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テロリスト「「「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」」」
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19 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:12:25.90 ID:zTNaStQMo
――1号車【展望車・前】 運転室
副運転士「サッポロ発、オーサカ行き」
副運転士「本州縦断特急―――『ドライ・ブラー号』!」グルッ
副運転士「この豪華旅客列車は今、今年最後にして来年最初の運行と題して」クルクル
副運転士「年の変わり目をまたぐ、スペシャルでゴージャスな列車の旅をしている!」バッ
運転士長「おいおい」
副運転士「今日の朝10時にサッポロを出発したこの列車は、22時間のあいだ運行し」ルンルン
副運転士「明日の朝8時にオーサカへ到着する予定……」タッタッ
20 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:12:54.13 ID:zTNaStQMo
副運転士「つまり、列車の中でハッピーニューイヤーってワケですね!!」ビシッ
運転士長「はっはっは。上機嫌そうだな」
副運転士「そりゃそうですよ! この歴史あるドライ・ブラー号が行う、今年最後の運行は……」
副運転士「まさしく、登場してからこれまでのドライ・ブラー号の集大成!」
副運転士「そして、この年の集大成は、次の年のドライ・ブラー号の第一歩でもある……」
副運転士「こんな歴史的瞬間に立ち会えるというのに、なぜ興奮せずにいられるのでしょうか!?」
副運転士「いや、興奮せずにはいられない!」ランラン
運転士長「はっはっは……。まあ、とにかく運転席につきたまえ。仮にも走行中だぞ」
21 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:13:21.41 ID:zTNaStQMo
運転士長「たしかに今日の運行に立ち会えるのは名誉なコトかもしれないが、私たちは乗務員だ」
運転士長「乗務員の役目は、乗客の方々に上質な列車の旅を提供すること」
運転士長「私たちがお客様以上に浮かれて、本来の職務をおろそかにしてはいけないよ」
副運転士「むっ……。たしかに。そう、私はこの列車の副運転士なのです」
副運転士「乗客の皆さんに列車の旅を楽しんでもらうコトこそが、副運転士たる私の役目の第一!」
副運転士「今日の乗車券を買った方々は、皆、楽しい年末年始の旅を期待している……。なら!」
副運転士「今までのどの年末年始よりも楽しかったと言ってもらえるような運行にしたいモノです!」
運転士長「ああ、その意気だ」
22 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:13:50.07 ID:zTNaStQMo
運転士長「実のところ、私も高揚している」
運転士長「今日と明日の一日は、ドライ・ブラー号にとっても、重要な二日間となるだろう」
運転士長「ドライ・ブラー号の運転を開始から見てきた私としても……」
運転士長「今日の運行を無事に終え、新たなる歩みの初めとしたいモノだよ」
副運転士「へ? 士長、この列車のコト、完成した時から知ってるんですか?」
運転士長「ああ。こう見えて、幼い頃から列車というモノが好きでね」
運転士長「初めて運転室の席に座ったのも、このドライ・ブラー号だったんだよ」
副運転士「へーえ……。ドライ・ブラー号と共に生き、ドライ・ブラー号と同じ景色を見てきた、生き証人!」
副運転士「なんだかドラマティックでロマンティックですねえ!!」
23 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:14:16.52 ID:zTNaStQMo
運転士長「はっはっは……。だが、そんな美談ではないよ」
運転士長「ドライ・ブラー号の歴史は、すなわち、戦いの歴史でもあった」
副運転士「は? 戦い?」
運転士長「ああ。……たとえば、このフロントガラスの窓枠。ところどころ丸い穴が開いているだろう?」
運転士長「これは運転室で銃撃戦があった時の弾痕だ」
副運転士「えぇ!?」
運転士長「また天井には、黒いシミや、刀傷が大量についているが……」
運転士長「これは戦いで傷みすぎてダメになった床板を天井に張り替えている。戦いを忘れないために」
24 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:14:43.82 ID:zTNaStQMo
副運転士「……あっはっは、またまたぁ〜! 士長はジョーダンが上手いですねえ!」
運転士長「いや、実際にあった出来事で……」
副運転士「ぷぷー! この平和な日本で、そんなコトあるワケないでしょう」
運転士長「……他にも、謎の赤い自爆スイッチなどもあるが。まあ、平和であるに、越したことはないがね」
運転士長「とにかく、長かった一年も、今日が最後だ」
運転士長「今年最後の運行も、何事もなく終わる、いつも通りの運行にしたいモノだな」
副運転士「そうですね! まあ、今年一年何も無かったし、今日も何も無いと思いますケド」ギシッ
運転士長「いや、油断はキンモツだ。事件は忘れた頃にやってくる」
25 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:15:10.96 ID:zTNaStQMo
運転士長「それが、このドライ・ブラー号だ……」
副運転士「またまた。おどかして〜」
副運転士「ああ、夕焼けがキレイだなぁ……。トワイライト、っていうんですか?」
副運転士「まるでドライ・ブラー号の晴れ舞台を祝福しているかのようです!」
副運転士「こんなにも日の入りが幻想的で美しい大晦日に、何かが起こるハズが――――」
バンッ
白ドレス「起こるんだなぁそれが!!!」
副運転士「どぅっ、えっ!? わったっ、たったったぁぁああ!!」ガタタッ ドシン!!!
26 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:15:53.07 ID:zTNaStQMo
運転士長「……!」ガタッ
白ドレス「そこな乳臭いガール、知ってるかな? 薄暮とはつまりタソガレ、オーマガドキ!」
白ドレス「彼は誰だ、ニンゲンか? と書いて誰彼。魔に逢うと書いて逢魔時」
白ドレス「昼と夜のキョーカイがアイマイになる時間にこそ、ヤバいのはいっぱい出る!」
白ドレス「そうっ! 私のように!!」ビシッ
副運転士「わ、私のようにって、何イバってんですか! あ、痛た……」
副運転士「それに乳臭いガールってなんですか! み、見た目同じくらいに見えますけど歳!?」
白ドレス「木を見て森を見ず、井の中の蛙大海を知らず。知性足りてないよ、ガール」
27 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:16:20.35 ID:zTNaStQMo
副運転士「はああああッ!? さっきからガール、ガールって何なんですか、ムキー!!」
運転士長「怒る所そこかね、君……」
運転士長「……ここは関係者以外は立ち入り禁止だ。ましてや列車の中枢を司る運転室」
運転士長「何人であれ外部の者の侵入は許されない。お引き取り、願おうか」
白ドレス「おや? 私も乗客ですよ、眼帯のクミチョーさん。そんなにゾンザイに扱ってもいいのかな?」
運転士長「士長だ。……礼儀なき乗客に、向ける敬意などあるまいよ」
白ドレス「すごい。カタブツだ。私好きだよ、そういうの。ラストサムライ、ってカンジで」コッ コッ
白ドレス「うん。良いヒトたちだね、アナタたち。合格です。それじゃあ、簡潔に伝えましょうか」カタッ
28 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:16:51.82 ID:zTNaStQMo
運転士長「……? いったい、何を……」
白ドレス「―――今日この日、何らかの理由により、この列車は爆発する」
副運転士「は?」
運転士長「……!」
白ドレス「うーん、もうちょっと詳細に言おうか?」
白ドレス「今日この日、このドライ・ブラー号は、乗っ取られ、爆発、大炎上する」バッ
白ドレス「ああ、いや……。正確には、今日の夕刻から、明日の未明にかけて、だっけ」
副運転士「全然詳細じゃァありませんけどッ!!?」
29 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:17:49.77 ID:zTNaStQMo
白ドレス「なるほど! たしかに信じられないかもしれない! 事実、私の言っているコトは荒唐無稽だ!」
白ドレス「だけど……。それがこの列車の運命というモノ、です」
白ドレス「南無三!!」パチン
副運転士「……。な、なんなんですかこのヒト……」
運転士長「わからん……。アヤしいモノでも服薬しているのかもしれんな」
白ドレス「あーッ! いま私のコト、ヤク中扱いしたでしょ!? 迂遠に言ってもわかるんだから!」
白ドレス「最近の若い奴ってのはさぁ、ワケわかんないコトがあるとすぐ解決を科学に頼るよね!」
白ドレス「そういうのいけないと思うよ! たまにはオカルトを信じて、諦めるのもダイジ!」
30 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:18:20.12 ID:zTNaStQMo
副運転士「うわぁ……。なんか若者批判はじめましたよ。私と同年代のクセして」
副運転士「しかもオカルトマニアですよ。ワタシ霊感があるのー、とか言っちゃうやつですよ」
運転士長「うむ……。他の乗客の不安をいたずらに煽ってもいけない。留置室に放り込むか」
白ドレス「え? この列車、留置室とかあるの? 何それ鉄格子? こわ!!」
運転士長「さあ、ご同行願えるか」ズイッ
白ドレス「や! イヤだよ! せっかく楽しい旅を期待して乗車券買ったのに――――」バッ
副運転士「……!」
白ドレス「なんでブタバコにぶち込まれなきゃいけないかなあ!」
運転士長「そうは言ってもだなあ……。ヘンなウワサされるのもイヤというか……」
31 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:18:46.45 ID:zTNaStQMo
副運転士「―――待ってください。士長」
運転士長「どうした?」
副運転士「私。……この人のコト、少しは信じようと思います。爆発というのは、いつ起きるんですか?」
運転士長「……正気か?」
白ドレス「おお、感心感心。最近の若いのも、捨てたモンじゃないね。でも――――」
ドゴォォォン…!!!
