の役割なのを見抜かれた方、洞察力鋭いと感心しておりました

また、まとめスレからこちらを読んで感想レスを頂きました読者の方、ありがとうございます、多くて驚きです

これからも末永く、どうぞ宜しくお願いいたします

まとめサイト、主にエレ速での自分の作品は長いとか、なろうとか言われ放題なの把握しているので、

頂いたレスが酷い事言われなくてほっと一安心したのは私が小心者だからですね……

SSまとめ速報は現在進行形のものも掲載されていてい珍しいなぁと思いましたので

前回の更新時に話題として取り上げさせていただきました

その件につきましては御不快な思いをされた方がいらした様で申訳ありませんでした

今回の話でノーフォークで埃を被った鉄屑が将来的に出てきても大丈夫ですよね!うん

後編は先にいいますと2回くらいに分かれることになるかと思います、下手したら3回……

計画性が無くて申し訳ないですがどうぞ、お時間宜しければお付き合いいただけると幸いです

後、ネタばれ的な感想レスについては自分は全然問題ないと考える方です

いい意味で予想を裏切る、或いはより良いものに出来ればなぁと考えている感じです(今回の島風の役割とか)

正直に言いますとレスが付かない方が読んでいただけているのかと心配でかえって怖いです

今回も色々御挨拶が長くなりましたが次回もお時間宜しければお読みいただけると幸いです

329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/15(金) 01:31:25.11 ID:ea2kGIw+O

次も楽しみにしてる
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/15(金) 02:32:24.81 ID:OFZefjA50
島風が想像以上に強右衛門らしい最期だった
そういや米議会で強襲揚陸艦のお古を日本に売りつけようって話がこないだ出てたな
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/15(金) 07:44:25.42 ID:BvTq+bulO
おつ!!
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/16(土) 01:17:55.82 ID:viuQ9QhA0
おつおつ
面白くて多くの人から期待されてるんだから、ああいうサイトの品評はそこまで気にしなくてもいいかと
長年かけて書き上げてきた大作やら力作を、終わった後から扱き下ろすようなのも多いんだからほどほどで十分でしょ
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/17(日) 13:48:50.41 ID:NeI/xumR0
それにしても
ボツネタ供養でちょっと書かれた話からここまでの大作になるとは……
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/18(月) 12:07:14.35 ID:HjXIVpU6O
やっぱり面白い! 時間があったら最初の話から何度も読み直してる。
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 13:43:10.93 ID:YRAJ7cSBO
強右衛門って誰だっけ?

って思ったら長篠の戦いの人か。

戦国史も嗜む>>1は凄いな
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/02(月) 12:42:02.01 ID:orDGxRGHO
続きが気になって仕方がない。
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/02(月) 13:08:10.40 ID:ig4QiBhw0
長篠近隣には強右衛門の功績を讃えてJR鳥居駅があります(マジ)
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:01:46.50 ID:HSNWcwmZ0

_(:3」∠)_ 

これ結構長引く奴だ……
1です、久しぶりの更新となります、お時間宜しければお付き合いいただけますと幸いです
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:02:58.74 ID:HSNWcwmZ0


第十二話 天国への扉 後編

340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:04:16.18 ID:HSNWcwmZ0

強襲揚陸艦艦橋

提督「それにしても艦番88とは…。」

大佐「どうされました?」

提督「あぁ、いえ、この艦の艦番なんですがね。

   私が普段指揮を執る鎮守府の管理番号と同じでしてね。」

提督「なんの因果かと思いましてね。」

大佐「あぁ、それでコールサインが88なのですね。」

提督「えぇ。こういうのは普段どおりの方がいい。」ニッコリ



提督と大佐がにこやかに談笑している所に開演のブザーが鳴る。



「ワイルドギース01から入電!

