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ダイヤ「聖なる献身」
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1 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:26:25.00 ID:Hn5+HR340
〜部室〜
千歌「――みんな、久しぶり」
鞠莉「……」
曜「…うん、久しぶりだね」
梨子「意外と集まった…わね」
果南「…でも、全員ってわけじゃないよね」
千歌「まぁ…そうだけど……」
鞠莉「ルビィはやっぱり……」
花丸「あれからずっと学校にも来てないずら…」
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1513859184
2 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:27:44.16 ID:Hn5+HR340
善子「定期的にずら丸と一緒にノートを届けに家に行っているんだけど…本人が出てきた事はないわ」
花丸「部屋にずっと引きこもっているんだって…」
鞠莉「そう…」
果南「流石に立ち直るには時間が掛かるよね…私達もまだ厳しいのに、妹のルビィじゃ……」
曜「まだ…遺体は見つかっていないんだよね? だったら――」
梨子「フロントガラスを突き破って崖から海に落っこちたのよ? 間違いなく即死だったと思う…」
花丸「ルビィちゃん……ずっと自分を責めてる。『あの時ルビィがお茶をこぼさなければ、お姉ちゃんはシートベルトを外さなかったのに……お姉ちゃんを殺したのは自分だ』って」
善子「でもさ……曜の言う通り、遺体が見つかってないなら生きている可能性だってゼロじゃないわよね!」
果南「……昨日、事故現場付近の海岸で人間の左腕が見つかったんだって」
曜・善子「「!!」」
千歌「まさか…その腕って」
果南「…うん、間違いなくダイヤの腕らしい。事故の時に切断されたってことだよね…」
曜「じゃあ…ダイヤさんは……もう…」
梨子「あの事故から二週間以上も行方不明となると生きている可能性は――」
千歌「その話は一旦そこまでにしよう」
3 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:28:44.49 ID:Hn5+HR340
曜「千歌ちゃん…?」
千歌「みんなに集まってもらったのは…今後のAqoursの活動について決める為だよ」
梨子「Aqoursの活動…」
千歌「本戦まで時間はまだあるけれど、このメンバーでラブライブを目指すのかどうかを決断しないといけない」
千歌「このまま解散するのか、8人で出場するのか。みんなはどうしたい?」
鞠莉「私は続けるべきだと思う!」
果南「私も鞠莉と同じだよ」
鞠莉「ここで辞めればダイヤは絶対に怒る。こんな形で解散するなんて望んでいないハズよ!」
鞠莉「みんなで優勝して……ダイヤの生きた証を残したい!」
花丸「マルは…今は決められないと思う」
曜「どうして?」
花丸「マルだって続けたいと思っている。でも、ルビィちゃんは? ダイヤさんのいないAqoursをどう思うかな…?」
鞠莉「それは…! …それは……」シュン
果南「……」
善子「まぁ…そうなるわよね」
梨子「ルビィちゃんが来るまで決定するのは無理だね…」
千歌「ルビィちゃん…――――」
4 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:29:13.69 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
黒澤母「――二人ともいつも来てくれてありがとうね」
花丸「いえ、お礼を言われるような事ではないですよ…怪我はもう治ったんですか?」
黒澤母「ええ、大丈夫よ。こんな怪我なんて時間が経てば勝手に治るから…」
善子「あの…ルビィさんは……」
黒澤母「……相変わらずよ。滅多に部屋から出てこないわ」
花丸「すうぅぅぅ――」
花丸「ルビィちゃーーーーん!!!! マル達に顔見せてくれるーーー?」
――シーン……
花丸「……ダメかぁ」
善子「そんなんで出てくるならとっくの昔に解決しているわよ」ハァ
黒澤母「ごめんなさいね。もう少しだけ待っていてくれる? あの子もきっと立ち直ってくれると思うから」
花丸「…分かりました。また来ますね」
善子「ルビィさんによろしく伝えておいてください」ペコリ
黒澤母「ええ、伝えておくわ。あ、帰り道には十分気を付けてね。ちょっと前に浦女の生徒が行方不明になったんでしょ?」
善子「気を付けます。ありがとうございました」
5 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:31:38.82 ID:Hn5+HR340
〜夜〜
ルビィ「――よし、完璧に書けた」
ルビィ(家の蔵から見つけたこの古い書物。ここには日本のとある地方都市で数十年に一度に行われる儀式について記されていた)
ルビィ(7人のマスターがそれぞれサーヴァントを呼び出し、持ち主のあらゆる願いを叶える聖杯を巡って争う『聖杯戦争』。これがこの地域でも古くから繰り返されている事が分かった)
ルビィ(所々文字が消えていて読めなかったけれど、周期的に考えて今度の聖杯戦争が行われるのは丁度この時期だった。聖杯戦争に勝って聖杯を手に入れれば…お姉ちゃんを生き返らせる!!)
ルビィ「召喚するための詠唱は覚えた。魔法陣も本の挿絵通りに書けた。後は間違えずに唱えるだけ…」
ルビィ「大丈夫、大丈夫。ルビィなら……出来る」
ルビィ「ふぅー………」グッ
6 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:32:09.70 ID:Hn5+HR340
ルビィ「――素に銀と鉄。礎に石と契約の大公」
7 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:32:40.76 ID:Hn5+HR340
「降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ」
8 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:33:20.30 ID:Hn5+HR340
『王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ』
9 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:33:52.84 ID:Hn5+HR340
ルビィ「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)」
「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)」
『閉じよ(みたせ)』
10 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:34:18.83 ID:Hn5+HR340
ルビィ「繰り返すつど五度。ただ、満たされる刻を破却する」
11 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:35:00.49 ID:Hn5+HR340
ルビィ「――告げる」
「――Anfang(セット)」
『――告げる』
12 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:35:27.92 ID:Hn5+HR340
ルビィ「汝の身は我が下に、我が運命は汝の剣に」
13 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:35:57.10 ID:Hn5+HR340
「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!」
14 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:36:25.06 ID:Hn5+HR340
ルビィ「誓いを此処に」
「我は常世総ての善と成る者」
『我は常世総ての悪を敷く者』
15 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:36:53.31 ID:Hn5+HR340
ルビィ「汝三大の言霊を纏う七天――」
16 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:37:20.23 ID:Hn5+HR340
ルビィ「抑止の輪より来たれ、天秤の守りてよ―――!!」
「抑止の輪より来たれ、天秤の守りてよ―――!!」
『抑止の輪より来たれ、天秤の守りてよ―――!!』
―――カッ!!
17 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:38:08.69 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「―――…ほぅ、まさかこのクラスで召喚される日が来るとは…」
セイバー「サーヴァントセイバー、召喚に応じて参上した。君が私のマスターか?」
「その通りよ。バッチリお目当ての英霊を呼び出せて良かったわ♪」
セイバー「私がお目当てだって? 中々物好きなマスターだな……君ならもっと強力な英霊を呼び出せる触媒を用意出来ただろう?」
「知り合いの魔術師に相談したらね、これを渡されたの」ジャラッ
セイバー「っ!! なるほど」
「『これを使えば最強のサーヴァントを呼び出せる。あなたの勝利は約束されたわ!!』って言われちゃったらもうこの触媒を使うしか無いじゃない」ニッ
セイバー「やれやれ、いつの間にそのような評価が…」
「頼りにしているわよ、“ご当地英雄(ヒーロー)さん”?」
18 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:40:14.52 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ルビィ「――ごほっ、ごほっ! せ、成功した…の?」
「サーヴァント、アーチャーです。本来の英霊とは少々異なる存在ではありますが、あなたが――」
「……えっ、る、ルビィ…?」
ルビィ「その声、その顔……うそっ―――」ジワッ
――ガバッ!
