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【艦これ】天を回す。
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:36:21.70 ID:2OxuEgPxO
艦これのssです。
台本形式です。
オリジナルキャラクターが登場します。
暗いです。
深海棲艦との戦争は、ヒト型になる前の深海棲艦が上陸したことから始まっています。
これらの要素が大丈夫な人はどうぞ。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1507574181
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:38:07.39 ID:2OxuEgPxO
木曽「只今、帰投しました…」
提督「……戦果報告」
木曽「…敵艦隊、駆逐艦二隻撃沈…」
木曽「…こちら第二艦隊、旗艦の俺を除き…全滅…」
提督「………」
木曽「…く、駆逐艦、四隻…軽巡、一隻の損害…」
提督「…そうか、御苦労…」
木曽「…失礼、します」
ガチャ
バタン
木曽「……うう…」
木曽「………うわあああ……」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:38:52.47 ID:2OxuEgPxO
提督「……畜生…」
提督「もう何人目だ…」
提督「…撤退は間に合ってた筈なんだ…」
提督「……畜生…」
ガチャ
妙高「提督…」
提督「…ああ、今日は君が秘書艦だったな…すまん」
妙高「…いえ、お疲れでしたら、お休みになっては?」
提督「いや、大丈夫だ。私の方こそすまんね、情けない姿を晒してしまった…」
妙高「…仕事ですから」
提督「……そうだな」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:39:40.84 ID:2OxuEgPxO
〜夜〜
提督「…日が暮れたな」
妙高「そうですね」
提督「そろそろ上がりにするか」
妙高「そうですね」
提督「……ちょっと風に当たって来る」
妙高「そうですね」
ガチャ
バタン
妙高「………」
妙高「…羽黒…那智、足柄…」
妙高「……一人に…しないで…」
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:40:37.92 ID:2OxuEgPxO
-鎮守府中庭・ベンチ-
提督「はあ」
提督「(三ヶ月前に補給基地が壊滅してから途絶えた物資はそろそろ底をつく…)」
提督「(敵本拠地近くのこの離島には資源の自給は望めない)」
提督「(この鎮守府の壊滅を必然と思っているらしい本部からは戦闘剤の支給だけが増え、数え切れなくなる死者…)」
提督「分かりやすい負け戦…か」
「…俺が、もっと早く基地の救援を指示していれば…」
「許してくれ、とは思ってない」
「すまん…すまんな…俺が、俺が悪かった…」
「どうしたの?一人でブツブツ言って」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:41:27.66 ID:2OxuEgPxO
提督「!」
皐月「あ、ごめん、驚かしちゃったかな?」
提督「ああ、君か…いや、大丈夫だよ」
皐月「何してるの?こんな所で」
提督「ん?いや、ただ風に当たりたくてね」
皐月「そうなんだ。ボクと同じだね」
提督「なんだそうだったのか、奇遇だ」
皐月「本当にね!」
提督「……」
皐月「……」
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:41:58.71 ID:2OxuEgPxO
提督「…今夜は星が綺麗だ」
皐月「…そうだね…」
皐月「…司令官ってさ、『俺』って言うんだね」
提督「ああ、聞かれていたか。いや、情けない」
皐月「そんなことないよ、そこ以外はあんまり聞こえなかったけど」
提督「そうか、それは良かった」
皐月「いつも『私』って言ってるからなんか新鮮だね」
提督「…そうだね、少し気が動転してたかもなぁ」
皐月「……司令官」
提督「なんだい?」
皐月「…無理、してない…?」
提督「…まさか!私はこの通り、元気だよ」
皐月「……一人で抱え込まないでね」
提督「はは…なんだ、聞いてたんじゃないか…」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:42:32.82 ID:2OxuEgPxO
ギュッ
皐月「…ボクで良ければ、慰めてあげるよ」
提督「…はは、は……情けない限りだ…」
皐月「…司令官は頑張ってるよ…」
ナデナデ
提督「…………」
皐月「ふふ、良い子良い子…」
提督「……皐月」
皐月「…なあに?」
提督「君も、無理しなくて良いんだよ」
皐月「…やだなぁ、ボク、無理なんてしてないよ」
提督「…邪魔して悪かったなあ」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:43:12.23 ID:2OxuEgPxO
