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吸血娘「死なないハゲってさ、不老不死ってより不毛不死だよね」屍男「…」
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139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/20(金) 02:33:05.10 ID:+WiQ6fCaO
乙
アレってなんだろなぁ
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/20(金) 13:20:24.28 ID:9RTBCUvXO
最高だな
141 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/20(金) 22:35:21.22 ID:RMpcRGXOo
……………………………………………………………
………………………………………………
吸血娘「ってことがあったから、死体が違うけどまあいいよね」
魔女「...」
魔女「事情は大体分かったけど、そのゾンビくんはどこに行ったの?姿が見当たらないけど」
吸血娘「フライドチキン買いに行かせた。あいつがムシャムシャ食ってるの見てたらお腹減ったから」
魔女「そう」
魔女(初仕事、一瞬の判断が迫られるところで冷静に人を殺める方法を導き出し、実行した)
魔女(しかもいくら怪物になったとはいえ、ほんの少し前まで人間だった者が容赦なく人を貪り食らった)
魔女(尋常じゃないわね)
142 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/20(金) 22:36:27.07 ID:RMpcRGXOo
魔女「…あら?」
魔女「この大男の顔、どこかで見たことあると思ったら...」ペラッ
魔女「…やっぱり、ギャングの売人じゃない。お薬専門の」
吸血娘「どうりで血が不味いと思った。なら殺しても問題なかったね」
魔女「まあそうだけど…コイツが所属してたギャングがちょっと問題なのよね。最近活発になってる組織の一つだし」
魔女「向こうは面子が全てだからねぇ…顔に泥塗られたってことが分かったら血眼になって犯人を捜すわよ」
吸血娘「別に。この手の輩に手を出すのは初めてじゃないし、あんなの普通の人間と何も変わらないじゃん」
143 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/20(金) 22:37:42.90 ID:RMpcRGXOo
魔女「今まではアナタの力で何も残さずにやってきたけど、今回はゾンビくんもいたからねぇ」
魔女「ヴァンパイアは被写体の対象になることはないけど、ゾンビくんだけなら話が別だし…万が一って可能性もないことはないでしょう?」
吸血娘「…もし仮に見つかったとしても、それがどうしたの?"狩人"ならともかく、ただの頭が悪い人間の集団に私が後れを取るって言いたいわけ?」
魔女「ヤり慣れてるドラキュラちゃんならいいけど、ゾンビくんも標的になりえるのよ。正体がバレるとしたら彼の方だと思うし」
魔女「いくら不死身の肉体って言っても限度はあるわ。私にだって彼を無力化させる方法はいくつも考えられる」
魔女「…アナタはもう一人じゃないのよ。少しはパートナーのことを考えてあげなさい」
144 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/20(金) 22:38:38.84 ID:RMpcRGXOo
吸血娘「…っ」ギリッ
魔女「はぁ、ちょっと言い過ぎたわ。脅かすようなこと言ってごめんね」
魔女「これ、今日の報酬。ゾンビくんの初任給ってことで少し上乗せしといたから、二人で遊ぶなり美味しいもの食べるなりしてきなさい」
吸血娘「…もう帰る」バシッ
魔女「最後にひとつ」
魔女「記憶を失ってもゾンビくんはゾンビくんよ。もしそれ以上を求めるなら…後がつらいことになるわよ」
吸血娘「…何言ってるか全然分かんない」バタン
魔女「…」
145 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/20(金) 22:39:53.14 ID:RMpcRGXOo
ガチャッ
屍男「…遅かったな。先に帰ってたぞ」
吸血娘「あのババアのが長かったんだよ。まったく年寄りは長い話が好きだね、ほんと」スタスタ
吸血娘「ところでチキンは?」
屍男「テーブルの上だ」
ガサガサッ
吸血娘「んー♪んまっ!夜はこういう油っこいものが食べたくなるよなぁ!」
屍男「…不健康だな」
吸血娘「ほらハゲ、お前にも一本やるよ」ポイッ
屍男「食べ物を投げるな。行儀悪いぞ」バシッ
146 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/20(金) 22:41:12.87 ID:RMpcRGXOo
屍男「…」パクッ
屍男「…」ボリボリッ
吸血娘「…」ジー
屍男「…何を見ているんだ」
吸血娘「いや、フライドチキンも骨まで食べるんだなって」
屍男「…そんなどうでもいいことを考えていたのか」
吸血娘「…」
吸血娘「なぁ、ハゲ。お前本当にこの仕事やっていくの?今回限りじゃなくて」
屍男「…あぁ、そのつもりだが」
147 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/20(金) 22:42:35.82 ID:RMpcRGXOo
吸血娘「…そうか。私はどうでもいいけど、あのビッチはちょっと心配してたぞ。私はどうでもいいけど」
吸血娘「傷を負っても霧になれば治る私はいいけど、お前は再生っていう手順が必要なんだぞ。絶対安全とは言い切れない」
吸血娘「そこまでのリスクを冒しても…続ける気なの?」
屍男「…」
屍男「…正直に言うが、俺が今日参加したのは…別にお前が心配だったとか、守りたいとかそういう類いの感情じゃない」
屍男「ただ、この手で悪党を殺したかったんだ。なぜかは分からんが奴等の所業を聞くと…腸が煮えくり返るような、決して高潔ではない感情が湧いてくる」グッ
吸血娘「...」
148 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/20(金) 22:44:22.47 ID:RMpcRGXOo
屍男「人を殺すという行為は正常ならもっと深く、重い、罪深い行為なんだろうな。だが、今日あの大男を殺めた時や、刺青の男を食った時は…何も感じなかった」
屍男「むしろ清々しい達成感すら感じた…これが怪物になった影響かどうかは知る由もないが、異常ということは確かだ」
屍男「何か、言葉で表すのが難しいんだが…悪を殺すことに使命感があるような気がする。我ながら狂気に歪んだ思想だ」
屍男「だが…この感情は確かだ。記憶を失い、全てを忘れ、何も残ってない空っぽの俺に残ったのは…殺意だけだ。正義もクソもない、純粋で真っ直ぐな殺意がな」
吸血娘「...」
屍男「…幻滅したか?」
149 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/20(金) 22:45:18.71 ID:RMpcRGXOo
吸血娘「ごめん、後半何言ってるかよく分かんなかった。もう一回言って」
屍男「...」
吸血娘「とにかく、お前は悪いやつをぶっ殺したいってこと?それの何が変なの。人間ってみんなそう思ってるんじゃないの?」
吸血娘「私だって、普通の人間を手にかけるのはさすがに悪いと思うけど、仕事の相手となったら容赦はしないよ。これの何が変なの?」
屍男「…だから、言葉で例えるのが難しい...」
吸血娘「あーもう!!!!まどろっこしいんじゃボケェェ!!!!!!」ドンガラガッシャーン
