他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
BBS2ch
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報VIP
更新
検索
全部
最新50
国王「さあ勇者よ!いざ旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」完結編
Check
Tweet
155 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 18:58:20.84 ID:IVAMhd/C0
赤毛《ねえ》
赤毛《ねえ、皆》
《ん…》
坊主《ここは…》
坊主《!》
坊主《皆、起きて!》
三つ編《んん…あれ?》
三つ編《あたし達、お兄さん達と一緒に戦って…》
金髪《…ここ、どこだ?》
金髪《真っ白で何も見えねーぞ》
坊主《あ、あそこ!》
坊主《赤毛がいる!》
金髪《っ!》
三つ編《赤毛!!》
赤毛《皆》
赤毛《…ありがとう》
赤毛《あたしを追いかけて、こんな所まで来てくれて》
156 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 18:59:50.01 ID:IVAMhd/C0
三つ編《赤毛! 良かった…っ!》
三つ編《赤毛が無事で、本当に!》
赤毛《三つ編…》
金髪《…赤毛。お前、すげーよ。一人で、あんなに頑張ってさ》
赤毛《ううん、一人じゃないよ》
赤毛《皆が居てくれたから、頑張れた。怖くても、我慢できた。皆にまた、会うんだって…。その一心で進めたんだよ》
赤毛《だから、ありがとう》
坊主《赤毛…》
157 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 19:00:59.42 ID:IVAMhd/C0
赤毛《今だってね。きっと魔王さん達の力のおかげなんだろうけど、皆のおかげであたしの体は取り戻せそうだよ》
赤毛《ちょっと無理しすぎちゃって…もうダメかな、なんて思ったんだけど》
坊主《ぶ、無事なんだよね! それなら良かったっ!》
坊主《もう、一緒に帰れるんだよね!? 僕たちの城下町に!》
赤毛《…》
金髪《…赤毛?》
赤毛《きっと、体は戻れると思う。物凄い癒しの力が、体を再生してくれたから》
赤毛《でもね》
赤毛《心は戻れるか、分からないの》
三つ編《…え?》
赤毛《教皇様の波動を取り込んだ時に、あの人の感情があたしの中で爆発したの》
赤毛《今でも、その悲しみの螺旋が私の中をぐるぐる回ってるんだ》
金髪《…な、なんだよ。それ…》
赤毛《気持ちが、ぐるぐるぐるぐる》
赤毛《消えたくない、勝ち残りたい、死にたくない…》
赤毛《ぐるぐるぐるぐる、ぐるぐるぐるぐる………》
158 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 19:02:03.20 ID:IVAMhd/C0
坊主《あ、赤毛…!》
赤毛《これは、ね。多分…取り込んでしまったあたしが、向き合わなきゃいけないものなんだと思う》
赤毛《奇跡の力とか、神様の加護とか、そういうものじゃなくて》
赤毛《あたし自身が》
三つ編《………どうして?》
三つ編《どうして、赤毛がそんなことをしなくちゃならないの…?》
三つ編《帰ろうよ…! 私達の城下町にっ、あの秘密基地にっ!》
赤毛《三つ編…》
三つ編《赤毛が一緒じゃなきゃ、イヤよ!》
三つ編《私…私…っ!》
赤毛《…ありがと。でも…》
金髪《オレも一緒に引き受ける》
赤毛《え?》
金髪《赤毛だけが苦しいなんて、やっぱおかしいって!》
金髪《だったら、オレにもその苦しいのを、分けてくれ! このへんちくりんな世界なら、どーせそういうこと出来るだろ!?》
赤毛《金髪…》
金髪《一緒に苦しんで、一緒に帰ろう!》
金髪《トモダチだろ? オレたち》
159 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 19:03:25.43 ID:IVAMhd/C0
赤毛《ふふ。金髪らしいね》
金髪《な、なんだよ。笑うことねーだろ?》
赤毛《…すっごく嬉しいよ》
赤毛《ありがと》
金髪《お、おう。なんか、チョーシ狂うぜ》
金髪《赤毛は、憎まれ口叩いてるくらいじゃねーとよ》
赤毛《………》
赤毛《もう、私たちを包んでいた壁は、壊れてしまったから》
赤毛《私たちの心の繋がりも、これでおしまいなの》
金髪《………!》
坊主《そ、そんなっ》
赤毛《すぐに私たちは、元の肉体に戻るよ。だから魔法みたいなことも、もう出来ない》
赤毛《皆は目を覚ますけど…あたしは………》
三つ編《っ!》
赤毛《だから、こうやってお話し出来る時間が》
赤毛《最後のご褒美…かな》
160 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 19:05:01.47 ID:IVAMhd/C0
三つ編《………ひどい》
三つ編《ひどいよ、こんなの》
赤毛《でもね》
赤毛《例えあたしは目覚めることが出来なくても、皆としたこの冒険は、忘れないと思う》
赤毛《きっと、ずっと》
坊主《…っ》
赤毛《城下町を冒険してさ!》
赤毛《大人から逃げ回ったり…怖いことに立ち向かって》
赤毛《あの、魔王さん達の魔界の大冒険を、一緒に見て回って》
赤毛《皆で力を合わせて…戦ってさ!》
赤毛《すっごい冒険じゃない!?》
赤毛《あたし一度でいいから、こんな冒険してみたかったんだぁ…!》
金髪《赤毛…》
赤毛《皆も、大人になっても忘れないよね!?》
赤毛《ううん、きっと忘れられないよ! こんな素敵なこと!!》
赤毛《ああ、パパやママに話したら、何て言うだろう…!》
三つ編《………っ!》
161 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 19:06:36.20 ID:IVAMhd/C0
赤毛《…あ、えへへ》
赤毛《そっか。パパやママには話せないんだ》
赤毛《あたし、もう会えないから》
金髪《赤毛…っ》
赤毛《あ、やだなぁ。なんでだろ》
赤毛《泣かないでいようって、思ったのに》
赤毛《笑顔で皆とお別れしようって、決めてたのに》
赤毛《それなのに》ポロ…
赤毛《それなのに………!》ポロポロ…
坊主《…!!》
三つ編《赤毛…!》
金髪《…っ!》
162 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 19:07:55.05 ID:IVAMhd/C0
金髪《会えるっ!》
赤毛《…っ》
金髪《会えるよ、絶対!》
金髪《赤毛が全部と向き合いきった時に、きっと会えるっ!》
金髪《赤毛の父さんや母さんに、この冒険のことを話せるよ!!》
金髪《だから…!》
金髪《お別れなんて、言うなよっ!》
赤毛《き、金髪…》ポロポロ…
坊主《うん…っ》
坊主《僕たちには何も出来ないかもしれないけど》
坊主《でも、待ってる…!》
坊主《赤毛が目を覚ますのを、ずっと待ってるから!》
坊主《会えなくても、ずっと、ずっとずっとトモダチだから!》
坊主《こんな魔法がなくたって》
坊主《僕たちにの心の繋がりは無くならないよ!!》
163 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:33:13.42 ID:IVAMhd/C0
赤毛《うぅ…》ポロポロ…
赤毛《うううぅ…》ポロポロポロ…
三つ編《私たち》
三つ編《秘密結社の仲間でしょ?》
三つ編《仲間ってことを覚えていれば、例え離れていたって》
三つ編《また会うための力になるんだよ》
赤毛《三つ編…!》
赤毛《三つ編ぃ…!》ポロポロ
三つ編《…えへへ》グスッ
三つ編《あの時と、一緒だね…》
赤毛《………あはは…そうだね》グスッ
三つ編《絶対》
三つ編《絶対にまた会えるから》ギュッ
赤毛《…うんっ…》
164 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:34:11.16 ID:IVAMhd/C0
――フワァ…………
坊主《!?》
坊主《この風…外からの風だ…!》
金髪《な、なんだよ!? もう終わりかよっ!?》
赤毛《………そうみたい、だね》
三つ編《っ!!》
金髪《くそっ、なんだよ!!》
金髪《いつもいつも、世界は勝手だ!!》
金髪《オレたちの気持ちなんか無視して、勝手に進んでいくんだ!!》
赤毛《金髪》
金髪《あ、赤毛…》
赤毛《私は、もう大丈夫》
赤毛《一人でも、怖くないよ》
赤毛《皆の言葉のおかげ》
ヒ ュ ウ ゥ ゥ ゥ ………
三つ編《か、体に感覚が戻っていく…!》
坊主《城下町の風だ…っ! 》
三つ編《町の匂い…体の温もり…》
三つ編《全部が、戻る――!》
165 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:34:56.64 ID:IVAMhd/C0
金髪《赤毛…!》
赤毛《…》ニコ
坊主《赤毛っ!》
赤毛《…。………》
三つ編《赤毛!!》
赤毛「ありがと」
赤毛「忘れない」
166 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:35:58.52 ID:IVAMhd/C0
城下町
時計台の中
魔王「…」
魔王「ここは」
炎獣「…も…戻って来た…」
炎獣「のか…?」
氷姫「…うん」
氷姫「そうみたいね…」
氷姫「声も、元通りだ」
雷帝「………どうやら…我々は脱したようだな」
雷帝「魔壁を」
雷帝「…そしてここは」
魔王「………ええ」
魔王「この子達の………思い出の場所」
赤毛 三つ編 金髪 坊主「………」
167 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:37:02.13 ID:IVAMhd/C0
