【艦これ】天を回す。

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37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:11:41.50 ID:2OxuEgPxO
カサ

『御免なさい班長。木曽ちゃんを止められなかったのは俺です。鍵を渡してしまいました。彼女を責めないでください。悪いのは俺です』

提督「…………」

班長「……あいつに俺は鍵の管理を任していました。中居が言うにあいつは…この前戦死した…川内ちゃんと…そして木曽ちゃんと…よく話して、仲が良かったらしくて…」

提督「長友君は夜遅くまで何かしら弄ってたもんなぁ…」

班長「……耐えれなかったんだ…」

提督「…………」
  「……今年に入って何人目だ…」

班長「……坂本三等、田中兵長、倉田一等兵曹…長友二等…四人です…」

提督「…………くっ……そォ‼︎‼︎」

班長「…………」

提督「…………畜生ォ…」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:12:29.08 ID:2OxuEgPxO
班長「……司令官」

提督「…なんだい」

班長「俺ぁもう疲れちまいました…」

提督「……なんだと」

班長「……俺、疲れました…」

提督「……何が言いたい」

班長「整備科の仲間たちが…あの子達…艦娘達が悩んで、苦しんで、死んでいく。そんな姿を見続けるのに疲れました…」

提督「…………」

班長「……いつまで…一緒に戦ってきた部下達が…そして俺たちの娘同然に手をかけた子達が…死んで行く様を見続けなきゃいけないんですか…」

提督「……私に何を求める」

班長「……その引き出しの下のスイッチ」
  「司令官も、迷ってたんじゃないですか…?」

提督「私は…可能性がある限り、あの子達を見捨てたくはない…」

班長「……アンタも分かってる筈です…このままやっても俺たちに勝ち目は無いってことくらい…」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:13:33.94 ID:2OxuEgPxO
提督「……私は…」

班長「……もうこれ以上仲間たちを苦しめるのは…嫌なんです…」

提督「(…私は…それでも……諦めたく無い…)」
  
  「…………なあ班長」

班長「なんですか…」

提督「一つバカな話を思いついたんだ。聞いてくれんか」

班長「…………」

提督「君の欲しがるそれを、奴らに使いたいとは思わんか」

班長「…………」

提督「勝機はあるんじゃないか?これなら」

班長「…気でも狂ったんですか?」

提督「お互い様じゃないか」

班長「どうやって運ぶんですか。迎撃されますよ」

提督「魚雷にでも括り付けるさ」

班長「だから迎撃…」

提督「躱せばいい」

班長「無線はできませんよ」

提督「直接操縦すればいい」

班長「ケーブルは…」

提督「乗るんだ」

班長「…………は?」

提督「人が乗って操るんだ」

班長「………あんまりじゃないですか…」

提督「時間も金もない。これが一番確実だと思う」

班長「アンタって人はぁ!!」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:15:13.86 ID:2OxuEgPxO
ガッ

班長「俺の話を聞いてたんですか⁉︎俺はもう…仲間を失いたくないんだ!」

提督「だから心中かね。歪んでるのは君の方ではないか?」

班長「…………」
  「どうしろってんですか……」
  「…俺ぁもう、分からないんです…」

提督「君、今年幾つになる」

班長「…29ですが…」

提督「若いなぁ、まだまだ働いてもらわないと」

班長「…………」

提督「……死ぬには早すぎる。君も、部下たちも。そしてあの子たちも…」
  「…私はもう何人も娘たちを殺して来た…もう嫌なのは俺も同じだ…」
  「…でもな、まだ生きてる子がいるんだ…せめて、せめてこの子たちだけでも…救いたいんだ」
  「適性がある人間が、若い…いや、子供同然の女性だけだと?ふざけた技術だよ…本当に…」
  「これのおかげで何人の子供たちが人権を奪われ、兵器として使い潰されて来たか…」
  「……救うには、戦争を終わらせるしかないんだ…」

