【艦これ】 続 外地鎮守府管理番号88

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160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:46:02.21 ID:ANDDdQ3d0

謹慎の為、普段使用している自室から提督の先導により別室へ向かうウォースパイト。

ガチャガチャ。



提督「謹慎中はこの部屋に居てくれ、ここが作られてから使われたことの無い貴賓室でな。」

提督「早い話、偉い人の接待というか宿泊用の部屋だ。

   調度品とかは良い物を使用しているから好きに使ってくれ。」

提督「後、謹慎とは言うが部屋の鍵は掛けないから勝手に出入りしていいぞ。」



バタバタ。ガシャガシャ。



川内「あっ、提督。長机持って来たよ!後、鉄板にガスコンロも!」

摩耶「明石さんの所に食材が米軍から色々来てたから貰ってきたぜ!」

スパ「あの、何を?」

提督「ん?」

提督「お前、あれだよ。勝っただろ?」

スパ「はい。」

提督「んで、お前がMVPだろ?ならするこたぁ一つだろ。」

グラ「Admiral、ビールサーバーを持ってきたぞ。」

長門「提督よ、宴会会場はここか?」

初月「提督、ただ飯が食えると聞いたから来たよ。」

雪風「色々食材を持ってきました。」

提督「食べられるもんなんだろうな。」

時雨「それは大丈夫だよ。」



作戦に参加していた艦娘達が集まってくる。
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:47:00.71 ID:ANDDdQ3d0

雪風「先日は素晴らしい狙撃でした。謹慎中のティータイムにどうぞ。」



つH.Rヒギンス 紅茶セット詰め合わせ ウエッジウッド製テイーセット



時雨「僕からは紅茶のお供に欠かせないこれと、お湯を沸かすのに便利な道具の差し入れだ。」



つ 像印 瞬間湯沸かし器 F&Mジンジャークッキー



スパ「あっ、ありがとうございます!」グス

瑞鶴「一週間謹慎だって〜?」

瑞鶴「暇を潰す為にこれ、あんたにあげるわ。」



つ PS4本体 ソフト MHW 



初月「僕はこれをあげよう。」



つ Game of Thrones第1〜6シーズン全DVDBox



スパ「ありがとうございます!」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:47:56.58 ID:ANDDdQ3d0


長門「一週間の間は暇だろう。これは私からの差し入れだ。」



つ ノートPC(ゲーマー仕様)



長門「色々有名所はインストールしておいた。一週間はあっという間だ。」

長門「お勧めのゲームはCivilazationだ。ほどほどにな。」

グラ「あぁ、今回の活躍。実に素晴らしかった。」

グラ「謹慎期間中は何かと暇だろう。私からこれを差し入れしよう。」

グラ「いい暇潰しになると思う。」



つ 青島文化教材社 1/700 雪風



グラ「こちらに塗装、工作に一通り使うものを入れておいた。役立てくれ。」

グラ「それが組みあがったら少し難易度が上がったものを差し入れに持って来よう。」

スパ「ありがとうございます!」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:49:07.22 ID:ANDDdQ3d0


北上「おー、なんか店開けそうなくらいにいっぱい貰ってんねー。」

北上「あたしからはこれね。」



つ 新谷かおる著 エリア88全巻



北上「面白いから全部読んでね〜。」

ポーラ「うぇへへへ〜。ポーラからはこれで〜ス。」ダン



つ スコッチウィスキー 1ケース



ポーラ「全部飲んで、肝臓壊しやがれ〜でース〜。」エヘエヘエヘ

川内「私からはこれ!室内トレーニングマシーン!」

川内「出撃できないと色々体がなまるからね!」

摩耶「あたしからはこれだ。」



つ 人を駄目にするクッション



摩耶「やっぱりリラックスタイムってのは重要だと思うんだよ。」ウンウン

不知火「不知火からはこれです。同じくリラックスタイムに使用してください。」



つ バスクリン1ケース



提督「色々多いな。」フフフ

提督「後、これは俺からだ。紅茶を飲む時に食べるといい。」



つ ハーシーズチョコ 330個入り 5袋

164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:49:58.45 ID:ANDDdQ3d0

提督「さてと、それじゃぁ、宴会を始めるとするか。」

提督「と、お前。何、泣いてるんだ?」

スパ「こんなに優しくされたの初めてで……。」ウェッウエーン

提督「うちの連中はこんな感じだ。常に生きるか死ぬかで綱渡りやっている様な連中だ。」

提督「正規軍より仲間意識が強い、後、楽しめる時は楽しむのが長生きのこつだ。」

提督「お前も楽しんどけ。」

スパ「はい!」ズビー



宴会は翌日朝近くまで行われたそうである。

165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:50:39.74 ID:ANDDdQ3d0

おまけ的番外編のような話  世界は革命を待っている!
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:53:32.99 ID:ANDDdQ3d0
♪ Совет марш

ドンダンパンパカパン

力強い太鼓とラッパの軽快な音が響き、居並ぶ軍服姿の男達が口々に謳い始める。


Наш Советский Союз покарает

カツンカツン

Весь мир от Европы к Неве на восток


一人の女性がトレンチコートを肩に掛けたまま港をゆっくりと進む。


Над землёй везде будут петь

カツンーカツーン

Столица, водка, Советский медведь наш!


口に咥えたパイプからは煙がたなびく。


Все народы здесь стоят того,


女性は前のみを見てただまっすぐと進む。その左目の下には抉られた様な戦傷。


Что мы все воплотили на свет,


その周囲を多くの軍人達がデモンストレーションをするように駆け足で走る。


Благодарный низкий поклон


いくつもの陣形を見せそれは女性の進路左右に通路を作るように整列。


От самой могущественной в мире!

ガツーンカツーン

Наш Coветский Союз покоряет весь мир


軍人達が左右に居並ぶ通路の真ん中をなおも女性は進んでいく。


Как огромный медведь на Востоке.

ジャコン!ジャキッ シャキキン!

Овцы бродят бесцельно, без всяких забот


軍人達が肩に下げたAKMのコッキングを引き弾丸を薬室へ送り込む。


Наш советский медведь на охоте.


歩いていた女性が列の出口に立ち男達の方へ振り返った。


「諸君!世界革命が達成される時は近い!」

「我らソヴィエトの威光はこの世界を余す事無く照らすだろう!」


Ураaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!

167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/22(日) 00:55:55.74 ID:ANDDdQ3d0

スパ「おぅ。とっとと起きろや。」ペチペチ

ガン「あっ、あれ……。」ショボン

雪風「そこの露助。寝ぼけてないで起きて下さい。」イライラ

時雨「ガングート、仕事だよ。」ユサユサ

スパ「おぅ、熊公。動けや。」イライラ

スパ「まったく新入りがたるんでやがる。雪姉さん〆ときますか?」

明石(自分の過去を棚にあげちゃってまぁ。)フホッ

ガン「あっ、夢かぁ……。」ホロリ

ガン「いい夢だったなぁ。」ベソベソ



ガングートが食堂での転寝から目覚めればそこは栄光ある祖国ではなく地獄の如き現実。

ちょいと気を抜けば前からだけでなく後ろからも『 うっかり 』『 流れ弾 』が飛んでくる楽しい職場。



秋津洲「カッカッカ!残念だったかも!これが現実かも!」

長門「スパイ行為がばれて解体(銃殺)されなかっただけでも良しとすべきだろ。」

長門「まっ、仕事を頑張るといい。ここは初めての人にも優しいアットホームな職場だからな。」ポン

ガン「うわーん。」(泣)

不知火「司令、彼女は何を?」

提督「あぁ、内通者を炙り出す為に仕掛けてた

   どうでもいいネタに食いついたアホというか残念さんだ……。」

不知火「どうでもいいネタ。」

提督「あぁ、元帥がかつらというジョークネタだ。」

不知火「かつら……。」

提督「仕掛ける方も仕掛ける方だが掛かる方も掛かる方だよ。まったく。」

提督「スパイを地位ある人間と入れ替えるのに身体的特徴は重要だと言ってもな。」

不知火「間抜けですね。」

提督「まったくだ。」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 01:03:44.24 ID:ANDDdQ3d0
以上で本日分の更新終了です
時代劇ネタなんてやってるから更新が遅くなるんだよ!と怒られそうですが
遅くなりお待ちいただいていた読者の方へはお待たせして申訳ありませんでした
オリジナルエピソードが多かったので今回のウォースパイトの話は元ネタに即した感じで作成しました
OVAにもなっていたと思います
そういえば、エリア88みたいにキャラがポンポン死ぬ漫画は最近少なめですね
1自身は艦これ2次で色々書いてますがキャラクターの死については
きちんと意味有る死なせ方をするのであればオッケーとする感じです、死なせるなら格好よく役割を持って死なせたいですね
ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました
また、前回の更新以降レスをたくさんいただき本当にありがとうございました
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 01:26:28.37 ID:TtjPLA8A0
おつおつ
それにしてもやりやがったが、その前に明石が仕込んでたのって保険?もっとえぐいの?
…あと海外勢は派手にやらかす宿命なのかw
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/22(日) 21:39:19.14 ID:RijcMmnQO
イギリスのヴァンガードが使ってたボフォースの転用ならそのライセンス関係で口利きしてもらったとかじゃないの?
スパ子さんそこそこの身分の出身だし
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 02:05:35.77 ID:rmPTD1ZgO

Freddy Fazbear's Pizza出前始めたのか
配達員はFoxy以外でお願いします
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/27(金) 12:17:56.34 ID:1qMkjndu0
海外勢で88鎮守府に来た理由が判明してるのってスパ子とガン子だけっしょ。

それにスパ子は味方殺しだし、ガン子の内容が残念なスパイ行為と比べるのは流石にスパ子が可愛そうだと思うの
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/02(水) 12:14:49.67 ID:oh37T7z4O
>>172
グラーフ「視聴者に忘れられた…泣きっ面に蜂とはこの事か」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:17:38.64 ID:SaFztU7r0
>135 第五話×→第六話○ の間違えです
誤字が誤変換が無くならない相変わらずの残念クオリティ……
今回のエピソードは時代劇の短編でボツネタを追加した際に告知しておりました
鎮守府創設初期のお話です、ボツネタって何?という方は 必殺! 仕事人! の艦これSSをお読みいただけると幸いです
では、本日の更新をさせていただきます
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:18:09.75 ID:SaFztU7r0

第七話 嘘つき兎と泣き虫駆逐艦 前編
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:19:03.15 ID:SaFztU7r0

