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久「あんたが三年生で良かった」京太郎「……お別れだな」

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280 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:47:45.12 ID:OgX8QW8y0



京太郎「デネブ、アルタイル、ベガ……夏の大三角か」

京太郎「今頃インハイか……なつかしいな」

京太郎「ん?」ガチャ


京太郎(鍵、開いてる?)

京太郎(また霞が上がってるのか)


久「あ、おっかえりー」


京太郎「……久ちゃん? なんで?」

久「鍵だったら石戸さんにちょっと貸してもらったから」

京太郎「いやいや、そこじゃなくて」

久「大学なら休みだから。ほら、夏休み」

京太郎「そこでもないから……どうしてここにいるってわかったんだよ」

久「龍門渕さんとか智葉とか、あと獅子原さんのカムイ? とか色々協力してもらったのよ」

京太郎「なにそれこわい」

久「とりあえず、体は大丈夫そうで安心した」

京太郎「ま、丈夫なのが取り柄だしな」

久「でも一回倒れたんだって?」

京太郎「うぐっ」

久「それも変な意地張って」

京太郎「ま、まあ……もうそれは過去の話だから」

久「そうね……じゃあ本題」

281 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:50:57.10 ID:OgX8QW8y0


久「神代さんと別れたんだって?」


京太郎「……」

久「……はぁ、やっぱりそうなるか」

京太郎「もう終わったことだって」

久「って口で言ってるだけでしょ」

京太郎「そんなこと――」

久「全部聞いたから」

京太郎「……霞からか?」

久「ちょっと気の毒なことしたけど」

京太郎「できるならそっとしておいてほしいんだけど」

久「あんたがさ、もう振り切って幸せそうにしてるなら、それでもいいと思った」

京太郎「幸せだよ、十分にさ」

久「そうそう、薄墨さんから聞いたんだけどね」

282 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:54:57.84 ID:OgX8QW8y0


久「神代さん、新しい婿を取るんだって」


京太郎「……そりゃそうなるだろ」

久「それで、感想は?」

京太郎「別に」

久「その割には辛そうな顔してるじゃない」

京太郎「俺にはもう関係ない」

久「なんでそう思うのよ」

京太郎「だから、もう終わったことだって――」

久「ウソつくな」


久「私があんたのウソを見抜けないわけないでしょ」


久「終わったなんて思えてない」

京太郎「……やめろ」

久「関係ないなんて思えてない」

京太郎「やめろ」

久「あんたはまだ、神代さんのことが――」

283 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:59:38.39 ID:OgX8QW8y0


京太郎「――やめろって言ってるんだよ!!」


京太郎「未練なんてあるに決まってんだろ!」

京太郎「今でも夢に見る! 起きたら隣にいないことがたまらなく辛い!」

京太郎「だけど俺になにができる!?」

京太郎「俺はもうあそこにいる資格がないんだよ!」


京太郎「はぁ、はぁ……」

久「……」

京太郎「だから、もう……ほっといてくれ」

久「資格ってなに?」

京太郎「それは――」


久「あんた、要するに逃げたんでしょ」

久「俺には幸せにする自信がないからって」

久「それでこんなところで腐って……」

久「いい加減にしろ、この種無し野郎っ!!」

284 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:02:39.50 ID:OgX8QW8y0


京太郎「このっ、ピンポイントでデリケートゾーン抉りやがって!」

久「相手のことを考えて? そうしたほうが幸せだから?」

京太郎「ああ、そうだよ!」

久「大人になったつもりかこの朴念仁!」


久「ストーカーまでして私を麻雀に引き戻したあんたはどこ行った!」

久「好きなら、愛してるなら、自分の手で幸せにしてみせなさいよ!」

久「それであんたも幸せになってさ……私を、安心させてよ」

久「この女と一緒になって、良かったんだって」


京太郎「……結局、自分のためかよ」

久「そうよ、悪い?」

京太郎「いや、わかりやすくていい」

久「それで、どうするのよ」

京太郎「あの日、伝えられなかったことを伝えに行く」

久「向こうの都合は?」

京太郎「知るかよ、そんなの」

久「……それでいいのよ」


285 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:04:44.54 ID:OgX8QW8y0



『未練なんてあるに決まってんだろ!』

『今でも夢に見る! 起きたら隣にいないことがたまらなく辛い!』

『だけど俺になにができる!?』

『俺はもうあそこにいる資格がないんだよ!』


霞「……」


霞(わかってる……いえ、わかってた)

霞(だって、朝起こそうとしたら寝言で呟いてるし)

霞(彼は今でも小蒔ちゃんを愛しているんだって)

霞(まだ半年しか経ってないのに……忘れられるわけないじゃない)

霞(私なんて、一年経っても無理だったんだから……)


霞「だれかのため、自分のため……」


霞(私は……)


