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久「あんたが三年生で良かった」京太郎「……お別れだな」

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547 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:17:11.47 ID:F+8FESPw0



久「はい、おしまい。まだ血が滲む?」

京太郎「……無理に動かさなきゃ大丈夫そうだ」

久「腕で良かったじゃない」

京太郎「腹刺されてたら、さすがにどうしようもなかったかもな」

久「それよりあんた」

照「なに?」

久「いい加減離れなさいよ。手当するときも徹頭徹尾邪魔だったし」

照「イヤ」

久「駄々っ子か!」グイグイ

照「イヤ!」

京太郎「傷に響くからやめてくれ、マジで」


京太郎「……それで、なにが聞きたい?」

久「聞けるだけ」

照「そもそも私の聞きたいことは一つだけ」

京太郎「……二人は、どこまで俺を許せる?」

久「聞いてみなきゃわからないわよ」

照「私なら全部許してあげるから」

京太郎「それは、俺が人を殺したって言ってもか?」

照「――っ」

久「……聞かせて」


548 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:21:44.17 ID:F+8FESPw0



京太郎「高校の三年間、色々あって、色々やらかして、結果いつの間にやら色んなやつから好意を向けられて」

京太郎「でも、俺にはそれが途方もなく重く感じた……感じてしまった」

京太郎「答えを出さなきゃと焦って自分を追い詰め……それでなにもかもがいやになった」

京太郎「だから全部断った。そうやってしがらみを断てば、楽になれるんじゃないかって」

京太郎「物理的にも離れたくて……だから日本を出た」

京太郎「だれも自分のことを知らない中で自由に歩き回るのは結構楽しかった」

京太郎「そして身勝手にも誰かを好きになったりして……そしてその子は死んだ」

京太郎「不運にも、交通事故に巻き込まれて、だ」

京太郎「わかるよな? ……俺が、殺したんだ」

京太郎「そうじゃないって思うか? だけど違うんだよ」

京太郎「だって、彼女の不幸の原因は俺だ」

京太郎「俺が、なにも考えずに好きになって、運を奪って……死なせた」

京太郎「……そんなのは俺が殺したも同然だ」

京太郎「要するにさ、今の生き方は罰なんだよ」

京太郎「一番楽じゃない生き方を選ばないと、俺は自分を許せそうになかった」

京太郎「自分が生きてることをさ」

京太郎「死ぬのは簡単だ。すぐ楽になれるしな。でもそんなのはダメだ」

京太郎「そんな逃げが許されるはずがない」

京太郎「だから、俺はこの身勝手な生き方を続けてるんだよ」

549 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:25:13.98 ID:F+8FESPw0


京太郎「……以上だ」

久「……」

照「……」

京太郎「他に聞きたいことはあるか? ないなら俺はもう行く」

久「……なんで、話さないの?」

京太郎「今全部話したよ」

久「そうじゃない。なんで自分の生き方に巻き込む人に、何の説明もないのかって話よ」


久「だってそれ、全然フェアじゃない。何も知らないで巻き込まれた人はたまったものじゃない」

久「あんたがこれからもそうやって色んな人に迷惑をかけ続けていく気なら、私はあんたを止める」


京太郎「止める? どうやってだよ」

久「無理やり連れ帰るか、そうじゃなきゃ――」


照「待って、勝手に盛り上がらないで」

550 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:28:53.81 ID:F+8FESPw0


久「……そういう横槍、やめてもらえる?」

照「だって、私は聞きたいこと聞けてないし」

京太郎「俺のことは大体話したはずだけどな」

照「ううん、京ちゃんは大事なことを言ってない」


照「京ちゃんは、私のことをどう思ってるの?」


京太郎「……今更どうとも思ってなんか――」

照「ウソだよね? 京ちゃんはその気になれば私と……その女からも奪っていけた」

京太郎「自意識過剰かよ」

照「とても細いけど、まだ切れてない。このつながりが京ちゃんの気持ちを表してる」

京太郎「……」


照「どうして? なんで私たちからは奪っていかないの?」

照「一番辛い生き方を選んでいるなら、どうして私たちに手を出さないの?」

551 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:32:46.30 ID:F+8FESPw0


京太郎「……るせぇ」

京太郎「うるせぇうるせぇうるせぇ!」

京太郎「どうしてこんなとこまで来るんだよ! ずっと日本にいればいいのによ!」

京太郎「綺麗で輝いてるんだよ! 日本での思い出は! だから汚したくないし帰れないんだよ!」

京太郎「それなのにわざわざ俺のとこまで来やがって……!」グイッ


久「ちょっ、なにするのよ……!」

照「京ちゃん、痛い」

京太郎「そこまで言うんだったら二人まとめて食い物にしてやるよ」


京太郎「――だから、蹴るなり殴るなり刺すなり抵抗してくれよ」

京太郎「お願いだからさ……」


久「京太郎……」

照「京ちゃん……」


552 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:38:22.52 ID:F+8FESPw0



久「ん……」

照「きょう、ちゃん……」


京太郎「バカだよ、二人とも」

京太郎「なんで抵抗しなかったんだよ」

京太郎「怪我人に二人がかりで勝てないはずないだろ」

京太郎「なんで俺に、一番辛いことやらせるんだよ……」

京太郎「……ダメだ。この二人と一緒にいたら」

京太郎「あの頃の自分に、どうしようもなく戻りたくなる」

京太郎「もう戻れやしないのに……」


京太郎「だから……今度こそさよならだ」


553 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:41:17.92 ID:F+8FESPw0



久「んんっ……あれ、京太郎?」

照「クリームは植物性より動物性の方が……」ムニャムニャ

久「起きろっ!」グニィ

照「痛いっ」

久「京太郎がいない!」

照「京ちゃんならさっきまでケーキを……」

久「それはあんたの夢の中!」


554 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:44:14.97 ID:F+8FESPw0



久「あーもう、あいつどこ行ったのよ……!」

照「……匂いもわからない」クンクン

久「あんたは犬か!」

照「とりあえず、手分けして探したほうが――」


「よう、探しものかい?」


照「あなたは……」

久「ごめんなさい、今日は本当に付き合ってる時間がないの」

「その前に、アンタらはキョウの知り合いってことでいいのかい?」

久「そうよ、だから探してるの。これ以上時間を取らせないで」

照「……待って、何か知ってるの?」

「ああ、キョウとはそれなりの付き合いだからな」

照「教えて」

「案内してやるよ。車に乗りな」

照「わかった」

久「ちょっと待った、これって――」