班長「…だからって…有人魚雷だなんて…」

提督「生贄は俺だ」

班長「…………」

提督「俺は片腕を失った。軍人としてはもう働けない。それに軍医の先生を除けば最高翌齢だ…乗るのは俺しかいない」

班長「……アンタも、『仲間』の一人なんですよ…」
  「…それに、あの子たちが心の拠り所にしてるのはアンタだ。いなくなってあの子たちが持つと思いますか…」

提督「……先生に頼んでおく」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:16:01.94 ID:2OxuEgPxO
班長「そういう問題じゃないんですよ…あの子たちだけじゃない。俺たちだってそうだ」
  「…俺たちだって…地獄みたいなここで働き続けられたのは、アンタになら付いていけるって思ってたからなんですよ…」

提督「…そうだったのか…ハハ、嬉しいねぇ。私は良い部下に恵まれた…」
  「…でも、だからこそ俺が乗らなきゃならないんだ」

班長「…俺が乗ります」
  「やっぱりあの子たちが可哀想だ…俺なら誰にも…」

提督「『整備班長』!!」

班長「は、はい…」

提督「君だって私と同じだ。君の部下は君に付いて来ているんだ」

班長「提督……」

提督「分かってくれ…頼む…」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:16:39.90 ID:2OxuEgPxO
班長「……魚雷は以前親父の友人がやってる博物館が空襲に遭った時に掠めて来たハイパーキャビテーション魚雷があります。それを改造しましょう」

提督「…!…ありがとう、ありがとう……!」
  「…制御系は艦娘の艤装と同じような神経接続を使ってくれ」

班長「…体が持ちませんよ」

提督「着弾まで持てば良い。それに今の私に操縦桿は握れないしね」

班長「分かりました。一応覚えはある技術なんでなんとかします」

提督「頼む。いつ頃までに出来そうかね」

班長「1週間でやって見せます」

提督「頼もしいな。では1週間後に。くれぐれもあの子たちにバレないようにな」

班長「任せてください!」

提督「…ありがとう…」

班長「失礼します。先ほどのご無礼、申し訳ありませんでした」

提督「…何、お互い様よ」

班長「…では」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:17:24.48 ID:2OxuEgPxO
ガチャ
バタン

提督「…はぁ」
  「必要な書類を作らねばならんな」

-執務室前・廊下-

妙高「…………」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:17:57.90 ID:2OxuEgPxO
〜1週間後・早朝〜

提督「…さぁ」

ガチャ

提督「行くかな」

バタン

45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:18:36.70 ID:2OxuEgPxO
-格納庫-

提督「やぁ」

班長「待ちましたよ」

提督「いや、すまんね。諸々の申請に時間がかかってな」

班長「いえ、構いませんよ。ものはこちらです」

提督「おぉ…」

班長「自信作ですよ。弾頭はまだ取り付けていませんがね」

提督「うむ、弾頭はここに」

『戦略熱核爆弾』

提督「自爆用としては過ぎた威力だと思わんのかねぇ」

班長「上の考えることは分かりませんね」

提督「全くだ」

班長「じゃあ装着しますよ」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:19:04.43 ID:2OxuEgPxO
ガキン
バシュ バシュ バシュ

班長「ハイ完了」

提督「うーん、私なんかの棺桶にゃちと立派過ぎるかなぁ」

班長「まあまあ。あとこんな物も作りましたよ、『俺たち』皆で」

提督「うん?」

班長「おーい、シャッター開けろー!」

中居上級整備兵「りょうかーい!」

ガラガラガラ…
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:19:50.86 ID:2OxuEgPxO
提督「これは…」