皐月「…………」
提督「一人で泣きに来たんだろう?」
皐月「……そんなこと…ないよ…」
提督「…泣きたい時に泣けないのは辛いだろう」
皐月「…なに…言って…」
提督「…だけど一人で泣くのはもっと辛いよ。私で良ければ、胸を貸すよ」
皐月「…う…」
提督「そうだ」
皐月「…う、うう……」
皐月「うわあああ……」
提督「……それで良いんだ」
皐月「…うう…司令官、司令官…」
提督「なんだい?」
皐月「…ボク…死にたく、ない…」
提督「…………」
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:43:52.67 ID:2OxuEgPxO
皐月「…みんな、みんな死んじゃったあ…」
皐月「ボク、怖いよ…死にたくないよ…」
提督「…そうだな」
皐月「…死にたくない…死にたくないよ…!」
ギュッ
提督「…そうだよなぁ…死にたくないよなぁ」
皐月「…怖いよ…うう、うわああああん!」
提督「…死にたくないよな、私だってそうだ…怖いよな…当たり前だよなぁ…」
皐月「…うわああああ……」
提督「…嗚呼、今日は本当に、星が綺麗だ…」
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:44:38.11 ID:2OxuEgPxO
皐月「…うう……ん…」
提督「(泣き疲れたか…)」
提督「(畜生…何も言ってやれなかった…)」
提督「(『私が守ってやる』?…言えるわけないよな…どの口が)」
提督「(とりあえず、この子を寝床まで届けるか)」
提督「よっこい…しょ!」
提督「はは…歳は取りたくないな…」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:45:52.05 ID:2OxuEgPxO
-執務室-
ガチャ
バタン
妙高「あら、提督」
提督「やあ、少しは落ち着いたかね」
妙高「ああ、はい。先ほどはすみませんでした、ぼうっとしてて」
提督「いや、良いんだ」
妙高「……背中のその子は?」
提督「ああ、ちょっとそこで拾ってね。私は女子寮には入れないから、君が部屋まで送り届けてくれないか?」
妙高「…ここじゃ駄目ですか?」
提督「?」
妙高「この子の部屋は、今回の被害で…」
提督「…ああ、そうだった。失念してたよ」
妙高「…一人は寂しいでしょうから…」
提督「奥の私の部屋を使いなさい」
妙高「ありがとうございます」
提督「君ももう上がって良いよ、私はもう少し仕事をしてからそこのソファで寝る」
妙高「…私、この子と寝ても構いませんか?」
提督「……そうか、そうだったな…」
「予備の布団は押入れに入ってる。使いなさい」
妙高「…ありがとうございます…」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:46:42.64 ID:2OxuEgPxO
ガチャ
バタン
提督「(皆、疲弊している…)」
「(何か、何か打開策は無いのか、戦局を一変させるような…)」
「(敵の中枢の位置はもう判明してるのに…防御が硬すぎて近づけやしない…)」
何とももどかしい事だ。
ガラッ
引き出しの中のスイッチ…
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:47:34.38 ID:2OxuEgPxO
『緊急用核弾頭起爆』
馬鹿げたものだ。運搬手段を持たず、上陸された際の最終手段とは。
すでに発見されている敵中枢を破壊できる威力を持つ人類最後の切り札…。
だが、米国の核攻撃は奴らの人知を超えた対空防御とジャミングで無効化され、失敗に終わり、凍結。
無線制御または自立制御までジャミングにより無効化されることが判明してからは有線式核魚雷も用意されたがケーブルの防御が出来なかったために破棄。
結局戦果を挙げられたのは、本土上陸に至った初期型深海棲艦群の殲滅作戦のみ……首都機能と2000万の国民の命と共に…
それを自爆用に転用とは…勝ち目がないならせめてこれで華々しく、とでも言いたいのだろうか。上層部は遂に焼きが回ったらしい。
なんとかならんものか。
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:48:18.23 ID:2OxuEgPxO
-女子寮軽巡区画-
「…………」
「…この部屋も随分広くなっちまったなぁ」
「……姉さん」
「俺、くたびれちまったよ」
「ごめんな、バカな妹で」
「…ほら、俺末っ子だから」
「……だから、さ…理由になってないのは分かってるけどさ」
「…せめて仇くらい取らせてくれても良いよな」
『戦闘剤』
「…………」
木曽「…俺、行くよ」
ザラザラ
ガリッ
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:49:23.99 ID:2OxuEgPxO
〜翌朝、早朝〜
ジリリリリリリ…
提督「ん…あぁ…」
「…いかん、このまま寝てしまったか」
「…目覚まし…じゃないな。これは…」
『非常用』
提督「非常用内線!」
ビー!
