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勇者「ニートになりたい」
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340 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/23(火) 19:07:08.61 ID:576+Hgr7O
乙
341 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/25(木) 14:45:24.55 ID:PJlRf//QO
【翌日 朝 宿屋】
魔法使い「――はぁ?? ここにしばらく滞在するぅ?」
勇者「そうだ」
戦士「てっきり、あたしは通過地点程度にしか思ってなかったが」
武闘家「アタイだってそうさ」
僧侶「ダーマに急がなくてよろしいのですかぁ?」
勇者「(ど、どうする……。まさか、私用で……それも勇者にまつわる話だと正直に言うとこいつらのことだ。騒ぎそうだし、めんどくせぇ……)」
戦士&武闘家&僧侶&魔法使い「……?」
勇者「(よし、また適当なウソつくか)……ミンゴナージュからここまでは少し疲れたからな。休息も必要だ」
戦士「疲れてもないが?」
勇者「お前らは揺られてただけだろうが!」バンッ
魔法使い「あんただって手綱握ってた……馬にってこと?」
勇者「そ、その通り!(ということにしておこう)」
僧侶「それにしてはぁ、まるでご自分が疲れたかのようなぁ」
勇者「言い方間違えただけ! 細かいことはいいの!」
武闘家「馬車を失うのは痛いもんね」
勇者「そうだ! 人手で運ぶには限界がある! 魔法使い!」
魔法使い「……なによ?」
勇者「お前、何十キロも重りつけて歩けるか?」
魔法使い「無理だけど」
勇者「だろう⁉︎ 人は便利さを知る前と後ででは感覚が違う! 物資も買った!」バンッ
戦士「む、たしかに。買いこんだな。勇者が最初は北にいくなんていうから余計な荷物まで」
勇者「こ、細かいことは忘れよ⁉︎ ……ごほんっ、それでだな。馬もいたわってあげなきゃいけない。僧侶!」
僧侶「はい〜」
勇者「俺が言ってることになにかおかしい点はあるか?」
僧侶「いえ〜。暑いですからねぇ〜」
勇者「そうだろう、そうだろう! なにもおかしくはない!」
武闘家「……何日ぐらい予定を伸ばすのさ?」
勇者「へ?」
戦士「いや、もちろんすぐにとはいかないが、異常があるわけじゃないんだ。武闘家が言うようにあまり伸ばしても」
勇者「(し、しまった。見切り発車でそこまでは考えてなかった)……三日ぐらいかな?」
魔法使い「ふぅ〜ん、まぁいいけど。それならマッスルタウンで羽伸ばしたかったなぁ。ここ住みにくいし」
勇者「……」ホッ
戦士「馬舎に預けてあるから簡単な世話はしてれるよな。あたしらはその間、フリーでいいのかい?」
勇者「そうだな。一緒に行動する理由もない。思い思いに休息してくれ」
僧侶「かしこまりましたぁ」
342 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/25(木) 14:57:10.51 ID:PJlRf//QO
【宿屋 部屋】
勇者「よし、うまくいったぞ。えぇーと……どこにしまったんだっけ」ゴソゴソ
従業員「掃除しても大丈夫です?」ガチャ
勇者「あー、どーぞどーぞ。お疲れ様です」
従業員「すみません、他の部屋もまわらなくちゃいけないもので。失礼します」バタン
勇者「おっ、あったあった。マク・ドナルドの時の覆面。これを探してたんだよなー。でも、このままだと武闘家は知ってるから〜……従業員さん」
従業員「はい?」
勇者「ここらへんって服の仕立て屋ありませんかね?」
従業員「ありますよ。宿をでてしばらく歩くと十字路の大通りにでますから、そこを右に曲がった角です」
勇者「裁縫もやってくれたりします?」
従業員「えぇ、まぁ頼めばやってくれないことはないと思いますが。なにか破れたんですか?」
勇者「いえ、そういうわけじゃないんですけどね、これに手を加えてほしいなーなんて」
従業員「マスクですか? 仮装用の?」
勇者「そんなもんです」
従業員「けっこう痛んでますね。新しいもの買ったらどうです?」
勇者「へ? 売ってるんですか?」
従業員「ええ。変わった店ならいくらか」
勇者「おお! どこに行けば⁉︎」
従業員「それなら、大通りの十字路をそのまま――」
343 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/25(木) 15:12:16.31 ID:PJlRf//QO
【仮面屋】
店主「いらっしゃい」ニタァ
勇者「魔物め!」スラッ
店主「……なぁ〜に言っとるんだい」
勇者「つ、つい。店内薄暗いのにロウソクで下から照らしちゃってるから」
店主「余計なお世話だよ。ひやかしなら帰っとくれ」
勇者「いやいや! 買う! 買いに来た!」
店主「ふん……お探しはなんだい? 仮装用かい?」
勇者「見た目はなんでも。希望は顔の全面が隠せるもので、なるべく通気性の良いものがいいな」
店主「布地がいいかね。麻か、もっと薄くなると透けちまうから……」ゴソゴソ
勇者「けっこう色々あるんだなぁ」キョロキョロ
店主「なんだい? こういう店に慣れてないのかい?」
勇者「ていうか、あんまり見かけない」
店主「そりゃそうかもしれないねぇ。クィーンズベルでもこの1店舗だけさ……これなんかどうだい? 体もセットという代わり品だ」スッ
勇者「おもっくそスパイダー○ンやんけ!!」
店主「す、すばだー?」
勇者「……知らないならいいんだ。でも、ちょっと派手かな? この世界観にそぐわないっていうか。もっとファンタジー色の強いものがいいと思う」
店主「さっきからなに言っとるんだい」
勇者「うんとね、なんかこう、仮面です! って仮面?」
店主「……やっぱり、ひやかしかい」ジトォー
勇者「いやいや違うよ!」
店主「あんたの要望にはそれしかないよ」
勇者「え、えぇ……これ?」チラ
店主「買わないんだったら帰っとくれ」
344 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/25(木) 15:23:13.53 ID:PJlRf//QO
【数十分後 城門前】
兵士「なんだ貴様は」
スパイダー○ン「ハーイ! ボクの名前はスパイディーさ!」
兵士「不審者か」
スパイダー○ン「違うよ! 正義の味方で悪者をやっつけるんた!」
兵士「……それで、なんの用だ」
スパイダー○ン「城に入れないか――」
兵士「だめだ。帰れ」チャキ
スパイダー○ン「い、いきなり槍の剣先向けないでよ!ボクがなにをしたっていうのさ⁉︎」
兵士「なにかしそうだ」
スパイダー○ン「冤罪だ! 人を見た目で判断しないで!」
兵士「なら、脱げよ」
スパイダー○ン「だ、だめだよ。そんなことしたら、ボクが一般人のピーター・○ーカーだって」
兵士「……」スゥ
スパイダー○ン「笛ふこうとしないで⁉︎ 仲間呼ぶつもりでしょ⁉︎」
兵士「帰れと言ってるだろうが。捕まえるぞ」
スパイダー○ン「い、いや、だからボクは犯罪者じゃなく悪者をやっつけるヒーローで」
兵士「すぅー……」ピィィィィ
スパイダー○ン「戦術的撤退ッ!!」ダダダッ
345 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/25(木) 16:17:13.70 ID:joevVxvVO
世界観壊れててギアナ高地生えますよ
346 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/25(木) 16:27:54.14 ID:rf+PgS3dO
これが勇者魔王の王道なんだよ
347 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/25(木) 16:35:17.07 ID:joevVxvVO
まとめられた際に、王道の是非議論でコメ欄が80くらいまで荒れそうな予感
348 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/01/25(木) 18:51:17.81 ID:9oz6ej7sO
王道っぽい展開+100点
異世界転生っぽい勇者-10000点
クソSSなんだよなぁ
349 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/25(木) 19:46:45.35 ID:FNyLS5Vu0
まだアンチ湧いてたのかw
残念ながらまとめサイトの感想欄ではみんな面白い面白いて読んでるよ
面白くないんなら散った散った
350 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/25(木) 20:13:48.34 ID:BJEo/A8QO
周りが勝手に言うならともかく
>>1
が王道勇者SSとか言っちゃうからな
エレ速あたりがまとめたらコメ欄えらい荒れそう
351 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/25(木) 20:19:11.92 ID:qQBUgtkA0
「まとめがー」
「まとめではー」
「コメ欄がー」
冬休みか?
352 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/25(木) 20:19:43.36 ID:FNyLS5Vu0
バカバカしすぎるw
エレ速のコメ欄とか有名SSでさえ「なろう産みたい」にピンポイントで反応して叩く吹き溜まりの集まりじゃねーかw
しかも世界観壊れてるとか衣装って設定でギャグSSにありがちなメタ発言でwww
353 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/25(木) 20:55:18.60 ID:7YD3kyBA0
乙レス1つからの炎上信者大量発生とかもうね…
いろいろ察してしまいますよ
354 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/25(木) 20:56:19.80 ID:FNyLS5Vu0
>勇者「……知らないならいいんだ。でも、ちょっと派手かな? この世界観にそぐわないっていうか。もっとファンタジー色の強いものがいいと思う」
この一文があっての世界観壊れてるツッコミとかそっちのが草生えるわw
355 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/25(木) 20:58:17.90 ID:ERwfwOrFO
それだけ注目されてるんやで
まとめでコメ欄が荒れるのも同じや
356 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/25(木) 21:16:01.40 ID:FNyLS5Vu0
俺は有名SSの「仲間TUEEE」SSのコメ欄が今のこことまったく同じような「なろうみたい」「作者の自演で察する」になったときにあのサイトは変なの住み着いたなと逆に察したなw
このSSに粘着してるのも同じやつだったりしてw
357 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/25(木) 22:44:20.01 ID:RpLbcTqLO
乙
358 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/25(木) 23:14:57.86 ID:1VAm1C8A0
それだけ連投してれば、ねえ
遠慮なしに連投できるのって、作者か荒らしぐらいしかいないから
359 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/26(金) 00:03:44.16 ID:3ZqTLTN60
まーた信者が騒いでるのか…頼むから静かにしててくれ
360 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/26(金) 00:37:54.72 ID:KgC32AaKO
iD:FNyLS5Vu0
まとめサイトの感想欄で皆に面白いと言われてる
エレ速のコメ欄なんて「なろう産みたい」にピンポイントで反応して叩く吹き溜まり
感想欄とコメ欄って使い分けてるけど何で?
コメント欄であることに変わりはないよね?
サイトは違えどコメント欄ということに変わりはないよね?
コメ欄に面白いと書いてあるから面白いんだと言うような主張かと思えば、コメ欄なんて叩きの吹き溜まりと言う
言ってることぐちゃぐちゃですよ
361 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/26(金) 00:45:34.28 ID:GLsWpgl80
森きのこでは絶賛されてるぞ
ただ、エレ速は閲覧者の母体数が比較にならないからね
星を5つつける奴もいれば、1つしかつけない奴もいる
どんな作品にも否定的な人間は一定数いるわけだから、顔真っ赤にして喧嘩しちゃいかん
362 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/26(金) 05:30:21.45 ID:fGNDHHkao
久々の長編名作だと期待
楽しみにしてるよ
363 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/26(金) 05:54:05.78 ID:c7j70UuA0
乙がないからとか言ってる方も頭おかしい
黙って見守ることができんならどっちも出て行け
364 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/26(金) 06:05:27.12 ID:+iJNe8k9O
過敏に反応してるアンチがエレ速住民だってのはよくわかった
エレ速まとめ禁止だと書いた方がいいレベル
じゃないとまとめられたら待ってましたと言わんばかりにクソSSの連呼を自演されてるのが想像に難しくない
365 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/26(金) 07:25:20.49 ID:dpr/yItPO
その決め付けは何なの? 根拠は?
アンチは嫉妬してる作者なんでしょ、何でエレ速住民になったわけ?
366 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/26(金) 08:11:51.93 ID:c7j70UuA0
ここがエレ速のコメ欄そのまんまになってきてる
本当に
>>270
あたりまで平和なスレだったから誰が荒らしてるかなんて一目瞭然なんだがな
レスバトルの内容もゴミだ
367 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/26(金) 08:19:59.66 ID:fGBU3bs4O
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十ヽ -|-、レ |
d⌒) /| ノ ノ
368 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/26(金) 08:55:14.74 ID:s+qaajMpO
過剰に反応する読者もどうかと思うよ
煽られても無視すればそのうち消えるのに、むきになって反論するとか悪手でしかない
SSの内容がどうであれ荒らす奴は荒らすんだから何を言っても無駄だよ
369 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/26(金) 19:52:46.78 ID:3eBD+g4Co
楽しみ
370 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/26(金) 21:49:57.16 ID:h30HTTEeO
追い付いた
371 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/26(金) 23:02:18.24 ID:KTeJh+RhO
人が少なくなってもつまらないSSはちゃんと叩かれるんだな
安心した
372 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/27(土) 08:10:01.36 ID:S4Lz+F1z0
実際問題叩いてるやつが自演しまくってるように見える
373 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/27(土) 09:30:59.06 ID:TAs0Dis1O
叩きは全て自演です
擁護は決して自演などではありません
374 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/27(土) 10:30:08.64 ID:S4Lz+F1z0
俺もそうだけどまとめで元スレ貼られてるから続き読みたくてそっから飛んできたやつもいるんじゃねの?
