【ガルパン】西「四号対空戦車?」 後期型

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100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/22(日) 18:34:48.62 ID:2BqPjJ2SO
ハッキョーセッ☆
101 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/22(日) 18:34:48.74 ID:LpreklqI0


オレンジペコ「はい………!」

ヴェニフーキ「ペコ?」

オレンジペコ「………」

OG「感謝するわオレンジペコ。あなたのお陰でまた一人、不良生徒を見つけることが出来た」

ヴェニフーキ「…」

OG「私、見てしまったわ。自室に後輩を呼び出して淫らな行為をするあなたを」

ヴェニフーキ「…」

OG「オレンジペコ、彼女に何をされたの?」

オレンジペコ「………押さえ付けられて…そのまま………服を………」

ヴェニフーキ「………」

OG「そう。可哀想に…。もういいわよ。彼女には素行不良として本日付けで学園を去ってもらうから、あなたは心配しなくても良いのよ?」

オレンジペコ「………はい………安心です………」

ヴェニフーキ「………」

102 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/22(日) 18:37:07.32 ID:LpreklqI0


OG「そういうことだから。出ていってもらうわ」

ヴェニフーキ「…嫌だと言ったら?」

OG「嫌とは言わせないわよ?」

ヴェニフーキ「生憎、今は起き上がる気力すらありませんので」

OG「その点なら心配ないわ」

ヴェニフーキ「?」

ザッ....

黒服「…」

ヴェニフーキ「力づく…と?」

OG「手荒な真似はしたくないけれど、あなたがどうしてもと言うのであれば…ねぇ?」

ヴェニフーキ「………わかりました」

OG「話が早くて助かるわ。なら速やかに

ヴェニフーキ「ただ…」

OG「なに?」

103 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/22(日) 18:40:57.00 ID:LpreklqI0


ヴェニフーキ「先日、アッサム様に私物を没収されてしまったので、それを回収したいです」

OG「私物?」

ヴェニフーキ「パソコンや携帯電話を使う関係で、コンセントが1つでは足りず、増設するために買ったものです」

OG「あら? この部屋にはパソコンなんて無いわよ?」

ヴェニフーキ「"夜更かしをするな"という理由でアッサム様に没収されました。もっともパソコンは学校支給なので問題ありませんが」

OG「良いわ。それはどこにあるのかしら?」

ヴェニフーキ「隊長室です」

OG「なら隊長室に案内してくれるかしら。部外者さん」

ヴェニフーキ「…」



こんなヤツのために体を動かすのは面倒くさい。

だけど、ここで動かないと、もうこのクズを捕らえられない。

幸か不幸か、少しずつ薬が切れてきている。

104 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/22(日) 18:45:31.70 ID:LpreklqI0

【聖グロ 隊長室】



ヴェニフーキ「…」

OG「見つかったかしら?」

ヴェニフーキ「いえ。アッサム様は用心深いので、すぐ見つかるような場所には置かないはずです」

OG「関係ないわ。さっさと探しなさい」

ヴェニフーキ「…」チラッ

OG「聞いているの?」



反・聖グロ派の女は露骨に苛立ちを見せる。

早くしないと後ろにいる無駄にがっしりした体格の取り巻きたちにつまみ出されそうだ。

かといって、さっさと回収して撤収というわけにもいかない…。



ヴェニフーキ「失礼。時計があったのでその近くにあると思ったのですが…ん?」

OG「何かしら?」










ヴェニフーキ「この時計、日付が12月8日のまま止まっていますね」








105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/22(日) 23:37:13.67 ID:X3GvB3vzo
お前まだこれ続けるのか……
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/22(日) 23:49:09.67 ID:dWgcrR5uO
待ってたんだ続けてくれ
107 : ◆UYlhnKrxEE [saga]:2017/10/23(月) 00:01:21.25 ID:aelQPEwX0
待ってた!
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 01:52:20.92 ID:tp6vXCjQ0
よかった、結末気になってたんだよ。
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/25(水) 11:46:31.84 ID:UNsrq7Z+0

かなり話が進んでてなにより
桜花のときもそうだけど、赤文字は本当にびっくりするw

110 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 10:47:31.24 ID:9R9XbWYA0


OG「それは困ったわねぇ? ……」チラッ

オレンジペコ「ぅ!」ビクッ

ヴェニフーキ「…」

オレンジペコ「…私が…時計…なおします……」

ヴェニフーキ「申し訳ない」

オレンジペコ「………あれ…?」

OG「どうしたのかしら? オレンジペコ」

オレンジペコ「あの…時計、別に壊れて

ヴェニフーキ「珍しいですね」


OG「は?」

ヴェニフーキ「山が見えますね。…今まで洋上にいたので、見るのは久々です」

オレンジペコ「はい…?」

ヴェニフーキ「結構高い山ですね。玉山でしょうか?」

オレンジペコ「あの…玉山って台湾の山では…?」

ヴェニフーキ「そうでしたっけ。何にせよ一度、登ってみたいですね」

オレンジペコ「はぁ…」


OG「私は早くしろと言ったけど?」


オレンジペコ「ひっ!! ご、ごめんなさい! ごめんなさい!!!!」

ヴェニフーキ「失礼」



OGの女は誰が見てもわかるほど苛立っている。

聖グロの卒業生とは思えない短気で下品な奴だ。

111 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 10:49:00.82 ID:9R9XbWYA0


ヴェニフーキ「…っと、見つかりました」


OG「鈍いわね。探しもの一つにどれだけ時間かけるのかしら」

OG「それに、コンセントのタップなんて幾らでも手に入るものよ」

ヴェニフーキ「すみません。これが一番使いやすかったので」

OG「あっそ」

ヴェニフーキ「…ああ。一つ、質問よろしいですか?」

OG「自分の立場をわきまえているのかしら?」

オレンジペコ「べ、ヴェニフーキ様…」



怯えた目でペコがこちらを伺っている。"あまり刺激を与えないで…"って。

確かに一つ判断を誤れば私じゃなくてペコとペコ家庭が終わってしまう。

かといって、ここでこの女を野放しにするわけにも行くまい…。

112 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 10:50:23.97 ID:9R9XbWYA0

ヴェニフーキ「申し訳ありません。OGの方と話す機会が今まで無かったもので…。あなたも、戦車道を?」

OG「それが何か?」

ヴェニフーキ「実を言うと、ブラックプリンスに続き、新しい戦車の導入を考えていました」

OG「そう」

ヴェニフーキ「…先日、黒森峰という優勝常連校と練習試合をしまして、そこで黒森峰が使っていた強力な戦車…」

ヴェニフーキ「ティーガーI、キングタイガー、ヤークトティーガーといったあたりを」

OG「随分我が校風とはかけ離れたものを選ぶのねぇ?」

ヴェニフーキ「ええ。様式ばかりに拘っていても勝てなければ意味が無いので」

OG「…ほう?」

オレンジペコ「…」

ヴェニフーキ「私は転校してまだ間もないですが、聖グロリアーナの校風には色々不満がありまして」

ヴェニフーキ「古い仕来りに拘るような思考停止ならば、いっそ廃校になれば良いとすら思ったほどです」

オレンジペコ「………」

113 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 10:52:16.01 ID:9R9XbWYA0

OG「あらあら。なかなか面白いことを言うのね? 退学させるには勿体無い」

ヴェニフーキ「ええ、残念です。折角




OG「…とでも言うと思った?」




オレンジペコ「えっ…?」

ヴェニフーキ「…」

OG「あんたのソレがお芝居だなんて最初からお見通しよ?」

オレンジペコ「ぁ………」

OG「私に媚でもすれば退学を免れるなんて、甘いわねぇ」

ヴェニフーキ「ぐっ…」

OG「それに、…残念ね。オレンジペコ?」

オレンジペコ「えっ…!!」

OG「あなたは裏切らないって思っていたけど、その小娘に何か吹き込まれたみたいね?」

オレンジペコ「…ゎ…私は………!」



ギロリと睨みつけてきた。

人間こんなに醜い顔をすることが出来るのかというくらいに。

…まずい。



OG「あなたが私を裏切るのなら、仕方ないわよね?」

オレンジペコ「…ぃゃぁ………!」

ヴェニフーキ「…」



くそ………

ここまでか……………。


114 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 10:52:56.95 ID:9R9XbWYA0











「ええ。本当に仕方ないわね」










115 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 10:54:48.11 ID:9R9XbWYA0

ヴェニフーキ「!」

OG「誰だっ!!」

「良からぬことを企んでるだろうとは思っていたけれど、邪道は他にもいるみたいね?」

OG「その制服………」

「アンタに自己紹介なんてしないわよ。邪道の知り合いなんて私には不要」

OG「あらあら…他校の生徒は随分と礼儀を知らないものねぇ?」

「それはお互い様よ。あえて言っておくなら…」


「すごい数ね?」


OG「なに…?」



OG「なっ!!?」



どうしたんだろう?

先程まで余裕かましてたOGの表情が一変したぞ…?

116 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 10:59:34.56 ID:9R9XbWYA0


オレンジペコ「!! 港がパトカーだらけです…!」

ヴェニフーキ「!」

オレンジペコ「こ、こっちにも船がたくさん来ています!」

「誰かが通報したのでしょうね。…まぁ、簡単に逃げられるとは思わないことね?」

OG「ぐっ…」



サイレンが近づく音が聞こえる。

そうか。アールグレイさん、やってくれたんだね。

だけど…



OG「ふふ…」

「何がおかしいのかしら?」

OG「これで終わりじゃないわよ」

「そう。あなたはもうオシマイでしょうけどね」


「警察だ! 動くな!!」


OG「覚えていなさい。こんな学校、必ず潰してやる………!」



そう言い残して、女とその取り巻きは駆けつけた警官に連行された。

反・聖グロ派との会敵からその終焉まで、本当に呆気ないほど早く終わってしまった。

にしてもあの反・聖グロの女は何ゆえあそこまで聖グロを目の敵にしていたのだろうか…。



そして…

117 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:02:53.28 ID:9R9XbWYA0



「"なんでお前がここに?" って顔してるわね?」



ヴェニフーキ「ええ。全く見当違いな人がいらっしゃったので」



てっきり、アールグレイさんか聖グロの誰かが来たものだと思っていた。

しかし、実際にここにいるのは、そのどちらでもなく、逸見エリカという、全く無関係な人。

彼女は何故ここに来た?

何故このやり取りを知ってたかのようにここへ来た!?