ルビィ「うあああああああああん!!!! お姉ちゃん、お姉ちゃああああぁぁぁん!!!」
ダイヤ「……ふふ、泣き虫なマスターですわね」ナデナデ
ルビィ「ごめんなさい! ルビィのせいで…ルビィのせいで!!!」
ダイヤ「……」
ダイヤ「……」キョロキョロ
ルビィ「……ぐすんっ。どうしたのお姉ちゃん?」
ダイヤ「…なるほど、私が召喚されたのはそういう事ですか」
ルビィ「?」
ダイヤ「ルビィ、この召喚の際に使用した触媒はなんですか?」
ルビィ「へ? 触媒??」キョトン
ダイヤ「サーヴァントを召喚するにはその英霊に縁のある聖遺物を触媒に用いる必要がありますわ」
ルビィ「そ、そうなの? 所々消えてた部分に書かれていたのかな…」
ダイヤ「今回はルビィが頭に付けているその髪飾りが触媒になったのでしょう。わたくしが召喚されたのはその触媒が原因ですわ」
ルビィ「髪飾り……お姉ちゃんがいつも付けてたこれが?」
ルビィ「いや、そんな事よりも! お姉ちゃんがサーヴァントになってるの!? 英雄でもないお姉ちゃんがどうして……!」
ダイヤ「…ええ、わたくしは英霊ではありません。とある英霊の魂と融合した結果、召喚されました」
ルビィ「とある英霊って?」
ダイヤ「今は言えません。知らない方がお互いの為です」
ルビィ「むぅ……」
ダイヤ「さて、サーヴァントを召喚したという意味……あなたはしっかりと理解しているのですか?」
ルビィ「うん。聖杯を勝ち取って、お姉ちゃんを生き返らせる。まさかそのお姉ちゃんがサーヴァントになるとは予想外だったけれど」
ダイヤ「よろしい。ならば、わたくしはマスターであるあなたを勝利に導く為にこの身を捧げましょう」
ルビィ「あ、でも戦うって事はお姉ちゃんが危険な目に……」
ダイヤ「それはお互い様でしょう。ルビィが気に病む必要はありませんわ」
ダイヤ「ルビィはわたくしが守りますわ。いざという時は任せなさい」
ダイヤ「ただ――」ボソボソ
ルビィ「え? 何か言った??」
ダイヤ「いいえ、なんでもありませんわ」
ルビィ「?」キョトン
19 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:40:59.73 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜翌朝〜
ルビィ「……んぅ……」
「――ビィ、――きなさい!」
ルビィ(うるさいなぁ…昨日は遅くまで起きてたんだから寝かせてよぉ……)ムニャムニャ
ダイヤ「起きなさい!!! 何時だと思っているのですか!!!?」グワッ!
ルビィ「ピギィ!!?」ドシーン!
ルビィ「いたた……何もベッドから落とさなくてもいいのに…」
ダイヤ「もう8時を過ぎているのですよ!? このままでは遅刻ではありませんか!」
ルビィ「遅刻ぅ? 何に遅刻するっていうの?」
ダイヤ「はい? …まさか、わたくしが死んでからずっと学校に行っていないのではありませんわよね……?」
ルビィ「それはまあ…儀式の準備で忙しかったから最近は不登校だったけど」
ダイヤ「……ほおぅ、黒澤家の次女たる者が学校をサボったんですか。なるほどなるほど……」ゴゴゴゴゴ
ルビィ「あ、あれ…ひょっとして……おこ?」ダラダラ
ダイヤ「さっさと着替えて学校に行きなさい!!! 今すぐ!!!!!」
ルビィ「は、はいぃぃぃ!!!」ドタバタ
20 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:41:57.41 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ダイヤ「準備しながら聞きなさい」
ルビィ「ほぇ? 何かあるの?」ヌギヌギ
ダイヤ「聖杯戦争中、マスターはいつどこで他のサーヴァントに狙われるか分かりません。よってマスターと契約したサーヴァントは常に一緒にいるのがセオリーです」
ルビィ「じゃあ、お姉ちゃんも一緒に学校に行くの?」
ダイヤ「そうしたいのは山々なのですが……死んだはずのわたくしが学校に登校すれば学校だけではなく街中が大騒ぎになるでしょう」
ルビィ「でも、最終的には生き返るんだから関係ないんじゃない?」
ダイヤ「随分と強気ですわね。だとしても、今後の戦闘の為にもわたくしの存在は出来るだけ隠しておきたいのです」
ルビィ「じゃあ、霊体化すればいいじゃん。そうすれば見えなくなるから外に出られるよね」
ダイヤ「それが出来ないのですわ」
ルビィ「出来ない?」
ダイヤ「この敷地外での霊体化が不可能なのです。残念ながら原因は不明ですわ」
ダイヤ「ですので万が一、登下校中に敵サーヴァントと遭遇した場合はすぐに魔術による意思疎通をしてください。それでも間に合わないと判断したら、迷わず“令呪”を使いって呼び出しなさい」
ルビィ「令呪…この左手にあるやつだよね」チラッ
ダイヤ「三回限りのサーヴァントに対する絶対命令権ですが、私達の関係ならば使い果たしても問題は無いでしょう。大切に使うに越した事はないですがね」
ルビィ「分かった。危なくなったらすぐに使うね」
ルビィ「じゃあ、行ってきまーす!!」
ダイヤ「いってらっしゃい、ルビィ」フリフリ
21 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:42:52.83 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
千歌「る、ルビィちゃん!?」
ルビィ「お、お久しぶり…です。ご心配をおかけしてすみませんでした」ペコリ
千歌「あ、うん…ご丁寧にどうも」ペコリ
梨子「どうして千歌ちゃんも頭を下げるのよ…」
善子「二時間目が始まる前に突然登校してきたときには驚いたわ…」
花丸「うぅ…本当に良かったずら……もう学校に来ないんじゃないかと思っていたから…」グスン
曜「随分と変な時間に登校したね」
ルビィ「本当は行くつもりは無かったんだけどお姉……ゴホンッ!!」
曜「ん?」
ルビィ「あー…流石にこのままじゃダメだと思ったからさ。お姉ちゃんもきっと怒ると思うし」
ルビィ(実際に怒られたし)
果南「もうダイヤの死は乗り越えたって事?」
ルビィ「…それは」
果南「……ごめん、嫌な質問だったね。忘れて」
ルビィ「あ、あの、Aqoursの活動は暫く体力作りに専念してもいいですか? 運動不足でついていける自信が無くて…」アハハ
千歌「……え?」
ルビィ「あ、あれ? 何かマズい事言っちゃいましたか?」アセアセ
梨子「…実はAqoursの活動はまだ開始していないの」
ルビィ「そうなんですか?」
花丸「今後の活動についてはルビィちゃんが帰ってきてから決めようと思っていたから」
ルビィ「ごめんなさい! ルビィがずっと引きこもっていたせいでみんなに迷惑をかけてしまって……本当にごめんなさい」
千歌「そ、そんなに謝らなくていいよ! 帰って来てくれただけで嬉しいからさ…」
善子「またみんなで頑張りましょう。ダイヤの分まで、さ」
ルビィ「善子ちゃん……うん!!」
鞠莉「……」
22 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:43:45.44 ID:Hn5+HR340
果南「鞠莉? さっきから黙り込んでいるけど、どうしたの?」
鞠莉「…果南、ダイヤのお葬式の時のルビィの様子、覚えている?」
果南「そりゃまあ……あんなルビィは簡単に忘れられないよ」
鞠莉「正直、ダイヤの後を追って自殺する勢いだった。私はそう感じたわ」
果南「うん……だから花丸と善子が頻繁に家に行っていたんだよね」
鞠莉「そんなルビィが……たった一人でこんな短期間でここまで立ち直れるものなの?」
果南「一か月も経ったんだよ。それだけの期間があれば――」
鞠莉「昨日まで花丸達と会話どころか部屋に引きこもったまま顔も合せなかったのよ? ちょっと変じゃない?」
果南「…言われてみれば」
鞠莉「一体どんな心境の変化があったというの……?」
花丸「――あれ、ルビィちゃん左手に赤い痣が出来ているずら!」
果南「……っ!」
千歌「本当だ。凄く赤いけど大丈夫? 痛くない?」
ルビィ「へ、あ、あー…気にしないで。何とも無いからさ」サッ
千歌「曜ちゃんも手を怪我して包帯巻いているし……メンバー間で手に呪いでもかかっているのかなぁ」
曜「あはは…」
善子「それにしてもその痣……まるで――」
梨子「『紋様みたいでカッコいいかも!』なんて思ってないでしょうね?」ジトッ
善子「っ!!? ま、まっさかー! そそそんな事思ってないわよ」ピュー
ルビィ「大丈夫だからさ、心配しないで!」
鞠莉(手に赤い痣ねぇ…)
鞠莉「ルビィ、今日の練習が終わったら理事長室に来てくれる?」
ルビィ「理事長室ですか?」
鞠莉「ほら、一か月も休んだから色々と…ね」
ルビィ「なるほど……分かりました。ごめんなさい」
鞠莉「いいのよ。これも理事長の仕事だからね♪」
23 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:44:36.29 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜練習後〜
ルビィ(ぐへぇ…まさかここまで体力が落ちていたなんて……昔のルビィはあの練習メニューについて行けたと思うと凄いな)
ルビィ「言われた通りに理事長室の前まで来たけど…鞠莉さんいないなぁ」キョロキョロ
ルビィ「もしかして中に居たりするのかな?」
――ガチャ
ルビィ「あれ、開いている。中で待ってればいいのか」
ルビィ「薄暗いな…電気のスイッチは――」
「――――やれやれ、マスターも嫌な仕事を押し付けてくれる」
ルビィ「っ!!! ど、どこから入って来たの!!?」
「ん? 近くにサーヴァントが居ないのか。随分と雑な護衛だな」
ルビィ(この人…サーヴァントなの!?)