286 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:07:28.02 ID:OgX8QW8y0



久「せいぜいフラれないようにね」

京太郎「そうしたらまた日本一周でもして、それからまたアタックするよ」

久「なにそれ、すっごい迷惑」

京太郎「焚き付けたのは久ちゃんだからな」


京太郎「じゃ、ちょっと行ってくる」


久「……やっぱり人間、そうそう変わらないわよね」

霞「あなたの気持ちも?」

久「さぁ、どうかな」

霞「……私も行くわ」

久「我慢はやめるの?」

霞「さぁ、どうかしら」

久「……なんにしても、後悔だけはしないようにね」

霞「大丈夫よ、もうそれには慣れっこだから」


霞「それに……もう一人じゃないから」


287 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:09:43.22 ID:OgX8QW8y0



小蒔「……」

巴「姫様、もうお休みになったほうが――」

小蒔「もう少し、星を見ていたいんです」

巴「……わかりました。それじゃあ、お茶とお茶請け、持ってきますね」

小蒔「はい、お願いします」


小蒔(……ダメですね。まだみんなを心配させちゃってます)

小蒔(霞ちゃんもこんな気持ちだったんでしょうか?)


小蒔「今日会った殿方……私は、あの方と」グッ

小蒔「ふぅ……いけませんね、ちょっと気晴らし……また木に登ってみましょうか」

小蒔「その方が、星もよく見えますよね」


288 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:13:21.94 ID:OgX8QW8y0



小蒔「んしょ、よいしょ……登れました!」


『あーもう、気ぃつけろよー』


小蒔「……心配しなくても、もう慣れちゃいました」

小蒔「あなたがいない、日常にも……」

小蒔「だから、私は……」ポロッ

小蒔「あれ、おかしいです……悲しくなんて、ないのに」

小蒔「……ウソです」

小蒔「全部全部ウソです」

小蒔「好きです、傍にいてほしいです、愛しています」

小蒔「京太郎様……!」


京太郎「呼んだかー?」


小蒔「え……きゃっ――」ガサッ

289 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:16:01.21 ID:OgX8QW8y0


京太郎「――っと、ギリセーフ……大丈夫か? 小蒔」

小蒔「どう、して……」

京太郎「あの日さ、やり残したこと思い出して」

小蒔「……お引き取りください、あなたはもう」

京太郎「知らねーよ。しきたりとか立場とかお役目とか、そういうのはもううんざりだ」


京太郎「資格がないって、お前はダメだって言われて諦めてた」

京太郎「そんで、その方がお前のためになるって決めつけて逃げてた」

京太郎「でも、それでいいわけないんだよ」

京太郎「だって俺は、あの時全部伝えてなかったんだから」

京太郎「俺がどうしたいか、俺がなにをしたくないか」

京太郎「そんな当たり前なことを、伝えられなかったんだ」


『それでもっ、私は京太郎様と……!』


京太郎「お前は、ちゃんと言おうとしてくれたのにな」

小蒔「……」

京太郎「だから言うよ」

290 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:18:55.94 ID:OgX8QW8y0


京太郎「小蒔、お前と一緒にいたい。離れたくない」

京太郎「資格なんて知らないし、いらない」

京太郎「お前に人並みの幸せをやることはできないかもしれないけど、俺なりに幸せにする」

京太郎「だから、ずっと俺の傍にいてくれないか」


小蒔「どうして……どうして今更そんなこと言うんですか」

小蒔「二人がいなくても頑張ろうって、みんなを支えていこうって思ってたのに……」

小蒔「全部、全部ダメになっちゃいました……!」ポロポロ


京太郎「じゃあ俺の目論見通りだ」

小蒔「ひどいですっ、最低ですっ、人非人ですっ」

京太郎「それぐらいで一緒にいられるなら安いもんだよな」

小蒔「京太郎様なんて、京太郎様なんて……」

291 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:24:17.20 ID:OgX8QW8y0


巴「……姫様」


小蒔「と、巴ちゃん」

巴「正直になってください」

小蒔「そんな、私はっ」

巴「寝言で自分がなんて言っているか、わかってます?」

小蒔「うっ……」

巴「そんな夢に見るぐらいなのに、大丈夫なわけないじゃないですか」

小蒔「でも、私は霞ちゃんからみんなのことを……!」

292 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:27:16.93 ID:OgX8QW8y0


春「よろしくされる側の姫様がよく言う」


小蒔「春まで!」

春「姫様が頑張ったらむしろ空回るし」

小蒔「ひどいです!」

春「大丈夫大丈夫って言って余計心配させてるし」

小蒔「そんなことないですっ」

春「知らぬは当人ばかりとはこのこと」

小蒔「あうっ」

293 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:30:22.07 ID:OgX8QW8y0


初美「まぁ、努力だけは花丸ですけどねー」


小蒔「初美ちゃん!」

初美「中身が伴ってないので結局ダメダメなのですよ」

小蒔「ダメダメじゃないです!」

初美「それはそうとですね」

小蒔「わきに置かないでください!」

初美「特別ゲスト、つれてきたのですよ」

294 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:32:41.83 ID:OgX8QW8y0


霞「……久しぶりね」


小蒔「え……」

巴「霞、さん」

春「……」

京太郎「……お前もついてきてたのか」

初美「入り口でうろうろしてたのを確保したのですよ」

霞「……ちょっと、入りづらくて」

京太郎「まぁ、気持ちはわかるよ」

初美「何を言うのですか。ずけずけと入ってきたくせに」

京太郎「それで遠慮するかどうかは別問題だろ」


小蒔「ちょっと待ってください!」


小蒔「正直に言います……私は、また二人に会えて嬉しいです。でも……」

霞「……ええ、もう元には戻れない」

