テロリスト「「「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」」」

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171 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:21:49.11 ID:+u7TU514o


副運転士「こ、この列車、何度も魔族に襲撃されているんですか!?」

運転士長「だから言ったろう。窓枠の弾痕も、天井の刀傷も、すべてホンモノだ」

車掌「私も最初に赴任した時は驚きましたよ。でも、おかげで強くなれました」

副運転士「そんなボディビルディングみたいな」


教授「ふーん。でも、なんで魔族が動力源を狙うの?」

運転士長「それは、この列車の動力源が、強力な魔力塊でもあるからだ」

運転士長「実はドライ・ブラー号は、魔力で動いている……。ゆえに停車もせず本州を縦断できる」

副運転士「し、知らなかった……」

運転士長「そして魔力塊のコトは魔界に広く知られているようでな。年一くらいで撃退するのだよ」
172 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:22:45.14 ID:+u7TU514o


車掌「そういえば貴女は今年度からの着任でしたね。最後に魔族と戦ったのは、前年度末の春か……」

車掌「あの時は、桜が舞う空を闇で覆い尽くすほどの死神族に襲われて、もうダメかと思いましたよ」

運転士長「ああ。だが、あわやというところで、ラウンジのマスターが敵の首魁を倒し……」

運転士長「ザコどもをちぎっては投げ。料理長、フロント、ウェイター、ウェイトレスたちもよく戦ってくれた」

副運転士「み、みんな武闘派だったんですか……。異次元に来てしまったようです」

執事「やっぱりマスターさんが最強だったんですね。良かった。あれ以上がいなくて」


弓使い「……ちょっと待って。ハナシを戻すけどさ。なら」

剣使い「動力源の前で張ってりゃ、魔族はいずれ現れる、ってコトだな!?」パシッ

銃使い「…………」ボリボリ
173 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:23:11.60 ID:+u7TU514o


運転士長「そういうコトになるな。普段から厳重に施錠しているから、そうカンタンには奪われないと思うが」

車掌「善は急げ、ですね。では、お三方は12号車を守る、というコトでいいですか?」

剣使い「おうとも!」


弓使い「教授も私たちと一緒に来るー?」

教授「いや、やめておく。魔族に加えてキノコ頭たちまで相手にしたら、さすがに不利でしょう」

執事「お嬢様は俺が守るので、ご安心を。ですが、いざという時は、助力をお願いします」

銃使い「任せて」コク


車掌「では、言ってまいります。皆さんも、お気を付けて」

副運転士「車掌さんたちも頑張ってくださーい!」
174 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:23:38.20 ID:+u7TU514o


バタン

教授「……ここも静かになってきたね」

運転士長「ああ。残っているのは、四人か……」

執事「さすがに出来るコトが限られますね。何をしましょうか?」

副運転士「うーん、私は戦えないしなあ……」


教授「ていうかお菓子が元でここまで争えるってどういう状況なんだろうね」

執事「それこの事件に関わってるヒトのほぼ全員が一度は思ったコトでしょうね」

運転士長「しかし、そのホンシツがわからなければ、“最強の兵器(仮)”とやらは完成しないのでは?」

教授「む。痛いところを突かれた」
175 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:24:04.07 ID:+u7TU514o


教授「ホンシツ……、ホンシツかぁ〜……」

教授「いったい何故ヒトはお菓子が原因で争うのか……」

教授「き○この山や、アル○ォートが何をしたというのか……」

副運転士「そうですよねえ……」

執事「何もしてないハズなんですけどねえ」

運転士長「本来、食間に食べるためだけのお菓子だからな」

副運転士「…………」


副運転士「あっ、そうだ!!」スクッ

運転士長「……? どうしたんだ?」
176 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:24:58.63 ID:+u7TU514o


副運転士「そうですよ、士長!」

副運転士「お菓子は本来、おやつの時間に食べて幸せになるためだけの食べ物なんです!」

運転士長「お、おお。そうだな」


副運転士「だから、夕食が終わった食堂車のヒトたちに、お菓子を配ってあげましょう!!」

副運転士「そしたら、それを見た、き○こ派のヒトたちや、アル○ォート派のヒトたちも……」

副運転士「お菓子の本来の役割を思い出して、改心してくれるかもしれませんよ!?」

執事「は、はぁ……」

教授「そんなムチャな。非現実的だ」

運転士長「まあ、車内販売や、引き揚げたロビーの商品には、お菓子もある。やってみるか」
177 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:25:24.57 ID:+u7TU514o


――6号車【食堂車】


副運転士「はい、どーぞ! き○この山です!」カタッ

乗客A「あ、ありがとう」


執事「列車からのサービスです。たけ○この里です」サッ

乗客B「おや、ありがとう。君、イケメンね」


教授「アル○ォートだよ。良かったら食べるといい」ポスッ

乗客C「おねえちゃん、ありがとう!」

教授「……どういたしまして」
178 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:26:05.63 ID:+u7TU514o


料理長「……あの、士長。いったい何をしているんですか?」

運転士長「う、うむ……。実は、今回の騒動の原因は、き○こたけ○こ戦争でな」

運転士長「だが、だからこそ、お菓子のホンシツを思い出そう、というワケらしい」

魔王(ど、どういうコトなんだ……?)


料理長「なるほど。たしかに、食べ物はヒトを笑顔にしますからね。彼女も目の付け所が良い」

魔王(どういうコトなんだ……)


副運転士「はい、どーぞ! たけ○この里です!」カタッ

仮面の男「ありがとう。とても麗しい女性」ニコ
179 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:26:32.78 ID:+u7TU514o


副運転士「……?」

副運転士(仮面被ってて表情がわからないな……)


仮面の男「ん……?」ピクッ


教授「さて、私の分は配り終わったかな……」

仮面の男「―――君!!」ダッ

教授「え? な、何!?」

仮面の男「とても、とても、とても麗しい女性……。僕は君に一目惚れだ。良ければ名前を教えてほしい」

教授「は? ……な、名乗るほどの者じゃない。だが、それでも呼びたければ教授、と呼ぶと良い」
180 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:26:59.22 ID:+u7TU514o


仮面の男「わかった! それでも呼びたければ教授さん! 僕は君に一目惚れだ!!」

仮面の男「僕は君と時空の彼方まで飛んで行きたい……」

仮面の男「それでも呼びたければ教授さん! 僕と結婚してください!!」

教授「お断りします。それと、それでも呼びたければ、は余計」

仮面の男「ガーン!!!」


副運転士「し、執事さん。教授さん、仮面のヒトに絡まれてますよ」

執事「はあ。まあ、彼女もこれから色んなヒトと出会うだろうから、あしらい方を覚えるのも修行ですよ」

執事「……それにしても、仮面か。まあ、赤色じゃないから別人かな」

副運転士「そういえば。最近は、仮面被るのが、はやってるんですかね」
181 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:27:25.75 ID:+u7TU514o


――6号車【食堂車】 屋根の上


ヒーロー「あ、あれは……! 仮面の男!!」

小型メカ「さっき食堂車に歩いていったのは、見間違いじゃありませんでしたか。黒コートたちは何を……」


小型メカ「とはいえ、私たちには関係ないので、無視しても差し支えありませんが……」

ヒーロー「何を言っている! 言い寄られている女性が困っているだろう!」

ヒーロー「貴様、それでも正義の味方のハシクレか!?」


小型メカ「私は正義の味方になった覚えはないのですが」

ヒーロー「そうと決まれば、とーう!!」ブンッ
182 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:28:18.66 ID:+u7TU514o