副運転士「うわっ……!?」グラッ
白ドレス「……もー、はじまっている」
32 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:19:18.90 ID:zTNaStQMo
――8号車【ロビー】 屋根の上
…バラララララ
昼と夜が混じり合う、この薄暮の時間。世界を侵食せんとする宵の色にまぎれて、
迷彩に姿を隠した一機のヘリコプターが、ドライ・ブラー号の上空に迫っていた。
パイロット「目標地点、到着。すぐに降下しますか?」
キノコ頭「ああ、今すぐ飛び降りる。……お前たち、準備は良いか?」
テロリストA&B「「準備オーケーです!!」」
テロリストC&D「「いつでも行けます!!」」
33 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:19:45.45 ID:zTNaStQMo
キノコ頭「……よし。それでは、作戦を開始する」
パイロット「我らが悲願、作戦の成功を祈る。グッドラック」
キノコ頭「―――ああ、必ずや我らに勝利を。グッドラック」
バッ!!!
スタッ スタッ スタッ スタッ スタッ
キノコ頭「……全員いるな?」
テロリストA「はい、間違いなく」
キノコ頭「……武器、爆薬は?」
テロリストC「ここに、ありったけ! さっそく脅迫用の爆弾も設置しました!」
34 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:20:12.00 ID:zTNaStQMo
キノコ頭「問題ない」
バラララララ…
キノコ頭「……行ったか」
キノコ頭「……もう一度確認しよう」
キノコ頭「今から我々は、この本州縦断特急『ドライ・ブラー号』を襲撃する」
キノコ頭「なぜなら。“最強の兵器”を開発したという、若き天才科学者、通称“教授”が――――」
キノコ頭「今日、この列車に乗るという情報を手にしたためだ」
キノコ頭「…………」
35 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:20:39.18 ID:zTNaStQMo
キノコ頭「……このミッションから、降りるなら今のうちだ」
テロリストB「!」
キノコ頭「……先の戦争に、我々は敗北した」
キノコ頭「我々は敗北し、多くの同志を失った」
キノコ頭「もし同志たちがこの場にいたならば……。我々の短絡的な行いを止めるかもしれない」
キノコ頭「我々は戦争に敗北した。その事実を、甘んじて、粛々と受け入れるべきだと」
キノコ頭「……、……」
テロリストD「……もとより承知の上です」
キノコ頭「!」
36 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:21:05.94 ID:zTNaStQMo
テロリストA「……俺たちは、そんなコトはすべて呑み込んだうえで、今ここにいます」
テロリストB「俺は、敗北は認めますが……。だが、それでも奴らの行いを許せない」
テロリストC「我ら戦争の生き残り、それぞれ動機は違えど、目的は同じです」
テロリストD「一蓮托生ってやつですよ。まったく、今さら、リーダーらしくもない」
キノコ頭「……。お前たち……」
キノコ頭「ああ、ならば行こう。もはや迷いはない」
キノコ頭「俺たちは、この一日で歴史を変える。敗北を覆す。悲願を現のモノに」
キノコ頭「―――教授の持つ、“最強の兵器”を、この手にして」
37 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:21:37.06 ID:zTNaStQMo
――7号車【ラウンジ】
教授「“最強の兵器”、ねぇ……」ブラブラ
執事「あっ、そういえば。結局完成したんですか? 例の、“最強の兵器(仮)”とやら」
教授「ううん。一文字の、仕様書案すらも書いてない」
執事「まじですか」
執事「……どうするんですか? 明日オーサカについたら、昼には“最強の兵器(仮)”の発表会ですよ?」
執事「やばくないですか?」
教授「うん、やばい。8月31日なのに夏休みの宿題に何も手つけてないくらいやばい」
38 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:22:04.07 ID:zTNaStQMo
執事「はあ。そりゃまた、古典的な例えで。でも、今年の夏もたしかそんな……」
執事「…………」
執事「……まさか」
教授「そう、やばい。実は、リアル高校の冬休みの宿題も何も手つけてない」
執事「うわ。終わってる、この人」
教授「大丈夫! まだ私、若いし、未来があるから」
執事「いま科学者としての貴女が社会的に死にますよ……」
教授「勉強と仕事の両立って、むずかしいよね……」
執事「ハナシを逸らさないでください」
39 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:22:31.39 ID:zTNaStQMo
執事「まったく。俺も手伝いますから、列車がオーサカにつくまでに終わらせましょう」
教授「おっ、わっかるぅー。じゃあ、こっちの数学の宿題お願い」ドサッ
執事「やれやれ。……って、“最強の兵器(仮)”のほうじゃないんですか!?」
教授「いやあ。私の担任の、数学教師、コワくってさぁ……」
教授「あのマッチョに怒鳴られるくらいなら、記者会見で叩かれたほうがマシっていうか……」
執事「くっそ神経の図太いお嬢様をビビらせるほどの方ですか。一度会ってみたいモノです」
執事「……で、“最強の兵器(仮)”のほうは? どうなさるんですか?」
教授「そっちはね、努力じゃなくて、ヒラメキだから……。あ、そこのき○この山、取って」
40 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:22:58.90 ID:zTNaStQMo
弓使い「……ねぇ、剣ちゃん、オーサカにはまだ着かないの〜?」
剣使い「あ? あと16時間くらいだな……」
弓使い「長! 列車の旅、長!! やっぱ飛行機のほうが良かったんじゃないのぉ〜?」
剣使い「姐さん……。なら、一つ訊かせてもらうが」
弓使い「おう。おねーさんに何でも訊いていいんだぜ」ドンッ
剣使い「ポストに入ってた招待状見つけて、オーサカ行きたいー、って言ったのは誰だった?」
弓使い「ギクゥ!!」
銃使い「…………」ガシュガシュ
41 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:23:28.40 ID:zTNaStQMo
弓使い「そ、それはぁ〜。一時の、気の迷いっていうか〜……」
剣使い「やっぱ時代は山だよね、とか、山の風景がどうたら言ってた姐さんはどこ行ったんだ?」
弓使い「死にました。山でお腹は膨れません」
弓使い「やっぱ時代は食だよね。たこ焼き、お好み焼き……。さすがはオーサカ、食の都」
剣使い「オーサカ着いてから、やっぱ時代は海だよねとか言ってオキナワに行かないコトを祈る」
