吸血娘「死なないハゲってさ、不老不死ってより不毛不死だよね」屍男「…」

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39 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/14(土) 21:05:56.27 ID:Sq07Y5wLo
屍男「...」


魔女「まあショックなのは分かるけど、そんなに悲観することじゃないわよ。第二の人生だと思えば気楽なものよ?」

魔女「ほら、ゾンビ映画のゾンビ達も肉食べてる時はすごく楽しそうだし」


屍男「...俺はなぜ死んだんだ」


魔女「さぁ?そんなこと私に言われても
分からないわよ。全知全能の神じゃあるまいし」


屍男「...記憶はいつか戻るのか?」


魔女 「そうね、そのうち戻るんじゃないの。今は蘇った反動で脳が混乱してるだけだと思うし」
40 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/14(土) 21:08:21.54 ID:Sq07Y5wLo
屍男「...俺みたいな境遇のやつは他にもいるのか」


魔女「えぇ、死者が蘇ったら主に二つに分類されるわ」

魔女「一つは『幽霊(ゴースト)』こ死の実感がない、つまり事故とか病気とかの突然死をした人がなりやすいわね」

魔女「幽霊の特徴は肉体がないこと、それに視える人にしか見えない。こっり暮らすなら最適の存在よね」

魔女「他にも足が付いてるのとか、自由に移動が可能なタイプもいるけど...ここら辺は話すと長くなるからとりあえず飛ばすわ」


魔女「そしてもう一つは『怪物(モンスター)』アナタはこっちに当てはまる」
41 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/14(土) 21:12:45.54 ID:Sq07Y5wLo
魔女「怪物は死を実感しながら死ぬとなりやすいって言われてるわ。殺人とか、自殺とか…個人的な経験だと性格にクセがある人が多いわね」

魔女「怪物の特徴は蘇った肉体そのもの。超人的な怪力になったり、足が速くなったり、ワープしたり…まさにモンスターって感じ」

魔女「まあジェイソンみたいなのを想像すればいいわ。大体はあんな感じだから」



屍男「」グッ



グシャッ


屍男「...なるほどな、少し力を入れただけでカップが砕けた。ハルクにでもなった気分だ」パラパラ
42 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/14(土) 21:14:11.69 ID:Sq07Y5wLo
魔女「ちょっと、勝手にカップ壊すのやめてくれる?」


屍男「…フッー、つまりアレか。俺は…誰かに殺されたということか」

屍男「そして蘇ったと…くだらんホラー映画じゃあるまいし…馬鹿みたいな話だ」

屍男「…一つ、気になることがあるんだが」


魔女「なに?」


屍男「この頭…髪が抜けたのも蘇った影響なのか?」

魔女「いや、それは違うと思う」キッパリ


屍男「…」

屍男「…あぁ、そうか」
43 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/14(土) 21:16:38.66 ID:Sq07Y5wLo
今日はここまで
誤字脱字多くて申し訳ないです
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/14(土) 22:05:27.33 ID:Rj+/vdhSO
ハゲはきにしてるんだ
かわいいな
45 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:02:59.09 ID:AFSOJReDo
魔女「しかしまあ、怪物になったのは運が悪かったかもね。幽霊なら実体がないから好き放題出来たのに」

魔女「いくら死んでるといっても、怪物は元のベースが人間だからどうしても睡眠と食事が必要になるのよね。幽霊はただ浮いてるだけでいいんだけど」


屍男「…どうすればいいんだ。俺はこれから…」

屍男「名も故郷も親も知らずに、化け物になった状態で生きろと?そのまま死んでた方がまだ楽だろう」

屍男「…姿も髪が抜けて、この有様だ」


魔女「だから髪がないのは元からだって」

魔女「まあそうねぇ…このままだと本当に野垂れ死んじゃいそうだし、アナタが良ければ記憶が戻るまでここに住んでもいいわよ?あ、もちろん仕事はしてもらうけど」
46 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:04:05.32 ID:AFSOJReDo
屍男「…いいのか?お前は」

屍男「会ったばかりの死人を家に招き入れるなんて…余程のお人好しか間抜けだぞ。正常な判断とは思えない」


魔女「家を提供してあげるって言ってるのに、普通そんなこと言う?」

魔女「別に理由なんてないわよ。ただ、困った時はお互い様ってだけ」

魔女「貸しは作っておいて損はないからね。いつか倍返し貰えればいいし」


屍男「…お前は本当に何者なんだ?人間なのか、それとも怪物というやつなのか」


魔女「さあ?そんなのどうでもよくない?」

魔女「アナタが直面してる状況と比べたら…私の正体なんて些細なものよ」
47 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:05:35.61 ID:AFSOJReDo
…………………………………………………
……………………………



屍男「…」ポンポン

屍男「…ここの本はこっちの本棚か」

屍男「…虫に食われているな。これはもうダメか」ペラペラ



屍男(あれから二週間か。成り行きであの女の店で働くことになったが…)

屍男(なんだこの本屋は、オカルト系の怪し気でインチキ臭い本しかないぞ)

屍男(…しかも半分くらいは何の言語で書かれているか分からん。状態も悪いし何年前の白物なんだ)

屍男(これだと客も来ないはずだ。今までに来た奴なんて数えるほどしかいない…)


屍男(…いや、問題はその客の方か)
48 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:06:50.39 ID:AFSOJReDo
屍男(時々来る客の中でも、本には目もくれずに店の奥に入っていくやつらがいる)

屍男(その客には触れるなと言われているが…あれは間違いなく、一般人ではない。気配で分かる)

屍男(そして、そいつらの共通点は馬鹿でかい荷物を持っているということだ。俺の勘だとアレは…)


魔女「おーご苦労、ご苦労。だいぶここら辺も片付いてきたわね」

魔女「やっぱり男の人がいると助かるわ。女の子一人だと本の整理もままないからねぇ」


屍男「…女の子という年齢はとうに過ぎてると思うが」


魔女「何か言った?」


屍男「…何も」
49 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:08:17.68 ID:AFSOJReDo
魔女「で、そろそろ記憶が戻ったりした?」


屍男「…いや」


魔女「え〜まだ戻ってないわけ?それはちょっとおかしいわね…」

魔女「普通は数日から一週間で、頭が整理されて生前のことを思い出すはずなんだけど...」


屍男「…どうなっているかはこっちが聞きたい。本当に戻るのか?」


魔女「二度と戻らないってことはないでしょ。記憶自体は頭の中にちゃんと入ってるはずだし、気長に行くしかないってことね」


屍男「…そうか、待つしかないか。ところで一つ、こちらも聞きたいことがある」

屍男「ここはいつから死体安置所になったんだ?」



魔女「…え?」
50 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:09:06.48 ID:AFSOJReDo
屍男「隠しても無駄だ。俺も同じ死体なんだからな。死体の臭いは僅かな死臭で分かる」

