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久「あんたが三年生で良かった」京太郎「……お別れだな」

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180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 21:52:47.59 ID:v37nVDMEo
あけおめ乙
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 23:37:18.51 ID:CwvtywHdO
あけおめー
いよいよ霞さんかある意味一番幸せになってほしい娘なんだよなぁー
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/02(火) 14:40:58.44 ID:piPPOQc40
>>179
あけおめ!
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/02(火) 21:56:40.13 ID:6LKXVyWv0
乙です
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/05(金) 15:10:55.74 ID:UhbLHb5x0
今年も応援してます
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/06(土) 14:45:40.64 ID:vKMiJN9S0
乙です!
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/10(水) 01:45:05.42 ID:0qekUzAI0
嶺上開花
187 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/11(木) 23:46:50.30 ID:Po9NVGLC0
おひさしこんばんはー

もうちょっとしたら始めようかと
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 00:12:06.43 ID:5nGVGa/sO
待ってた
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 00:18:51.89 ID:WFOfw25Q0
ワクワク
190 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 00:22:41.29 ID:I2BQY5xn0
んじゃ、始めます
191 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 00:27:05.65 ID:I2BQY5xn0


京太郎「……」


『お願いだから、黙ってて』

『あなたにそれを言われたら、私は……』


京太郎「……はぁ」


「出た、辛気臭いため息」

京太郎「なんだよ」

「かわいい息子が悩んでて、気にならない母親はいないの」

京太郎「なんか、ぞわってきた」

「ちょっとどういう意味よー!」

京太郎「冗談だよ、冗談」

192 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 00:32:15.70 ID:I2BQY5xn0


京太郎「別に大したことじゃないから」

「わかった、恋の悩みね」

京太郎「なんでそうなるかなぁ」

「自前の恋愛センサーね」

京太郎「余計なものまで感知してそうだな」

「いいから、話しちゃいなさいよ」

京太郎「あーもう、うざったいな……」


京太郎「なんか色々抱え込むやつがいてさ」

京太郎「大丈夫じゃなさそうなのに大丈夫って言い張っててさ」

京太郎「そんでもって、すごい頑固なんだよ」


「ふんふむ……霞ちゃんね」

京太郎「なんなの、エスパーなの?」

「ズバリ、これぞお母さんの恋愛センサーなのよ」

京太郎「もう話打ち切っていいかな」

「ダメ、せっかくだから全部ゲロっちゃいなさい」

193 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 00:37:09.82 ID:I2BQY5xn0


京太郎「……なんとかしてやりたいとは思ったんだよ」

京太郎「でも、自分にそんな資格とか覚悟があるのかって思ってさ」

京太郎「結局なにもできなかった」

京太郎「いや……大丈夫って言葉に甘えて、なんにもしなかったんだ」


「なるほどねぇ……それで、一つ確認していい?」

京太郎「なにさ」

「好きなの?」

京太郎「……それ、関係あるか?」

「大ありじゃない。だって、それって相手とどうなりたいのかに直結するし」

京太郎「どうなりたい……」


『今までどおりでいられるなら、なにも望まないわ』


京太郎「思い知らせてやりたい」

京太郎「閉じこもって出てこないなら、こじ開けて連れ出して、そして――」

京太郎「自分の幸せってやつと、向き合わせたい」

194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/12(金) 00:40:22.95 ID:I2BQY5xn0


「うーん、青臭い!」

京太郎「あんたがしゃべらせたんだろ!」

「でも、それでいいんじゃない?」

京太郎「……青臭いうえに、独りよがりだ」

「恋ってそういうものじゃない?」

京太郎「恋……これって恋なのか?」

「なにを今更。要約したら、その子に夢中で、しかも幸せにしてやりたいってことじゃない」

京太郎「いや、そこまでは言ってないんだけど」

「だったらまずは自分が向き合って、伝えることは伝えちゃいなさい」

京太郎「聞いてねーし……」


京太郎(資格と、覚悟……どっちもまだ固まってない)

京太郎(だけど――)


京太郎「決めた。とりあえず会いに行く」

「その後は?」

京太郎「決めてない」

「あらら」

京太郎「そこらへんは道中どうにかするよ」

「そう……なら一つだけ」

195 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 00:44:07.39 ID:I2BQY5xn0


「私のことは気にしなくてもいいから、好きなようにしてきなさい」


京太郎「いきなりなにさ」

「なんとなく」

京太郎「まぁ、普段からしてないけどさ」

「えー? ちょっとはしてよ」

京太郎「どっちなんだよ」

「ふとした時に思い出して」

京太郎「はいはい」


「……霞ちゃん、よろしくお願いね」

京太郎「なんかさ、いやに気にかけてない?」

「ちょっと昔の知り合いに似てるから」

京太郎「昔の知り合い?」

「うん……だから、きっといつか、幸せだって思えるようにしてあげてね」


196 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 00:47:14.18 ID:I2BQY5xn0



霞「……」


『私では、ダメ?』

『私では、あなたを支えられない?』


霞(違う、違う違う……っ)

霞(これは、ただの気の迷い)

霞(こうして滝に打たれていれば、自然と消えていく雑念)


『ま、それでも不十分っていうんだったら俺に任せとけ。肩揉みぐらいだったらしてやるよ』


霞(だから、そんなに優しくしないで)


『はは、美人ってのは怒っても美人だな』


霞(だから、そんな風に笑わないで)

霞(そうすれば、私は……)


197 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 00:50:03.69 ID:I2BQY5xn0