擁護や信者が沸くのに自演がいないとは言わんが叩きがどっとわいてるのはどう見たっておかしい
375 :
◆y7//w4A.QY
[saga]:2018/01/27(土) 11:54:52.45 ID:sYFh7cGeO
【仮面屋】
スパイ○ーマン「ぜぇっ、ぜぇ、はぁっ……ふぅ〜」バタン スポッ
店主「おや、あんたついさっきの」
兵士「チッ、見失ったか。おーい! 向こうを探せーっ!」ザッザッザッ
勇者「うっ、やばっ」ササッ
店主「表が騒がしいねぇ。捕り物でもやっとるのか」
勇者「行ったか……こうなると思ってた! 思ってたよ!!」ビターン
店主「なんだいきなり。物を粗末に扱うんではないよ。ましてやうちの元商品を。買った店で床にたたきつけるなんぞ……」
勇者「ば、ばあちゃん! 俺も漫画は好きでよく読んでたけどさぁ……! 」
店主「そりゃ子供達がよく読んでる本の代物だったのかい。だったら買手がつきそうなもんだがねぇ、なんで売れ残ってたんやら」
勇者「コアな方だからな! アデルでも数冊しか見かけないぐらいの!」
店主「詳細はどうでもいいよ。あたしゃあんたの希望に沿う品をご提示しただけだから」
勇者「もっと他になんかない? ファンタジーでなくてもいいからもっと普通の……そう、舞台や劇であるような! これならばあちゃんもわかるだろ?」
店主「劇……そうか。それなら最初から言ってくれればいいのに」
勇者「あくまで俺が悪いみたいな言い方やめていただけるかな⁉︎」
店主「……そうさね、演劇で使うとなりゃ……」ゴソゴソ
勇者「つ、使うわけじゃないけど」
店主「ん〜と……これならどうだい?」ポイッ
勇者「おっと……⁉︎」ズシッ
店主「そりゃちょっと曰くつきなんだけどね。なんでも役者が着けてる時に死んだっていう」
勇者「縁起わりーな! ……甲冑の鉄仮面か。これなら。たしかに、さっきより」
店主「違和感とかさっきからお前はなにを言っとるんだい?」
勇者「あぁ、いや、城に行くのにさ」
店主「お城に? そんなもん着けて城にいくのかい?」ジトォー
勇者「あんたんとこの商品だからな!」
店主「客の個人事情なんか知ったもんか。あたしが知りたいのは用途だよ。城に行くならはやく言えってんだ」ゴソゴソ
勇者「……これ、着けたら呪われたりしないだろうな……」ジー
店主「それはその場に置いておきな」ポイッ
勇者「んっ? ……っと」ポト
店主「城に行くならそれなりの格好でなきゃ行けないだろ。それ着けてきな」
勇者「これは……? 仮面か?」
店主「貴族が愛用してるマスカレードマスク(舞踏会で用いられる仮面に装飾が施された物のこと)さ。……あんたの格好じゃチグハグだね」
勇者「だって、体もスパイダー……いつもの服でもダメだな」
店主「亡くなったじいさんがかっこよさコンテストで着ていた服がたしかこっちのタンスに――……」
376 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/27(土) 11:56:31.41 ID:lt/OPqe90
擁護も叩きも自演だらけでもはや魔境やな
前はもっとマシだった気がするんだが
377 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/27(土) 11:58:50.96 ID:sYFh7cGeO
【竜王城 司書室】
シンリュウ「ふむふむ」ペラ
ベビードラゴン「んしょ、よいしょ、紅茶と人肉クッキーを運んできましたよぉ」
シンリュウ「そごにおいででぐれ」ペラ
ベビードラゴン「精がでるっすねぇ〜」コト
シンリュウ「……」ペラ
ベビードラゴン「勇者をお調べになってるだっしょ? 正直、たかが人間をなにを恐れるてのやら」
シンリュウ「わだすもそう思う。だけんど、伝承によっちゃ、歴代魔王様の天敵扱いになってっぺな」パタン
ベビードラゴン「勇者ってそもそもなんす? 記録が残ってるんすか?」
シンリュウ「時代によっで解釈が変わる。勇あるもの、女神に愛されしもの、世界に平和と均衡を繋ぐもの……呼び名は様々だぁ」カチャ
ベビードラゴン「ふぅ〜ん。あっ、一枚もらうっす」ポリッ
シンリュウ「“勇者”とはあくまで符号にしかすぎないのか? たまたまそうなった者が勇者と呼ばれる」
ベビードラゴン「血統は関係ないんすか? んぐっ、あむっ」モグモグ
シンリュウ「そんれがなぁ〜、それもたまたまかもしれないし、そうじゃないのかもしんね」
ベビードラゴン「よくわかんねっす」ゴクン
シンリュウ「生まれ持った“ギフト(女神からの贈り物)”なのか……そうだとしたら……勇者とは“運び手”じゃないんかなぁ……」
ベビードラゴン「運び手わっしょい、運び手わっしょい!」パタパタ
シンリュウ「この部屋にある壁画。世界樹を前に、我が祖先と勇者が共に戦う姿……」
ベビードラゴン「ほんとなんすかね? 祖先様は人肉を食べるのをやめたって話」
シンリュウ「……」カチャ ズズ
ベビードラゴン「こんなにおいしいのに」ポリッ
シンリュウ「……っ⁉︎ あっつぅいっ! ベビー! ちょっとあんだ!」ブボッ
ベビードラゴン「あっ、紅茶、暑すぎたっすか? 猫舌ですもんね」
シンリュウ「冷ましてから持ってぎでっていづも言っでるだに!」
ベビードラゴン「んだども、猫舌の竜王なんて聞いだごども。火炎の息はくのに」
シンリュウ「覚えてけろっ! 何度言わせんの!」プルプル
ベビードラゴン「す、すいません!」
シンリュウ「……祖先様は、勇者のどこに惹かれたんだっぺな……」ボー
378 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/27(土) 12:17:58.27 ID:sYFh7cGeO
【クイーンズベル城 城門前】
勇者?「はっはっはっ、いやぁ、今日も暑い中ご苦労だねぇ!」
兵士「ん……?」
勇者?「失礼。私は名家出身である、ジャンポワール・ルネッサンスというものだが」
兵士「は、はぁ」
ジャン「気軽にジャンと呼んでくれたまえ」
兵士「……」ジー
ジャン「(バレませんようにバレませんようにバレませんようにバレませんように……!)」
兵士「……本日はどのようなご用件で?」
ジャン「(キターーー! ばあちゃん感謝!!)……この城の中に知り合いがいてね」
兵士「はぁ、お知り合いですか。それならば名簿を」
ジャン「いい、いい。私は貴族でありながら庶民の苦労を汲みたい」
兵士「……?」
ジャン「いや、だからだね、手を煩わせるのも悪いだろう?」
兵士「あ、あぁ。いえ、これも務めですので、お名前を教えていただければ――」
ジャン「申すな申すなぁ。せっかくこちらが気を使っているというのに」
兵士「……」
ジャン「……」ゴクリ
兵士「――……あ、ありがとうございます。実はちょうどそろそろ交代の時間で」
ジャン「そ、そうだろう⁉︎ そうだろう! 気にしなくていいんだぞ⁉︎」
兵士「お優しい貴族様で。あの、それでなんですが城内に入るということで?」
ジャン「無論だ。じゃないと自分では探せないからな」
兵士「無許可で通すのはちょっと。そうだ、本日は身分証をお持ちでいらっしゃいますか?」
ジャン「み、身分証?」
兵士「はい。貴族様であれば、身分を証明するものをお持ちですよね?」
ジャン「も、もちろんである!」ゴソゴソ
兵士「……」ジー
ジャン「あ、あれぇ〜? どこやったっけなぁ……わ、忘れちゃったかなぁ?」
兵士「……忘れた?」
ジャン「い、いやぁ〜ついうっかり。忘れるなんて慌てん坊さん! てへっ!」
兵士「貴様……」チャキ
ジャン「な、なんでせう?」
兵士「貴族が身分証を忘れただぁ?」
379 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/27(土) 12:49:21.67 ID:sYFh7cGeO
ジャン「た、たたたんま! 本当に! ウソじゃないて!」
兵士「身分証を持ち歩かない貴族など聞いたこともない!」
ジャン「今回がはじめてのケース! やったね! きみの童貞は捨てられたよ!」アタフタ
兵士「ますます怪しいわ! 貴族がそんなにふざけた言葉遣いをするものかっ!!」
ジャン「言っただろ⁉︎ うちの家系そうなの! こういう教育方針なの!」
兵士「……では、どこの出身だ」スッ
ジャン「ん?」
兵士「出身地と名家であるという証拠を別の形で示せ」
ジャン「ん??」
兵士「できないのか……?」
ジャン「で、できるよ! もちろん! 我が家系は先祖代々アデル王と関係を持っていて」
兵士「ほう」
ジャン「そ、それから、えっと、アデル王と親交が深くて」
兵士「ふむ」
ジャン「……アデル王と仲がすっごくいいんだ!!」
兵士「で?」
ジャン「ん??」
兵士「だからなんだ?」
ジャン「いや、だからさ、そんな凄い貴族ってことで、ここはひとつ」
兵士「なにひとつ証明になっていないのだが?」チャキ
ジャン「矛先って人に向けたら危ないと思うんだ」
メイド「――……これ。なにをしているのです、城門前で」テクテク
ジャン「(ん? あいつは……)」
兵士「こ、これはこれは。姫様専属の……職務に励んでいたのであります!」ビシッ
メイド「貴方は品格を落とすのが務めですか」
兵士「いえっ! 不審者を取り締まり! 王と場内の安全を確保するのが務めであります!」ビシッ
メイド「こちらが、不審者……」ジー
ジャン「(ま、間違いない! あの凶悪姫と小さい頃から一緒にいた……! 俺がいじめられてたのをほくそ笑んでいたメイド……!)」
メイド「城の者が失礼致しました。貴族様と見受けられますが、本日はどのような」
兵士「メイド様! 騙されてはなりません! そいつは怪しいです!」
メイド「黙りなさい。この方がつけているマスクは由緒正しきマスカレードマスクではありませんか。贋作でもない、真贋です。なにを疑っているのです」
兵士「えっ? そ、そうでありますか⁉︎」
ジャン「(な、なんとぉっ⁉︎)」
メイド「……大変失礼致しました。兵にあまり学はないもので」ペコ
ジャン「……いやっはっはっ! いい、いい! 私も身分証をついうっかり忘れていてね!」
メイド「まぁ……それは」
ジャン「だからそこの兵士くんが疑うのも当然よ。責めないでやってくれ」
兵士「……っ! し、失礼いたしましたぁっ!!」ペコペコ
380 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/27(土) 13:10:07.39 ID:sYFh7cGeO
メイド「重ね重ね、こちらの非礼をお詫び致します」ペコ
ジャン「(けっ、なぁ〜にがお詫びいたしますだ! 俺はあの時助けてくれずニコニコしてたお前を忘れちゃいねーぞ!!)……知り合いが城内にいてね。会いにきたのだが」
メイド「お名前がわかればすぐにお調べいたしますが」
兵士「そ、それがっ、貴族様は、ご自分で探していただけると」
メイド「……? なぜ?」
兵士「私を労っていただいて。それなのに、疑ってしまい、本当に申し訳ないことを……」シュン
ジャン「(ちったー反省しろこのタコ!!)……いいんだ。間違いなど誰にでもある。キミはキミの職務を全うしようとていた。責任感に感服する思いだよ」キラン
兵士「お、おおおぉぉぉっ」
ジャン「これからも励み、そして必ずやこの国の、ひいては民の安全を守ってほしい。キミにしかできないのだから」ニコ
兵士「くっ、我が人生、このようなお言葉をかけていただいのは初めてのこと! 私は自分が恥ずかしい!」ガクッ
ジャン「――失敗を糧にしろ」
兵士「糧に……?」
ジャン「学べばよいこと。そうすればキミという価値もさらに高みに近づける」
兵士「そ、そうか……俺は、たるんでいたのか」ギリッ
ジャン「キミは私ができないことをしている。尊敬するよ」ポンッ
兵士「うぅっ、うっ、ありがとうございます、ありがとうございます」
ジャン「(なーっはっはっはっ!! きんもちええwwww)」
メイド「本当に、素晴らしいお考えですね」
ジャン「フッ、よしてくれ。私は父と母の教えに従っているだけで」