小蒔「――っ」

霞「みんな、少し小蒔ちゃんと二人きりにしてもらってもいいかしら?」

295 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:36:22.38 ID:OgX8QW8y0


初美「好きにするのですよ」

巴「……姫様がいいなら」

春「……知らない」

霞「ありがとう、みんな」


京太郎「じゃあ、待ってる間お茶でももらうか」

初美「どんだけ図々しいのですかっ」

京太郎「まぁまぁ、来客だと思ってひとつ」

春「黒糖、用意する」

巴「お茶、冷めちゃったから淹れなおしてきますね」

初美「それでなんで歓迎ムードですか!」


296 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:39:14.32 ID:OgX8QW8y0



小蒔「……霞ちゃん」

霞「半年ね、あれから」

小蒔「はい、半年ぶりです」

霞「……実は、ここに来る途中、小蒔ちゃんのお母様と連絡を取ってきたの」

小蒔「お母様と、ですか?」

霞「ええ……」


297 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:42:24.41 ID:OgX8QW8y0



『それが、どういう意味か分かっているのですか?』

霞「はい、重々承知しています」

『あなたの役目はたしかにあの子の身代わり……しかし、それが神代に成り代わるなど』

霞「私は神代にはなれません……でも、この子なら」

『まさか……』

霞「ええ、彼の子供です」

『ありえません……だからこそ彼は居場所を失ったというのに』

霞「可能性はゼロではなかったはずです」

『それでも、限りなく低い。なぜなら――』

霞「はい、それは他ならぬ私が一番よくわかっています」


霞(もう大丈夫だと思ってた)

霞(でも、抑えきれなかった)

霞(私はあの日――)


『好き、好きなの……あなたが好きなの』

『お願い、今だけだから……明日からはいつもの私に戻るから……』

298 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:45:05.55 ID:OgX8QW8y0


霞(彼は、私をやさしく引き離して、首を横に振った)

霞(そして我に返った私は、その場を逃れようと走り出して……)


『霞っ』


霞(私をかばった彼は、交通事故で生殖機能をほぼ失った)

霞(神代の婿の役目は、子をなすこと)

霞(それを果たせないのであれば、その資格を失う)


霞「彼はきっと小蒔ちゃんを連れ出します。そうなったら、代わりが必要かと思われます」

『……』

霞「それとも、ウソだと疑いますか?」

『……いいえ、あなたはそんなつまらないことはしないはず』

霞「……」


霞(彼は何も知らない)

霞(この子のことも、私を抱いたことも)

霞(いいえ、あれは私が彼を術で眠らせて……)

299 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:46:56.78 ID:OgX8QW8y0


『いいでしょう……あなたの覚悟をくみ取ります』

霞「ありがとうございます」

『……これで小蒔は幸せになれると思いますか?』

霞「ええ、彼とならきっと」

『私は、あなたにも幸せになってほしかった』

霞「私に、ですか?」

『あなたは、昔の私に似ていたから……』

霞「……」


『なんだよ、また勝手に入ってたのか』

『だってあなた、私が作らないとちゃんと朝ご飯食べないじゃない』

『ちょっとぐらいなら食べなくっても大丈夫だって』

『いいから食べて。もうできてるわ』

『ああ、いい匂いすんな……』グゥ

『お腹は正直なのね』クスクス

『別に食べたくないわけじゃないから』

『じゃあ用意しちゃうわね』


霞「私は幸せでした……だから、きっと大丈夫です」


300 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:49:52.79 ID:OgX8QW8y0



小蒔「霞ちゃんたちが戻ってこられるようになった……そうですよね?」

霞「……戻るのは私だけよ」

小蒔「え、じゃあ京太郎様は……」

霞「それはもう、どうしようもないの」

小蒔「そんな……」

霞「だから、あなたが一緒に行ってあげて」

小蒔「……え?」

霞「私があなたの代わりになる……だから」

小蒔「そ、そんなのダメですっ」

霞「どうして?」


小蒔「……ずっと、怖くて聞けませんでした」

小蒔「霞ちゃんはずっとお役目のために我慢してて……」

小蒔「それはとても辛いことだったんじゃないかって」

小蒔「私の、身代わりという立場が」

301 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:52:17.69 ID:OgX8QW8y0


霞「……よかったのよ」

霞「辛かった、苦しかった、うんざりしてた」

霞「でも、みんなと一緒にいられた」

霞「離れてようやく、私の居場所はあそこだったんだって気づいた」

霞「それに……ねえ、触ってみて?」


小蒔「えっと……」オズオズ

霞「ここにもう一人いるの」

小蒔「霞ちゃん、それって」

霞「彼は小蒔ちゃんにあげるけど、彼の子は私がもらうわ」

小蒔「そんな、もうダメだって言ってました」

霞「ゼロとゼロに近いでは、大きな違いがあるということね」

小蒔「羨ましいです……でも、霞ちゃんはお母さんになるんですね」

霞「ええ」

小蒔「……決めました」

302 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:55:24.92 ID:OgX8QW8y0


小蒔「私もお母さんになります」

小蒔「それはとっても大変で、時間のかかることかもしれません」

小蒔「けど、いつかきっと、京太郎様の子供を産みます」

小蒔「霞ちゃんだけに独り占めはさせません!」


霞「……欲張りなのね」

小蒔「ズルした霞ちゃんに言われたくないですっ」

霞「やってみるといいわ……できるなら」

小蒔「やります、やってみせます……それでいつか」


小蒔「また、みんなで……」

霞「ええ、そうね」


303 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 03:58:15.12 ID:OgX8QW8y0