セイバー「私はセイバーのサーヴァント。マスターに君をリタイアさせるよう命令されている」
ルビィ「っ!!!!?」ゾワッ
セイバー「だが、もし君がこの場で聖杯戦争から身を引くのならば何もしないで立ち去ろう」
ルビィ「…嫌だって言ったら?」
セイバー「……っ」ブウゥゥン
ルビィ(剣…いや、あれは双剣?)
セイバー「――仕方ない、ならばこうするしかないな!!!」ビュン!!
ルビィ「きゃああ!!」ドサッ
ルビィ(軽く振っただけで後ろの壁が裂けた!?)
ルビィ(や、ヤバイ!! 逃げなきゃ!!!)ダッ!!
セイバー「逃げ切れると思うか?」
――ビュン!
――ビュン!!
――ビュン!!!
ルビィ「う、うわあああああああああ!!!」ズザザザ
24 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:45:17.79 ID:Hn5+HR340
セイバー「よく避ける。だが、もう詰みだ」
ルビィ「はぁ、はぁ、はぁ!!」ガタガタ
ルビィ(このままじゃ殺される!! どうすれば…どうすればいいの!!?)
セイバー「今すぐ聖杯戦争からリタイアしろ。これが最後だ」
ルビィ「はぁ、はぁ……」
セイバー「どうした、早く答えろ」
ルビィ「……だよ」
セイバー「…何?」
ルビィ「――嫌だ……せっかくお姉ちゃんを生き返らせるチャンスを掴んだんだ! 簡単に諦めるわけにはいかない!!!」
セイバー「――残念だ」カチャッ
ルビィ(あ…――)
ダイヤ『――迷わず“令呪”を使いって呼び出しなさい』
ルビィ(っ!!! そうだ…令呪が――)
セイバー「悪く思うなよ!!!!」シュッ!!!!
ルビィ(令呪を持って命ず……)
ルビィ「―――来て、お姉ちゃん!!!!!」キュイィィィン!!
セイバー「っ!! 令呪による強制召喚か!!」バッ
――バチッ…バチバチバチッ
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/21(木) 21:46:21.36 ID:hvYbVqVn0
戦闘シーンが安っぽいですね
もっと頑張りましょう
26 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:46:34.25 ID:Hn5+HR340
ダイヤ「――学校の廊下ですか…厄介な場所ですわね」
ルビィ「ほ、本当に瞬間移動してきた…!」
ダイヤ「怪我はありませんか?」
ルビィ「だ、大丈夫。転んで擦り剥いただけだよ」
ダイヤ「良かった。……貴様っ!!」ギロッ
セイバー「これが君のサーヴァントか。ん……お前、正規の英霊ではないな?」
ダイヤ「あなたには関係ありませんわ。ここでわたくしに倒されるのですから」ブウゥゥン
セイバー「弓……今回は君がアーチャーなのか」
セイバー「マスターからは命までは奪うなと命じられているが、サーヴァントが相手なら関係ない。君を始末すればそれでいいのだからな」カチャッ
ダイヤ「――喰らえ!!」パシュッパシュッ!!
ダイヤは瞬時に魔力で無数の矢を生成してセイバーを攻撃する。
目にも止まらぬ速度で放たれた矢はいくらサーヴァントと言えど回避は困難。
だが、真正面からの射撃では話は別だ。
セイバー「はあああ!!!」ガキン!カキン!
ルビィ「ウソ…あれだけの矢を全部弾いた!?」
ダイヤ(くっ! 正面からじゃ軌道が読まれるか!!)
セイバー「場所が悪かったな。ここは私の間合いだ!!」
――ガキンッ!!!
セイバーの斬撃を辛うじて弓で防ぐ。
しかしダイヤの筋力ではじりじりと押し負けていく。
このままではマズイ。
ダイヤは一旦鍔迫り合い中の弓を引っ込める。
支えを失ったセイバーが前方に体勢を崩したところを足で蹴り飛ばす。
セイバー「ぐッ!!?」
ダイヤ「場所を変えます、ついてきなさい!」
ルビィ「分かった!」
27 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:48:17.83 ID:Hn5+HR340
セイバー「――逃がすか!!」
ダイヤ「マズイ…!? ルビィ!!」ガバッ
ルビィ「え…?」
咄嗟にルビィを抱きかかえるダイヤ
直後に背後から無数の矢が二人に襲い掛かった。
―――ドスッ、ドスッ!!
ダイヤ「ぐああああ!!?」
ルビィ「お、お姉ちゃん!?」
数発が着弾。
ダイヤの左ふくらはぎと右肩に矢が突き刺さる。
ダイヤ「くうぅ…弓矢……ですって……? あなたのクラスはセイバーではないのですか…!」
ルビィ「大丈夫なの!?」
ダイヤ「勿論……ですわ。この肉体は頑丈ですから」
セイバー(こいつ……俺が弓矢を構える前に気が付いただと? 短時間の未来視が可能な千里眼を持っているのか)
ダイヤ(弓矢を使うセイバーなんて聞いたことが無い! この方は一体どこの英雄なのですか!?)
セイバー「……そろそろ終わらせよう。これ以上この場所を傷つけるのは私のマスターも嫌がるからな」
ダイヤ「終わらせるですって?」
セイバー「――ふッ!!!!!」ゴッ!!!
ルビィ(ま、魔力の量が跳ね上がった!? 宝具を使うつもりなの!?)
ルビィ「マズいよお姉ちゃん! こっちも宝具で対抗しなきゃ!!」
ダイヤ「……っ」
ルビィ「お姉ちゃん!!」
28 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:49:17.01 ID:Hn5+HR340
「――ストップよ、セイバー。もういいわ」
セイバー「……了解だ、マスター」
ダイヤ「マスターですって!? あ、あなたが……」
鞠莉「……久しぶりね、ダイヤ」
ルビィ「そ、そんな……鞠莉さんがセイバーのマスターだったなんて…!!」
ダイヤ「鞠莉さん! よくもルビィを!!!」ギロッ
鞠莉「怒るのは筋違いなんじゃない? これは聖杯戦争、マスター同士の殺し合いなんだから」
ダイヤ「っっ!!!!!」ギリッ
セイバー「動くな。我がマスターに手を出すなら今すぐ貴様の首を落とす」
ルビィ「お姉ちゃん、今は抑えて」
ダイヤ「ですが!! ……いえ、申し訳ありません」
鞠莉「ごめんなさい、私の言い方が悪かったわ。確かに私はセイバーを使ってルビィを襲った。でもそれはルビィを守る為でもあったの」
ルビィ「私を……守る?」
鞠莉「黒澤家が魔術師の家系であるのは知っていた。その末裔であるルビィがこの地域で行われる聖杯戦争を知らないわけがない。この戦いで勝利し、聖杯にダイヤの蘇生を願うつもりなのでしょう?」
ルビィ「……うん」
鞠莉「でもあなたはこの戦いの恐ろしさを正しく理解していない。早い段階で命を落としかねないわ。だから他の誰かに殺される前にリタイアさせるつもりだった」
ルビィ「……」
ダイヤ「なら、どうしてこのままトドメを刺さなかったのですか? わたくしにはセイバーの宝具を止める術は無かったのに……」
鞠莉「それはルビィのサーヴァントがあなただったからよ……ダイヤ」
セイバー「マスター、先ほどからこのサーヴァントをダイヤと言っているが……昨日話していたあの“黒澤ダイヤ”なのか?」
鞠莉「その通りよ、見間違えるわけがない……ダイヤ本人よ」
セイバー「そうか……ならばマスターの願いも――」
ルビィ「ね、ねえ! 話が読めないんだけれど……そもそもどうして鞠莉さんも聖杯戦争に参加しているの!!?」
鞠莉「ルビィと同じよ、ダイヤを生き返らせる為に参加したわ」
ルビィ「!」
鞠莉「ただね……内浦の聖杯ではこの願いは叶えられない」
ルビィ「……え、叶えられない?」
鞠莉「内浦の聖杯では人智を大きく超えた願いは叶えられない。その中の一つが死者の蘇生よ。現世に魂と遺体が揃っていれば話は別だけれど、ダイヤに関しては条件が揃えられない」
ルビィ「じゃあ……この戦いに勝利しても、お姉ちゃんは……」
鞠莉「生き返らせる事は出来ない……はずだった」
ルビィ「だった?」
鞠莉「聖杯の力で召喚されたサーヴァントなら、受肉させれば現世に留まり続ける事が可能よ。つまり、サーヴァントとなった今のダイヤなら生き返らせられる!」
ルビィ「!!!」パアァ
29 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:50:10.16 ID:Hn5+HR340
セイバー「ドヤ顔で説明しているが、この事実は昨日私が説明したものなんだがね……」
鞠莉「ちょっとセイバー!?」
ダイヤ「でしょうね。人間の蘇生が無理だと知っていたら、わざわざこの戦争に参加するはずがないですもの」
鞠莉「べ、別にその時はその時で違う願いを叶えてもらうわよ!!」
ルビィ「じゃあ、鞠莉さんはルビィ達の味方って思っていいの?」
鞠莉「勿論♪」
セイバー「マスターの願いが君の蘇生である以上、この先の戦いでは我々は協力することになるだろう」
