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ダイヤ「聖なる献身」
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53 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:17:43.09 ID:Hn5+HR340
―――――――
―――――
―――
〜対バーサーカー戦から二日後〜
千歌「曜ちゃん、曜ちゃん!!」
曜「ん、なーに?」
千歌「今日の放課後なんだけど、練習休みじゃん? だから梨子ちゃんと一緒に家に来ない?」
曜「あー、ごめん。ちょっと約束があるんだよね」
梨子「誰かと会うの?」
曜「まあね。みんなは知らない人だよ」
梨子「そっか……残念ね」
千歌「ふーん……そうなんだぁ」
曜「じゃあ、また明日ね〜」
梨子「バイバ〜イ」フリフリ
千歌「………ばいばい」ジーッ
千歌「――怪しい」
梨子「はい?」
千歌「幼馴染センサーが反応してるんだよ! 曜ちゃん、何か隠し事しているぞ……」ゴゴゴ
梨子(アホ毛がぴょこぴょこ跳ねているのはそのせいなのね……)
千歌「追うよ」
梨子「追うって曜ちゃんを?」
千歌「当然だよ! 曜ちゃんが何を隠しているか突き止めるんだよ」
梨子「ええっ……それはどうなの?」
千歌「早く準備して! 見失っちゃうから!」
梨子「もう……分かったわよ」ハァ
54 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:20:15.92 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
千歌「曜ちゃん、家に入って行ったね」
梨子「そりゃ自宅だし当たり前でしょ」
千歌「さて、どんな服装で出てくるかが肝心だよ」
梨子「普段私達と会う時とは明らかに違ったらどうするつもり?」
千歌「それは……その後会う人がどんな人かどうかによるよね」
梨子「長身の爽やか系イケメンだったら?」
千歌「はぁ? 曜ちゃんが男の人と会う訳がないじゃん」ケラケラ
梨子「でも、もし会ったら?」
千歌「………」ニコッ
梨子「ッッ!!!?」ゾワッ
梨子「―――……あ、会うわけないわよね! あはは、変な質問してごめんね?」
千歌「そうだよ〜、梨子ちゃんったら全くもう」
梨子(曜ちゃんも大概だけど、ひょっとしたら千歌ちゃんの方が重いんじゃ……)
曜「――行ってきまーす!!」
千歌「ああ!! 出てきたよ!」
梨子「服装は……いつも通りのボーイッシュな感じね」
千歌「そうだね。これなら――」
梨子「待って。まだ誰か家から出てくるわ」
曜「ほらほら、早く行くよ!」グイグイ
「分かってるって! そんなに焦らせないでよ、曜ちゃん!」
曜「もう、ずっと家に居たのにどうして準備してなかったのさ! アストルフォちゃん!!」ムスッ
「あはは……申し訳ない」
千歌「……な、あ、そんな……」ガタガタ
梨子「嘘よ……曜ちゃんに限って……あり得ない……!」
千歌(曜ちゃんが――)
梨子(曜ちゃんが――)
千歌・梨子((私の知らない女(男)の子と一緒に同棲しているなんて!!?))
55 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:21:20.78 ID:Hn5+HR340
千歌(何なの!? あのピンク髪の子は!!? 曜ちゃんと同棲とか羨ましすぎるんだけど!!)
梨子(まさかあれが曜ちゃんの異性のタイプだったとは……いや、仮にもスクールアイドルなのよ!? 例え“男の娘”だとしても異性の方とのお付き合いは問題よ!!)
千歌「曜ちゃんがぁ……私のようちゃんがぁぁ」ウルウル
梨子「いや待って、決めつけるのはまだ早いわ」
千歌「……グスン、どーして?」
梨子「確かにあの子は曜ちゃんの家から出てきた。でも、だからと言って同棲しているとは限らない。もしかしたら遠い親戚かもしれないわ」
千歌「!!」
梨子「このまま様子を見ましょう。真相を突き止めるのよ!!」
千歌「梨子ちゃん……うん! やろう!!」
56 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:23:08.40 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
曜「今回も沼津まで来たけれど……見つかるかな?」
アストルフォ「ごめんね? また付き合わせちゃって」
曜「いいのいいの! 私が近くにいないと実体化出来ないんでしょ? 早く新しい“ますたー”を見つけないとね!」
アストルフォ「……うん、そうだね」
千歌「あの二人は誰かを探しているみたいだね」
梨子「マスターって聞こえたけれど……」
千歌「マスター? ご主人様を探しているの?」
梨子「し、知らないわよ」
千歌「あ、誰か近づいて来る! あれは……ルビィちゃん?」
ルビィ「あれ、曜ちゃん?」
曜「ルビィちゃん! こんなところでどうしたの?」
ルビィ「ルビィは鞠莉ちゃんのお見舞いに行っていたんです。ちょっと色々と用事もあったので」
曜「そうなんだ。確か明後日には退院するんだよね?」
ルビィ「そうだよ。鞠莉ちゃんは今すぐにでも出たくて仕方ないみたいだけど……」
曜「あはは、鞠莉ちゃんらしいや」
ルビィ「ところで……隣にいるその方は………ッ!!?」ビクッ
アストルフォ「………」ジッ
曜「ああ、紹介するよ。この人は――」
アストルフォ「あれれ、僕の事覚えて無いの?」
曜「へ?」
ルビィ「ええ!?」
アストルフォ「そんなぁ……ちょっとショックかも」ブーブー
ルビィ「ん、んん?」
ルビィ(変だな……一度も会った事ないのに)
アストルフォ「まあいいや。曜ちゃん、別の場所に行こう」グイグイ
曜「え、あ、うん……またね、ルビィちゃん」
ルビィ「ま、またね〜」
千歌「移動した! 行こう梨子ちゃん!!」
梨子「ええ!」
57 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:23:50.99 ID:Hn5+HR340
ルビィ「………今のって」
ダイヤ「――恐らく真名を隠したかったんでしょうね」
ルビィ「お姉ちゃん……いいの? 街中でルビィに話しかけちゃっても」
ダイヤ「問題ありません。“たった今”周囲に居た知り合いが全員立ち去りましたから」
ルビィ「曜ちゃんも聖杯戦争に参加しているって事なのかな?」
ダイヤ「それは違うでしょう。仮にそうだとしたら、曜さんに余程自信があるか、相当の馬鹿かですわ」
ルビィ「あはは……」
ダイヤ「ですが、隣にいた彼女がサーヴァントなのは間違いない。ルビィだってステータスが視えたのでしょう?」
ルビィ「う、うん。確かに視えたけど……」
ダイヤ「何か気になるステータスが視えたのですか?」
ルビィ「えっとね、ステータス欄が変な風になっていたの。色々な項目に落書きみたいなのが書かれていて……」
ダイヤ「自身のステータス欄を改ざんするとは」
ルビィ「敏捷性とか幸運とかは視えたけれど、いくつかは全く分からなかった」
ダイヤ「全てのステータスが隠れていたのでは無い? 随分と中途半端な」
ルビィ「特に性別の部分の落書きが酷かったよ」
ダイヤ「性別……ですか? 一体何の為に……」ムムム
ルビィ「取り敢えず追いかけてみる?」
ダイヤ「ええ、気が付かれない距離から追跡してみましょう」
58 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:26:20.27 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
梨子「数時間フラフラ歩いているだけで何もしなかったわね」
千歌「結局、曜ちゃん達の目的が分からなかった……」
梨子「道のり的にも多分このまま家に帰ると思うよ。どうするの?」
千歌「……でえい!! こうなったら正面突破だ! 直接曜ちゃんに問い詰めてやる!」
梨子「千歌ちゃん!?」
千歌「おーーーーい、曜ちゃーーーーーん!!!!」
曜「残念だったね……今回もダメだった」シュン
アストルフォ「簡単に見つからないのは分かっていたからさ。曜ちゃんが気にする事じゃないよ」
曜「アストルフォちゃん……でも、次こそは見つけようね!!」
アストルフォ「……うん、ありがとう♪」ニコッ
――…おーーーーい、曜ちゃーーーーん!!!!
