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久「あんたが三年生で良かった」京太郎「……お別れだな」

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517 :続きから始める ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 02:12:25.12 ID:F+8FESPw0


菫「それよりも、実は竹井と辻垣内と一緒に昼を食べていたんだが」

照「知ってる」

菫「もしかして竹井から聞いたのか?」

照「さっきまでうちにいたから」

菫「そうか……そうかそうか」ウンウン

照「……勝手に納得しないで」

菫「口ではなんだかんだ言っていても、やっぱり仲が良いんだな」

照「そんなことない。皮肉や嫌味なんて日常茶飯事だし、どこからかネタを拾ってきてぶちまけるし」

菫「どこからか、の部分に妙に力がこもってないか?」

照「だから、私も打ち合わせを無視した進行で仕返ししてるんだけど」

菫「そ、そうか……喧嘩するほど、というやつだな」

照「……菫は親切だけどちょっと抜けてて、おまけに空気読めないとこもあるよね」

菫「なんで私が残念な人みたいになってるんだ!」


518 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 02:19:08.10 ID:F+8FESPw0



咲「お姉ちゃんとはなにを話してたんですか?」

久「ちょっと世間話」

咲「さ、さすがにそれは苦しいというか……」

久「……たしかにね」

咲「私と淡ちゃんはアメリカ代表の話をしたんですけど」

久「それがどこかの誰かの対局を見てるようだった、とか?」

咲「やっぱり……お姉ちゃんとはその話をしてたんだ」

久「私も別のとこからその代表について情報をもらってさ。ちょっとお互いに確認したかったの」

咲「それでなにかわかったんですか?」

久「……はっきりしたことはなにも」

咲「そうですか……」

久「でも、向こうはすぐにでもアメリカに行くって息巻いてるから、咲からも釘刺しておいて」

咲「……部長は気にならないんですか?」

久「アメリカにいるって確証もないし……それに、もういいのよ」

咲「え、もういいって……」

久「なんかさ、疲れちゃったのよ」

咲「……なんで、諦めちゃうんですか」


咲「もう五年……五年以上も行方不明なのに」

咲「みんなみんな、口には出さないだけで心配してるのに……」

咲「なんで部長がそんなことを言っちゃうんですか……!」


久「咲……」

咲「ごめんなさい……もう帰ります」

久「……」


519 :続きから始める ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 02:22:54.62 ID:F+8FESPw0



菫「しかし、前に来た時より散らかったか?」

照「荷造り中だから」

菫「旅行か? 珍しいじゃないか」

照「京ちゃんが、アメリカにいるかもしれない」

菫「……運喰らいにあいつが関与していると言いたいのか?」

照「うん」

菫「そうか……」

照「止めないの?」

菫「私の知る限り、お前が一番執着しているのがそれだからな」


菫「もちろん竹井も行くんだろう? お前一人なら心配だが、あいつも一緒なら安心だよ」

照「……あの女は来ない」

菫「ちょっと待て、それは本当か?」

照「もう終わったことだからって」

菫「……そういうこともあるんだろうな」

照「私だったら絶対に諦めたりしないのに……」ギリッ

菫「竹井が諦めたことが許せないのか?」

照「違う、私は……」

菫「それとも、一人で須賀の前に立つのが怖いのか?」

照「――っ」

菫「照、やっぱりもう少し考えてみないか? 今の生活だってあるじゃないか」

照「ごめん、菫……帰って」

菫「そうか……邪魔したな」

照「ケーキ、ありがとう」


520 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 02:27:20.87 ID:F+8FESPw0



久「うぅ……ちょっと飲みすぎた」

久「明日は……あ〜、もうダメ。だるすぎ」

久「はぁ……そもそも相方が来るかどうかもわかんないっての」

久「咲だって好き放題言ってくれちゃってさぁ」


『なんで部長がそんなことを言っちゃうんですか……!』


久「……そんなの、そうでも言わないとやってられないからに決まってるでしょ」

久「それでも……」


美穂子『本当によかったの?』

ゆみ『色んなチームから誘われていたじゃないか』

久『いいのよ。もうプレイヤーとしては散々やった気分だし』

ゆみ『そうか……しかしアナウンサーとは考えもしなかったな』

美穂子『そうかしら? 様になると思うわ』

久『美穂子に言われるとちょっと敗北感ね……』

ゆみ『そういった方面に興味があるとは思っていなかったよ』

久『まぁ、ちょっと別の視点から麻雀に触れたかったのかもね』


久「別の視点……打たなくてもいい立場」

久「そっか……だからプロにならなかったんだ、私」


521 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 02:32:07.47 ID:F+8FESPw0



照「……別に一人だって大丈夫」

照「だれかの助けがなくたって……」


『それとも、一人で須賀の前に立つのが怖いのか?』


照「……」


『――京ちゃん京ちゃんってうるっせぇんだよっ!!』


照「そんなの……」


『なんで、俺を一人にしたんだよ……!』


照「そん、なの……」


『ごめん、俺は照ちゃんと一緒にいられない』


照「そんなの、怖いに決まってる……!」

照「だって私は三回も拒絶されてる!」

照「もし会いに行ったら、また拒絶されたら、この細いつながりさえも切れてしまうんじゃないかって……」

照「怖い、怖いよ……」

照「京ちゃん京ちゃん京ちゃん……!」

照「会いたいよ……京ちゃん」


照「……用意、しなきゃ」


522 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 02:39:49.38 ID:F+8FESPw0



京太郎「ロン……これで終局だ」


「チッ……またテメェの一人勝ちかよ」

京太郎「悪いな、俺みたいなジャップが稼いじまって」

「聞いたぜ、また女を乗り換えたんだってな」

京太郎「あんたには関係ないだろ」

「この女喰い野郎が」

京太郎「悔しいなら、あんたもいい女を引っ掛けたらどうだ」

「ヘッ、せいぜい刺されねぇように気をつけな」

京太郎「どうだろうな……俺みたいのは別れるのが上手くなきゃやっていけないからな」

「それよりもう一回だ! 今日こそはテメェから毟り取ってやるよ……!」

京太郎「今日は本音を隠さないんだな」

「もうこりごりだ。前から気に食わなかったが、一度ぶちのめさなきゃ気がすまねぇ」

京太郎「いいぜ、来いよ。遊んでやる」


523 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 02:44:23.42 ID:F+8FESPw0



『――ロサンゼルス行5157便はただいま、ご搭乗の最終案内をしております』


照「行か、ないと……」


照(でも、踏み出せない)

照(私、こんなに弱かったんだ……)ギュッ


久「なにボーッとしてるのよ」


照「竹井久……どうしてここに」

久「なんでこの道に進んだのか、その理由を思い出しちゃってさ」

照「……プロなら私にかなわないと思ったから?」

久「張っ倒すわよ」

524 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 02:51:18.92 ID:F+8FESPw0