氷姫「ぐっすり、寝てるわね」
炎獣「ああ…」
雷帝「………」
魔王「………赤毛ちゃん」
魔王「あなたは、あの時…こんなに小さい体で」
魔王「教皇の波動を、たった一人で抱え込もうとしたのね」ソ…
赤毛「…」スヤ…
魔王「…ごめん、なさい」
魔王「私は、あなたを助けきれなかった………」
炎獣「…俺たちさ」
炎獣「この子に助けられてなきゃ、教皇を倒せなかったよな」
雷帝「ああ。…あの一瞬、自分を犠牲にしたこの少女のおかげで、我々は勝つことが出来た。それだけじゃない」
雷帝「この子供達の繋がりが、私達の存在を幾度も繋ぎ合わせたんだ…」
氷姫「人間の、この子が………」
氷姫「――人間は、打ち負かさなきゃいけない相手だと思ってた」
氷姫「でも、これでいいの? ………"勇者を倒す"。あたし達がすべきことって」
氷姫「本当に、そうなの…?」
168 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:38:12.45 ID:IVAMhd/C0
雷帝「教皇の言葉の数々は」
雷帝「必ずしも我々を惑わすためだけのものではなかったように、思う」
炎獣「あいつの言葉に、本当のことがあったってのかよ?」
雷帝「…奴は何かの真実にたどり着いていた。そうであればこそ、あそこまで強大な力を持ち得るに至ったのだろう」
氷姫「…あたし達ですら、敵わないほどの力。………女神の加護?」
雷帝「――魔王様」
雷帝「お聞かせ願えませんか。魔王様がこの戦いで辿り着いた真実を」
魔王「………うん」
魔王「私が知り得たのは、皆が教えてくれた過去と」
魔王「それを揺るがしかねない程の、恐ろしい力の存在」
魔王「それに、"魔法使い"が私たちに何をもたらしていたか………だったわ」
――
――――
――――――
169 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:39:18.47 ID:IVAMhd/C0
魔王「………」
炎獣「そ、んな…」
氷姫「…っ」
雷帝「………にわかには信じがたい」
雷帝「私達は、今まで奴らの思惑通りに動かされていた…それに我々四天王も、邪神の加護を持つ魔王様ですら」
雷帝「気づくことも出来ずに為すがままだった。………一体、いつから…?」
炎獣「あ、操られていたってのかよ…! 俺達ずっと!」
氷姫「………」
魔王「…雷帝、どう思う?」
雷帝「…」
雷帝「私達の全てを思うままに操る能力があるとして」
雷帝「教皇の発言の通り、その目的が魔王様…ひいては魔族の撃破なのであるとすれば、もっと分かりやすいやり方は幾らでもあったはずです」
雷帝「奴らは、我々の精神全てを支配下においている訳ではないと、私は思います。奴らが介入していたのは」
雷帝「私達の魔族の道においての、ターニングポイント。それは例えば」
雷帝「…虚無と海王による、氷部の壊滅の日」
氷姫「………っ」
氷姫「じゃあ、結晶花は…水精は………」
魔王「――彼らの計画のために、利用された」
170 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:40:32.27 ID:IVAMhd/C0
氷姫「………」
炎獣「氷姫…」
氷姫「そうまでして…」
氷姫「そうまでして私達をこの戦いに呼び寄せる理由は何…っ!?」
雷帝「…それは」
雷帝「この戦いの末に、王国軍の砦で消耗した私達の隙をついて、魔王様を倒す…という筋書きを実現するため、だろうな」
雷帝「我々四天王も、人間側のキーマンも、役者を一人も違えることなく、この戦いを迎えたかった」
雷帝「逆に、そこまで綿密に物語を動かさねば魔王様を討つことが不可能だと考えられていた、とも取れる」
炎獣「…でも、結局教皇は力ずくで俺達を倒しに来たぜ?」
雷帝「…我々が勇者一行と戦っている最中にさらなる技術の進歩を得て、勝利を確信していたか…」
雷帝「女神の啓示とやらがどんなものか知りようもない以上、想像することしか出来ん」
魔王「けれど結果として、教皇は私達に敗れた」
魔王「………そうするように仕向けたのは」
魔王「魔法使いだ」
171 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:42:59.84 ID:IVAMhd/C0
炎獣「…!」
氷姫「っ…」
雷帝「…我らを教皇に勝たせることが、奴にとって何らかのメリットがあるということになる」
魔王「………私が教皇に負けるのは、彼にとって不都合だった…?」
炎獣「あいつ…っ!」
炎獣「一体何がしたいんだよ!?」
炎獣「先代様を裏切って、赤ん坊だった魔王を殺そうとしたり!」
炎獣「爺さんを殺したりして…っ!」
炎獣「今度は俺たちの手助けだって!?」
炎獣「やってること、滅茶苦茶じゃねえか…!!」
ガタン…!
炎獣「!」バッ
炎獣「誰だ!?」ガシッ
172 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:44:01.38 ID:IVAMhd/C0
「ひ、ひい!」
「く、くそう…っ! こうなれば、死なば諸とも!」
炎獣「…なんだ、お前?」
「あ、赤毛さん達から離れなさい! でなければ許しませんよ!」
先生「先生は、先生ですからね! お、怒ると怖いですよぉ!」
氷姫「何よ、こいつ」
雷帝「人間か」
先生「な、なんですかっ! 人間で悪いですか! ここは城下町ですよ! 人間がいて当たり前です!」
雷帝「微々たる魔力は感じる…。が、どうやら戦闘能力はさほどでもなさそうだな」
先生「ちょっと、聞いてます!?」
炎獣「なんでぇ、脅かしやがって」
先生「おっ、脅かしたのはそちらでしょう!」
炎獣「あぁん? よくしゃべるな、お前」
先生「ひ、ひぃ」
173 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:46:06.02 ID:IVAMhd/C0
魔王「炎獣」
魔王「赤毛ちゃん達の事、彼に任せましょう。どうやら知らない間柄ではないようだし」
炎獣「分かったよ」パッ
先生「ほっ。あ、熱かった」
魔王「………私たちは、もう行きましょう」
氷姫「ええ…そうね」
先生「な、なんですか! やるならやったりますよ! 先生は、先生ですからねっ!」
炎獣「なあ、あんた」
先生「うわっ!? ゴメンナサイ!」
炎獣「この子達のこと」
炎獣「宜しく頼む」
炎獣「頼むよ…」
先生「…!?」
先生「…は、はい。頼まれました…。…って、何ですか!? 魔族のくせに!」
先生「頼まれるまでもありませんよっ! 先生は、先生ですよ!?」
先生「ねぇちょっと、聞いてます!?」
先生「おーい!?」
174 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:49:23.41 ID:IVAMhd/C0
炎獣「………なあ」
炎獣「俺達の戦いって、なんなんだ?」
炎獣「俺達四天王は、偽の女神に集められたって言うんなら…本当は違う四天王が揃うはずだったってかよ?」
炎獣「勇者一行も? …もう、わけわかんねえよ」
氷姫「魔法使いが、この魔王勇者大戦を引き起こした理由も、説明がつけられないわ」
雷帝「………そもそもの話をしてしまえば」
雷帝「大昔から続くこの"魔王勇者大戦自体の意味"を、私達は知らない」
雷帝「女神と邪神が争い続けているから。その代理戦争…ということは理解しているが、逆に言えば、それしか理解していないのだ」
魔王「………"多くの犠牲を払いながら戦い続ける理由"」
魔王「教皇は…それを知っていたのかな。それとも」
氷姫「――そんなものはひとつもない………そういうオチだったりしてね」
雷帝「理由などなかった…か。その可能性を否定しきれんのも不甲斐ないところだ。もしそうなのだとしたら…」
雷帝「その時、私達に選べる選択肢が残っているんだろうか」
炎獣「………もう、取り返しがつかない数の人間を」
炎獣「俺達は殺しちまった…」
175 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:51:08.08 ID:IVAMhd/C0
先生「………」
先生「…おかえりなさい」
先生「よく、頑張りましたね」
先生「皆…」
先生「そして、赤毛さん…」
先生「あなたは本当に、奇跡の僧侶となってしまった…」
赤毛「………」
176 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:53:00.92 ID:IVAMhd/C0
氷姫「あたし達は、勇者を倒すために今まで必死になってやってきたのよ?」
氷姫「それに意味がないなんて言われたら…なんて、そんな事。………考えたく、ないわよ」
魔王「…そうだね」
雷帝「…もう一人、警戒すべき相手がいる」
炎獣「え?」
雷帝「――冥王だ。奴は、もしかするとこの真実を知っていたかもしれん」
氷姫「! 冥王様が…?」
雷帝「…確証はないがな」
炎獣「で、でもよ…あの師匠が、人間の思惑通りにされるのを、黙って見過ごすとは思えないぜ」
雷帝「…確かに、それはそうだが…」
氷姫(冥王様…。…そういえば、あの時)
――氷姫《何、ですっ、て!?》
――教皇《お前は知らんのか? 何故貴様ら四天王がそこまで人間を圧倒できるのか》
――教皇《冥王が何故、魔王についてその側にいたか》
――教皇《その真実を》
――氷姫《…っ!!》
――教皇《お前は何も知らないのだな。無知なものが振るう大きすぎる力ほど、恐ろしいものはない》
――教皇《排除されるべきは………貴様らだ、四天王》
氷姫「………ねえ、魔王」
魔王「? どうしたの、氷姫」
氷姫「…」
氷姫「ううん…。何でもない」
魔王「…そう」
魔王(………)
177 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 22:54:44.76 ID:IVAMhd/C0
