エンド・オブ・オオアライのようです

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260 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 15:32:13.56 ID:Wfw+ZZyrO
一方的な蹂躙と言う他ない。

物理法則をせせら笑うような軌道で飛び回る【Black Bird】の前に、連合空軍は為す術がなかった。後方に占位しても全く減速せぬままの急旋回で視界から消え、逆に後ろを取られれば逃れようがなく一瞬で射程圏に捕捉され撃ち落とされる。数の差で連携して迎撃しようにも、【学園艦棲姫】からの分厚い対空弾幕に寸断されまともな編隊飛行すらままならない。

《Enemy coming!! Break!!》

《Mayday, Mayday───》

《Tiger-01 down!!》

《Shit……Ahaaaaa!!!?》

《Yellow Team, all down!! I repeat, Yellow Team all down!!》

悲鳴、絶叫、悪態、断末魔、そして寮機或いは自機の被弾・撃墜報告………無線で飛び交う内容はそんなものばかりで、【Black Bird】に関しては撃墜どころか攻撃命中の報すら皆無。

F/A-18Fが、F-15Jが、F-2が、F-KC-1が、歴戦のパイロット達共々次々と火を噴き、墜ち、砕け散る。

(,,;゚ ゚)《Wyvern-01よりSky-Eye、指示を、指示を早く…………っ!》

必死に無線に向かって叫んでいたギャシャーの目の前で、早期警戒機E-3が機首部分を火炎に包まれながら落下していく。

広域警戒レーダーからのリンクが切れる。これによって連合空軍は、圧倒的な機動力を持ち対空砲火の援護射撃がある敵機を相手に有視界戦を強いられることとなった。
261 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 16:30:10.79 ID:Wfw+ZZyrO
戦闘開始から1時間と経たずに、既に200近い機体とパイロットを失った。残っている各機体の燃料や残弾も乏しく、ただでさえ難敵の【Black?Bird】との空戦は管制機のロストによっていよいよ覆しがたい状況になっている。そしてこれほどの犠牲を払ってなお、【学園艦棲姫】は未だ本体に傷一つ着けられていない。

だが、パイロット達はそんな状況に絶望し、恐怖し、それでも懸命に戦いながら────微かな希望も見出していた。

最初から解っていたことだ。急造とはいえ米軍の原潜まで投入された防衛ラインを無傷で突破した化け物に、どれほど通常兵器が束になったところで適うものではないと。

出撃の時から知っていたことだ。自分たちは将棋で言えば“たたきの歩”みたいなもので、相手の足を止めることは期待されていてもヒーローになることは期待されていないと。

光の巨人が出てくるまで大怪獣に立ち向かい、足を遅らせつついいように撃墜されてその恐ろしさを見せつける────自分たちの役回りなんてそんなもの。

無論、下馬評を覆して自分たちが英雄になってやろうと思っていなかったわけじゃない。だが、其方が仮に叶わなかったとしても、本来の仕事としては申し分がない。

『ゴァアアアアアアッ!!!』

学園艦棲姫の足は、止まっている。防衛線では見せなかった形態変化を見せ、第4世代戦闘機と真っ向勝負をした上で蹂躙できる貴重な航空戦力をもう一度引きずり出した上で、この途方もない化け物の足を日本から遙か遠く離れた海原で止めてやった。

自分たちの“役割”は、十分に果たした。ならば、後は────
262 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 16:37:17.48 ID:Wfw+ZZyrO








《【青ヶ島鎮守府】第一・第二連合艦隊、旗艦龍驤!間もなく戦闘海域に到達するで!》

《【横須賀総司令府】所属、第零艦隊旗艦日向より連合空軍各位に伝達。到着まであと60秒、持ち堪えろ》

《此方は【地獄の血みどろマッスル鎮守府】所属、第一艦隊旗艦青葉です!

────大物狩りも、青葉にお任せッ!》

後は、海の上を行く我らが【英雄】達に、全てを託す。
263 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 16:37:51.07 ID:Wfw+ZZyrO
23:00から第二波
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 17:12:36.35 ID:16ltenhA0
おつおつ
間に合わせたとは言え、空軍主力もかなりきついな…
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/09(金) 18:39:44.68 ID:oQeltKHm0
もうやんなくていいよ^^
266 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 23:03:59.24 ID:pUkVk1LW0
《“新型”に関する続報です。

茂名官房長官は先程記者会見で、航空自衛隊・在日米軍・中華民国空軍を主力とした連合空軍が“新型”深海棲艦に対して攻撃を開始したと発表。太平洋上において“新型”の足止めに成功している模様です》

《アメリカ国防省はCNNの取材に対し、国連の常任理事国と艦娘保有国が密かに結成した“国連特殊海軍”の投入を決定したとコメント。フォックス=カーペンター国防長官は、既に“新型”に対し一部戦力が急行中であるとインタビューに回答しました》

《中華人民共和国はそんな話は聞いていないと反発、外交部を通じて強い抗議をしていく方針を示しています》

《ロシア連邦政府はアメリカと日本の迅速な決定を高く評価、ニュック=バリシニコフ大統領は日本のミナミ首相に全面協力の用意があると伝えました》

《アラビア海での戦況についてインド政府は詳細の言及を避けましたが、自衛隊の保有する赤城・加賀両空母艦娘の奮戦もあり敵に大打撃を与えているとの発表がありました》

《アラビア海防衛線の戦況推移にはアナトリア半島、アフリカ大陸東海岸の諸国も強い関心を示しています。既にサウジアラビアとエジプトは連合艦隊から支援要請があった場合速やかに増援を出す用意があると………えー、少々お待ち下さい。ただ今、新しい情報が─────》





《…………………。アルジャジーラより緊急ニュースをお伝え致します。

深海棲艦の大規模艦隊が、南アフリカ共和国のケープタウンに上陸を開始。現在国防軍が迎撃作戦を行っていますが、戦況は絶望的とのことです》
267 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/02/09(金) 23:11:24.28 ID:pUkVk1LW0
《SBSからの緊急放送です。オーストラリア国民の皆様、良く聞いて下さい。

タスマン海に新たな深海棲艦の大艦隊が浮上、グレート・オーストラリア湾に向かっている模様です。政府は上陸予想地点近隣の全国民に避難を命じています、軍と警察の誘導に従って落ち着いて避難を開始して下さい》

《ベーリング海に浮上した新たな艦隊の規模についてロシア政府から言及はありませんでしたが、既にカムチャッカ半島各都市には戒厳令が発令されています》

《チュクチ海にも同時に艦隊が出現、哨戒中だったロシア海軍部隊が遅滞戦闘に入った模様です》

《この二海域の艦隊は千島列島・北方四島・北海道方面にも進撃する可能性があり、日本政府も米露と連携して対処すると見られます》

《国営放送北海道支局から道民の皆様にお知らせします。今後お住まいの地域でJ-ALERTが鳴った場合、それは避難訓練ではありません。J-ALERTが鳴ったときに備えて、指定避難場所の確認や避難時の荷物整理をよろしくお願い致します》

《青瓦台はマスコミ各社に対して韓国国内の全軍に臨戦態勢を取るよう通達した旨を公表しましたが、一方でアメリカや日本との具体的な連携策については全く触れられないまま会見は終了しました》

《日本の迅速な対応について、一部専門家は南内閣が深海棲艦の大規模攻勢を事前に把握しながらそれを国民に隠していた可能性を指摘。日ノ出テレビでは引き続き大洗女子学園についてのニュースをお伝えする一方で、南内閣による情報の隠蔽・言論統制を厳しく追及していく方針です》

《ブラジル共和国連邦政府は南大西洋方面では未だ深海棲艦の出現は確認されていないとし、国民に冷静な対応を求めました》

《東欧連合軍総司令部は、各戦線で深海棲艦の動きが活発化しつつある事実を認めました。また、未確認ながらフランス西部、北欧でも深海棲艦の大規模な陸路攻勢の兆候が見られるとの情報も併せて開示しています》

《深海棲艦の進路上にある地域ではパニックが拡大し多くの人々が避難先を求めていますが、現在世界中の全ての地域が危険区域と言っても過言ではありません》

《全世界が戦時下にある………ベルリン陥落の折にトソン=カーヴィル大統領が口にした言葉が、今、現実のものとなりつつあります》
268 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/09(金) 23:41:48.14 ID:pUkVk1LW0







横須賀市。

古くから海運の要衝として知られるこの地は、1853年のマシュー=ペリー来日以来本格的に“日本の玄関口”として発展していった。日本では初となる学園艦【咸臨丸】の進水、横須賀造船所の設立、洋式灯台の点灯、そして───横須賀鎮守府の設立。

19世紀以降の日本が急速な“近代化”に邁進していく過程で、玄関口である横須賀は大きな役割を担い続けてきた。

その重要度は、150年以上経った今でも変わらない。在日米軍と海上自衛隊の本拠地として、また【世界最大の鎮守府】横須賀総司令府が置かれる場所として、日本の国防と海運業の隆盛を担う“第二の首都”だ。

「…………」

ことに、横須賀総司令府は878隻という途方もなく膨大な艦娘戦力を保有する。呉、佐世保、舞鶴など司令府規模は同種の艦娘が複数艦所属など日常茶飯事だが、大和、武蔵、長門を各6隻ずつ駐屯させる鎮守府など世界中を探してもこの鎮守府ぐらいしかない。そしてここに、海上自衛隊と在日米軍の戦力が加わる。

通常戦力だけで、横須賀を陥落させる存在は恐らく無い───在日米軍総司令官の言葉は、決して誇張ではない。

深海棲艦の脅威に世界中が怯える中、その心配が殆ど無い“安全な国”。その玄関口として最も強固な守りを誇る横須賀が発展するのは、当然といえた。
269 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/10(土) 00:06:28.20 ID:tuhNfgCQ0
(……それでも、やっぱり今日は静かなものだ)

閑散とした商店街を歩きながら、その少女は胸の内で呟いた。

イロイロと理由があって彼女個人としてはあまり寄りつきたくない街なので、それほどじっくり市内を練り歩いたことはない。しかしながらニュースなどで取り上げられる市の光景を想起する限り、そろそろ夕方に差し掛かるか否かというこの時間帯はまだまだ人が道に溢れている頃の筈だ。

あらゆる意味で“世界一安全な旅行”を堪能するために、或いは艦娘の存在を一目見るために、国内外の旅行者がこの街でとぎれることはない。彼らの存在は間違いなく、横須賀市の人口密度が戦前の三倍強に脹れあがった最大の原因だろう。

だが、今商店街を歩いている人影はせいぜい10人いるかどうか。しかもその内半分は、制服姿で見回りをする警官ときた。

店自体も、殆どが下ろしたシャッターに“臨時休業”の貼り紙をひっつけた状態で開いている店は一握り。そしてその一握りも、店の中を覗けば店主や店員は備え付けのテレビや引っぱり出したラジオに釘付けで此方に気づきもしない。

(まだ逃げるほどじゃないけど、ニュースが気になって商売が手に着かない、そんな感じザマスね)

いかに盤石な防衛拠点とはいえ、この市はあくまで“海沿い”だ。それに最大戦力を保有するということは、それだけ敵にとっては優先して潰したい場所にもなる。

自衛隊や艦娘が守ってくれると思いつつも、一抹の不安が拭いきれない───そんなところだろうか。
270 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/10(土) 00:41:49.17 ID:tuhNfgCQ0
いやまぁしかし、それが自然な反応だろう。少女は歩きながら、改めて思う。

目と鼻の先の茨城県沖じゃ学園艦の上に深海棲艦が現れ、さらに全方位から人類の皆殺しを狙う化け物の群れが押し寄せてきている現状。おまけに南から来る奴は、今までに確認された事がない新型と来た。

これで一般市民に“怯えるな”という方が無理難題だ。商売だって手に着くまい。寧ろ、他の海沿いの街のようにパニックに陥って我先にと逃げ出さない事を賞賛してもいいぐらいだ。

(明らかに、アイツが、オカシイ、だけザマス!!)

次第に胸の内にこみ上げてくる怒りを抑えるため、意図して足を力強く踏み鳴らしながら歩く。周りから幾らか滑稽に見えるだろうけど構うものか。

「────こんな言葉をご存じかしら?