久「ほら、アナウンサーになってプロと組むようになれば、打たなくても麻雀にかかわれるし」

久「あいつがなにか困ったときに、いつでも力を貸してあげられるようにって思ってたんだけどね」

久「だけど、すっかり忘れてた」

久「忙しかったのもあるけど……忘れて諦めて、もうどうしようもないんだって思ってた」


照「私だったら絶対忘れない」

久「でも、足は竦んでるみたいね」

照「……」


照「京ちゃんへの気持ちはずっと変わらない」

照「だけど……会うのがどうしようもなく怖い」

照「中学二年の三月と最後のインハイ、そして高校の終わり……私は三回も拒絶されたから」

照「会いに行ってまた拒絶されたら、今度こそつながりが切れてしまうんじゃないかって」


久「大魔王とは思えない弱腰じゃない」

照「その呼ばれ方、認めてるわけじゃないから」

久「弱腰といえば、インハイの時もそう。進歩がないんじゃない?」

照「ほっといて」

525 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 02:56:34.24 ID:F+8FESPw0


久「だからあの時と同じように手助けしてあげる……ほら」グイッ

照「あっ……」

久「いい加減搭乗しないと間に合わないでしょ」

照「待って、あなたも来るの?」

久「もちろん。同じ便の席は……離れてるとは思うけど」

照「放して」

久「ちゃんと歩けるの?」

照「バカにしないで」

久「そう……じゃあ、行きましょうか」


526 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 03:04:20.83 ID:F+8FESPw0



『――Good afternoon Ladies and Gentlemen』


久「……」

照「……」


『Please secure all your baggage in the overhead compartments or under your seat』


久「まさか隣同士とはね……」

照「まったくもって不本意」

久「ところで、目的地は決めてる?」

照「件のアメリカ代表の先鋒」

久「ま、今のとこそれしか手がかりないしね」

527 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 03:11:20.92 ID:F+8FESPw0


久「ところでさ、黙って来たの?」

照「電話で、今までお世話になりました、とだけ」

久「……絶対大騒ぎになってるやつじゃない」

照「そっちは?」

久「退職届だけ出して来た」

照「なにも言われなかったの?」

久「言われる前にさっさと退散したから」

照「……全然人のこと言えないと思う」

久「携帯は?」

照「着信がうるさいから捨てた」

久「あー……私も」

照「バカなの?」

久「あんたに言われたくない」


久「もう一つ。大事なことなんだけど……英語、喋れるの?」

照「人並みには。海外の大会にも結構出てたし」

久「なんだ、もし喋れなかったら大きな貸しを作るチャンスだったのに」

照「……やっぱりあなたなんて嫌い」


528 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 03:22:16.17 ID:F+8FESPw0



「どうしたの、このお金?」

京太郎「厄介になってるしさ。家賃ってとこ」

「多すぎ。これ私の給料よりあるよ?」

京太郎「今日は君のおかげで調子が良かったから」

「キョウってすごいプレイヤーなのね」

京太郎「ははっ、今は幸運の女神がいるからな」

「あ、それって私?」

京太郎「君以外いないよ」

「ホント上手いよね」

京太郎「それより、今日なにかあったのか?」

「どうしてそう思うの?」

京太郎「慰めてほしそうな顔してる」

「……お見通しなんだ」

京太郎「なんでも話してくれよ。君のことならなんでも知りたい」

「うん、実はね……」


529 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 03:31:04.52 ID:F+8FESPw0



久「ついた、ここね」

照「本当にあってる?」

久「あってるわよ」

照「思ったより時間がかかった」

久「私一人ならもっと早くついたんだけどね」

照「……どういう意味」

久「あんたら姉妹はフラフラせずにはいられないのかって話よ!」


「あなたたち、私の家になにか用?」


照「こんにちは」

「……あなた、もしかしてミヤナガテル?」

照「この前は後輩たちがお世話になりました」

「やめて、あの大会のことはできれば思い出したくないの」

530 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 03:37:26.50 ID:F+8FESPw0


「それで、あのミヤナガテルが私に何の用?」

久「あなたに聞きたいことがあるの」

「……あなたは?」

久「竹井久。この女の……」

照「他人です」

久「……まぁ、こういう関係ね」

「悪いけれど、さっぱりわからないわ」


「でも……二人とも、きっとキョウの故郷から来たのね」


照「――っ」

久「その、キョウというのは?」

「あなたたちと同じ日本の人で、フルネームは……スガキョウタロウ」

久「……詳しく聞かせてもらえますか?」


531 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 03:42:00.86 ID:F+8FESPw0



「そう、キョウの知り合いだったのね」

久「行方不明になった彼を探してるの」

照「どこっ、京ちゃんはどこにいるの……!」

久「落ち着きなさい。ここで慌てたってどうにもならないでしょ」

照「……たしかに、あなたの言うとおり」

「……きっと、彼はあなたたちの大切な人なのね」

久「ええ、だから居場所を知っているなら教えて欲しいの」

「残念ながら、私にはわからないわ」

照「本当に?」

「彼とはもう終わってしまったの」

久「……それは、そういう関係にあったということでいいの?」

「ええ」

照「でも、今は……」

「そうね……悲しいことだけど」


532 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 03:45:48.07 ID:F+8FESPw0



『悲しいけれど、恨んではいないの』

『キョウは最後まで優しかったから』

『……皮肉ね。彼がいなくなってから、また成績が持ち直すなんて』


久「あれじゃちょっと言えないわよね……自分の運が取られてたなんて」

照「でも、それは京ちゃんとあの人が……」

久「本気で好き合ってたってことよね……」

照「……どこにいるのかな」

久「さぁね……大きな手がかりが空振っちゃったし、情報収集するしかないんじゃない?」

照「あの人はたしか、京ちゃんは麻雀で稼いでたって」

久「それね。とりあえず近くの雀荘らしき場所をあたってみましょうか」


533 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 03:51:11.89 ID:F+8FESPw0



「……おい、あの野郎は来てねぇのかよ」

「今日は来てないよ。今頃女といちゃついてるんだろうさ」

「チッ……」

「あいつに拘りすぎだな。いいカモにされてるって気づけよ」

「それがなおさら気に食わねぇんだよ!」ダンッ


『もうこれで何軒目よ……明日にしない?』

『ダメ。少しでも手がかりを掴むまでは休めない』

『あーもう、来る前はあんなに怯えてたくせに』


「……日本語か?」

「さぁな。キョウが似たような言葉を話してるのは聞いたことあるがね」

「ちょうどいいじゃねぇか」

「おい、店の迷惑になるようなことはするなよ」

「ちょっとあのジャップたちと遊ぶだけだ」


534 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 03:59:29.98 ID:F+8FESPw0



久「もうこれで何軒目よ……明日にしない?」

照「ダメ。少しでも手がかりを掴むまでは休めない」

久「あーもう、来る前はあんなに怯えてたくせに」


「ヘイ、アンタたちここは初めてかい?」


「とりあえず座れよ。一局打とうぜ」

久「ごめんなさい、ここには人を探しに来ただけなの」

「麻雀の気分じゃねぇってんなら他のゲームもあるぜ。おすすめはダーツだ」

久「……悪いけど帰らせてもらうわ」

「おっと」ガシッ

久「なんのつもり?」

「冷やかしは勘弁だって話だよ」

久「はぁ……言わないとわからない? あなたと遊ぶことには興味がないって言ってるの」

「なっ……!」

535 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 04:05:12.24 ID:F+8FESPw0