弓使い「そうだなあ、オキナワもいいよね」
剣使い「しかし、列車に乗ってると腕がナマるのも事実だな……。どこかに、模擬戦闘室はないものか」
剣使い「なあジュー、お前付き合わないか?」
銃使い「…………」ガシュガシュ
42 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:23:55.12 ID:zTNaStQMo
剣使い「……まーた食ってんのか?」
銃使い「うん」
剣使い「うまいか? それ」
銃使い「隊長も食べる? おいしいよ」
銃使い「たけ○この里」
剣使い「…………」
剣使い「いや、いいや。俺、甘いの苦手だしな」
弓使い「あ、じゃあ私は一個もらおーっと」
銃使い「はい。あーん」
43 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:24:21.19 ID:zTNaStQMo
弓使い「あーん。むふふ、銃ちゃんかっわい〜♪」ナデナデ
銃使い「…………」ポフポフ
コロコロ…
剣使い「ん?」
教授「あー、き○この山、一個落としたー」ボリボリ
執事「何やってんですか、もー。ええと、たしかこのへんに……」ボリボリ
教授「き○この山食べながら喋ると汚いよ」ボリボリ
執事「お嬢様に言われたくはありません!!」ボリボリ
44 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:24:48.89 ID:zTNaStQMo
剣使い「おい……。もしかして探してるのは、コレか?」
キラーン
教授「ああ、それそれ! 見つかって良かった、ありがとうお兄さん」
教授「でも落としちゃったから、もういいや。お兄さんにあげる」
剣使い「え……。いや、一度床に落としたモノをヒトに勧めるのは、俺でもどうかと思うぞ……」
執事「お嬢様。そういう少しの油断が、週刊誌に隙を与えるのですよ。謝って下さい。私からもすいません」
教授「そうだね。ごめんなさい」
剣使い「なんかセツジツな理由だな……」
45 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:25:18.31 ID:zTNaStQMo
剣使い「しかし、じゃあコレどうしようか……。食べてもいいが、俺、甘いの苦手だしな……」
銃使い「じゃあ食べる」パク
執事「あ」
銃使い「おいしい」ボリボリ
教授「え。ちょっと、食べて良かったの……?」
銃使い「うん」ゴクン
執事「そうですよ。この発明オタクで鈍感な頭ネバーランドのお嬢様のき○この山を……」
教授「ごめん今日ちょっと言い過ぎじゃない?」
弓使い「あ、き○この山食べてるの? いいなー」
46 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:25:45.82 ID:zTNaStQMo
執事「おや。良かったら、き○この山食べますか?」
弓使い「え? いいの!? うれしーなー!」
銃使い「うん。じゃあ、こっちはたけ○この里を」
教授「うーん。なんか、ヒラメキそうなヨカン……。ヤカン……。ガッチャン?」
剣使い「お。なんだか難しそうな勉強してるな」
執事「そうなんですよ。ホント、最近の数学って難しくって……」ガシュガシュ
弓使い「よし、おねーさんが勉強を見てあげよう。どれ……。ごめん、無理」ボリボリ
銃使い「とりあえず代入だよ」ボリボリ
教授「私が手伝えればいいんだけどね〜」ガシュガシュ
47 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:26:14.33 ID:zTNaStQMo
――8号車【ロビー】
スタッ スタッ スタッ スタッ スタッ
革ジャン「……ん?」
黒コート「……? どうかしたか?」
革ジャン「いや。今、なんか……」
革ジャン「ケータイの電波調子悪くね?」ブンブン
黒コート「本当だ。電波強度が弱になってる」
48 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:26:45.50 ID:zTNaStQMo
革ジャン「俺のもアンテナ一本しか立ってねえな」ブンブン
黒コート「アンテナ……? ともかく、トンネルにでも入ったか?」
ゴトン ゴトン
黒コート「……入ってないな」
革ジャン「く、くそ。ガキ使の前番組の総集編観てたのに、いいところで切れやがって……!」
革ジャン「ゆるせん! 俺の職務権限で、この列車、回線の速い電波に付け替えさせてやる!!」ガタッ
黒コート「お前にそんな職務権限ないぞー。ほら、ガキ使ならロビーのテレビでも観れるだろ」
黒コート「スミマセン、お姉さんー! テレビのチャンネル、ガキ使にしてもらってもいいですかー?」
49 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:27:13.49 ID:zTNaStQMo
フロント「テレビのチャンネルですか? ええと……」
フロント「すいません、そこのお客様、テレビのチャンネルを変えても構わないでしょうか?」
魔族A「えっ!?」
族長「……ああ、構わない」
フロント「では、失礼して……」ピッ
テレビ「デデーン マツモトー アウトー」
フロント「これでよろしかったでしょうかー?」
黒コート「あ、ありがとうございますー。……ほら、これで良かったか? 革ジャン野郎」
50 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:27:39.80 ID:zTNaStQMo
革ジャン「いや、ガキ使は、もういい……」
革ジャン「それよりも電波が悪くなった原因がわからなくてモヤモヤする……!」ガシガシ
黒コート「おいおい」
革ジャン「よし、俺は窓から屋根の上に登って原因を調べる! ココは任せたぜ、センパイ!」ガタガタ
黒コート「は? 屋根の上? なんで!?」ガタッ
革ジャン「バカと煙は高いトコと決まってる! 犯人がいるなら、マチガイなく上だ!」ガラッ
革ジャン「よいしょっとー!!」ヨジヨジヨジヨジ
黒コート「…………」
黒コート「はっ、まったくその通りだな……」ドサッ
51 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:28:07.57 ID:zTNaStQMo
黒コート「ココは任されちゃったよ、ったく」
黒コート「それにしても、全然それらしい奴が通らないな……」
黒コート「まあ、バカ正直に仮面なんていつも被ってるワケないか。何か他の方法考えないと……」
族長「手始めに、隣の車両の者たちに訊いてみる。行くぞ」ガタッ
魔族D「行動の精神、マジリスペクトっす!」
黒コート「あの乗客とか、体青いし、めっちゃアヤシイけど」
黒コート「体青いなんて特徴聞いてないし」チラ
黒コート「……っくっく、ガキ使ってなんで昔からこんな面白いんだろうな」