それは88鎮守府が出来てすぐのお話し。

鎮守府に所属している人数がまだ少なかった頃の話。



雪風「しれぇ!雪風、帰って来ました!」

提督「お疲れ。戦果報告は不要だ。

   お前はいつも最善手で最高の結果を出してくれる。」

雪風「信頼してくださりありがとうございます!」

提督「お前になにかある様じゃここも終わりだ。尻に帆をかけて逃げるさ。」ナデナデ

雪風 エヘヘ

提督「にしても、お前も俺について来なくても良かったんだぞ?」

雪風「しれぇは雪風を幸運艦雪風ではなく駆逐艦雪風として見てくれました。」

雪風「雪風を雪風の能力のみで評価してくれたしれぇはしれぇが初めてです。」

雪風「実力で公平に評価してくれる限り雪風はしれぇに付いていきます!」

提督「面と向かって言われるとなかなかおもはゆいな。」フフフ

提督「食事にするか……。」

雪風「はい!」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:19:55.94 ID:SaFztU7r0


食堂



不知火「司令、お疲れ様です。リストが届きました。」

提督「ありがとう。不知火も食事にするか?長門は一緒か?」

長門「あぁ、提督。ここに居たか今度の補充兵なんだが。」

提督「まぁ、食事を先にしようや。飯だけはいいぞ。」

不知火「司令、次回の補給と共にくる補充兵ですが志願兵も幾人かいます。」

長門「後は死刑、服役免れの懲役兵だな。いずれにしろはみ出し者だ。」

提督「解体で死ぬより此処に来て少しでも長生きする事を選ぶ連中だ。」

提督「多少なりとも灰汁が強くないと面白くないだろ。」

雪風 モグモグモグ

提督「にしても雪風はよく食うな。これも食べるといい。」

不知火「司令、食事はしっかりと食べないといけませんよ。」

提督「俺は食が細いんだよ。勘弁してくれ。」



不知火から受け取った書類をペラペラとめくりながら

88鎮守府へ送られてくる囚人達を確認する提督。
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:20:34.37 ID:SaFztU7r0

提督「ほとんどがワンウィークだろうな。」

不知火「不知火もそう思います。」

雪風「ワンウィークですか……。」ショボン

提督「あぁ、すまない。話題が悪かったな。」

提督「長門、不知火。すまないが続きは後程執務室で頼む。」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:21:33.52 ID:SaFztU7r0

執務室



提督「さてと、話の前に一服いいか?」

長門「駄目と言ったら?」

提督「遠慮するさ。俺はコブラが好きだからな。」

長門「宇宙海賊か。」フフ

提督「あぁ、スターバックスでは流石に遠慮するそうだ。」フフ

長門「成程。禁煙の場所では奴も葉巻は控えるからな。」

提督「あぁそうだ。」

長門「ならば遠慮してくれ。」

提督「そうか。」ヤレヤレ

不知火「そうです。健康は大事です。」

提督「そうか。」ショボン

不知火「はい。」

180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:22:52.72 ID:SaFztU7r0

提督「本題に入ろうか。何人使えそうだ?」

長門「教導をやっていた不知火との意見交換での結論だが来た内の1割残ればいい方だな。」

長門「他は葬儀屋を手配する方が早い。」

提督「………。ここの危険度を考えればもう少し少ないと思っていたが意外と多いな。」

長門「大甘採点の私と辛口採点の不知火とでの中間だから問題ないと思う。」

提督「そうか。足して割っていい塩梅か。」

提督「雪風がまた悲しむなぁ……。」

長門「提督よ、あの雪風は『 死なず 』の雪風なのか?」

提督「やっぱり気付いていたか。

   雪風はその渾名で呼ばれるのは好きじゃないから止めておいてくれ。」

不知火「私からもお願いします。」

長門「言われずとも。纏う雰囲気が駆逐艦のそれじゃなかったからな。」

長門「ただ、あの雪風を使いこなすとは。提督よ。お前の過去もその内聞かせてくれ。」

提督「そのうちにな。」

提督「まぁ、渾名の由来となっているが雪風は色々移動が多くてね。」

提督「俺が丁度10人目の提督だそうだ。だけに、仲間を大切にしたがるんだ。」

長門「10人目。」

提督「あぁ、鎮守府機能を失うような敵の攻勢にあった激戦区ばかりを経験している。」

長門「問題があるのか?」

提督「誰か死ぬ度に人知れず物陰で泣くような繊細な奴なんだよ……。」

提督「そして、仲間を大事にするくせに仲良くなりたがらない。」

提督「腹の底を見せ合える相手になるのは大変だぞ?」

長門「私は仲良く出来ているが。」

提督「あいつがお前を認めているからだよ。良かったな。」

長門「そうか、誇らしいな。」

不知火「話題を戻しますが懲役組みで見所がありそうなのはこの数人だけです。」



ペラペラと艦種、艦名、略歴を確認する提督。

そして、ある駆逐艦の所でその手が止まった。



提督「駆逐艦卯月か。ほう。睦月型のカタログスペックをハンデにせず戦うか。」

提督「面白そうな奴じゃないか。」

不知火「雪風とペアを組ませてみようかと思っています。」

提督「いいぞ。それで進めてくれ。」
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:24:24.65 ID:SaFztU7r0

数日後 大会議室



室内には志願組みと懲役組み双方が集められ鎮守府での特殊システム。

懲役の軽減や脱走時の取り扱いについて、武器、弾薬の供給について説明がされていく。



提督「事前の契約状況を確認すると全員傭兵契約を結んだようなので

   それを前提として話を進めるぞ。」

提督「燃料や弾薬はお前達に支払われる給料からそこに居る明石を通して購入してくれ。」

明石「どうぞ宜しく。」

提督「この明石はお前らがいた鎮守府のアイテム屋と熟練度が違う事を先に言っておく。」

提督「何かして返り討ちにあいミンチになっても俺は関知しない。面倒は嫌いなんでな。」



そして、鎮守府での細かなルールや契約についての説明が終わった後、質疑応答の時間。



卯月「質問。懲役組みが武装蜂起して鎮守府を乗っ取ったらどうなるぴょん?」

提督「やってくれてかまわんぞ。出来るならな。」



提督があっさりとした口調で言い終わるより前に

質問した卯月の頭には既に数名の砲口が突きつけられていた。



提督「定時連絡が無くなると指揮官死亡でここを丸ごと、

   地図から消す勢いで空爆、砲撃する事が事前の取り決めで決まっている。」

提督「俺を人質に立て篭もるつもりの奴に先に言っておくが

   俺の首は南瓜祭りのランタン程度の価値もないからな。」

提督「それに脱走も含めて反乱分子には自動的に多額の賞金

   もしくは刑期軽減報酬の報酬がつけられる。」

提督「金か懲役年数の軽減目的の奴には寧ろ出てくれた方がありがたいんじゃないのか?」

提督の言葉に色めき立つ志願組みと不敵に笑う一部の懲役組み。

提督「そういう事だ。余計な事は考えずに仕事に当たってくれ。」



そういい残し提督は部屋を出て行ったのだった。



卯月「碌でも無いぴょん……。」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:25:17.92 ID:SaFztU7r0


数ヶ月後 鎮守府埠頭



鎮守府の面子は殆どが入れ替わり最初から残っていた者も極わずか。

任務を終えた卯月は埠頭の係留杭に腰かけ水平線に沈む夕日を見ながら黄昏ていた。



卯月「命が紙切れ一枚より軽い所だぴょん……。」

長門「なればこそ生きている事を楽しめよ。」



卯月が声に気付いて顔を上げれば生ける伝説、

但しここに来るまでは死んだと思っていた戦艦長門のネームド。



卯月「長門かぴょん。今日の戦闘でも死ななかったぴょん。」

長門「仏との縁より閻魔との縁が強かったらしくてな。」

長門「八大に就職する前に現場経験を積んで来いというありがたい天の采配だ。」

卯月「へらず口ぴょん。」

雪風「卯月さんは演技していますよね。」オツカレサマデス



長門との会話に続くは一緒に出撃をしていた雪風の言葉。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:25:58.61 ID:SaFztU7r0

卯月「 ! 」

卯月「いつから気付いていたぴょん?」

雪風「最初の顔合わせで雪風のファンネルマークに一瞬驚きの表情を見せた時からです。」

雪風「雪の一文字だけをファンネルマークに登録している雪風は私だけです。」

雪風「そして、そのマークを知っているのは雪風と何処かで接点のあった艦娘。」

雪風「雪風は自慢ではありませんが激戦区ばかりを渡り歩いています。」

雪風「どの激戦区も一瞬の油断で閻魔が拝める場所でした。」

雪風「それらの場所を生き抜いた艦娘が並みの筈がありません。」

卯月「降参。『 死なず 』と言われた貴方には敵わないよ。」



白旗をあげましたといった表情の卯月の口調はいつものそれではなくなる。

184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:27:33.28 ID:SaFztU7r0

卯月「ラバウルで隣の戦区で戦って偶然命を拾ったの。」

卯月「ラバウルも酷かったさね。私が居た鎮守府も塵になったし。」

卯月「命をどうにか拾った時に思った。」

卯月「卯月って艦娘は『 頭うーちゃん 』なんて馬鹿にされるくらい

   アホキャラ扱いされているのならそれを演じ、

   味方に戦闘に使えないと思って貰った方が

   後方任務ばかりで楽なんじゃないかって。」

卯月「艦娘それぞれに若干の個体差があるように私の語尾も後付のキャラ付けよ。」

卯月「演じるうちに地になりそうで嫌気もさしていたけどね。」

雪風「随分と苦労されたんですね。」



雪風の言葉に手をひらひらと振り否定する卯月。



卯月「他の艦娘卯月に倣い嘘をついて後方任務に回っていたから雪風程は苦労してないよ。」

卯月「最もその嘘がばれて敢闘精神無しの烙印を押され、

   挙句に見に覚えのない失敗諸々込みの軍法会議で懲役50年。」

卯月「収容先は、お偉いさんが艦娘を食い散らかす為にある様な所でね。

   どんな変態プレイでも修復材ざばぁーで元通り。」

卯月「異物挿入、四肢切断なんて序の口と聞いて頭がいかれてると思った。」

卯月「それなら死に場所が選べるこっちの方がいいかと思ってこっちを選んだだけ。」

雪風「そうですか。」



さしだされる雪風の手。



卯月「握手?」

雪風「改めてです。

   お互いに命を預ける相手であれば隠し事無くいける事が重要と雪風は考えています。」

卯月「あぁ、成程。それじゃぁよろしくお願いするぴょん。」

雪風「……、口癖が地になるって怖いですね。

   後、雪風は死なずの渾名は好きじゃないです。」ニギニギ

卯月「……、うっかりするとどうしようもない。渾名については了解。」ニギニギ

卯月「これから改めて宜しく。」ニコニコ

雪風「こちらこそです。」ニコニコ
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:28:33.09 ID:SaFztU7r0

それからの雪風と卯月のコンビは報酬金ランキングの駆逐艦部門で常に上位に有る様になった。

鎮守府が開設して半年を過ぎる頃には面子の入れ替えは相変わらず激しいものの空母や戦艦。

軽巡、重巡、軽空母、潜水艦、志願、懲罰といった種別に関係なく戦力は充実していった。

そしてそれに合わせて鎮守府に寄せられる任務という名の無茶難題、

依頼という名の民間協力要請も右肩上がりに増加していた。
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:29:59.76 ID:SaFztU7r0