照「いいですよ、打ちましょうか」


久「あんた、目的忘れたわけ?」

照「そうじゃないけど、たしかに雀荘で打たないのも失礼」

久「それはそうだけど……はぁ、まあいいや」

照「手加減はする」

久「当然の配慮ね」


久「ごめんなさい、やっぱり打たせてもらってもいいかしら?」

「どういう心境の変化だい? オレと遊ぶ気はないんじゃなかったって言ってたような気がするがよ」

久「遊び相手には不足だけど、小遣い稼ぎにはちょうどいいかなって」

「ぐっ、このアマ……!」

久「やるの? やらないの?」

「ああ、やってやるよ!」


536 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 04:12:05.11 ID:F+8FESPw0



久「そこそこ稼げたわね」

照「あそこまでムキになってる相手なら当然」

久「これであんたが本気出してたら大惨事ね」

照「あなたは煽り過ぎ」

久「あれは……ちょっとイライラしてたせいかもね」

照「さっきの人に絡まれて?」

久「そうね」


久「それより、聞いた?」

照「おすすめのデザート?」

久「全然違う。あの男の捨て台詞」

照「……興味なかったから」

久「かなり気になること言ってたわよ」


『クソッ、ジャップってのはどいつもこいつも……!』


久「って」

照「ジャップ?」

久「日本人のこと。明らかに見下した言い方だけど」

照「ジャップ、日本人……それがどいつもこいつもってことは」

久「そ、他にもあそこに通ってる日本人がいるってことね」

照「……明日もあそこに行ってみる?」

久「当然」


537 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 04:20:16.72 ID:F+8FESPw0



京太郎「よう、今日はいつにも増して景気悪いツラしてんな」

「チッ、テメェか……」

「ほっといてやれ。そいつ、昨日日本人の二人組にこっぴどく毟られたんだよ」

京太郎「日本人の二人組?」

「もしかすると、キョウの知り合いかもな」

京太郎「まさか。それより打たないか?」

「ダメだ。コイツがこの調子じゃあんたの相手をしようってやつはいないよ」

京太郎「そう、か」


京太郎(いい加減、稼ぎ場所を変えるべきか)


京太郎「邪魔したな……それじゃあ――」


「眠い……」

「朝も一回覗きに行こうっていったのはあんたでしょうが」


京太郎「――っ」


京太郎(ウソだろ、この声は……)

京太郎(なんだって、どうしてあの二人がここに!)


京太郎「悪い、トイレ借りるぜ」

「ん、ああ」


京太郎(とりあえず、二人がいなくなるまでやり過ごすしかない)


538 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 04:29:17.51 ID:F+8FESPw0



久「とりあえずはいない、と」

照「……」クン

久「どうかしたの?」

照「ううん、でも外に出てた方がいいと思う」

久「そうね。また時間をあらためて来るとしますか」

照「多分、その必要はない」

久「どういうこと?」

照「外で説明する」

久「……わかった。出ましょうか」


539 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 04:38:47.16 ID:F+8FESPw0



京太郎「……」ソロー


京太郎(二人は……帰ったか)


「……おい」

京太郎「なんだ、俺はもう帰るぞ」

「あの二人組、テメェの知り合いなのか?」

京太郎「知らねぇよ。無関係の他人だ」

「そうかよ」

京太郎「じゃあな」


「……無関係、ねぇ」


540 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 04:43:45.79 ID:F+8FESPw0



京太郎「さて……どこ行くか」

京太郎「……いっそ別の国に移るか?」

京太郎「となると、また別れ話か……」


「行き先なら日本がおすすめよ」


京太郎「――っ!」

久「全然帰ってこないと思ったら、こんなとこでなにしてるのよ」

京太郎「くそっ」ダッ


「京ちゃん!」ガシッ


京太郎「はなせっ……!」

照「イヤ、絶対離さない……!」ギュウウ

久「いいからおとなしくお縄につきなさいっての!」

京太郎「俺は犯罪者か!」


541 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 04:48:37.27 ID:F+8FESPw0



京太郎「……で、二人して何しに来たんだよ」

照「京ちゃんに会いに」

久「いい加減、待ってるのにも飽きちゃったから」

京太郎「待ってるもなにも、俺ははっきりと答えを出した。違うか?」

久「そうね……でも、良くない噂を耳にしたから」

京太郎「噂?」

久「ラックイーターだってさ。アメリカ代表もその被害にあったんじゃないかって」

京太郎「……やっぱり代表選手に手を出したのは間違いだったな」

久「あんたやっぱり……」

京太郎「ああ、そうだよ。俺は自分が勝つために女を食い物にしてるクズだよ」

照「そんなの関係ない……だから帰ろ? 京ちゃん」

京太郎「……帰れねぇよ」ボソッ

542 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 04:53:38.90 ID:F+8FESPw0


京太郎「ここまで来た二人には悪いけど、俺は帰らない」

久「……それはどうして?」

京太郎「言わなきゃわかんねぇか? 女がいるからだよ」

久「食い物にしてる女でしょ? そんなのやめて帰ればいいじゃない」

京太郎「俺の能力が効くってことはどういうことか、わからないわけじゃないよな?」

照「……京ちゃんは、その人のことが本気で好きなの?」

京太郎「この気持ちに嘘はない」

照「……そう、なんだ」

久「……わかった。今日のところはホテルに帰る」

京太郎「できればそのまま日本に帰ってくれ」

久「京太郎、あんた――」


543 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 04:58:05.68 ID:F+8FESPw0