555 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:48:21.57 ID:F+8FESPw0


――カチッ


「リボルバーだ。古いが、当たれば痛いどころじゃないってのはわかるだろ?」

久「これだから銃社会は……!」

「乗るのか? 乗らねぇのか?」

照「……この場で私たちを撃ったら、それこそあなたもただでは済まない」

「そう、オレはお縄について、下手すりゃ死刑であの世行きだ」


「だけどよ、それがどうした?」


「アンタらが死ねば、あの野郎への最高のプレゼントになるってもんだ」

「オレの第一希望はもちろん、自分の手でアイツをぶちのめすことだけどよ」


久「……ダメね、こっちの話は通じそうにない」

照「……わかった」


「もう一度聞くぜ……乗るのか? 乗らねぇのか?」


556 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:51:24.38 ID:F+8FESPw0



京太郎「シャツと飯代でほとんど消えたな……」

京太郎「まぁ、移動は最悪ヒッチハイクでなんとかなるか」

京太郎「……怒ってるだろうな」

京太郎「いや、俺にはもう関係ない」

京太郎「今は少しでも遠くに――」


「よう、乗ってくかい?」


京太郎「あんたは……」

「ただし代金はいただくぜ」

京太郎「あいにく持ち合わせがないんだよ」

「そうか……なら、こんなのに興味はねぇか?」ピラッ

京太郎「……趣味が悪い写真だな」

「今はまだ縛られてるだけだ。時間が経てばどうなるかは保証できないけどよ」

京太郎「赤の他人がどうなろうと関係ない」

「……そうかい。気が変わったんならいつものとこに遊びに来な」

557 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:53:46.29 ID:F+8FESPw0


京太郎「……」


京太郎(俺はもうどのみちあの二人と会うことはない)

京太郎(だからどうなろうと関係ない……そうだろ)

京太郎(だけど、考えれば考えるほど……)


『京太郎』

『京ちゃん』


京太郎「ダメだこりゃ」

京太郎「来るなって思ってるのに流れ込んでくる」

京太郎「まったく、ホントにあの二人はどうしようもないな……」

京太郎「……一番どうしようもないのは俺だけどな」


558 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:56:55.74 ID:F+8FESPw0



久「いたたたた……絶対これ跡残る」

照「んっ……全然解けない」

久「あんた、あのギュルギュルってやつでどうにかならないの?」

照「無理。こんな状況じゃ使えない」

久「……こんな状況じゃなかったら使えるってことが驚きね」


久「あいつ、来ると思う?」

照「あなたはどう思うの?」

久「そうねぇ……あ、せっかくだし賭けてみない?」

照「京ちゃんが来るか来ないか?」

久「負けた方は大人しく身を引くってことで」

照「うん、それで構わない」

久「じゃあ、同時に言うわよ」

照「わかった」


久「京太郎は――」

照「京ちゃんは――」


「「――絶対来る!」」


久「……不成立じゃない」

照「あなたが変えればいい」

久「変えるわけないでしょ」


559 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:00:26.92 ID:F+8FESPw0



「……来ねぇ」

「せっかく舞台を整えてやったってのに……来やがらねぇ」

「〜〜っ、舐めやがってクソがぁっ!!」ガンッ


京太郎「お邪魔するぜ」


「はぁ、はぁ……遅いお出ましじゃねェか」

京太郎「ああ、別にあんたと遊ぶ気はない。忘れ物を取りに来ただけだ」

「……そうかよ。じゃああのジャップの女どもは好きにさせてもらうぜ」

京太郎「待てよ」

「なんだぁ? さっきは関係ねぇって言ってたよな?」

京太郎「ああ、さっきはな……だけど今は違う」


京太郎「二人とも俺の女だ。手を出すっていうなら覚悟しとけ」

560 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:03:53.23 ID:F+8FESPw0


「ほぉ? ……言うじゃねえか、このクソジャップがよぉっ!」

京太郎「騒ぐなよ。おとなしく返すなら俺もおとなしく帰る」

「テメェをぶちのめすか、あの女どもをいたぶってやんなきゃコッチの気がすまねぇんだよ!!」

京太郎「だったらどうする? 怪我人相手に殴り合いか?」

「ハッ、そんな結果が見えた勝負はしねぇよ……これだ」ゴトッ

京太郎「リボルバー……ロシアンルーレットか?」

「六発入りで一発だけ実弾だ。先にくたばった方が負けっていうわかりやすいルールだ」

京太郎「……ちょっといいか?」

「あぁ? 平和ボケしたジャップにはヘヴィか?」

京太郎「いいや、軽すぎる」


京太郎「俺が先に五回引く」


「……正気か、テメェ」

京太郎「俺の勝ち筋は一本、あんたの勝ち筋は五本。有利なのはどっちかは考えなくてもわかるよな?」

「……」

京太郎「それとも、俺がビビって逃げるのに期待してたのか?」

「――ッ、いいじゃねぇか、乗ってやるよ!」

京太郎「じゃあ、行くぜ」カラカラカラ

561 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:06:35.84 ID:F+8FESPw0


――カチッ


「チッ、ハズレか」

京太郎「慌てんなよ。まだ一発目だ」


――カチッ


「運の良い野郎だぜ」

京太郎「あんたも知ってるだろ。今の俺の取り柄はそれぐらいだってな」


――カチッ


「お、おい……もう引けねぇってんなら、そこでやめてもいいんだぜ?」

京太郎「やめる? 冗談だろ」


――カチッ


「やめろ、やめろやめろやめろぉ……!」

京太郎「今の俺には――」


――カチッ


京太郎「――幸運の女神が、二人もついてるんだから」

562 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:10:47.14 ID:F+8FESPw0


京太郎「さぁ、今度はあんたの番だ」ゴトッ

「あ、ああ……」カタカタ

京太郎「どうした、震えてるぞ? 引く度胸がないなら、ここで終わりにしたっていいんだけどな」

「――っ、ふざけるなっ!!」グイッ


京太郎「……結果の見えた勝負はしないんじゃないのか?」

「今はテメェをブチのめせればそれで十分なんだよぉ!」ブンッ

京太郎「――っ」


――ドサッ


「あ、が……な、なんで」

京太郎「たしかに結果の見えた勝負だったな」

「な、なにしやがった……」

京太郎「あんたみたいな力任せが、たとえ怪我してようが執事殺法に勝てるわけないだろ」

「なんだそりゃ……」

京太郎「せめて岩を素手で砕けるようになってから出直してこい」

「ふざけたことぬかしやがって――がっ」

京太郎「ほら、二人はどこだ」

「……奥の部屋だ」

京太郎「どーも」

「……」

563 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:13:29.92 ID:F+8FESPw0


(チクショウ……!)

(あんな、ちょっとツイてるだけのクソジャップに!)