 敵の偵察機がエリア3 −A―01からこっちに来てるかも!」(無線)

提督「こちら88コントロール。伯爵、聞こえているか?」(無線)

グラ「こちら伯爵。加減は?」(無線)

提督「1〜2機は帰してやってくれ。

   こっちの居場所を知ってもらわない事には始らない。」(無線)

グラ「こちら伯爵了解した。」(無線)

大佐「こちらの位置をわざとにばらすのですか?」

提督「えぇ、そうですよ。あくまでメインステージは此方ですから。」

提督「踊るならこちらで踊ってもらわないと色々と折角の舞台演出が無駄になりますからね。」

提督「スポットライトの舞台装置に大道具。全て重要ですよ。」

341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:06:00.56 ID:HSNWcwmZ0

強襲揚陸艦から救援予定鎮守府方向20海里地点 水深70m



ゴポリ

伊58「海底に岩だらけでち。」



提督から渡されたドラム缶を面倒くさそうに海底にアンカーで固定しながらゴーヤが言葉を紡ぐ。



伊8「米軍の海底データが役立ちますね。」

伊13「その…、海水がねっとりとしてて……。温度も……。」

伊58「提督はなかなか潜水艦ってのを良く理解しているでち。」

伊58「米軍のデーターが無いとこんな大胆な作戦は考えられないでち。」

伊8「私達が一番槍……、ですね。」

伊58「敵さんの探信儀に聴音機じゃここに潜むゴーヤ達は見つけられないでち。」

伊8「先駆けからの大物食い、ですね。」

伊13「ですが…、そのタイミングが。」

伊58「その通りでち。でち達からも敵の音は拾いにくくなるでち。」

伊58「だけど、敵は大艦隊でち。

   拾う為の努力をせずとも大音量が聞こえるはず。」

伊8「提督が言っていました。

   敵は提督へのカンツォーネを謳いながら来るだろうから煩いだろうって。」

伊13「……、あの、敵はセイレーンか何かなのでしょうか……。」

伊58「魅了されたら海に引き摺り込まれるという意味ではそうかもしれないでち。」

伊8「後は急速浮上後の目標の推進音を間違えないようにしないと。」

伊13「…提督は間違えても周辺護衛を仕留めれれば御の字って言っていましたが。」

伊58「大物食いは刑期大幅短縮、それに提督の話を信じるなら。」

伊8「大物食いに成功すれば解放されます。」



海上での戦闘というのは陸の平原戦と似ているが

海中という不可視の要素が加わるのが厄介である。

何故なら、海中に潜む潜水艦というのは

時として局面を引っくり返すワイルドカードに成り得るからだ。

適切な位置とタイミング。

テーブルに並べられたコミュニティカードに自分の手札。

当たり前だがカジノでの勝負と同じようにお互いの手札は見えず伏せられたまま。

戦場というテーブルに敵、味方、加えて地理的要因という場札。

そして、手札には自軍の戦力。賭けるチップは自軍部下達の命。

提督と深海棲艦のポーカー勝負は既に始っている。

342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:07:28.14 ID:HSNWcwmZ0


強襲揚陸艦内



提督「初手からチェックなんぞしていちゃ心理戦に持ち込む以前の話ですぜ。」