『――本当に変わっちゃったのね……』


京太郎「……ああ、そうだ。変わったよ」

京太郎「あれだけあって変わらないわけないだろ……」

京太郎「そうだ、俺はクズだ。本気で好きになった女さえ食い物にするクズだ」

京太郎「……もう潮時だ。ここにはいられない」

京太郎「少し急すぎるけどしかたない、か……」


「あ、おかえり」


「もう、朝からどこ行ってたの? せっかくのお休みなのに」

京太郎「ちょっと散歩」

「私も一緒に行きたかったなぁ」

京太郎「……話があるんだけど、いいかな」


544 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:02:43.49 ID:F+8FESPw0



照「……」

久「どうする?」

照「……」

久「あいつの言ってた通り帰る?」

照「あなたは、どうするつもりなの?」

久「私は……まだ帰らない」

照「どうして?」

久「いなくなってる間になにがあったのか、まったく聞いてない」

照「私は……まだ帰りたくない」

久「どうして?」

照「京ちゃんが私をどう思ってるのか、はっきりと聞きたい」

久「……あんなに怖がってたくせに」

照「誰かみたいにすぐ諦めたりしないから」

久「言ってくれるじゃない……なら、とにもかくにも行動ね」

照「京ちゃんを探すの?」

久「逃げられる前にね」


545 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:06:02.83 ID:F+8FESPw0



京太郎「くそっ、痛ぇな……!」

京太郎「まさかあそこでナイフを出してくるとは……」


『なんでそんなこと言うの……?』

『私は……あなたといられるだけでいいのに!』


京太郎「だから急すぎるとダメなんだよ……」

京太郎「あぁもう……女なんて懲り懲りだ!」

京太郎「……なんて言っても、その女の力がなきゃなんにもできないんだけどな」

京太郎「とりあえず、この切り傷をなんとかしないとな」

京太郎「シャツも切れちまったし、移動費と宿代も考えると……」

京太郎「……マズイな、手持ちじゃ全然足りねぇ」

546 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:12:51.32 ID:F+8FESPw0


久「私たちの部屋ならタダで泊まれるわよ」


京太郎「……まだ来るのかよ」

照「京ちゃん、その怪我……」

京太郎「たいしたことない。血が出てるから酷く見えるだけだ」

久「そんな格好でうろつくのはどうかと思うんだけど、どうする?」

京太郎「……帰れ」

照「イヤ」

久「少なくとも、納得がいくまでは帰れないわよ」

京太郎「俺が何言っても納得なんてしないだろ」

久「でも、話をしなきゃ納得のしようがない」

京太郎「……」

照「私は、京ちゃんの本当の気持ちが聞きたい」

京太郎「……わかった。今日だけ場所を貸してくれ」


547 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:17:11.47 ID:F+8FESPw0



久「はい、おしまい。まだ血が滲む?」

京太郎「……無理に動かさなきゃ大丈夫そうだ」

久「腕で良かったじゃない」

京太郎「腹刺されてたら、さすがにどうしようもなかったかもな」

久「それよりあんた」

照「なに?」

久「いい加減離れなさいよ。手当するときも徹頭徹尾邪魔だったし」

照「イヤ」

久「駄々っ子か!」グイグイ

照「イヤ!」

京太郎「傷に響くからやめてくれ、マジで」


京太郎「……それで、なにが聞きたい?」

久「聞けるだけ」

照「そもそも私の聞きたいことは一つだけ」

京太郎「……二人は、どこまで俺を許せる?」

久「聞いてみなきゃわからないわよ」

照「私なら全部許してあげるから」

京太郎「それは、俺が人を殺したって言ってもか?」

照「――っ」

久「……聞かせて」


548 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:21:44.17 ID:F+8FESPw0



京太郎「高校の三年間、色々あって、色々やらかして、結果いつの間にやら色んなやつから好意を向けられて」

京太郎「でも、俺にはそれが途方もなく重く感じた……感じてしまった」

京太郎「答えを出さなきゃと焦って自分を追い詰め……それでなにもかもがいやになった」

京太郎「だから全部断った。そうやってしがらみを断てば、楽になれるんじゃないかって」

京太郎「物理的にも離れたくて……だから日本を出た」

京太郎「だれも自分のことを知らない中で自由に歩き回るのは結構楽しかった」

京太郎「そして身勝手にも誰かを好きになったりして……そしてその子は死んだ」

京太郎「不運にも、交通事故に巻き込まれて、だ」

京太郎「わかるよな? ……俺が、殺したんだ」

京太郎「そうじゃないって思うか? だけど違うんだよ」

京太郎「だって、彼女の不幸の原因は俺だ」

京太郎「俺が、なにも考えずに好きになって、運を奪って……死なせた」

京太郎「……そんなのは俺が殺したも同然だ」

京太郎「要するにさ、今の生き方は罰なんだよ」

京太郎「一番楽じゃない生き方を選ばないと、俺は自分を許せそうになかった」

京太郎「自分が生きてることをさ」

京太郎「死ぬのは簡単だ。すぐ楽になれるしな。でもそんなのはダメだ」

京太郎「そんな逃げが許されるはずがない」

京太郎「だから、俺はこの身勝手な生き方を続けてるんだよ」

549 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:25:13.98 ID:F+8FESPw0


京太郎「……以上だ」

久「……」

照「……」

京太郎「他に聞きたいことはあるか? ないなら俺はもう行く」

久「……なんで、話さないの?」

京太郎「今全部話したよ」

久「そうじゃない。なんで自分の生き方に巻き込む人に、何の説明もないのかって話よ」


久「だってそれ、全然フェアじゃない。何も知らないで巻き込まれた人はたまったものじゃない」

久「あんたがこれからもそうやって色んな人に迷惑をかけ続けていく気なら、私はあんたを止める」


京太郎「止める? どうやってだよ」

久「無理やり連れ帰るか、そうじゃなきゃ――」


照「待って、勝手に盛り上がらないで」

550 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:28:53.81 ID:F+8FESPw0


久「……そういう横槍、やめてもらえる?」

照「だって、私は聞きたいこと聞けてないし」

京太郎「俺のことは大体話したはずだけどな」

照「ううん、京ちゃんは大事なことを言ってない」


照「京ちゃんは、私のことをどう思ってるの?」


京太郎「……今更どうとも思ってなんか――」

照「ウソだよね? 京ちゃんはその気になれば私と……その女からも奪っていけた」

京太郎「自意識過剰かよ」

照「とても細いけど、まだ切れてない。このつながりが京ちゃんの気持ちを表してる」

京太郎「……」


照「どうして? なんで私たちからは奪っていかないの?」

照「一番辛い生き方を選んでいるなら、どうして私たちに手を出さないの?」

551 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:32:46.30 ID:F+8FESPw0


京太郎「……るせぇ」

京太郎「うるせぇうるせぇうるせぇ!」

京太郎「どうしてこんなとこまで来るんだよ! ずっと日本にいればいいのによ!」

京太郎「綺麗で輝いてるんだよ! 日本での思い出は! だから汚したくないし帰れないんだよ!」

京太郎「それなのにわざわざ俺のとこまで来やがって……!」グイッ


久「ちょっ、なにするのよ……!」

照「京ちゃん、痛い」

京太郎「そこまで言うんだったら二人まとめて食い物にしてやるよ」


京太郎「――だから、蹴るなり殴るなり刺すなり抵抗してくれよ」

京太郎「お願いだからさ……」


久「京太郎……」

照「京ちゃん……」


552 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:38:22.52 ID:F+8FESPw0



久「ん……」

照「きょう、ちゃん……」


京太郎「バカだよ、二人とも」

京太郎「なんで抵抗しなかったんだよ」

京太郎「怪我人に二人がかりで勝てないはずないだろ」

京太郎「なんで俺に、一番辛いことやらせるんだよ……」

京太郎「……ダメだ。この二人と一緒にいたら」

京太郎「あの頃の自分に、どうしようもなく戻りたくなる」

京太郎「もう戻れやしないのに……」


京太郎「だから……今度こそさよならだ」