明星「お疲れ様です、お姉様」

湧「タオル、どうぞ。体冷えちゃいます」

霞「ありがとう、二人とも」

明星「すごい集中力でした」

湧「やっぱり霞さんってすごいなぁ」

霞「大したことじゃないわ。……ちょっとだけ我慢強いだけ」


初美「お三方ー、そろそろおやつなのですよ」


霞「もうそんな時間なのね」

初美「のめり込みすぎなのですよ」

霞「そうかしら」

初美「何事もほどほどが一番ですからねー。倒れられても困りますし」

湧「あの、私もそう思うというか……まだ水も冷たいですし」

明星「お姉様が倒れたら、みんな心配しちゃいます」

霞「そうね……ごめんなさい、これは私のわがままね」

初美「さ、反省したらちゃちゃっと着替えちゃうのですよ」

霞「ええ、そうするわ」

初美「……」


初美(どうしたものですかねー……)


198 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 00:53:07.26 ID:I2BQY5xn0



巴「そうなんだ……」

初美「さすがにあのままじゃまずいといいますかねー」

巴「心配、だよね」

初美「というよりも、見るに堪えないのですよ」

巴「姫様もちょっと心配してるみたいだし」

初美「霞ちゃん、隠してるようで隠せてないですからねー」

巴「原因ってやっぱり……そうなのかな」

初美「それはもう、どうしようもないのですよ。ほら、恋は落ちるものと言いますし」

巴「落ちるものかぁ……うん、重力には逆らえないしね」

初美「そのうち霞ちゃんのにっくき脂肪の塊も重力に負けて……おっと、話がそれたのですよ」

巴「は、はっちゃん……」


199 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 00:56:30.43 ID:I2BQY5xn0



小蒔「はふぅ……おやつ食べたら急に眠気が……」

春「眠そうにしてるのはわりといつものこと」

小蒔「そ、そうですか?」

春「疑いようもなく」

小蒔「むぅ……やっぱりここはその、いめーじの払拭にあたりたいと思いますっ」

春「具体策は?」

小蒔「ええっと……そうです! こーひーを飲むとか!」

春「なるほど、コーヒー……」


『に、にがいですっ。こんなの絶対飲めません!』


春(――ってなりそう)


春「悪いことは言わないから、やめておいたほうがいい」

小蒔「なんでですかっ」

春「コーヒーは大人の味だから」

200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/12(金) 00:59:21.27 ID:I2BQY5xn0


霞「……」スタスタ


小蒔「あ、霞ちゃん」

霞「……あら、小蒔ちゃん?」

小蒔「大丈夫ですか? ぼうっとしてました」

霞「ちょっと、晩御飯の献立で悩んでいたの」

小蒔「食材が足りないなら、私お使い行きますよ?」

霞「ありがとう、小蒔ちゃん。でも、私が行くから大丈夫よ」

小蒔「でも――」

霞「ごめんなさい。本当のことを言うと、他にも用事があるの」

春「……」

霞「だから私が行った方が都合がいいの」

小蒔「そうですか……じゃあ、気を付けて行ってきてくださいね」

霞「ええ」


小蒔「……やっぱり、ちょっと変です」

春「私もそう思う」

小蒔「でも、私も意気地なしです」


小蒔「聞きたいことが、聞かなきゃいけないことがあるはずなのに……」


201 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:02:33.85 ID:I2BQY5xn0



京太郎「……うーん、わからん!」

京太郎「あの石頭が素直に話聞いて頷くわけないよな……」

京太郎「最悪、無理矢理っていう手も――」


初美「悪巧みですかー?」


京太郎「なんだお前か」

初美「なんだとはなんですか」

京太郎「ほっとしたって意味だよ」

初美「むむっ、なにかやましいことがあると見ました」

京太郎「やましいことっていうか……誘拐?」

初美「犯罪者発見なのですよ!」

京太郎「冗談だ冗談……六割ぐらいは」

初美「わりと本気ということですねー……」

京太郎「そんなわけで石戸は元気か?」

初美「ダメダメですね」

京太郎「ダメダメか」

初美「……最近は、神境にいること自体が辛いんじゃないかって」

京太郎「……そうか」

202 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:04:51.32 ID:I2BQY5xn0


京太郎(やっぱり、一筋縄じゃいかなさそうだな)


京太郎「なあ、小蒔と話したいことがあるんだけど」

初美「姫様なら神境ですねー」

京太郎「なら外に呼んできてもらえるか?」

初美「内緒話ですか?」

京太郎「ああ、ちょっとお前らの日常をぶっ壊すことになるかもしれないけど」

初美「それはまた、穏やかじゃないですねー」

京太郎「だから、先に謝っておきたい」

初美「……霞ちゃん、ですか?」

京太郎「ああ」

初美「ふぅ……なら仕方ないですねー」


203 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:07:23.52 ID:I2BQY5xn0



霞「……」


霞(時間が解決してくれる、というけれど)

霞(この痛みはいつになったら消えてくれるのかしら)

霞(……いいえ、痛いなんてこと自体ありえない)

霞(だって、私は――)