メイド「かしこまりました。では、私が城内をご案内させていただきます」
兵士「いえ! それならば俺が! 交代の時間ですし!」
ジャン「(ん……?)」
メイド「あなたよりも私が詳しい。空き時間があるなば……」
兵士「ハッ! そ、そうだ! 高めねば! 自分を!」
ジャン「いや、ほら、メイドさんも忙しいんじゃ?」
メイド「お客様をご案内するのも務めなのでございます。失礼のないように」
ジャン「(どうしてこうなった)」
メイド「自己紹介が遅れて申し訳ございません。私は、クィーズベル王の一人娘にして第一王女。……その専属メイドを務めさせていただいております」フワッ
381 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/27(土) 13:35:55.30 ID:sYFh7cGeO
【クイーンズベル城 城内】
メイド「あの、なぜ先ほどから目につく鏡ばかりを熱心に」
ジャン「えっ⁉︎ ご、ごほんっ、身だしなみは大切だからね!」
メイド「左様でございましたか。法務室はこの先の右手になります」
ジャン「(くっそー、この城って鏡こんなにあんのかよ! ナルシストかっつーの!)……あぁ、案内ありがとう。礼を尽くしてくれて感謝する」ペコ
メイド「……」キョトン
ジャン「では、私はこれで」
メイド「お、お待ちをっ!」
ジャン「……? なんだい?」
メイド「下々に頭に下げるなんて聞いたことが。あの、どちらの家柄はどちらの」
ジャン「フッ、名乗る時には相応しい場がある。今はその時ではない」
メイド「それは、なぜでございましょう」
ジャン「貴族とはなにか。そう下々に尋ねると権力と富の象徴だと答えるだろう。そこに差はないのだよ」
メイド「……?」
ジャン「つ、つまりだね、私はひけらかしたくないのだ。自分の家柄を」
メイド「……またもや、ご無礼を。私もまだまだ見識が足らぬようです」
ジャン「良いんだ。こういう貴族もいるとこれかは知っていてくれれば」
メイド「感服の極みでございます」ペコ
ジャン「うむうむ、ではこれで」
衛兵「……」スタスタ
メイド「……っ!?」ビクッ
ジャン「(……ん?)」
衛兵「……」スタスタ
メイド「……ふぅー」ホッ
ジャン「(なんだ? 今の表情は? 怯えていたような)」
メイド「退城の際はお声かけくださいまし。私は最初に通りましたホールでお待ち致しておりますので」
ジャン「あ、あぁ。わかった。そうするよ」
382 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/27(土) 14:05:17.91 ID:sYFh7cGeO
【クィーズベル城 法務室前】
ジャン「……よし、邪魔者はいなくなったな……」ササッ
学者「ど、どどどいてくださいっ!」アタフタ
ジャン「へっ?」クルッ
学者「わひゃあっ」ドーンッ パラパラ
ジャン「お、おお、自分でぶつかって自分でこけた」
学者「ひ、ひいぃいいっ!! せっかく順序よく並べた資料がぁっ!」カサカサ
ジャン「す、すまん。拾えばいいのか?」スッ
学者「触らないでくださいっ!! どこになにがあるのかごちゃごちゃになるでしょう!!」クワッ
ジャン「あ、はい」
学者「あーっ、もう、急いでるのに。なんで角に突っ立てたんですかっ!!」
ジャン「す、すみません」ペコ
学者「うぅ〜。間に合わないのにぃ、時間押してるのに〜……はやく水質調査団と合流しないと」カサカサ
ジャン「水質? それって井戸のこと?」
学者「そうですよ! この国に住んでるなら知ってるで……あなた、誰?」
ジャン「いや、私は貴族のジャンというもので」
学者「お客様でしたか。城に入れるのならさぞかし誉れ高い名家なのでしょうね」トントン
ジャン「それでさ、水質どうなってんの?」
学者「どうもこうもありませんよ。民には伏せてますが、原因がわからないのです」
ジャン「へぇ、伏せてんの? それってまずくない?」
学者「ならば公表しろと? 無用な混乱を招くだけです。水はたださえ欠かせないもの。この国の気候ならば尚更です。大恐慌が起きますよ」
ジャン「……」
学者「国王様も長期化の憂いは充分理解しておいでです。法務担当の者達が法王庁との協議にはいっています」パンパン
ジャン「(法王庁。たしかアデル王のとこに遊びいった時にきいたことあんな。名前だけだけど)」
学者「水売りに来ている商人があるので、すぐに困窮するともないですし、外部の貴族様が知らなくてもよいですよ」
ジャン「あ、そう」
学者「どいてもらっていいですか? 急いでるので」
ジャン「キミ、貴族に対してフランクだね」
学者「もう一度言います、急いでるので。……罰なら後で受けます」
ジャン「いや、そういう意味ではないけど」
学者「失礼っ、っと、わたたっ」ヨテヨテ
ジャン「前見えてないじゃん。よこせよ、半分」
学者「は、はい?」
ジャン「持ってやるから。整理し終えたんたなら触っても問題なかろうて」
学者「ば、バカじゃないですか⁉︎ ……ハッ! もしや、貴族様に荷物持ちをさせてる現場を見させてさらに重い罰を……」
ジャン「ばっかじゃねーの? そのかわり、ちょい話を聞かせてくれや」
学者「話……?」
ジャン「そうそう。歩きながらでかまわんから」スッ
383 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/27(土) 14:46:55.06 ID:sYFh7cGeO
【クイーンズベル城 大広間】
メイド「(会いたい。……一目だけでも無事かどうか確認したい。私のたったひとりの弟)」ボー
姫「こんなところでなにしてるんですの?」ヒョイ
メイド「……姫さま。午前の教養の部は?」
姫「退屈だから抜け出してきちゃった」
メイド「はぁ……」ガックシ
姫「貴女こそなぜここに? 暇してるわけじゃないでしょ?」
メイド「私は、お客様のお帰りをお待ちなのです」
姫「お客様? なぜ、貴女がそんなことをするの? わたくしの専属なのに」
メイド「姫様のお付きであると同時に、国にも従事しているのです。丁重におもてなしするのは当然のこと」
姫「いいえ! わかってないのは貴女の方なんですの。私が右といったら右。左といったら左を向くのが貴女の務め」
メイド「ひ、姫様。そのようなことをいつまでもおっしゃるから、国王様は私に」
姫「うるさいんですの! お父様の名前を今持ち出さないで! 縁談の話を思い出したくないのですからっ! べーっ!」
メイド「……はい」
姫「それで? そのお客様というのはどちらですの?」
メイド「……はい?」
姫「わたくしの付き人をこき使った罰を与えてやらなくちゃいけませんの」
メイド「ひ、姫さまっ!! 国賓なのですよ! 自覚をお待ちくださいませ! 第一皇女がそのようなマネを!!」クワッ
姫「うるっさいんですの。どうせどこかの貴族だったのよね? アイツらすぐに舐めたマネしやがるから。セクハラされたんですの?」
メイド「い、いえっ! そ、そのような!」ブンブンッ
姫「口止めされたんですのね。全く許されないんですの!」コツコツ
メイド「ひ、姫さまっ! お待ちを! お待ちくださいっ! そちらでなく法務室にっ⁉︎」バッ
姫「そうなんですのぉ……」ニヤァ
メイド「ち、違います! だめです! なりません! 貴族相手とはいえ姫さまが直々に! 大事になりますよ! 家柄を潰す気ですか⁉︎」アタフタ
姫「大げさなんですの。ちょっとこらしめてやるだけなのに」コツコツ
メイド「待って! お待ちくださいまし! 後生ですから!」タタタッ
384 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/27(土) 15:30:49.44 ID:sYFh7cGeO
【クイーンズベル城 通路】
ジャン「――ふぅん、水脈が逃げてるねぇ」テクテク
学者「信じられないでしょうが、事実なのです」テクテク
ジャン「岩盤に使う火薬が足りないんとかじゃなく?」
学者「硬い地層については爆薬で突破し、さらに掘りすめたのですからそういう話ではないしょう」
ジャン「いっそ、別の場所を掘ってみるとか」
学者「どこでも掘ればいいという条件ではないのですよ。水脈が流れているか、もしくは地中に溜まった水蒸気が溜まっていないと。生活水として使うまでには濾過も必要ですから」
ジャン「なら、今ある井戸の再利用できないかと模索してるわけ?」
学者「可能ならばそれが一番いいのです。ですが、厳しい……はぁ」ガックシ
ジャン「そりゃ困ったな。できることと言えば掘るしかないしな」
学者「せめて、なぜ水が逃げているのか……その原因さえ突き止められれば」
メイド「ひ、姫さまぁっ!!」タタタッ
姫「……」ズンズン ズンズン
ジャン「……あ、あれは……こっちにまっすぐ向かってくるのは……ま、ままままま、まさかっ!」
学者「あ、姫様だ」ペコ
姫「……見つけたぁ……」ニヤァ
ジャン「ひ、ひぃっ! 10年ぶりかぐらいになるが忘れもせんぞ! そのおもちゃを見つけたような笑み!」ガクガク
学者「頭さげなきゃ。貴族といえども、怒られますよ」コツン
ジャン「(た、たたたのむっ! はやく通り過ぎて! と、トラウマが! やめて! そこはネギを刺す穴じゃ!)」ペコ
姫「……」ズンズン ピタッ
メイド「ひ、姫さま。立ち止まらずにそのまま歩きましょう! ねっ! そうしましょう!」
姫「――……これ。そこのお前」ビシッ
学者「わっ、姫さまから声かけられてるよ」
ジャン「(か、勘弁してくれぇぇぇっ)」ガタガタ
姫「聞こえんのか? マスカレードマスクなどつけておる小癪なお前のことよ」
ジャン「はっ、はいぃっ!」ビシッ
385 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/27(土) 15:33:59.82 ID:sYFh7cGeO
姫「なんだそのナリは? 舞踏会にでもきたつもりかえ? 着飾って……なんとまぁ、無様な男よ」
メイド「姫さまっ!!」クワッ
姫「オーホッホッホッ! 見てみるんですの。震えておる! くふふっ」ニマァ
ジャン「(に、逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ、逃げちゃ、だめだ! トラウマなんか平気だい!)」
メイド「気は晴れましたでしょう? ささ、私たちは――」
ジャン「……失礼。あまりにも麗しいお姿なので、身体に電流が走っておりました」
姫「おべっかを使う作戦に切り替えたんですの? なんでも、このわたくしの付き人をこき使ったようですね」
メイド「来る途中に何度も……! それが私の務めであり、なにより、私から!!」
ジャン「よいのです。たしかに自己紹介をされた際に専属だと。辞退すべきだったのです」
姫「ほう?」
メイド「も、申し訳ございませんっ!」ペコペコ
姫「お前が頭を下げるではないわ。私までさげたことと同義になるであろうが」
メイド「ひ、姫さまぁ」
姫「マスクをとって顔を見せよ」
ジャン「……はい?」
姫「なにかえ? とれぬと申すか?」
ジャン「あー、んー」
姫「私の頼みを聞けぬのか?」
ジャン「(だ、だだだだ大ピンチッ!! ど、どないしよ! こいつ俺の顔覚えてたらえらい目にあうど!!)」
姫「どうした?」
ジャン「(で、ででもっ、10年前の話だし、顔なんか忘れちゃうし? ちっくしょおおおっ! これじゃ変装した意味が! なんとか誤魔化さなければ!)」
学者「……なにやってるんですか。とったほうがいいですよ。無礼です」コソ
386 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/27(土) 17:19:41.61 ID:hukL3QGnO
乙
387 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/27(土) 17:29:55.54 ID:S4Lz+F1z0
今日の分終わり?