小蒔「お待たせしました」

京太郎「話、終わったか?」

小蒔「はい」

京太郎「それじゃあ、これからだけど――」

小蒔「ついていきます」

京太郎「……いやまあ、連れ出す予定ではあったけど、こうもすんなりいくとは」


春「そんなこともあろうかと」

初美「荷物は用意しているのですよ」

京太郎「いや、お前らも準備よすぎだろ」

巴「いつか、こんな風になるんじゃないかなって」

京太郎「どこをどうしたらそんな予想が――って、うちの母親か」

304 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 04:02:08.76 ID:OgX8QW8y0


霞「小蒔ちゃんをおねがいね」

京太郎「心配すんな。返せって言われても返さないから」

霞「……今までありがとう。あなたがいなければ、私は……」

京太郎「俺こそ、今まで傍にいてくれてありがとう、だよ」

霞「あなたと過ごした半年、楽しかったわ」

京太郎「ああ、悪くなかった」

霞「それに、かけがえのないものももらえた」

京太郎「なんだそりゃ?」

霞「ふふ、ナイショ」


小蒔「みんな、今までお世話になりました」

春「うん、実際その通り」

初美「ですねー」

巴「あはは……」

小蒔「うぅ〜、みんなひどいですっ」


小蒔「とにかくっ、お別れですけどさようならは言いません!」

小蒔「だってまた会えますから」

小蒔「だからみんな、またいつかです」


305 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 04:04:54.77 ID:OgX8QW8y0



初美「……行っちゃいましたねー」

巴「姫様、幸せになれるかな」

春「京太郎が一緒だし、問題ない」

初美「それよりも……」


霞「……」


初美(問題はこっちなのですよ)


春「……忘れないで」

霞「なにかしら」

春「私は、あなたを許したわけじゃない」

霞「……わかってるわ」


初美(あちゃ〜、はるるはキレッキレ)


巴「……ごめんなさい、心の整理がまだ」

霞「構わないわ。それだけのことを私はしてしまったのだから」

巴「すみません……」


初美(巴ちゃんも……)

初美(やれやれ、ですねー)


306 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 04:09:57.92 ID:OgX8QW8y0



霞「やっぱり、うまくいかないものね」

初美「ま、しょうがないのですよ」

霞「初美ちゃんはいつも通りなのね」

初美「一人ぐらい味方がいないと、霞ちゃんもまいってしまいそうですからねー」

霞「……ありがとう、初美ちゃん」

初美「お礼はしっかり関係修復してから言うのですよ。まだ明星たちもいるのですよ」


307 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 04:15:04.31 ID:OgX8QW8y0



京太郎「小蒔」

小蒔「なんでしょうか?」ギュッ

京太郎「いやにくっつくなって思って」

小蒔「えっと、ダメでしょうか?」

京太郎「……いや、半年分には足りないな」

小蒔「それなら……んっ」


小蒔「ずっと、私を離さないでください」


小蒔「愛してます、京太郎様」

京太郎「ああ、俺も愛してる」


308 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 04:17:32.51 ID:OgX8QW8y0



「ん〜……こっちはあったかいな」

「いててて、ずっと座りっぱなしだったからなぁ」

「ここが鹿児島……」


(中学の卒業旅行……という名目で訪れたこの地)

(ここで僕の父さんと母さんは出会ったらしい)

(両親はいわゆる駆け落ちで一緒になったらしく、そのためかあまり昔のことを語らない)

(隠されると余計気になるというやつだろうか)

(母さんの故郷、海が綺麗だというその場所が見てみたい――僕はその一心でここにいる)

(……卒業旅行でほぼ日本一周したという父さんの影響もないとはいえない)


「えっと、霧島だっけ?」


(あまり多くを語らない僕の両親だが、調べればそれなりに情報は出てきた)

(そもそも母さんは二十年ぐらい前に、女子麻雀のインターハイで大暴れしたらしい)

(その時の所属校の名は、永水女子)

(なんでもみんなして巫女服姿で試合に出たりと、中々のインパクトだったとか)

309 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 04:19:37.65 ID:OgX8QW8y0


「このバスでいいのかな?」


(そしてバスに揺られること数十分)

(僕は――)


「やべ、ここどこだよ……」


(――見事に降り過ごした)

(海沿いのガードレールにもたれ、ちょっと途方に暮れる)


「……しょうがない、ちょっと歩くか」


310 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 04:21:09.21 ID:OgX8QW8y0



(結果的に言えば、バスを降り過ごしたのは正解だったと思う)

