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【艦これ】 続 外地鎮守府管理番号88
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360 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/09(月) 00:18:46.94 ID:NNCuyt2G0
そして、三途の渡し守から追い返されてから三日後。
秋津洲「今日は二式大艇ちゃんの整備日和かも!」
提督「二式大艇ってこう、なんか愛嬌あるデザインだよなぁ。」
執務室が禁煙にされてしまっている為、煙草を吸いに埠頭まで来ていた提督が秋津洲に語りかける。
秋津洲「さっすが提督!よく分かってるかも!」
秋津洲「でも煙草に火をつけたまま近づくのは危険だから駄目かも!」
ジュッ
咥えた煙草を奪われ火を消される。
ガン「頼もう!」
秋津洲「はーい、いらっしゃいませかもー!」
ガン「すまないが燃料と弾薬を売ってくれ。支払いはこれで。」
つ ルーブル
秋津洲「げぇぇ。まじもんの紙屑かもぉ!」(1ルーブル≒1.78円)
ガン「なにぃ!?貴様!我が祖国を愚弄するか!?」
秋津洲「ここでの使用可能通貨はドルかも。」
ガン「その様な物等ない!」
提督「ルーブルは流石に両替を受けてないな。」
秋津洲「お金が無いならお帰りはあちらかも!」指差し
ガン「金は無いが武器はある。」チャキッ
秋津洲「きゃぁ――、強盗かも ――(笑)。提督を守らないとかも――(笑)。」
役得とばかりに提督に抱きつき、えいっと可愛らしくパンチを一つ。
ドゴ!
提督「あっ。」
秋津洲の右ストレートが炸裂。
二式大艇は自重だけで約18t、爆装等込で最大重量約35t。
それを片手で担ぎ上げる秋津洲のパンチが決まったのだ。
提督は後に長門に語る。反跳爆撃で飛んでいく爆弾の様に水を切りながら飛んでいったと。
長門「学ばない奴だな。」
とは長門の言葉。
361 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/09(月) 00:19:52.32 ID:NNCuyt2G0
そして。
明石「金を稼ぐ前から修理代ばかり嵩ませて、
払うあてが無いなら艤装ばらしてあんたの部品を担保にして貰おうか?」
明石「人体ってのは綺麗にばらせば300万にはなるんだ。腎臓の一つでも売ってみるかい?」
鬼より怖い明石に睨まれ。
艦娘が入れる生命保険等ある訳も無く。
ガン「身の程を弁えず申訳ありませんでした ――――――― !」
提督に地面で額を摺りきらんばかりの勢いで土下座をかまし。
ガン「助けてください〜。」
全力で泣きを入れた。
提督「あー、まぁ、うん。気をつけろよ。」
不知火「2度は無い気をつけるんだな。」ヌイ!
ガン ヒィィ!
提督が明石に上手く取り計らい、ガングートは内臓を売る事無く着任する事が出来たのである。
マイナスからのスタートなのは言うまでも無い。
362 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/09(月) 00:23:24.97 ID:NNCuyt2G0
以上超短編
お読みいただきありがとうございました、最近板自体が管理人さん不在の所為かスレ建て荒しなどの放置が目立ちますね…
そろそろ移住を考えた方がいいのやらやら……
では、ここまでお読みいただきありがとうございました
乙レス、感想レス、いつもありがとうございます!励みとして続きを書くエネルギーに変換しています!
では!また次回の更新でお会いいたしましょう!
363 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/09(月) 00:31:59.94 ID:u9XalqOB0
同志不甲斐ないの
364 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/09(月) 00:38:48.52 ID:s0soUc7zo
いくらなんでも可哀想過ぎて草生える
365 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/09(月) 02:59:57.68 ID:tzXzQ8Xk0
乙です
ガングートには申し訳ないけど爆笑してしまった
366 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/09(月) 07:40:19.84 ID:cWuepcgo0
前回の続きと言うか前日談って感じかな?
それにしても…
笑うわこんなんw
367 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/09(月) 20:33:20.79 ID:FkzLrHbpO
乙です。 続きは時間かかるみたいですが、楽しみに待ってます。
ガングート可哀想ではあるけど、ほぼ自業自得なのが笑いを誘います。
368 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/09(月) 22:14:28.76 ID:cWuepcgo0
秘書艦に食堂のおねーちゃんに海の遊撃手と殴られてなおかつ、裏ボスにドヤされてようやっと理解したのね…
てゆーか、約1名現役じゃない方がいらっしゃるんですが
369 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/10(火) 09:53:44.57 ID:hhl0TaDXO
乙
ここのうーちゃん大好きだわw
370 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:05:05.06 ID:4HB+eitj0
8月に入る前になんとか更新出来そうなので更新に来ました
久しぶりにフライトシミュやったけどコクピットモードで3D酔い、ゲーム自体は好きなんだけどなぁ…
少し長めの更新となりますが宜しければお付き合いいただけますと幸いです
371 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:07:01.24 ID:4HB+eitj0
グラ「Falke(隼)02は01と協力して3―B―01だ。」
自己管制下にある最新鋭機Ta152艦載型の編隊を敵の襲来している空域へ差し向ける。
ポン!
グラ「と、お次はAdler(鷲)01と02、3−A―01だな。」
ポン!ポン!
グラ「正面と右翼からの浸透か。」
グラ「まずはお手並み拝見と言ったところか?」
高高度作戦機が豪とエンジンの唸りを、
咆哮をあげ提督が乗る強襲揚陸艦へ襲撃を掛けてくる敵機を落とす。
グラ「高高度における機体性能は私の機材の方が上の様だな。」
ポ―ン!
グラ「と、このエリアはサラトガだったな。」
ポ―ン!
グラ「ふむ。Conder(コンドル)を援護に回そう。」
先程からグラーフの目に映っているのは周辺戦闘空域に飛来している敵機編隊数。
グラーフはウェラブル端末の透過式グラスの表面に表示される
敵飛来方向等から自艦載機部隊に戦闘指示を出している。
そのグラスはポーンポーンと軽快に音を立てては戦況を随時更新。
グラ「外周のピケットが食われないようにしないとだが…。」
グラ「フム、初月達が動いたか。電探持ちがやられるときつくなるからな。」
グラ「Conder(コンドル)02、03はそのまま上空で二式大艇の護衛を続けてくれ。」
グラ「敵増援が来れば護衛機は追加しよう。艦隊の目だ。くれぐれも落とされないでくれ。」
グラーフは一体何をしているのか?
372 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:09:22.95 ID:4HB+eitj0
強襲揚陸艦 艦橋
不知火「大艇からのデーターだと、敵艦隊はこちらの方角です。」
不知火が二式大艇に積まれた機上電探からの情報を
提督が机代わりにしているタブレットを大きくしたような大型モニターに
データとして表示させながら説明する。
提督「そろそろグラーフだけでの管制は厳しくなってくるだろうな。」
提督「俺が管制の指示を出そう。」
大佐「航空管制の経験がおありですか?」
提督「うちの国は人材がつねに不足していましてね。なんでも出来ないと提督は務まらんのですよ。」
提督「もっとも、なんでも出来た所為で辺境の指揮官なんてものをやっていますがね。」
373 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:10:02.71 ID:4HB+eitj0
大型モニターに数字と襲来方向の矢印、
そして、敵機を表す光点が徐々に増え始めるのを見て提督が頭にレシーバーを嵌める。
提督「うち所属の空母艦娘ども、敵の数が借金取り並だ。」
提督「ここからは俺が管制をする。
指示は各々がつけてるウェラブルグラスに迎撃に向わせる空域と編隊名が出るからその指示に従ってくれ。」
提督「後、米国からのお客様、サラトガ嬢は未通女(おとめ)なんでな。」
提督「悪い虫が付かないように守ってやってくれ。以上だ。」
提督からのいつもの軽口付きの指示。
どうやらいつも通りやれているようだ。いつも通り、普段の様に頭が動いているなら。
グラ「Admiralの勝ちだな。」
にしても。
グラ「カバー範囲が広いものよな。」
だが。
グラ「私になら出来るというAdmiralからの信頼。それに応えぬ訳にはいくまいよ。」
上官への尊崇。それ以外もあるが。口には決して出せない秘めた思い。
グラ「火事と喧嘩は江戸の華だったか。」
なれば鉄火場こそ己の魅せ場。
纏う火の粉を紅に変え、硝煙の香りを上等のフレグランスへ。
堅牢な城門を壊し城を陥落させるようにあの朴念仁を堕とそうではないか。
グラ「独逸撫子もいいもんだとあの男に言わせねばならんのでな!」
グラ「必勝と行かせてもらうか!」
374 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:11:20.09 ID:4HB+eitj0
高度1万メートル
高高度作戦機の縄張りであり空気は薄く、
大馬力エンジンが支配する絶対空域。
馬力の無いエンジンを積んだ飛行機では辿り着けても
敵に追いすがる事など出来ない性能こそが神として君臨する空域。
その高度をグラーフの管制下にあるTa152の各編隊は悠々と飛行していた。
大隊長「編隊長から各機へ。ターキーショットと思って手を抜くなよ。」
大隊長「グラーフ嬢が想い人にいい所を見せようとしているようだ。」
副長「それは気合いれて掛からないといけないですね。」
隊員A「でも、告白するんですかね?」
隊員B「いつも寸前で止まってますからねぇ。」
大隊長「相手は昔の女に捕らわれているらしい。」
副長「男としては憧れますが。」
隊員A「好きになった女にとっては迷惑極まりないですね。」
大隊長「なればこそ我らが戦果をあげていい女として認めて貰えるように頑張らねばな!」
一同「「「 Ja!」」」
軽口を叩く妖精一同。
そして、グラーフの指示に従い眼下に見える敵機編隊へ襲いかかりる。
ドイツ空軍、ルフトバッフェの基本戦術2機1小隊を2つにして4機で1編成のケッテとよばれる編成単位。
ドイツ空軍が採用の後、実戦に投入しその有用性に目をつけた英国空軍も取り入れ4本指、
フォースフィンガーという名称でこの編成方法は知られている。
彼らは定石通りに高空から一気に眼下の敵編隊へ襲い掛かった!
375 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:13:19.53 ID:4HB+eitj0
ドドドドドド!
機銃の音が空間へ響き渡り深海棲艦の機体を撃墜!
隊長「Falke(隼)大隊長01より各小隊長へ!被害報告をされたし!」
突入してのそのままの勢いで急降下をしている状況で余裕の被害確認。
Falke隊からの急襲を散開させることによりなんとか逃れた深海棲艦の艦載機は急降下で追撃!
「02小隊被害なし。」
「03小隊同じく被害なし。」
「01了解。Adler(鷲)編隊!準備は!?」
「こちらAdler大隊長01。いつでもどうぞ。」
各編隊からの報告に満足したように頷くと
急降下していた状態から一気に操縦桿を引き機首を上方へ向ける。
大隊長「馬力のある機体が逃げる時は下じゃなく上が定石だからな。」
攻撃を仕掛けた編隊が急に機首を上に上げたのに合わせ急降下で追撃していた敵機も追いすがる!
大隊長「まったく、japanの言葉でダボハゼだったか?」
大隊長「ちったぁ罠を疑えってな。」
大隊長「Falke大隊長01よりAdlerへ。お客さんをお連れした!盛大に歓迎してやってくれ!」
ドドドドドドドン!
Adler大隊長01「Willkommen(いらっしゃい)コーヒーは如何かな?」
上空へと逃れるFalke隊を追いかけてきた敵機は次の瞬間全機撃墜される!
大隊長「待ち伏せお疲れ。」
Adler大隊長01「どういたしまして。敵は余裕が無い様だ、コーヒーの誘いを断られたよ。」
大隊長「紅茶好きだったんだろ。」
Adler大隊長01「成程、それは粗相したな。」
何のことはない。
急降下突撃した部隊が敵の生き残り編隊を急上昇で吊り上げ
高空で待機していた別の編隊へ上がってきたところを叩かせる。
上昇力に明確な差があるからこそ出来る戦術であり。
二式大艇からの電探情報、提督からの敵機位置情報、
各編隊との無線機でのやり取りがばっちりと嵌ればこその戦術である。
376 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:15:11.24 ID:4HB+eitj0
大隊長「釣り野伏せだったか?」
副長「japanでの名称ですか?」
大隊長「あぁ、瑞鳳嬢の旗下連中から聞いたんだが
japanの戦闘民族が得意とした戦法なんだそうだ。」
副長「我らゲルマン民族の様に勇猛果敢な民族もいたもんですな。」
大隊長「そうだな。Falke大隊長から大隊全機へ!