ひとつの幸せのドアが閉じる時、もうひとつのドアが開く。しかし、よく私たちは閉じたドアばかりに目を奪われ、開いたドアに気付かない」

「………ヘレン=ケラーザマスね、知っているとも。今使われる言葉として正しいかどうかは別として」

指定の喫茶店に辿り着き、粗い動きでドアを開ける。ほぼ同時にカウンター席から投げかけられた“格言”に、少女の────元BC自由学園戦車隊長の顔が盛大に歪む。





「……で、こんなときに何の用ザマスかダージリン」

「落ち着きなさい、アスパラガス。駆けつけ一杯の紅茶は如何?このお店のオススよ?」

視線の先では、「横須賀に来たくない最大の原因」が笑顔でダージリンティーが入ったカップを掲げていた。
271 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/10(土) 00:42:52.24 ID:tuhNfgCQ0
本日分ここまで。明日はまた同じぐらいの時間帯に
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/10(土) 07:01:55.09 ID:cjCcIC4A0
世界全体が詰みかけているのに、お花畑組が平壌運転過ぎるなw
それにこれまた意外な所が…
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/10(土) 13:06:55.41 ID:OT2zTlGf0


>>1はリトルアーミーだけじゃなくてリボンも詳しいのね
政治的においしい役目だといいな
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/10(土) 16:14:46.97 ID:f73lJbhQ0
う、うーんこれは^^;
275 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/10(土) 23:17:37.61 ID:tuhNfgCQ0
これまで見てきた商店街の様子からある程度察していたことだが、店内もまたがらんどうだった。

客は今し方入ってきたアスパラガス自身とカウンター席の中程に座るダージリンの二人だけ。後は店員と思わしき初老の女性が厨房にいて、フライパンを揺すって何かを焼いている。

「そんな入り口に立っていないで座りなさいな。安心して頂戴、店内にはジェームズ=ボンドもゲイリー=アンウィンも潜んでないわ」

「私としてはそこにトーマス=E=ロレンスも付け加えて欲しいザマスね」

「あら、“アラビアのロレンス”をご存じだなんて通なのね」

クスクスと笑うダージリンを無視して、アスパラガスは胡乱げな目付きで店内を改めて眺める。スパイ云々も聖グロリアーナならやりかねないため幾らか警戒はしているが、それ以上に店の内装が彼女の眉を顰めさせていた。

「……………ここ、本当に私達が使っていても平気ザマスか?」

「いやぁねぇ、ランチタイムは普通のレストランを営んでる酒場なんて国内外問わず腐るほどあるでしょうに」

カウンターの上や壁際の棚は勿論のこと、窓際や天井の収納スペース、挙げ句の果てには本来客が座るためのスペースと思われるテーブルの上にまで所狭しと並べられた………というよりは店そのものを入れ物として乱雑に詰め込まれたかのような、凄まじい数の酒瓶。微かに漂うアルコール臭も相まって不安の色を浮かべるアスパラガスの様子を見て、再びダージリンは笑みを漏らす。

「この店も同じよ。これらのお酒は未成年には振る舞われないわ。

────それと、私が耳に挟んだ話では貴女たちタンカスロンの試合中にアンツィオの“大人のブドウジュース”を」

「あれはボルドー達ザマス!!私は飲んでない!!」

ドンッとカウンターに拳を叩きつけつつ、早速アスパラガスは来たことを後悔していた。

大英帝国をそのまま擬人化したような言動と性格のこの女を相手にすると、いつも戦車道試合の20倍ほど体力を使うハメになる。
276 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/11(日) 00:01:38.64 ID:eEG3zdFy0
江戸時代末期からの近代化に伴い国が西洋の事物・文化・技術を取り入れていく過程で、その媒体となった数多の【学園艦】もまた強い影響を受けていった。カナダとの交流を盛んに行っている苫小牧メイプル学園、トルコとの親交が深いケバブハイスクール、ソヴィエト・ロシアの国風をそのまま校風に反映させたプラウダ高校、不要なところまでフランスに似てしまったマジノ女学院にBC自由学園───確かにそれぞれの学園艦が、繋がりが強い国家の“縮図”やステレオタイプ・サンプルのようになっている節はある。

(だからといってこうも本家英国に似なくてもよかろうに………っ!)

やたらと勿体ぶった言い回しを好む風潮に、所構わず開かれるお茶会、タンカスロン関連では“本家”の悪名高い三枚舌外交を彷彿とさせる謀略の数々も幾度か目の当たりにした。

アスパラガスが知る限り、これほど「聖グロリアーナの戦車隊長」として相応しい存在は見たことが無い(無論褒めていない)。序でにいえば徹頭徹尾、彼女が苦手なタイプの人間でもある。

「顔色が悪いわよ、最近眠れているかしら?

今の貴女にぴったりな格言はこれね、『休息とは回復であり、何もしないことではない』」

「ダニエル=W=ジョセリンザマスね。とりあえず私が言いたいのは“お前が言うな”の一言ザマス…………ハァ」

盛大にため息を吐いて、火照った脳を落ち着ける。

ダージリンとの会話は主導権が全くといっていいほど握れないので激しく疲労するが、少なくとも継続高校の戦車隊長よりは幾らか会話になっている分マシだ。それに此方もいい加減慣れてきた面はある。

何より、これほどの事態の中でただ雑談のために他人を呼び出すほどこの女は脳天気でも愚かでもないはずだ。
277 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/11(日) 08:26:47.08 ID:eEG3zdFy0
「いい加減用件に入るザマスダージリン。この無駄な問答が続くようなら私は帰る」

「あら、お口と頭の運動は大事だと思わない?」

「貴女にとっては準備運動でも着いていく私からすれば42.195kmのフルマラソンと同じザマス」

「仕方ないわね。でも、最後にお茶のおかわりだけいただくわ」

アスパラガスがカウンター席に座ると、ダージリンがぱちりと指を鳴らす。よく磨かれたテーブルの上を、ティーカップが二つ滑ってきて、二人の手元でピタリと停止した。

「むっ」

更にアスパラガスの目の前には、もう一つ料理が乗った皿も流れてくる。焼けたソーセージがジューシーな光沢を放ち、上にかかるグレービィソースの濃厚な香りと下に引かれたマッシュポテトのふんわりとした見た目も併せて激しく食欲が刺激される。

「……バンガーズ&マッシュはそれこそティータイムよりビールジョッキの隣にある方が似合うと思うザマスが」

「空腹であろう貴女への店主の心遣いね」

「空腹なのは貴女の急な呼び出しが最大の原因ザマスがね」

諸々の作業を終えてようやく遅い昼飯にありつけると思った矢先に、突然の“お誘い”でそれをほっぽり出して急行電車に飛び乗る羽目になった側としては釈然としない。とはいえ胃が空っぽに近い状態なのは事実だし、店の好意も十分にありがたい。

「………………いただくザマス」

更に喉の奥から飛び出しかけた文句をひとまず飲み込み、フォークで突き刺しソーセージにかぶりつく。

「んん……」

悔しいが、空腹という調味料を差し引いても最高に美味しい。後は歯止めが利かず、熱々のソーセージがみるみるうちに消えていく。

「それで本題だけれど、大洗で新しい動きがあるみたいなの」

「ふごっふふふ!?」

最後の一口を思い切り頬張ったところで“本題”を突然切り出され、喉を塞いだマッシュポテトを流し込むため慌ててティーカップに手を伸ばす。

「っ……」

ジャガイモで窒息死という不名誉極まりない最期を回避し、アスパラガスは横目でダージリンの澄まし顔を睨み付ける。

コイツ、今間違いなくわざとやりやがった。
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 13:44:25.30 ID:cIBClsrA0
おつおつ
それにしてもこんな情勢なのにノリノリだなw
279 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/11(日) 23:04:13.27 ID:eEG3zdFy0
「大洗町に展開している自衛隊が戦力の増強を始めたわ」

「…………」

こっちの視線に気づいているだろうに、隣の紅茶女は手元のティーカップを一度傾けた後淡々と話を続ける。鼻っ柱に一発お見舞いしてやりたくなるが、ぐっと堪えて無言で続きを促す。

また本題からズレた話に戻っても仕方ないし、アスパラガス自身も大洗の現状については少しでも多く情報が欲しかった。

「10式戦車を主力とする機甲部隊が新たに市街地に展開して避難が完了した区域から順次封鎖、迫撃砲やバリケードの設置も各所で進行中みたいね」

「艦娘戦力は?」

「県外からは首都圏の内陸警備府で選抜された部隊が水戸市とひたちなか市に予備防衛線を構築。大洗、相馬、浦安各鎮守府並びに沿岸の警備府は全て厳戒態勢に移行済。

日本海側でも戦力抽出が可能とみられた区域からは続々と自衛隊や艦娘の移動が始まっているわ」

「動きが早いザマスね」

大洗女子学園の一件で日本中の200隻近い学園艦が警戒対象となり、おまけに全世界で深海棲艦の同時大規模侵攻が始まる中でこの迅速な対応。一昔前の日本なら考えられない姿だ。

「さるアメリカ大統領は、こんな言葉を残したわ。

『大抵の人は災難は乗り越えられる。

本当に人を試したかったら、権力を与えてみることだ』とね」

「エイブラハム=リンカーンザマスね」

「あと、『40歳を過ぎた人間は、自分の顔に責任を持たなくてはならない』とも」

「やめて差し上げるザマス」

まぁ顔はともかくとして、“あの”首相の行政・外交手腕が大方の国民の予想を大きく上回るものだったことは間違いない。実際に戦力を動かしているのが横須賀や市ヶ谷だとしても、その身軽な挙動を可能としているのは南内閣の法整備によるところが大きい。

「それと、宇都宮駐屯地にも動きがあったようよ」

「宇都宮………CRRザマスか?!」

ダージリンの言葉に、アスパラガスの眼が驚きで大きく見開かれる。
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/11(日) 23:39:41.57 ID:eEG3zdFy0
Central Readiness Regiment ────【中央即応連隊】。陸上自衛隊の中では最も深海棲艦との戦闘経験が豊富な、国内屈指の精鋭部隊だ。

元々は首都圏での対テロ戦闘や国外派兵を見越して設立された部隊だったが、東南アジア戦線での反攻作戦において数々の戦果を上げたため正式に対深海棲艦特殊部隊として再編されたという経緯を持つ。高い練度を誇る一方で規模はあくまで700人という少数精鋭のため、戦況が安定傾向にあった近年は【第二次マレー沖海戦】のような大規模作戦でない限り基本的に宇都宮駐屯地で温存されてきた。

その部隊を、他の方面からも深海棲艦が日本本土に押し寄せてきている状況下で大洗の戦線に率先して割くという。それも、艦娘戦力もまだまだ動員できるにも関わらず。

(無論、ダージリンはあくまでも“動きがあった”と言っただけなので確定ではないザマス。だが……)

関東地方の自衛隊拠点に動きがあるのは当然のことだ。その中でわざわざ宇都宮駐屯地の存在を強調した辺り、彼女の手元には“CCRが動いた”事を示す相当確度が高い情報があるのだろう。

「しかし、学園艦同士の諜報活動ならいざ知らず国の………それも自衛隊や鎮守府の動きをここまで把握できるって聖グロリアーナはどうなってるザマスか?」

「クラウゼヴィッツはこう言ったわ。『情報が多ければ判断が楽というものではない』と。

だけど、取捨選択するだけの情報を集められなければ、そもそも判断自体を下せないと思わない?」

問いかけに対する直接の答えではないが、言わんとすることは解る。設立当初より“謀略と諜報の国”であるイギリスから多くを学んできた聖グロリアーナが、情報収集の手段をあらゆる場所に持っているのは当然だと言いたいのだろう。

それに戦車道履修者は、高校・大学の卒業後進路に陸上自衛隊を選ぶ者が全体の3割を占める。名門聖グロの戦車乗りとなればそれこそ陸自の方から諸手を挙げて歓迎するだろうし、其方方面へのパイプはなおのこと豊富というわけか。

「……さて、ダージリン。大洗町がどういう状況か、というのは解ったザマス。

それで、貴女はこの情報を元手に何を“やらかす”つもりザマスか?」
281 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/02/12(月) 00:40:17.49 ID:OCWv7WkR0
クスクスクス。アスパラガスの刺すような視線を受けて、ダージリンは心底おかしそうに肩を震わせる。

「“やらかす”って………それじゃあまるで私が何か悪巧みをしているような言い草ね」

「日頃の行いの報いザマス。オオカミ少年が何故全ての羊を食われる羽目になったかよく考えた方がいい」

「あら、それじゃあ私は最期に怒り狂った村人たちに打ち殺されてしまうのかしら?」

そういってまた笑いながらも、ダージリンの眼の奥に宿る光は真剣そのものだ。

この店にアスパラガスが入ったときから、そこだけはずっと変わらない。

「別に、悪巧みなんてしちゃいないわ。私はただ、一人の友人として、戦車乗りとして、大洗のあの子たちを助けたいだけなの。

あぁ、勿論ハリウッド大作の真似事をしようってワケじゃないわ。“これは映画ではない”のだから」

映画【キングスマン】の台詞と共に片手で制され、アスパラガスは一瞬上げかけた腰を椅子に戻す。

権謀術数に長け常日頃から掴み所のない言動を繰り返す一方で、ダージリンが根っこの部分では非常に熱くなりやすい人間であることもアスパラガスは付き合いの中で知っている。大洗女子学園の廃校の危機の際には各学園の連合を率先して主導したし、例のサムライガールの熱に当てられてタンカスロンにも介入している。

彼女が仮に“義勇軍を編成して自衛隊より先に大洗女子学園を救いに行く”等と言い出してもアスパラガスは驚かなかっただろうし、寧ろ初めからそう言い出すことを前提にどう止めるべきかを考えていた。