(海沿いの道をのんびり歩くのは散歩コースと考えれば、悪くない)

(加えて、今の時期だと満開とはいかないがちらほら桜が咲いている)

(これを考えれば、悪くないどころかおつりまでくる)


「これが霧島の海かぁ」


(一応、これで旅の目的を果たしてしまったことになる)

(それはそれでいいのだが、すぐに帰ってしまうのはもったいない)

(だけど……)


「……なにしようか」


(ここで計画性のなさが露呈した)

(というより、ほとんど行き当たりばったりで、決めていたのは飛行機の予定ぐらいだ)

(当然宿もとっていないし、帰りの便もとっていない)

(……参考にしたのが父さんの話だったのがいけなかったかもしれない)

311 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 04:22:24.81 ID:OgX8QW8y0


「ま、いーや」


(観光ガイドはなくても、携帯という心強いツールがある)

(これでいろいろ調べれば……)


「あ、電池3パーセント……」


(携帯の命は風前の灯だった)

(まずは充電しないことには調べ物もおぼつかない)

(とりあえずはコンビニを――)


「やめたやめた」


(――探すのはやめて、また歩き出す)

(行き当たりばったりだからこそ面白い)

(父さんのそんな言葉を思い出したからだ)

(それに、そんな状況でこそあるのかもしれない)

(父さんと母さんのような、運命の出会いというやつが)

312 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 04:24:09.34 ID:OgX8QW8y0


――ドンッ


「きゃっ」


(柔らかい衝撃と、女の人の声)

(よそ見しながら歩いていたらぶつかってしまったらしい)


「すいません、大丈夫ですか?」

「いいえ、こちらこそ」

「立てますか?」スッ

「あ、すみません」


(その人は、巫女服を着ていた)

(年は多分、僕よりもちょっと上で……胸がものすごく大きい)

(胸が、ものすごく、大きい)


「どうかなさいましたか?」

「あ、ああ……あはははは」

「?」


(もう笑うしかなかった)

(顔はやたらと熱いし、変な汗まで出てくる始末)

(だって、この人はそれほど綺麗で……あ、そうか)

(もしかしたら、あれか。これはあれなのか)

(これが俗にいう……一目惚れというやつなのか)

313 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 04:25:57.08 ID:OgX8QW8y0


「お揃い、ですね」

「おっ、おおお、お揃い?」


(どもった……どもった上にうわずって裏返った)


「髪の色、そっくりじゃありません?」

「た、たしかに」


(言われてみればその通りだった)

(僕の髪は、父親譲りの金髪)

(良くも悪くも目立つこの地毛だが、この人との共通点になるならば悪い気はしない)

(とりあえず、どうにかして話題を……!)


「あああ、ああののっ」

「はい?」


「お名前と連絡先、教えていただけませんかっ」




『エンディング――それを運命と呼ぶならば』
314 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 04:31:36.77 ID:OgX8QW8y0
ようやっと終わり……クソ長かった
もう当社比300%です

このエンディングは姫様のエンディングからの分岐になります
分岐点は、ある場面で霞さんが我慢できるかできないか
ちなみに最後の少女の見た目は金髪バージョンの霞さんってことで

安価は後日にぶん投げておやすみなさい
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 09:10:00.04 ID:ru9Lji/d0
乙です。禁断の未来の予感wwwwww
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 11:15:53.36 ID:kTsNHp9uO
おつ
血は争えないなw
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 18:21:24.29 ID:NQQ8o6Vwo

これは色々とやばくなる予感しかしない
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 19:26:04.63 ID:UlTgapCc0
乙です
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 20:59:25.83 ID:ceS4VTLyO

やっぱりなんだかんだ言ってもはっちゃんが一番いい娘だね
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 21:01:48.06 ID:pZ1lpabto
久さんは損な役回りだねえ
321 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 23:55:38.38 ID:OgX8QW8y0
こんばんはー

安価取りたいんですけど、人いますかね
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 23:56:26.42 ID:enXkvEfMO
います
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 23:57:53.09 ID:ZJWqd1/hO
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 23:58:16.70 ID:SizWJFejO
はい
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 23:58:47.90 ID:NQQ8o6Vwo
はい
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/24(水) 23:59:10.98 ID:zglIvPuY0
うん
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 00:00:45.41 ID:NpSy2sLkO
おるよー
328 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/25(木) 00:01:02.82 ID:powGzQCx0
それじゃ、この中からお好きなのをどうぞ
済がついてるのは選べません


個別

大星淡 済
天江衣 済
桧森誓子 済
姉帯豊音 済
三尋木咏 済
神代小蒔 済
ネリー・ヴィルサラーゼ 済
宮永照  済
エイスリン・ウィッシュアート 済
白水哩 済
竹井久 済
福路美穂子 済
松実玄 済
薄墨初美 済
滝見春 済
石戸霞 済
園城寺怜 済
真屋由暉子 済
清水谷竜華 済
鶴田姫子 済