エリカ「…ふん」

ヴェニフーキ「それで、何故こちらに?」

エリカ「…"みほ"よ」

ヴェニフーキ「西住さん…?」

エリカ「ええ」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『もしもし…?』

「…私よ。みほ」

『エリカさん…?』

「あなた、聖グロリアーナ女学院にお呼ばれされたそうね?」

『えっ? う、うん。大会の優勝をお祝いしてくれるからって…』

「…フン」

『…でも、どうしてエリカさんがそのことを?』

「聖グロのWebサイトを見たら誰だってわかるわよ」

『そっか…』


118 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:04:26.18 ID:9R9XbWYA0


「そんなことより、あなたに頼みたいことがあるの。聞いてくれるわよね?」

『え、えっ? 頼みたいこと?』

「ええ」



「ヴェニフーキとかいう女、徹底的に監視して頂戴」



『えっ、ヴェニフーキさんを?!』

「あの女がどういうヤツかは、あなたもよく知ってるでしょう?」

『そ、そうだけど…!』

「アイツは何をやらかすかわからない。だから、あの女が少しでも不審な行動を取ったら即座に私に連絡して」

『え、ええ…?!』

「聞こえた?」

『わ、わかった…!』

「それと、この事は誰にも口外はしないこと。大洗はもちろん、聖グロの連中にも」

『う、うん…』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



119 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:06:23.14 ID:9R9XbWYA0


ヴェニフーキ「…」

エリカ「アンタのただならぬ雰囲気から、"訳アリ"なんてのは誰でもわかる」

エリカ「だから、粗相を起こす前にとっちめてやろうってね」

エリカ「偶然にも大洗が聖グロに行くから、みほの手を借りたわけ」

ヴェニフーキ「私をとっちめるられるんですか? ポンコツのあなたに」

エリカ「お黙りなさい。…まあ、テロや殺人でもするのかと思ったけど、違うみたいだからそれは安心したわ」

ヴェニフーキ「…」


こっちは薬打たれるまで反・聖グロに対する怒りで頭が壊れそうだったんですけどね。

それこそ学園艦の一つや二つ爆破出来るんじゃなかろうかってぐらい怒り爆発ですよ。

ああ、また薬が切れて苛々してきた…。

120 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:08:35.13 ID:9R9XbWYA0


エリカ「…それで?」


ヴェニフーキ「は?」ギロッ

エリカ「わ、私にまで牙を向けないでよ」

ヴェニフーキ「失敬。今は気が立ってるので誰かれ構わず喉笛を噛み千切ってしまうかもしれません」

エリカ「相変わらず物騒ね。…で、アンタは一体なんの為に、どういう理由でここに来たの?」

ヴェニフーキ「また同じことを言わせるんですか?」

エリカ「何度でも言ってやるわよ」

ヴェニフーキ「私が


プルルルル プルルルル


エリカ「チッ…」

ヴェニフーキ「…」ピッ

121 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:10:16.04 ID:9R9XbWYA0


アールグレイ『御機嫌よう。ヴェニフーキ』

ヴェニフーキ「…御機嫌よう。部屋は綺麗にしてあります」

アールグレイ『結構。こちらも先ほど、"秋の歌"を聞いて"柱をかじる鼠"の捕獲が無事終了したわ』

ヴェニフーキ「了解です」



この部屋でのやり取りは隊長室に仕掛けた盗聴器によってアールグレイさんも聞いている。

どうやら、"裏切り者"は無事に引き渡されたようで一安心だ。

…で、ここでの電話は"柱をかじる鼠の捕獲"だけでなく、部外者…逸見さんに内情を知られるなって事だろう。

言われなくても教えてやらんから心配しなさるな。

122 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:13:28.35 ID:9R9XbWYA0


アールグレイ『ご名答よ。これはあなたと私だけの秘密』

ヴェニフーキ「心得ております」

アールグレイ『なら話が早いわ。恩人を見送るついでに、港へ来て下さるかしら?』

ヴェニフーキ「港に?」

アールグレイ『ええ。あなたも疲れているでしょうし、ダージリンも会いたがってるわよ』

ヴェニフーキ「そちらにいらっしゃるのですか?」

アールグレイ『いいえ? そろそろ帰宅している頃かしら?』

ヴェニフーキ「…」

アールグレイ『それでは、後でお会いしましょう』


ヴェニフーキ「…」

エリカ「部外者は口出すなって?」

ヴェニフーキ「ええ。当事者だけの話ですから、何人たりとも教える訳にはいきません」

エリカ「……そう。仕方ないわね」



何ゆえ逸見さんが私の事を知りたがるのか知らないが、これは他人に教えられるようなことじゃないし、教えたところで面白いような話でもない。

無関係な人を"当事者"にして面倒事に巻き込んでしまうだけだ。

そうなるくらいなら冷たくあしらって遠ざけた方がずっと良い。

123 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:14:49.21 ID:9R9XbWYA0


エリカ「…さて、それじゃ私はお暇しようかしらね」

ヴェニフーキ「ん?」

エリカ「やることが終わった以上、ここに長居する理由は無いでしょう?」

ヴェニフーキ「何でしたら大洗の祝賀会にゲスト参加されてはいかがです? まだやっているでしょうから」

エリカ「…私達をコテンパンにした相手を祝うパーティーに参加しろと?」

ヴェニフーキ「美味しい料理が沢山ありますよ? ジェリードイールとか」

エリカ「ジェリードイール?」

ヴェニフーキ「ウナギのゼリー寄せとも呼ぶそうです。トロッとしたゼリーと魚の風味が別格ですので、あなたにピッタリですよ」

エリカ「そう。気が向いたら頂こうかしら」

ヴェニフーキ「なるべくお早目に」

エリカ「…まぁそんなことより、出口まで案内しなさい」

ヴェニフーキ「カナヅチだけでなく方向音痴なんですか?」

エリカ「うるさいわよ」

124 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:18:00.43 ID:9R9XbWYA0

オレンジペコ「あ、あの…」

ヴェニフーキ「ん?」

エリカ「アンタまだいたの?」

オレンジペコ「ずっといましたよ…」

ヴェニフーキ「申し訳ありません。コレに気を取られて存在を忘れてました」

オレンジペコ「むぅ。ひどいです」

エリカ「コレって何よ失礼ねっ!」

ヴェニフーキ「隊長室にいても怪しまれるでしょうし、一旦会場に戻っては?」

オレンジペコ「そうですね。き…ヴェニフーキ様はどうされるんですか?」


ヴェニフーキ「彼女をつまみ出します」


オレンジペコ「つまみ出す……」

エリカ「あんたホントに失礼ねっ!」ガァァ!!

ヴェニフーキ「はいはい。行きますよ」シレッ

エリカ「ち、ちょっと! 襟を引っ張るなッ!」

オレンジペコ「あはは…。」



そんなわけで逸見さんを港まで送り届けることにした。


突っ慳貪な態度をとってはいるけど、あの時助けに来てくれたことは嬉しかったし、感謝もしてる。

だからもう少し逸見さんには友好的に接した方が良いのかもしれないな。

…と思ったけど、それを本人に言うとつけ上がりそうだからやめておく。

125 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:19:57.78 ID:9R9XbWYA0

【学園艦 甲板】


エリカ「それで?」

ヴェニフーキ「はい?」


エリカ「アンタはいつまでそのヴェニフーキってヤツを演じてるのよ?」


ヴェニフーキ「何の事でしょう?」

エリカ「アンタの正体は前にわかったでしょう…」

ヴェニフーキ「…どうやら、針と糸が必要みたいで」

エリカ「物騒なこと言わないで頂戴」

ヴェニフーキ「"私"がバレたら困ると前にも言ったはずですが?」

エリカ「そんなこと言ったかしら?」シレッ

ヴェニフーキ「針と糸はいらないか。このまま海に落とせば勝手に沈むでしょうし」ガシッ

エリカ「ちょ、ちょっと! は、離しなさいっ!!」

ヴェニフーキ「やれやれ」パッ

エリカ「…まったく。…この周辺には誰もいないから安心しなさい」

ヴェニフーキ「…」

エリカ「…」


西/ヴェニフーキ「こちらが全くと言いたいですね」

エリカ「…言い出しっぺが言うのも何だけど、本当にガラッと雰囲気変わるわね」

西「雰囲気だけですよ。姿は何ら変わっておりませんので」

エリカ「これで姿まで変わるものなら戦車道より魔術道でも目指した方が良いわよアンタ…」


126 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:21:44.08 ID:9R9XbWYA0


西「逆にお尋ね申しますが、何ゆえ私のことを執拗に知りたがるんです? 性癖ですか? うわ…」

エリカ「うっさいわねぇ! 何が性癖よ!!」

西「ここまで執拗ですと"そういうの"を疑うのは無理もないかと思いますが?」ヒキッ...

エリカ「うるさいわよ…。あの突撃バカが豹変して聖グロをコテンパンにして、更にはみほにまで白旗を揚げさせた」

西「私は大洗に破れましたけど?」

エリカ「知ってるわよ。けれども、みほの戦車を撃破したのは確かだし、あれは誰が見ても大戦果よ」

西「…」

エリカ「何がどうなればそれ程までに至るのかしらってね」

西「それも前に申し上げた通りですけどね」



― 何がアンタをそこまで強くさせたの?

― まほさんやみほさんと同じ。

― 隊長やみほと?