曜「あれ……この声は――」
千歌「曜ちゃん!!」
梨子「ま、待ってよ千歌ちゃん!」ゼエゼエ
曜「え、ええ!? どうして二人が……千歌ちゃんの家で遊んでたんじゃ!?」
千歌「そんな事はどうでもいい! 曜ちゃん、単刀直入に聞くよ!!」
曜「は、はい!!」ビクッ
千歌「その子は一体誰なの!? どうして同棲してるのさ!!?」
曜「同棲!? べ、別にそんな事は……」
千歌「誤魔化しても無駄なんだからね! その子が曜ちゃんの家から出てくる所もちゃーんと確認済みなんだよ!」
アストルフォ「あー……家からずっとつけてたのは君たちだったのか」
曜「アストルフォちゃん!? 気が付いてたなら先に教えてよ!」
アストルフォ「いやー、何だか面白そうだなぁって思ったからさ」
梨子「曜ちゃんとその人との関係に文句は言うつもりは無いけど、曜ちゃんは一応アイドルなんだよ? 異性の子と街中を二人きりで歩くのは良くないわ」
曜「あはは、ごめんごめん。……ん、異性の子?」
千歌「梨子ちゃん何言ってるの? どこに男の子がいるっていうのさ」
梨子「そのアストルフォっていう子に決まっているじゃない! どう見たって男の子、いや男の娘じゃない!!」
千歌「はあ? 梨子ちゃん……大丈夫?」
曜「いやいや、男の娘ってさ……意味が分からないよ」
アストルフォ「ほえぇ……こりゃ驚いた」
曜「ごめんね。梨子ちゃんも悪気が合って言ったわけじゃ――」
アストルフォ「よく僕が男って分かったね? 初見で見破られたのは初めてかも」
59 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:29:36.02 ID:Hn5+HR340
曜「ほら、アストルフォちゃんだってこう言って……え゛!?」
千歌「嘘でしょ!!?」
曜「そ、そんな……だって、ウソおお!?」
アストルフォ「ほら、曜ちゃんが着替えるとかなんかは部屋から出て行ったじゃん。きっと気が付いてないんだろうなーって思ったし」
曜「え、え、えええええええ!!!!? 最初に言ってよ!!!!!!」
アストルフォ「えへへへっ、ごめん♪」テヘッ
千歌「おぉ……男の子だって分かっていても可愛いと思ってしまう」
梨子「それで、そのアストルフォ君とは一体どういう関係なの?」
アストルフォ「えー、ちゃん付けでいいんだよ?」
梨子「アストルフォ“君”とは、どういう関係なのかしら?」
アストルフォ「ちぇー、ダメかぁ……」
曜「うーん、どうやって説明すればいいんだろう……?」
アストルフォ「まあ、簡単に言えば居候だね! 新しいマスターを見つける為に一時的に住まわせてもらっているんだ」
千歌「その“ますたー”って何?」
アストルフォ「……ごめん、詳しくは言えないんだ」
曜「何だか訳ありって感じなんだよね。初めて会った時も傷だらけの姿で空から落ちてきたんだよ?」
千歌「『親方! 空から女の――』」
梨子「止めなさい」
千歌「でもまあ、想像していた関係とは違うみたいで安心したよ〜」ホッ
曜「どういう意味?」キョトン
千歌「なんでもなーい」
曜「えー、教えてよ千歌ちゃん」
千歌「いやだよ〜だ。恥ずかしいから絶対に教えないもん」ニシシ
アストルフォ「ふふ、仲がいいんだね。この子達の為にも早くマスターを見つけないと……」
梨子「あれ? 何かおかしくない?」
60 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:32:13.19 ID:Hn5+HR340
曜「何がおかしいの?」
梨子「何だか、霧が出てきたような……」
アストルフォ「ッッ!!」ゾッ
千歌「……なんだか……力が……抜け……て」ドサッ
梨子「あ……れ、意識……が………」ドサッ
曜「えっ、二人ともどうしたの!?」
アストルフォ「大丈夫、霧の吸い込んだせいで意識を失っただけだよ。今から連れ出せば助かる」
曜「私は平気なのは……何で?」
アストルフォ「仮契約とは言え、曜ちゃんは僕のマスターだからだよ。魔術師では無いけれど、少しだけ耐性が付与されたんだと思う」
曜「魔術師? 何の話をしているのさ?」
アストルフォ「ごめん、詳しく話している時間は無いみたい……」カチャッ
――ヒタッ、ヒタッ、ヒタッ
アストルフォ(最悪だ……まだマスターが見つかっていないのに!! アサシンに見つかった)ギリッ
ジャック『――その子が、あなたの新しいマスター? 前のより弱そうだね』クスクス
曜「ど、どこから声が――」
アストルフォ「曜!! 二人を連れて今すぐ逃げるんだ!!」
曜「二人を連れて!? 無理だよ!!」
アストルフォ「無理でもやって!! このままじゃ奴に殺される!!!」
曜「殺されッ……!?」
状況が理解できない曜。
だが、アストルフォの鬼気迫る表情と言葉に押され、行動に移す。
一先ず、千歌と梨子を抱きかかえて運ぼうとする。
しかし、いくら曜でも、意識を失った女の子を二人も抱えるのは筋力的に困難だった。
曜「ぐ、ぐううう……流石に二人を抱えるのは、キツイ……!!」グググ
アストルフォ「早く!! 敵が襲ってくる前に!!!」
曜「そんな事……言われても!!」
ジャック『大変そうだね? じゃあ、早く終わらせてあげるよ』カチャッ
アストルフォ「ヤバイ……何か来る!!?」
61 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:35:06.48 ID:Hn5+HR340
霧の中に姿を眩ますジャック。
このアドバンテージを最大限に生かすべく、宝具による先制攻撃を仕掛ける。
ジャック『比よりは地獄。“わたしたち”は炎、雨、力――殺戮をここに』
ジャック「解体聖母(マリア・ザ・リッパー)―――!!」
アストルフォ「ッ!!! 曜!!!!!!!!」
曜「えっ?」
――ザクッ!!!