553 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:41:17.92 ID:F+8FESPw0



久「んんっ……あれ、京太郎?」

照「クリームは植物性より動物性の方が……」ムニャムニャ

久「起きろっ!」グニィ

照「痛いっ」

久「京太郎がいない!」

照「京ちゃんならさっきまでケーキを……」

久「それはあんたの夢の中!」


554 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:44:14.97 ID:F+8FESPw0



久「あーもう、あいつどこ行ったのよ……!」

照「……匂いもわからない」クンクン

久「あんたは犬か!」

照「とりあえず、手分けして探したほうが――」


「よう、探しものかい?」


照「あなたは……」

久「ごめんなさい、今日は本当に付き合ってる時間がないの」

「その前に、アンタらはキョウの知り合いってことでいいのかい?」

久「そうよ、だから探してるの。これ以上時間を取らせないで」

照「……待って、何か知ってるの?」

「ああ、キョウとはそれなりの付き合いだからな」

照「教えて」

「案内してやるよ。車に乗りな」

照「わかった」

久「ちょっと待った、これって――」

555 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:48:21.57 ID:F+8FESPw0


――カチッ


「リボルバーだ。古いが、当たれば痛いどころじゃないってのはわかるだろ?」

久「これだから銃社会は……!」

「乗るのか? 乗らねぇのか?」

照「……この場で私たちを撃ったら、それこそあなたもただでは済まない」

「そう、オレはお縄について、下手すりゃ死刑であの世行きだ」


「だけどよ、それがどうした?」


「アンタらが死ねば、あの野郎への最高のプレゼントになるってもんだ」

「オレの第一希望はもちろん、自分の手でアイツをぶちのめすことだけどよ」


久「……ダメね、こっちの話は通じそうにない」

照「……わかった」


「もう一度聞くぜ……乗るのか? 乗らねぇのか?」


556 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:51:24.38 ID:F+8FESPw0



京太郎「シャツと飯代でほとんど消えたな……」

京太郎「まぁ、移動は最悪ヒッチハイクでなんとかなるか」

京太郎「……怒ってるだろうな」

京太郎「いや、俺にはもう関係ない」

京太郎「今は少しでも遠くに――」


「よう、乗ってくかい?」


京太郎「あんたは……」

「ただし代金はいただくぜ」

京太郎「あいにく持ち合わせがないんだよ」

「そうか……なら、こんなのに興味はねぇか?」ピラッ

京太郎「……趣味が悪い写真だな」

「今はまだ縛られてるだけだ。時間が経てばどうなるかは保証できないけどよ」

京太郎「赤の他人がどうなろうと関係ない」

「……そうかい。気が変わったんならいつものとこに遊びに来な」

557 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:53:46.29 ID:F+8FESPw0


京太郎「……」


京太郎(俺はもうどのみちあの二人と会うことはない)

京太郎(だからどうなろうと関係ない……そうだろ)

京太郎(だけど、考えれば考えるほど……)


『京太郎』

『京ちゃん』


京太郎「ダメだこりゃ」

京太郎「来るなって思ってるのに流れ込んでくる」

京太郎「まったく、ホントにあの二人はどうしようもないな……」

京太郎「……一番どうしようもないのは俺だけどな」


558 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 05:56:55.74 ID:F+8FESPw0



久「いたたたた……絶対これ跡残る」

照「んっ……全然解けない」

久「あんた、あのギュルギュルってやつでどうにかならないの?」

照「無理。こんな状況じゃ使えない」

久「……こんな状況じゃなかったら使えるってことが驚きね」


久「あいつ、来ると思う?」

照「あなたはどう思うの?」

久「そうねぇ……あ、せっかくだし賭けてみない?」

照「京ちゃんが来るか来ないか?」

久「負けた方は大人しく身を引くってことで」

照「うん、それで構わない」

久「じゃあ、同時に言うわよ」

照「わかった」


久「京太郎は――」

照「京ちゃんは――」


「「――絶対来る!」」


久「……不成立じゃない」

照「あなたが変えればいい」

久「変えるわけないでしょ」


559 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:00:26.92 ID:F+8FESPw0



「……来ねぇ」

「せっかく舞台を整えてやったってのに……来やがらねぇ」

「〜〜っ、舐めやがってクソがぁっ!!」ガンッ


京太郎「お邪魔するぜ」


「はぁ、はぁ……遅いお出ましじゃねェか」

京太郎「ああ、別にあんたと遊ぶ気はない。忘れ物を取りに来ただけだ」

「……そうかよ。じゃああのジャップの女どもは好きにさせてもらうぜ」

京太郎「待てよ」

「なんだぁ? さっきは関係ねぇって言ってたよな?」

京太郎「ああ、さっきはな……だけど今は違う」


京太郎「二人とも俺の女だ。手を出すっていうなら覚悟しとけ」

560 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:03:53.23 ID:F+8FESPw0


「ほぉ? ……言うじゃねえか、このクソジャップがよぉっ!」

京太郎「騒ぐなよ。おとなしく返すなら俺もおとなしく帰る」

「テメェをぶちのめすか、あの女どもをいたぶってやんなきゃコッチの気がすまねぇんだよ!!」

京太郎「だったらどうする? 怪我人相手に殴り合いか?」

「ハッ、そんな結果が見えた勝負はしねぇよ……これだ」ゴトッ

京太郎「リボルバー……ロシアンルーレットか?」

「六発入りで一発だけ実弾だ。先にくたばった方が負けっていうわかりやすいルールだ」

京太郎「……ちょっといいか?」

「あぁ? 平和ボケしたジャップにはヘヴィか?」

京太郎「いいや、軽すぎる」


京太郎「俺が先に五回引く」


「……正気か、テメェ」

京太郎「俺の勝ち筋は一本、あんたの勝ち筋は五本。有利なのはどっちかは考えなくてもわかるよな?」

「……」

京太郎「それとも、俺がビビって逃げるのに期待してたのか?」

「――ッ、いいじゃねぇか、乗ってやるよ!」

京太郎「じゃあ、行くぜ」カラカラカラ

561 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:06:35.84 ID:F+8FESPw0


――カチッ


「チッ、ハズレか」

京太郎「慌てんなよ。まだ一発目だ」


――カチッ


「運の良い野郎だぜ」

京太郎「あんたも知ってるだろ。今の俺の取り柄はそれぐらいだってな」


――カチッ


「お、おい……もう引けねぇってんなら、そこでやめてもいいんだぜ?」

京太郎「やめる? 冗談だろ」


――カチッ


「やめろ、やめろやめろやめろぉ……!」

京太郎「今の俺には――」


――カチッ


京太郎「――幸運の女神が、二人もついてるんだから」

562 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:10:47.14 ID:F+8FESPw0


京太郎「さぁ、今度はあんたの番だ」ゴトッ

「あ、ああ……」カタカタ

京太郎「どうした、震えてるぞ? 引く度胸がないなら、ここで終わりにしたっていいんだけどな」

「――っ、ふざけるなっ!!」グイッ


京太郎「……結果の見えた勝負はしないんじゃないのか?」

「今はテメェをブチのめせればそれで十分なんだよぉ!」ブンッ

京太郎「――っ」


――ドサッ


「あ、が……な、なんで」

京太郎「たしかに結果の見えた勝負だったな」

「な、なにしやがった……」

京太郎「あんたみたいな力任せが、たとえ怪我してようが執事殺法に勝てるわけないだろ」

「なんだそりゃ……」

京太郎「せめて岩を素手で砕けるようになってから出直してこい」

「ふざけたことぬかしやがって――がっ」

京太郎「ほら、二人はどこだ」

「……奥の部屋だ」

京太郎「どーも」

「……」

563 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:13:29.92 ID:F+8FESPw0


(チクショウ……!)

(あんな、ちょっとツイてるだけのクソジャップに!)

(許せねぇ、ぶっ殺してやる……!)