388 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/27(土) 19:07:53.31 ID:YrLRbhlvo
乙
389 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/27(土) 19:23:41.99 ID:YWyAV8D2O
姫「はやくとらぬか。お父様に言いつけるぞ」
ジャン「(ええい、ままよっ!!)……メラミ」ボソ
姫&メイド&学者「え、ええっ⁉︎」ギョッ
ジャン「〜〜〜っ! ぐはっ、ぐあぁ」ゴロゴロ
姫「こ、こいつ、自分の顔に向けて火炎魔法を撃ちおった……気でも狂ってるんですの?」
メイド「だ、大丈夫ですか⁉︎ すぐに神官職のものを」
ジャン「(俺の魔法ってこんないてーの⁉︎ 自分に撃ったことないからわからんかった。で、でも! 困惑させることには成功したぞ!)……これでいいのです」ボォッ
学者「いい、って燃えてますよ。服」
ジャン「え? あ、やばっやばっ! あちゃ! あちゃちゃ!」バタバタ
姫「……」ポカーン
ジャン「ふぅ……私の無礼には今、私自らが罰を与えたのです」
姫「罰? あなたが?」
ジャン「姫。聞いてもらえますでしょうか」
姫「なんですの?」
ジャン「(見よ! 俺の演技力を!)……実は、この仮面の下はひどいヤケドの跡がございます」
姫「……」ピク
ジャン「あれは幼き日のことでございました。実家にある納屋で可愛がっていた馬とお昼寝をしていると……放火魔が」
学者「ま、まさか。それで火をつけられて、逃げ遅れて」
ジャン「警備の者が火事に気がついて救出された際、私は一命をとりとめましたっ!! 顔にひどいヤケドをおって……」
メイド「な、なんということを……」
ジャン「でも! でもっ!! それより悲しかったのは……!! なにかおわかりですかっ⁉︎ 姫っ!!」クワッ
姫「な、なんですの……?」タジ
ジャン「私の仲良かった馬が……っ! 仲の良い馬が巻き込まれてしまったこと……」ポロ
メイド「……涙が」
ジャン「守りたかった!! 守れなかった!! もう帰ってこない! あぁ、ロビー! ……うっうっ……」ポロポロ
390 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/27(土) 19:26:11.51 ID:YWyAV8D2O
学者「そんなにまで……」
ジャン「姫……。本来ならば罰は姫からいただくが道理。しかし、私にとって最も辛い処罰がわかるのは、私なのです」
姫「……トラウマを……ほじくり起こしたんですのね?」
ジャン「(おめーにほじくられてるよ馬鹿野郎!!)……左様です。追加の罰があれば、なんなりと。仮面を脱げと言われれば脱ぎましょう」スッ
メイド「……っ! お、お待ちください!!」ガシッ
ジャン「ど、どうなされたのです?」(困惑の演技)
メイド「姫さま! 罰というのなら私も同罪でございます!!」
姫「うっ」タジ
メイド「この方はこんなにキレイな瞳をしていて、涙をためてるのに……これ以上なんの罰が必要でしょうか⁉︎」
姫「(な、なんですの。このクソ寒い流れは)」
メイド「さぁっ! 罰を! この方も、そして私も謹んでお受け致しますっ!!」
ジャン「(いや、ちょ、ちょっと。せっかくうまくいきそうだったのに)」ハラハラ
姫「……私が貴女に罰を与えるわけないでしょう」
メイド「では、この方も」
姫「はぁ……なんだか。もうどうでもいいですわぁ」
ジャン「あ、ありがたき幸せっ!!」ドゲザ
メイド「姫さま、寛大なお計らいに感謝を申し上げます」ペコ
姫「はいはい」ヒラヒラ
メイド「さぁ、お立ちを。なにも恥じることはないのです。申し訳ありません、はるばるハーケマルから来ていただく予定の国賓の使者たる方に」
姫「ん……?」ピク
ジャン「ハーケマル?」
メイド「実は……申し上げずともわかっておりました。そのマスクはハーケマル由来のもの。第一皇子に先駆けて様子を見にいらしたのでしょう?」
姫「な、な、な……」プルプル
ジャン「(城門の兵士さんにはアデルって言っちゃたけど。まぁ、いっか。それで。どうせ目的の鏡見つけりゃいいし)……バレていましたか」
姫「……っ⁉︎」ギロッ
391 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/27(土) 19:38:49.15 ID:YWyAV8D2O
メイド「お帰りの際に、王室へとご案内しようと思っていたのです」
ジャン「いや、そ、そこまでは。今回は隠密でして」
姫「……」プルプル
メイド「姫さま、よかったですね。ハーケマルの国からの使者がこのように清い方で。これなら、民も第一皇子もさぞかし……」
姫「おい」ギロッ
ジャン「ひっ⁉︎」ブルッ
姫「ハーケマルの皇子ってのに伝えるといいですの」
ジャン「(こ、この目はっ! なにかに無性にイライラしている時の! や、やめて! 第二のトラウマを発動させないで!)」ガタガタ
姫「わたくしは、貴方と結婚するつもりは毛頭ないと。頭の毛ぐらいにね!!」
ジャン「あわわわわっ、ごめんなさい、許してください、もう勘弁してください」ブルブル
メイド「姫さまっ!」
姫「……? なんですの? 別に使者に言ってるわけではありませんのに」
ジャン「い、いやだ。診察ごっこはもう嫌だ……」ガタガタ
学者「体育すわりしてなんか言ってますね」
姫「診察ごっこ……?」ピク
メイド「やはり、先ほどのトラウマが!! こうしてはおられません! すぐにお部屋にお通しいたします! 本日は城にお泊まりくださいませ!!」
ジャン「いやなんや……そこは違う穴なんや……」ブツブツ
姫「……どこかで……? なにか……見落としてるような……」
392 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/27(土) 20:01:17.00 ID:YWyAV8D2O
【クィーンズベル城 玉座】
王様「まことかっ⁉︎ ハーケマルからの使者が!」
メイド「今は、部屋でお休みなさっておいでです」
王様「そうかそうか! そうじゃったか! 失礼はないであろうな!」
メイド「そ、それは……」
王妃「懐かしい。ハーケマルといえば私の母国でもあります。使者といえば、いつもの貴族かしら」
メイド「今回のご来訪は、王子に先駆けての隠密だそうでして」
王様「なるほどのう、視察に参ったというわけか」
王妃「……? それにしては、おかしいような? 定期的に文を渡しておりますし、なにより私が嫁いでいる国をいまさら」
王様「よいよい。あちらの王にとっても大事な息子なのであろうて。気になりもする」
王妃「……左様で、ございますね……」
メイド「目が覚めたら、お通しいたしますか?」
王様「うむ……いや、まて。今日は自由に見てもらって、明日にでも会食を設けよう。ワシが出張っては隠密の意味がなくなる」
メイド「承知いたしました」
王様「お主に世話役をまかせよう。くれぐれも、失礼のないようにな。姫の大事な面談相手に悪印象を持たせるわけにはいかん」
王妃「あなた、その席には私もご一緒してもかまいませんか?」
王様「よろしい。許可しよう」
メイド「姫さまとのご縁談がかかっております」
王様「うむ……お主にも、無理を言ってすまなんだ。小さき頃より共に育った間柄を逆手にとり、姫を説得させようなどと」
メイド「拾っていただいた恩は忘れておりません。姫さまにとっても幸せな婚姻となると信じております」
王様「うむっ! お主の忠義やあっぱれ! ……これからも、姫をよろしく頼む」
王妃「私たちは少々甘やかしすぎたようです。あの子には自覚がたりない。頼りにしていますよ」
メイド「もったいなきお言葉にございます」
393 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/27(土) 20:24:17.99 ID:YWyAV8D2O
【クィーンズベル城 客室】
ジャン「Zzz」
メイド「……」パタン
ジャン「うっ、うぅっ」ビクゥッ
メイド「……起きていらっしゃるのですか?」
ジャン「いややっ、やめてっ」
メイド「うなされている……おかわいそうに、よっぽどお辛かったのですね」
姫「失礼するんですの」バターーンッ
メイド「……っ⁉︎」ギョッ
姫「あら? 貴女まだいらしたんですの?」
メイド「ひ、姫さま! お静かに! 休まれているんですよ!」
姫「どーにも喉に小骨がひっかかっているような気がして。やっぱりそいつの顔見たいんですの」
メイド「な、なりませんっ! どうしてもというのならせめて許可をお取りください!」
姫「あらあら? 歯向かうんですのぉ?」ニタァ
メイド「な、なんですかぁ?」タジ
姫「めずらしいですわね。貴女が反抗するなんて、十年間はなかったことですの。最後に……かばおうとしたのは、勇者相手だったかしら」
メイド「……っ!」
姫「あの頃の貴女は今よりも引っ込み思案でしたものね。いつもニコニコ笑って、取り繕っていたのをよく覚えていますわ」
メイド「む、昔の話です」
姫「勇者と私と貴女の三人で。アデル王に連れられてやってきた勇者と仲良くなるのはそんなに時間がかからなかったんですの」
メイド「……そうでしたね」
姫「遠く過去のように感じますわ……本当に遠い過去なんですけど」コツコツ
メイド「姫さま! ドサクサ紛れでなにを近づこうとしているんですか!」
姫「……なぁ〜んかひっかかるんですの……診察ごっこをしていたのを覚えている?」
メイド「え……? 覚えては、いますが。勇者様とやっていたおままごとの」
姫「ええ。私が妻、そして貴女が愛人」
メイド「い、今思うと、子供ながらにとんでもない設定を」
姫「仲間外れにしてはかわいそうだと思ったんですの。……その診察ごっこをしたのは、後にも先にも勇者だけ……」
メイド「左様です。勇者様が1ヶ月間滞在していた時にやった遊び。アデルにご帰国の際には、遊び疲れたのか、勇者様が憔悴しきっていたのをよく覚えています」
姫「楽しかったですわよね。……こいつは、なんでさっき“診察ごっこ”と口走ったのか」チラ
ジャン「Zzz」
メイド「遊び自体は、よくある遊びですよ」
姫「……それも、そうなんだけど……」ジー
ジャン「違う、皮ひっぱらないで、う、うぅっ」
メイド「良くない夢を見ておられるのです。今はそっとしてあげましょう、姫さま」
姫「うぅ〜〜〜ん? なんで、こいつを見てると勇者を思い出すんですの……?」
394 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/27(土) 21:36:36.16 ID:S4Lz+F1z0
やっぱおもしれww
叩かれるレベルのものではないよなこれww
395 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/27(土) 22:47:47.99 ID:NIYx7LzA0
>>1
以外が何レスもするのは荒らしと変わらんのにな
まとめ民アピールも臭いからやめてくれよ
396 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/27(土) 23:34:23.95 ID:Ci4KaatSO
乙
397 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/01/28(日) 00:19:40.30 ID:QdoqZEgV0
乙
勇者→いじめられてた
姫、メイド→友達のつもりだった
つまりこういうことか
アンチに負けないで頑張ってくれ
とても面白いよ
398 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/28(日) 04:17:45.81 ID:/iotL7Eco
乙でした
月並みな展開だけどやはりこういうの好きだわ
399 :
◆7Ub330dMyM
[sage]:2018/01/28(日) 10:47:29.94 ID:2zswLIblO
ここだけ補足レスしておきます。
マスカレードマスク
https://i.imgur.com/TrKZxsN.jpg
SS内でも()で説明入れてますが一例を挙げるとだいたいこのような仮面のことです。
ありがちに映画やRPGゲームで正体を隠す人物がつけたりするので見たことある方は多いんじゃないでしょうか。
この他にも様々な種類のものがあります。画像を身につけているというわけではありません。
そういう部分にこだわりのある方は好きなデザインを想像して当てはめてみてください。
400 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/28(日) 15:49:13.59 ID:nyYl0jguO
【その頃1 クィーズベル城 郊外】
戦士「はぁぁぁぁっ!!」ザシュ
武闘家「ハイィィィィッヤァッ!!」ドンッ
戦士「ぐっ⁉︎ がはっ」キーーン
武闘家「はぁっ、はぁっ……ふぅー」スッ
戦士「く……っ、ち、ちくしょう、また負け、か」ガクッ
武闘家「まだやる?」パンパン
戦士「ふん、あたしは負けず嫌いなんだ。身体が動けばすぐにでもやりたいが……少し休憩するか……ふぅ」
武闘家「……」ドサッ
戦士「なぁ? 気になってたんだが……老人は……武闘家の師匠はなんで勇者についてけって言ったんだ? 修行のためか?」
武闘家「見聞を広げろって。……そう言われた。アタイが井の中の蛙だって思い知ってちょうどよかったんだと思う」
戦士「マク選手のことか。たしかにあの強さは尋常じゃなかったな。できれば、あたしももう一度会いたい」
武闘家「毎日会ってるじゃないさ」ボソ