(許せねぇ、ぶっ殺してやる……!)


「ヘイ、キョウ!」

京太郎「あん?」

「最後の一発、受け取りやがれ……!」


――カチッ


「ふ、不発……?」

京太郎「言ったろ、幸運の女神が二人もいるって……よぉ!」ゴスッ

「ぐぁっ……」

京太郎「しばらく寝てろ」


564 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:15:58.86 ID:F+8FESPw0



京太郎「大丈夫だったか、二人とも」

照「平気、京ちゃんが助けてくれたから」

久「縛られてた腕が痛いくらいかな」

京太郎「言っておくけど、自業自得だ。俺は帰れって言ったんだからな」

久「でも、ちゃんと来てくれた……違う?」

京太郎「……これっきりだ」

照「うん、それはウソだって私にはわかってるから」

京太郎「チッ……途中まで送ってくから、後は勝手にしてくれ」


565 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:19:24.30 ID:F+8FESPw0



京太郎「……」


照「すごい広い」

久「見渡す限りの荒野って、日本じゃまず見られないんじゃない?」

京太郎「……どこまでついてくるんだよ」

照「どこまでも」

久「あんたが諦めるまで」

京太郎「ついてくるなよ」

照「イヤ」

久「それより車ないの? 絶対徒歩で移動する距離じゃないでしょ」

京太郎「知るかよ。疲れたんならいい加減日本に帰れ」

照「帰れだって。帰ったら?」

久「それよりお菓子の備蓄尽きてるんじゃないの?」

照「あ……」

久「どこかで補充してきたら? 待たないけど」

照「むっ」

566 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:22:10.52 ID:F+8FESPw0


京太郎「やかましいな……帰れよもう」

照「京ちゃんが帰るなら」

久「というかさ、そう言って帰ると本当に思ってるの?」

京太郎「俺とは違って向こうでの生活があるだろ」

照「そんなの知らない」

京太郎「知らないってな……」

久「わからない? 全部かなぐり捨ててきたって言ってるの」

京太郎「……バカだよ、二人とも」


京太郎「俺は、きっと地獄に落ちるぞ」

照「じゃあ私もついてく」

久「しかたないから付き合ってあげるわよ」

京太郎「……勝手にしろよ」

567 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:26:26.80 ID:F+8FESPw0


久「ねぇ、どこ向かってるの?」

京太郎「どこだっていいだろ」

照「うん、京ちゃんがいれば」

久「それであんたがいなければ最高ね」

照「それはこっちのセリフ」

久「良く言うわね。一人で来るの怖がってたくせに」

照「全部諦めようとしてた人に言われたくない」

京太郎「……二人とも、見ない間にちょっと仲良くなったか?」


「「そんなわけない(でしょ)!」」


京太郎「はいはい、そーかい」




『エンディング――追い風と太陽と、幸運の女神』
568 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:30:13.43 ID:F+8FESPw0
長い、というか長すぎる……!
下手したら今までで最長の可能性すらありますね
長すぎてもはや眠気とかを超越してしまいました

ともあれ次の怜竜でひとまず最後です
今回ほどは長くならないと思いますが

それでは、これから朝ごはんを食べるので失礼します
569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/24(土) 10:04:00.58 ID:4wmmgOLvo


この3人で話が始まったから、終わるのも又3人でって感じでしっくりきた
570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/24(土) 15:28:36.78 ID:SNXMWWfb0
乙ッ!
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/24(土) 18:56:45.89 ID:XpDLnGGF0
乙でした
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/24(土) 21:19:07.80 ID:26xg1EVxO

最後の怜竜どうなる?
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/25(日) 19:35:36.61 ID:L9z6GB0M0
乙ですのだ!
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/27(火) 22:52:33.13 ID:ecDdmHCV0
へへへ。
追いついたじぇ
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 06:28:36.46 ID:f+5ZuxO60
タコス喰おうじぇ!
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 22:12:33.29 ID:QAqHqluiO
タコスよりもおもちが食べたい
577 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/15(日) 23:57:06.54 ID:z+GWKJ0g0
約三週間ぶりにこんばんはー
久しぶりにやろうかと

それじゃあ、もうちょっとしたら始めます
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/16(月) 00:18:25.22 ID:6K/6Ze7eO
これで最後か
待ってる
579 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:26:11.17 ID:6u5ud7w80
んじゃ、そろそろスタートします
580 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:32:02.56 ID:6u5ud7w80


京太郎「ん〜……太陽が眩しいぜ」


「夜勤おつかれさん」

京太郎「お、今日は早いね」

「ちょっと早起きしちまっただけだ」

京太郎「はは、それで出勤早めるなんて真面目だな」

「どうせやることもないつまらない人間だよ」

京太郎「そう言うなよ。恋人とかいねーの?」

「生憎、遠距離だよ」

京太郎「おいそれと会いにも行けないな」

「お前は?」

京太郎「毎日会ってるよ」

「チッ、自慢かよ」

京太郎「まぁ、毎回病院じゃムードもへったくれもないけどな」

「病院?」

京太郎「ああ……俺のツレ、ちょっと体悪いんだ」


581 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:37:20.30 ID:6u5ud7w80



京太郎「おはようさん」

怜「んー、おそーい」

京太郎「そう言うなって。こちとら夜勤明けだ」

怜「今日のおみやげは?」

京太郎「べったら漬」

怜「なんでやねん」

京太郎「いや、近所のおばさんから東京土産だからってもらって」

怜「浮気?」

京太郎「うちの母親より年上だぞ。どんだけストライクゾーンが広いんだよ」

怜「はやりんは?」

京太郎「全然いける」

怜「ふんふん……ギルティやな」

京太郎「夢を見るだけならタダだろっ」

582 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:43:52.06 ID:6u5ud7w80


京太郎「……それで、具合は?」

怜「可もなく不可もなく?」

京太郎「なんで疑問系よ」

怜「見解の相違みたいな?」

京太郎「つまりあれか、大丈夫って言ってるのは自分だけと」

怜「や、実際問題あらへんし」

京太郎「やっぱり自己申告は信用ならねーな」

怜「じゃあ確かめて、どうぞ」

京太郎「えー、悪いのはここですかー?」モミモミ

怜「やーん、すけべー」

583 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:50:12.66 ID:6u5ud7w80


――コンコン


竜華「そろそろええかな?」

怜「もうちょい」

京太郎「おしまいだ」

怜「えー?」

京太郎「おとなしくしとけ。入院中だろ」

怜「む〜」プクー

竜華「あはは、フグみたい。突っついてもいい?」

怜「ハリセンボンやねん。触ると怪我するで」

竜華「はいはい、お土産持ってきたから機嫌直してなー」

怜「待ってました! ――って、なんでべったら漬やねん!」

竜華「近所のおばちゃんにもらって」

怜「ネタ被り!」


京太郎(というか、出処が同じなんだよなぁ)