屍男「それをお前が関わるなと言った客が運んでいることも知っている。理由を聞かせてもらいたい」



魔女「…」



屍男「こちらも居候の身だ。詮索はしたくないが、これはあまりに常軌を逸している」

屍男「返答次第では…こちらも黙っているわけにはいかない」



魔女「…それってつまりこういうこと?」

魔女「私が、人を殺して、その死体で何かしていると」



屍男「…あぁ、そうだ」
51 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:10:09.02 ID:AFSOJReDo
魔女「...」



魔女「はぁーあ…ばーれちゃった」

魔女「まあ半分正解ってところね。勘違いしないでほしいけど、私は死体を弄り回す趣味なんてないわよ。生きてるなら話は別だけど」

魔女「いいわ、着いてきなさい。真実を教えてあげる」スタスタ



屍男「…」



魔女「なに?警戒してるの?」

魔女「安心しないさいよ。バレたから口止めなんて古典的なことやらないから」
52 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:11:15.07 ID:AFSOJReDo
スタスタ…スタスタ…


屍男(…店の奥にこんな地下へ進む階段があったのか。まるで秘密基地だな)

屍男(しかしこの臭いは…奥に進めば進むほど、死臭がはっきりする。一人や二人の量じゃないぞ)


カチャッ


魔女「はい、この部屋よ」ガチャ



屍男「…なんだ。この部屋は…」



ゾォォォォォォォォォォォォォォォォォ



屍男(見渡すとまず視界に入るのが、台に乗せられた多数の死体…状態は損傷が激しいものから、ほぼ無傷のものまで様々だ)

屍男(そしてその中央にあるのが巨大な水槽、いや鍋なのか?中には液体が入っていて、沸騰している水のように煮え立っている。どう見ても人体に悪影響を及ぼす色と臭いだ)
53 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:13:01.17 ID:AFSOJReDo
屍男(最高に狂ってる光景だ…常人ならこの場を見るだけで卒倒するだろう)

屍男(…まさか、自分が呑気に本の整理をしていた部屋がこんな地獄だったとは)


屍男「…おい、これは一体どういうことだ?お前は…ここで何をしている」

屍男「こんなものが世間にバレたら逮捕どころの話じゃないぞ...歴史上ナンバーワンのクレイジーでイカれてる最高のサイコ犯罪者だ」


魔女「別に私はそこまで狂ってないわよ。異常が日常になってるだけ、すぐ慣れるわ」

魔女「で、ここで何をしているのかって話だけど…この死体の顔に見覚えはある?」



死体『』



屍男「…そいつ鼻から下がないぞ」
54 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:13:55.58 ID:AFSOJReDo
魔女「あら?ごめんなさい。分かりにくかったわね、じゃあこれは?」



死体『』



屍男「…記憶のない俺が人の顔を覚えてると思うか?」



魔女「えぇ、コレは結構有名人だったしね。ニュースでよくやってたから見覚えがあっても不思議じゃない」

魔女「ほら、これが生前の写真。これなら誰か分かるでしょ」ペラッ



屍男「…ん?」ピクッ

屍男「待て、こいつは確か...殺人犯で手配中の男じゃなかったか?老人を二人殺したとかいう...」
55 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:15:58.09 ID:AFSOJReDo
魔女「正解、一週間前に二人のお爺さんを殺して、その犯行の様子をSNSに公開したゲス野郎」

魔女「表では今でも逃走中ってシナリオになってるわね。ま、捕まることは永遠にないでしょうけど」


屍男「…なぜそいつが死体になって転がっているんだ」


魔女「何となくもう察してるんじゃないの?極悪人が殺されるなんて理由は一つしかないじゃない」


屍男「…復讐か」


魔女「だいせいかい〜誰から依頼されたかは企業秘密で言えないけど、こいつは依頼されて殺されたのよ」

魔女「自業自得ってやつよね。人から恨まれることなんてするもんじゃないわ」
56 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:16:42.57 ID:AFSOJReDo
魔女「ここにある死体もみんなそう、殺人鬼から強姦魔に放火魔…麻薬王から頭のネジが外れたやつまで悪人のオールスター」

魔女「まるでクズの博覧会…標本にして飾ったらお金取れるレベルだと思うわ」


屍男「…するとあの死体を運んでたやつらは」


魔女「アナタ…いえ、私達の同類よ。人の姿をしているけど、みんな怪物や人外の化け物」

魔女「私が仕事を紹介して、彼らが実行し、達成したら報酬を払う…まあどこにでもあるビジネスよ」



屍男「...」

屍男「…はぁ、一体何なんだ」
57 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:18:15.65 ID:AFSOJReDo
屍男「いきなり目が覚めたら記憶を失っていて、娼婦のような恰好をした女に自分は死人だと告げられ、そいつの店に住むことになり...」

屍男「あげくの果てにはその女が実は殺し屋の元締めだと?そろそろ頭がパンクしそうだ…この世界はフィクションで出来ているのか」

屍男「…その鍋は何だ?まさか死体を溶かすとでも言うんじゃないだろうな」


魔女「おっ、ご名答」

魔女「ふんっ」グッ


グイッ

ドボンッ…


ジュッ…グツグツッ...グツグツッ…


魔女「この液体は私が作った特別製、人間の細胞を一つも残さずにこの世から消滅させる」

魔女「死体っていう証拠がないと殺人は立証できないって、かの有名な殺人犯も言ってたでしょ?」
58 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:19:14.20 ID:AFSOJReDo
屍男「…」



魔女「で、どうするの?」

魔女「これが死体を運んでたワケ、私の正体は復讐代行兼殺し屋」

魔女「いくら悪人を殺してると言ってもそれが善だとは思っていない。結局は全部お金のため、我ながら小悪党やってると思うわ」

魔女「アナタはこの事実を知って…どう行動をするのかしら?」



屍男「...」チラッ



死体『』



屍男「…」ゴクリ

ズキッ
59 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:20:08.05 ID:AFSOJReDo
屍男「…ッ」グッ

屍男(なんだ?頭が...)