52 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:28:33.84 ID:zTNaStQMo
族長「…………」
族長「……夜か」ギン
魔族A「ええ! 体に、魔力があふれてきます……!」
魔族B「あと一刻もすれば、万全の状態になるかと!」
族長「ふむ……。昼間の人間界では魔力が生成できない、というのは本当か……」
族長「だが、それでこそ。不利な条件でこそ、我らがニンゲンに勝ると証明できる」
魔族C「族長、シブい……!」
魔族D「不屈の精神、マジリスペクトっす!」
53 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:29:01.22 ID:zTNaStQMo
フロント「テレビのチャンネルですか? ええと……」
フロント「すいません、そこのお客様、テレビのチャンネルを変えても構わないでしょうか?」
魔族A「えっ!?」
族長「……ああ、構わない」
魔族B「テ、テレビのチャンネルを変える、だと……!?」ザワッ
魔族C「テレビとは何だ……? よもや、ニンゲンの妖しげな魔術では……」ガタガタ
魔族D「族長……。まったく動じていませんでしたが、テレビをご存知なのですか!?」
族長「わからん」
54 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:29:34.05 ID:zTNaStQMo
族長「だが、そこの板を見てみろ」
魔族A「……?」
テレビ「デデーン マツモトー アウトー」
魔族A「……これは?」
族長「板の中で、マッチョが尻を叩かれているだけだ」
族長「我々にとって、さしたる害も無い。ニンゲンの為すコトには意味の無いコトも多い」
族長「ゆえに。ニンゲンの一挙手一投足事あるごとに怯える必要は無い」
魔族A「……た、たしかに……!」
55 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:30:24.25 ID:zTNaStQMo
族長「それよりも。我々は、魔力の満ちた今こそ」
族長「この列車に乗った意義を果たす必要がある」
魔族A「はい……。先週、我らはニンゲンどもに召喚され、奴らの戦争に巻き込まれかけました」
魔族B「しかし、ニンゲンどもが我ら魔族に敵うハズもなし。その場で撃退した、それはいいのですが……」
魔族C「奴ら! 我らを召喚しておきながら、我らの信念を侮辱した!!」
族長「ああ。しかし、奴らの信念もまた、ホンモノ……。であれば、最後にモノを語るのは、チカラだ」グッ
魔族D「聞けば我らを召喚したニンゲンの一派、明日の昼にオーサカで何やら発表会を行うとのコト」
魔族D「そして折りしも運行していたのが、オーサカ行きの、この列車! まさしく、僥倖!」
族長「そう。その発表会を我らが潰し、我らの信念を宣言する。それでこそ、恥辱はそそがれる」
56 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:30:51.87 ID:zTNaStQMo
族長「しかもこの列車、かつて多くの同胞が狙い、そして返り討ちに遭った……」
族長「超級の魔力塊を搭載し、動力源にして走る火薬庫、『ドライ・ブラー号』だという」
族長「ならば……。手始めに、同胞たちの誰もが為し得なかった、この列車の魔力塊の強奪を果たす」
族長「そして! その魔力塊のチカラを利用し、ニンゲンどもの発表会にて覇を唱える……!」グッ
魔族A「しかし。その、魔力塊を搭載している動力源とやら……。この列車の、いったいどこに?」
族長「わからん。だが、わからなければ、この列車の者に訊けばよい」
族長「手始めに、隣の車両の者たちに訊いてみる。行くぞ」ガタッ
魔族D「行動の精神、マジリスペクトっす!」
57 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:31:18.60 ID:zTNaStQMo
――7号車【ラウンジ】 屋根の上
ザッ ザッ ザッ ザッ
テロリストA「……リーダー! ターゲットの教授を発見しました! この真下です!」
テロリストA「コチラに気付いた様子はありません。仕掛けますか?」
キノコ頭「ああ。ならば、今すぐ襲撃する。我らの栄光を、ここから始めるとしよう――――」
革ジャン「―――いや、ここで終わるんだよ」
キノコ頭「……!? 何者だ!」
革ジャン「俺の電波を遮った罪は重いぜ。―――死んで詫びろや」チャッ
58 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:31:45.49 ID:zTNaStQMo
――7号車【ラウンジ】
ザッ ザッ ザッ ザッ
教授「……あれ?」
執事「……? どうかしましたか?」
教授「いや。今、なんか……」
教授「ケータイの電波調子悪くない?」ブンブン
弓使い「本当だ。電波強度が弱になってるね」
59 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:32:13.33 ID:zTNaStQMo
教授「せっかくゴーグル先生に英語の翻訳訊こうと思ったのに」
執事「あのですね。お嬢様は外国の方と話す機会も多くなるのですから、これから苦労しますよ」
教授「ふーんだ。今の英語でも十分苦労してるもーん」
剣使い「あ、すまねえマスター。ノド渇いてきたから、飲み物が欲しいんだが。コーヒーあるか?」
マスター「ございますよ。他の方々は、いかがですか?」
弓使い「あ、私お酒ほしいな! でもまだ夕方だし、シードルでいいや」
執事「水で」
銃使い「トニック」
教授「……シ、シードル? トニック? あ、私はコーラで……」
60 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:32:40.27 ID:zTNaStQMo
――7号車【ラウンジ】〜8号車【ロビー】 連結部
族長「さて……。人間界で扉の向こうの者にモノを尋ねる時は、どうするのだったかな」
魔族A「たしかノックを2回するのでは?」
魔族B「それトイレじゃね?」
魔族C「4回が礼儀正しいんだっけ」
魔族D「それ逆にうるさくないか?」
族長「ふむ……。迷うな……。人間界の乗り物では、強く扉を開ける時に何か礼儀があると聞いたが」
魔族A「ああ、そういえば。強く扉を開ける行為は、ハイジャックというらしいですね。知りませんけど」
族長「ハイジャック……。悪くない響きだ。今日はそれでいこう。―――行くぞ!」ガチャッ
61 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:33:07.48 ID:zTNaStQMo
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/: .: .: .: .: .: . _,,.-‐'': : : : : 三 二 ニ ― / || | ̄|| | || | || |: .: .: .: .