ある日の埠頭



提督「先客か。」



提督が一服の為に埠頭までやって来ればそこには咥え煙草で水平線を見つめる卯月が居た。



卯月「なんだ司令官か……ぴょん。」フィー

提督「実にわざとらしい語尾だな。」

卯月「面倒だから素でいい?」

提督「かまわんよ。お前も喫煙習慣が?」



胸元から煙草を取り出した提督の紙巻に慣れた手つきで火をつける卯月。



卯月「見た目に精神年齢が引き摺られる事がないからね。」

提督「今日び喫煙者は肩身が狭くていけない。

   ついには執務室ですら禁煙になってしまった。」ヤレヤレ

提督「それはそうと雪風と上手くやってくれている様で感謝する。」

卯月「………。」

提督「生き残ればそれだけ他人の死に際に立ち会う事が多くなるからな。」

卯月「死神だの三途守だの言われているのは知っている。

   でも、あの娘。見た目に精神年齢が引っ張れているようには見えないけど?」

提督「強くあらんとしているからだろうな。」

提督「それでお前はどうするんだ?」

卯月「どうとは?」

提督「任務に仕事で稼いだ金は結構な金額になっている。」

提督「今のペースで行けば来年の今頃には懲役分の金は払えるぞ?」

提督「払った後を如何するかはお前さんの勝手だがな。」

卯月「そうだねぇ。

   まぁ、無一文で此処を出て行くのもあれだから終わっても暫くは働くと思うよ。」

提督「その時は一声掛けてくれ。契約の切り替えが有るからな。」

卯月「分かったぴょん。」

提督「お前、どっちが素なんだよ。」フフ
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:31:47.16 ID:SaFztU7r0

卯月「長い間キャラを演じているとどっちか分からなくなるのよ。」

卯月「それより司令官。新しく空母が来るって聞いたけど?」

提督「志願組みだがな……。」

卯月「ワンウィークかぁ……。」



適合者が艤装との適正試験を経て艦娘として海軍に入る。

しかし、よく言えば公務員。

賃金、身分の保証、福利厚生はしっかり出来ているし世間での最低水準よりはずっといい。

だが、あくまで最低よりなのだ。

稼ぐ理由があるから海軍を志願した者には圧倒的に足りないのだ。



卯月「雪風と潜水艦狩や輸送船団護衛にも飽きてきたと話をしていた所。」

提督「ん?長門やそれ以外にも空母連中とかと

   合同で敵泊地強襲とかもよくやってなかったか?」

卯月「司令官、察してよ。」

卯月「女心の分からない朴念仁って言われない?」

卯月「大きな仕事を請けて儲けるには面子の入れ替わりの無いチームを作らないと。」

提督「今度来る空母をチームに入れて飛躍を狙うつもりか。」

卯月「Exactly」

提督「随分と丁寧だな。」フフン

提督「まぁ、お前が面倒みてくれるなら俺も頭を悩まさずに済む。」

提督「宜しく頼むよ。」



そう言いフィルター部分まで燃え尽きた煙草を消すべく携帯灰皿を探す提督。
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:32:26.37 ID:SaFztU7r0

提督「ん……?」ペタペタ

卯月「どうした?」

提督「何処かに落してしまったらしい。」

卯月「それならこれを使うといいぴょん。」



自分が咥えていた煙草を消し提督に使えと自らの携帯灰皿を差し出す卯月。



提督「兎型のか。随分ファンシーな小物だな。」

卯月「うーちゃんも女の子ぴょん。」

提督「こきやがれ。女の子は煙草なんて吸わねぇよ。」



受け取りながら卯月の女の子発言を否定する提督。



卯月「ぷっぷくぷーだ。」ベー



そう言い残し去っていく卯月の背中を見送り携帯灰皿を返し忘れた事に気付く提督。



提督「……、まぁ、そのうちでいいか。」



そう考え提督は卯月から借りた携帯灰皿をズボンのポケットに仕舞った。

189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/05(土) 00:37:48.16 ID:SaFztU7r0
以上で本日分更新終了です
設定をお借りしているエリア88っぽい雰囲気を維持出来ているのかなぁと考えながら書いています
オリジナルエピソードの方が多いので何ともなのですが……
かと言ってまるっとそのままでも海と空の違いがあるしなぁと思考の袋小路へ
更新が最近は今までより遅れがちでお待ちいただいている方へは申訳ありません
次回更新はなるべく早くとは思っています、本日もお読みいただきありがとうございました
乙レス、感想レス、励みになっています、レス書き込みありがとうございます
では、また次回もお読みいただけると幸いです
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/05(土) 01:06:14.17 ID:CPxkHb7A0
おつおつ
何もかもを完璧にとはいかんから、やりたいように適当な塩梅が良いと思うよw
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/05(土) 09:24:00.59 ID:aDhDnmxaO
ポーラの壊れっぷりが好きかも!

気が向いたら、掘り下げて欲しいかも!
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/05(土) 23:04:10.77 ID:dcjuRa1A0
明石が来たとこは省略か…
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:32:53.56 ID:s6Hdwak90
一週間に一度くらいの頻度で更新できたらなぁと考えつつ
本日の更新に参りました、お時間宜しければお付き合いいただけると幸いです
卯月編は次回で最後でございます、ほっこりとした感じでの進行、たまにはいいかなぁと
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:33:50.93 ID:s6Hdwak90

第八話 嘘つき兎と泣き虫駆逐艦 中編
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:37:56.59 ID:s6Hdwak90


ブ ――――――――――― ン  ブロロロロ


提督「秋津洲、港から倉庫に行くところか?」フカー



キッ!



秋津洲「そうだよ!倉庫に行ったらそのまま納品書を執務室の不知火に届けに行くかも。」

提督「そうか。ついでに俺も執務室に納品してくれ。」ヨッコイショ



秋津洲が運転するターレットに繋がれた荷車の上に腰掛ける提督。



提督「一服しに港まで歩いてきたが本館建屋に歩いて帰るのがめんどうくさくなてなぁ。」

秋津洲「煙草は駄目だよ!」



胸元をごそごそとしていた提督を一瞥し先手を打つ秋津洲。



提督「今日入った荷物か。」ヤレヤレ、キンエンカ

秋津洲「うん!明石さんがゴニョゴニョした艤装かも。」



ゴニョゴニョとは出所不明の試験艤装のちょろまかし。

日本から技術供与を受けた国も最近、艤装の開発に成功し実戦配備が進んでいる。

そんな中、実戦配備前の試験用である為に量産性を無視し、

スペックを追い求めた艤装なんかも当然存在する。

所謂、Xナンバーが割り振られる艤装である。

そして試験、実験用艤装は役目を終えれば機密保持の為に厳重な管理の下処分される。

話は変わるが、提督の鎮守府は稼動を始めて今の所、葬式が出ない日は無い状態である。

提督曰く後1年もすれば実力の有る奴、無い奴が篩い分けられるだろうとの事だが。

そして、死んでしまった娘の艤装は可能な限り回収される事となっている。

なにせ五星紅旗を掲げた船が海上警備といいつつ大破艦娘の強奪や

深海棲艦の死体漁りを行っていたりする現状が有る以上

戦後を考えれば機密情報が漏れるのは少ない方がいいのだ。

そして資源が少ない我が国では素晴らしき、

もったいないの精神もあり再使用可能な艤装は整備、修理の上で次の艦娘へ提供されるのである。

後はお分かりだろう、この回収した艤装の登録番号と試験艤装の番号を

チョイチョイと入れ替えてあら不思議、艦名と、がわは同じだけれど

スペックがおかしな日本艦娘艤装が一丁あがりという訳なのだ。

もっとも最近は艤装の提供元も心得たもので

一般的な鎮守府の稼働率ではないここの稼働率に目をつけ

耐久試験代わりに明石に『 スクラップ 』で処理したとして艤装を提供していたりもする。

見返りは深海棲艦へ使った実戦データーである。

非合法取引なのに信用第一というおかしな信頼関係もあったりするのでお笑いだ。
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:41:12.57 ID:s6Hdwak90

提督「まぁ、あんまりおかしな物にしなけりゃ何も言わんがね。」

秋津洲「三個一、四個一が珍しくないから今更かも?」

提督「だな。まぁ、リサイクルは大事って事だな。」



艤装のリサイクルは時として部品取りなどして

幾つかを一つにした物を新造艤装として申請する事もあった。

その時は基となった艤装以外の登録番号を抹消する事になる。

だから、がわの再利用などで新造番号の登録を行う提督は明石達のやっている事を知っているのである。

明石商会用に割り当てられた倉庫の一棟の中までターレットを運転し

棚前で荷車から荷物を降ろし納める秋津洲。



秋津洲「提督。それとってかも!」

提督「ん。これか?」



荷車に腰掛けたままの提督をまるで自分の小間使いの如く使う秋津洲。

暫くの間手伝い「んあぁー」と倉庫外で親爺臭く腰を伸ばす提督は気付いた。


197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:42:19.89 ID:s6Hdwak90

提督「雪風。お前、また泣いてるのか?」



倉庫と倉庫の間の隙間で身を縮めて声を押し殺して泣いている雪風に。



提督「雪風。」

雪風「あっ……。」グス

提督「また一緒に出撃した娘が沈んでしまったか?」



哨戒だけさせていた本当に初期の頃と違い今は艦隊を組んで出撃している雪風。

荒くれ、逸れ者ばかりで挑めば当然の如く沈む者も多く

提督は把握しているものの今まで雪風に直接尋ねる事はなかった。

雪風がどんな反応をするかを知っていたから。

提督として職務を続けていれば艦娘として志願した者の遺族へ会う事も有る。

そういう場面で述べる言葉というのは当然、士官として知っている。

だが、仲間が死んだと肩を震わせて声を押し殺して無く幼子にかける言葉は何であるべきか。



提督(数をこなしていても慣れるものではないな。)フゥ

卯月「あっ!雪風こんな所にいた!ご飯食べるよ!」

提督「おう。」



提督がなんと言葉をかけたものかと考えていたら卯月がやってきてそのまま引き摺っていった。
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:43:12.93 ID:s6Hdwak90