最初の突撃で担当空域内に侵入している敵は3割しか落せていない!敵が多すぎるな!」
大隊長の言葉に笑いが漏れる楽しい職場。
大隊長「ここから先は各個撃破となる!各小隊の奮闘期待する!以上!散開!」
Adler編隊長「同じくAdler隊も散開!各個撃破だ!以上!」
高空からの奇襲は一度限りの先手必勝。それを使えば後は一撃離脱の回数を重ね敵を落すしかない。
こうして狼達は野に放たれた。
ギュオォォォォォオオオォン!
機体性能を十分に活かし再度の急降下突撃。
大隊長「逃すか!」
一気に敵を3機程屠った後、僚機を従え他の敵機が飛ぶ高度で水平飛行へ!
そして機体性能を活かし速度を上げ敵の背後を取り敵機を更に撃墜!
大隊長「これが生身の人間なら体に掛かるGが激しいんだろうなぁ。」
副長「妖精に転生してその辺りの負荷があまり感じなくなりましたからねぇ。」
大隊長「先の大戦時でもそうだが、ますます人間を辞めた感があるな。」
副長「元々人間でしたっけ?」
大隊長「そういわれるとそうだな。」
ドドドドドド!
鼻先僅か10m。敵機が艶やかな華を咲かせ、ばらばらに散っていった。
副長「撃墜のコツは。」ニカッ
大隊長「自分の機体を当てる心算で近づけ。」ニヤリ
Ta152量産型の20mm機関砲、2機分、合計6門が火を噴けば並大抵の装甲では耐える事など出来やしない。
377 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:16:57.34 ID:4HB+eitj0
ダダダダダダ!
大隊長「早漏だねぇ。」
副長「そういえば、深海棲艦の艦載機は男が乗ってるんですかね?」
大隊長「女なのか?あれ?」
副長「そもそも操縦士が乗っているのかどうか?」
大隊長「……、機械に落とされるのは癪だな。」
水平飛行を続ける二人の機体に敵が仲間の敵とばかりに攻撃を仕掛けてくる!
が!その銃撃はあまりにも遠すぎる為か当たらない!
なにより数多の修羅場を潜った末に妖精に転生している二人は
殺気を感じた時点で機体を次の行動へ移すべくタイミングを計っていたのだ。
二機の機体のエンジンが更に唸りを上げ速度がどんどん上昇。
大隊長「重力なんてもんを感じなくてよかったよ。」
大隊長「感じてたら奥歯の一本は覚悟しねぇとならなかったかもしれないからな。」
ふわり。
それは一瞬の出来事である。
機首を上げ機体を右方向へ捻りこみながら縦方向へ180度のループ。
ループをしながら機体を捻るためループ終了後の機体は水平に。
戦技 インメルマンターンの炸裂である!
敵の上方へ進行方向を逆にする形でターンする為、隊長達の機体の下を敵機がすり抜ける!
その結果、互いの速度差で距離が一気に離れていく!
大隊長「お疲れさん。」
水平飛行へ移行後少しばかりの距離を飛んだ後、2機は再度、下方向へのループを行った!
インメルマンターンの逆バージョン。
戦技 スプリットS である!
両方の技は共に少しの操縦ミスで機体の失速を招く高難度空中格闘戦技であり
それを間髪入れずに行うのは耐Gスーツを着ていたとしても
その体はもとより機体そのものに掛かる重力は凄まじいものとなる。
エアショーで機体が地面とフレンチキスをやらかして
大事故になる事が多いのもだいたいどちらかの戦技の失敗だったりする。
378 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:19:07.13 ID:4HB+eitj0
副長「まぁ、敵の技量はうちの飛行隊だとワンデイですな。」
ピタリと追撃してきた敵機の後ろに付け2機の銃撃により敵機小隊は撃墜された。
大隊長「まったく、インメルマンの後にスプリットなんぞやってたら普通死ぬわ。」
大隊長「体への重力のかかり方が死ねる。」
副長「敵との距離が離れていましたからねぇ。」
副長「ビタ付けしている状態だったらそのままループだけでよかったんですけどね。」
隊長「敵がどん亀なのが悪い。」
副長「そーですそーです。」
大隊長「さぁて、敵の残りをいただきますか。」
大隊長 副長「「我らがグラーフ嬢の為に!」」
そして、2機は再度、敵編隊へと襲い掛かかっていくのだった。
グラーフ「 /// 。」
穴があったら入りたいとはまさに今のグラーフの為にある言葉だろう。
各妖精隊に指示を出す為に無線を繋ぎっぱなしのグラーフには
先ほどからのやり取りは全て筒抜けだった。
初月「やぁ、伯爵。そんなに赤面してどうしたんだい?」
グラ「あぁ、初月か。初月が来たという事は。」
初月「うん。そろそろ敵が抜けてくるだろうからって提督からの指示だ。」
現実的な話上空で空戦を行っている戦闘機だけで敵の攻撃機全てを落せる訳がない。
提督「時に大佐。この船の喫水線防御なんですが。」
大佐「強度としては大戦時の大和級準拠ですよ。」
提督「流石に色々と資料を残されている国は違いますな。」
大佐「大和級の固さは我が国にとって悪夢でしたからね。」
大佐「深海棲艦達の使う魚雷が大戦時の物と同じという情報を信用するなら
単純に喫水線下の防御を固めるのが対策として至極簡単です。」
大佐「おかげで基準排水量がかなり増える事になってしまいましたがね。」
提督「さてと、接触と磁気、どちらの信管か。」
大佐「接触だと思いますよ。」
提督「ですかね。」
誘導装置が魚雷に搭載されたのは先の大戦も終戦間近、今までの深海棲艦達からの攻撃データーからの判断でも。
提督「敵の魚雷は接触式信菅とみて動きますか。」
そして、針路変更の指示を出す。
379 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:20:56.88 ID:4HB+eitj0
提督「面舵20度」
大佐「艦の進行方向を変えますか。」
提督「魚雷からの回避行動といえばジグザグ航行が一般的ではあります。」
提督「ですが、うちの防空艦連中の腕を信用するならばこの程度の針路変更で問題ないですよ。」
強襲揚陸艦が針路を変える少し前。
初月率いる対空兵装を満載した防空駆逐艦隊は提督の指示に従い
上空の防空網を抜けてくる敵機を探す為空を睨んでいた。
初月「そこだぁ!!」
初月の長10cm砲、対空機銃が豪快な音を立て上空の網を抜けてきた敵艦攻隊を撃ち落とす。
ドドドドンドンドンドン!
キンキンキンキン!
ボフォースからの薬莢が海中へ綺麗な放物線を描きながら消え
傾き始めた西日を受けきらきらと戦場に不釣合いな美しさを描き出し海中へ消えていく。
初月「ここは通さない!」
初月達防空艦達の対空砲火を浴び敵機が次々と火達磨になり消えていく。
だが、艦攻の役割は魚雷を投下し敵艦へぶつける事がその主目的である。
撃墜されたとしても魚雷を落せれば勝ちなのだ。
初月の対空砲火を浴びた敵機が、当たれば儲け、鼬のなんとやらとばかりに魚雷を投下した。
グラ「初月!魚雷が!」
初月「くそぅ!この方向はまずい!」
雷跡が提督達が乗る強襲揚陸艦へと走る。
が!
提督「当たらんよ。」
敵機から放たれた魚雷は強襲揚陸艦の左舷艦首先を駆け抜けていく。
提督「面舵30度。」
淡々と操舵指示を出す提督。
380 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:22:36.62 ID:4HB+eitj0
大佐「魚雷が来る事も予想されていた……、
というより射線を制限しているという方が正しそうですね。」
提督「あぁ、やはり分かりますか。」
大佐「自分の部下を完全に信用しているから出来る芸当とは思いますがそこまで部下に命を預けれますか。」
提督「流石に配られた手札で勝負せにゃならんですからね。
いかさま無しの一発勝負となれば手前の手札をいかに有効活用するかですよ。」
大佐「成程。」
そして、机代わりのモニターに広がる数字を見て。
提督「敵の数がこちらの3.5倍は居るようですからね。打ち漏らしも出て当然と考えないといけませんよ。」
大佐「という事はこの艦が被雷、被弾することもあると言われる。」
提督「出来れば無いと願いたいですがね。まぁ、そこの所は神に祈りましょうや。」
大佐「神に祈るですか。」
これまでの用意周到振りを考えれば似つかわしくない言葉。
提督「たまには神様に仕事をしてもらわないと、
いざという時に仕事の仕方を忘れていたじゃこちらが困りますからね。」
大佐「ははは。」
381 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:25:11.77 ID:4HB+eitj0
再び海上
グラ「流石Admiral 魚雷が抜けることも考えて予め回避行動をとっていたか。」
そう、提督は上空の防空網にわざとに穴を開けていた。
全ては敵の攻撃機がそこの穴から攻撃を仕掛けてくる様に仕組む為に。
それは城にわざとに攻めやすい弱点を設けることで
敵の攻撃をそこへ集中させ守りやすくする篭城戦の基本戦術のようである。
だが。
初月「まるで僕が失敗をするのを見越していたようで癪にさわるな。」イラッ
決してそうではないのだが。
初月「これより全ての敵機は通さない!」
初月「全防空担当駆逐艦に編隊長初月の名において命ずる!」
初月「これより我ら修羅になる!敵機は一機残らず血祭りだ!」
382 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:25:53.49 ID:4HB+eitj0
提督が艦を動かしたのは万一に備えての事であり決して初月達の能力を侮ったからではない。
しかし、この行動は初月のプライドを著しく傷つけた。
更に避けていなければ被雷していたという事実もその初月のプライドを傷つけるのに拍車をかけ、
より闘志を燃え上がらせる燃料となる。
だけに。
初月「そ こ だ ぁぁぁぁあぁあぁぁ !!!!!!」
ワルツを踊るように滑らかに駆け抜け機銃弾の薬莢、長10cm砲から上がる砲煙。
そして秋月型特有の白を基調とした制服は日が傾き橙色に染まる海上へ彩を添えた。
グラ「ほう、なかなかこれは。」
美しいものだなと声がでかかるが戦場という美と程遠い世界に居るものが
語るべきではないなと思い続く言葉を噤むグラーフ。
ポーン!
グラ「流石に数を頼みとする深海連中だけある。」
身に着けるウェラブルグラスには敵の編隊がまだまだ相当数いる事が表示されている。
グラ「とっ、2―D―02からのお客さんか……、これは瑞鳳のエリアだな。」
格闘王瑞鳳。
グラ「相手が哀れと言うかなんというか。」
狂気王瑞鳳。
グラ「Admiralが艦後方に位置する所に配置しているのはそういう事なのだろうな。」
瑞鳳の配置場所は米軍からの借り物でありゲストのサラトガの近く。
グラ「味方であれば心強いのではあるのだがいかんともなぁ。」
383 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:27:36.32 ID:4HB+eitj0
瑞鳳常識無知也。
瑞鳳「んふふふん。」ヌチヌチヌチ
その少女はポールダンスを踊るストリッパーの様に体をくねらせ全身から歓喜の声を上げていた。
瑞鳳「あっ、駄目、溢れてきちゃう。」
戦場に長く身を置く事で常識感覚が欠如して戦闘狂になる兵士というのはよく居る。
瑞鳳「あっ、んっ、あっ。」
戦闘狂であれば御する事は容易い。
しかし本当に危険なのは狂っていながらも冷静さを併せ持つ相手。
88所属の瑞鳳はネームド制度が終った後に艦娘になった為二つ名持ちではない。
彼女は敵を殺すことに快楽を求め、
性的要求を満たす為に敵をさながら蟻を潰すかのごとく嬲り殺すことが好きだった。
その残虐性に一緒に出撃していた艦娘がPTSDを発症する事も珍しくなく、
敵を時間を掛け嬲り殺す事を最大の快感とし、
それを止めようとした味方艦娘を殺しかけた事が原因で此処に流されてきた。
そして、提督はそれを受け入れた、曰く。
「敵を確実に殺すんなら何も言わんよ。結果を出し続ける限りはお前の味方だ。」
今まで瑞鳳を狂っているとした鎮守府の無能達と違い彼は結果を出せばどうでもいいと、
瑞鳳に道端へ転がる石を見るような無関心とも言える冷たい視線をくれるだけだった。
それが瑞鳳にどういう印象を与えたのかは不明なのだが。
384 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:28:51.66 ID:4HB+eitj0
瑞鳳「んっ、あっ、提督ぅ〜。」ビクビクッ
絶頂を向え暫しの余韻の後、改めて自己担当空域に迫る敵の数を確認する瑞鳳。
瑞鳳「んっ、さて、私の場所を守るためにも頑張らなきゃ。」ホウッ
お漏らしをした様に濡れた袴。
愛液が滴る指を振りその雫を飛ばした後、
彼女は意識を既に上空へ展開済みの自己艦載機群へと向ける。
瑞鳳「さぁてと……、徹底的に嬲り殺そうかぁ。」ニタリ
グロロロロロ
零戦のエンジン音が甲高くなり増速を始める。
敵機が進入してきている高度はやや低め。
高度にして6000m。
瑞鳳が使う、否、帝国海軍が様々な悲しい事情も含めて
終戦時まで主力として使用した零戦シリーズが得意とする高度である。
じゅるり。
待ちきれない。そして、来た。
敵機を見つけ、瑞鳳は今か今かと待ちわびる自己艦載機編隊に迎撃の指示を下した。
385 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:30:47.59 ID:4HB+eitj0
「全機突撃じゃぁ ―――――――― !!!」
「おはんら深海の蛸どは鬼ころ飯じゃぁ !!!」
「ちぇすとぉぉぉぉぉ ――――――― !!!」
「命(たま)置いてけやぁ ――――― !!!」
機体に色とりどりのペイントアート。
戦闘機の塗装は空に溶け込むもの、
あるいは海上の色に溶け込むものを使用するのが主なのだが。
その零戦の一団は機体全体に派手派手しく極彩色の塗装がされていた。
それら機体に乗る妖精達は使用者の瑞鳳が頭一つ跳び抜けて狂気を持っている影響もあってか狂気の塊。
しかし。
その空戦格闘技術はまぎれもない本物。
「貴様(きさん)しんどけやぁ ―――― !」
槍合わせの形になる正面からの突撃!