提督「すまん!どうした、何があった!」
黒潮『あ、やっと出た!司令はん!』
提督「ああ、私だ!どうしたんだ』
黒潮『木曽が…木曽がいなくて…!』
『木曽の艤装一式と…倉庫から大量の弾薬がなくなって…!』
提督「なんて事だ…今から行く!私も船を出す!整備班に高速艇の用意を!」
黒潮『…わかった…司令はん、お願い、木曽を…』
提督「当然だ、あの子の場所の目星は付いているから、安心しなさい」
黒潮『…うん』
提督「じゃあ君も装備を整えておきなさい、護衛についてきてもらう」
黒潮『了解や!』
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:50:01.77 ID:2OxuEgPxO
カチッ
提督「妙高!聞いていたかね。出撃だ」
妙高「準備は出来ています」
提督「流石、早いね」
妙高「ええ、仕事ですから」
提督「結構」
ガラッ
『標準自動拳銃』
提督「(あの子を…仲間を撃ちたくはないが、かくなる上は…)」
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:50:59.66 ID:2OxuEgPxO
-格納庫-
整備兵「お待ちしていました、船の準備は出来ています」
提督「ありがとう、朝早くからすまんね」
黒潮「司令はん!こっちこっち!」
提督「ああ、待たせたね」
黒潮「それは良いんよ、それよりこんなもんが球磨型の部屋から…」
提督「戦闘剤の空ビン…」
黒潮「もしこの量飲んどったら…」
提督「……本当に撃たねばならんかも知れない、覚悟しておきなさい」
黒潮「…………」
整備兵「…倉庫からは弾薬以外に、非常用に置いていた手榴弾もいくつか無くなっていました」
「それに弾薬も明らかに総装弾数以上の数でなおかつ炸裂系の物だけが無くなっていました。……もしかしたら」
提督「…大体予想通りかな、これは急がねば」
「医療班も呼んでおこう、船に応急処置のできる者を乗せる」
「あと、一応船の機銃の弾は装填しておいてくれ。気休めだが万が一の自衛だ」
整備兵「分かりました」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:52:19.14 ID:2OxuEgPxO
-鎮守府沖-
提督「たしかこの辺の海域だったか」
黒潮「目星の付いてる場所?」
提督「ああ、この先の出撃で木曽の艦隊が敵と遭遇した辺りだ」
黒潮「じゃあ、やっぱり木曽は仇討ちに…」
提督「その可能性は極めて高いだろうね。むしろ仇討ちだけなら良いが…」
「まあなんだ、早く見つければ分かること。君もほら、双眼鏡」
黒潮「あ、うん」
提督「妙高、君は偵察機を飛ばしてくれ。そんなに遠くにならないはずだから」
妙高「分かりました」
妙高「……いました!」
提督「どっちだ!」
妙高「ここから南東約4kmです」
提督「艦長!南東だ、南東に向けてくれ!」
妙高「待ってください!」
提督「何かあるのかね」
妙高「いたにはいたのですが、木曽からさらに約300m南に敵艦隊も…」
提督「…慎重に行こう。艦長、近づけるだけ近づこう」
艦長「りょ、了解」
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:52:48.70 ID:2OxuEgPxO
妙高「前方1km切りました!目視できます」
提督「どれ…」
黒潮「敵と交戦中や…」
提督「…すごいな」
黒潮「…………」
提督「いや、感心している場合ではない事は分かっているが。あの子、一発も被弾してないじゃないか…」
黒潮「…知らん」
提督「…ん?」
黒潮「あんな顔、あんな動きする木曽はウチ、知らん」
提督「…………」
提督「恐らく戦闘剤の効果だろう、あの子の目には我々も敵と映る。そしてあの量だと、効果が切れた時には…」
黒潮「そんな…」
提督「…急ごう、何が何でも連れ戻すんだ」
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:54:07.91 ID:2OxuEgPxO