「そこまで血迷ってなくて何よりザマス」

「もしも私にそれだけの力があったなら、迷わずそうしていたのは事実だけれどね。

でも、流石に身の程は弁えているわ。情報を集めていたのは、あくまでもみほさんたちの為に“私が力になれること”を少しでも見いだせないかと思ったから」

「本当に、凄い入れ込みようザマスね」

尤も、気持ち自体はアスパラガスも理解する。

黒森峰という絶対強者の存在や硬直化した競技形式によって緩やかな死を迎えつつあった戦車道に、突然新風を吹き込んで数々の奇跡を巻き起こした“軍神”西住みほ。直接砲を交えることができなかったアスパラガスでも強く感化された程だ、実際に彼女の“奇跡”を目の当たりにした者達がどれほどの衝撃は想像に難くない。
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 18:57:44.77 ID:hJ3C1KtBO
こんなにも読みにくくて面白くない話も珍しい
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 21:49:45.84 ID:pA1Ix5c/o
乙です。
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/14(水) 02:46:20.36 ID:oLtzPSI0O
自演乙
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/14(水) 19:12:46.80 ID:8jn/ahFq0
かなり楽しみにしてる。頑張って
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 15:45:31.91 ID:rbhcbs9t0
くっそつまんねぇ
287 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/15(木) 20:34:34.13 ID:N8TNLwGU0
ただ、それにしてもダージリンと聖グロリアーナの大洗女子学園に対する肩入れ具合には少々面食らうものがある。

(事態発生から2時間と経っていないのに、よくもまぁあれだけの内容を集められたザマス)

内地の艦娘動員やその戦力編成、自衛隊による市街地封鎖の詳細な状況、そして【C.R.R】の投入………何れも、本来なら一介の女子学生が政府の公式発表を待たず事前に知り得るような情報ではない。特にC.R.Rの件は、特定秘密保護法に余裕で引っかかる“軍事機密”だ。

聖グロリアーナの諜報部は確かに高校生離れした優秀さだが、これほどの情報を手に入れるとなれば払うリスクと労力は並大抵ではあるまい。大学選抜戦の時など比較にならないその無理筋を、聖グロリアーナが“他人”の為に押し通すとは。

(しかも聖グロリアーナも当然強制一時避難の対象だったザマスから、なおのこと情報は─────ん?)

そこまで考えて、ふとアスパラガスは違和感に首を傾げる。

確かに、2時間足らずで集められた情報としては量も質も上々だろう。ダージリンたちでなければ、この1/10も調べられないに違いない。

だが故に、“最も肝心な情報”がないことに気づいてしまう。ダージリンが、聖グロリアーナの他の戦車道選手達が、そして“彼女”を知る人々が最も知りたいもの。

そして聖グロリアーナが、その優先順位を間違えるはずがない。

「…………“大洗女子学園”の現状は、貴女たちでも調べられなかったザマスか」

「ええ」

シンプルな、短い返事。

彼女にしては珍しく、声に焦燥と苛立ちが滲み出ている。
288 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/15(木) 21:34:24.68 ID:N8TNLwGU0
深海棲艦が甲板上に、それも複数体出現するという前代未聞の異常事態。更に外洋から“新型”や別艦隊が接近している点も併せて考えれば、政府や自衛隊が此方の情報も隠すことは自然ではある。

問題は、それがC.R.Rの投入や艦娘の動員状況以上に重要視されているという点だ。

「まだ、情報収集の開始からたったの2時間しか経っていないという面は確かにあるわ。でも、逆に言うとこの2時間大洗女子学園艦内に関する情報にはアッサム達がノンストップでアプローチを続けている。

それなのに、テレビ局が報道している以上の内容が全く手に入らない」

語尾に近づくに従って、感情の昂ぶりを抑えきれずダージリンの声が震える。無理やりそれを押さえようとしてか、彼女は残りの紅茶を一息で飲み干す。

聖グロ生がカップ鷲掴みで紅茶をがぶ飲みする姿など、OG会の人間が見ればおそらく卒倒ものだろう。

「情報秘匿の度合いで言えば、フィリピン海方面から迫る“新型”の関連情報と同程度よ。

自衛隊に勤めているOGを筆頭に、外務省、警視庁、公安、さらには近隣の鎮守府、あらゆる伝手を辿っているけれど一向に学園艦内の現状が判明しない。辛うじて、“暴徒が発生している”とか“通信が全く繋がらない”とか、そういった断片的な情報を拾えただけ」

「………西住さんの安否は?」

「それも、解らない。

………いえ、きっと、無事でいる筈よ。彼女は、西住みほは簡単に死ぬような人間じゃない。生きているに決まっているわ」

自分に言い聞かせるように繰り返される、「生きている」という言葉。だが、やはり回を重ねるごとにそれはか細くなっていき、やがて弱々しい嗚咽と共にそれは途切れた。

「うぇっ………ひぅっ………」

「………今までの軽口は空元気ザマスか」

どんなに言葉で否定しても脳裏から追い払えない“最悪の想像”に、とうとう机に突っ伏し泣きじゃくり始めたダージリンから努めて視線を外しつつため息をつく。

全く、戦車道乙女というのはどいつもこいつもプライドの塊みたいな奴ばかりでいけない。

……自分自身も含めて。
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/16(金) 12:12:16.94 ID:2ZulyxrA0
おつおつ
それにしてもデタラメな諜報力だなw
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/16(金) 14:25:01.06 ID:wK5HGJzs0
ゴミ
291 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 22:01:38.92 ID:jlHLK4dm0
「ダージリン……貴女の、貴女たちの努力は認める。それにもしこの呼び出しの目的が協力要請なら、BC自由学園としても応えることは吝かじゃない。

でも、私の見立てでは報われる可能性は極めて低いザマス」

万年弱小とはいえ、1学園艦の戦車道チーム隊長を務めていた身。アスパラガスも状況判断能力や分析能力は人並み以上に備わっている。

そして彼女が見る限りでは、現在の状況は疾うの昔に自分たちが対応し得るものではなくなった。

「私達は所詮、一介の学生。戦車道を通じて多少戦略や戦術、謀略を囓っているとしても、そんなものは本物の“戦争”からすれば子供のお飯事に過ぎない。

私達が踏み入っても、力になれないどころか足手まといになる可能性の方が遙かに高いザマス」

「解っているわ、そんなことは!!!」

カウンターテーブルに、勢いよく叩きつけられる拳。よほど力を込めているのかワナワナと震え、関節が白く浮き出ている。

これほど取り乱したダージリンを見るのはきっと私が日本初だろうな……そんな、場違いな感想がアスパラガスの脳裏に浮かんだ。

「特殊カーボンで守られた安全な玩具の中で戦争ごっこをしているだけの女が、本物の“有事”でできることなんてたかが知れている!本当は自衛隊や艦娘や政府に全てを託して、彼らが任務をこなし西住さんたちを無事助け出してくれるの願って安全な地域で待つのが分相応だって解っているのよ!!

それでも、私たちはただ“待つ”ことに耐えられない!………っ」

再び微かに震える語尾。漏れかけた嗚咽を無理やり呑み込んで、ダージリンは潤んだ───だけど、奥に強い決意の光を讃えた瞳でアスパラガスを正面から見つめ返す。

「私達だけで助けようなんて烏滸がましいことは考えないわ。でも、例え少しでも大洗救援の助けになる“何か”があるなら………私は、諦めずにそれを探したいの………!」
292 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 22:51:48.44 ID:jlHLK4dm0
英国人は、恋愛と戦争には手段を選ばない───元より格言好きなダージリンが、特に気に入って繰り返し口にしてきた言葉。

アスパラガスも彼女との交流の中で何度も(内心うんざりしながら)聞かされたが、今のダージリンはまさに、全てを擲って思い人を助けようとしている恋する乙女の姿そのままだ。

(…………やれやれ、ザマス)

正直、“政治的”に考えればアスパラガス達にとってこの案件に首を突っ込むことはあまり得策とは言い難い。西住みほを助けたいという思いはダージリン達ほど切実ではないにしろあるものの、既に一度統合を経験している学校としてはあまり“国”に睨まれるような動きは避けたいという思いもある。

況してや戦車道でも毎回のように一回戦敗退し学園艦としての取り組みもマジノ女学院の二番煎じに過ぎないBC自由学園は、聖グロリアーナと違って実績にも乏しい。仮に廃艦論などが出れば抗うのは当時の大洗女子学園並みに難しいだろう。

(………まっ、とはいえ既に“協力は吝かではない”って明言してしまったザマスしね。

それに、ここで協力を蹴ったらボルドー達に何言われるかも解ったもんじゃないザマス)

本当に、つくづく、自分も含めて、戦車道乙女というのはどいつもこいつもプライドの塊みたいな奴ばかりでいけない。

目の前で、プライドも保身も捨てて他人を助けようとしている同い年の少女がいる。だというのに自分がそれらに縛られて動けないなど────それこそ、私たちのプライドが許すものか。
293 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 23:06:59.11 ID:jlHLK4dm0
「『簡単ではないかもしれない。

でもそれは”できない”
という理由にはならないんだ』」

「…………え?」

「おや、ベーブ=ルースをご存じないザマスか?」

「………っ、しっ、知っているわ。ただ、何故ここで使ったのかって思っただけで」

格言で後れを取ったことが悔しかったのか、少し頬を染めながらごにょごにょと弁明するダージリン。それをしてやったりの笑顔で眺めながら、アスパラガスは懐からスマートフォンを取り出す。

電話帳を開いてある番号の欄を押す時、脳裏には“野球の神様”が残したもう一つの言葉が浮かんでいた。

「あぁ、ボルドーザマスか?忙しいところすまないザマス」

───あきらめない奴には、誰も勝てない。








「“BC学園譲渡”のカードを使うときが来た。

力を、貸して欲しいザマス」
294 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 23:39:54.73 ID:jlHLK4dm0






「出撃命令、ですか」

ミ ゚Д゚彡「……あぁ。ただし大洗じゃない。太平洋上の“新型”を俺たちで攻撃する」

「……そう、ですか」

ミ ゚Д゚彡「かつてない、手強い相手になる。お前ほどのパイロットを営倉にぶち込んでいる余裕は俺たちにはない、CDCは拘束の解除とお前さんの抗命行為を不問にする旨を決定した」

「…………」

ミ -Д-彡「だが、逆に言うと錯乱したパイロットを無理やり乗せたところで勝てる相手じゃない。どころか編隊自体がそのせいで危うくなる恐れすらある。

もしもお前がまだ腑抜けているようなら、俺はお前を出撃させるわけには───」

「大丈夫です」

ミ ゚Д゚彡「………食い気味に即答しやがったな。本当に大丈夫なのか?」

「曲がりなりにも、航空自衛隊の最精鋭部隊に身を置いてますから。そう長く私情に揺れるほど、弱い女じゃありません。

……それに要は、その学園ハンサムを」

ミ;゚Д゚彡「やめろ一気に弱そうに思えるだろうが。なんか顎尖ってそうだろうが」

「失敬。学園艦棲姫を、とっととぶっ倒してとって返せばいい。そして、今度は大洗にのさばってる化け物を叩き潰してあいつに会えばいい。

それだけの、話です」

ミ ゚Д゚彡「………ブーン、だっけか?無神経な言い方になるが、そいつはまだ生きてるのか?」

「生きてますよ。生きているに決まってる」





|w´‐ _‐ノv「……根拠も証拠もないけれど、あいつは私が信じているのに死ぬような勝手な奴じゃないです。だから私が信じる限り、ブーンは死なない。

そして私も、あいつが生きている限り絶対に死にません」
295 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 23:56:06.45 ID:jlHLK4dm0
《防空指揮艦【かが】CDCより全乗組員に伝達。

我々はこれより、横須賀総司令府からの指示に従い全ての艦載機を【学園艦棲姫】攻撃作戦に投入する》

《かつてない強敵だ。先んじて攻撃を開始した連合空軍は既に甚大な損害を受けており、足止めが精一杯となっている。青ヶ島鎮守府の艦隊に加えて国連が組織した対深海棲艦特殊部隊も投入されるが、それでもなお予断は許されない》

《だが、我々に怯え、竦み、逃げることは許されない。

何故なら我々は自衛隊であり、本土に住まう一億の国民の盾であるからだ》

《我々の肩には、国民の生命がかかっている。その事を決して忘れるな。

────各員の奮闘に期待する!!》

《CDCよりカタパルト、状態良好!全機、アガレ!アガレ!アガレ!!》

ミ?゚ ゚彡《了解。

Spear-01,?Take-Off!!》

《Spear-02,?Take-Off!!》




|w´‐? ‐ノv《────Spear-03, Take-Off》?
296 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/16(金) 23:57:35.03 ID:jlHLK4dm0
最近ノロッノロで申し訳ありませぬ、本日分終了です。
明日からは安定して更新できると思われます(3日ぶり34度目の宣言)
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/17(土) 01:00:45.10 ID:MQT72ZCA0
おつおつ、シュール頑張れw
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/18(日) 08:28:58.64 ID:9EXzl4Hjo
おつ
299 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/19(月) 12:58:07.81 ID:ukQp6ETJO








目を覚ますと同時に、近くでその音は鳴った。

或いは、僕が目を覚ました理由こそ“その音”だったのかも知れない。何せ並々と水が注がれた巨大な風船を勢いよく叩きつけて破裂させたかのような“その音”は、魔女に囚われたオーロラ姫だって王子様のキスを待たず目を覚ましてしまうのではないかと心配になるほど大きなものだったから。

(メメ; ω )「………〜〜〜〜〜ッ!!!?」

意識が光と五感を取り戻すや否や、とてつもない激痛を知覚して視界に星が飛ぶ。血液を通して痛みが直接全身を駆け巡っているとでも表現すれば良いだろうか。悲鳴や苦悶の声を上げる余裕すらなく、ただ浅い呼吸だけが口から漏れる。

(メメ;^ω )「………お?」

身体を苛む苦痛を少しでも緩和できないかと身動ぎしたところで、ようやく僕は自分が誰かに負ぶさっている状態であることに気づいた。
300 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/19(月) 12:59:20.28 ID:ukQp6ETJO
(メメ;゚ω゚)「……おおおっ!?」

「わっ、暴れんじゃねえ馬鹿野郎!」

状況が飲み込めず、動揺し、更に大きく身動ぎ。途端、僕を背負う人物がバランスを崩しかけて叱責の声を上げる。

女性の声。頭の上に乗る船舶科の帽子から察するに、恐らく学園の生徒なのだろう。西住さんや角谷さんと同世代と考えるとやや低い印象の────所謂、“ハスキーボイス”に該当する声質だ。背もそれなりに高いようで、目線から逆算する限りは170に届くかどうか。

(メメ;゚ω゚)(………そうだ、僕は爆発に巻き込まれて)

停滞していた脳の回転が戻るに従って、記憶も徐々に再生される。学園艦の中を暴れまわる怪物、逃げ惑う生徒達、取り乱す秋山さん、宇津木さんの上に落下してくる報道ヘリ…………脳裏に、次々と僕の意識がブラックアウトする前に見ていた光景が蘇ってくる。

(メメ;゚ω゚)(角谷さん達は無事に逃げ切れたのか?自衛隊の救助はいつ?それにここは一体どこだお?)