方向桿を操作し操縦桿を逆方向へ入れ機体を横滑りさせる!
「奪ったどぉ ――――― !」
横滑りしながら正面敵機を撃墜!
正面突撃を全力ですれ違った零戦の後ろをまた別の敵機が取った!
速度は悲しいかな零戦の方が遅くエンジン馬力も深海棲艦の最新鋭機と比べれば非力。
だが、瑞鳳航空隊の狂人妖精達には誰一人としてそれを不利とするものは居ない!
後ろを取られた瑞鳳隊の零戦が敵機から逃れるべく上昇を始めるがその後ろを敵機が猛追!
そして、上昇を続ける零戦は暫くすると急に失速し機体が左右に振れ始めた!
これは決して操縦を誤ったものではない、狙って行っている操縦である。
そう!零戦の運動性能だからこそ可能とされる戦技!
木の葉落とし である!
木の枝から葉っぱが地面へ落ちるように左右に大きく揺れながら動く為
その名が付けられた空戦機動戦技である!
失速した零戦を追い越した敵機の背後に付き直す零戦!
「ちぇすとおぉぉぉ ―――――――― !」
気合一声、敵機撃墜!
零戦の性能で垂直上昇時の失速は零戦の機体性能では起こり得ないともされるが
彼らはそれを無理やり、そう、道理を力で捻じ伏せる事で可能にしていた。
386 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:32:00.32 ID:4HB+eitj0
「そこんお前(はん)!命置いてけやぁ ―――――― !」
視界の端に見えた敵機へ急降下をかけ撃墜。
敵機が撃墜され搭載燃料や弾薬に火がつき方々であがる艶やかな華。
「ここが戦場(いくさば)、命捨てがまるは今ぞ!」
狂人戦闘機集団。
搭乗員妖精は使用者である空母艦娘が撃沈されない限りは熟練度が落ちこそすれ同じ存在として黄泉還る。
だからこそ。
「はぁっはっはっは!共に黄泉路を逝きたもっそ!」
ぼうぼうと別の敵からの銃撃により機体から火の手があがる零戦。
建て直しが出来ないと判断するや手近の敵機へと突っ込み戦果を積みあげ、逝った。
彼らの思想はいたって単純明快。
「瑞鳳の姫御さえ残れば俺達が勝ちじゃぁ!」
そう、軽空母艦娘瑞鳳さえ残れば勝ち、大将さえ生き残れば勝ちなのだ。
であるからこそ、戦闘不能となれば敵機へ突っ込む事になんら躊躇いはない。
387 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:33:32.40 ID:4HB+eitj0
深海空母機動艦隊
ヲ級F「あっ頭が狂ってやがる!」
気配、殺気や狂気に色があり目に見えるとしたらきっと丹とか真紅とか鈍錆とかだろう。
瑞鳳の艦戦部隊がとる狂人の戦い方は相手取る深海棲艦達を震撼させた。
まともな相手なら、武人として相手とれるなら戦う事も誉れになるだろうが。
ヲ級F「ひぃっ!笑いながら突っ込んで来る!」
自己管制下の艦載機に意識を乗せていれば特攻をかけてくる瑞鳳隊妖精の顔も見え、
その搭乗員妖精はひとり残らず狂喜の笑顔。
死ぬ事を喜びとする狂人のそれ。
自分の命を路傍の石程度にしか考えていない狂気のそれ。
ヲ級F「来るな来るな来るなぁ!!」
一機一機を細かく操縦している深海棲艦は艦載機から受ける情報は艦娘より多い。
その為、瑞鳳の艦戦隊から伝わってくる狂気は空母深海棲艦を恐慌へ駆り立てた。
「ん?ぼかっと動きが鈍なった?」(急に動きが鈍くなった?)
耐え切れなくなったヲ級が自己艦載機との意識の接続を切ったのだ。
先ほどまでの精細を欠けば精鋭狂人達の相手ではなく結果、
瑞鳳の受け持つエリアに侵入した敵艦載機は一機残らず撃墜された。
瑞鳳「ねーねー、グラたーん。瑞鳳の応援いりゅ?」エヘヘ
グラ「申し出はありがたいがそろそろ完全に日も落ちる。敵も一旦引き上げるだろう。」
グラ「となれば私達の艦載機も一旦収容する必要があるかと思う。」
瑞鳳「あっ、うん!そうだね!そうだよね!じゃぁ、夜間ハラスメントいきゅぅ?」
グラ「あぁ、エスコートさせていただこうか。」
瑞鳳「グラたんのそういう優しい所好きぃ〜!」
無線での可愛らしい(?)やり取り。
388 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:34:42.43 ID:4HB+eitj0
強襲揚陸艦 艦橋内作戦司令室
提督「秋津洲。二式大艇は全部降ろしてくれ。」
秋津洲「いいの?」
提督「夜間警戒を考えれば欲しいところだが替えが効かない。」
提督「夜間の敵が見えない状況で落とされるほうが痛い。」
提督「夜間の警戒は外周のピケット連中とグラーフの夜間機に任せる。」
提督「明日に備え休んでくれ。」
秋津洲「了解かも!」
インカムを通してやり取りをする提督。
提督「不知火。ちょっと眠気覚ましに顔を洗ってくる。
その間に被害状況を纏めておいてくれ。」
不知火「了解です。」
389 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:35:45.95 ID:4HB+eitj0
艦内 士官用 個室
びちゃびちゃと吐瀉物を吐く音が室内に響く。
提督「なかなか。きついなぁ……。」フィ
「ねー。」
提督「なに勝手に入ってきてるんだ?」
「そろそろご飯の時間だからリクエストをと思ったっぴょーん。」
提督「何か見たか?」
「げーげー吐いてる汚いおっさんを見た。」
提督「見てたか。」
「うん。」
提督「他の連中には黙っていろよ?」
「指揮官が体調崩してるなんて吹聴して回るほど野暮じゃないよ。」
提督「…………、ちげぇよ。プレッシャーに弱いだけさ……。」
「プレッシャー?」
提督「あぁ、毎度の事だが鎮守府総勢を動かすとなるとな。敵もやはり強力だからな。」
提督「被害0なんて事はまず無理だ。」
「そんなものかなぁ?」
提督「誰も死なずに勝つなんてのは物語の中だけだ。」
提督「昨日まで一緒に飯食ってた間柄の奴が今日死ぬとかがざらだ。」
「繊細なのねぇ。」
提督「毎度毎度、胃がきりきりと痛むのさ。」
提督「俺の指示が一つ間違えば全員死ぬなんてのが有り得る。」
提督「傲岸不遜で通して行きたいがな。やはり不安なのさ……。」
「じゃぁ、夕飯は胃に優しいもの作ってあげるぴょん!」
提督「あぁ、頼む。」
吐いた物を洗い流し、口元を含め綺麗に顔を洗い、改めて気合を一つ。
そして、提督は艦橋へ再び戻ってきた。
390 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:36:13.24 ID:4HB+eitj0
艦内 士官用 個室
びちゃびちゃと吐瀉物を吐く音が室内に響く。
提督「なかなか。きついなぁ……。」フィ
「ねー。」
提督「なに勝手に入ってきてるんだ?」
「そろそろご飯の時間だからリクエストをと思ったっぴょーん。」
提督「何か見たか?」
「げーげー吐いてる汚いおっさんを見た。」
提督「見てたか。」
「うん。」
提督「他の連中には黙っていろよ?」
「指揮官が体調崩してるなんて吹聴して回るほど野暮じゃないよ。」
提督「…………、ちげぇよ。プレッシャーに弱いだけさ……。」
「プレッシャー?」
提督「あぁ、毎度の事だが鎮守府総勢を動かすとなるとな。敵もやはり強力だからな。」
提督「被害0なんて事はまず無理だ。」
「そんなものかなぁ?」
提督「誰も死なずに勝つなんてのは物語の中だけだ。」
提督「昨日まで一緒に飯食ってた間柄の奴が今日死ぬとかがざらだ。」
「繊細なのねぇ。」
提督「毎度毎度、胃がきりきりと痛むのさ。」
提督「俺の指示が一つ間違えば全員死ぬなんてのが有り得る。」
提督「傲岸不遜で通して行きたいがな。やはり不安なのさ……。」
「じゃぁ、夕飯は胃に優しいもの作ってあげるぴょん!」
提督「あぁ、頼む。」
吐いた物を洗い流し、口元を含め綺麗に顔を洗い、改めて気合を一つ。
そして、提督は艦橋へ再び戻ってきた。
391 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/30(月) 00:37:21.36 ID:4HB+eitj0
また二重投稿やってしまった……
>>390
は見なかった事にしてください
392 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:41:21.40 ID:4HB+eitj0
艦橋内 作戦司令室
提督「前半戦は終了だ。こっから先はブラフをいかに効かせるか勝負だ。」
提督「配られた手札は変えれねぇ。不知火。被害報告を頼む。」
気合を入れるかのような独り言を一つした後、不知火からの報告を受ける。
不知火「撃沈ですが外周ピケット担当艦の駆逐艦娘が4名。
防空担当艦に2名。空母艦載機艦戦隊の損耗が搭載機数の5割です。」
提督「グラーフ達以外が結構落とされた感じか。」
精鋭揃いといえど規格外はほんの一握り。
提督「存外、被害が少なく済んでいるな。」
大佐「流石ですね。」
提督「えぇ、ここまで少ないのは後の作戦も有利に運べますからね。」
「General!」
大佐と会話をしている所に指揮官としてのジェネラル呼びで提督を呼び出す声がする。
提督「指揮官の少将提督だ。サラトガか?どうした?緊急事態か?」
所属はあくまで米軍。
その為指揮権を一時的に借り受けている形の為階級での呼び出しをしてくるとしたら
サラトガかアイオワのどちらかだろう。
そして、タイミングがグラーフ達へ夜間ハラスメントを指示しようかとしてのタイミングだった為
サラトガかと推測したのだが、それは間違いではなかったようである。
「サラの子も参加させていただいて良いでしょうか?」
提督「?」
提督「夜間攻撃機を所持しているなら是非お願いしたいが……?」
F6F-5Nといった機材は米軍から日本海軍へも供与されている。
わざわざ使用許可を取るような物ではないはずと頭で考えれば目の前の大佐がやっちまったの表情。
ははぁ、成程。
提督「大佐、新鋭機をお持ちですか。」
しかも夜間攻撃へ移ろうかというタイミングでの申し出。となれば夜間攻撃機で間違いない。
大佐「すみませんね、隠す心算ではなかったのですが。」
新鋭機ともなれば同盟相手でも出来れば秘匿しておきたい物だ。
この狸め、と思いながらどんな新鋭機が出てくるのやらとはやる気持ちを押さえ訊ねる。
393 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:42:47.50 ID:4HB+eitj0
提督「サラトガは一体何を持ってきているのですかね?」
大佐「F7Fですよ。」
こいつぁ驚いたと提督が驚いた顔をして見せればしてやったりの大佐。
双発艦上戦闘機、それも夜間用とくれば3Nのレーダー強化型に違いない。
しかし、指揮権を借り受けているとは言え
秘匿しておきたい新鋭機をわざわざ自分に使用許可を求めてくる辺り……。
どうやら大佐も苦労してそうだと、なんとはなしに同情を禁じえない。
提督「うちにも是非、融通していただきたいものですな。」
明石のルートに出回ってないという事は完全に試作も試作。少数生産も良いとこの物。
何とは無しに明石の悔しがる顔が思い浮かぶ様である。
大佐「それは……、少将次第でしょうか?」
含むような言い方に言外の意図を悟る。
提督「休憩がてら甲板に出ますか。夜間攻撃はあくまで嫌がらせですからね。」
提督「グラーフ。」
レシーバーのスイッチを入れグラーフを呼び出す。
394 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:43:55.02 ID:4HB+eitj0
グラ「Admiral、何か用かな?」
提督「夜間攻撃の指揮はお前に任せる。編隊の数が少ないから任せても大丈夫だろ?」
グラ「承知した。」
提督「頼む。」
提督から頼むといわれグラーフは瑞鳳隊の援護の為、自己艦戦隊の夜間攻撃機を上げる。
グラ「Adler隊は上空援護、Falke隊が下りてUhu(鷲ミミズク)隊があがってからだ。」
Uhu隊、その愛称を部隊名にそのままに艦載型へ無理やり改造した部隊。
He219改艦上型 双発夜間攻撃機であり機上レーダーを積んだ夜の愛し子。
グラ「さてと瑞鳳の方はどうであろうか?」
瑞鳳「大丈夫、彗星艦爆隊は準備万端なんだから!」
頭がおかしい狂人集団の中でも一際いっちゃってる搭乗員妖精が乗る艦爆隊。
彼らは夜間攻撃隊でありながら急降下爆撃もやるいかれ。
瑞鳳「がんがん殺っちゃうんだから!」
サラ「Hi ! Generalから許可をいただきました!サラの子も護衛しますね!」
といってもその武装は胴下パイロンに魚雷を一発抱える艦攻仕様でこちらも同じく殺る気まんまん。
血の気の多い姫達だとやれやれ感のグラーフ。
期せずしてここに独、日、米の夜間攻撃隊が揃い踏みとなった。
395 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:45:29.28 ID:4HB+eitj0
強襲揚陸艦 甲板
提督「煙草を吸ってもいいですかね?」
相手からの承諾を得て手持ちの紙巻に火を点ける。
ふいと一息。
「それで 「まずはお話したいことが。」」
二人同時に話始め。どうぞどうぞと譲りあった後、提督から話が始った。
提督「米軍は私達からの応援要請がなくても自分達だけで出撃される心算だったんではないですかね?」
無言の肯定。
提督「うちの不知火がそちらに救援への援助打診をした後が早すぎたのが気になりましてな。」
提督「あらかじめ準備済みだったという気がしてならんのですよ。」
提督「それが悪いとか言うつもりは一切ありませんし
寧ろ大助かりな現状をみれば何ゆえにそれを備えていたのかを伺えないですかね?」
暫しの間が空き。
大佐「成程、ペンタゴンの分析通りのお方のようですね。」
CIAではなくペンタゴンね。と心の中でごちる提督。
大佐「我々は現在救援に向っている拠点が敵に襲撃を受けていた事は事前に把握していました。」
大佐「ですが、そこはそちらの海軍の拠点であり我が国が同盟国であったとしても。」
提督「勝手に救援を派遣するのは侵略行為と他の国にとられかねないでしょうね。」
そう、仮に同盟相手が攻撃を受けていたとしても救援の要請が無い限り
勝手に動けばそれは内政干渉であり侵略行為の烙印を押されかねない。
大佐「我が国が攻撃を察知した時点でそちらの上層部、軍、政府双方へ
外交ルート等を用いて救援の必要性を説いていたのですよ。」
はて?ならば何故軍令部が把握していなかった?