卯月「艦娘も生まれてくればいつかは死ぬ、

   それが早いか遅いかだけぴょん。」

卯月「どうすれば仲間が死なないかなんて馬鹿の考え休むになんとかぴょん!」

卯月「ほら!今日は新メンバーが来る日ぴょん!」



ずるずるという擬音がぴったりな状況で雪風は連れ去られていった。



提督「ああいった強引な奴がいれば雪風も笑っていけるのかもなぁ。」



そんな益体のない事を見送りながらぼんやりと提督は考えていた。



秋津洲「提督、もう少し手伝って欲しいかも!」

提督「お前なぁ……。まぁ、いいか。」

秋津洲「手伝ってくれたら御礼に後ですっごい物あげるかも?」

提督「ほう。まぁ、期待しないが頑張ろうか。」

199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:44:17.81 ID:s6Hdwak90

執務室



卯月「司令官。おつかれぇぃ↑」



ハイテンションな卯月がドアを蹴破る勢いで入ってくる。



提督「………。」

卯月「カップ麺?」

提督「おう。秋津洲の手伝いをしたら1箱くれてな。珍しいだろ?」

提督「10分うどんとやらが美味いらしい。」

卯月「食堂で食べないの?」

提督「募集をかけちゃいるんだがなぁ、

   今の時間を受け持ってくれる調理士が来ないんだ。」

卯月「ふぅん。じゃぁ私が簡単なのつくってあげるよ。」

提督「料理できんのか?」

卯月「基本艦娘は出来て当たり前よ?まぁ、中にはあれなのもいるけどね。」



話をしながら執務室横の給湯室扉を開けたまま、室内にある台所で冷蔵庫内のあり物で料理を始める卯月。
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:45:32.23 ID:s6Hdwak90


卯月「料理がプロ級の比叡も居れば磯風だって居るし。

   うーちゃんが前いた所の比叡はお金取れるレベルだった。」

提督「ほう。」

卯月「ジョエル・ロブションの店で働いていたとか嘯いてたけど。まぁ、料理は美味かったよ。」

卯月「私も戦後を考えて料理を基礎から教わったから

   戦後は稼いだ金で店でもやりたいねって思ってる。」

提督「やめとけやめとけ、食い物屋の8割は1年持たずに潰れるのが関の山だ。」

卯月「じゃぁ、適当な男でも捕まえて永久就職するかぁ。」

提督「捕まるといいな。」

不知火「はい、不知火もそう思います。」ズズー

不知火「このうどんは少々伸びてしまっている気もしますが。」ジロリ



この獲物は私のだと卯月を睨む鋭い眼光に提督は気付いていない。



卯月「……、でっできました。」



その殺気籠もった視線に震えつつ軽食を差し出す卯月。



不知火 ぐぬぬ! モグモグ

提督「うん、美味いな。卯月はいい嫁になれるぞ。……、と忘れていたな。」モグモグ

提督「何用があって来たんだ?」



提督の言葉に目的を思い出した顔をする卯月。

201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:46:49.75 ID:s6Hdwak90

卯月「そうだった、この空母をメンバーに入れたいの!」

提督「雲龍。」



だんと執務机の上に叩きつけられたのはドラフト指名用紙。



不知火「先日相談いただいた際にお見せした資料ですね。」

提督「……、雲龍か。」



現在の卯月のチームメイトのバランスで言えば間違いなく必須の空母勢。



提督「卯月。」

卯月「ぴょん。」キラリーン☆

提督(可愛く取り繕う必要はないんだがな。)

提督「面倒みてやってくれ。」

提督(にしても、実に濃い面子があつまったチームになったな。)

提督(うちに集まってきた連中の生き残りで癖のある奴らばかりを集めてやがる。)

提督「面白い。新旧ごちゃ混ぜ。そこに最新鋭空母か。なぁ、不知火。面白そうだな。」

不知火「雪風が泣く事が減るなら不知火は何でもいいです。」

提督「お姉ちゃんしているんだな。」

不知火 ぬい! フンス
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:47:37.16 ID:s6Hdwak90

その後、チームが結成してから暫く。

彼女達は民間からの仕事を請け多額の報酬を得ていた。



卯月「金剛ネキは砲撃準備!」

卯月「雲龍はタンカーの艦橋を攻撃準備!停船しなかったら爆撃!」

卯月「天さんは護衛艦娘に停船勧告及び退避勧告を複数チャンネルかつ平文で!」

卯月「後で聞いていないなんていわれないようにね!」

卯月「加古ちゃん!」(無線)

加古「あいあいよー、雪風とお客様をエスコートしてるよー。」(無線)

卯月「やるぴょん!」



ザッザリザリザリ

卯月が拡声器をもってタンカーへ向けて停船勧告を行う。
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:49:14.19 ID:s6Hdwak90


「あっ、あぁー……。こちら○×カンパニーの債務取立てを頼まれた

 88鎮守府所属卯月ぴょーん。」

「○○国保有××資源公社への○×カンパニーの投資資産を

 ○○国政府が行った強権的国有化に対し国際刑事裁判所が

 ○×カンパニーへ対抗措置を認めた為、貴船を差し押さえするぴょん。」

「停船しない場合は軍事行動が認められているぴょん!

 なお!捕虜の取り扱いについては投降した場合において

 ジュネーブ条約における捕虜、民間人の取り扱いに基づき丁重に取り扱うぴょん!」

天龍「卯月、ありゃ停まるかね?」



タンカーは停まる素振りを見せず寧ろ海賊と判断したか増速する選択をしたのか煙突からは黒煙が上がり出す。



卯月「ネキ!ブリッジの端をやっちゃって!」

金剛「Yes!死ねやぁ!」



戦艦の砲撃が見事に決まり轟音と共に艦橋の端が吹き飛び脅しではないと判断したタンカーは停船した。



卯月「まぁ、航行に支障はないでしょ。」



そして、数十分の後、プレジャーボートより少し大きめのボートが雪風と加古の護衛つきで近づいてくる。
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:51:13.07 ID:s6Hdwak90


「いやぁ、お嬢さん達すごいねぇ。おじさん感心しちゃったよ。」

卯月「あんたが○×カンパニーの代理人?」

「と、これは失礼。私、蔵王の柳と申します。」コレメイシ



眼鏡をかけたいかにもジャパニーズビジネスマンと言った風体の男が畏まった様子で名刺を指しだす。



卯月「へぇ、超大手の総合商社じゃん。いつから町金の真似事を?」

柳「いやね。差し押さえた石油製品。まぁ、ナフサなんだけどね。」

柳「差し押さえの実行部隊に後の護衛も

  うちが手配するから割引価格で一部債務譲渡して貰ったんだよ。」

卯月「日本の総合商社は利益が出るなら悪魔とでも商売しそうだね。」

柳「おたくの明石さんと私が個人的に知り合いじゃなかったらうちも買わないよ。」

柳「もう少ししたらうちが手配したボースン達が来るからもう少し待って貰える?」

柳「後、出来れば次の目的地まで護衛をお願いしたいかなぁと。」ニコニコ

卯月「うーちゃん達の仕事はここまで。後は追加料金。」

柳「5000ドル。」

卯月「一人に付き2万。」



その後、暫しの間、価格交渉が熱く行われ。



卯月「12500。これ以上はビタ一文もまけないぴょん。」



降参と相手が両手を挙げて見せた事で交渉終了。



卯月「お宅はいい取引をしたぴょんよ?」

柳「そうありたいね。」

205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:52:25.84 ID:s6Hdwak90

鎮守府埠頭



卯月「今日も儲けた!」

金剛「卯月が商売上手なおかげで儲かるネー。」

天龍「このまま行けば来月には俺はここを卒業出来るぜ。」

卯月「またチームメイト集めはだるいから天さん契約延長してよぉ。」

天龍「金は十分稼いだからな。お断りするぜ。」

卯月「また軽巡探しかぁ。」

金剛「私も順調に稼げてるネー。でも、もう暫くは世話になるヨー!」

卯月「ネキ。愛してる。」



護衛を終えた一同は夜も遅くに帰ってくる。

そして、そんな一同を待ちわびたかのように提督は港で待っていた。



提督「全員お疲れ。

   お前さん達が現地で請け負った護衛の報酬払い込み確認の紙を持って待っていたぞ。」

雲龍「ありがとうございます。」

雪風「しれぇ!ありがとうございます!」

提督「礼にはおよばんよ。出番が欲しいだけさ。」ユキカゼノアタマナデナデ

提督「後な、今月のチーム別戦果ランキング1位の報酬だ。

   休暇3日もしくは1000。好きなのを選べ。」



そう言い残し提督は各書類を卯月に渡し去っていった。
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/12(土) 00:53:50.43 ID:z9suzpUxo
ELANも懐かしいな
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:54:00.04 ID:s6Hdwak90

卯月「ここはなんだかんだで艦娘が優遇されているよね。」



去り往く提督の後姿を見送りなんとなく出た感想。



雪風「しれぇは艦娘をぞんざいに扱って後ろ弾くらう愚を冒すより

   気持ちよく働いてもらって戦果をあげた方が賢いって

   以前お話をした際に雪風に語ってくれました!」

金剛「確かにその方が賢いネー。ここの提督は信賞必罰がしっかりしてるヨ。」

加古「あぁ、賢い。あたしが前に居たところなんか働いても働かなくても最低保障があったもん。

   それならだらだらしていた方がずっといいってなる。」

加古「でもここは戦果稼がないと即あの世だからね。

   まぁ、あたしは志願で好んで来た口だから稼げるここの仕組みは大好きだね。」

天龍「俺なんかやる気はあっても旧型で非力だからってことで前線に出してもらえなかったからな。」

天龍「自分で戦場を選べて尚且つがっつり稼げる。前の糞鎮守府から比べれば天国だ。」

天龍「んでもって現場での裁量がでかいから

   今日みたいに追加の仕事もその場の自己判断でいけるからありがてぇ。」

加古「確かにねー。普通だったら鎮守府に連絡して許可貰ってーって感じで時間掛かるよねー。」

加古「ただ、本当に実力がないと生き残れないけどね。」

金剛「確かにその通りデース。指示を貰う事に慣れているとここでは生き残れないネ。」

金剛「雪風は提督との付き合いがここに来る前からあったと聞きましたが

   此処に来る前はどんな提督だったデス?」
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:56:30.47 ID:s6Hdwak90

雪風「負けもありましたが大きな負けはなかったです!」

卯月「………。」

金剛「………。」

天龍「まぁ、常に勝ち続ける提督なんていねぇわな。」

加古「どうせ、なんかやらかして左遷くらったんだろうと思っていたけど

   負けがあるんなら意外と並の提督なのかもね。」



雪風の言った言葉の意味を金剛と卯月は正しく理解。



金剛(被害を最小限に抑える、被害を数字で考えられる提督デスか。)

金剛(優秀ゆえに上に煙たがられたタイプですネー。)

金剛(更にいえば、ここに左遷される原因となったのも

   大きな負けをした訳では無いというのが別の原因がある事を物語ってるデース。)

卯月(数字の先にある命を敢えて無視出来るタイプかぁ。怖いタイプだね。)

卯月(戦略参謀でもやっていたのかな。触らぬ神になんとやらだねぇ。)

卯月「それじゃぁ今日は解散で!明日もよろしくぴょーん。」

雲龍「あの、こんなにお金いただいてもいいのでしょうか?」
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:58:19.55 ID:s6Hdwak90