先生「赤毛さん」
先生「先生はあなたを救いたかった」
先生「あなたがこの戦いの犠牲者になることを、避けようとしたんです」
先生「…その為に、先生は方々手を尽くしました」
先生「金髪君達の想いの力を借りて、魔壁の内側に送り出しました」
先生「魔王側の勝利を確実にするために」
先生「死んでしまった木竜の思念にもお手伝いをしてもらいました」
先生「でも」
先生「あなたの心までは守れなかった」
先生「女神様も、酷いですね」
先生「やっぱり、犠牲が必要なんですか? …あなたの描く、ドラマには」
178 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 23:08:00.46 ID:IVAMhd/C0
炎獣「俺達には…何よりも先にふん捕まえて話をさせなきゃならない奴がいる」
雷帝「ああ」
氷姫「…そうね」
魔王「"魔法使い"」
炎獣「あいつの目的。それに、これまでしてきたことへのツケを」
炎獣「絶対に、払わせてやる…っ!」
雷帝「奴の思惑が見えればこの戦いの…いや、勇者と魔王の争いそのものの真理が見えてきそうな、そんな気がする」
魔王「………私達は」
魔王「すでに彼らの描いていたあらすじを逸脱した…!」
炎獣「ああ!」
炎獣「もう、好きなようには、させねえ…!」
炎獣「俺達は、俺達のもんだっ!」
氷姫「! 待って!」
氷姫「あ、あれは…」
氷姫「――一体、何?」
179 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 23:09:00.86 ID:IVAMhd/C0
先生「ツケを払わせてやる、ですか」
先生「あはは」
先生「参りましたね」
先生「………先生は」
先生「いえ」
先生「僕は」
先生「何がしたいんでしょうねぇ?」
先生「それはそうと魔王」
先生「それに四天王」
魔法使い「後ろが、隙だらけですよ?」
180 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 23:10:56.73 ID:IVAMhd/C0
雷帝「これは…」
雷帝「死体か?」
魔王「………うん」
魔王「そうみたいね」
大僧正「」
氷姫「ボロボロで、原形留めてないわ」
氷姫「物凄い魔法で、やられてる…」
氷姫(………この魔法の残り香)
氷姫(これ………)
氷姫(………もしかして!!)
魔法使い「死の波動よ」
魔法使い「敵を貫け」 ォ オ
炎獣 魔王 雷帝 氷姫 「!!!」
―― ゾ ク ッ
181 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 23:12:54.19 ID:IVAMhd/C0
雷帝(なんだこの膨大な魔力はっ!? いやそれよりも!!)
氷姫(矛先は魔王だ!! 結界を張って――こ、これ防ぎ切れるような力じゃない!!)
魔王(回避を――駄目だ、間に合わない!!)
雷帝(くっ、私が身代わりに――!!)
炎獣「っ」バッ
雷帝「!!」
魔王「炎じゅ――」
雷帝「――止せ、炎獣ッ!!」
ド ス ッ
182 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 23:14:38.86 ID:IVAMhd/C0
炎獣「がッ」
炎獣「ふッ」
魔王「………………え」
魔王「………炎…獣………?」
炎獣「」
………ドサ…
魔法使い「おや、死んだのは炎獣ですか」
魔法使い「まあいいでしょう」
魔法使い「――まずは一人目、ですねぇ」ニイィ
183 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/11/25(土) 23:15:53.67 ID:IVAMhd/C0
【魔法使い】
184 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/11/25(土) 23:16:27.45 ID:IVAMhd/C0
今日はここまでです
185 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/26(日) 00:32:43.88 ID:FLDlGLybo
乙
186 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/26(日) 01:13:20.94 ID:WOrKrdLNo
あっけねぇ
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/26(日) 21:47:13.61 ID:gX3yS1Dgo
魔法使いェ...
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/05(火) 12:23:56.82 ID:rtST7Mkf0
まだかな〜
189 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 08:54:41.85 ID:ts4DPW7U0
魔王「え…炎獣」
魔王「炎獣――」
炎獣「」
氷姫「なッ…!!」
雷帝「炎獣ッ…」
氷姫「炎獣っ!!」
雷帝(くそ!! 何故だっ!?)
雷帝(全く気配のしない所から、ここまで強力な魔法が…ッ!!)
雷帝(………いや、待て!!)
雷帝(気配はひとつだけしていた…!! とるにも足らない微かな魔力を発していただけの………)
雷帝(あの、人間が――)
魔王「炎獣」
魔王「ねえ、炎獣…」
炎獣「」
氷姫「そん、な」
雷帝「…っ!!」
魔王「炎獣」
魔王「炎獣ってば」
魔王「ねえ、炎獣」ユサ…
魔王「炎獣………」ユサユサ…
190 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 08:56:14.78 ID:ts4DPW7U0
炎獣「」ゴロン…
191 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 08:57:04.48 ID:ts4DPW7U0
魔王「どう」
魔王「して?」
192 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 08:59:19.51 ID:ts4DPW7U0
雷帝「くそ――」
雷帝「くそッ!!!」
氷姫「か、回復魔法を」
氷姫「急が、なきゃ…!!」ヒュイィ…!
氷姫「炎獣…!」
氷姫「炎獣…っ!!」
雷帝「くッ…!!」
「無駄ですよ」
「もう、彼は」
雷帝「ッ」ピクッ
魔法使い「死んでいるんですから」
193 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:00:40.69 ID:ts4DPW7U0
雷帝「側近ッ!!!」
雷帝「貴様ァッ!!!」ドンッ――
ズバァン!!!
魔法使い「おっとと」
魔法使い「危ない危ない」
魔法使い「鐘楼が真っ二つじゃないですか。流石の剣技ですねぇ、雷帝」
魔法使い「本調子が戻ったようですね!」
雷帝「 黙 れ ! ! 」
ビュ
――ズズゥン…ッ!!
194 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:04:58.55 ID:ts4DPW7U0
氷姫「…え、炎獣…」
炎獣「」
氷姫「――死んだ?」
氷姫「炎獣、が?」
氷姫「そんな」
氷姫「だって今の今まで、一緒に話してて」
氷姫「一緒に教皇を倒して」
氷姫「一緒に乗り越えてきたのに」
氷姫「………待って」
氷姫「待ってよ」
氷姫(まだあんたに、言ってないこと)
氷姫(伝えたかったこと)
氷姫(沢山………、沢山あるんだよ)
炎獣「」
氷姫「炎獣ぅ………っ!」
魔王「………………」
195 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:31:57.92 ID:ts4DPW7U0
雷帝「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ギュバンッ!!
ズッ ダァンッ!!
ビュオォウンッ!!
魔法使い「おやおや! これは凄い」
魔法使い「どうやら尚も新しい境地に達したようですね、雷帝」
魔法使い「このままでは僕も、うっかり討ち取られてしまいそうだ」
魔法使い「でもね、雷帝。…気付いています?」
魔法使い「そんなに大それた力、いち魔族が持つことが本当に許されるんですかね?」
雷帝「黙れッ!!」
ドギュッ
雷帝「黙れェッ!!」
ゴッ
――ズガァンッ!!
魔法使い「ふう、危ない」
魔法使い「…ねえ、雷帝。聡明なあなたは、薄々感じ取っていたのではないですか?」
魔法使い「例え魔王四天王と言えど、ここまで人類を圧倒することが出来るものなのか」
魔法使い「あなた達も苦難を乗り越えてきた…それは、分かりますよ」
魔法使い「お互いを信ずる絆も素晴らしいものです」
魔法使い「でもね」
魔法使い「人間だってそれは一緒でしたよね?」
196 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:32:40.03 ID:ts4DPW7U0
魔法使い「…勇者一行は、それぞれが英雄たる人物達でしたよ。各々の道は違えど、ね」
魔法使い「目的の為に手段を選ばない意思の強さと頭脳を持った商人さんも」
魔法使い「気の遠くなるような年月ひたすら己を鍛えぬき、遥かな高みに辿り着いた武闘家さんも」
魔法使い「多くの人を惹き付ける不思議な力と、奇跡すら併せ持った盗賊さんも」
魔法使い「どんな悲劇にも逆境にも立ち向かう勇気と信念を持った戦士さんも」
魔法使い「――沢山の物語を背負ってきた彼らを、あなた達は虫けらのように蹴散らしてきた」
雷帝「貴様…!!」
雷帝「何が、言いたい…ッ!?」チャキ…!!