魔女「どうしたの?頭を押さえて」



屍男「…何でもない」

屍男「俺がお前達の所業を知ってどうするかだったな…俺は」



屍男「…特に何もしない。好きにしたらいい」



魔女「えっ」
60 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:20:55.67 ID:AFSOJReDo
屍男「…なんだ、その反応は」



魔女「いや…ちょっとゾンビくんのキャラと違うなと思って」

魔女「私の目だと、こんな汚れ仕事は嫌いなタイプだと思ってたから」



屍男「...勝手に俺を判断するな。俺は…」

屍男「この世界には消えていい存在もいると思っただけだ。殺してるのは市民に危害を加えてるやつらなんだろ?」

屍男「なら…そんな屑は死んだ方がいい。貴様達が見境なく人を襲っているというなら話は違ってくるがな」



魔女「…ふーん」
61 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:21:46.04 ID:AFSOJReDo
魔女「私もそうだけど、どうやらアナタも元から相当ぶっ飛んだ思想を持っているようね。記憶がないのもそこから来ているのかも」

魔女「いや、これはどちらかと言うとアッチ系の…」



屍男「…?どういうことだ?」



魔女「ううん、何でもない。さすがに考え過ぎか…とにかく、アナタが敵に回らなくて良かったわ」

魔女「せっかく仲良くなってきたのにもう殺し合うなんて…勿体ないですもんね」ニコッ



屍男(…食えない女だ)
62 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/15(日) 18:22:51.82 ID:AFSOJReDo
今日はここまで
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/16(月) 01:13:20.54 ID:jKy2uovYO
ハゲなんだね
おつ
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/16(月) 12:32:42.33 ID:nxS81n0TO

こんなもの見たらそりゃ髪も抜けますわ
65 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 17:51:50.74 ID:+2aT8+rko
…………………………………………………………
……………………………………………



屍男「…」キュッキュッ



屍男(ここの店の秘密を知ってから数日が過ぎた。あれから特にこれといった変化はない)

屍男(しかしよく死体の山の真上で商売なんて出来るものだ。案の定売れてないがな)


屍男「…よし、ここは綺麗になったな」キュッ




スゥッ…




屍男「…ん?」

屍男(…客か、珍しいな。しかもまだ子供か)
66 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 17:52:55.75 ID:+2aT8+rko
「...」ペラペラ



屍男(...背丈を見るにまだ小学生、いや中学生か?読んでる本のタイトルは…『呪い大百科』)

屍男(…まあここに来るやつが全員化け物ってわけでもないからな。呪いだの占いだのに興味を持つ年齢だろうし、そこまで不思議でもないか)



「…これでいっか」スッ



屍男(…ちょっと待て、なぜ本をもって出口に向かう?まだ会計が終わってないぞ)

屍男(これは…まさか万引きというやつか)

屍男(…さすがに止めた方がいいか。店番も頼まれてるしな)
67 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 17:54:08.78 ID:+2aT8+rko
屍男「おい、待て」



「...」



屍男「売り物を持ってどこに行くつもりだ?金を払うのが先だろう」



「…ハァ?お前、誰に向かって口聞いて…」




吸血娘「...っ!」ピクッ



屍男(…やはり中学生くらいか。平日の昼間からブラブラしているのは学校をサボっているからか)

屍男(少し、他の子供と違うように見えるが…まあ見るからに不良っぽいからな。そのせいか)
68 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 17:55:31.37 ID:+2aT8+rko
吸血娘「...」



屍男「…どうした、ジッと固まって」

屍男「何も問答無用で警察に突き出そうとは思ってない。金さえ払えばこちらも事を荒立たせるつもりはないからな」



吸血娘「…ハゲ」ボソッ



屍男「…」

屍男(…失礼な子供だな。最近の若いのはみんなこうなのか)


屍男「いいから代金を払え。今の発言も含め、今回は見なかったことにしてやる」
69 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 17:56:27.99 ID:+2aT8+rko
吸血娘「ハァ?何でただの死体が私に命令してるの?私を誰だと思っているんだ」


屍男「」ピクッ

屍男(こいつ…まさか)


屍男「…俺が死体だとわかるのか?」


吸血娘「んなもん見れば誰だって分かるわ。だって臭いし、目が死んでるし、おまけに毛根も死んでるし」

吸血娘「というかお前誰?あのビッチに雇われたの?」



屍男(…あの女のことも知っている。やはりこの子供も…)
70 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 17:58:02.52 ID:+2aT8+rko
屍男「…あぁ、そうだ。ワケあってここに住まわせてもらっている」


吸血娘「セフr」


屍男「違う」


吸血娘「反応はっや、まあいいや。そっか…そういうことか」

吸血娘「じゃあ私は急いでるから、またなハゲ」


屍男「おい待て、金を払えと言ってるだろうが」


吸血娘「あいつにツケといて、まあ返す気なんてないけど〜」

吸血娘「んじゃそういうことで〜」フリフリ



屍男「…なんなんだあいつは」
71 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 17:59:10.31 ID:+2aT8+rko
屍男「ということがあったんだが」


魔女「あぁ、ドラキュラちゃんね。あの子なら別にいいわ。うちのお得意様だし」


屍男「…ドラキュラ?」


魔女「正確に言うとヴァンパイア。人の血を啜る半不老不死の世界で最も有名な怪物…あ、怪物と言ってもアナタと違って死んでないわよ?あの子は先天性の方」

魔女「簡単に言うと人外ってやつね。こっちの世界なら、アナタみたいな死人よりこのタイプの方が断然多いわ」


屍男「…ヴァンパイアか。さすがに慣れたのかもうそこまで驚かなくなったな」

屍男「あの子供も人を殺しているのか?」
72 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 18:01:01.95 ID:+2aT8+rko
魔女「見た目は子供だけど、実年齢はそこまでじゃないわよ。もうお酒は飲める年頃だし」

魔女「仕事に関してはよくやってくれてるわ。暗殺って分野だとあの子の右に出る者はいないってくらいにね」


屍男「…そうか」


魔女「もしかして、あの子のことが気になってるの?ゾンビくんて意外とストライクゾーン広いのね」


屍男「…誤解を招く言い方はやめろ。俺はただ、ああいう子供が手を汚していることが気に入らないだけだ」


魔女「だからあれでも成人だって、まあそこら辺は種族の違いってやつだと思うけどね」
73 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 18:03:50.66 ID:+2aT8+rko
魔女「ヴァンパイアから見たら、結局は人間は食糧だってこと。人間は同種を殺すことに抵抗があるけど、あの子にはそれがないから割り切れるんでしょうね」

魔女「人間が家畜用の豚や鶏を殺すのと同じでね。目の前から死を極力まで排除している現代人からしたら残酷に思えるでしょうけど」


屍男「…」


魔女「価値観の違いってやつよ。じゃあ私はお風呂入って髪と死体をとかしてくるから食器洗っといてちょうだい」スタスタ




屍男(…価値観の違いか)

屍男(言葉で片付けるのは簡単だが、やはり異常だな…この世界は)

屍男(…ただ、少しだけ理解出来たような気がする)
74 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 18:04:37.71 ID:+2aT8+rko
▢▢▢▢ 翌日 ▢▢▢▢



吸血娘「でなーその男が私に言ったんだよ」

吸血娘「『け、警察!誰か助けてぇ!!!』ってね!」

吸血娘「自分は4人も殺しておいて警察に女の子みたいな声出して助け求めてやんの!身の程を知れってんの!アッハハハハハハハハハァ!!!!!」バンバン


屍男「…」


吸血娘「まあすぐぶっ殺してやったけどね。まったくああいうクズ共が相手だと何の迷いもなく殺れるから楽だわ」


屍男「…おい」
75 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 18:05:37.72 ID:+2aT8+rko
吸血娘「ん?なに?」

屍男「…なぜ今日もここにいる。そしてなぜ三時間もそこでくっちゃべっているんだ」


吸血娘「何でって、別に理由なんてないけど?ただの暇潰しだし」

屍男「…はっきり言うぞ。仕事の邪魔だ、帰ってくれ」

吸血娘「仕事って言ってもどうせ本の整理とか、掃除くらいしかやることないじゃん。せっかく退屈そうな顔してたから面白い話してやったのに」

屍男「…誰も頼んでない」

吸血娘「うるせぇ!このハゲ!お堅いのはこのハゲ頭だけにしとけ!」バシーン


屍男「...」ヒリヒリ


吸血娘「あー…気持ちいい!一度このハゲ頭を平手打ちしたかったんだよね!やっぱり殴り心地最高だわ!」バシバシ
76 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 18:07:02.91 ID:+2aT8+rko
屍男「...」イライラ

屍男(な、なんなんだこいつは…突然来たと思ったら、つまらん話と頭の話を延々と...)