単純な疑問が思い浮かぶがそれの答えは提督が口に出す前に大佐が答えてくれる。
396 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:46:44.52 ID:4HB+eitj0
大佐「我が国は少将提督の国の上層部に強い懸念を抱いています。」
成程、つまりはそういう事か。
提督「情報を止めた連中が居ると。それも思いもかけないような上の方に。」
提督「それでは、独自に私が救援に出ると言う話を持ちかけたのは渡りに船だったという事ですか。」
大佐「その通りです。因みに我々の方でも救援に向う上で日米合同の形を取りたかったですからね。
その上で少将提督の鎮守府に出撃していただきたかったと言うのはあります。」
大佐「そして、今後を見据えて我が国の利益を守る為にも少将提督には協力者であって戴きたい。」
本題が来たかと思う提督。
そして、成程なと得心。
言葉の端々に大佐が同じ軍人でもエスタブリッシュの出身臭い教養を感じては居た。
米軍人としての出世コースの一つである潜水艦乗りとしての知識、
かと思えばミュージカル等の文化教養も備えている。
加えて自分より随分と若そうでありながら中将の補佐として観戦武官も勤め上げる。
397 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:49:42.12 ID:4HB+eitj0
提督「質問ばかりでなんですが大佐はTIMEの表紙を飾られるおつもりですか?」
大佐「今ではなく4年後に。」
提督「州知事?上院議員?どちらの道を進まれるおつもりですか?」
大佐「はははは。少将提督は実に聡いお方だ。」
大佐「今後とも、どうぞ良しなに。」
質問への答えをはぐらかすように握手を求める手。だが、答えは既に出ている。
398 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/30(月) 00:50:46.99 ID:Cs8Z4y0/O
乙です。
更新されてないか毎日確認するのが日課になる程楽しみにしてました。 良かった〜
人間なんだからミス位しますよ、気にしない気にしない。
399 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:51:52.17 ID:4HB+eitj0
提督「えぇ、今後とも宜しく。
それで今後も仲良くする為に教えていただきたいのですが
この船の乗員は海兵隊の者が多いようですが拠点救出後は制圧作戦でもするつもりなのですかね?」
大佐「必要とあらば。体つきで分かられましたか。」
同じ軍人でも特殊部隊員と一般機関員とではやはり色々違い、ろくでもねぇと思うが。
提督「何ゆえにかの理由をお教えいただけないですか?
まさか星を1つ増やす目的ではないでしょう?」
大佐「この救援作戦は南太平洋での潮目を変えるのは間違いないでしょう。」
大佐「南太平洋一の大国との航路が復活すれば資源や食料、その他色々の輸出入が活発化します。」
提督「パワーバランス、軍事ではなく経済の方での問題ですか。」
大佐「えぇ、我が国がこれからも優位を保ち続ける為に。」
えげつない。敵からの監禁が味方からの監視付監禁に変わるだけか。
とはいえ解放した後の海上航路の護衛を向こうが引き受けてくれると言うのなら利用しない手は無いだろう。
日本に余分を裂くだけの国力は無い。
提督「我が国の担当をきちんと同席させてケーキの配分にありつけさせていただけるんでしょうか?」
大佐「もちろんですよ。」
提督「公文書館に残る形でお願いしたいもんですね。」
口約束では困る。
大佐「決定権のある上に上申しておきましょう。」
ここまで準備出きる権限を与えら得ている人物の上。
恐らくはアメリカという国を一人称で語れる人物。
大佐の後ろ盾を垣間見たようで少し背筋に冷たいものを感じる。
大佐「余計な詮索はおよしくださいな。お互いの為にも。」
そういい残し大佐は艦内へと帰って行った。
深く、ちりちりと煙草が一気に燃え尽きるまで肺に煙を送り深く深く吐き出す。
そして、兎型の携帯灰皿で火を消す。
提督「予想以上にこっちの尻に火が付いている状況か。」
提督「ろくでもねぇ。」
吐き捨てるように呟くと提督もまた艦内へと戻っていった。
400 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/30(月) 00:59:58.55 ID:4HB+eitj0
レス数を抑える為に1レスに詰め込もうとすると改行のしすぎって怒られますのん……
今回の更新はこれにて終了です、当初の予定が大幅に狂っています、ごめんなさい、まだ結構続きそうです
計画性の無さが露呈していますが宜しければ今後もお付き合いいただけると幸いです。
次回嘘予告他
どこかの鎮守府
大淀「提督が死んでいる!」
明石「……、頭を鈍器で殴られたようですね。」
明石「これは…、南瓜?」
大淀「まさか!?」
涼月「てっ提督がわるいんですよ…。」
涼月「南瓜はもう飽きたって言われた提督が……。」
88鎮守府
提督「上官を撲殺。」
不知火「ですが対空に関しての戦績はなかなかのようです。」
提督「何が原因なんだ?」
不知火「痴情のもつれと書いてありますが。」
提督「困ったもんだ、まったく。」
こうしてまた問題児が一人地獄へ着任した。
Q1 グラーフの艦載機は最新鋭なのに何故瑞鳳の機体は零戦なんですか?
A 敵に体当たりして壊す事が多いのでその度に買い換えていたらお高くなる為コスパ優先だからです
Q2 サラトガの機体はどうしてF7Fなの?もっといい機体あるじゃん!
A 双発機のロマン優先です。
またF8Fの夜間攻撃機もありますが調べている上で武装がロケット弾等になっていた為採用を見送りました
感想、応援レスいつもありがとうございます!いつも楽しみにしています!よかったら気軽にレス下さい!(レス乞食)
以上で本当に更新終了です、ではまた次回の更新でお会いしましょう!
401 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/30(月) 01:04:54.18 ID:4HB+eitj0
エリア88モチーフなので空戦描写をどこかで入れたいと思ってやりました後悔はしてないです
燃え系のSS増えないですね、追っかけてた方のまた止まっているし……
増やす為にはまず自分からの意思もあり書き始めたものの別のところでやったほうがいいのかしら……
萌え系SSは多いのだけど、なぜでしょうねぇ……、ぐぬぬ
需要が少ないであろうSSにお付き合いいただいている皆様に改めての感謝です
402 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/30(月) 11:43:01.59 ID:C719rEF5O
確かに燃え系は少ないねぇ
だからこそここを楽しみにしてるのもあるんだけど
あとうーちゃんに出番あって嬉しかったw
おつ!
403 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/30(月) 11:58:55.93 ID:Cs8Z4y0/O
乙です。
萌え系が多いからこそ、この燃え系が際立ってます。
更新されてるのが嬉しくて、作者殿が投下してる時にコメ打ってしまい作者殿、読者の方々申し訳ありません。
404 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/30(月) 16:50:15.79 ID:eFB3GoitO
グラーフの妖精さん達は、あの姿でこの会話をしているのだろうかw
ずほの妖精さん達は薩人マッシーンじゃないですかーやだー
戦場にいるシェフとかもうアレじゃん!
勝ち確じゃない!
とツッコミ満載で楽しかったです。
405 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/30(月) 18:36:17.82 ID:QVQRpYBUO
だが待ってほしい。沈黙の戦艦だった場合乗ってる船が……
406 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/30(月) 19:11:31.66 ID:Cs8Z4y0/O
405>>
あれはマズイ料理作るコックのおっちゃんだったからヘーキヘーキ
407 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/30(月) 20:34:11.71 ID:q8mFYEtB0
空戦中エクスクラメーションマーク山盛りだったけどちょっと多すぎで熱くなるより軽くなってしまった感w
大佐の取り扱いは至難を極めそうだなあ、提督が目を離したらあっという間に内地に食い込んでいそう
乗りたくもない御輿に乗せられんように気をつけないと
408 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/30(月) 22:07:28.93 ID:S7i/OmjHO
番外編でうーちゃんの1日が見たくなった
仕込み終わったら何してんだろね
409 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/31(火) 20:58:08.72 ID:i9bYQBct0
新谷世界にはファントムで木の葉落としやるイカレ自衛官がいたなそういや
410 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/06(月) 09:59:36.89 ID:aKOmevrqO
薩人マッシーンが居るってことはだ。
筋肉モリモリマッチョマンの変態な妖精さんも居る可能性が?
セガールは鎮守府にいたし
411 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/06(月) 12:51:41.83 ID:q/J8+Z29o
ちょっとエリアが違うと変態仮面もいるからなぁ
412 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/12(日) 09:09:35.72 ID:Rhs3aauG0
空母の夜戦のダメージだと夜間ハラスメントって良い表現かも
413 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/12(日) 23:56:04.74 ID:G/dalB0W0
夜になっても気温が落ちない……
毎日暑いですね、頭に話は浮かんでもなかなかアウトプットにまで時間が掛かる……
本日の更新に参りました、お時間宜しければお付き合い下さい
414 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/12(日) 23:57:54.04 ID:G/dalB0W0
強襲揚陸艦付近 海上
グラ「夜間攻撃に出ている部隊が敵と接触するまで少し時間があるか。」
グラ「サラトガに瑞鳳、よかったら珈琲はどうかな?」
無線での珈琲ブレイクのお誘いに二人がグラーフの元に集まる。
瑞鳳「流石グラたん。珈琲美味しいね!」
サラ「うぅ〜ん。実にperfectな味です。」
夜間攻撃隊を出しているのは3人だけであり
その管制を行う者が一箇所に固まるのは良くないのだが。
瑞鳳「南の海でも夜は少し冷えるね。」
グラ「ならば私のマントを貸そう。」
瑞鳳「やだ、グラたん。天然スケコマシなんだから…… /// 」
瑞鳳「そういう所愛してるぅ〜 /// 」ダキツキ
ポーン!