班長「魚雷を敵陣近くまで運搬するための船が必要でしょう?」

中居「あり合わせですけど、ガチガチの装甲船に仕立て上げましたよ!」

早川一等整備兵「武装は…あの子たちの遺品の砲やら機銃やら魚雷発射管を積めるだけ積みました。使ってやった方が良いかなって思いまして」

島田二等整備兵「不格好な船ですけど、一回くらいの出撃には耐えられます」

提督「…君たち…」

提督「ありがとう…」

班長「それと、言い忘れてましたが、船長は俺で」

中居「観測手は僕」

早川「機銃手は俺」

島田「砲撃手は俺です」

衛生兵「ぼ、僕は応急処置を」

班長「まあ、俺たち皆いないと動かせないんで、そこんとこよろしくお願いします」

提督「衛生兵の君まで…死ぬつもりかね」

班長「アンタにだけは言われたくないですね」

早川「仲間の…仇討ちに行きたいんです」

提督「しかし…」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:20:36.15 ID:2OxuEgPxO
班長「心配ご無用。高速脱出艇は人数分用意してます」

提督「……私に付き合ってくれるのか…」

中居「僕らにこれを作らせた時点でもう今更ですよ」

島田「司令官、せめて最期を見届けるくらい、させて下さいよ」

衛生兵「乗りかかった船です。僕もご一緒します」

提督「すまない、ありがとう…君たち。どれだけ感謝しても足りないくらいだ」

班長「感謝は成功してから。地獄でお願いしますよ」

提督「手厳しいなぁ」

班長「最終調整をしますから、少し待って下さい」

提督「ああ、作戦の決行は明日の0100だ。夜明け前に奴らの本拠地を叩く」
  「チャンスは一度しかない。だが、これが成功すればこの長く辛い戦いは終わる。君たちは、あの子たちは、自由になれる」
  「必ず成功させようじゃないか」

整備班一同「了解!」

提督「うむ。では、後で会おう」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:21:03.96 ID:2OxuEgPxO
ガチャ

提督「……もう、引き返せないな…」
  「ふふ…覚悟を決めかねているのは俺か…」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:21:32.46 ID:2OxuEgPxO
「提督…」

提督「!」

妙高「こんにちは、提督」

提督「や、やあ君か…驚かさないでくれよ…」

妙高「申し訳ありません…少しお話がしたくて」

提督「ん?何かな」

妙高「…少し歩きましょう」

提督「あ、ああ…」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:22:35.70 ID:2OxuEgPxO
-鎮守府中庭-

妙高「…夕日が綺麗ですね」

提督「そうだなぁ…」

妙高「何だか初めて会ったときを思い出しますね…覚えていますか?」

提督「ああ、これくらいの時間だったかなぁ」

妙高「そうですよ。それに今日でちょうど15年になります」

提督「え!そうだったか…すまん、何も用意してないな…」

妙高「別に構いませんよ、『お父さん』」

提督「…随分久々に聞いた気がするなぁ。それ」

妙高「私が『妙高』になって以来かも知れませんね」

提督「そうか…ふふ、懐かしいなぁ…」
  「そうだったそうだった…君は瓦礫の町でマッチを売ってたなぁ…」
  「ふふ…あの時はマッチ売りの少女なんて本当に居たんだとちょっと驚いたっけ」

妙高「今思うとそうですねぇ…でも手に入ったのがそれくらいだったから仕方なかったんですよ。妹たちを養わなきゃならなかったですし」

提督「だなぁ…痩せてたよなぁあの時の君ら」

妙高「あら、今が太ってるみたいな言い方はやめて頂けません?」

提督「ははは、いや済まんね」
  「しかし…大きくなったなぁ…本当に大きくなったなぁ…」

妙高「……はい」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:23:27.03 ID:2OxuEgPxO
提督「……君たち四姉妹を引き取ってからの15年間、楽しかったなぁ」