「ヘイ、キョウ!」

京太郎「あん?」

「最後の一発、受け取りやがれ……!」


――カチッ


「ふ、不発……?」

京太郎「言ったろ、幸運の女神が二人もいるって……よぉ!」ゴスッ

「ぐぁっ……」

京太郎「しばらく寝てろ」


564 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:15:58.86 ID:F+8FESPw0



京太郎「大丈夫だったか、二人とも」

照「平気、京ちゃんが助けてくれたから」

久「縛られてた腕が痛いくらいかな」

京太郎「言っておくけど、自業自得だ。俺は帰れって言ったんだからな」

久「でも、ちゃんと来てくれた……違う?」

京太郎「……これっきりだ」

照「うん、それはウソだって私にはわかってるから」

京太郎「チッ……途中まで送ってくから、後は勝手にしてくれ」


565 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:19:24.30 ID:F+8FESPw0



京太郎「……」


照「すごい広い」

久「見渡す限りの荒野って、日本じゃまず見られないんじゃない?」

京太郎「……どこまでついてくるんだよ」

照「どこまでも」

久「あんたが諦めるまで」

京太郎「ついてくるなよ」

照「イヤ」

久「それより車ないの? 絶対徒歩で移動する距離じゃないでしょ」

京太郎「知るかよ。疲れたんならいい加減日本に帰れ」

照「帰れだって。帰ったら?」

久「それよりお菓子の備蓄尽きてるんじゃないの?」

照「あ……」

久「どこかで補充してきたら? 待たないけど」

照「むっ」

566 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:22:10.52 ID:F+8FESPw0


京太郎「やかましいな……帰れよもう」

照「京ちゃんが帰るなら」

久「というかさ、そう言って帰ると本当に思ってるの?」

京太郎「俺とは違って向こうでの生活があるだろ」

照「そんなの知らない」

京太郎「知らないってな……」

久「わからない? 全部かなぐり捨ててきたって言ってるの」

京太郎「……バカだよ、二人とも」


京太郎「俺は、きっと地獄に落ちるぞ」

照「じゃあ私もついてく」

久「しかたないから付き合ってあげるわよ」

京太郎「……勝手にしろよ」

567 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:26:26.80 ID:F+8FESPw0


久「ねぇ、どこ向かってるの?」

京太郎「どこだっていいだろ」

照「うん、京ちゃんがいれば」

久「それであんたがいなければ最高ね」

照「それはこっちのセリフ」

久「良く言うわね。一人で来るの怖がってたくせに」

照「全部諦めようとしてた人に言われたくない」

京太郎「……二人とも、見ない間にちょっと仲良くなったか?」


「「そんなわけない(でしょ)!」」


京太郎「はいはい、そーかい」




『エンディング――追い風と太陽と、幸運の女神』
568 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/03/24(土) 06:30:13.43 ID:F+8FESPw0
長い、というか長すぎる……!
下手したら今までで最長の可能性すらありますね
長すぎてもはや眠気とかを超越してしまいました

ともあれ次の怜竜でひとまず最後です
今回ほどは長くならないと思いますが

それでは、これから朝ごはんを食べるので失礼します
569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/24(土) 10:04:00.58 ID:4wmmgOLvo


この3人で話が始まったから、終わるのも又3人でって感じでしっくりきた
570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/24(土) 15:28:36.78 ID:SNXMWWfb0
乙ッ!
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/24(土) 18:56:45.89 ID:XpDLnGGF0
乙でした
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/24(土) 21:19:07.80 ID:26xg1EVxO

最後の怜竜どうなる?
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/25(日) 19:35:36.61 ID:L9z6GB0M0
乙ですのだ!
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/27(火) 22:52:33.13 ID:ecDdmHCV0
へへへ。
追いついたじぇ
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/29(木) 06:28:36.46 ID:f+5ZuxO60
タコス喰おうじぇ!
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 22:12:33.29 ID:QAqHqluiO
タコスよりもおもちが食べたい
577 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/15(日) 23:57:06.54 ID:z+GWKJ0g0
約三週間ぶりにこんばんはー
久しぶりにやろうかと

それじゃあ、もうちょっとしたら始めます
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/16(月) 00:18:25.22 ID:6K/6Ze7eO
これで最後か
待ってる
579 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:26:11.17 ID:6u5ud7w80
んじゃ、そろそろスタートします
580 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:32:02.56 ID:6u5ud7w80


京太郎「ん〜……太陽が眩しいぜ」


「夜勤おつかれさん」

京太郎「お、今日は早いね」

「ちょっと早起きしちまっただけだ」

京太郎「はは、それで出勤早めるなんて真面目だな」

「どうせやることもないつまらない人間だよ」

京太郎「そう言うなよ。恋人とかいねーの?」

「生憎、遠距離だよ」

京太郎「おいそれと会いにも行けないな」

「お前は?」

京太郎「毎日会ってるよ」

「チッ、自慢かよ」

京太郎「まぁ、毎回病院じゃムードもへったくれもないけどな」

「病院?」

京太郎「ああ……俺のツレ、ちょっと体悪いんだ」


581 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:37:20.30 ID:6u5ud7w80



京太郎「おはようさん」

怜「んー、おそーい」

京太郎「そう言うなって。こちとら夜勤明けだ」

怜「今日のおみやげは?」

京太郎「べったら漬」

怜「なんでやねん」

京太郎「いや、近所のおばさんから東京土産だからってもらって」

怜「浮気?」

京太郎「うちの母親より年上だぞ。どんだけストライクゾーンが広いんだよ」

怜「はやりんは?」

京太郎「全然いける」

怜「ふんふん……ギルティやな」

京太郎「夢を見るだけならタダだろっ」

582 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:43:52.06 ID:6u5ud7w80


京太郎「……それで、具合は?」

怜「可もなく不可もなく?」

京太郎「なんで疑問系よ」

怜「見解の相違みたいな?」

京太郎「つまりあれか、大丈夫って言ってるのは自分だけと」

怜「や、実際問題あらへんし」

京太郎「やっぱり自己申告は信用ならねーな」

怜「じゃあ確かめて、どうぞ」

京太郎「えー、悪いのはここですかー?」モミモミ

怜「やーん、すけべー」

583 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:50:12.66 ID:6u5ud7w80


――コンコン


竜華「そろそろええかな?」

怜「もうちょい」

京太郎「おしまいだ」

怜「えー?」

京太郎「おとなしくしとけ。入院中だろ」

怜「む〜」プクー

竜華「あはは、フグみたい。突っついてもいい?」

怜「ハリセンボンやねん。触ると怪我するで」

竜華「はいはい、お土産持ってきたから機嫌直してなー」

怜「待ってました! ――って、なんでべったら漬やねん!」

竜華「近所のおばちゃんにもらって」

怜「ネタ被り!」


京太郎(というか、出処が同じなんだよなぁ)

584 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 00:54:47.88 ID:6u5ud7w80