アストルフォ「………」ボトボトボト
曜「何? 何が起きたの? 今の音は――」
アストルフォ「………何でも……ない。曜は……そのまま………進め」
曜「アストルフォ……ちゃん?」
アストルフォ「いいから行けよ!!! 早く!!!!!」
曜「わ、分かった……」
ジャック「凄いね。お腹から中身が零れ落ちているのにまだ死なないなんて」
アストルフォ「……ごほっ、だ、この程度で、死ぬなら……サーヴァントになんか……なってない!!」
ジャック「うふふ、思う存分解体させてね?」
アストルフォ「曜は……殺させない!! 今度こそ……僕が絶対に守り切ってみせる!!!」
ジャック「……」ニヤッ
62 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:35:48.26 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
曜「はぁ、はぁ、くっうぅ……お、重い……千歌ちゃんも梨子ちゃんもちょっと太った?」
千歌「………」
梨子「………」
曜「はは、聞こえていたら怒られるね」
曜(何だろう……凄く嫌な予感がする。何となくだけど……もう二度とアストルフォちゃんとは会えない、そんな気がする)
曜(このまま私だけ逃げていいの? 私に出来る事は何も無いの?)
曜(まだ……アストルフォちゃんの事、全然知らないのにここでお別れなの……?)
ガクンッ
曜「あれ……いきなり力が入らなくなった……よ……?」ドサッ
曜(何で、さっきまで平気だったのに……)
アストルフォ『仮契約とは言え、曜ちゃんは僕のマスターだからだよ。魔術師では無いけれど、少しだけ耐性が付与されたんだと思う』
曜(耐性が消えた……つまりアストルフォちゃんとの契約が切れた? じゃあ、アストルフォちゃんは……どうなったの?)
曜(ヤバッ……い、しき……が………)
――ちゃん! ――ようちゃん!!
曜「………誰? 誰が……呼ん、で………」
――曜ちゃん!!!!
63 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:37:00.26 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ジャック「ふふふ〜〜ん♪」
アストルフォ「……ひゅーっ、ひゅーっ」
ジャックは鼻歌交じりにクルクルとアストルフォの左腕を回している。
圧倒的な力の差に成す術無く敗北。
アストルフォは文字通り“解体”されてしまった。
ジャック「武器もまともに生成できないくらい魔力が枯渇していたなんてね。弱すぎて欠伸が出ちゃった」
アストルフォ「……うる、さい」
ジャック「宝具も武器も使えない状況でよくここまで耐えられたね。しかも宝具もまともに喰らったのにさ、ちょっとショック……」
アストルフォ「……ごほっ、へへ……大した宝具じゃ……なかった、ね」ニヤッ
ジャック「むっ、怒ったよ!!」
ジャック「――こうなったらさっきの子も解体しちゃおう」
アストルフォ「!?」
ジャック「実はお母さんから浦女の生徒を何人か襲うように言われているんだ。丁度いいからあの子にするよ」
アストルフォ「や、やめ……ろ……! 曜に……手を…出すな!!」
ジャック「そのまま指を咥えて見ていなよ。あ、ごめん、もう咥える指は無かったね!」ケラケラ
アストルフォ「き、貴様アアアアアア!!!!!」
ジャック「まだ元気いっぱいだね。……うるさいから黙らせよう」カチャッ
アストルフォ(ちくしょう……僕は、また守れないのか……何が英霊だ、何がサーヴァントだ……僕は……無力だ)
アストルフォ(お願いだ……誰でもいい、誰でもいいから……曜ちゃんを、僕の友人を守って下さい………)
ジャック「――バイバイ」グシャ
アストルフォ「――か、はっ……!!?」
――ビュン!!!
霧の向こう側からジャック目がけて高速で矢が飛来する。
掌を貫き、持っていたナイフが吹き飛ばされた。
ジャック「ッ!!? この矢は!!」
アストルフォ「……?」
ダイヤ「見つけましたわ、アサシン……いえ、ジャック・ザ・リッパー!!」
ジャック「へえ……学校の時以来だね。もしかしてあの時より矢の威力も精度も上がった?」
アストルフォ「あ、あな……た、は……?」シュウゥゥゥ
ダイヤ「安心してください。曜さんはわたくしのマスターが保護しました」
アストルフォ「……そっか、あり、が……と……」シュウゥゥゥン……
ジャック「消えちゃったね。しぶといサーヴァントだったなぁ」
ダイヤ「………ッ」ギロッ
64 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:41:34.62 ID:Hn5+HR340
ジャック「そんなに睨まないでよ。でもさ、アーチャーなのに正面に出てきていいの? 遠距離攻撃が売りなのにそれを捨てるなんて」
ダイヤ「ええ、これが最善の策ですので」
ジャックは前へ飛び出す。
最短距離でダイヤの首元を狙う。
対するダイヤは武器を収め、両手をだらりを落とす。
ジャック「――――取った!!!」ビュン
ダイヤ「あなたも言えた立場ではないでしょう。アサシンの強みは、気配遮断からの不意打ち。正面から襲い掛かるのは愚策では?」
ジャック「ああ?」イラッ
ダイヤ「うらああああああああ!!!!!」グシャ!!
ダイヤはジャックの攻撃を躱しつつ、渾身の右ストレートを頬へ叩きこむ。
完璧に決まったカウンターパンチ。
その場でふらつくジャックに対し、今度は顔面に拳を入れる。
ジャック「ぶっ、ぐふぅ!? か、はっ……!!?」
ダイヤ「遠距離でちまちま狙って倒したら、あなたを殴れないでしょ」バキッ!!
ジャック「痛ッ!!? アーチャーのクセに弓矢を使わないの!?」
ダイヤ「はっ!! アーチャーが弓矢を使う訳がないでしょう!!!」
殴る、殴る、殴る。
防御の隙も、反撃の機会も、撤退さえも許さない猛攻。
セイバーから教わったのは弓の技術ではなく、近接戦闘だった。
素手での戦い方を叩きこまれたダイヤに圧倒されるジャック。
ダイヤ「無関係の生徒を危険に晒し!!」バキッ!!
ダイヤ「大切な友人の命まで狙った!!!」グシャ!!
ジャック「ごっ、ごほっ、ごほっ」ボタボタ
ダイヤ「そんなあなたを……わたくしは絶対に許しません。一発ぶん殴らなきゃ気が済まない!!!」グシャア!!!!!
地面に叩きつけられるジャック。
ダイヤの力強いパンチを全て浴びた彼女は既に虫の息だった。
65 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:43:15.43 ID:Hn5+HR340
ジャック「う、あ、うぅ………はは、なら一発だけで許し……てよ」ドサッ
ダイヤ「黙りなさい。貴様の言い分など聞く耳持ちません」
ジャック「酷い……なぁ。こんな幼い……女の子をボコボコにして……楽しかった?」
ダイヤ「……いいえ、最悪の気分ですわ。もう二度とごめんです」
ジャック「だろう……ね。まさか……素手で倒される……なんて………」
ダイヤ「この距離ならば、矢は絶対に外しませんわね」ギギギギッ
―――ドスッ!!!