妙高「……はい、父さん…私もです…」

提督「私の…掛け替えのない大切な家族…」

妙高「………はい……」

提督「…今まで楽しかったよ…本当に…ありがとう…」

妙高「…どうしてお別れみたいな事を言うんですか…」

提督「聞いてたんだろう?」

妙高「行かせませんよ…」

提督「妙高…」

妙高「あなたまで失ったら…私…」

提督「……すまん」
  「私にはこれ以外の手段が見つけられなかった…辛い思いをさせてしまうな…」

妙高「嘘よ…」

提督「……」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:24:28.42 ID:2OxuEgPxO
提督「聞いてほしい。私はな、この時が訪れたことがとても嬉しいんだ」

妙高「……」
提督「君たちを拾って…父親になってから、戦場で荒んだ俺の心は癒されたんだ」
  「お袋も親父も…女房も…みんな失った俺に家族の暖かさを思い出させてくれた…」
  「でも戦争が激化して、艦娘とかいう技術が生まれ、子供達は徴兵され俺はその指揮官になって……たくさんの子供を使い潰して……」
  「君たち…俺の娘までも……」
  「でもやっと、この時が来た。俺が…お前達を守ることができる……もう子供を使って戦わなくて済む……頼む、恩返しを…お前達を助けさせてくれ……」
  「もう誰も死なせないために…頼む…」

妙高「……うう…父さん…」
  「……嫌よ…もう一人は嫌なの…私を…私を一人にしないで…」

提督「…子はいずれ親離れをしなきゃならんという。だがまあ、逆も然りか…俺もお前と別れるのは嫌だ…」
  「…でもな、行かなきゃみんな死ぬんだ…」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:25:16.76 ID:2OxuEgPxO
妙高「…私も連れて行ってください…」

提督「…妙高」

妙高「私も父さんと一緒に…!」

提督「妙高!」

妙高「!」

提督「…………君の…小さな妹たちを…みんなを……頼む。皐月によろしくな…」

妙高「……うう…う………」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:26:42.44 ID:2OxuEgPxO
〜0045〜
-ドック-

早川「お待ちしておりました、司令官」

提督「やあ、少し遅くなってしまったかな」

班長「気になさらず。接続装置の調整も装甲船の燃料・弾薬も積み終わってますから、いつでも出れますよ」

提督「素晴らしい」

軍医「司令官殿…」

提督「あぁ、先生。来てくれたんですね」

軍医「今更かもしれませんが…本当に良いのですね」

提督「?接続装置何か問題でも?」

軍医「違う。子供達のことです」

提督「……」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:27:32.66 ID:2OxuEgPxO
軍医「…分かっているとは思いますが、あの子達は皆、あなたを心の支柱にして生きている。姉妹や友人を失ったその空洞を、あなたを想うことで無理矢理埋めているのです」
  「…そんな中であなたが戦死した場合…どういったことが起こる可能性があるか、分かってなお、行くのですね?」

提督「……はい。行きます」
  「……私はあの子達の心の平穏よりあの子達の生命を優先します。それがどれだけ残酷なことか分かっています…しかしあの子達はまだ若い。未来がある。こんな男を想って共倒れするより、自分たちの人生を……兵器としてではない、人間としての人生を。歩んでもらう方が何倍も良いに決まっている」

軍医「はぁ…説得は無駄なのは分かっていたよ…」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:28:24.04 ID:2OxuEgPxO
軍医「…これからはあなたの鎮守府の軍医としてではなく、旧友として話す」

提督「……」

軍医「お前が頑固なのは昔から変わらんな…それでもって面倒ごとは全部私に押し付ける」

提督「…すみませんね先輩、後は頼みます。子供達はあなたを慕っている。俺の代わりに、行き先が決まるまで面倒見てやって下さい」

軍医「馬鹿者が、一番厄介な問題を残して逝くつもりだったとはな!」

提督「…木曽の容態はどうですか?」

軍医「…目は覚まさないがな、安定している」

提督「そうですか…頼みます。皆を…」

軍医「全く。カウンセリングは専門外なんだがな。まあ、お前の頼みだ。最善を尽くすさ」

軍医「…………だから、安心して逝ってこい。子供達は必ず、皆幸せな家庭に届けてみせる」

提督「……ありがとうございます。書類は執務室の机の上にありますから」
  「…あと、妙高に…これを」

軍医「…あい分かった。お前の愛娘にきちんと渡しておくよ」

提督「…頼みます」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:28:51.46 ID:2OxuEgPxO
班長「お話のところ悪いですが、そろそろ時間ですよ」