大佐「だからと言って初手からベットして行きますか。」

提督「ホールデムは相手をいかにフォール。下りさせるかの勝負ですぜ。」

提督「特にプレイヤーが2人なら下りさせれば勝ちだ。」

大佐「ですが初手、

   まだゲームが開始されたばかりだとコールやレイズをしてくるのでは?」

提督「それが狙いですよ。大佐。」

大佐「賭け金を吊り上げさせるだけ吊り上げますか。」

提督「ラストターンまで待つ気はないですがね。」

提督「今回は私も頭に来てましてね。

   フォールの声を聞くつもりはないんですよ。」

大佐「既に役が出来ているという事ですか?」



ここで提督はさぁてねと意味ありげに手をひらひら。



提督「敵についてですが今回は姫の上の格。鬼級が出張ってきている。」

大佐「あぁ、先程のお互いの自己紹介でそう言っていましたね。」

提督「深海棲艦の指揮官個体は艦種での違いは無く同格だそうですよ。」

大佐「指揮系統が複雑そうですね。」

提督「と思いきや鬼号個体が指揮を執ればそれに従う。

   鬼同士では指揮系統の順位があると海軍の研究が出ています。」

大佐「敵の総指揮官は戦艦水鬼でしたですか?」

提督「えぇ、今回の敵の総指揮官は戦艦水鬼です。なかなか厄介な手合いですよ。」

大佐「油断ならぬ相手、という事ですか。」

提督「えぇ、救援を呼ぶ艦娘が出られないように包囲網を適切に構築しているようです。」

提督「島風が這い出てこられたのも島風だからと言って過言じゃないでしょう。」

大佐「随分と強個体だったようですね。」

提督「えぇ、死なせるには惜しすぎる艦娘でしたよ……。」



艦橋内にある各種モニターに映る光の明滅を見ながら提督がぽつり。



提督「時に大佐は博打の必勝法を御存知ですかな?」

大佐「はて?」

提督「賭けない事ですよ。」

大佐「違いない。」

提督「まぁ、相手が目の前に居なくてよかったですよ。」

大佐「?」

提督「私はポーカーフェイスってのが苦手でして。顔に出やすいんですよ。」ニタァ

大佐「成程、良い笑顔ですね。」


343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:09:40.03 ID:HSNWcwmZ0


敵にも居るはずの潜水艦。

しかし、提督はこれが自分達救援部隊への迎撃に向ってこないと計算していた。

そして、仮に向ってきても脅威足りえないと。



コーン


          シャッシャッシャ


     コーン


シャッシャッシャ
         コーン



空鬼「敵の潜水艦は居ないようね。」

駆逐「えぇ。外周に配置したナ級の報告では探信儀に敵の反応は無いわ。」

空鬼「敵救援艦隊は随分大きな的を備えている様ね。」



グラーフがトニー賞俳優顔負けの迫真の演技で逃した偵察機からの情報で

深海迎撃艦隊は提督達のいる方向へと進路を向けていた。

ソナーには2種類あるのは皆さんも御存知だと思うが探信儀と聴音機。

この2種類の違いについては今更説明する必要性はないと思う。

潜水艦の探知については探信儀の方が性能が高いのだが

自軍に潜水艦が随伴している場合は現代艦で構成される機動艦隊は控える事が多い。

では、何故深海棲艦は探信儀を気兼ねなく使っているのか?