小型メカ「ちょっ―――、待っ――――」                           「 7  i77
                                                __| /   V/
                                               └ ┐ 二 ヽ
      .ヽ  ...l .l       ,!   \   l三L  .r|    iゞ   .!  ./  ./ i′.   | /  | |.     ., -'''″
-、、     ヽ  " ヽ.      !     \  .!三l /│  ./    │ ./   ./ /     .|/   | |. _,、,/
  `''-..、   .!'、、  .\    /         ヽ.,!三三三} ,i、/     l‐l゙  ,ノン゛      ,,/,..-|/./
、    `''、, .l  \   ヽ  │           l゙三三三| / . l′   ./ .! シ´       .に> //
. ゙''-、    .\.l   .`'-、.ヽ. !        /.三三三|/  .l    ,l lン゛      . / に>  /
   `''-、.   ..゙!、     ゙ゝゝ         /三三三三 !、  l   ./ | ."     . /    ./ /      ... -ー''',゙
      . l    ヽ      ト、、    /三三三三三 l. !!  ./ ;;l゙     .,,./      .\/_「 |_./ _..-'"´
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^'''" _ /    ./,./    .,/-l三三三/  _,!__/三三三三三三三三三゙'''ー、, `'''ー ..__三三゙'-、
._..-'"     ,/;i./ .ー ̄^゙'、.,..-''゙三-''7;i,゙_‐´ .,./ 三三三三三 ! ヽ三三三三三゙ゝ、__二ュ三三ヽ、
     ._.. -゙‐─^゙~゙''ー ../゙'''ク´   /三三゙'゙三三三三三三l′ |三三三三三三,____三三三、三三`'、
__‐''"            /     l三三三三三三 /.l三三ヽ .!三三三三 |     ̄ !.、 `'''ーxy..ミll― .__
               /     l丶;.,./ 三-、三/  .l三三三三、三三三|      .| .!     `'-,,ヽ、
                /     ./ /  / ゛  ..l′   .l三三三./ \三三|      .| .|       `'ヽ、
_,,.. -‐''''^゙ ̄ー―┐       ,/'"  /      l,    .ー!'、.;;ノ    `''''、;;.!     │.ヽ            `'-、、
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     ,/゛ .`./     /     ./       / .!     .!   ヽ       .ヽ      ヽ  .|'-
183 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:28:45.03 ID:+u7TU514o


副運転士「えっ……!?」クルッ

執事「運転士さん、危ない!!」バッ


魔王(っ! 乗務員の女に窓ガラスの破片が……!)


魔王「―――間に合ええええええええええええ!!!!!!」ヴン


運転士長「……っ!? 貴様、魔族か!?」

運転士長「よせ! 常人に向かってそんなバカげた量の魔力を出すんじゃない!!」

魔王「うるせえ言ってる場合か!!」

魔王「うおおおおおおおおおおおおッ!!!」ヴヴヴヴヴン
184 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:29:11.94 ID:+u7TU514o


教授「……!? 運転士さんの、周りの時間が……」

執事「止まっている!?」

仮面の男「これが魔族の芸当か……!」


魔王「長くは保たんそこの兄ちゃん女を引っ張れええええええ!!!」

執事「え? あ、ハイ運転士さん、引っ張りますよぉぉぉっ!!!」

副運転士「え―――――、一―――――体――――――」

グッ!!!


執事「うおおおおおおおおおおおおッ!!!」
185 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:29:45.71 ID:+u7TU514o


魔王「もう無理!!!」パッ


ガッシャァァァァァァン!!!!!!


執事「うあッ!」ドタッ

副運転士「っ――――」バタッ


教授「バカ執事!! 大丈夫!?」

執事「え、ええ……。なんとか」グッ

運転士長「おい! 大丈夫かね!?」

副運転士「――――」
186 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:30:11.70 ID:+u7TU514o


ヒーロー「やいやいやいそこの仮面の男ォォ!! 貴様、嫌がる女性に言い寄っていたな!?」ビシィィ

仮面の男「何のコトかな……。嫌がる女性に言い寄る、とは」


仮面の男「既に私と彼女は婚約済み。なのに嫌がるとは、どういうコトか」

ヒーロー「飛躍しすぎだろオイぃぃぃ!!? どう見たってガーンってジェスチャーしてたろうが!!」


仮面の男「それは目の錯覚、というモノ……。ああ君、それともアレかな」

仮面の男「その鬱陶しそうな仮面をつけているから、目の前の物事が見えていないのでは?」

ヒーロー「仮面ならお前だってつけてるだろうがァァ!!!」

仮面の男「男は、誰だって……。ココロに仮面をつけているのサ」
187 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:31:04.39 ID:+u7TU514o


――5号車【スイート】 屋根の上


ガシャーン

魔王「―――間に合ええええええええええええ!!!!!!」ヴン

ヴヴヴヴヴン

ガッシャァァァァァァン!!!!!!



桜色の女「お……? これは、モメゴトの気配!!」

桜色の女「今ならコッソリ厨房に忍び込んでもバレない!」

桜色の女「やはり果報は寝て待て! 今こそ好機でござる!」
188 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:31:30.50 ID:+u7TU514o


――6号車【食堂車】


教授「へ。変態仮面と変態仮面が、言い争っている……」

執事「お嬢様、ああいう状況がお好きなのですか?」

教授「ンなワケないでしょう。それよりも、運転士さんの容態は……」


運転士長「……おい。こ、これは……」

魔王「ああ……、うん。うん。これは、これはとてもマズいコトになった」

副運転士「」


魔王「死んでいる。完全に」
189 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/25(月) 18:31:59.48 ID:+u7TU514o
第三章「夜中・前」は以上になります。
夜中の読みはヤチュウです。

第四章は、明日12/26(火)の18時ごろ開始の予定です。
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/12/25(月) 19:20:01.62 ID:SzY9gtvB0
井坂幸太郎のマリアビートルみたい
そんで死人が出ねえ、


と思ってたら死人が出て草
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/26(火) 02:10:40.43 ID:2J/JarNSO
列車なのにハイ
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/26(火) 04:22:22.47 ID:XYqJzit6o
楽しそうでとてもよい
193 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:01:11.58 ID:S4IgpjZso
普通の人間は撃たれたり爆発すれば死にます。

それでは、第四章「夜中・後」を開始します。
60レスほどの予定です。
194 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:02:15.49 ID:S4IgpjZso


――冥界


副運転士「……う、う〜ん」ムクッ

副運転士「あ、あれ?」


副運転士「こ、ここは……?」


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195 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:02:55.46 ID:S4IgpjZso


副運転士「う、薄暗い森? 私、なんでこんなところにいるんだろう?」

副運転士「さっきまで、たしか私、ドライ・ブラー号に乗ってたよね……」


副運転士「そう。食堂車の皆さんに、お菓子を配ってて……」

副運転士「教授さんが、仮面のヒトに絡まれてて……」

副運転士「そしたら、突然窓ガラスが爆発して……」

副運転士「…………」


副運転士「……え? どういうコト? 理解できない」


冥王「―――そら、無理もありまへんなぁ」ザッ
196 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:03:23.31 ID:S4IgpjZso


副運転士「え!?」クルッ


冥王「おはようさん。よう眠れましたか?」

副運転士「え。私、寝てました?」

冥王「んー? いや、わても、いま見つけたばっかりやから知らんけど」

副運転士「そ、そうなんですか。ううん。仕事中なのに気が抜けてるなぁ、私……」


冥王「大丈夫でっか? 立てますか? お手をどうぞ」スッ

副運転士「……わぁっ、白い手。しかもイケメン」ギュッ

冥王「せやろか? ははは。たいしたことないですよ」グッ
197 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:03:50.86 ID:S4IgpjZso


副運転士「あ、ありがとうございます。あの、お兄さんは、どちら様で……?」

冥王「わてですか?」


冥王「わては、この冥界をあずからせてもろてる、冥王の立場におるもんです」


副運転士「へえ。この冥界の、冥王さん……」

副運転士「……?」

冥王「ははは。ようわからん、いう顔ですなぁ」


冥王「他の死神たちも、全然来おへんし。誰か来るまで、お話でもしますか?」

副運転士「え、ええ。ゼヒお願いします」
198 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:04:20.77 ID:S4IgpjZso


冥王「うーん。いうても、どっから説明したもんか……」

副運転士「あ、あの。じゃあ、まず、ココはどこなんですか?」

冥王「ここ? ああ、その質問ならかんたんやな」


冥王「ここは冥界。体を離れた魂が訪れる、死後の世界いうやつです」


副運転士「え。し、死後の世界……?」

副運転士「じゃ、じゃあ私、死んじゃったんですか!!?」

冥王「たぶん、そうなんやろなあ……」

副運転士「たぶんって!!」
199 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:04:48.67 ID:S4IgpjZso


冥王「でも、なんもないのに死なへんやろ。なんか心当たりあらへん?」

副運転士「こ、心当たり、ですか……」


副運転士「うーん。そういえば、さっき、目の前で窓ガラスが爆発したんですけど……」

冥王「ははあ。ガラスの破片の刺さりどころが悪ぅて死んだ、いうわけか」

副運転士「いやいやいや! ガラス程度じゃ即死したりしませんよ!!」

冥王「そうかなあ。生き物って、案外かんたんに死ぬもんやで?」


冥王「せや、ほならクイズや。今の時分、特に年始の頃は日本人よう死ぬんやけど、なんでやと思う?」

副運転士「え? 日本人限定ですか? なんだか不謹慎クイズですね……」
200 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:05:15.14 ID:S4IgpjZso