584 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:54:47.88 ID:6u5ud7w80


怜「2セットももらってどないせいっちゅーねん」

京太郎「そりゃあ、ご飯のお供だよ。朝昼晩って」

怜「まさかのべったら漬漬けかい」

京太郎「ズケズケと言ってくれるな」

怜「んー、あんまおもろくないなぁ……やり直しで」

京太郎「なにぃ?」

竜華「……」プルプル

怜「竜華、お花摘みなら我慢せぇへんほうがええで?」

竜華「ち、ちがっ……」

怜「ならトイレ?」

京太郎「それどっちも同じな」

怜「言わぬが花」

京太郎「お花摘みだけに?」

怜「う〜ん……座布団一枚っ」

京太郎「よっしゃ」

585 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:05:13.60 ID:6u5ud7w80


竜華「ごめん、診察あるからそろそろ」

京太郎「ん、そうか」

怜「次は甘いのがええな」

京太郎「リクエストとは生意気な」

竜華「あはは……うん、次はケーキ買ってくる」

怜「おおっ、じゃあ楽しみにしとる」

竜華「先生の言うこと、ちゃんと聞いておとなしくしとること……ええ?」

怜「べったら漬を食べるぐらいならええやんな」

竜華「多分、それぐらいなら」

京太郎「それじゃ俺も……」

怜「えー? もう帰るん?」

京太郎「いや、お花摘み」

怜「その隠語はレディース専用やねん」

京太郎「んー……山へ芝刈りに、とか?」

怜「はい座布団没収ー」


竜華「……」


586 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:11:25.23 ID:6u5ud7w80



京太郎「しかし医者かぁ……あらためてすごいよな」

竜華「うん、頑張ったから」

京太郎「勉強も運動も麻雀も強くてすごい……というかやばいってのはよく聞いたけどな」

竜華「やばいって」

京太郎「安心しろ。やばいやつならなんでか知り合いによくいるから」

竜華「……須賀くん、トイレは?」

京太郎「お前を送ってからでもいいだろ」

竜華「別にうちは……」

京太郎「さっき、泣きそうだったろ」

竜華「――っ」

京太郎「勘違いだったら悪いけどな……俺には辛そうに見えた」

竜華「うっ、うぅ……」ポロポロ

京太郎「……もしあいつのことなら、話してくれないか?」


587 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:20:24.12 ID:6u5ud7w80



京太郎「……」


『……もうダメかもしれへんって』

『治療で進行を遅らせることはできても、改善はしてへんって……』

『入院も長いし、このままやったら……』


怜「大丈夫? 胸揉む?」

京太郎「それよりもギュってしていいか?」

怜「もち。スキンシップならウェルカム」

京太郎「ああ……」ギュッ

怜「んっ」


京太郎(俺になにができる?)

京太郎(もう先が長くないかもしれないこいつに、なにをしてやれる?)

京太郎(……いや、まだダメだって決まったわけじゃない)

588 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:30:08.46 ID:6u5ud7w80


怜「今日は情熱的やん」

京太郎「いつも心の中ではこんなもんだよ」

怜「やぁん、もしかしてケダモノになっちゃう?」

京太郎「ここが病室じゃなきゃな」

怜「じゃあお持ち帰りしてもよし」

京太郎「良くなったらな」

怜「はよ良くなれー、はよ良くなれー」

京太郎「よし、その意気だ」

怜「うーん、ニケツしたい!」

京太郎「退院したらな」

怜「じゃあ……結婚したい」

京太郎「……退院したら、盛大に式挙げようぜ」

怜「指輪は?」

京太郎「頑張って用意する」

怜「ならうちも頑張って治す」

京太郎「ちょっと飲み物買ってくるわ」

怜「ん……ふわぁ、うちはもう一眠りしとこかな」

京太郎「ああ、おやすみ」


589 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:37:13.50 ID:6u5ud7w80



京太郎「……くそっ」ガンッ


京太郎(何が退院したらだ……!)

京太郎(あんな言葉、ただの逃げじゃねぇかよ!)

京太郎(でもダメだ……あんなに辛いなんて)

京太郎(……泣けるなら俺が泣きてぇよ)


「あら、京太郎さん」


京太郎「……どうも、園城寺さん」

「そんな他人行儀な呼び方しなくてもいいんですよ?」

京太郎「はは……お義母さんはまだ早いですから」

「そんなことない……だってあなたは、もう何年もあの子の傍にいてくれたじゃない」

京太郎「俺は……なにもできないですから」

「いてくれるだけで十分ですよ」

京太郎「……」


京太郎(それでも、俺は……!)


京太郎「すみません、夜勤明けなんで失礼します」

「ごめんなさい、眠いところを引き止めてしまって」

京太郎「いえ。それよりも、今は寝てるんでそっとしといてやってください」


590 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:48:09.14 ID:6u5ud7w80



「よう、お疲れか?」

京太郎「ん、ああ……」

「今日も見舞い行ってたんだろ?」

京太郎「まあな……」


京太郎(ここ最近、あいつの前でちゃんと笑えてるか怪しい)

京太郎(ぎこちなくないだろうか……あいつに、心配をかけてないだろうか)

京太郎(知らないのなら、気取られるわけには……)


「ほら、飲めよ」

京太郎「悪いな……えっと」

「リュージでいい」

京太郎「あれ、そんな名前だったっけ?」

リュージ「昔から仲がいいやつからはそう呼ばれてんだよ」

京太郎「……ああ、苗字と名前から取ってるのか」


京太郎(なんか、ハギヨシさんみたいだな)

591 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:57:07.66 ID:6u5ud7w80


京太郎「じゃあ俺のことも京ちゃんでいいぜ」

リュージ「いや、気持ち悪い」

京太郎「当たり前だ。俺も男からそんな呼び方されたら気持ち悪い」

リュージ「はっ、今日も夜勤だろ? 居眠りしないようにな」

京太郎「そっちこそ、早起きしすぎて夜中に出勤するなよ」

リュージ「言ってろよ」


京太郎(……こういうの、なんか久しぶりだな)

京太郎(こっちに来てから、同年代のやつと付き合う機会が減ったしな)


「須賀くん、ちょっといいかい?」

京太郎「はい」

「……彼に、なにかされなかったか?」

京太郎「なにかって……コーヒーもらったぐらいですよ」

「そうか、ならいいんだ」

京太郎「なにかあるんですか?」

「その、あまり大きな声では言えないんだけどね……」


592 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 02:03:10.21 ID:6u5ud7w80