ようやっと声を上げたのは先程まで提督から渡された振込み通知書に書いてある金額に目を回していた雲龍。



卯月「おぅ。何事かと思ったぴょんよ?」

金剛「雲龍は志願だったネー。」

雲龍「あっ、はい。弟妹達を食べさせるために志願したのですが

   お金がとても足りなかったのでより稼げると聞いてこちらへ来ました。」



ずびしっとでも音が聞こえてきそうな勢いで手をあげ此処へきた理由を述べる雲龍。



金剛「弟妹達の生活費稼ぎ。大変ネー。」オウ

雲龍「はい、ですが稼ぎ頭のチームにお誘いいただきありがとうございます、です!」



ぐぅ〜。



卯月 ブホッ

加古 ブハハ

雪風 クスクス

雲龍「あっ。」



照れて赤面する雲龍。



卯月「あっ、あぁー、うん。ごめん、なんか意味不明の笑いが。」フフフッ

天龍「酷い。」フフフフ

卯月「食堂は只なんだからしっかり食べないと。」

加古「でも時間が夜8時までなんだよね。

   夜間作戦の時が閉まってて自販機しか使えないのが辛い。」

天龍「あー、それな。しかも週に1回全休の日があるのがなぁ。味はいいのに。」

金剛「Oh、今日は全休だったネー。調理士増やして欲しいデース。」

雪風「お腹が空いたです……。」



そして、全員の視線が卯月に注がれる。
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 01:00:01.75 ID:s6Hdwak90

卯月「仕方ない。うーちゃんが飯を作ってあげるぴょんよ?」

卯月「ヌーベルキュイジーヌ、特と味わえぴょい。」

金剛「卯月はキャラがぶれぶれネー。」

加古「まっ、余所の卯月と根本から違うよね。」

卯月「ここは演技しなくて素でいれるいい所だと思うよ。

   後、料理はフレンチ以外もいけるから好きなの注文してね。」

卯月「無理なのは作らないだけだから。」

金剛「oh、せめて無理の一言は欲しいデース……。」

天龍「あー、これは作れない料理とか頼むと

   最後まで出てこなくて空きっ腹抱えないといけなくなる奴だ。」

雪風「そういえば卯月さんは煙草辞められたのですか?」

卯月「もともと極々たまーになんとなく吸ってただけだしね。」

卯月「それにいつまでたっても美味しく感じられないし。」

卯月「司令官はあんな糞まずい草の塊を好んで吸ってるけどね。」



そこで何か思い出したように言葉を切る。



卯月「いつぞや貸した携帯灰皿はあげるって司令官に伝えておいてよ。」

雪風「はい!雪風了解しました!」

雲龍「お料理、楽しみです。」



こうして料理上手のリーダーがいる『 チーム兎さん 』はより結束を強めるべく食堂へ向け抜錨したのだった。
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 01:01:45.48 ID:s6Hdwak90

執務室

提督「………そろそろか?」

不知火「申訳ありません。」

コトッ

提督「カップ麺。」

不知火「申し訳ありません。」



席を立ち給湯室の台所を覗こうとすると全力で阻止されそうになるが。



提督「んっ………。」



フライパンの上には卵焼きを作ろうとしたのか失敗したなにか。



提督「そぼろにして刻み海苔を作って、そうだな。挽肉があっただろ。」

提督「三色丼でも作るか。」

不知火「!」

提督「不知火が手伝ってくれたからな。きっと美味いだろうさ。」

不知火 ぬい!

提督(部下の笑顔はPriceless か……、買えるものなら千金積んでも惜しくはないな。)



うきうきと提督の手料理を、箸を握りながら待つ不知火の姿をみてそんな益体のない事を提督は考える。

明日をも知れぬ命なら今を楽しむ事が大事だとある古参の艦娘は言った。

それぞれが食事への思いを馳せながら激戦区の夜は更けてゆく。
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/12(土) 01:09:39.55 ID:s6Hdwak90
以上で本日の更新終了でございます
蔵王の柳に気付かれるとは恐るべし、割とマイナー作だと思ってたのですが
関係ないですが応援させていただいていた方の艦これ2次が無事に新スレたってて一安心の今日この頃です
更新の間がかなり空くかただったので立ってくれぇと念じていたのは内緒
イチャコラ成分の少ない物は書き手が少ないと思うのですが皆様はどう思われますでしょうか
ビバップとかブラックラグーンみたいなのを書く、書こうとしてエタるのはたまに見るのですが
需要はあれど供給が少ないのがなぁ……と思ってしまいます(自分でやれと言われそうなのがまたなんとも)
いつも感想、乙のレスいただきありがとうございます
SS速報自体が過疎なんて事もたまに聞きますがこれからも可能な限りは更新を続けてまいりますので
今後とも宜しくお願いいたします
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/12(土) 01:39:12.33 ID:ApEJ5A6A0
おつおつ
商魂の逞しさとえぐさに笑ったw
次回が怖いなあ…
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/12(土) 10:06:13.41 ID:ALDA5f5LO
うーちゃん料理食いたい
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/14(月) 18:32:39.31 ID:/5RZSnR70
火付けの柳キタか!

……ELANの柳さん蔵王だったか。
ジェントル萬での活躍は認識してたけど、ガッデムには不参加だったのはその影響かよ

次はクレオパトラかアイリーンあたりが出てくれるのかな?
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/14(月) 19:05:31.16 ID:3lu/pmZUo
正確には『座』王だわな
砂の薔薇は相性よさそうだけどアメリ艦娘で固めるか、国内でまとめるか悩ましいな
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/17(木) 11:44:00.45 ID:FugZg+KIO
蔵王… キツネ村行きテェ
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:24:45.40 ID:7jmJC1/U0
ナチュラルに座王を蔵王と勘違いしておりました、読者の皆様申訳ありません…
書く前に読み直しておけという話ですね……
相変わらずのぐだぐだですが、今日の更新もお時間宜しければお付き合い下さいますと幸いです
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:25:42.76 ID:7jmJC1/U0

第九話 嘘つき兎と泣き虫駆逐艦 後編

220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:26:23.25 ID:7jmJC1/U0



以下の者 ポイントD-97にて撃沈の為除籍手続きを行うもの也。

艦娘名 卯月 

2×××年○月×日 外地鎮守府管理番号88より除籍

敵魚雷4本を被雷し航行不能となった所を敵集中砲撃にあい撃沈

艤装登録番号 8-8-U-so800 製造番号 a-L-I4ve5963 両番号を同日付で抹消



221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:28:03.86 ID:7jmJC1/U0


提督「と、終わりかな。」

不知火「艦隊司令部へ送る今月の戦死報告書を受け取りに来ました。」

提督「あぁ、丁度まとめ終わった所だ。これも頼む。」

不知火「今月も多いですね。」

提督「金持ちだろうと貧乏人だろうと教皇だろうと麻薬の売人だろうと。」

提督「死だけは平等に訪れる。」

提督「仕方の無いことだ。」

不知火「その……。」

提督「あぁ、まぁ、その何だ。淡泊と言いたいんだろ?」

提督「感覚が麻痺してくるというより淡々と処理した方が哀しみというのは少ないものだ。」

提督「嘆いても死者は帰らない。俺に出来るのは忘れない事だけだ。」

不知火「不知火も忘れない、いえ、忘れません。」



鎮守府埠頭


提督「チームに居た者は雪風以外みな本土へ帰還か。」

提督「五体満足でここを出られるのは喜ばしい事だ。

   生きている喜びを噛締めてくれ。」

金剛「提督の呼びかけならいつでも応じるネ。」

提督「そういって貰えると嬉しいが此処には二度と来るな。俺が言えるのはそれだけだ。」

提督「志願にしても金を必要分稼いだら自分から地獄を覗くような真似はするな。」

天龍「なんつーか面白い提督だよな。」

加古「提督に最初に会えていたらと思うよ。」

天龍「それな。」

提督「ここでの事は忘れろ。全ては邯鄲の夢だ。良いも悪いも夢だ……。」

雲龍「提督。」

提督「卯月からの頼まれだ。あいつの残した金は全て雲龍に渡してくれと言われている。」

提督「あいつは身寄りが無くてな。雲龍の弟妹への生活費に当ててくれだそうだ。」

提督「それなりの額がある。受け取ってやってくれ、それがあいつへの手向けになる。」

提督「死者に囚われるな。……、俺が言えた台詞じゃないがな。」



そういい提督は鎮守府から日本本土への定期船便が来るのを待ち、

それへ乗り込む一同を見送り執務室へと踵を返したのだった。


222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:30:06.68 ID:7jmJC1/U0


執務室

雪風「しれぇ。」

提督「雪風。辛いと思うが卯月がどうしてああなったのか聞かせてもらえるか?」

提督「知っておきたいんだ。」

雪風「はい。」



そして、雪風は語り始める。卯月がなぜ撃沈したのか。

それは卯月がチームリーダー、艦隊旗艦として作戦を受けた最後の出撃。

その日の波は穏やかだった。



卯月「おおまかに掃討終ったかな。」

卯月「皆!ごはんにするよ!」



そう一声かけて取り出すはカツサンド。



雪風「ちょっと温かいです。」

卯月「艤装の排気煙突付近で食べる前に暖めるのが秘訣なのじゃよ。」フォッフォッフォ

金剛「どこの怪しい仙人デス。」



卯月が取り出したカツサンドを頬張りつつ帰投後どうすると楽しげに会話をする一同。



天龍「にしても本営から仕事を受け持った正規の連中はなんつーかなぁ。」モグモグ

加古「言われた通りにこなすだけだから他に気が回んないのよねー。」モチモチ

金剛「自分の出来る範囲内で好きにやれるのは楽しいですネー。」モグモグ

金剛「けれど敵を潰すほどに金になるのは欲張りすぎるからいけないデース。」コウチャホシイネー



大規模作戦に出た正規軍の露払いを終え先へ進む正規軍の艦隊を見送っての帰路。

その雰囲気は一仕事終えた高揚感もあり和気藹々としたものだった。



223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:31:31.23 ID:7jmJC1/U0


ぞわり

ぬるぬるとした足元からまとわり付く、滑りのある、あの世からの湿った空気。

足を絡め取る手。無数の亡者の手。

水底へ引き摺りこもうとする……。

その、黄泉の入り口から流れてくる瘴気に真っ先に気付いたのは雪風、そして卯月だった。



雪風「黄泉路が開いたようです。」

卯月「血と脂の匂いがする。」



そして、続いて気付いたのは金剛。



金剛「……、Hey! 地獄の釜蓋が開いたネー。死にたくなければ褌締めやがれネ。」

卯月「雲龍。周辺の索敵状況を教えて!」



促され慌てて四方へ索敵機を飛ばす雲龍。



雲龍「向うに死体が沢山。食人鬼がたくさん。」

雲龍「たくさん……。」



青褪めた顔をして索敵機からの状況を伝える雲龍。

艦娘の死体を漁る深海棲艦が食人鬼に見えるのは仕方無い事か。



卯月「チッ。」



盛大に舌打ちを一つ。



卯月「馬鹿が……。」

天龍「卯月。どうする?」

卯月「雪風。」

雪風「はい。」

卯月「どうみる?」



天龍への答えは当然撤収、ただ、艦隊を預かる卯月が考えるのは

自艦隊が被害無く撤収出来るかという事。

自分だけの考えではなく同じ、いや、それ以上の技量にある者に意見を求めるのは当然であり。

雪風の返答は。

224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:33:23.98 ID:7jmJC1/U0


雪風「雪風達だけなら帰りつけると判断します。」



自分達だけなら可能、それが意味する所は。



加古「友軍の生存は無いものと考えますかねぇ。」ヤレヤレ



居たとしても連れ帰るは困難。

金で命を売り買いする一同なれば天秤の針の位置は自ずと決まる。



卯月「全力で海域離脱。敵からの追撃に注意。」



ほんの数十秒で素早く判断を下すが雲龍の動きが鈍かった、

いや、離れたくないようだった。

そして、泣き始めた。



卯月(ちぃ。断末魔を拾ったか。)