単純明快、自軍の潜水艦が随伴していないからである。

艦隊行動をする上で潜水艦の随伴というのは良くあるのだが。

潜水艦の基本の戦い方は待ち伏せ。

現代では機関や形状等が進化した事により潜行したまま艦隊についていけるが

第二次世界大戦時は浮上航行した上で会敵予想海域に潜むというのが専らの戦い方なのだ。

であるからこそ、既に防御線を構築している状態から潜水艦を引き抜き

艦隊に随伴させるというのは少々戦い方として無駄がある事になる。


344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:11:16.61 ID:HSNWcwmZ0


駆逐「敵の包囲網に使っている艦を回すわけには行かない……。」

空鬼「ここが難しいところよね迎撃側になる此方は速力重視になってしまうから

   速力に不足がある潜水艦は艦隊行動について来れない。」



現代艦艇の潜水艦と比べればその速力は浮上航行時でも当然遅く更に。



空鬼「敵潜水艦が待ち伏せて襲撃をかけて来ると予想される中で

   爆雷対処を行った場合に味方の潜水艦を巻き込む恐れが有るのよねぇ。」

空鬼「音を立てずに海中に潜んでいると見つけにくいのよね。」

駆逐「無闇にソ級達を沈めると潜水棲姫に怒られる…。」

空鬼「今回の作戦にあの娘の軍勢借りてるから無駄に沈めると後が煩いのよね…。」



現代兵器であればキャビテーションノイズ等で艦事の区別は付くのだが……。



空鬼「敵味方の潜水艦入り乱れての混戦になると却って困るのよね。」

空鬼「浮上航行の潜水艦なんて鈍亀もいい所だし。」

駆逐「浮上航行している潜水艦は敵にとっていい的でしかない。」

駆逐「私達の爆雷は潜水艦を[ピーーー]。敵も味方も無い…。」

空鬼「であるならば対潜に力を入れて探信儀で

   広範囲に捜索をかけて敵を先に見つける事に重点を置いた方がいいわ。」

空鬼「陣形の外周を探信儀持ちで固めて広範囲の捜索。

   発見した場合は同じく駆逐、軽巡で処理。これが一番現実的かつ合理的よね。」

駆逐「そう…ね…。」



深海側が採っている陣形は空母機動艦隊、米軍が海上航行をする際にとる輪形陣である。

単純にかつざっくりと陣容を説明するなら

外周の的がやられても内側の空母等の重要艦を沈めさせないという陣形である。

だけに。


345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:12:31.12 ID:HSNWcwmZ0


伊58「内側に完全に入り込まれると対処がしにくくなるでち。」ニタリ



提督から事前に話された敵がとってくるであろう陣形。

それは輪形陣の一陣形、

アイロン型の陣形で内側に深海側にとって重要艦を固めて来るであろう事。

そして、提督から艦内で改めて聞かされた

今まで色々な鎮守府が撮り貯めてきた深海棲艦達の各艦種、姫、鬼級達の推進音。

それを思い出し。



伊58「海のスナイパー。潜水艦の真骨頂を見せ付けてやるでち。」ニタリ



ゴポリ



伊8(そろそろです……。)



10……9……8……7……6……



5………4………3………2………………1



0 !



一秒が一時間にも感じられる程の張り詰めた雰囲気の中、

頭上を通り過ぎていく敵艦隊の推進音は

音が拾いにくい所にいるはずのゴーヤ達の所にもしっかりと届いていた。



伊58「今でち!」



70mの海底から一気に急速浮上。目標とする敵の後ろを取る。

その完璧なタイミングを推し量り、潜水艦達は急速浮上をかけた!



駆逐「潜水艦の浮上音!?」



敵輪形陣中央に浮上。


346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:13:21.23 ID:HSNWcwmZ0


伊58「海の中からこんにちは〜!」ザバン!



シャコーン

冷たい立体反響音が当たりに響く。その正体は魚雷発射管が開く音。



伊58「そして、[ピーーー]ぇ!!」



敵の真後ろ、提督達のいる方向へ向けて航行中のため急に後ろを振り向く事など出来るわけも無く。



シャ ――――――――― !



ズドン!



ゴーヤ達3人の放った魚雷が一斉に扇形に広がり輪形陣の中心にいた深海棲艦達に命中!