京太郎「暴力団、ね」


『あくまで噂なんだけど……暴力団と付き合いがあるって』

『もちろん噂は噂だけどね。ほら、なにか問題があった時に困るじゃないか』


京太郎「……だからなんだってんだよ」

京太郎「それだったら俺だって、極道の娘と友人関係だっての」

京太郎「まったく、つまんねーこと言いやがってよ」


怜「んん……もう昼?」


京太郎「なんだ、せっかく寝顔見てたのに」

怜「あかんなぁ、女子のすっぴんのぞくとか犯罪行為やで?」

京太郎「アホ、何回一緒に寝たと思ってるんだよ」

怜「はい、セクハラ発言いただきましたー」

京太郎「おっと、これは迂闊だったな」

怜「ふふん、出るとこ出たら大変なことになるやろな?」

京太郎「マジか……見逃してくれっ、なんでもするから!」

怜「ん? 今なんでもするって――けほっ、けほっ」

京太郎「おい、大丈夫かよ」

怜「けほっ……ちょい休めば――げほっ、げほっ!」

京太郎「明らかに酷くなってるだろ! 看護師さん呼ぶからなっ」


593 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 02:13:49.85 ID:6u5ud7w80



京太郎「……まだか」


『治療で進行を遅らせることはできても、改善はしてへんって……』


京太郎(あれじゃあ、改善するどころか……)


――ガラッ


京太郎「――っ、先生、あいつはっ?」

「容態は落ち着いて、今は寝ています」

京太郎「そうですか……」

「ただ、徐々にですが病状は悪化の傾向にあります」

京太郎「……やっぱり、そうなんですね」

「……清水谷先生から聞いていましたか」

京太郎「俺が無理に聞き出したんです」

「彼女は園城寺さんのために医師を志したそうですね……気の毒な話だ」

京太郎「なんで、もうダメみたいに言うんですか」

「入院してもう数年……投薬を続けていますが、病は徐々に進行している」

京太郎「じゃあ打つ手はないって言うんですか!?」

「ゼロとは言えません。しかし……」

京太郎「お金の問題だったらなんとかするし、俺にできることならなんだって……!」

「……金銭の問題でも、あなたにどうにかできることでもないんです」


「病気の完治の芽があるとすれば、それは……心臓の移植しかないんですよ」


594 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 02:22:31.94 ID:6u5ud7w80



京太郎「……なあ、清水谷」

竜華「なに?」

京太郎「心臓の移植って、難しいのか?」

竜華「……先生から聞いたんやね」

京太郎「まるで、移植には期待できないみたいな言い方だった」

竜華「正直、難しいと思う」

京太郎「難しい手術なのか?」

竜華「技術的にもやけど、まずドナーが見つからへん」

京太郎「誰でもいいってわけじゃ、ないんだよな」

竜華「うん……合わん臓器を移植しても、ダメになるだけやから」

京太郎「そうか……」フラッ

竜華「帰るん?」

京太郎「悪い、一人にしてくれ」


595 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 02:28:13.53 ID:6u5ud7w80
眠し……沈みます
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/16(月) 02:50:38.37 ID:6K/6Ze7eO
寝乙
597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/16(月) 21:38:24.67 ID:g77xl1D20
良い夢を見るのよ!乙!
598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/16(月) 21:52:01.58 ID:Cn46IvuA0
ここまでのヒロイン二人エンドはハッピーエンドにはならないからこれから先もと思うと読んでて辛い
599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 07:27:38.86 ID:BHcbBcUA0
なんでや前回の久と照は割とハッピーだったやろが
京太郎が自身の何かを犠牲にする傾向が高いが
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 11:10:41.69 ID:LqlO70M10
乙です!
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 12:32:04.06 ID:XgRREifrO
ハッピーエンドが良いよね
602 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/17(火) 23:52:40.60 ID:qDH7AUeq0
こんばんはー
昨日はぐっすり寝たので今晩はやろうかと

もう少ししたら始めます
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 00:13:50.20 ID:D2b/MG0vO
お埋まってる
604 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 00:48:53.95 ID:soQ9kuNI0
危うく寝るとこだった……

んじゃ、始めます
605 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 00:53:25.30 ID:soQ9kuNI0



『……金銭の問題でも、あなたにどうにかできることでもないんです』

『病気の完治の芽があるとすれば、それは……心臓の移植しかないんですよ』


京太郎「はは……本当に、俺にできることってないんだな」

京太郎「カピの時で慣れたつもりだったんだけどな……」ドンッ


「おい、兄ちゃん。ぶつかったっちゅーのに挨拶もなしか?」


京太郎「ああ……悪いね」

「誠意、足らんとちゃうか?」

京太郎「なんだよ……金欲しいなら最初からそう言えよな」

「なに言うとんのや。わいは金なんてせびらん。あくまで兄ちゃんから渡してくるんや」

京太郎「……チッ、小悪党が」

「あぁ? 今なんつった!?」

606 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 00:58:51.64 ID:soQ9kuNI0


「そこまでにしとけよ」


「邪魔すんなや! 今はこのボケと――」

「いいから、黙って、引け」グイッ

「――っ、あんたは」

「上の方にもよろしく言っといてくれ」

「……しゃあないわな。入院はごめんや」


「おい、もう行ったぞ」

京太郎「ああ……助かったよ」

「えらく不景気なツラだな。パチスロでスったか?」

京太郎「俺に構うのはよして……リュージ?」

リュージ「なんだよ、気づいてなかったのか」


607 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 01:05:23.22 ID:soQ9kuNI0



リュージ「コーヒーでいいか?」

京太郎「できればスポドリがいい」

リュージ「はっ、奢ってもらう上にリクエストってか」ガコン


リュージ「ほらよ」

京太郎「……ちゃんと聞き入れてくれるお前もたいがいだな」

リュージ「そんな死人みたいなツラされたらな」

京太郎「……」

リュージ「……恋人に、なにかあったのか?」

京太郎「もうダメだって言われたよ」

リュージ「……無神経だったな」

京太郎「いい。別に何かが変わるわけじゃない」

リュージ「もう危ないのか?」

京太郎「いいや、そうは言われてない」

リュージ「なら、できることもあるだろうさ」

京太郎「わかんねぇよ……どうすればいい?」

リュージ「そんなの、俺にわかるわけないだろ」

京太郎「……だよな」

リュージ「噛み付く気力もなしか……仕方ねぇな」

608 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 01:10:53.42 ID:soQ9kuNI0