同時に、動揺と混乱も加速していく。

記憶が幾らあろうが、気を失っている間我が身に起きた出来事は当然ながら感知していない。視界がブラックアウトする直前に甲板の裂け目に転落したことは覚えているので大洗女子学園の“下層”であることは大方予想が付くが、そこからどうなれば見ず知らずの船舶科女生徒に担がれた状態に辿り着くのか想像できない。

(メメ;^ω^)(……そもそも、良く生きてるおね僕は)

「根賀さん!後ろからまだ奴等は追ってきてるのか!?」

(;●▲●)「あぁ、まだバッチリ来てる!!」
301 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/19(月) 13:00:07.07 ID:ukQp6ETJO
迷走する思考の果てにそんな身も蓋もない感想を浮かべた僕を尻目に、女生徒は直ぐ隣を走っていた別の人影に問いかける。根賀、と呼ばれたその人物は、一瞬だけ視線を後方にやると大きな眼を僅かに眇めいかにもうんざりした風で舌を出してみせる。

熊手のように大きな右手に握られているのは、拳銃───SIG SAUER P226。

(;●▲●)「数は20〜30ってところか、息切れ一つしてる様子がねえぞ……クソが!」

野暮ったい作業服にややデップリした体格からは想像も付かない機敏さで、その男性はくるりと反転。背後の薄暗がり………何十もの足音が重なって聞こえる方向に向き直りながら、膝を床に着けてSIGを両手で構える。

(メメ;゚ω゚)そ「ぉおっ!?」

立て続けに三度、9mm口径から吹き出した銃火が微かに辺りを照らす。僕の上げた素っ頓狂な声と共に銃声が通路を反響し、間髪を入れず“何か”が倒れる音がそこに重なった。

此方に向かってくる“何か”の集団は、その内の一体が転倒したことによって多少鈍ったようで足音が微かに乱れた。だが、その混乱は長くは続かずすぐに僕らの追走を再開する。

(#●▲●)「リロードする!日屋根、援護を!!」

( ・∀・)「はいはいさー」

すかさず、もう一つ女生徒の隣を走る人影が踵を返す。取られるのは、根賀さんと呼ばれる男性と同じ膝射姿勢。

ただし、構えられた銃のシルエットは、SIGに比べて明らかに大きく、長い。

( ・∀・)「全く、とんだ出張もあったもんだねぇ」

僕の記憶が正しければ、アレは海上保安庁でも正式採用されているショットガン────モスバーグM500だ。

( ・∀・)「フゥウウウオオオオオオオオオオオウッ!!!!」

奇声と共に、もう一人の男性が引き金を引く。

僕を叩き起こしたあの音が、暗い廊下に木霊した。
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 14:11:12.21 ID:LytXoJpN0
時間かけるならもうちょっとマシなものを書けよヘタクソ
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 20:31:27.72 ID:+wWWpvmA0
おつおつ
先生どんな状況に巻き込まれてんだw
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/20(火) 20:16:05.81 ID:WPvd4aJb0
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/20(火) 21:27:13.31 ID:+aM41ZDq0
本読んで勉強した方が良いよ
306 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/02/21(水) 23:01:28.81 ID:BsS8N4hC0
散弾銃という日本式の名称が示すとおり、ショットガンの弾丸は前方の空間へ拡散発射される。射程距離が概ね50m前後と極端に短い代わりに、近接戦闘での殺傷能力と空間制圧能力はとても高い。故にその性能は、市街地や閉所での接近戦で特に遺憾なく発揮される。

そう、例えば今僕らがいる、人が四、五人も横に並ぶと隙間がなくなるような狭い廊下とか。

『キィイイアアアアアアアアアッ!!!?』

(メメ;゚ω゚)「ヒッ……!?」

僕らを追ってくる“何か”からすれば、弾幕なんて生易しい存在じゃない。突如出現した「銃弾の壁」にまっ正面から突っ込む形となった“何か”の肉が裂ける湿った音と、それを掻き消すおぞましい断末魔が冷え切った廊下の空気を震わせる。

(●▲●)「おうムラカミさん、そのあんちゃん眼ェ覚ましたんか!」

「あぁ、たった今な!」

此方に駆け戻ってきた小太りの男性……根賀さんが、“何か”の声に身体を強張らせる僕を見て微かに眉根を上げた。どうやら、僕を背負う女生徒の名はムラカミというらしい。

「さっきから他人様の背中でうるっさくて仕方ない!怪我人じゃなかったら床に放り出してるっつの!」

「ま〜ま〜、そーいーなさんなってムラカミや。こんだけ苦労して連れてきた挙げ句“屍体でした”ってんじゃ、それこそ骨折り損のくたびれもうけだしねぇ〜」

前方から聞こえてくる、この修羅場に似つかわしいとは言い難い間延びした女の子の声。

ここで初めて、僕はこの一行を先導する四人目の存在に気づいた。
307 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/21(水) 23:05:19.22 ID:BsS8N4hC0
ムラカミさんの走りを邪魔しないよう、僅かに首だけ動かして前を覗き込む。

眼に映るのは、3メートルから4メートル先でぴょこぴょこと上下に揺れる赤い毛玉。一瞬面食らったが、よく眼を懲らせばそれはパーマをかけられた頭髪だ。

やはり船舶科の服を身につけていて、邪魔だったのか帽子は右手に握られている。背は160cm前後、此方もこの年代の女性として低いわけではないのだが、僕が“ムラカミさん”の上から見ているせいもあってかどうしても小柄に感じてしまう。

「根賀のおっさんと日屋根の兄貴は武器持ってるしさぁ、あたしじゃ体格的に役者不足だからムラカミぐらいしか運べるのがいないんだってぇ。我慢してよね〜」

「言われなくてもわあってるっつの!!それよりラム、後どれぐらいで着くんだ!?」

「後6ブロックってところだねぇ、ファイトファイト〜」

ラム、とは恐らく先導する生徒の呼び名か。日本人としては聞き慣れない名前なので、或いは鈴木さんたちや某紅茶学園のようなソウルネームなのかも知れない。

そして、その“ラム”さんと荒い呼吸の中から慣れた様子でやりとりするムラカミさん。

(メメ;^ω^)(能島村上家、厳島の戦い、毛利元就………もしかして“ムラカミ”もソウルネームかお?)

村上水軍。公式記録では南北朝時代にその名が登場する瀬戸内海の勢力で、水軍と名が付いているがその実態は今で言うところの“海賊”だ。来島、因幡、能島の三家が存在し、特に能島村上家は毛利元就が陶晴賢を撃ち破った【厳島の戦い】で重要な役割を担ったことも手伝って一般でもそれなりの知名度がある。

そしてラム酒と言えば、“海賊のお酒”の代名詞。

(メメ;^ω^)(この子たちがどういう集団に属してるのかちょっと見えてきたお)

まぁ、自分が何故この子達に運ばれているのか、“根賀さん”や“日屋根さん”は何故この子達と行動を共にしているのか、この二人はどこから武器を調達したのか等まだまだ疑問も多数残りはするが。

今僕たちが何に追われているのか、という点も含めて。
308 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/21(水) 23:09:35.68 ID:BsS8N4hC0
無論、深海棲艦がらみだというのは僕でもある程度予想は着く。学園艦の現状を考えれば、人間を好き好んで追い回す存在なんて奴等関連ぐらいしかいない……と思いたい。

問題は、この地形。こんな狭い廊下の中を甲板上にいるあのデカ物が動こうとすれば、それこそ艦を内部から破壊しつつ進むことになる。だが背後から迫る気配は、足音から察するに明らかに人間サイズだ。

(メメ;^ω^)(まさか“ヒト型”種……いや、だとしたらショットガンや拳銃如きで食い止められる相手じゃないお)

ル級やリ級といったヒト型種は大きさこそ僕ら人間と変わらないが、通常兵器は殆ど効果が無く艦娘でなければ有効な対応ができないというのは僕でも知っている。実際携行銃火器で迎撃できるような相手なら、幾ら奇襲を受けたとはいえ出現当初あれだけ甚大な被害が出るはずがない。

( ・∀・)「フィイイイイッ!!!!」

( ・∀・)「ヒッヒィイイイイイ!!!!」

( ・∀・)「イーディーエェエエエエフ!!!!」

(メメ;^ω^)(……あいつうるせえな!?)

……で、それとはまるで関係ないのだが、しんがりでショットガンを撃ち続けている男の声がべらぼうに五月蠅い。モスバーグM500の銃声もそれを食らう“何か”の苦悶の声も、彼が上げる甲高い雄叫びにあっさりと掻き消されてしまう。しかも定期的に振り向いて発砲する度にその声を発するので、なんか……その奇声が脳に刷り込まれていくような感覚に陥って倍付けで不快だ。

( ・∀・)「チョギップルィイイイイイイイッ!!!!!」

いや本当にうるせぇ。あいつ肺活量どうなってんの?

(メメ^ω^)「………え?」
309 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/02/21(水) 23:13:30.00 ID:BsS8N4hC0
約1名が織りなす背後の喧噪に生暖かい視線を送っていた眼を、思わず微かに見開く。

火を噴くモスバーグ。銃口から弾丸が吐き出される刹那、マズルフラッシュによって照らし出された廊下。そこに見えたモノが俄に信じられず、僕は後方に眼を凝らし続けた。

そんな事、あり得るはずがない。後ろから追いかけてくる“何か”が、船舶科の制服を着た人影だなんて。

そしてその人影めがけて、しんがりの男が平然とショットガンをぶっ放していたなんてこと、あり得てなるものか。

(メメ;^ω^)(きっと、見間違i)

『ア゛ア゛ァ゛ッ!!!」

必死に縋ろうとした希望的観測は、脳裏に浮かべた傍から目の前で繰り広げられる“現実”によって容赦なく否定された。

「ウ゛ァアアアアっ!!!』

( ・∀・)「*おおっと*」

男性が弾薬の装填動作を取った一瞬の隙を突き、彼に飛びかかった人影。手負いの肉食獣のような、声量も響きもとても人間のものとは思えない唸り声を発しながら組み付いたそれは、ムラカミさんやラムさんと同じ白を基調としたセーラー服を身につけている。

「ガァアアッ、アアアッ────ガッ!?』

( ・∀・)「男女平等キーーーック!!」

動きに、躊躇も遠慮もありはしなかった。男は組み付いてきた女生徒の顎を銃床で殴りつけ、腹を蹴って強引に距離を空ける。

その手に構えられるのは、蹌踉めき離れたその子の頭部にしっかりと照準を据えるモスバーグM500。

(メメ;゚ω゚)「───待っ」

(#・∀・)「Wassoy!!」

止める間もなく響く、銃声。

「アギッ』

その子の頭が、針で風船を突いた時みたいに乾いた音を立てて破裂した。
310 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/02/21(水) 23:20:44.95 ID:BsS8N4hC0
あまりの出来事に、悲鳴も怒声も上げられない。脳の機能は覚醒直後からすればかなり回復しているはずなのに、背後の光景を現実として受け入れてくれない。