屍男(さすがに腹が立ってきたぞ...グッ、押さえろ。相手はまだ精神的に未熟だ…我慢しなくては)


吸血娘「あっ、おいハゲ、ちょっとそこの本取って」


屍男「…どれだ」


吸血娘「そこの手前のやつ、表紙が黒いの」


屍男「これか?」スッ


ネチャッ
77 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 18:07:50.10 ID:+2aT8+rko
屍男「…なんだ?何か手に…」


吸血娘「アッハハハハハハハハハァ!!!!引っかかってやんの!その本の表紙の塗料はぐちゃぐちゃに溶けてて触るとくっ付くんだよ!」

吸血娘「しかもそれめっちゃくさいぞ…一度風呂に入っても取れないくらいに…まあ元から臭いし変わんないか!ぷぷっ」プププ


屍男「...」クンクン

屍男「」ブチッ



屍男「…いい加減にしろ。大人をからかうな」



吸血娘「アん?もしかして子ども扱いしてる?これでも二十歳なんですけど
78 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 18:09:00.79 ID:+2aT8+rko
屍男「ならもっと年齢に相応しい振る舞いをしろ。いつまでガキみたいな真似をしてるんだ」


吸血娘「だってヴァンパイアの歳だと二十歳なんて人生の十分の一にも満たしてないし、人間換算だとまだ8歳くらいだし」


屍男「そういう問題じゃないだろうが、同年代の人間を見てみろ、お前よりはずっと大人だぞ」


吸血娘「…んなこと言われても同じ歳の人間なんて話したことすらないし」


屍男「…?学校に行ったことはないのか」


吸血娘「ヴァンパイアが学校になんて行けると思う?豚小屋にオオカミを放り込むようなもんだろハゲ。少しはその何にもない頭働かせろ」
79 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 18:09:49.43 ID:+2aT8+rko
屍男「…お前、もしかして」

屍男「寂しい…のか?」



吸血娘「は、はぁ!?ち、ちげーし!全然そんなんじゃねーし!!」

吸血娘「ば、ばーか!あーほ!もう帰るわハゲ!頭洗って出直して来い!」ダッ



屍男「…」







屍男「といううことがあったんだが」

魔女「ほう」
80 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 18:11:32.57 ID:+2aT8+rko
魔女「あのドラキュラちゃんがねぇ…結構可愛いところあるんじゃないの」

魔女「確かに、あの子は自分と近い歳の人間との繋がりはなかったろうしね。周りは自分と同じモンスターか、獲物しかいなかっただろうし」

屍男「…あいつは今まで一人だったのか?」


魔女「...」

魔女「親は居たけど、あんまり仲は良くなったみたい」

魔女「ヴァンパイアは夜型の生活だから、人との繋がりは今まで仕事ぐらいでしかなかったのかも。後は同族の集会くらいか」

魔女「そもそもそのヴァンパイア自体が、今では少数の血統しか残ってないからねぇ…二、三世紀前はもっと数が多かったらしいけど」

魔女「ま、仕方ないか。彼女と同年代と言ったら、血液に一番脂がのってる時期だもん。仲良くなる前に出会ったら本能で襲っちゃうまであるし」
81 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 18:13:23.42 ID:+2aT8+rko
魔女「基本的に普通の人間には手を出さないから、自分から距離を取ってるところもあるんだろうね」

屍男「…そんな奴がなぜ俺にちょっかいをかけてくるんだ」

魔女「さあ?ゾンビくんって頭以外は男前だし、もしかしたら惚れられてるのかもね」


屍男「......」


魔女「冗談よ、本気にしないで」

魔女「まあ考えられる可能性としては…どこか同じ雰囲気を感じたのかもね」


屍男「…同じ雰囲気?俺とあいつがか?」


魔女「―――――」

魔女「そうね、二人は結構似てると思うわよ」
82 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 18:14:32.83 ID:+2aT8+rko
屍男「…」

屍男「…そうか、あいつは今まで孤独に生きてきたんだな」

屍男「記憶を失い、何も寄り添うものがない今の俺と…確かに似ているかもしれん」





魔女「えっ?アナタには私がいるじゃない」

屍男「…お前には貸しがあるし、恩も感じているが、深い仲になろうとは思ってないしなるつもりもない」

屍男「はっきり言うと、なるべく関わりたくない」

魔女「酷くない?」
83 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/16(月) 18:15:38.86 ID:+2aT8+rko
今日はここまで
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/16(月) 18:27:28.79 ID:Efp08mcc0
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/16(月) 20:22:40.55 ID:oNFScUkyo
吸血娘ちゃんペロペロ
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/16(月) 20:29:53.04 ID:9vS7yeNyo
今のところ魔女凄くいいやつだと思うんだが
ここまで嫌われるってことは第六感的に何か嫌なものを感じてるんだろうか
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/16(月) 20:30:53.05 ID:oNFScUkyo
見た目がトロールみたいなんじゃね
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/16(月) 20:34:59.49 ID:9vS7yeNyo
娼婦みたい、露出が多いって書いてあるから
若くて美人だと思うぞ。ビッチ呼ばわりされてるし
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/17(火) 02:34:48.32 ID:/kB7EAocO
ハゲ弄りが凄い
おつ
90 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:02:06.34 ID:YQmGKLBxo
…………………………………………………
…………………………………………


吸血娘「私がぶっ殺したやつの中で一番強かったのは半魚人野郎だったなぁ」

吸血娘「あの時は初めて人間以外を相手にしたし、マジで死ぬかと思ったわ」

吸血娘「ま、最後は喉笛に噛みついて血吸ってやったけどね。味は予想通り生臭かった」

屍男「…そうか」


屍男(あれから毎日、こいつは店に来るようになった)

屍男(話す内容はやれ誰かをぶっ殺しただの、あいつは手強かっただの…低俗な話ばかりだが、聞いててそれなりに退屈はしない)