セイバー「だが、いざという時は我がマスターの命を最優先とする。自分の身とマスターは自分で守り切れ」
ダイヤ「言われなくても分かっていますわ」
セイバー「その為にも一刻も早く己の力を使いこなせるようになるんだな」
ダイヤ「……ええ」
ルビィ「こ、これからよろしくお願いします。セイバーさん」ペコリ
セイバー「っ! あ、ああ」
ルビィ「あの、鞠莉さん」
鞠莉「どうしたの?」
ルビィ「今回の聖杯戦争に参加している人に私達以外の浦女生徒っていたりするの?」
鞠莉「……怪しい生徒はいる。しかもAqoursのメンバーよ」
ルビィ「えっ」
鞠莉「マスターかどうかを簡単に見極めるには令呪の有無を見ればいい。ルビィの場合は丸見えだったから一発で分かったわ」
ダイヤ「ルビィ……いくらなんでも不用心過ぎですわ」ハァ…
ルビィ「うぅ、ごめんなさい……」
鞠莉「まず怪しいのは、ルビィの令呪に真っ先に気が付いた花丸ね」
ダイヤ「花丸さんですか。確かに花丸さんの実家はお寺なので魔術師であっても不思議ではないですが……」
ルビィ「でも手に令呪があったら善子ちゃんが気付くんじゃないかな?」
鞠莉「まあそうだけど……何らかの手段で令呪を隠す事も可能だから何とも言えないわ」
ダイヤ「警戒するに越した事はないですわね」
ルビィ「……あ、怪しさでいうなら曜さんもそうなるよね。包帯で手を隠していたし」
鞠莉「その通りよ。タイミング的にも一番怪しいと思っている」
ルビィ「周りは敵だらけなんだ……なんか嫌だな」
セイバー「味方がいる君はまだマシな方だ。本来は全員が敵なのだからね」
鞠莉「できればこれ以上知り合いがマスターであるのは避けたいけれど、こればっかりはどうしようもないわ」
セイバー「もし、友人が敵として立ちはだかった時……君に戦う覚悟はあるか?」
ルビィ「……それは…分からないよ」
セイバー「ならば早めに決める事だ。本気で自らの願いを叶えたいのならばな」
ルビィ「……」
鞠莉「私も肝に銘じておくわ」
30 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:50:38.85 ID:Hn5+HR340
鞠莉「――ところで、どうしてダイヤはルビィの傍にいなかったわけ? 聖杯戦争中にマスターから離れるのは愚策よ」
ダイヤ「そうしたいのは山々なのですが……如何せん霊体化が出来ないものですから」
ルビィ「ほら、この街の人はお姉ちゃんの事知ってるからさ……」
鞠莉「ふむふむ……なら、ルビィが学校にいるときはセイバーと一緒に理事長室に籠っていればいいのよ!」
ダイヤ「はあ? ですから、家から出られないんですよ。どうやって理事長室まで行くのですか?」
鞠莉「そこはほら、髪形をちょいちょいーっとポニーテールにでも変えて、ついでに眼鏡とスーツに着替えれば……ほら! これなら別人よ!」
ダイヤ「勝手に髪をいじらないでください! ……ってこの一瞬でどうやってわたくしの服も変えたのですか!?」
ルビィ「おぉ……凄く大人っぽい!」
ダイヤ「そ、そうですか///」
セイバー「ガラリと雰囲気が変わったな。仮に怪しまれても、否定すれば問題無くやり過ごせるだろう」
鞠莉「そうそう、代わりと言ってはなんだけど、最近理事長としての仕事が多くてさ。授業中に二人でちょこっとだけ終わらせておいてね♪」
ダイヤ「ああ!?」
セイバー「……はぁ、一体サーヴァントを何だと思っているのやら」ヤレヤレ
鞠莉「じゃあ、今日は解散にしましょう。ダイヤは一時間目の授業が始まる頃に理事長室に来てね」
ダイヤ「全く……ええ、分かりましたわ」
ルビィ(本当に大丈夫なのかなぁ……)
31 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:51:28.79 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜翌日 昼休み〜
花丸「ルビィちゃん!!! さっき廊下でダイヤさんそっくりの美人秘書さんを見かけたずら!!!」
ルビィ(初日からバレてるじゃん!?)
善子「今朝からずっとその話題で持ち切りよ。鞠莉もよくあんなにそっくりな人を見つけたものよね」
花丸「理事長室で働いているらしいんだけれど、なんかもう一人一緒に働いているらしいよ。噂によれば長身の褐色系男子だとか」
善子「うそだぁ〜。ここ女子高よ? 教員ですら全員女なのに鞠莉が男の人を雇うハズないじゃない」
花丸「だ、だよね。マルもそこは間違いだとは思うずら」
ルビィ(事実です。間違いなく男の人で鞠莉さんのセイバーさんです)
花丸「ルビィちゃんはもう見たの?」
ルビィ「あー、うん、見たよ。本当にお姉ちゃんそっくりで驚いちゃったよ」アハハ
花丸「……大丈夫?」
ルビィ「へ? 何が?」キョトン
花丸「あ、うんん、何でもないよ。気にしないで」
善子(ほらね、ルビィなら大丈夫だって言ったでしょ?)ボソボソ
花丸(そうだね…余りにもそっくりだったからちょっと心配だったけれど、大丈夫そうで良かったずら)ボソボソ
ルビィ「……二人で何を内緒話しているのさ」ムゥ
花丸「ごめんごめん、大した事じゃないよ」
ルビィ「ならいいけど……」
――ピーン、ポーン、パーン、ポーン♪
『一年生の黒澤ルビィさん、至急理事長室まで来てください』
花丸「あ、呼び出しだね」
善子「今度は何しでかしたの?」
ルビィ「何もしてないよ! 呼び出しイコールお説教なのは善子ちゃんだけだよ」
善子「なんですって!!」
花丸「騒がない」チョップ
善子「あだっ!?」
ルビィ「あはは……じゃあ、ちょっと行ってくるね」
花丸「行ってらっしゃ〜い」フリフリ
32 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:52:22.60 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜理事長室〜
ダイヤ「……申し訳ございません。不覚にも入室を生徒に目撃されてしまいましたわ…」
セイバー「全く、何の為の千里眼なのやら」
ダイヤ「ぐふっ」グサッ
鞠莉「人の事言えないでしょ? セイバーだって何人かに見られているんだから」
セイバー「何!?」
ルビィ「うん、ルビィのクラスでも噂になっていました」
ダイヤ「……ふっ(笑)」
セイバー「すまない…マスター」
ルビィ「呼び出した理由はこれ?」
鞠莉「まあ、遅かれ早かれバレるのだから構わないわ。理由はこれじゃない」
ダイヤ「校内でマスターと思わしき人物を発見しました」
ルビィ「!? 浦女の生徒にマスターが……」
ダイヤ「生徒に目撃された際、一人だけ反応が異なる方がいましてね。恐らく私を目視した事でわたくしのパラメーターが表示されたのでしょう」
ルビィ「聖杯戦争に参加しているマスターが得られる能力の一つだったっけ」
ダイヤ「ええ」
鞠莉「他にも英雄に関しての知識も与えられているわよ。敵の宝具の真明が分かれば、そのサーヴァントがどこの英霊か一発で判明できるって寸法よ」
ルビィ「へぇー、そうだったんだ」
セイバー「サーヴァントが理事長室を出入りしていると知られた以上、鞠莉がマスターである事は向こうも確信しているだろう」
ダイヤ「ですから早急に対処すべきかと」
ルビィ「対処って……どうするつもりなの?」
セイバー「決まっているだろう。その生徒を――……む!?」
鞠莉「この感じ……まさか!?」
異変を察知した鞠莉は急いで扉を開ける。
廊下に出ると、校内が高濃度の霧で覆われていたのだ。
ルビィ「何…これ。どうして霧が……」
ダイヤ「マズいですわね……この霧、魔術に耐性の無い一般人にとって非常に有害ですわ!」
ルビィ「えっ!? じゃあ学校にいるみんなはどうなっているの!?」
鞠莉「急いで近くの教室に向かいましょう!」
33 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:53:47.70 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ルビィ「――大丈夫ですか!!」ガラガラ
教室内に突入するルビィ達。
そこには床に倒れ込む二年生の姿があった。
弱々しく咳き込む者もいれば意識を失っている者もいる。
間違いなく校内いる生徒全員が同様の状況であるだろう
千歌「……ごほっ、ごほっごほっ………」
曜「うぅ………うっ」
梨子「………っ」
ルビィ「千歌ちゃん! 曜ちゃん! 梨子ちゃん!! しっかりして!!」
鞠莉「酷い……戦いに一般人を巻き込むなんて……!!」
セイバー「規模からしてこれは宝具による攻撃とみて間違いない」
ダイヤ「つまり、校内には敵サーヴァントが潜んでいるというわけですか」
『うふふふ…見ーつけた♪』
ダイヤ「んな!? どこから声が!?」