150 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/20(金) 22:46:11.65 ID:RMpcRGXOo
吸血娘「もっと分かりやすい言い方にしろよ!んなジジババみたいな遠回しの小難しい話し方はやめろ!!腹立つ!」
吸血娘「結局お前は何がしたいんだよ!」
屍男「…憎むべき悪をこの世から根絶」
吸血娘「言い方ァ!!!!」
屍男「…悪党をぶち殺したい」
吸血娘「それでいいんだよ、分かりやすいじゃん。最初からそう言えよ、時間がもったいない」
吸血娘「何か自分が特別だと思ってるみたいだけど、口に出さないだけでみんなお前と同じことを考えてるからな?勘違いすんなよ」
151 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/20(金) 22:47:09.78 ID:RMpcRGXOo
吸血娘「私もいつも被害者には同情するし、犯人を殺すときは仇を討ってあげるみたいに思ってる時もある」
吸血娘「感情ってそういうもんじゃないの?そりゃ悪いヤツが相手なら殺意だの敵意だのがバリバリ出るよ」
屍男「…そういうものか」
吸血娘「うんうん、だからお前は変じゃない。ただの動いて喋る死体だ。自信持て」
屍男「…馬鹿にされてる気がする」
吸血娘「じゃ、いろいろモヤモヤしたものがスッキリしたことだし…ん!」スッ
屍男「…なんだ?その拳は」
152 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/20(金) 22:47:40.56 ID:RMpcRGXOo
吸血娘「何って、こうやって拳を合わせるんだよ。よくアニメとかコミックであるだろ」
吸血娘「これから一緒に仕事やるんだろ?パートナーならこれぐらいはやるでしょ」
屍男「…あぁ、あれか。何となく分かる
屍男「…これでいいのか?」スッ
コンッ
吸血娘「お前、手冷たいな」
屍男「…死体だからな」
吸血娘「で、拳合わせた後は何すればいいの?」
屍男「…俺に聞くな」
153 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/20(金) 22:48:27.04 ID:RMpcRGXOo
吸血娘「まあいいや!記念にピザ食お!ピザ!」
吸血娘「つーことでハゲ!ピザ買ってきて!ダッシュで!」
屍男「…今、何時だと思っているんだ。どこの店も閉まってるぞ」
吸血娘「24時間営業のピザ屋があっただろ!早く買ってこい!」
屍男「…人使いが荒いヴァンパイアだ」
吸血娘「お前は人じゃなくて死体だろ!ハゲ!」
154 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/20(金) 22:50:21.37 ID:RMpcRGXOo
…………………………………………………………
………………………………………
………………………
シャワアアアアアアアアアアアアアアアアアア…
屍男(…もうあの目覚めた日から半年経ったのか)
屍男(あいつの家に住み始めて、仕事を続けていたが…記憶の手掛かりは一切見つからない)
屍男(…まあ今となってはもうそこまで重要なことでもないがな)
屍男「…少し長風呂し過ぎたな。そろそろ出るか」キュッ
155 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/20(金) 22:51:04.30 ID:RMpcRGXOo
今日はここまで
回想が長過ぎる
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/21(土) 02:04:26.34 ID:mIQXEDKTo
面白い期待
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/21(土) 02:07:53.56 ID:vMAVNGldo
魔女めっちゃ良いヤツやん
男の過去が何となく予想ついた。家族を殺されたりして復讐鬼になったとか
多分そんな感じなんだろうな。思い出したくないから記憶喪失なんだろう
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/21(土) 02:26:04.30 ID:74YQ+bVsO
こんな気難しいことかんがえてるからハゲるんだよ!
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/21(土) 03:17:09.56 ID:mIQXEDKTO
乙!
予想とかは嫌がる作者読者居るから控えた方が無難だよ
160 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/21(土) 17:56:47.72 ID:Bd82ooWmo
屍男「出たぞ」フキフキ
吸血娘「お前、風呂長すぎ。何分入ってるんだよ、ファストフードなら全品作って出せるくらいの時間だぞ」
吸血娘「あ、もしかして育毛運動でも」
屍男「してない」
屍男「俺はもう寝るぞ、寝る時は電気を消しておけよ。前も付いてたんだからな」スタスタ
吸血娘「へいへいわぁーってるって」フリフリ
屍男「…本当に分かっているのか」
161 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/21(土) 17:57:35.92 ID:Bd82ooWmo
ジリリリリリリリリ!!!!!!
屍男「…」パチッ
屍男「...」スクッ
吸血娘「Zzz...」グースカ
屍男「…結局付けっぱなしか」ピッ
屍男「しかもまたソファで寝て…仕方ない」グッ
吸血娘「Zzz…」ズルズル
ポイッ
吸血娘「Zzz…イテッ…んー…Zzz...」ドンッ
屍男「…ベッドまでくらい自分で歩け」
162 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/21(土) 17:58:25.50 ID:Bd82ooWmo
……………………………………………………………………
…………………………………………………
屍男「…」ペラペラ
魔女「あら?ゾンビくんがうちの本を読んでるなんて珍しいわね」
屍男「…客が来ないからな。暇潰しだ」
魔女「なら他のところで働いてもいいのに。わざわざまたここに来るなんてよっぽど私のことが恋しかったのかしら?」
屍男「…記憶喪失の俺を雇うところなんてあると思うか?もしあったら是非教えてほしいものだが」
魔女「それでも、夜の仕事やってるんだし別にここで働く必要はないんじゃない?」
屍男「…」
屍男「…家で何もせずにぐうたら過ごすのは性に合わないんでな」
163 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/21(土) 17:59:52.16 ID:Bd82ooWmo
屍男「それに、ここにある本は市場に出回ってるそれとはかなり異なる。もしかしたら記憶に関することも書いてあるかもしれない」
魔女「ふーん…私としては店番してくれると助かるからいいんだけどね。死体溶かしたり、調合する時間も増えるし」
屍男「…一つ、聞きたいことがあるんだが」
魔女「何かしら?」
屍男「…なぜ、ここまで大量に殺して警察は黙っているんだ」
魔女「いきなり仕事の話ね。急にどうしたの」
屍男「俺がこの仕事を始めてからだけでも、殺した犯罪者の数はそこまで多いとは言えないが、決して少ないと言える数でもない」
屍男「しかも、殺しをやってるのは俺だけじゃない。ここに死体を運んでくる連中の数と今までの年数も入れたら…どんな馬鹿でも異常事態だと分かるはずだ。誰かが犯罪者を消してるとな」
164 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/21(土) 18:00:45.84 ID:Bd82ooWmo
屍男「…しかし警察が勘付いてる様子も報道も見られない…おかしいんじゃないか」