副運転士「そうですねえ。寒くて死ぬヒトが多い、とか?」

冥王「そんなん日本人どころか、人間でも他の生き物でも、地球の半分はせやろ」

冥王「冬眠したまま出てこおへん虫さんとか動物とか人間とか、ようおるで」

副運転士「う。生々しいコトを言わないでください……」


副運転士「うーん、難しいなあ。何かヒント、ありませんか?」

冥王「せやなあ。まあうまいけど、なんであんな危険なもん、よう噛まんと食うんかわからんわ」

副運転士「……あっ! もしかして、おモチですか!? お雑煮の!」

冥王「正解。正月は、モチ一気に食うてポックリ逝きよる年寄り多いから、注意したってな」

副運転士「は、はい。喋りながらだと、どうしても咀嚼がおろそかになるんですよね……」
201 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:05:43.19 ID:S4IgpjZso


副運転士「……って、いったい何のクイズしてるんですか」

冥王「ははは。ほな、話続けよか」


冥王「ここは冥界。生き物の魂いうんは、生を終えたら死後、天界にいくんやけど……」

冥王「冥界は、外界から天界に向かう時に通る、死後の廊下みたいなもんやな」


副運転士「し、死後の廊下……。それって、三途の川みたいなモノですか?」

冥王「ええ。ありますえ、三途の川。おおむね日本の人は皆、そう言わはりますな」


冥王「ちなみに三途の川の渡り賃は、六文銭やのうても、三百円くらいでええですよ?」

副運転士「意外とリーズナブルだ」
202 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:06:10.15 ID:S4IgpjZso


冥王「でも最近は、舟渡すより、でかい橋通したほうがええんちゃうか、いう意見も出ててなぁ……」

冥王「船頭の仕事がなんや、公共事業や、利権やなんやで揉めてるんやわ」

副運転士「へえ。冥界も大変なんですね……」


冥王「さて。しかし、魂いうのは、全部が全部すなおに冥界には来てくれまへん」

冥王「でも来てくれな、わてらとしては困る。そこで、魂の運搬を任せてんのが……」

副運転士「……! もしかして、死神、とか……?」

冥王「そう。魔界の死神族。魂を運ぶ力を持った、特別な一族」

副運転士「や、やっぱり。さっきの前年度末の春のハナシ、本当だったんだ……」

冥王「やっぱ死に関わるせいで、魔界でも忌まれますなぁ。彼らが悪いわけや、ないんですが」
203 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:06:38.16 ID:S4IgpjZso


冥王「あれ、今の口ぶり……。死神族のこと、知ったはるんですか?」

副運転士「え、ええ。直接関わった、ワケじゃないですが……」

副運転士「私の働いてる列車が、今年の春に、死神の大群と戦ったらしいんです」

冥王「ははあ。すると、あんさんが……」


冥王「お嬢さん。本州縦断特急、ドライ・ブラー号の乗務員さんか?」

副運転士「え! 私たちの列車をご存知なんですか!?」

冥王「ええ、そらもう。懐かしいなあ。それが今回、冥王のわてが出張ってきた理由なもんでして」


冥王「―――今日の夜。乗員乗客が全員死ぬ、ドライ・ブラー号の大量の魂をきちんと回収するために」
204 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:07:05.20 ID:S4IgpjZso


――6号車【食堂車】


運転士長「……おい。こ、これは……」

魔王「ああ……、うん。うん。これは、これはとてもマズいコトになった」

副運転士「」


魔王「死んでいる。完全に」


執事「運転士さん!! 大丈夫ですか!?」ダッ

教授「士長さん! 運転士さんのケガは? まあ、悪くても切り傷くらいだろうけど……」

魔王「すまない」
205 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:07:32.18 ID:S4IgpjZso


魔王「死んでいる。完全に」


教授「は……?」

執事「い、いや。ガラスの切り傷くらいで、ヒトはなかなか死なないでしょう……」

執事「というか貴方は誰ですか? 給仕の方!!」


魔王「―――フ。よくぞ聞いてくれた!」バッ

執事「マント!? いったいどこから」

魔王「我こそは、あまねく魔性を統べる者。預かる座席は碧夕王。そう、わかりやすく言えば――――」

料理長「ああ、彼はうちの食堂車のバイトだよ」
206 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:08:00.51 ID:S4IgpjZso


魔王「そう! わかりやすく言えば、この食堂車のバイト!!」


魔王「って違うから!! この食堂車でバイトしてるのは成り行きですから!」

料理長「え、違うの? そうだったのか……。まあ、ちゃんとシゴトしてくれれば問題ないよ」

魔王「それじゃあ結局バイトじゃないですかッ!!」


教授「え? え? いったいどういうコトなんだ……」

執事「わかりません。士長さん、貴方はどう思われ――――」


運転士長「ホンモノだ」

執事「えぇ!?」
207 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:08:27.92 ID:S4IgpjZso


運転士長「……あまねく魔性を統べる者。誉れ高き、七魔公王がその一人」

運転士長「預かる座席は碧夕王。最も多くの魔族の長。……そうだな?」


運転士長「―――魔王よ」


教授「ま……!」

執事「ま、魔王!? そ、それはもしや、読んで字のごとく……」

運転士長「ああ。さっきも現れたという魔族、その王だ」


魔王「お、おお! やっとハナシのわかる奴が現れたな! そう、我こそは――――」

ウェイトレス「うわああああ!!!」
208 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:08:54.85 ID:S4IgpjZso


魔王「ええもう今度は何!?」

料理長「ウェイトレスちゃん! どうした!?」


ウェイトレス「ど、どろぼー!!」

運転士長「ドロボウだと!?」

ウェイター「大変だ、料理長! 厨房に、料理を取りに戻ったら……」

ウェイター「料理が着物姿の女に全部食われちまってたんだ!!」

料理長「なんだって!?」


桜色の女「ふうー。さすがは豪華旅客列車の料理。今まで食べた中でも、なかなか美味でござった」シーハー
209 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:09:21.51 ID:S4IgpjZso


ウェイター「あ、アイツだ!!」

料理長「なんだと!? 死ね!」バッ


__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ̄ ̄―‐―― ___ ̄ ̄―――  ___―― ̄ ̄___ ̄―==
―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄―  ――――    ==  ̄―― ̄ ̄___ ̄―===━
              f>::..、,r=、
. ィ┐   r=、   人ニ三//゙"'''ー- _                ,.イ ., =7
/:エ!   {三\    >/∧゙丶、::::::::::::::::゙"'''ー- _          | |//
i王l    ∨三:゙'┐    ̄ \ ``*::、::::::::::::::::::::::::: ̄≠ァ     | / , =7   ,イ二.7
王l     ∨三/゙ヽ、     ゙丶、 __ ゙゙"''''''''''''''''"´,..<       | |//   _/ム_   ,イ,イ ,イ
ィへ     }三/ヽ::::`ヽ、        ̄ ''''''' "´            |_,/    '──‐'   レレ //
,:イ´        ̄\ ヽ::::::::`ヽ、                                       /'
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桜色の女「な!? どぅおっわったったったぁぁぁ!!!」サッ

ドズッ ヴウウ…ン
210 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:09:48.67 ID:S4IgpjZso


料理長「ちっ。仕留め損ねたか……」

桜色の女「な、こ、こ、殺す気でござるか!? ていうか今どっからナイフ出したでござるか!」

桜色の女「……って、刃先にチーズがついてる。これ、料理包丁でござったか!!」


料理長「―――つまみ食い、死すべし。食い逃げ、死すべし。食後のシーハー、死すべし……」

料理長「貴様は今、この料理長の三つの禁忌をすべて破った!! もはや生かしてはおけぬ!!」

料理長「ウェイターさん、ウェイトレスちゃん! 何としても、この女を殺せ!!」

料理長「なます切りにして明日のブレックファーストメニューにしてやる!!」


桜色の女「言ってるコトがシャレにならないでござるよぉぉぉ!!?」
211 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:10:18.55 ID:S4IgpjZso


桜色の女「ひいぃぃ。くわばら、くわばら。こんな危険地帯からは、さっさと退散するでござる……」

ガチャッ

桜色の女「ぬゴッ!!」ゴツン


桜色の女「な、いったい、な……。今度は、ひとりでに扉が開いて……」


革ジャン「あー、くそ。2〜5号車はカラブリだったな……」

革ジャン「全客室で聞き込みしたが、怪しい乗客は、部屋で白い粉吸ってた白ドレスの女くらいで……」

黒コート「あ、ああ。だが彼女の身元に、不審な部分は無い。どこからどう見ても普通の乗客だった」


革ジャン「やれやれ。仕方ない、俺たちも食堂車で腹ごしらえを……。ん?」
212 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:10:48.13 ID:S4IgpjZso