グラ「あぁ、ありがとう。さてと、とりあえず、
此方の部隊が敵に届け物をするより先にお客さんがお越しのようだ。」
サラ「確かに、電探に機影が幾つか反応しているようですね。」
ウェラブルグラスに新たに表示される敵編隊襲来の報。
先遣隊と接触することなくどうやら上手くすれ違ったようである。
抱きついてきた瑞鳳を体から剥がしながらサラトガのほうに向き直る。
グラ「こちらに夜間攻撃機があるなら当然相手にもあると考えて当然であるな。」
サラ「でしたらサラにお任せいただけますか?」
ふわりとスカートの裾をたくし上げる。
415 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/13(月) 00:01:21.03 ID:tMhG3Ubb0
サラ「サラはお茶会を邪魔する不埒な深海棲艦を許しましょう。」
あら大胆と瑞鳳が感想を漏らす間に
スカートのドラムマガジンをトミーガンに模した射出装置に嵌める。
グラ(ほう、心が広いのだな。)
思ったよりまともなのかなとグラーフが感想を抱いて直ぐ後。
サラ「だが!このトミーガンが許すかなぁ!?」
憤怒の相をしたサラトガがサブマシンガンをぶっぱなし始める。
グラ ブフォー
瑞鳳 ブハー
サブマシンガン特有の弾のばら撒きが始まり強烈な音が
けたたましく空間に響き渡り艦載機が顕現し夜空へと消えていった。
サラトガ「ふぅ〜、快感 /// 」
一仕事やりとげた。そんな晴れやかな顔を見せるサラトガ。
夜の闇にF6F-5Nが舞い上がり溶け込み消えていく。
暫くすれば仕事をきちんとこなしているのか方々で火の手が上がるのが見える。
グラ「ふむ、私の部隊とスコア勝負をしようというのか。面白い。」
グラ「見せてもらおうか。合衆国の夜間攻撃機の性能とやらを!」
どうやら艦隊の上空警戒として先に上がっていたグラーフの夜間戦闘機と
サラトガの夜間戦闘機の搭乗員同士無線での会話で撃墜数勝負をする事が決まった様である。
しかして30分もすれば勝敗が決まる。
サラ「Oh My God …… 」
グラ ンフ― (ドヤッ)
416 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/13(月) 00:01:46.76 ID:tMhG3Ubb0
このドイツ人!新人への容赦なし!
グラ「さてと、勝負であったからな。」
ずいと差し出すのは手袋を嵌めた両手。
サラ「これを差し上げたのは内緒にしてくださいね。」
グラ「勿論だ。」ンフー
勝負に勝ったグラーフはサラトガから夜間戦闘機F6F-5Nをカツアゲ、
ではなく善意で1機、コレクション目的で受取っていた。
417 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/13(月) 00:05:58.72 ID:tMhG3Ubb0
グラーフ達が迎撃に当たっていたその頃、
提督は艦内でせわしなく作業をしている明石を見つけ色々打ち合わせを小声で行っていた。
明石「流石アメリカ級ですね。
艦内に手術室やらまぁ、まぁ、色々充実してますよ。」
提督「ワスプ級の拡大発展型だからな。その辺も数は増えているだろうさ。」
明石「キッチンがちょっとしょぼいと感想も聞きましたけどね。」
提督「あいつは料理……、そうだな料理が生きがいだからな。」
明石「たまに料理に違う意味も混じってきますがそれは置いておきましょう。」
明石「ところで提督はどういった御用ですか?」
提督「分かっているんだろ?俺はこいつの簡易ドックのシステムが欲しい。」
提督「データとして持って帰れそうか?」
明石「流石に提督は悪ですねぇ。御参考にどう使うか教えていただけます?」
提督「コンテナモジュール化できないかなと思っているんだ。」
明石「ははぁ、成程。」
提督の考えはこうだ。簡易入渠施設を海上輸送に使用される
12フィートコンテナに納まるように改造、
ひとつのユニットとして独立させるという物である。
コンテナという規格の中に押し込めることで簡単に運搬、展開が出来るようになる。
こうする事で貨物タンカーや鉄道貨物、あるいはトラックに載せて海上、陸上。
場合によっては貨物輸送機からの現地への投下。
すばやく艦娘を展開する為に必要不可欠な修理施設を設置可能になるという考えなのだ。
提督「コンテナでモジュール化しておけば
貨物タンカーが移動鎮守府として使えなくもないだろ?」ニヤリ
明石「提督の考えはどちらかというと見た目の偽装に重きが置かれているようですがね。」ニヤ
提督「お前には敵わねぇな。」
明石「付き合いが長いですからね。」
提督「じゃぁ、まぁ、そういう訳だ。頼むよ、あぁ、それから飯について何か聞かれたら
あいつには艦橋に持ってきてくれと伝えておいてくれ。」
提督「あとな、他にもぶっこ抜いてるデータ、ばれない様にしとけよ?」
明石「勿論ですとも。」
去り行き際に小声で注意する提督に同じく小声で返す明石。
悪巧みは計画的かつ内密にという奴なのである。
418 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/13(月) 00:09:02.64 ID:tMhG3Ubb0
艦内をぐるりと色々見て回って後。
提督は艦橋にある作戦司令室へと帰って来た。
提督「いやぁ、休憩ついでに物見遊山とばかりに
艦内を散歩してきたのでお待たせしました。」
大佐「いえいえ。私のほうは先に夕餉をいただいていますよ。」
大佐「実に腕前のいいコックをお持ちですね。」
提督「料理の質は士気に直結しますからね。」
不知火「司令。グラーフさんから此方に襲撃をかけてきていた
敵夜間攻撃隊の迎撃を完了したとの報告が来ています。」
提督「敵に追加を出す余裕は無いだろうが一応第二陣、第三陣の可能性もあるから
気を引き締めて引き続き警戒に当たるよう指示を出してくれ。」
提督「防空担当連中はどうだ?」
不知火「現時点での追加の撃沈は出ていません。
また、長門さんを始めとする別働隊には出撃をしていただきました。」
不知火「他にも再度の補給が必要だった娘達には補給をすませ
夜間のうちに交代で休憩に入らせています。」
提督「敵の機動部隊との接触は?」
不知火「現在の速度のままですと明朝、夜明けと同時くらいです。」
提督「払暁戦か。」
日の出、日の入りの時間というのは敵味方双方の判別がしにくくなる為本来は避けるのが定石。
当然ながら提督達所属の艦娘や使用艦載機に敵味方判別装置を積んではいるものの
空母艦載機は発着艦はしにくくなったり艦娘は視認性が落ちるなど積極的に仕掛けるべき時間帯ではないのだ。
提督「グラーフ達の夜間攻撃隊がどれくらい嫌がらせを出来るかが重要そうだな。」
大佐「夜間ハラスメントですか。」
提督「その重要性についてはお国でしたらお心辺りがあるのでは?」
ベトナム戦争時、ベトナム兵狙撃手による連日の夜間襲撃に業を煮やした米軍が
山一つを大量の軽機関砲に対空砲で禿げ山にしたのは軍事界隈では有名なお話。
大佐「眠らさせてもらえないというのは判断能力が落ちますから。」
苦笑しながら返事を返す大佐。
大佐「私どものサラトガも仕事をしてくれるでしょう。」
大佐「それに期待する事にしましょう。」
提督「ですな。」
提督「で、敵の機動部隊を叩いた後の話なのですが、敵の物資集積所。」
提督「デポを叩く方を優先します。」
大佐「敵の糧道を断つのは戦争を行う上での初歩ですしね。」
419 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/13(月) 00:11:20.23 ID:tMhG3Ubb0
再び強襲揚陸艦付近 海上
グラ「さてと、そろそろか……。」
機上レーダーが敵の艦隊郡を捉え巡航高度から
一気に敵艦隊に向け高度を下げ始める夜間攻撃隊。
グラ「サラトガ、一番槍は譲ろう。盛大に花火をあげてくれ。」
3人の夜間攻撃隊は艦攻、艦爆、艦戦の役割分担。
蝿叩きがグラーフの仕事ならば。
サラ「Okey−dokey まずは、定石どおり外周から、ですね!」
野戦攻城、蟻の一穴。
艦隊布陣を城に見立てるのであれば
城の本丸に陣取る大将とその護衛を引き吊りださねばならず。
城に籠もられていては倒せない。
その為にも外堀、石垣に相当する外側を突き崩し。
野戦に持ち込まないといけないのだ。
グラ「敵に祈る神が居るとすれば祈る時間が来たようだな。」
敵艦隊上空に展開する夜間警戒機を叩き落しながらグラーフがポツリ。
サラ「No、深海棲艦達の神は留守です!」
グラ「?」
瑞鳳「?」
サラ「休暇を取ってベガスに行っていますから。」フフン
得意げにドヤ顔をするサラトガ。
グラ「成程、それは痛快だな!」
瑞鳳「うふふ。瑞鳳艦爆隊、がんばっちゃうんだから!」
グラーフ達の夜間攻撃は徹底して外側のみに集中して行われた。
陣形内側にまで浸透攻撃をする必要性は零だから。
嫌がらせ、ハラスメントは敵の神経を逆撫でする事に意味がある。
420 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/13(月) 00:17:07.85 ID:tMhG3Ubb0
深海機動艦隊
駆逐「くそう!陣形外側の駆逐ばかり!」
駆逐「いや、駆逐だけを狙って?」
駆逐「そんな!いや、これは明らかに駆逐のみを狙っている!」
駆逐艦という艦種は一番使い捨てになりやすいが実の所、
一番数が居ないと駄目な艦種でもある。
数が多いが故に多少の損害も甘く見られがちだが……。
補充が利きにくい状態での損害は致命傷となり易い。
駆逐「敵の攻撃は一方向に集中されている…。」
輪形陣内の空母達で夜間攻撃可能な者達に迎撃に向わせるも。
駆逐「逃げられた!?」
蝶のように舞い、蜂のように刺す。
その嫌がらせはヒットアンドアウェーの徹底。
瑞鳳「盆の迎えに、ちょいと早いが、迎え火一つ、点けましょう〜♪」
軽い鼻歌、それこそ近所のコンビニへ買い物にでも行くような気楽さで指示を出す瑞鳳。
この瑞鳳が敵にとって最悪なのは
サラトガ隊の魚雷が当り火が灯れば損害無視の艦爆隊を突っ込ませる事。
駆逐「外周のナ級達が……!」
そして。
駆逐「うっ、眩しい!」
嫌がらせとばかりに落とされる照明弾。
夜の暗さに慣れてきている所に照明弾の強烈な光は目に刺さり、
同じくついでで音響爆弾も落としていく周到さ。
駆逐「味方同士での砲撃は止めろ!」
どんどんと響く音をすわ敵からの砲撃かと
勘違いした愚か者が音のするほうへと砲撃を開始する始末。
421 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/13(月) 00:17:35.31 ID:tMhG3Ubb0
駆逐「おのれ!おのれぇ!!」
波状攻撃での嫌がらせは自分達への物理的被害は少ないが。
駆逐「艦隊全艦は敵の再度の夜間襲撃に備えろ!」
残存艦全てに指示を飛ばし緊張を持って夜間警戒に当らせる駆逐棲姫。
夜間攻撃に対して予め備えており警戒はさせるものの交代で休憩をさせる事の出来た提督達と
艦隊全艦で休憩を入れる事無く敵からの再襲撃に備えた深海棲艦達。
その差が出るのはもう、間もなくである。
422 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/13(月) 00:19:12.76 ID:tMhG3Ubb0
提督達が駆逐棲姫達の機動艦隊へ向け針路を取っていた丁度その頃。
また幾つかの部隊が海上を夜陰に紛れ移動をしていた。
時雨「ねぇ長門。」
長門「どうした?」
時雨「ゴーヤ達の報告を考慮して
敵の機動艦隊指揮官は何人くらい残っているかな?」
長門「そうさな提督達が向っている機動艦隊については少なくとも1名。」
長門「多く見積もっても2名ほどだろうさ。」
川内「そんなものなの?意外に少ないんだね。」
長門「あぁ、敵の攻撃パターンからいって
あまり機動艦隊に置ける艦載機の扱いになれていない節がみてとれたからな。」
長門「敵が指揮艦へ攻撃を仕掛ける際の攻撃が3方向からだった。」
長門「外周配置のレーダピケット艦……、本来のレーダーピケット戦術とは違うんだがな。」
長門「まぁ、とりあえずでの問題ではない、電探での早期警戒艦と思ってくれ。」
長門「艦隊の頭脳をやるつもりなら処理負担を増大させ
処理落ちさせるのが教本通りでの攻め方になる。」
時雨「そうなんだ。」
長門「あぁ、戦術的な話をするのであれば艦隊の目を潰すのが最優先だ。」
摩耶「確かに敵の偵察機やら電探持ちを落すのは重要だもんな!」
423 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/13(月) 00:21:10.44 ID:tMhG3Ubb0
長門「それを考慮すれば敵がとるべき攻撃は一方向に飽和攻撃をしかけ
一点突破を目指すやり方が正解だったんだ。」
時雨「でも、それを取らなかったんだね。」