戦士「……武闘家……お前はあたしより、強い。悔しいが認めなきゃいけないみたいだ。なにかアドバイスをもらえないか?」
武闘家「タフさに自信がありすぎるんだ。防御が疎かになりすぎ。アタイの動きは見えるんだろう?」
戦士「ああ、だが、速すぎて反応できない」
武闘家「動体視力は悪くない。これまでの相手は多少攻撃を受けても自前のタフさがあってどうにかなってたかもしれないけど」
戦士「……」
武闘家「――達人に近づけば近づくほど甘くないよ」
戦士「防御か。攻める方が好きなんだけどなぁ」
武闘家「得意不得意は誰にでもあるもんさ。アタイだって人に教えられるほど高みにいるわけじゃない。勇者に教えてもらえば?」
戦士「むっ? なぜだ? あいつはこのパーティで三番手だろう。器用貧乏だと言ってたのはその通りだったし……武闘家はまだ勇者と手合わせしてないから実力を知らないのか」
武闘家「……はぁ」
戦士「もっと、もっと、強くなりたい……マク選手とまではいかないが、背中が見えるようには」
武闘家「そこに関しちゃ同感だね。あいつの顔色を変えるぐらいの一撃を放ってみせる……! やられっぱなしでたまるもんか……!」ギュゥ
戦士「ぷっ、ははっ、お前もあたしと同じぐらい負けず嫌いなんだな」
武闘家「……なんで笑うのさ」
戦士「いやいや。目標があるとはいいものだ。無愛想だが、嫌いじゃないよ、あたしは」
武闘家「アタイは嫌いだけど」
戦士「なっ⁉︎ 今ようやくいい雰囲気になろうとしていただろうが!」
武闘家「女同士でなに言ってるのさ。アンタ、そっちの気でもあんの?」
戦士「〜〜ッ! き、嫌いだ! やっぱりお前なんか! このひねくれ者!」
武闘家「くっ、ひ、人が気にしてるところを」
戦士「あ? ……なぁ〜んだ。自覚あったのか? やぁ〜〜い」
武闘家「立てッ!! 足腰立たなくしてやるッ!!」クワッ
戦士「やろうってのか!! あたしが何遍も黙って負けると思ってんだろ!」ムクッ
武闘家「弱いくせに。ウププッ」
戦士「い、言いやがったなぁっ⁉︎ 叩き切ってくれるッ!!」
401 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/28(日) 16:08:32.89 ID:nyYl0jguO
【その頃2 クィーンズベル城 防具屋】
魔法使い「見てこれ見てこれ〜っ! ピアスかわいくないっ⁉︎」
僧侶「お似合いですよぉ〜」
魔法使い「はぁ、自由に買い物ができるなんて……甲斐性なしの勇者についてってたら一生できないと思ってたぁ! ふんふ〜ん♪」
僧侶「賭けにかってよかったですねぇ」
魔法使い「マク選手! あぁ、素敵! この杖も貰っちゃたし! ん〜、ちゅっちゅっ」
僧侶「杖は手垢がついて汚いですよぉ……でもぉ、考えてみればマク選手って不思議な人でしたよねぇ?」
魔法使い「不思議? へんてこりんなマスクや格好が?」
僧侶「それもありますけどぉ。なんで無口なんでしょぉねぇ?」
魔法使い「修行なのよ。あれが」キリッ
僧侶「なんだか、喋りたくなかったみたいなぁ〜?」
魔法使い「チッチッチ、僧侶ったらなんにも知らないのね。サイレントモンクっていうのよ。あれが自分に課した制限なの。はぁ……かっこいい」ウットリ
僧侶「……はぁ、やっぱりポンコツなんですねぇ」
魔法使い「きっと、きっとね、あのマスクの下はすごぉ〜く、かわいい顔してるのよ? なんで私に杖くれたのかしら……ま、まさかっ⁉︎ 一目惚れされてたっ⁉︎」
僧侶「……」
魔法使い「や、やだぁ〜! ど、どうしよ! 私にに恥ずかしがってたってこと⁉︎」バンバン
僧侶「叩かれると痛いですぅ〜」
魔法使い「修行があけたら私に会いに来たりして……好きだ、結婚してくれ」(マクの真似のつもり)
僧侶「あのぉ、そもそも声を知らないのではぁ?」
魔法使い「純粋な目を見てわからなかったの⁉︎ そんなことも想像できないの⁉︎」クワッ
僧侶「は、はぁ」
魔法使い「ぐへ、ぐへへっ……だめよ! 私、ダメ男代表の勇者についていかなくちゃ! 魔王が!」
僧侶「……」
魔法使い「それでも僕はかまわない。魔法使い、君がほしい!! ……なぁ〜んちゃってなんちゃってぇ!!」バンバン
僧侶「幸せそうでなによりですよねぇ〜」
402 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/28(日) 19:36:14.57 ID:vdGmdMVbO
【数時間後 クイーンズベル城 客室】
ジャン「――せ、洗濯バサミはだめだっ!」ガバッ
メイド「目が、覚められましたか……?」
ジャン「こ、ここは……? 知らない天井だ……」
メイド「姫さまと通路で会ってから、しばらくしてからこちらの客間にお通ししたのですが」
ジャン「お、お前は……姫……思い出したぞ! なぜ俺がここにいるのか!」
メイド「そうですか、よかったです。睡眠中もなにやらうわ言のようにうなされていたので!」
ジャン「(誰のせいだと思ってやがる!)……し、失礼。取り乱してしまい、申し訳ない」
メイド「起きたばかりで、このようなことを申し上げるのは、大変恐縮なのですが」
ジャン「あ、あぁ、長居しすぎたか。こちらこそ――」
メイド「いえいえっ! そうではありません! 本日はお泊りくださいませ!」
ジャン「泊まる? いや、それはご迷惑では」
メイド「申し訳ございません。王に、国王様に今回の使者様のご来訪を報告致しました」
ジャン「(あー、王っていうと、気さくなおっちゃんことか。10年前だからなぁ、顔もあやふやになっちまってるが。じいちゃんになってんのかね)」
メイド「隠密だというお立場を知りながら。責任は全て私にございます」
ジャン「……いや、バレてしまったのならば仕方のないこと。体裁さえ守っていただければかまいませんよ」
メイド「ありがとうございます。城内、街はご自由にご覧くださいませ」ホッ
ジャン「(泊まりの上に行動制限もなし、か。それだったら大義名分のもとゆっくり鏡を探せるな)」
メイド「あの、実は、お伝えしたいことがもうひとつ」
ジャン「ん?」
メイド「姫さまでございます」
ジャン「(かーっ、かーっ、またあいつかよ。顔も見たくないわ)……聞きましょう」
メイド「姫さまを、悪く思わないでくださいまし」
ジャン「……?」
メイド「本来は、とっても心お優しいお方なのです」
ジャン「(ないね)」
メイド「淑女たる教育、求められる姫というお立場、そして……政略結婚の道具。18の年齢にかすにはあまりに重すぎる重圧……」
ジャン「(まぁ、一国の姫だからなぁ。勇者という立場を冠する者として同情はするけど……政略結婚?)」
メイド「ハーケマルとクイーンズベルは長年築いてきた地位が、秩序がございます。それはなにを優先しても守られなければならない」
ジャン「待った……ごほん、待ってくれ。政略結婚と?」
メイド「……っ! ち、違います! 姫さまはまだ会ったことのない王子を悪く言ってるわけでは!」
ジャン「ハーケマルの王子と?」
メイド「会えばきっとお互いを知るきっかけになります! 姫さまはとっても魅力的で!」
ジャン「(縁談か……なぁるほど、だから俺がハーケマルの使者だと聞いて機嫌悪くしやがったんだな)」
メイド「ですから……その、先ほどの無礼はお許しいただけると」
ジャン「(そんでこいつは、さっきのを“なかったことにしてくれ”と打診してるわけだ。ようするに、報告すんなと、王子に)」
メイド「いかがでしょうか?」オズオズ
ジャン「……元よりそのつもりでした。発端は私の無礼のせいなのですから」
メイド「こちらこそ。王様よりは丁重におもてなしせよとのご命令を受けております」ホッ
ジャン「(あーあ、安堵した顔しちゃって。こりゃこの縁談、よっぽど重要みたいだな。ハーケマルとクイーンズベルか……)」
403 :
◆7Ub330dMyM
[:saga]:2018/01/28(日) 20:14:42.56 ID:5byNfoa1O
メイド「もし、空腹であればお食事のご用意を」
ジャン「それより、許されるならば貴女からお話を伺いたいのですが」
メイド「はい……? なんなりと」
ジャン「姫は縁談相手である王子をどう思っておいでで」
メイド「……それは、その、ここだけの話でしょうか?」
ジャン「約束しましょう。帰っても話さないと誓います」
メイド「当たり障りのないお話を申しますと、あまり、良くは。なにぶん、会う機会すらなく」
ジャン「(じゃあ、初対面で結婚! みたいな感じか。親同士であらかじめ決められる許嫁みたいなもんかね。家柄ってのは難儀だねぇ)」
メイド「この年齢の婦人は、また複雑なのでございます。姫さまは、誰かと恋愛したことすら、ありませんので……ハッ! い、いいえ! 嫁入り前のお身体を傷物にするというわけではなく!」
ジャン「大丈夫ですよ。言っている意味は伝わっています」
メイド「……ですから、その、現実としてまだ直視できていないご様子で……」
ジャン「(ん? いやでもまてよ?)……王妃はハーケマルのご出身では?」
メイド「もちろん、それは使者さまもご存知の通り。なので、王妃様からもご説得をしたのですが」
ジャン「(え? 待って待って。王妃の血族ってことは……いとこ? え? うっすいけど血の繋がりあんじゃね? うはー、まじかよ。いとこやはとこ同士で毎回結婚してるみたいなもんじゃねぇか)」
メイド「……聞きたことというのは、聞けましたしょうか」
ジャン「(あれ? でも、だとすれば……なんだこりゃ、どうなってんだ? ……探り入れてみるか)」
メイド「……?」
ジャン「いやいや、多感なお年頃だとは理解できます。私は当人達の感情よりも別のことが気がかりかと思っておりました」
メイド「別の?」
ジャン「はい。“ハーケマルから婿入りにこれても、クィーンズベルからは誰も出せない”」
メイド「……」
ジャン「(クソ姫は一人娘だ。男の兄弟がいるわけじゃない。王の直径にあたる人物は交換じゃないとパワーバランスが崩れてしまう)」
メイド「その点は、姫様のご裁量にかかっております」
ジャン「我が国……ハーケマル王子を操ると?」
メイド「い、いいえっ! そんなまさか! 子を産み、その子が成人した暁にはハーケマルに送ると盟約を交わされているではありませんか!」
ジャン「(じ、次世代予約システムっ⁉︎ えげつねーことしてんなこいつら)……そうでしたね」
メイド「永遠の友好は、紡がなければならぬこと。姫様ならば、必ずや元気な赤子を生まれるでしょう」
ジャン「(気の長い話だが、一人娘なのはどーしようもないかんな。それが落ち所ってやつなのかね)」
メイド「他には、なにか?」
ジャン「いや、ない」
メイド「それならば、私はこれで。なにかご用があれば備えつけの鈴をお鳴らしください。表にいる衛兵がすぐに使用人を連れてまいります」ペコ
404 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/28(日) 22:42:38.05 ID:2i8ZNkb/0
乙
405 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/29(月) 00:25:24.86 ID:P4zYGwS00
乙
昔は近親相姦は多かったらしいね
勇者魔王SSだけど
406 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/29(月) 10:21:42.46 ID:NGx50bz8O
ジャン「なにからなにまでありがとう。キミには感謝している」
メイド「い、いえ。私はこれが責務ですので。失礼致します」ガチャ パタン
ジャン「――……ふぅ、結婚か」スポッ
勇者「聞きました奥さんwwあの姫が結婚ですってよwwしかも望まないwwメシウマww」ゴロゴロ
メイド「ジャン様、よろしいですか?」コンコン
勇者「おっとww……ごほん、しばし待たれよ」スポッ
メイド「あの、何度も申し訳ございません。会いたいというお方が」
ジャン「どうぞ。お入りください」
メイド「失礼致します」ガチャ
姫「……」スッ
ジャン「(ぬ、ぬおっ⁉︎ な、なななぜっ⁉︎)……これはこれは、ご機嫌麗しゅうございます。先ほどは大変失礼を」スッ
姫「上っ面だけのおべっかはいいんですの」チラ
メイド「ひ、姫さま。くれぐれも。では」パタン
姫「……」ジー
ジャン「(こいつとは1秒たりとも同じ空間にいたくねぇ)どうなされました? 私になにか? まずはお座りください」
姫「あなた、この城に来るのは何回目ですの?」
ジャン「え? えーと、数回ほどです。いや、回数をよく覚えていないのは前回から期間が開いておりまして」
姫「どれぐらい?」
ジャン「(や、やけにつっこんでくるな)一年ほどでしょうか。申し訳ございません、あやふやで」
姫「声の感じからして年配には見えないですけれど。ボケてるんですの? それとも物覚えが悪いだけ?」
ジャン「(こ、このっ、腐れビ○チ)気を悪くされたのならば申し訳ありません」
姫「そのマスクの下は、ひどいヤケドがあるんでしたわね?」
ジャン「はい」
姫「とってみてはくれませんの?」
ジャン「(しつけぇな!)私はかまいませんが、姫を不快にさせるわけには」
姫「かまいません」
ジャン「い、いえ、でも、それでは」
姫「かまわないと言っているんですの」
ジャン「(なんなんだよこの食いつきようは)……なぜ、私のヤケド痕を? やはり、先ほどの罰では」
407 :
◆7Ub330dMyM
[sage]:2018/01/29(月) 10:25:19.04 ID:NGx50bz8O
姫「仮にも一国の姫が免除すると言ったこと自体は撤回しないんですの。ただ――」
ジャン「……?」
姫「どーにも、ひっかかるんですの。以前、城に来た時にわたくしに会った?」