204 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:10:45.71 ID:I2BQY5xn0


京太郎「今、暇か?」

霞「……来ていたのね」

京太郎「ああ、先に手紙は送ったよな」

霞「そうね……」

京太郎「話がしたい」

霞「ごめんなさい、ちょっと忙しいの」

京太郎「そうか。じゃあいつならいい?」

霞「わからないわ。少したてこんでいるから」

京太郎「……もしかしなくても、避けようとしてるだろ」

霞「そんなこと――」

京太郎「ないとは言わせないぞ」

霞「……」

京太郎「小蒔たちも気づいてる。お前が辛そうだって」

霞「そんなこと、ないわ」

京太郎「薄墨も言ってた。ここにいるのがいやなんじゃないかって」

霞「そんなわけ……」

京太郎「ないって言えるなら、ちゃんとこっち見て話せよ」

霞「……いやよ」

京太郎「いいからっ」グイッ

霞「あっ……」

205 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:13:51.82 ID:I2BQY5xn0


京太郎「……泣いてるじゃないか」

霞「どうして……どうしてこんなことするのよ」

京太郎「お前の本心が聞きたいから」

霞「話せば、離れてくれるの?」

京太郎「聞いてから決める」

霞「ふぅ……なら、話すわ」


霞「……望んでここに来たはずなの」

霞「初美ちゃんたちと一緒にいたくて、ここに来たはずなのに……」

霞「でも、怖いの……」

霞「お役目だからって、務めを果たさなきゃって……そう思ってたのに」

霞「でも、あの夏の……私が失敗して、小蒔ちゃんを危険な目にあわせたあの時から……怖くてたまらないの」

霞「またああなるんじゃないかって、私の失敗で全てを失うんじゃないかって……」

霞「だから、もっと……もっと心を強く持たなくちゃいけないの」

霞「たとえそれで、自分の心が押し殺されたとしても」

206 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:16:20.32 ID:I2BQY5xn0


京太郎「それが、お前の本心か」

霞「……もう、いいでしょ。いつも通りでいさせて」

京太郎「悪いけど、無理だ。そもそも、俺が一番聞きたかったことがまだだから」

霞「……どういう意味かしら」


京太郎「あの時、俺はお前が大丈夫だって言ったから、その言葉に甘えた」

京太郎「結局のところ、踏み込む覚悟と勇気が足りなかったんだ」

京太郎「お前の言葉で決心がついたよ」

京太郎「お前が不幸ぶって自分を抑え込むなら、俺が無理やりにでも引きずり出してやろうって」

京太郎「他のだれでもない、俺がお前を幸せにしたい」

京太郎「俺はお前が好きだからさ、なんでもなくても笑ってるとこが見たいんだよ」


京太郎「ダメか?」

霞「……聞かなかったことにするわ」

京太郎「じゃあ何度だって言うよ……俺は――」

霞「……ダメ、やめて」

京太郎「お前が、石戸霞が――」

霞「やめてって、言ってるでしょ……!」

京太郎「――好きだ」

霞「言わないでって、言ったのに……」

207 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:19:16.07 ID:I2BQY5xn0


霞(だってこんなの……応えられるわけがない)

霞(私が応えてしまったら……)

霞(でも、もう――)