魔女「…ゾンビくんはどう考えてるわけ?」
屍男「…お前が内部と通じていて、事件を揉み消していると思っている」
魔女「ぷっ」
屍男「…何がおかしい」
魔女「ご、ごめんなさい…ちょっとおかしくて、そんな真剣な顔で言うもんだから」プルプル
魔女「…残念だけど、私は無関係よ。最も警察やらが介入してこない理由はいくつか見当がつくけど」
165 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/21(土) 18:02:15.78 ID:Bd82ooWmo
魔女「考えられる候補は三つ。気付いていないか、追えないか、黙認しているか」
屍男「…三つだと?」
魔女「まず一つは私達の存在自体に気付いていない。まあこれは余程向こうがおバカさんじゃないとあり得ないわね」
魔女「私がこの商売を始めて二年は経つわ。いくら証拠を残してないと言っても、消えてるのは事実なんだし、ゾンビくんの言う通り普通は違和感を持つ人が誰かいるはずよ。この国の番犬が相当なおまぬけさんじゃない限りは」
魔女「そして二つ目は私たちの存在自体は察知しているけど、動けない。私としてはこの説を押すわ」
屍男「...」
魔女「ドラキュラちゃん達は人間と違って、超常的な力を操る。いくら警察の捜査能力が優秀だとしても、それは人間相手の話だからね」
166 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/21(土) 18:03:38.99 ID:Bd82ooWmo
魔女「それに加えて、ドラキュラちゃんみたいに画像媒体や映像媒体に干渉できる子は少なくない…あ、これは個人情報だから言っちゃダメか。忘れて」
魔女「とにかく、人間が追跡可能な範囲を超えてるってこと。ヘマをしない限りは捕まる心配はないと思うわ」
魔女(…まあこれに関しては、その筋の専門家に気付かれると不味いんだけどね)
魔女「そして最後は私達の存在を察知していて、証拠も掴んでいるけど手が出せない状態。つまり、殺しを黙認しているってことね」
屍男「…待て、それに関してはあり得ない。向こうにメリットがないだろ」
魔女「確かに、いくら犯罪者と言ってもそれを捕まえるのがあの人達の仕事…割に合わないと思うわ」
魔女「でもね、もし彼らの中で怪物や幽霊、人外といった存在が触れてはいけない禁忌…タブーになってるとしたら?」
167 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/21(土) 18:05:05.49 ID:Bd82ooWmo
屍男「…どういうことだ」
魔女「そのままの意味よ。警察は秩序を維持する組織、でもこれは人間社会での話…つまり人間じゃない者には手出しできないってこと」
魔女「例えば幽霊が人を殺したとして、その幽霊に法律が通じると思う?出来るわけないわよね。そういうことよ」
魔女「法の力で縛られるのは人間だけ、ドラキュラちゃんやゾンビくん達が関わってる事件は不審死や行方不明と言った原因不明の未解決事件として無視せざるおえない…どう?」
屍男「…馬鹿馬鹿しい。なんだそれは。つまり国が、いや世界自体が人ならざる者の存在を認めていて、尚且つそれに触れないようにしているのか?」
屍男「出来の悪い陰謀論だな…矛盾がいくつもあるが、もし仮にその話が事実ならこの社会は腐ってるも同然だ。人間ではない者が好き勝手に暴れても誰にも裁かれないということじゃないか」
168 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/21(土) 18:06:44.54 ID:Bd82ooWmo
屍男「…そんな理不尽な話があってたまるか」
魔女「…裁く、ね」ボソッ
魔女「あら、裁いてくれる人ならいるじゃない」
屍男「それは一体誰だ?」
魔女「神様♪」
屍男「……...」
屍男「…アホらしい、俺はもう帰るぞ。閉店の時間だからな」
魔女「え?閉店まであと30分くらい残ってるんだけど」
屍男「どうせ客なんて誰も来ないだろ」スタスタ
169 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/21(土) 18:07:18.75 ID:Bd82ooWmo
魔女「なら、ドラキュラちゃんに伝言頼まれてくれる?」
魔女「今日もお仕事お願いできる?ってね」
屍男「」ピクッ
屍男「…今日もあるのか?昨日殺してきたばかりだぞ」
魔女「普通は二日連続なんてないんだけどねぇ…今回は事情がちょっと特別で、早急に片付けないといけないのよ」
魔女「その分、報酬は弾むつもりよ?無理なら他の人に頼むからいいけど」
屍男「…分かった。伝えておく」
170 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/21(土) 18:08:15.73 ID:Bd82ooWmo
ガチャ
吸血娘「おかえり」ムシャムシャ
屍男「…もう起きてたのか。珍しいな」
吸血娘「たまには早起きしてもいいでしょ。あ、このゴミ捨てといて」ヒョイッ
屍男「…自分のゴミくらいは自分で片付けろ」
屍男「あの女からの伝言だ。今日もまた依頼があるそうだが…どうする?」
吸血娘「え、今日もあんの」
171 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/21(土) 18:08:42.18 ID:Bd82ooWmo
吸血娘「二日連続って初めてだな…何か言ってた?」
屍男「…特別だのどうとか、断っても問題はないらしいが」
吸血娘「んーそっか、でもこういう特殊なターゲットだと大抵いつもよりは報酬がいいんだよねぇ」
屍男「…あぁ、それはあいつも言っていたな」
吸血娘「よし、じゃあやるか。どうせ退屈してたところだし」
屍男「…いいのか?そんな簡単に引き受けて」
吸血娘「いいのっ、最近はマンネリな食事ばっかりだったからね。少しはスリルがないとやりごたえがないよ」
172 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/21(土) 18:09:16.20 ID:Bd82ooWmo
今日はここまで
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/21(土) 19:42:24.01 ID:UFczp7TYo
おつ
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/22(日) 17:05:28.58 ID:mEfK9MDaO
ハゲは気難しいな
175 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 21:52:41.17 ID:NOYNXeaSo
カランカラン♪
吸血娘「うぃーっす、来たぞ」
屍男「...」
魔女「待ってたわ。じゃあさっそく、今日の仕事の内容を説明するわね」
魔女「今日の標的はこれ、顔に見覚えはあるかしら?」スッ
吸血娘「あるわけないだろ。誰だこのおっさん」
屍男「…俺もだ」
魔女「ま、そりゃそうね。じゃあ『ヘヴンズ・ドア』って名前はご存知?」
吸血娘「何かの漫画で見た気がする」
屍音「…俺もだ」
176 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 21:53:52.52 ID:NOYNXeaSo
魔女「そっちじゃないんだけど…まあいいわ」
魔女「この男は『ヘヴンズ・ドア』という名前のカルト団体の教祖様」
吸血娘「あぁ、宗教ね」
屍男「...」
魔女「単刀直入に言うとこの団体、近いうちに集団自殺するらしいのよ。死んで天国に旅立つっていうよくあるやつ」
魔女「だからその教祖を殺して、自殺を止めるってのが今回の仕事の依頼」
吸血娘「なんだ、ただの人間相手か。結構普通だなぁ…全然難しくないじゃん」