そして、状況の変化は受け入れるだけの時間も与えてくれなかった。

「「ウ゛ァアアアアッ!!!』』

『『ガァッ!!」」

( ・∀・)「やだ……幼稚園以来のモテ期……」

銃火が途切れるや否や、暗がりからドッと此方に向かって押し寄せてくる人の群れ。大半は船舶科中等部や高等部の制服を着た女生徒達だが、中には整備士の作業着に身を包んだ男性や船舶科の教員と思わしきスーツ姿の人影も混じっている。

「『「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!』」』

( ・∀・)「Show timeだ………」

ネジが外れた玩具の人形のようなどこかぎこちない動きで───しかしながら凄まじい速度で周囲に群がろうとする彼女達に対し、日屋根………さんは満面の笑みを浮かべてモスバーグM500を構え直してみせた。

( ・∀・)「WRYYYYYYYYYYY!!!!!」

『ギィイッ!?」

「アカ゛ァ……』

後退りながらも、容赦なく引かれる引き金。散弾が銃口から吐き出され、射線上の人影を次々と薙ぎ倒していく。

頭をトマトのように潰された作業着の男が、肩口から腹の辺りにかけてまでを抉られた小柄な女の子が、上半身をぐちゃぐちゃの肉塊にされて性別すら解らなくなった保安官服の誰かが、床に転がって血溜まりと屍体の山を形成する。

そして、背後の惨状に誰も………根賀さんはともかく、ムラカミさんとラムさんも視線すら向けず走り続ける。
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/22(木) 09:23:47.69 ID:vXs/V1X80

まだサメさんチームになる前の出来事だったのか・・・
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/22(木) 12:17:31.52 ID:Y5iztrOA0
おつおつ
こんな時でも輝けてるのは凄いなw
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/22(木) 20:21:27.39 ID:BVbAyXb70
自演してるってマ!?!?!?!?!?!?
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/22(木) 20:37:43.96 ID:Hr59C89z0
source
315 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/22(木) 23:23:24.71 ID:CSRI4Ade0
(メメ;゚ω゚)「なっ……なっ……」

(;●▲●)「面食らうのも無理はねえが説明は後回しにさせてくれやあんちゃん!!」

あまりにも異様な状況に言葉が出ず、僕は酸欠の金魚よろしく口をぱくぱくと開閉させる。根賀さんは有無を言わせぬ口調で僕に向かって釘を刺しながら、再びSIGを抜き放つ。

『ウ゛ア゛ッ……」

反転し、2連射。日屋根さんの横を抜けてこようとしたスーツ姿の男が一人、胸と頭を撃ち抜かれて衝撃で転倒した。

(●▲●;)「俺たち自身もそんな余裕はないし、何よりあんちゃんの安全のためでもあるんだ!今は逃げることに専念を────」

ガシャン。頭上で、そんな金属音が鳴る。

『ギィイイイッ!!!」

(;◎▲◎)そ「ぅおおおおおぁああああっ!!?」

(メメ;゚ω゚)「っ!!!?」

ダクトにはめ込まれていた金網が外れ、中から降ってきたのは新たな“人影”。船舶科中等部の制服を着た、一人の小柄な少女だった。

身長は角谷さんと同じぐらいかそれ以下で、或いは今年入学したばかりの一年生だったのかも知れない。少し下がり気味の眉尻とおっとりした印象を与える顔だちが、その女生徒が本来優しい性格の持ち主だったことを窺わせる。

「アアァッ、アアアアアッ!!!!』

(●▲●;)「このっ……!」

そんな彼女が、今は唾を撒き散らし、獰猛に唸り、自分の倍は体重があるであろう成人男性を組み伏せて、その首元に向かって顔を突き出しながら歯をカチカチと鳴らしている。

まるで、映画に出てくる“ゾンビ”のように。
316 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/23(金) 10:40:43.81 ID:JWwMSKGgO
「この……っ、野郎!!」

「ギギッ!?』

根賀さんにのしかかり彼ともみ合う少女(の形をした何か)に向かって、踵を返したムラカミさんがそのまま足を突き出す。刹那の戸惑いこそあったものの、それでも放たれた蹴りは140cm程度の小さな身体を吹っ飛ばすには十分な威力を持っていた。

「シィイイイイッ!!!』

( ・∀・)「BAN!!」

「ア゛ア゛ッ!?』

数メートル後方へ吹き飛ばされて床に四つ足で着地した“少女”に、横合いからモスバーグM500の12ゲージ弾が叩き込まれる。砕けた頭部が壁に叩きつけられ、ズルズルと血の跡を残しながら倒れ込む。

「根賀さん、怪我は!?」

(●▲●;)「お陰様で五体満足だ……日屋根さんもすまん、助かったよ」

( ・∀・)「礼は後ほど受け取るとして、早いとこ立った方がいいですよ」

足下に転がった空薬莢を蹴って退かしながら、日屋根さんは再び背後に向き直る。

お面を被っているみたいな無機質な笑みはそのままだけど、目元からさっきまでの(明らかに場違いだった)おちゃらけた雰囲気が消えていた。

さながら自分を狙う天敵に気づいた草食動物のように全身を緊張させて、彼は背後を───屍の山の向こう側に横たわる闇をにらみ据える。

( ・∀・)「そろそろ、来ますよ」






『『『キャハハ、キャハハ、キャハハハハハハハハ!!!!』』』
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/23(金) 18:07:16.92 ID:BeXlzV2G0
一気読みしたいんで応援しかできないけど応援してます(ボキャ貧)
318 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/24(土) 23:44:22.23 ID:8A9iV12l0
笑い声。そう、これは笑い声だ。それも生後数カ月の赤ん坊が上げるような無邪気で明るいやつが何十と重なり、足音と共に僕たちの方へ凄まじい速度で近づいてくる。

学園艦下層で、しかもこんな状況下では聞こえることが絶対に有り得ない“それ”を耳にして、全身の肌が粟立つのを感じた。

(#・∀・)「Go!!!」

(●▲●;)「っ!」

「ああクソッ!」

「やっばいねぇ……っ!」

腰だめでの射撃姿勢とった日屋根さんの叫び声に圧され、3人は弾かれたように走り出す。数秒と経たず、後ろから聞こえてくる断続的な銃声。

『『『キヒヒヒヒッ、キハハッ、キャハハハハハッ!!!』』』

だけど、今度は止まらない。幾ら12ゲージ弾がばらまかれようとも、笑い声は減らないし足音も多少鈍ってはいるものの止まる気配がない。

『───イヒヒヒヒヒッ!!!』

(メメ;゚ω゚)「おおっ!?」

突然、追跡者達が上げる笑い声の内の一つが一気に近づいてくる“気配”がした。何故かは知らないけれどそうした方がいいような気がして、頭を僅かに低くする。

ガチン。そんな、錆び付いたハサミを力一杯占めたような音が頭上数センチで鳴った。

(#●▲●)「化けものめ!!」

『キィッ、キィッ、キハハハハッ!!!』

根賀さんの怒声と共に、SIGの弾丸が放たれる音が隣から聞こえてくる。束の間僕の頭上に止まっていた“何か”が上げる、からかうようなはしゃぐような声が瞬く間に遠ざかっていく。

(●▲●;)「あんちゃん、無事か!?」

(メメ;^ω^)「な、なんとか……あの、今のは」

「やべー奴だよやべー奴!」

疑問の声はムラカミさんの怒声に遮られる。息が荒くなっているが、それは疲労というよりは恐怖から来る乱れのように思えた。

「とりあえず、今後ろを振り返るのはオススメできねえぞ!振り向くのは勝手だけどどんだけトラウマになろうがアタシの知ったこっちゃないからな!!」
319 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/02/26(月) 23:17:39.14 ID:vbxnl7x50
「────ムラカミさん、ラムさん、こっちですこっち!!奴等直ぐ後ろまできてますよ!!」

「根賀のおっさんも早く!!おい、ムラカミさんたち回収したらすぐ閉められるようにしろよ!入られたらこの区画は丸ごと終わりだ!」

銃声とおぞましい笑い声の下で続く、命懸けの鬼ごっこ。それに終止符を打ったのは、前方に姿を現した巨大な隔壁だった。

「クソッ、あいつら思った以上に速ええし多いな!?」

「最悪しんがりの変態野郎は見捨てるぞ!閉鎖速度上げろ!」

「よいっ、ととと!」

「────っぶぁはっ!!」

少しずつ下がってくる、特殊カーボン製の強固で分厚い壁。手前に立つ生徒二人の間を駆け抜けて、ラムさんとムラカミさんがその向こう側へと文字通りの意味で転がり込む。

(メメ; ω )「おおおおおぉ……」

「……っつ、大の男がその程度でピーピー喚くんじゃないっての……!」

当然の帰結としてその身は空中に投げ出され、固く冷たいコンクリート製の床に激突した。悶絶する僕はワイシャツの襟首を子猫のようにふん捕まえられて、腰の辺りをさすり苦悶の表情を浮かべるムラカミさんに引き摺られていく。

(;●▲●)「日屋根、足止めはもう十分だ!隔壁が下がりきる前にこっちに来い!」

( ・∀・)「いえっさー!!」

隔壁の手前では根賀さんが停止してシグの引き金を引き、援護射撃を受けながら日屋根さんはこちらへ駆けてくる。

そして、二人を追う“それら”の姿を僕は見た。
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/26(月) 23:18:37.83 ID:YLukWnYQ0
続きお待ちしております。
最近冷えるので体調にはお気を付け下さい。
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/27(火) 00:14:33.19 ID:Qa32/CGl0
つまんね
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/28(水) 13:10:44.22 ID:FOPpuxcyo
更新遅かろうがなんだっていいけど未完失踪は辞めてくれよ
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/28(水) 20:29:38.09 ID:eOVkzW+A0
>>322
更新頻度からすれば気になるのも分かるけど、失踪扱いはせめて数週間は待ってからでもw
月一更新な作品だってざらにあるんだし
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/03(土) 03:42:27.42 ID:Ly37r+GxO
本当に失踪しちゃったじゃん
325 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/03(土) 22:30:51.07 ID:sUJQuCNI0
日屋根さんが最後っ屁の12ゲージ弾を放って内側に転がり込んだ直後、隔壁の降下が一気に速まる。そこから通路が遮断されるまでにほんの数秒とかからなかったため、「見た」とは言っても僕が“それ”を視界に収められたのはほんの一瞬のことでしかない。

だけど、その一瞬で十分だ。あんなものを長々と見せられていたら、僕のSAN値はきっと1d100のロールを免れなかったに違いない。

あんな、おぞましいモノ。

『『『アアアアアアアアアアッ!!!!!』』』

傷口に湧いた蛆の如く、寄り合い絡み合いながら迫ってくる白く長いナニカ。錆び付いた扉の蝶番が軋む音を何百倍にも増幅させたような叫び声を口々に上げて、それらの群れが眼前で閉じた隔壁に殺到する。

『『アァアアアアアッ!!!』』

『『ギィッ、ギィッ!!!!!』』

「総員構え!億が一破られたらとにかく撃ちまくって食い止めろ!!」

壁を破ろうとしているのだろうか。硬い打撃音が、隔壁の向こう側からそれらの鳴き声と共に聞こえてくる。指揮官と思われる保安官の号令に従い、隔壁の内側に待機していた人員が一斉に武器を構えた。

40人ほどが集まっているようだが、保安官の制服を着ている人間は全体の半分程度。他の服装は様々で、ムラカミさんたちを先程迎え入れた二人も含めて船舶科生徒の姿もちらほら見える。

装備も日屋根さんのモスバーグM500と一部の機動保安隊員が構えているM&K MP5数挺が目立つ程度で、あとは全て小口径の拳銃。それとて所持しているのは全体の1/4に過ぎず、残りの人員が構えているのは────警棒やバット、上等なものでせいぜい不審者取り押さえ用のさすまた。

あの化け物の大群を抑えるには、役者不足どころの話じゃない。かといって、僕の方で力になれることがあるかと言えばそれもNOだ。

ただ、隔壁の強度が奴等の力を上回っていることを全力で祈る他なかった。
326 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/03(土) 22:37:15.90 ID:sUJQuCNI0
時間が、まるで溶かした鉛のように重くゆっくりと流れる。その場にいる誰もが、隔壁を見つめたまま微動だにしない。

時間にして、恐らく数秒。だがその数秒が、僕には何百倍も長く感じられた。

『ギィッ……キィイィッ……』

『アァアアアア………』

隔壁を殴打する音が時が経つにつれて少しずつ弱まり、それに伴い奴等の鳴き声も勢いを失っていく。変わって壁の向こうで響き始めた足音は、明らかにこの場から、隔壁から遠ざかるものだった。

更に十秒ほど息詰まる時間が続いた後、場には耳が痛くなるような静寂が降りた。

「────敵群体の後退を確認!!」

(;●▲●)「ブハッ!!」

( ・∀・)「………フゥ」

隔壁のすぐ傍に据えられた端末機を睨んでいた保安官が叫び、その言葉にようやく空気が弛緩する。根賀さんは激しく息を吐いて座り込み、日屋根さんは肩の力を抜いて額の汗を拭き、他の人々も思い思いの方法で安堵の感情を露わにしている。