― 戦わないといけない理由があった。勝たないといけない理由があった。 それだけ。


127 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:23:14.54 ID:9R9XbWYA0


エリカ「"勝たないといけない理由" ねぇ…」

西「尤も、それは私がここに来る以前の話なので、私が今こうしてる理由とは何ら関係ありませんけど」

エリカ「ええ。…それとは別にもう一つ、」

西「ん」

エリカ「…"借り"。ちゃんと返したからね?」

西「………借り?」


エリカ「…ありがと」


西「はい?」

エリカ「…二度は言わないわよ」

西「すみません。よく聞き取れなかったのであります」

エリカ「………ありがと、って言ったのよ」

西「どう致しまして?」

エリカ「なんで疑問形なのよ…」

西「憎まれることはあれど、お礼を言われる事など何一つしておりませんので」

128 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:25:58.42 ID:9R9XbWYA0


エリカ「…一応だけど、あの時アンタは私を助けてくれた」

西「あの時?」

エリカ「あの練習試合よ」

西「はぁ。確かに溺れてるところを助けはしましたね。あのまま死んで貰っても寝覚めが悪いので」

エリカ「…それもだけど、その後よ」

西「何かありましたっけ?」

エリカ「とぼけるのも大概になさい。あの時アンタは…」

西「心得ておりますよ」

エリカ「…」

西「あんな事を言った手前、凋落の運命を辿る人を見過ごすも如何かと思っただけで」

エリカ「そう…」

西「後で闇討ちでもされかねないでしょうから」

エリカ「…そうかもしれないわね。容赦なくアンタの顔面に刃物を突き立てたかもよ? 墓石のように」

西「顔より胸ぐらの方が突き刺さりやすいですよ?」

エリカ「…真顔で物騒なこと言わないでよ」



あの時、私は逸見さんを丸裸にした。

…いや、すっぽんぽんにしたという意味ではなく、彼女の硬い殻の中にある本心を引きずり出した。…同時に私も"本当の姿"を見られてしまったけど。

人を見下す態度も、厭味ったらしい言動も、全ては敬愛する西住まほさんを引き止めるためだった。

大切な人を失わないために、どんな手段を使ってでも繋ぎ止めようとする。逸見さんなりの。


それは私だって同じ。ダージリンを守るために私は私を捨てて、何もかも偽って今ここにいるから…。

129 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:33:55.45 ID:9R9XbWYA0

西「それにしても」

エリカ「ん?」

西「随分と早かったですね。あの場に駆け付けるまで」

エリカ「…ああ。元々学園艦はそう遠くない場所に浮いていたからコレで行けばすぐよ」

西「"コレ"…?」

エリカ「ヘリコプター」

西「…他校の無人機と比べると随分貧相ですな」

エリカ「これは移動用。試合で使うヤツは別にあるわ」

西「ふむ」



逸見さん曰く、ヘリコプター(Fa233と呼ぶらしい)で飛んできたそうだ。

確かに自走砲ならぬ自走"島"こと学園艦の性質上、何処かしらへ行くにはこの手の航空機が便利だろう。

知波単でも導入しようかな? この間試合で使った無人機…一式陸攻を改造すれば人くらいは運べそうだ。

130 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:34:59.74 ID:9R9XbWYA0


エリカ「それじゃ、そろそろ行くわ」

西「お世話になりました」

エリカ「…次の大会、簡単に負けるんじゃないわよ?」

西「ん…」

エリカ「アンタは私が倒す相手よ。忘れないことね」

西「逸見さんも努々西住さんのお尻ばかり追いかけて警察のお世話になりませぬよう」

エリカ「なるわけないでしょーがっ!!」

西「どうだか」シレッ

エリカ「…全く。口だけは達者ねアンタは」

西「お互い様」

エリカ「まぁいいわ。…そうそう」

131 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:38:34.14 ID:9R9XbWYA0

西「ん?」

エリカ「ここに来る途中、プラウダの学園艦を見つけたわよ」

西「プラウダ?」

エリカ「ええ。特にどこかに行く様子も無かったから、恐らく年始に向けてメンテナンス中でしょうけど」

西「もう12月ですし、年始に向けて点検やら郷里に帰る生徒やらの為に停泊しているのでしょうな」

エリカ「そうね。…無人機もだけど、学園艦というのも面倒な代物よねぇ」

西「確かに。泳げないと大変です」

エリカ「余計なお世話よ。…まぁ、アンタもあまり変なことには首を突っ込まないほうが身のためよ? それじゃ」

西「ええ。良いお年を」


ブロロロロロロ........



そう言って逸見さんはヘリコプターに乗って行ってしまった。

…"借りは返した" かぁ…。

私のやった事はお節介だったけど、彼女にとっては転機にでもなったんだろうか。

まぁ、野良犬よろしく誰かれ構わず吠えたりするよりかは良くなった。初めて対面した時は引っ叩いたろかコイツと思ったくらいだったもんなぁ。

そんな事を考えながら、だんだん小さくなっていくヘリコプターを眺める。

西住さん達が乗る対空戦車であのヘリ撃墜したら逸見さんどんな反応するかな? …と、しょうもないことを思い浮かべながら。



………ん?

よく考えてみれば駆け付けたは良いが、あの場にはOGの女だけでなく、それを警護する殿方も複数いた。

警察が来なかったらあんたどーするつもりだったんだ?

警察を出動させたのはアールグレイさんだし、ドヤ顔でやって来て一言二言会話しただけだよな………?


………。


なぁにが "借りは返した(キリッ" だ馬鹿もんがッ!!

今度会ったら覚えておけ! 本当に土佐衛門にしてやるからなァ!!!

132 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:41:05.22 ID:9R9XbWYA0


【港】


「御機嫌よう。身なりは綺麗かしら?」


西「っ!」

アールグレイ「…役目を終えて気が抜けたのかしら?」

西「何も背後から現れることは無いでしょうに。吃驚したのであります」

アールグレイ「はいはい。続きは車の中でしましょう」

西「…かしこまりでございます」




〜〜〜〜


133 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:42:45.08 ID:9R9XbWYA0


アールグレイ「本当に、お疲れ様ね。絹代さん」

西「本当に、疲れましたよ…」

アールグレイ「でも、そのお陰で裏切り者を拘束できた。…なかなかやるわね。見直したわ」

西「偶然ですよ。たまたま向こうからやってきて、たまたま捕まってくれた」

アールグレイ「違うわ。隊長室でのやり取り」

西「…ああ、アレですか」


アールグレイ「12月8日は真珠湾攻撃の日」

アールグレイ「玉山は当時の新高山。つまり"ニイタカヤマノボレ"ね」

アールグレイ「そして最後の戦車のは」

西「"トラトラトラ"ですね。ここまで言えばアールグレイさんでもわかるかなと」

アールグレイ「失礼ね。最初のでわかったわよ」

西「あの時、自室にOGがいらっしゃったので、盗聴器のある隊長室までお連れして」

西「そこで上手いことやり取りすれば何かしら得られるかと思った次第です」


アールグレイ「そして実際に"獲物"を得られたと」

西「仰る通りでございます」

アールグレイ「ふふ。面白かったわよ。なんだかスパイ映画を観ている気分で」

西「観てる人は気が楽で良いですね。私なんか実際にスパイを…」

アールグレイ「冗談よ。拗ねないで」

134 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 11:45:00.37 ID:9R9XbWYA0


アールグレイ「ところで、あれから体調を崩したりはしなかった?」


西「…ええ。ちょっと発狂したぐらいですかね」

アールグレイ「えっ…?」

西「内通者が誰かわかった時に、その子の加担する理由を聞いて」

アールグレイ「…詳しく聞かせてくれるかしら」



アールグレイさんにあれからのことを話した。

内通者の正体がペコだったこと。

そのペコは反・聖グロ派によって強制的に聖グロ弱体化工作の片棒を担がされていたこと。

私が発狂し、また暴れ回ってまた精神安定剤を打たれたこと。


………思い出すだけでまた、腸が煮えくり返りそうだ。



西「…といったところです」

アールグレイ「………」

西「思い出すだけでも発狂しそうですね」


135 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:01:35.84 ID:9R9XbWYA0

アールグレイ「…もう大丈夫よ。裏切り者は駆除したから」

西「そうですね…。やっと私の役目が終わります………」ノビー

アールグレイ「本当に、ありがとう」

西「どういたしまして」

アールグレイ「あとは私が全部やっておくから、あなたはゆっくり休んで頂戴」

西「かしこまりでございます」



こうして、私の"ヴェニフーキ"としての聖グロのスパイ大作戦は無事に幕を閉じた。

長いようで短い聖グロでの学園生活は私に色んなことを教えてくれた。

だけど、全てが解決して、ダージリンが聖グロに帰って、皆が今まで通り生活を送るだろうし

私もまた知波単学園で戦車道を存分に満喫できるだろう。


久々に太陽が眩しく…



アールグレイ「太陽どころか雪降ってるじゃない」

西「…ものの喩えですよ。それより滑って事故起こさないで下さいよ?」

アールグレイ「はいはい」

136 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:03:26.06 ID:9R9XbWYA0


アールグレイ「それより、どうだった?」

西「ん? 何がです?」

アールグレイ「聖グロリアーナでの生活は?」

西「そうですね…。知波単には無いものが沢山ありましたので、良い勉強になりました」

アールグレイ「ふふ。それは良かった」


西「ただ、ジェリードイールとやらはもう二度と食べたくないですけどね」


アールグレイ「げっ、あなたも食べたのね、アレ…」

西「ええ。聖グロに来て辛かったことの五本指に入る出来事でしたよ…」

アールグレイ「5本指?」

西「急な交流試合で朝早く起きなければならなかったことや、GI6の面々に監視されたことやら」

アールグレイ「確かにそれは大変だったわね」

西「全くです」

アールグレイ「アッサムやGI6の皆にはお小言を言っておくべきかしらね」フフッ

西「水責めの刑でお願いします」

137 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:04:12.28 ID:9R9XbWYA0


【ダージリン宅の前】


アールグレイ「さて、奥様の家についたわよ」

西「奥様…良い響きですなあ」シンミリ

アールグレイ「そうね。挙式をするなら呼んで下さいな」フフッ

西「良いのですか?」

アールグレイ「良いのよ?」

西「後輩に先を越される先輩って結構心に来そうですが…」

アールグレイ「お黙りなさい」

西「けけけ」

アールグレイ「…全く。それじゃぁ、ね」

西「ええ。また何かありましたら」

アールグレイ「そうね。じゃぁ、またね。…絹代さん」



ブロロロロロロロロ.....


138 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:05:32.33 ID:9R9XbWYA0


【ダージリンの部屋】


西「ただいま。ダージリン」

ダージリン「お帰りなさい。絹代さん」

西「…ダージリン」ギュッ

ダージリン「ふふっ、甘えん坊さん」



ここに来てようやく渦中の人物である私のダージリンのご登場だ。

今日に至るまで私はずっとダージリンに助けられてきた。

ダージリンがいたから私は頑張れた。

そんなダージリンとは今では愛し愛される関係にまで進展した。

悲しいこと苦しいこと腹立たしいこと色々あったけど、ダージリンと恋人関係になれた事だけは感謝したいな。

…もう絶対ダージリン離さない。


139 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:06:29.48 ID:9R9XbWYA0



西「何というか…またお会いすることが出来て良かったと思っております」

ダージリン「…大袈裟ね。ついこの間会ったばかりよ」

西「そうなんですけど、会う度にこれが最後なんじゃないかなぁって思ってしまうんですよ…あはは…」

ダージリン「…おばか」

西「恐縮です」

ダージリン「まったくもう」

西「えへへ…」クンクン

ダージリン「この子ったら。また私の匂いを嗅いで…」

西「ダージリンの匂い好きですもん」クンクン

ダージリン「あなたの場合、それだけでは済まないでしょう?」

西「…」

ダージリン「助平」

西「むぅ…」

ダージリン「っ………きぬよ…さん………」

西「ダージリンの大事なところ…見たいです……」



私達は本能の求めるにお互いの体を弄んだ。

優しく撫でたり、少し強く摘んだり、舐めたり、指を入れてみたり。

触っても触られても快感物質がドロドロ溢れ出すばかりで、気持ちいいのが欲しくて触り続けた。

体の中に指を入れると指にドロッとしたものが纏わり付いて

体の中に入れられるとぬるぬるした感覚と指の熱が体全体に行き渡る感覚に溺れる。

布団が汚れてしまうとまたまずいので、こぼれないよう舐めてみた。

おしっこの様なしょっぱい味と苦い味がする。美味しくなんかないけど、私の好きな人が興奮している時に漏れ出す好きな味。

だからもっとたくさん欲しい。身体中に塗りたくって全身で味を知りたい。

なので、執拗に舐め続けた。痙攣してもう出てこなくなるまで………。


140 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:13:48.64 ID:9R9XbWYA0


ダージリン「ハァ…ハァ…」

西「……今更…ですが……」

ダージリン「……?」

西「…ダージリンと、こんな風に繋がるとは思ってもいませんでした」

ダージリン「私だって……」

西「…あはは」

ダージリン「…どうしたの?」

西「ダージリンの体の中に指を入れたとき」

ダージリン「うっ…なによ…」

西「すごい勢いで指が締め付けられてて、離してくれなかったんですよね」フフッ

ダージリン「…っ……」

西「ダージリンが私の体を受け入れてくれて嬉しかったです」

ダージリン「あなただって指が千切れそうなくらいだったわよ」

西「ええ。ダージリンの身体も心もみんな全部好きですもん」

ダージリン「…ばか」ギュッ

西「あはははは」



会うたびに契りを結んでいる。結んで結んで簡単には解けないくらい。

だってダージリンいい香りがするし、柔らかいし、その……まぁ、かうばしきこと限りなし。

ダージリンもダージリンで私の身体が興味津々のようで耳に齧り付いたり尻に指を入れたりして私の反応を楽しんでる。……えっち。

141 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:16:19.77 ID:9R9XbWYA0


ダージリン「…ふふっ」

西「ん?」

ダージリン「あなたは私といる時だけは女の子ですものね」

西「む。私は生まれた時からずっと女ですぞ」

ダージリン「どうかしら。あなたってボーイッシュなところがあるからねぇ?」フフッ

西「…ダージリンまでボーイッシュって仰る」

ダージリン「あら? 誰かに言われたの?」

西「ペコ太郎に大雑把で男みたいって」

ダージリン「あらあら」

西「大雑把なのはフグリリさんだけで十分ですよ」

ダージリン「フグリリじゃなくルクリリよ。あの子が聞いたら激怒するからやめなさい」

西「他にも密かにファンクラブ作ってるとか…」

ダージリン「あらあら。それはそれは」

西「…嫉妬してます? <ツネッ!> いだぁっ!!?」

ダージリン「あなたが他の女の子を誑かさないか心配なのよ」

西「む…私はダージリン一筋ですってば」ヒリヒリ

ダージリン「本当に?」

西「ええ」


色々勘違いされそうだけど、私は別に女が好きなんじゃない。ダージリンが好きなんだ。

好きな人が偶然にも同性だっただけ。

だから仮に私がダージリンとお付き合いをしていなかったとして、同性に好意を持たれようがそれに応えようとは思わない。

…まぁ、好意を抱かれるのは嬉しいけれど。

142 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:18:08.02 ID:9R9XbWYA0

プルルルル プルルルル


ダージリン「電話、鳴ってるわよ?」

西「む。またアールグレイさんからですな…」

ダージリン「アールグレイ様?」

西「どうしてあの人はダージリンと一緒にいる時に限って電話するのでしょうかね…」ハァ...