提督「とにかくまずは作戦を説明する」
「事は一刻を争うが、木曽と交戦中の敵艦隊の存在は無視できない」
「従って、敵を引きつける囮役と、木曽を回収する役との二手に分かれる必要がある」
「済まないが、囮役は黒潮、妙高。君たち二人に頼みたい」
黒潮「危険は今更やで」
妙高「流石に提督を囮にしようとは思ってませんので」
提督「ありがとう。そして私と…医療班の彼がボートで木曽の回収に向かう」
衛生兵「え」
提督「済まないが私だけでは木曽の手当ては出来ないと思って。応急手当てだけで良いよ」
衛生兵「…覚悟は決めます」
提督「ありがとう」
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:54:58.79 ID:2OxuEgPxO
提督「あと黒潮、妙高。君たちにはこの弾を渡しておこう」
黒潮「?なんやこれ。初めて見た」
提督「試作品だがチャフ兼煙幕弾だよ。範囲の狭さと射程、精度が不安定だったので実用には至ってないが…まあ近距離からの離脱には使えるだろう」
「君たちはまず二発、実弾を装填し、三発目にこの弾を装填しておきなさい」
妙高「二発ですか」
提督「そう。敵には二発だけ撃って気を引く。絶対に沈めようとは思わないこと。二発撃ったらひたすら回避に専念しなさい」
妙高「了解しました」
提督「悔しいだろうが我慢して欲しい。近頃敵も異様に強くなってきている。先日も精鋭だった木曽の水雷戦隊が壊滅したのが何よりの証拠だ」
「そして、私たちが木曽を回収したら信号弾を撃つ。そしたら君たちは煙幕弾を撃ち込み北に離脱しなさい。そこでこの艦を待機させる」
黒潮「北やね、了解や」
提督「うむ。よろしく頼む」
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:55:35.26 ID:2OxuEgPxO
提督「あと、最後に一つ注意。万が一木曽が私に攻撃をしようとしたのを見ても、決して彼女を攻撃しないこと」
妙高「死なれるおつもりで?」
提督「いや、どちらにしろ恐らくあの子は自爆する気で全身に弾薬を身につけている」
黒潮「え…」
提督「君らが攻撃しようものなら、回収に向かう私もろとも吹き飛ぶ。それにあの子は決して帰らなくなる」
「なので私が説得を試みてみる」
妙高「可能なのですか?戦闘剤の影響があるとか言ってませんでしたか?」
提督「分からん。ただあの子が助かる可能性はこっちの方が高いだろう」
「最悪、拳銃で撃つ。出来れば足を」
妙高「はあ」
提督「急場凌ぎの雑な作戦だが今思いつく限りは出した。やるだけやろう」
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 03:59:28.70 ID:2OxuEgPxO
妙高「行ってきます」
提督「死ぬんじゃないぞ」
黒潮「自分の心配をしときや。司令はん」
提督「はは、厳しいなあ」
黒潮「じゃあ、行くで」
提督「よし。我々も行こう」
衛生兵「は、はい」
提督「艦長、ここで待機していてくれ。ここなら多分大丈夫」
艦長「信じますよ…」
「必ず、彼女を連れ帰ってくださいよ」
提督「当然」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 04:00:19.11 ID:2OxuEgPxO
妙高「距離300!」
黒潮「木曽、待っててえな」
妙高「撃ちますよ!」
黒潮「二発やね」
「おら!こっちや!」
ドン
ドン
タ級「(ジロッ)」
リ級「(ガシャン)」
黒潮「よし、食いついたで!」
妙高「さあ、逃げますよ!」
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 04:01:07.40 ID:2OxuEgPxO
提督「……よし、妙高たちは上手くやったようだね。我々も木曽を引きつける」
「さあ、行くぞ…」
衛生兵「あの司令、そんな小口径の拳銃ではなくもっとこう、狙撃銃とか機関砲の方が良いのでは…」