特殊

久照
久美穂子
小蒔霞
哩姫 済
怜竜


4分まで
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 00:01:09.83 ID:mm2wKq0TO
久美穂子
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 00:01:18.59 ID:6Q0rRuBfo
久美穂子
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 00:01:28.62 ID:NpSy2sLkO
怜竜
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 00:01:46.77 ID:aNL5xyi1O
久々美穂子
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 00:02:12.77 ID:/k5FqNFKO
久照
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 00:02:30.93 ID:gz5t5DiCO
久美穂子
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 00:02:41.69 ID:WDzubC3W0
久美穂子
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/25(木) 00:03:57.56 ID:VoNfO3Ii0
小蒔霞
337 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/25(木) 00:04:01.36 ID:powGzQCx0
締切
割ってきます
338 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/25(木) 00:10:28.97 ID:powGzQCx0
あ、霞さんと姫様のに済付け忘れた
申し訳ないんですけど無効で

というわけでコンマ判定


久美穂子:1-70
怜竜:71-85
久照:86-00


直下
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 00:10:56.21 ID:6Q0rRuBfo
340 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/25(木) 00:14:17.64 ID:powGzQCx0
久美穂子で了解

それじゃ、明日に備えて寝ます
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 00:16:45.29 ID:mm2wKq0TO
おつー
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 00:16:52.28 ID:6Q0rRuBfo
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 00:17:02.05 ID:aNL5xyi1O
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 00:17:21.24 ID:NpSy2sLkO
乙です
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 00:18:10.93 ID:SvQi/1J4o
おつー
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 00:18:44.07 ID:/k5FqNFKO
おつおつ
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 00:55:26.57 ID:qzbe8MQA0
乙!
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/27(土) 11:30:05.45 ID:NaMv9bPr0
乙です!
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/28(日) 16:04:05.61 ID:8nZNgabr0
https://i.imgur.com/VuvjIWU.jpg

テルー
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/28(日) 17:12:24.47 ID:dRD6Al5o0
https://www65.atwiki.jp/sajest/pages/96.html
https://www65.atwiki.jp/sajest/pages/95.html
https://www65.atwiki.jp/sajest/pages/74.html
https://www65.atwiki.jp/sajest/pages/39.html
https://www65.atwiki.jp/sajest/pages/47.html
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 22:45:05.93 ID:mJWw12iq0
待ってるわよ!
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/01(木) 16:05:58.93 ID:5XJoe9sP0
マダー?
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/02(金) 23:21:58.54 ID:poHHle0S0
今日は京ちゃんの誕生日だね
おめでとうございます
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/03(土) 17:19:36.41 ID:Fj/jsvwE0
すばら!
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/10(土) 09:32:37.85 ID:Xb1F/1fS0
カンだおらぁぁぁ!
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/14(水) 23:52:12.54 ID:Y2+AllzAO
バレンタインが終わる
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/18(日) 21:00:55.44 ID:VFOrBApU0
どうした?大丈夫か?心配だぞ
358 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/22(木) 23:55:01.96 ID:HSvAM31N0
前回が長すぎたからこんなに間が……

嘘です。単純に暇がなかっただけです

そんなわけで、もうちょっとしたら始めます
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/23(金) 00:10:12.34 ID:jWhsdZsmO
お、生きてた
360 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/23(金) 00:27:06.95 ID:7XTS033P0
んじゃ、始めます
361 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/23(金) 00:35:48.06 ID:7XTS033P0


京太郎「……あのさぁ」

久「なに?」

美穂子「なんですか?」

京太郎「動けない」

久「あんたが悪い」

美穂子「そうですね」

京太郎「……」


京太郎(八月の中旬、大学一年の夏休みが始まって間もなく)

京太郎(俺は明確にピンチを迎えていた)

京太郎(場所は自宅……賃貸のマンション)

京太郎(状況は挟み撃ち……腕を両サイドからガッチリホールドされてる)

京太郎(原因は……自業自得としか言い様がない)


久「――ちょっと」グイッ

美穂子「――こっち向いてください」グイッ

京太郎「いでででででっ! 人間の首は左右同時には向けないんだよ!」


京太郎(つまり俺は、一方と関係を持ちながら)


久「いい加減はっきりさせなさいよね」


京太郎(また別の女性に手を出した、とんだクズ野郎ということだ)


美穂子「私もはっきりと聞きたいです」


京太郎(……絶賛、修羅場中)


「「どっち(ですか)!?」」


362 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/23(金) 00:41:49.34 ID:7XTS033P0



京太郎「いやぁ、爆釣爆釣」

一太「何だよ、そのチラシの山」

京太郎「新入生歓迎の煽り」

一太「勧誘の嵐に自分から飛び込んでいったのか……」

京太郎「でもなんでもかんでも面白そうに見えてさ、ほら」

一太「ヒゲ部、万事屋銀ちゃん、スケット団、ヒーロー協会、ゲーム制作部(仮)……わけがわからないのばかりじゃないか」

京太郎「面白そうだろ?」

一太「面白いをヤバイに置き換えたら賛成するよ」

京太郎「お前なぁ、せっかくの大学生活なのにつまんないこと言うなよ」

一太「君が変なのばかり持ってくるからだろ」

京太郎「だから面白そうなんだろ。てか、そっちはなんか目ぇつけたとこあんのかよ」

一太「そうだなぁ……バスケ、作曲、将棋……とか?」

京太郎「また予想外な……お前、そんな趣味あったっけ?」

一太「全く新しいことに挑戦してみるのもいいんじゃないかってね」

京太郎「一理あるな」

一太「それに、思いがけない出会いもあるかもしれないだろ?」


一太「バスケをやってたら、ひょんなことから小学校の女子バスケ部のコーチを任されたり」

一太「ネットで公開した曲が女子小学生バンドの耳にとまって、プロデュースをお願いされたり」

一太「将棋で頭角を現して上り詰めれば、才能あふれる女子小学生が弟子入りしてきたり!」


一太「とまぁ、こんな感じで色々あるかもしれないじゃないか」

京太郎「ねーよ」


363 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/23(金) 00:51:20.65 ID:7XTS033P0