魔法使い「彼らが死を賭した覚悟を決めていた時、あなたたちは何をしていましたか?」
魔法使い「やれ恋慕の情だの、"自分の気持ちと向き合う"だの」
魔法使い「ずいぶん、あまっちょろいことを言っていましたよねぇ?」
魔法使い「そんなことで、どうして人々を圧倒できたんですか?」
魔法使い「"四天王だから"、そうして当たり前ですか?」
魔法使い「違いますよねえ…?」
魔法使い「分かりませんか? 雷帝」
魔法使い「あなた達のその力は、あなた達自身の実力ではない、ということですよ」
197 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:33:19.77 ID:ts4DPW7U0
雷帝「何をっ………!!」
魔法使い「そうですよねぇ?」
魔法使い「――魔王」
魔王「!!」ビクッ
魔法使い「ずいぶんと、都合のいい言葉で四天王をおだてあげて戦ってきたみたいじゃないですか?」
魔王「………めて」
魔法使い「残酷なことだとは思わなかったんですか? 偽りの実力を過信する部下を見て」
魔王「や、めて」
魔法使い「教えてあげましょうよ。本当のことを」
魔王「――やめてっ!」
198 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:35:05.38 ID:ts4DPW7U0
氷姫「魔、王?」
雷帝「魔王様…!!」
魔法使い「あなた達が人類を圧倒できたのは」
魔法使い「魔王。あなたが邪神の加護を」
魔法使い「"四天王に密かに分け与えていたから"、じゃないですか」
魔王「…っ!!」
…ドクン…
199 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:36:22.99 ID:ts4DPW7U0
ズバァッン…!!
魔法使い「おっと!」
雷帝「それ以上の戯れ言は許さん…!!」ゴォ…
魔法使い「ふふ。雷帝」
魔法使い「考えていないふりは止めませんか?」
魔法使い「雷鳴剣は、先代魔王の持ち物ですよ。あの人の大いなる力を持ってして、初めて扱える代物です」
魔法使い「あなたごときが、本当に扱いきれると思ったんですか?」
魔法使い「王国軍の砦で軍師さんの罠に嵌まったあの時を思い出してくださいよ。…あんな破壊力を前にして生身の生物が生き残れるはずがありますか?」
雷帝「………っ!」
200 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:37:07.12 ID:ts4DPW7U0
魔王「」ガタガタ…
氷姫「魔王…? 魔王っ!」
氷姫「しっかりして…! あいつの言葉なんかに耳を貸す必要はないわ!!」
魔王「」ガタガタ…
氷姫「魔王…!?」
魔法使い「無駄ですよ、氷姫」
魔法使い「だってこれ、本当のことですから」
氷姫「…黙りなさい」ギロ…!
魔法使い「…ねえ、氷姫」
魔法使い「どうして、究極氷魔法を使ってけろりとしていられたんですか?」
魔法使い「魔力を使い切るなんて、普通の生き物なら死に直結する大惨事じゃないですか」
魔法使い「"あの頃より修行を積んだから"とか、"魔王四天王だから"とか、そんな理由で自分が生きていると」
魔法使い「本気で思っていたんですか?」
…ドクン…
…ドクン…
201 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:55:17.12 ID:ts4DPW7U0
氷姫「っ…!! じゃあ、何よ!!」
氷姫「あたし達の実力は、全部…!!」
氷姫「魔王から分け与えられていたものだって言うわけッ!?」
魔法使い「――当たり前ですよ」
魔法使い「先の戦いで見せた"魔壁"。壁で覆った者の存在を解体してしまうなんて」
魔法使い「そんな切り札を持っているなら、どうして今まで使わなかったんですか?」
魔法使い「出し惜しみ? ああ、必殺技は後にとっとくっていうやつですか?」
魔法使い「………違いますよねぇ」
魔法使い「"木竜が死んだから、彼の分の力を取り戻した結果、使えるようになった"んでしょう?」
雷帝「シィッ!」ヒュ
パァンッ!!
魔法使い「…ええ、あなたの勘は正しいですよ、雷帝」
雷帝(受け止めた!?)
魔法使い「これ以上、私が言葉を連ねれば」
魔法使い「魔王は、崩壊しますから」
ドクン…ドクン…
ドクン…ドクン…ドクン…
202 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:56:17.52 ID:ts4DPW7U0
雷帝「氷姫!!」
氷姫「っ!?」
雷帝「全力の魔法で私もろともこいつを殺せ!!」
氷姫「な、なにを………!!」
ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…
魔法使い「冥王が、なぜあなた達に付いてきたか。教えてあげましょうか」
魔法使い「魔王が持て余していた邪神の加護を――」
雷帝「氷姫ッ!!」
雷帝「早くッ!!」
ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…
魔法使い「魔王は、冥王の術によって邪神の加護をあなた達四天王に、分散していたんですよ」
魔法使い「そこであなた達は、その地力を越えた領分の力を手に入れたんです」
ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…
雷帝「氷姫ィッ!!!」
氷姫「くッ…!!」ギュウ…!!
氷姫「うあああああああああああああああああああああああああああ!!」ォオォオォオ…!!
魔法使い「そしてその秘密が明かされることを契機として」
魔法使い「冥王の術は解けることになります」
203 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:57:10.50 ID:ts4DPW7U0
魔法使い「――手遅れですよ」
ド ク ン ッ … ! !
魔王「あ」
魔王「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ! ! ! ! !
204 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 09:57:58.01 ID:ts4DPW7U0
魔界
冥界のほとり
冥王「………」
冥王「おや。術が途切れちまいましたわ」
冥王「まさかあの子猫さん、自分で打ち明けたなんて愚かな真似をしたんじゃあ…」
冥王「いえ、それは致しませんわよねぇ。それじゃあ、自身が反動を受け止めきれずに瓦解しちまふっていうのは、ご本人が一番わかっていますもの」
冥王「いずれにせよ、暴かれてしまったんじゃあお間抜けもよい所ですけれど」
冥王「それにしても、子猫さんはこれじゃあ」
冥王「ここでドロップアウトですわねぇ…」
205 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 17:10:51.76 ID:ts4DPW7U0
雷帝「魔王様ァ!!」
氷姫「魔王っ――!?」
魔王「――」
魔王「あ――」
魔王「――ぐ」
魔王「――」
ドオォオォオォオォ…!
氷姫「な、に………これ」
氷姫(…魔王の周りに、力が渦巻いている…っ!)
氷姫(何よ…何なのよ、この気配)
氷姫(直視することすら憚られるような…圧倒的な波動の濁流)
氷姫(まるで、世界の全てを拒絶しているみたい…!!)
雷帝「く…っ!!」
魔法使い「ふむふむ」
魔法使い「予想以上の計測値ですね。邪神っていうのは、本当に大したものですよ」
雷帝「――貴様ァっ!!」ヒュッ
ズバッ!
206 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 17:11:47.64 ID:ts4DPW7U0
魔法使い「おやおや?」
魔法使い「あなたの太刀筋って、こんなものでしたっけ?」ググ…
雷帝「…っ!?」
雷帝(完全に、受け止められた…!!)
魔法使い「実感しましたか?」
魔法使い「術は解けて、 邪神の加護は魔王の元に収束したんですよ」
魔法使い「あなたにはもう先程までの力はありません」
魔法使い「夢は、醒めたんですよ。雷帝」
――バキッ!
雷帝「ぐはッ!?」
氷姫「ら、雷帝!」
氷姫「ちぃっ!」オォオォ…
魔法使い「ほう。僕ごと全てを凍てつかせるつもりですか」
魔法使い「でも、そんな大それたことが…あなたに出来るんですか?」
氷姫「何を――」
氷姫「!?」
氷姫(思うように、魔力がコントロール出来ない…っ!?)
バチバチバチ…
パァンッ!
氷姫「ぁうっ…!」
魔法使い「…やれやれ。魔力を操り切れず暴発ですか。四天王とは思えない体たらくですね」
207 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 17:14:04.12 ID:ts4DPW7U0
氷姫「…こ、こんな」
氷姫(こんなこと………っ)
魔法使い「まだ認められませんか、氷姫」
魔法使い「あなたがこれまでの戦いで人間を裁いてきた力は、仮初めの力だったのですよ」
氷姫「………!!」
魔法使い「木竜が死した時、その一人分の力の還元には堪え忍んだ魔王ですが」
魔法使い「炎獣が死に、秘密が暴露されたことによって冥王の術が解かれ、あなた達の分の力も一気に身体に戻ったことで」
魔法使い「…壊れちゃったみたいですねぇ」
魔王「――あぐ」
魔王「うぐ――」
オォオォオォオ…
氷姫「魔王…っ」
氷姫「魔王ぉ…!!」
氷姫(…駄目っ…! このままじゃ魔王が、魔王が…っ!!)
氷姫(――助けて、炎獣 )
炎獣「」
氷姫「炎、獣…」
氷姫「………」
208 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 17:14:54.53 ID:ts4DPW7U0
氷姫(………そんな)
氷姫(炎獣が)
氷姫(魔王が)
氷姫(私達の積み上げてきたものが)
氷姫(全部………全部、一瞬にして)
氷姫(消え失せったって、言うの………?)