ジャン「(なんだこいつは⁉︎ 野生の勘でもあんのかっ⁉︎ )な、ななにをっ? そ、そんなわけがございません」
姫「前回来た時は何しに? お母様に言われて?」
ジャン「(ま、まずいぞ。演技どうこうじゃねぇ、ウソで塗り固めて二分の一の賭けに勝ち続けるしか。辻褄が合わなければ一発でアウトだ)左様です」
姫「そう……定期的に文を渡してるのを見たことあるんですの。でも、その時の貴族はマスクをしては」
ジャン「ち、父上なのです! 私は息子です!」
姫「父上……?」
ジャン「はい、この度は、隠密ですので。あまり顔を知られていない私がと」
姫「ふぅん」
ジャン「(ど、どうだ? 息子いるよな? どうなんだ?)」
姫「……そうなんですの」
ジャン「(セーーーフッ!! セーフっぽい!)」
姫「では、私と面識はないんですのね?」
ジャン「ありません! 誓って!」
姫「あなた、いくつですの?」
ジャン「……18になりました」
姫「……」ピクッ
ジャン「(空気が重てえ! こいつは何気なく聞いとるのかもしれないが、俺は生きた心地してない。帰りたいよぉ〜)」
姫「同い年なんですのね。私も18の誕生日を迎えたばかりです」
ジャン「そ、それは、めでたきことで」
姫「ハーケマルとはどんな国?」
ジャン「王妃様が、よくご存知のはず」
姫「色々な見方を聞いてみたいんですの。あなたとは歳が近いとわかったし、価値観が似ているやも」
ジャン「私の価値観が王族と肩を並べるとは、恐れ多くも」
408 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/29(月) 10:52:19.52 ID:NGx50bz8O
姫「かまいません。いわばここは外界より隔離された室内。この場での発言は全てなかったことにすると確約いたしましょう」
ジャン「ですが、体裁が」
姫「保つのは第三者の目がある時のみでよい。今はない。この意味がわからないほど愚鈍なんですの?」
ジャン「(俺もその考えに同意だが、こいつに言われると腹たつゥッ!)」
姫「王子とはどんな方?」
ジャン「(知らねーよ。俺会ったことないし、顔すら知らねー。……とは言えないし)我が国を誰が悪く言えましょう」
姫「それは、本音を言えば悪いと?」
ジャン「信用の問題でございます。私が良く言おうと、悪く言おうと、姫様は私の発言する言葉を信じていただけますか?」
姫「……」
ジャン「仮に、王子を褒めたとしましょう。そうしても“どうせ出身国なのだから”、と。勘繰りはいたしませんか?」
姫「わたくしを馬鹿にしているんですの?」
ジャン「いいえ。誰しもが同じなのでございます。そう思うのが自然なのです」
姫「王族であるわたくしを同じだと?」
ジャン「(めんどくせぇ。これだから血筋にこだわるやつらは。一方で嫌いつつも一方でプライドもってやがる)……恐れ多くも、発言がすぎました」
姫「……わたくしの質問に答えればよいのです」
ジャン「北のハーケマルといえば、年中寒さが厳しい国です」
姫「知ってるんですの」
ジャン「この国とはちょうど真逆ですね。しかしながら、そのような厳しい環境にあっても民達からの不平不満は聞こえてきません」
姫「それも知ってるんですの。ハーケマル現王がお父様と同じく賢王であることも。でも、息子もそうであるとは限らないでしょう?」
ジャン「(お前がそうだからなww)……ご自分の目でお確かめを。それ以上は言えません」
姫「忠を尽くしているつもりなんですの?」
ジャン「この縁談は両国間の今後に強く影響致します。お姫様はまだまだうら若き年齢、気分ひとつで悪い結果になりかねません」
姫「……そう、そうなんですの。あなた、犬っころなんですのね。駄犬」
ジャン「なんとでも」
姫「……っ! こ、やつ! こんなやつがあいつのはずないんですの!! 不愉快です!!」バシャ
ジャン「(水ぶっかけてきやがった。お前をデスノートに書いてやる)」ポタポタ
姫「なんとか言ったらどうですのっ⁉︎」ブンッ スコン
ジャン「(今度はコップ投げつけてきやがった。お前をデスノートに……これさっきも思ったか)」
姫「〜〜ッ!! 私は、結婚なんかする気は、ぜぇ〜〜〜ったいに、ないんですのっ!!」ビシッ
409 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/29(月) 11:20:01.75 ID:NGx50bz8O
ジャン「(まぁ別に俺は自分の正体さえバレなきゃ)」
姫「王子のことを悪く言うんですの! お父様に報告してなかっことにしてもらうためにっ!!」
ジャン「(なりふりかまわず言いやがったな! なにが発言をなかったことにだ! お前最初からそのつもりだったな!)……できません」
姫「ムキーーーッ!! あなた! 国に帰れなくなりますわよ⁉︎」
ジャン「(使者を脅すなよ……)私がどうなろうと、それだけは」
姫「……」カチャ スラッ
ジャン「ひ、姫様? 暖炉に飾ってあるレイピアを握ってなにを……?」
姫「女はつつましく、男の三歩後ろに下がりついていく。そんなのは前時代的な考えなんですの」ズンズン
ジャン「は、はわわっ」ガタガタ
姫「女であろうと戦う。自分の幸せは自分で勝ち取る。良い時代とは思いませんこと? 使者よ」ニタァ
ジャン「す、鈴、鈴……」カサカサ
姫「お待ちなさい」グサッ
ジャン「いっ⁉︎ (さ、刺した⁉︎ ガチで俺の脚刺しやがったぞこいつっ⁉︎」
姫「どうせお父様がわたくしを守ってくれるんですの。人の一人や二人殺めても」ユラァ
ジャン「(お坊ちゃまが犯罪起こす時にありがちな思考回路⁉︎)ひ、姫? それはまずいですよ。俺使者ですよ」
姫「あなたを殺せば、破談になる、破談になる、破談に……」ブツブツ
ジャン「ひ、ひぃっ⁉︎ (メンヘラにクラスチェンジした⁉︎ やばい、だたやだやだ!俺はニートになるまで死にたくない! せめて自分の好きにやって死にたい!)」
姫「だぁ〜いじょうぶですの。痛くない、すぐ終わりますからぁ」ニタァ
ジャン「(こ、この笑みは、10年前と同じ……! ま、またトラウマが……! あ、あぁぁっ!)」ガタガタ
姫「さぁ、覚悟するんですの――……」
410 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/29(月) 11:23:36.35 ID:NGx50bz8O
ジャン「――……やっ、やめてよっ!! 姫ちゃん!!」ブルブル
411 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/29(月) 11:38:51.62 ID:NGx50bz8O
姫「へ……?」ポロッ
ジャン「や、やめて。それはいかんて。それは……」ガタガタ
姫「その呼び方は……あなた……? やっ、やっぱりマスクを……!」グィ
ジャン「うっ、うっ、尻穴が、痛い」スポッ
姫「……っ⁉︎ まさか、そんな、で、でも、面影が……」
勇者「汚された。汚されてしもうた……うっうっ」
姫「勇者? 勇者、なんですの? そ、そうだ! お尻見せるんですの!!」グィ
勇者「やだぁっ! またお尻!」ペカー
姫「こ、これは。聖痕……間違いない、勇者……なぜ、ハーケマルの使者だと……」
メイド「お嬢様!! 姫様!! なにをやってるんですか⁉︎ 開けますよ⁉︎」
姫「い、いけませんわっ!!」ダダダッ ガチャン
メイド「鍵閉めましたね⁉︎ 本当になにをやってるんです⁉︎」
姫「えーと、えーと、お、お待ちなさいっ!!」スポッ
ジャン「うっうっ」
姫「これで仮面は元通り。あとズボンも」ゴソゴソ
メイド「かまいません!! ドアをぶちやぶってください!!」
兵士「はっ!」
姫「今開けるというておる!!」タタタッ
――ガシャーーーン――
兵士「あ、あきました!」
メイド「姫様、いったい、なにを――……きゃ、きゃああああああっ⁉︎」
姫「はぁ、今開けるともうしたのに。なにを叫んでいるんですの」
兵士「……」ポカーン
メイド「ひっ、ひっ、ひっひっひっ、ひっ姫様、様」プルプル
姫「……?」
メイド「そ、そっそそそそっ、それはぁ?」
姫「どれですの?」クル
兵士「れ、レイピアが、使者様の太ももに刺さっておりますが……」タラ〜
メイド「あふぅ」ドサッ
兵士「メイド様! 気をしっかり! 気絶なされた! お、おーい! 誰か!」
姫「足に刺したまんまなの、忘れてたんですの……」タラ〜
412 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/29(月) 11:57:54.83 ID:NGx50bz8O
【クィーンズベル城 玉座】
王様「な、なんたることを……っ! なんということをぉっ!」ドンッ
姫「……」プイ
王様「〜〜ッ! なにをしでかしたかわかっておらんのかァッ!!!」ドンッ ドンッ
王妃「あまり怒られては血圧に……メイドよ。貴女がついていながらなんという失態です」
メイド「も、申し訳ございません! 申し訳ございません!!」ペコペコ
王様「前代未聞の出来事じゃ!! 友好国の使者を刺しただァッ⁉︎ しかも、姫が⁉︎ なにをされたというわけでもなくゥッ⁉︎」
姫「ぷっ、顔真っ赤ですわよ、お父様」
王様「お、お前は……っ、いったいどこで育て方を間違えてしまったのだ……! なぜ、このような……」
姫「押しつけるのが悪いんですの。私にできる意思表示をしたまで」
王妃「姫よ。あなたの感情のせいで外交問題に発展するのですよ……どれほどの心労が貴女のお父様の……民の不安に繋がるか考えないの……?」
姫「わたくしがいつ! そんなのを望んだって言うんですの⁉︎ ……それに、外交問題には発展しませんからご心配なく」
王様「な、なにィ? 使者だぞ? こちらが弱みを握られるのだぞ?」
姫「わたくしが解決してみせます。その方法も心得ております。お父様とお母様はどーんと大船になった気持ちでお待ちくださいませ」
王様「こ、こやつは……なんと」プルプル
王妃「あ、あなた。落ち着いて」
王様「使者が回復次第、ここに連れてまいれ。ワシ直々に頭を下げる」
姫「ですから、その必要はありません」
王様「お前がなくてもワシにはあるんじゃ!!」クワッ
王妃「姫は一週間の自部屋謹慎処分です。事態が落ち着いたら、また追加で罰を与えます」
王様「よいなっ⁉︎ お前はもうなにもするな!! この件には一切かかわるな」
姫「いいんですの? 本当にあっというまに解決できますのに」
王様「メイド!! この大馬鹿娘をはやく部屋に連れてゆけっ!!!」クワッ
メイド「は、はいぃっ!! かしこまりましたぁ!!」
413 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/29(月) 12:18:49.46 ID:NGx50bz8O
【クィーンズベル城 通路】
姫「るんたったらん♪」コツコツ
メイド「ひ、姫様、あの、上機嫌ですけどご自分がなにをしたのかご理解していらっしゃいます?」
姫「不安がってるようですわね。さっきも言ったでしょ? 大船に乗ったつもりでいろと」
メイド「や、やってしまった姫様が言える台詞じゃ」
姫「だいたい回復魔法ですぐに治るんだから騒ぎすぎなんですの。使者はどこですの?」キョロキョロ
メイド「な、な、な、なぁっ⁉︎ この後に及んでまだなにかやろうと⁉︎」
姫「懐かしい友人に会いにいくだけですの」
メイド「……へ? 懐か、しい?」
姫「貴女も知ったら驚くんですの。仮面の下はヤケドなんてありませんでしたよ」
メイド「へ? そ、そうなんですか? じゃ、じゃあウソ?」
姫「いいからはやく案内するんですの」
メイド「で、でもっ……姫様がウソついてる可能性が」
姫「わ、私を疑うんですの?」ヒクヒク
メイド「だって、こんなことしでかす人を!!」
姫「まぁ、本当にハーケマルの使者でも同じことをしてたでしょうけど」
メイド「な、なんという……!」
姫「それはそれ。これはこれです。今回は違ったのですからよしとしましょう」
メイド「……本当に違ったのですか? ハーケマルの使者では……?」
姫「さぁて♪ あなたも見ればわかるんですの♪」
414 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/29(月) 16:48:18.49 ID:vTFPOFUKO
【クィーンズベル城 南西方向 廃墟】
ガンダタ「飯だ」
見張り番「おっ、やっと飯か。……ん? なんだそれは。なんで2つも持ってんだ? まさか、あいつの分か?」チラ
少年「……」
見張り番「いらねーよ! もったいねぇ、よこせ、俺が食う!」グィ
ガンダタ「人質は生きてなくちゃ意味がねぇ。お頭からの指示だ」
見張り番「お、お頭ァ? ほんとかよ、それ」
ガンダタ「ああ」
見張り番「チッ、だったらしょうがねぇか。俺は酒とってくる。ガンダタさんよ、その間見張り番頼んだぜ」テクテク
ガンダタ「……」スッ
少年「……」ビクゥ
ガンダタ「……飯だ、食え」コト
少年「い、いらない。ねぇ、家に帰して。なんでここに連れてこられたの、家に帰してよ……うっ、うっ」
ガンダタ「食わなきゃ力つかねーぞ」
少年「……」
ガンダタ「お前は単なる人質だ。生きてさえいりゃ家に帰れるだろうよ」
少年「ほ、ほんとう……? お姉ちゃんに、また会える?」
ガンダタ「希望にすがるのはおめぇの勝手だが、不確定な部分もある。……とにかく、今は食って体力を確保しろ。それがお前のすべきことだ」
少年「うっ、うっ」ポロポロ
ガンダタ「メソメソすんじゃねぇ! ……俺もお前も境遇は一緒よ」
少年「……?」
ガンダタ「牢にいれられ、虎視眈々と脱出を狙う。這い上がるチャンスをな。お前はその機会が与えられるのをただ待ってるだけだがな」
少年「……な、なに言ってるのか、意味が……」