ダージリン「それだけあなたのこと心配しているのよ」

西「私をですか?」

ダージリン「ええ。この前も "絹代さん、疲れてるからそろそろ終わらせないと" って言ってたわ」

西「…」


ピッ


アールグレイ『御機嫌よう。絹代さん』

西「不機嫌よう。おばさん」

ダージリン・アールグレイ「『なっ!!』」

ダージリン「あなたアールグレイ様に何てこと言うの!?」

アールグレイ『全くよ! これでもまだピチピチの10代なんですからねっ!!』

西「…年増」ボソッ

ダージリン「」ギチッ!!

西「おンぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」ジタバタ

143 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:20:49.23 ID:9R9XbWYA0


ダージリン「先輩に失礼な態度を取らないの! 怒るわよ?!」

西「も、もう怒っているではありませんかっ!!」ヒリヒリ

ダージリン「もっと怒るわよ!」

西「ええー…」


アールグレイ『電話に出て第一声でケンカ売ってくるところは相変わらずね…』

西「だってだって! ダージリンと一緒にいる時に限って電話かけて来るんですもん!」シクシク

アールグレイ『それは偶然よ』シレッ

西「えー…。それで、ご用件とは何でっしゃろ?」

ダージリン「でっしゃろ…?」

アールグレイ『ん…、大した用事では無いのだけれども』

西「…」

アールグレイ『体調は良くなったかしら…ってね?』

西「? まぁ、今のところは問題ないであります」

アールグレイ『そう。良かったわ』

西「それだけですか?」

アールグレイ『そうよ。それだけ』

西「そうですか…?」

144 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:22:22.70 ID:9R9XbWYA0


アールグレイ『ええ。…この間、あなたが頭痛いだの月のものが来ないだの不調訴えてたから、心配になってたのよ』

西「それはご心配おかけしました」

アールグレイ『ええ。やってる事がやっている事ですもの。実際の諜報部員でも任務終了後にPTSDを発症することだってあるくらいよ?』

西「それはそれは…まぁ、今のところは大丈夫ですよ」

アールグレイ『そう。なら良かったわ』

西「ええ。ご心配かけてすみません」

アールグレイ『そうね。あなたが大丈夫なら問題ないわ。それじゃ、またいつかね』

西「またいつか…か」

アールグレイ『ん?』






















西「…………嘘つき」


145 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:23:52.88 ID:9R9XbWYA0


アールグレイ『…!』

西「…ちゃんと、話して下さいよ……」

アールグレイ『………そうね…』ハァ...