氷姫「………………」
魔法使い「さて、抵抗しないのであればあなたも後を追うことになりますが?」
氷姫(………………か)
氷姫(勝てない)
氷姫(私は、こいつに)
氷姫(勝て、ない…)
209 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 17:19:13.78 ID:ts4DPW7U0
魔法使い「絶望しましたか。無理もありませんね」
魔法使い「まあ、私はただ、あなた達が勇者一行に与えてきた絶望の」
魔法使い「その逆を与えたに過ぎないのですがね」
氷姫「…」
氷姫「…」パキ…
氷姫「…」パキパキパキ…
魔法使い「ん?」
氷姫「…貫けッ!!」ォオ…!
――パキィンッ!!
ドスッ
魔法使い「………」
魔法使い「氷の槍…。そうですか」
魔法使い「こんな事態に陥っても、まだ戦う意思を捨てませんか。氷姫」
氷姫「…はあ…っ、はあ…っ」ブルブル
氷姫(………畜生! 震えるな…っ)ブルブル
魔法使い「…ふむ、それもよいでしょう」
魔法使い「あなたが冥王の元で魔術を修めた実力は、嘘偽りない本物ですしね。それは天才の域といっても過言ではありません」
魔法使い「それに、あなたも」
魔法使い「先代の頃からの四天王…謀略の逆巻く魔界で、魔王を守り生き残ってきた武人ですものね」
魔法使い「雷帝」
雷帝「………」ズブ…
魔法使い「あはは。後ろからひと突きにされちゃいましたか。油断しましたかね」
210 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 17:20:20.50 ID:ts4DPW7U0
魔法使い「でも今の僕って、ちょっと生半可じゃないくらい強いですよ」
魔法使い「イカサマを働いたんじゃないかってくらいにはね」
雷帝「………」
雷帝(こいつ… !)
魔法使い「実際、裏技を使いましてね。ちょっとやそっとじゃ、もう僕は死にません」ググ…
雷帝「剣を…!」
雷帝(掴んで引き抜いただと! 物凄い力…!)
魔法使い「僕って元々結構強いんですけどね」
魔法使い「今なら、こんなことも出来ちゃいますよ」チョイ
オ オ オ オ オ オ オ … !
211 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 17:23:19.30 ID:ts4DPW7U0
氷姫「な、何…!?」
氷姫(王城が………!!)
雷帝「人間の、城が………」
雷帝「………形を、変えていく…!」
ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…!!
魔法使い「王城は、せかくあなた達が目指してきたラストダンジョンですから」
魔法使い「雰囲気があった方がいいでしょう?」
魔法使い「といっても人間の本拠地ですから、魔王城みたいな禍々しい感じよりは、こういう方が性に合っていると思うんですよ」
魔法使い「どうです? お気に召しましたか、四天王」
魔法使い「これが………かつての古代王朝都市の技術の賜物」
魔法使い「――"機械城"です」
雷帝「機械、城…!?」
雷帝(眩い光をあちこちから発して、吹き出す蒸気が靄を産み出している…。それに)
氷姫「…空に、浮いた…!!」
氷姫「こんな、巨大なものが…っ!?」
魔法使い「ああ、しまった」
魔法使い「まだ国王や女王が中に居たんでした。無事でしょうかねえ」
魔法使い「まあ、どうでもよいことと言えばそうなんですが」
212 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 17:24:54.94 ID:ts4DPW7U0
雷帝「貴様が………」
雷帝「貴様がやったのか、これを…!」
魔法使い「――雷帝、氷姫」
魔法使い「戦えるのは最早あなた達二人だけのようですが、それでも僕を討ち取ろうと言うのであれば」
魔法使い「僕はあそこで待っていますよ。まあ、今のあなた達じゃあご足労頂いても返り討ちだと思いますけど」
氷姫「ま、待てっ!」
魔法使い「せいぜい、頑張って下さい…」スッ
ヒュウゥン…!
雷帝「…!」
雷帝(転移か………)
氷姫「………な」
氷姫「なんなのよ」
氷姫「なんなのよあいつ………」
氷姫「――………ッ!!」ギュウッ
雷帝「………………」
氷姫「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ…!!」
213 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 17:28:27.42 ID:ts4DPW7U0
オォオォオォオ…
魔王「――」
魔王「あ――」
魔王「――ぎ」
雷帝「魔王、様…っ」
雷帝(自我を喪失されている…! 瞳は開いてはいるが…、恐らくあそこには何も映し出されていない)
雷帝(波動の激流が渦巻いて…今の私では)
雷帝(近寄ることすらままならない)
雷帝「………」
雷帝「炎獣…」
炎獣「」
雷帝(………冷たい。あの、炎獣の身体が…)
雷帝「………」
雷帝「失ったのか、私は」
雷帝(――またしても)
氷姫「…」
氷姫「ねえ」
氷姫「雷帝」
氷姫「………教えてよ」
氷姫「あたし達、どうすればいい?」
214 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 17:29:24.50 ID:ts4DPW7U0
氷姫「もうあたしには分かんない」
氷姫「魔力が…いつもみたいにみなぎってこないんだ」
氷姫「あいつの言葉は全て本当で」
氷姫「あたし達の全部は………」
氷姫「――間違っていたの?」
氷姫「だから、こんな風に」
氷姫「負けちゃったのかなぁ………あたし達 」
雷帝「………」
雷帝「負け、か」
雷帝「そうだな。…これは、敗北に他ならない」
雷帝「炎獣を失って………魔王様を救う手立ても分からない」
雷帝「我々自身が練り上げてきたと思っていた力を失った」
雷帝「側近に………魔法使いに、我々は屈した」
雷帝「でも、不思議だな」
雷帝「私の足は、それでも前に進もうとしている」
215 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 17:31:36.50 ID:ts4DPW7U0
氷姫「………あんた」
雷帝「大事なものの多くを一度に失い過ぎたせいで麻痺しているのか」
雷帝「元々私は、こうすることしか出来ない生き物なのか」
雷帝「………"ここまで進んできて、止まれない"」
雷帝「私を突き動かすのは、その思いだけなのだ」
氷姫「………」
雷帝「ああ、進む先には絶望しかないのかもしれない」
雷帝「あんな計り知れない力を持つ魔法使いに」
雷帝「………きっと我々は勝てない」
雷帝「それでも私は進む」
雷帝「あの機械城へ」
雷帝「――私は行く」
氷姫「………」
雷帝「………」
氷姫「………」
氷姫「あたしも」
氷姫「………あたしも、行くわ」
216 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 17:32:04.80 ID:ts4DPW7U0
冥王「子猫さんたちは人間の王国の懐深く………」
冥王「四天王が死んだり勇者一行を殺したり、大忙しのてんてこまい」
冥王「………ああ、こんな日はお茶が美味しいわ」
冥王「さてはて、そろそろお前さんが舞台に上がる番ですのよ」
冥王「――魔法使い」
冥王「教えて差し上げなさいな。無知な子猫さんたちに」
冥王「世界の、真実を」
冥王「…ああ、でも。お前さん、自分のこととなるとてんで口下手なもんだから、ろくすっぽ語れはしないんでせうね」
冥王「そうですのね。誰かさんを呼び出してお話ししてもらうといふのが一番かしら」
冥王「例えば、過去の亡霊さんなんかに、ね………」
217 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 20:48:58.94 ID:ts4DPW7U0
雷帝「………」
氷姫「………」
雷帝「…辿り着いた」
雷帝(機械城の真下。しかし、これは…)
氷姫「………地面がえぐれて、更地になってる 」
氷姫「あれ、本当に浮いてんのね」
雷帝「…ああ。どういう仕組みか、想像もつかんが」
雷帝(………おそろしく巨大な建物。人間界にも魔界にも、こんなものを実現できるだけの文明が起こり得たことなどない)
雷帝(しかし…奴はこれを"古代王朝都市"と言った)
雷帝(かつて…人間の歴史上に、ここまでの技術と叡智を持ったものが存在したというのか…?)
氷姫「雷帝」
氷姫「転移であそこまで行くわよ。捕まって」
雷帝「氷姫」
氷姫「…何よ?」
雷帝「私に無理に付き合う必要はない。死ににいくようなものだ。………いいのか?」
氷姫「…死ぬにしたってね」
氷姫「ここまで来て、棒立ちでってのはごめんなのよ。倒れるときには、前のめりに倒れてやろうって」
氷姫「今は、そう思う」
雷帝「………そうか」
氷姫「捕まって」
雷帝「ああ」
ヒュウゥン…!