提督「ああ、すまんね行こう」

軍医「(敬礼)」

提督「…さあ、出撃だ!」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:29:25.08 ID:2OxuEgPxO
〜0200〜
-鎮守府沖-

中居「そろそろ敵の防衛圏内に突入します!」

班長「よし。総員戦闘準備だ!司令官、接続しますよ」

提督「頼む」

バシュ ガシャン

提督「…うが…」

班長「…これであんたはこれと一体になった。着弾しようがしまいがもう戻れませんぜ」

提督「…ふふ、望むところ…君は最適な位置でのパージを。任せたぞ!」

班長「了解!さあお前ら、突入するぞ!」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:29:52.50 ID:2OxuEgPxO
中居「敵機二時の方向!早川ァ‼︎」

早川「了解!」

タタタタタタ…
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:30:34.38 ID:2OxuEgPxO
中居「班長!魚雷一時の方向!」

班長「承知!回避する」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:31:00.90 ID:2OxuEgPxO
中居「敵艦接近重巡2!正面!」

島田「了解、砲撃を開始する」

ギギギ…ドォン…ドォン…
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:31:30.01 ID:2OxuEgPxO
早川「グワ…」

中居「早川がやられた!敵機直上!」

班長「回避する!衛生兵!」

衛生兵「了解!」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:31:58.08 ID:2OxuEgPxO
ズドォン…

中居「右舷に被弾!」

班長「まだ行けるだろ!」
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:32:41.99 ID:2OxuEgPxO
中居「敵艦…25!包囲されました!でもそろそろ発射地点です!」

班長「よし!司令官、行きますよ!」

提督「よし、出せ!」

提督「……エンジン熱走‼︎」

班長「切り離します!」

バキン
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:33:20.32 ID:2OxuEgPxO
ゴォ……

班長「…よし行ったな。皆!離脱だ!脱出艇に乗り込め!」

班長「……」
島田「……班長!何してるんですか!早く乗って下さい!」
班長「やかましい!全員今射出したら的になるだろうが」
島田「どうするんですか」
班長「俺は船に残って可能な限り敵を引きつける。俺は最後に脱出する」
島田「しかし!」
班長「やかましい!早く乗れ!」
島田「いやちょっと待っ…」

バタン ガキン

班長「よし!」

島田「…!…………!」

班長「射出!」

バシュ バシュ バシュ バシュ

班長「……司令官…あんたにだけ良いカッコはさせませんよ…」
  「……オラァ‼︎かかって来いやァ‼︎」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:33:56.34 ID:2OxuEgPxO
-水中-

ゴォ……

提督「(確かに接続部分は痛いが、視界も操作も快適だ)」


提督「(ム、敵を魚雷か。回避)」

提督「(先には機雷原か…これは操作が必要なわけだ。爆雷の投下も激しい)」


提督「(目標地点まであと少し。しかし限界深度に近い)」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:34:39.36 ID:2OxuEgPxO
提督「(視界がボヤけてきた。頭も…痛い。しかし目標は…目前だ)」


  「(首筋が…焼けるように熱い。目はもう見えないが接続されたセンサーがあるため問題……は…ない……)」


  「(目標……だ……突入…開始…)」


  「(着………弾…まで……3……2……)
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:35:25.28 ID:2OxuEgPxO
  「(………1……)」


  「(………俺……は………………)」




  「(……すま……なかった……妙……高……)」



ピカッ
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:36:19.40 ID:2OxuEgPxO
-鎮守府・医務室-