屍男「…いいのか?教祖を殺しても」
177 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 21:55:27.30 ID:NOYNXeaSo
屍男「信者の思想は理解出来ないが、教祖を殺してもすぐ後を追う可能性もある。殺せば解決するというのは少し安直過ぎると思うが」
魔女「それもそうなんだけど…だからと言って他に止める手立てがないのよね。言葉が通じる相手でもないし」
魔女「この手の宗教に洗脳されてる人ってのは大体は集団催眠に近い状態になってることが多いのよ。みんなが教祖を神と同一視して、崇めているのを見てるうちに自分もその一因になっている」
魔女「だから、まずは教祖が絶対の神じゃないってことから証明しないといけない。自分達と同じように暴力で簡単に死ぬちっぽけな存在ってことを分からせないとね」
魔女「…まあトップを殺したところで状況が変わらないって可能性も否定出来ないけど」
魔女「だから今回の仕事は死体を処理しなくていいわ。下手に消すと先に行ったとか変な想像されるのも困るからね」
魔女「この銃で頭を撃ち抜いてそのまま帰ってきて」スッ
178 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 21:56:17.69 ID:NOYNXeaSo
吸血娘「集団自殺ねぇ。みんなで死んで何がしたいんだか。命を粗末にするやつが天国なんて到底行けると思えないんだけど」
魔女「銃はゾンビくんに預けるわ。安全装置の外し方は知ってる?」
屍男「…あぁ、何度か使ったからな。問題ない」
吸血娘「ちょっと待て、なんで私じゃないんだ」
魔女「だってドラキュラちゃんって道具使って殺すの嫌いでしょ。いつも血吸ってるし」
吸血娘「…それはそうだけど、何かハゲに劣ってるみたいでムカつく」
屍男「…遊びじゃないんだぞ」
179 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 21:57:32.33 ID:NOYNXeaSo
魔女「あとこれも、教団が暮らしてる宿舎までの地図と建物内の見取り図」
魔女「教祖の男はこの部屋にいると思うわ。もしいなかったら…アドリブで何とかして頂戴」
吸血娘「敷地広くない?家…じゃないよなこれ」
屍男「…公共施設のように見えるな」
魔女「それ、人里離れてる廃校になった小学校をその教祖が買ったのよ。教団が暮らせるように改装したらしいわ」
魔女「現に今ではここに50人近い信者が集団生活してるらしいし」
屍男「…なるほどな。一筋縄ではいかなさそうだ」
吸血娘「そう?私の力があれば楽勝だと思うけど」
180 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 21:58:19.19 ID:NOYNXeaSo
魔女「二人とも気を付けてね。正直、この教団に関しては分からないことが多いのよ」
魔女「私が知ってる情報もこれでほぼ全て、世界中に派生組織がいくつもあるってことは分かってるけど全容がつかめない」
魔女「挙げ句の果てには…神をこの世に降臨させるとかいうよく分からないことも企ててるみたいなのよねぇ。まあこれはさすがに妄想だと思うけど」
吸血娘「完全にイカれてるじゃん」
屍男「…まともではないことは確かだな」
魔女「中で何をやってるか分からないから不気味なのよねぇ…もしかしたらオカルト染みたことにも手を出してるかもしれないから、用心は怠らないで」
181 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 21:59:24.59 ID:NOYNXeaSo
ブゥゥン
吸血娘「ビッチはあんなこと言ってたけど、よく考えたら結局はただの頭のおかしい集団だよね。髪を降臨させたがってるやつならここにもいるし」
吸血娘「とても私たちの相手になるような力はないよ」
屍男「…武装はしていても、猟銃程度だろうしな。訓練をされてるわけでもないし戦闘力はそこまで高くないだろう」
屍男「…だが、一つの信念を持った集団というのは厄介だ。何をやらかすか分からん」
吸血娘「どゆこと?」
屍男「自分の命を捨ててでも成すべき目標を持ったやつらが何十人もいるんだぞ。やろうと思えばテロでも暗殺でも何でも出来るはずだ」
屍男「…こちらの想像を飛躍してる考えを持っているからな。相手の動きを予測して殺す俺達から見たら天敵に近い存在だ」
182 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 22:00:11.89 ID:NOYNXeaSo
吸血娘「でも所詮は人間じゃん。ハゲならともかく、ヴァンパイアの私が負けると思うの?」
屍男「…まあ人間の範囲であればお前を倒すことは不可能だろうな」
屍男「…人間だけならな」
吸血娘「?」
吸血娘「あ、見えてきたぞ。あの建物がそうじゃないの」
屍男「…車を止めるぞ」クイッ
吸血娘「そこから見える?教祖がいる部屋は三階の西側の部屋らしいけど」
屍男「…電気は付いてないな」
吸血娘「まあもう真夜中だしね。寝てるか」
183 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 22:00:47.83 ID:NOYNXeaSo
屍男「…どうする?そのまま行くか?」
吸血娘「うん、もし寝てるならこっちも楽だしね。サクッと殺しに行きますか」
サッサッサッ
プーーーーーン
吸血娘「人の気配は…ないな。予定通りに裏口から侵入するか」スッ
カチッ
ガチャ
吸血娘「ほい、開いたぞ」
屍男「…本当に便利だな。その霧は」
184 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 22:02:18.33 ID:NOYNXeaSo
吸血娘「えーっと…信者達が寝泊まりしてるのがこの先の一階と二階だな。三階には教祖以外の人間はいないか」
屍男「…好都合だな。銃声は響くだろうが、距離があるなら気付かれないかもしれん」
吸血娘「どうでもいいけどさぁ…普通こういうのってサイレンサーとか付いてるんじゃないの?めっちゃ音出るんじゃないのその銃」
屍音「…このサイズだと22口径だろうな。そこまでは大きくないはずだ」
吸血娘「気が利かないビッチだわ…もしバレたらどうすんだよ」
スタスタ スタスタ
屍男「…!」スッ
吸血娘(え、なに?急に止まって)
屍男「...」クイッ
185 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 22:02:46.71 ID:NOYNXeaSo
監視カメラ『』ジー
吸血娘(あぁ、カメラね。私と一緒ならカメラに映ってもノイズで姿が見えないから大丈夫っと)グッ
屍男「...」フリフリ
屍男「…」グルッ
吸血娘(えぇ!?わざわざ迂回すんの!?)
吸血娘(め、めんどくさ…どんだけ慎重なんだよ)
コツッ…コツッ…
屍男「...」
吸血娘(ここが三階か。あそこの奥の部屋だな)
186 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 22:03:30.52 ID:NOYNXeaSo
吸血娘(部屋にいるかどうか確認する)グッ
屍男「…」コクッ
プーーーーーン
吸血娘(人間の呼吸音が一つ、体温は…40代から50代の中年の男か。当たりだな)
吸血娘(ビンゴ、今から鍵を開ける)クイッ
屍男「...」
スッ
カチッ
ガチャッ…
187 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 22:04:12.09 ID:NOYNXeaSo
吸血娘「…」
屍男「…」
「…」スースー
吸血娘(寝てるね、後は任せた)
屍男(…分かっている)
「…」ピクッ
「…時間だ」スッ
吸血娘(やばっ!起きた!)