霞「だってあなたにそれを言われたら、私はきっと抑えられなくなるから……」

霞「ずっと、ずっと蓋をしてようと思ったのに……」

霞「――好き、あなたのことが好きなの!」

霞「そうよ、初恋よ!」

霞「本当はなにもかも捨ててあなたといたい!」

霞「でも、私にはそれができないの……!」


京太郎「それがお役目だから、か」

霞「ええ、そうよ」

京太郎「先に謝っておく。俺はお前のこのままでいたいって願い、ぶっ壊すから」

208 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:22:04.87 ID:I2BQY5xn0


小蒔「霞ちゃん」


霞「――っ!」

小蒔「全部、聞いてました」

霞「ち、違うの、今のは……」

小蒔「全部本心、なんですよね?」

霞「そんなことっ」

小蒔「私もずっと聞きたいことがあったんです」


小蒔「霞ちゃんは、私の身代りというお役目をどう思っていたのかを」


小蒔「今までずっとずっと聞けませんでした」

小蒔「霞ちゃんの優しさに甘えて……ううん、きっと怖かったんです」

小蒔「一緒にいたいから……それを聞けば、離れてしまうかもしれないから」

小蒔「でも、きっとそれがいけなかったんですね」

小蒔「だから聞かせてください」

小蒔「霞ちゃんは、私の身代りという立場でいいのかどうかを」

209 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:24:45.66 ID:I2BQY5xn0


霞「……いいわけ、ない」

霞「うんざりしていたわ……」

霞「なにかを我慢して、なにかを諦めて」

霞「それがお役目だから、お役目だからって……」


小蒔「……そうですか」

霞「ごめんなさい……忘れて」

小蒔「ううん、忘れません」


小蒔「霞ちゃん、あなたをこの神境から追放します」


霞「……え?」

小蒔「お役目があなたの幸せを縛るというなら、解放します」

霞「ま、待って」

小蒔「今までありがとうございました……本当に」

霞「小蒔ちゃん、私は……!」

210 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:28:19.61 ID:I2BQY5xn0


小蒔「それと、京太郎様」

京太郎「ああ」

小蒔「私の、大事なお姉さんをお願いします」

京太郎「もちろんだ」

小蒔「それと――えいっ」ペチッ


小蒔「これが私の心を弄んだ罰、ということで」


京太郎「……痛いな」

小蒔「じゃあ、これから霞ちゃんを大事にしてあげてください」

京太郎「わかってるよ」


霞「小蒔ちゃん、私は、私は……」

初美「いつまで呻いてるのですか」

霞「初美、ちゃん?」

初美「これ、最低限の荷物はまとめておいたのですよ」

霞「そんな、私本当に……」

初美「……自業自得なのですよ。無理に抑え込んでるから」

霞「だって、私はそうすることでしか……」

初美「ほら、さっさと行っちゃうのですよ」

霞「あっ……」

211 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:31:58.45 ID:I2BQY5xn0


霞「それでも、私はみんなと……!」

初美「そんなの、私たちだって一緒なのですよ……!」


初美「でも、霞ちゃんは自分の幸せを見つけようとしないから!」

初美「だれかのため、だれかのためって……だれかのせいにしてるから!」

初美「だからっ、ここから離れて、いっぱいいっぱい幸せになってもらうのですよ!」


初美「だから、私からもおねがいするのですよ」

京太郎「当然だろ」

初美「憎たらしいですねー」

京太郎「……お前たちから大事なもの、奪ってくからな」


霞「あ、あぁ……」

小蒔「……いつか、あなたが心の底から幸せだと思えるようになるまで」

霞「小蒔、ちゃん……」

小蒔「それまで、お別れです」


212 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:34:45.70 ID:I2BQY5xn0



霞「……」フラフラ

京太郎「ほら、転ぶぞ」

霞「……ついてこないで」

京太郎「俺が放っておくと思うのか?」

霞「……」

京太郎「なあ、どこ向かってるんだ?」

霞「……わからないわ」


霞「私には、もう帰れる場所なんて……」


京太郎「なら、俺と一緒に来るか?」

霞「……元はといえば、あなたがっ」パンッ

京太郎「――いって」

213 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:39:57.45 ID:I2BQY5xn0


霞「あなたが、あんなことをするから!」パンッ

霞「あなたが、私なんかを選ぶから!」パンッ

霞「あなたが……私たちの前に現れたから!」パンッ


霞「あなたが、あなたがあなたが……!」グイッ

京太郎「ちょっ、叩きすぎ――んむっ」

霞「――あなたが、好き。それでも、好きなの……」

京太郎「……そうかよ」

霞「許さない、絶対に許さないわ……だから――」


霞「――ずっと、放さないで」


214 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:42:48.90 ID:I2BQY5xn0



「……結局、親子ってことなのかしらね」

「京太郎か?」

「霞ちゃん、連れ出しちゃったって」

「そうか」

「心配じゃないの?」

「あいつならなんとかするだろ。それよりも、君は大丈夫なのか?」

「まぁ、これで直りかけてた実家との関係も悪化しちゃうけどね」


「でも、これで良かったんじゃないかしら?」

「ほら、私たち今、幸せじゃない?」


215 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:45:34.33 ID:I2BQY5xn0



小蒔「……」


巴「姫様、考え事ですか?」

小蒔「ちょっと、空を見てました」

巴「空、ですか?」

小蒔「この空の下に、霞ちゃんもいるんだなって」

巴「……せめて私も見送りたかったですね」

小蒔「ごめんなさい、私の独断で」


春「まったくもってその通り」


春「おかげで黒糖を渡せなかった」

巴「あはは、はるるはブレないね」

春「明星たちはまだ落ち込んでるけど」

巴「……しかたないかな、私だって……」

小蒔「……」

216 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:50:04.18 ID:I2BQY5xn0


小蒔(霞ちゃんがいなくなって、色んな変化がありました)

小蒔(たとえば御飯です)

小蒔(ほとんど霞ちゃんが受け持ってたのを、みんなで分担するようになりました)

小蒔(それと、私たち一人一人も……)

小蒔(初美ちゃんはみんなのお手本になろうと頑張ってます)

小蒔(巴ちゃんは明星と湧と一緒にいる時間が増えました)

小蒔(多分、二人が寂しくないようにだと思います)

小蒔(春は相変わらずのように見えて、黒糖の量がちょっぴり増えました)

小蒔(そして私は――)


小蒔「霞ちゃん……」


小蒔(こうして、時々空を見上げて祈っています)

小蒔(どこか遠い空の下で、あなたたちが幸せに暮らしていますように……と)




『エンディング――どこか遠い空の下で』
217 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/12(金) 01:50:50.25 ID:I2BQY5xn0
というわけで終了

眠いのでおやすみなさい
安価は多分明日で
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 01:58:52.00 ID:pN8Apj4zo
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 02:02:26.36 ID:DHeDSADk0
乙ー
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 04:21:12.99 ID:tCGg8ifbo
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/13(土) 12:10:28.53 ID:6NZVYlg40
乙です!
222 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/13(土) 23:22:04.81 ID:zB5Vp4J90
昨日はぐっすりスヤスヤでしたね……

それはそうと、安価取りたいんですけど、人いますかね?
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:23:23.71 ID:LzvLWxJT0
はーい
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:23:59.42 ID:RGoEm4TgO
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:24:29.85 ID:p0Qziyf80
はーい
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:24:45.64 ID:/rOtzcpTO
おいっす
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:26:40.80 ID:66xGAIFOO
はいよ
228 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/13(土) 23:29:02.37 ID:zB5Vp4J90
それじゃ、この中からお好きなのをどうぞ
済がついてるのは選べません


個別

大星淡 済
天江衣 済
桧森誓子 済
姉帯豊音 済
三尋木咏 済
神代小蒔 済
ネリー・ヴィルサラーゼ 済
宮永照  済
エイスリン・ウィッシュアート 済
白水哩 済
竹井久 済
福路美穂子 済
松実玄 済
薄墨初美 済
滝見春 済
石戸霞 済
園城寺怜 済
真屋由暉子 済
清水谷竜華 済
鶴田姫子 済


特殊

久照
久美穂子
小蒔霞
哩姫 済
怜竜


32分まで
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:29:29.65 ID:p0Qziyf80
小蒔霞
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:29:33.51 ID:66xGAIFOO
久照
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:30:33.51 ID:LzvLWxJT0
小蒔霞
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:30:54.94 ID:/rOtzcpTO
小蒔霞
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:31:18.42 ID:RGoEm4TgO
怜竜
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:31:25.26 ID:k/aUUG8uo
小蒔霞
235 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/13(土) 23:32:02.03 ID:zB5Vp4J90
締切
とりあえず割ってきます
236 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/13(土) 23:34:55.68 ID:zB5Vp4J90
コンマ判定