木曽「………うぅ……ん」
  
  「…提督………」
  
  「……なんだ……夜明け……?」
  
  

  「…………きれい…」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:36:46.80 ID:2OxuEgPxO
〜5日後〜
-鎮守府-
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:37:18.25 ID:2OxuEgPxO
軍医「………」

妙高「………」

軍医「…司令官…いや、親父さんのことは残念だったね。分かってやってくれ」

妙高「……はい」

軍医「彼からこれを預かっている。終戦のゴタゴタで君に渡せなかった」

カサ

妙高「…?」

軍医「読んでやってくれ」

妙高「……」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:37:56.47 ID:2OxuEgPxO
まず最初に君に謝っておきたい。

私は卑怯者だ。

結局自分だけ死に逃げする形になってしまった。責任から逃れ、一人だけ楽になろうとしてしまった。

許してくれとは思っていないが、伝えておきたかった。すまない。


事務的な話になるが、遺産の相続という形で、貯金と私たちがかつて過ごした家を君に渡したい。

養子縁組が必要ない子たちもいるだろうから、家を彼女らと共同生活できる場として使ってもらいたいのだ。

情のない文ですまない。

身勝手ではあるが、皆を頼んだ。
 

愛しき娘へ。父より。
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:38:33.16 ID:2OxuEgPxO
妙高「………」

軍医「……だ、そうだ。今月にも君たちは兵役を解かれる。就職先や養子縁組の手続きは彼がが全部やっていた。学校の入学手続きまでもな。全く律儀な奴だ」

妙高「……ふふ」

軍医「…む?」

妙高「…ほんと…不器用な人…」

軍医「……遺言ならもっとそれらしいことを書けば良かったのに。愛情表現の苦手な奴だなぁ」
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:39:04.07 ID:2OxuEgPxO
せんせー!

軍医「ん、年少組の子か?やあ、皐月。君か」

妙高「……」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:39:33.59 ID:2OxuEgPxO
妙高「(父さん……私たちはやっと前向きになれました…でも、あなたがいない…)」

妙高「(…私は…あなたと一緒に…あなたの娘として生きたかった…)」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:40:08.84 ID:2OxuEgPxO
皐月「どうしたの?妙高?」

妙高「ん?なんでもないわ」

皐月「そう…」

  「…司令官は……正しいことをしたよ……少なくともボクは……そう思いたい……」

  「……そう思わないと……辛いから…」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:40:43.29 ID:2OxuEgPxO
妙高「……ふふ」
  「…なぁんだ、分かってるんじゃない……」

皐月「…青い空がきれいだね」

妙高「そうね、本当に…」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:41:37.79 ID:2OxuEgPxO



〜完〜


80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:48:33.82 ID:2OxuEgPxO
何かと粗の目立つ内容になってしましましたが、一応完結はさせることができました。
分かりにくい所やら突っ込みどころも多々あるでしょうが、許してください。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:50:20.92 ID:2OxuEgPxO
蛇足になりますが、この後の話と補足。
妙高は軍から民営化された工業系企業でOLに、皐月は養子縁組のち故郷近くの中学校に。
黒潮と木曽は妙高と暮らしをしながら専門学校に。

整備班は皆生還しています。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:51:42.52 ID:2OxuEgPxO
今まで書いたもの

http://elephant.2chblog.jp/archives/52172953.html

http://elephant.2chblog.jp/archives/52173251.html
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/10(火) 04:52:23.44 ID:2OxuEgPxO
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 11:43:35.13 ID:cWxPdwwdO

面白かったです!
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 17:20:11.25 ID:pZfQAt5s0
おつおつ
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/11(水) 02:21:11.68 ID:DF2fbMQq0
これで戦争が終わるならもっと早くやってそうだな、と思った

男たるもの女を守って自爆特攻したい…そういう気持ちはわかる
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