リュージ「ほら」

京太郎「あん?」

リュージ「番号ぐらい交換しても、損はないだろ?」

京太郎「ナンパかよ。気持ち悪いな」

リュージ「言ってろ」


リュージ「ったく……休みの日に辛気臭いツラ見せんなよな」

京太郎「休み? そうだったっけ」

リュージ「おいおい、そこまでかよ……お前もう帰って休んどけ」


609 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 01:18:12.85 ID:soQ9kuNI0



京太郎「……できること、か」

京太郎「こんなにも心が折れそうなのに、なにしろって言うんだよ……」


――ピンポーン


京太郎(こんな時間に……)

京太郎(面倒だし、居留守だな)

京太郎(……今はまともに対応できなさそうだし)


――ガチャ


京太郎「……あん?」

610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 07:01:06.06 ID:58qOYipZ0
寝乙どすえ
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 15:50:45.78 ID:0KHY8McY0
お?寝落ちか?
612 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 23:56:00.52 ID:soQ9kuNI0
寝落ちを繰り返す今日この頃

もうちょっとしたら始めます
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 00:12:27.07 ID:8/OEuYrzO
ザメハ
614 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 00:27:35.41 ID:f/Vld5IY0
まだ寝てないのに……

んじゃ、スタートします
615 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 00:35:40.65 ID:f/Vld5IY0


京太郎(カギを開けられた?)

京太郎(待て、合鍵を持ってる奴なんて――)


竜華「あ、やっぱり居留守してた!」


京太郎「お前、どうして」

竜華「結構前に、怜から秘密の合鍵だって渡されて」

京太郎「あいつ、人の家の鍵を勝手に」

竜華「……それだけ、須賀くんのことが心配ってことやん」

京太郎「……」

竜華「ご飯食べた?」

京太郎「食欲、わかなくてさ」

竜華「じゃあ待っとって。材料買うてきたから、台所借りるな」


616 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 00:43:11.72 ID:f/Vld5IY0



京太郎「ごちそうさま」

竜華「完食やん。お腹すいとったんやね」

京太郎「それか、コックの腕が良かったのかもな」

竜華「おだてたってなにも出ぇへんからね?」

京太郎「そりゃ残念」

竜華「洗い物するから、テレビでも見ててなー」

京太郎「……どうして、来たんだよ」

竜華「須賀くん、まいっとるんやないかなって」

京太郎「お前もそうだろ」

竜華「うん、だから……どない辛いかわかる」

京太郎「……」


竜華「さ、湿っぽい話は終わり終わり。食器片付けたらお茶入れるから」

京太郎「手伝うよ」

竜華「ええから座ってて」

京太郎「客に全部やらせるのはさすがにな。ま、今更だけど」

竜華「ふふ、ホンマにな」


617 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 00:48:04.65 ID:f/Vld5IY0



竜華「それじゃあ、うちそろそろ帰るな」

京太郎「ありがとな」

竜華「少しは元気出た?」

京太郎「ああ、食べた飯の分は」

竜華「それなら作った甲斐あるわぁ」

京太郎「……」ガシッ

竜華「……え? 須賀くん?」

京太郎「悪い、もう少しいてくれないか? 今は一人になるのが、怖いんだ」

竜華「……うん」


618 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 00:55:42.88 ID:f/Vld5IY0



竜華(はっきり言うと、それは未練でした)

竜華(もう大分前に終わったと思っていた初恋の火は、未だに燻っていて)

竜華(それを自覚した頃には、もう手遅れで)


竜華「今だけでええから、竜華って呼んで……?」

京太郎「ああ……竜華」

竜華「京くん……京くん京くんっ」


竜華(うちと、須賀くんは……)


619 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 01:01:12.05 ID:f/Vld5IY0



竜華「――」スゥスゥ


京太郎「なにやってんだ、俺は……」


京太郎(ずっと長い間ご無沙汰だったってのはある)

京太郎(不安で不安で誰かに傍にいて欲しかったってのもそうだ)

京太郎(だけど……こんなのあいつに対する裏切りじゃねぇかよ)


竜華「ん、んん……あれ、知らん天井」

京太郎「清水谷……」

竜華「須賀くん……?」

京太郎「昨日の夜は、すまなかった」

竜華「ああ、そか……うち、須賀くんと」

京太郎「俺は、自分の不安を紛らわすために、お前を……」

竜華「……うん、せやったらお互い様」


竜華「昨日の夜のことは、ただの夢……それでええやんな?」

京太郎「……お前がそう言ってくれるなら」


京太郎(……なんて言ったが、割り切ることはできそうにない)

京太郎(あいつへの罪悪感が、突き刺さったままだからだ)


620 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 01:11:05.01 ID:f/Vld5IY0



怜「むぅ、なんか今日は不景気顔」

京太郎「世相ってのが顔に出ちゃうタイプなんだ」

怜「なんやそれ新しい」

京太郎「ここで名言……人の顔は世相を映す鏡である」

怜「んー、自分で名言とかないわぁ。座布団没収」

京太郎「くっ……どうせ椅子だから痛くも痒くもないけどなっ」

怜「じゃあ椅子没収」

京太郎「おいおい、お上の横暴にはさすがの農民も黙っちゃいないぜ?」

怜「せやったらお城に招待やで」ポンポン

京太郎「お邪魔しますよー」

怜「農民ちょろっ」

京太郎「農民たるものお上の暮らしに憧れ抱いてるんだよ」

怜「しかしここでトラップカード発動!」

京太郎「罠だったのかよっ」

怜「毒を盛られて身動き取れへん農民は、あわれ城主の抱き枕に……!」

京太郎「なんだ、そんな罠だったら――」


『今だけでええから、竜華って呼んで……?』

621 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 01:15:05.24 ID:f/Vld5IY0


京太郎「――っ」ビクッ

怜「え……どないしたん? 手と手が触れても恥ずかしい年頃?」

京太郎「悪い、実は下痢してて」

怜「うーわー」

京太郎「実はいつ切り出そうか迷ってたんだけど」

怜「もうええから、はよトイレ行かんかい」

京太郎「アイルビーバック!」


怜「はぁ……まぁ、しゃあないわな」


622 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 01:24:17.77 ID:f/Vld5IY0