小蒔霞:3の倍数以外
久照:3の倍数、かつ奇数
怜竜:6の倍数


直下
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:35:22.85 ID:k/aUUG8uo
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:35:24.71 ID:RGoEm4TgO
はい
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:35:24.93 ID:/rOtzcpTO
240 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/13(土) 23:36:57.11 ID:zB5Vp4J90
3の倍数じゃないので姫様と霞さんで
……またシリアスなんですけど

今日はこれで失礼します
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:37:24.30 ID:LzvLWxJT0
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:37:53.63 ID:66xGAIFOO
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:38:17.39 ID:k/aUUG8uo
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 23:44:57.40 ID:/rOtzcpTO
おつおつ
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 14:40:30.46 ID:QdR8N43f0
待ってます!
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/15(月) 21:05:05.02 ID:toBHPCbV0
任せる
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/22(月) 22:28:58.26 ID:kLSMISTd0
大丈夫か?
248 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/23(火) 23:47:07.94 ID:LDw8BXtf0
お久ー

顔とか洗ったら始めます
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/23(火) 23:47:38.12 ID:EZi224EoO
お久しぶり
250 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:22:02.42 ID:OgX8QW8y0
んじゃ、そろそろ始めます

多分これまでのエンディングの中で最長じゃないかと
251 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:30:12.65 ID:OgX8QW8y0


『お名前と連絡先、教えていただけませんかっ』


京太郎「うっ……」


『愛しています、京太郎様』


京太郎「こ、まき……」


『好き、好きなの……あなたが好きなの』


京太郎「うぁ……」


『お願い、今だけだから……明日からはいつもの私に戻るから……』


京太郎「お、れは……」


京太郎「――っ」ガバッ

京太郎「……はぁ、なんつー夢見てんだ」

252 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:34:02.22 ID:OgX8QW8y0


霞「おはよう、今日は遅いのね」


京太郎「なんだよ、また勝手に入ってたのか」

霞「だってあなた、私が作らないとちゃんと朝ご飯食べないじゃない」

京太郎「ちょっとぐらいなら食べなくっても大丈夫だって」

霞「いいから食べて。もうできてるわ」

京太郎「ああ、いい匂いすんな……」グゥ

霞「お腹は正直なのね」クスクス

京太郎「別に食べたくないわけじゃないから」

霞「じゃあ用意しちゃうわね」


253 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:36:41.59 ID:OgX8QW8y0



京太郎「ごちそうさま」

霞「おそまつさま」


霞「ねえ、今日は?」

京太郎「珍しいことに暇。たまにはごろごろしてようかな」

霞「そうね、ゆっくり休んで。家事は私がやっておくから」

京太郎「お前だって仕事あるだろ。いいよ、別に」

霞「今日はお休みなの」

京太郎「……あー、そうだったか」

霞「だから気にしなくてもいいの」

京太郎「じゃあちょっと出かけるわ」

霞「なら掃除しておくわ」

京太郎「だから、お前がそこまでする必要ないって」

霞「いいえ、だって私は――」


京太郎「ただのお隣さん、そうだろ?」

254 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:40:35.80 ID:OgX8QW8y0


京太郎「だからさ、俺のことなんて気にしなくてもいいんだよ」

霞「……どうして、そんなことを言うの?」

京太郎「もう十分だってことだよ。いつまでも引きずってないで前を向かないとな」

霞「――いやっ!」


霞「あなたの口からそんな言葉聞きたくない!」

霞「あんなことになっても私を引き留めたのにっ、傍に置いたくせに……!」

霞「突き放すなら最初から突き放してよ!」

霞「それなら、私もあなたを……」フラッ


京太郎「おい、霞っ」ガシッ

霞「あなたを……諦められたのに」

京太郎「……もういいから。寝てろよ、顔色悪いぞ」

霞「……部屋に戻るわ」ヨロヨロ

京太郎「どうせ隣に戻るだけだったらここで休んでろ。俺はなんか買ってくる」

霞「あ、待って――」


京太郎「んじゃ、おとなしくしてろよー」バタン


霞「……ただのお隣さんだったら放っておけばいいじゃない」


255 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:46:23.28 ID:OgX8QW8y0



小蒔「葉桜……」


『――っと、ギリセーフ……大丈夫か? お転婆姫さんよ』


小蒔「もう、随分前のことみたいです」

小蒔「そのころの私はまだなにも知らなくて」

小蒔「大好きな人たちと会えなくなるなんて思いもしないで……」


春「姫様、そろそろ」


小蒔「わかりました、今行きます」

春「……大丈夫?」

小蒔「春が心配するようなことはありませんよ」

春「そう……」


『関節キスは好きな人と、本当のキスは契りを結んだ殿方と』


小蒔「今なら、お母様の言葉の意味が分かる気がします」

小蒔「……本当に好きな人とは結ばれないから、なんですね」

小蒔「京太郎様、霞ちゃん……」


小蒔(小蒔は今日、夫婦となる殿方と顔を合わせます)

小蒔(……京太郎様以外の男性と)


256 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:50:47.91 ID:OgX8QW8y0



巴「姫様の様子、どうだった?」

春「いつも通りに見えた」

巴「そう……」

春「でも、平気なはずない」

巴「……どうしてこうなっちゃったんだろうね」

春「そんな決まってる。……全部、あの人のせい」

巴「はるる、それは――」

春「私は絶対許さない……許せない」

巴「……」


巴(はるるがこんなに怒るなんて……)

巴(そっか、好きだったんだもんね)

巴(私も……)