一太「くそっ、くそぉ……」ダンッ


久「お待たせーって、内木くんどうしたわけ?」

京太郎「ああ、ちょっと現実の非情さを教えてやってた」

久「生暖かく見守ってあげてればいいのに」

京太郎「いや、つい……」


ゆみ「というか、君たちのテーブルにものすごく近寄りがたいんだが」

美穂子「あの、良かったらお水飲みます?」

一太「あ、ありがとう」

京太郎「一杯百円な」

一太「そんなバカなっ!」

京太郎「なんたってみほっちゃんの水だからな」

一太「そ、そうか……お金を出して買った水か」

美穂子「そこのウォーダーサーバーでタダでもらえますよ?」

京太郎「一杯百二十円な」

一太「なんで値上がりしてるんだ!? 今タダって言ってたじゃないか!」


ゆみ「……入学早々、騒がしいな」

久「春だもん、しかたないんじゃない?」

ゆみ「春か……それで、決着は?」

久「……延長戦」


364 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/23(金) 01:00:19.60 ID:7XTS033P0



京太郎「ふぃー、ただいまぁ」

京太郎「……」シーン

京太郎「ってだれもいないわな、一人暮らしだし」

京太郎「早いとこ慣れなきゃなぁ」グゥ

京太郎「……よし、まずは晩飯だ」ガラッ


京太郎(うーわ、冷蔵庫の中なんもない)

京太郎(しゃあないな、買いに行くか)


――ピンポーン


京太郎「……」


京太郎(この時間の来客に覚えは……あった)

京太郎(この場合はどっちか、もしくはどっちもか)

京太郎(いっそのこと食事は外で済ませてこれば良かったかもしれない)


『いないのかしら?』

『うーん……あれ、鍵は開いてるわね』ガチャ


久「京太郎ー? 起きて――るわね」

美穂子「晩御飯、一緒にどうですか?」


京太郎(俺の右隣の部屋に久ちゃん、左隣の部屋にみほっちゃん)

京太郎(つまり、俺に逃げ場はないということになる)


365 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/23(金) 01:07:38.92 ID:7XTS033P0



京太郎「……」


京太郎(高校を出て、大学に行くことを選択して……だけど俺は誰かを選ぶことができなかった)

京太郎(結局、誰にも答えを出さないままここに至るというわけだ)

京太郎(今思えば、進学を決めたのも猶予が欲しかったからかもしれない)

京太郎(大学に通うのならば、少なくとも夏休みまではまとまった暇がない)

京太郎(それまでにバイトをして、旅費を稼いで……それで、どうする?)

京太郎(一度、答えを出すことから逃げた俺に、決めることができるのか?)

京太郎(こんな……優柔不断野郎に)

366 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/23(金) 01:20:49.73 ID:7XTS033P0


美穂子「おいしくないですか?」

京太郎「ん、ああ、おいしい。さすがだよ」

久「上の空って感じ。珍しく考え事?」

京太郎「昼間すっごい勧誘受けてさ」

久「それなら私たちも」

美穂子「先輩たちからも誘われちゃいました」

京太郎「風越からの入学者も結構いんの?」

美穂子「私が知ってる人はそんなにいないんですけど、高校一年の時の先輩が声をかけてくれて」

京太郎「そういうのもあるのか」

久「上下のつながりはあんまりなかったのよね、私たち」

京太郎「麻雀部の先輩と呼べるのは、それこそ一人だけだったしな」

久「部長、元気かな?」

京太郎「外国に高飛びしたんだっけ」

美穂子「えっ、高飛びって……」

久「はいはい、留学の間違いだから」

美穂子「あ……またからかわれちゃいましたね」

京太郎「悪い悪い、みほっちゃんが――」

367 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/23(金) 01:33:22.45 ID:7XTS033P0


京太郎(その先の言葉は、出てこなかった)

京太郎(いつも通りのはずだ。でも、それがすごく難しい)


久「京太郎?」

京太郎「ごちそうさん。ちょっと散歩いってくる」

美穂子「あ、ちょっと待ってください」クイッ

京太郎「――っ」

美穂子「はい、これでご飯粒取れました」

京太郎「あ、ああ……」


美穂子「いってらっしゃい」

久「……はぁ」


368 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/23(金) 01:41:56.12 ID:7XTS033P0
眠い……沈みます
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/23(金) 01:46:17.05 ID:EOiR30k10
おやすや
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/23(金) 09:24:12.21 ID:yEUsAmh00
来てた!乙です!
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/23(金) 12:50:57.18 ID:FgyCi4Hao
俺達が見たかった修羅場(ラブコメ)
372 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/25(日) 23:54:19.81 ID:B/X/YV0o0
こんばんはー