218 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 20:50:11.20 ID:ts4DPW7U0
雷帝「…ここが、正面か」
雷帝(ますます受け入れがたい造形だ。見たことのない材質、浮かび上がる文字…)
雷帝「一体どうなって………!」
氷姫「ぜっ…はっ…」
雷帝「氷姫…!」
氷姫「だ…大丈夫よ。ちょっと、疲れただけ…」
雷帝「…っ」
雷帝(今までの氷姫であれば、転移の一度や二度は軽々とこなしていた…だが)
氷姫「…は…はは」
氷姫「泣けてくるわね。これが、本来のあたしってわけ?」
氷姫「魔王から…邪神の加護を分け与えられていたから、悠々とやってこれたに過ぎない」
氷姫「…信じたく、ないものね…」
雷帝「…」
雷帝「少し、肩を貸してやる」
氷姫「…はは。さんきゅ」
219 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 20:51:49.09 ID:ts4DPW7U0
雷帝「…」スタスタ
雷帝(正面には、豪奢な門らしきものが見える。重厚な威圧感すら醸しているこれを…さて、どうやって突破するか)
氷姫「ぶっ壊して中に入る?」
雷帝「…今となっては、力はなるべく温存するに限るだろう。この奥で待っているのは、あの魔法使いだ」
氷姫「…そうね」
雷帝(それに、情けないことに私は)
雷帝(未知の技術の前に、自分の技が通じるのか………その自信がない)
門『――生命体を感知』
雷帝 氷姫「!!」
門『確認、照合します』ピピ…
氷姫「なっ…」
雷帝(何だ…!?)
門『確認完了。93パーセントの確率で人間と認められました』
門『お入りください』
ゴゴゴゴ…!
220 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 20:53:17.83 ID:ts4DPW7U0
氷姫「なんなわけ、これ…!?」
雷帝「…」
雷帝(確かに声が聞こえた…。が、生き物の気配がするわけではない)
雷帝(それに、今私達を"人間"と言ったか?)
雷帝「…ふっ」
雷帝「もはや、考えても分からんことだらけだ。どうあれ、進むしかあるまい」
氷姫「…ったく。薄気味悪いったらないわよ」
雷帝「行くぞ」
機械城
エントランス
氷姫「うっ…! 眩しい…」
雷帝「外よりも、中の方が明るいのか。建物の中とは思えん。配色の様々な光源が、照らしている…」
氷姫「にしても広いわね。どうすんの?」
雷帝「…あそこの螺旋階段を登ってみよう」
氷姫「まあ、あいつはこのいかれた建物の上の階にいるかもってのが、妥当な線か」
雷帝「勘でしかないがな」
氷姫「ふふ。あんたらしくないわね」
雷帝「仕方ないだろう」
氷姫「…」
氷姫「肩、ありがと。もう平気よ」
雷帝「…そうか」
221 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 20:55:03.87 ID:ts4DPW7U0
氷姫「ねえ、雷帝」
雷帝「…」
氷姫「あんた、魔王に惚れてたでしょ」
雷帝「………」
雷帝「阿呆。なんで今、その話をする」
氷姫「そりゃ…もうこの先」
氷姫「こんな話をするチャンスが無さそうだからよ」
雷帝「…」
雷帝「…はあ。お前というやつは」
氷姫「で、どうなのよ」
雷帝「惚れていた、のではない」
氷姫「え?」
雷帝「…今でも慕っている」
氷姫「はは!」
氷姫「そうですか。そりゃ結構なことで」
雷帝「聞いておいて笑うな」
氷姫「ごめんごめん」アハハ
222 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 20:56:00.50 ID:ts4DPW7U0
氷姫「でもさ、魔王なんてあんたが四天王の頃で赤ん坊だったんでしょ? 歳の差どんだけあると思ってんのよ」
雷帝「うるさい。魔族の寿命からして不自然なものでもないだろうが」
氷姫「ま、そうだけどさぁ」
雷帝「…お前はどうなんだ」
氷姫「あん?」
雷帝「炎獣に…惚れていたろう」
氷姫「…はは」
氷姫「そうだねぇ、うん」
氷姫「惚れてたよ」
氷姫「…」
氷姫「あたしは馬鹿だから、いつもそれは伝えられなかったけど」
氷姫「………結局、最後まで」
氷姫「伝えられなかったけど」
223 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 20:57:39.06 ID:ts4DPW7U0
雷帝「………」
雷帝「伝えたところで、痛い目を見るだけだ」
雷帝「私達がな」
氷姫「………はっ」
氷姫「ははっ。言うわね、あんた」
氷姫「なんだ、そういうのにはとんと無関心そうな顔して、気づいてるんじゃない」
雷帝「当たり前だ。何年、魔王様と炎獣と、過ごしてきたと思っている」
氷姫「そっか。そうよねぇ」
氷姫「…ま、当の本人達が鈍そうだけどね」
雷帝「ああ、そうだな」
氷姫「………」
雷帝「………」
氷姫「ねえ」
氷姫「終わっちゃうのかなぁ」
氷姫「あたし達の、全部」
224 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 20:58:43.06 ID:ts4DPW7U0
雷帝「………我々が魔法使いに負ければ、魔王様を元に戻す方法は失われる」
雷帝「そもそも、我々はその時点で死んでいるだろう」
雷帝「全滅は必死だ」
雷帝「私達は………勇者の元に辿り着くことなく、破れ去ったということになる」
氷姫「………」
氷姫「…はは」
氷姫「あーあ。聞くんじゃなかった」
雷帝「………すまない」
氷姫「…?」
雷帝「炎獣のように、お前を勇気づける言葉は…私からは出てこないようだ」
氷姫「…」
氷姫「馬鹿」
氷姫「期待しちゃ、いないわよ」
雷帝「…そうか」
225 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 21:24:48.69 ID:ts4DPW7U0
雷帝「…さて」
雷帝「気づいているか?」
氷姫「ええ。ここを上がったところね」
氷姫「――誰かいる」
雷帝「ああ」
氷姫「…魔法使い?」
雷帝「さあ。奴は己の気配すら自在に変化させる。もはや我々には推し量ることは出来ん。…が」
氷姫「…息遣いが聞こえる。女…? ずいぶん、弱っているみたい」
雷帝「油断するなよ」
氷姫「ええ。行くわよ」
機械城
メインフロア
くノ一「…はぁ…はぁ…」
雷帝「…!」
氷姫「人間…」
くノ一「…来た、な…」
くノ一「魔王四天王」
226 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 21:26:57.20 ID:ts4DPW7U0
雷帝「貴様は…」
氷姫「雷帝、知ってるの?」
雷帝「見覚えがある。確か、王国建国の儀式で見かけたな」
くノ一「ふふ…。雷帝。あなたが来るなんて、これも縁か」
雷帝「………満身創痍だな。人間の貴様が、何故そんななりでそこにいる?」
くノ一「負けたのだ。魔法使いに」
くノ一「いえ…正確には彼のしもべに」
氷姫「魔法使いが、人間を狙ったっての? …あいつ」
くノ一「何を考えてるか、分からない…か?」
くノ一「奴は狂ったのだ。いや、元々狂っていたのか」
くノ一「全ての始まりは、奴が真実を知った時…だったのだろう」
雷帝「…何だと?」
くノ一「魔王四天王」
くノ一「あなた達には、魔法使いを倒してもらう」
227 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 21:28:43.43 ID:ts4DPW7U0
雷帝「………」
氷姫「あんたに言われずとも、こちとらそのつもりよ…!」
くノ一「…と、言うよりは、もうあなた達にはそれしかない…といったところかな」
氷姫「!?」
くノ一「あなた達二人しか現れなかった…ということは、後の二人の四天王は既にどこかで魔法使いに倒されたのだろう」
くノ一「魔王も、おそらく戦える状態ではない。違うか?」
雷帝「…だとしたら、何だ?」
くノ一「………魔法使いは」
くノ一「魔王を操るつもりだ」
雷帝「…っ」
氷姫「!!」
くノ一「今この時も、魔法使いは魔王の精神を、乗っ取りにかかっている」
くノー「あの男のことだ。抜かりなく魔王の心を無防備な状態に辱しめてから、事に当たるだろうな」
くノー「果たして魔王がどれだけ抵抗できるか」
氷姫「く…っ!」
雷帝(今の魔王様の精神は剥き出しの危険な状態だ…! だが、我々には魔王様に触れることすら出来ない)
くノー「あなた達が取れる道は多くない。魔王が魔法使いに支配されれば…世界がどうされるか分かったものではない」
くノー「絶望的な戦いであったとしても…あなた達には魔法使いに挑んでもらうしかない、というわけだ」
228 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 21:29:51.58 ID:ts4DPW7U0
くノ一「とにかく、急いでくれ」
くノ一「奴はもう、鍵を持っているのだから」
雷帝「鍵、だと…?」
くノ一「私は、しくじった。一度手に入れた鍵を、奴に奪い返されてしまった」
くノ一「王城が、こんな風にされてしまって………もう、両陛下が無事かどうかすら、分からない」
くノ一「もう私には、あなた達四天王に賭けるしかない…」
雷帝「………お互い」
雷帝「もはや後がない、というわけか」
氷姫「………」
雷帝「行くぞ、氷姫」
氷姫「あ、ちょっと!」
くノ一「魔法使いは、その門の先にいる…が」
ピピ…
門『ゲートはロックされています』
門『合計4パターンのシステムクリアを実行してください』
229 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 21:32:13.90 ID:ts4DPW7U0
氷姫「はあ? 何よ、これ」
くノ一「言わば、封印だよ。それを解くには、別の場所で解放を行わなければならない」
雷帝「別の場所…。他に、二つの門があるな」
雷帝「こちらに先に行けということか?」スタスタ
氷姫「ちょ、ちょっと雷帝! そんなワケの分からないものにホイホイ近づいたら…!」
雷帝「だからと言って、ここで頭を悩ませていてもどうせ解決にはなるまい。私はこちらを潜る。お前はそっちを」
氷姫「…っ」
雷帝「分かっている。危険な行動だと言うことは」
雷帝「けれど今は、足を止めていたくない。そうしてしまったら、もう進めない気がするんだ」
雷帝「お前のように、私は強くないからな」
氷姫「………違うっ」
氷姫「あたしは…っ!」
雷帝「最後の一歩だとしても、踏み出していたいのだ」
雷帝「――進んだ先で」
雷帝「また会えると、信じている。氷姫」
『サブゲートAに、生体反応。転送を開始します』
『転送先確認。下層研究ホール。スタンバイ』
『転送』
氷姫「雷帝…!!」
ヒュウゥウ…ン
230 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 21:33:54.50 ID:ts4DPW7U0
氷姫「…ふざけんな」
氷姫「あたしは、強くないんだよ」
氷姫「全然、強くなんか、ないんだ」
氷姫「畜生…」
氷姫「………」
『サブゲートBに生体反応。転送を開始します』
『転送先確認。都市展望台。スタンバイ――』
ヒュウゥウ…ン
くノ一「…あなた達にかかっている」
くノ一「魔法使いが、世界を変えてしまう前に」
くノ一「お願い………」
231 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 21:34:46.24 ID:ts4DPW7U0
ヒュウゥウン
雷帝「…」
雷帝(どうやら、着いたな。どこへ着いたのかは知らんが)
雷帝(転移魔法と似たような仕組みか。しかし、魔力は微塵も感じなかった。つまりは、からくりの一種だと言うことか?)