瑞鶴「だから機動艦隊の指揮に慣れていないものが指揮官であると判断できたわけね。」
長門「そういうことだ。」
瑞鶴「じゃぁさ、なんで最大で2名なの?」
長門「それはこの周辺海域の状況からの話から説明しないといけないな。」
川内「結構面倒そうだね。」
長門「まぁ、聞いてくれ。
今回敵が割ける指揮官クラスの人員としては前線から後方支援まで考えても最大10名ほどだ。」
長門「これ以上を割くと他の戦線の支障が出るギリギリだな。」
長門「その中で前線に遅滞なく物資を送る補給線の構築を考えると
最低で2名以上は集積地の拠点守備に回さなければならない事、
前線での攻撃と攻撃地点以外の各鎮守府への牽制に必要な人数を考えていけばだ。」
長門「機動艦隊にまわせる指揮官クラスは2名から3名。
その内の1人についてはゴーヤ達が仕留めている為、
最大2名と結論づける事が可能という訳だ。」
424 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/13(月) 00:22:57.84 ID:tMhG3Ubb0
時雨「流石だね。」
時雨「それで、今、僕らが向っているのは?」
長門「大小幾つかあるなかで
敵にとってやられると痛いであろう集積所だ。」
摩耶「でもまぁ、本当にあるのかねぇ。」
長門「この周辺の海域図と以前から掴んでいる敵泊地に拠点。」
長門「それらから割り出した凡そこの辺りにあるだろうでの位置だからな。」
長門「我々の部隊かウォースパイト達の部隊のどちらかが壊滅させればいいさ。」
摩耶「まっ、私としちゃ出番があればそれでいいけどさ。」
瑞鶴「島風の死を無駄にしないためにも派手に暴れてやろうじゃない!」
長門「提督曰く、敵の退き口を潰す為の布陣だそうだ。」
時雨「相変わらず提督の考えはえぐいや。」
川内「まぁ、敗軍の将っていうのは必ず討ち取るべきだからね。」
時雨「そうだね。」
川内「負けた相手を逃がせば相手は臥薪嘗胆の思いで復讐に帰ってくる。」
川内「それも前回の負けを己の糧として一回り強くなって帰ってくる。」
摩耶「あぁ、そうだね。そいつだけはいただけない。」
瑞鶴「負けは人を強くするもんね。負けを知らない奴はここぞという時が弱い。」
瑞鶴「ぎりぎりの戦いをする上でそういう心が弱い娘とは組みたくないわ。」
長門「同感だ。まぁ、ここに居る者達には心配はないと思うがな。」
長門「我らを送り出した提督はなんと言ったって人生の負け組みだからな。」
時雨「それは本当かい?」
長門「あぁ、勿論だ。でなければ88鎮守府の提督なんかやっていないだろうさ。」
川内「じゃぁ、敗北の味を知っている提督が指揮を執る私達が勝つというの当然かー。」
摩耶「まっ、そうだろうさ。」
ここで一同大笑い。
長門「天国の扉は開いた。」
長門「後は我々が階段を上らせてやるだけだ。」
瑞鶴「ふふふ。良いわね。それ実にいいわ!」
長門「全員、気を引き締めて掛かるぞ!」
応とその場に居た者達が全員が応じる。
この戦いにおける天王山の訪れはもう間もなくである。
425 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/13(月) 00:29:07.01 ID:tMhG3Ubb0
本日の更新はここまで
次回から話のタイトルが変わります、といっても単なる続きに繋がるだけですが…
後編が長く無計画に続いちゃっているので仕切りなおすべくタイトルだけ変更
次回から天国の階段編へとつながります、尚、雪風はウォースパイト、北上、ポーラ組みと行動しております
乙レス、感想レス、いつもありがとうございます、色々勉強になるレスも頂く事があり感謝です
空中格闘戦の部分が空回っていたとのレス、申訳ありませんでした
量を減らすべきだったかと頂いたレスを見直して反省です
関係ないですが、点滴を受けている間の時間って何も出来ないで暇ですね
皆様、体調にお気をつけください、以下、もう少しだけ瑞鳳を採用するか隼鷹を採用するかで迷っていた際に書いた
隼鷹の艦載機発艦シーンのみを投稿させていただきます、ここまでお読み頂きありがとうございました
426 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/13(月) 00:34:51.11 ID:tMhG3Ubb0
酒瓶に口をつけ、くぴりと一口。
肺活量を活かし全開噴射。
あたりに酒精の香りが漂う中。
軽空母隼鷹はばさりと音を立て一巻の巻物を豪快かつ手荒に広げた。
隼鷹「剛気詔(ごうきみことのり)!」
隼鷹「黄泉の国の国主、洗鼻神、建速須佐之男命の名において召還す!」
隼鷹「黄泉より英霊、今、舞い戻り我が兵となり敵をニライカナイへ案内(あない)せよ!」
隼鷹「一二三四五六七八九十、布留部 由良由良止 布留部、布留部 由良由良止 布留部」
隼鷹「勅命! 英霊召還 急急如律令!」
死者蘇生の詔。
酒で場を簡易的に清め召還術式の発動。
陰陽師型軽空母の発艦儀式。
ぽうと巻物に挟まれていた人型に切られた式神が光り始める。
詔をあげる必要性から少し発艦に時間は掛かるが。
読み終えてしまえば一度に全機発艦が可能となる。
隼鷹「全機! 発艦!」
轟と一度に全機が上がる様は正しく圧巻。
隼鷹「何度やってもこの瞬間はたまんないねぇ。ヒャッハァー!」
彼女もまた、88鎮守府の特色ある一人なのである。
※途中の言上は布瑠の言(ふるのこと)をそのまま使用しています
読みとしては ひと ふた み よ いつ む なな や ここの たり、ふるべ ゆらゆらと ふるべ
中二漫画で巫女さんが割とよく使う詔でお馴染みでしょうか?
格好いい隼鷹さんを演出したかった形になります、以上ボツネタでした。
427 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/13(月) 01:52:01.05 ID:/FA5Tqqu0
陰陽道寄りの古神道か
428 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/16(木) 20:16:17.79 ID:eBmgxYMsO
続きを待ち焦がれるss です。
429 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/17(金) 10:32:11.95 ID:4/sjaTWnO
九字で召喚する艦娘も居るんだろうか
430 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/27(月) 23:33:31.85 ID:5tYPiHSO0
Html化で海域リセット!皆様、どこまで再解放されていますでしょうか?
やっとさ6-4まで辿り着きましたが相変わらずの糞さ加減にストレスマッハでございます
秋津洲は鬼回避するのになにお前さん達はなに大破してるんですかねぇ……、とイライラしだしたら止め時……
左ルートはCマスが鬼門かつお祈りポイント、仕方ないです
では、久しぶりの更新をさせていただきます
431 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/27(月) 23:37:08.94 ID:5tYPiHSO0
おまけ日常編 とある料理長のお品書き
「うし、夜間の人達への引継ぎ分の仕込みも終了。」
「さぁてと、今日は露助リクエストの食材を買いに市場へいきますかねぇ。」
パンと糊の利いたエプロンを叩き、着替えを終えると明石達の工廠へ。
明石「あっ、こんにちは。今からですか?」
「うん、司令に許可貰ってるからね。市場に買出し。」
秋津洲「預かっていた包丁の研ぎなおしも終わってるかも!」
「自分で研いでいてもやっぱり何回かに一回は研ぎなおしにださないと切れ味が落ちるからね。」
「見せてもらっても?」
秋津洲が店の奥からいかにも業務用といった包丁を数本抱えてやってくる。
秋津洲「切れ味はこんなだよ!」
ぷつりと自分の銀髪を一本抜いた後、ふっと風に乗せる秋津洲。
その髪は風にのり包丁の刃先に当った髪は抵抗なくさっくりと二つに切れた。
「いい仕上がりだね。」
明石「この包丁で斬られた人は斬られた事に気付かない事を保障しますよ。」
その切れ味、名刀級。
「市場で持ち歩くわけには行かないからね。買出しからの帰りに受取るよ。」
秋津洲「よろしくかも!」
そして、分かれた後、拠点から少し離れた所にある巨大な市場のある島へ。
432 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/27(月) 23:39:24.73 ID:5tYPiHSO0
雪風「護衛、いります?」
「まー、司令官が付けとけって言うからさ。」
脱走を危惧という訳ではなく行方不明を危惧してである。
脱走は無い訳では無いが脱走は確定と同時に高額賞金首へ変貌。
それもあり、艦娘によっては作戦中にわざと隙を見せ
懲役組みの脱走を誘発する者もいたりとなかなか闇が深い。
そして、行方不明というのも作戦中に脱走ではない原因で消える事もあるという事なのだ。
「まー、艦娘やめているとはいえ私ってば、か弱い乙女だからさ。」
雪風「よくいいますよ。」
見た目こそ少し成長した中学生くらいの少女とその妹らしき雪風。
ただ、危険度は歩く核弾頭。
「雪風はこういうのどうなの?」
雑多とした市場ならではの衣類のまとめ売りダンボール箱の中からぴらりと見せる女性物下着。
雪風 ブフォォォーッ
なんだ、その反応、乙女か。
雪風「ゆっ、ゆきかぜにはまだ、早いと思います……。」
顔を真っ赤にし手で顔を覆いちらちらとこっちを見る雪風。
ちくせう、萌え死にさせる気か。
「でも、司令官ってこういうの好きそうだよね。なんかむっつり系なエロ?」
店主A「それなら箱1つで10ドルだよ?」
超安値。
雪風「10……、10ドルですか……。」ムムッ
鎮守府の定期便で足りない物を買いに来ることもあれば。
休暇中の艦娘が複数人数で相互監視のもと、市場に訪れる事もある。
あるいは、作戦が終わっての帰りに市場の露店で一杯と割と自由でもある。
ついでに言えば周辺海域の治安維持も88鎮守府が担っているといった
様々な事情も有り市場の人達とは大体が顔見知りでもある。
その為か気さくに声をかけられることも多い。
433 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/27(月) 23:40:03.36 ID:5tYPiHSO0
「結構安いのね。」
セクシーランジェリーの部類になるのだが予想外の安さ。
10ドルという言葉を呪文のようにぶつぶつと繰り返す雪風。
「これは童貞殺し。」
いわゆるタンキニという奴が箱から覗いていたので引っ張り出し雪風の眼前にちらり。
雪風 ブフォ ――― ッ
なるほど、戦場の鬼神と言われる雪風にも弱点はあるようだ。
少し意地悪をしてみたくなるのも性という奴である。
「こんなのどうよ?」
雪風「あっ、それは天津風さんが着用しているのを見たことあります。」
Vストリングなのだが、まじか、あの痴女。
雪風「随分前に所属していた所での話ですが。
上官であるしれぇが強要していたんですよ。」
「あぁ……。」
雪風「当時の雪風に今ほどの力があれば事故死して貰っていたんでしょうけれどね。」
ちょっと嫌なことを思い出させてしまったらしい。
434 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/27(月) 23:41:14.92 ID:5tYPiHSO0
店主B「おーい、料理長。いい加減うちの店に来てくれよ。」
「ん?おう!おっちゃん。ごめんよ!忘れていた!」
少しばかり重くなっていた空気を読まずに声をかけてきた精肉店の店主へと向き直る。
店主B「和牛を輸入するのは大変だった。」
「その分の金は払っているでしょ?」
店主B「いただく物はいただいているからね。」
重そうに店主Bが肩から下ろしたのは。
雪風「今日のメイン食材ですか?」
「そ、露助からのリクエストに使う食材。」
「司令官に正規の手続き踏んで申請してきてたからまぁ、応じてあげようかって所。」
「故郷の味が食べたいってね。」
雪風「故郷ですか。」
「木の股とかから生まれたのでなければ誰しも故郷と呼べる場所くらいはあるさ。」
「いい思い出にしても悪い思い出にしてもね。」
雪風「そう、ですね。」
少し思う所があるのか小さく首肯する雪風。
「そのダンボールの衣類は私が雪風に買ってあげるよ。高いもんでもないしさ。」
雪風「えっ!?いいんですか!?」
なんだこの喜びようは小動物か。
「後は、頼んでいた香辛料を受取って帰るよ。」
雪風「はい!」
大き目のダンボール箱にブロック肉が入ったクーラーBox。うん、なかなか量がかさばる。
店主A「台車を貸してあげよう。ちょっと待ってて。」
「ありがとうね!」
店主A「台車は次回にでも返してくれればいいから。」