怜「っちゅーことがさっきあって」

竜華「あー……」

怜「一瞬また顔出したら、すぐ帰ってもうたし」

竜華「そればっかりは、須賀くんも仕事あるから」

怜「いちゃいちゃできんかった分、竜華の膝枕で埋め合わせてや」

竜華「はいはい、どうぞ」ポンポン

怜「あー、これやこれ」


怜「竜華が主治医やったら、きっと毎日が膝枕やな」

竜華「それで良くなったら万々歳なんやけど」

怜「これやったら京太郎もきっとイチコロやん」

竜華「あはは……うち、一回振られてもうたし」

怜「合い鍵、有効活用しとる?」

竜華「正直あんま使っとらんなぁ」

怜「ほほう、一度は使ったと?」

竜華「……怜、須賀くんとうちはなんにも――」

怜「あらへん、とは言わへんよね?」

竜華「――っ」

怜「……竜華、正直すぎとちゃう?」

竜華「……ごめん」

怜「まぁ、京太郎も不景気なツラしとったし……触ろうとしたら逃げたし」

623 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 01:29:58.11 ID:f/Vld5IY0


怜「せやけど……よかったぁ」


竜華「……え?」

怜「これなら、うちがいなくなっても安心やなって」

竜華「なんで、そない……」

怜「みんなわかりやすすぎやねん。お母さんは妙に優しいし」

竜華「ううん、まだ……まだわからへんからっ」

怜「……ありがとう」

竜華「お礼なんてええから!」

怜「せやけど……うん、竜華なら京太郎のこと頼めるし、京太郎なら竜華のこと任せられる」

竜華「なんでそない……諦めたようなこと、言うん……?」ポロポロ

怜「……実を言うと、もう未来が視えへん」


怜「せやから、お先真っ暗なんやなーって……あはは」


624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 01:41:41.32 ID:O9F/0GS10
待ってました!!!
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/19(木) 02:14:06.05 ID:isFGzLk10
すやすや
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 09:23:30.20 ID:iuCL2ULTO
眠いからね。
仕方ないね
627 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 19:40:56.68 ID:Trg1xuEe0
ご飯のあとにこんばんはー

今日は夜勤があるので今のうちにちょっと進めとこうと思います
628 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 19:49:06.44 ID:Trg1xuEe0



京太郎「はぁ……」

リュージ「今日はため息か。最近はなにかと暗いな」

京太郎「色々あるからな」

リュージ「……やっぱり悪いのか?」

京太郎「それはそうなんだけど……実は、浮気しちゃったんだよ」

リュージ「お前……冗談か?」

京太郎「それならため息も出てねぇよ……」

リュージ「バカじゃねぇのか?」

京太郎「いっそ死にたい……」

リュージ「そう言うなって。同じバカ野郎がここにもいる」

京太郎「お前も?」

リュージ「まぁ、今はそんな相手いないけどな」

京太郎「おい浮気野郎」

リュージ「てめぇが言うな!」


リュージ「……でも、あれだ。そのぐらいの間違い、みんなやらかしてるんだよ」

京太郎「お前さ、もしかして元気づけようとしてくれてたりするのか?」

リュージ「勝手に言ってろよ」


629 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 19:58:15.06 ID:Trg1xuEe0



京太郎「みんなやらかしてる、か」


京太郎(だからって、許されるわけじゃないよな……)

京太郎(なら、やることは一つか)

京太郎(間違えたなら、正さないとな)

京太郎(……悪い、清水谷)コンコン


『はーい、どうぞー』


京太郎「おはよう、よく寝られたか?」

怜「もうバッチリ」

京太郎「そうか……話あるんだけど、いいか?」

怜「なに? 竜華と浮気したって話?」

京太郎「そうなんだ……って、知ってたのかよ!」

怜「昨日本人から聞いて」

京太郎「あ、ああ……先越されたな」

630 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 20:05:36.75 ID:Trg1xuEe0


京太郎「ごめん……謝って済む問題じゃないけど」

怜「まぁ、別にええんやない?」

京太郎「お前、軽すぎだろ……」

怜「これが他の誰かなら許さへんけど」


怜「それに……もう死ぬ人間が出しゃばっても、ろくなことあらへんよ」


京太郎「……今なんつった?」

怜「隠そうとせんでもええよ。もう知っとるから」

京太郎「……気をつけてたんだけどな」

怜「せやから、うちのことは気にせぇへんように。存分竜華といちゃいちゃしてやー」

京太郎「……ダメだ」

631 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 20:13:36.00 ID:Trg1xuEe0


京太郎「お前がそう言ってるのは、諦めてるからだろ」

京太郎「怒って突き放されるならいい。浮気者って詰られるのも納得がいく」

京太郎「でも、諦めたからって許されるのは、認められない」

京太郎「お前の親友に手を出したクズだけど……お前のことが好きなんだよ」

京太郎「だから、諦めを抜いたお前の本音が聞きたい」


怜「……またきっついことを」

京太郎「言いたくないか?」

怜「別に、さっきのが本音やし」

京太郎「そうか……わかった」


632 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 20:23:40.84 ID:Trg1xuEe0



竜華「……これからどんな顔して合えばええんやろ」

竜華「怜と……須賀くんにも」

竜華「あ〜! 全然仕事に手ぇつかんわぁ」


京太郎「清水谷!」


竜華「ひゃいっ」

京太郎「俺は決めたぞ」

竜華「な、なにを?」

京太郎「あいつの病気を治す」

竜華「……本気なん?」

京太郎「当たり前だろ」

竜華「どれだけ難しいか、わからへんわけやないよね?」

京太郎「それでもだよ。だから、力貸してくれ」

竜華「……須賀くんは、まだ諦めてないんやな」

京太郎「もう鬱々してるのには飽きたしな」

竜華「うん……わかった」


633 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 20:29:55.79 ID:Trg1xuEe0



京太郎「まず第一に、あいつの病気を治すには移植しかないんだな?」

竜華「この数年、色々と処置を施してみたんやけど、どれも決定打にはならずや」

京太郎「たしか、手術も一回したよな」

竜華「せやけどすぐ再発した」

京太郎「……病気がわからないってわけでもないんだよな?」

竜華「うん……うちも色々な論文読んで調べてみたけど……治療法に関してはまだわからへん事も多いみたいで」

京太郎「今の投薬は効いてないんだったか」

竜華「軽いのなら、それで良くなってくはずなんやけど……」

京太郎「あいつのは特別重いやつだってか……」

竜華「……うん」

京太郎「……じゃあ、まずあれからいってみるか」

竜華「どないするん?」

京太郎「コネを使う」


634 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 20:36:42.60 ID:Trg1xuEe0



透華『まったく……久しぶりに連絡してきたかと思えば』

京太郎「なぁ、頼むよ。とりあえず一回診てくれるだけでいいからさ」

透華『あなた、もう少し頼み方というものがあるのではなくて?』

京太郎「悪い、ふざけてる時間も惜しいんだ」

透華『ふぅ……わかりましたわ。最高のスタッフをそちらへ向かわせます』

京太郎「サンキューな!」

透華『お礼を言うぐらいなら、たまにはこちらへ帰ってきなさいな』


635 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 20:42:48.78 ID:Trg1xuEe0