電話の向こうから溜息が聞こえる。


私は今の今までずっと神経張り巡らして色んな人を観察してきた。

…だから、港で会ってからあなたの様子がおかしい事だってわかる。

146 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:25:46.80 ID:9R9XbWYA0

アールグレイ『…仕方ないわね。またいつものカフェに行きましょうか』

西「ええ…」

アールグレイ『それじゃぁね』


ツー ツー ツー ツー


西「………」

ダージリン「………絹代さん…?」

西「…一難去ってまた一難…ですね」

ダージリン「えっ…!?」

西「………ごめん。ちょっとアールグレイさんの所に行ってきます」

ダージリン「そう………」



反・聖グロ派とつながる内通者は見つかった。

そして聖グロを裏切ったOGの女は警察に連行された。

これで聖グロに絡みつく脅威が消え去って、ダージリンも復学。

私も西絹代と再び名乗って終劇になれば良かった。

良かったのに。


私の本能が『まだ終わってない』って、ずっと叫び続けていた。


それもそのはず。

ダージリンを強制退学させるべく、聖グロOGの大多数から賛同を勝ち取るような手練が

あんなにもあっさり現れてあっさり逮捕されるはずがない…。

147 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:29:54.12 ID:9R9XbWYA0



【とあるカフェ】


ヴェニフーキ「先ほどぶりです。アールグレイ様」

アールグレイ「…ええ。服や持ち物は綺麗かしら?」

ヴェニフーキ「お出かけ前にしっかりチェックしました」

アールグレイ「そう。なら問題ないわね。…"絹代さん"」

西/ヴェニフーキ「…」

アールグレイ「…」


西「…まだ、終わってないんですよね?」

アールグレイ「…ええ」



またここに来た。

ダージリンが強制退学されたと知り、アールグレイさんに相談し、そこから始まった悲しい思い出の喫茶店。

そして次に、内通者が誰かを特定するという名目で盗聴器や探知機を授かったのが二回目。


そして三度目となる今回は………。


昼間は学生や社会人が行き交う街中にあるお洒落な喫茶店も夜になれば閑古鳥が鳴いて不気味だ

雪はますます強くなって吹雪に変わっていく…。

148 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:32:40.41 ID:9R9XbWYA0


アールグレイ「…あなたも随分と勘が鋭くなったわね。むしろ鋭くなり過ぎて少し厄介に思える」

西「皮肉な話ですよね。あんなことを続けていたせいで、見たくないものまで見えるようになってしまうのですから」

アールグレイ「…本題に入りましょう」

西「…」



アールグレイ「あなたの言う通り、"まだ終わってない"」




…でしょうな。

一件が終わってからアールグレイさんは何かを隠そうとしていた。そしてアールグレイさんらしからぬ不自然な振る舞いから読み取ることができた。


繰り返しになるけど、ダージリンを強制退学させるほどの"豪腕"が安々と現場に訪れるはずがない。

ましてやそれで御用になるなんて論外だ。そんな間抜けなはずがない。

もっと言えば聖グロ内にはペコという"内通者"がいた。わざわざ学園艦内に足を運ばずとも、彼女を顎で使えば良かった。

自ら手を汚しに行く理由はどこにもない…。


そういったことを鑑みるに、先ほど御用になったあの女は反・聖グロ派の中でも"下っ端"の可能性が高い。

主犯は別にいる。

149 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:34:17.94 ID:9R9XbWYA0


アールグレイ「その通りよ。御用になったあの女性は末端も末端」

西「でしょうね」

アールグレイ「それどころか…」


アールグレイ「聖グロリアーナのOGですらない"赤の他人"よ」


西「なっ!?」

アールグレイ「おそらくは反体制派からお金で雇われた破落戸ね。警察の調べで多額の借金を抱えていたと供述したわ」

アールグレイ「けれども、犯行動機や誰に雇われたかについては黙秘」

西「………」

アールグレイ「付近にいたボディーガードも女とは無関係とのこと」

西「…そうですか」



聖グロやOGとは一切関係のない人物がカネ目当てに加担した事については驚きだが、自ら手を汚さず事を進める連中なら十分考えられる。

十分考えられるから、それについてはそこまで気にしていなかった。



私が気にしているのは…


150 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:37:52.36 ID:9R9XbWYA0


西「何故、黙っていたんですか……?」


アールグレイ「…」

西「あのまま港で合流し、 "全部終わった。ご苦労様" と言わんばかりな態度でした」

西「…しかし、蓋を開けたら全部どころか薄皮を一枚剥いだだけに過ぎなかった」

アールグレイ「…」

西「………何故、隠していたんですか?」



アールグレイ「限界が来たからよ」



西「なッ!!」

アールグレイ「ここまでが、聖グロを知らないあなたに出来る"精一杯"なの」

西「そんなことはありません。また私が聖グロに潜り込めば…!」


アールグレイ「無駄よ」


西「何故ですかっ!!」

アールグレイ「考えてもみなさい。内通者を特定した、そして末端の反体制派を捕まえた」

アールグレイ「そんな状況で主犯がひょっこりと出て来ると思う?」

西「あっ…!」

アールグレイ「あなたが言ったように、相手は学園一の優等生を、真逆の不良生徒に仕立て上げ、OG会の賛同を獲得するほどの手練なのよ」

アールグレイ「この件でますます警戒心を強めることは確実よ」


アールグレイ「…予想外、だったわ」


151 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:39:58.44 ID:9R9XbWYA0

西「で、では何故…私を聖グロ内部に送り込んだのですかッ………!」

アールグレイ「私も最初、内通者から芋づる式に反体制派の中枢まで引っ張り出せると考えていたわ」

アールグレイ「だけど…」

西「…?」



アールグレイ「甘かった………」



西「ぐ…が…ッ…!!」

アールグレイ「…やめなさい。ここはカフェよ。暴れたらあなたが逮捕されるわ」

西「ッ………」

アールグレイ「ここから先は私がやっていく。…どれくらいかかるかはわからないけど」

西「じゃぁダージリンはッ!!」

アールグレイ「…聖グロに戻れるかは分からないけど、幸いあの子は"西グロ"に在籍している」

アールグレイ「このまま留学から転校に変更すれば何とか高校は卒業出来るわ…」

西「っ………」


アールグレイ「それにね、あなたももう心身的に限界が来ているわ」

西「そんなことはない! 私はまだ…!」

アールグレイ「ええ。今はまだ元気よ。でも、この先はもう保証できない…」

西「っ!!」

アールグレイ「万が一、あなたの身に何かあったらそれこそ大問題よ」

アールグレイ「"聖グロへ短期留学したら廃人になった"…と」

西「………」

152 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:42:44.33 ID:9R9XbWYA0


アールグレイ「だからここで、あなたの留学期間を満了とするわ。明日からは知波単学園に戻って普通に生活なさい」

西「………」

アールグレイ「あなたが不服なのはわかるわ。私だって同じですもの」

西「………」

アールグレイ「でも、これ以上被害を拡大しないために、あなたはもうこの問題には関与せず、元の学校で普通に生活を送って」

アールグレイ「…お願い。」


西「………」




虚しいお茶会は終わった。

私は叩きつけられた現実に打ちひしがれ、途方もなく彷徨った。


アールグレイさんから、『まだ終わってない』と言われることは予想できたから別に驚きはしなかった。

そしてそれをアールグレイさんが隠そうとしていたことも。

だって、犯人が別にいるなら同じように引きずり出せばいい。また聖グロに潜入して。

そう思っていたのに…帰ってきた言葉は…


…………"限界"。


内通者を特定して、反・聖グロ派の女を捕まえて万事解決と思いきや、それは奴らの『予防線』でしかなかった……。

そして、その『予防線』は奴らの警戒をより強めるものとなった。

今の今までやってきた事が、良かれと思ってやった事が、全部裏目に出た…。


ダージリンを復学させるために、私は何もかも捨てて戦ってきたのに

その戦いは逆に自分の首を絞める結果でしかなかった………。


私はまた失敗した

153 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:46:20.10 ID:9R9XbWYA0


プルルルル プルルルル


「………」


プルルルル プルルルル


「…………」



何処かに行く宛もなく彷徨っていたらダージリンから電話が来た。

でも出られない。何をどう話せばいいのかわからない……。


私は失敗した。


ダージリンの為にって思ってやったことが全部ダージリンの首を絞めた。

私のせいでダージリンが強制退学させたことから始まって

私のせいで復学の可能性がゼロになって終わる。

ダージリンが聖グロに戻れないのに私が知波単に戻れるはずがない。


やがて電話は鳴り止んだ。

失敗した私を嘲るみたいにバチバチ当たる雪が痛い…。

このまま凍って二度と動かなくなってしまえば良いのに。

そうすればもう苦しまなくて済む………。


154 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:47:14.51 ID:9R9XbWYA0



「絹代さん!」



電話の次は………



西「っ…!」

「…大丈夫ですよ。私です」

西「ノンナさん…」

ノンナ「お久しぶりです。絹代さん」

西「…」



― まぁいいわ。…そうそう

― ん?

― 聖グロへ向かう途中、プラウダ高校の学園艦を見つけたわよ

― プラウダ高校?


155 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:52:47.58 ID:9R9XbWYA0


ノンナ「同志より、港に警察が殺到しているとの情報を入手しました」

ノンナ「そして、警察が向かう先にあるのが、聖グロリアーナ女学院の学園艦と…」

西「…」

ノンナ「もしや、と思いまして」

西「…そうですか。……今日も、カチューシャさんはいないんですね……」

ノンナ「ええ。他の同志は学園艦整備の指揮をしております。今後しばらく吹雪くとのことですから」

西「…確かに。前が見えないくらい吹雪いていますね。…こんな日に外を出歩く人は頭がどうかしてますよね……あはははは…」

ノンナ「プラウダではよくある光景です」

西「………」



何だよ…。

誰にも会いたくない時に限って誰かとばったり出会ってしまう。



西「…で、どういったご用件で?」

ノンナ「えっ…」

西「偶然にしては不自然な気がするんです」

ノンナ「どういうことでしょう?」

西「私の中では…あなたとカチューシャさんは "一心同体" と言っても良いほど親密な関係であると認識しております」

西「それだけに、彼女の元から離れて何かをするというのは不自然です」

ノンナ「…」

西「…」


ノンナ「あの時と同じです。"少し、あなたとお話がしたいと思いまして"」

西「奇遇ですね。私もあの時と同じです。"申し訳ありません。今は一人で居たい"」

ノンナ「…」

西「…私と何を話したいと仰るのです?」

ノンナ「不埒なのは重々承知ですが、あなたが何故身分を偽っていたのか、と」

156 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:56:44.83 ID:9R9XbWYA0


西「…言ったはずですよね? 私の事は探らないでって………」

ノンナ「そうはいきません。聖グロリアーナ女学院は我が校とも交友関係にあります。あなたの目的によっては…」

西「でしたら私ではなく、聖グロの関係者にでも相談すれば良いのでは?」

ノンナ「それは…」

西「あなたの様な方が他人を個人情報を執拗に知ろうとするなんてどうかしていますよ…」

ノンナ「私も本当に、どうかしてしまったんだと思います……」


西「…」

ノンナ「今の今まで、カチューシャやプラウダの同志以外の人間に、これほど関心を持つことなどありませんでした」

西「…」

ノンナ「あなたが、聖グロリアーナ女学院に大勝利した時から、あなたから異変を感じるようになった」

西「…」

ノンナ「これも、"水飴"のせいでしょうか?」

西「"水飴"にそんな成分が含まれていては私達は入手出来ませんよ…」

ノンナ「ごもっともです。では…」

西「言ったはずです。私の事は


ノンナ「ダージリンさん、ですよね?」


157 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 12:58:12.14 ID:9R9XbWYA0


西「………」

ノンナ「あれから、あなたが何故この様な事になったのか、考えました」

西「…」

ノンナ「先の練習試合でお邪魔した時、存在するはずのダージリンさんが不在でした」

ノンナ「そして、存在するはずのない知波単学園の隊長、絹代さんがいた」

ノンナ「名前も姿も偽って」

西「あはは。偵察ですよ。他校がやってるような」

ノンナ「偵察をする人が何故、ダージリンさんが貶された時に本気で怒るのでしょう?」



― ダージリンもバカね。風邪なんか引くなんて。おヘソでも出して寝てたのかしら。あっははははっ!

― ………何?