屍男(…どうする)
188 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 22:04:52.32 ID:NOYNXeaSo
教祖「...」チラッ
教祖「なんだ、貴様らは」
吸血娘「おっと、あんまり大きな声出さないでよね。これ、見えるでしょ?」
屍男「...」チャキッ
教祖「―――強盗か?それとも私を殺しに来たのか?この薄汚れた悪魔が」
吸血娘「」イラッ
吸血娘「あくまァ?私だって自分が善人だとは思ってないけどさ、アンタここの信者共を道連れにして集団自殺するつもりなんでしょ」
吸血娘「んなゴミクズ野郎に悪魔呼ばわりされたくないわ。むしろ人を惑わしてるアンタの方が悪魔だよ」
189 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 22:05:49.55 ID:NOYNXeaSo
教祖「――――ハハッ」
教祖「私が惑わしている?いいや、違うな。我が兄弟たちは自ら望んで父や母の元に行こうとしているのだ」
教祖「我々はこの旅路を成功させなければならない。天の国への扉の鍵を開けるのが私の使命、天命なのだ」
吸血娘「…だーめだ。完全にぶっ飛んでるわ。聞くだけ時間の無駄だな」
吸血娘「もうさっさと終わらせて帰ろう」
屍男「…あぁ」チャキッ
教祖「待て、なぜ分からないのだ?今から我々が行う儀式はとても重要なものだ。この世界にとっても」
190 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 22:06:38.59 ID:NOYNXeaSo
教祖「貴様達は勘違いをしている。これは自殺という罪深い行為ではない。天の扉を開く儀式だ」
教祖「肉体は滅びても、魂は天の国へと渡る。そこは楽園だ、慈悲深き父や母と共に永遠に生き長らえる」
教祖「扉を開けば、この世界にもその恩恵が溢れるはずだ。なぜ邪魔をする?」
屍男「…言ってることがよく理解出来ないが、確かなことが一つある」
屍男「お前は善人ではない。ただの異常者だ」
教祖「――――どうしても、私を殺すのか」
屍男「…お祈りの時間はもう済んだか?」
191 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 22:07:33.71 ID:NOYNXeaSo
教祖「分かっていないな。私を殺しても何も止まらない。既に始まっているのだから」
教祖「私の死は終わりではない。先人達のように、この骸が、きっと彼らの旅路の道しるべになる」
教祖「後悔するだろう。いつか我が兄弟の爪と牙が、貴様達の肉を喰らい、抉るその刹那に、自分の愚かさを」
教祖「アーメ――」
バンッ!!!バンッ!!!
教祖「」
屍男「…」
吸血娘「終わったね」
192 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 22:08:06.57 ID:NOYNXeaSo
吸血娘「最後にこいつ何か取ろうとしてたな、なんだこれ?」
屍男「…マイクじゃないか。恐らく校内に放送して助けを呼ぼうとしたんだろう」
吸血娘「人間くさいっていうか、小物っぽい最後だったな。結局は命乞いまでしてたし」
屍男「…早く撤収するぞ。銃声で人が来るかもしれん」
吸血娘「分かってるって…」
ヒラッ
吸血娘「…ん?何か落ちた?」
193 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 22:11:04.96 ID:NOYNXeaSo
■■■■■■■■■■■■■■■■■■
1978 ○
1987 ×
1993 ×
1994 ×
1997 ×
2000 ×
To the next level.
■■■■■■■■■■■■■■■■■■
194 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 22:11:51.08 ID:NOYNXeaSo
吸血娘「…なにこれ?」
吸血娘(数字と○×が書いてるけど…意味不明の暗号じゃん。まったく分からん)
吸血娘(…まあ深い意味はないか。頭のおかしいやつの部屋にあるだし、これを書いたのも頭がおかしいやつなんだろ)
吸血娘(早くここから出るかっ!気持ち悪っ!)
195 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 22:12:45.31 ID:NOYNXeaSo
ブゥゥン
吸血娘「誰にも見つからなかったね。いやぁ楽な仕事だった」
屍男「...」
吸血娘「なんだどうした、暗いな。頭の輝きがなくなってるぞ」
屍男「…いや、これで良かったのかと思ってな」
吸血娘「なんで?依頼は成功したし、何も問題はないだろ」
吸血娘「私たちが関わるのはここまで、ここから先はあそこの信者が決めることだよ」
屍男「…そうだな」
屍男(あの教祖が最後に残した言葉…『既に始まっている』か)
屍男(…考え過ぎか)
196 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/22(日) 22:13:52.86 ID:NOYNXeaSo
今日はここまで
197 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/22(日) 22:24:34.28 ID:mEfK9MDaO
ハゲ弄りが素晴らしい
198 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/22(日) 22:33:55.31 ID:dm5DQTy1o
モンスターが普通に存在する世界だから神や精霊がいてもおかしくないよなと思う
199 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/23(月) 20:29:56.23 ID:p4jNv8ryo
吸血娘「あー仕事疲れで腹減った。甘いものが食べたいな、トゥインキー食いたい」
屍男「…やめておけ」
屍男「以前、お前の食べ残しを食ったが…ハッキリ言って不味かったぞ。あれのどこがいいんだ」
吸血娘「なんで?美味しいじゃん。あの甘さが癖になる」
屍男「砂糖にハチミツとガムシロップと、砂糖水とチョコをぶちこんだような甘さだ。あんなの食べてるとすぐブクブク太るぞ」
吸血娘「ヴァンパイアは体型変わらないっての。あいつんところに報酬貰いに行った帰りに買ってきて〜」
屍男「…たまには自分で買ってこい」
200 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/23(月) 20:30:55.32 ID:p4jNv8ryo
カランカラン♪
屍男「...」
魔女「おかえりなさい、どう?上手くやれた?」
屍男「…あぁ、殺してきたぞ。銃は返す」スッ
魔女「んー…弾は二発使ったのね。一発で仕留めなかったの?」
屍男「…初弾で頭に当てたが、用心してもう一発撃っただけだ。銃声は増えるが、もしもという可能性もあるからな」
魔女「へえ…様になってきたじゃない」
魔女「はい、今回の報酬よ。スペシャルってことでいつもより多めね」
屍男「…確認した」
201 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/23(月) 20:32:09.12 ID:p4jNv8ryo
魔女「あ、そうそう。さっき言い忘れてたんだけど」
魔女「…どうやら同業者が姿を見られたらしくて、この町に狩人(ハンター)が来てるらしいのよね。当の本人はもう連絡つかないし、多分殺られちゃったみたいだけど」
屍男「…狩人?」
魔女「だから暫くは外出は控えてね。うちの店に来るのも一週間くらいは休んだ方がいいわ」
屍男「…待て、勝手に話を進めるな」
屍男「その…狩人というのはなんだ?」
魔女「あら?ドラキュラちゃんから聞いてなかった?」
202 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/23(月) 20:32:44.94 ID:p4jNv8ryo