257 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:55:28.34 ID:OgX8QW8y0


初美「はいはいはーい、暇ならこっちを手伝うのですよー」


初美「ほら、はるるは向こう。明星たちがテンパってるのですよ」

春「ん、わかった」タタタ


巴「ごめんね、ちょっと姫様が心配で」

初美「それは無理もないのですよ」

巴「でも、はっちゃんは変わらないね」

初美「私まで沈んでたら、暗くてどうしようもないですからねー」

巴「……うん、そうだね」

初美「ささ、巴ちゃんは表のお掃除を手伝うのですよ」

巴「えっと、ちょっと難しいかな」

初美「まぁまぁ、サボりたい気持ちはわかりますがねー」

巴「そうじゃなくて、はるるが向こう行っちゃったから私が姫様についてないと」

初美「うげっ、じゃあ広い境内をひとりきりで掃除ですかー!?」


258 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 00:59:52.70 ID:OgX8QW8y0



京太郎「引きずってないで前を向け、ね」

京太郎「……まぁ、自分のこと棚に上げないと何も言えなくなるよな」


「あら? たしかあなた石戸さんの……」


京太郎「えーっと、どちらさまでしたっけ?」

「やだもう、忘れちゃったの!?」

京太郎「んー……」


京太郎(いや、本当にだれだっけ?)

京太郎(というかこのおばさん、なんとなくうちの母親と同じにおいがする……)

京太郎(……母さん、元気かな)


京太郎「……そうだ、たしか霞の職場の先輩でしたっけ」

「そうそう、やっと思い出してくれた?」

京太郎「すいません、ど忘れしちゃってたみたいで」


京太郎(てか、一度ちらっと顔合わせただけだよな、たしか)

259 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:09:59.31 ID:OgX8QW8y0


「霞ちゃん、無理しないようにちゃんと見ててあげてね。昨日だって大変だったんだから」

京太郎「昨日? なにかあったんですか?」

「フラフラしてたし、吐き気で食欲もなかったみたいなの」

京太郎「そんなに具合悪かったのか……」

「だからカレシのあなたがしっかり看病してあげること。いい?」

京太郎「彼氏じゃないです」

「そうなの? 時々一緒に帰ってるみたいだし、てっきり同棲してるものだと思ってた」

京太郎「昔からの知り合いで、今はただのお隣りさんですよ。親切にしてもらってますけど」

「えー? 霞ちゃんはあなたにラブだと思うんだけど」

京太郎「ははは、そんなまさか」

「さてはあなた……朴念仁で唐変木ね!」

京太郎「そんなわけ……」


京太郎(……ないわけないよなぁ)


「とにかく、霞ちゃんの気持ちにしっかり応えてあげること! それとも、カノジョさんいたりするの?」

京太郎「いない、ですね」

「じゃあなんも問題ないわね!」

260 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:17:45.04 ID:OgX8QW8y0


京太郎(あるよ、ありありだよ)

京太郎(そもそも俺は……)


『……俺は小蒔と一緒に生きていくことにした』


京太郎(一回断ったようなもんだろ)

京太郎(そんな都合よくいってたまるか)


京太郎「すいません、買い物あるんでそろそろ」

「あ、もしかして霞ちゃんのお見舞い?」

京太郎「今朝も具合悪そうにしてましたから」

「やっぱり? じゃあお大事にって伝えておいてくれる?」

京太郎「もちろん」

「それと、風邪だったら誰かに移せばって言うし……ね?」

京太郎「……」

261 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:23:23.00 ID:OgX8QW8y0


京太郎(ね? じゃねーよ)

京太郎(ホントこういう手合いは……)


「じゃあ、うちの本屋のアイドルをよろしくね」

京太郎「アイドル?」

「知らない? 霞ちゃん目当てのお客さん、結構いるんだけど」

京太郎「初耳ですね」

「うかうかしてたら取られちゃうかも……じゃあね〜」


京太郎「……ま、その方が全然いいよな、今よりは」

京太郎「あいつにとっても、俺にとっても」

京太郎「だけど……もう半年か」

京太郎「潮時ってやつなのかもな」


262 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:26:00.07 ID:OgX8QW8y0



『……俺は小蒔と一緒に生きていくことにした』


霞(わかってる。彼は小蒔ちゃんを選んだ)


『お前にだけは言っとかなきゃいけないと思ったから』


霞(やめて……そんなこと聞きたくもない)


『……さぁ、ここでサービスタイムだ。恨み言でも罵倒でも、なんだったら包丁まではギリオーケーだ』


霞(だけど、私は我慢して……)

霞(我慢して我慢して我慢して我慢して我慢して――)


『お願い、今だけだから……明日からはいつもの私に戻るから……』


霞(――取り返しのつかない間違いを一つ、犯してしまった)


263 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:29:57.46 ID:OgX8QW8y0



霞「んっ……」


霞(……寝ちゃってたのね)

霞(それにしても……)