ヒーロー「だいたいお前の仮面、アクシュミだよなぁぁ!! 鉄! ただの、鉄だし!!」

仮面の男「ふふふ……。この仮面は実は、僕専用の、オーダーメイド品なのだよ」

仮面の男「このツヤ、この感触……。わかるかい? たしかに素材は鉄だが、見た目ほど重くはない」


仮面の男「しかしなんだね君、その安っぽい、プラスチックの仮面は……」

仮面の男「まるで百均の仮面だ。あれかね君、百均ヒーローかね?」

ヒーロー「ああそうだ! この仮面は百均だ! 庶民の味方の百均は正義の味方だぁぁぁ!!」


革ジャン「あれは、俺たちが追っている指名手配犯の、仮面の男!!」

黒コート「―――が、二人!!?」
213 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:11:16.35 ID:S4IgpjZso


黒コート「ほ、ホンモノはどっちだ……?」

黒コート「追っていると言っても、仮面の男という情報しか貰ってないからなぁ……」

黒コート「せめて鉄の仮面か、赤の仮面か、わかればいいんだが……」

黒コート「さっきの乗務員のハナシじゃ赤色だったってコトだし、赤いほうか?」


革ジャン「……センパイ。何を迷う必要がある?」ジャキ

黒コート「は?」

革ジャン「よく考えてみろよ。平和な国の、平和な時代の列車で、仮面なんて被ってるんだぜ……」


革ジャン「どっちも不審者に決まってるだろうがああああああ!!!」ダッ
214 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:11:46.19 ID:S4IgpjZso


黒コート「待てコラ革ジャン!!!」バン!!!

革ジャン「ぎゃあ!!!」ドサッ


革ジャン「な、何しやがるんだテメエ! 鉢金巻いてなきゃ即死だったぞ!?」

黒コート「さっき1号車で言ったハズだ。つぎ暴れたら私がお前の脳天をぶち抜くと……」

黒コート「まさかさっきの約束、もう忘れたってほど鳥頭じゃないよなぁ……?」グリグリ

革ジャン「熱い熱い銃口でグリグリしないでヤケドする」ジュウウウウ


運転士長「タ、タイムパトロールの方!?」ダッ

黒コート「おや、この列車の責任者の方。さきほどぶりです」
215 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:12:13.45 ID:S4IgpjZso


運転士長「ど、どうしてココに……?」

黒コート「いや。さっきお話した通り、2〜5号車の事情聴取が終わったのですが、カラブリで……」

黒コート「次は客室に戻るか、9〜11号車の取り調べをするか、それともこの食堂車で夕食をとるか」

黒コート「相談していた結果、とりあえずココを通った、というワケです」

革ジャン「そんな相談一言もしてねえだろ……、完全に独断じゃねえか……」

ゴツン

革ジャン「あいたっっ!!」


運転士長「なるほど……。しかし、申し訳ない。食堂車は今、この有様で……」

黒コート「は?」
216 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:12:43.30 ID:S4IgpjZso


仮面の男「百均だ、庶民だと、下品だな。仮面を被るなら、言動もミステリアスにすべきではないかね?」

ヒーロー「シャーーラップ! 仮面は正体を隠すためだけのモノ! 正体隠して弱きを助ける、ヒーロー!」


教授「し、死んだとか、ウソでしょ!? 運転士さん!!」

魔王「すまない、本当のコトなんだ……。本当にすまない」

執事「なんとか彼女を助ける方法は無いんですか!?」


ウェイター「俺はアンタに恨みは無いが嬢ちゃん、年貢の納め時ってやつだ!!」ビュッ

桜色の女「モ、モップと箒とは思えない、その棒さばき! さてはおぬしら、ヒトカドの戦士でござるな!?」

ウェイトレス「ううん、ただの掃除屋だよ」シャッ
217 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:13:26.02 ID:S4IgpjZso


黒コート「……こ、これは。ひどい」

革ジャン「昨日の状況以上だな。この列車、なんかヤバいモン憑いてんじゃねえかあ?」

運転士長「う、うむ。たしかに、厄ネタを積んでいるといえば、積んでいるが……」


料理長「ええい、チョコマカとっ!!」ババババッ

桜色の女「ぬおおおおっ!!!」キンキンキンキン

桜色の女「ふ、そこな、ふくよかな料理人……。拙者に刀を抜かせるとは、やるでござるな……」


運転士長「……肝心の料理長すら、この有様で」

黒コート「優雅に食事を、という状況には程遠いですね……」
218 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:13:54.67 ID:S4IgpjZso


黒コート「良ければ、この状況を収めるのに、ご協力しましょうか?」

運転士長「本当ですか!?」

黒コート「ええ。運良く、私たちの目的である、仮面の男……」


仮面の男「はっ! 君がヒーローだというのなら、私はさしずめ、悪の怪人・鉄仮面卿かな!!」

ヒーロー「なんだとおぉぉぅ!? よし! そこになおれ! 俺が直々に正義の鉄槌を下す!!」


黒コート「……のどちらかも、あの中にまぎれているコトですし」

桜色の女「……? 鉄仮面卿!?」バッ


仮面の男「ふふふ、いいだろう。僕の左は……。スゴいぞ?」スッ
219 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:14:22.68 ID:S4IgpjZso


桜色の女「ちょっ、ちょっ―――! 待った! 待ったー!!」

料理長「なんだ……?」

桜色の女「ご、誤解でござる。拙者は敵ではないでござる!」


桜色の女「そこのお姉さん!!」

黒コート「へ。私か……?」

桜色の女「そうでござる。もしや、あの仮面の男と敵対しているのでござるか?」

黒コート「あ、ああ。鉄のほうか、赤いほうか、イマイチ断言しかねるが」


桜色の女「なら、鉄のほうは、拙者に任せてほしいでござる」
220 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:14:50.16 ID:S4IgpjZso


黒コート「何?」

桜色の女「だから、鉄仮面のほうは、拙者が仕留めるでござるよ。つまり、おぬしらの味方でござる」


桜色の女「なので料理を食べたコトは見逃してほしいでござる! この通り、カンベン!」

料理長「貴様、そんなコトで許されると思って……」

ウェイター「まあまあ、状況が状況だぜ。おやっさん。ここは休戦といこうや」

ウェイトレス「うん。正直戦うのめんどくさい」


革ジャン「ってコトは、俺の相手は、赤いほうか……。オーケー、だな?」

運転士長「うむ。各自良ければ、私に異存はない」
221 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:15:16.89 ID:S4IgpjZso


魔王「彼女を助ける方法か……。まあ、あるにはあるが」

執事「それはいったい!?」

魔王「実は、世界には、生き物が死んだ後に魂が行くコトになる、冥界って場所がある」

魔王「もう死ぬべき人間、まだ死ぬべきでない人間。それは、冥界で一括管理されている」


魔王「そして今の嬢ちゃんは、俺が魔力の浴びせすぎで殺してしまった、いわば事故だ」

魔王「加えて、冥界の王である冥王は、俺の知り合いだ」

魔王「だから、俺が冥王に頭を下げて、お願いすれば……」

執事「まだ死ぬべきでない人間として、蘇生できるかもしれない!?」

教授「あ、頭が痛くなってきた……」
222 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:15:43.78 ID:S4IgpjZso


魔王「そうだ。だが冥王はシゴト熱心だからな」

魔王「ウカウカしてると嬢ちゃんの魂も、彼岸に連れていかれるかもしれん」

魔王「そして天界に連れていかれれば、どうダダをこねても蘇生は不可能だ」

執事「そんな……!」


魔王「だから事は一刻を争う。一刻も早く、俺が行って、嬢ちゃんを連れ戻さないと」

教授「待って……。冥界には、どうすれば行くことが出来る?」

魔王「おい待て。まさかお前さんも行く、なんて言うんじゃ……?」

教授「……今回の事態は、私が遠因のようなモノ。彼女がこうなった、責任の一端は私にある」

魔王「……。最近の人間も、やっぱ捨てたモンじゃないな」
223 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:16:10.81 ID:S4IgpjZso


魔王「だがダメだ。冥界は、死神族が跋扈する、魔族の領域」

魔王「魔族である俺なら出入りも自由だが、人間だとそうはいかない」

魔王「……ここは堪えてくれ。嬢ちゃんの魂は、俺が責任を持って必ず取り戻す」

教授「……わかった。信じるよ、魔王」


魔王「それじゃ、よいしょっと……」ガタッ

執事「……? 壁にもたれかかる必要が、あるのですか?」

魔王「ああ。冥界へ行くには、外界に肉体を残して、魂だけを飛ばす必要があるから、な」

魔王「だが俺の肉体に何かあれば、外界へは戻ってこれない。俺が戻るまで、俺を守ってくれよ」

教授「ええ。ならば私も、貴方の頼みに責任を持つ」
224 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:17:20.35 ID:S4IgpjZso