「………っはぁ〜」

「ぶへぇ………」

ムラカミさんとラムさんも、盛大に空気を吐き出しながら脱力して同時に尻餅をついた。………再び投げ出された僕は今度は後頭部をしたたか打ち付ける羽目になったけれど。

「ムラカミ、ムラカミ、おにーさんがメッチャ唸ってるよ」

「………あ、スマン」

(メメ; ω )「おおおおお………い、いや、おかまいなくだお………」

新たな痛みで悶絶しながらも、何とか言葉を絞り出す。

実際、多少体格がいいとはいえ一介の女子高生が成人男性を負ぶって走るのは相当な体力を消費するはずだ。疲労困憊は当然のことで、気絶した状態で運んできて貰った僕がこの程度で文句を言う権利はない。寧ろ、心底からの感謝を伝えなければ僕の気が済まない。

まぁ今言うと、間違いなく要らない誤解を招くことになるけれど。
327 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/03(土) 22:45:30.29 ID:sUJQuCNI0
「お構いなくってそういうわけにもいかないだろうよ……ここで死なれたら何のために苦労して助けたのかわかんねーし」

「けっこー強めにぶつけたもんねぇ〜。衛生兵でも呼ぶかい?」

「いないだろんなもん」

(メメ;^ω^)「いやいや、本当に気にしなくて大丈夫ですお。……っと」

壁に縋り付きながら、少しずつ立ち上がる。身体の節々に未だ痛みが走るものの、幸い少なくとも骨折などで完全に動かないパーツはなさそうだ。

(メメ^ω^)「こう見えて僕も戦車道講師の一人ですお。特殊カーボンほどじゃないけど、それなりに頑丈なので」

まぁ、あくまでも座学の講師だけど……と、胸の内で付け足す。別に日頃から身体を鍛えていたわけでもないので、やっぱりヘリの爆発に巻き込まれながらこの程度の怪我で済んだのは運が良かったという他ない。

「戦車………道?」

「………なんだっけそれ」

(メメ;^ω^)「……………えーと」

ムラカミさんとラムさんは、揃って怪訝な顔つきで首を傾げる。最初はやはり男の戦車道関係者は驚かれるよなと思ったが、表情を窺うに疑問ポイントはそこではない。

どうもこの二人、戦車道そのものを本当に知らないらしい。

(メメ;^ω^)(………いやいやいやいやいや)

冗談がキツい。戦車道という競技が近年比較的マイナーな立ち位置だったのは事実だが、それを一躍人気スポーツの地位に押し上げたのが他ならぬ西住さんたち大洗戦車道チームなのである。戦車道連盟の広報部による映画化の影響もあって、大洗町どころか茨城県内でも大洗戦車道チームの存在や西住さんの顔を知らない人間は相当なレアケースに属する筈だ。

況してや、学園艦内の人間が戦車道を知らないなど世事に疎いではすまない。本格的に記憶喪失を疑う案件になってくる。
328 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/03(土) 23:06:50.91 ID:sUJQuCNI0

困惑する僕の前で、ムラカミさんとラムさんは首を傾げたままだ。悩ましげに眉を顰めてブツブツと何事か呟いていたラムさんが、突然「あぁ〜〜」と間延びした声と共に顔を上げた。

「戦車ってアレじゃん。ほら、陸の鈍間な鉄の亀」

「………あったなそんなもん。

なんだい、アレの関係者なのかい?」

(メメ;^ω^)「……まぁ関係者と言えばそうですおね、直接動かしたりってワケじゃないけど」

にしても鉄の亀って。戦国自衛隊辺りで戦車を初めて見た足軽が使いそうな表現をアンタ。

「そういや夏休みの終わり頃に学園艦から退去するようにとか寝言ほざきながら変な奴等が何人か乗り込んできてたな。なんか、もんかしょーのうんたらかんたらとか名乗ってたけど」

「あぁ〜、ぶん殴って追っ払ったアレね。また乗り込んできたら全力でボコボコにする予定だったけど結局もう来なかったねぇ〜」

(メメ;^ω^)「ぶん殴ったの!?一応国の正式な役人を!?」

いやまぁあの横暴さは僕も腹立たしかったけど!ざまぁとかグッジョブとかメッチャ思うけど!!………ただ、冷静な第三者目線で見ればやはり大問題行動だと言わざるを得ない。

あのクソ役人がカール持ち出してまで全力で潰しに来たのってそれも原因だったのかね。今となってはどうでもいい事だが。

「んで、その陸の鈍亀がアンタと何の関係があるんだい?」

(メメ;^ω^)「あー……まぁ、それを……戦車を用いた選択授業があって、その講師を僕はやっているんですお。本職は普通科の現国だけど」

「ってことぁ、“上”の先生ってわけだぁ」

ラムさんが親指で天井を指さし、視線を頭上に向ける。まるで計ったようなタイミングで、ズンッと小さな揺れが走りぱらぱらと埃が墜ちてきた。

「………なぁ、上は今どんな状態なんだ?あたしらは朝から下に閉じ込められててね、全く今の状況が解らなくて困ってんだよ」
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/04(日) 08:31:52.48 ID:JRkw071A0
おつおつ
先生も本当に災難だけど、ようやく一段落かw
330 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/04(日) 23:03:12.32 ID:KbjPGJCl0
(メメ^ω^)「………僕も、全容が把握できてるわけではないけど」

険しい顔つきになったムラカミさんの問いにそう前置きして、僕は見てきた光景を───気を失う直前までの記憶を辿りながら語っていく。

幾ら逞しく見えても一介の生徒、頭上の絶望的な状況を伝えるのは多少の抵抗があった。だが、どうやら彼女達に対してその憂慮は不要だったらしい。

ラムさんもムラカミさんも、益々苦い表情になりながらも表立って動揺する素振りは見せない。僕の説明を冷静に、取り乱さず聞いている。

「そんな…………」

「学園が…………畜生!!」

「何やってんだよ日ノ出テレビ………」

寧ろ、僕らの周囲で話に聞き耳を立てていた保安官達の方が意外なことに反応は顕著だ。毒づく人、項垂れる人、顔を覆って座り込んでしまう人、八つ当たり気味に壁を殴りつける人……誰もが思い思いの方法や言葉で絶望に打ちひしがれる様を、僕は意外の感を持って眺めた。

(メメ^ω^)(正直、僕以上に甲板上の現状を把握している人の方が多いと思うけど……)

まぁ、学区内には駐在所が配置されていないため常駐している保安官がいない。そのため、学園の敷地内にも軽空母ヌ級が現れて空襲が行われたという事実まではまだ広まっていなかった可能性はある。

商業区と居住区は言わずもがな、下層もあんな化け物が彷徨く有様。無事なところ、安全なところが学園艦内には全くないと知れば、保安官達の落胆も頷ける話だ。

まぁそうなると今度は、尚のことムラカミさんとラムさんの冷静さに舌を巻きざるを得ないわけだが。
331 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/04(日) 23:32:37.66 ID:KbjPGJCl0
更に言えば二人以外のこの場にいる船舶科生徒達も動揺や恐慌を殆ど露わにしていない。僕の話に多少の緊張は見せつつも、冷静にそれらを受け止めて互いに意見を交換し合っている。

(メメ;^ω^)「………」

感心を通り越して、少し不気味ですらある。

別段冷静なことは悪いことではない。このような閉所でパニックが起これば収拾が付かなくなるため、今の全員が落ち着いている状況は有事下にあって理想的と言っても過言じゃないだろう。

ただ、そんな状況をまだ年若い女子高生の集団が───それも、無礼を承知で言えば見るからにアウトロー寄りの、規律とは無縁そうな集団が保てているというのが異様なのだ。

(メメ;^ω^)(状況が異常かつ絶望的すぎて受け入れられていないのかお?いや、生徒たちの様子を見る限りそんな感じじゃない)

「学区って事はまさしくあたしらの真上だよねぇ〜……そういやでっかく揺れたよね、ついさっき」

「第三層に繋がる階段とかが崩れたアレな。しっかしヒコーキ飛ばせる奴が陣取ったってなると益々助けが遅れそうだな」

「食料とか飲み水ってどうだったっけ」

「さっきカトラスに確認したら相応の備蓄はあるらしい。幸いこの区画の非常食料庫や貯水タンクは破損を免れてたからな。電池とラジオ、懐中電灯も1、2週間なら余裕で保つ。……さっき試したとおりラジオは使い物にならねえけど」

「それに、籠もれるからってのんびり救助を待てる状態でも無いしねぇ〜。映画とかじゃ、こういう時船ごとミサイルとか爆弾で沈めちまうって相場が決まってるわけで」

「銃器の類いは流石にあたしらも貯めてないから保安官の人等の持ってた分しかないしな、あとで三月さんにどれぐらい弾薬があるか聞いとかねえと……」

僕があれこれと考察を重ねる間にも、ラムさんとムラカミさんは話し合いを続ける。しばらくウンウンと額を付き合わせて唸っていた二人だが、やがてラムさんが顔を上げ僕の方に────正確には、僕の背後に視線を向けた。

「親分、どうしますか〜?」
332 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/05(月) 00:06:34.31 ID:Ave6MMQi0
「今はまだ、場の流れに身を任せるしかない。嵐の中で波に逆らっても、船は沈んでしまうから。

………嵐の中を航海した経験なんかないけどね」

(メメ;゚ω゚)そ「どわぁっ!!?」

その人影がいつ頃から背後に立っていたのか定かではない。とにかく急に耳元で聞こえた声に、僕は仰天の叫びと共に跳び上がった。

「アンタ、ちょっと驚きすぎじゃないか?“上”の先生ってのは、随分と肝っ玉が小さいんだね」

僕の醜態に、背後の人物はクスクスと控えめに笑い声を上げる。着地の衝撃で痛む足を押さえながらえっちらおっちら振り向くと、そこに立つのは一人の少女。

「どうしたんだい?悪魔でも見たような顔をして。まっ、悪魔を見たときに人がどんな顔をするのか知らないんだけどさ」

(メメ;^ω^)「…………おっ」

悪魔を見たような、かどうかは知らないが、まぁ、異様な物を見たときの表情になっていたことは否定しない。何せ、実際その女の子の立ち姿は“異様”極まりなかったのだから。

身長の頃はムラカミさんより僅かに低く、170cmにやや届かない程度といったところだろうか。あえてワンサイズ小さいものでも着ているのかセーラー服の裾からは顔や足同様健康的な小麦色に焼き上がった腹部が顔を出し、やはり同年代の女子に比べて高い背も相まって大人びた雰囲気を醸し出す。背後でくくられた黒い髪はやや癖毛のようで波打っており、伸ばされた前髪は右眼の前に垂れ下がってそれを隠している。

何と言っても目を引くのは、羽織った黒のロングコートと阿弥陀被りの帽子に結わえ付けられた赤い羽根。

もしも右手に持たれた警棒がサーベルだったなら………彼女のその姿は、まんまお伽話に出てくるような“女海賊”のそれだ。
333 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/05(月) 00:42:54.77 ID:Ave6MMQi0
ふと、周囲から刺さる視線に気づく。主に船舶科生徒から送られてくるそれは、目の前の少女と僕に集中した。

ほぼ全員が、少女に対しては尊敬と畏怖の念を────序でにそのすぐ近くにいる僕に対しては、あからさまな敵意を込めている。保安官達も、どこかこの海賊少女に対して遠慮というか気を遣っているような様子が感じられる。

僕はそれらを以て明確に理解した。この少女こそ、ムラカミさんたちの精神的支柱なのだと。

「“上”の情報、感謝するよ先生。

それにしても、いよいよこの学園艦は地獄のようになってきたね。まっ、本物の地獄なんて見たこと無いけれどさ」

(メメ;^ω^)「………」

それともう一つ、この短い会話の中で彼女の言動から解ったことがある。

この子、歴女チームやダージリンさんと同じ人種だ。

「より詳しい話は奥でするよ、もう少し掘り下げたい情報もあるしね。それに、ここで共に過ごすからにはアンタにも根賀さんや日屋根さんみたく色々働いて貰わなきゃならない。

あぁ、アンタ、名前はなんだい?」

(メメ^ω^)「……内藤。内藤芳頼、普通科の国語担当教師ですお」

「そう、じゃあ、ブーン先生」

(メメ^ω^)「いやそのりくつはおかしい」

僕の抗議に耳を貸すこと無く、彼女はポケットからパイプを取り出して口に咥えて右手を差し出す。

パイプからは、妙に甘い匂いが漂っていた。








「アタシは【竜巻のお銀】。よろしく、先生。

大洗のヨハネスブルグへ─────そのまた“どん底”へようこそ」
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/05(月) 11:43:44.89 ID:HrccZLfA0
おつおつ
これまた強烈なw
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/05(月) 21:44:11.45 ID:9/Vr8Y6S0
乙乙
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/06(火) 20:20:53.34 ID:hvmTGovd0
時間はかかるくせに面白くならんね全然
337 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/06(火) 23:52:33.31 ID:8QyfBxg70









古来より、私利私欲に駆られた佞臣・奸臣が国家の衰退や滅亡に関与した事例は数多く存在する。ローマのセイヤヌス、趙の郭開、秦の趙高、蜀漢の黄皓、ロシアのラスプーチン、フィンランドのヴィドクン=クヴィスリング………歴史上、“売国奴”と呼ばれ蔑まれる人物は枚挙に暇がない。