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62 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/23(土) 18:33:36.62 ID:zTNaStQMo
第一章「薄暮・前」は以上になります。
列車の旅、あこがれます。
第二章は、明日12/24(日)の18時ごろ開始の予定です。
63 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/24(日) 16:15:38.01 ID:dQmedpGxo
なんかすごい
64 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:00:30.23 ID:U049RaU2o
レスありがとうございます。
それでは、第二章「薄暮・後」を開始します。
60レスほどの予定です。
65 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:01:30.04 ID:U049RaU2o
――7号車【ラウンジ】
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66 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:01:56.50 ID:U049RaU2o
弓使い「っ!」クルッ
銃使い「―――!」バッ
剣使い「……!」チャキ
執事「…………」スッ
教授「え? 何!?」
ドカドカドカドカ
魔族A「やいやいやい、動くな!」
魔族C「動くんじゃないぞ!!」
族長「…………」ザッ
67 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:02:23.46 ID:U049RaU2o
教授「何、アイツら……? 体が、青い……」
弓使い「……アイツらは魔族だね。この世の裏側、魔界に住む住人。いわゆる悪魔ってやつだ」
執事「魔族!? そんな存在が、実在……」
剣使い「あれは魔族でも青鬼族ってやつだな。……おい、まだ撃つなよ。まだ」
銃使い「…………」
魔族B「へへッ! 族長、奴らビビって動けやしませんぜ!」
魔族D「族長、一発キメゼリフお願いします!!」
族長「……ああ。そうだな」
族長「…………」
68 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:02:51.07 ID:U049RaU2o
族長「―――ニンゲンどもよ。貴様らの長は、誰か」
執事「……お嬢様。お下がりを」ザッ
剣使い「俺……、ってコトでいいぜ。魔族のオッサン。何の用だ?」
族長「我らのコトを知っているか。ならばハナシは早い。我らの問いに、答える用意はあるか?」
剣使い「問い? 降伏するか、ってぇ問いなら……。首をタテには降れねぇなあ」
族長「……そうか。ならばこう言うしかあるまい」スゥゥゥ…
族長「脆弱なるニンゲンどもよ! 魔界の炎に怯え、神妙に聴くが良い!!」ボオオオオッ
族長「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」
69 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:03:17.48 ID:U049RaU2o
剣使い「―――ハ、ハイジャックだと!?」
執事「口から炎を!?」
銃使い「……!」バッ
弓使い「皆、逃げるんだ! 部屋が炎にまかれる!」
教授「炎も青いんだ。すごいなあ……」
魔族A「出たーッ! 族長の必殺、青い炎!」
魔族B「この炎にビビらず立ち向かってきた奴はあんまりいないぜ!」
メラメラ メラメラ
族長「今の宣言と、この炎を前にしてなお、臆せぬならば……。その勇者のみ、かかってこい」
70 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:03:46.42 ID:U049RaU2o
――7号車【ラウンジ】 屋根の上
革ジャン「俺の電波を遮った罪は重いぜ。―――死んで詫びろや」チャッ
テロリストB「で、電波だと? 何の話だ!」
テロリストC「死んで詫びろだと? ナメた口を……」
革ジャン「死ね!!」バンバンバン
テロリストD「ぐぁッ!!」
キノコ頭「ぐっ……。拳銃を持っているだと……? 貴様、何者だ!?」
革ジャン「俺かい? 俺は――――」
71 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:04:13.49 ID:U049RaU2o
革ジャン「―――ただのおまわりさんですよってね」
キノコ頭「パトロール!? 俺たちの動きを、どうして知って……」
革ジャン「おっと! パトロールと聞いて弁明しない! それすなわち、悪人ってコトだ」
革ジャン「ならば悔いは無いな? それじゃあ……」
メラメラ メラメラ
革ジャン「……お? あ、熱つッ!!」バタバタ
キノコ頭「なんだ、コレは……? あ、足下が燃えている!?」バッ
キノコ頭「おい、パトロール! お前の仕業か!?」
革ジャン「いや俺知らね」ブンブン
72 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:04:41.42 ID:U049RaU2o
テロリストA「た、大変ですリーダー! 持ってきた爆薬に引火します!!」
シュボッ
キノコ頭「い、引火!? そりゃ、お前、まさか、ば―――、ばくは――――――」
_ _. _ _
ヽ` | | ロロ | | | | | |
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73 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:06:46.13 ID:U049RaU2o
――7号車【ラウンジ】
ドゴォォォン…!!!
剣使い「ば、爆発!?」
族長「何事だ!?」
革ジャン「うわああああッ! 落ちるううううッ!!」ヒュウウウウ
キノコ頭「くそがああああああああ!!!」ヒュウウウウ
ドサッ ドサッ ドサッ ドサッ
教授「空からヒトが!?」
74 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:07:16.75 ID:U049RaU2o
テロリストA「いてて。リーダー、大丈夫ですか!?」
キノコ頭「あ、ああ。なんとか」
キノコ頭「……? ここは……。―――はっ!!」
教授「……?」
テロリストB「……! いました、教授です!」
教授「え、私!?」
キノコ頭「く、この状況だが、やむを得まい……。こら、聞け!!」パァン
キノコ頭「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」
75 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:07:53.11 ID:U049RaU2o
弓使い「え!」
執事「またハイジャック犯!?」
キノコ頭「ま、また!? い、一体どういうコトだ!!」
族長「あ……。何やら悪いな。我々が先にこの列車をハイジャックしてしまった」
教授「ハイジャックに後も先もないと思うんだけど」
テロリストA「何やらものすごい場所に来てしまった」
革ジャン「いてて……。何がどうなっていやがる?」
魔族A「人間界ってニギヤカだなあ」
剣使い「ど……、どうすんだこの状況!?」
銃使い「…………?」
76 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:08:28.05 ID:U049RaU2o
――13号車【展望車・後】
ドゴォォォン…!!!
ヒーロー「……。始まったか……」
ヒーロー「午後4時過ぎ、ラウンジカーでの謎の爆発から、この事件は始まる」
ヒーロー「ここまでは歴史通りだ……」
ヒーロー「だが、このままではいけない」
ヒーロー「誰かがこの歴史を変えねばならぬ!!」
77 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:08:54.94 ID:U049RaU2o
ガチャ
車掌「な、なんですか今の爆発は!?」ダッ ダッ
ウェイトレス「誰かがデッカいオナラでもしたんじゃないのー」
ウェイター「爆音くらいで、いちいち騒ぐこたぁないって。それよりオジサン、昼寝の続きがしたいなぁ」
車掌「いや、どう考えても一大事でしょう! もっと危機感持っていただけますか!?」
ヒーロー「ふふふ……。その通り!」
車掌「な!?」
ヒーロー「―――とう!!」バッ
78 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:09:21.09 ID:U049RaU2o
ヒーロー「すたっ」
車掌「な……。なんですか、あなたは!?」
ウェイトレス「全身ポリマースーツの赤色仮面だ」
ウェイター「まごうコトなき変態だな、ありゃ」
ヒーロー「私は変態さんではなァァいッ!!」ビシッ
ヒーロー「そう、私は。言うなれば、そう……。正義の味方! そう、なので、ゆえに……」
ヒーロー「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」
79 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:09:54.42 ID:U049RaU2o
車掌「―――は?」
ウェイトレス「いま正義の味方って言ったよね?」
ウェイター「正義の味方ってハイジャックするモンだっけか?」
ヒーロー「ふふふ……」
ヒーロー「私のまさかの発言に、度肝を抜かれているな……」
車掌「なんだかよくわかりませんが……。彼を縛り上げてください」
ウェイトレス&ウェイター「「はーい」」
ヒーロー「……あれ?」