霞「なんて、ひどい夢なの……」

霞「すごい寝汗……着替えたいわ」


京太郎「ほら、サイズ合わないだろうけど」


霞「どうしてここに……」

京太郎「自分の部屋にいるのは当然だろ」

霞「そう、だったわね」

京太郎「具合は?」

霞「平気よ」

京太郎「本当か? お前の先輩に昨日も具合悪かったって聞いたけど」

霞「……だから今日はお休みになったの」

京太郎「なるほど、休まされたのか。お前の平気、大丈夫は信用できないからな」

霞「あなたも人のことは言えないじゃない」

京太郎「自分のことは棚上げしなきゃ、なんにも言えないからな」

霞「呆れた開き直り……」

京太郎「それよりも飯とシャワー、どっちにする?」


264 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:34:50.61 ID:OgX8QW8y0



霞「ごちそうさまでした」

京太郎「おそまつさまでした」


京太郎「はは、今朝とは逆だな」

霞「ごめんなさい、あなたの手をわずらわせてしまって」

京太郎「いいって。普段世話になってるし、それに料理も久しぶりで楽しかったし」

霞「でも私は……」

京太郎「はい、ここでデザートの登場だ」

霞「あなたに対してもとても償いきれない――むぐっ」

京太郎「いいからオレンジ食え」

霞「……しゃべらせてくれてもいいじゃない」

京太郎「今日のお前は辛気臭いことばっかだしな。……それに、そもそも悪いのは俺だから」

霞「それは――むぐっ」

京太郎「はいもう一個ぉ」


265 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:40:59.42 ID:OgX8QW8y0



初美「うへぇ……やっと終わったのですよ」

初美「まったく……こーんな広いところを一人で掃除しろとか、罰ゲーム以外の何物でもないですねー」


久「やっほー、元気してた?」


初美「あれれ、お久しぶりなのですよ」

久「久しぶり。他の人たちは?」

初美「中ですね」

久「じゃあちょっと上がらせて……って、いきなりアポなしで来ちゃったけど大丈夫?」

初美「思いっきり来客予定があるのですよ」

久「あらら、我ながらバッドタイミングね……それじゃ、手短に挨拶だけにしようかな」

初美「えーっと、それは、なんといいますか……」

久「京太郎たち、いるんじゃないの?」

初美「……もういないのですよ」

久「もしかして出かけちゃった? あちゃー、本当にタイミング悪いわねぇ」

初美「……」

266 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:49:44.94 ID:OgX8QW8y0


初美「もう帰っては来ない、という意味なのですよ」


久「えーっと、浮気でもして追い出されたとか?」

初美「……」

久「え、やだ、黙らないでよ。本当にそうなの?」

初美「それは……」

久「はぁ……まぁいいや。じゃあ神代さんに聞いてくる」

初美「ダメなのですよ」

久「しょうがない……じゃあ大人しく帰って――」


久「――やるわけないでしょっ」ダッ


初美「あっ、待つのですよ!」

久「そう言われて待つ奴なんているわけないでしょ!」

初美「たしかに!」


267 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:52:48.68 ID:OgX8QW8y0



『ごめん、俺にはもうここにいる資格がないんだよ』

『それでもっ、私は京太郎様と……!』

『……ホントごめんな、小蒔』


小蒔(あの時、無理にでもついていけたら)

小蒔(お母様の言いつけを破ってでも、外に出ていっていれば)

小蒔(私は、今も京太郎様と……)


『霞ちゃん……』

『みんなのこと、お願いね』

『……はい』


小蒔(一人で背負いこんでいることには気づいていたはずなのに)

小蒔(聞きたいことがあったはずなのに)

小蒔(それとずっと向き合わないまま、私は……)


268 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 01:56:40.81 ID:OgX8QW8y0



『こらー! 観念するのですよっ』

『あーもう、しつっこいわねぇ!』


巴「あれ? はっちゃんと……だれ?」

小蒔「だれか、来客でしょうか?」

巴「なんだか聞き覚えのある声のような」


久「お邪魔します!」


巴「た、竹井さん!?」

久「京太郎、どこ行った――うわっ」

初美「やーっと捕まえたのですよ!」

久「ちょっと、放してよ……!」

初美「放せと言われて放す奴はいないのですよ!」

久「さっきの意趣返しかっ」

初美「その通り!」

269 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:01:48.61 ID:OgX8QW8y0


巴「えっと、何事なのかな?」

初美「不法侵入なのですよ!」

久「そっちがはっきりしたこと教えないからでしょ!」


久「一体京太郎に何があったっていうのよ!」


巴「えっと、それは……」

久「ほら、口つぐむ」

初美「とにかく、今日はお客さんが来るからもう帰るのですよっ」


小蒔「二人とも、下がってください」


巴「……わかりました」

初美「むぅ、姫様がそういうなら」


270 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:07:24.94 ID:OgX8QW8y0



久「それで、なにがあったの?」

小蒔「あの二人……京太郎様と霞ちゃんは、問題を起こして追放された……それだけです」

久「問題って?」

小蒔「お答えできません」

久「あのバカが石戸さんと浮気したとか?」

小蒔「お答えできません」

久「……しばらく会わないうちにすっかり他人行儀ね」

小蒔「……今までがおかしかったんだと思います」


小蒔「あの夏の日に、あなたたちを迎え入れなければ」

小蒔「私は恋も嫉妬も……なにも知らないままでいられた」


小蒔「……お引き取りください。もう話すことはありません」

久「そうね……だけど一個だけ言わせて」


久「悲劇のヒロイン気取り?」

久「自分からはなにもしようとしないで被害者面?」

久「要するに諦めたんでしょ。あいつのことも石戸さんのことも」

久「アホらしい……こんな女に取られたなんてね」


久「それじゃ、さようなら。なんにもできないかわいそうなお姫様」

小蒔「帰って! 帰ってください!」

久「言われなくても!」


271 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:10:17.56 ID:OgX8QW8y0



久「あーもう、むしゃくしゃする……!」

久「信じて送り出した幼馴染が行方不明って? しかも破局してるし!」

久「こんなことならもっと……」


初美「ちょっと待つのですよー」


久「なに、お礼参り?」

初美「どこの不良ですか」

久「違うの?」

初美「ちょっと姫様のフォローをと」

久「……まあ、こっちも多少八つ当たりは混じってたけどね」

初美「やっぱり。フラれた女の未練は――いひゃいいひゃい!」

久「喧嘩なら買うわよ?」ギリギリ


272 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:16:35.30 ID:OgX8QW8y0



霞「……」ムスッ

京太郎「まだ怒ってるのかよ……悪かったよ。たしかにあのオレンジはちょっと酸っぱかった」

霞「……オレンジはおいしかったわ」

京太郎「じゃあなに、問答無用で口に突っ込んだことか?」

霞「……」

京太郎「やっぱそれかぁ。無理やりはよくないよな、うん」


霞(違う、そうじゃない)