雷帝「………ずいぶん開けた場所だ」
雷帝「ここは…」
「やはり、来たか」
「お前は勇気のある男だよ」
雷帝「…なッ………!」
雷帝「――なぜ…!?」
雷帝「なぜ、あなたが、ここに………ッ!?」
「驚くのも無理はないな。お前の記憶が正しければ、私は既に死んでいる」
「案ずるな。その事実は正しい。しかし…」
「…魔法使いが手にしたものというのは、生と死の境を曖昧にすることだって可能にするほど莫大な力を有する物なのだ」
「ひねりのない話だとは思わんか?」
先代「けれど私は、甦った」
先代「さあ、剣を取れ。雷帝」
232 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2017/12/23(土) 21:37:57.01 ID:ts4DPW7U0
氷姫「はっ…はっ…!」
氷姫(危ない…っ! 一瞬でも反応が遅れたら、斬られていた)
氷姫(こいつ…っ!!)
「おや、魔術師とは言え反射神経も大したものだな」
「一筋縄ではいかないか。まあ、痩せても枯れても魔王四天王だしな、そのくらいでなくては」
「時間もないし、とっとと続きをしないか?」
女勇者「本気で殺り合えよ。四天王」
233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2017/12/23(土) 21:42:02.13 ID:ts4DPW7U0
>>224
雷帝「私達は………勇者の元に辿り着くことなく、破れ去ったということになる」
↓
○雷帝「私達は………勇者の元に辿り着くことなく、敗れ去ったということになる」
今日はここまでです
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/23(土) 23:54:26.01 ID:HoRBdsWA0
乙
いっきに減ったな〜
235 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/24(日) 03:40:49.21 ID:Yy+vSgcDO
来てたー!
乙
236 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/12/24(日) 10:24:26.25 ID:CcE+1TLBo
おつ
待ってたで〜
237 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2018/01/23(火) 11:31:24.56 ID:KY5C29a/O
ほ
238 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/23(金) 00:13:28.26 ID:f3DmMDSA0
舞ってる
239 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/03/10(土) 12:41:08.70 ID:Ho8YDfJf0
魔王「………ここは、どこだろう」
魔王「確かな感覚があるようで、空気と溶け合ってしまったような」
魔王「匂いと音に包まれて目覚めたような、眠ってしまったままのような」
魔王「自分の気配が、ひどく曖昧だ…」
魔王「大きな力に押し流されて、途方もなく遠いところに来てしまったみたい」
魔王「私には………為さなきゃならないことがあったはず」
魔王「とても大切なことを忘れてしまってる気がするのに………今は、何も思い出したくない」
魔王「帰りたい。皆と過ごした、あの魔王城に」
魔王「私を連れていって…」
〈魔王の心の魔王城〉
魔王「…!」
魔王「ここは…魔王城…?」
魔王「本当に来れた…!」
魔王「うふふ…素敵!」
魔王「この世界では、私が思った通りのことが起こるんだ…!」
魔王「きっと、こうして玉座に座っていれば、爺が朝の挨拶に来てくれる…」
ギィ…
木竜「…姫様」
240 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/03/10(土) 12:52:54.42 ID:Ho8YDfJf0
魔王「ほらね!」
魔王「おはよう、爺。炎獣はどこ?」
魔王「雷帝や氷姫は今日も忙しいかな? 炎獣、訓練だって言って城を壊したりしてないといいけど…」
木竜「姫様」
魔王「…爺? どうしたの、恐い顔をして」
木竜「…伝令から知らせが入りました」
魔王「え………?」
木竜「――勇者が」
木竜「勇者が攻めてきました」
241 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/03/10(土) 12:54:07.93 ID:Ho8YDfJf0
魔王「!?」
木竜「本日未明、魔界大陸の最前線基地に、勇者一行が出現」
木竜「我が魔王軍の本体は、彼らの出現から半時で全滅しました」
木竜「彼らはたった七人の精鋭部隊」
木竜「勇者と、商人、武闘家、盗賊、戦士、僧侶、魔法使い」
木竜「勇者一行は近隣の拠点を蹂躙」
木竜「………その猛進凄まじく、我らが魔王城まであと数刻」
魔王「………ま」
魔王「待って…! これは、何!?」
魔王「これは一体何の…!!」
伝令「し、失礼します!」
木竜「………今度はなんじゃ?」
伝令「勇者撃破に向かった、四天王最強の武闘派、炎獣殿の隊より知らせです!!」
魔王「………え?」
伝令「炎の四天王、炎獣殿は…!」
伝令「勇者一行との激烈な死闘の末………!!」
伝令「壮絶な討ち死にを遂げられました………っ!!」
魔王「な………」
魔王「………何を」
魔王「…………何を言っているの………?」
242 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/03/10(土) 15:26:46.23 ID:Ho8YDfJf0
〈下層研究ホール〉
雷帝「先代様…!!」
雷帝「まさか、あなたが…――魔法使いのしもべにされていると言うのですか…!!」
先代「そういうことだ」
先代「今の私は、魔法使いの意にそぐわない形では生きられない」
雷帝「…っ!! あなたほどのお方が…っ」
先代「ふふ。雷帝よ。真面目な男だな、お前は。私の分までそうして口惜しそうにする」
先代「私はよい部下を持ったものだ。…だが」チャキ…
雷帝「――!」
先代「悲しいかな、私の役目は"お前を倒すこと"にある」
先代「私とて、出来れば二度も死にたくないのでな」
先代「お前を、倒す」
先代「構えよ」
243 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/03/10(土) 15:48:51.83 ID:Ho8YDfJf0
〈展望台〉
女勇者「シッ!」ドンッ
ヒュドッ!
氷姫「くっ…!」
女勇者「どうした、四天王! 逃げてばかりでは私は倒せんぞ!」
氷姫(速い…! とんでもない身体能力だ…っ!)
氷姫(魔法を撃とうにも、あっという間に間合いを詰められる! このままじゃ、いずれ殺られるっ!)フワッ…
女勇者「お? 宙に逃げたか」
女勇者「魔術師ならではだな。剣士にとっては些か辛い土俵ではあるが」
女勇者「しかし」ダンッ!
氷姫(跳んだ! よし、このまま空中で仕留めて――)
女勇者「私に少しも魔法の心得がないと思ったか?」ヒュオ…!
ドヒュンッ!
氷姫「光弾!?」
氷姫(遠距離魔法も使うのか! くそ…っ!! 躱すには距離が近過ぎ――)
ドォオン…!