雪風(生存者に偵察機を見つかりましたか。)

雲龍「あの、前に所属していた鎮守府の娘が……。」

卯月「同名艦娘の間違いじゃないのと言いたいけど。」

卯月「雪風、私に万一の事があれば旗艦宜しく。雲龍何人残ってる!?」



卯月の発言に誰も異を唱える事無く新たに陣形を組みなおす一同。

軍隊である以上の最低限のルール。

負傷者は可能である限り収容し連れ帰ること。

つまり、気付かなければ負傷者は存在し得ない、しかし、雲龍が気付いた。

そして、何がしかの交信をしている、

故にここで見捨てて行ってしまうと友軍を見捨てたとの『 けち 』が付くのだ。

その『 けち 』は時として軍法会議という結論ありきの軍事法廷への招待状となるから厄介なのだ。


225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:34:53.61 ID:7jmJC1/U0


卯月「生存者はいる!?」



現場へ向かい、いくつかの無線周波数帯で呼びかける。

うっうぅ……。

イ級に食い散らかされたか所々パーツがない艦娘を見つける。



卯月「楽になるための鉛弾なら只だけど?」



相手の目が頷くように閉じたのを確認して卯月は主砲を向け撃つ。



卯月「お疲れ。」



ドン



卯月「救いようの無い馬鹿な作戦をさせられているもんだ……。」

卯月が楽にした相手の装備は何にでも対応できるようごちゃ混ぜに持たされていた。



敵姫級達への情報が不足していたのであろう。

その所為で道中の敵に対応が出来ず無駄死にとなってしまっている。



金剛「大方こうなる事も踏まえての編成ですネー。」

金剛「死んで情報とって来いのやり方ネ。気に入らないヨ。」

金剛「雲龍、前の鎮守府の提督はどんな奴だったデス?」

卯月「ネキ。提督が代わっているかもしれないし聞くだけ詮無いことだよ。」

天龍「さてと皆さんおまた〜?」

天龍「一応周囲捜索で五体満足で生きてたのはこの娘だけ。」



ぺいと天龍が肩から下ろしたのは睦月。
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:37:26.32 ID:7jmJC1/U0


卯月「あー、輸送任務で連れて来られていたぴょん?

   今の状況分かるぴょん?」



卯月の口調で形式上の姉に語りかける卯月。



卯月「体が小さくてよかったぴょん。

   被弾面積が小さくて済む。生き残りやすいぴょん。」



この一言が余計だった。



睦月「あああぁあぁぁぁあああ!!!!」

加古「あらら。精神的にきちゃってたか。」

加古「軽口に反応できないんじゃ寝てもらってた方がいいか。」



笑顔で腹に拳を決める加古。



加古「で、どうする?救援依頼だしても仲間が来るには少し時間かかるよ?」

卯月「どうもこうも、帰るしか無い訳ですから。」

金剛「とんだ残業ですネー。」

卯月「サビ残で残業代が出ないのはどうしたものか…。」



軽口が叩けるうちはまだまだ余裕がある証拠。



金剛「といっても。周囲にだいぶ敵が集まってきてるヨ。」

金剛「禿鷲どもが死肉を漁りに来てるネー。」

卯月「全力で撤退!加古ちゃんは睦月を担いで!」

加古「あいよ。」

卯月「雪風、天さん!露払いは宜しく!うーちゃんは殿をやる!」

卯月「残業代の払いは敵の命!

   うちらの残業代は高くつくと身を持って知ってもらおうじゃないの!」



しかし、敵の追撃は凄まじく帰路であった事もあり、弾薬の残りも少なく

時間経過と共にだんだんと追撃を裁ききれなくなっていっていた。
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:38:33.24 ID:7jmJC1/U0


卯月「あっちにスコールの雨雲が溜まっている。」

卯月「このまま直進すれば最短距離。さてどうする?」

雪風「スコールに紛れて敵をやり過ごし救援を待つのが最適です。

   救援に向かってきている方々に不知火さんが居ますので心丈夫です。」

天龍「だが、敵さんも楽に逃がしてはくれないみたいだぜ。」



ふーっと大きく一つ息を吐く卯月。



卯月「ネキは傷病兵として足を飛ばした元提督と添い遂げる為の資金稼ぎ。」

卯月「天さんは出身の児童福祉施設の経営建て直しの資金稼ぎ。」

卯月「加古ちゃんは相棒の古鷹だった娘の目の手術代稼ぎ。雲龍は弟妹の生活費。」

卯月「雪風は司令官との腐れ縁。」

金剛「卯月、急にどうしたネ?」

卯月「んー、みんなが生き残らないといけない理由。」

天龍「この状況での生き残らないといけない理由って俗に言う死亡フラグって奴じゃね?」

卯月「違う違う、あれよ、立てすぎた死亡フラグは生存フラグって奴よ。」

卯月「こんだけ建てておけば大丈夫でしょ?」

加古「よっ、一級フラグ建築士!」


そして、スコールの中へ転進し敵をやり過ごし、88鎮守府からの救援との合流まで後僅かとなったとき。


228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:39:29.24 ID:7jmJC1/U0


卯月「なんとか帰ってこれたぁ。」フゥ



この一瞬の気の緩みが首に死神の大鎌を当てさせる事となる。

シューッ

ドン!

それはスコールにより荒れた海面を走ってきた為に発見が遅れた。

そして殿を務めていた卯月に命中。



卯月「あっ、これ駄目なやつだわ。」



被雷とともに停止した主機にさっさと見切りをつける卯月。



卯月「まいったねぇ。生存フラグは他人からの借り物で建てるのは効果が無いらしいや。」



ボフボフボフ モスン



卯月「まっ、標的艦程度にはなるでしょ。」ウシッ

卯月「それじゃ皆、私はここまでだから!雪風、荷物は佐世保に宜しく!」



そう言い卯月は全員へ自分を残し撤収するようへ指示を出した。
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:40:35.43 ID:7jmJC1/U0


提督「後は皆が指示にしたがい救援部隊との合流を急いだ訳だな。」

雪風「はい。」

提督「救援部隊と合流後に卯月を救援へと向かったが時既に遅しだったという事か。」

雪風「はい。」

提督「雪風、卯月は最後まで闘ったか?」

雪風「はい。」

提督「そうか。」

雪風「しれぇ。」

提督「ん?」

雪風「雪風は最後まで沈みませんから!」

雪風「沈みません!」

提督「ん。」ナデナデ
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:42:12.24 ID:7jmJC1/U0


時は過ぎ、現在。

時雨「夜間出撃前に食事を採る事が出来る様に

   食堂が24時間営業ってのは改めて凄いと思う。」

雪風「ここが出来た当初は営業時間が限られていたのですが

   優秀な調理士さんをお迎えできたので24時間営業が可能になったんです!」

スパ「実際かなりの腕前ですよね。」

「おまちどおさまー。ゆっくりしていってね!」



ウォースパイトが注文していたのはカツ丼である。



スパ「いただきます。」



器用に箸をとりどんぶりの蓋を開け、

上がる蒸気のふわりとした鼻腔をくすぐる甘い香りを楽しみ、ウォースパイトはカツを一切れ。

そう、ふわりととじられた卵からカツを取りだし、ゆっくりと。

口へ、運んだ。



ザクリ。 ジュワァッ。



下ごしらえがしっかりとされた豚肉のロースにはあえて脂身が多く残されている。

そして、サックリとした食感を残す為に衣は厚めで煮込む時間は短め。

カツ丼のメイン食材のカツはフランス料理のコートレットが起源と言われている。

そのカツは脂身の脂が溶け出すギリギリのタイミングで油からあげるのが肝なのだ。

その揚げられた豚肉に付いた脂身からは

甘みが溶け出し衣に少しだけ湿り気を与え、その味の良さと来たら……。

231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:44:13.78 ID:7jmJC1/U0


スパ「絶妙。」



新玉葱をざっくりと切りこちらは適量を丼つゆに入れカツをその玉葱の上に載せる。

そして贅沢に卵を大量にときその上からかけ鍋の蓋を閉じる。

そのふんわりとした食感はオムレツをほうふつとさせ、食道をつるんと通過してゆく。



スパ「あぁ……。」



すでに言葉にならない程の味に震える状態だがカツ丼の良さはこれで終わりではない。

否、カツ丼の味を語るのであればその味の良さは寧ろこれからが本番なのだ。

カツを卵でとじ少しの間、煮てカツへ味をつける、その丼つゆこそが隠れた主役。

丼つゆはこの食堂では鰹節、昆布をベースとしたものを使い、醤油は九州産の甘口。

これらがおりなす絶妙な味のハーモニーは想像に難くないだろう。

その丼つゆが米へと染み、カツから染み出た脂が飯に染み、

丼つゆの効いた卵とカツとあつあつの飯を同時に口へ運べば……。



スパ「うっまぁぁああああ―――――い!」



高貴な出自?やんごとない身分?