ジャック「ッ!!! ごめんなさい、お母………さん」シュウゥゥゥン
ダイヤ「……消滅を確認。アサシンのサーヴァントを撃破しました」
66 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:44:47.13 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ルビィ「お姉ちゃん!! 良かった、無事だったんだね!!」
ダイヤ「当然でしょう。わたくしが負けるはずがありませんわ」
ルビィ「そりゃそうだけど……無傷で帰って来てくれて良かった」ニコ
ダイヤ「サーヴァント2騎の消滅を確認しました。片方はアサシン、もう片方のクラスは不明ですが、曜さんの隣で歩いていた人物でした」
ルビィ「……そう」
ダイヤ「曜さん達の容態は?」
ルビィ「うん、霧の毒の影響で意識を失っちゃったけれど、今は顔色も良くなってきてる。もうじき目を覚ますと思うよ」
曜「……う、ううん………」
ダイヤ「曜さんが起きそうですわね。隠れてきますわ」ササッ
曜「あ……れ、私……どうやってここに?」
ルビィ「曜ちゃん」
曜「ルビィちゃん……? 千歌ちゃんと梨子ちゃんは?」
ルビィ「隣で寝ているよ。二人とも無事だから安心して」
曜「そっか……良かった」ホッ
曜「ねえ、アストルフォちゃんは? さっき沼津で私と一緒にいた子なんだけど……戻って来てない?」
ルビィ「………」
曜「やっぱり……アストルフォちゃんは――」
ルビィ「大丈夫、アストルフォちゃんは無事だよ」
曜「!」
ルビィ「二人が探していたマスターが駆けつけてくれたんだ。アストルフォちゃんはその人と一緒に行っちゃった」
曜「ああ……見つかったんだね」
曜「またいつか、会えるかな?」
ルビィ「……うん、きっと会えるよ」ニコッ
曜(………そっか、アストルフォちゃんはもう―――)
曜「ふふ、ありがとう、ルビィちゃん」ニッ
67 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:47:01.88 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ちくしょう……ちくしょう!!! ジャックちゃんが、ジャックちゃんがああああ」
「どうして……どうして私の学校を救う願いを邪魔するの!?」
「許せない……私に逆らう奴らは全員消してやりたい……消してやる!!!」
???「ほう、物騒な望みを抱くマスターだな」
「誰!!?」
ランサー「私はランサーのサーヴァントだ。貴様のその願い、私が叶えてやろう」
「どうしてあんたが……そもそも、元のマスターはどうするの?」
ランサー「先日バーサーカーに致命傷を負わされてな……ついさっき死んだ」
「へー……マスターを簡単に死なせるんだね」
ランサー「元々相性が悪かったんだ。それに守る価値もないマスターだった。だが、君は違う。君となら大丈夫だと確信している」
「ふ〜ん……まあいいや、仕方ないから契約してあげるよ」
ランサー「ふっ、よろしく頼むぞ、マスター」ニヤリ
68 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:48:27.77 ID:Hn5+HR340
――
――――
――――――
ダイヤ『随分と暗くなってしまいましたわね』
ダイヤ母『あっちこっちお店を周ったから仕方ないわよ』
ダイヤ『ルビィが悩みすぎなのですわ……結局最初のお店にあった服を買ったではありませんか』
ルビィ『うぅ……ごめんなさい』シュン
ダイヤ母『いいのよ、折角の買い物だもの』
ダイヤ『お母様は運転に集中して下さい。この辺りは見通しが悪いせいで事故が多いのですから』
ダイヤ母『はーい♪』
ルビィ『お姉ちゃん、お茶残ってる? ルビィの無くなっちゃって……』
ダイヤ『ありますわよ。どうぞ』
ルビィ『ありがとう』
ルビィ『ゴクッ、ゴクッ……んぐっ!!? げほっげほっ!!!』
ダイヤ『あぁ!? 何ぶちまけているんですか!?』
ルビィ『ご、ごめ……げほっ、変なところに、入っちゃって、げほっ、げほっ』
ダイヤ『ちょっと待っていなさい』カチャッ
ダイヤ母『えー、お客様、走行中にベルトを外して立ち上がると大変危険でーす』
ダイヤ『からかわないで下さい。外さなきゃタオルが取れないんだから仕方ないでしょう!』
ダイヤ『あーあ……白いセーターにしみが残ってしまいますわ』フキフキ
ルビィ『うりゅ……ごめんなさい』
ダイヤ母『可哀想に……さっきから謝ってばかりじゃない』
ダイヤ『帰ったらすぐに洗いましょう』
ルビィ『うん。しみがちゃんと落ちるといいなぁ……』
――ププゥゥゥゥゥ!!!!!
ダイヤ母『――へあっ』ゾワッ
ダイヤ『はい? なんて気の抜けた声を――』
ルビィ(へ? どうして目の前に車が――)
――キキッーーーーー………ガシャーン!!!!
69 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:49:06.12 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ルビィ『………う、うぅ………』
ルビィ(体中が……痛い……何が、起きたの……?)
ルビィ『あれ? ……今日って、赤いセーターだったっ……け?』
――ポタッ、ポタッ
ルビィ(――ああ、これ全部……ルビィの血か………)
ダイヤ母『う、うぅ……』
ルビィ(お母さん……? 良かった、生きている)ホッ
ルビィ『お、おねえ……ちゃん? 大……丈夫……?』
――シーン……
ルビィ『お姉ちゃん? どうして返事を――』
ルビィ(待って……どうしてフロントガラスに穴が空いているの? そのガラスにあんなに血が付いているの?)
ルビィ(逆走してきた車を避けて、ガードレールにぶつかった。人を轢いたわけじゃないからあんな所に血が付く訳がない)
ルビィ(――じゃあ、あの血は? お姉ちゃんは? お姉ちゃんは……どうなったの??)
70 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:52:16.15 ID:Hn5+HR340
―――――――
―――――
―――
〜対アサシン戦 翌日 夜中〜
ルビィ「――――うわああああ!!!?」ガバッ
ダイヤ「る、ルビィ!? どうかしましたか!?」
ルビィ「はぁ、はぁ、はぁ……ゆ、夢……また……」
ダイヤ「怖い夢を見たようですわね。どんな夢を?」
ルビィ「……あの事故の夢だよ」
ダイヤ「……そう。やはり、よく見るのですか?」
ルビィ「……」コクン
ダイヤ「……そうですか」
ルビィ「ねえ、お姉ちゃんはやっぱり……あの事故で死んじゃったんだよね?」
ダイヤ「……ええ。事故の衝撃でフロントガラスを突き破り、崖下の海へ落下しましたわ。その際に左腕を失いました。それは見つかったんですよね?」
ルビィ「うん」
ダイヤ「海に叩きつけられ、そのまま沈んでいきました」
ルビィ「じゃあ、溺死ってこと?」
ダイヤ「いいえ、血の匂いで寄ってきたサメに食されました」
ルビィ「ッッ!!?」ゾワッ
ダイヤ「徐々に意識が遠ざかる中、私は……」
ダイヤ「………」
ルビィ「お姉ちゃん?」
ダイヤ「何でもありませんわ。まあ、色々あって英霊の座に入る事が出来ました」
ルビィ「お姉ちゃんは別の英霊の力を借りているんだよね? そろそろ教えてよ」
ダイヤ「うーん……いや、ここまで来たら秘密のままで突き通しますわ」
ルビィ「ええぇ……がっかり」ムスッ
ダイヤ「ふふ、そう拗ねないで下さいな」
ルビィ「いいもん、聖杯戦争が終わったら絶対教えて貰からね!」
ダイヤ「いいですとも。その時は必ず」フフッ
ルビィ「今はバタバタしてるから自由な時間がないけれど、それももうすぐ終わる。お姉ちゃんは全部終わったらまず何がしたい?」
ダイヤ「そうですわね……ああ、新しい服が欲しいですわ。毎日スーツは窮屈で仕方ないので」
ルビィ「なら最初にするのはお買い物だね! 約束だよ?」
ダイヤ「ええ、約束ですわ」ニコッ
ダイヤ「さあ、まだ夜中です、もうひと眠りできますわよ」
ルビィ「はーい……お休みな――」
――ピカッ!!!