もうちょっとしたらやろうかと
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/25(日) 23:57:29.44 ID:wqxyPLw9o
了解
ラリホー
374 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/26(月) 00:26:07.82 ID:fa2yTv0O0
んじゃ、はじめます
375 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/26(月) 00:33:59.77 ID:fa2yTv0O0



京太郎「まずい、この状況はまずい」

京太郎「なんか半同棲みたいになってるし……」

京太郎「なにより一番まずいのは……俺の態度だよな」

京太郎「いつも通りにすりゃいいのによ……」


京太郎(現状維持を選んだはずなのになぁ)

京太郎(これじゃ全然維持できてないな)


京太郎「ホント、いやになるな」

京太郎「あーあ、帰りづらいわ」


「あれあれ、もしかして須賀くんじゃね?」


「こんなとこでなにしてんのよ?」

京太郎「散歩だって、散歩」

「あらら、もしかしてひとり寂しく系?」

京太郎「そんな感じ」

376 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/26(月) 00:45:19.63 ID:fa2yTv0O0


京太郎(てか、こいつだれだっけ?)

京太郎(……たしか、同じ組だったか?)


「それマジやばいっしょ。春先からそれじゃぼっち確定っしょ」

京太郎「や、やめろって……ぼっちとかじゃないからっ」

「んじゃ、いっちょ行ってみちゃう?」

京太郎「行ってみちゃわない」

「まぁまぁ、ゆーてもうちら新入生だし? まずは同クラで親睦的な?」

京太郎「なるほどなぁ、結構楽しそうだ」

「でっしょー? とりま参加でFAっしょ」

京太郎「んー……」


京太郎(たしかに、このまま二人に辛気臭い顔見せてもな……)


京太郎「よし、いっちょ行ってみちゃいますか!」

「はいはーい、お一人様ごあんな〜い」

京太郎「って、お前キャッチかよ」

「それな。高校時代の経験みたいな?」


377 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/26(月) 00:52:05.32 ID:fa2yTv0O0



久「おっそいわねぇ」

美穂子「なにかあったのかしら?」

久「無きにしも非ずだけど……」


久(やっぱり、帰りづらいのかしらね)


『ごめん……やっぱりまだ、答えられない』


久(あの時、許したのがいけなかったのかな……)

久(許さないで突き放してたら……)


久「……はぁ」

美穂子「またため息」

久「わかる?」

美穂子「久も悩み事?」

久「も、というと?」

美穂子「……私たち、やっぱり迷惑になっているのかしら」

久「さぁ……でも、こっちがいつも通りじゃなかったら、それはそれで気にすると思うのよ」

美穂子「久、あなたは……」


美穂子(彼に、なんて言われたの……?)

美穂子(私は何も言ってもらえなかった……)


久「なに? ……あ、メール」

美穂子「もしかして、京太郎さん?」

久「キャッチに捕まって遅くなるってさ」


378 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/26(月) 00:58:38.70 ID:fa2yTv0O0



京太郎「んなのよー、選べるわけないじゃんかよー」

「はいはいはいはい、そーなのね」

京太郎「んでよー、どいっつもこいつもかわいいくていいやつだしよー」

「はいはいはいはい、そりゃ困っちゃうねー」

京太郎「ちゃんと聞いてんのかよー、こらー!」

「俺が連れてきたんだけどさぁ、須賀ちゃん酒弱すぎね?」

京太郎「だから酔ってねーっての!」

「はいはいはいはい、酔っぱらいはみんなそー言うのね」


「そんでさぁ、何人といたしちゃったわけ?」

京太郎「はぁ?」

「いやいや、そんだけ数いるんだから、何人かは食っちゃったんでしょ?」

京太郎「……」

「……あれ? 須賀ちゃんもしかして――」

京太郎「どどどど童貞ちゃうわ!」

「うーわー……」

379 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/02/26(月) 01:04:39.04 ID:fa2yTv0O0


「ま、まぁ? 麻雀女子って男できないってジンクスあるみたいだし? そんなのに囲まれてちゃね?」

京太郎「……そうだよ、俺が変な意地張ってたせいだよ」

「そんじゃ、まずはその意地もろとも捨てちゃうしかないっしょ」

京太郎「……素人童貞はまだ嫌だ」

「いやいや、風俗じゃなくてさ。ほら、向こうの端に座ってる子……超かわいくね?」

京太郎「んー、たしかに」

「ちょっと声かけてきちゃおうZE☆」

京太郎「いやいやいやいや」

「須賀ちゃん見てくれいいし、ワンチャンあるっしょ」

京太郎「だからさ、今の俺の状況でそれは――んぐっ」

「まぁ飲もうぜ。難しいこと考えんのやめてさ、フィーリングでいっちゃえよ」

京太郎「こ、このやろ……」

「はい、いってらっしゃーい」ドン

京太郎「うわっ」


京太郎(……そこから先の記憶はない)


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