確かに、あの時はカチューシャさんに対し激昂した。

あろうことか、彼女とダージリンを葬った連中が重なって見えたから……。

158 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:02:26.43 ID:9R9XbWYA0


西「そう演じないと、身内でないという事がバレてしまうからですよね?」

ノンナ「あなたの怒りは演技などではありませんでした」

西「…」

ノンナ「私にも幾つか心当たりがあります。それは本当に大切な人を罵られた時の怒りに似ている…」

西「そうですか」

ノンナ「そして、それが"核心"だろうと結論づけました」


西「きっと心得違いですよ」

ノンナ「確かに、これだけでは根拠に乏しいです」

西「もっと決定的なものがあれば話は別ですがね」

ノンナ「その決定的というのが、あの時私の前に立ちはだかったあの女です」


西「…あの女? 誰でしょう?」

ノンナ「彼女、"OG"って名乗ってましたね?」

西「そうでしたっけ?」

ノンナ「聖グロとOGの切っても切れない関係は有名です」


西「…確かに、聖グロはOG会から資金援助を受けています」

西「それら援助の代わりに、学園艦の運営方針もOGからの制約を受ける」

西「これはノンナさんは勿論、阿呆な私ですら知っているのだから相当有名な話ですよね?」

ノンナ「ダージリンさんが居ないこと」

ノンナ「あなたが"ヴェニフーキ"と名乗り聖グロに潜入したこと」

ノンナ「そしてOG会。これらをつなぎ合わせれば…」


西「もう結構です」


ノンナ「…!」



もういいや………。


159 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:07:57.98 ID:9R9XbWYA0




西「ノンナさんの、予想通りですよ。あはははははははは」




ノンナ「絹代さん…!?」

西「はい。ええ。OG会によって"消されました"よ。あはははは」

ノンナ「っ!!」

西「あなた方の言い方をすれば、"粛清された"…とでも言うべきですかね?」

ノンナ「いくら我々でもそこまで残酷なことはしません…!」

西「ですよね。私も相当残酷だと思います」

ノンナ「全くです…」

西「そして、そいつらによって」



西「私も一緒に壊された」



ノンナ「そんな…!」

西「あの時、ダージリンが消されたと知って、私もダージリンと同じように発狂した」

ノンナ「っ!」

西「そして一時期、薬が無いと生きていけない身体になった。あははははは」

ノンナ「だ、大丈夫なのですか…!?」

西「今だって記憶が蘇って頭がおかしくなりそうな時があります」

ノンナ「っ…」


西「以前から見ていた悪夢に加えて、OG会に身体を引き裂かれる夢まで見るようになってしまった。あはははははは」

ノンナ「以前から見た悪夢…?」

西「大学選手権の時に私がしくじって惨敗して大洗が廃校になる夢ですよ。あははは」

ノンナ「そんな事はあり得ません! あの時私達は勝ちました。その証拠に大洗女子は今も健在です…!」

西「そうですね。大洗女子は今も生きてます」

ノンナ「でしたら悩むことは…!」

西「…でも、私の中では大洗も私自身の戦車道も」







西「もう生きてはいないんですよ。あはははははは!」



160 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:09:16.48 ID:9R9XbWYA0


ノンナ「なッ!!」

西「未だ悪夢を見続けるのがその証拠です。とうとう私の中では解決できなかった…」

ノンナ「それは所詮夢です。気にすることではありません」

西「あははははは。もうそっちは気にしてませんよ。気にしたって仕方ない」

ノンナ「では…」

西「私の戦車道は…私は」


西「ヴェニフーキと名乗った時に死にました」


ノンナ「っ!!」

西「…もう、誰かが傷つく姿なんて見たくない」

西「私も傷付きたくない」

西「だから、」


西「私はもう死んだことにして、存在しなかったことにしたいんです」

161 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:11:52.02 ID:9R9XbWYA0


ノンナ「ま、待って下さい! 早まらないで!!」

西「…私は腰抜けだから何もできやしない。何一つ実らない」

西「消えてしまいたいのに、消えるのが怖い……あははは…あはははははは…」

ノンナ「…でしたら」


ノンナ「私が、あなたの力になります」


西「…はい?」

ノンナ「…あなたは一人にしておくと碌なことにならないようです」

西「…」

ノンナ「ですから、私もあなたのサポートを」

西「…結構です」

ノンナ「нет!」

西「…」


ノンナ「目の前で溺れている人がいて、それに見向きもせず過ぎ去ろうとする」

ノンナ「それはあなたの言う"邪道"ですよね?」

西「溺れている人が邪道なら、私は見向きもせず、溺れて死んでしまえと念じます」

ノンナ「嘘です。優しいあなたがその様なことをするはずがありません」

西「どうしてそう言い切れるのです?」

ノンナ「私の本能がそう語りかけるのです」

西「本能ってあまり宛になりませんよ?」

ノンナ「とにかく私は」


西「あなたにはカチューシャさんがいらっしゃる」

ノンナ「っ…!」

西「私などに感けている暇など無いはず」

ノンナ「…」

西「本当に大切な人のために」


ノンナ「あなたも大切な人です」


162 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:15:37.32 ID:9R9XbWYA0


西「………」


ノンナ「カチューシャは大切な同志です。それは未来永劫変わることはありません」

ノンナ「…ですが、あなたもまた同志、いや、それ以上の存在になりつつあります」

西「お友達は選んだ方が良いですよ?」

西「それに、どうひっくり返ったって私がカチューシャさんより上であるはずがない」

ノンナ「いえ…もしかしたら、あなたは私にとって…」



ノンナ「初めての人かもしれません」



西「………は?」

ノンナ「私と対等に接し、そして私を理解してくれる初めての人…」

西「意味がわかりません」

ノンナ「初めてです…。私がカチューシャではなく、プラウダ以外の人間にこんな形で関心をもつなんて」

西「それはどうも。…ですが私にはもう」

ノンナ「知ってますよ。ダージリンさんですね?」

西「…」

ノンナ「だから、"любовник"ではなく"близкий друг"です」

西「…」

ノンナ「………」

西「………」




西「…私が言うのも何ですが、抱えすぎは体に毒ですよ?」

163 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:20:37.51 ID:9R9XbWYA0

ノンナ「!!」

西「………」

ノンナ「…やはり、あなたは…」

西「ダージリン以外の人を深く知りたいとは思わないですけど…」

ノンナ「…」

西「傷つけたり傷つくことを何よりも恐れるが故に、色んな物を溜め込んでしまう人なんだなぁ…と」



それは今の私も同じだよね。

正体がバレるのが怖いから無口で表情を変えないようにしている。

私に関わった人が悲しんだり傷ついたりするのが怖いから関係を持たないようにしている。

品は違えどノンナさんが言う"理解者"ってのはこの事を意味するのかもしれない。



ノンナ「…」

西「…皮肉ですよね。色んな人と良好な関係を築きたいと思っていた頃は、相手の事なぞこれっぽっちも理解出来ませんでした」

西「あの頃はよく怒られました。"少しは人の話を聞け"って…」

西「誰とも関わりたくないと思うようになってから、相手の本質を理解出来るようになってきた」

ノンナ「………」

西「以前の私でしたらまずこの様なことは感付けなかったようなことも…」

西「こういう薄汚い真似をしているから、疑心暗鬼に溺れるからこそ気付けた」

西「知らなかったことも知るようになったし、見たくないものも見えるようになった………」

ノンナ「………………」




ノンナ「……そう…ですか………」


164 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:22:55.32 ID:9R9XbWYA0


西「…何も泣かなくても」

ノンナ「……私は…やっと"理解者"に出会えた………」

西「カチューシャさんが理解者なのでは?」

ノンナ「…こんな私なんて…カチューシャに知られたら………」

西「………」



確かに。ノンナさんが"折れる"姿なんて誰も想像出来ないだろう。

カチューシャさんとて"頼れる同志"としてのノンナさんを誰よりも信頼している。

だから己の本心が露わになることを何よりも恐れたんだろう…。

ノンナさんは口数は少ないし、表情の変化も乏しい。表情や言動から何かを判断するのが難しい。

だけど、そのせいで彼女は誰も知らないうちにどんどん傷を溜め込んでいる。

だから…


ずっと、探していたんだろうなぁ。

本当に自分を理解してくれる人を…。


そして"その人"に私が選ばれたんだ…。

本心がむき出しになることを恐れ、誰かを傷つけ誰かに傷つけられることを恐れる同じ動物として…。


165 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:25:15.78 ID:9R9XbWYA0


西「…大丈夫ですよ」


ノンナ「えっ……?」

西「仮に、カチューシャさんがあなたの本心を目の当たりにしたとして」

西「その程度で落胆するような方じゃないですよ」

ノンナ「…!」

西「言動は見た目こそ小さな女の子のように見えますが、カチューシャさんは見るものはしっかり見ておられる」

西「そうでなければ黒森峰を打ち負かす強豪校の"最高指揮官"にはなれないでしょうし」

西「だからこそ、あなたはカチューシャさんの片腕を務めておられるわけですよね」

ノンナ「ええ………」



…ん?

じゃぁ何故、ノンナさんは…?


二人は家族とも恋人とも言えるくらいものすごく親密。

ノンナさんと、カチューシャさん

逸見さんと、西住まほさん



私とダージリン……………



………そっか…。



166 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:28:17.73 ID:9R9XbWYA0


西「もうすぐ、卒業か……」


ノンナ「…はい」

ノンナ「だから、もうすぐ…」



ノンナ「……お別れです………」




………既視感?

おかしいな。ノンナさんの話を聞くのは初めてなのに、何処かでこんな感覚にぶち当たった気がする…。

何か、前にも…………



― …私は………あなたのように……王者にはなれない……私では…………

― ………何も無い………

― …私は………ここまでです…………




そうか…あいつだ。逸見さんの時と同じだ。

硬い硬い殻に包まれた彼女の柔らかい"本心"がむき出しになったあの時と。

外観からは想像もできないほど柔らかい本心を目の当たりにしたあの瞬間だ…。


ノンナさんも今、熱に耐えられず溶け出した氷の中にある本心がむき出しになっているんだ……


気付かなかった。

少女のように無邪気なカチューシャさんと、彼女の身辺を世話するノンナさんという構図故に、心得違いをしていた。


カチューシャさんがノンナさんに依存してるんじゃない

ノンナさんがカチューシャさんに依存しているんだ………。


ブリザードのノンナなどという、誰が付けたか分からない二つ名のせいで皆誤解しているけれど、本当に支えが必要なのはノンナさんの方なんだ…。

167 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:33:17.26 ID:9R9XbWYA0


西「………」

ノンナ「…ふふっ……また、一人ぼっちですね………」

西「っ………」



はぁ…駄目だ…。

なんだって何もしたくない時に限って前に私と同じような人間ばかり現れるんだ。

なんで崩れて壊れる寸前の状態で私の前に出てくるんだ。

どうして私が一番見たくない姿になって私に関わろうとするんだ…………。



西「…ノンナさん」

ノンナ「………はい」

西「…その、私で良ければ…」

ノンナ「…えっ?」

西「誰だって一人ぼっちは寂しいですから」

西「私なんかで良ければ、友人になりますよ」

ノンナ「…」



…突発的とはいえ我ながら上から物を言うものだと自分でも呆れる。

仮にも相手は年上のノンナさんなのに。

"友達になてやっても良いぞ"などと言われ"はい喜んで!"と受け入れる者が何処にいるというんだ。

168 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:34:31.58 ID:9R9XbWYA0


ノンナ「よ、喜んで…!!」

西「あ、ありがとうございます…?」



………ここにいた。

先ほどとは打って変わってすごく嬉しそうな顔をなさる。

まるで台風が過ぎ去ったあとの雲一つない晴れの日のように…。


実際の天気は猛吹雪だというのに。

…ん? ノンナさんはブリザードの異名を持つから"元気になるほど吹雪く"で合ってるのか???


ええい。もうなんでもいいわそんなこと。

169 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:38:41.54 ID:9R9XbWYA0


ノンナ「で、では…お時間がある時にメールをお送りしても良いですか…?」

西「ええ。構いません」

ノンナ「動物やお料理の写真を送っても大丈夫でしょうか…!?」

西「空腹時でなければ大丈夫ですよ?」

ノンナ「あ、あの…"でこめ" というのもやってみたいのですが…!」

西「ど、どうぞ…?」

ノンナ「!」パァァァァ

西「…」

ノンナ「Это лучший день! Я рад, что был жив.....!!!」

西「あははは…」



なんか知らんが、物凄く嬉しそうだ。

ノンナさんがどれだけ不安を溜め込んでいたのかは知らないけれど、積年の不満も第三者の何気ない一言で簡単にふっ飛ばすことが出来るものなんだね…。

本当に数分前までの絶望的な表情とは裏腹に幸福感に満ちた顔をしておられる。

長い冬が終わり春が来たみたいに。ブリザードのノンナ改め、桜吹雪のノンナと改名してもいいほど。


…しかし、デコレーションメールとはまた渋い選択だ。使い方なんか知らんぞ。

170 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:43:08.12 ID:9R9XbWYA0

「госпожа Нонна!」


ノンナ「…クラーラ? 学園艦の整備は終わったのですか?」

クラーラ「да. Катюша ждет. говорит, что она голодна.」

ノンナ「わかりました。戻りましょう」

西「…」

ノンナ「あの、絹代さん…」

西「はい」

ノンナ「本当に、ありがとうございました」

西「いえ。ノンナさんの憂鬱が解消されたようで感慨無量です」

ノンナ「メール、お送りしますね?」

西「ええ」

ノンナ「それでは、またお会いしましょう」ニコッ


クラーラ「поторопись!!」

ノンナ「шумно!! убью тебя!!」





そういってプラウダの学園艦に帰っていくノンナさんを見送った。

迎えに来た外国人に詰問されながら少しずつ小さくなっていく影をじっと見つめる。



― …ふふ……また、一人ぼっちです…



…うそつき。

ちゃんと"同志"がいるじゃないか。

帰る場所があるじゃないか。


私なんてもう何処にも帰る場所なんて無いのに…。

171 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:46:08.51 ID:9R9XbWYA0


プルルルル プルルルル



西「カチューシャ…さん……?」


ピッ



西「…はい」

カチューシャ『もしもし! ヴェニーシャ?!』

西「…。…お久しぶりです。カチューシャさん」

カチューシャ『ええ! そんなことよりノンナを見かけなかったかしら?!』

西「ノンナさん…?」

カチューシャ『ちょっと出かけるって言ったきり戻ってこないのよ…!!』

西「…」



…なるほど。ノンナさんがなかなか帰ってこないから気を揉んでおられたのか。

実際お会いした時はこの世の終わりのような顔をしておられたから、それこそ世を儚んで…ってことも容易に想像出来る。


172 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:47:40.17 ID:9R9XbWYA0


西「ノンナさんでしたら、先ほどお会いしましたよ」

カチューシャ『ふぇ? そ、そうなのっ?!』

西「ええ。偶然だったので驚きました」

カチューシャ『じゃ、じゃあノンナは…!?』

西「先ほど、プラウダ高校の制服を着た外国人の方と一緒に帰られましたよ」

カチューシャ『本当なのヴェニーシャ?!』

西「ええ。じき、戻られるでしょう」

カチューシャ『…ノンナ、落ち込んでなかった?』

西「…お会いした時は元気がありませんでしたが、お話をするうちに見る見る元気になりましたよ」

カチューシャ『! それ聞いて安心したわ。あー見えてノンナはナイーブなんだから…』



…やっぱり。

カチューシャさんもちゃんとノンナさんのこと理解して下さってるじゃないか。

173 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:50:22.12 ID:9R9XbWYA0

西「ときに、ノンナさんとは仲良くしておられるのですか?」

カチューシャ『ええ。そこそこにやってるわよ?』

西「そこそこ…?」

カチューシャ『ええ。何か問題かしら?』

西「…」

カチューシャ『…どうしたのよ? ハッキリ言ってちょうだい』

西「いえ…変な言い方に、なるかもしれませんが…」

カチューシャ『構わないわよ。言ってごらんなさい』

西「私の中では、カチューシャさんとノンナさんは二人で一つというのが常識でした」

カチューシャ『…』

西「だから、ノンナさんのいないカチューシャさん、カチューシャさんのいないノンナさんに物凄く違和感を抱いてしまうのです」

カチューシャ『………』


174 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:52:08.81 ID:9R9XbWYA0

カチューシャ『…確かに、ね』

西「…?」

カチューシャ『私はノンナと知り合ってからずーっと一緒だったわ』

カチューシャ『…だからきっと、ヴェニーシャみたいな考えは他の人も持ってるはずよ』

西「…」

カチューシャ『…でもね、このままだとダメだって思ったのよ』

西「えっ…?」

カチューシャ『私がこのままノンナにワガママを言い続けてノンナに依存しちゃったら』



カチューシャ『ノンナの人生を台無しにしちゃうもの』



西「!!」

カチューシャ『…だから、私はノンナと』

西『ち、違います…!!』

カチューシャ『な、何が違うのよ?!』

西「違うんです………!!!」

カチューシャ『だから何が違うのヴェニーシャ!!』



畜生………言えるわけ無いだろうこんなこと……。

カチューシャさんですら気付かないノンナさんの心の奥底に眠る本当の気持ちを…。

私なんかが言えるわけがない………


誰にも言うことが出来なかった

誰よりも愛する人にすら伝えられず気付かれないものを

私なんかが言えるわけ無い………。


言ったら今度こそノンナさんが壊れちまう…



「〜〜から聞いたわよ」じゃ駄目なんだ…

何十にも重なった装甲こじ開けて見つけないと駄目なんだよ………


175 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 13:54:28.38 ID:9R9XbWYA0