怜「2セットももらってどないせいっちゅーねん」

京太郎「そりゃあ、ご飯のお供だよ。朝昼晩って」

怜「まさかのべったら漬漬けかい」

京太郎「ズケズケと言ってくれるな」

怜「んー、あんまおもろくないなぁ……やり直しで」

京太郎「なにぃ?」

竜華「……」プルプル

怜「竜華、お花摘みなら我慢せぇへんほうがええで?」

竜華「ち、ちがっ……」

怜「ならトイレ?」

京太郎「それどっちも同じな」

怜「言わぬが花」

京太郎「お花摘みだけに?」

怜「う〜ん……座布団一枚っ」

京太郎「よっしゃ」

585 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:05:13.60 ID:6u5ud7w80


竜華「ごめん、診察あるからそろそろ」

京太郎「ん、そうか」

怜「次は甘いのがええな」

京太郎「リクエストとは生意気な」

竜華「あはは……うん、次はケーキ買ってくる」

怜「おおっ、じゃあ楽しみにしとる」

竜華「先生の言うこと、ちゃんと聞いておとなしくしとること……ええ?」

怜「べったら漬を食べるぐらいならええやんな」

竜華「多分、それぐらいなら」

京太郎「それじゃ俺も……」

怜「えー? もう帰るん?」

京太郎「いや、お花摘み」

怜「その隠語はレディース専用やねん」

京太郎「んー……山へ芝刈りに、とか?」

怜「はい座布団没収ー」


竜華「……」


586 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:11:25.23 ID:6u5ud7w80



京太郎「しかし医者かぁ……あらためてすごいよな」

竜華「うん、頑張ったから」

京太郎「勉強も運動も麻雀も強くてすごい……というかやばいってのはよく聞いたけどな」

竜華「やばいって」

京太郎「安心しろ。やばいやつならなんでか知り合いによくいるから」

竜華「……須賀くん、トイレは?」

京太郎「お前を送ってからでもいいだろ」

竜華「別にうちは……」

京太郎「さっき、泣きそうだったろ」

竜華「――っ」

京太郎「勘違いだったら悪いけどな……俺には辛そうに見えた」

竜華「うっ、うぅ……」ポロポロ

京太郎「……もしあいつのことなら、話してくれないか?」


587 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:20:24.12 ID:6u5ud7w80



京太郎「……」


『……もうダメかもしれへんって』

『治療で進行を遅らせることはできても、改善はしてへんって……』

『入院も長いし、このままやったら……』


怜「大丈夫? 胸揉む?」

京太郎「それよりもギュってしていいか?」

怜「もち。スキンシップならウェルカム」

京太郎「ああ……」ギュッ

怜「んっ」


京太郎(俺になにができる?)

京太郎(もう先が長くないかもしれないこいつに、なにをしてやれる?)

京太郎(……いや、まだダメだって決まったわけじゃない)

588 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:30:08.46 ID:6u5ud7w80


怜「今日は情熱的やん」

京太郎「いつも心の中ではこんなもんだよ」

怜「やぁん、もしかしてケダモノになっちゃう?」

京太郎「ここが病室じゃなきゃな」

怜「じゃあお持ち帰りしてもよし」

京太郎「良くなったらな」

怜「はよ良くなれー、はよ良くなれー」

京太郎「よし、その意気だ」

怜「うーん、ニケツしたい!」

京太郎「退院したらな」

怜「じゃあ……結婚したい」

京太郎「……退院したら、盛大に式挙げようぜ」

怜「指輪は?」

京太郎「頑張って用意する」

怜「ならうちも頑張って治す」

京太郎「ちょっと飲み物買ってくるわ」

怜「ん……ふわぁ、うちはもう一眠りしとこかな」

京太郎「ああ、おやすみ」


589 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:37:13.50 ID:6u5ud7w80



京太郎「……くそっ」ガンッ


京太郎(何が退院したらだ……!)

京太郎(あんな言葉、ただの逃げじゃねぇかよ!)

京太郎(でもダメだ……あんなに辛いなんて)

京太郎(……泣けるなら俺が泣きてぇよ)


「あら、京太郎さん」


京太郎「……どうも、園城寺さん」

「そんな他人行儀な呼び方しなくてもいいんですよ?」

京太郎「はは……お義母さんはまだ早いですから」

「そんなことない……だってあなたは、もう何年もあの子の傍にいてくれたじゃない」

京太郎「俺は……なにもできないですから」

「いてくれるだけで十分ですよ」

京太郎「……」


京太郎(それでも、俺は……!)


京太郎「すみません、夜勤明けなんで失礼します」

「ごめんなさい、眠いところを引き止めてしまって」

京太郎「いえ。それよりも、今は寝てるんでそっとしといてやってください」


590 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:48:09.14 ID:6u5ud7w80



「よう、お疲れか?」

京太郎「ん、ああ……」

「今日も見舞い行ってたんだろ?」

京太郎「まあな……」


京太郎(ここ最近、あいつの前でちゃんと笑えてるか怪しい)

京太郎(ぎこちなくないだろうか……あいつに、心配をかけてないだろうか)

京太郎(知らないのなら、気取られるわけには……)


「ほら、飲めよ」

京太郎「悪いな……えっと」

「リュージでいい」

京太郎「あれ、そんな名前だったっけ?」

リュージ「昔から仲がいいやつからはそう呼ばれてんだよ」

京太郎「……ああ、苗字と名前から取ってるのか」


京太郎(なんか、ハギヨシさんみたいだな)

591 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 01:57:07.66 ID:6u5ud7w80


京太郎「じゃあ俺のことも京ちゃんでいいぜ」

リュージ「いや、気持ち悪い」

京太郎「当たり前だ。俺も男からそんな呼び方されたら気持ち悪い」

リュージ「はっ、今日も夜勤だろ? 居眠りしないようにな」

京太郎「そっちこそ、早起きしすぎて夜中に出勤するなよ」

リュージ「言ってろよ」


京太郎(……こういうの、なんか久しぶりだな)

京太郎(こっちに来てから、同年代のやつと付き合う機会が減ったしな)


「須賀くん、ちょっといいかい?」

京太郎「はい」

「……彼に、なにかされなかったか?」

京太郎「なにかって……コーヒーもらったぐらいですよ」

「そうか、ならいいんだ」

京太郎「なにかあるんですか?」

「その、あまり大きな声では言えないんだけどね……」


592 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 02:03:10.21 ID:6u5ud7w80



京太郎「暴力団、ね」


『あくまで噂なんだけど……暴力団と付き合いがあるって』

『もちろん噂は噂だけどね。ほら、なにか問題があった時に困るじゃないか』


京太郎「……だからなんだってんだよ」

京太郎「それだったら俺だって、極道の娘と友人関係だっての」

京太郎「まったく、つまんねーこと言いやがってよ」


怜「んん……もう昼?」


京太郎「なんだ、せっかく寝顔見てたのに」

怜「あかんなぁ、女子のすっぴんのぞくとか犯罪行為やで?」

京太郎「アホ、何回一緒に寝たと思ってるんだよ」

怜「はい、セクハラ発言いただきましたー」

京太郎「おっと、これは迂闊だったな」

怜「ふふん、出るとこ出たら大変なことになるやろな?」

京太郎「マジか……見逃してくれっ、なんでもするから!」

怜「ん? 今なんでもするって――けほっ、けほっ」

京太郎「おい、大丈夫かよ」

怜「けほっ……ちょい休めば――げほっ、げほっ!」

京太郎「明らかに酷くなってるだろ! 看護師さん呼ぶからなっ」


593 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 02:13:49.85 ID:6u5ud7w80



京太郎「……まだか」


『治療で進行を遅らせることはできても、改善はしてへんって……』


京太郎(あれじゃあ、改善するどころか……)


――ガラッ


京太郎「――っ、先生、あいつはっ?」

「容態は落ち着いて、今は寝ています」

京太郎「そうですか……」

「ただ、徐々にですが病状は悪化の傾向にあります」

京太郎「……やっぱり、そうなんですね」

「……清水谷先生から聞いていましたか」

京太郎「俺が無理に聞き出したんです」

「彼女は園城寺さんのために医師を志したそうですね……気の毒な話だ」

京太郎「なんで、もうダメみたいに言うんですか」

「入院してもう数年……投薬を続けていますが、病は徐々に進行している」

京太郎「じゃあ打つ手はないって言うんですか!?」

「ゼロとは言えません。しかし……」

京太郎「お金の問題だったらなんとかするし、俺にできることならなんだって……!」

「……金銭の問題でも、あなたにどうにかできることでもないんです」


「病気の完治の芽があるとすれば、それは……心臓の移植しかないんですよ」


594 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 02:22:31.94 ID:6u5ud7w80