セイバー「構えろ!! 敵は恐らくアサシンだ! どこから攻撃されるか分からん!!」
セイバーは昨夜の戦いでも使用した白色と黒色の中華剣を召喚した。
ダイヤも急いで弓を構える。
セイバー「位置を掴めないのか!?」
ダイヤ「ダメですわ! 霧が濃すぎて全く視えません!!」
セイバー「くそっ! マスター、我々から絶対に離れるなよ!!」
ルビィ「お、お姉ちゃん…!」ガタガタ
ダイヤ「心配はいりませんわ。マスターはわたくしが必ずお守りいたします」
鞠莉「一体どこから襲って――」
――ヒュン…
ダイヤ「っっ!!!? 鞠莉さん!!!!!」
セイバー「っ!!!!」
鞠莉「へ?」
セイバーは鞠莉の足元を蹴り飛ばし、体勢を崩させた。
刹那、鞠莉の首があった場所を鋭利なナイフが空を斬る。
セイバーが対処しなければ今頃鞠莉の首はコロコロと廊下を転がっていただろう。
襲撃者は離脱を試みるが、セイバーがそれを阻む。
34 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:55:05.72 ID:Hn5+HR340
アサシン「うん、流石に速いね」
セイバー「逃がすわけがないだろう! マスターの命を狙った貴様は、ここで仕留める!!」
――ガキンッ! ガキンッ! ガキンッ!!!
セイバー(チィッ!! ここまで一撃離脱を徹底されては押しけれない!)
アサシン「あれれ、あなた、意外と弱い?」クスクス
セイバー「……安い挑発だな」
アサシン「っ」ピクッ
アサシンの動きが止まる。
間合いは十分でセイバー相手には隙と言えるほどのものでは無かった。
セイバー「おや、いいのか?」ニヤッ
――ビュン、ビュン、ビュン!!!
セイバーの背後から三本の矢が飛び出す。
攻撃のタイミングをじっと待ち構えていたダイヤによるものだ。
アサシンはなんとか頭と心臓を狙った矢を弾くが右肩を狙った一矢は被弾した。
アサシン「痛いなぁ……全く酷いよ」
ダイヤ「すみません…死角からの攻撃にも関わらず仕留めそこないました」ギリッ
セイバー「十分だ。この調子で頼む」
「あーあ…敵は理事長だけだと思っていたのに、もう一人いたなんて」
ダイヤ「……誰か来ますわ」
ルビィ「えっ……どうして普通に動ける人が――」
鞠莉「バカ!! あの子がアサシンのマスターだからに決まっているでしょ!?」
アサシン「お母さん!」
「アサシン、大丈夫?」
アサシン「うん、こんな怪我大した事ないよ。でも…ごめんなさい。まだ一人も殺せてないよ……」シュン
「気にしなくていいんだよ? いくらアサシンでも二体一じゃ簡単にはいかないもん」
「お母さん……えへへ」
鞠莉「あの子は確か……隣のクラスの子よね?」
ダイヤ「ええ。今朝目撃されたのもこの方ですわ」
ルビィ「どうして……どうしてこんなみんなを巻き込むような酷い事をするの!!?」
「どうしてか? そんなの手っ取り早く敵のマスターをおびき出す為に決まっているじゃない。現に成功しているわけだし」
35 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:56:12.96 ID:Hn5+HR340
セイバー「鞠莉が怪しいのは分かっていたのだろう? なら、襲うタイミングならば他にいくらでもあるはずだ」
「そんなの私の勝手でしょ。今やりたかったから実行しただけ」
鞠莉「こんな事をしてまで……あなたの叶えたい願望は一体何だというの!!?」
「願いか……」
「……私ね、この学校が大好きなんだ」
ルビィ「えっ」
「お母さんもおばあちゃんも浦女の卒業生でさ、子どもの頃から私もこの学校の生徒になりたいって思っていた。だから合格した時は本当に嬉しかった」
「……統廃合が決まったのを知って絶望したよ。私に出来る事があったら何でもしたいと思った」
「……でも、物語の主人公でもないモブキャラの私に出来る事なんて無かったんだ」
ルビィ「………」
「だから、Aqoursには凄く期待していたんだよ! この人達ならきっと学校を救ってくれる、モブキャラの私ではなく主役のあなた達ならきっと何とかしてくれるって!!」
「それなのに……それなのにあなた達は私の期待を裏切った」
鞠莉「それは――」
「精一杯頑張った結果だから仕方ない? 廃校を防げなかったら意味が無い!! 結果が全てなんだよ!! あんた達は失敗したんだ!!!!」
ルビィ「……うぅ」
「誰かに任せたのがいけなかった……大事な事は自分で何とかしなきゃいけないって思い知らされた」
「だから今度は私が救うの……この戦争に勝利して、聖杯の力で浦の星女学院が未来永劫続くようにしてみせる!!」
「理事長のクセにこの願いの邪魔をするつもり?」ギロッ
鞠莉「……確かに、私達は失敗したわ。あなたや学校の生徒全員の期待を裏切ってしまった……」
ルビィ「鞠莉さん……」
鞠莉「理事長としても本当に申し訳――」
ダイヤ「……学校を救う? それがあなたの願いですって? それは有り得ませんわね」
36 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:56:46.62 ID:Hn5+HR340
「……あ?」
ルビィ「お、お姉ちゃん!?」
ダイヤ「学校が好きな気持ちにウソは無いでしょう。ですが、あなたの願いは廃校を防ぐなんて大層なものではない」
ダイヤ「――いえ、寧ろあなたの願いは“既に叶って”います」
「………」
ルビィ「ど、どういう事? なんでそれが分かるの?」
「……あなたどこの英霊? 黒澤そっくりの姿をしていてさ……気持ち悪いんだよ」
ダイヤ「余程嫌われているのですね……まあ、無理もないですわ。それだけの事を以前してしまったのですから」
「……ああ?」
ダイヤ「あの時、あのクラスに居ながら、わたくしは見て見ぬ振りをしてしまったのですから……」
ダイヤ「ですよね、――さん?」
「っ!! あなた……本当に黒澤なの?」
ダイヤ「………」
「まあいいや。アサシン、今回は引こう。これ以上霧の展開を続ければ全員死んじゃうからさ」
アサシン「えぇー……そっか、分かったよ」スウゥゥ
セイバー「逃がすか!!!」
鞠莉「セイバー待って!」
セイバー「!?」
「またね。次は……絶対に殺すから」スウゥゥ
セイバー「霧と一緒に消えていったか……見逃して良かったのか?」
鞠莉「ええ。霧を消してくれるならその方がいいもの」
鞠莉「それよりも、ダイヤ」
ダイヤ「何でしょうか?」
鞠莉「あの子は一体何者? 知り合いだったみたいだけれど」
ダイヤ「………」
37 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 21:57:14.08 ID:Hn5+HR340
―――――――
―――――
―――
鞠莉「さて、説明してもらうわよ」
ダイヤ「……あの人は二年生の時に同じクラスだった ――さんですわ」
鞠莉「二年生の時……」
ダイヤ「鞠莉さんは内浦を離れていたのでご存じないとは思いますが……その……」
ルビィ「お姉ちゃん?」
鞠莉「歯切れが悪いわね。ハッキリ言ってよ」
ダイヤ「はい……その、あの子はいじめに遭っていたのです」
セイバー「ほう」
ルビィ「いじめって……浦女でそんな事があったの…」
鞠莉「待ちなさいよ! あなたが居ながらそんな……どうして何も対処しなかったの!?」
ダイヤ「申し訳ありません……その、当時のわたくしは周りに無関心というか…初期のAqoursが解散してしまった反動で……」
ルビィ「ああ、確かにあの時のお姉ちゃんは今よりちょっと冷たかったかも」
鞠莉「そう……私はこんな所でも迷惑をかけていたのね……」
セイバー「それで、アサシンのマスターが既に願いを叶えているという根拠はなんだ?」
ダイヤ「主な根拠はスキルであの子の思考を読み取ったからですが、それを確信に変えたのは理事長室で見つけたこの資料ですわ」
鞠莉「これは……先日行方不明になった生徒二人の名簿ね」
ルビィ「行方不明? そんな事件があったんだ」
ダイヤ「この二人の生徒はあの子をいじめていた二人ですわ」
鞠莉「!!」
セイバー「つまり、奴の目的は復讐だった」
ダイヤ「……ええ、その通りですわ」
ルビィ「じ、じゃあ……行方不明になったこの二人はもう――」
ダイヤ「死んでいる、もしくは死ぬよりも重い苦しみを与えられている可能性が高いでしょう」
鞠莉「サーヴァントがアサシンだからね……殺しに長けた英霊なら、どの程度までなら死なないかも熟知していてもおかしくない」
ルビィ「一体……どんな事をされているんだろう……」ブルブル
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/21(木) 21:58:49.22 ID:iDs5WYgp0
ラブライブのキャラが変
ちゃんとラブライブ観た?