屍男(一人で過ごすより、二人の方が気が楽になるんだろう。こいつも…俺も)
91 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:03:08.16 ID:YQmGKLBxo
屍男「その半魚人とやらは比喩か何かか?まさか本物じゃあるまいな」


吸血娘「いんや本物だけど、そりゃヴァンパイアがいるなら半魚人がいてもおかしくないだろ。常識的に」

吸血娘「ほかにも狼男とか、翼が生えてるやつとか触手がうねうねしてるやつもいるぞ」


屍男「…それを世間では非常識と言うんだがな」

屍男「殺し屋というのは人だけではなく、そんな輩も相手にするんだな。気苦労が絶えんだろう」


吸血娘「依頼するのは人間だしね。たまに人殺しの中にもそういうやつらが混じってることもあるよ」

吸血娘「でも普通の人間相手にするのとあんま変わらんけどね。私ヴァンパイアだし、最上級の魔族だし」ドヤァ
92 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:04:05.22 ID:YQmGKLBxo
屍男「…同じ人外相手でも平気なのか。仲間みたいなものだと思うんだが」

吸血娘「ハァ?全然違うでしょ。あんな気持ち悪いやつらと一緒にしないでよ」

吸血娘「同じ人間じゃないってだけで、種族も思想も全然違うわ。そんなの気にしてたらゲロ吐くわ」

屍男「…そういうものか」



カランカラン♪






魔女「帰ったわよ…って、ドラキュラちゃん今日もいるの」

吸血娘「ゲッ」
93 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:05:13.02 ID:YQmGKLBxo
魔女「ここ最近毎日じゃない?そんなにこの店が気に入ったのなら、何か買っても罰は当たらないと思うけど」

吸血娘「誰がお前に金なんて落とすか!ファッキュー!」クイッ

魔女「あらお下品」


吸血娘「んじゃ、あのビッチも来たことだしもう帰るわ。また明日なハゲ」


屍男「…あぁ」


魔女「もう帰っちゃうの?夕飯ぐらいはご馳走してあげるのに」


吸血娘「誰がお前の作った飯なんて食えるか!絶対違法な薬品とか入れてるわ!」ダッ

魔女「失礼しちゃうわね。たまにしか使ってないわよ」


屍男(…ん?)
94 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:05:54.46 ID:YQmGKLBxo
魔女「さ、ドラキュラちゃんも帰ったことだし少し遅いけどディナーにしましょうか。今日は私が作るわ」


屍男「…」

屍男「いや、今日は俺が作る」


魔女「え?どうして?交代制って決めたのに」


屍男「当分、飯当番は俺がする。お前は休んでろ」スタスタ


魔女「えー…まあ休めるのはいいけどさ、正直ゾンビくんのご飯ってあんまり美味しくな」


屍男「絶対に俺が作る」
95 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:06:46.51 ID:YQmGKLBxo
…………………………………………………………
………………………………………


吸血娘「ハゲ、お前死んでからどれくらい経った?」

屍男「…急にどうした」

吸血娘「別に、気になっただけ」

屍男「ひと月と少しだな。そろそろこの生活にも慣れてきたところだ」


吸血娘「ふーん...」


吸血娘「なぁ、そろそろ生前の自分の手掛かりとか探さないの?ずっとこの埃くさい店の掃除ばっかしてるけど」

吸血娘「普通だったら最優先に自分の正体を探すと思うんだけど、そんなゆっくりしてて大丈夫なわけ?」


屍男「...」
96 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:08:23.82 ID:YQmGKLBxo
屍男「…最初の一週間は探した…が、何も有益な情報はなかった」

屍男「恐らく、この町は俺との関わりがほぼないのだと判断した。これ以上探すのは時間の無駄だ」

屍男「かと言って、他の地方に行くわけにもいかん…この店を離れたら俺はただの住所不定の無職だからな。そこまでする余裕はない」

屍男「だから今は現状維持だ…ここを離れて生活が安定したら旅でもして見つけるつもりだ」


吸血娘「…なんかお前って変だよな。まるで自分から逃げてるみたいだぞ」


屍男「…そうか?普通だと思うが」


吸血娘「私だったら真っ先に飛び回る。テレビのリモコンをなくしたのならともかく、自分の記憶だもん。そんな悠長な考え方はできない」
97 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:09:22.56 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「自分の過去とか気にならないの?親とか、友達とか」

屍男「…さあな、確かに気にはなるが、そこまでの執着はないな」


吸血娘「じゃあ自分を殺したやつのことは?確か路地裏のゴミ捨て場で目が覚めたんでしょ?」

吸血娘「自殺するにしては明らかに変な場所だし、殺されて誰かに捨てられた以外に考えられないじゃん」


屍男「...」

屍男「…それもあまり興味はないな。殺されたということは、それ相応の理由があったんだろう」

屍男「わざわざ犯人探しをするつもりはない」
98 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:10:26.77 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「…」

吸血娘「そう、私だったら犯人を見つけ出して絶対殺すと思う。復讐としてね」


屍男「…それが正常だろうな」



吸血娘「はぁ〜〜〜とんだフニャチン野郎だな。どこまで無頓着なんだか」

屍男「…そういう言葉は使うな。下品だぞ」


吸血娘「…あっ、そういえばさ、さっき生活が安定したら離れるって言ってたけど、もしかしてここ以外に住居が見つかったらそっちに移るつもりなの?」


屍男「…あぁ、いつまでも一人暮らしの女と一緒というわけにもいかんからな。いや、その他の死体もいるか」

屍男「あいつから僅かだが、給料も貰っている。まとまった額が貯まったら出て行くつもりだ」
99 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:11:44.17 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「へぇ〜…ふ〜ん…」

吸血娘「…よし、決めた。ハゲ、今日はあのビッチ何時に帰ってくる?」


屍男「...?今日は遅くなるとか何とか言ってたが、それがどうした」


吸血娘「そ、じゃあ電話するか」ピッ


プルルルルルル…プルルルルルル…



吸血娘『あ、もしもし?私だけど』

吸血娘『今日からこのハゲ、私の家で引き取るから。ってことでよろしくぅ!』



屍男「!?」

屍男「ちょっと待て、何を言って…」
100 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:12:48.82 ID:YQmGKLBxo
吸血娘『は?急に言われても困る?うるさいなぁ…ほら、買い取り代を口座に入金したから確認して、これじゃ足りない?』

吸血娘「―――ん、変われって」ポイッ



屍男「おい、携帯を投げるな。危ないだろ」グッ


『もしもし?ゾンビくん?話はさっき聞いてたと思うけど、そういうことで今日からドラキュラちゃんと暮らすことになったから』


屍男『はぁっ!?』

屍男『おい、お前達は俺をペットか何かと勘違いしているのか?本人の承諾もなしに勝手に話を進めるな』
101 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:13:48.64 ID:YQmGKLBxo
『でもゾンビくんって居候でしょ?とやかく言える立場じゃないと思うんだけど』