そんなものなど糞食らえとばかりに品なくガツガツと音をたて食べるウォースパイト。

胃袋へそれらが落ちしっかりと満たされていく感覚に幸せを覚えつつ。



スパ「お代わり!」



ウォースパイトはお代わりを頼んだ。



提督「実にいい食いっぷりだな。」

提督「料理人も料理人冥利に尽きるだろう。」

スパ「そほふへつへへかへひたひでふ。」モグモグ

提督「この時間帯の料理人はフランス料理が得意でな。

   歴史的にイギリスの貴族はフランス料理人を雇っていたとは聞くから

   舌に馴染みのある味なのかもな。」

スパ「この味はフランス料理がルーツ……。

   成程、懐かしい感じがしたのはその所為ですね。」モグモグ

時雨「本当にお貴族様なんだね。」アキレ

雪風「何でこんな所でカツ丼食べて感動してるんですか。」マッタク



232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:45:38.72 ID:7jmJC1/U0


「お代わり持ってきたよー。」

「あれ〜?司令官この時間は珍しいね。って、相変わらず食が細いね。」

提督「あぁ、まぁな。」

「不知火からもしっかり食べろって言われてない?」

提督「あー、あいつには黙っててくれ。」

「分かった。この寸胴の決裁通してくれたらね。」

提督「まったく、お前は調理器具コレクターだな。」

「料理が私に残された最後の戦場だからね。」

「ここから皆を支えるのさね。」

提督「確かに食は重要だな。」

提督「これからも頼む。」

「提督もさ、たまにはフランス料理のコース食べに来てよ。」

「ジョエル・ロブションの弟子の弟子、つまり孫弟子が美味しい料理つくるからさ。」

提督「そのうちな。」



提督は料理人の熱いお誘いをにこやかにかわし食堂を去っていった。



「雪風、司令官は相変わらず?」

雪風「いいえ、最近は以前より少しだけ楽しそうです。」

「ふーん、そっか、それならいい感じなのかな。」

雪風「はい!」

雪風「では、雪風はそろそろ失礼しますね。」

「そう?じゃ、これ注文の二人分のカツサンド。」

「食べる前に艤装の排気煙突から少し離れた所において置くといい感じに暖められるよ。」

雪風「懐かしいですね。」

雪風「では!」



雪風はそう挨拶し時雨と二人夜の海へと出撃していった。



時雨「雪風はあの料理人と知り合いなの?」

雪風「はい。あの方とは古い知り合いであり戦友だった方ですよ。」

雪風「昔の話ですが。」

時雨「そう…。そっか。」



233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:48:02.17 ID:7jmJC1/U0


おまけ超短編!  不知火の改二!



不知火 ぬい!

提督「ん。」

不知火 ドヤァ

提督「ん。」

明石「いや、提督。そこは何か言ってあげましょうよ。」

提督「ん?今までもこれからも俺が頼りにするのには変わらんだろ?」

提督「確かに戦力として改二が実装されたのは喜ばしいが……。」

提督「公試のデーター見る限りうちでの改造艤装以下のスペじゃねぇか。」

明石「いや、まぁそうなんですけどね。」

提督「量産機が試作機に及ばないのは良くあることだ。気にするな。」

不知火 ぬい〜ん

提督「結局の所はがわの流用だな。」

明石「まぁ、中身は以前以上に弄ってますけどね。」

提督「ベースが底上げされた分だけ全体的にスペがあがったという事か。」

明石「そうですね。例えていうなら今まで軽自動車にフェラーリのエンジン積んでたのを

   今度はフェラーリの車体にフェラーリのエンジンを積んだ感じです!」

提督「成程な、スペックを無理なく引き出せるようになったという事か。」

明石「マージンが、がっつり増えたんで色々改造余地もありますよ!」

提督「そうか、逞しく、頼もしくなった訳だな。」

提督「これからも宜しくな。」

不知火 ぬい!

明石「何格好良く話をまとめてるんですか。」

提督「たまには格好つけても良いだろう?」

提督「薄毛のおっさんが格好良くあらんとするなら

   気取った言葉の一つくらいは言えんといかんもんさ。」

明石「難儀ですねぇ。」

提督「そういうものさ。」

提督「不知火。」

不知火「はい!」

提督「改めてだが、これからはよりいっそう頼りにするぞ。頼んだぞ。」

不知火「お任せ下さい。」ヌイ!

明石「よっ!禿げてても男前!」

不知火 ぬい? ギロリ



この後、不知火の新型魚雷発射装置、火器管制、

アサルトライフル式主砲のテストに明石が喜んで付き合わされたのは言うまでも無い事である。



時雨「明石さんが標的艦役やるって珍しいね。」

スパ「アルゼンチンタンゴ踊ってますね。」

雪風「ひぇ……。あの状態の不知火さんに近づいたらいけませんよ。」
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/19(土) 00:56:24.44 ID:7jmJC1/U0
以上で本日分の更新終了です
皆様、春のミニイベされていますでしょうか?
1は現在偏りという悪魔に魅入られており 米36 梅干3 海苔2 お茶2 という有様です
S勝利とってこんなに偏るなんて……、米どんだけ出やすく設定してるんだというお話
しかもこれ 米 と他の食材が出るところが被ってしまっている所為で余計に他のが出にくくなっているので辛い
今後の予定ですが後、1つか2つ程やってこのスレを落すような形になるかと思います
こちらで活動を始める前に活動していたSS投稿サイトで更新が止まっているのに
未だにしおりをつけたくださったり、お気に入りに登録してくださっている方がいるので
そっちの方の更新もしなくちゃという感じです、はい、エターナルはやっちゃいけませんです、はい……
ではでは、次回もお付き合いいただけると幸いです
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/19(土) 01:30:16.86 ID:or4ML6fA0
おつおつ
新たな道が開けてなにより…
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/19(土) 07:01:43.55 ID:z6wpXQKYO
生きてた
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/19(土) 19:25:42.52 ID:bwX9ROqU0
まあ死なないよね
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/20(日) 10:15:50.41 ID:g9q9r3fTO
艤装番号が嘘八百で製造番号がご苦労さんだった。

うーちゃんの轟沈自体偽装工作だったり?
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/21(月) 22:50:32.05 ID:1gvq7mE60
>>238
しれっと食堂の主やってるみたいだな。
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/21(月) 23:58:51.17 ID:cd4B+0uA0
なんだage荒らしか
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/23(水) 12:26:13.12 ID:DlY+gEt8O
新スレあったのかよ気づかなかった俺のバカ
乙!!!!
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/25(金) 12:08:43.86 ID:6CPUfdoS0
ところで、スパ子はカツ丼食いながらなんて言ってるんだろ。
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/25(金) 12:18:15.14 ID:D9ff12A5o
多分「祖国へ連れて帰りたいです」
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/29(火) 22:13:56.42 ID:9fFsrfIG0
俺も持ち帰りたい
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:08:52.83 ID:PHQWvqIW0
皆様、こんばんは、更新に参りました
春イベの進捗状況は如何でしょうか?
2-4で福江を掘り当てバケツと資源で殴るハイペースで任務を片付けたので
後はカタパルト1枚分確保すれば1は終了です、現在のんびりモード中
変態仮面のSSで次回のおぱんつ様の安価?を頂いておりましたので
雪風、川内、くまのん、陸奥の順番でやっていけたらなぁと思っています(利根は履いていないから無理なのだ!)
ただ、筆が遅いのでそっちはこちらの気分転換で書く様になるので多分、間が空くかなぁと……
では、前書きが長くなりましたが本日もお時間宜しければお付き合いの程宜しくお願いいたします
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:09:37.22 ID:PHQWvqIW0


第十話 天国への扉 前編


247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:10:16.11 ID:PHQWvqIW0


彼女は誰にも理解をして貰えず。

彼女は誰にも助けて貰えなかった。

それでも彼女は戦い続けた。

傷つき。

油も、弾もつき、その最期の時が来るまで。

いつか自分を理解してくれる。

仲間が現れるその時を夢見て。


248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:11:24.97 ID:PHQWvqIW0


88鎮守府 食堂



雪風「しれぇ、胡椒をとっていただいていいですか?」

提督「ん。これか?」

雪風「ありがとうございます!」

提督「雪風はよく食べるな。」

雪風「体が資本ですから!」

提督「そうか。すまんがこれも食べて貰えるか。俺には量が多くてな。」

雪風「餃子が10個。まったく箸をつけられていないようですが。」

提督「流石に食べさしを食ってくれと言って差し出すほどあれじゃない。」

雪風「雪風は食べさしでもかまいませんが。しれぇは食が細くないですか?」

提督「俺は事務屋だからな、それほど腹がへらないのさ。」

雪風「ではいただきます。」



提督が雪風と一緒のテーブルを離れた所にウォースパイトが食事を載せたトレー片手に現れる。


249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:12:05.53 ID:PHQWvqIW0


スパ「雪姉さん、一緒いいですか?」

雪風「どうぞどうぞ。」

スパ「今いたのはAdmiral?」

雪風「しれぇですね。」

スパ「先日もでしたけど士官も私達と一緒の食堂で食べるんですね。」

雪風「しれぇは一人で食事をするのは好きじゃないという事でここを利用されています。」

雪風「それに一人だけ特別メニュー等を食べるのも嫌われる方ですから。」

スパ「軍隊で士官が兵卒と同じ所で同じ食事を取るって珍しい。」

雪風「それも含めてここですよ。」

雪風「個性的な食事を食べたいのでしたら明石さんの所に行くといいですよ。」


250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:13:31.97 ID:PHQWvqIW0


明石の工廠

秋津洲「明石さん、最近お肉ばっかりでバランス悪いかも。」

明石「お肉は大事ですよ!?いいですか?