竜華「どうやった?」

京太郎「最高のスタッフを送ってくれるってよ」

竜華「あの龍門渕の……須賀くんて、もしかして人脈すごない?」

京太郎「やばいやつなら知り合いにたくさんいるって言ったろ?」

竜華「なんか、どうにかなりそうな気ぃしてきた」

京太郎「その調子だ」


竜華(せやけど、世界的にも有名な龍門渕でもダメやったら……)


京太郎「そういえば、こっちに来るってことは病院の設備を使うってことだよな? 病院的にそれ大丈夫なのか?」

竜華「うーん……ここも龍門渕グループの病院やから、多分」

京太郎「マジか、初めて知ったぞおい」


636 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 20:48:19.20 ID:Trg1xuEe0



怜「ほぉほぉ、あの龍門渕が」

京太郎「最高のスタッフを連れてくるってよ」

怜「ドクターK? それともX? もしくはBJか、意表をついてお家とか?」

京太郎「どいつもこいつもフィクションじゃねぇか」

怜「それぐらいのインパクトがあるとええなってことやん」

京太郎「インパクトはないけど腕は最高峰だ」

怜「せやろか?」

京太郎「そうなんだよ」

怜「遭難?」

京太郎「病院で遭難ってありえないぐらい珍事だな」

怜「ところで、あれってそうなん?」

京太郎「だから遭難ネタはもういいっての」

怜「や、あそこのヘリ。龍門渕っぽいマーク」

京太郎「んー?」

637 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 20:56:11.11 ID:Trg1xuEe0


『おーほっほっほ!』


京太郎「……うわぁ」

怜「どしたん?」

京太郎「ちょっと幻聴」


京太郎(まさか自ら乗り込んでくるってことはないよな?)


怜「そういえば、この病院ってヘリポートあったん?」

京太郎「……どうだったっけ?」


638 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 21:01:45.79 ID:Trg1xuEe0



透華「着陸しますわよ!」

ハギヨシ「お嬢様、この病院にはヘリポートがないようです」

透華「んなっ、我がグループの経営する病院がなんたることですのっ!」

ハギヨシ「直近の着陸可能ポイントへ向かいます」

透華「ぐぬぬ……ヘリでインパクト満点な登場をするつもりが……!」



怜「あ、なんか向こうに飛んでいった」

京太郎「やっぱヘリポートなかったんだな」


639 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 21:11:28.96 ID:Trg1xuEe0



透華「来ましたわ!」

京太郎「なんでお前が来ちゃったんだよ……」

透華「当然ですわ。話を受けた当人がいないのはおかしいでしょう?」

京太郎「なんにしても、来てくれてありがとな」

透華「……ふんっ」


透華「それで、あなたが……清水谷竜華さんですわね?」

竜華「はじめまして……怜をよろしくお願いします」ペコッ

透華「ええ、もちろんですわ。しかし、これだけは言っておかなければなりません」

竜華「……」

透華「医者であるあなたならばわかっているとは思いますが……絶対に治るという保障はありませんわ」

竜華「それでも……少しでも可能性があるのなら」

透華「……結構」


640 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 21:16:29.70 ID:Trg1xuEe0



京太郎「いやぁ、久しぶりに長野にいた時のこと思い出したよ」

竜華「執事さんと話しとったけど、友達だったん?」

京太郎「色々お世話になった人だよ」

竜華「須賀くんがお世話に? なんか新鮮」

京太郎「そうでもないよ。今だって色んな人の世話になってる」

竜華「そうなん?」

京太郎「飯作ってもらったりとかな」

竜華「……」


竜華(ただの夢……そう言ったのは自分自身)

竜華(せやけど、あの夜のことを忘れることなんてできなくて……)

竜華(うちの頭によぎったのは――)

641 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 21:21:39.30 ID:Trg1xuEe0


京太郎「清水谷?」

竜華「――な、なに?」

京太郎「疲れてるのか?」

竜華「あー……ちょい寝不足かも。色々調べ物してたし」

京太郎「ありがとうな、あいつのために」

竜華「ううん、うちも諦められへんし」


竜華(その言葉にはどこか空虚な響きがあって)

竜華(ホンマに諦めきれへんのは、なんなのか)


『――彼の隣に、誰もいなくなれば』


竜華(あの時よぎった言葉は、それをなによりも示していて)

竜華(せやから……きっと、天罰が下ったんやと思います)


642 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 21:24:20.99 ID:Trg1xuEe0



怜「そかー……ダメやったかぁ」

竜華「ごめん……変に期待させて」

怜「まぁ、だれもうちの病気にはかなわんっちゅー話やな。マジ強」

竜華「ごめん、ごめん……」

怜「せやからもうええっちゅーねん」

竜華「だって、うち……」

怜「……竜華が泣いとるの、見る方が辛いわ」

竜華「ま、待っとって……今泣き止むから」ゴシゴシ


竜華「……うぅ」グスッ


竜華「ごめん、無理ぃ……」

怜「しゃあないなぁ……ほら、うちのふとももで思う存分泣くとええで」ポンポn

竜華「怜がおかしくなったぁ!」

怜「なんでやねん」


643 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 21:27:06.06 ID:Trg1xuEe0



京太郎「……うまくいかないもんだな」

竜華「……うん」

京太郎「龍門渕でも、もう移植しかないって?」

竜華「それが見つかるか見つからへんかは……」

京太郎「運次第、か」

竜華「うちのせいやろか」

京太郎「だれのせいでもない。でも、もしあいつが運悪くこの病気にかかったなら……」


京太郎(それは、俺のせいなのかもしれない)


京太郎「でもまだだ。まだ見つからないって決まったわけじゃない」

竜華「うん……」


644 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 21:30:06.47 ID:Trg1xuEe0



京太郎(だけど、見つからないまま時は過ぎ)

京太郎(決定的な一言が告げられた)



「もって、あと半年でしょう」

京太郎「……冗談じゃない、ですよね」

「……残念ながら」

京太郎「そう、ですか……」



京太郎(清水谷も、怜の両親も泣いていた)

京太郎(それでも俺は泣けなかった)

京太郎(泣いてしまったら、その事実を容認してしまうような気がして)

京太郎(無性に怜に会いたくなった)

京太郎(まだそこにいることを、抱きしめて確認したかった)


645 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/20(金) 21:32:05.99 ID:Trg1xuEe0
というわけで、中途半端だけど仕事に行ってきます

前回よりは短いとか言ったけど、あれは嘘です
最長記録更新します

それじゃ
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/20(金) 23:15:10.26 ID:49cgDGk60
>>645
乙です!!
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