そして上がる命中の水柱。



伊8「全弾、命中確認、ですね!」

伊13「敵被害確認、カメラでの撮影完了!」

伊58「長居は無用でち!急速潜行で海域から離脱でち!」



その存在を検知出来なかった場所からの敵。

ゴーヤ達の奇襲は完璧なまでに決まり、成功した。



347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:15:25.92 ID:HSNWcwmZ0

空鬼「駆逐ちゃん。」

駆逐「何?」

空鬼「あなたに指揮権を移譲するわ。機関をやられたわ…。」

空鬼「艦載機の発着艦は出来るけど後方からやられた所為で

   このまま敵本隊にぶつかればいい的にしかならないわ。」

空鬼「自力航行不可能よ……。」

駆逐「離脱するのね……。」

空鬼「えぇ、後は宜しくね……。」


ゴーヤ達の魚雷は艦隊の中心部に居た空母水鬼に見事命中。

他にも多数の重巡達に大破や中破といったダメージを与える事に成功していた。


駆逐「ナ級達。敵潜水艦を沈めて頂戴。」


艦隊外周の駆逐艦達に冷静に見える様でありながらも腹立たしい表情で指示を出すが。


駆逐「敵の反応が無い?」

駆逐「馬鹿な!敵にそんな高速潜水艦等居るはずがない!」


だが、返ってくる言葉は不明(ロスト)の返答。


駆逐「忌々しい!」


駆逐棲姫が毒づく言葉を吐き周囲への爆雷攻撃を命じる。

ゴーヤ達を探知出来ている訳では無い。

だが、潜水艦の脅威を放っておくわけにはいかない為周囲全体に爆雷を大量に撒く。

そして。


駆逐「敵艦からの浮翌遊物を確認。」


撃沈したと思しき大量の油と敵艦娘特有の制服を確認。

ナ級からの報告に溜飲を下げる駆逐棲姫。

進軍速度を落とし被害の確認。

空母水鬼が大破撤退したものの空母全体でみれば被害は軽微。

そして、重巡や軽巡、戦艦といった者達にも撃沈が出てはいるがこれもそれ程数が減った訳では無い。

まして、奇襲という手を食らって敵と一合も刃を交えず退くという事など。


駆逐「選択肢としてない!」


事前の偵察機からの情報では艦隊の数、そして空母艦載機数で圧倒できる。


駆逐「地獄を見せてやる!」


激昂し普段あまり表に出さない感情を顕わにし。


駆逐「絶対[ピーーー]!」


怒りのままに進軍速度を早めたのだった。


348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:16:42.34 ID:HSNWcwmZ0

強襲揚陸艦内艦橋


不知火「司令、ゴーヤさん達から入電です。」

提督「読み上げてくれ。」

不知火「トラ!トラ!トラ!我、奇襲に成功せり! です。」



不知火の読み上げる電文に苦笑する士官二人。



提督「大佐、これは申訳ありませんな。」

大佐「いえいえ。お気になさらず。」



そして、不知火から敵に与えた被害を聞き満足そうに頷く提督。



大佐「あまり敵に与えた被害が大きくは無いようですが。」

提督「とんでもない。連中は値千金の仕事をしてくれてますぜ?」



提督の言葉に疑問を持ったのか腑に落ちなさそうな顔をする大佐。



提督「大佐、指揮官を一人、

   それも空母水鬼を行動不能に出来たというのはこっちの防衛戦は勝ったも同然です。」

提督「空母水鬼とその他の指揮官では艦載機の管制が雲泥の差。」

提督「制空争いに余裕がかなり出来ることになるんですよ。」

提督「敵の数が勝っていたとしても質で此方は拮抗に持ってはいけますがね。」

提督「あくまで拮抗。勝つための決定打が足りない。」

提督「その決定打を今、潜水艦の娘達が敵に与えたって事ですぜ?」

大佐「それなりに策は用意されているかと思っていたのですが?」

提督「えぇ、おっしゃるように勝つための策は用意していましたがね。」

提督「使う必要性が無いなら使わない方がいい。

   私の所はそちらほど台所事情がよくないのでね。」


349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:18:29.89 ID:HSNWcwmZ0


大佐「それにしてもそちらの潜水艦の娘達は実に大胆な手法を取られましたね。」

提督「もともと其方がこの辺りを縄張りにしていた御かげで

   蓄積されていた海底データが役に立ちましたよ。」

大佐「やはり温度躍層に、ですか?」

提督「手品のタネを明かすならそうですね。

   曳航式ソナーなんて敵は持っていませんしな。」

提督「攻めてきた側の連中が周辺海域の詳細海底データーを持っているとは思えませんし。」

提督「知っているなら対策もとっていたでしょうや。」

大佐「成程。なかなか面白い事を考え付かれますね。」

提督「簡単に真似出来ると思ってはいただきたくないですね。」ニィッ

提督「今回海中に潜んでいた連中は何百、何千と深海連中を沈めてきた歴戦ですからな。」

提督「御存知とは思いますがうちの特性上沈めた艦種によって報酬は大きく変わる。」