――冥界


副運転士「え! 私たちの列車をご存知なんですか!?」

冥王「ええ、そらもう。懐かしいなあ。それが今回、冥王のわてが出張ってきた理由なもんでして」


冥王「―――今日の夜。乗員乗客が全員死ぬ、ドライ・ブラー号の大量の魂をきちんと回収するために」


副運転士「え……?」


副運転士「乗員乗客が、全員死ぬ……」

副運転士「……って、どういうコトですか」キッ
225 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:17:48.15 ID:S4IgpjZso


冥王「おや。目つきが変わりましたなぁ」

副運転士「……あのですね。冥界の冥王だか、なんだか知りませんが」


副運転士「いくらイケメンでも言っていいコトと悪いコトがありますよ……!!」グイッ

冥王「え、エリ首捕まんとってください。わてが殺してるわけやあらへんし」ググググ


副運転士「…………」

冥王「く、詳しくお話しします。やから、放してくれまへんか」ググググ

副運転士「っ……」パッ

冥王「ふ、ふう……。お嬢さん、見かけによらず、力ありますなぁ」
226 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:19:08.69 ID:S4IgpjZso


副運転士「……もう一度、おうかがいします」

副運転士「今日の夜。ドライ・ブラー号の、乗員乗客が全員死ぬ、ってどういうコトですか」

冥王「……。それなら、まずこれを見てくれまへんか――――」


死神A「め、冥王さま〜! 勝手に動き回らないでください!」

冥王「お。死神はん、お疲れさんです。探してるの、この人ちゃいますか?」

死神B「……! ド、ドライ・ブラー号の制服! マチガイない、この女性です!」

副運転士「え……? あの……」


死神B「乗務員さん! その節は、本当に申し訳ございませんでした」ガバッ
227 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:19:36.15 ID:S4IgpjZso


副運転士「え? あ、あの、何か知りませんけど、頭上げてください!」

副運転士「と、頭部はついてないみたいですけど」

死神B「い、いや。そういうワケには……」


死神B「覚えていらっしゃいませんか? その、ですね……」

死神B「今年の春、ドライ・ブラー号にごメイワクをおかけした、死神族の者なんですが……」

副運転士「……えっ、ああ! 今年の春の!?」

死神B「そうです! 思い出していただけましたか!?」

死神B「その節は、本当にごメイワクをおかけしました。申し訳ありません」

副運転士「いやいや、いいんですよ。それに私、その当時いた乗務員じゃありませんし」
228 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:20:03.10 ID:S4IgpjZso


死神B「そうなんですか? しかし、私たちが貴女のご同僚に、ごメイワクをおかけしたのも事実……」


死神B「……それと。今回のコトは、本当に災難でした。お悔やみ申し上げます」

副運転士「……?」

死神B「けれど、今年の春の罪滅ぼしというワケではありませんが……」

死神B「ドライ・ブラー号の皆さんの死後のお世話は、私たちが責任を持ちたいと思います」

死神B「どうぞご安心ください」

副運転士「し、死後の世話……。それに、今回のコト、とは」


冥王「お嬢さん、それですよ。わてが今から見せよう思たんは」スルルッ
229 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:20:29.99 ID:S4IgpjZso


副運転士「え……? なんですか、この巻物は?」

冥王「そうですなあ。いわゆる、エンマ帳ってやつやろか。その複製品です」

副運転士「エンマ帳……! それって、これから亡くなる人物の名前が書かれているという……?」

冥王「そうです。それで、ここを見てくれまへんか。今日の部分です」


副運転士「……う、うそ。そ、んな…………」

副運転士「ド、ドライ・ブラー号のみんなの名前が、ビッシリ、と……」

冥王「わかってもらえましたか?」

冥王「何も悪気があって、乗員乗客が全員死ぬとか言うてるんちゃいます」

冥王「単に、このエンマ帳に名前があるから、魂に取りこぼしが無いよう来ただけなんや」
230 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:20:57.83 ID:S4IgpjZso


副運転士「そ、そうだったん、です、か……。…………」

副運転士「……ごめんなさい。冥王さん。さっきは、掴みかかっちゃって」

冥王「いやいや。ええんですよ。誰にでも、マチガイはあります」


冥王「でも、どうしてそこまで……?」

冥王「例えば、わてが冥界の役人ごと、天界の主神はんに消されることになったとしても……」

冥王「そんな主神はんに掴みかかるほど怒らへんと思うけどなあ」


副運転士「……私、今日列車が大変なコトになるって、知って。誓ったんです」

副運転士「この年末年始の運行を、絶対に成功させるんだって」
231 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:21:25.00 ID:S4IgpjZso


冥王「え……?」

副運転士「どんな大変なコトがあっても、乗客の皆さんを守るって」

副運転士「そう決めてたんです」


副運転士「だから、ドライ・ブラー号のみんなや、乗客の皆さんが死ぬ、なんて言われて……」

副運転士「つい、カっとなっちゃって」


副運転士「…………、…………」グス


副運転士「……でも、だったら、だからこそ!」

副運転士「やっぱり私は、こんなところで死んでなんかいられません!!」
232 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:21:53.46 ID:S4IgpjZso


副運転士「お願いです、冥王さん! 今すぐ、私を生き返らせてください!」

副運転士「私は今すぐドライ・ブラー号に戻って、みんなを助けなきゃいけないんです!」

冥王「わ、わがままやなあ、あんさん。ちゃんと大学出たはるか? いくつ?」

冥王「あのな。このエンマ帳に書かれた、天界の意思いうのは絶対や。わてらには変えられへん」

冥王「そしてわてはただの執行者。執行者が、自分の意思で、上の命令に背いたらいかんのや」

副運転士「うぐ……。わかります。シゴトではちゃんと命令に従わないとですよね」

副運転士「でも、そこをなんとか! これは、これだけは! 絶対に譲れないんです、私は!!」

冥王「おろろ……」


魔王「……お――――――い!」
233 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:22:21.90 ID:S4IgpjZso


死神A「……おや? どこからか、声が」

冥王「なんや聞きなじみのある声やなぁ」


魔王「お――――い! 誰かいないか〜……」


冥王「ああ、やっぱり。おーい、こっちやで〜」ノシ

魔王「お――……。お? お!! ……あー、やっと見つけたぜ!」


魔王「あんた、ドライ・ブラー号の乗務員の嬢ちゃんだな!?」


副運転士「え……?」
234 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:22:50.56 ID:S4IgpjZso


冥王「おや、魔王はん。久しぶりですなあ。いや、今は碧夕王やったか?」

魔王「それはただの称号だ。お前こそ元気みたいだな、冥王」

冥王「ははは。みんな死んどる世界で、元気にやらせてもろてます」


魔王「しっかしお前、久し振りに来たが冥界、相変わらずアクシュミだなあ……」

魔王「お前さ、こんな鬱蒼とした森じゃなくて、もっとキラキラしたネオンビルとかにしねえ?」

魔王「死んだ魂もさ、死んだうえに来たのがこんなトコじゃあ、そりゃあ萎えちまうってモンだぜ」

冥王「はあ。しかし木ィ切り倒すにしても、冥界環境保護団体がうるさぁてなあ……」


副運転士「え、あの……? あれ、ええと?」
235 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:23:21.84 ID:S4IgpjZso


魔王「―――お。そうだ、お嬢ちゃん。俺の用は、お前だ」


魔王「帰るぜ、今すぐ。あんたの職場、ドライ・ブラー号に」


副運転士「え……!?」

冥王「ちょ、ちょっと。なに言うてはるんですか?」

冥王「魔王はん。いくらあんさんでも、それは困ります」

冥王「死者の魂を如何するかは、冥界の領分。魔王の仕事とちゃいます」


魔王「ああ、それだけどな。その女の子、俺が間違って殺しちまったんだ」

魔王「つまり完全な事故ってワケ。過失事故。となれば本来、彼女はここで死ぬ運命じゃない」
236 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:23:54.76 ID:S4IgpjZso


魔王「なら、外界に戻っても、何の問題も無いだろう?」

冥王「ふむ……。魔族による、事故ですか。魔界との規定もある。せやったら、まあ……」


冥王「せやけど、それはそれで、また別の問題になるんちゃいますか?」

冥王「魔界の魔王、それも七魔公王が、魔界のルールを破って人間殺したとか……」

魔王「うぐっ! そ、ソーベリーウィーク……」

魔王「ま、ま。そこは俺とお前の仲ってコトで? ちゃちゃっと揉み消しといてくれよ」

冥王「はあ……。わかりました。なら、そのように手配しときます」

魔王「よっしゃ!!」

冥王「まったく。そんなコトで、部下の魔族に示しがつくんやろか……」
237 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:24:27.76 ID:S4IgpjZso