71 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:53:37.07 ID:Hn5+HR340
再び眠りに就こうとしたその時、外から白い光が差し込んできた。
その光は日中の太陽の光よりも眩かった。
いきなり真夜中から昼間に切り替わったと錯覚するほどである。
ルビィ「うわ眩しッ!? 何なの一体?」
ダイヤ「違う……何も感じないんですか!?」
ルビィ「感じるって何を……んな!? このとんでもない魔力は何!!?」
――プルルル、プルルル
ルビィ「もしもし鞠莉さん!?」
鞠莉『ルビィ!! 外の異変には気が付いているわね!!?』
ルビィ「うん、あれは一体何なの?」
鞠莉『セイバー曰く、あれは宝具による攻撃らしいわ』
ルビィ「ほ、宝具!? あんな巨大な塊が!?」
鞠莉『残ったサーヴァントはランサーのみ。あれだけの宝具が使えるとなると、相当の強敵よ』
鞠莉『目測で直径500メートルを超えている。しかも今も大きくなっているわ』
ルビィ「あれより大きくなるの……」
鞠莉『あんなものが落ちてきたら、地図上から内浦が消滅するわ!! それだけじゃない、余波で周辺の地域も壊滅する!!!』
ルビィ「んな!!!?」
鞠莉『発生源は淡島神社よ! 私も急いで向かっているから、今すぐ準備して!!!』
ルビィ「分かってる!! 直ぐに向かう!!」
72 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:55:39.69 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ダイヤ「この先に最後のサーヴァントがいるんですわね……」
セイバー「凄まじいプレッシャーだ……姿が見えないにも関わらず足がすくみそうになる」
鞠莉「珍しく弱気ね? 大丈夫なの?」
セイバー「問題無い。聖杯まであと少しなんだぞ? ここで負けるわけにはいかないさ」
ルビィ「そうだ……この敵を倒せば、お姉ちゃんを取り戻せるんだ!!」
ダイヤ「……」
鞠莉「ルビィ、ダイヤ、よく聞きなさい」
ルビィ「?」
鞠莉「――いい? 私達の敗北はそのまま内浦の人々の死を意味するわ。私達は絶対に負けるわけにはいかない事を改めて肝に銘じておきなさい」
ルビィ「………ッ!」ブルッ
ダイヤ「ルビィ、恐れる必要はありませんわ。もしもの時はわたくしの“とっておきの一撃”がありますから」
ルビィ「とっておき……あ、遂にお姉ちゃんの宝具が見られるんだね!」
ダイヤ「……ええ」ニコッ
ルビィ(あれ、今の笑顔は何だか……?)
セイバー「さあ、行くぞ!!」
鞠莉「ええ!!」
ルビィ「う、うん!!」
ダイヤ「参りましょう!」
73 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:58:08.80 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ランサー「――――来たか」
ルビィ(綺麗な白馬……持っているのは槍、なのかな?)
鞠莉「セイバー……彼女は本当にランサーなの?」
セイバー「………バカな、そんな!?」
鞠莉「せ、セイバー?」
セイバー「見ただけで分かる……奴の持っているその槍、その聖槍からして間違い無い!!」
ダイヤ「あの白銀の甲冑を身に纏った騎士は一体誰なのです?」
セイバー「あの聖槍は“ロンゴミミアド”星の聖槍にして星を繋ぎ止める嵐の錨。あんなものを持っている英霊など一人しかいない!!」
セイバー「――アルトリア・ペンドラゴン……奴はブリテンの騎士王だ!!!」
鞠莉「どうして……ブリテンの王様だった貴女が、多くの人々の命を奪おうとするの!?」
ランサー「理由か? そんなものは簡単だ。我がマスターがそれを望んだからだ。もっとも、上空のあれは令呪を全て使用し、残りの魔力も一滴残らず行使して作り上げてしまったからな……既にマスターは息絶えてしまった」
ほら、そこだと指を刺す。
その先には見るも無残に痩せこけた元アサシンのマスターが倒れていた。
憎き敵ではあったが、その惨さに流石のダイヤも顔を歪ませる。
ダイヤ「今すぐ攻撃を中止しなさい!!」ビュンビュン!!
無数の矢を連続で放つ。
これまでの訓練により、弓の威力は飛躍的に向上。
その矢は音速を超え、大地をも割る。
だが、そんな矢をランサーは造作もなく全て弾き飛ばす。
ダイヤ「このっ!!?」
ランサー「無意味だ。止めたいのならば力尽くで止めてみせよ!!」
ランサー「――聖槍、抜錨」
聖槍にかけられていた拘束が解放され、槍全体が美しく光り輝く。
同時に魔力の量が爆発的に跳ね上がった。
セイバー「クソッ!! 全員俺の後ろに来い!!!」
ランサー「貴様らと戯れるつもりは無い。この一撃で葬ってやろう」
ダイヤ「あの魔力量……マズいですわ!! こうなったらわたくしの宝具で――!!!」
セイバー「ダメだ!! まだ命を懸けるには早い!!」
ダイヤ「ですがッ!!」
ランサー「消えろ!!!!」
74 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:58:44.81 ID:Hn5+HR340
眩い光と共に、強力なビームを発射。
回避は不可。
喰らえば即死。
であれば、正面から受けるしか無かった。
セイバーはその攻撃に対し、右手を突き出す。
セイバー「――――I am the bone of my sword……」
ダイヤ(魔術詠唱? 一体何を……)
75 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:59:13.59 ID:Hn5+HR340
セイバー「“熾天覆う七つの円環”(ロー・アイアス)――――!!!!!」
76 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:59:54.60 ID:Hn5+HR340
――ドゴゴゴゴゴッ!!!!!
セイバーの右手から七枚の光の盾が花弁のように展開した。
熾天覆う七つの円環。
一枚一枚が城壁と同等の防御力を誇り、セイバーが現状使用できる最強の防具。
最強の矛と最強の盾の衝突。
鞠莉「あ、アイアスの盾ですって!? あなたギリシャ神話の英霊なの!!?」
セイバー「残念ながら違う!! これは私が魔術で投影した宝具だ!!!」
鞠莉「投影!? これって投影魔術なの!!?」
セイバー「マスター!!! 魔力の供給に集中してくれ!! このままじゃ……持たない!!!」
――パリンッ!!
ルビィ「花弁が割れた!?」
ダイヤ「鞠莉さん、セイバー!!」
――パリン、パリンッ!!!