屍男「…初耳だが」
魔女「そう、じゃあ家に帰ったら尋ねてみるといいわ」
魔女「私よりも…あの子の方が詳しいと思うから」
屍男「...」
屍男「ということがあったんだが」
吸血娘「へー」
203 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/23(月) 20:33:21.72 ID:p4jNv8ryo
屍男「一体どういう存在なんだ?狩人という者は」
屍男「…言葉通りに受け取るなら、大体想像がつくが」
吸血娘「その思い浮かべてるイメージであってると思うよ」
吸血娘「簡単に言うとアレだ。ブレイドとかサムとディーンとか、プレデターとかゴーストバスターズ系列のやつ」
屍男「…」
屍男「つまりは…怪物を狩る人間ということか?」
吸血娘「全員が全員、人間ってわけでもないけどね〜私みたいな人外もいるって聞くし」
204 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/23(月) 20:34:18.22 ID:p4jNv8ryo
屍男「…なぜそんなことをするんだ?」
吸血娘「そりゃ金と名誉のためじゃないの?」
吸血娘「詳しくは知らないけど、私たちと同じシステムなんだと思う。依頼を受けて始末してるんじゃね」
吸血娘「まあこの点は正直、当然の権利だよね。こっちも人殺したり、迷惑かけてるやつらが大半なんだから文句は言えないよ。黙って殺られる気はサラサラないけど」
屍男(…あの女、あの時知っててわざと教えなかったな)
吸血娘「あいつらの特徴は…何でもありってところかな。殺すためなら文字通りにありとあらゆる手を使ってくるよ」
吸血娘「銃火器に刃物に爆薬、毒に格闘術に呪術…何でもありにね」
205 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/23(月) 20:34:59.71 ID:p4jNv8ryo
吸血娘「私が戦ったやつもスパイ映画に出てきそうな道具使ってたし、どうやって作ってるんだか」
屍男「…その狩人とやらとやり合ったことがあるのか?」
吸血娘「うん、言ってなかったけ?今までに二人殺したよ」
吸血娘「まあそこそこ強かったね。私の力なら苦戦するほどの相手でもなかったけど」
吸血娘「でも…もしハゲがあいつらと対峙したら間違いなく死ぬだろうね。相性が悪すぎるよ」
屍男「…それほどなのか」
206 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/23(月) 20:35:35.75 ID:p4jNv8ryo
吸血娘「あいつらってさぁ、普段から怪物だの人外だのを狩ってるから経験と知識が一番の武器なんだよね」
吸血娘「特に怪物ってのは弱点が共通してて、攻略法が確立してるからそこを攻められたら打つ手はないよ。いくら再生と怪力があってもね」
屍男「…弱点というなら、ヴァンパイアも似たようなものじゃないか」
屍男「創作でよくあるだろう。ニンニクだの、十字架だの、あれはどうなんだ」
吸血娘「あんなの全部嘘に決まってんじゃん。ばっかじゃないの」
吸血娘「弱点があるってのは否定しないけど、家系によって違うっての。それ以外の攻撃は霧化すればすぐ治るし」
吸血娘「そもそもヴァンパイアの弱点が全部本物だったらどんな虚弱生物だよ。タンスの角に小指ぶつけただけで死ぬわ」
207 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/23(月) 20:36:36.45 ID:p4jNv8ryo
屍男「…俺よりもよっぽど不死身の化け物だな。向かうところ敵なしじゃないのか」
吸血娘「………」
吸血娘「…まあそうだね、うん」
吸血娘「と、とにかく狩人がうろついてるなら、しばらくは外に出ない方がいいよ。あいつらに見つかったら一発でバレるし」
屍男「…どこかの部位で怪物と判別しているのか?見た目はあまり普通の人間と変わらないんだと思うんだが」
吸血娘「私たちも善人と悪人をあるところで見極めてるでしょ?あいつらもそこを視て対象を判断してるんだよ」
屍男「――――あぁ、"眼"か」
208 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/23(月) 20:37:56.00 ID:p4jNv8ryo
吸血娘「そう、この業界にいるやつなら相手の目を視るだけで正体も思考も感情も、力の強弱さえ分かる」
吸血娘「こっちも視たらすぐ理解るんだけど、あいつら普段から目を隠してるんだよね。サングラスとか眼鏡とか、最近はコンタクトでもいいみたいだけど」
吸血娘「だから基本的に襲われるこっちが不利ってワケ。日常的に目を隠してる用心深いやつなんて、慢心が強い怪物人外連中だと珍しいし」
吸血娘「それに加えて、怪物や幽霊だけはどうしても気配で気付かれちゃうんだよね。霊感ってやつで、これだけは元々死んでるからどうにもできないし」
屍男「…なるほどな。確かに相性は最悪だ」
吸血娘「まあ今はおとなしくほとぼりが冷めるまで待てばいいよ」
吸血娘「もう目撃されたマヌケは殺されたんでしょ?ならすぐ消えるでしょ。あいつら結構忙しいみたいだし」
209 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/23(月) 20:38:52.29 ID:p4jNv8ryo
屍男「…そうだな。少し休業ということになるか」
吸血娘「私は今までと変わんないけどねぇ。外には仕事がある日か、近くのマーケットくらいにしか行かないし」
屍男「…俺も遠出はしてないが、さすがにもう少し日の光を浴びた方がいいと思うぞ。太陽が弱点というわけでもあるまいし」
吸血娘「だって人ゴミって苦手だし、太陽が昇ってると何か眠くなるんだもん。人間でもそういうタイプっているでしょ」
屍男「…そういうのをロクでなしと言うんだが」
吸血娘「うるせぇ!お前は髪なしだろうが!」バシーン
屍男「...」
210 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/23(月) 20:40:36.47 ID:p4jNv8ryo
今日はここまで
そろそろ書き溜めが少なくなって来たので更新頻度がちょっと遅くなるかもしれないです
あともう後半戦に入ってます
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/23(月) 22:53:13.80 ID:SC/Iyzts0
面白い、乙
212 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/24(火) 22:35:45.18 ID:tfaj1S6jo
▢▢▢▢ 一週間後 ▢▢▢▢
屍男「...」ポチポチ
吸血娘「なっ!このっ!」ポチポチ
屍男「…」ポチポチ
『K.O.』
吸血娘「んなァ!?」
屍男「…これで5連勝だ。俺の勝ちだな」
吸血娘「ちょ、ちょっと待て!なんで初心者に私が負けるわけ!?三日前までは圧勝してたのに!」
屍男「…お前がグースカ寝てる時に練習したからな」
吸血娘「ハゲのくせにセコいことすんな!」バシーン
213 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/24(火) 22:36:29.97 ID:tfaj1S6jo
屍男「どこがセコいんだ。正攻法だろうが」
吸血娘「あームカつく!クソゲーじゃんこれ!こんなので勝って何が嬉しいの!?現実だと私の方が強いのに!」
吸血娘「だからお前はハゲなんだよ!髪がないのは性根も毛根も腐ってる証拠だ!」
屍男「…自分もこの前は初心者狩りして嬉々としてただろ」
吸血娘「よっしゃ!もう一回…次のゲームはこれだ!これなら絶対に負けない!」
屍男「…いいぞ、付き合ってやる」
214 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/24(火) 22:37:22.04 ID:tfaj1S6jo
『K.O.』