屍男『…確かにそうだが、それとこれとは話が別だ。簡単に人を売買するな、こっちの事情も考えろ』

『え?もしかしてドラキュラちゃんのところに行くのが嫌なわけ?そんなに私と離れたくな...』


プツッ


屍男「…この蛇が」ポイッ



吸血娘「お前も投げてるじゃん」グッ

吸血娘「さっ、ってことで今日から私の家に引っ越しな。荷物さっさとまとめといてよ」
102 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:14:58.40 ID:YQmGKLBxo
屍男「...なぜ俺を買ったんだ」

屍男「あいつがふたつ返事でOKしたということは…決して少ない額ではなかったんだろう。そこまでする動機は何だ」


吸血娘「…別に、そろそろまともに使える眷属が欲しかっただけ。だってお前、こんな誰も来ないオンボロ店でも毎日掃除してるじゃん」

吸血娘「だから便利だと思ったの。まあハゲてるのはマイナスだけどな」


屍男「…こちらとしては、ここにいるよりは快適に過ごせると思うが…」

屍男「…その、いいのか。大の男を住まわせるなんて。家族もいると聞いたが」
103 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:15:34.49 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「…またあいつ余計なこと言いやがって」ボソッ

吸血娘「いいよ。今は私一人だけしかいないし。無駄に広いから部屋も困らないしね」


屍男「…しかしだな」


吸血娘「あぁもう!優柔不断だなこのハゲ!中途半端なのはその頭だけにしとけ!いいから荷物まとめろ!」ゲシッ

吸血娘「向こうに行ったら掃除やら洗濯やらもやってもらうんだからな!きびきび動け!」ゲシゲシッ


屍男「…分かった。分かったから蹴るな」
104 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:16:19.82 ID:YQmGKLBxo
……………………………………………………………………
.........................................................



吸血娘「ほら、ここが私の家」

屍男「...」

吸血娘「ん?どしたの。そんなまじまじと見て」


屍男「…いや、思ったより小さいと思ってな。ヴァンパイアというのはもっと貴族的なイメージを想像していた」

屍男「どんな豪邸か城が出てくるのかと思ったら…割と普通だった」


バシッ


吸血娘「今のご時世にそんな目立つもん建てられるかハゲ!このくらいでちょうどいいんだよ!」

吸血娘「というか見た目より中は結構広いんだからな!?いいからさっさと入れ!」ゲシッ
105 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:17:39.09 ID:YQmGKLBxo
チリンチリン♪



屍男「…確かに、悪くはないな」キョロキョロ

吸血娘「ここに荷物置いていいから。トイレと風呂の場所も教えるからついてきて」スタスタ



屍男「ここの家に一人で暮らしているのか?だいぶ持て余しているように見えるが」

吸血娘「そう、一人暮らしするには大きいよ。でも狭いよりマシでしょ」

屍男「親は今はどこにいるんだ?ヴァンパイアと言ってもそこら辺は人間と変わらないと聞いたが」


吸血娘「...」
106 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:18:30.13 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「母親は病弱だったらしくて、私を産んですぐに死んだよ」

吸血娘「父親もつい先月ね」


屍男「......」

屍男「…すまない」


吸血娘「いいよ、父親とはそんなに仲良くなかったし。むしろ家のスペースが空いて助かったくらい」

吸血娘「ほら、ここが風呂。シャワーの使い方分かる?こっちを回してここを押すとお湯で...」



屍男(…いくら親しくなかったと言っても唯一の肉親だったはずだ。精神的なショックは大きいだろう)

屍男(やはり寂しかったのか。孤独を恐れるのは人もヴァンパイアも変わらない…か)
107 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:20:24.34 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「お前の作るご飯あんまり美味しくないな。なんか味が雑」モグモグ

屍男「…文句を言うな。ある材料で手早く作ったんだからな。それに俺はコックじゃない」

吸血娘「これならピザとった方が良かったわ。うん、マジで」モグモグ

屍男「…そのわりにはよく食ってるように見えるが」


吸血娘「ふぅ、食った食った。じゃあおやすみ〜」


屍男「…もう寝るのか、眠る時間には早いと思うが」


吸血娘「ふわぁ…ヴァンパイアは昼間はあんまり活動しないの。人間が夜に眠るのと同じでね」

吸血娘「私が寝てる間に掃除と洗濯やっといて...あ、下着は絶対に見るなよ。見たら殺すから…」スタスタ
108 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:21:18.77 ID:YQmGKLBxo
屍男「…」

屍男「…勝手なやつだ」


屍男「はぁ、しかしまた忙しい日になりそうだ。まさか今度はこの家に住むことになるとは」

屍男「片付けるならまずはリビングだな。洗い物も溜まってるし、窓も埃が大量にある。そのあとは二階で…」

屍男「…俺はメイドか。毎日掃除をしてるような気がするぞ」



屍男「...」



屍男「…一体、昔の俺はどこで何ををしていたんだろうな」
109 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/17(火) 21:24:55.41 ID:YQmGKLBxo
今日はここまで
魔女は嫌われているというより出来るだけ関わりたくないと思われていますね
何かそんなオーラが出てるんだと思います
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/17(火) 22:36:42.53 ID:vVQMsJzj0
笑顔が怖いとかやろ
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/17(火) 23:06:22.88 ID:Qn3J61Uao
胡散臭そうなやつとかも近寄りたくないよね
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/18(水) 00:12:10.39 ID:hAs48GXsO
完璧ハゲなのか半端ハゲなのか気になる
113 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:40:43.39 ID:JIew2oDzo
▢▢▢▢ 一週間後 ▢▢▢▢


吸血娘「ふわぁ…ねむぃ...」ゴシゴシ

吸血娘「今何時だ…って、もう日が沈んでるじゃん。今日はよく寝たなぁ」


屍男「遅いぞ。もうとっくに食事の用意ができている」

屍男「夕食、いや朝食か。早く食え」


吸血娘「あむっ…一週間お前の作ったご飯食べて分かったことがあるわ」

吸血娘「これ、最初は割と普通でどんどん行けるけど、半分食ったあたりで手が止まる」モグモグ


屍男「…それは褒めてるのか?」


吸血娘「貶してるに決まってんだろハゲ。味付けがくどいってことだよ」モグモグ
114 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:41:49.89 ID:JIew2oDzo
吸血娘「ところでハゲ、お前今日はいつ風呂に入った?」

屍男「昼だが」

吸血娘「もう臭くなってるぞ。ちゃんと洗っとけ」

屍男「…そんなに臭うか?あの店にいた時はそこまで言われなかったんだが」クンクン

吸血娘「あのビッチは性根が腐ってるからな。ついでに鼻もひん曲がってるんだろ」モグモグ


吸血娘「ごちそうさま。はい、トマトはお前にやる」スッ


屍男「…相変わらずお前は野菜を残すな。何のために入れてると思ってるんだ」
115 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:42:55.45 ID:JIew2oDzo
吸血娘「だってトマトってクソ不味いんだもん。老婆の腐ってる血みたいな酸味がする」