   お肉はタンパク質です。体を作るのに欠かせない栄養源ですよ?」

明石「米軍の特売を買ったら肉しか入ってなかったんですよ。我慢してください。」

秋津洲「提督にお願いして果物貰ってこようかなぁ……。毎食ステーキは辛いなぁ。」ベソベソ

明石「あんまり提督に迷惑かけちゃだめですよ。

   私達の経歴を誤魔化すのにも色々骨折って貰ったんですから。」

明石「私の元旦那が提督の恩師だった縁もあってここにおいて貰っているのですから。」

秋津洲「そうだったかも。でも、果物は欲しいかも。」

提督「だろうと思って持ってきたぞ。野菜と果物だ。」

明石「あっ、提督。」

提督「すまんな。南太平洋の悲劇の生き証人は

   全員最前線の弾除けに配置換えされていたからな。」

提督「海軍の大失態で証人が生きていちゃまずい訳だ。死んだ奴だけがいい奴だってな。」

提督「可能な限り師匠の部下だった連中は退役させて伝手を頼って逃げさせたが…。」

秋津洲「他の鎮守府の娘達は水底に還っていったかも。」


251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:14:58.19 ID:PHQWvqIW0

明石「私らは一番の危険人物ですからね。」

明石「何が起きて何が原因で負けたか。

   うちの旦那が懇切丁寧に私達に解説して逝きましたからね。」

提督「師匠の手紙を持って来た時に何が起きたかは悟ったがな。」

提督「流石の師匠だよ。

   死んだ後の事まで見越して大まかな敵の動きを予測して対処のやり方を細かく指示。」

提督「手紙の末尾にお前なら適当にやっても勝てるだろ、だからな。」

明石「あの人らしい。」

提督「あげくに艤装管理の穴をついて死者を生者に生者を死者にする手品を教えたりと。」

明石「昔から壁の上を歩いて落ちなければセーフと言っていましたから。」

提督「道徳、倫理観は横においておくとして、

   取り締まる法律が無ければ法律違反ではないという奴だな。」

明石「ここに送られてきた中で何人かそれで外に出していますよね。」

提督 ………。

提督「なぁ、明石。お前は最近の敵の動きどうみる?」

明石「どう、ですか……。」

明石「海軍の上の方に敵に通じている奴が居ませんか?」

提督「やはりそういう感想になるか。」

明石「それか、敵に知恵の回る参謀職の個体が複数生まれたか。」

明石「敵の作戦行動の質が上がってきている雰囲気はありますね。」

明石「よく言う『 他人の嫌がる事は率先してやりましょう 』を理解して動いています。」

提督「こっちは提督になる連中の質の低下は激しいってのに……。」ヤレヤレ

明石「珍しいですね提督がぼやきをいれるなんて。」

提督「いれたくもなるさ。海軍参謀……、

   軍令部の不始末を現場が必死こいて尻拭いしてるんだからな。」

252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:16:45.07 ID:PHQWvqIW0

提督「艦娘にしても初期から居る

  『 二つ名持ち(ネームド) 』の殆どが水底だからな。」

提督「精鋭が簡単に死んでいく戦場なんざ悪夢以外の何物でもない。」

秋津洲「そもそもネームド制度が時代の徒花かも。」

提督「まぁな。今は無くなってしまったが

   ネームドとして二つ名を登録する事が

   艦娘の目標みたいな時期はあったくらいだがな。」

提督「大量の個人戦果と幾つかの叙勲、

   そして所属鎮守府の提督からの推薦で登録なんていう

   華々しい経歴持ちでもないと申請が出来なかった制度だ。」

提督「その実、ネームドなんて危険な前線に回されて使い潰されるのが関の山で

   給料が増える訳でもなければおまけとして個別認識マークが許されたくらい。」

提督「艦娘側にまったくメリットのない制度だったな。」

提督「更に言えば一緒に出撃した他の娘から戦果を期待され無駄なプレッシャーに押し潰される者もいたらしい。」

明石「まぁ、国威発揚目的で導入した制度ですからね。

   聞こえは良いけどその実は地獄行き特急のグリーン席に座れます程度の実しかなかった糞制度。」

明石「秋津洲さんが登録した年が最後でしたっけ?」

秋津洲「かも!前の提督さんが付けてくれたかも!」

253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:18:29.28 ID:PHQWvqIW0


提督「師匠はそういうの好きだったからなぁ。

   部下の功績をきちんと評価してどうおだててれば

   気持ちよく働いてくれるかを知っている方だったよ。」

提督「時代が英雄とか英傑ってもんを必要としていたのさ……。」

明石「時代ですかね。」

秋津洲「ネームド制度が終了した事を差し引いてもここは結構異常かも。」

提督「まぁな。ネームドとして登録しているのが秋津洲いれて4人。」

提督「更に言えば4名全員公式での複数名持ちだからな、

   頭の螺子が捻じ切れているとかでもない限り

   複数名が付けられるなんて事はめったにない。」

提督「艦娘同士の渾名での二つ名ではなく公式での二つ名持ちは今や絶滅危惧種だ。」

秋津洲「もっと褒めていいかもよ!?」ドヤァ

提督「たればこそ、上の胡乱げな動きへの備えになるのさ。」

提督「ある訳が無いという事が無い訳が無いという事だ。」

秋津洲「禅問答かも?」

提督「全ての可能性を捨てるなという事だ。」

提督「いつだって最悪の結果というのはそこにある。

   俺がその結果を踏まないのは運がいいだけさ。」

254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:19:32.70 ID:PHQWvqIW0


明石「それはそうと頼まれていたのを提督が来てくれたのでついでで渡しておきますね。」

明石「知り合いから引っ張ってきたロイズの戦争保険のアンダーライターの名簿です。」

バサリ

明石「きな臭い匂いだらけですよ。でも、どうしてこれが必要に?」

提督「今更だがウォースパイトがここに来た話がちょいと引っかかったんでな。」

提督「吹き飛ばした島がな。」

明石「金融のエアポケット。租税回避地で名高いバージン諸島の島でしたっけ?」

提督「後、付け足すならマネーロンダリングに会社の登記誤魔化しの温床でもある。」

提督「そんでイギリス領でありながらドルが公的通貨として採用されている。」

提督「なんでな、ユダ公に恨みでもあったかと思ったんだがな。」

提督「金融関係者かと思ってウォースパイトの出自を調べたんだが。」

提督「どうにも出自が上位過ぎるんだ。それも、アホみたいにな。」

255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:21:36.27 ID:PHQWvqIW0


明石「どの位上の方だったんですか?」

提督「スチュアート家の血を引いた嫡出子、更に言えば直系だ。」

明石「まじもんのやべぇ奴じゃないですか………。」

提督「案外国内で命を狙われていて亡命目的のカモフラージュかもしれんぞ。」

明石「そんなので地獄の一丁目に送り込みますかね?」

提督「憶測だ。冗談とでも思ってくれ。」

提督「でだ、まぁ、本題なんだが。取り寄せた理由についてだが。」

明石「はい。」

提督「深海棲艦が出てから船舶、海上保険なんてもんは機能しなくなっただろ?」

明石「ですね。船を出した端から撃沈じゃぁ、保険そのものが引き受けできませんからね。」

提督「だが、物流において船程一度に大量に運べるものはないから

   艦娘システムが出来てからこの方、色々な国、

   企業といった団体が艦娘による船の護衛に飛びついた。」

提督「日本政府にしても艦娘制度の維持には莫大な金が掛かるからな。」

明石「日本単独ですと国家予算における割合が半端ないですからね。」

提督「そうだ、金融屋ってのはどんな物でも金に出来る頭があるから金融屋なんだ。」

提督「昔のサブプライムローン問題も本来は借金出来ない連中がした借金を

   優良顧客の借金と合わせて証券化して一見まともな債権金融商品に見せかけた。」

提督「優良顧客の債権はだいたいが格付けとして上位だったから

   抱き合わせの債権も当然のように格付けが良かった。」

明石「で、みんな買っていざ借金が返せない人達が続発してくると

   債権の価値は一気に下がって紙くずへ、でしたっけ。」

秋津洲「始めに売り逃げた人だけが得したかも。」

提督「そういう事。話を戻すと保険も金融債権の一種な訳でな。」

256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:23:30.95 ID:PHQWvqIW0


明石「話が見えてきましたよ。

   艦娘が護衛する航路を決める権限のある連中が

   保険証券で金儲けをしているという事ですか。」

提督「どこを受け持つか、そして、どの艦種の艦娘が護衛に付くかで保険料率は大きく変わる。

   保険を受ける時の掛け金が大幅にだ。」

提督「ロイズのアンダーライターにそれを決める位置に居る奴がいたりすると……。」

明石「勝ち馬が分かった競馬ですね。

   しかも気に入らない相手には駄馬に糞騎手をあてがう事が出来る。」

提督「その通りだ。ロイズはあくまで保険の取引の場を提供しているだけに過ぎないから

   そこを通過する保険の内容については引受人であるアンダーライターと

   保険の加入者の問題でしかないからな。」

提督「だからウォースパイトを利用してその辺りを強化しようとしたらそのあてが外れ、

   儲けの仕組みを知ったウーォスパイトがここに逃げて来たのかなと思ったんだよ。」

明石「もしくは護衛を自由に引き受けるここを利用している同業への探り目的のスパイですか?」

提督「何が信用できて何が信用できないかなんてのは分からんからな。」

提督「探照灯が明るかろうが人生の先の闇は見通せんからな。」

明石「分かる頃には死人がどれだけ出る事やら。」

秋津洲「命のバーゲンセールかも……。」

明石「にしてもユダ公って。昔からシティもウォールも雲の上はそうですけど。」フフ

提督「皮肉が効いてんだろ。裏切り者だけにな。まぁ、気にするな。」

257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:24:55.64 ID:PHQWvqIW0


秋津洲「これも万が一の備えかも?」

提督「外れていてくれるとありがたいんだがなぁ。」

提督「それにぱっと見ただけで分かるような事するほど敵さんも馬鹿じゃないとは思うがね。」

提督「保険だよ。」

明石「保険屋相手に保険ですか。気の利いた冗談ですね。」

提督「見えてるだけじゃないからな。

   金融屋ってのは戦争を飯の種にする連中の中で一番性質が悪い。」

明石「お金の出し手は一番強いですからね。」

提督「実弾の前に跪かない人間は珍しいからな。」

秋津洲「時雨ちゃんの件に繋がっているかも?」

提督「お前は時にするどいな。」

提督「だが、分からんとしか言いようが無い。

   実際、上の連中はどっかで繋がりはあるだろうし、

   繋がりの無い奴を探す方が難しいだろうよ。」

提督「用心に越した事は無いがな。

   連中の手は長い、絡め手は意外とそこら辺りにまで伸びてるかもしれんぞ?」ニヤリ

明石「実際分からないってのは薄ら寒いものがありますね。」

提督「見えているものにしか対処出来ないからな。」

提督「やらざるを得ない状態にされるってのは好きじゃない。」

提督「だが、そうせざるを得ないのが今の状況だ。」

提督「実際、この戦争の落し所を探る動きが上層部にある感じがする。」

提督「ただ、平和にしても勝ち取って得た平和と与えられた平和の2種類があるからな。」

提督「どっちを望んでいるのかが分からん。」

258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:25:59.59 ID:PHQWvqIW0


秋津洲「2種類の平和?」

提督「難しかったな。忘れてくれ。俺の立場で口にしていいものじゃない。」

明石「国の先行きを考えるとどちらが正解かって所ですね。」

提督「誇りで飯は食えんが誇りがないと国は保てん。」

提督「……と、飯時の茶のみ話にしちゃぁ、ちょいと内容が重かったな。」

明石「いいですよ。不知火さん相手じゃ出来ない話もあるでしょ。」

明石「私も心得ていますよ。」

提督「すまんな。また何かあったら頼む。」

明石「お話1時間1万円なら。」

提督「キャバクラ並だなとも思ったが……、器量じゃキャバクラが負けるか。」

秋津洲 エヘヘ

提督「じゃぁ、まぁ、その時は頼むよ。」

秋津洲「お待ちしているかも!」



提督を見送る二人。



明石「本当に支払う気ですかね?」

秋津洲「お金とるようだと私、明石さんの事を本当に見下げ果てた奴だと思うかも。」

明石「挨拶みたいなもんですよ。」

明石「もうかりまっか?ぼちぼちでんな。みたいなね。」

秋津洲「かも。」

明石「元旦那より先に提督に会ってたらと思うときはありますけどねー。」

秋津洲「提督の想い人には勝てないかも。」

明石「流石に相手がこの世にいないんじゃ勝負が成り立たないですからね…。」

259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:26:48.50 ID:PHQWvqIW0


執務室

不知火「司令。艦隊司令部より辞令が届いています。」

提督「ん?辞令?」



厳封され封筒の口には古式ゆかしい封蝋。



提督「めんどくさそうな予感しかないなぁ。」



ペーパーナイフを隙間にあて封を開ける。



不知火「中身はなんでしょうか?」

提督「俺を少将に格上げだとさ。」

不知火「おめでとうございます。」

提督「そんなにめでたいもんでもないさ。」

不知火「ぬい?」

提督「階級があがればそれだけ面倒が増えるって事だ。」

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