提督「心配しなさんな。腕には自信があるんだ」
衛生兵「いえ、そういう問題ではなく…」
提督「そんなもの使ったらあの子の足は千切れてしまうかもしれないだろ?」
衛生兵「しかし彼女らは普通の人間ではなく」
提督「良いんだ」
「…傷は小さい方が治りは早い。それとあの子たちも、れっきとした人間だ。我々と同じ」
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 04:01:41.35 ID:2OxuEgPxO
ウイィィィン…
提督「よし、良い距離だ。始めるぞ」
衛生兵「大丈夫かなぁ…」
提督「おーい!木曽ー!私だ、提督だ!」
木曽「…………」
提督「聞こえるか!私が分かるか、木曽!」
木曽「………ウゥ…」
提督「木曽!」
衛生兵「司令、様子が…」
木曽「…………」ジャキ
提督「…木曽ッ!聞こえないのか!」
木曽「……ウ…」
衛生兵「司令!」
木曽「………[
ピーーー
]…!」
ドン!
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 04:04:04.39 ID:2OxuEgPxO
衛生兵「危険です!下がって!」
提督「クソ…やはりダメか」
「仕方がない、撃つしかない…」
衛生兵「撃つ前に僕らが死んじゃいますよ!」
提督「操縦は任せた、君も海軍人なら男を見せたまえ」
衛生兵「えぇ!?そんな」
提督「頑張るんだよ!」
(そうさ、あの子を助けるんだ)
「木曽!聞けぇ!」
(偽善かもしれない)
「私は今から君を撃つ!」
(それでも救えるかもしれない子がいるんだ)
「多少痛いかも知らんが、我慢するんだぞ!」
木曽「沈め…」
提督(出来ることはしよう)
「分かったか!」
木曽「…償え……償えェ!」
提督(泣かないでくれ…木曽)
「今!助けるからな!」
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 04:04:51.86 ID:2OxuEgPxO
パァン!
木曽「ウッ…!」
バシャ !バシャ バシャ…
提督「回収に向かうぞ!さあ!」
衛生兵「当てたんですか⁉︎」
提督「くるぶしに当たったらしい。アキレス腱かな」
衛生兵「効いたんですか?」
提督「腱を切られれば当然歩けない。当たり前だろう」
ウィィィィン…
木曽「ウ…ウゥ……」
提督「木曽!」
衛生兵「どどどどうしましょう…」
提督「とりあえず船を近づけてくれ、手で捕まえられるくらいに」
衛生兵「危険では…?」
提督「だからと言って君は目の前で沈みかけている女の子を見捨てるのかね」
衛生兵「……わかりました」
提督「さあ、木曽。痛かったろう…」
木曽「(ギロ)」
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 04:05:25.62 ID:2OxuEgPxO
ガチャン
衛生兵「提督!」
ドン
ブチッ
提督「ぐぉ…!」
衛生兵「ああああ!提督、腕が…」
提督「……木曽を引き揚げるのを手伝ってくれないか」
衛生兵「それより早く止血を…」
提督「早く…!木曽は今気を失った、薬が切れたんだ。早くしないと本当に沈んでしまう」
衛生兵「わかりました、わかりましたから止血してください!」
提督「ああ…」
衛生兵「回収します!…よい、しょ!」
提督「ぐぅ…流石に片腕だと厳しいな」
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 04:06:15.75 ID:2OxuEgPxO
ズル
ドシャ
木曽「う、うう…」
提督「木曽…木曽…!」
木曽「提…督…?」
提督「よかった…私が分かるのか!君!早く木曽の止血を」
衛生兵「は、はい!」
提督「ああ、信号拳銃を取ってくれないか」
衛生兵「いえ、僕が撃ちます。その体では…」
提督「いやはや済まんね…痛てて」
木曽「……!て、提督、腕が…」
提督「…今は良い、撃って悪かったね。痛かったろう」
木曽「俺が…撃った、のか…」
「俺が…俺が…提督を…」