西「っぐぅぅぅぅ………!!!」


カチューシャ『ち、ちょっと! 急にどうしたのよキヌーシャ!?』

西「お願いです……カチューシャさん…!!」

カチューシャ『な、何をどうお願いされればいいのよっ?!』


西「………ノンナさんを…………お願いします………」


カチューシャ『………………わかったわ』

西「…えっ……?」

カチューシャ『…前に言ったけれど、あなたとノンナって似てるところがあるじゃない?』

西「……どうでしょう…私にはわかりません…」

カチューシャ『似てるわよ。そんなあなたが言うのだから、きっとノンナも悩んでいるに違いないわ』

西「…!」


カチューシャ『ねぇ、ヴェニーシャ…』

西「はい…」


カチューシャ『私は、まだ…ノンナと一緒にいてもいいの?』


西「もちろんです………!!」

カチューシャ『わかったわ』

西「!!!」


176 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:07:55.90 ID:9R9XbWYA0


カチューシャ『…それと、ヴェニーシャ、あなたも無理しちゃダメよ?』

西「私は…」

カチューシャ『このカチューシャ様にウソをつくつもりかしら? あなたがヘトヘトだなんてのは電話越しでもわかるんだからねっ!』

西「う…」

カチューシャ『何に困ってるのかわからないけど、自分でどうにもならない事なら誰かを頼りなさい』

西「誰か…?」

カチューシャ『そうね…あなたの場合、大人にでも頼ってみたたらどうかしら?』


西「大人…?」

カチューシャ『ええ。あなたが悩むほどなんだから、そんじょそこらの人じゃ解決できないような事でしょ?』

西「…そうかもしれません」

カチューシャ『そうに決まってるわよ! いーい? ガマンは身体に毒なんだから! あなたも8時までには布団に入って休みなさい!』

西「わかりました」

カチューシャ『わかれば良いのよ。また何かあったらこのカチューシャ様に相談なさい!』

西「はい。ありがとうございます」

カチューシャ『それじゃぁね。ヴェニーシャ…』





カチューシャ『いいえ、キヌーシャ』


177 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:12:55.47 ID:9R9XbWYA0

西「えっ…!」

カチューシャ『言ったでしょう? カチューシャにはお見通しなんだから! あなたが西絹代であることもね!』

西「な、何故…?!」

カチューシャ『何度も言ったじゃない。あなたとノンナって似てるところがあるって』

西「で、ですが…」

カチューシャ『ノンナのことは誰よりも知ってるつもりよ? だからノンナにソックリなあなたの事が私にわからないわけ無いでしょ!』

西「!」

カチューシャ『…まぁ、何であんなことやってたのかは知らないけど』

西「…さ……さすがです…」

カチューシャ『…私はね、それだけノンナのことを見ているのよ』

西「ええ…」

カチューシャ『そういうことよ。じゃぁね。ピロシキ〜』



…凄い。

いくら私とノンナさんの言動に何処かしらに似通ったものがあったとして、そこから私の正体まで読み取るなんて無理だ。

何故ならアッサムさんもGI6も、"私と似てる"と言うノンナさんですら最初は私が西絹代だなんて知らなかったのに…。

ノンナさんの本心が理解できた私でもそんなこと出来る自信がない。

本当に、家族のように常に一緒にいた人でないと見つけることが出来ない何かをカチューシャさんは見つめていたのかもしれない…。

なんだかちょっと悔しい。



そんな、戦車道仲間で"唯一"私の正体を見破ったカチューシャさんが、私に『大人に相談しろ』と言うのだ。

なーんだそんなことか。と一蹴するには早計だ。




だけど…頼れる大人なんて私には…………。





178 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:13:36.74 ID:9R9XbWYA0




………ああ、いたか。





179 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:15:02.62 ID:9R9XbWYA0




【数日後 とあるお座敷】



西「お忙しい中、お集まり頂き感謝致します」

「………」

「あなたの方からお誘いがあるからちょっと驚いたけど、説明して下さるかしら?」

西「…何からお話致しましょうか? 家元様」


千代「聞きたいことは山ほどあるわね。…突然、私を呼び出したこと。隣に西住流の家元さんがいらっしゃること」

千代「あなたの姿形が豹変したこと。何が原因でそんなに冷たい目をしてしまったか。ということ」

しほ「…」



入院中に貰った連絡先から西住流、島田流の家元様を呼び寄せた。

まさかこんな形でお二人と再会するとは思わなかった。

あの時は両家元の威圧感に怯えていたが、今はそんなことはどうでも良い。





180 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:16:33.48 ID:9R9XbWYA0


西「西住様には先日、お話をさせて頂いたのですが…」

千代「あら。私は仲間はずれ? 寂しいわねぇ?」

しほ「茶々を入れるな」

西「申し訳ありません。…それで、話というのは」



私は、以前西住様に話した内容を島田様にも話した。




西「………以上です」

千代「あなた、なかなか面白いことを企んでいたのね?」

しほ「…それで、我々をここに呼んだという事は、もはや自分の手には負えないと判断したからということ?」

西「ええ。正直な話」


181 : ◆MY38Kbh4q6 [saga !red_res]:2017/10/28(土) 14:17:11.10 ID:9R9XbWYA0












西「正直な話、聖グロリアーナ女学院のOGを一人残さずぶち殺したい気持ちで一杯です」








182 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:24:33.39 ID:9R9XbWYA0


しほ「っ!」

千代「あらあら怖い」フフッ

西「あはははは…」


しほ「やめなさい! いくら何でも度を超えているっ!!」


千代「…!」

西「………」

千代「…あなた、一体を…?」

西「これまでも嫌なこと、辛いことは何度か体験しました。…しかし…」



西「大真面目に人を"殺したい"とまで至ったのはこれが初めてです…」



しほ「…ッ!」

千代「…」

西「………最善と思わしき策は全て出し尽くした。にも関わらず私は失敗した」

西「私の憎んだ連中はまた闇の中に消えていった」


西「…だったら、OGと呼ぶべきOGすべて一人残らず片っ端から消し去ってしまえばいい………」


西「この件に関わっているOGは勿論、この件について黙認している奴、見て見ぬ振りを通す奴も皆同罪だ………」


しほ「落ち着きなさい! そんなことが許されると思っているの?!」

千代「…」

西「…ただ、それを防ぎたいから、他に良い方法がないか、こうやって家元様に相談をした次第です」

しほ「…」

西「…けれど、無いというのなら………もう仕方ない………」

西「屑は屑が責任を持って処刑する…それだけのことです」

183 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:27:52.65 ID:9R9XbWYA0


しほ「…あなたは、自ら邪道になろうって言うの?」

西「私はもうずっと前から邪道ですよ…それ以外であったことなどありません」

しほ「馬鹿をおっしゃい!」

千代「…」

西「誰よりも邪道を嫌う西住様なら、人がどんな時に邪道になるかは、おわかり頂けるかと思います」

しほ「…もう一度、説明しなさい」

西「いくらでも致しましょう」




引き続き、両家元様にあれからの事を話した。

一年生のオレンジペコがOG会に弱みを握られ、"内通者"とならざるを得なかったこと。

もしも約束を反故すれば、彼女の家庭が崩壊するということ。

そして、裏切り者の女がやってきて、捕縛することに成功したが、そいつは捨て駒で、主犯は別にいるということ。


私はここまでということ…。

184 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:30:18.59 ID:9R9XbWYA0


しほ・千代「…………」


西「大人って、本当に汚いですよね? 気に食わなければ権力だの金だのを使ってその人を潰す」

西「そして抵抗手段を持たない者の弱みを握り、その邪道の片棒を握らせる」

しほ「…」

西「本当に、超一流の邪道ですよね。一回りして尊敬に値するほどですよ。あはははははは」

千代「まるで、私達は"共犯者"だと言わんばかりね?」

西「お二人はそうでないと私は信じています」

千代「だけど、あなたの目、"お前も同類だろう"と言ってるわよ?」

西「もしそうだとしたら、視線ではなく、"別のものを"刺してたかもしれません」

千代「あら怖い」

185 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:33:39.27 ID:9R9XbWYA0


西「…連中は私の大切な人を葬った」

西「私が可愛がった後輩まで利用した」

西「これが、かつて同じ学校に所属した"先輩"が、後輩たちにすべき行為なのでしょうかね?」

しほ・千代「…」

西「私は、真の邪道を目の当たりにしました」

西「そして、その邪道には王道は通用しない…」

西「だから、邪道には邪道で対処すべきと」

西「ダージリンを守れるのなら…………仲間がまっとうな道を歩めるのならば………」





西「私はもう邪道で構わないッ!!!」





傷つくのが怖かった。

傷つけるのが怖かった。

でも、私の知らないところで私のせいで誰かが傷つく。

そして誰かが奈落の底に落ちていく。

どう足掻いたってそれだけは変えられない。

だったら、私が邪道と呼ぶ邪道を片っ端から潰していけばいい。

同じ邪道として。

たった、それだけのことだ。


186 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:36:02.16 ID:9R9XbWYA0




しほ「………わかったわ」


西「…」

千代「そんな話だろうと思ったから、"お客様"をお呼びしておいた」

西「………お客さん?」

しほ「ええ」


千代「約束なさい」


西「…約束?」

千代「いかなる理由であれ、"お客様には牙を剥かない"と」

西「…?」

千代「聞こえた?」

西「…一体、誰なんです?」






千代「OG会よ」

187 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:40:17.33 ID:9R9XbWYA0


西「き、貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」





しほ「待ちなさい!!」

西「!! …は、離せっ!!!」

しほ「わからないの?! これまでのやり取りを経てここにOGを呼ぶという理由が!」

西「ぐっ………!」

千代「そうよ。お話は最後まで聞きなさい。学校で教わらなかったのかしら?」

西「なんで………あんたまで……!!」


千代「あなたが憎んでいるのはOG会の"裏切り者"でしょう?」

西「っ…!!」

しほ「OG会とはいえ、その方々はあなたが考えるような邪道ではない」

しほ「私や島田流も大変世話になった人たち。いわば…"恩師"よ」

西「…恩師………?」

千代「誓うわ。この方達はあなたの敵ではないと」

西「…」


千代「だから、あなたも誓いなさいな。無礼な真似はしないと」

西「………」

千代「聞こえたかしら?」

西「………わかりました」

千代「そう。………お待たせ致しました。どうぞお入りください」


188 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:46:53.80 ID:9R9XbWYA0




襖が開き、三名の和服姿の女性たちが座敷へ入ってきた。

いずれも、古稀は超えているであろう年配の女性だ。

OG会に対して私がイメージしていた、"お嬢様"や"玉の輿"といったものとは程遠く、老いてなお家元様たちのような鋭い目を残す人たちだった…。

その方たちが入ると同時に家元様たちは深々と一礼をする。

合わせて私も形だけの一礼をしてやった。