霞(私が何よりも許せないのは、自分)


『自分のしたことの意味、わかっていますね?』

『……はい。どのような罰も甘んじて受け入れます』

『ならば、ここを去りなさい。それがあなたに与える罰です』

『わかり、ました』


霞(現状に、幸せを感じてしまっている自分が許せない)

霞(私のせいでなにもかも壊れてしまったのに)

霞(それなのに、どうしてこの人は……)

273 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:19:33.85 ID:OgX8QW8y0


霞「どうして、あの時私を引き留めたの? 私なんてほうっておけばよかったのに」

京太郎「あのなぁ、あんな糸の切れた凧みたいなやつ、放っておけるわけないだろ」

霞「……そうね、あなたはそんな理由で無茶をする人だったわね」

京太郎「……あとはさ、居場所がほしかったんだよ」


京太郎「あそこにいられなくなって、今更帰るわけにもいかなくてさ」

京太郎「じゃあ俺はどこに行ったらいいんだろうって」

京太郎「そしたらお前が隣にいて……よし、こいつのために頑張ってみようって」

京太郎「……いや、結局は自分のためだな」


霞「自分のため……」

京太郎「ああ、思えば強引につき合わせちゃってたよな」

霞「それで、あんな倒れるまで無理して働いて……」

京太郎「……二部屋分の家賃はさすがに失敗したと思ってるよ」

霞「同じ部屋でも構わなかったわ」

京太郎「それでも線引きはいるだろ、やっぱり」

霞「今は、必要?」

京太郎「……霞」

274 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:23:40.57 ID:OgX8QW8y0


『それでもっ、私は京太郎様と……!』


京太郎「悪い、まだ……」

霞「……でも、あなたは私を傍に置いた」

京太郎「ああ」

霞「私を、必要としてくれたのよね?」

京太郎「そうだよ」

霞「そう……」


霞「今日は帰るわ……また明日」


275 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:27:48.98 ID:OgX8QW8y0



『あなたは、あの子の傍にいる資格を失った』

『……』

『その意味はわかりますね?』

『……はい』

『それならば、早いうちに去ることです。……これ以上辛くなる前に』

『お世話に、なりました……』

『……結局、こうなってしまうのですね』


京太郎「……俺は、もうあそこには戻れない」

京太郎「小蒔と一緒にいる資格も、ない」

京太郎「ここが俺の今の居場所」

京太郎「そしてここにはあいつが、霞がいる」

京太郎「それなら、このままあいつと……」


『私も……愛しています、京太郎様』


京太郎「――っ」ダンッ

京太郎「どんだけ未練ったらしいんだ、俺はっ……!」


276 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:30:44.84 ID:OgX8QW8y0



『そしたらお前が隣にいて……よし、こいつのために頑張ってみようって』


霞(……もし、許されるならこのまま)

霞(過去を全部捨てて、彼と一緒にいられるなら……)


――ピンポーン


霞(来客? こんな朝早くに)

霞(彼は仕事に行ったし……)


『あれ、こっちも留守?』


霞(この、声は……)


277 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:33:28.16 ID:OgX8QW8y0



久「えーっと、ここかな?」

久「……うん、住所も建物の名前もあってる」

久「201は……あった」ピンポーン


久「……出ない」

久「まぁ、働いてるならしょうがないか」

久「じゃあ次は隣ね」ピンポーン


久「あれ、こっちも留守?」

久「まいったわねぇ……」

久「んー、場所はわかったし、また夕方にでも――」


霞「やっぱり、竹井さん」

278 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:36:24.74 ID:OgX8QW8y0


久「あら、いたんだ」

霞「どうしてここが……」

久「まぁ、色々伝手があって、調べてもらったの」

霞「……何の用?」

久「元気にしてるかの確認。神境では色々とあったみたいだし」

霞「そう……小蒔ちゃんたちに会ったのね」

久「色々とわけわからなくてさ、みんな口つぐんじゃうし」

霞「無理もないわ。……いい思い出とはとても言えないもの」

久「それで、当事者のあなたならどうかなって」

霞「悪趣味ね」

久「だってそれであいつが苦しんでるんだったら、なんとかしたいし」

霞「……そう、彼のために」

久「あ、本人には言わないでよ。恥ずかしいから」

霞「わかっているわ」

久「それで、話す気ある?」

霞「……」


279 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/01/24(水) 02:43:03.22 ID:OgX8QW8y0



久「……大体わかったわ。それでここに来たわけ」

霞「ええ……神境を出た後は、彼がこの部屋を見つけてくれて……私の分の家賃まで賄って」

久「はぁ? そんな無茶してたの?」

霞「一度、倒れたわ」

久「あのバカ……」

霞「……彼は悪くないわ。私が精神的にまいっていたせいよ」

久「それなら意地張らないで、一部屋だけにしちゃえばよかったじゃない」

霞「線引き、なんだって」

久「はぁ……そういう関係じゃないからってことでしょ」

霞「……ええ」

久「ありがと……それとごめんなさい」

霞「悪かったのは私よ。あなたが気にすることはないわ」

久「それでも、辛くなかったわけじゃないでしょ?」

霞「……どうかしら」

久「思うに、それが一番悪いのよ。我慢しすぎ」

霞「初美ちゃんにも、同じことを言われたわ」

久「じゃあ2対1ね」


久「それじゃ、そろそろお暇するわ」


霞「これからどうするの?」

久「あいつの顔見てから決める」


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