副運転士「あ、あの……? 貴方は……」

魔王「ん、俺か? 俺は、たまたまドライ・ブラー号に乗り合わせた魔王の者だ」


魔王「良かったな、嬢ちゃん。また冥界から人間界に戻れるコトになったみたいだぞ」

副運転士「え……。ほ、本当ですかっ!?」

魔王「ああ。本当だ。魔王、ウソつかない」キラ


死神A「あ、あの……! 七魔公王の、碧夕王さまですよね! サイン貰えますか!?」

魔王「ん? 死神族のところの死神か。俺の管轄じゃないが……。ああ。お前の着てるローブでいいか?」

死神A「あ……! ありがとうございます! 一生タイセツにします!!」
238 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:24:56.88 ID:S4IgpjZso


冥王「……はい、はい。今、このお嬢さんが外界に戻れるようにしといたで、魔王はん」

魔王「ありがとうよ、冥王。やっぱ持つべきモノは友だな」

冥王「せやけど、意味あるんやろか? お嬢さんも含めて、列車の乗員乗客は、今日皆死ぬ運命やで」


魔王「何……?」

冥王「ほら。エンマ帳の、ここ見てみ。こんだけの人が死ぬんやから、相当な事故や思うが……」

魔王「……本当だ。乗務員の嬢ちゃんはモチロン、教授の嬢ちゃんや、執事の兄ちゃんまで」


魔王「ちなみに、死因はなんだ?」

冥王「死因? ええと。―――なんやこれ? 火砕流に、土石流。火山弾、やと?」
239 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:25:30.01 ID:S4IgpjZso


魔王「火砕流、土石流、火山弾!? や、やっぱり……」

冥王「ま、まさか。ドライ・ブラー号で、アレが目覚めるとでも……」


冥王「……ちょっと待て、魔王はん。今、『やっぱり』て言うたか? あんた、なんか心当たりあるんか!?」

魔王「俺の独自の調査だが。今回のドライ・ブラー号の事件には、天界が関わっている。十中八九」


冥王「……なるほど。そういうことか。ちょっと、お嬢さん。一つええですか?」

副運転士「え。あ、ハイ。なんですか……?」

冥王「さっきあんさん、『今日列車が大変なコトになるって、知って』……って、言いましたな」


冥王「―――それ。誰から聞いた情報や?」
240 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:26:20.34 ID:S4IgpjZso


副運転士「え、ええと。言っても、信じてもらえるか、わからないんですけど……」

副運転士「夕方ごろ、運転室に突然現れた、白ドレスの女のヒトです」

魔王「……!!」


魔王「おい、嬢ちゃん! ソイツは何を言っていた? いったい何と名乗った!?」

副運転士「いや、名前は聞いてないんですけど。要約すると、この列車の運命は、私たち次第だ、と」


魔王「……白ドレス。白色。運命。なるほど。なるほどなあ」

冥王「なにやら、きな臭ぁなってきましたなぁ。このエンマ帳に、書かれていることも」パンッ

魔王「ああ。エンマ帳を発行しているのは、天界……。これはひと悶着、ありそうだぜ」
241 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:26:50.70 ID:S4IgpjZso


魔王「おい、乗務員の嬢ちゃん! そうとなれば、急いで、列車に戻るぞ」

副運転士「えぇ? そりゃ、列車には戻りますけど……。どうして、急いで?」

魔王「俺たちのいない間に、悪さをされちゃあ困るからだ。そう、今回の黒幕――――」


魔王「―――“白の大天使”、にな」


副運転士「だ、大天使!? それはいったい……」

魔王「読んで字のごとく、だ。大天使。大いなる天の使い」

魔王「中でも白の大天使といやあ、神出鬼没、自由奔放、ハタ迷惑で有名だが……」


魔王「そのエンマ帳の、死亡リスト。それも白の大天使が原因の可能性がある」
242 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:27:19.22 ID:S4IgpjZso


副運転士「と、というコトは……!?」

魔王「ああ。エンマ帳の死亡リストは天界の管理。つまり、白の大天使をとっちめれば……」


魔王「その死亡リスト。無かったコトにだって、出来る」


副運転士「……!」

副運転士「よ、よくわかりませんけど。それはつまり……」

副運転士「ドライ・ブラー号のみんなや、乗客の皆さんを、助けるコトができるんですねっ!!?」

魔王「ああ。その通りだ」


冥王「やれやれ。知らんうちに、なんか大事になってきましたなぁ。しかし、なら、ついに……」
243 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:27:50.23 ID:S4IgpjZso


魔王「というワケで、俺たちは外界に戻る!」

魔王「もしもエンマ帳の中身が書き換わった時の対応! それと、俺の不祥事の揉み消し!」

魔王「頼んだぜ! 冥王!!」

副運転士「あ、あの! 冥王さん、お世話になりました! また会いましょう!!」


冥王「はいはい。いや、あんまり会わへんほうがええと思うで……」


死神A「……あの、冥王様。つまり、これはいったいどういう?」

冥王「うーん。まあ、このエンマ帳の中身も、運命も、絶対やない。いうことかなあ」

死神B「はあ……?」
244 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:28:17.65 ID:S4IgpjZso


――6号車【食堂車】


魔王「―――はっ!」パチクリ


執事「ま、魔王さん! お戻りですか!?」

魔王「あ、ああ……。なんとか。当初の目的は、達成できたみたいだ」


副運転士「う、うーん……。あれ、ここは?」パチッ


教授「う、運転士さん!! 良かった……」ギュッ

副運転士「きょ、教授さん!? く、くるしい。……って、あれ?」
245 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:28:46.57 ID:S4IgpjZso


桜色の女「―――ふっ!」フォン

仮面の男「おっと危ない!」バッ


スパッ


仮面の男「ふう……。後ろのテーブルが音も立てずに真っ二つ、とは。腕を上げたね」

仮面の男「それよりも、君もこの列車に乗っていたんだね。春風の旅人よ」

桜色の女「ああ。元々は、この時代にメイワクをかけたという、貴様を誅するためだったが……」


桜色の女「今は、一人の剣客として。貴様の血が欲しい」スッ

仮面の男「僕を列車の者に売り渡す、か。それもいいだろう。僕たちの戦いは、行雲流水なれば……」スッ
246 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:29:14.68 ID:S4IgpjZso


黒コート「革ジャン! そっちに行ったぞ!!」


革ジャン「くそがあ、チョコマカとっ!!」バンバンバン

ヒーロー「ふははははっ!! 当たるか当たるか、当たるモノかぁっ!!」ヒュンヒュンヒュン

革ジャン「てめえ! バク転しながら避けるとか、ナメてんのかああああ!!?」

ヒーロー「いやいやいや!! ナメてなどいない!! 単に君の弾道が非常に読みやすいだけだ!!」


黒コート「―――そうだな」フワッ

ヒーロー「え……?」クルッ

黒コート「お前の動きも、非常に読みやすい」
247 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:29:41.38 ID:S4IgpjZso


乗客A「な、なんなんだね、これは。さっきから……」

乗客B「こんなイベント聞いてないけど!?」

乗客C「すごーい! たのしい!」

ウェイター「コチラ、当列車のサプライズイベントとなっております」

ウェイター「危ないので、白線の内側でご観覧ください」

ウェイトレス「ごかんらんくださーい」


副運転士「な、なんですかコレは……!? な、何がいったいどうなって」

運転士長「おや、気がついたか。いや、君が気を失う前後に色々あってね……」

副運転士「色々ってレベルですか!?」
248 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:30:08.98 ID:S4IgpjZso


―――それは春風などという生易しいものではなかった。


桜色の女「―――。―――っ」

仮面の男「ふっ―――、ふっ! やはり君の剣筋、美しい! 客室に刀を置いてきた僕が恨めしい!!」


女の剣筋に一切の無駄はなかった。

一振り、一振りが、男の首を正確に狙う一撃。すんでのところで避けられた斬撃は、
取って返す刀で、再び男の首に追いすがる。その姿はまるで、獲物に食らいつく狼のように。

いや。狼と形容するならば、この刀の使い手こそが、この場で最もふさわしいだろう。

桜色の女の、普段の風来坊らしい、泰然自若とした余裕の姿は消え失せ。
ただ敵の赤い命の奔流を求める、かまいたちの如き飢狼だけが、そこにいた。
249 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:30:36.84 ID:S4IgpjZso