80 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:10:59.52 ID:U049RaU2o
――7号車【ラウンジ】
教授「……状況を整理しよう」
キノコ頭「この列車をハイジャックしようと思ってたら、突然炎にまかれて爆発した」
剣使い「学生のお姉ちゃんの問題解いてたら、突然魔族がやってきて爆発した」
革ジャン「俺の電波を遮った不届き者を撃ったら、突然床が爆発した」
族長「この列車をハイジャックしたら、突然屋根が爆発した」
教授「一度に喋るな!!」
銃使い「…………」ガシュガシュ
81 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:11:26.91 ID:U049RaU2o
キノコ頭「……?」
キノコ頭「待て、チビッコ。お前、何を食っている?」
銃使い「たけ○この里。食べる?」
キノコ頭「……! ……クククッ、そうか」
キノコ頭「……クククッ、クハハハハッ……! 何たる巡り合わせ、何たる因果……!!」
テロリストA「リ、リーダー……? どうかしましたか?」
キノコ頭「おい、お前たち、予定変更だ。最初の標的を変更する」
キノコ頭「まずはコイツを消さねば、俺たちのハイジャックは始まらない」クルッ
82 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:11:53.33 ID:U049RaU2o
キノコ頭「売り上げという名の暴力でき○こ派を追いつめ、俺たちを壊滅に追いやった悪の菓子……」
キノコ頭「たけ○この里を滅ぼさねば、俺たちのハイジャックは始まらないのだ!!」ビシッ
剣使い「……な? んだと……?」
キノコ頭「先週の、き○こたけ○こ戦争は、俺たちき○こ派の敗北に終わった……」
キノコ頭「だがココに、き○こたけ○こ戦争を真に終わらせる、“最強の兵器”があるという!」
キノコ頭「教授からソレを奪うのが、俺たちのハイジャックの目的だ」
教授「……なるほどね。そういうコト」
革ジャン「―――ちょっと待てよ。今のハナシ、聞き捨てならねえな」
83 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:12:20.83 ID:U049RaU2o
キノコ頭「何?」
革ジャン「き○こたけ○こ戦争? とかいうのは初耳だが……」
革ジャン「―――俺はどっちかっていうと、たけ○こ派だ」
キノコ頭「―――何だと?」ピクッ
革ジャン「で、お前ら、き○こ派のうえ、俺のケータイの電波妨害まで行った……」
革ジャン「これはもう、まぎれもない悪だよな?」チャッ
キノコ頭「ほざいたな、政府の犬が……!!」チャッ
族長「―――くだらぬ」
84 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:12:47.70 ID:U049RaU2o
剣使い「……!」
族長「くだらぬ。……実にくだらぬ」
族長「人間界に召喚されてみれば、どいつもこいつも、き○この山、たけ○この里と」
族長「実にくだらぬ」
キノコ頭「何だと……? 貴様にき○この山の何がわかる!」
革ジャン「ほう。俺にたてつくなら、かかってこいよ」
族長「き○この山? たけ○この里? はっ、笑止千万――――」
族長「チョコ菓子ならアル〇ォートが至高に決まっておろうがァァァッ!!!」
85 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:13:14.95 ID:U049RaU2o
執事「アル、○ォート……っ!?」
族長「たけ○こ派のニンゲンどもは、先週我らを召喚し、き○こたけ○こ戦争への参加を要求した」
族長「だが、魔界では、アル○ォートこそ至高と決まっている。アル○ォート以外あり得ない」
族長「ゆえに、明日の発表会を潰し、アル○ォート派こそ最強と示すつもりだったが……」
教授「ええええ」
族長「これは捨て置けぬ。捨てては置けぬ。き○こ派、たけ○こ派――――」
族長「両者が同じ場にまみえたならば、アル○ォート派としての誇りを示すまで!!」
魔族A「族長、カッコイー! き○こもたけ○こもぶっ潰せ!!」
弓使い「アホだ、このヒトら」
86 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:13:42.55 ID:U049RaU2o
キノコ頭「俺たちの肩には、き○こ派の命運がかかっている。ココで退くワケにはいかない……」
革ジャン「たけ○こ派とかいうのに義理立てする気はないがよ。声がデカいぜ、お前ら……」
族長「やはりニンゲンどもには、アル○ォートの素晴らしさはわからぬか……。ならば、チカラで示すまで」
弓使い「……ちなみに、どのお菓子もおいしいジャン、というワケには、いかない……?」
キノコ頭「ナメてんのか」
革ジャン「いくワケあるか」
族長「強い奴が一番強い」
弓使い「でっすよねー」
銃使い「…………」ボリボリ
87 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:14:10.03 ID:U049RaU2o
執事「……大変なコトになりましたね、コレは」
教授「うん、大変なコトになった。私の知らないところで」
執事「お嬢様が“最強の兵器(仮)”をさっさと完成させないからですよ。このヒトたちが集まったの」
教授「ううう。責任重大だあ……」
剣使い「……あー、なんだ」ゴトッ
剣使い「き○こだ、たけ○こだ、アル○ォートだ、そんなのは知らねえが」
剣使い「魔族のオッサン。最初に仕掛けてきたのは、アンタだ」ビシッ
族長「!」
剣使い「臆せぬ勇者はかかってこい、と言ったな。ならば俺が、相手になろう」チャキ
88 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:14:36.79 ID:U049RaU2o
族長「……いいだろう、ニンゲン。き○こ派でもたけ○こ派でもない身で、よく吠えた」
族長「貴様の得物は長剣か。ならば、俺も正々堂々、シャムシールだけで応じよう」ジャキ
族長「かかってこい、ニンゲン。その器、真に勇者を名乗るに値するか、見極めてやろう」
剣使い「……あとで吠え面かくなよ、魔族。少しは俺を楽しませろ」
剣使い「…………」ジリジリ
族長「…………」ジリジリ
剣使い「……いざ」
剣使い&族長「「勝負ッ!!」」バッ
89 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:15:04.45 ID:U049RaU2o
――8号車【ロビー】
ドゴォォォン…!!!
黒コート「うわっ! なんだ、爆発!?」ガタッ
黒コート「か、仮面の男の仕業か……!?」
黒コート「ねえお姉さん、いま揺れましたよね!?」
フロント「ええ、揺れましたね。おそらく、先ほどの魔族のお客様のせいではないでしょうか?」
フロント「この列車では、よくあるコトですよ」
黒コート「よくあるコトなんだ」
90 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:15:31.62 ID:U049RaU2o
黒コート「すぐ近くだったな。7号車か……? いったい、何が起こって……」
バン!!!
黒コート「な!?」
バッ ヒュッ ドタン
剣使い「ふっ!!」キン キン キン キン
族長「なんのッ!」カン カン カン カン
ズザァ!!!
黒コート「き、斬り合い!? なんだなんだ何なんだ!!?」
91 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:15:58.91 ID:U049RaU2o
7号車で始まった剣使いの男と、青鬼族の族長の一騎討ちは、数合打ち合う内にもつれ合い、
戦いの場を7号車から隣接する8号車へと移動させる。
扉を開けると同時に、剣使いがもんどり打って8号車になだれ込む。
空中で族長のシャムシールの切っ先が剣使いの鼻をかすめるが、受け身をとって姿勢を立て直し、
長剣とシャムシールが打ち合うこと一度、二度、三度、四度。
四度目の激突は両者にとって重い衝撃になったのか、直後に両者は後方へ飛びすさる。
剣使い「ハァ、ハァ……」
族長「……、……」
剣使い「なかなか、やるじゃねぇか。魔族のオッサン」
族長「……ソレはコチラのセリフだな。ニンゲンの剣士よ」
92 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:16:29.11 ID:U049RaU2o
剣使い(……こりゃあ、なかなかヤベェ奴にケンカ売っちまったな)
剣使い(同じ体格の、同じ武器の、同じ戦法の人間の敵と戦うのとでは、ワケが違いすぎる)
剣使い(内包するパワー! 桁違いの膂力! 振り下ろされる斬撃の重さ!)
剣使い(すべてが、人間のソレを優に上回る……。俺に勝てるのか!?)
族長(このニンゲン……。生白い小僧かと思ったが、認識を改めねばなるまい)
族長(奴は間違いなく、幾多の修羅場を切り抜けた戦士だ。奴の剣技がソレを語る)
族長(自らの得物である片刃の刀の特性を知り尽くした、間合い、斬り込み、攻撃のいなし方)
族長(ただの力押しでは、永劫勝負がつかぬ。……剣一本で十分と侮った己が慢心よな)
93 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:16:56.94 ID:U049RaU2o
族長(……ならば)グッ
族長「―――ふっ!」ダッ
剣使い「くるか!!」チャキ
バッ!!
剣使い(……踏み込みが浅い! 体力が切れたか!? やはり消費するパワーは比例するのか……)
剣使い(いずれにしろ、コレが好機! 取って返せる!!)グッ
剣使い「浅いぞ! もらッ――――」
族長「…………」ニヤ
94 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:17:26.94 ID:U049RaU2o
剣使い(なッ―――!?)