そういい店主Aは何処かへと去っていった。
大きな荷物を抱え店主Aの帰りを待つ二人。
435 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/27(月) 23:42:19.59 ID:5tYPiHSO0
「ちょっと道の横に避けていようか。」
雪風「そうですね。」
通りの邪魔にならないように荷物を避けていた時に事件は起きる。
チンピラ「あいたたたぁ!」
雪風がどけたダンボールにわざとらしくぶつかり大げさに痛がるチンピラ。
そして、そこに台車を持って戻ってくる店主A。
チンピラ「これは治療費と慰謝料をもらわねーとなぁ。ガキ共よぉ。」
チンピラ「両方あわせて1000ドルで我慢してやるわ。」
店主A「オイオイオイ。」
店主B「死んだわあいつ。」
436 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/27(月) 23:43:21.27 ID:5tYPiHSO0
1分後
雪風「1000ドル分の治療費ですともう少し骨を折らないと駄目でしょうか?」
「うーん、両手両足折ったから後もう少しとなると肋骨かなぁ?」
チンピラ「たったすけ」
「1000ドル渡したでしょ?だったら金の分だけいい声あげなよ。」
「1000ドル分だけの美声聞かせてくれるつもりだったから声かけたんでしょ?」
「じゃ、後は肋骨ね。」
笑顔で拳を振り上げた丁度その時だった。
顔役「姉さんたちうちの馬鹿がすみません!」
血相を変えて市場の顔役がやって来た。そして、その勢いのまま土下座。
雪風「土下座なんて知っているんですね。」
「まぁ、知っている知っていないはどうでもいいけどそんな価値の無い土下座されてもね。」
「顔役ならさー、治安を良くするべく動くべきなんじゃない?」
顔役「返す言葉もございません。」
「いやさぁ、1000ドルって大金よ?」
「それをさー。」
艤装の力を使わなくても強い艦娘は強い。
そして、自分達以外にも被害が起きている可能性もある訳で
ねちねちと嫌味を言い続ける。
その結果。
437 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/27(月) 23:45:22.38 ID:5tYPiHSO0
「ただいまー。」
明石「あっ、お帰りなさい。楽しめました?」
「それがさー、聞いてよー。」
女子会のノリで市場での出来事を話す二人。
「侘び代わりに私達が買った商品代金返してくれたのはいいんだけどさー。」
「あの露助がね、
みんなから離れて買い物していた時にかつあげされてたのが発端みたいでさー。」
秋津洲「情けない艦娘かも。」
「本当だよ。かつあげされたのが恥ずかしいからって黙っていたせいでこの始末よ。」
明石「申告してくれていたら対処出来ていたわけですしね。」
「そーそー、それで、そのチンピラが味を占めたのか今回の馬鹿に及んだって訳。」
雪風「まったくもって艦娘の恥さらしです。」
「そんな訳で雪風と話して楽しいブートキャンプに御招待と思ってね。」
明石「いいですねぇ。」
明石「丁度色々新製品を試してみたかったんですよ。」
「いいねぇ。」
「私はコマンドサンボとかカポイエラとかの格闘技中心に三途の川を渡って貰おうかなって。」
雪風「雪風はスパルタンに仲間全員に声をかけてサバイバル形式で行こうかと。」
秋津洲「ちょっと同情しちゃうかも。」ウヘァ
明石「最近は大規模作戦も来ないから皆さん暇してますしね。」
「そういう台詞はフラグじゃない?」
明石「まぁ、鎮守府総員が出撃とかなると私の場合は潤うんで。」
明石「ありがたいですかね?」
「商売人だねぇ。」
明石「死んだ人間、艦娘の魂以外なら。」
明石「金さえ払っていただければ「クレムリンだろうと引っ張ってくる。」
雪風「だったですね。」
明石の決め台詞に雪風が被せる。
「だったらちょいと頼まれない〜?」ウヒヒヒヒ
明石「楽しくて利益の出る事でしたら。」ニヒヒヒ
後日、ガングートが色々な意味で死んだ事を話の結びとして語らせていただく事とする。
ガン「いやぁ〜 ――――――――― !」
ボガーン!
ヒュ ――――――― ン!
時雨「戦艦ってあんなに飛んでいくものなんだね。」
長門「なんだ?鎮守府ホームランダービの開催か?」
スパ「いいですねー。」
438 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/27(月) 23:46:45.59 ID:5tYPiHSO0
第十三話 天国への階段
439 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/27(月) 23:48:29.59 ID:5tYPiHSO0
駆逐「こんなの聞いていた話と違う!」
この作戦における総旗艦戦艦水姫から迎撃の任務を受けた時の説明は。
「簡単な迎撃任務よ?」
自分と空母水鬼に与えられた空母、戦艦、重巡等。
それらの戦力は機動艦隊としてそこらの敵鎮守府を1つ2つは余裕で叩き潰せる。
なんなら敵の大規模拠点を落しにいくことさえ出来る程の過剰戦力。
駆逐「おかしい!」
自分の置かれている状況を考えれば絶叫せずには居られない。
最初の敵との接触で空母水姫が撤退。それはまぁ、どうでもいい。
問題はその後だ。
駆逐「勝てるはずなんだ!」
敵の空母達が搭載している艦載機を凡そ半分は落とした。
敵の駆逐艦だって何隻か沈めた。
にも、関わらず。
自分達が連れてきている空母達の艦載機の数は全体で4割も落とされている。
空母の数で言えば自分達の方が当然多いため
母数が大きくなる自分達の方が同じ4割でも敵の半数より多く落とされている。
しかし、見方を変えれば6割という未だ、いや、敵を圧倒できる筈の戦力があるのだ。
駆逐「なのに、なんで夜間攻撃なんて仕掛けてくる!?」
夜間攻撃は戦果が得にくい物であり
自軍の残機が少ないのであれば控えるべき物。
敵の被害を考えれば夜間攻撃機があったとしても
夜間哨戒を自艦隊周辺に上げるくらいがせいぜい。
自分が敵の立場であれば仕掛けるなんて思考の外である。
440 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/27(月) 23:53:18.63 ID:5tYPiHSO0
駆逐「あり得ない!」
敵の夜間攻撃隊はそれでいて自軍のナ級達や
同士討ちをした愚か者共の所為もあり一定の戦果をあげ悠々と帰還。
此処に来て思い知る自軍との錬度の差。
そして、脳裏によぎるのは認めたくない二文字。
駆逐「私が負ける!?」
駆逐「この私が!?」
深海棲艦において敗北というのは単純に負けるだけでは済まない。
武威を示す事こそがその存在理由とする者達が多い中で、
更に言えばその最上種たる姫級。
となれば敗北は頂点からの転落を意味する。
此処に来てその矜持が彼女の判断を狂わせた。
駆逐「敵の機動艦隊を直接叩く!」
普段の自己評価が高い者程陥る罠。
駆逐「敵の旗艦、そう、指揮官の人間が乗る船を沈めて殺せば私の勝利!」
駆逐「私の勝利だ!」
駆逐「私達の被害もあるけれど敵の被害は私達以上。」
駆逐「であれば敵は全力での殴り合いでは絶対に勝てないはず!」
そして、自分がこうであるから相手もこうであるだろうという単純な思考の帰結。
この思考が彼女に此処での敗北を齎し、結果、海の藻屑へと還らせる事へとなった。
441 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/27(月) 23:55:31.36 ID:5tYPiHSO0
強襲揚陸艦 艦橋内 作戦指揮所
提督達は定時連絡による位置確認で更新されていく
分遣隊の海図の光点を見つめながら会話をしていた。
その内容は、もうまもなく訪れる払暁戦に備えての会話である。
提督「相手の心理、行動を推し量る際に
自分ならどうするかという風に考えるのは誰しもがやる事です。」
大佐「確かに。」
提督「私も自分ならどう動かしどう弱点を突くかと考えますからね。」
提督「自分がこう考えるなら相手もこう考えている。
それならば相手はこう出るはずとの自分の行動原理が下地になる思考。」
大佐「それでその思考における問題とは一体?」
提督「そうですね。思考については誰もがやりがちですし、実際にやる事です。」
提督「私が問題とするのは正常性バイアスですね。」
提督「自分は大丈夫。自分ならこの状況を切り抜けられる。」
提督「相手がこう出るのは間違いないから自分は切り抜けられるという考え。」
提督「ある程度までならポジティブシンキングとも言えなくは無いですがね。」
大佐「過ぎれば損切のラインを見誤るという事ですね。」
提督「その通りです。」
提督「ここは人によって賛否が出るところでしょうがね。」
提督「軍隊という組織である以上、
結果とは勝利であり勝利という結果を残せない将は無能の烙印が押される。」
大佐「確かに。」
提督「その上で無能の誹りを恐れずに敗北を受け入れられるかどうか。」
提督「それが本当の名将の条件になってくるでしょう。」
提督「常勝無敗などというのは幻想ですよ。」
大佐「…………。」
提督「百の兵を失いつつも千の兵を残し雪辱を果たすべく備えるのと、
全ての兵を失い雪辱を果たす事すら敵わない。」
提督「どちらの将が愚将とされるかは明白でしょう?」
大佐「負けを知っていれば敵への対処方も考えられますしね。」
提督「そうです。賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ。」
提督「命があれば学べる機会がある。その機会があるだけ儲け物です。」
大佐「引き際は大事ですね。」
提督「えぇ、つねに自分の中で引き際を決めて掛かる事は大事ですよ。」
珍しく苦々しく、そして重苦しそうに提督は言葉を紡ぎ会話を終えた。
442 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/27(月) 23:56:34.73 ID:5tYPiHSO0
そして、数時間の後。
お互いの艦隊が近付きその先鋒を早期警戒の二式大艇が電探に捕らえる。
早期警戒機の役目をさせている二式大艇からの索敵情報。
つづいて敵を補足した艦隊外周に配置している電探担当駆逐艦隊からの電探情報。
それらを強襲揚陸艦のデータ処理能力を活かし
敵艦隊から飛来する敵機の高度、方向、数を正確に分析処理。
そして、艦隊の全員へ一斉に伝達。
グラ「Achtung!!」
すでに警戒用の艦戦は上がっている。
グラーフが母国語で傾注、あるいは敵発見の言を大声で吐いた。
グラ「全機発艦!Vorwärts!!」
この号令は空母機動部隊の旗艦として所属空母達への一斉攻撃の命。
それは実にあっけない幕切れだった。
この結果を演劇などに例えれば手抜きとも消化不良とも尻切れ蜻蛉。
あるいは打ち切り漫画。
そういった誹りを受けてしかるべき位に間の抜けた最後。
その最後を決めたのは空母艦隊決戦にはあるまじき戦艦の一撃だった。
443 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/27(月) 23:57:32.29 ID:5tYPiHSO0
グラ「アイオワ、諸元入力を頼めるか?」
グラーフから無線を通して手持ち無沙汰気味に対空射撃をしているアイオワへの依頼。
アイ「What?」
グラ「外周駆逐艦からの電探情報、二式大艇からの敵艦隊位置情報。」
グラ「それに迎撃に上がっている私の艦載機。」
グラ「それら情報を総合した上で敵の旗艦位置情報を伝える。」
アイ「いいのかしら?」
戦艦が主砲をぶっぱなす。
ともなれば弾道はもちろん標的周囲に展開する飛行機は敵、味方区別無く消滅である。
グラ「巻き込まれる味方機なぞおらんよ。」
何を言っているのかと木で鼻をくくる返答。
つまりはその程度の艦載機しか扱えない空母艦娘等居ないという意思表明でもあり。
お前のところはその程度なのかという嘲笑も含めた冷たい態度の返答。
444 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/27(月) 23:59:17.95 ID:5tYPiHSO0
アイ「Hey!Holy Shit!That’s great !」
アイ「Ok!Come on !」
戦艦としての仕事が出来る事に喜びと興奮を隠せないアイオワ。
また、自分達を見くびるような態度への反発も入り挑発気味な返答。
グラ「頼んだ。」クスリ
自尊心の高い米軍海兵であればそうなる事を計算ずくでのグラーフの先の態度。
扱いやすくもあり素直であるとの事に少し好ましさを感じる。
強襲揚陸艦で情報が統合され位置が確定。
そして、先ほどからグラーフの艦載機がへばりつき位置を常に追いかけ続けている敵の旗艦。
最新鋭の戦艦に搭載されている演算装置にデータが送られ入力処理が完了。
ガコガコと音を立て主砲が向きを変え見えない位置の水平線の向こう側。