ガンダタ「わからなくていい。見張り番の気が変わっちまったら、取り上げられちまうかもしれねぇぞ」
少年「うっ」ぐぎゅるる〜
ガンダタ「腹、減ってんだろ?」ススッ
少年「よく、わからないけど、ありがとう、おじちゃん」カチャ
ガンダタ「おじちゃんじゃねぇ。俺の名前はガンダタ。いずれアレフガルドの大盗賊団の長になる男よ」
少年「へ、へー」
ガンダタ「ふん、今はこんな場所にいるけどよ。必ず這い上がってみせるぜ」
少年「うん」パクっ
ガンダタ「(旅の若僧め、えらそーに説教たれてきややがって……! お陰でこっちはあの後手下どもに逃げられ……アデルで、だ、大工仕事だぁ? いまさらできるかよ!!)」プルプル
見張り番「おぉ〜い、すまねぇな」テクテク
ガンダタ「(見つけたらただじゃおかねぇぞ! ぶち殺して、やつに渡された銀細工を……)」
見張り番「どうだい、お前も酒飲む――」
ガンダタ「ごちゃごちゃうるせェッ!!」ブン
見張り番「え? ちょ……っ⁉︎ うっ!」ドゴォッ
ガンダタ「あっ」
見張り番「」ドサッ
少年「あ、あわわっ」ガタガタ
ガンダタ「し、しまったぁぁぁっ!!」
415 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/29(月) 17:09:54.99 ID:vTFPOFUKO
少年「……」ブルブル
ガンダタ「ま、まずいぞ。大人しくしてるつもりが、つい、はずみで」チラ
少年「こ、殺したの?」
ガンダタ「(ど、どうする。このガキがやったことに、ええぃ、できるはずがねぇ。喧嘩の末にやっちまったって感じに――)」
少年「こ、こわいよぉ、お家帰りたいよぉ」ポロポロ
ガンダタ「側で泣くな!! 今考えてるんだからよ!」
少年「ひっ」ブルッ
ガンダタ「ちくしょおぉぉっ、仲間内での殺しはご法度だ。例え喧嘩だとしても、許されるもんじゃねぇ……くっ、なんてこった……こ、ここまでか」
少年「お姉ちゃん、お姉ちゃぁん」
ガンダタ「泣きてえのはこっちも同じ……ん? お姉ちゃん?」
少年「うっうっ、ぐすっ」
ガンダタ「おい、ガキ。おめぇ、そういやなんで人質になってんだ?」
少年「し、知らないよぉ」
ガンダタ「(クソ、イライラさせるガキだ。……いや、まてよ。まだ生き残る道があるかもしれねぇ、このガキを使やぁ)」スタスタ
少年「ひっ、な、なに……」
ガンダタ「――ついてこい。ここから逃げるぞ」
少年「えっ⁉︎ お家に帰れるの……?」
ガンダタ「家には帰れねぇが」
手下「が、ガンダタ……おめぇ、なにしてやがる……」
ガンダタ「……っ⁉︎」ギョ
手下「酒が足りねえだろうと思って、来てみりゃ……まさか、お前、裏切るつもりじゃ⁉︎ お、お頭らァッ!! みんなぁっ!!!」
ガンダタ「チッ」ヒョイ
少年「うっ、わっ」
手下「人質を担いでどうするつもりだ! そいつは――」
ガンダタ「ごちゃごちゃうるせぇよ」ヒュッ
手下「うっ」グサッ
ガンダタ「(手持ちの投げナイフは今ので最後か)」スチャ
手下「う、ううっ」ドサッ
ガンダタ「急所は外してある。お頭に伝えな。人質を返してほしけりゃ、追って連絡を待てとよ」
手下「ぐっ、ガンダタァっ! 身内殺し、裏切りはこの業界じゃご法度だと知らねーおめぇじゃねぇだろ!!」
ガンダタ「まともなことやってちゃ時間がかかるのよ。それに、なにがご法度だ。俺もお前も、社会のはみ出し者だろうが」
手下「ぐっ、ぐぬぬっ! 許されるこっちゃねぇぞ! ガンダタァッ!!」
ガンダタ「……なら、追ってこい。誰も止めやしねぇよ。お前らも止まるつもりねぇだろうがな」
少年「お、お家、帰りたい」
ガンダタ「(クィーンズベル城で働くメイドの弟だったな。こうなっちまったらしょうがねぇ、やるとこまでやるっきゃねェッ!! 男ガンダタ、ただでは死なねぇぜっ!!」
416 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/29(月) 17:20:52.93 ID:vTFPOFUKO
〜〜第3章『砂漠の花と太陽と雨と』〜〜(前編)
完
417 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/29(月) 17:28:55.64 ID:rVks6FFUO
勇者はニートになったのけ?
418 :
◆7Ub330dMyM
[sage]:2018/01/29(月) 17:36:31.43 ID:vTFPOFUKO
長くなりそうなんでここで一旦区切ります。
いろいろ書いてるフラグ回収してたらこの章ちょっと長くなりそうです。
なので今回は前編、後編と分けることにしました。
今日はレスしません。
ちょい時間あけます。
419 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/29(月) 18:28:30.51 ID:P4zYGwS00
乙
続き楽しみ
420 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/29(月) 18:47:14.58 ID:S+nobXoj0
乙
421 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/29(月) 22:51:08.55 ID:DVEPXsaeo
乙
422 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/30(火) 00:13:18.07 ID:sE7zk8ty0
やっぱり王道は良いな
ここまで楽しかった
423 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/30(火) 00:23:03.52 ID:dZ5Y/sXyO
乙
424 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/30(火) 03:17:19.57 ID:hWy89NLNo
おつ
425 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/30(火) 04:03:48.25 ID:i9muVxtyO
おつー
426 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/30(火) 07:37:40.26 ID:ginuxxYpo
乙
427 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/30(火) 10:54:34.41 ID:4rtQaZ/XO
森きのこは章ごとにまとめてるから読みやすくてありがたい
エレ速だと一気まとめするから読むの疲れる
さて余計なレス排除してあるまとめ版見てくるか
428 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/30(火) 12:25:20.02 ID:sE7zk8ty0
エレ速は最近超長いアンカスレがまとめられてて理不尽な叩かれ方をしてたな
まとめ方がおかしいてちゃんと指摘してるやつもいたけどこのSSも長編になるならまとめ拒否は考えた方がいいよ
読まないからなんの得にもならない
429 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/01/31(水) 00:18:32.50 ID:ypjEG5wC0
続きまだですか
430 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/31(水) 02:02:38.76 ID:S9n0YB2A0
くっせえまとめ民アピールとageカスがウザいので更新無しです
431 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/31(水) 09:07:15.49 ID:GlTgRd4n0
更新はあります
作者が真面目に書いたら800くらいまでいくと言っていたではありませんか
その言葉を信じて、私は今日も辛い仕事場へ満員電車に揺られていく
432 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/01/31(水) 11:50:03.00 ID:ypjEG5wC0
>>430
この人作者でもないのになんでこんなにカリカリしてるんだろ
433 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/31(水) 13:59:27.91 ID:YvuJAF6kO
【数十分後 廃墟】
お頭「そうかい……ガンダタの野郎。ついに裏切りやがったか」グビッ
手下「お、お頭ァ! そんな悠長に酒飲んでる場合じゃねぇですよ!」
お頭「騒ぐことはねぇ。あいつはいつか裏切ると思ってた」
手下「……え? そ、それなら、なんで?」
お頭「“目つき”よ。目は口ほどに物を言うっていうだろ。ありゃあ下につくやつの目じゃねぇ。下克上を考えてるやつのモンよ」
手下「だったらなんで手下に加えたんでさぁ⁉︎」
お頭「こうなると予測はついてたっつったろ? まさか……人質をかっさらうとは思ってなかったが」
手下「ガンダタがいなくなって、見張り番を殺られちまったのもかまいやしません。でも、人質は……!」
お頭「計画にケチがついた。おめェはそう言いてんだろ?」
手下「うぐっ」
お頭「修正すりゃいいのよ。予定が狂ったんなら。……やるべきことをやるだけで慌てたってなんにもならねぇ」
手下「なら、すぐに追っ手を!」
お頭「ああ。馬10頭とそれに見合う人数で走らせろ。見つけたら殺せ」
手下「へ、へいっ!」タタタッ
お頭「(ガンダタよ。おめェに一目置いてたんだぜ? 人質掻っ攫われた俺と、行動を起こしたお前。ヘタ打ったのはどちらか、白黒ハッキリつけなくちゃいけねぇみてぇだな)」
手下「あ、そ、そうだっ!」ピタッ
お頭「ん……? どうしたい?」
手下「城に潜伏させてる密偵から連絡がありましてね。なんでもハーケマルの使者がきてるらしいです」
お頭「あ? 使者ァ?」
手下「へい。なんでも、王子来訪に先駆けてだそうで」
お頭「そりゃ都合が良い。水が干上がっちまってるのがバレちまうだろ」
手下「そ、それが……。王も黙って成り行きを見守るつもりはないらしく、法王庁と協議に入ったとか」
お頭「なんだとォ?」
手下「おそらく、援助を要請する腹づもりでしょうね。長期化しても耐えられるように」
お頭「……まじィな。ガンダタよりもそっちのが問題だ。計画がご破算とかしちまう」
手下「どうしやしょう? 予備も含め王子来訪に合わせて水不足に陥っていなきゃ」
お頭「(法王庁か。やつらの援助で水を確保できりゃ、俺らがいくら干上がらせたところで……)」
手下「いっそのこと、こちらも長期化させて、王子来訪の後にズラしますかい?」
お頭「バカやろ。どれくらいの金と期間をかけて下準備してきたと思ってやがる。それまでこっちの体力がもたねぇの。小銭稼ぎじゃ給料が払えなくなっちまう」
手下「う……」
お頭「しかたねぇ。さらに金をばらまくか。……おい」
手下「へ、へい?」
お頭「潜伏してる手下に伝えろ。使者ってやつが金で動くかどうか確認しろとな」
手下「へい!」
お頭「(全てが計画通りとはいかねぇか。だが、それでこそやりがいがあるってもんよ)」
434 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/31(水) 14:42:42.78 ID:YvuJAF6kO
【クィーンズベル城 癒しの間】
ジャン「(うぅ……ここは……)」
神職「ルビスよ。聖なる守護者よ。彼の者を癒し給ええ」ポワァ
ジャン「(……回復魔法……そうか、また気を失ってたのか。自由に動けてもクソ姫とエンカウント率高かったらたまらんぞ……)」
姫「ここかしら⁉︎」バターーンッ
メイド「姫さまぁっ!」
神職「ひ、姫さま?」
ジャン「(思ってるそばからぁ⁉︎ まだ、寝たふりしてよう)」
姫「神職、あなたはもう下がってよろしくてよ」
神職「し、しかし、目が覚めたら玉座にお通ししろと仰せ司っております」
姫「後はこのわたくしとメイドが面倒を見ます」
ジャン「(ひ、ひぃっ⁉︎ なんでこいつはこうも俺にまとわりついてきやがる!)」
神職「王様は、姫さまは謹慎処分だと」チラ
メイド「う、うぅ」オズオズ
神職「メイド。王に報告いたしま――」
姫「貴女。誰に向かって、誰の専属メイドにモノを申しているんですの?」ギロ
ジャン「(負けるな! 神職さん! あんたは正しい! 責務を全うしようとしている!)」
神職「うっ、し、しかしですね」
姫「まさか? まさかねぇ? たかが宮使いの神職が姫直属の従者に向かってそのような……」
神職「王令は、姫さまと言えど」
姫「おだまりなさいっ!!」バンッ
神職「……っ!」ビクゥ
姫「その王の血を引く者に向かってなんたる無礼なっ!!」
神職「そ、そのようなつもりは」
姫「いいえ、そう聞こえます。嫌というほど聞こえます。貴女がわたくしを軽視していると」
神職「わ、私はただ、王令を尊守しているだけでございます」
姫「チッ。しつこいですわね」
ジャン「(王に報告しろ! 今すぐ報告しろ! どんだけ甘やかされて育ってやがる! こんなのは横暴だ! 許されないよ!)」
メイド「姫さま……。神職殿のお立場も考慮なさってください。彼女は与えられた責務を」
姫「なんでも責務責務。……ふう。わかりました。十分外にでておれ」
神職「……」チラ
メイド「こ、今度は、私もそばについておりますので」ペコペコ