屍男「…変な例えはやめろ」


吸血娘「さっ、今日は仕事あるしあいつんとこ行くか。会いたくないけど」

屍男「…仕事?」


吸血娘「あれ?言ってなかったっけ?今日は依頼が入ってるって」

屍男「…それは、あの殺しの仕事か?」

吸血娘「それ以外ないでしょ。私がカフェで働いてるように見える?」


屍男「...」
116 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:44:11.19 ID:JIew2oDzo
屍男「...どうしてもやるのか」


吸血娘「どうしてもって、そりゃ金がないとヴァンパイアでも生きていけない世の中だし」

吸血娘「強盗でも何でもやるってなら話は別だけどね」


屍男「...」


吸血娘「もしかして心配してるわけ?私が返り討ちに合わないかとか、どうか」

吸血娘「大丈夫だって、たかが人間に私が負けるわけないでしょ。あんまり舐めないでよね」


屍男(…心配なのは"今"じゃない。それから"先"のことだ)
117 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:45:06.78 ID:JIew2oDzo
吸血娘「あ、もしかして人殺しなんてしちゃダメとか言いたいの?言っておくけど、私は人間じゃないんだからね」

吸血娘「だから人間の決めてる共食いの摂理なんて気にならないし、当てはまらない。現に人だって他の種族を殺して富を得てるわけじゃん?私がやってることも」


屍男「…いや、その点はいい。殺すのは悪人なんだろ…なら死んで当然のやつらだ」

屍男「…」



ズキッ



屍男「――――あぁ、そうだ。間違いない」

屍男「…ひとつ、頼みごとをしていいか?」


吸血娘「えっ?」
118 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:45:52.92 ID:JIew2oDzo
魔女「…で、これはどういうことなの?」


屍男「...」

吸血男「い、いやだって…こいつも一緒について来るって言うから」



魔女「ついて来るって…まさかゾンビくんも一緒にやる気?」


屍男「そうだ」


魔女「…」

魔女「ちょっと、ゾンビくんってこんな積極的なキャラだっけ?この件に関しては不干渉で通すと思ってたんだけど」ボソッ

吸血娘「私に言われても知らんし…何か急に来たいって言い出して、ついてくんなって言っても聞かないし...」

魔女「はぁ…ゾンビくんにはこっち側に来てほしくなかったのに」
119 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:46:36.07 ID:JIew2oDzo
魔女「ゾンビくん、本気でやるの?人殺しを」

屍男「…あぁ、覚悟はしている」

魔女「想像以上にきつい仕事よ?相手の命を狙ってるわけだから、向こうも本気で抵抗してくる。計画通りにとんとん拍子で進むことなんてないと思っていいわ」

屍男「…そうだな、だがもう決めたことだ。今更変えるつもりはない」


魔女「…」

魔女「…ドラキュラちゃんも何か言ったら?せっかくのお気に入りを危険に晒すかもしれないわよ」


吸血娘「いやまあ…私がいればそんなに危険じゃないだろ。こいつだって一応怪力と再生能力は持ってるんだし」

吸血娘「でも…単独だとそれだけじゃ危ないかも」
120 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:47:37.90 ID:JIew2oDzo
屍男「足を引っ張るつもりはないし、死ぬつもりもない。自分の身くらいは自分で守れる」


魔女「引く気はないってことね。分かったわ」

魔女「じゃあこれ、今日の標的の資料。一度行ったら分かることも色々あるでしょう…気を付けてね」


屍男「…助かる」

吸血娘「まあ私が大体片付けるから、お前は後ろでボーっとしてればいいよ」

吸血娘「さて今回のやつは…と、また殺人犯か。最近多いな」


魔女「過去に分かってるだけでも三人殺してるわ。二度目の殺人で捕まった時は精神鑑定に引っかかって減刑されてるみたいね」

魔女「で、出所した後すぐに何も面識がなかった一般人を殺害…多分、近いうちにヘマやってまた捕まるでしょうね。こういうタイプは」
121 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:48:16.34 ID:JIew2oDzo
屍男「...」


魔女「潜伏先はもう分かってるわ。後は一人になったところを狙って死体を持って来て頂戴」


吸血娘「うぃー、まだ一人だから良かったな。前は三人もいて運んでくるのが大変だったわ」


屍男「...」


吸血娘「ん?どしたハゲ。まさか今になってやめたくなった?なら帰っても」

屍男「大丈夫だ。問題ない」


屍男(この感情は...)
122 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:49:34.82 ID:JIew2oDzo
吸血娘「あ、そういやハゲ。お前車の運転できる?」

屍男「…多分、出来るんじゃないか?」

吸血娘「多分ってなんだよ。まあいいや。じゃあこいつの住処まで運転よろしく」スタスタ


魔女「車の持ち主の私には一言もないのね。汚さないでよ、あとトランクには触らないこと」




ブルルン…ブルルン…


屍男(…なるほど、身体が操作を覚えてるのを実感する。知識や記憶を忘れても、文字通りに身に付いた技術は覚えてるということか)

屍男「出すぞ。シートベルトを締めておけ」

吸血娘「それ私たちにいる?」


ブゥゥゥン!!!!!!
123 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:51:05.31 ID:JIew2oDzo
………………………………………………………………………………
……………………………………………………


吸血娘「ここがやつの根城のアパートか」

屍男「…どうやって殺すんだ?建物を見ると壁は薄そうだ。銃なんか使ったらすぐ通報されそうだが」

吸血娘「バカか、銃なんて使うわけないだろ。暗殺するんだから物音は最小限、目撃者0、証拠を残さないが最低条件だっての」

吸血娘「ハゲは部屋の前で待機して、終わったら鍵開けるから」



吸血娘「見せてあげる、私の能力…ヴァンパイアの力を」スゥッ



屍男「…ッ!?」
124 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:51:42.84 ID:JIew2oDzo
スゥゥゥゥゥゥッ………


刺青男「...」

刺青男「ふぅ、まったくこのコカイン効きやしねぇな。とんだパチモンだ」

刺青男「上物があるっつうんで買ったのにとんだ詐欺だ。ノ野郎、すぐに金を返して…」



モクモクッ…モクモクッ…



刺青男「…アァ?なんかこの部屋煙たいな。炙ってねぇのに」

刺青男「チッ…クソが、窓開けるか」スッ
125 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:52:28.20 ID:JIew2oDzo
スゥゥゥゥゥゥッ!!!!!!


刺青男「!?」ビクッ

刺青男(な…んだっ!?急に息が苦しくッ…)


刺青男「ゲハァッ!!」バタッ


刺青男「アッ…アッ…」ピクピク


刺青男(んだ…コレェ…さ、さっきやったコカインの副作用か…?)