189 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:49:38.15 ID:9R9XbWYA0


しほ「お久しぶりです」

「大きくなったね。家元さんはまだ元気でやっているかい?」

しほ「ええ。母は今も元気です。先日、西住流の次期家元として襲名を致しました」

「そう。もうそんな年になったのだね」

しほ「これも偏に先生方のご指導ご鞭撻の賜物です。厚く御礼申し上げます」


「…それで、そちらのお嬢さんは?」

しほ「ご紹介が遅れました。知波単学園の隊長を務める、西です」

西「…西絹代と申します。本日はお忙しい中、お越し頂き誠に有難うございます」

「そうかい。あなたがあの西さんねぇ…」

「貴女の噂は私達にも届いているよ。他校ながら大変立派な方だと」

西「とんでもございません。姿を偽りあなた方の母校へ潜り込んだ破落戸です」

「ご謙遜を。話は聞かせてもらったよ」

西「恐縮です。…」

しほ「紹介します。左から、」



しほ「マチルダ会、クルセイダー会、チャーチル会、会長です」



西「なッ!!?」

千代「…ふふ」



190 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:52:35.31 ID:9R9XbWYA0


マチルダ会「驚いたかね?」

西「ええ…。OG会の方がいらっしゃるとはお聞きましたが、まさか会長が来て下さるとは…」

チャーチル会「なにせ教え子が来いと煩いものだからね」

千代「無理を言って申し訳ありません。"教え子"の頼みでして」

西「う………」

チャーチル会「我々の母校の危機と来たものだからね」

千代「恐縮です」


マチルダ会「にしても他校の生徒が聖グロリアーナの生徒に扮して活動をするとはね…」

西「こ、これら一連の行動は聖グロリアーナは一切関係なく、私個人の行動です…!」

西「ですので、全ての責任は…」

マチルダ会「…そうかい」

西「…」




マチルダ会「…ありがとうね」

191 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:54:28.27 ID:9R9XbWYA0



西「えっ…………?」

マチルダ会「いいや、"申し訳なかった"と言うべきか…」

マチルダ会「他校の生徒であるにも関わらず、聖グロリアーナの為に、心身を擦り減らす事をさせてしまって」

西「…」

チャーチル会「本来ならば、我々がすべきことなのに、申し訳ないね」

西「…」

クルセイダー会「心からお詫びをするよ」



会長たちは言い終わると、私に頭を下げた。

聖グロの生徒たちが畏敬の念を払うOG会の会長たちが他校である私なんかに…

私はそれに対し、どう返答すればいいか迷った…。



西「ど、どうか…頭を上げてください…!」

西「若輩者の私の考えに共感頂けるのであれば…私が皆様に何をお願いしたいかもお分かり頂けることと存じます……」

西「ダージリンさんの復学、生徒へ脅迫するOGの処分、そして…」




マチルダ会「それは出来ない」

192 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:57:07.82 ID:9R9XbWYA0


西「な、何故ですッ!?」


マチルダ会「旧隊長の更迭は、OG会の満場一致によるもの」

マチルダ会「一度決定したものを覆す行為は、学園および会への不満と混乱を招く」

西「…」

チャーチル会「彼女のやってきた行為は、我々の流儀に反するもの」

チャーチル会「その結果、会の人間の反感を買った」

チャーチル会「己を律せず、責任から目を背けた者への当然の報い」

西「………その、行為とは?」

クルセイダー会「反社会的な人物との接触」

クルセイダー会「および、成績不振による、聖グロリアーナの社会的地位の喪失」


西「…その反社会的な人物の名前は?」

クルセイダー会「その者の名前は聞いていないが、相当な荒くれ者だと聞く」

西「………。では、その判断を固めたのはいつ頃でしょう?」

チャーチル会「あなたがた知波単学園との試合が終わって一週間ほどが経過した頃でしょう」

西「そうですか…」

西「ダージリンさんが接触した反社会的な人物というのは、私、西絹代でございます」


三会派「…」

193 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 14:59:17.96 ID:9R9XbWYA0


チャーチル会「…それはどういうことかね?」

西「ダージリンさんは、私の敢闘を讃えて下さり、私が試合で負傷し入院した後も献身的に私を支えて下さった…」

西「いえ、私が入院する以前より、ダージリンさんは私に多くのことを教えて下さった!」

チャーチル会「…」

西「また、私が入院している間、OGの方がいらっしゃって仰りました」



― クルセイダー会はあなたを聖グロの"脅威"と言い

― また、チャーチル会は聖グロの"好敵手"と言い

― そしてマチルダ会は"騎士道精神に則り西絹代の思想を戦車道に取り組むべき"なんて言い出す程



西「如何なる理由かは存じませぬが、OG会の皆様は私をこの様に高く評価して下さっているとのことです…」

西「しかし、これら身分不相応な評価は、ダージリンさんがいなければ、まず起き得なかったものです」

西「つまり、私だけでなく、ダージリンさんの評価でもあります。いえ、ダージリンさんの評価そのものです…!!!!」

三会派「…」




マチルダ会「………そうかい。あの子がね………」



194 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 15:00:29.68 ID:9R9XbWYA0

西「!」

マチルダ会「どうやら、もう一度、あの子と話をしないといけないみたいです」

西「!!! …で、でしたら、ここにお呼びしましょうか? そのOGの方と一緒に!」

マチルダ会「出来るのかい?」

西「誤解を解消出来るのなら喜んでお呼びしましょう!」



一旦席を外し、ダージリンとアールグレイさんに電話をかけ、今すぐ来るようにと伝えた。

案の定ふたりとも「すぐには無理だ」と即答する。各々スケジュールがあるのだろう。

しかし、「OG会の会長と話をしている」と言ったら血相を変えて「すぐに行く!!」と言った。


…聖グロにとってOG会の会長というのはそれほどまで凄い存在なのか。

195 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 15:02:46.26 ID:9R9XbWYA0



【店の外】



一体どこで何をしていたのか知らないが、30分足らずで二人は飛んで来た。

ダージリンはアールグレイさんに同行する形で合流したらしい。

そして、ふたりとも露骨に顔に焦りが出ている。

ダージリンはともかく、あのアールグレイさんがこんなに焦るなんて…。




西「お待ちしておりました」

アールグレイ「……電話の話は本当なんでしょうね? 嘘だったら許さないわよ?」

西「OG会・会長の皆様を前に嘘などつけないですよ」

アールグレイ「み、皆様って…?!」

西「マチルダ会、クルセイダー会、チャーチル会のそれぞれの会長様ですよ?」

アールグレイ「なんですって!?」

ダージリン「あ、あなた…一体何をしでかしたの…!?」

西「とにかく、お待たせしているので、続きは中で」

アールグレイ「い、胃が痛くなってきたわ…」

ダージリン「私もですの…あぁ…こんな事になるなんて………」



アールグレイさんもダージリンも相当おろおろしている。




〜〜〜


196 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 15:05:30.35 ID:9R9XbWYA0


西「大変お待たせ致しました」フカブカ

アールグレイ「お忙しい中、お時間頂き有難うございます。聖グロリアーナ女学院・先々代隊長のアールグレイこと-----と申します」

ダージリン「元・聖グロリアーナ女学院・隊長のダージリンこと-----です」



二人とも大ポカをやらかして取引先に謝罪する営業マンみたいにカチカチになって挨拶をなさっている。

まるで入院中にやってきた家元様たちに萎縮していた私のように。


…二人とも本名を名乗ったが聞き取れなかった。



マチルダ会「来て早々悪いけど、本題に入ります」

アールグレイ・ダージリン「はい…!」

マチルダ会「先程、知波単学園の絹代さんよりお話を伺った」

マチルダ会「そして、我々OG会は考えを改める必要性が浮上した」

ダージリン「!!」

アールグレイ「それは…」

チャーチル会「我々OG会には、ダージリンは反社会的勢力との接触をした」

ダージリン「っ…!!」

チャーチル会「それに伴い、成績不振に陥り、聖グロリアーナの者として不適格だと」

チャーチル会「…そのような情報が流れ、明確な調査をすることなく退学という措置を取った」

197 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 15:08:35.53 ID:9R9XbWYA0


ダージリン「………」


マチルダ会「…しかし、絹代さんよりお話をお伺いしたところ、どうやらそれは違うということです」

マチルダ会「故に、我々はもう一度、あなたに話を聞こうと思った」

ダージリン「釈明の機会を与えて下さったこと、心より感謝致します…!」



ダージリンはこれまで受けてきた仕打ちを涙混じりに説明した。

ありもしない風説をでっち上げられた挙句、それを根拠に強制退学させられたこと。

ダージリンが語るたびにあの日の光景が浮かび上がる。


隊長を降格された

それどころか退学させられた

いわれのない屈辱を受けた

頭の中が真っ白になった

怒りのあまり頭がおかしくなってしまった

そして………。


私は泣くのを必死に堪らえようとしたが、無駄だった。

ダージリンが涙を流せば私も流す。

ダージリンが語れば私もその状況を鮮明に思い出す。

俯いて歯を食いしばるのが精一杯だった。

198 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 15:11:11.42 ID:9R9XbWYA0



ダージリン「………以上です」

三会派「………」



クルセイダー会「絹代さん、そして、アールグレイ」

アールグレイ「はい」

西「何でしょう…?」

クルセイダー会「今の話、事実ですか?」

アールグレイ「間違いありません」

西「…ダージリンさんの…仰る通りです……」

クルセイダー会「そうかい」

アールグレイ「…この件について、私の見識を述べても宜しいでしょうか?」

マチルダ会「どうぞ」


アールグレイ「今回の件、意図的に"学園の衰退"を目論む者の行動と当方は判断しました」

アールグレイ「組織規模までは特定出来ませんでしたが、OG会に潜む反体制派による、学院の内部崩壊を目的とした破壊工作が行われています」

チャーチル会「その子の退学が、工作とやらの一つと?」

アールグレイ「はい。現在の聖グロにおいて、最も優秀な生徒であるダージリンを追放することで、統制および秩序の崩壊を謀ったものと判断」

西「………」


199 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/10/28(土) 15:14:52.69 ID:9R9XbWYA0


チャーチル会「…それで、あなたは他校の生徒に"偽装"をさせて、それを調査するよう命じたと?」

アールグレイ「それは…」

西「私が自らの意志で、"ヴェニフーキ"と名乗り、生徒として調査を致しました」

西「確かに、アールグレイさんによる提案ですが、それに私は首を横に振ることも出来ました」

西「…ですが、私は今回の件について、"恩人"を最大級に侮辱する行為に対し、見て見ぬふりは出来ず、諸手を挙げて賛同、協力させて頂いた次第です」

三会派「…」

西「そして、私が"ヴェニフーキ"として掴んだ情報として、その反体制派と連絡を取り合う"内通者"および、その加担者と思われる人物の特定が出来ました」

ダージリン「!!」


マチルダ会「その生徒は?」

西「チャーチル歩兵戦車、つまり隊長車に乗る1年生です」

ダージリン「!! …うそ…どうしてペコが!! どうしてっ!!?」



そっか。まだダージリンには何も言ってたなかったね…。


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