セイバー「ぐっ、ぐおおおおおおおおぉおお!!!!!」
鞠莉「う、ぐう……ガンガン魔力を持っていくわね。これだけ使ってるんだから絶対に防ぎきりなさい!!!」
――パリン、パリリンッ!!!
セイバー「があああああぁああああああああああ!!!!」
77 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:02:20.39 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ランサーの攻撃が止まる。
四人は生き残った。
ただ、この攻撃を防ぐだけで鞠莉とセイバーの魔力の半分以上を消費してしまった。
ランサー「……ほぅ、我が聖槍の一撃を防いだか」
セイバー「……はぁ、っは、ぁ、ぐ―――」ガクッ
鞠莉「は、ははは……大量に魔力を消費してぎりぎりだなんて、シャレにならない……わ」ガクッ
ランサー「いいだろう、次こそは宝具にて貴様達を消し去る」
ダイヤ「今のが……宝具による一撃では、無かった!?」
ルビィ「じゃあ、次の攻撃は……」
セイバー「……ああ、残念ながら、あれ以上の攻撃を防ぐ盾は持ち合わせていない」
ダイヤ「――ならばっ!!!」ギギギッ
セイバー「無駄だ、通常の君の矢では彼女の体に届かない」
ダイヤ「ではどうするのですか!?」
セイバー「まあ待て、手が無いわけじゃない」
ダイヤ「!!」
鞠莉「へぇ……まだ奥の手を残しているのね?」
セイバー「当然だ、“あるに決まっているだろ”」
セイバー「……だが、分かっているなマスター」グググ
鞠莉「……ええ、分かってる」
最後の力振り絞り、立ち上がる鞠莉とセイバー。
立ち上がる強敵を前に二人は不敵に微笑んだ。
セイバー「――魔力を回せ、決めに行くぞマスター!!」
鞠莉「OKよ!! セイバー!!!!」
残り魔力はあと僅か。
もう宝具を放つだけの量も残っていない。
それでも、鞠莉には三画の令呪が残っている。
その一つ一つには非常に強力な魔力が込められており、サーヴァントに対して本来では不可能な事でさえ可能とする。
鞠莉「――令呪をもって命ずる、セイバー、宝具にてランサーを討て!!」キュイィィィン!!
78 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:02:46.23 ID:Hn5+HR340
セイバー「――――投影、開始(トレース オン)」
79 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:03:53.49 ID:Hn5+HR340
セイバーは自身の宝具を持たない。
イメージを元に、魔力のみで物体を作り出す“投影魔術”を使用し、今まで目視した宝具を模倣しているだけ。
剣であるならばほぼ全ての武器を投影可能だが、目視で構造が読み取れない神造兵装は完全な再現が出来ない。
セイバー「――ぐ、ぐあああああああああああああ!!!!!!?」バチバチバチ
だが、今セイバーが行っているのは、その神造兵装の投影。
彼が唯一、己の世界(心象世界)にストックしている一刀。
それを、令呪の力で強引に投影する。
セイバー「――は、ぁ、ふうぅぅ………」バチ、バチバチバチッ
ランサー「なるほど、“聖剣”の方を造り出したか。だが、そんな模倣品で本当に倒せると思っているのか?」
セイバー「確かにな、俺の投影じゃ真に迫ることは出来るが、完全な再現は無理だ。令呪の力で半ば強引に造り出したこれも、君の聖槍には到底及ばないだろう」
セイバー「――だがな」バチバチッ
鞠莉「重ねて令呪をもって命ずる!!!」キュイィィィン!!
ランサー「何!?」
――バチ、バチバチッ、バチ!!!
セイバー「――これならどうだ?」カチャッ
ランサー「安直な考えだな……足りなければ増やせばいいと思ったか? いくら模倣品とはいえ、真に迫っているのだろう? ならば、それを一人で二本も扱える訳がない」
セイバー「分かっているさ。ほら、受け取れ」ヒョイ
ダイヤ「ちょっ!? 聖剣をそんな無造作に投げないで下さい!!」パシッ
セイバー「真名は知っているな?」
ダイヤ「当然ですわ。これ程の聖剣、見ればすぐに分かります」
セイバー「ならいい。贋作且つ一回きりの使い捨てだが、真名解放は出来る」
ダイヤ「全く……あなた、そんでも無い英霊ですわね」
ダイヤ「マスター、これから大量の魔力を消費します。少ししんどいと思いますが、我慢して下さい」
ルビィ「大丈夫! 遠慮しないで使い果たしちゃって!!」
ランサーの聖槍が再び輝き始める。
そして、空高く舞い上がった。
両陣営、宝具の発動準備に入る――
80 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:04:26.45 ID:Hn5+HR340
ランサー「――――最果てより光を放て」
セイバー「――――束ねるは星の息吹」
81 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:04:52.37 ID:Hn5+HR340
ランサー「――其は空を裂き地を繋ぐ、嵐の錨!!」
ダイヤ「――輝ける命の奔流。受けるがいい!!」
82 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:05:20.65 ID:Hn5+HR340
ランサー「最果てにて(ロンゴ……)――――」
ダイヤ・セイバー「“約束された(エクス……)――――」
83 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:05:58.34 ID:Hn5+HR340
「輝ける槍(ミニアド)――――!!!!!!」
「――――勝利の剣(カリバー)!!!!!!」
84 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:07:29.63 ID:Hn5+HR340
二つの聖なる光が、お互いの存在を打ち消さんばかりに鬩ぎあう。
ダイヤ「あああああああああああああああ!!!!!!」
セイバー「うおおおおおおぉぉぉおお!!!!!」
ルビィ(体中の力が抜ける……想像以上の消費量だ……よ)ガクンッ
ルビィ(でもダメだ!! ここで頑張らなきゃ……負けるわけにはいかない!!)
ルビィ「――お姉ちゃん!!!」
ダイヤ「くうぅぅ!!!」
ルビィ(そんな……二人がかりで押されてる!?)
ダイヤ「ダメ、押し負ける―――」
セイバー「――マァァスタアアアァァァァ!!!!!!!!」
鞠莉「最後の令呪よ!!! 私の魔力、一滴残らず使い果たしなさい!!!」
鞠莉「だから……勝て!! セ、イバー―――………!!!!!」キュイィィィン!!
令呪による最後のブースト。
セイバーは正真正銘最後の手段を取る。
投影宝具という強みを最大限に生かした裏技。
宝具を敢えて破壊することでその魔力を爆発的に開放する。
―――壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)
この一撃によりランサーの宝具を吹き飛ばす。
残った宝具はダイヤの聖剣ただ一つ。
ランサー「んな!?」
ダイヤ「―――いっけえぇぇぇぇ!!!!!!!!」
―――カッ……!!!!