京太郎「……なあ、清水谷」

竜華「なに?」

京太郎「心臓の移植って、難しいのか?」

竜華「……先生から聞いたんやね」

京太郎「まるで、移植には期待できないみたいな言い方だった」

竜華「正直、難しいと思う」

京太郎「難しい手術なのか?」

竜華「技術的にもやけど、まずドナーが見つからへん」

京太郎「誰でもいいってわけじゃ、ないんだよな」

竜華「うん……合わん臓器を移植しても、ダメになるだけやから」

京太郎「そうか……」フラッ

竜華「帰るん?」

京太郎「悪い、一人にしてくれ」


595 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/16(月) 02:28:13.53 ID:6u5ud7w80
眠し……沈みます
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/16(月) 02:50:38.37 ID:6K/6Ze7eO
寝乙
597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/16(月) 21:38:24.67 ID:g77xl1D20
良い夢を見るのよ!乙!
598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/16(月) 21:52:01.58 ID:Cn46IvuA0
ここまでのヒロイン二人エンドはハッピーエンドにはならないからこれから先もと思うと読んでて辛い
599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 07:27:38.86 ID:BHcbBcUA0
なんでや前回の久と照は割とハッピーだったやろが
京太郎が自身の何かを犠牲にする傾向が高いが
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 11:10:41.69 ID:LqlO70M10
乙です!
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 12:32:04.06 ID:XgRREifrO
ハッピーエンドが良いよね
602 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/17(火) 23:52:40.60 ID:qDH7AUeq0
こんばんはー
昨日はぐっすり寝たので今晩はやろうかと

もう少ししたら始めます
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 00:13:50.20 ID:D2b/MG0vO
お埋まってる
604 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 00:48:53.95 ID:soQ9kuNI0
危うく寝るとこだった……

んじゃ、始めます
605 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 00:53:25.30 ID:soQ9kuNI0



『……金銭の問題でも、あなたにどうにかできることでもないんです』

『病気の完治の芽があるとすれば、それは……心臓の移植しかないんですよ』


京太郎「はは……本当に、俺にできることってないんだな」

京太郎「カピの時で慣れたつもりだったんだけどな……」ドンッ


「おい、兄ちゃん。ぶつかったっちゅーのに挨拶もなしか?」


京太郎「ああ……悪いね」

「誠意、足らんとちゃうか?」

京太郎「なんだよ……金欲しいなら最初からそう言えよな」

「なに言うとんのや。わいは金なんてせびらん。あくまで兄ちゃんから渡してくるんや」

京太郎「……チッ、小悪党が」

「あぁ? 今なんつった!?」

606 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 00:58:51.64 ID:soQ9kuNI0


「そこまでにしとけよ」


「邪魔すんなや! 今はこのボケと――」

「いいから、黙って、引け」グイッ

「――っ、あんたは」

「上の方にもよろしく言っといてくれ」

「……しゃあないわな。入院はごめんや」


「おい、もう行ったぞ」

京太郎「ああ……助かったよ」

「えらく不景気なツラだな。パチスロでスったか?」

京太郎「俺に構うのはよして……リュージ?」

リュージ「なんだよ、気づいてなかったのか」


607 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 01:05:23.22 ID:soQ9kuNI0



リュージ「コーヒーでいいか?」

京太郎「できればスポドリがいい」

リュージ「はっ、奢ってもらう上にリクエストってか」ガコン


リュージ「ほらよ」

京太郎「……ちゃんと聞き入れてくれるお前もたいがいだな」

リュージ「そんな死人みたいなツラされたらな」

京太郎「……」

リュージ「……恋人に、なにかあったのか?」

京太郎「もうダメだって言われたよ」

リュージ「……無神経だったな」

京太郎「いい。別に何かが変わるわけじゃない」

リュージ「もう危ないのか?」

京太郎「いいや、そうは言われてない」

リュージ「なら、できることもあるだろうさ」

京太郎「わかんねぇよ……どうすればいい?」

リュージ「そんなの、俺にわかるわけないだろ」

京太郎「……だよな」

リュージ「噛み付く気力もなしか……仕方ねぇな」

608 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 01:10:53.42 ID:soQ9kuNI0


リュージ「ほら」

京太郎「あん?」

リュージ「番号ぐらい交換しても、損はないだろ?」

京太郎「ナンパかよ。気持ち悪いな」

リュージ「言ってろ」


リュージ「ったく……休みの日に辛気臭いツラ見せんなよな」

京太郎「休み? そうだったっけ」

リュージ「おいおい、そこまでかよ……お前もう帰って休んどけ」


609 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 01:18:12.85 ID:soQ9kuNI0



京太郎「……できること、か」

京太郎「こんなにも心が折れそうなのに、なにしろって言うんだよ……」


――ピンポーン


京太郎(こんな時間に……)

京太郎(面倒だし、居留守だな)

京太郎(……今はまともに対応できなさそうだし)


――ガチャ


京太郎「……あん?」

610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 07:01:06.06 ID:58qOYipZ0
寝乙どすえ
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/18(水) 15:50:45.78 ID:0KHY8McY0
お?寝落ちか?
612 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/18(水) 23:56:00.52 ID:soQ9kuNI0
寝落ちを繰り返す今日この頃

もうちょっとしたら始めます
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/19(木) 00:12:27.07 ID:8/OEuYrzO
ザメハ
614 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 00:27:35.41 ID:f/Vld5IY0
まだ寝てないのに……

んじゃ、スタートします
615 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 00:35:40.65 ID:f/Vld5IY0


京太郎(カギを開けられた?)

京太郎(待て、合鍵を持ってる奴なんて――)


竜華「あ、やっぱり居留守してた!」


京太郎「お前、どうして」

竜華「結構前に、怜から秘密の合鍵だって渡されて」

京太郎「あいつ、人の家の鍵を勝手に」

竜華「……それだけ、須賀くんのことが心配ってことやん」

京太郎「……」

竜華「ご飯食べた?」

京太郎「食欲、わかなくてさ」

竜華「じゃあ待っとって。材料買うてきたから、台所借りるな」


616 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/04/19(木) 00:43:11.72 ID:f/Vld5IY0



京太郎「ごちそうさま」

竜華「完食やん。お腹すいとったんやね」

京太郎「それか、コックの腕が良かったのかもな」

竜華「おだてたってなにも出ぇへんからね?」

京太郎「そりゃ残念」

竜華「洗い物するから、テレビでも見ててなー」

京太郎「……どうして、来たんだよ」

竜華「須賀くん、まいっとるんやないかなって」

京太郎「お前もそうだろ」

竜華「うん、だから……どない辛いかわかる」

京太郎「……」


竜華「さ、湿っぽい話は終わり終わり。食器片付けたらお茶入れるから」

京太郎「手伝うよ」

竜華「ええから座ってて」

京太郎「客に全部やらせるのはさすがにな。ま、今更だけど」

竜華「ふふ、ホンマにな」


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