静寂を破った族長の右足の踏み込みは、たしかに浅かった。
それは事実である。
だが剣使いは、それを、体力が減った故の息切れと解釈した。
―――経験の差。
人間と魔族の違いなどではない、戦士としての経験の差が、
隙を作らせたと感じた剣使いに隙を作ったのだ。
この場に族長と同等の力量を持つ戦士がいたならば、叫んだだろう。
いや。族長と同等の戦士であれば、たしかにこの場一人、居合わせた。
黒コート「違うぞ坊主! 青いのの狙いは―――、フロントのテレビだっ!!」
95 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:17:54.26 ID:U049RaU2o
――7号車【ラウンジ】
弓使い「うへぇー、行っちゃったよ……」
キノコ頭「すごい斬り合いだな。俺にはマネできそうもない」
魔族A「待ってくださいよー、族長〜」タタタッ
魔族D「あ、すんません、どうもお騒がせしましたー」タタタッ
教授「ああ、うん……。行っといで〜」
銃使い「…………」ガシュガシュ
執事「……さて、残る問題は」
96 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:18:21.31 ID:U049RaU2o
革ジャン「俺たち、ってワケか」チャッ
キノコ頭「おっと。イキがるなよ」チャッ
テロリストA&B「「…………」」チャッ チャッ
テロリストC&D「「…………」」チャッ チャッ
キノコ頭「お前は一人だが、コッチには俺の他にも四人いる」
キノコ頭「たとえお前が俺を脳天をぶち抜いたとしても、その後にお前はハチの巣というワケだ」
革ジャン「…………」
革ジャン「……だから、どうした?」
97 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:19:15.62 ID:U049RaU2o
キノコ頭「何……?」
革ジャン「なるほど、俺がお前をヘッドショットする、そこまではいい」
革ジャン「だったらその後、俺が同時にあと四人撃てばいいだけだろ?」
キノコ頭「……!」
キノコ頭「……っ。ナメた口を」
革ジャン「どうした? 手元が震えてるぜ」
革ジャン「まあ、当然だな。お前はき○こ派とかいう、一回の戦争限りの兵士だが――――」
革ジャン「こちとら叩き上げのおまわりさんだ。技術も覚悟も違うんだよ」
98 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:19:45.00 ID:U049RaU2o
教授「……ねえ、おまわりさんってあんなヤバい殺し屋みたいなのばっかりなの?」
弓使い「う、うーん。まあ、普通は違うと思うけど……」
銃使い「警察とは、何度か戦ったコトがある」
銃使い「あいつらは一兵卒。責任を組織に任せ、死を恐れず突っ込んでくる。わりと」
銃使い「でも、あの革ジャンの警察は違う」
銃使い「まるで、自分は絶対に死なないというような、余裕、姿勢……、信仰」
執事「無頼漢、というコトですか?」
銃使い「すこし違う。あいつは、自分の命のコトを、重く見ている」
執事「……なるほど」
99 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:20:12.18 ID:U049RaU2o
執事「では、あのキノコ頭の一団のほうは?」
銃使い「あれは典型的な戦闘組織。自らを一兵卒と割り切り、死を恐れない」
銃使い「仲間のためなら特攻も辞さない。……いちばん戦いたくないタイプ」
執事「いずれにしろ、並以上の戦士、というワケですね」
執事「……なんでそんなのが、よりにもよって、この列車に」ハァ
教授「だから私のせいでしょう」
弓使い「え? そーなの?」
教授「うん。あの警察官は、ただ暴れてるだけみたいだけど……」
教授「キノコ頭のほうは、私と、私の発明品を名指しした。明確に」
100 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:20:42.77 ID:U049RaU2o
弓使い「ふーん。そっかァ……」
執事「……?」
弓使い「じゃあ、キノコ頭と革ジャンが戦ったとして、革ジャンが勝てばそれで良し」
弓使い「だけど。もしキノコ頭が勝ったら、私たちは貴女のせいで危険にさらされる」
教授「そうだね」
弓使い「じゃあ私たちは、貴女をキノコ頭に売り飛ばすのが最適解、ってワケだ?」
執事「……! 貴様……」バッ
弓使い「……ふふふ。イイ顔するね。イケメンだよ、執事くん」
101 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:21:09.87 ID:U049RaU2o
弓使い「ねえ、どうする? 執事くん、お嬢様」
弓使い「もしココで、私たちが君たちを裏切って、斬りかかってきたとしたら」
弓使い「まあ、何の契約もしてないし、裏切りでも何でもないんだけどね」
教授「…………」
執事「……俺は、この命を引き換えにしてでも、お嬢様を守る」
教授「! ……っ。バカなやつ」
執事「バカで結構です。それが執事たる、俺の役目ですから」
弓使い「うん、うん。自己犠牲の精神、たいへん結構」
弓使い「私たちがいちばん戦いたくないタイプだ」
102 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:21:37.09 ID:U049RaU2o
弓使い「……で、お嬢様のほうは?」
教授「教授、でいい」
弓使い「そう。教授は、私たちが斬りかかってきたとしたら、どうする?」
教授「…………」
教授「戦いはコイツに任せて物陰に隠れる」
執事「……!」
教授「だって私じゃこのヒトたちに勝てないけど、でも死にたくないし」
執事「お嬢様……。けっこう薄情ですね」
103 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:22:03.33 ID:U049RaU2o
弓使い「…………」
弓使い「……ぷっ」
弓使い「あっはっはっはっは! 面白い、面白いねお嬢様、いやさ教授!!」バンバン
教授「ぐえ。痛い……」
銃使い「……姐さんって、思ってもいないコト言うの好きだよね」
弓使い「ああ、やっぱりわかってた? やっぱお芝居ヘタだなー、私!!」
執事「……え?」
弓使い「ゴメン! 今のはちょっとしたジョーク! 裏切るつもりとか無いから、忘れてね!」
104 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:22:30.72 ID:U049RaU2o
教授「笑えないジョークだなあ」
執事「ホントですよ……。この状況で、からかうのはやめてください」
弓使い「ゴメン、ほんとゴメンってば。ふふ」
弓使い「でも、物陰に隠れる、か……。良い判断だ」
弓使い「いちばんバカな雇い主は、自分から敵に突っ込む奴。守れって言っといて、そりゃないよね」
弓使い「戦場から逃げる奴は、まあ普通かな。逃げた先まで守れる保障は無いけれど」
弓使い「初めから高みの見物は、妥当だけど……。あんまし、気分良くないよね」
教授「え? って、コトは……」
弓使い「ええ。戦場だって、ビジネスの場所。私たちが貴女たちのコト、守ってあげようか?」
105 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:22:58.17 ID:U049RaU2o
教授「……!」
執事「……金ならあります。ぜひ、お願いしたい」
弓使い「オッケー! そうこなくっちゃ。羽振りも心構えも良い雇い主の下で働くのは、気分が良い」
弓使い「そうと決まれば、あのキノコ頭と革ジャン……。まとめてやっつけちゃおうか?」
銃使い「…………」コク
執事「……あの!」
弓使い「ん? なあに?」
執事「戦闘論理に詳しく、金で雇われて戦う……。貴女たちはいったい、何者なんですか?」
弓使い「……通りすがりの、フリーターです☆」
106 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:23:29.13 ID:U049RaU2o
キノコ頭「…………」ジリジリ
革ジャン「…………」ジリジリ
弓使い「いい……? 銃ちゃん。剣ちゃんがいないから、前衛は私に任せて」
弓使い「奴らの銃弾は、剣を飛ばして弾く。だから、安心して狙撃に専念して」