聖剣から放たれる光が、ランサーの全てを包み込みこむ。
――そしてその身体を跡形も無く消し去った。
85 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:09:05.26 ID:Hn5+HR340
ダイヤ「っ……あ、く、はぁ……―――」ドサッ
ルビィ「は……はぁ―――勝った、の?」
鞠莉「ええ、ランサーは完全に消滅した。私達の……勝利よ!!」
セイバー「……役目は果たせたようだな」シュウゥゥゥ…
ルビィ「セイバーさん……体が……」
セイバー「元々、自壊前提の投影だったんだ。まあ、マスターの望みを叶える為にも、俺は消えなくてはならなかったから丁度いいさ」
鞠莉「……セイバー」グスッ
セイバー「ふっ、そんな顔をするな、マスター」
鞠莉「あなたがサーヴァントで良かったと、心から思っている。私達に力を貸してくれて……本当にありがとう」
セイバー「サーヴァントがマスターに力を貸すのは当然の事だ」
鞠莉「それでも、感謝している」
セイバー「……ああ、素直に受け取っておこう」
セイバー「―――アーチャー」
ダイヤ「………」
セイバー「いや、黒澤ダイヤ。これで君は聖杯の力で受肉出来る」
ダイヤ「……ええ」
セイバー「だが、運命というのは残酷だな……最後の最後で上手くいかない」
ダイヤ「……全くその通り…ですわね」
セイバー「後悔しない方を選べ。マスターを……鞠莉を頼んだぞ―――」シュウゥゥゥン……
86 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:10:53.06 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ルビィ「セイバーさんの最後の言葉……あれは一体―――?」
ダイヤ「戦いはまだ終わっていない、という事です」
ルビィ「終わってない?」
ダイヤ「気が付きませんか?」
ルビィ「? 特に何も変わってないよね?」
鞠莉「嘘でしょ……どうしてランサーを倒したのに空のあれが消えて無いの!!?」
ルビィ「!!!」
ダイヤ「ゆっくりではありますが、徐々に落下していますわね。このペースならあと30分で地上と接触するでしょう」
鞠莉「なら、急いで街の人々を避難させなきゃ!!」
ダイヤ「こんな明け方に街の人々を全員避難させることが可能だとお思いで? 余りにも時間が足りない」
ルビィ「ならどうするのさ!!?」
ダイヤ「わたくしの宝具を使います」
ルビィ「宝具!」
ダイヤ「恐らく、あの程度の規模なら相殺出来るでしょう。魔力が枯渇した今、残りの令呪の使用は不可欠ですけれど」
ルビィ「なら早速―――」
鞠莉「ルビィ待ちなさい」
ルビィ「?」
鞠莉「さっきダイヤが宝具を使おうとした時のセイバーの言葉、聞き逃さなかったわよ」
ルビィ「……あ」
鞠莉「『まだ命を懸けるのは早い』。確かにセイバーはそう言っていた。ダイヤの宝具は……命と引き換えに使用するものなんでしょ?」
ダイヤ「………」
ルビィ「答えて……答えてよ!!!」
ダイヤ「――わたくしは“戦いを終わらせる英雄”から英霊としての力を借りました」
鞠莉「“戦いを終わらせる英雄”……?」
ダイヤ「古代ペルシャの伝説の大英雄と言えば分かりますか?」
ルビィ「――……『アーラシュ・カマンガー』。なら、お姉ちゃんの宝具は……」
ダイヤ「……まあ、そう言う事です」
ルビィ「でも待ってよ、それじゃあ!! ……何の為にここまで戦って来たのさ!? 聖杯はもう目の前なんだよ!! あと一歩で……お姉ちゃんが居る、元の日常に戻れる!!」
ダイヤ「………」
ルビィ「認めない……他の手段を考えよう!!」
鞠莉「いいえ、もう内浦を救うにはこれ以外の方法は無いわ」
ルビィ「鞠莉さん!? 鞠莉さんだってお姉ちゃんを生き返らせる為に頑張って来たんでしょ!?」
87 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:12:15.36 ID:Hn5+HR340
鞠莉「………ぅ」ポロポロ
ルビィ「ッ!? 鞠、莉……さん」
鞠莉「……それでも、ダイヤの宝具以外に方法は無い……のよ」
鞠莉「でも、ダイヤもあんまりじゃない。私が問いたださなかったら、何も言わずに死ぬつもりだったのでしょ?」
ダイヤ「申し訳ございません……絶対に反対されると思ったので」
鞠莉「もう……これしかないんだよね」
ダイヤ「……ええ」
ダイヤ「事故の際、冷たい海に沈みながら、わたくしはずっと願っていました」
ダイヤ「もう一度、あともう一度だけルビィに逢いたい。鞠莉さんやAqoursのみんなに逢いたい。強く、強く、ただそれだけを強く願っていましたわ」
ダイヤ「どうして彼が力を貸してくれたのか分かりませんが、そのおかげでこうしてもう一度逢うことが出来ました」
ダイヤ「やり残した事は無い……とは言えません。振り返れば、後悔ばかりの人生でした」
ダイヤ「―――それでも、わたくしはこの人生に満足しています。だって、わたくしの願いは、もう叶ったのですから」ニコッ
ルビィ「……何、それ………」
ダイヤ「ルビィ?」
ルビィ「何、何なの……自分は満足しただって? ふざけないでよ……ふざけんな!!!! 勝手に自分だけ満足しないでよ!!!!!」
ルビィ「ルビィはまだ満足なんかしてない!! ……まだ一緒に居たいんだ! 新しい服を一緒に買いに行く約束は!? やり残したことだって沢山あるんでしょ!? だったら簡単に生きるのを諦めないでよ!!!」
ルビィ「ルビィを……ルビィをまた、置いて逝かないでよぉ……」ポロポロ
ダイヤ「………ッ」
88 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:15:23.24 ID:Hn5+HR340
ルビィ「……なんてね」グシグシ
ルビィ「今のは間違いなく本音だけどさ、これしか方法が無いのはルビィでも分かる」
ルビィ「でも……それでも自分の気持ちを伝えなきゃ、一生後悔すると思ったから。だからごめんなさい、最後に困らせるようなこと言っちゃって」
ダイヤ「……いいえ、話してくれてありがとう」
ルビィ「あーあ、折角聖杯戦争に勝ち残ったのになぁ。残念だけど、“今回”は諦めるしかないか」
ダイヤ「……“今回”は?」
ルビィ「だって、なにも今回が最後の聖杯戦争じゃないでしょう? なら次回また勝てばいい」
鞠莉「確かに聖杯戦争は一定の周期で行われるけれど……でも次回は―――……少なくとも60年以上先よ?」
ルビィ「うん、知ってるよ。だから……次に会う時のルビィは、よぼよぼのお婆ちゃんになってるね」
ルビィ「ルビィが付けてるこの髪飾りがあれば、お姉ちゃんをサーヴァントとしてもう一度召喚できる」
ルビィ「今度も絶対に聖杯を勝ち取ってみせる。だから、だからね……もし、もしも次の聖杯戦争でもルビィがマスターに選ばれたら―――……その時はまた、お姉ちゃんの力を貸してくれますか?」ポロポロ
ダイヤ「……ええ、勿論ですわ」ニコッ
ルビィ「えへへ、ありがとう」
ダイヤ「ふぅ……ルビィ、時間がありませんわ。そろそろお願いします」
ルビィ「………っ」ゴシゴシ
ルビィ「第二の令呪をもって……命、ずる……」
ルビィ「……う、……うぅ………」ポロポロ
鞠莉「ルビィ……」
ルビィ「大丈夫、大丈夫だよ。もう、決めたから」グシグシ
ルビィ「―――……令呪をもって命ずる、お姉ちゃん、宝具にて迫りくる脅威を排除せよ」キュイィィィン!!