刺青男(ざ、ざけんなよっ!あの野郎…い、今すぐ引きずり出して…!)


刺青男「アガッ…グアッ!?」ピクッ

刺青男「」ピクピクッ


刺青男「」ピクッ



刺青男「」シーン
126 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:53:21.14 ID:JIew2oDzo
スゥゥゥゥゥゥッ


吸血娘「よっと」スタッ


刺青男「」


吸血娘「死んだ?」ゲシッ


刺青男「」ピクッ


吸血娘「まだ生きてたか。まあいいや、どうせ血吸うんだし」スッ


ガリッ…

ギュッ…ギュッ…


吸血娘「…チッ、こいつ直前にキメてやがったな。まじぃ」ジュルッ


刺青男「」
127 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:54:12.26 ID:JIew2oDzo
スタスタ

カチッ


吸血娘「もう入っていいよ。終わったから」ガチャ

屍男「…」

吸血娘「さあ、早く死体袋に入れて撤収するよ。あー今日は楽だった」


屍男「…驚いたな。まさか自分の肉体を霧状にできるとは」


吸血娘「どう?ビビった?」


屍男「…あぁ、かなりな」

屍男(この能力があればごく僅かな隙間からでも侵入が可能、相手の呼吸器官に入れば騒音の一つも立てずに殺せるというわけか)

屍男(…確かに、暗殺には持ってこいだな)
128 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:55:19.76 ID:JIew2oDzo
ドサッ


屍男「…しかし大丈夫か?さすがにこの荷物は目立つぞ。アパートの住民に見られたらどうするんだ」

吸血娘「その時は私の力で記憶を消すから問題ないよ。そもそもこんな時間に誰も外に出ないでしょ」

屍男「記憶も消せるのか…便利なものだな」

吸血娘「何てったってヴァンパイアだからねぇ。他にも監視カメラとか写真に写ることはないから証拠も残ることはないし、最終手段として――――」




カチャッ




吸血娘「」ピクッ

屍男(何だ…後ろから物音が)クルッ



大男「ふぅ、スッキリした」ジャー

大男「…ん?なんだお前ら」



吸血娘(なっ…!?)

屍男(トイレにもう一人ッ…!)
129 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:56:04.99 ID:JIew2oDzo
大男「おい、ここで何をやってる?テメェら...」ギロッ


刺青男「」


大男「!?」ビクッ

大男「し、死んでるのかそいつ!?お、お前ら!そこを動くな!」



吸血娘(ぐっ、ミスった…まさかもう一人いたなんて…これなら"アレ"を飛ばせばよかった...)

吸血娘(仕方ない、今すぐ霧になって…)



ダッ

ボキッ



吸血娘「…へ?」
130 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:56:52.00 ID:JIew2oDzo
大男「」プラーン

屍男「…」ガシッ



吸血娘「…えっ?」

吸血娘「えっ…ちょっ…お、お前、何してんの?」



屍男「…首の骨を折った。これなら音が漏れる心配はないだろう」

大男「」


吸血娘「い、いやそうじゃなくて…なんで殺したの?見られただけなら記憶を消すだけでいいんだけど…」



屍男「…やつは拳銃を構えていた。もし後一秒でも遅れていたら、発砲していた可能性がある」

屍男「それに…恐らくこいつは殺しても問題ないはずだ。そこで転がってる刺青の男の仲間だろう」
131 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:57:35.16 ID:JIew2oDzo
吸血娘「た、確かに見るからに一般人じゃない顔つきだけどさ…普通即殺る?」


屍男「…おかしいか?」


吸血娘「ちょっと、ね」

吸血娘「…ま、まあいいや。殺しちゃったもんは仕方ないし、血吸っとくか」

吸血娘「あ、でも死体袋一つしかないもんなぁ…入るかこれ」




ギュッギュッ




吸血娘「入らねぇ」
132 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:58:23.90 ID:JIew2oDzo
吸血娘「…どうしよ。さすがに一人抱えて戻るのはリスク高いな」

屍男「…」

吸血娘「まず一つを袋に入れてトランクに閉まって、また戻ってくる?いやでもなぁ…あいつにトランクは使うなって言われてるし」

吸血娘「かと言って、車内に置いとくのは誰に見られてもおかしくないし...うーん、考え過ぎ?でもなぁ」

屍男「…ひとつ、提案があるんだが」

吸血娘「ん?何かアイデアある?」



屍男「そこの刺青の男…食べてもいいか?」



吸血娘「は?」
133 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/19(木) 23:59:08.76 ID:JIew2oDzo
屍男「大男の方は量が多くて時間がかかるが、刺青の方ならすぐ終わりそうだ」


吸血娘「…え?ちょ、ちょっと待って。食べる?こいつを?」


屍男「…あぁ、食える気がする」

屍男「以前、あの地下室で死体を見た時に…気のせいだと思ったんだが、なぜか食欲が湧いた。目の前にご馳走があるような感覚だ」

屍男「正直に言うと、今でもその死体を見てると腹が減ってくる。恐らく怪物の特性のようなものなんだろう」


吸血娘「お、おう…」
134 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/20(金) 00:00:47.80 ID:RMpcRGXOo
吸血娘「本当に食べられるの?いくら血を抜いてるって言っても、人間丸ごとって何十キロもあるんだけど」

屍男「…行ける気がする」

吸血娘「そ、そうか…じゃあ食べれば?でもあんまり食い散らかさないでよ。証拠残したくないんだから」

屍男「…血抜きが済んでるなら問題はない」スッ



刺青男「」



屍男「…」カパッ

屍男(…常軌を逸しているな…死体を食うとは。正しくこれが本当の共喰いだ)

屍男(…一番恐ろしいのは、死体を喰うことにそこまで抵抗がないことだ。今まであまり実感はしなかったが、自分が怪物になっていると改めて理解する)

屍男(…記憶を失う前の俺が見たら、どう思うんだろうな)
135 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/20(金) 00:01:40.96 ID:RMpcRGXOo
ガリッ…


グチャッ…ガリッ…

グッ…ペチャッ…



屍男「…終わったぞ。そこの大男を詰め込んで撤収だ」



吸血娘「…本当に全部食べた」

吸血娘「いや…血を吸う私が言うのもなんだけどさ、ドン引きだわ...」

吸血娘「というか普通食べる?自制心とか、道徳心とかで止まるだろ…死体食うのはないわ。うん」

吸血娘「骨までムシャムシャ食べて一人丸ごとこの世界から消すって…お前の胃袋どうなってるんだよ…キモ」ボソッ



屍男「…お前にだけは言われたくない」
136 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2017/10/20(金) 00:02:17.89 ID:RMpcRGXOo
今日はここまで
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 00:09:32.77 ID:Thlgos+IO
おもしろい
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 00:38:03.86 ID:EBkKcJZKo
男は元殺し屋かなんかなのかね
明らかに手慣れてるし
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