39 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:00:53.54 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜???〜
「――ねえ聞いてよぉ。今日学校でね、死んだはずの人間とばったり会っちゃったんだよねぇ〜。しかも、その子サーヴァントになってたの。凄くない?」
「さ、サーヴァン……ト……?」
「あ、そっか、知らないか。サーヴァントっていうのはそこにいるジャックちゃんみたいな人の事だよ」
「ッッ!!?」ガタッ
ジャック「こんにちは、すっかり元気になったみたいだね♪」
「輸血も点滴も十分やったからもう大丈夫だよ」
ジャック「やった〜あ!! また解体していいんだね!」
「う、うそでしょ……まだ、まだ私から……」
「当然でしょう? だってまだ胃袋と片目しか取り出してないんだもの」
「ええっと……あ、ほら。ちゃーんと瓶の中にホルマリン漬けして保存しておいたんだよ。見える場所に置いておくね」
「あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!? 私の!! 私のがえ゛じで!!!」
「うるさいなぁ……」
「――ジャックちゃん」
ジャック「うん、任せてお母さん」
マスターの合図を受けたアサシンはベッドに縛り付けた女生徒の腹部にナイフを押し当て――
「があ゛!? うううううああああ!! いだああああああああい!!!」
「えーー、それは錯覚だよ。事前に麻酔だってしてるし、ジャックちゃんの外科手術の腕は完璧なんだよ?」
ジャック「麻酔したの? 今日のお母さん優しいんだね」
「だって、麻酔無しでやったらもう一人の子みたいにショック死しちゃうでしょ。もっと色々するつもりだったのにさ……残念」
「し、死んだ……!? あの子が死んだあ!!!?」
「ああ、心配しなくてもあなたは“絶対に”死なせないから。だから大人しくしていてね」
「ひいぃ!!?」
ジャック「ねえねえ、今回はどこを解体すればいいかな?」
「そうだね……あ、二つある部位とかがいいんじゃない? 片方無くても大丈夫だもんね!」
ジャック「分かった! そうするね!」
「いやだ……いやだいやだいやだいやだいやだいやだあああああ!!!」
「もう……殺さないって言ってるのに、どうしてそこまで叫ぶかなぁ」
「ごめ゛ん゛な゛ざい゛……私が、わ゛だじがわ゛るがっだがら!!!」
「……そうだね。でも私は悪くないよ?」ニコッ
40 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:01:20.47 ID:Hn5+HR340
「も゛う゛……や゛め゛でぐだざい゛!!」
「――止めて?」ピクッ
「止めてって言ったの? あなたが? 私に対して?」
「……へ?」
――グチョッ!!
「あ゛があああ!!!?」
「私が止めてって言った時……お前は止めたか?」グリグリ
「ひぎいいい!! ぎゃあああああ!!!」
「止めなかったよね!! ならどうして私は止めなきゃいけないんだよ!!! ふざけた事抜かしてんじゃねえよおおおおおおお!!!」グリグリグリ
「ごお゛お゛お゛、がああああああ!!!!?」
ジャック「お、お母さん!? ダメだよ死んじゃうよ!?」
「ああ!? ……あ、そっか、そうだよ。絶対に殺さないって誓ったんだった」
「あぁ……危なかった。つい感情的になっちゃった。全く、変な事言わないでよね」
ジャック「落ち着いてくれて良かった」ニコッ
「ありがとうね、ジャックちゃん」ナデナデ
ジャック「えへへ///」
「うぅ……もう…いやぁ…………」
「……ジャックちゃん、始めよっか」
ジャック「――うん♪」
41 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:01:49.33 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜ダイヤ召喚の四日前〜
果南「やっほ、今日も来たよ」
果南父「おお、いつも済まないな」
果南「娘なんだから親のお見舞いに来るのは当然でしょ?」
果南父「そっか……父親想いのいい娘に育ったものだ」ニッ
果南「でしょ? もっと褒めてくれてもいいんだよ!」ニッ
果南父「ふっ、調子に乗るな」
果南父「……なあ果南、大切な話があるんだ」
果南「……余命の事?」
果南父「なんだ……もう聞いていたのか」
果南「まあね。この前来た時に聞こえちゃった」
果南父「まじか……俺のこの一週間の葛藤は何だったんだよ…」トホホ
果南「もう……治らないんだよね」
果南父「らしいな。どうやら医者曰く、後一か月持つかどうか怪しいらしい」
果南「……へぇ、そうなんだ」
果南父「あれ……もっと取り乱すと思っていたのに、意外と冷静?」
果南「だって、泣き喚いたところで意味無いじゃん」
果南父「そりゃそうだけど……父親的にはちょっと寂しいというか」
果南「父さんの事だし余命一ヶ月って宣告されても二か月でも半年でもしぶとく生き続けるんでしょ? なら泣くにはまだ早いもん」
果南父「……ああ、そうだな! 柄にも合わず弱気になってたよ。悪かったな」
果南「……絶対に死なせるもんか」ボソッ
果南父「果南? 何か言ったか?」
果南「ん、何も言ってないよ」ニコッ
果南父「?」
42 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:02:16.86 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「――見舞いは済んだか?」
果南「うん。待たせたね、バーサーカー」
バーサーカー「病院の近くにキャスターがうろついている。どうする?」
果南「冬木の地では全てのサーヴァントが召喚される前の戦闘は禁止されているけれど、ここではそんなルールは無い。目障りだからここで消そう」
バーサーカー「了解だ、マスター」
果南(待っててね、父さん。私が聖杯の力で不治の病だって治してみせるから。だから……だからそれまで……!!)
果南「行こう、バーサーカー。邪魔する奴は全員ぶっ潰す!!」
バーサーカー「――ああ、任せろ!!」
43 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:03:59.22 ID:Hn5+HR340
―――――――
―――――
―――
〜対アサシン戦から五日後 浦女 屋上〜
ダイヤ「………ッ」ギギギギッ
ダイヤ「――ふッ!!!!」
――パシュ!!!