女勇者「これでも、かつて勇者をしていたものでね。それなりに色々と扱うんだよ」
女勇者「うかうかしていると、すぐに終わってしまうぞ? お前の旅は」
女勇者「なあ、氷の四天王よ」
244 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/03/10(土) 15:49:26.32 ID:Ho8YDfJf0
ヒュウゥウ………
女勇者「む?」
女勇者(上空から、何か舞い落ちるように降りてきた。霜か、これは)
女勇者(霧に包まれたように辺りが真っ白だ…)
女勇者「なるほど、一時的に視界を奪って騙し討ちにするつもりか。…ふむ。これは困った」
氷姫『…先代勇者』
氷姫『何故あんたが、魔法使いに与する? 人間にとっても、最早魔法使いは驚異のはずよ』
女勇者「お、情報収集か? 有利な状況に持ち込んで余裕が出たか」
氷姫『答えなさい』
女勇者「…ふふ、いいだろう。付き合ってやる」
女勇者「私とて、あんな陰気者の駒使いなど真っ平ごめんなんだよ。しかし、一度死んだ私を甦らせた魔法使いは、私の心臓を握っている」
女勇者「歯向かえば、死、というわけさ。…納得して貰えたか?」
氷姫『………』
女勇者「信用できない、か?」
女勇者「しかし考えてもみろ。奴は王城を指先ひとつで、このケッタイなからくり仕掛けの要塞に早変わりさせたくらいだぞ」
女勇者「死者を甦らせったって、不思議じゃないと思わないか?」
245 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/03/10(土) 15:50:30.17 ID:Ho8YDfJf0
氷姫『…そんな力があるなら』
氷姫『何故最初から私達をその力で討たなかったの?』
女勇者「さあな。奴にも色々事情があるんだろうよ」
女勇者「それに、あの力は最初から持っていたわけではない。完成させたんだよ」
女勇者「勇者一行が、お前たちの足止めをしている間に」
氷姫『完成させた…?』
女勇者「どうやら連中は、それを"鍵"と呼んでいる」
女勇者「この世のあらゆる秩序を狂わす反則級の代物さ。ある意味、奴らの女神なんぞよりもよっぽど恐ろしい」
氷姫『………』
氷姫(鍵…。確か、あの人間の女もそんなことを…)
――くノ一「私は、しくじった。一度手に入れた鍵を、奴に奪い返されてしまった」
女勇者「聞きたいことはそれだけか?」
氷姫『………あんた。魔法使いを、まるでよく知っているみたいに話すわね』
氷姫『あいつの、何を知ってるの』
女勇者「何かと思えばそんなことか。私と奴の関係?」
女勇者「………そうだな。私にとってあいつは」
女勇者「友の、仇だよ」
246 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/03/10(土) 19:16:43.51 ID:UZ1PPoTA0
おつ
247 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/03/10(土) 20:18:28.77 ID:Ho8YDfJf0
〈下層研究ホール〉
先代「行くぞ」
先代「雷帝」コォオ…
雷帝「…」ゾッ
雷帝(先代様…。本気だ)
雷帝「くっ…」チャキ…
先代「そうだ。それでいい」
雷帝(――来る)
先代「」 ゴ ッ
雷帝「」 ギ ュ ン ッ
――ジャキィッ!!
248 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/03/10(土) 20:19:12.66 ID:Ho8YDfJf0
雷帝「…っ」ギリギリ…
先代「ふっ。ははっ!」ギリギリ…
先代「受け切るとはな、雷帝。大したものだ」
先代「私が死した後も、相当の研鑽を重ねたようだな」
雷帝「くっ…」
雷帝(強い…っ。だが、見えなくはない…!)
先代「………私とて、既に邪神の加護は失われている」
雷帝「!」
先代「アレがなければ、私の実力などこんなもの、と言うわけだ…」
雷帝「…っ、邪神の加護…!」
先代「お前にとっても、邪神の加護はまやかしであったのだろう」
先代「しかしそれでも、お前本来の力を信じよ。…そうでなくては私は倒せん」
雷帝「…!」グラッ
先代「――破」
ズンッ…!
249 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/03/10(土) 20:19:50.34 ID:Ho8YDfJf0
雷帝「ぅくっ…!!」
雷帝(桁違いの、圧力だっ!)
先代「斬」ギュン!!
ズ バ ッ !
雷帝「ちっ…!」
先代「魔族としての血を思い出せ」
先代「相手を制し、勝利する欲求を」
先代「奥底に眠る力の解放を」
先代「番人を倒すことすら出来ねば」
先代「お前達に未来はない」
ドォッ――!!
250 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/03/10(土) 20:20:37.03 ID:Ho8YDfJf0
〈展望台〉
氷姫『番人…ですって?』
女勇者「そうだ。私と、他に三人の番人がいる」
女勇者「そいつらを倒せば、魔法使いへの道は開かれる、というわけだ」
氷姫『…』
氷姫(ふざけてる)
氷姫(魔法、使い…試すような真似をしやがって…!!)
氷姫(上等よ…っ!! なら、あたしは)
氷姫(その番人とやらを、倒すだけよ!!)
ヒュオォ…!
女勇者「おっ。ようやくやる気になったか。待ちくたびれたぞ――」
氷姫「はァッ!」ォオ…!
女勇者「!!」
ゴォッ!
女勇者(冷気の結界を纏った体当たり…!?)
女勇者(ぶち当たれば一撃で致命傷だな…! 霧のせいでどこから来るか分からんのも厄介だ…!)
女勇者(だが…)
氷姫「ちっ…躱された!」
氷姫(勘の良い女ね! だけど、そいつが何度も続くか…!!)
氷姫「喰らえ…ッ!」
ゴッ――
女勇者「ここだ!」ヒュッ!
氷姫「!?」パキィンッ!!
251 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/03/10(土) 20:21:46.09 ID:Ho8YDfJf0
氷姫「ぐあっ…!?」
氷姫(攻撃を当てられた!? 糞、なんで…!)
女勇者「たいした大技だが、魔力が充分ではないな!」
氷姫「…っ」ヨロ…
女勇者「もう貴様には、今までのように邪神の加護はないのだ! とっくに見放された存在なんだよ!!」
女勇者「そいつを認められなかった一瞬の甘い判断が」
女勇者「貴様の敗因だ!!」
氷姫(不味い、回避が間に合わな――)
ズドッ!!
252 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/03/10(土) 20:22:37.33 ID:Ho8YDfJf0
〈地下研究ホール〉
先代「突」
ザンッ!!
雷帝(っ! 刃圏が広い!!)
雷帝(もっと反応速くしろ!! そうしなければ)
雷帝(斬られる!!)
先代「まだだ」
先代「まだ、遅い。雷帝」
ス パ ッ
雷帝「!!」
雷帝(ぐっ…!! 足をやられた!!)
雷帝「くそっ…!」
先代「…思うように体が動かないか?」
先代「無理もないな。今までお前の肉体と神経は邪神の加護に限界まで高め上げられていたのだから」
雷帝「………」
雷帝(…思い、知る…。私達は本当に)
雷帝(自らの能力で戦ってきたわけではないのだ)
先代「………四天王に絶大な力を分け与えてなお、魔弓を扱うだけの力を残した」
先代「あの子にもたらされた邪神の加護は、計り知れない。只の人間が、そんなものに敵うはずもない」
先代「お前達がしてきたのは、そういう戦いだ」
雷帝「………っ!」
先代「………"魔族の勝利が、約束された戦い"」
253 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/03/10(土) 20:23:50.73 ID:Ho8YDfJf0
雷帝「…私達はっ」
雷帝「まだ、勇者に勝利していません…!!」
先代「…なるほど、確かに」
先代「勇者を倒すのか、勇者に倒されるのか。それがはっきりするまで、命運は分からん」
先代「だが、反対に」
先代「魔王にもたらされる邪神の加護と、勇者にもたらされる女神の加護。そのどちらが大きいのか」
先代「戦いを決定付けるのは、只それだけではないか?」
雷帝「!?」
先代「この世界を支配してきたふたつの種族。人間と魔族は」
先代「神から与えられる加護の体現者である勇者と魔王の優劣に、深く依存をし続けてきたのだ」
先代「…その生の、全てをな」
254 :
◆EonfQcY3VgIs
[saga]:2018/03/10(土) 20:25:05.53 ID:Ho8YDfJf0
〈魔王の心の魔王城〉
木竜「姫様」
木竜「お聞き頂いた通りですじゃ」
魔王「…っ!?」
木竜「炎獣は、勇者一行に敗れ申した」
魔王「え………炎獣が?」
魔王「………炎獣が、死…――」
魔王「そ…そんな………。そんなことがあるわけ………ない………!」
魔王「………だって、今まで………」
魔王「今まで一緒に戦って…………!!」
魔王「嘘よ………っ!!」
魔王「嘘ッ………!!」
ズキン…!
魔王「うっ…!?」
――炎獣「危ねえッ!!」
――炎獣「魔王ッ!!」バッ
――魔王「え…?」
―― ド ス ッ
――炎獣「がッ」
――炎獣「ふッ」
――魔王「………………え」
――魔王「………炎…獣………?」
――魔王「炎獣」
――魔王「炎獣ってば」
――魔王「ねえ、炎獣」ユサ…
――魔王「炎獣………」ユサユサ…
――炎獣「」ゴロン…
魔王「嫌だっ!」
魔王「違う違う違うっ!!」
魔王「そんなの嘘だっ!!」
魔王「炎獣が、炎獣が…っ!!」
魔王「炎獣が――」
木竜「…姫様」
482.71 KB
Speed:0.2
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報VIP
更新
専用ブラウザ
検索
全部
前100
次100
最新50
続きを読む
名前:
E-mail
(省略可)
:
書き込み後にスレをトップに移動しません
特殊変換を無効
本文を赤くします
本文を蒼くします
本文をピンクにします
本文を緑にします
本文を紫にします
256ビットSSL暗号化送信っぽいです
最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!
(http://fsmから始まる
ひらめアップローダ
からの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)
スポンサードリンク
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)