吸血娘「ちょっと待て」
吸血娘「なんで私が負けるんだよ。このゲームなら間違いなく私の方がやりこんでるはずなのに」
屍男「…お前のことだ。自分が勝てないと分かったらすぐに別のゲームで勝負を挑んでくることは読めたからな」
屍男「このゲームも既に予習済みだ」
吸血娘「ざけんなハゲエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!」ドンガラガッシャーン
吸血娘「もういいわ!寝る!死ねハゲッ!」ダッ
バタン
屍男「…」
屍男「…やり過ぎたか」
215 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/24(火) 22:38:24.26 ID:tfaj1S6jo
屍男「少々からかってやろうと思ったが…あの怒り方はしばらく根に持つな。一週間は口を利かないつもりだ」
屍男「特にこれと言って困ることでもないが…引きずられるのも気分が悪い」
屍男「…世話が焼けるな」スッ
コンコン
屍男「…おい、今から買い出しに行くが何か欲しいものはあるか?」
『.........』
屍男「あれからもう一週間だ。そろそろ外に出ても問題はないだろう、冷蔵庫の中も切れてきたしな」
屍男「何もいらないならそのまま行くが」
216 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/24(火) 22:39:03.05 ID:tfaj1S6jo
『...アイス。でかいバケツに入ってるやつ』
屍男「…分かった。味は何だ?」
『チョコ』
屍男「チョコアイスか。じゃあ買ってくるぞ」
『…早く買って来いよ。今すぐ食いたいんだから』
屍男(…食い物に釣られてくれるのは楽でいいな)
217 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/24(火) 22:40:23.70 ID:tfaj1S6jo
………………………………………………………
…………………………………………
屍男「...」スタスタ
屍男(…時刻は1時か。思ったより時間がかかったな)
屍男(20分以内に戻らないといつも文句垂れるからな。ついでにピザも買っていくか)
スタスタ スタスタ
屍男「」ピクッ
スタスタ スタスタ
屍男(…背後から足音が一つ、まさか…尾けられている?)
218 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/24(火) 22:41:01.68 ID:tfaj1S6jo
屍男(偶然か?少し歩幅を変えてみるか)
スタスタ スタスタ
屍男「…」
屍男(…黒だな、間違いない。俺を追っている)
屍男(こんな真夜中だ。一人でいるところを狙った強盗か、それとも...)
屍男(…考えても仕方ない。今は最悪の状況を想定して動くべきだ)
屍男「」ダッ
『...!』バッ
219 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/24(火) 22:41:48.97 ID:tfaj1S6jo
ダダダダッ
ダダダダダダダダッ
屍男(…ここら辺でいいか)
屍男「…もういいだろう。追いかけっこは終わりだ」クルッ
『...』
屍男「隠れていないで出てこい。俺に何の用だ」
『…フーッ』スッ
『まさか自分から人気の少ない場所に移動してくれるとはな。これならやりやすくて助かる』
『あのクソガキが言った通り、まだ獲物が残っているとは思わなかった。これも神の思し召しってやつか』
屍男(…日はもうとっくに落ちてるのにサングラスか)
220 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/24(火) 22:42:46.79 ID:tfaj1S6jo
屍男「…確認したい。お前は狩人か」
『あぁ…もしかしてお宅、俺らとやり合うのは初めてか?』
『こいつはツいてるな、知ってるか?怪物の初戦生存率は30%だ。そのうちの20%は逃亡、そして10%が狩人を返り討ちにしてる』
『つまり70%が俺らに殺されてるってことだな。大体三分の二だ』
屍男「...」
『こちらも十分の一で殺されるリスクはあるが、大体はイレギュラーだ。一般人を人質に取られたり、新人の初陣だったりな』
『まあ結局何が言いたいかってことだが…』スチャッ
221 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/24(火) 22:43:42.34 ID:tfaj1S6jo
傷男「お前さんはここで死ねってことだ」
ゾクッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!
屍男「...ッッ!?」ビクッ
屍男(な、なんだ…今のは…背筋に何かが)
屍男(こんな経験は初めてだ…やつがサングラスを取った瞬間に、警戒信号のようなものが出た…本能的に恐れているのか)
屍男(…目を視れば理解るというのはこういうことか。油断したな…まさかこんなところで、しかも単独で狩人に遭遇するとは)
屍男(―――――最悪の状況を想定する、か)
222 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/24(火) 22:44:34.53 ID:tfaj1S6jo
フッ
吸血娘「え?」キョロキョロ
吸血娘「な、なんだ…何か…感じたような。気のせい?」
吸血娘「それにしてもハゲ遅いな。もうとっくに帰ってきてる時間なんだけど」
吸血娘「...」ブルッ
吸血娘「トイレ行こ」スタスタ
223 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/24(火) 22:45:35.00 ID:tfaj1S6jo
今日はここまで
224 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/25(水) 01:06:31.32 ID:NiFm2FeeO
K.O.まで禿げてるなんて…
乙
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/25(水) 05:31:12.64 ID:57C1pXjW0
乙
良いとこできるねぇ
226 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/25(水) 22:44:22.65 ID:pcLh4ORuo
傷男「俺も悪魔じゃない。大人しく抵抗しないのなら、楽に逝かせてやるよ」
屍男「…ッ!」グッ
傷男「そうか、交渉決裂か。まあ端っからそんなクソみたいな期待はしてなかったけどな」
傷男「精々足掻けよ、もう一度死ぬまでな」チャキッ
屍男(拳銃ッ…だがなんだ、この奇妙な感覚は)
屍男(今までに幾度も突き付けられたことはあったが、それらのとは明らかに違う…異様な存在感だ。目が離せない…!)
傷男「…」カチッ
バンバンッ!!!!!!!!
227 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/25(水) 22:45:44.93 ID:pcLh4ORuo
屍男「ぐっ…!」ダッ
屍男(いつもなら…銃弾を受けていた。そして弾切れになったところを攻めた)
屍男(だが今回は違う。目の前にいる男は俺の存在を、弱点を知り尽くしているはずだ…それにあの銃には絶対に何か仕掛けがある。ここは迂闊に手出し出来ない)
屍男(…携帯があったら、連絡を取れたんだがな。普段から持ち歩くべきだった)
傷男「…姿を隠したか」
傷男「正面から突っ込んでこなところを見ると、頭が足りない馬鹿じゃないらしいな。既に自分が劣勢になっているのを理解したか」
傷男「だが詰むのは時間の問題だ。怪物って時点でもう勝敗は決している」チャキッ
228 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/25(水) 22:46:37.54 ID:pcLh4ORuo
バンッ!!!!!バンバンッ!!!!!!