―――突如としてそれは、赤い仮面の真後ろに現れた。

ポリマースーツは、けっして革ジャンの男の銃技をあなどっていたのではない。
単純に、革ジャンの男の銃弾は、彼にとってバク転が最も避けやすかったのだ。

正確ではないが、常人の反応速度をゆうに超えた速さで放たれる、早撃ち。
まともに目測で指の動きを読んでいたのでは、その瞬間に既に撃ち抜かれている。

ならば、それを上回る速さで回ればいいじゃないか。ヒーローはそう考えた。

だが、その合理的な考えが、正義の味方気取りの男の背後に、致命的な隙を与えた。


黒コート「時空整備課を……」

ヒーロー「――――あ」

黒コート「ナメるなァァッ!!!」
250 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:31:07.56 ID:S4IgpjZso


黒コートの女は、ただの一般人である。

少し運動の才能に優れ、少し技術の努力を積み、少し踏んだ場数が人より多いだけの、
付け加えるならば少し未来からきただけの、ただの一般人である。

特別な能力など、何も持っていない。
魔族や一部の傭兵のように、魔法を使えるわけでもない。
ましてや、この日を待ちに待ったテロリストのように、重火器があるわけでもない。

―――そう。彼女が持っているのは。


ヒーロー「ぶべらああああああああああああああああああ!!!!!!」


鍛え抜かれた筋肉。漆黒に覆われた、長い肢体から放たれる――――

一撃必殺の体術。赤い硬質な背中を撃ち抜いた、ただ一発の蹴撃であった。
251 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:31:35.95 ID:S4IgpjZso


桜色の女「な―――? 赤いカタマリ……!?」

仮面の男「えっ? あの、ちょっ―――、待っ――――」


―――仮面の男は、完全に気を取られていた。

いや、彼の名誉のために言い替えるならば。
仮面の男は、完全に自分たちの戦いに酔いしれていた。

桜色の女との、幾度目かになる決闘。
彼と彼女の戦いは、必ず偶然によって起こる、戦いのためではない戦いだった。
だからこそ仮面の男は、その戦いの“意味の無さ”に、酔いしれていた。

そう、酔いしれていた。

酔いしれていたがゆえに、桜色の女は気付き、彼は気付かなかった。
とある黒い警察官が蹴り飛ばした、赤い塊が、自分たちの元に飛来していることに。
252 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:32:02.98 ID:S4IgpjZso


小型メカ「まったく。さっきから、何をしているんですか? バタバタと……」フワフワ

小型メカ「いいですか? ヒーロー気取りのお兄さん」

小型メカ「貴方の目的は、私たちの同僚が追っている、鉄仮面の男ではなく――――」

ヒーロー&仮面の男「「ぶべらああああああああああああああああああ!!!!!!」」


             \   ..::::\        / ̄ ̄`7ヽ_|ヽ_|              l^l       |  |:::::::::::::::::::::::::
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               \   ..::::\       /,、 \       | | l」 l」    /,イ |        |  |:::::::::::::::::::::::::
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                         | イ...::| く>      仮面の男&ヒーロー →  ',’,・/⌒ヽ(|  |:::::::::::::::::::::::::
                      l| / ..:::|                               |  |:::::::::::::::::::::::::
                  【 食堂車の壁 】                             【 線路の近くの木 】
                         |   ..::|                               |  |:::::::::::::::::::::::::
                     ,、,...、...|   ..::|.... ,,、,.                               |  |:::::::::::::::::::::::::
                / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\                           |  |:::::::::::::::::::::::::
253 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:32:30.35 ID:S4IgpjZso


                                            _                                  _.  _   _
                               ヽ`              | | ロロ                              | | | | | |
                              ´               | |_   __ロロ   _       _     _      _    | | | | | |
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  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:                ゙゙゙゙゙;;;;;;
  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............        ;゙                              ゙;       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
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                 /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li   ' ;   .` .;    il,.;;.:||i .i| :;il|l||;(゙
                `;;i|l|li||lll|||il;i:ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `,  ,i|;.,l;;:`ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ
                 ゙゙´`´゙-;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙/`゙
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                         ´゙゙´`゙``´゙`゙´``´゙`゙゙´´


小型メカ「ええええええええええええええええええええええええ!!!!!?」

革ジャン「あ、オペ子ちゃんのメカじゃん。こんなとこで何やってんだ?」
254 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/26(火) 18:32:57.23 ID:S4IgpjZso
第四章「夜中・後」は以上になります。
登場人物はこれで全員です。

第五章は、明日12/27(水)の18時ごろ開始の予定です。
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/12/27(水) 00:41:24.09 ID:aOQkiWvX0
キャラ増えすぎて分からないからまとめてみた、ついでに目的も

白ドレス(女)  :特級指名手配犯00046号、目的は「“見世物”の見物?、乗客たちが運命を変える?」事
店員       :サッポロ駅売店のただの店員
紳士(男)    :白ドレスの追っかけ、目的は「任務を遂行する?」事
駅員       :紳士の喫煙を注意したただの駅員
車掌(男)    :ドライ・ブラー号の車掌、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する
ウェイター(男) :食堂のウェイター、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する 
ウェイトレス(女):食堂のウェイトレス、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する
副運転士(女)  :ドライ・ブラー号の副運転士、一度死んでいきかえった、目的は「乗客の方々に上質な列車の旅を提供する」事
運転士長(男)  :ドライ・ブラー号の運転士長、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する、目的は「乗客の方々に上質な列車の旅を提供する」事
パイロット    :キノコ頭とテロリスト達を運んできた、ヘリで来た
キノコ頭(男)  :テロリスト達のリーダー、き○こ派、目的は「教授の持つ、“最強の兵器”を手に入れる」事
テロリストABCD  :キノコ頭の部下、き○こ派、
教授(女)    :高校生で科学者、“最強の兵器”持つというが実は完成してない、冬休みの宿題に手を付けてない、目的は「オーサカで“最強の兵器”の発表会をする」事
執事(男)    :教授の部下、目的は「教授を守る」事
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/12/27(水) 00:43:30.52 ID:aOQkiWvX0
弓使い(女)   :自称通りすがりのフリーター、目的は「オーサカへ行く」事
剣使い(男)   :目的は「オーサカへ行く、族長と再戦する」事
銃使い(女)   :子供、目的は「オーサカへ行く」事
革ジャン(男)  :タイムパトロール、後輩、たけ○こ派、目的は「時空指名手配犯を捕まえる」事
黒コート(女)  :タイムパトロール、先輩、目的は「時空指名手配犯を捕まえる」事
フロント     :過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する
族長(♂)    :青鬼族の族長、必殺技は青い炎、アル〇ォート派、目的は「魔翌力塊の強奪、オーサカで行われる発表会を潰す、剣使いと再戦する」事
魔族ABCD     :族長の部下、アル〇ォート派
マスター(男)  :ラウンジのマスター、半身機械、目的は「魔族から乗客を守る」事
ヒーロー(男)  :全身ポリマースーツの赤色仮面、仮面は百均、目的は「き○こたけ○こ大戦の勃発を阻止する」事
桜色の女     :ござる口調、無賃乗車、武器は刀、目的は「“鉄仮面卿”を倒す」事
仮面の男     :ただの乗客じゃなかった、時空指名手配犯、
小型メカ     :ヒーローの相方、オペ子ちゃん、常にフヨフヨ浮いている
魔王(男)    :碧夕王、周りの時間を止める力を持つ、目的は「天界の使者をあぶり出す」事
料理長(男)   :食堂の料理長、ふくよか、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する、目的は「乗客の方々に美味しい料理を提供する」事
冥王(男)    :関西弁、イケメン
死神ABC      :過去にドライ・ブラー号を襲撃
257 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/27(水) 18:05:50.53 ID:bYSVmpXyo
おお、キャラまとめお疲れ様です。やっぱ人数多いですね。ちなみに列車の構造はこんな感じです。


先頭
  1号車【展望車・前】
  2号車【寝台車一】
  3号車【寝台車二】
  4号車【寝台車三】
  5号車【スイート】
  6号車【食堂車】
  7号車【ラウンジ】
  8号車【ロビー】
  9号車【寝台車四】
 10号車【寝台車五】
 11号車【寝台車六】
 12号車【謎車】
 13号車【展望車・後】
後方


それでは、第五章「深夜・前」を開始します。
60レスほどの予定です。
258 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/27(水) 18:07:17.44 ID:bYSVmpXyo


――12号車【謎車】 屋根の上


ドゴォォォン…!!!