提督「だからこそ、狙う前に敵の機関の推進音を一瞬で聞き分け、

   より報酬がでかくなる対象を狙う。」

提督「急速浮上から奇襲、そして急速潜行、戦域離脱。

   普段から死線をギリギリでさまよっているうちの連中だからこそ出来る芸当ですぜ?」

提督「まちがっても余所の錬度でやっちゃ駄目ですな。

   急速浮上後に目標を見つけられずに沈められるのが関の山ですからな。」

大佐「精鋭揃いなのですね。」

提督「えぇ、精鋭も精鋭。気を抜くと自分の首に大鎌が押し当てられますので。」

提督「最初に敵に与えたこの攻撃で敵の先手は取った形になります。」

大佐「切り札を最初に切ったと?」

提督「えぇ、切り札なんてもんは温存しといて

   切るタイミングを失うよりさっさと切ってしまった方がいいんですよ。」

大佐「成程、どこかの国の戦艦がそんな最期でしたな。」

提督「……、皮肉がすぎますな。」ハハッ



始めの電文に対しての軽い応酬。


350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:20:01.45 ID:HSNWcwmZ0


大佐「これは失礼しました。ですが、今後の展開も楽しみですね。」

提督「楽しむ余裕があるというのは重要ですよ。」

提督「余裕があるうちは頭も動いている証拠ですからね。」

提督「さてと、不知火。」

不知火「はい。」

提督「この艦の周りに配置についている連中に連絡だ。」

提督「幕は上がったとな。」

不知火「了解です。」

提督「さてと、大佐にはプロデューサとしての私の腕前を見ていただきますか。」

大佐「地方公演なしにいきなりのブロードウェー。素晴らしい大作なのでしょうな。」

大佐からの皮肉に、にこやかな笑顔を返し。

提督「勿論ですよ。まぁ、I dreamed a dream になる訳にはいきませんので。」

大佐「レ・ミゼラブルですか。」

提督「御名答。」



艦橋内で提督からの指示を

強襲揚陸艦外周辺海域に展開する各艦娘と連絡を伝え全員が意気軒昂なのを確認。



提督「さぁ、舞台は整った。」



後は敵をいかに潰すか。手札の役は既に敵にとって致命傷。

敵の積み上げたチップを全て残らず奪い取る。



秋津洲「ワイルドギース02から88コントロールへ!」(無線)

秋津洲「敵艦載機編隊がエリア2−A―03より襲来!」(無線)

提督「了解!全員褌締めて掛かってくれ!

   前哨戦だがここから先は全て息を切らさぬクライマックスの連続だ!」



提督の呼び掛けに全ての無線は応とかえってくる。



提督「気を抜くと尻の毛全て毟られるぞ。」



提督の台詞に笑う無線の返事多数。



提督「さぁて、いつも通り。行こうか。」



ぽんと手を一つ叩き、艦橋内の各種モニターを見つめ

どう敵を料理しようかと提督は不敵な笑みを浮かべるのだった。

351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 00:28:19.57 ID:HSNWcwmZ0
本日の更新はこれにて終了です、次回へ続きます

次回嘘予告

追うものと追われるもの。そのおこぼれを狙うもの。
牙を持たぬ者は生きて行かれぬ暴力の海。あらゆる悪意が武装する、赤い海。
ここは深海との戦いが生み出した死の戦場。
時雨の体に染み付いた硝煙の香りに引かれて危険な奴らが集まってくる。
次回、『 出会い 』。時雨が飲む、鎮守府のコーヒーは苦い。

337様、本当に駅あるんですねググってびっくりしました
333様、本当に数レス上げたボツネタ供養からここまで続くとは思っていなかったです
ボツネタに対して続きは?と多くのレスをいただき背中を押していただいた部分も多いかと思っています
実際、ボツにした理由も需要ないだろうなぁと思っていた部分が大きかったですので
ですので更新の度に多くのレスをいただいている現状は1としてありがたいやら恐縮するやらで……
このお話の後に砂の薔薇をベースにした番外編をやれるようそちらも筆を少しずつ進めていますので
これからもお時間よろしければお付き合いの程宜しくお願いいたします
感想レス、乙レス、いつも励みになっています、本当にありがとうございます
変態仮面のSSも書いてます、方向性が180度違いますが間違いなくどちらも同一人物が作者です、はい
では、また次回の更新で!!
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2018/07/03(火) 00:31:58.09 ID:HSNWcwmZ0
あっ sagasageを打ち込まなかった所為でピーが発生してる…
>>346は死ね
>>347は殺す
ですね、締まらないなぁ…、御迷惑お掛けします……
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 21:21:02.34 ID:vD/ykc1n0
読み返して気付いた。