宝木蕗也は、間違いなくこれらと同じ類いの人間だ。大義も愛国心もなく、私益のためなら利敵行為も平然とやってのける正真正銘の売国奴。政治家としては、おおよそ最底辺に分類されるだろう。

(;^Д^)「…………そ、それは…………できかね、ます」

故にその否定の言葉についても、別に彼は良心や義憤から口に出したわけでは無い。あるのは一にも二にも自己保身のために過ぎず、利よりも安全の方に天秤が傾いたというだけの話だ。

そして、逆説的に言えば、

《何故そんな冷たい事を言う、同志。私は君の友情を見込んで頼んでいるというのに》

(;^Д^)「お気持ちは、お気持ちは解ります、信頼はありがたいです!しかし、しかしこればかりはどうか!!」

宝木が私益を捨てて保身に走りざるを得ないほど、その“申し出”は常軌を逸していた。
338 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/07(水) 08:10:52.12 ID:qRyBPv2k0
(;^Д^)「わ、私にも立場というものがございます!その依頼は受け入れかねます同志!」

《同志タカラギ、貴方はどウも勘違いヲしているようだ》

受話器の向こうから聞こえてくる、猫なで声という形容詞がぴったり当てはまる優しい口調。だが、声質の低さや不慣れな日本語故の独特のイントネーションも手伝い、そのゆったりとした物言いはかえって息苦しくなるような圧迫感を宝木に感じさせた。

《貴方は、どウも我々が貴方ヲ捨て駒にするつもりだと思っておられる節がアル。非常に心外なことダよ、我々は志ヲ同じくする者ヲ見捨てルヨうな真似はシナい。

日本の軍国化ヲ進める奸賊・ミナミと“これから”戦おうという貴方ノ義挙ヲ、我々は全力デ支援する用意がアル》

宝木の顔から、音を立てて血の気が引いていく。電話の相手の中では、既に彼が“義挙”に立ち上がることが決定事項となりつつあるようだ。

(;^Д^)「ど、同志!私も軍国主義者の南慈英と戦う気構えはあります!しかしながら今はまだその機では無いかとおm」

《………ソレとモう一つ、正さなければイケナい点ガアルな、同志》

一転して、有無を言わせぬ迫力に満ちた声が弁明を遮る。ぱくぱくと口を空回りさせる宝木の耳に、まるで一言一言ねじ込まれるようにして、相手の台詞が入り込んでくる。









( `ハ´)《我々は君にミナミを倒して下さいと“依頼している”のではない。同志タカラギ、ミナミを倒せと貴様に“命じている”のだよ、私は》
339 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/07(水) 09:13:39.84 ID:dsmdGUciO
必死に、脳をフル回転させて宝木は反論の言葉を探す。このままでは、どう転ぼうとも破滅する道を歩かされると直感で理解していた。

(;^Д^)「……し、しかし……しかし同志劉志那………」

( `ハ´)《我知道了。貴様に許されている返事はこれだけアル、同志タカラギ》

相手は怒鳴り声を上げたわけではない。特別強烈な脅し文句を盛り込んだわけでもない。

だが、その平坦で事務的な口調が、かえって宝木に逃げ道が用意されていないことを実感させる。

( `ハ´)《既に同志金と我が国が潜ませた義士達は貴様の“義挙”に応じるべく準備を終えているアル。貴様はただ、流れに身を任せるだけでいい。

せいぜい我々を失望させてくれるなよ、同志タカラギ。【艦娘自己自衛権】の時のようにな》

(  Д )「…………解り、まし………た」

( `ハ´)《良い返事を聞けて安心したアル。

あぁそうだ………貴殿の武運長久を祈る》

(  Д )「…………」

取って付けたような労いの言葉を最後に、単調な電子音だけを吐き出すようになった受話器を元の位置に戻す。虚ろな眼はどこも見てはおらず、血の気が失せて真っ白な両手はアルコール中毒者のようにブルブルと震えている。

(; Д )「……どうして、俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ………っ!!」

高価な調度品が並んだ自室に響く、絞り出すような呟き。

その問いに答えてくれる者は、誰もいなかった。
340 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/07(水) 10:39:45.33 ID:POkvHJCj0

【悲報】大洗女子学園、ガチのマジで終わる

1: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:21:16.05 ID:MvHOb0Gf5
もう(救助は)間に合わん模様

2: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:21:28.11 ID:MvHOb0Gf5
ttps://i.imgur.com/xxxxx.jpg

3: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:22:02.14 ID:CfDogg505
>>2
ヒェッ…

4: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:22:16.81 ID:NiCNi5fgc
>>2
なんやこれ……

5: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:22:32.47 ID:MvHOb0Gf5
>>3,>>4
大洗女子学園の現在の外観。ツイで大洗町の避難中の奴が上げた模様

6: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:22:59.81 ID:Bay6Str12
燃えすぎィ!!

7: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:08.80 ID:56marmvps
>>2
この黒い影なんやねん……

8: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:19.14 ID:MvHOb0Gf5
>>7
深海棲艦やて。ミリ板と鎮守府板覗いてきたけど新型っぽい

9: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:41.03 ID:25caRpakHr
>>2
西武の中継ぎやんけ!

10: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:30.40 ID:56marmvps
>>8ほげっ……

11: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:32.66 ID:syUhy03th
>>9

12: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:33.12 ID:deNapog1i
>>9不謹慎すぎるけど草

13: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:33.16 ID:kyzi25kdb
>>9
不謹慎すぎるわ死ね

14: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:34.91 ID:55mtigozi
>>2なんでこんな燃えてんねん……

15: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:36.25 ID:ichhom52
>>9申し訳ないがあからさまな絶許はNG,
341 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/07(水) 11:13:58.91 ID:POkvHJCj0
16: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:41.18 ID:ksuchi22
>>14
そら(学園艦の上に深海棲艦なんて現れたら)そう(大火災なんて起きる)よ

17: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:42.01 ID:hosyntuy49
戦車道板エラい騒ぎになってて草。
「一刻も早く大洗を救援しろ」派と「国民の安全のために大洗を核で吹き飛ばせ」派が壮絶なレズバトルを繰り広げてる模様

18: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:42.26 ID:nanj51stg
写真なんて撮ってないではよ逃げろや

19: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:42.90 ID:fait1hom1
そもそももう2時間近く経ってんのに何でまだ鎮圧できてへんねん

20: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:44.18 ID:orx3i3res
>>17
あら^〜

21: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:50.12 ID:MvHOb0Gf5
>>17
戦車道は乙女のスポーツやししゃーない(すっとぼけ)

22: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:52.16 ID:dDkK64Dkg
>>1
大洗どころか日本が終わるかも知れないんだよなぁ……

23: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:59.22 ID:ksuchi22
>>17
レズはホモ

24: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:23:59.23 ID:thycupA72
>>17
レズはホモ(錯乱)

25: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:24:02.39 ID:NiCNi5fgc
>>22
それどころか世界が終わりかねない模様

26: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:24:06.33 ID:MvHOb0Gf5
>>23>>24
二人はどういう関係なんだっけ?

27: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:24:10.30 ID:wabcc53Df
>>19
深海棲艦の侵攻がガチのマジで世界規模やからしゃーない。あのクソ国連が動くぐらいや

28: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:24:14.00 ID:itsm2wani
自衛隊と艦娘は早く大洗を助けなさい。手が足りないならわt西住流家元も参戦する用意があるわ

29: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:24:26.13 ID:dk0utd44
>>25
やったぜ
ちな陰キャ

>>28
突然しぽりん湧いてて草

30: 雨降れば名無し 2017/11/17(金) 15:24:30.25 ID:MvHOb0Gf5
>>28
しぽりん実は軍神溺愛説はいろVでも適用されるのか(困惑)
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/07(水) 13:14:29.82 ID:gXwBusdA0
おつおつ
裏切り者の末路の悲惨さを認識出来ない連中が多いよなあ…沖縄とか特にw
それと日本の危機なのにあっちの世界でも相変わらずな空気にワロタ
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/07(水) 13:25:06.24 ID:6juAGECnO
逸見ェ…
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/07(水) 20:22:17.64 ID:EcbuYqfb0
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/10(土) 00:41:18.90 ID:7PJLDLDh0
これはひどい駄作ですね
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/10(土) 05:38:32.81 ID:G5dG67tyo
更新頑張れ頑張れ
347 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/13(火) 23:04:45.06 ID:H80nMxzq0








大洗港に身を横たえる、全長7600mの艦影。改めてその全容を目の当たりにすると、あまりの大きさにため息が漏れそうになる。

ほんの一キロ程しか離れていない距離に空爆や艦砲射撃を受ける危険を冒して停泊するのは、海上保安庁の巡視艇【あきつしま】。哨戒ヘリ二機を搭載できる此方の艦も決して小さくは無いけれど、【大洗女子学園】と比べればまるで箸の横に並べた米粒だ。

軍艦だった頃の“私”が30隻並んでも届かない規格外の巨船。二万人に迫る学生達が過ごす広大な学び舎の艦。

それが今、私の────正確には私に視界を共有してくれている【彩雲】の妖精さんの眼下で黒い煙を幾筋も立ち上らせている。

あの中で、日ノ本の明日を担う若人が何人命を散らしたのか。その事に思いを巡らせると、胸の奥から自然と怒りや悔しさが滲み出てくる。

「…………頭にきました」

思わず漏れた呟き。気づくと、私の手は無意識の内に矢筒に伸びて99式艦爆の矢を取り出そうとしていた。

いけない。

上昇した体温を下げるため、一度大きく息をつく。

私の悪い癖。いつも提督や鈴谷達を窘めているくせに、誰よりも自分が激情に駆られやすい性質をしている。少しでも気を抜けばすぐ頭に血が上って周りが見えなくなってしまう。

私は、誇り高き大日本帝国の一航戦。私情と任務を切り離せ。

あの船には今なお、多くの民間人・生徒が取り残されている可能性が高い。今そこへ爆弾を落とすという行為は、深海棲艦の撃沈に人々も巻き込む危険性と隣り合わせだ。
348 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/13(火) 23:05:39.45 ID:H80nMxzq0
……尤も、眼下で学園艦が蹂躙されているという事実は変わらない。理性ではそうだと解っていても、黒煙の隙間から垣間見える火柱や甲板上を我が物顔で闊歩する新型───市ヶ谷によって【ナ級】と名付けられた敵駆逐艦の姿を見ている内に、せっかく下がった血が再び頭部に集まり始めた。

「落ち着きなさい、私。任務は偵察、攻撃ではない。任務は偵察、攻撃ではない」

《………加賀、大丈夫か?》

冷静さを保とうと小声で何度か自分に言い聞かせていると、耳元のインカムで心配そうな声が上がった。途端、怒りに寄るものとは別種の血の気が頬に差し込む。

「………聞こえていたかしら、提督」

《そりゃお前自衛隊の通信機器だぞ、感度抜群に決まってる。どんなに小声でもこのマイクなら拾えるさ》

「……………それは何よりね」

嗚呼、何という不覚。よりによって提督に聞かれるなんて。穴があったら入りたいとはまさにこんな気持ちに違いない。

《気にするなよ、誰だって緊張もするしこの現状には怒りを覚えている。加賀の反応は自然なことで、俺も全く同じ気持ちだ》

「そう言って貰えて救われるわ。……心の底から」

最後に付け加えた言葉は、半分嘘。気持ちを汲んで貰えたことは嬉しい反面、他人に気を遣われてしまった事への気恥ずかしさも増す。

相手が提督なら、尚更。

「でも、できれば今の私の言動は速やかに忘れて頂戴。やはり、一航戦としてあまりに恥ずべき内容だから」

《あー………いや、俺は構わないんだが………》

どうにも歯切れの悪い返事を訝しく思い眉を顰める。………だが、その理由はすぐに判明した。

《ぉK、安心しろ加賀さん。提督の直ぐ後ろにいた俺たちは何も聞いていないし、七警最強の一航戦殿が珍しく照れている様なんかこれっぽっちも知りはしない》

《この口の堅さ、流石だよな俺ら》
349 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/13(火) 23:07:47.03 ID:H80nMxzq0
もう一つ……否、もう二つ、聞き慣れた声が私の耳朶を打つ。途端、私は自分の迂闊さに痛む眉間を押さえて瞑目した。