ダイヤ「……当たりましたわ」
ルビィ「もしもし、鞠莉さん? どうですか?」
鞠莉『しっかり的の中心を射抜いているわ! 五発連続で的中よ』
ルビィ「ほぇ〜、これで10kmも成功だね。ルビィにはどこを狙っているか全く見えないよ……」
鞠莉『アーチャークラスならこれくらい普通よ。ただ、これだけの距離でも高威力を保てるのは驚きね。用意した金属板を粉砕したんですもの』
ダイヤ「もう少し馴染めば、もっと遠距離からの狙撃も可能ですわ」
ルビィ「おお!!」
鞠莉『遠くから敵を狙えるのは大きなアドバンテージになるけれど……内浦の土地じゃ最大限生かすのは難しいかもね』
ルビィ「あー……そうかも」
ダイヤ「……む」
鞠莉『まあ、この調子で能力を引き出してきましょう。私達も一旦学校に戻るわね』
ルビィ「はい、待ってますね」
44 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:05:12.88 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
鞠莉「どう? ダイヤの成長は」
セイバー「及第点といった所だな。これなら単騎でも十分戦えるだろう」
鞠莉「そう、なら安心ね」
セイバー「マスター、少し話がある」
鞠莉「どうしたの?」
セイバー「――先日マスターと思わしき人物を発見した」
鞠莉「……へえ、流石ね」
セイバー「だが……その人物がだな……」
鞠莉「何よ、別に浦女の生徒だったとしても今更驚かないわよ?」
セイバー「……そうか、なら――」
「――そっか、やっぱりルビィだけじゃなくて鞠莉もマスターだったんだね」
鞠莉「……へ?」
果南「……そろそろバレてると思ったからさ、こっちから来たよ」
鞠莉「え、は、ええ? 果南? どうしてここに……隣にいる女の人は誰?」
バーサーカー「………」
果南「誰って……マスターならステータスが視えているでしょ?」
鞠莉「そんなハズが無い!! ……だって、だって、どうして果南が?」
果南「そりゃ、私が魔術師だからだよ」
鞠莉「嘘よ……私聞いてない」
果南「うん、だって言ってないもん。鞠莉だって私に言ってないよね?」
鞠莉「そう、だけど……え?」
セイバー「受け入れろ……私が疑わしいと思った人物は彼女だ。遅かれ早かれ戦う運命だったんだ」
鞠莉「戦う? どうして……果南の願いは私と同じダイヤの蘇生じゃないの?」
果南「……うん、違うよ」
鞠莉「じゃあ何を……」
果南「みんなには言ってないんだけどさ……私の父さん重い病気なんだ」
鞠莉「病気……」
果南「余命宣告も受けた。もう一か月ももたないんだってさ……」
鞠莉「その病気は治す事は出来ない……の?」
果南「……出来ないから聖杯の力にすがっているんじゃないか!!!」
鞠莉「ッッ!!」
果南「父さんが死ぬなんて嫌だ……父さんのはこの先もずっと一緒にいて欲しいの!!」
鞠莉「………ッ!!」
45 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:06:39.56 ID:Hn5+HR340
果南「私は私の願いを叶える為なら何だってする。邪魔する敵は誰だろうとぶっ潰す!」
果南「鞠莉はどっちなの? 私の味方?」
鞠莉「私は………ッ!!!」
果南「――そっか。鞠莉は私じゃなくてダイヤを選ぶんだね」
鞠莉「ち、違う! そんなつもりじゃ……」
果南「いいんだよ……分かっていたからさ。鞠莉と戦う覚悟はもう出来てる」
鞠莉「か、なん……」
果南「……バーサーカー」
バーサーカー「いいんだな?」
果南「――やれ、バーサーカー!!!」
バーサーカー「ガアアアアアアァァァァ!!!!!」
セイバー「来るぞ!! 腹をくくれ、マスター!!」
鞠莉「……ぅ」
セイバー「マスター!?」
バーサーカー「潰れて死ねえええ!!!」
接近してきたバーサーカーは鎖で繋がれた大きな鉄球を叩きつける。
人の頭部より一回り大きいその鉄球はその表面を無数の棘で覆われており、素手で防ぐのは不可能。
セイバーは剣による防御を諦め、辛うじて回避する。
セイバー(くっ!! この威力……直撃すれば一撃でやられかねない!! ただでさえギリギリの戦闘だというのに――)
セイバー「マスター!! 魔力供給が鈍い!!」
鞠莉「……うぅ、うぁ……」
セイバー「マスター!!?」
バーサーカー「はっ! 貴様のマスターは既に戦意喪失のようだな!! これならすぐに終わりそうだ!!」
セイバー「クソッ!!」
46 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:07:34.78 ID:Hn5+HR340
バーサーカーの猛攻をギリギリで捌き、耐えしのぐセイバー。
防戦一方ではジリ貧。
負けるのは時間の問題だ。
セイバー(一か八か、この一撃に賭けるしかない!!)ビュン!!ビュン!!
セイバーは二本の中華剣を宙に投げる。
セイバー「――鶴翼、欠落ヲ不ラズ(しんぎ むけつにしてばんじゃく)」
左右から同時に最大の魔力を込めて一投する。
弧を描く二つの刃は敵の上で交差するように飛翔。
バーサーカー「甘い!!!」
これを防ぐ。
武器を失ったセイバー目がけて突進するバーサーカー
セイバー「――心技 泰山ニ至リ(ちから やまをぬき)」
セイバーの両手には投擲したはずの中華剣が再び握られていたのだ。
バーサーカー「んな!? 同じ宝具がもう一対あるだと!?」
セイバー「――心技 黄河ヲ渡ル(つるぎ みずをわかつ)」
果南「ッ!!? バーサーカー、後ろ!!!!」
バーサーカー「!!?」
セイバーが使用している剣、『干将・莫邪』は夫婦剣である。
この二刀は磁石のように引き合う性質を持っている為、弾かれて背後に飛ばされても、手元の干将・莫邪に引き戻される。
セイバー「――唯名 別天ニ納メ(せいめい りきゅうにとどき)」
セイバー「――両雄、共ニ命ヲ別ツ(われら ともにてんをいだかず)」
全方位からの同時攻撃。
回避も防御も困難な一撃必殺の極致。
セイバー「――鶴翼三連(かくよくさんれん)!!!」
果南「バーサーカー!!!」
――パキンッ!!!
セイバー「ッッッ!!!!」
47 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:09:26.29 ID:Hn5+HR340
そんなセイバーの奥義をバーサーカーは鉄球を振り払う事で容易に防いでしまった。
原因は使用した武器の強度が圧倒的に不足していたからだ。
セイバー(やはり魔力供給量が足りない!! まともに武器が作り出せないか!)
バーサーカー「吹き飛べえええええ!!!!」
攻撃の隙を突かれ、腹部に強烈な拳を叩きこまれる。
肉を打つ鈍い音が響いた。
セイバー「ぐふッッ!!!」
果南「よし、このまま倒せ!!」
鞠莉「あ、あぁ……」
セイバー「おい、どうしたんだマスター!!」
鞠莉(ルビィに偉そうな事を言ったクセに……覚悟が出来ていなかったのは私の方だった)
鞠莉(私は……果南の願いを奪えるの? それでいいの?)
鞠莉(――出来ない……出来ないよ。私に果南の願いを奪う覚悟は……)
セイバー「――鞠莉!!!!!!」
鞠莉「ッッ!?」
セイバー「お前は何のために聖杯戦争に参加したんだ! 聖杯に何を願おうとした!」
鞠莉「そ、それは……」
セイバー「ダイヤを蘇生する為か? それが鞠莉の願いの全てだったのか? 違うだろ!!!」
セイバー「もう一度言う、鞠莉の願いは何だ!!!?」
鞠莉「私の……願い…」
鞠莉「………」
果南「鞠莉?」
鞠莉「……ああ、そうか、そうだったよ。私の願いは――」
――キュイィィィン!!!!
セイバー「ッ!! 来た!!!」
滞っていた魔力供給が解放。
セイバー本来の力が戻った。
48 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:11:13.10 ID:Hn5+HR340
鞠莉「セイバー! ……全力でやりなさい!!!」
セイバー「――了解だ、マスター!!」
セイバーは片手を突き出し、鞠莉から供給された魔力を大量に練り上げる。
セイバー「――――投影、開始(トレース オン)」
セイバー「――――全投影、待機」
セイバーの背後の空中に無数の剣が出現。
その全てがバーサーカーを狙っている。
果南「そんな……どうしてセイバークラスの英霊がこんなに多くの剣を持っているのさ!?」
バーサーカー「下がれマスター!! 私が全て撃ち落とす!!」
セイバー「――――停止解凍、全投影連続層写……!!!」
――ズドドドドドド!!!!!
背後に待機していた全ての剣が一斉に発射される。
その圧倒的な攻撃密度にバーサーカーは成す術もなく、体中を剣で串刺しにされる。
その一本はサーヴァントの心臓部ともいえる霊核を貫いていた。
バーサーカー「が……がはっ………」ボトボト
果南「あ、ああ……バーサーカー……」
鞠莉「勝負ありね。私の勝ちよ」
果南「……鞠莉いいい!!」ギロッ
鞠莉「……ッ」ビクッ
果南「まだだ……まだ負けてない……!!」
果南「―――令呪をもって命ずる、勝て、バーサーカー!!!」キュイィィィン!!
鞠莉(バーサーカーの傷はどう見たって致命傷。令呪を使っても動けないハズ!?)