神職「……わかり、ました。十分だけです」
姫「誰にモノを申しておるか。わかったならとっとと出て行け」
ジャン「(だ、だめだぁっ! 行かないで! 友よ! この城の良心よ! 神職さまぁ!)」
神職「失礼致します」ペコ
435 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/31(水) 15:08:09.43 ID:YvuJAF6kO
ジャン「(い、いって、しまわれた。目を覚ましてやりすごさねば……)」
姫「メイド。よく見ておくんですの」コツコツ
メイド「い、いったいなにをされようというのです?」
姫「この者の正体。なぜハーケマルの使者と名乗っていたのか……」
ジャン「(な、なに……? 正体だと?)」
メイド「先ほども言っていましたが、ハーケマルの使者ではないのですか……? では……ハッ! ま、まさか⁉︎」
ジャン「(こ、こいつ……っ⁉︎ 俺が気絶してる間に仮面とりやがったな⁉︎ やっぱり顔覚えてやがったのか!)」
メイド「な、なりません! 姫さま!」ガシッ
姫「えっ、ちょ、な、なぜ止めるんですの? 貴女も知ってる懐かしい――」
メイド「ま、まさか、姫さまにまで接触していたなんて……!なりません! 危険です!」
ジャン「(……? な、なんだ?)」
メイド「(そうよ! まさか盗賊の一味が毒牙を……! 姫さまだけは巻き込んじゃだめ!!)」
姫「な、何言ってるんですの? 危険なはずがありませっ、はなっ、離しなさい」グィ
メイド「私におまかせくだっ、さいっ! 危害が及んでは王に顔向けできなくなります!」ググッ
姫「あ、貴女、ちょっと、なにか勘違いしてるんじゃありませんこと⁉︎」
メイド「いいえ! 姫さまこそ! この人達は危険なんです! ご自分のお立場と御身をご理解ください!!」
姫「……っ!」カチーンッ
メイド「だいたい! 姫さまはいつもそうです! 小さい頃は泣き虫だったくせに! 勇者様と会ってからはすぐ調子に乗るようになって!」
姫「なんですのっ⁉︎ 貴女だって昔はニコニコ笑うだけの引っ込み思案だったくせに! お姉さん風吹かせてたのは最初だけ! 後は私の後をぴょこぴょこついてきてでしょ⁉︎」
メイド「……っ!」カチーン
姫「歳を重ねるにつれて姫さまお嬢様と!」
メイド「それを言うんだったら言わせてもらいますけどねっ⁉︎ 姫さまは本当は芯が脆いんじゃないんですか⁉︎ 私がいなくなってもいいんですかっ⁉︎」
姫「なっ、ななななぁっ⁉︎ 貴女、自分をなんだと⁉︎」
ジャン「……あの」ムク
メイド「本当はさみしいだけでしょ! 今だって私がいなきゃ着替えもできないのに!」
姫「で、できますわっ! 貴女こそ!」
メイド「……私がなんだって言うんです?」
姫「ぐっ、ぬぬっ……!」
ジャン「いや、あの〜、もしも〜し」
メイド「いいんですよ〜? 昔みたいに泣き虫になっても? ハンカチ貸してあげますからぁ」
姫「あったまきた! 頭きたんですの! 戦争ですわ!」
メイド「なにが戦争ですか! いつまでも子供みたいなこといって!」
ジャン「……おい、お前ら」
姫&メイド「なんですの(か)っ⁉︎」
ジャン「なんでもないです。どうぞ、お続けください」
姫「このクソメイド!! そんな思い込みが激しいからなんでもかんでもすぐポカやるんですの!!」
メイド「あーあー、聞こえませーん。子供姫に言われたくありませーん」
ジャン「……ふぅ」テクテク
姫「耳腐ってるんじゃありませんこと⁉︎」
メイド「幼児退行してるんじゃありません⁉︎」
ジャン「ごゆっくり」パタン
436 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/31(水) 15:27:01.23 ID:YvuJAF6kO
【クィーンズベル城 通路】
神職「目が覚められましたか」
ジャン「あ、どうも」ペコ
神職「部屋の中からなにやら喧騒な声が」
姫&メイド『――――ッ!!』ギャアギャア
ジャン「喧嘩するほど仲がいいと言いますしね。そっとしておきましょう」
神職「は、はぁ。傷は塞がっておりますか? 痛みなどは?」
ジャン「おかげさまで」
神職「回復力が良いのですね。羨ましいですわ。まるで精霊に愛されているかのよう」
ジャン「大袈裟ですよ。それより、少し城の中を散策したいのですが」
神職「王が会いたいと仰っておいでです」
ジャン「(まぁ、姫が使者を刺したとなればそうなるか)……私は気にしておりませんが」
神職「寛大なお心とお申し出に感謝致します。しかし、事がコトですので、なにもなしというわけにも……」
ジャン「一国の王の申し出ですしね。お誘いを無碍に断ってもカドが立ちますか」
神職「さすがハーケマルの使者様でございます。どうか、我が王を安心させてはいただけませんでしょうか」
ジャン「(弱ったなぁ。俺もボロがでそうだからできれば会いたくないんだけど……かと言って、会わないというわけにも)」
衛兵「神職殿。……と、こちらの方は、ハーケマルの使者様ですね」
神職「これはこれは。お勤めご苦労様です」
衛兵「国王陛下がお呼びです。目が覚め次第、お連れせよと」ペコ
ジャン「ふぅ、わかりました。行きますよ」
神職「ありがとうございます」
ジャン「(今さらだけど、こうなるんだったら忍びこめばよかったなぁ)」ポリポリ
437 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/31(水) 15:53:29.37 ID:YvuJAF6kO
【クィーンズベル城 玉座へと続く階段】
衛兵「この度は、災難でしたね」コツコツ
ジャン「あぁ、いえ」
衛兵「我々も姫のおてんばぶりには手を焼いているのですよ。トホホ」
ジャン「(同情するわ)」
衛兵「ところで、使者様の生家は名家なのでしょうか?」
ジャン「なぜ、突然?」
衛兵「い、いえ。私は平民出ですので、少し興味が。使者という大役を任せられるとはどのような家柄だろうかと」
ジャン「(俺も普通の家だぞ)たいしたことはございません。我が家系は王に代々使えているだけのこと」
衛兵「やはり。謙遜しておいでなのでしょうが、裕福なのでしょうね」
ジャン「いえいえ、ちっぽけな家でございますよ」
衛兵「またまたご謙遜を」
ジャン「(そういや、勇者特典で王様から支給されてた300万ゴールドはいったいどこへ……夫婦の旅費に消えたんだろなぁ)」
衛兵「……まさか、お金にお困りなのですか?」
ジャン「いえ、困っているというわけではないと思いますが。私が買ってもらったのは竹とんぼなんですよ」
衛兵「た、竹とんぼ……?」
ジャン「はい」ガックシ
衛兵「それは、つまり、お小遣いがなかったと? 教育が厳しくて」
ジャン「厳しい……かは甚だ疑問ですが、自由に使えるお金はなかったですね」
衛兵「ほ、ほうほう! それでしたら! お金があればどんな使い方をしたいです⁉︎」
ジャン「お金があれば……ですか?」
衛兵「パフパフをしてみたり?」
ジャン「(そうやなぁ、それもいいな。ぐへへ。今の金で豪遊すると魔法使いとかがうるせぇだろうしな)」
衛兵「ギャンブルもしてみたり?」
ジャン「い、いいですね」ニマ
衛兵「そーですか! そーですか! 使者様とは気が合いそうですね!」
ジャン「男ならみんなそんなもんでしょう?」
衛兵「たしかにたしかに! たまぁ〜にいるんですよ! 堅物が!」
ジャン「何が楽しくて生きてるんでしょうね」
衛兵「いや! まさにその通り! ごもっとも! ……使者様においしいお話があるんですが、どうです? 今夜、酒場で一献」
ジャン「今夜ですか? いや、今日は城に泊まると」
衛兵「城下町の視察だって言って抜けりゃいいじゃないですか! 可愛い子つけますよ? パフパフッ。パフパフッ」
ジャン「う、ううん」
衛兵「おっぱいでパフパフっ。パフパフっ」ワキワキ
ジャン「ご、ごほん。なにやら重要な話みたいですね」
衛兵「(チョロいな! こりゃあお頭が喜ぶぞ!)……楽しい夜になりそうですな。ぐふっ、ぐふふっ」
ジャン「衛兵よ。お主もワルよのぉ、ぐふっ」
ジャン&衛兵「ぐふふふふっ」
438 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/31(水) 17:24:58.09 ID:Ks50AJWbO
【クィーンズベル城 玉座】
王様「本当に、ウチのバカ娘が申し訳なんだ」
ジャン「私は気にしておりません」
王様「う、む。そう言ってくれるのはありがたいのだが。どうだろうか、本心を聞かせてもらえぬか」
ジャン「と、申されますと?」
王様「国を代表する使者として来場している身。母国に忠あればこそ、報告する理由があろう」
ジャン「(あのおっちゃんもだいぶ白髪が目立つようになってんな。喋り方まで。苦労してんだろな)」
王妃「陛下同様、妾も身体に大事ないか心配しておった。傷の具合はどうか……?」
ジャン「(なんでこんなできた親からあんな娘が。……甘やかしだろうな。原因は)神職様に手厚い治療を受けまして、この通り。すっかり傷も癒えましてでございます」
王妃「いつもの貴族ではないようですが……」
ジャン「(ぎ、ぎくぅっ!)あの方は流行りのインフルエンザにかかっておりまして」
王妃「まぁ……そうであったか。北では難病が流行っておったか」
ジャン「収束傾向を見せておりますのでご心配なく」
王妃「ハーケマルに戻った暁には、私も民たちの安全と健康を心より祈っていると伝えておくれ」
ジャン「御意」ペコ
王様「話を戻すが、なにか、望みの物はあるか?」
ジャン「(賄賂だな。物を与えるかわりに黙ってろと。すんなり黙っていますでは忠義がないと判断して、受け取らなければ信用しないつもりか)……では、出立の際に金貨を10万ゴールドほど」
王様「……ふむ、よかろう」
王妃「気を悪くしないでね。これもまた、政治なのです。両国が正しく、良い関係を続けるための」
王様「うむ。お主の国に対する忠義を疑っているわけではない、ただ、保険として――」
ジャン「陛下のご意向。私もしかと感じております。両国の発展と、民が安心して暮らせるのならば、是非もなく」
王様「ほっ⁉︎ ほっほっ。優秀な若者……仮面をかぶっておるからわからんが、優秀であることに違いない」
ジャン「(いやぁ、ホントは素顔で会いたいんだけどね。クソ姫がいるからね)」
王妃「貴方の家柄を取り立てるよう、私からハーケマル王に文を持たせましょう。今後の使者としても」
ジャン「いっ⁉︎ そ、それは、さすがに出来過ぎといいますか」
王様「謙虚な。……国を想う心がそうさせるのか。うむっ! 気に入った!」バンッ
ジャン「陛下。そんないっときの気分で人事を」
王様「ワシの見る目を疑うというのかの?」ギロッ
ジャン「(こ、こいつら……っ! やっぱり親子やんけ!)」
王妃「陛下は一度言い出したらきかぬ頑固者なのです。まったく、あの娘も変なところばかり似て」
王様「だから可愛いのよ」
王妃「ええ、そうですね。ふふっ」
ジャン「(甘やかしてる片鱗を見た気がする)」
王様「使者よ。此度の来訪の目的は隠密での視察だと聞いておるが」
ジャン「はい」
王妃「ハーケマル王も人が悪い。私にさえ秘密にするなんて」
王様「自由に見て回るがよい。大臣よ。この者に、首飾りを」
大臣「かしこまりました」ゴソゴソ
王様「使者よ。心して聞け。今から渡すものは、王家代々伝わる由緒正しき宝具。それを身につけてさえおれば、王族同等の扱いを受けるであろう」
ジャン「畏れ多い。よろしいのですか?」
王様「たかだか10万ゴールドなどはした金で水に流してもらったのだ。こちらも器量を見せねばな。ここに滞在する間のみの貸し出しだが」
王妃「これも、クィーンズベル王陛下のご采配があればこそ……ハーケマルの使者とはいえ、寛大さに感謝するように」
ジャン「はっ!」ドゲザ
439 :
◆7Ub330dMyM
[saga]:2018/01/31(水) 17:48:48.08 ID:Ks50AJWbO
【クィーンズベル城 通路】
ジャン「宝具ねぇ」キラン
メイド「玉座に向かったと……ならば、こちらに……」キョロキョロ
ジャン「なにか特殊な付加効果あったりすんのかな。ただの飾りか……それにしても、久しぶりだった。おっちゃんにあったの」テクテク
メイド「……いたっ! 見つけた!」ダダダッ
ジャン「ん……?」クルッ
メイド「めぇいどぉ〜〜キィィィィック!!」ドゴォッ
ジャン「ぐはっぁ⁉︎」ドサッ
メイド「……はぁっはぁっ……」
ジャン「あ、あ……? な、なにしやが――」
メイド「姫さまをどうするおつもりです⁉︎ 弟だけではなく姫さままで!!」
ジャン「はぁ?」キョトン
メイド「いつから接触していたのですか⁉︎ 見取り図を渡せといってきたのはつい最近の出来事でしょう⁉︎」グイッ
ジャン「お、おい。ちょっと落ち着け」
メイド「姫さまをどうするおつもりですか! 姫さまを姫さまを姫さまを姫さまを姫さま姫さまをっ!!」ブンブン
ジャン「お、おおっ、おちっふるなっ、ガクガクさせるなっ、ままっまたんかいっ」ガクガク
メイド「私が仕事をしないからですか⁉︎ 弟を人質にとるだけではなく姫さままで⁉︎」
ジャン「ひ、人質……?」
メイド「うっ、うっ、わかりました。城内の見取り図はお渡しします。ですから、もう、姫さまだけは勘弁してくださいまし……」ガクッ
ジャン「いや、あの」
メイド「弟にも、会わせてくださいまし。お金が目的なら、それでいいでしょう⁉︎」キッ
ジャン「う、うん?」
メイド「……弟を助けだしたら、王に罪を告白して、自決します」スッ
ジャン「お、おい」ポカーン
メイド「本日の夜。城下町の酒場に来てください。……そこで、約束の物をお渡しします」
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