キノコ頭「な、なんだ!?」ガバッ


テロリストA「ぜ、前方車両で爆発です!!」

テロリストB「……と、思ったら、爆発が後方に遠ざかっていった」

テロリストC「ど、どういうコトだ……?」


キノコ頭「…………」
259 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/27(水) 18:07:48.68 ID:bYSVmpXyo


キノコ頭「……あれは、爆発が遠ざかっていったんじゃない」

テロリストD「え?」

キノコ頭「遠ざかっていってるのは、俺たち、この列車だ」


キノコ頭「つまり。まず、前方車両のどこかで爆発の原因が発生した」

キノコ頭「ただし、爆発自体は、前方車両から外に出て、列車の外で起こった」

キノコ頭「だから実際に爆発したのは……。列車の外の木か、何かだろう」

キノコ頭「そして今、列車は爆発地点から猛スピードで遠ざかっているから」

キノコ頭「爆発が後方に遠ざかっていくように見えた……。というところか」

テロリストD「お、おお……。さすがですリーダー、今の一瞬でそこまでわかるとは!」
260 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/27(水) 18:08:15.36 ID:bYSVmpXyo


キノコ頭「たいしたコトじゃない。それよりも問題は、今の爆発の原因だ」

キノコ頭「俺たち以外に、この列車で、また暴れている奴がいるのか……?」

テロリストA「例の、たけ○こ派や、アル○ォート派の連中でしょうか?」


テロリストB「あ、爆発の煙だけは、車両からも出ていますね……」

テロリストB「どうやら爆発の原因が発生したのは、6号車のようです」

キノコ頭「6号車といえば、食堂車か……? 飯時に、何かあったのだろうか……」


テロリストC「う、うう。俺たちも腹が減ってきましたよ、リーダー」

テロリストD「本当なら今ごろ、教授を捕らえて、アジトで祝勝会のハズだったのに……」
261 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/27(水) 18:08:41.53 ID:bYSVmpXyo


キノコ頭「……そうだな。くそっ、あの忌々しいたけ○こ派や、乗務員どもめ……」

キノコ頭「奴らさえいなければ、俺たちは何の問題もなく達成し、教授の身柄を確保できたモノを……」

テロリストA「リーダー……」


テロリストB「……いえ、リーダー! 俺たちの戦いは、まだ終わっちゃいません!」ガタッ

キノコ頭「……!」

テロリストC「そうですよ。リーダー。こんな寒い所でクヨクヨしてるなんて、リーダーらしくもない」

テロリストD「俺たちの目的は、“最強の兵器”を開発した教授の身柄を抑え、たけ○こ派を倒すコト」

テロリストD「たとえ一度失敗しても、それは変わりません。ならばもう一度、挑戦すればいいだけです!」

キノコ頭「……。お前たち……」
262 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/27(水) 18:09:07.86 ID:bYSVmpXyo


キノコ頭「……そうだな。いちいち悩むのも、俺らしくはなかった」

キノコ頭「ならばもう一度、襲撃を仕掛けるとしよう! 教授の身柄を確保するために!」

キノコ頭「そしてたけ○こ派たちをも出し抜き、あの乗務員どもに一泡吹かせようではないか!!」

テロリストA〜D「「「「おお!!!!」」」」


キノコ頭「よし。そうと決まればさっそく、もう一度……」


シュボオオオオオオ!!!!!! ガン!!!!!!


テロリストA「え……?」

キノコ頭「ん? なんだ、今の音? 後ろから聞こえたな。13号車か……?」
263 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/27(水) 18:09:39.31 ID:bYSVmpXyo


――12号車【謎車】 動力室の前


剣使い「な、なんだ今の音!?」


車掌「後方から聞こえましたね。しかし、13号車は施錠しています。となると、屋根の上で何か……?」

弓使い「シュボオオオに、ガン、か。何かが火を出してる音に……、金属音かな?」

銃使い「…………」ガシュガシュ


剣使い「なあ、車掌さん。さっきも、前のほうの車両で、爆発のような音がした……」

剣使い「この列車。ラウンジが荒らされた時みてぇに、また何か起こってんじゃねぇのか?」

車掌「…………」
264 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/27(水) 18:10:06.23 ID:bYSVmpXyo


弓使い「1号車のほうには、教授も残してるしねぇー。き○こ派に襲われてないか、心配だな」

銃使い「…………」ボリボリ


車掌「―――だとしても」

剣使い「……!」

車掌「だとしても。私は、士長や、新米の彼女、このドライ・ブラー号の乗務員を信じます」

車掌「二人だけじゃない。食堂車には、料理長や、ウェイター、ウェイトレスたちもいる」

車掌「ラウンジには、貴方たちも見たでしょう。マスターもいるし、ロビーにはフロント担当もいる」


車掌「ご心配ならば、私が断言します。教授さんや乗客の皆さんのコトは、彼らが必ず守っていると」
265 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/27(水) 18:10:38.12 ID:bYSVmpXyo


剣使い「……、…………」

車掌「…………」


剣使い「……そっか」

剣使い「アンタらも、アンタたちの絆で、繋がってるんだな」

車掌「ええ。その通りです」


弓使い「絆かぁー。いいよね、そういうの! 同じ職場のみんなが、一つにまとまってるとかさ!」

弓使い「こりゃぁ私たちも負けてられないね。そう思うでしょ、銃ちゃん!?」バンバン

銃使い「そうかな」バスバス
266 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/27(水) 18:11:05.56 ID:bYSVmpXyo


剣使い「……悪かった。アンタらのシゴトを疑ったりして」

剣使い「ならば教授の嬢ちゃんたちのコトは、アンタらに任せよう」

剣使い「だから、俺たちも。俺たちのシゴトを確実に果たす」

車掌「ええ。私たちの役目は、乗客の皆さんを守り、今日の運行を無事成功させるコト……」

車掌「そしてその目的は、貴方がたの目的とも共通しているハズ。共に頑張りましょう」


弓使い「でもさー、それでもやっぱ何の襲撃も無いっていうのは、やっぱりヒマだよねー」

弓使い「アル○ォート派の魔族っていうのは、本当にこの12号車の動力室を襲うのかなあ?」

車掌「おそらくは。過去襲撃してきた魔族は皆、この動力室の動力源を狙いました」

車掌「今回の魔族も、動力室の場所に勘付けば、きっとココに現れるかと」
267 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/27(水) 18:11:33.97 ID:bYSVmpXyo


車掌「それに、この12号車から繋がる、13号車は、この列車の要の一つ……」

車掌「もし教授さんを狙うき○こ派や、謎の赤色仮面が、列車の機能を狙って襲ってきても」

車掌「ここに張ってさえいれば。迎え撃ち、懸案を一つ減らすコトが出来ます」


プルルルルル…

銃使い「ん。電話?」

車掌「おや……。乗務員の誰かでしょうか。……失礼。もしもし」ピッ


弓使い「やれやれ。こりゃあ、年をまたぐ、大シゴトになりそうだねぇ。朝まで気合い入れていこうか!」

剣使い「ああ、そうだな……。……魔族。お前たちは今、どこにいる?」
268 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/27(水) 18:12:19.93 ID:bYSVmpXyo


――11号車【寝台車六】


ヴヴヴヴヴン


族長「……ッ!?」ガバッ


魔族A「ぞ、族長? 今、族長も感じましたか!?」

族長「あ、ああ……」

魔族B「絶大な魔力の奔流……! 前方車両から……」

魔族C「これほどの術を発動するとは。手練れの術士でも乗っているのか?」

魔族D「あるいは、我々と同じ魔族か……?」
269 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/27(水) 18:12:47.41 ID:bYSVmpXyo


族長「…………」


族長「……いや。今の魔力の波動には、心当たりがある」

魔族A「え?」

族長「まず、魔力を使った術というのは、我々が使っているそれと」

族長「一部の人間が使うそれは、似ているようで、根本的に違うという」


族長「そして、俺の経験から言えば……。今のは、魔族の使う術の波動だ」

魔族B「というコトは、今の術の主は、魔族……?」

族長「おそらくはな。そして、今ほどの術となれば、使えるのは魔族でも、ほんの一握り……」
270 : ◆9xXTDlz//k [saga]:2017/12/27(水) 18:13:14.37 ID:bYSVmpXyo


魔族C「……ま、まさか?」

族長「ああ、そうだ……」


族長「マチガイない。今の術の主、この列車に乗っている魔族とは、魔王の誰かだ」


魔族D「魔王……!!」

魔族A「そんな。魔王のような大物が、どうしてこの列車に……」

族長「わからん。だが、我々の行動の範疇で、考えられる原因は……」


族長「人間界に干渉した我々の行動を誅するために、魔王が直々にやって来た、という可能性だ」

魔族B「な……!」
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