ちゃんと、島風が強右衛門ポジになる下ごしらえが>>285 でされていたんだなぁ。

そして、学のない人間にすねえもんなんて初見で読めるわけがないw
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/04(水) 13:16:59.91 ID:UnA7/8nW0
後世強右衛門の献身が無ければ徳川の世は来なかったとまで言われ、あの恩知らずな家康が一族を幕末まで手厚く遇した程のターニングポイントになった一件だから島風の死は戦争の趨勢を激変させるかもしれない
島風好きとしては期待しちゃう
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/07(土) 21:25:05.61 ID:NNlPl4c30
賢い相手ならこの被害で一旦艦隊を下げるんだろうけど
実は相手は勝負から降りれない状況に追い込まれているのですか

嫌な博打打ちだな(褒め言葉)
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 00:09:14.23 ID:NNCuyt2G0
前回は他の作者様のとこに書き込みしてsageになっていたのを直さず投稿してご迷惑をお掛けしました
良く忘れてやらかす…、駄目駄目ですね……
少しまた期間が空きます事のご連絡とおまけネタで読んでみたいとレスいただいていました
ガングートのお話を少し、宜しければお読み下さい
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 00:10:14.40 ID:NNCuyt2G0

おまけ話  ガングートは底辺から脱出したい

358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 00:12:27.25 ID:NNCuyt2G0

ガングート着任初日

その日、不知火は提督からのお使いで艦隊司令部に行っており

既に帰途に付いていたものの帰ってくるまでにはまだ時間が掛かるはずだった。



ポンポンポン



いつもの様に軽快なエンジン音を立て艀に接岸するボートが一艘。



提督「お疲れー。今回の荷物は外交問題だって?」

水兵「ははは。私からはあまり詳しくは。」

提督「うちに厄介ごとの丸投げ止めて欲しいもんだよ。まったく。」



そしていつもの通りにお互いの認識票を端末に翳して受領手続き。

その後、水兵が去った後に荷物の拘束を解いていた所に不知火が帰ってきた。



不知火「司令!不知火、帰投しました!」



みえない尻尾がぶんぶんと。

振り切れそうな勢いで振れているなぁと提督はぼんやり。



提督「うん。お疲れ。予定より早いようだが。」

不知火「途中で船を降り艤装で全力航行してきました。」



頭を撫でろと差し出しくる不知火の頭を撫でていると罵声が飛んできた。



「貴様!駆逐艦の相手などせずにさっさと外せ!この馬鹿者が!」



猿轡を先に外し、足の拘束を外そうとしていた提督に偉そうな口を利く艦娘。

ブチッ



不知火「2割殺しで許してやる。」



たった一言。余分は不要。

メキャァ



提督「あっ。」



提督は後に時雨に語った、艦娘って戦艦でもあんなに吹っ飛ぶもんなんだなぁと。



時雨「あれで2割なんだ……。」



とは時雨の返答。

359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 00:15:08.69 ID:NNCuyt2G0

そして、1週間程、意識が三途の向こう側へ行きかけた後。

栄養を取る為に彼女が食堂を利用した時の事だった。

昼食をとりに提督が食堂へ顔を出せば揉めている声がする。


ガン「なんだと!?ボルシチが出せないだと!?」

「いや、予め言ってくれれば用意はするけど。」

「普段からメニューにないのを急に作れって言われても無理だよ。」

提督「まぁまぁ、落ち着いて。」



提督がなだめようと間に入るが……。



ガン「何が落ち着けだと!?貴様!銃……「露助、司令官を敬え。」



一閃、綺麗な兎飛びアッパーが決まる。

ボゴォ゛



提督「あっ。」



提督は雪風に語る。天井に人が突き刺さるって事があるんだねぇと。



雪風「装甲は腐っても戦艦ですから。」



とは雪風の言葉。
850.25 KB Speed:0.3   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)