銃使い「わかった。……死なないで」
弓使い「わかってるって。……さあ、ちょいとデートとシャレ込もうか!!」
グッ
マスター「―――そこまでだ」
107 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:23:56.42 ID:U049RaU2o
キノコ頭「……!」
革ジャン「お前……。ここの、ラウンジのマスター、か……?」
マスター「いかにも」ズゥッ
マスター「―――ここは乗客の皆様のための、憩いの場」
マスター「―――お引き取り願えますかな」
銃使い「……!」ビクッ
弓使い「……ヤバいヤバいヤバい。何、何なの、あのおじいさん……? 尋常じゃない威圧感だ」
弓使い「あれ、半身、キカイか……? ちょっとちょっと右腕、なんで光ってるのかな」
108 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:24:23.56 ID:U049RaU2o
革ジャン「―――イヤだね、……と言ったら?」
マスター「むろん」グッ
マスター「お相手するしかなくなりますな」
革ジャン「…………」チャッ
キノコ頭「……ふん。引き揚げるぞ」
革ジャン「……! ……腰抜けが」
キノコ頭「腰抜けで結構。俺たちはこの列車に、死にに来たワケじゃないんでな。おい、行くぞ」
テロリストA「ま! 待ってくださいリーダー……!」
109 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:24:50.40 ID:U049RaU2o
マスター「そうですか。では、ワタクシもこれにて」
革ジャン「おい! 逃げるのか……!!」
マスター「――――」ギン
革ジャン「……!」
マスター「―――ここは乗客の皆様のための、憩いの場」
マスター「……それだけですので」
革ジャン「ちっ。……興醒めだ。じゃあ、あばよ。皆々様がた」テクテク
教授「……こ、これは……。助かった、のかな?」
110 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:25:25.06 ID:U049RaU2o
――8号車【ロビー】
黒コート「違うぞ坊主! 青いのの狙いは―――、フロントのテレビだっ!!」
剣使い「何!? ――――」
族長「ご名答! だが、遅い!!」ブンッ
族長は右足を踏み切った直後、左足で床を蹴り飛ばし、
左へ直角に跳ねて剣使いの突進をかわす。
そして、フロントに備え付けているテレビをシャムシールですくい上げるように剣使いに投擲し、
族長自身もまた、左腕を支点に、フロントを蹴り飛ばして剣使いに上段から襲いかかる。
剣使いの視界をテレビで奪いつつ、反動の勢いを利用する、族長の決死の一撃であった。
111 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:25:52.39 ID:U049RaU2o
剣使い(テレビがジャマだ! コレが狙いか……!)
剣使い「ぐッ。だが、なら……」
剣使い「テレビごと斬り飛ばすまでだァァッ!!」
族長「何!?」
剣使いの、長剣の斬り上げによる、裂帛の一撃。
次の瞬間、テレビはバターのように切り裂かれ、真二つの板片と化す。
そして、切り裂いたテレビの向こう側に現れたのは、
空中より斬り下げの一撃を放たんとする族長。
刹那。白き雷鳴と、青き紅蓮が、入り混じった。
112 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:26:22.10 ID:U049RaU2o
剣使い「ぐぁッ!!」ビリッ
族長「むぅ……ッ!」ビリッ
カーン カーン
ロビーに響いたのは、乾いた二つの音。
お互いに予知しなかった、真っ向からの剣戟の激突により、
金属を伝えて流れる電流が両者の体をかけ巡る。
その衝撃が、互いの剣を、互いの後方へと弾き飛ばした。
剣使い「……ハァ、ハァ」
族長「恐れ入ったよ、小僧。……いや、白銀の剣士よ」
113 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:26:50.40 ID:U049RaU2o
族長「ニンゲンにも貴様ほどの、戦士がいるとはな」
剣使い「へぇ。そりゃあ、お褒めに預かり光栄だな」
テクテク
革ジャン「……ちっ。おい、センパイ! 客室に戻るぞ!」
黒コート「お、おい革ジャン野郎!? お前、なんでそんなボロボロで……」
革ジャン「うるせえ! いいから休む! 俺は疲れた!」
族長「…………」チラッ
革ジャン「…………」キッ
114 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:27:16.64 ID:U049RaU2o
族長「……どうやら、アチラは終わったようだな」
剣使い「ああ。俺たちも、ここまでにしておくか」
族長「―――待て!」
剣使い「……?」
族長「まずは此度の勝負、感謝する。族長の座に収まってから忘れて久しい、血湧き肉躍る戦いだった」
族長「だがこの決着は、必ずつけたい。次、貴様と俺が相見えた時……。列車を降りる、その前に」
剣使い「……ああ、いいぜ。その約束、違えるなよ」
族長「感謝する」
115 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:27:43.98 ID:U049RaU2o
――1号車【展望車・前】 運転室
ドゴォォォン…!!!
副運転士「うわっ……!?」グラッ
白ドレス「……もー、はじまっている」
運転士長「むぅ……ッ!」ガクッ
副運転士「爆発音、振動……! 列車の後ろのほうから!?」
運転士長「女……! コレは、貴様の仕業か!?」
白ドレス「ノン、ノン! 私が爆発なんて起こすワケないじゃない?」
116 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:28:13.32 ID:U049RaU2o
白ドレス「だから、さっきも言ったでしょう?」
白ドレス「―――これは、この列車の運命だと」
運転士長「運命……」
副運転士「……お、お姉さん! 貴女はいったい何者なんですか? この爆発を止める方法は!?」
白ドレス「ゴメン、その質問は二つともNGだよガール。もっと具体的な質問内容なら考えよう」
副運転士「え、えぇ……。な、なら。乗っ取られ、爆発、大炎上するのが、この列車の運命なら……」
副運転士「お姉さんは、どうしてソレを私たちに知らせに来たんですか!?」
白ドレス「…………」
117 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:28:42.46 ID:U049RaU2o
白ドレス「……そうだね。一つは、死神との契約によるモノだ」
白ドレス「私は死神に、君たちに運命を伝えるよう差し向けられてしまった」
副運転士「死神……?」
白ドレス「ああモチロン、字義通りの死神じゃないよ? 死神みたいな奴、って意味だね」
運転士長「また死神か。私には、貴様がこの列車にとっての死神に思えるがな……」
白ドレス「それは解釈の違いってやつだね! 死神はたしかに死ある場所に現れる」
白ドレス「だけど、死神が現れるから死ぬのと、死ぬから死神が現れるのでは、大違いでしょう?」
副運転士「……?」
白ドレス「まあ、私は後者みたいに、運命をお知らせしに来ただけですよってコト」
118 :
◆9xXTDlz//k
[saga]:2017/12/24(日) 18:29:12.36 ID:U049RaU2o
白ドレス「そして、もう一つは……。私個人の善意によるモノだ」
白ドレス「君もさ、バッドエンドは嫌でしょう?」
白ドレス「たくさんのヒトが死ぬ! みたいなさ」
副運転士「……アタリマエです! 乗客の皆さんが危険にさらされる、というのなら!」
副運転士「命を懸けてでも、私が皆さんを守ります!!」
白ドレス「うん、良い心意気だ! 君みたいな善意のカタマリに、人々は救われるんだよ!」
運転士長「善意、か……。その言葉は本心としても、その思惑の裏に何がある?」
白ドレス「こちらは大人らしく老獪だね。でも、それを証明する手段は無いからノーコメントとしよう」
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