アイ「Lock on !」
敵艦隊の一番後ろに居る敵を葬るべく主砲が火を噴いた。
アイ「Yeeeeeeeeeeeya!」
アイ「Yippee yi yea , Mother Fuker!」
瑞鳳「うわぁ――。」
スラングに瑞鳳がややドン引きするが、その火力 is Powerな砲煙と。
グラ「空気振動の凄まじさは流石だな。」
ビリビリと空間を揺らす振動に巻き込まれ落ちてゆく敵機。
445 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/28(火) 00:01:14.75 ID:Glxp+2M40
アイ「Fire! Fire! Fire!」
深海側 艦隊最後尾
駆逐「なんで?どうして?」
駆逐「どうしてこうなるの?」
自軍の自慢の艦載機は敵機に落とされ
敵の駆逐艦娘達が先陣を切って雷撃戦を仕掛けてくる始末。
艦隊の前列は今、愁嘆場となっている。
駆逐「逃げなきゃ!」
此処に来てようやく生存本能が矜持を上回るが。
グラ「とき既に「遅しよ!」
艦載機達でマークし動きを完全に補足しているグラーフの一言。
そして瑞鳳はグラーフの言葉に被せどや顔。
当たり前に敵へ聴こえるはずはないのだが、二人ともしてやったり、と、いい笑顔。
446 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/28(火) 00:02:37.81 ID:Glxp+2M40
アイ「Well done !」
初弾は駆逐棲姫の鼻先に着弾。
駆逐「ひっ!」
アイ「Go to Hell !」
アイオワ型戦艦の主砲弾が南方特有の豪雨の様に降り注ぐ。
その様は正に悪夢。
駆逐「いやぁ!まだ!まだ死にたくない!」
懇願むなしくその狙いは正確に。全弾が命中した。
アイ「Good Game! Well played!」
アイオワが相手の健闘を讃える頃には駆逐棲姫はその活動を停止していた。
グラ「残心であったか?」
瑞鳳「擬態を警戒!瑞鳳艦爆隊の皆!殺っちゃって!」
殺り残しの無い様にしっかりと止めを刺す両名。
サラ「Oh …… ミンチより酷いです。」
惨状の確認をして漏らす言葉は心からの本音。
そして、駆逐棲姫は完全に活動を停止した。
また、時を同じくして別々の海域では此方もクライマックスへ向け動き始めていた。
447 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/28(火) 00:05:45.44 ID:Glxp+2M40
旗艦雪風 第一分遣隊
雪風「艦隊の空母の皆さんは全機発艦をお願いします!」
通常の鎮守府であれば戦艦や空母、
或いは重巡といった者が旗艦を任されるわけだが。
雪風「旗艦雪風から全員へ連絡です!」
雪風「まもなく敵の哨戒網に引っかかると思われます!」
雪風「敵からの猛攻が予想されますが敵の後方基地を破壊できれば
私達救援部隊の戦略的勝利がより達成しやすくなります!」
雪風「総員、気を引き締めて掛かってください!」
そこは通常という常識の外の連中。
旗艦を勤めるのは最も修羅場を潜った者になるのが自然な成り行きでもある。
「雪風さ〜ん?」
個人通信回線で旗艦の雪風を呼び出す声がする。
雪風「雪風です!ポーラさん、何用でしょうか!?」
雪風が自身が見落とした何かがあったのかもしれないと思いつつ返答。
ポーラ「あの〜。あのですね?」
ポーラ「もしも〜、もしもですね?
敵の旗艦が重巡棲姫だった時はポーラに譲っていただけませんか?」
ポーラ「戦果はお譲りしますから沈めるのだけはポーラに殺らせてもらえませんかね?」
雪風「そこに拘る理由があるんですね?」
場数を踏んでいる雪風ならではの勘で何かを察する。
恐らくそれは瑞鶴が88鎮守府に流れてきたのと同じ理由。
448 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/28(火) 00:07:43.35 ID:Glxp+2M40
ポーラ「 Si 」
返答に満足気に首肯をすると無線を艦隊全員へ飛ばす。
雪風「総員傾注!」
雪風「敵旗艦が重巡棲姫の場合、空母のエアカバー以外は一切の手出し無用!」
雪風「旗艦雪風の名においてポーラさんへの邪魔立ていっさいを禁じます!」
艦隊全員へポーラがその首級を挙げることへの妨害行為等を禁じる旨を宣告。
雪風「舞台は整えます。重巡棲姫が敵旗艦の場合は存分に。」
ポーラ「Signorina Yukikaze Grazie di cuore!」
そして、先に接触した空母艦娘の哨戒機からの報告。
雪風「ポーラさん!敵旗艦は重巡棲姫だそうです!」
雪風「後、角が一本、折れているとかだそうですよ?」
旗艦として情報を受取りそれをポーラへと伝達。
敵旗艦は珍しく身体的特徴があるようだ。
ぞる。
幾度となく死線の向うとこっちを行き来してきた雪風ですら久しぶりに感じる殺気。
今まで様々な種類の姫、鬼級達と対峙してきたがその中でも特級。
歴戦の姫、鬼級、片手の指で納まる程にしか体験した事のない殺気。
それは思わず振り返らずには居られないほどの殺気。
そこには恍惚とも憎悪とも、歓喜に震える、あるいは激情の怒りに震える。
雪風をして異様と言いたくなる艦娘が居た。
449 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/28(火) 00:10:21.13 ID:Glxp+2M40
「尻尾を引きちぎって。」
「右腕を引き抜いて。」
「左腕を食いちぎって。」
「右足を吹き飛ばして。」
「左足をぶっ潰して。」
「腹に主砲をぶっこんで。」
「内蔵を掻き出して、引っ張り出して。」
「内側からミンチにして。」
「頭を最後に踏み潰す。」
「足りない、足りない。」
「こんなんじゃ、全然足りない。」
「十遍でも、百篇でも、千篇、万遍。苦しませて。」
「あぁ、日本語で万死に値するだったかしら?」
「そう、姉さまはもっと苦しんで死んでいったはず。」
「姉さま以上に苦しませてやらなきゃ。」
そして。
「 み つ け た 。」
450 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/28(火) 00:12:01.42 ID:Glxp+2M40
恋焦がれ、相手の事しか見えなくなる。
つねに相手の事を考え続けいつしか相手の感情と同化する。
しかして、それは恋愛感情ではなく。
純然たる、純度100%の。
憎しみ。
「北上〜。」
北上「あいよ―。」
ポーラ「背中、宜しく。」
北上「あいあい。」
ポーラ「彼女には命を持って支払いをしていただかないといけませんねぇ。」
北上「マフィアか。」
ポーラ「シチリアでは女はショットガンより危険ですよぉ〜。」
ポーラ「ポーラは幸せです。北上という得がたい友人を得る事が出来ましたから。」
ポーラ「どんなに強い者でも友人は必要ですからね〜。」
北上「よせやい。照れるぜぃ。」ニシシ
重巡と雷巡コンビ。
今、重巡棲姫を倒す為に両名が並び立つ。
451 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/28(火) 00:20:00.26 ID:Glxp+2M40
本日の更新は以上でございます
駆逐棲姫は最初から噛ませ犬の予定でしたのでその最期はお読みいただいている皆様から
お叱りを受ける事覚悟のあっさりかつ淡泊な最後とさせていただきました
ポーラが頭ぶっ飛んでいた理由はそういう事ですので次回はポーラと北上コンビ戦となります
体調が優れないことが多く亀更新となりつつありますが今後とも宜しくお願いいたします
質問でいただいております九字護法での召還士は事前設定では正直に言いますと作って無かったです
龍驤、雲龍のパターンとかは考えてはいたのですがどちらも中国導師寄りでした
乙レス、感想レス、いつもありがとうございます、書くための励みになっています
お時間よろしければ次回もお読みいただけると幸いです
それでは、また、次回
452 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/28(火) 02:47:36.49 ID:X8TfpFaD0
何度も妖精が死ぬ姿を見たくないからと一度死んだ妖精の顔に呪符貼ってキョンシーとして使役する雲龍とかだったら怖いなあw
それが仲間に向けられたら…gkbr
453 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/28(火) 22:30:32.15 ID:ADezDfxT0
更新乙なのね!
九字について質問したもんだけど、お答えありがとうデーす
ホームランダービー上位ランカーは熊野だったり?
454 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/28(火) 23:22:02.49 ID:+57E5a+rO
乙です。
毎日更新ボタン押して続きを待ち焦がれる日々です〜
実は艦これやった事ないし、艦娘もメジャーどころしか知らないのですが、読み物としてとても面白いから毎回楽しみにしてます。
455 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/29(水) 22:40:19.90 ID:8d3QiO9b0
>>452
あきつ丸キョンシーが似合いすぎるがそんな狂った優しさを振りまく雲龍は嫌じゃw
456 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/30(木) 00:23:52.88 ID:IyCYBxLK0
1でございます
元々用意していてボツにした雲龍の召還に
>>452
さんのネクロマンシーな雲龍というのを
実際にやったらどうなるかをやってみました、なんとなく雰囲気ありげなものになったかと思います
御笑納下さい
457 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/30(木) 00:25:12.35 ID:IyCYBxLK0
「独り……。」
空母艦娘、雲龍の出撃はいつも独り。
「そう、敵発見、ね。」
偵察機からの報告にぽつり呟く。
そして、背中に背負っていた錫杖を取り出し前方へ勢いよく振る。
侃。
金属の環の音が冷たく響き渡る。
そして、その錫杖に吊り下げられた一幅の掛け軸がざぁっと音を立て開く。
「東嶽大帝が臣、冥吏雲龍が命ずる。」
艤装から桐製のお札入れを取り出す。
ぶつぶつと小声で何かを呟くと
御札入れがふわりと空中に浮かび灯りが灯った。
458 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/30(木) 00:26:10.54 ID:IyCYBxLK0
ジャラン
「起来!」
ぶわり。
箱の蓋が開き、中から人型が周囲に溢れ術式が展開。
そして。
キキキキキ
「猴鬼。連れて来た?」
提灯を持った猿の姿をした鬼がトコトコと雲龍の周囲に這い出てくる。
「お連れしましたよー。」
こくりと小さく頷く。
「命!」
「東嶽大帝の旗下に集う者達よ!」
「仮初の宿に今、その魂を宿せ!」
普段の淡々とした口調からはまったく想像がつかないほどにはきはきと命令を下す雲龍。
そして。
人型に切られた紙に書かれた文字が光り始める。
459 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/08/30(木) 00:27:02.70 ID:IyCYBxLK0
武征王 大戦艦 長門
飛虎大将軍 空母 赤城
鉄騎大将軍 空母 加賀
狼威将軍 重巡 足柄
安国将軍 重巡 妙高
人型に書かれた称号と名前が光り、その名前に書かれた艦娘が受肉し。
顕現していく。
征蕃校尉 陽炎型駆逐 陽炎
征蕃校尉 陽炎型駆逐 黒潮
同じく次々と駆逐艦の名が紙の表面に浮かび上がり受肉。
顕現。
「皆さん。先日の戦場ぶりです。」
「本日もまた、お力をお借りします。」
生気のまったく無い空ろな目をした艦娘達。
そして、雲龍が突撃の命を下すといっせいに敵へと向っていった。
雲龍が使うのは道教の禁術。
死屍術であり、嘗て轡を並べて戦った仲間であり。
「鎮守府の皆さん。お力お借りします。」
嘗て同じ鎮守府に所属していた仲間達である。
総勢、200余名。
矢尽き、刀折れ、死して尚、深海棲艦達を相手に現世に彷徨い。
護国安寧の為に戦う。
帝国幽霊艦隊。
Imperial Ghost Fleet
それを呼び出し、使役した艦娘であり、師匠龍驤から受け継がれた道術。
道士、雲龍
海軍史においてその存在が不確かな者とされ、記録にすら残されなかった独りの艦娘である。
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