提督「木曽!しっかりしなさい!大丈夫だから」
木曽「……俺、どうやって…償えば…」
提督「聞いているか木曽!良いんだ!」
木曽「…俺が…グス…俺が…」
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 04:06:53.52 ID:2OxuEgPxO
ジャキン
提督「何をしている、やめなさい!」
木曽「ご、ごめん、俺、こんな、償い方しか、知らない……」
提督「木曽‼︎」
ガシ
木曽「……」
提督「君が死んで何になる!私たちが何のためにここまで来たのか!」
木曽「……」
提督「それに私は生きてる!君が償うことは何もない!」
木曽「でも…俺…」
提督「良いんだ。私たちはもう仲間を失いたくない…分かってくれ」
「君が死んでも、球磨たちは浮かばれない、と思う」
木曽「……」
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 04:07:24.22 ID:2OxuEgPxO
提督「ごめんな。私が言えることじゃないことは分かっている。君の姉さんたちを死地に追いやったのは私だ…」
「……勝手かもしれない、それでも、生きてくれ…お願いだ」
木曽「提督……」
提督「…木曽?どうした!」
「君、木曽がまた気を失った」
衛生兵「…薬が多すぎましたしね…少し寝かせてあげましょう。止血は済んでますので」
提督「そうか、そうだな…」
衛生兵「後は先生(軍医)に任せましょう」
提督「そうだな。済まないが引き続き操縦を頼めないか、片腕だと少し辛い」
衛生兵「分かってますよ。信号弾は撃ってます、合流しましょう」
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 04:09:11.80 ID:2OxuEgPxO
-鎮守府 医務部病室-
木曽「…………」
提督「…先生、木曽の容態は」
軍医「今はまあ安定してますが…いかんせん戦闘剤の量が致死量に達していて。回復するか、目を覚まさないかは五分五分ですな」
提督「……そうですか」
軍医「辛いでしょうが、司令官。貴方はご自身の身を心配しなさい。本来はまだ入院してる身なんですから」
提督「はは…同じことを黒潮にも言われてしまいましたよ」
黒潮「当たり前やで」
妙高「衛生兵の彼が優秀でよかったですね、本当に」
提督「全くだ。彼は特進だな」
軍医「義手の作製もできますが」
提督「ああ、まあ、少し考えさせて下さい」
「じゃあ、私は部屋に戻るよ。仕事が溜まっているんだ」
妙高「補佐に行きますよ、片腕だと辛いでしょう」
提督「いや、良いんだ。少し一人になりたい。片腕での仕事にも慣れておきたいしね」
黒潮「大丈夫…?」
提督「まあ、なんとかなるだろう。じゃあ失礼するよ」
「先生…木曽をよろしくお願いします」
軍医「ま、最善を尽くしますよ」
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 04:10:06.37 ID:2OxuEgPxO
ガチャ
バタン
〜執務室〜
提督「……はぁ」
「木曽……」
「(ここまで磨耗している子もいるというのに…俺は…木曽の異変に気づいてやれなかった…)」
「畜生…」
ガラッ
「(…このスイッチに鍵を指し、一瞬手をかけるだけで…全て…)」
「…私も焼きが回ったらしいな…ハハ…」
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/10/10(火) 04:10:51.36 ID:2OxuEgPxO
コンコン
提督「ん…?」
「俺です、司令官殿」
提督「ああ…整備班長…どうぞ入ってくれ」
班長「失礼します」
ガチャ
提督「どうかしたかい?どうぞ座って」
班長「長友が…長友二等整備兵が死にました…」
提督「…………」
班長「厠で首吊ってたのを中居上級整備兵が見つけた…」
提督「……遺書は」
班長「ここに…」
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