屍男「フーッ…フーッ...」ハァハァ
屍男(…やはり逃げ切るのは無理か。このまま背を向けて逃げるのもリスクが高い)
屍男(この闇に乗じて、どうにかしてやつに一撃を入れなくては…一撃だけでいい)
屍男(狩人と言っても、耐久力だけは普通の人間と変わらないはずだ。俺の腕力ならかするだけでも致命打になる)
屍男(…だが、相手は飛び道具を持っている。問題はどうやって近付くかだな)
傷男「鬼ごっこの次は隠れんぼか。いい加減にお遊びは辞めだ」ピンッ
傷男「…行くぞ」ポイッ
229 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/25(水) 22:48:00.49 ID:pcLh4ORuo
キンッ
屍男(…なんだ?甲高い金属音が落ちた音がした。何かを投げたのか?)チラッ
キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!
屍男「!?ッッッッ!!!!!!?!?!?」ビクッ
屍男(なッ…この音はッ…あ、頭が割れ…!)グラッ
傷男「見つけたぞ、そこか」チャキッ
屍男「あグッ…ぐォォッ…」フラフラ
屍男(防御を…間に合わ―――)
230 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/25(水) 22:48:35.45 ID:pcLh4ORuo
バンバンッ!!!!!!!
屍男「ガァッ!?」ズドンッ
屍男(ぐあっ…こ、これは…痛み!?)
屍男(や、やはりただの銃ではない!グッ…このままだと不味い!)
屍男「ウ……アアアァ……」ヨロッ
屍男「オオオオオオオオアオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」ダッ
傷男「…っ!」ドンドンッ
屍男(傷は戦いの後で癒せばいい…!腕や足の二三本は失っても…今、ここでやつを倒さなくては)
屍男(これ以上長引くとこちらが圧倒的に不利だ…速攻で終わらせる!)
ドンドンッ!!!!!!!
屍男「ウグッ!?アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!!」グンッ
231 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/25(水) 22:49:47.64 ID:pcLh4ORuo
傷男(おいおいおい、もう十発は撃ち込んだぞ。これでも止まる気配なしか)
傷男(クソみたいにタフなやつだな…ここまでのやつは初めてお目にかかったぞ)
傷男(…まあいい。そこまで殴り合いがしたいなら受けてやるか)スッ
傷男「…!」チャキッ
屍男「アアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!」ブンッ
傷男「…っ!?」サッ
ブオンッ!!!!!!!
傷男(うおっ、空を切っただけでなんつー風圧だよ。まともに当たったら骨が折れるどころじゃないぞ)
屍男「ッッッッッ!!!!!」ブンッ
232 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/25(水) 22:50:51.60 ID:pcLh4ORuo
傷男(なっ!?足技っ...)
傷男「ぐおっ!?」ダンッ
屍男「ダアッッッ!!!!」ブンッ
傷男(こ、こいつ…ただ力を振り回してるだけじゃない。よく考えている。それも中々いい動きしやがる)
傷男(だが…何か違和感があるような気がするが…アホか、殺し合いの最中に何余計なこと考えてるんだよ、クソが)
傷男(とにかくこのままだとヤバいぞ。体格、身体能力の差もそうだが、格闘センスは間違いなくこいつの方が上だ。一発当たるだけでも死に繋がる)
傷男(ナイフだけじゃどうにもなんねえなこれ。いくら何でもこの猛攻を掻い潜って刺すのは無理だわ)
傷男(…"リング"を使うか)
233 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/25(水) 22:52:15.19 ID:pcLh4ORuo
屍男「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!!」ダンッ
傷男「…っ!」ダッ
屍男(退いたっ…このまま押せば行けるっ…!)
傷男「オラッ!!」シュンッ
屍男「ッ!」グサッ
屍男(構えていたナイフを投げたか…追い詰めたぞ、あと一歩踏み込めば…入るッ!!)
ダンッ!!!!
傷男「」キュポンッ
傷男「…!」ブンッ
ビシャッ
屍男「!?」ビチャッ
234 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/25(水) 22:53:10.92 ID:pcLh4ORuo
屍男(な、何を、ボトルに入った液体をかけられたのか…?)
屍男(…あのボトルを見た瞬間に、一瞬だが背中に嫌な感触があった。これは――――)
屍男「」ピクッ
屍男「ッッッッッッッッ!?!??!?!!!!????!?」ビクッ
屍男「ぐがアッ…!!ガグッ!!??」ピクピク
屍男(が…体が灼け、溶け…あ、熱い!!)
屍男(あ、あの液体は酸か!?グゥッ…ギィ…!あ、足が動かなっ)
235 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/25(水) 22:53:53.45 ID:pcLh4ORuo
傷男「」ダッ
屍男(まずイッ...もう一本のナイフを…防御が出来ないっ...)
屍男(ギリギリで避けるしか、間に合ッ...)
スッ
傷男「...」チャキッ
屍男「ぐウッ!?」ツゥー
屍男(か、紙一重で躱せた…どうにかして次の攻撃に備えなくては)
キンッ
屍男(…?この音はさっき聞いた金属音と同じ…真下から…)チラッ
236 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/25(水) 22:54:48.71 ID:pcLh4ORuo
『』
屍男(…これはリングか?なぜこんなものが落ち…)
屍男(!!!!!!!しま――――)
ドッカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!
傷男「ふぅ、どうにか引っ掛かったか。さすがにあの至近距離での爆発だ。半分は間違いなく吹っ飛んだな」
傷男「だが…リングを使わされたのは不味かったな。いくら人通りが少ないと言ってもあの爆発音だ」キョロキョロ
傷男「誰かに通報されてもおかしくねえな。ここからだとサツが来るまで5分ってところか」
傷男「…余裕で間に合うな」
237 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/25(水) 22:55:27.90 ID:pcLh4ORuo
モクモクッ…モクモクッ…
傷男「…ん?」
傷男「死体がない…だと?全部吹き飛んだか、死んで灰になったか」キョロキョロ
傷男「…それともあの手負いで動けるのか」
傷男「…はぁ、間違いなく生きてんなこれ。死臭がしねえわ」クンクン
傷男「しかし十数発の弾丸に聖水ぶっかけて、しかも肉体を爆弾で吹き飛ばしても動けるとか…怪物の耐久の域を超えてるぞ」
傷男「とんでもねえ執着心だ。生前の面を拝みたいほどにな」
傷男「もしこれ以上の隠し玉を持っているとしたら…一人だと厳しいか」チラッ
238 :
◆gqUZq6saY8cj
[saga]:2017/10/25(水) 22:56:12.49 ID:pcLh4ORuo
ビチャッ…ビチャッ…
屍男「ヴァッ…ギャッ…」ビチャビチャ
屍男(あ、あの接近した一瞬に…俺に手榴弾を仕掛けたのか)
屍男(グッ…胴体の六割、頭は三割が吹き飛んだ…それに加えて酸のような液体の攻撃、這いずるだけで精一杯だ…!)
グチャッ…ビチュッ…
屍男(再生が遅い…このままだと時間の問題か)
屍男(――いや違うな…ここまでだ。もう…終わりだ)
屍男(俺は…ここでやつに殺される)
屍男(逃れられない結果だ。打つ手がない)
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