バーサーカー「があ、ガアアアアアアアアア!!!!!」
セイバー「バカな……霊核を貫いたんだぞ!?」
バーサーカー「コロスゥ……コロス、コロスコロスコロスコロスコロス!!!!!」
セイバー「やっとバーサーカーらしくなったか……今度こそ仕留める!」カチャッ
鞠莉「魔力量が跳ね上がった……宝具が来る!!」
バーサーカー「我が瞋恚にて果てよ英雄(アウトレイジ・アマゾーン)―――!!!」
真名解放と共に猛スピードで突進するバーサーカー。
それは理性を失った獣、まさに狂戦士へと変貌した。
49 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:13:16.82 ID:Hn5+HR340
バーサーカー「アグゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」
セイバー(攻撃が余りにも直線的過ぎる。所詮は狂戦士という訳か――)
セイバー「はあああ!!!!」
――バシュッ!!!!
バーサーカー「ッッ!!!」
すれ違いざまにバーサーカーの腹部と胸部を深く斬り裂く。
バーサーカー「――ア、グウアアアアアアア!!!!!!!」
しかし、バーサーカーは止まらない。
その視線、叫びはセイバーに対してではなく、その後ろにいる人物に向けられていたのだ。
セイバー「何!? こいつ、最初から俺を狙っていないだと!!?」
鞠莉(狙いは私か!!! 当然よね、勝つ為に一番楽なのはマスターである私を殺せばいいんですもの!)ギリッ
セイバー(クソッ、大失態だ!! このままではタッチの差で間に合わない!!!!)
果南「ダメだよ……どうして鞠莉を襲うの!?」
果南「やめて!!! 今すぐ攻撃をやめて、バーサーカー!!!!」キュイィィィン!!
果南は再度令呪を使用し攻撃の阻止を試みる。
だが、バーサーカーは既に攻撃モーションに入っていた。
果南「――鞠莉!!!」
鞠莉「………」ニコッ
果南(ッ!? どうして笑って――)
――ドスッ!!
バーサーカー「が……あ、き、れう、す………」スウゥゥ……
鞠莉「……ごふっ」ボトボト
力尽きたバーサーカーはそのまま消滅した。
ヒットの瞬間、頭部に不自然な仰け反りがあり、鞠莉の体を引き裂くまではいかなかったものの、腹部には剣が突き刺さっていた。
崩れるように倒れる鞠莉。
果南とセイバーは急いで鞠莉のもとへ駆け寄った。
セイバー「マスター!!?」
果南「うそ……鞠莉、鞠莉!!!!」
鞠莉「………」
果南「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!!! しっかりして!! 目を開けてよ!!!」
鞠莉「………」
果南「……うぅ、ひっく……お願い……目を……開けてよぉ……」ポロポロ
50 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:15:00.47 ID:Hn5+HR340
鞠莉「…………うる、さいなぁ」
果南「!!?」
鞠莉「大、丈夫よ……大した怪我じゃ、ないから」
果南「嘘つかないでよ!! 直撃じゃないとは言えバーサーカーの宝具を喰らったんだよ!?」
鞠莉「でも……生きてる。味方の援護に助けられた……わ」
果南「味方?」
セイバー(ヒット直前……側方からバーサーカーの頭部に高速飛んできた矢が突き刺さっていた。ダイヤの狙撃に助けられたというわけか……)
鞠莉「鍛えたかいがあったわね? 後で……一緒にお礼を言いましょう……セイバー……」
セイバー「……ああ、不甲斐ないサーヴァントで申し訳ない」
鞠莉「ふふ……次は、守り切って……ね?」
鞠莉「……果南、私の事……恨んでる、よね?」
果南「………」
鞠莉「まあ、当然か……願いを叶える機会奪ったんですもの。このまま殺されても文句は無いわ……」
果南「そんなことは……」
鞠莉「小さい頃から三人一緒に過ごしてきた……すれ違っちゃった時期もあったけれど、千歌っち達のおかげで仲直り出来た」
鞠莉「まだ果南やダイヤ、みんなと一緒にやりたい事や行きたい場所が沢山あるのよ。この夢は……いつか叶うと思っていた……」
果南「………」
鞠莉「私は取り戻したかった……私の願いはもう一度当たり前の日常を過ごすことだった」
鞠莉「……でも、果南に嫌われちゃったら本末転倒よね」
鞠莉「全く……他の参加者の願いは聞くものじゃないわね。決心が……揺らいじゃう…」
果南「ダメだよ。他の人がどんなに素晴らしい願いを掲げていようが、自分の気持ちは絶対に曲げちゃいけない」
鞠莉「……果南?」
果南「私が最初に自分の願いを伝えたのは、心のどこかで鞠莉だったら同情してくれる、勝ちを譲ってくれると思ったからだよ。……汚いでしょ?」
果南「なりふり構わず戦った結果、私は負けた。でも、これで良かったと思っているよ」
鞠莉「良かった? お父さんを救えなかったのに……?」
果南「私にとってダイヤも父さんも同じくらい大切なの。選ぶことなんて出来ない。それでも叶えられる願いが一つしかないなら選ぶしかない……」
果南「だから、鞠莉の願いを知った時は憎さ半分、嬉しさ半分だったんだよ。だって、勝っても負けても私の願いは叶うんだもん」
果南「だから、絶対に勝ち残ってね。他の敵に負けたりしたら絶交だから」
鞠莉「ふ、ふふ……絶交かぁ……こりゃ、負け……られ……な………い」ガクンッ
果南「鞠莉!?」
セイバー「大丈夫だ。会話の最中に自身で治癒魔術を使用していたからな。出血も止まっている」
セイバーは果南から鞠莉の身柄を引き取る。
傷は塞がったとは言え、一応病院での検査は必要だからだ。
セイバー「よっ、ふむ……予想以上に軽いな。もっと食事の量を増やすか……」
果南「あ、あの……鞠莉のサーヴァントさん!!」
セイバー「……何だ?」
果南「……鞠莉をよろしくお願いします」ペコリ
セイバー「心配は無用だ。なんせ、私はマスターから最強のサーヴァントとの評価を受けているからね。もう二度と、マスターは傷つけさせやしないさ」
果南「……はい!!」
51 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:16:12.46 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜ダイヤ召喚の前日〜
「――――ごッッ!!!?」ボトボト
ライダー「ま、マスター!!」
ジャック「あれれ、当たっちゃった」
「あーあ、サーヴァントのクセに易々マスターに致命傷を与えてしまうとは……あなたを召喚しなくて良かったわ、ライダー」クスクス
ライダー「あぁ、ああああ!!! マスター……マスター!!!」
「ぐふぅ……す、すまない……私が、油断したばかりに……」
「あなたも悪いのよ? 安易な正義感で首を突っ込まなければ殺されずに済んだのにさ」
「……高校生の誘拐現場を目撃したんだぞ? それを見逃せる人間がどこにいる!?」
「その結果がこれよ! ホント、馬鹿だよねぇ〜」
「く、そぉ……」
「ジャックちゃん、早く処理してよ」
ジャック「うん、任せて♪」
ライダー「やらせない……やらせて堪るか!!」
「――令呪を……もって、命…ずる」
「ッ!! ジャックちゃん!!」
ジャック「させないよ!!」
「この場から離脱しろ、ライダー!!」キュイィィィン!!
ライダー「何で!!? マスt……」シュイン
「……理解出来ない。どうしてサーヴァントの方を逃がした?」
「お前を……止める為…だ。きっとライダーは……私……よりも優秀なマスターと再契約して、お前を……!!」
「ふ〜ん、そっか」
「――やっちゃえ」
ジャック「バイバイ」ニコッ
――グチャ!!
52 :
◆ddl1yAxPyU
[saga]:2017/12/21(木) 22:16:49.12 ID:Hn5+HR340
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
曜「あちゃー、すっかり遅くなっちゃった。お母さん、怒ってるだろうな……」
曜「でも、このまま走って帰れば何とか間に合うかも!?」
曜「よし! 頑張って走――」
「――う、うあああああああああ!!!!?」
曜「うええ!? そ、空から女の子が!!!?」
――ドシーン!!!!
曜「痛てて……もう、手から血が出ちゃったよ。何するんだよ!!!」
「……う、うぅ……」シュウゥゥゥ
曜「えっ……ひ、酷い怪我!? それに何か体が消えかかってるよ!!?」
「あう……、あな、た……は?」
曜「大丈夫ですか!? 今救急車呼びますから!!」
「意味無い……よ」
曜「ならどうすればいいんですか!? 私に出来る事は!?」
「……じゃあ――」
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