ルビィ「重ねて命ずる、私達を……内浦の人々を、救って―――!!!」キュイィィィン!!
89 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:18:51.99 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ダイヤ「……そろそろ、二人は安全なところまで避難しましたかしら? 相殺時の衝撃に巻き込むわけにはいきませんからね」
ダイヤ「ふぅ……結局、最後はまた独りですか。覚悟はしていましたが、やはり寂しいですわね」
ダイヤ「……本当にこれで良かったのでしょうか―――?」
『――ああ、胸を張れ。お前は間違っちゃいねぇさ』
ダイヤ「!! あなたは……」
『生前はどこにでもいる普通の女の子が、自らの命と引き換えに大切な人を守る決断をしたんだ。例え同じ力を宿した子が100人いても、その決断を出来る奴なんて一人もいないさ』
『やるべき時にやる奴が、英雄と呼ばれる。お前はもう、立派な英雄だよ』
ダイヤ「ふふ、伝説の大英雄のお墨付きとは……光栄ですわ」
『……すまなかったな。俺の宝具がこんな極端なもののばっかりに、辛い選択をさせちまった』
ダイヤ「とんでもないですわ。力を貸して下さったのが貴方だったからこそ、こうして守ることが出来るのですから」
『そうか……役に立てて良かったぜ』ニッ
『――……さあ、最後の大仕事だ! 俺が隣で見届けてやる。ぶちかまして来い!!!』
ダイヤ「ええ!! やってやりますわ、存分に!!!!」
ダイヤは天空に向けて矢を構え、真名を解放する―――
90 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:19:59.55 ID:Hn5+HR340
ダイヤ「―――陽のいと聖なる主よ。あらゆる叡智、尊厳、力をあたえたもう輝きの主よ」
ダイヤ「我が心を、我が考えを、我が成しうることをご照覧あれ」
91 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:20:32.79 ID:Hn5+HR340
ダイヤ「さあ、月と星を創りしものよ。我が行い、我が最期、我が成しうる聖なる献身を身よ」
ダイヤ「この渾身の一射を放ちし後に―――」
92 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:21:04.06 ID:Hn5+HR340
ダイヤ「―――我が強靭の五体、即座に砕け散るであろう!!」
93 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:21:39.83 ID:Hn5+HR340
ダイヤ(お別れです、ルビィ。……愛していますわ―――)
94 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:22:15.51 ID:Hn5+HR340
ダイヤ「“流星一条(ステラ)ァァァァッ―――!!!!!!」
95 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:23:12.77 ID:Hn5+HR340
ルビィと鞠莉は確かに見届けた。
朝焼けの空を駆けていく七つの光を。
二つの宝具は完全に消滅した。
こうして、ダイヤは二度目の死を迎える。
内浦を救ったこの英雄の名は内浦の歴史には残らない。
誰の記憶にも残らない。
“英雄・黒澤ダイヤ”の名は二人の記憶にだけ残るのだった―――
96 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:24:43.73 ID:Hn5+HR340
―――――――
―――――
―――
果南「やっほ、鞠莉」フリフリ
鞠莉「早かったわね。手続きはもういいの?」
果南「うん、後はやるから先に帰ってもいいってさ」
鞠莉「なるほどね」
鞠莉「病院の人達、驚いていたでしょ?」
果南「そりゃねぇ……朝起きたら父さんの病気が綺麗さっぱり消えているんだもん」
鞠莉「聖杯の力は本物だったってわけね。良かった良かった♪」
果南「鞠莉達の願いは、その……残念だったね……」
鞠莉「……仕方ないわよ。内浦を救うにはあれしか方法が無かったんですもの」
果南「ルビィがまた学校に来なくなったよね。流石にこのままもう………」
鞠莉「ルビィなら心配は要らないわ。今はちょっと疲れちゃっただけで、もうじき帰ってくるわよ」
果南「どうして言い切れるのさ?」
鞠莉「―――…だって、あの子にはもう明確な目標があるんですもの♪」ニッ
97 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:26:26.86 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ルビィ「………」ボーッ
―――ザッ、ザッ、ザッ
善子「こんな所にいたのね」
花丸「今日も一日中、海を見ていたの?」
ルビィ「善子ちゃん、花丸ちゃん……」
善子「もう三日も休んでいるじゃない。そろそろ出席日数がヤバイんじゃない?」
ルビィ「……善子ちゃん程じゃないよ」ジトッ
善子「……むぅ、毒舌を吐けるくらい元気なのね。安心したわ」
ルビィ「………」
花丸「………」
善子「………」
花丸「―――色々、大変だったみたいだね」
ルビィ「えっ」
花丸「大まかな事は鞠莉ちゃんから聞いたよ。話せない事も多かったみたいだから詳しくは分からなかったけれど……ルビィちゃんと鞠莉ちゃんが内浦を救ってくれたんだよね?」
ルビィ「……うん」
花丸「そっか……ありがとうね」ニコッ
ルビィ「――ルビィね、立派な黒澤家の跡継ぎになろうと思う」
花丸「……うん」
ルビィ「お姉ちゃんみたいに……ううん、お姉ちゃんが今までやってきた事をお姉ちゃん以上に頑張ってさ」
ルビィ「頑張って、頑張って、頑張って―――……お父さんもお母さんも認めて、今はいないお姉ちゃんも安心できるような……立派な跡継ぎになってみせる」
ルビィ「何年かかっても……必ず」
花丸「うん……マルも応援するずら♪」
善子「なら、まずはダイヤみたいに学校で一番成績を取らなきゃね。今まで休んで遅れた部分は大丈夫なのかしら?」ニヤニヤ
ルビィ「うっ……そ、それは……」ダラダラ
花丸「大丈夫ずら。ルビィちゃんが困った時はマルと善子ちゃんが助けるから」ニコッ
善子「ふん、仕方ないから手伝ってあげるわよ! その……友達、だから!!」プイッ
ルビィ「二人とも……ありがとう」ニッ
ルビィ(お姉ちゃん……ルビィ、頑張るから。どんなに辛いことがあっても頑張るから)
ルビィ(だから―――……)
98 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 23:27:05.80 ID:Hn5+HR340
『―――ルビィなら大丈夫です。わたくしも応援しますわ』
ルビィ「!!」キョロキョロ
善子「ルビィ?」
花丸「どうかしたずら?」
ルビィ「……ううん、何でもない」
ルビィ「―――ありがとう……じゃあ、またね、お姉ちゃん」ニコッ
おわり
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/22(金) 02:36:13.79 ID:VISsLX2Eo
つまんね
100 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/22(金) 02:49:58.28 ID:DMd4JdoHo
勢いはよかった乙
101 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sagesaga]:2017/12/22(金) 11:03:36.86 ID:3y4rNeTf0
pixivにまんま同じのがあるけど
102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/01/01(月) 21:36:47.57 ID:5CzbI7Ubo
面白かったぞ
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