「いたのね……流石両一曹」

( ´_ゝ`)《そいつぁご挨拶と言うものだな加賀さん。提督がこの場にいるのにその護衛である俺たちがいないわけがなかろう》

(´<_` )《全くだ。何せ俺たちは職務に忠実なことこの上ない自衛官の鑑だからな》

全面的に否定するつもりはない。実際二人ともふざけた言動が多い一方で、守衛としても自衛官としても優秀だ。

ただ、それを自分で言うか。

「はぁ…………」

深い深いため息が口から漏れる。

本当に不覚。この双子にわざわざ向こう三年は使えそうなからかいのネタを提供するなんて。

「提督、一連の事態が終息したらお二人との模擬戦闘訓練の許可をお願いします」

《解った、殺すなよ》

(´<_`;)《ぉk、時に落ち着け加賀さん》

(;´_ゝ`)《生身の人間が艦娘に勝てるわけないだろいい加減にしろ!提督もあっさり許可を出すんじゃない!!》

《いやいや、お前らなら行けるだろ。なんか爆撃とか食らってもアフロヘアになるだけで助かりそうだし》

(;´_ゝ`)《ギャグ補正が働くのは漫画やアニメの世界だけだぞ》

(´<_`;)《とにかくまず平和的な話し合いをしようじゃないか、俺たちは加賀さんの気持ちを解そうとしただけで悪気は無くてだな………》

「ふふっ」

珍しく取り乱した双子が必死に言い訳を募らせる様子に、今度は口元が緩む。必死に堪えようとした笑い声も、抵抗虚しくあっさりと最終防衛線の唇を突破した。

明らかに詭弁でしか無いはずの「気持ちを解すため」という二人の言葉だが、大変遺憾ながら効果については認めざるを得ない。

( ´_ゝ`)《うむ、狙い通りだな》

(´<_` )《流石だよな俺ら》

………で、彼らはといえば私が含み笑いを零した途端この勝ち誇りよう。先程の狼狽はどこにいったのだろう。

(或いは、本当にあの二人の掌で踊らされたのかしら)

だとしたら、この上なく悔しい。やはり一発模擬戦闘訓練をぶち込んでやろうか。
350 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/13(火) 23:19:57.20 ID:H80nMxzq0
────いや、その事については後で考えよう。

《……加賀》

「ええ、そうね」

そろそろ、時間だ。

提督の呼びかけに頷きながら、ちらりと軍用の腕時計を見やる。

指し示されている時刻は、現在15:29:55。

あと5秒………3、2、1─────0。

長針が、ピタリと「6」の真上に重なる。同時に、提督とは別の、より低い男性の声が私の耳元で響く。

《時刻ヒトゴーマルマルを確認。

CPより各艦に通達。突入開始、繰り返す、突入開始、オクレ》

《大洗第四警備府・翔鶴、了解しました!》

《同警備府那珂ちゃん、水偵さんいっきまーす!!》

《第11警備府、千代田了解!》

《第二警備府羽黒、り、了解です!!》

《大洗鎮守府第3艦隊・“航空母艦”葛城、準備は万全よ!!》

《同第2艦隊由良、水偵に降下指示出します!》

《U.S.?Japan?Force?Navy,?Saratoga-25.?Joint?operation!!》

「大洗第七警備府、空母加賀。これより大洗女子学園への威力偵察を開始します。

────ここは、譲れません」
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/14(水) 10:47:30.75 ID:Zheo8taA0
おつおつ
文字通り反撃の狼煙か…
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/14(水) 18:06:07.18 ID:gRmCy+uv0
おつです
353 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/14(水) 23:08:31.81 ID:QLq1vrF90
号令一過。

CP───前線指揮所からの指示が届くと同時に、学園艦の上空で旋回を繰り返していた麾下の【彩雲】達に降下突入の指示を出す。六機分の【誉】が唸りを上げ、共有する視界の中で風景が流れていく速度が跳ね上がる。

私の【彩雲】達だけではない。周りでは、60を越える機影が身を翻し、雲を切り裂き、エンジンの回転を最大にして眼下の巨艦めがけて駆けていく。

翔鶴の零戦、千代田の96式、葛城の烈風、そして在日米軍から派遣されたサラトガが指揮するF6F【ヘルキャット】。雷撃機も爆装機も姿は無く、機種も機数もバラバラで一部に至っては国籍すら一致しない。更には、本来こういった編隊行動での作戦には参加しない由良や羽黒、那珂ちゃんの“下駄履き”まで投入しての作戦発動。

いかにも急場凌ぎでかき集めた事が解る、歪な戦力編成。それは、今私達が置かれている苦境を何よりも雄弁に物語る。

まぁ、その事が作戦失敗の言い訳はならない。そもそも、失敗させる気も毛頭無いけれど。

《目標まで距離3800───っ、甲板上より敵の応射!砲火多数を視認!!》

千代田の叫び声。先頭を飛んでいた彼女麾下の96式が何機か立て続けに火を噴き、くるくると回転しながら墜落していく。息継ぐ間もなく今度は私の(正確には妖精さんの)眼前で爆炎が弾け、右翼をもぎ取られた烈風が隊列から外れて錐揉み状態に陥った。

《此方葛城、二番機が高角砲弾の直撃を受けた!》

《千代田隊は六番機、七番機を損失!九番機も舵が利かないみたい!》

《All unit, Break!! Break!!》

《サラちゃん英語で話すのやめてーー!!那珂ちゃん達日本語しか喋れないよー!!》

「これぐらいは仮に解らなくても雰囲気で察しなさいな」

人一倍騒ぎ立てる那珂ちゃんを窘めつつ、その焦りが仕方の無いことだとも思う。

反撃を予想していなかったわけじゃない。軽空母ヌ級が展開しているという情報から、寧ろかなり激しい抵抗になるとは全員が覚悟していた。

ただ、それはあくまでも艦載機によるもの。私達の中でこれほど濃密な対空砲火が来ることを事前に予測できていた者は、サラトガも含めて一人も居なかったに違いない。
354 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/15(木) 23:18:26.20 ID:3Lds9F6v0
《各母艦、サラトガの言うとおり散開運動指示を指揮下艦載機に!》

《あ、あの……散開予定高度よりまだ遙かに手前ですけど………》

《敵の砲火量が予想を遙かに超えてる、このまま密集突入すれば接敵前に全滅しちゃうよ!

任務遂行のために散開を繰り上げる、指示の変更は無し!》

《那珂ちゃん、りょうかーい!!》

「七警加賀、了解しました」

この作戦で事実上の旗艦である葛城からの指示に従って、妖精さんたちに思念を通じて散開運動を命じる。

機体性能の高さに加えて、この娘達は皆優秀な戦闘機乗りだ。六機の彩雲は地上から殺到する何百条という火線の合間を巧みに擦り抜け、速度を殆ど落とすこと無く降下していく。

《加賀さん、ご一緒させていただきます!》

「ええ、どうぞ」

彩雲隊の直ぐ後ろには、由良の艦載機である零式水偵11乙型が続いた。

数合わせの緊急動員とはいえ、流石にフロート付きながら偵察部隊に選抜されるだけのことはある。此方も巧みな操縦で弾雨をくぐり抜け、私の編隊にやや遅れながらもしっかりとついてきている。

《CPより旗艦葛城、被害状況を報告せよ》

《葛城よりCP、敵対空砲火により投入63機中6機を喪失!なお、敵火力は予想より遙かに強大!》

《CPより葛城、損失6なら作戦続行に支障無しと認む。威力偵察を続行せよ、オーバー》

《葛城よりCP、了解!ま、防空砲台やらされるよりはマシってね!!》

「……使命感に燃えているところに水を差すようで悪いけど、指揮に集中した方が良いわよ」

事務的な自衛官の指示にも、どこか華やいだ声で返答する葛城を窘める。彼女の“生前”を考えれば正規空母としての役割を果たせることがいかに嬉しいかは想像に難くないが、敵はそんな事情に忖度してくれるほど甘くない。

「下方より今度は敵機、数は15〜20。各母艦、警戒を厳とせよ」
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/16(金) 12:06:38.78 ID:lAV0JgyH0
水偵バンザイ
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/16(金) 17:21:52.43 ID:JnTJ3CE+0
357 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/16(金) 23:01:50.98 ID:Dpgy6EUU0
満天の星空の如く眼下で煌めく無数の砲火。次々と伸びてくるオレンジ色の火線に混じって現れた、黒く小さな点。

妖精さんの並外れた視力が無ければ気づくことさえ不可能なそれらは、見る間に私達の艦載機に肉薄し、すれ違う形で後方へと飛び過ぎていく。

《由良より各艦、敵機種を確認!全て【カブトガニ】!》

由良からの報告に、私は思わず表情を曇らせた。

カブトガニ………欧州や米国では“Helm”と呼ばれる、深海棲艦側の汎用戦闘機。性能は零戦21型に極めて近く、旋回能力が高い反面防弾と急降下時の運動能力に弱点を持つという特徴も共通している。

そう、向こうも急降下運動は決して得意じゃない。そして学園艦上の敵艦が(確認されている限りは)軽空母ヌ級のみという点から、編成が【カブトガニ】に偏っていることもある程度読めていた。

だからこそ私達は、此方も編成に零戦を擁しながらも上空からの突入という戦術を採ったのだ。

(敵に先手で上方を取られないよう私達の方から降下攻撃を仕掛け、【カブトガニ】の迎撃を正面からに限定する………それが前線指揮所と私達の狙い目でしたが)

もしも正面からの格闘戦になれば、実戦経験が豊富で防弾性能と火力に優れるサラトガのグラマン部隊が迎撃・足止め。その間に小回りの利く零戦、烈風を護衛として私達偵察部隊が学園艦直上まで降下する……指揮所の海上自衛隊佐官が立案した一連の作戦は、敵機の性能も鑑みられており十分理に適っていたように思う。

『『『────』』』

《カブトガニ……【Helm】、全機当編隊後方にて反転!

敵編隊、後方に占位!向かってきます!!》

だけど、その思惑はたった今外れた。
358 : ◆vVnRDWXUNzh3 [saga]:2018/03/18(日) 23:02:19.67 ID:dGcshbyk0
ヘルム、カブトガニと一口に言っても、零戦が21型だけではないのと同じで派生型が存在する。99式やドイツの“スツーカ”のように急降下運動を寧ろ得意とする型、防盾性能が高い型、火力や旋回性能に強化が加えられている型など種類は多く、極めて広い用途で使われているのは確かだが全てが全くの同一機種というわけではない。

そして、それらは一見同じ形状に見えてその実エンジン音や挙動、機体の細かい構造などに微かにではあるものの差異が見られる。私達艦娘は、その差異を一目で見分けられるよう幾度となく訓練を重ね各型の特徴も徹底的に頭に叩き込んできた。

視認できたのは一瞬だが間違いない、あれは絶対に“零戦系”だ。

(そう……解っていたからこそ、私達は奴等が上方を取りに行くとは思わず反応が遅れた)

敵の動きに躊躇は全くなかった。減速も射撃の予備動作もなく、私達に一瞥すらくれずにその横を駆け抜けていった。つまり敵は、恐らく私達が零戦系の迎撃を予測していたこともその対処法も計算尽くであの編成の部隊を投入してきた可能性が高い。

《……敵の動き、頭が良すぎますね》

由良の呟きに、私も胸の内で同意を示す。

軽空母ヌ級と軽巡ナ級、どちらもelite或いはflagshipであるとは聞いたが所詮は“非ヒト型”の筈だ。奴等だけで、こんなに戦略的な動きが取れるとは思えない。
359 : ◆vVnRDWXUNzh3 [sage saga]:2018/03/18(日) 23:07:12.46 ID:dGcshbyk0
私達の後方に占位した敵機は、動きが戦略的なだけではなく高い練度を誇っていた。迫る飛翔音は規則正しく、本来不向きな急降下運動であるにも関わらず遅れる機体が現れる様子は見られない。

思わぬ動きに私達の編隊が混乱していたこともあり、距離を見る間に詰められる。

『『『──────!!!』』』

《きゃあっ!?》

背後から伸びてくる機銃掃射の火線。ニ警の羽黒が悲鳴を上げ、水偵が下部のフロートと右翼を引き千切られ黒い煙を噴き出しながら落下していく。

《ご、ごめんなさい!やられました!》

《っ!此方千代田、所属の96式が更に一機被弾!損傷大、離脱させます!》

《予定変更!旗艦葛城より翔鶴さん、零戦部隊を全機反転させて敵航空隊の迎撃戦闘に移って!サラトガさん、F6F全機を加速、編隊に先行させて!》

《了解しました!》

《Roger!!》

無論、此方も無抵抗でやられるわけにはいかない。翔鶴が零戦部隊一斉に反転させ、背後の敵編隊を迎え撃つ。

急降下能力に優れるヘルキャットを当初の予定とは逆に更に先行させ、低速域での旋回格闘能力に優れる零戦で足止めを計る───咄嗟の判断としては、きっと最上の部類。

《加賀さん、彩雲隊を加速させてサラトガ隊と離れないように!由良さん、那珂ちゃんも大変かも知れないけど妖精さんに頑張って貰って!》

《了解しました!》

《りょっうかーい!》

「承ったわ」

《此方翔鶴、迎撃戦闘を開始────っ!!》

だが、なにぶん予想外の形で上方を取られた私達の態勢が悪すぎる。翔鶴隊はその悪条件の中でも十二分に機敏な動きは見せたけれど、急造にも程がある防衛線で全機をくい止めろなど無理難題だ。

気配でわかる。数機が此方に抜けてきた。

《翔鶴より先行部隊、四機が突破!!》

『─────!!』

〈ウオッ?!〉

翔鶴からの報告が届くのと、私が意識共有をしている妖精さんが操縦桿を右に倒したのは、ほぼ同時。視界がぐるりと一回転して、僅か1p横を弾丸が風切り音を残して駆け抜ける。
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